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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
インタールードデイズ02 『ツインライナー・トラブル・デート』



「・・・スバルと良太郎さんがデート?」

「それは、本当・・・ですか?」

「本当です。というか、そんな状況になってるみたいで・・・」



朝、チビスケとフェイトちゃんの残した甘ったるい空気をなんとかしたくて、デカ長呼んで一緒に茶を飲んでいた所・・・また飛び込んできた。相手はサリエルさん。

で、報告を受けた。良太郎さんとスバルが・・・デートっ!? いや、恭文とフェイトちゃんの話やと普通に観光・・・あぁっ! 二人っきりで行ったらめっちゃデートやんかっ!! うちなんでここまで気づかんかったんやっ!!



「いや、フラグ立ってる立ってるたぁ思ってたが、まさかスバルちゃんがデートとは・・・。姉と違って恋愛には積極的なんだな」



・・・サリエルさん、そこはツッコまんといてあげてください。いや、確かにギンガはアレですよ? ぶっちゃけうちもゲンヤさんもアレはフラグ立ってるんとちゃうかなと何度思ったか。

まぁ、そこはえぇ。とにかくえぇ。今大事な事は、それとちゃう。



「・・・デカ長」

「やるしか・・・ありませんね、これは一大事でしょう」





なら、これしかないわな。



うちはお茶をテーブルに置き、立ち上がり・・・身体を三回転捻りを加えて、宣言した。





「これは緊急事態や・・・! 六課全員、臨戦態勢突入やっ!! 大至急二人を追跡っ! そうしてドキドキウォッチングやっ!!」

「デンライナー署・・・緊急出動ですっ!!」

「だからなんでそうなるっ!?」



いや、そやかてうちとしては可愛い部隊員の応援をせぇへんと。ほら、うち部隊長やし。



≪・・・八神御大将。アナタはバカですか?≫

「うわ、金剛それちょっとひどいわ。女の子にいきなりバカって」

「いや、金剛じゃなくても言いたくなるから。アンタ、1ヶ月前同じ野次馬根性出してどんな目に遭ったか忘れたのか?」

「サリエルさん、若さって何か知っとりますか? 振り返らないことなんですわ」

「アンタはちょっとは振り返ろよっ! 若さ無くていいから振り返ろっ!!」










うちはなんも聞こえんー♪





さぁ、そうと決まれば・・・早速準備やっ!!










「いや、決まってねぇからっ! そして話は聞けー!!」

≪主、砲撃でお話でもしましょうか≫

「そうだな、そっちの方が良い様な気がしてきたわ」




















『とある魔導師と機動六課の日常』×『仮面ライダー電王』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間


インタールードデイズ02 『ツインライナー・トラブル・デート』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あのさ」



うん・・。



「・・・僕達喧嘩ばっかりしてたじゃない?」



そんなことないよ、ちゃんと仲良く・・・して、ないね。

結構ぶつかる事が多かった。最初もそうだし、魔導師になってからも結構沢山。その度に思った。私、この子と仲良く出来ないんじゃないかって。考えてることが分からなくて、どうしても理解できなくて・・・。



「前にね、サリさんに言われた事があるんだ。それなのに・・・どうして好きで居られるのかって。俺から見たら、付き合ってもすぐに破局しそうなくらいに相性悪く見えるって」

「そ、そんなこと言ってたんだ・・・」



サリさん、結構毒舌だね。というより、相性・・・悪いのかも。少なくとも初対面の時は、この子とこんな風に話せて、家族になって、長い付き合いになるなんて思ってなかったから。

きっと事件が解決したらすぐに別れて・・・会う事も無くなると思ってた。実を言えば、本当に最初の頃は私も・・・苦手なタイプだなってちょっと思ってたから、余計に。ヤスフミも同じだったと聞いた時は、ある意味仲良くなれる資質はあったんだと笑った。



「・・・多分ね、喧嘩したからなのかなと」

「・・・そうなの?」

「うん。喧嘩して、ぶつかって、何度もやりあって・・・。でも、それでもなんとか分かり合って、認め合って。それが嬉しくて、なんだか、その度にフェイトとの繋がりが深くなるように感じて・・・」

「・・・私も、実はね。そう思ってた」



どこか嬉しそうな顔のヤスフミを見てるから、私も頬が緩む。・・・うん、私も同じ。それでも、話して、分かり合って・・・そうして繋がってきた。そうだ、私本当に最近ダメだった。

そうやって全然違うから、相性が悪くて、ダメダメで・・・でも、嫌いになんて絶対になれなくて。だから話して、分かり合ってきたんだ。なのに、何時の間にそれを放棄してたんだろ。何時の間に私・・・ヤスフミを子ども扱いするようになってたんだろ。



「・・・まぁ、何が言いたいかと言いますと・・・これからも、それでいいかな?」



真っ直ぐに私を見つめてくるのは黒くて優しくて・・・強い色の瞳。この数ヶ月で、私の中でその意味合いを大きく変えた、大切な男の子の瞳。



「もし、フェイトの審査に通って、付き合うようになっても・・・そうだし。それがダメで、姉弟になっても・・・そうだし」



姉弟になっても・・・そう言った時のヤスフミは、どこか寂しげで・・・怖がってて・・・。それに私も、なんだかチクンとした。なんだろう、まだ審査中で・・・なりかけだけど、ちょっと嫌だった。



「分かり合えなくて、喧嘩して、ぶつかり合っても・・・その度に話して、向き合って・・・フェイトと繋がっていきたい。いい・・・かな?」

「・・・いいよ。あの、私もそうしていきたい。もし・・・もしね、そうなれてもなれなくても、もうスルーも子ども扱いもしたくないから。今のヤスフミのこと、ちゃんと見つめたいの。
だから・・・話して、向き合っていこうね。相性最悪でも、きっとそうすれば・・・二人で幸せになれるよ」

「・・・うん、そうだね」










相性最悪・・・か。確かにそうかも。でも、それでも・・・それでも、目の前の男の子と繋がりたい気持ちは変わらない。だって、もう関係ないで済ませる事も、今を見ない状態で済ませる事も出来ないから。

そんなの理屈が、関係ない。相性とか、そんなの、本当に関係ない。私達は分かり合える。心を繋げて、理解して・・・だから今、私はヤスフミに惹かれてるんだから。

・・・ヤスフミだけじゃない。私も強くなっていくと決めた。力じゃなくて、心を強くしていくと決めた。少しずつでも、変わっていって行くと決めた。今までの私なら無理かもしれない。でも・・・強くて、硬くて、本当の意味で折れなくて鋭い刃の私なら、絶対に出来る。





審査は、私がヤスフミに・・・だけじゃないね。私も、ヤスフミに審査されてるんだ。頑張ろう、なりかけが本当に好きになった時、ヤスフミに愛想尽かされないように。

だって、ライバルは多いわけだし。例えば・・・すずかや美由希さんやシャマルさんやメガーヌさんやスバルやティアやフィアッセさんや・・・。





・・・・・・・・・・・・あれ、なんでこんなに多いんだろう。おかしいな。そう言えば、最近だと海上隔離施設のディードもヤスフミが気に入った感じで距離近いって言ってたよね。

あの子、まだ色んな経験が少ないから、ヤスフミとの手紙のやり取りでその辺りを埋めるためにコミュニケーション取ってるとか。ヤスフミ、少し楽しげに話してくれた。なんだか妹が出来たみたいで嬉しいって。

なんだか、改めて考えてみると本当にライバル多いのかな? と、とにかく・・・頑張ろう。余所見なんて私はして欲しくないもの。みんな素敵だけど・・・負けたくない。私、ヤスフミを独り占めにしたいから。しっかり頑張って・・・前に進んでいこう。





あ、リインは仕方ないけど。その、リインとヤスフミは本当に繋がりが深いから。あの繋がりはやっぱり・・・最初が原因なのかな。あとは、よくお泊りしてた時みたいに、一緒にご飯食べたり遊んだり、お風呂に入って洗いっこしたり、抱き合って寝てたり・・・。

だ、抱き合うっ!? というか、お風呂で洗いっこ・・・だめっ! さすがにそれは恋人の段階だよっ!! その、お風呂で洗いっ子はだめっ!!

あ、でも一緒に寝るのだったら・・・。あの、もちろんエッチな事は無しで。うん、それは・・・その、ダメ。










「・・・フェイト、どうしたの? 顔赤いよ」

「あ、ううん。大丈夫」










・・・言えないよ、さすがに。





まさか、ヤスフミとお風呂入って洗いっこしてるのを想像してた・・・なんて。

よし、リインに色々アドバイスをもらおう。というより、相談しよう。リインは本当にヤスフミと分かり合えているわけだし、色々と教わって・・・。










「まぁ、そういうわけだからはやて、この話は断るわ。別の人間探して。さ、行こう。フェイト」

「うん」





ヤスフミがそう言って、振り返って部屋を出ようとする。私も同じ。だって、これからリイン先生にご教授願わないといけないから。



でも・・・二人して手を掴まれた。





「ちょっと待ってーなっ! なんで自分らいちゃいちゃして話を煙に巻こうとしてるんよっ!? つーか、意味分からへんしっ!!」





掴んだのははやて。そして、なぜか涙目。



あと・・・またそういう風に言うっ! 私もヤスフミもいちゃいちゃなんてしてないよっ!! 何度も何度も何度も言うけど・・・ほ、ほんとにイチャイチャなんてしてないんだからっ! 絶対そういうのじゃないよっ!!





