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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ミッション06 『舞い上がるゆりかご』



とにかく、僕はサリさん達と別れて・・・無限書庫へとやってきた。





そこは、もう口にするのも恐ろしい状況になっていた。だって・・・普通に目にクマつけた人が宙に何人も何人も浮いてるんだもの。





こりゃ、そうとう・・・だね。










「恭文君っ!!」



入った途端、声がかかった。その声は、おそらく現在混乱の極みにある局の中でも、トップクラスで忙しい人。

そう、ユーノ先生だった。・・・あれ、まだ居るな。なんか赤毛でちんまくて・・・って、こっちに飛んでくるっ!?



「お前はぁぁぁぁぁっ! またフェイトに心配かけてぇぇぇぇぇぇっ!!」



あ、アルフさんっ!? なんでここにっ!!



「なんでじゃないよこのバカっ! はやて達から聞いたぞっ!! お前、また相当無茶したんだろっ!?」



怒りの表情を浮かべて僕のところまで飛んできたのは、ハラオウン家の家事手伝いで、現在はお子様ふぉーむで生活しているフェイトの使い魔、アルフさん。

なお、4年前まではフェイトのサポート役として、各地を飛び回っていた魔法戦闘のプロでもある。



「いや、そんな対したことはして・・・ませんよ? 無断でアルトと兵装持ち込んだだけで」

「それを無茶って言うんだよっ! 大体お前は昔からそうなんだよっ!! ちったぁ周りを頼ることをな・・・」

「あー、アルフ。ごめん、話は後にしてもらえる? 今は恭文君の力がすぐに必要なんだ」



後ろから疲れた様子のユーノ先生のおかげで、アルフさんは矛を収める気持ちになってくれたらしい。僕に噛み付く勢いで迫っていたのに、下がり始めた。



「まぁ・・・いいよ。でも恭文、あとでじっくり話だからな? お前にはハラオウン家の使い魔として、色々言いたいことがある」

「は、はい。お手柔らかに・・・。で、ユーノ先生」

「うん、さっそくだけどこの資料の一覧を今すぐに出して。あと、このワードで一斉検索かけて。これさえ出してもらえれば、多分あとはすぐだから」



そう言って、ユーノ先生が出して来た資料のリストを見る。・・・また量が多いな。しかも、古代ベルカ時代の資料ばっかりじゃん。しかも、これは・・・聖王関係?



「聖王が今回の一件になんか噛んでるってことですか?」

「まだ分からない。でも、多分」



ま、そういうことなら話は簡単。僕のやることは一つだけだよ。

ちゃっちゃとこの資料を出すっ! それだけっ!!



≪では、いきますか≫

「うん」



足元にベルカ式魔法陣を展開。普段より大きく、輝きは強く、魔法陣はゆっくりと回転する。



「んじゃ、久々の本気の検索魔法。行くよっ! 資料の検索範囲は・・・先史ベルカ時代の質量兵器資料のいっさいがっさいっ!! ついでにもう一つキーワード検索っ! そのキーは『聖王』と『ゆりかご』っ!!」





僕の声に応えるように、魔法陣が輝きを増し、回転速度を増す。・・・普通の魔導師なら、僕が今からやろうとしているような大規模な検索プログラム処理なんて、簡単には出来ない。



でも、僕は違う。瞬間詠唱・処理能力の前では、プログラムの容量も重さも何の意味を成さないっ!!





≪Standby Ready≫

「全力全開っ! フルドライブっ!!」

≪Ignition≫










そうして、光が走る。この広大な書庫で眠っている真実を呼び起こすために。




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と古き鉄の戦い


ミッション06 『舞い上がるゆりかご』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・全く、君にも困ったものだ。捕獲して欲しいとお願いしたはずだが?」

『いや、すみません。予想以上に手ごわかったもので』



また白々しい嘘をつくものだ。・・・まぁいい、確かにアレの捕獲は難しそうではあるしな。

選択を間違えたかも知れんな。2年前ならば、あるいは・・・まぁ、言っても仕方ないだろう。



「とにかく、君は少し遊びが過ぎる。自重して我々の方針に従ってもらえるとありがたいのだがな」

『・・・心に留めておきましょう』





そんなどうとにでも取れる言葉を残して、通信は切れた。・・・ふむ、やはり選択を間違えたな。これではサンプルHは諦めなくてはならないだろう。



おそらく、彼はまた遭遇した時、殺そうとするだろう。彼を忌々しい粗悪品として。まったく、同じ科学者でありながら、なぜアレの可能性に気づけないのか。私は不思議でならないよ。





「・・・ドクター、いいのですか?」

「仕方あるまい。それに・・・どうやら彼は私達の想像以上にイレギュラーのようだ。場合によっては排除も考えた方がいいだろう。それでウーノ、トーレとセッテの具合は?」

「二人とも意識はありますし、最終プランまでには回復できるかと」

「そうか、ならばよかった」

「ただ・・・」



・・・またどうした。随分怪訝そうな顔だが。



「私はどうにも信じられません。不意打ちとは言え二人がかりで一蹴されるなんて・・・。トーレが片腕を取られたのもそうですが、特にセッテのダメージです。
外傷そのものはほとんどないのに、内臓器官のダメージが相当酷かったですから。本当にサンプルHは平均的資質しか持ち合わせていないのですか?」

「以前君に見せた通りだ。魔力資質だけで言うなら、彼はフェイト・テスタロッサはもちろん、タイプ・ゼロファーストやセカンド、六課のフォワードメンバーにも勝てない」





恐らく、フェイト・テスタロッサの前というのがあったのだろう。彼は彼女を好いているらしいからな。・・・ふふ、やはり興味深い。失うには惜しい素材だ。



私の最高傑作を2体相手にして、あっさりと一蹴するのだから・・・まさかここまでとは思わなかった。あのトーレが彼の殺気で圧されたと言うのも面白い。





「それと・・・」

「なんだ?」

「トーレもそうなのですが、セッテがサンプルHに執拗にこだわりを見せているんです。どうやら・・・悔しかったようで」

「悔しい? 自分がやられたことがか」

「はい。治療にあたっているクアットロの話では、間違いないかと」



・・・セッテはもちろんだが、今回の作戦に参加したオットーとディードには感情の起伏を抑制する処置を施している。その中でセッテは最高の出来だ。本来なら悔しいと言う感情を見せるはずがない。

ふふふ・・・サンプルHとの接触でそれすらも超える感情に目覚めたと言うことか? やはり面白い、興味深いよ彼は。



「どうしましょう、トーレはまだ自分で抑えていられるようなのですが、問題はセッテです。今ならば再調整も可能と言えば可能ですが」

「・・・いや、そのままでいい。今から教育し直す時間も惜しい。あれほどの実戦経験はそうそう出来ないしな」



・・・いや、むしろこれは・・・好機か? いや、好機だな。もう一度仕掛けてみるか。あの男が動く前に捕獲も出来るかも知れない。



「ウーノ、最終プランではトーレとセッテの配置は確か・・・」

「はい。3機のアインへリアル破壊後、共にあなたの護衛に付いてもらうことになっています」

「ならば、変更だ」

「・・・はい?」





私はにやりと笑う。いや、笑えてしまう。私が今から投じる一石によって、どのような変化が起きるか、楽しみでならないからだ。



例え結果的に負けたとしても、これで彼女がどう変化するか・・・それが楽しみでならない。現に、今ひとつ変化が起きたのだから。





「トーレは申し訳ないが、変更無しで私についていてもらう。ただ、セッテは最終プラン時・・・サンプルHの捕獲を担当してもらう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ちかれた。





いや、やっぱキツイって。実戦で暴れた後に検索魔法・フルドライブはさ。つい、横馬の真似して『全力全開っ!!』なんて言っちゃったし。・・・うわ、絶対知られたくない。知られたら間違いなくアレは嬉しそうな顔するだろうし。こう、にこやかに感激した眼で僕を見るんだよ。





まったく、アレはなんとかならないもんかね。ワンコみたいにやたらとくっついてくるんだよ。










「・・・さて、ユーノが調べ物してる間にお話だな」



いったん書庫から出て、近くの休憩所でお茶を飲んでいた僕の所にアルフさんが来た。・・・くそ、覚えてたか。



「当たり前だ。・・・あのなぁ、お前の道理も気持ちも分かる。でも、今回は事がこれだぞ? どうして保護されるって選択が出来なかったんだよ。フェイト、ホントに心配してたんだぞ」

「・・・んなの当たり前でしょ。弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても・・・」

「何もやらないことへの言い訳にはならない・・・か?」



あー、アルフさんは見てたんだっけ。電王。僕が面白いって言って、カレルとリエラに薦めてたしなぁ。



「それでほんとに飛び込むバカなんて、お前くらいだ。実際はあんな無茶な子、居やしないよ。つーか、居るわけがない。アレは作り物の中の登場人物だから成り立つんだ」










なお、数ヵ月後アルフさんはこう言った事を僕に思いっきり謝罪することになる。だって、本気で居たんだから。しかもモノホンが。










「・・・なぁ、ルールってなんのためにあるか知ってるか? 守るためにあるんだよ」





いきなりな話と言えば話。でも、言いたい事は分かった。アルフさんは、今回の一件で僕が散々やらかしたルール違反を差して話をしてる。





「それを守れない奴は、何にも護れないんだ。だから局員・・・フェイトやなのは達はそのルールを守っている。だから、人を護れる。ルールを守れるやつこそが、人を護る資格を得られるんだ。ルールをちゃんと守るから、沢山のものが護れるんだ。局員だけの話じゃない。なんでもそうだぞ?
で、お前は今回どうだ。無茶苦茶して、散々ルール違反かまして、いっぱい人に迷惑かけて・・・それでも何にも護れてないだろうが。それがお前の限界だ。最低限のルールも守れない魔導師に、戦う資格はないんだよ」

