◆NoveL 半分はお前のせい(アイライ) ライが首を振って「半分は俺の所為だが、半分はお前の所為だろ」と言って噛みつく話を7RTされたら予測変換はの三番目から書いてください。 http://t.co/ZJ4AGnMQ ということで。 入るなら入れよ、と、天幕の中の声が告げた。 佇んでいたのはごく僅かのはずだが、中の人物にはさすが、気配でわかるらしい。 それが、自分だから、なのか、彼の察しが鋭いからなのかは別として、だ。 天幕の入り口をくぐる。 行軍中のこと、そう広い空間が作られているわけではないが、スクリミルの側近として遇されるライは、それなりの広さをあてがわれている。 簡易の机、ぐったりとした姿勢で上半身をそこに預けて椅子に腰掛けた青猫は、腕一本も上げるのすら億劫な顔で、じっとりとこちらを見た。 「どうしたんだ、」 「どうした、じゃない。見ればわかるだろ」 らしくない姿勢ついでに、らしくもなく、どうも、怒っているらしい。 仲間に対しては、わりといつでもマイペースな穏やかさを絶やさないライが、こうも不機嫌を顕わにするというのはなかなかに珍しいのだ。 熱くなりやすい獣牙族としては相当冷静な部類に分類される彼は、人間の自分からしてもいたく冷静で落ち着いた人格の持ち主だと思える。 が、 「半分はお前のせいだろ」 「何がだ」 恨みがましい目付きにいきなり責任の半分を追及されたが、いったいなんのことか。 はて、首を傾げる。 本気で分からないのだが、ライはとぼけているとでも思ったのだろうか。 「俺の惨状以外の何があるってんだ」 口調を荒げた。 そして、勢いよく続ける。 「お前みたいな体力バカ…、いや違うな、化け物に丸一日付き合わされる身にもなってみろって話だ」 「お前はラグズだろう」 諸々の事情で昨日の行軍はその足を止めざるをえなくなった。 ぽっかりと空いた時間を無駄にする手はなく、ところが、周り曰く「底無し」のアイクの訓練に長々と付き合う人間も見当たらなかったので、獣牙族の友人に声をかけたのだった。 しかし、自分の訓練に丸一日付き合ったくらいで限界とは、しばらく合わない内に鈍りでもしたのだろうか。 ライは、人間などよりよほど体力的に恩恵を受けた種族だというのに。 「お前が規格外すぎるんだ」 ライがため息を吐いた。 「だいたい、クリミアで戦ってた頃とはお前、たいがい段違いだろう」 そうだろうか。 強くなることを、常に目指してはいるが。 ライが認めるほどに見違えたのだとしたら、それは単純に嬉しい。 「なんでそこで喜ぶ」 アイクの顔を見て、再びライがため息を吐いた。 諦めたような、それでいて微笑んだような顔で。 「おれはお前と違って繊細なんだ」 だから大事に扱えよ、なんて、少々意味深な言い回しをするものだから、つい、乗ってしまいたくなる。 「そうかも、な」 ぐいと覗き込んだ青と赤の瞳。 間近に迫ると後ろに引こうとするのを頭ごと捕らえて、 「繊細だ。夜は、確かに」 瞬間、驚いたように、目を見開いて、しかし緩い力で捕らえた頭は逃げ出さなかった。 単に硬直していただけかもしれない。 「昼は、どうかな」 今から、試そうか? 鼻先に囁くようにすると、息を飲む気配。 「……これ以上俺を疲弊させてどうしようってんだ」 悲鳴のような訴えには、しれっと答える。 「とって、食う」 弱らせてから捕らえて獲物を食うのは、獣の狩りの基本。 瞬間、目を白黒させたライが、 「出てけ!!」 全力で追い出されて、天幕の外でアイクはふむ、と笑った。 あれなら、大丈夫そうだ。 見上げると空が青い。 青猫の髪のように薄く澄んだそれに、本人にそうするかわりに微笑んだ。 2011.11.5 |