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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース04 『ギンガ・ナカジマとの場合 その4』:2



「・・・フィアッセ、久しぶりー」

「ゆうひっ! ・・・うん、本当に久しぶりっ!!」



そうして、校長室に到着した。で、二人感激で抱き合ってる。・・・なお、フィアッセさんとゆうひさんは友達同士です。なんかゆうひさんがスクール在学中に知り合って、それから姉妹のように仲が良いらしい。

・・・いや、違うか。その時スクールに居た在校生全員姉妹みたいに仲が良いらしい。フィアッセさん曰く『お姉ちゃんが沢山居る状態』・・・とか。



「・・・あの、なぎ君。この方は?」

「あ、フィアッセさんの友達で、ここの卒業生なの。こっちの世界だとそうとう有名な歌手さん」

「椎名ゆうひです。よろしくなー」

「あ、ギンガ・ナカジマです。あの、初めまして。よろしくお願いします」



ギンガさんがペコリとお辞儀すると、ゆうひさんも同じく返す。でも・・・なぜかそのすぐ後に僕とギンガさんを見比べてにやにやし出した。



「・・・あの、なにか?」

「いや、恭文君も成長したなぁ思うてな。うちが会った時は、まだよちよち歩きの赤ん坊やったのに」



ヲイ、マテ。今のほんの数秒の行動で、おのれの頭にいったい何が浮かんで結びついた? ちょっと詳しく聞きたいんですけど。



「え、そんな頃からなぎ君と・・・?」



そしてギンガさんも信じるなっ! どうしてそうなるっ!?

あ、でもちょっとからかおうかな。



「そうですよね、そんな頃からお世話になってますよね・・・」

「なぁ、覚えてる? うちがオシメ変えたりしたやんか」

「覚えてますよ。ゆうひさん、とても手際が良くて、いいお母さんになるなぁって思ったんですから」

「えぇっ!?」



ギンガさん驚いてるなぁ。なんでだろう、僕の経歴は知ってるはずなのに。



「で、あとこれも覚えてるか? 自分、うちがお風呂入れてあげた時に、うちの胸をおっぱいと勘違いして食いついてきたんよ?」



アウトォォォォォォォォォォォッ! それ多分ブッチギリでアウトォォォォォォォォォォォォッ!! でも、のっちゃおうっと♪



「・・・いや、覚えてませんよ?」

「いや、覚えてるやろ。それだけやのうて、赤ん坊なのにうちの身体を舐め回すように・・・」

「・・・すみません、出来心だったんですっ!!」

「な、なぎ君・・・そんなことしてたのっ!?」



いや、ゆうひさんのノリは変わってないなぁ。・・・やっぱり年齢からか、シモにオープンになってるのが非常に気になるけど。あぁ、メガーヌさんを思い出してしまった。



「・・・と、まぁ冗談はこの辺りにしておいて」

「冗談だったんですかっ!?」

「さすがにないって。ゆうひさんとは、普通に魔導師になってからの知り合いだよ。まぁ、ちょっと色々あったけど」

「そうやな、色々あったなぁ・・・。うちが学校遅刻しそうになって必死に走っとったら、恭文君も同じように走っとって、それで曲がり角でぶつかって・・・」

「ゆうひさん、もういいですから。つーか、それはどこの恋愛漫画ですか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、ゆうひと二人で話があるから、恭文くんとギンガちゃんには少しだけ席を外してもらった。





説明しないと・・・いけないよね。昨日と今日で大きく変わった現状について。










「・・・フィアッセ、もう一度聞くな。それはホンマなんやな」

「うん、間違いないみたい。明日のコンサート・・・かなり危ない」



いちおう中止も考えた。事前情報はあるわけだし、それだって選択。でも・・・エリスと恭文くんが言ってくれた。絶対に守るからと。

だから、開く事にした。いろんな意味で、覚悟を決めて。



「なるほどなぁ、それで恭文君が居るわけか。あの子もこてっちゃんも、小さいのにむっちゃ強ぇからなぁ」

「・・・違うの」

「え?」

「恭文くんは今回、本当にただ私が招待しただけなの。ギンガちゃんも同じ。つまり二人とも・・・」

「偶然巻き込まれてしもうたと・・・。なぁ、フィアッセ。もしかしなくても、あの子の運の無いとこ、変わって無いんか?」



変わって・・・無いね。うん、変わってない。いろんな意味であの子は、出会った頃のままなんだよ。

あ、もちろん成長はしてるよ? うん、それも本当。でも、もう少しだけ変わっていいんじゃないかなとは、ちょっと思った。



「とにかくゆうひ、明日のコンサートは」

「うちも居るよ」



でも・・・なにが起こるかわからないんだよ? どうなるかも分からなくて。



「そんなの、どんな舞台でも普通のことやろ。まぁ、度合いはちょっとこっちの方がデンジャラスやけどな。・・・大丈夫や、きっとなんとかなるって」

「・・・うん、そうだね」

「なにより、フィアッセの大事な婚約者が頑張るんやからな。問題ないやろ」

「うーん、もう婚約者じゃないかもしれないんだ」



私がそう言うと、ゆうひが少し驚いた。でも・・・納得したみたい。やっぱり気づくよね。ギンガちゃん相当だから。



「つーか、アレはガチやろ。うち、見て一発で気づいたよ。いやぁ、若いってえぇなぁ」

「ゆうひ、そういうこと言うと、自分は若くないって言ってるのと同じだよ? まぁ・・・私も思ったけど」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・スクールの活気はどんどん高まる。ギンガさんと二人で歩きつつ、そんな風景を見て・・・それを感じ取ってた。