「・・・アルフさん、それ本気で言ってます?」

「本気だぞ。もうこういうのはやめとけ。お母さんやクロノやフェイト、沢山いい人達が居る。そんな人達をお前はどうして信じられないんだよ。どうして信じて、自分を預けられないんだよ」



・・・別に信じてないわけじゃない。ただ、止まりたくないだけで。



「同じ事だ。お前が局員という立場を否定する度に、みんな口には出さないけどやっぱり辛いんだ。今回のことで反省しろ。局員になって、みんなを安心させなよ。なにより・・・お前がこんなことを繰り返してたら、フェイトが悲しむ。アタシはそれが堪らなく嫌なんだ」



・・・ふむ、なら一つ質問しよう。どうにもこれはマジで返さないとダメみたい。



「アルフさん、一つ質問です」

「なんだ?」

「そのルールを守っているなのは達は今回、何を護れたんですか? 隊舎は壊され、中央本部は火の海。その上大事なものを沢山奪われた」



アルフさんが固まる。・・・うん、当然だ。僕はずるいこと言ってるから。



「それは・・・」

「アルフさん、ちゃんと答えて下さい。ルールを守ったなら、護れるはずですよ? 隊舎も、中央本部も、大事なものも」



僕がそう言うと、アルフさんが押し黙った。・・・そう、今回なのは達はなにも守れなかった。隊舎は・・・まぁしゃあない。でも、中央本部だ。ルール通りにデバイス持ち込まないで行動したら、見事に中に閉じ込められた。

貴重な航空戦力であるなのはとフェイトの行動は、それで思いっきり遅れた。その上ガジェットに攻撃されかける有様。はやてとシグナムさんに至っては、会議場で右往左往しててほとんど動けなかったらしい。



「・・・どうしたんですか、答えられないんですか? なのにまた随分なこと言いますね。てか、ルールどうこうなんて関係ないでしょ」

「・・・恭文、お前・・・アタシの言いたい事分からないのか? そういうことじゃないだろ」

「そういうことでしょ。アルフさんは今、今回の僕の行動を差して話をしてる。だから僕も、疑問に思った事を今回のなのは達の行動を差して話してるんですよ。・・・ほら、答えてくださいよ。この差はどこをどうして生まれたんですか?」

「・・・そこまでよ」



・・・・・・ち、増援が来たか。声のした方を見ると、居た。翡翠色の髪を後ろで一つに束ねた、僕の良く知る女性が。



「恭文君、あなた・・・また随分意地悪な事を聞くのね。しばらく会わない間に、性格が悪くなってない?」

「・・・実を言うと、自分でも少し意地悪かなと」

「お母さんっ!!」



そう、リンディ・ハラオウンさん。・・・僕の保護責任者です。さて、2対1だし・・・逃げるか。

僕は速攻でお茶を飲み干し、缶をくずかごに入れる。で、立ち上がって・・・。



「恭文君、さっきの答えだけど・・・私からでも良いかしら」

「僕がズルイと言うのと水掛け論だと言うのと、どっちもどっちと言うのと、ルールを守ると言うのが世の中では何をするにおいても当たり前の事だからと言う理屈以外なら、是非聞きたいです」

「・・・アナタ、やっぱり性格悪くなってるわよ。うぅ、小さい頃はあんなに可愛かったのに、どうして今はこんなに可愛げの無い子に・・・」



やっぱりそういう方向性の話かいっ! そしてその泣き真似やめてっ!? 人が見るから見てるからっ!!



「とにかく今回の事、私もアルフと同意見よ。いくらなんでも無茶し過ぎだわ」

「そうだよね、お母さん。・・・それなのにコイツと来たら屁理屈こねて、アタシの言うことちっとも聞かないし」

「アレはアルフが悪いわ、いくらなんでも現状を棚に上げ過ぎよ」

「そうですよね」

「どうしてそうなるのさっ!?」



いや、当然でしょ。あんな風に言われたら、やっぱりそこはツッコみたくなるのは当然でしょ。読者だってそう思うよ?



「確かに、あなたの言うようにルールを守ることは必要よ? ただ一人規律を破ることは、周りの人達を危険に晒すことにも繋がるわけだから。でも・・・恭文君の言うように、それだけでは今回私達局員は何も守れなかったわ。結局中央本部に居た非戦闘要員の救出に追われて、有効打は打てなかったもの」

「でも、それは仕方ないよ。みんな頑張ってそれだったんだから」

「仕方ないじゃ済まないのよ。現実問題として、犠牲を出してしまったんですから。それも・・・大量に」

「まぁ、僕が原因ですけどね」



僕がそう言うと、リンディさんとアルフさんの表情が重くなった。・・・二人とも、知ってるんだね、やっぱ。



「アルフさんの言うように・・・僕もなーんにも守れてませんよ。むしろ、疫病神的に巻き込んだ。あの野郎、僕の手持ち・・・クレイモアやら出させるために・・・それだけのために・・・虫けらみたいに殺しやがった」

≪アナタが気に病む必要はありませんよ。まぁ、経験から言わせて頂くなら・・・アレはこの人がどんな状況でも狙ってきたでしょうね。完全に目の敵にしていましたから≫

「なら、あなたの意見としては・・・なんにしても戦う必要はあったと? 例え恭文君が局員でも、保護されていたとしても、彼はこの子を狙い、邪魔なものを壊しながら来たと」

≪リンディさん、正解です。アレはイカれていますよ。ぶっちぎりでアウトです。一瞬で・・・ですからね≫



・・・あぁもう、思い出しちゃったよ。目の前で・・・一瞬で、何人もさ。殺す事どうこうに文句付けるつもりなんざ無いさ。そんな資格、僕には無い。でも、やっぱ重い。



「恭文・・・。あの、ゴメン。アタシそんなつもりじゃ・・・」

「いいですよ、事実ですし。それに・・・」

「それに?」

「なんにしても、アウトコースは行くでしょうから。すみません、多分・・・殺し合いをやります」



僕がそう言った瞬間、場の空気が固まった。・・・僕だって出来るなら、殺したくない。そんな手を取っても意味がないって知ってるから。

でも、それで未来が消えるなんて、嫌だから。消さないためにどうしても必要な手なら・・・躊躇わずに取ろう。前に・・・警護任務の時、サリさんに言われた通りに。



「恭文、お前・・・」

「アレから、色々手を考えたんですけどね。リインが居たとしても、生かして捕らえる自信が無いんですよ。もうサッパリ。クレイモアでも沈まないってどんだけですか。なにより、僕と同じ能力持ち。それにプラスで僕より資質が上と来てやがる。ためらえば・・・こっちが殺されます」

≪そして、逃がすような真似も出来ません。そんな真似をすれば・・・また狙ってきます。今回は直接的に来ましたが、次回はそうこないでしょう。恐らく、周りの人間を狙ってきます。陰湿に、そして狡猾に≫



そうなったら、目も当てられない。悪いけど、僕はアレが更正するなんて信じられないし、逃がして周りの人間に被害が及ぶのはごめんだ。




「・・・・・・ダメだ、絶対ダメっ!!」



アルフさんが泣きそうな・・・必死な顔で言ってきた。まぁ、そうだよね。そうくるって分かってた。



「お前、分かってんのかっ!? そんなことしたらまたフェイトやみんなが」

「それでも、やります。必要なら・・・どうしても必要なら、躊躇いません」



守るためなんて言い訳するつもりない。殺しは殺しだから。忌むべき最悪手だから。取らない選択があるなら、それで十分。・・・まぁ、背負いますか。忘れず、下ろさずに。そうして、ヘラヘラ生きよう。それで擦り切れて死ぬなんて、ゴメンだから。

・・・僕は人生を楽に行きたいのよ。めんどくさいのも、痛いのもごめん。苦労なんざ買いたくないし、したくもない。それになにより・・・さらば電王も楽しい気持ちで見たいしねー♪



「・・・やっぱり、あなたはその道を行くの?」



・・・はい?