「やかましいっ! 僕けが人よっ!? それ引っ張り出してスバルと良太郎さん尾行しろって言う方がもっと分からんわっ!!」

「そうだよっ! はやて、この間のこと全く懲りてないでしょっ!! 私とヤスフミがどんなに大変だったと思ってるのっ!?」



みんなに誤解されて、その弁解が本当に大変で・・・。あぁもう、思い出しちゃったよ。

なんで状況証拠だけで私達が付き合ってるって話になるのかなっ!? 私・・・その、なりかけでヤスフミに男の子として・・・惹かれてるのは本当で・・・でも、まだ審査中なのっ! 付き合ってるとかそういう段階じゃないよっ!!



「・・・自覚が無いと言うのも」



そう口にしたその人は、机の上に置かれたスプーンに手をかけ、すばやく叩く。すると、スプーンが跳ね上がり、その人の右手の中へ。

そのまま、手にしたスプーンで目の前のチャーハンを食べ始めた。そう、言うまでもないよね。・・・デカ長だよ。



「困りものですね」



デカ長、それはどういう意味でしょうか。そして、あなたはどうしてここでチャーハンを食べてるんですか?

あと、その旗はやめてください。どうして旗に『フェイ×恭はジャスティス。だって、銀魂クロスもそれで・・・ってリクエストも来てたし』って書かれてるんですか。



「いや、そやかて・・・デートの尾行なんかして、また誰か付き合うような事になったら、今度こそ部隊の風紀に関わるやん。でも、アンタとフェイトちゃんならまだオーケーなんよ。ほら、審査も進むし。つーか、戦闘しなきゃ問題ないやろ。・・・ほら、ワケ分かるやんか」

「そうかそうか・・・なら、意味が分からないわボケっ!!」

「なんにしてもアンタは分かる気ないやんかっ!!」





・・・ここは部隊長室。いきなりはやてに呼び出されたら・・・今度はスバルと良太郎さんのデートを尾行するから出かける準備をしろと言うものだった。

なので、私達二人は当然『お断りします』な姿勢。だって、ありえないもの。正直ありえないもの。はやてが言うのはもっとありえないもの。



だって、そのせいでこの間の騒ぎが起きたんだよ? 結局家族会議は三日三晩行われて、あのヒーリング結界を持つヤスフミは万が一に備えてずっと起きっぱなしで・・・。会議が終わった時にはヤスフミ、ヘロヘロで倒れたのに。

それでまたデートを尾行っ!? いくらなんでもおかしいよっ!!




「ただ・・・私からもそれは頼みたいんです」



いつもと変わらない調子でチャーハンを食べつつ言ってきたのは、デカ長。

え、あなたまではやてと同意見なんですかっ!?



「良太郎君の運の悪さは折り紙つき・・・ですからね。スバルさんにご迷惑をおかけしてもアレですし、万が一に備えて遠くから様子を見ていてもらいたいんですよ」

「「な、なるほど・・・」」



でも、それならヤスフミはダメだよ。ヤスフミだって運が悪いし、その上けが人だし戦闘行動は禁止されてるし。



「確かにその通りや。だから、恭文とフェイトちゃん以外のメンバーにも参加してもらう。で・・・」

「恭文くんには戦闘行動以外の事をお願いしたいんです。先ほど八神部隊長からお聞きしましたが、恭文くんはこの状況で非常に役に立つ特技があるとか。もっと言うと・・・」



デカ長がにやりと笑った。なんだろう、その笑いが酷く怖いものに見えたのは。



「シスター・シオンに変身出来る・・・とか」

「「・・・え?」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・なんで、こんなことになったんだろう。





僕、普通に観光予定のはずだったのに・・・デ、デートってなにっ!? あ、だからもしかしてモモタロス達もなんだか暖かいオーラ出してたのかなっ!?





あの、お願いっ! 僕はこれからどうしたらいいのか、誰か教えてー!!










「・・・良太郎さん、どうしました?」



なんてわたわたした思考を遮ったのは、心配するような優しい声。その声は・・・スバルちゃん。

現在僕達は、えっと・・・レールウェイ・・・だっけ? 電車のようなのに乗って、都心に向かってる最中。そう言えば、今までは六課の車だったから、こういう公共施設使ってなかったんだよね。



「ううん、なんでもない。・・・えっと、ちょっと驚いてたの」

「なにがですか?」

「異世界って聞いてたからさ、言葉とかも違うのかなって思ったんだ。でも、スバルちゃんも皆も普通に日本語で話せるし、街とかも見てたら漢字とかも多いし」



それは本当。スバルちゃんと話せるのはともかくとして、レールウェイの行き先の説明に、普通に日本語があったのにビックリしたもの。



「あぁ、それってミッド・・・というより、次元世界で日本文化が多く取り入れられてるから・・・というのが大きいんです。元々日本の人がミッドに住む事が多かったらしくて」

「そうなの?」

「はい。私のご先祖様も、元々は良太郎さんや恭文になのはさん、八神部隊長と同じ地球の出身なんです。・・・向こうの世界では・・・神隠し・・・って言うのかな。
そういう現象でこっちに飛ばされてきた人が、元の世界に帰してもらうまでに日本の文化や言葉使いを教えたり、そのまま住み着いちゃったりして・・・。で、こっちの人達も日本のオリエンタル的な文化が気に入って、多く取り入れるようになったんです」

「それで、今でもミッドや次元世界でも普通に日本語話してたり、お箸使ってたりする人が多い・・・と」

「はい。その影響で、ミッドでも日本の文化物・・・例えば、漫画やアニメやゲームって、意外と手に入りやすいんです。実は、ミッドにあるそういうのって、あんまり面白くないんですよね」



ちょっとだけ苦笑いでそう言ってきたのは、スバルちゃん。・・・なんでも、次元世界の数々を見ても、まぁ、技術的な問題でグラフィックやら絵の表現力は別として、シナリオやシステムと言った部分で日本の文化物は相当高いレベルだとか。

いやいや、確かに日本のそういうのって世界に誇る文化って言うけど・・・それが次元世界レベルっ!? ちょっとおかしくないかなそれっ!!



「でも、本当なんです。私も恭文の家の保管庫で漫画あれこれ読んで、あぁ、これ面白いなーって思って。それまでそういうのに触れてなかったエリオとキャロなんて、もう激ハマリですし」

「・・・そうだよね、特にキャロちゃんなんて、キンタロス達と普通に昔の特撮談義してたし」

「それを仕入れる専用の貿易会社も、局の公認と支援を受けて設立してるとか。あ、これは日本・・・地球の話だけじゃないんです。そういうものの流通はミッドの経済への影響が大きいらしくて」



専用の貿易会社っ!? まってまってっ! 他は知らないけど、確か地球って管理外世界って言う直接的にはミッドと交流していない世界になってるよねっ!! それでそこまでっておかしくないかなっ!!



「あ、でも・・・私は言葉はともかくお箸の使い方下手なんですけど・・・ギン姉や父さんはもうバッチリです」



窓際の席に座り、窓の外で流れていく青い空と町並みをバックにスバルちゃんが明るい笑顔と共に話す。こうしてみると・・・結構可愛い。

でも、そんなに日本文化って浸透してるんだ。ごめん、異世界があった事よりビックリしてるかも。



「でも、スバルちゃんって・・・」

「はい?」

「ご先祖様、日本人だったんだね」

「はい」



ということは、ギンガさんもか。確かに苗字が『ナカジマ』って言うしね。もしかしたら・・・とは思ってた。



「まぁ、私やギン姉は良太郎さんが見ての通り母さん似だから、思いっきりミッド人なんですけどね。もうお父さんは八神部隊長曰く『昔ながらの日本のおやっさん』・・・らしいです」

「そっか。お父さんって今は?」

「えっと、ギン姉の働いている108部隊っていうミッドの部隊の一つで、部隊長してます」



じゃあ、親子揃って局員だったんだ。・・・お父さん、スバルちゃんやギンガさんが局員してて、すごく心配してるかもしれないね。お母さんの事もあるだろうし。

まぁ、ここはいいか。会ったばかりの僕が言うことじゃないもの。



「あの、良太郎さんってご家族は居るんですか?」



そう言って、興味深げに僕の目を覗き込んでスバルちゃんが聞いてきた。なんと言うか、距離感が近い。いや、感とか付かないけど。

多分原因は・・・スバルちゃんが真っ直ぐに目を見て話してくるからだ。絶対に視線を離さないもの。




「うん、姉さんが一人」

「えっと、ご両親は・・・」

「小さい頃に事故で亡くなったんだ。・・・あ、大丈夫だよ? ある程度大きくなるまでは、僕も姉さんもおばあちゃんに面倒見てもらってたから」

「そうだったんですか・・・」










そう言えば、姉さん元気かな。一応メールとかはしてるんだけど・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・こんにちはー! 愛理さーんっ!! 今日もまた美しく・・・」

