カナヅチ
冗談のつもり
「俺テリヤキセットでコーラね」
そう言って座席を探しに行ってしまった。
あぁ…奢れってことね……
とにかくやっちと自分の分の注文をしたものを座席に持っていった。
「サンキュ!」
やっちは余程お腹が減っていたのか、ガツガツ食べ始めた。あたしはサラダとポテトを口に運んだ。
やっちはものの数分で全て食べ終えた。
それで落ち着いた時、あたしに一言いった。
「瑞葉さ、今日サボっただろ」
ギクリとした。なんでそんなことが分かるのか、誰かから聞いたのかは分からなかった。
「え……」
戸惑った様子のあたしにやっちはニヤリと笑った。
「本当なんだ。冗談のつもりだったけど」
「……っ!」
周りの話し声とかあたしの耳には入らなかった。どうしてサボったんだ、という問いに張り詰めた愚痴が零れ落ちた。
「だってあたしカナヅチなのに涼稀先輩は無理矢理泳がそうとするし、何個も一遍に注意するからよくわかんないし、毎日疲れるし、厳しいし、それから…」
ボロボロと出てくる愚痴にやっちは下を向いた。
あたしの止まらない口を遮ったのは、やっちの大きな溜め息だった。
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