「ヘイハチさんと同じ道を。いえ、あなただけじゃないわね。あの人のお弟子さん達も。本当なら、引退組であるあの人達も、組織の一員として戦うことの出来ないあなたも、私達を信じて全部預けてくれるのが正解よ?
あなたを狙ってきた相手だって、任せてくれても構わないわ。アルフの言うように、あなたが手を汚せば、みんなの心にも重しをかけるんですから」

「・・・行くと思います。そして、預けられません。これは」



そのまま、僕は無限書庫を目指して歩き出す。少し歩いて、リンディさん達の方を振り返る。



「僕達が選んだ、僕達の戦いですから。どんな結果だろうと、最後の最後まで通します。それが・・・戦いたいと道を決めた僕達が、最低限やらなきゃいけないことですから」





そのまま、お辞儀してから、また歩き出す。もちろん書庫に向かって。



・・・アルト。





≪はい≫

「痛いとこ、突かれたね」

≪そうですか? そんなことは無いと思いますけど≫



・・・あぁ、そうだね。あなたは元々ルール無用な先生のパートナーだったもんね。絶対そう来ると思った。



≪と言うより、こんな話で気を病むのが間違いでしょ。・・・あなた、どっちが護れる物が多かったなんて水掛け論をしたいんですか?≫

「いや、したくない。つーかめんどくさい」

≪それで正解です。それに、ようは何が護れるかじゃないんです。何を・・・護りたいかです。ルールを守って護りたいものが護れないのなら、そのルールは意味を成しません。少なくとも、その人にとっては。あなたは、それを知っているはずでしょ? だから、変わらない理由を掲げて、戦い続けている≫

「・・・そうだね、うん、知ってるよ」

≪結果は、背負いましょ。ただし、気負い過ぎずに・・・いつものノリで。じゃないといつぞやみたいに負けますよ?≫

「そーだね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、無限書庫に到着。再び無重力に身を預ける。すると・・・居た。




なので、僕はそこへ飛びながら声をかける。










「ユーノ先生っ!!」

「あ、恭文君。休憩は終わり?」

「えぇ、おかげさまでばっちりです。・・・それで、解析の方は?」

「ちょうど今済んだ。ありがと、助かったよ。おかげでジョーカーが分かった」



・・・なら、よかったです。役に立てたなら、うれしいですよ。



「あ、それと・・・ね」

「ほい?」

「あんまり、無茶しちゃダメだよ? なのは達も心配してる」

「・・・はは、すみません。どうやらこれは性分みたいで」

「まぁ、ヘイハチ先生も同じ感じだしね。弟子の君が似るのは当たり前か」



なんて言いながら、ユーノ先生は一冊の本を渡してくる。だから、僕はそれを受け取る。



「その本の168ページ、開いて見て」



言われたとおりに本を開く。そして・・・これか。



「・・・・・・え?」



固まった。見てそこに出てきた物が信じられないものだったから。



「・・・ユーノ先生、お久しぶりです」

「お邪魔いたします」



固まった思考を元に戻したのは、一組の男女の声。そちらを見ると・・・ヴェロッサさんとシャッハさんが居た。



「恭文、君もここに居たんだね」

「負傷したと騎士カリムから聞きましたが、具合はどうですか?」

「大丈夫です。サリさんに回復魔法かけてもらいましたし」

「そうですか、ならよかった。・・・それでユーノ先生、スカリエッティが保有していると思われる手札が分かったと聞いたのですが・・・」



なるほど、ユーノ先生が呼び出したのか。納得だわ。



「・・・恭文君、その本のデータを二人に見せてあげて」

「はい。・・・これです」



そうして、二人の前に空間モニターが立ち上がる。そこに映るのは・・・巨大な建造物。いや、違う。



「これは・・・」

「船・・・ですね」



そう、船だ。それもただの船じゃない。全長にすれば数キロ。武装も今の次元航行艦の比じゃないくらいに充実している。

これが、連中が持ってきているジョーカー。予言を現実のものとするカード。



「古代ベルカ時代、聖王が保有し、戦乱の世を治めた決戦兵器。その名も・・・『聖王のゆりかご』」

「これはまた・・・凄いのが来たね」



ロッサさんが驚きを隠しもせず・・・いや、隠せずに呟く。シャッハさんも同じ。普段は見せないであろう『驚きました』と言わんばかりの顔をしている。



≪・・・資料によると、その時代から既にロストロギア扱いを受けていた最強の質量兵器だそうです。その上・・・これ、無敵なんですよ≫

「アルトアイゼン、それはどういうことだい?」



二人にデータを見せながら、僕もアルトも本に眼を通す。そうして・・・寒気を覚えている。

だって、あんまりにチート性能なんだもの。



≪まず、ゆりかごは普通に飛んでいたのではその性能の全てを発揮出来ません。それを発揮できるのは・・・軌道上、二つの月の魔力を受け取れる位置まで到達した時。地表への正確な爆撃を可能とし、ゆりかご本体も強固な防御フィールドを発動させ、攻撃が通らなくなります。その上・・・≫

「まだ・・・なにか?」

≪ここからがチート性能の本領発揮です。これ、次元航行空間での戦闘も可能だそうです≫

「「はぁっ!?」」



本来、次元空間で艦船がドンパチっていうのは出来ない。いや、普通はしようとは思わない。

各世界は次元空間という海に浮いている島だ。その海が荒れれば・・・当然島は津波やら災害に遭う。だから、絶対にやらない。現在製造されている艦船の多くもそうだ。基本的にはんな海でどんぱちなんて思考から外してる。でも、これはそれを可能としている。これだけでも十分怖い。



「武装がほぼ丸々使えるとするなら・・・これ一隻で次元航行艦隊と対等以上に渡り合えると思います」

「・・・ユーノ先生、ぶっちゃけ聖王とかってバカでしょ。なんでこんなバカ兵器作ったんですか」

「まぁ、統一戦争に勝つため・・・だろうね。もちろん、そのために聖王の血筋を持つ人間にしか動かせないようになってるし、あんまりな性能だからミッドに封印したって書いてるけど・・・」



いや、でもバカ過ぎだから。つーか封印せずに壊して欲しかった。おかげで今この現状だもの。まったく、なんで昔の人間の尻拭いを僕達がしなくちゃいけないのさ。



「・・・あの、待ってください」



シャッハさんが戸惑い顔でつぶやく。今自分が聞いた情報が信じられないと言わんばかりに。



「本当にこんなものが存在して・・・動くと言うのですか? 古代ベルカと言えば、最低でも300年以上前の話です。それになにより、ミッドに封印していると言うのなら、なぜこのような巨大なものが今の今まで発見されなかったんですか」



シャッハさんの疑問は・・・多分一つの希望にすがりついたもの。こんなものは存在せず、そして動かない。そんな願いがその根底にある。

でも、残念だけど・・・それは無い。



「・・・ユーノ先生、ロストロギア・レリックって確か・・・ゆりかごと同じ時代の物でしたよね」

「うん、そうだね。だけど、レリックは今も問題なく稼動状態にある」



ユーノ先生がそう言うと、シャッハさんがハッとした顔になる。・・・そう、レリックは動いている。問題なくだ。そうじゃなかったら六課なんて出来るはずないし、予言どうこうの話になったりなんてしない。

そして、もう一つの疑問。なぜ全長数キロと言うバカでかい戦艦が今の今まで発見されなかったのかと言う疑問。これにも答えがある。



「誰かが隠していた・・・と考えるのが妥当だろうね。それも、ただ隠していたんじゃない。局はもちろん、聖王教会や他の組織にも見つからないように手を下していた」

≪でしょうね。恐らく、それほどの権力と行動力を持った人物がスカリエッティの後ろに付いていたんですよ。だからこそ・・・≫

「今の今まで・・・これは見つからなかった」



レジアス・ゲイズ中将・・・だよね。でも、それだけなのかな。

あの人がスカリエッティみたいなイカれた犯罪者にこんな物騒なもんを預けるとは思えないんだけど・・・。例えばミッド防衛のために使いたかったとしても、いくらなんでもこれは犯罪者任せにするには、ヤバ過ぎでしょ。



「レジアス中将はゆりかごの存在を知らなかったのかも知れないね」

「どういうことですか?」

「彼は完全に利用されただけ。・・・更に上に誰か居る可能性があるってことだよ。レジアス中将よりも高い権力を持った人間が、スカリエッティと繋がっている」



ヴェロッサさんが口元に手を当て、考えるような仕草をしつつそう口にする。・・・レジアス中将より高い権力を持った人間って・・・それほど数が多くないと思うんだけど。

例えばミゼットさん達。あと・・・。



「最高評議会・・・とかね」



最高評議会。管理局発足当時から世界平和のために貢献したって言う偉い人。ミゼットさん達よりも一応権限は上。現状の管理局ではトップの存在。

一応名前だけは知ってるけど、確か会議とかにもほとんど出席しないで、管理局の運営を見守ってるとからしいけど・・・。



「誰にしても、ゆりかごの存在を隠していたのは、その上の人間の仕業と見て間違いないということですね」

「まぁ、その辺りはまた調べておくとして・・・とにかく、ゆりかごの所在地だね。シャッハ、僕達はこのデータを持ってすぐにカリムと予言解読チームのところに」

「心得ました」

「なら、僕と恭文君はもう少しゆりかごの資料が無いか調べてみます。あと、六課への連絡も」

「ユーノ先生、よろしくお願いします」










ゆりかご・・・か。





ネーミング間違えてない? これはゆりかごとかじゃなくて、箱舟でしょ。アレだよ、ノアの何たらとかさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ゆりかご・・・ですか。またとんでもないのを出してきましたね」



さっそく調べ物な最中、アコース査察官から通信が来た。で、聞いた内容は・・・またデカかった。ゆりかご・・・先史ベルカ時代の遺産。



≪主、そうするともしや六課で保護されていた児童と言うのが・・・≫

『正解だよ、金剛。あの子・・・ヴィヴィオは、聖王教会が調べたところ、約300年前の人間の遺伝子を元に造られていた。つまり・・・』

「それが聖王・・・。スカリエッティがそのヴィヴィオって子をさらったのは、それが理由」

≪その児童が本当に聖王の遺伝子を持つのなら、ゆりかごの起動キーとして利用する事が出来る・・・と。許せませんね、まだ年端も行かない子どもをこんなことに利用するとは≫

「そうだな。子どもの笑顔を大事に出来ない奴は、人類の敵だ」



確かにあの時代は闇の書やら冥王・イクスヴェリアなんかを筆頭にそうとうヤバイもんが山積してるけどよ、これは極めつけだろ。どっかのタレントじゃなくても『どんだけー』って言いたくなるってーの。