「あら、尾崎さんいらっしゃい」

「こらこら尾崎君、愛理さんに無駄に近づくんじゃない」

「なに言ってるのさ三浦君、君・・・自分が近づけないからってヤキモチ妬いちゃあいけないね」

「誰がヤキモチだ、誰がっ!! ・・・あ、そう言えば愛理さん」

「はい?」

「良太郎君、最近見かけませんけど・・・どうしたんですか?」





あぁ、そう言えば尾崎さんと三浦さんは知らなかったのね。なんだかとっても疑問顔なんですもの。





「良ちゃんなら、お友達と旅行中です。ちょっと遠出するから、2週間とか3週間とか帰れないとか・・・」

「なるほど・・・。良太郎君、もしかしたら姉離れが始まったのかも知れませんね」

「あぁ、大丈夫ですよ愛理さん。良太郎君が居ない間は、僕があなたを守りますから」

「ふふ、ありがとうございます」










・・・良ちゃんのお友達・・・あの赤い鬼さんや紫の竜の子達よね。まぁ、いいか。悪い子達じゃないもの。





帰ってきたら、いつも通りにコーヒーを淹れてあげようっと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・へぇ、喫茶店の店主を」

「うん、ミルクディッパーってお店なんだ」

「じゃあ、恭文とかとお姉さんは話が合うかも知れませんね」



・・・恭文君と?



「あ、恭文って、なのはさんの実家の喫茶店・・・地球にある海鳴市の翠屋っていうお店なんですけど、そこの店員だったんです。魔導師の仕事が無い時はよく手伝ってたらしくて」

「そうなの? ・・・だから料理とか上手なんだ」

「はい。もうすっごいんですよ? フェイトさんに振り向いて欲しくて、魔導師以外の部分でもそうとう頑張ったらしくて」



・・・恭文君、君・・・やっぱりそこなんだね。いや、分かってた。分かってたけどさ。

あれ、翠屋? あれれ・・・それどっかで聞いたような・・・。



「ね、スバルちゃん」

「はい?」

「そこって、海鳴市にあるんだよね。地球の」

「はい」










・・・・・・・・・・・・そうだ、思い出したっ! 僕そのお店知ってるっ!!





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というわけで、ちょっとこれの試食を頼みたいんです」

「・・・あの、愛理さん。つかぬ事をお聞きしますが・・・この黒い物体はなんでしょうか」

「尾崎君、失礼だぞ? ・・・あ、でも僕も聞きたいかも」

「えっと、シュークリームです。実は最近・・・このお店に行って、自分でも作ってみたくなって」



そう言って、私は二人にある雑誌を見せる。・・・それはいわゆる隠れた名店の紹介をする雑誌。

そして、その本でカラーページの最初を独占しているあるお店がある。それは、ここから少しだけ遠いところにある地方都市・・・海鳴市にある喫茶翠屋というお店。長年そこの人々に愛されている喫茶店。



「あぁ、このお店なら僕も知ってますよ。うちの会社の同僚からも聞いてます。なんでも、昔有名ホテルで腕利きのパティシエをしていた人が店主を勤めていて、特にここのシュークリームが絶品とか」

「そうなんです。私も実際に行って食べてみたんですけど・・・もうとても素敵でした。店主の桃子さんと士郎さん・・・という方も、少しだけお話をさせてもらったんですけど、とても素敵な人で・・・」

「それでコレですか・・・。あの、愛理さん。これって材料は何を使ったんですか? なんか緑やら黄色の繊維が混じってるように見えるんですけど」

「えっと、オリジナリティーを出してみたくて、いつも良ちゃんに作ってる健康ドリンクを混ぜ込んでみたんです。うーん、やっぱり失敗だったかも。オリジナリティー出すぎちゃってますよね」










・・・・・・あれ、尾崎さんも三浦さんも、どうして固まるんですか?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・良太郎さんのお姉さん、翠屋に行った事があるんですかっ!?」

「うん、結構最近の話なんだけどね。新しくなにか売り物になるような物が出来ないかって、研究始めたんだよ。それで・・・」



それで、実際に行って相当気に入ったらしくてすごい勢いで話してくるんだよ。もうほほえましいくらい。でも・・・あの健康シュークリームはやめた方がいいと思う。あれはダメだから。



「なんだか、偶然ってあるんですね・・・」

「僕もビックリだよ。まさかそこがなのはさんの実家だなんて・・・。それに、フェイトさんや部隊長にヴィータさん達も住んでたんでしょ?」

「はい。部隊長もそこの街で生まれてますし、フェイトさんも実家のハラオウン家が今でも海鳴にありますから」



そして、さらにビックリだよ。あそこって、姉さんの話を聞く限りでは穏やかで落ち着いた街って感じだったのに・・・そんな思いっきり次元世界の関係者が居たなんて。

・・・・・・なお、後々恭文君から海鳴について色々と聞く事になり、さらにさらにビックリすることは、言うまでもないと思う。そして思った。地球って・・・おかしいと。



『・・・まもなく、このレールウェイは終点のクラナガン・ターミナルに到着します。繰り返します、まもなく、このレールウェイは』



なんて話してると、もう目的地に到着。なんだか、あっと言う間だったな。スバルちゃんとあれこれ話せて、結構楽しかったかも。



「それじゃあ良太郎さん、簡単にはなっちゃうんですけど、ミッドの観光案内、始めますね」

「うん、スバルちゃん。案内お願いね」

「はいっ!!」









・・・もっと楽しくなると、いいなぁ。というより、なんだか緊張してきた。だって・・・その、実はこういうのは初めてだし。




まぁ、ウラタロスが憑いてる時のを数えるとあれだけど・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・というわけで、あくまでも万が一に備えて・・・という名目で、尾行することになった。





メンバーは、私とギンガ、エリオとヴィヴィオ。そして・・・。










「・・・皆さん、初めまして。私、シオン・ソノバラと申します」





そう微笑みながらペコリとお辞儀するのは、緑色の腰まである長い髪に青い瞳。今日は白いワンピースに緑の薄手の上着を纏った女の子・・・に女装したヤスフミ。そう、シスターじゃないけどシオンがまた私達の前に姿を現した。ヤスフミはこれで尾行メンバーとして参加する。





「おぉ、恭文さん凄いです。本当に女の子です」

「もう、ダメですわよリイン。今の私はシオン・ソノバラ。愛に生き、愛に殉じる情熱的な女なのですから」

「そ、そうなのですか・・・。あ、それは元祖ヒロインとどっちが強いですか?」

「もちろん・・・元祖ヒロインですわ」

「ありがとうですー♪」





なんだか楽しそうなリインとシオン・ソノバラさんは放っておこう。

・・・これは、万が一二人に接触する場合に備えての処置。付き合いの長い私やなのはでも見抜けなかったヤスフミの完璧な変装。スバルや良太郎さんに見抜けるとは思えない。・・・なお、ヤスフミは本当に嫌がったけど、良太郎さんとスバルのためとデカ長に強くお願いされて・・・渋々引き受けた。



でも、ヤスフミやっぱりすごい・・・。女の子の私から見ても、ちゃんとした女の子に見えるもの。言葉遣いもそうだし、声の感じや仕草や歩き方や雰囲気に至るまで、いつもとは全く違う。同じなのは・・・。





≪どうも、私です。今回はちゃんと出番あります≫

「そうですわね。それでは・・・二人で頑張りましょうか」

≪はい、マスター。・・・ではなく、シスター≫





首元に下げた青い宝石だけ。





「・・・いや、アンタ」

「はい、なんでしょう。ランスターさん」

「ら、ランスターさんっ!? いやいや、いつもはティアナって呼んでるじゃないのよっ!!」

≪あー、ティアナさん、気にしないでください。この人、演じ切るタイプなんで、今は思いっきり『シオン・ソノバラ』という役に入りきってるんですよ≫



そう、今のヤスフミはいわゆる演技をした状態。そうして、女性を演じている。



「え、えっと・・・なぎ君?」

「もう、だめですよ? ナカジマ陸曹。今の私はシオン・ソノバラです。その名で呼ばなければ、野上さんや妹さんにバレてしまいます」

「・・・なぎ君がおかしくなってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「ね、アンタお願いだから正気に戻ってっ! ありえないからっ!! これぶっちゃけありえないからっ!!」



食堂でシオンのお披露目をしているけど・・・みんな驚きまくってる。うん、それはそうだよ。だって、私やなのはだってアレがヤスフミの変装だって分かって、本当にビックリしたんだから。



「これはまた・・・凄いですね。もう女装というより演技の域でしょう」



デカ長もちょっと困惑気味。まさかここまでとは思ってなかったらしい。



「・・・あの、なんか私より女らしく見えるんだけど」

「だ、大丈夫ですよハナさん。勝ってますから。私達・・・きっと勝ってますから」

≪もう完全に役に入りきってますね。これなら、ちょっとやそっとじゃ尻尾は出ませんよ≫



でも・・・普通はいくらなんでもここまで演じ切れない。ヤスフミ、役者とかになれるんじゃないのかな?



