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他盤
満月     玲流

ふいに、


____満月__


いつも通り、早いとは言えない仕事帰り。
普段はタクシーを使うのに、今日は何故か歩きたくなった。
人通りの全く無い道をぶらぶらと歩く。
まるで世界に俺一人になったような錯覚。
少し、わくわくする。

「夜なのに明るいなあ」

ぽつりと、呟いてみた。
勿論返事が返ってくるわけはなくて、騒がしいのに慣れてる俺は少し淋しいな、なんて思ったり。
空を見上げてみると、丸い月が目に入った。

「今日は満月か、」

都会の汚染された空気のせいで星は見えないけど、月ははっきり見える。
ネオンに囲まれた街の灯りなんかより、ずっと綺麗に感じた。
れいたと一緒に見たいなんて、女々しい感情も同時に生まれた。

「電話、してみようかな」

そう思って携帯を取り出してみたけど、思い直してまたポケットに仕舞う。
只今の時刻、午前二時。
さすがに、非常識だ。
我儘な俺だって、そのくらい考えられる。
あいつだって仕事で疲れてるんだし。
それに、車で帰ったあいつはきっともう家に着いて寝ている頃だろう。

「なんだかなあ」
急に、会いたくなった。
さっきまで一緒に居たっていうのに。
どうしたんだ今日は。
妙に女々しい。

嗚呼、あまりに綺麗すぎる満月のせいかな。

ふと目に付いた公園に入って、ベンチに座って空を見上げた。
と、同時にポケットの中で携帯が震えだした。

着信、れいた。


「なあ、空見てみろよ。満月、すっげー綺麗だぞ」


なんだ、お前も同じこと考えてたのか。
自然と、笑みが零れた。



END



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