『ただ、これで色々確定的になりましたよ。・・・事件が解決したら、局の評判はがた落ちですよ。ははは、もしかしたら来期の入局志願者は0かも知れませんね』



だろうなぁ。これ、ぶっちぎりで上層部の腐敗と汚職が原因の事件になってきたし。あぁもう、こういう時の勘は外れていいだろ。

ある人は権力は腐敗するものって言ってたよ。正直、その通りだと思うよ。でもよ、それでも限度ってもんがあるだろ。腐敗がどこでどう転んだら、この厨ニ設定な兵器で世界滅亡の危機なんて流れになんだよ。やっさんが外見ショタなのに中身がラスボスな理由と同じくらい訳分からねぇし。



『それで、サリエルさんの読みとしてはどうでしょう』

「なにを言いますか、現役で優秀な査察官のアコース様の二番手を俺に行けと?」



つまり、俺も・・・あと、八神部隊長も同意見。レジアス中将より上の権力を持った人間が今回の一件に絡んでる。

あの三提督やら最高評議会クラスが。・・・やっぱおかしいわ、管理局。



『あはは・・・。まぁ、僕もさすがに自信が無いので。と言うより、外れてくれると嬉しいなぁと』

「いや、俺もそこは同意見ですわ。ぶっちゃけこの展開ありえねぇし」

『そうですよね、ありえませんよね』

≪いっそ夢ならありがたいのですが。ただ・・・そういうわけにもいかなさそうですね≫



まぁ、誰が相手だろうが関係ないさ。そいつ・・・もしくはそいつらは俺達に喧嘩を売った。その事実は変わらない。だから、その代価をしっかりと払わせてやる。



『しかし、どうしてそこまでするんですか?』

「はい?」

『ヒロリスは・・・まぁ、ああいう性格ですし、友人が絡んでいるから止められない。恭文も六課に友達が居るし、ヒロリスに無駄に似てるから止められない。・・・というより、僕は恭文に初めて会った時からヒロリスの影がちらついてちらついて仕方なかったんですよ』



だろうな、あの二人無駄に似てやがる。俺はヒロがやっさんの将来の図式だと思ってるんだよ。・・・あぁ、アレがもう一人増えて世に放たれるのか。恐ろしい恐ろしい。



『でも、あなたは二人とは違うはずですよ? 狙われている事を差し引いても、ここで飛び込む選択を取る人とは、僕にはどうしても思えないんですよね』

「そう見えますか?」

『かなり』



・・・別にそういうわけじゃないんだけどな。俺は確かにヘイハチ一門の中では比較的マトモだと言う自負があるけど。



「まぁ・・・アレですよ、それが出来ないバカだからと思ってください。俺は確かにあの暴走コンビほど突っ込んだ考え方は出来ない」



いや、アレらが突っ込み過ぎって言う考え方もあるけど。あと、先生は無茶苦茶過ぎだし。なんであれで人望があるのかが俺は未だに不思議でならない。客観的に見たら、ぶっちぎりで社会不適格者なのに。



「ただ・・・それでも、俺の中にもありますから。ヘイハチ先生から受け継いだ鉄の想いって奴が」



俺はそう言いながら、自分の胸に右手を当てる。そして、そのまま言葉を続ける。



「俺は誰がなんと言おうと、自分の理性って奴が止めようと、その鉄に嘘つくような真似すんのだけは・・・死んでもごめんなんですよ。んなことしたら、俺じゃなくなる。どんだけ錆びようと、古臭くなろうと、最後の時まで一つの鉄で有り続ける事。それが、俺のプライドですから」



きっと、やっさんやヒロ、ヘイハチ先生だって同じだ。自分の中の鉄に・・・心に嘘がつけない。だから、なに言われようとバカをやる。・・・一門揃って、時代遅れの愚か者揃いなんだろう。あーもう、やっさんはともかくヒロと同類だってのがなんかムカつくな。



≪主≫

「なんだ?」

≪・・・私も、同じです。私は主の力となるためにこの身を授かりました。主が鉄であり続けたいと願うならのならば、私は共に戦い、その願いを手にする力となりましょう。それが・・・私の誇りです≫

「・・・あんがとな」

≪いえ≫



とにかく、俺達がそう返すと、アコース査察官が感心するような、呆れたような表情になる。でも、すぐにいつもの飄々とした微笑を蓄えた顔になる。



『納得しました。じゃあ、僕達の方でも調査は進めていますので、事態が進展するまで情報交換しあうと言うことで。あと・・・』



少しだけ、声のトーンが落ちる。表情も真剣なものに変わる。



『僕達の手の届かないところは、お任せします。僕はアナタやヒロリスが何をしようと、見なかった事にしますので』

「心得ました。・・・でも、いいんですか? 八神部隊長にバレたら」

『大事でしょうね。はやて、あなたやヒロリス達が動いていた事に頭を抱えていましたから。というより・・・少しお冠でしたよ?』



そりゃ当然だ。俺やヒロみたいなロートルに、自分の仕事の領域荒らされてるも同然だ。俺だって八神部隊長の立場ならムカつく。



『特に今回は、色々と反省点が出てきた・・・みたいなことを話してましてね』

「反省点? いや、そんなの無いでしょ」



こう言ったら偉そうだけど、すごいと思うもの。レアスキルやらなんやらが有っても、普通はそれだけであの年齢で二佐にはなれない。その上部隊の部隊長にまで納まってる。確かに予言対策って名目はあったかも知れないけど、それだってあの人にしっかりとした能力があることを前提としてる。

ぶっちゃけ、今の位置だってクロノ提督と騎士カリムに公式的に能力を認められてなかったら、入れるはずが無いんだから。今回の事はなんつうか・・・ねぇ?



『でも、メガーヌ・アルピーノのことはヒロリスからの情報提供があるまで掴めませんでしたし、今日に関しては恭文やヒロリスが来なければ、フェイト執務官や自分は危うく敵の手に落ちる所だった。
ルールを守って何も護れないという大バカをかました自分に腹が立って腹が立って仕方ない・・・そう言ってましたよ。部隊内から負傷者も多く出しましたしね。そういうのもあるんでしょ』

「・・・あぁ、そういうことですか」



つまり、振り返れば色々と過程も甘ければ見積もりも甘かったと・・・。まぁ、仕方ないって言えば仕方ないと思うんだけどなぁ。ルールを守るって、やっぱ大事だし。俺だってルール守る局員と守らない局員のどっちを信用するかって言われたら、間違いなく前者を選ぶ。

・・・今、自分が如何にそれと間逆な道を行ってるのか改めて自覚してしまった。でも、今更・・・戻れねぇよな。俺はもう、選んで決めて、突っ走ってんだから。



『とにかく、言い方は悪いけど僕はアナタの動きを利用させてもらってでも、早くゆりかごの所在地や事件の真相を暴きたいんです。隠蔽された真実を暴き、真実を日の光の下に晒す。まぁ、あなたやはやてや六課の面々とはちょっと方向性は違いますけど、それが僕の戦いですから』

「・・・なるほど、納得です。アコース査察官、感謝します」

『いえいえ、お互い様ですから。あ、それでもはやてや他の人間にはバレないようにしてくださいね? 後が面倒になる』

「もちろんそれも心得ていますよ? 俺だって無事に職場復帰は果たしたいですから」










さて、いよいよクライマックスだし・・・頑張りますか。





そして、さらば電王見に行くんだー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・戻れないよね。この道はさ。





私は決めて、そうして突っ走ってきた。きっとそれは・・・引退した今でも変わらない。これからもだ。





私は鉄。ヘイハチ先生から錆びてて、古臭くて・・・だけど、無茶苦茶強い鉄の想いを受け継いだ。





だから、貫く。そうしないとね、私が私じゃ・・・なくなんのよ。










『ヒロリス、もう一度聞くわね? ・・・それで、あなたはどう動くつもり?』



・・・いや、カリム。アンタ・・・私がかっこよく決めたのにそこ聞くっておかしくない?



『だって、全く答えになってないもの』

≪そうだよな。むしろこれは最後だよな。初っ端に持ってきてする話じゃねぇって≫

「あー、うっさいねっ! いいじゃないのさこれくらい言ったってさっ!!
・・・いや、実は悩んでてさ。好き勝手するのはいいけど、方向性は二つあんのよ」



私がそう言うと、カリムの表情が苦いものになった。・・・あぁ、付き合い長いってすばらしいね。私の言いたい事が分かったらしい。



『ルーテシア・アルピーノを保護するか、スカリエッティを逮捕・・・いいえ、叩き潰すか・・・ね?』

「一応やっさんとサリには保護・・・って言ったんだけどさ。でも・・・なぁ、私の本能がアイツを斬りたい斬りたいって叫びまくってるのよ」



だって・・・ねぇ。なんにしてもあの野郎には代価を払ってもらわなきゃいけないでしょ。私に・・・私の友達に手ぇ出した代価をさ。



≪でも、姉御。そりゃ危ないと思うぜ? どちらにしても、六課の連中が動くだろ。特にスカリエッティは・・・≫

『はやての話では、そちらには間違いなくフェイト執務官が行くでしょうね。あなた、見つかったらタダじゃ済まないわよ?』



そうだよねぇ、やっさんの話を聞くに結構そこの辺り八神部隊長と違って融通利かなさそうだし。絶対言われるよ、ここは自分に全部任せてあなたは下がっててください・・・とかさ。