「・・・フェイトさん、なぎさん実は二重人格とかじゃないですよね?」

「きゅくる・・・」

「う、うん・・・。多分違うと思う。普段はこんなおしとやかな性格は出ないから」

「ちなみに、私は医務官として恭文くんのメンタル面も見てきてるけど、あの子は無駄に自我が強い分、そういう二重人格になる要因は少ないわ」



ちょっとだけ真剣な顔で言ってきたのは、シャマルさん。でも、その顔でカメラを構えるのはやめて欲しい。



「ということで、シオンちゃん。こっち向いてー♪」

「あ、はい。・・・こんな感じでよろしいのでしょうか」

「もうばっちりっ! さぁ、可愛く撮ってあげますからねー!!」



あと、ヤス・・・じゃなくて、シオンも微笑みながらカメラに映ろうとするのはやめてっ! 役に入ってるからっ!? 役に入ってるからそうなるのかなっ!!



「じゃあ、恭文は普通に女装して、それで女性の演技してこれなんですか? ・・・あの、それって凄い特技だと思うんですけど」

「なんつうかよ、俺もアイツの女装は何度か見たけど・・・やっぱ凄いって。普通にヒロより女らしいし」

「よし、サリ。それは私に対しての宣戦布告として受け取っていいのかね? いや、実は自分でもそう思うけど」

「・・・なぁ、シグナム」

「言うな、ヴィータ。確かに色々と負けている感じがするが、言うな」



感心するような顔でエリオやサリさん、ヒロさんも言う。一応話を知っていたヴィータやシグナムも同じ。私やなのはは地上本部襲撃の時にも見てるからまだ慣れてるけど、それでもアレがヤスフミかと思うと、凄いと思ったり呆れたり・・・。



「ふぁー、恭文・・・じゃなくて、シオンさん凄い綺麗」

「ふふ・・・。ヴィヴィオさん、ありがとうございます」

「あー、だめ。そこはいつもどおりヴィヴィオっ! あ、私も呼び捨てにするね」

「はい、では・・・ヴィヴィオ」

「うん、シオン」





尾行のために外行き用の動きやすい服・・・スパッツサイズのジーパンに、黄色と白の縞模様のシャツに、赤の上着を着ているヴィヴィオと笑い合うシオン。普通ならほほえましいけど、中身がヤスフミと思うと多少違和感がある。



そして、それは私達だけじゃない。・・・あの人達もだ。





「・・・なぁ、青坊主」

「あら、いけませんわよ。モモタロスさん。レディに坊主呼ばわりなんて・・・。ちゃんとシオンと名前でお呼びになってください」

「はぁっ!? まてまて、お前頭おかしくなったんじゃねぇのかっ! なんでんな格好してるからってそんな話し方になるんだよっ!!」

「ふむ・・・。少年にはイマジンでも憑いているのか?」



ジークさんが興味深くシオンを見る。それに微笑で返す・・・けど、あの・・・ヤスフミ、本当に変装嫌だったんだよね? どうもそう見えないんだけど。



「・・・そうだよな、これはそう見えてもおかしくねぇよな。つーか、おかしいだろこれはよ」

「た、確かにそうだな。あ、なんなら侑斗も」

「やらねぇよっ! それでなんでそうなるっ!!」

「いや、うらやましいのかなって・・・」

「うらやましいわけあるかぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・侑斗さんがデネブさんにヘッドロックし始めたけど、ここはいい。とにかく、問題は・・・シオン・ソノバラ。

そう、チーム・デンライナーの方々も、ヤスフミの変貌に驚いている。ハナさんとナオミさんに至っては、あまりの変わり様に呆然として固まっているから。



「まぁ・・・アレやな、恭文は演技派っちゅうことやな。あと桃の字、ちゃんと名前で呼ばんと、嬢ちゃんや良太郎に気づかれるで?」

「そうだよー! あー、でもでも、恭文・・・じゃなくて、シオンでいいのかな?」

「はい、そうお呼びください。リュウタロスさん」

「だめーっ! 僕もヴィヴィオと同じように呼び捨てっ!!」

「では・・・リュウタ・・・ですね」



・・・うん、やっぱり違和感がある。というより・・・なのはがさっきから落ち込んでるのがすごく気になるんだけど。



「・・・負けてる、私すごく負けてる。スタイルも負けてるし可愛さも負けてるし。うー、悔しいー! なんで私より女の子っぽく見えるのっ!?」

「それは当然です。だって、高町教導官は魔王というノンセクシャルな生命体ですもの。そんな生命体が女性の可愛さに勝つには、10000年早いですわ」

「ちょっとそれひどいよっ!!」



・・・なのはに大していじめっ子なのは変わらないね。うん、全く変わってない。



「なぁ、そういや亀はどうしたんだ?」

「あぁ、それならちょこっと外で待機してもらってたんですよ。ちと、シオン・ソノバラの性能を試そうかと。・・・ウラタロスさーん、そろそろ入ってきてえぇですよー!!」



はやてがそう言うと、食堂の入り口からウラタロスさんがいつもの調子で歩いてきた。・・・で、すぐにある一点を見て、そこに歩み寄る。



「・・・初めまして、素敵なお嬢さん。君・・・もしかしてここの部隊の子?」

「えぇ、そうなりますわね。初めまして、磯の香りのするお方。私、ちょっと諸事情でお休みしてましたの」

「なるほど・・・。ちなみにその諸事情ってなにかな? もしよければ・・・聞かせて欲しいな。恋の悩みなら、きっと相談に乗れると思うから」



ウラタロスさん、シオンの周りをゆっくりと歩く。右手の指を弄りながら。



「そうですわね・・・。実は、失恋してしまいましたの。・・・不思議ですわね、想っている間はとても幸せで世界が色づいていたのに、その人を抜いただけで世界がくすんで灰色になりますの」

「なるほど・・・それは辛いですね。でも、特効薬がありますよ」



あ、あの・・・シオン・・・というか、ヤスフミ?



「例えば?」

「新しい恋・・・なんてどうかな」

「でも、私の周りはいい殿方が居ないのですよ」

「嫌だなぁ、僕が・・・居るじゃないですか」



そうして、ウラタロスさんがシオンの手を取る。そのまま抱き寄せ、頬を撫でる。



「あら、意外と大胆ですのね。いつもこのようなことを?」

「いえ、あなただけです。・・・きっとこれは運命の出会いですから、逃がしたくないんですよね。狙った獲物は・・・釣り上げる主義なんで」



そのまま身を翻し、まるでダンスを踊るように回る。シオンもそのステップに合わせる。



「恋愛には時間が必要と思いますわよ?」

「でも、それすらも凌駕する衝撃も存在すると思うんですよね」

「例えば・・・今?」

「そうです。こうやって出会えた事は、衝撃だと思うんですよ」

「確かにそうですわね。アナタのような個性的な方は、中々居ませんもの」



と言いながらなぜか踊り続けて・・・いや、あの・・・なにしてるんですか、あなた達。



「あの・・・ちょっと、亀? もうやめときなさい」

「あ、大丈夫。僕はティアナちゃん一筋だから」



一筋ならナンパなんてしませんよっ! そして踊りませんよっ!! 一体なに言ってるんですかっ!?



「うん、ありがと。でもね・・・アンタ、それ以上ソイツをナンパしたら・・・心に拭えない傷が出来るわよ?」

「・・・あ、もしかしてティアナちゃんヤキモチ妬いてくれてるのかな。いや、だとしたらうれしいなぁ。そうだよね、僕達・・・あの激戦を一緒に潜り抜けた仲だもんね。じゃあティアナちゃん、早速今夜僕と夜空の星でも・・・釣りに行かない?」



バシッ!!



