カナヅチ
観察
涼稀先輩は早速あたしの隣りに座って勉強を教えてくれた。部活の時はすごい厳しいけど、今は分かりやすく優しく教えてくれた。
どんどんページが進む。さっきまで暗号文に見えた教科書も、今じゃほとんど理解できる。
涼稀先輩の細い指が教科書をなぞった。
綺麗な唇から紡ぎ出される声はよく透って、あたしの好きな話し方をしてくれる。
顔を上げると、そこには整った涼稀先輩の顔。肌は健康的に黒く、髪は痛んでいて茶色い。それほどまでに水泳が好きなんだと、見ただけで分かってしまう。
少しだけタレ目で優しい印象を与える。なのに瞳は真っ黒で強いまなざしな気がした。
確かに涼稀先輩は格好いい。けど恋愛対象には見れないし、見る気もしない。あまりにも綺麗すぎて人間じゃないみたい。
「そんなジロジロ見るなよ」
「!……す、すいません!」
どうやらあたしは勉強そっちのけで先輩を観察していたらしい。恥ずかしくなって慌てて顔を背けた。
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