あと、色々時系列にも問題が出てくるしねぇ。・・・いや、修正しちゃえば問題ないか。




『・・・そのメタで危ない発言をするくらいなら、おとなしく保護に向かった方がいいと思うのだけど』

≪でもカリムのねーちゃん、それも問題だろ。どっちにしても六課が・・・≫



ねぇ、六課って味方だよね? なんで私の行動を邪魔するような感じにしか出てこないのさ。



『これからぶっちぎりのルール違反をしようと言うあなたが言えたセリフじゃないわよ? 向こうから見れば、既にロートルなのに首を突っ込んでくるあなたが邪魔なんですから』

「あ、ヒドイねぇ。スパロ○では私みたいな善意の協力者がどんどん協力してくれるってのに」

≪・・・姉御、現実とゲームを一緒にするなよ。つーか、それは悪い意味でのゲーム脳だぜ≫



うっさいねぇ、分かってるよ。向こうは今を生きる正式な局員様。私やサリはロートルで戦闘許可も下りないような立場だってのは重々承知してる。

でも、しゃあないじゃん。戦いたいんだからさ。止められるわけがないし。・・・あ、そうだ。いいこと思いついた。



「しゃあない、あれ使うか」

『あれ?』

≪・・・おいおい、姉御・・・まさか、あれか?≫



そう、アレ。なんにしても、私は正体を知られないように変装する必要が出てきた。そうじゃないと、後がうるさい。私だって、無事に職場復帰は果たしたいのよ。

つーわけで・・・さっそく準備するか。メンテして、ぴっかぴっかに磨いて・・・。



「でも・・・まさか実戦でこれを使う日が来ようとはなぁ。いや、楽しみだなぁ〜♪」



そう言いながら、私は懐からあるものを出す。・・・黒いパスケースを。それ見ていると、どうにも笑いが止まらない。

さーて、せっかくの祭りだし、思いっきりバカやって、派手に暴れてみよー♪



『・・・ねぇ、アメイジア』

≪なんだ、カリムのねーちゃん≫

『私、どうにも嫌な予感がするの。なぜかしら』

≪奇遇だな、俺もだぜ。あぁ、絶対怒られるな。色んな奴から怒られるよな。サリやボーイからは危ないから絶対に使うなって言われてるし・・・≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・中央本部襲撃と六課隊舎陥落から1日が経った。





現在、私達機動六課メンバーは一部を除いて、アースラに乗り込んでいる。・・・はやてちゃんとクロノ君が事件解決までの仮本部として持ってきた。





なんだか、懐かしい気持ちになるのは気のせいじゃない。アースラではフェイトちゃんの事件や、局員研修中でもお世話になったから。あと、恭文君と初めて会った時の一件もだね。恭文君、初めて乗った時はすっごく嬉しそうにして・・・あっちこっち探検とか行ってうろついて、迷子になって丸一日行方不明になって・・・。





なんだろう、恭文君ってやっぱり運無いよね。どうして監視カメラにも映らずに丸一日この中で誰にも会える事無く行方不明になれたんだろう。アレ以来アースラの7不思議の一つとして語り継がれてたって言うし。





まぁ、そこはともかく・・・乗艦してからみんなのデバイスの最終リミッターの解除とか、訓練データの移行とか、そんな色々な準備に追われていると、通信がかかってきた。










『・・・魔王、生きてる?』

「・・・死にそうだよ。いきなり魔王呼ばわりされたから、心が傷ついて傷ついて壊れそうだよ」

『そう、ならよかった』



恭文君だった。あと、それよくないから。・・・こんな時まで意地悪ってどういうことだろ。



『気にしないで。・・・で、現状はどう? アースラに乗ってるんだよね』

「うん。私もだけど、フェイトちゃん達も元気してるよ。ザフィーラさんやシャマルさんにヴィータちゃんも大丈夫。あと・・・リインだね」

『こっちはさっき目が覚めたって連絡が来た。この通信が終わったら、マリーさんのとこに迎えに行く』



リインは恭文君と行動・・・か。なんと言うか、変わらないんだなぁ。あの絆とラブラブ具合は。



『ラブラブって言うな。リインはあくまでパートナーなんだから』

「リインはそう思ってないみたいだけど?」

『・・・言わないで。あの勢いに圧されてるから良く分かるけど言わないで』



まぁ、そこはいいか。で、恭文君はいきなりどうして通信なんてかけてきたの?



『簡単だよ。・・・資料届いてるよね』

「ゆりかご・・・だよね。また物騒なのが出てきたね」

『物騒どころか厨ニ兵器だってアレ。なんなのさ、あの欠点の無い性能。これがドッキリカメラか何かならもうネタばらしして欲しいもん。もう僕達、十分過ぎるくらいに驚いてるし』

「ふふ、そうだね。もうビックリし過ぎてるからこれ以上はいいよね」



なんだろう、恭文君と話してると・・・元気でる。昔からそうだよね、どんな時でもいつもの調子で、ふざけてて、誰が相手でも自分のペースに巻き込んで・・・。だから私、今巻き込まれてるもん。



『あと・・・さ、なのは』

「うん?」

『これ、はやてから聞いたんだけど、六課で保護してた子・・・さらわれたんだよね』



でも、その一言でそんな元気が吹き飛ぶ。思い出したから。焼けた隊舎、砕けた壁や屋根、そして・・・焼けて中から綿が出ているあのウサギのぬいぐるみ。

ヴィヴィオ、さらわれた。まだ小さくて、何もわからないのに・・・さらわれて、どんな目に遭わされているか分からない。



『・・・その子に気に入られて、仲良くなって、それで約束したとも聞いてる。何か有ったら絶対に飛んで行って、助けるって』

「うん・・・約束した。でも・・・ね」



零れ落ちる。心の中に、隠していたものが。溢れる。不安で・・・不安で・・・壊れそうな気持ちが。



『でも、なのははその約束を守れなかった』

「うん。私・・・守れなかった」



あの子が傷ついている可能性を考えても、私は中央本部で戦ってた。いつもと同じように、指示を出して、砲撃を撃って・・・。

なに、やってるんだろ。あの子、きっと怖がってた。苦しくて辛くて訳が分からなくて・・・私の事を呼んでたかも知れない。なのに、私は助けに行くことすらしなかった。私、最低だ。あの子のママになんて・・・なる資格無いんだ。



『・・・一度破った約束はね、気持ち次第でもう一度・・・守り通す事が出来るよ』



俯き、視線を落としていると、聞こえたのはそんな言葉。・・・というか・・・え?



『僕はそうだった。僕も・・・破った。守るって、力になるって約束したのに、守れなかった。力になんてなれなかった。一番最悪な形で破った』



最初は分からなかった。恭文君が思い出すような顔で何を言い出したのか。だって、いきなりだから。



『まだ生まれて1年とちょいしか経ってなくて、小さくて、可愛くて、触れたら壊れそうなくらいに弱いあの子に・・・重荷を背負わせた。自分を守るために僕に殺しをさせたって言う重荷を』



でも、すぐに分かった。・・・リインとの事だ。リインとの事を・・・言ってるんだ。



『でも・・・それでも、守り通せたよ? もう一度立ち上がって、結構危なっかしくだけど、約束・・・なんとか守れた』

「・・・うん、守れたよね。いっぱい苦しんで、いっぱい傷ついて、リインのこと、ちゃんと守れた」



だから、リインだって恭文君の事がずっと大好きで、大事で、あんなにラブラブオーラ出しまくって・・・。私も近くで見てたから分かる。恭文君はちゃんと約束を・・・あ。



『そういうことだよ。まだ終わりじゃないでしょうが。ハッピーエンドは確定じゃないかも知れないけど、まだそれを手繰り寄せられる』



通信の中の恭文君が右手をあげる。そうして・・・ぎゅっと握り締めた。



『現状が納得いかないなら、この手で助け出せばいいんだよ。そうして、ちょっと遅くてもその約束、守り抜けばいい。その子には、謝り倒して許してもらえばいいでしょ』

「ほんとに・・・そう思う? 私、ホントに約束を守り抜けるのかな。というより、許して・・・もらえるかな」



きっと、あの子の心を傷つけた。苦しめた。私に、そんな資格・・・。



『許してもらえるかどうかは知らない。でも、なのはがやらなかったら誰がその約束を守るんだよ。・・・フェイト? はやて? 師匠やシグナムさん達? それとも他の局員の人達? 違うよ、なのは以外の誰にもその代わりなんて出来ない。
その時、約束したなのはにしか、それは守れないんだよ。・・・まぁ、なのはがこのままでいいとか言うなら、仕方ないけどさ』



恭文君がニヤリと笑う。私に意地悪する時によく見せる子どもっぽい表情。それを見せながら、また私を虐める。



「・・・うー、またそういう意地悪する。恭文君ヒドイよ。私がどう言うか・・・分かってるでしょ?」

『さぁ、どうでしょ』



このままなんて・・・嫌だ。うん、絶対に嫌だ。だから、手繰り寄せるしかない。右の拳を胸元で握る。強く・・・強く。それだけで、心に炎が点る。

さっきまでただ思い出して、止まっているだけに近かった心が、動き出す。炎がそのための力を与えてくれる。



『そーだよ。・・・それで、約束した時のなのはで助けるんだよ。そうじゃなきゃ意味が無い』

「その時の・・・私?」

『当たり前でしょうが。そうじゃなかったら、その子だってなんで来たのか分からないし、待っているのはきっとその時のなのはだよ? ・・・局員としてなら、局員として。教導官としてなら、教導官として行けばいいの』

「・・・私、そんなつもりで約束してない」



あの時の約束は、局員としてとか、教導官としてじゃない。あの時約束したのは・・・私自身だ。ただの高町なのはとして、約束したんだ。



『なら、ただの『高町なのは』として戦って、助けなよ。そうすりゃ万事解決だ』

「あの、恭文君? 私にも立場と言うものが・・・ううん、そんなの関係ないよね。黙ってれば分からないだろうし」

『そういうこと』



そうだよね、まだ終わってなくて、まだなんとかなるかも知れないんだ。だったら、戦おう。そうして掴む。私の望んだ未来を。私の・・・この手で。

私の望んだ未来は、あの子を守ること。約束を通す事。局員とか、教導官とかじゃない。昔と同じ・・・ただの高町なのはとして。



『・・・エンジンかかった?』

「うん、かかった。なんか、ダメだね。私ホントにダメだった」

『まぁ、魔王な上にポンコツだしね。それはしゃあない』



だから魔王って言わないでよっ! こんな可愛くて素敵な子を指して魔王なんて言うの、恭文君だけだよっ!?