「あのティアナちゃん、いきなり殴るって酷くないかなっ!?」

「あらあら、ランスターさんはこの磯の香りのするお方がお好きなようですね。だからヤキモチ妬くばかりかビンタまで・・・。磯の香りのするお方、ダメですわよ。こんな素敵なお嬢さんがいらっしゃるのに余所見なんて」

「確かにそうですね。いや、僕が恋の教授を受けるなんて・・・参ったなぁ」



そんな話をしながら笑い合う二人。そしてその様子を苦い顔で見るのは・・・私達。



「・・・ね、アンタ達マジで私に撃たれたいの? うん、今なら二人揃って叩き潰せそうな気がするわ」

「ティアナ、抑えろ。確かにこの二人が悪いが抑えろ・・・」



シグナム、ティアナをしっかり押さえててください。多分、離したら速攻で撃つと思います。だって、目が怖いもの。



「あー、つーかよ亀。お前・・・バカだろ」

「なに先輩、お願いだから邪魔しないで欲しいんだけど。いくら自分がもてないからって、そういうのは見苦しいよ?」

「うるせぇこの野郎っ! つーか、お前よく見ろっ!! その姉ちゃんは青坊主だぞっ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」



そうして、ウラタロスさんがじーっとシオンを見る。シオンはニッコリと微笑む。



「・・・・・・恭文?」

「違いますわ、今の私はシオン・ソノバラ。愛に生きる女ですわ」

「いや、そういうことじゃなくてね? ・・・そ、そう言えば・・・声がこう・・・似てるような。というより顔立ちも・・・というか、胸元にかけてる宝石って・・・アルトアイゼンっ!?」

≪・・・ようやく気づきましたか。まぁ、言うまでも無いと思いますけど・・・あなた、男をナンパしてたんですよ≫

「・・・きゅう」





・・・・・・バタン。





「これ、お供その2。そのようなところで寝るで無い。これ、起きろ」

「鳥さん、これ寝たんじゃないからねっ!? あぁぁぁぁぁぁっ! 亀ちゃんっ!! 大丈夫っ!? しっかりしてー!!」

「・・・あかん、これは手遅れや。もう磯臭くて叶わん」

「あぁ、そうだな。おかげで風呂入ったらダシが・・・ってバカ野郎っ! それは元からだろうがっ!! おい、亀っ! しっかりしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」










・・・なお、これによりウラタロスさんは完全に沈んだ。やっぱり、男の子をナンパしたと言うのが辛かったらしい。





結局、ゴタゴタしたけどなんとか無事に出立。私達は良太郎さんを追いかけることになった。そして、今は首都。





でも・・・あの・・・その・・・。





なんで憑いて来るんですかっ!?










「いやぁ、亀の字はダメやし、桃の字は亀の字に付いてるやろ? ジークはアレやから目立ってまうし・・・ここは俺が行かんとなぁ」

「というか・・・あの、これって」

「おう、すまんな。さすがに恭文やアンタにギンガの体借りるわけにはいかんから、こうするしかないんや。坊主には悪い思うけど、しばらく使わせてもらうで」



・・・外見はエリオだけど、声が違う。赤い髪が背中の中ほどまで伸び、一まとめに結ばれている。そして、瞳が金色。

そう、エリオにキンタロスさんが憑いてる。その、確かに戦闘になった時のために居た方が助かるけど、これは・・・。



「ねね、ヴィヴィオ。僕が居ても嫌じゃない?」

【大丈夫だよ。というより、ヤスフミにウラタロスさんが憑いたって聞いてから、ずっとこれやってみたかったんだー! もうね、どんどん暴れてもらって構わないよっ!!】

「ならよかったー。あ、それでも怪我とかさせないようにするからね。怪我しちゃったら、なのはお姉ちゃんもフェイトお姉ちゃんも、ヴィヴィオのこと心配しちゃうし」

【うん】



なお、ヴィヴィオも憑いてる。・・・リュウタロスさんが。瞳は紫、髪の先にウェーブがかかり、長い紫のメッシュと灰色の帽子を被ってる。というか、ヴィヴィオまで・・・。

なお、どういうわけかエリオはキンタロスさんに完全に乗っ取られてる形なのに、ヴィヴィオはそうじゃない。普通にリュウタロスさんと話している・・・どうして?



「・・・あの、なぎ・・・じゃなくて、シオン」

「なんでしょう、ナカジマ陸曹」

「あぁ、慣れないっ! すっごく慣れないっ!! お願いだから変装やめてくれないかなっ!?」

「そうはいきませんわ。この中であの二人に接触出来るのは私だけですもの」



ま、まぁ・・・それはそうなんだけど。でも、私達皆凄く戸惑ってるから。ギンガなんて頭さっきからかきむしってるし。



「とにかく、フェイト執務官」

「・・・フェイト」

「え?」

「女装してても、階級呼びはだめ。ちゃんとフェイトって呼び捨て。・・・いい?」



私がそう言うと、シオンは優しく微笑んで・・・頷いた。



「とにかく、最悪の場合は私が出て野上さんとスバルさんに接触致しますわ。皆さんはその隙に下がってください。まず、二人の行き先は・・・」

「ミッドの繁華街だね。それで、普段の町並みを改めて見てもらう。・・・なんか、観光って言うのとはちょっと違うね」

「フェイト、それは違いますわ。・・・普段のそこでの暮らしぶりや町並みを見る。これも立派な異文化交流です。それに・・・あくまでもそれは序の口ですし」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・でも、ミッドの繁華街ってすごく・・・人が多いね」

「今日は休日ですから、そういうのもあるんです」



さて、まずは・・・あ、そうだっ! せっかくだし良太郎さんにも・・・うふふー♪



「じゃあ、良太郎さん。最初の目的地の前に、ちょっと寄り道しますね」

「あ、うん」



というわけで・・・ぎゅっと。



「え? あの・・・スバルちゃん」

「はい?」

「どうして手・・・繋ぐの?」

「もちろん、はぐれないようにするためです。あと、デートなんですから、当然ですっ!!」



というわけで・・・行ってみよー!!



「え、あの・・・えぇぇぇぇぇぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あぁっ! 熊ちゃん熊ちゃんっ!! いきなり良太郎とスバルちゃん手繋いでるよっ!?」

「こりゃまた・・・嬢ちゃん積極的やな」

【というかというか、ヴィヴィオ的にはベストカップルに見えるよ?】

「ふむ・・・。少々おとなしい感じの良太郎さんに、表面的には積極的で引っ張っていくタイプのスバルさん。確かに相性はいいですわね。しかも、スバルさんは実はちょこっとだけ引っ込み思案なところもある。
そこを上手く見せる事で、いわゆるギャップ萌え現象が期待できますわ」



・・・シオン・・・というか、ヤスフミ。あのね、なんというか・・・普通にすごく冷静な分析をするのはやめて欲しい。いや、この状況が既におかしいから何でもありになりがちなのは分かるんだけど。



「や、やっぱり・・・なぎ君がおかしくなってる・・・」

「ダメだよギンガお姉ちゃん、今はシオンなんだから」

「いや、リュウタロスさん。無理ないですから。私だってかなり戸惑ってるのに・・・」

≪大丈夫です、事が終わった後に頭抱えてのた打ち回りますから。あんまりに入り込むんで、事後に全部かかってくるんですよ≫



な、なるほど・・・。それはキツイかも。



「でも、アレっていい感じ・・・なの?」

「リュウタ、間違いなくいい感じです。男女のデートで手を繋ぐというのは、ある意味一つ目の関門なんです」



右の人差し指を上にぴんと立てて、シオンが言葉を続ける。



「互いに触れ合うコミュニケーションというのは、100の言葉よりも効果を持ちます。ただ、男から手を繋ぐというのは中々にやり辛い部分があるのです」

「え、どうして? 普通に手を出せばいいだけじゃん」

「そうはいきません。もし、相手が自分の事を手を繋ぎたい人間と思っていなかった場合・・・どうします?」

「なるほどな、距離感に差があることも考えると、文字通り中々手を出せない・・・っちゅうわけやな。女っちゅうんは、これが結構厳しいからなぁ」

「そうです、そこを一度でも間違えた場合、女性からの好感度はだだ下がりです。男はどうしてもそういうものに不得手ですし、慣れていないと、そこは分かりにくいです」



そ、そういうものなんだ。でも・・・私はヤスフミとそういうコミュニケーション、嫌いじゃないけど。普通に手を繋げるし、ハグも・・・恥ずかしいけど・・・好き。

互いの体温と体の柔らかさが伝わってきて・・・言葉がなくてもなんでも分かり合えるような感じがする。だから、よくしてたっけ。あの、ハグじゃないよ? 手をぎゅってして、それで目を見ながら話すの。ヤスフミ、そうすると隠してることがあってもちゃんと話してくれるから。



「ですが・・・今回は女性から手を出しました。これは男性的にも助かってるはずですよ? 少なくとも『手を繋ぐ』というコミュニケーションは、女性のほうから許されているわけですから」

【・・・ね、シオン。それって恭文のフェイトママとの実体験? 妙に話がリアルなんだけど】

「・・・実を言うと」



少しだけ、ヤスフミに戻ってそう口にした。・・・そうだったんだ。



「なるほどなぁ・・・。伊達に8年の片思いしてたっちゅうわけやないってことやな」

「恭文、なんだかすっごく頑張ってたんだね。・・・ねぇ、泣いていい?」

「だめです。あと、私はシオン・ソノバラ。愛に生き、愛に殉じる情熱の女ですから。・・・ほら、急がないと見失ってしまいますわよ」

「なぎ君・・・。お願いだからそのキャラ止めて。私、すごい違和感が消えないの」



戸惑うギンガをなだめつつ、私達は少し急ぎ足で二人の後を追いかける。・・・うぅ、違和感が消えないのは私もだよ。どうして私、人のデートを尾行してるんだろ。

でも、ヤスフミ・・・緊張してたんだ。そっか・・・。あ、それなら・・・少しだけ。



”ね、ヤスフミ。・・・あのね、ちゃんとヤスフミとして話してね? 念話だけは、役は忘れて欲しいな”

”・・・なに?”