『なら、僕だけが世界の真実を捉えているんだね、分かります』

「分からないでよっ! ホントに恭文君意地悪だよねっ!!」

『だって、なのは虐めるの楽しいもの』



と、当然のようににっこり笑顔で言い切ったっ!? うー、悔しい悔しいー! どうして私はこんな意地悪な子と友達してるんだろー!!



『だって、なのはは虐められるのが好きでしょ? Mなんだから』

「私Mじゃないよっ! 虐められるのなんて好きじゃないもんっ!!」



ま、まぁ・・・恭文君の意地悪は愛情表現だって分かってるし、最初に会った時みたいに本当に嫌われてるわけじゃないって分かってるし、無関心を装われるよりはずっとマシだって思ってるし・・・。

た、確かにいっぱいかまってくれてるって考え方もあるけど、嬉しいとか考えたことないんだからっ! 私は恭文君にフェイトちゃんにしてるみたいに優しくして欲しいのっ!!



「それならいいもん。みんなにバラすから」

『なにをさ。・・・あ、まさか』



私はニヤリと笑う。ふふふ・・・弱みは握ってるもん。だから作画崩れな笑いが浮かべられるんだもん。



「私がシスター・シオンって言う素敵なシスターに出会った話を克明に」

『やぁぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! それはマジでやめてっ!!』

「うーん、恭文君が私を魔王呼ばわりしないって約束してくれるならいいよ? これからは、私をちゃんと女の子として優しく大事に扱ってくれるって今すぐ約束を・・・」

『それは嫌だ。つーか、なのはは真性Mなんだから虐めないと楽しくないでしょ』



・・・・・・よし、真面目にバラそう。絶対バラそう。というか、私はさっきも言ったけどMじゃないもんっ! しかも真性って付けないでよっ!!



『いやいや、魔王の『ま』は『マゾ』の『ま』でもあるから』

「意味分からないよ、それっ!!」





・・・いつも通りの意地悪な恭文君に虐められる、いつも通りの会話。教導官とか、局員とか、そういうのを抜きにした、ただの高町なのはで居られる時間。

ほんと、不思議だな。私、恭文君と居る時はいつもこうだよ。ただの高町なのはとして、昔通りの私として居られる。それが嬉しくて、幸せで・・・。



で、でも・・・虐められるのは嫌っ! 私は女の子として恭文君に優しくして欲しいのっ!!





「・・・恭文君」

『なに』

「ありがと。・・・励ましてくれたんだよね」

『んにゃ、僕はただ虐めたくなっただけだよ?』





あっさりそう言い切った恭文君の顔を通信越しに見て、苦笑する。・・・分かってるよ、恭文君、私のこと励ますために通信かけてきてくれたんだ。

まだ大丈夫だから、私は私のままでいいって、そう言うために。ありがと、恭文君。私・・・嬉しいよ。

やっぱり大好きで・・・大切な友達だよ。魔王とか真性Mとかって虐められても、私恭文君の事嫌いになれないもん。ずーっとずーっと、好きなまま。



・・・・・・あ、そうだ。それで話があったんだ。





「恭文君」

『なに?』

「・・・はやてちゃん達から聞いた。直接的に狙ってきてる奴が居るんだよね。それも・・・同じ能力持ち」



私がそう聞くと・・・うなづいた。・・・恭文君と同じ能力で、魔力資質は極めて高め。そして、そうとうイカれてるらしい。

ゼスト・グランガイツはリインが居るから大丈夫として・・・こっちはどうするつもりだろ。



「どう戦うつもり?」

『いつも通りにらしく・・・かな。でも、多分普通にはやれない。アイツは・・・絶対に潰して、止めなきゃいけないから』

「・・・そっか」



恭文君は、止めてもきっとやる。現状がそれだもの。だから・・・よし。



「あのね、殺すな・・・なんて言わないよ」

『え?』

「もちろん、殺さないで普通どおりに非殺傷設定を使って止められるなら、そうして欲しい。それは絶対。でも、私は変わらないから。・・・8年も友達だもの。恭文君がどういう子かよく知ってる」



きっと、ずっと苦しんでる。殺した事、それで守りたいものを守れなかったこと。忘れる方が楽なのに、忘れずに・・・抱え込んでる。

そして、たまに口にする。殺すなんて、最悪手だと。そんなことしても、全部守れないと。・・・私、バカだな。恭文君がどういう子か、ちょっと忘れてた。



「変わらないし、変えないよ。恭文君が私の大事な・・・大好きな男の子だって言うのは」

『なのは・・・』



その、あんまりに飛び込み過ぎるから心配ではあるけどね。と言うより、最近はすごく心配だった。現状がコレで、六課という場所が出来たのに全然頼ってくれないんだもん。でも・・・今ので安心した。恭文君は恭文君のままだったから。

意地悪で、素直じゃなくて、私の事をいっぱい虐めて・・・だけど、たまにすごく優しくしてくれる恭文君のままだった。私の大好きな恭文君のまま。



「きっと、それはみんな同じ。だから・・・迷わないで。必要ならためらわないで。私達は大丈夫だから。それで距離を取ったりなんて、絶対にしないから。・・・こういう言い方するのも違うんだろうけど、私はそのせいで恭文君が居なくなるのなんて、絶対嫌だ」

『・・・ありがと。うん、そう言ってもらえてちょっと楽になった。さすがにリインも来てくれるしどうしようかなーとか考えててさ』

「リインも、同じことを言うと思うな。あ、もちろん、しないに越したことはないよ? さっきも言ったけどそれは絶対」

『善処はしとくよ。大事な友達にあんま心配かけたくもないしね』



うん、そうしてくれると・・・とても助かる。・・・やっぱり、心配なのは変わらないから。



「恭文君」

『うん』

「がんばろうね。戦う場所も、戦い方もきっと違うけど、欲しい未来は・・・同じはずだから」

『そうだね、頑張っていこうか』










思いつめていた気持ちが、解けた。教導官としてとか、局員としてとか、六課の隊長としてとか部隊員としてとか・・・そういうのごちゃごちゃ考えていたけど、もうめんどくさいから、いいや。





私がしたいことは一つ。こんなくだらない状況を壊したい。そうして・・・あの子を・・・ヴィヴィオを、絶対に助けたい。





だから、戻る。少しだけ・・・昔の私に。六課分隊長でもない、教導官でもない、ただの高町なのはとして今と戦う。





あの子に守ると、そう手を伸ばした時の私で。きっとその私は、フェイトちゃんやはやてちゃん、恭文君に手を伸ばした私と同じ。





恭文君じゃないけど・・・私のありったけで、全力全開で、認めることも、受け入れることも、見過ごす事も出来ない今を覆す。絶対の、絶対に。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・やる気満々になったなのはとの通信を終えて、少し書庫の調べ物を手伝ってから、僕とアルトはマリーさんの所へ行く。





そうして、合流である。僕の、大事なパートナーに。










「・・・リイン、調子はどう?」

≪お久しぶりですね≫



そうメンテナンスルームに入り、机の上で伸びをしている女の子に声をかける。すると、その子はこちらを見る。



「恭文さんっ! アルトアイゼンっ!!」



そのままこちらに飛んでくる。



「お久しぶりですー♪」



なお、思いっきり私服だったりする。白いシャツにジーンズの上着に白いスカート。リインのお気に入りのおでかけ着の一つ。



「もうすっかり元気ですよー! いつでも暴れられますっ!!」

「そりゃよかった」





そう言いながら、笑顔でガッツポーズをかます。それを見て、なんかほほえましくて笑ってしまう。



だって、全然変わってないんだもん。安心した。





「・・・現状は聞いてるね?」

「はいです。ゼスト・グランガイツと融合騎・アギト、そして恭文さんと同じ能力を持った男。それら相手を私達で・・・古き鉄でする」

≪その通りです。リインさん、久しぶりに一緒に暴れますよ≫

「了解ですっ!!」



また気合入ってるなぁ。墜とされたから落ち込んでるんじゃないかと思ってたのに。でも、これならいけるかな?

なお、この部屋にはもう一人居る。・・・また元気そうじゃないですか。



「まぁな。つか、久しぶりだな」

「はい、お久しぶりです。師匠」



そう、ヴィータ師匠だ。・・・もしかして、師匠も検査で?