うん、ちゃんとヤスフミの声だ。少し、安心した。



”今は喋ってないから。でも・・・ごめん、話し出して両立は無理・・・”

”な、なるほど・・・”



なんだか色々あるんだね、まぁ・・・しかたないのか。ここまで完璧にやるんだから。



”じゃあ、簡潔に。・・・私は、好きだよ”

”はいっ!?”

”あの、審査終了とかじゃなくて・・・ヤスフミと手を繋いだり・・・ハグしたりするの、好き。そういうコミュニケーションしてると、分かり合える感じがするし、幸せだから。だから、その・・・遠慮とか、しなくていいよ?”

”・・・あの、フェイト。いきなり過ぎ”



そ、それはそう思うけど・・・いいのっ! 私が言いたかったんだからっ!!



”でも・・・ありがと。あの、僕も同じだよ? フェイトと手を繋いだり、ハグしたり・・・するの、好き”

”・・・うん”










・・・気持ち、少しでも伝わったのかな。それなら、嬉しい。というか、すごく嬉しい。




だって、ヤスフミも・・・私とそういうコミュニケーションするの好きって言ってくれたから。・・・べ、別にいちゃいちゃとかじゃないよっ! これはその・・・審査なんだからっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ほらほら良太郎さんっ! しっかりー!!」

「そ、そんなこと言われてもー!!」



現在、寄り道の寄り道で二人でゲームしてたりします。まぁ、スバルちゃんに付き合う形でちょこっとだけゲーセンに寄って・・・でも、結構楽しいかも・・・って、これ大変だよー! なんでDD○とかがミッドにあるのっ!?



「らららーらららーららら♪ るるるーるるるるーるるー♪」

「スバルちゃん・・・上手だね」



ステップを踏む。画面の中に落ちてくる矢印に合わせて。結構激しい曲で、難易度も高いのに・・・。隣の僕と違ってすごく上手。



「前にティアとやって、ランキング塗り替えとかしましたから」



へ? あ、そう言えばランキングのトップの名前がソレっぽい感じ・・・。



「でも、良太郎さんは、こういうのだめなんですね。リュウタロスさんがアレだから凄いと思ったんですけど」

「リュウタロスはリュウタロスだから・・・」










あはは・・・基本的に僕、みんなにいつも助けられてばっかりだしね。・・・よし、もっと頑張ろう。そうじゃないとだめだって、これ。





とにかく、次は・・・シューティングゲーム。でもこれはなんとかなる。だって、しっかり狙って撃てばいいんだから。あんまり速いのはだめ・・・って、あのスバルちゃん?










「はい?」

「・・・一発も当たってないよね」

「あはは・・・。なんだか、私はこういうのダメで。うーん、リボルバーシュートは当たるのになぁ」










なんて言って二人で楽しく遊んで・・・。で、次は定番と言えば定番のUFOキャッチャー。





でもこれ・・・楽しいけど・・・今のところ観光じゃないような・・・。あ、取れた。










「はい、スバルちゃん」

「あぁ、良太郎さんありがとうございますっ!!」



そう言って、スバルちゃんが目つきの悪いウサギのぬいぐるみを抱く。瞳が青で、どこかふてぶてしい感じ。

でも、スバルちゃんはそんなこともなくにっこり笑顔。・・・だから、顔近いから。そんな真っ直ぐ見つめなくていいから。



「これ、大事にしますね。・・・って、ごめんなさい」

「え?」

「なんだか、私が一番楽しんでて・・・」



そう言えば・・・。ま、いいか。



「いいよ、そんなの。僕も楽しいから」

「本当ですか? なら・・・嬉しいです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・とにかく、二人でゲーセンで少し遊んでから・・・ある一角に来た。そこは海沿いの遊歩道みたいな感じ。ベンチがあって・・・なんだか、すごく綺麗。





そうして、そこの近くにあるお店で・・・あるものを買う。










「・・・あぁ、ここのアイスはやっぱり見た目から素敵だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そう、アイス。そしてスバルちゃんは・・・すごい積んでる。僕、アイスを5個以上積んでる人、初めてみたよ。

僕だって2個だよ? それ以上は怖くて積めないって。



「スバルちゃん・・・アイス、好きなんだね」

「好き好き大好きーです」



うん、知ってたよ。前に恭文君が作った時も、今みたいなハート目で幸せそうに食べてたんだから。

とにかく、二人で遊歩道のベンチに座って、アイスを一口。・・・あ、本当に美味しい。恭文君のアイスとはまた違うけどこれは中々。



「ふぁ・・・おいひい」



なんて言うかさ、これも初めて見たよ。詰まれたアイス一個を一口でパクリと食べちゃう人。でも、おいしそう。口から冷たい息を吐きながら幸せそうに食べてる。

なんだか微笑ましくて、つい笑顔で見てしまう。



「良太郎さん、どうですか? ここのアイス」

「あ、うん。美味しいよ。でも・・・」



アイスを食べながら、空を見上げる。見えるのは・・・昼間でもくっきりと見える二つの月。



「まさか、異世界でこんな風にアイスを食べる事になるとは思わなかった」

「あはは・・・。それはそうですよね。地球ではミッドの事を知ってる人なんて、少数でしょうし」



なんだか、みんなと会ってから色んな事が起こるなぁ。本当に沢山。でも・・・全部が大事な思い出。



「はふ・・・。あぁ、チョコミントおいひい」



スバルちゃんは、また一口でパクリと。そして、口から冷たい息をさっきと同じように吐きながらアイスを堪能している。多分スバルちゃんは今、世界中で一番アイスの美味しさを満喫していると思う。

そうして、二人でアイスをしっかり食べてから・・・ゆっくりと話は始まった。



「で、一応ミッドの繁華街の本当に中心部はあんな感じなんですけど・・・どうでした?」

「うーん、まず人が多くてびっくりした」

「まぁ、繁華街ですから」

「あと・・・」



そうだ、あと・・・。



「まぁ、これは聞き込みしてた時に・・・僕だけじゃなくて、侑斗も思ったらしいんだけど、同じだなって」

「同じ?」

「人が」



当然と言えば当然だけど、沢山人が居て、笑ってて、たまに泣いてる人とかも居て。だけど・・・ちゃんとそこに居て。



「・・・そうですね、きっと変わらないです。ミッドも、地球も。そこに住んでる人が居て、みんな一生懸命生きてて。それで、良太郎さんが守ってくれた」

「そんなことないよ。僕、大したことしてないし」



モモタロス達に恭文君やアルトアイゼン、六課の人達が力を貸してくれなかったら、きっとネガタロス達は止められなかったもの。



「そんなことありますよ。・・・私、ずっと良太郎さんって凄いなって思ってたんです」

「え?」

「だって、ミッドがそうなっても全く関係なかったのに・・・」



あはは・・・。なんだかそれよく言われるなぁ。そんなに不思議かな? 僕はただやらなきゃいけないと思うから来ただけなのに。



「八神部隊長とか、ティアとか、電王を知らない組は不思議だったみたいですよ? 局員とかでもないし、話を聞くと今現在進行形で戦ってるわけでもないのにどうしてーって」

「・・・それ、リンディさんにも最初の時に言われた。どうして管理局ならなんとかしてくれるだろうと考えられないのかって」



関係ないなんて思えなかった。そして、今もそれは変わらない。ううん、変わったかな。だって、本当に関係ないで済ませることが出来なくなったんだから。

繋がった時間も記憶も、消えない。もう無かった頃になんて、絶対に戻らない。だから・・・多分また来ると思う。もしこの世界になにかあって、それに僕やモモタロス達の力が必要なら、きっと。



「それにそれに、あの時・・・私、嬉しかったんです」

「・・・えっと、もしかして」



僕がそう言うと、スバルちゃんは頷いた。そう、あの時・・・お母さんのことでちょっと有った時。



「私、すごいわがまま言ってたのに、良太郎さん・・・それ全部認めてくれて」

「・・・まぁ、僕も・・・色々あって、スバルちゃんと同じ感じになったりもしたからさ。それに、会ったばかりだし、あんま偉そうな事も言えなかっただけだし」

「それでも、嬉しかったです。というか、あの・・・あの時はすみません。私、すごい大泣きしちゃって」

「ううん、大丈夫だから」



なんか・・・変だな。上手く会話出来てる感じがしないや。スバルちゃんも同じなのか、どこか居心地悪そうに・・・もじもじしてる。

・・・なんだろ、これ。いや、スバルちゃんと居るのが嫌とかじゃない。そこは絶対。でも・・・ちょっと不思議な空気。



「ね、スバルちゃん。話は変わるけど・・・スバルちゃんってどうして局員に? やっぱり、ミッドの平和を守りたいとか・・・」

「・・・そう言えば話してなかったですね。えっと、私・・・ティアもそうなんですけど、六課へはスカウトされて来たんです」





・・・なんでも、六課が関わった例の事件に対する対処のために、八神部隊長やフェイトさんはスバルちゃんみたいな優秀な魔導師をスカウトして、あの部隊を作ったらしい。



それで、スバルちゃんの元々やりたいことと、今の状況とは少しだけ違うとか。





「私のやりたいこと、例えば・・・恭文みたいに戦ってどうこう・・・とか、フェイトさんみたいに犯罪の捜査をして、それで事件を解決して・・・とか、そういうのとはまた違うんです」