「そんなとこだ。あと、一応リインの様子も見て、はやてに報告だな」

「納得しました。・・・マリーさん、それでリインは」

「うん、もう大丈夫だよ。いつでもいける。・・・恭文くん、リイン、アルトアイゼンも気をつけてね。次来る時は定期メンテナンスの時だと嬉しいな」

≪「「はいっ!!」」≫





そのまま、マリーさんにお礼を言って、四人で外に出る。そのまま、廊下を歩く。





「ほい、これが約束のもんだ」



そう言って師匠がメモリーカードを渡してくる。僕はそれを自分の携帯端末の差込口に差して、早速画面を立ち上げる。ぴぽぱ・・・と。



「・・・確かに。師匠、はやてにお礼言っておいてください。助かりました」

「おう」



渡されたのは、はやてにお願いしたゼスト・グランガイツと戦闘機人や召還師のデータ。ま、どこでどういう戦いになるか分からないしね。一応頭には入れておかないと。



≪それで師匠、リインさん。交戦した手ごたえとしては・・・どんな感じでしたか?≫

「・・・そのデータにも書いてるけどよ、騎士ゼストと向こうの融合騎・・・アギトとの融合の相性はあまり良くねぇ。実際、アタシ達が戦ってる時は微妙にユニゾンアタックのタイミングがズレてた」

「ただ、それでも戦闘経験が多いのか・・・コンビネーションでその不安要素を埋めてくるんです。なので、リインもヴィータちゃんも苦戦して・・・」

「やっぱオーバーSでストライカー級は伊達じゃねぇってことだ。油断してっと、お前達でも危ねぇぞ」



・・・なるほど、確かゼスト・グランガイツは無茶苦茶強い魔導師だっけ。確かに油断してると危ないよなぁ。

えっと・・・フルドライブの一撃でグラーフアイゼン・・・半壊っ!? おいおい、どんだけ強いのさっ! グラーフアイゼン半壊させるって、そうとうでしょっ!!



「だから言ったろ? 油断するなってな。ただ・・・」



師匠の言葉がそこで止まった。そして、何かを思い出すように天井を見上げる。



「なんかおかしいんだよな」

「おかしい?」

「いやよ、アタシ達が墜とされる前にアギトがユニゾン・アウトして突撃して来たんだよ。で、大火力魔法撃とうとしてきてな」



・・・ユニゾン・アウトして? またなんで。つーか、あのサイズで突っ込んだらカッコウの的じゃないのさ。



「その様子がなんつうか・・・こう焦ってるつーかなんつーか。騎士ゼストをかばってるように感じたんだよな」

≪・・・何かあると?≫

「まぁ、わからねぇけどな」



かばう・・・か。それって、その融合騎・・・アギトとゼスト・グランガイツのつながりが強いってこと? ゼスト・グランガイツはアギトを道具として扱ってなくて、それにアギトが応えて・・・。



「あ、んじゃアタシはこっちだから」



なんて考えてると、もう別れの時が来た。師匠はこれからアースラ。で、僕とアルトとリインは無限書庫でもうちょい調べ物。



「リイン、しっかりな」

「はいです、ヴィータちゃん♪」

「バカ弟子もだ。・・・アタシも、なのはと同じだからな?」



え?



「んじゃ、またな」



あの、師匠。なんでいきなり僕を見てにやにやし出すんですか。なんか怖いからやめて。



「・・・シスター・シオン」

「ちょっとっ!?」

「ちゃんとリインをうちに帰してくれよー!!」





それだけ言うと、師匠は歩きながら僕達に手を振り、去っていった



あ、あのバカ馬・・・喋りやがったっ! 人の恥ずかしい秘密を喋りやがったっ!! やっぱ魔王じゃないの、あの女っ!?





≪大丈夫ですよ、シスター・シオン≫

「そうですよ、シスター・シオン」

「その呼称はやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





とにかく・・・リインと合流は果たした。



もうすぐだね。もうすぐ、全部決着が付く。ううん、ちゃんとつけなくちゃ。





「あー、それとリイン」

「ダメですよ」

「・・・まだ何も言ってない」

「話は聞いたと言ったはずですよ? ・・・騎士ゼストはともかく、フォン・レイメイに関しては殺すような手を使うかも知れないから、その時は恭文さんとアルトアイゼンだけで戦う。そう言おうとしたですよね」



・・・正解。色々考えたけど、さすがにリインは巻き込めない。これは、絶対に絶対。また、同じ事は繰り返したくないし。

いや、あの時はユニゾンなんてしてなったけど。ただ、それでも・・・。



「・・・絶対にあなたを一人では戦わせない。一人になんてしないしさせない」



・・・え?



「どんな時でも、なにがあってもずっと一緒に居る。離れていたら、心はもっと繋がり、近くなる。だって私は、あなたの一部だから。・・・私、恭文さんにそう言ったはずですよ?」



リインはそのまま僕の前に飛んでくる。そうして、ちょっと怒ったような顔をする。



「でも、今回は今までとは訳が違う。正直、リインにはユニゾン戦だけでいい。汚いのは、僕とアルトだけでやる」

「くどいですっ! リインはその汚いのも含めて、最後の最後まで恭文さんと戦うって決めたですから、もうこういう話はなしですっ!!」

「んなわけにはいかないよっ! リインにまた」

「・・・お願いです。一緒に背負わせてください」



リインが、そのまま僕の頬に手を伸ばす。



「そうやって恭文さんとアルトアイゼンだけで抱えようとしないでください」



小さな・・・とても小さな手が、僕の頬を撫でる。



「重いなら、私に寄りかかってください。頼ってください。私も寄りかかります。恭文さんに頼ります。だから・・・三人で、背負いましょう? 忘れずに、下ろさずに。私達は、三人揃って古き鉄なんですから」

≪リインさん、本当に・・・それでいいんですか?≫

「いいんです。・・・お願いです、せめて・・・こんな時くらいは、そうさせて欲しいんです。なにより、私は何も出来ずに見てるだけなんて、出来ません」



・・・僕はため息を吐く。なんと言うか、強情なパートナーだから。こりゃ説得は無理だと思った。だって・・・僕もきっと、無茶する時は今のリインと同じ目をしているはずだから。



「・・・わかった。なら、一緒に背負おうか。それで、頑張っていこうか。僕達らしいノリでさ」

「もちろんです。そうじゃなかったら、意味無いですから」

「リイン」

「ハイです?」

「ありがと」

「・・・はい♪」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



もうすぐだ。もうすぐ・・・全部終わる。





あの地上本部襲撃から一週間。アタシと旦那は再びミッドの空を飛んでいた。





目指すべき目標はただ一つ。ミッド地上の中央本部。そこに居るはずのレジアス・ゲイズって言うおっちゃん。旦那の因縁の相手。





ルールーの事も心配だけど、今は旦那だ。旦那は・・・もう長くは持たねぇ。だから、きっとこれが最後のチャンス。・・・旦那の意地、通させてやるよ。烈火の剣精の名にかけてなっ!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?










「旦那」

「あぁ、居るな」










反応・・・二つ。しかも、これアタシのデータにある奴だ。一人は・・・あのバッテンチビ。でも、もう一人は・・・おいおい、なんでアイツがこんなとこに居るんだよっ!!





なんて考えている間に見えてきた。上空でアタシ達を待ち受けて居た影が二つ。

一つは例のバッテンチビ。もう一つは・・・青いジャケットにジーンズ、左手にガントレット。それで・・・腰に日本刀。










「やっぱり来たですね」

「だね。・・・初めまして、ゼスト・グランガイツ。あと・・・アギト」

≪すみませんね、少しお時間もらえますか?≫



旦那・・・!!



「蒼凪、恭文。そして古き鉄・アルトアイゼン。・・・ヘイハチ・トウゴウの弟子と元パートナー」



そうだよそうだよっ! 相当無茶苦茶やらかしてるって言うトンデモ魔導師っ!!



「へぇ、僕の事知ってたんだ。これはまた光栄だね」

「すまないがそこをどいてくれるか? 俺はお前達と戦う道理がない」

「悪いけどただって訳には行かないね。・・・なんのためにレジアス・ゲイズ中将に会いにいくのか聞かせてもらわないと」



やたらとニコニコしながらそう言ってきたのは、目の前のチビ。



「誰がミジンコだ?」

「誰もんなこと言ってねぇよっ! つーかいきなりにらむなっ!!」

「恭文さんにチビって言わない方がいいですよ? 怒りますから」



あぁ、こいつやっぱヤバイっ! つーか、どんだけ過剰反応っ!? よし、絶対チビ呼ばわりはやめようっ!!



≪用件は・・・復讐・・・ですか?≫



デバイスがそう言うと、旦那が首を横に振った。



「ただ、昔の友人と話がしたいだけだ」

「なるほど・・・。恭文さん、どうします?」

「なら、行っても問題ないよね」



・・・・・・・・・へ?



「・・・いいのか?」

「だって、僕局員でもなんでもないし。つーか、これが復讐でも止める権利なんざない。あのおっちゃん殺して気が済むなら・・・殺せば?」

「リインは一応局員ですけど・・・自業自得と言う言葉もありますし。なにより、本当にお話したいだけなら、止める理由ありませんよね」

≪まぁ、これで突入したら普通に侵入で犯罪ですけど・・・バレなきゃいいでしょ≫



平然とそう言い切ったのに、私も旦那も唖然とした。じゃあ、なんでここに来たんだよっ!? 意味分からねぇしっ!!



「なら・・・旦那」



とにかく、コイツは邪魔するつもりないらしいし、それならとっとと行って話聞くだけだっ!!