「じゃあ、スバルちゃんのやりたいことってなにかな」

「私、レスキュー志望なんです。六課に入る前は、ティアと一緒に別の部隊の、災害担当の部署に居ました。それで六課が解散したら、特別救助隊・・・あ、災害専門の対策部隊なんですけど、そこに行くことも決まってて・・・」



えっと、レスキューって言うと・・・事故や災害で取り残された人や怪我した人を助ける・・・で大丈夫かな。ざっとした印象しかないんだけど。



「そうです。地球と違うのは、魔導師の雇用もあるってことなんです。魔導師は普通の人よりも防御力も攻撃力も機動力もありますから。バリアジャケットを着れば、大抵の状況は対応出来るんです」



そう言えば、バリアジャケットって温度変化にも対応出来るとかってヘイハチさんが言ってたような・・・。



「なら、そういう部分を活用して・・・ってこと? なんだか、スバルちゃんすごいね」

「あの、そんなことないです。私より凄い人、沢山いますから」



でも、すごいと思う。やろうと思って出来ることじゃないもの。・・・あ、そうだ。ならちょっと聞いてみようっと。



「でも、どうしてレスキューに?」

「・・・私、4年前に凄く大きい火災に巻き込まれて・・・死にかけたんです。でも、その時たまたま近くで休暇を過ごしていたなのはさんが助けてくれて」

「それで・・・自分も?」

「はい。私の力で・・・消えかけている命を救えたら・・・って考えて。私、人より体力もあるし、頑丈ですから。あと、なのはさんに憧れて、あんな風に強くなりたいと思ってて・・・」



空を見上げて・・・スバルちゃんが言う。でも、表情が全然違う。



「それがスバルちゃんの夢・・・なのかな」

「はい。・・・私のやらなきゃいけないと、やりたいと思うことです」



さっきまでの年相応の明るい印象とは違う、どこか大人びた表情。この子、こんな顔が出来るんだね。



「なんだか、ダメだな」

「え?」

「僕、スバルちゃんより年上なのに・・・そういうの、あんま思いつかないや」



みんなが居て、電王として戦って、時間を守って・・・。でも、それからどうしようか。

どうしたら・・・僕の時間は、あの時出会った新しい時間に、繋がっていくのかな。



「新しい・・・時間?」

「えっと、実は・・・前に僕もモモタロス達も、僕の孫に会った事があるんだ」

「・・・・・ま、孫っ!? え、でも良太郎さんって・・・結婚してるんですかっ!!」

「あぁ、違う違う。お願いだから落ち着いて? ・・・少し前に、ちょっと事件に巻き込まれてね。その時にデカ長が助っ人として、未来の時間から僕の孫・・・あ、幸太郎って言うんだけど、その子を連れてきたんだ」



僕がそう言うと、スバルちゃんは事情が飲み込めたらしくて落ち着き始めた。・・・そう、僕は出会った。あんまり話したりとかは出来なかったけど、僕から続く新しい時間に。その中で生きている子に。



「じゃあ、今現実に存在してる子じゃなくて、本当に未来の良太郎さんの孫なんですね」

「そうだよ。でもさ、どうすればそこに繋がっていくのか、今ひとつわからなくて・・・。いや、そもそも孫って言ってもあんまり実感が無いんだけど」

「あはは・・・。確かにそうですね。私も今目の前に私の孫だーっとか言って誰か連れてこられても、実感持てないかも」



まぁ、結婚とかしてれば別かも知れない。でも、僕はそういうわけでもなんでもないし。



「なら、これから見つけていけばいいんですよ。良太郎さんのやりたいこと・・・夢を。その幸太郎って子に繋がる時間への道筋を。探せば、きっと見つかりますから」

「そう思う?」

「はい」



スバルちゃんは、僕を真っ直ぐに見て言い切った。緑色の瞳の中に僕の顔が見えるくらいに真っ直ぐ。



「探して、手を伸ばして・・・見つからない夢なんて、きっと無いです。私にティアや皆そうですし、あと恭文だって、迷って・・・悩んで・・・それで見つけましたから。自分のやりたい事は、フェイトさんの側に居て、何があってもフェイトさんの笑顔と今を守ることだって」

「・・・そうなの?」

「はい。あ、これ絶対に恭文に内緒にしてくださいね? 前に夢とか無いのーって聞いたら・・・」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フェイトさんを守る事・・・か。・・・それが、恭文の夢?」

「に・・・なるのかな」

「うーん、これは予想外だったなぁ。役職とかそういうのじゃないんだもん」

「まぁ、スバルのレスキュー隊員とかなのはの教導官とか、ティアナの執務官に比べると立派じゃないかも知れないね」

「あ・・・ごめん」

「あー、分かってるから謝らなくていいって。でもね、やっぱり・・・フェイトが笑ってないのも、泣いてるのも・・・居なくなるのも、嫌だから。
それで僕に出来る事はなんだろうって考えたら、答えがコレしかなかった。僕は弱いけど、ただ・・・それでも、フェイトの側に居て、守りたい。だから、そのために戦う・・・ってさ」

「そっか。・・・あのね、恭文」

「なに?」

「それは、恭文もなんだよ? 恭文がそのために笑顔じゃなかったら、きっとフェイトさんは気にする。フェイトさん、優しいもの。だから恭文は自分の笑顔も、今も・・・守らないとだめなんだから。あ、それは私もだよ。大事な友達が笑顔じゃないのは、絶対嫌だよ」

「・・・分かってるよ、スバル・・・ありがと」

「・・・うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ということがありまして」



・・・いや、それ話すってダメだと思うんだけど・・・でも、いいか。



「その時の恭文の顔、もう見せてあげたいですよ。嬉しそうで、幸せそうで・・・。それで、私もいいなぁと。形は違うけど、好きな人を守るってすごく素敵な夢だと思うんです」

「・・・そうだね、僕もそう思うよ」



だって・・・ねぇ、あれを見てたらもう色々すっ飛ばしてるから。見てたら分かるよ。



「あ、それと・・・最近もう一つ、夢が増えたんです」

「なに?」

「あの、笑わないで・・・くださいね」



僕はまた表情を変えて、少し恥ずかしげに言ってきたスバルちゃんの言葉に、僕はうなづく。



「笑わないよ。だって、それはスバルちゃんの夢なんでしょ? だったら、どんな話でも笑ったりなんてしないよ」

「・・・ありがとうございます。だったら、あの・・・勇気出します」



スバルちゃんが深呼吸する。1回・・・2回・・・3回。そして・・・口にした。



「恋・・・してみたいんです」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・え? いや、あの・・・えぇっ!?





近くの木に隠れて様子を伺ってたら、スバルからとんでもない爆弾が投げられた。こ・・・恋するのが夢っ!?










「スバル・・・すっかり大人になって。お姉ちゃん、すっごく嬉しいよ」

「ギンガ、泣かないで。お願いだから泣くのはやめてっ!!」

「いや、大人になるんはあの嬢ちゃんだけやない、良太郎もや。・・・こりゃ、泣けるでっ!!」

【うわぁ・・・良太郎さん、スバルさん釣り上げちゃったのかな】



ヴィヴィオ、その言い方はやめようねっ! なのはママきっと泣いちゃうからっ!!

でも・・・こ、恋っ!? 恋って・・・あの恋だよねっ!!



「というかというか、あのこれって・・・良太郎、スバルちゃんに告白されてるのっ!?」

「確かに考えようによっては・・・。だって、スバルさんは自分達で考えた観光ルート全く無視で、良太郎さんと二人で楽しく遊ぶ方向になっていますし」

≪もう観光じゃなくて完全にデートじゃないですかこれ。あぁ、だからとやたら乗り気だったんですね、あの人≫










あぁ、これどうなるのっ!? というより、スバルごめんっ! 覗き見するような真似して本当にごめんっ!!





あとでヤスフミに教えてもらった特製アイス作ってあげるから、許してーーー!!










「とりあえず、スバルさんはあとでぶっ潰しますわ。あれほど秘密と言ったのに・・・」

「ヤスフ・・・じゃなくて、シオン落ち着いてっ! お願いだから拳を握り締めないでっ!!」





















(インタールードデイズ03へ続く)




















『次回予告・・・ですわ』





「えっと、あの・・・それは」

「ダメ・・・ですか?」



「ほら、お前どけっ!!」

「どかないよ。・・・悪いけど、この子に手出しはさせない」



「お前達、KYだからぶっとばしていいよね?」

【答えは聞いてないよっ!!】





イントリュードデイズ03 『駆け抜けるライナー・タイム』





「通りすがりの美少女ですわ。・・・覚えておきなさい」




















あとがき



古鉄≪さて、色んな意味で反響が恐ろしい追加エピソード第2話、いかがだったでしょうか。・・・すみません、1話で纏められませんでした。そのせいで予告と内容が若干変わりました。
とにかく、次回に続くな良太郎さんとスバルさんのデート話のあとがきです。お相手は私、古き鉄・アルトアイゼンと・・・≫

恭文「・・・すみません、テンションだだ下がりの僕です。あと、ロケが難航してる原因は僕でした。僕がJS事件話とかの撮影が忙しくて、ロケに参加出来ないからでした。なので、外に出てるシーンの大半は実はVFXによる合成です」

古鉄≪いやぁ、特殊技術ってすばらしいですね。あたかもそこに居るように見えましたから≫





(VFXは素晴らしいという話をしたかったらしい)





古鉄≪さて、今回はまたまた登場のシスター・シオンですよ。あ、話がさっぱりな方は『とある魔導師と古き鉄の戦い』をお読みください。ミッション04で納得していただけると思います≫

恭文「無駄に好評だったからね。今でもそれ関連で拍手来るもん。もう一度登場して欲しいとか、別人で僕と一緒になのは弄ったら面白そう・・・とか」

古鉄≪当の本人よりも人気なんですよ。とまとの妹キャラはシスター・シオンでいいんじゃないかというのまで来るほどに≫

恭文「だから妹じゃないよっ! そしてみんな忘れてるかも知れないけど、アレ僕だからっ!!」

古鉄≪しかし・・・話は変わりますが、良太郎さんとスバルさんも当初はここまでプッシュな感じになる予定は無かったんですけどね≫





(青いウサギ、台本をぱらぱらめくりつつちょっと感慨深げに言う。そしてため息。色々思うところがあるらしい)





恭文「まぁ、色々ここはボカす感じがいいだろうから、そんな僕とフェイトみたいにむちゃくちゃガチにはやらないけどね。こう、淡い感じで」

古鉄≪もしかしたら・・・的な感じですね。・・・あ、そう言えばスバルさんとのIFエンド要望が来てるんですよ。物語の最初の方だとあなたとフラグ立ちまくってたのに、最近は良太郎さんとばかり仲がいいからヤキモチ妬いてる・・・とか≫

恭文「・・・うん、来てたね。でもさ、ここでその話止めない? またあんな昼メロプロット出されても困るから」

古鉄≪そんなに嫌でした? ギンガさんとの三角関係≫

恭文「嫌に決まってるでしょうがっ! どんだけ僕を追い込みたいんだよっ!!」





(いや、追い込まないとつまんないし)





恭文「はいはいナレーションうるさいよっ!? ・・・とにかくさ、ティアナのプロットもそうだけど、もうちょい明るくしようって。いくらなんでも暗いから。こういう方向性立てて、結局筆が止まるんじゃ意味ないでしょうが」

古鉄≪まぁ、それもそうですね。緩さも無いと辛いでしょ。・・・さて、というわけで、そろそろいきます?≫

恭文「あ、そうだね。・・・では、みなさんおまたせしましたっ! 今回からあとがきの中でやっちゃいますっ!!
とまとの劇場版第2段っ! 『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間 Newタイム』の新要素紹介コーナーっ!!」





(どこからか鳴り響くファンファーレ。そして、青い古き鉄コンビ、なんだか楽しそう)





古鉄≪さて、ここでは今度の劇場版の新要素紹介を行いますっ! まず・・・この方々ですっ!!≫










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・変身」



腰につけたベルトにパスを通す。ベルトは金色。俺の・・・未来の電王のベルト。



≪Strike Form≫



そうして、ベルトから光がはじける。細かい鏡のようにも見える光が。はじけた光が俺の身を包み、青を基調としたプラットフォームのスーツになる。そして、その周りに青いアーマーが出てくる。それが一瞬で身に付けられる。

胸には線路のターンテーブル。そして、そこから波状するように肩の上の方に向かって四つの銀色の線路。仮面は赤・・・モモタロスの仮面と同じ感じ。でも、こっちの方が印象としては鋭い。つーか、こっちがかっこいい。



「・・・あなた、何者? 悪いけど邪魔しないでくれるかしら。私が用があるのはそこの人形だけ。他は用がないわ」

「おいおい、おばさん話聞いてなかったろ。さっき言った通り、俺も恭太郎もお前達止めに来たの。つーわけで邪魔するから。・・・テディ」



とにかく、変身は終わった。俺は右手の指を二回鳴らす。



「あぁ」





テディはそれに応えて、その形を変える。・・・そうして生まれたのは青くて分厚い刃。鍔の所にテディの顔。切っ先に銃口。いわゆる銃剣。

これがテディの能力。モモタロス達みたいに憑依とかじゃなくて、俺が戦うための武器になってくれる。・・・なんか恭太郎のビルトビルガーや恭文じいちゃんのアルトアイゼンみたいだな。アルトアイゼンに至っては、ウサギ型ボディになってるし。



ま、そこはいいか。とにかく・・・目の前の敵だ。アレ、巨人兵・・・だっけ? こっちの世界で作った兵器。確かに強そうだけど、俺とテディならやれるっ!!





「・・・いくぞ」

≪幸太郎、カウントはどうする≫

「聞くまでもないだろ?」

≪そうだな、必要ない≫

「そういうこと。・・・俺達はカウントが0になってからが、本当の始まりだ」





俺は襲ってきた巨人兵に向かって走り込む。そうして・・・右腕に持った相手の斧が来る。



上段から打ち込まれたそれを、少し止まり、寸前で避ける。



そうして、そのままジャンプして、相手の腕に乗る。腕を駆け上がるようにして・・・もう一度ジャンプ。



そのまま宙返りをするように相手の背後に回りこむ。



左手でパスを持つ。それを、ベルトにかざす。





≪Full Charge≫





パスを投げ捨てる。それから左手をテディに添える。その間にもベルトから赤いエネルギーがテディに伝わり、刀身を赤く染める。



そのまま・・・唐竹割りでまっすぐに目の前のデカ物に打ち込むっ!!





「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



古鉄≪はい、今回の劇場版の撮り立てほやほやなシーンから抜粋です。なお、編集前ですので変更の可能性も有ります≫

恭文「いや、だったら流しちゃだめでしょ。・・・とにかく、今回の劇場版の見所の一つ目は、ついに登場の良太郎さんの孫っ! 野上幸太郎とテディっ!! そしてNew電王とテディさんが変形して生まれる銃剣・マチェーテディっ!!」

古鉄≪なお、さらばより後の時間軸なので、色々成長してる感じだったりします。幸太郎さんは今回の劇場版ではフェイトさんと恭太郎と同じく、主役級だったりします≫

恭文「・・・いや、まじでね、出演者のテロップがおかしいんですよ。だって・・・こうなってるんですよ?」





(一番上)フェイト・T・ハラオウン

バルディッシュ

蒼凪恭太郎

荒ぶる百舌・ビルトビルガー

雷鳴の鉄姫・咲耶

野上幸太郎

テディ

野上良太郎



(それからずーーーーーーーーーっと下、モモタロスとかなのはとかスバルとかデネブとか侑斗とかもはさんでずっと下)



蒼凪恭文(特別出演)

古き鉄・アルトアイゼン(特別出演)





恭文「・・・いや、おかしいからっ! 確かにフェイトと恭太郎が主役だって言ってるけど、だからって僕達特別出演扱いっ!? ちょっとおかしいでしょこれっ!!」

古鉄≪本当ですよ、なんで私までこれなんですか。基本的にこういう扱いって、ギャランティに差し障るんですよ。是非やめて欲しいですね≫

恭文「まぁ・・・しゃあないけどさ。確かに出番はあんまり無いから。でも・・・でも・・・やっぱり悔しいー!!」

古鉄≪とにかく・・・そんな悔しさもかみ締めつつ次回も予告は続きます。次回は・・・もう一人のお孫さんについてですっ!!≫

恭文「というわけで、今回はここまでっ! うぅ、まだまだ女装が辛い蒼凪恭文と」

古鉄≪いや、あれは真面目に凄いと思う古き鉄・アルトアイゼンでしたっ!!≫

恭文「それでも嫌なのぉぉぉぉぉぉっ!!」








(というわけで、そんな叫びも移しつつカメラ・フェードアウト。
本日のED:『Climax Jump DEN-LIENR Form』)




















ハナ「・・・やっぱり私、負けてるのかな」

ナオミ「大丈夫ですよ、ハナさん。勝ってますからっ! 絶対買ってますからっ!!」

なのは「というより、ヴィヴィオも恭文君も大丈夫かな。あぁ、怪我とかしなきゃいいんだけど・・・」

デカ長「大丈夫でしょう。フェイトさんやギンガさんも居ますし。さて、どうなるか・・・楽しみですねぇ」

ハナ「デカ長、結果って分からないんですか?」

デカ長「もちろん、わかりません。未来は如何様にも変化していきます。だからこそ時の流れは・・・面白いんです」










(おしまい)





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あきゅろす。
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