「あぁ、行くぞアギト」



そうして、アタシ達が飛ぼうとした瞬間



≪Stinger Rey≫



アイツの左手が動き、アタシと旦那を狙って青い閃光が二つ飛んできた。

アタシは左に飛んで回避。旦那も、頭を狙って飛んできたそれを首を動かしてなんとか回避。旦那の右頬に血が流れる。かすったんだ。



「・・・これは何の真似だ」

「話は最後まで聞けよ、おっさん。全く、ここでいきなり出てくれば通してあげてもよかったんだけどねぇ・・・」

「よかったんですけどねぇ・・・」



二人揃ってそう言いながらため息を吐く。・・・わけわからねぇ。マジでコイツら訳がわからねぇ。



≪残念ながら、あなた達はここを通る前に、私達に通行料を払わなくてはいけません≫



つ、通行料っ!? なんだよそれっ!!



「あー、そこの妖精」

「な、なんだ」

「一つ確認ね。・・・ホテル・アグスタでいきなり僕にどこぞの配管工のおっさんが白い帽子かぶった時みたいに、ファイアーボールかまして来たの、お前?」



・・・・・・はぁっ!?



「今回の一件で炎熱系の攻撃するの、今の所お前しか居ないのよ。ほら、早く教えて」

「・・・そうだよ、あん時お前に攻撃したのは、アタシだ」



いや、ガリューが危なかったしな。旦那も別件で居なかったし、しかたなく介入して・・・。



「そっか、良かったよ。これで・・・」



ソイツがにっこりと笑った。瞬間、アタシの身体に寒気が走った。そして震えが走る。

旦那も・・・同じらしい。デバイスを・・・槍を出して、構えた。



「お前らを叩き潰す理由が三つになった」





アイツの身体から放たれるのは・・・殺気。それも相当量。局の魔導師や例の部隊の奴らからは感じたことのない類の殺気。

殺すと決めたら、躊躇い無く殺す。人を手にかけた奴だけが出せる突き刺すような殺気。そっか、わかった。なんでコイツを見てヤバイとか感じまくっていたのか。



コイツはどちらかと言えば・・・旦那や、アタシ達側の人間なんだ。





「・・・だから、どういう事だ」



旦那が警戒を緩めずに再度聞くのも当然だ。だって、マジで訳わからねぇし。



「まず一つ」



そいつは右の指を人差し指から一本ずつ上げて、説明していく。



「師匠とリインが一週間前に世話になった礼をしたい」



自分達がアタシ達を邪魔する理由を。



「二つ、そこの赤妖精にあの時の礼をしなきゃいけない」



次に中指が上がる。



「そして三つ目」



最後に、薬指が上がる。そう、三本の指が上がった。



「お前ら揃いも揃って僕達に喧嘩を売ってきた。・・・ほら、お前らを通さないでここで潰す理由としては、十分でしょ?」



両手を大げさに広げて、そう言ってきた。どこかにこやかな笑みと・・・突き刺すような殺気は変わらぬままに。



「リインはそれにもう一つありますよ? ・・・ちゃんとお話してくれれば力になるって言ったのに、全然話してくれない悪い子のあなた達には、なのはさん仕込みの『お話』をするですっ!!」

≪全く、あなた方・・・本当にバカですね。高○健だってもうちょっと上手く立ち回れますよ? 不器用不器用って言えばなんでも済むと思ってるでしょ≫



バカ・・・だぁっ!? てめぇら、旦那がどんな思いしてここに居るのか、分かってんのかっ!! 大事な友達に裏切られる形で死んでっ! それで生き返っても身体ボロボロで、汚れ仕事ばかりやらされて・・・!!



「関係ないね」



殺気が強くなった。にらまれる。それだけで・・・アタシの身体の震えが激しくなる。気をしっかり持ってないと、歯がガチガチと噛みまくって音を立てそうだ。



「つーか、分かるわけねぇだろうが」



鋭く・・・アタシ達の心を射抜くように。



「お前ら、リインの言うように何も話さないじゃないかよ。ついでに僕の友達でもない。んな奴の気持ちなんざ、配慮する義理立てなんざないんだよ。だって、僕・・・局員でもなければ正義の味方でも無いし♪」

「そういうことです。だから・・・『お話』なんですよ? どうにも言葉でお話は無理そうですから、肉体言語でしっかり話していきたいと思います♪」

≪と言う訳ですから・・・始めましょうか。あぁ、抵抗せずにおとなしく攻撃されてくれれば、すぐに通れますけど、どうします? もちろん、動けなくなるまで徹底的にボコりますけど≫



アタシ達をバカにするように言ってきたのは、目の前のふざけた奴ら。出てきてから今の今までわけのわかんねぇことばっか言って、結局邪魔しやがって・・・!!



「ならば・・・通させてもらう。アギト」

「おうっ! ユニゾン・・・インっ!!」





そうして、アタシは旦那と一つになる。旦那の身体を赤い魔力が包み、その姿を変える。



赤の瞳と金色の髪。そして、小手が金色に変わる。・・・これがアタシと旦那のユニゾン形態っ!!





「なっ!?」

≪こ、これは・・・!!≫

「やっぱり・・・凄いですっ!!」





ふふふ、驚いてるなっ! 特にバッテンチビっ!! お前はよく見てろっ!? 一度負けてるお前とアタシとじゃ、格ってやつが違うんだよっ!!





≪「・・・スーパーサイ○人だ」≫

「ですよねっ!? やっぱりそうですよねっ! あぁ、リイン生で見れて嬉しいですー!!」





をい。





「ちょっとちょっと、やばいよやばいよっ! いくらなんでもスーパーサイ○人は僕達勝てないよっ!! 誰かー! 今すぐフリー○とかセ○とか呼んできてー!!」

≪いや、それよりもベジー○でしょ。いや、むしろここは主人公に・・・≫

【スーパーサイ○人じゃねぇっ! 確かにちょっと似てるけど言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!】

「・・・アギト、スーパーサイ○人とはなんだ?」



旦那、アンタは知らなくていい。マジで知らなくていいから。



「あの、サインもらえますかっ!? 昔からドラゴンボー○はファンだったんですー!!」



そう言って、バッテンチビはよいしょと言いながら四角くて分厚い用紙を・・・。



【・・・って、やるわけあるかぁぁぁぁぁぁっ! なに普通にサイン色紙用意してるんだよっ!! そしてスーパーサイ○人でもドラゴンボー○でもねぇって言ってるだろ!?】

「・・・サインすれば通してくれるか?」

【旦那も乗るなぁぁぁぁぁぁっ!!】



こ、こいつらマジでわけがわからねぇしっ!!



「まぁ、からかうのはこのくらいにしておきましょうか」

「そうだね」

≪いや、面白かったですね。いいストレス解消になりました≫



からかわれてたのかよっ! そしてストレス解消って臆面もなく言い切りやがったっ!!



「それじゃあ・・・リインっ! いくよっ!!」

「はいですっ!」



そう言うと、アイツの身体とバッテンチビの身体を青い魔力光が包む。そしてそのまま・・・。



「ユニゾンっ! インっ!!」





目の前の二人が一つになる。・・・青い魔力光の中で、変化が起きる。青いジャケットが消え、黒のインナーがバッテンチビのバリアジャケットの上の部分と同デザインになる。

そして、腰にも同型のフード。ただし、色は白じゃなくて青。ジーンズは少しだけ明るめの色へと変化し、シューズがこれまたバッテンチビと同型の黒い金属製の靴に変わる。



左手に装着しているガントレットが明るい白銀に染まる。そして・・・アイツの髪と瞳が、それぞれ色調が異なる空色に染まった。



その次の瞬間、アイツらを包んだ青い光が弾けて、雪となり、その周辺を舞う。・・・なんつうか、綺麗だ。場違いだけど綺麗だ。



待て待てっ! これってまさか・・・ユニゾンっ!?





「・・・なるほど、だから俺達の前に出てきたと言うわけか」



つまり、ユニゾン出来るアタシ達の相手をするために・・・かよ。くそ、あのバッテンチビ、どんだけロードが居るんだよっ!!



【恭文さんはロードなんてものじゃないですっ! いえ、それを遥かに凌駕していますっ!!】

【はぁっ!?】

【恭文さんは・・・リインの大好きで、大切な人ですっ! だって、リインは恭文さんの元祖ヒロインですからっ!!】



なんか無茶苦茶バカでアホな発言を、すっげぇ嬉しそうに言い切りやがったっ!?



【だって、リインは恭文さんの元祖ヒロインですからっ!!】

【二回も言うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!】

【何言ってるですかっ! 大事な事は二回言うものなんですよっ!?】

【訳分からねぇよ、お前っ!!】



・・・あぁもうっ! こいつらのペースに巻き込まれるのはもううんざりだっ!! つーか、元祖ヒロインってなんだよっ!? バッテンチビは絶対性格変わってるしっ! この間とは全く別人じゃねぇかっ!!



【旦那っ! コイツらと喋っちゃだめだっ!! 喋るだけ人生の損だよこれっ!!】

「ひどいこと言うね。・・・まぁ、いいや」





そう言いながら、アイツが腰のデバイスに手をかける。そして・・・構える。





「潰せば人類みな同じだ」

≪正解です。そういうわけですから・・・あなた方の粗末な神経、今から三枚に下ろしてあげましょう≫

「お前達・・・僕に、釣られてみる?」

【もちろん、答えは聞いてません♪】





その変わらないふざけた様子を見ながら、旦那の身体が動く。・・・そう、旦那も同じくだ。槍の切っ先をアイツに向ける。



そして、そのまま・・・!!





【【「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」】】










アタシ達は、ミッド上空でこのわけのわかんない連中とぶつかる事になった。




















(ミッション07へ続く)





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あきゅろす。
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