やっぱり、ここには詰まってる。夢と願いが。・・・なんか、いいな。

スクールの人達にとって、きっとここは大事な居場所で、歌うことはやりたいことで。だから・・・あんなに輝いてるんだろうと。それを見て思った。純粋に、うらやましいと。

だって、僕にはそういうのが戦う事以外ではやっぱり無いから。行きたい場所も、やりたいことも。フェイトの隣・・・ってのも考えるけど、きっとそれはまた違う。そうじゃなくて、こう・・・。










「・・・なぎ君」

「うん?」

「ここって、いい所だよね」



・・・・・・そうだね、僕もそう思う。だから見てて、色々考えるし、元気も出てくるんだ。



「明日のコンサートの歌を聞いたら、もっとそう思うよ。在校生の人達だって、厳しい試験をクリアしてここに居る人達ばかりだから。あ、でももう一つ聴いて欲しいものがあるんだ。・・・フィアッセさんとゆうひさんの歌」

「あのお二人、そんなにすごいの?」

「すごいよー。・・・ステージで本気で歌うフィアッセさんとゆうひさんの歌はね、本当にすごい。聴いてるだけで心が温かくなって、幸せになって・・・泣いちゃうの。感動って言うのとは違う。心の中が幸せで一杯になるの。それで泣いちゃうんだ」



僕、びっくりしたな。何度か今回みたいに招待してもらう事があったから、それで聴いたんだけど・・・毎回泣いてしまう。もう『すごくよかったです』しか言えないくらいに心が満たされて・・・。

だから、余計にこだわっちゃうのかな。あれが聴けなくなるのが・・・後世に続いていかないのが・・・やっぱり嫌だから。



「・・・そっか。それはちょっと興味あるかも。私、歌を聴いてそこまでになった事がないから」

「だったら余計に聴いて欲しいな。人生観、変わるよ。フィアッセさんの歌聴いてから、僕も歌聴くのも歌うのも好きになったから」

「そう言えば・・・私、なぎ君の歌聴いたことない」



・・・そう言えば、僕もギンガさんの前では歌ったことないや。カラオケ行く機会も無かったから。



≪この人、周りにフィアッセさんやフェイトさんのような歌唱力の高い人間が多いせいか、歌は上手いですよ? もちろん、フィアッセさんやゆうひさんレベルではありませんけど≫



当たり前だよ。勝てたらむしろ怖いって。相手はプロよ? 世界の歌姫達よ?



「でも、聴きたいな。なぎ君の歌」

「・・・別に聴かせてもいいけど、ギンガさんも歌わないとダメだよ」

「あの、ダメっ! 私はだめっ!! そんな聴かせられるように上手じゃないからっ!!」

「なら僕も歌わなーい。僕だけなんて不公平だもの」



僕がそう言うと、ギンガさんが赤い顔をしてうんうんうなり出した。・・・ふふ、ギンガさん困らせるのは楽しいなー♪



「なら・・・頑張る」



あ、なんだか譲歩した。顔真っ赤にして・・・そんなに恥ずかしいのか。



「でも、ほんとにほんとにそんなに上手じゃないの。あの・・・笑ったりしないでね」

「・・・笑わないよ」



少しだけ足取りを早くして、ギンガさんの進行方向に先回り。それからターンさせて、後ろ歩きしながらギンガさんを見る。



「ギンガさんが一生懸命歌うんだもの。笑ったりしないで、ちゃんと聴いてるよ」

「・・・・・・うん」





さて、これから・・・だね。



なんにしても、まず準備だ。





「ギンガさん、僕・・・またちょい出てくるわ」

「あ、うん。でもどこ行くの?」

「ちょっとだけ、錆を落としてくるの」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、再び中庭。なお、今回は結界を張って周りから見えないように・・・って、なんで居るのっ!?





そう、ギンガさんも付いてきた。うぅ、あんま見られたくないのに。










「錆落としって・・・なにするのか教えてくれなかったからだよ」



少しだけ、真剣な顔でそう言ってきた。教えてくれなかったら、絶対に納得しないと。



「・・・分かったよ。これ」



で、僕は正直に出した。すると、それらを見てギンガさんは当然表情を曇らせた。



「・・・なぎ君」

「普段はアレだけどね、でも・・・今回は使う」



僕が出したのは、暗器類。鋼糸一揃えに飛針に小刀。そう、御神流の武具。

JS事件の時には手持ち分だけじゃ足りなくなって、カリムさんに調達頼んだのを反省として、常備分を増やした。なので、いつでも戦争出来るくらいはある。



「これ・・・前に教えてくれた暗器って言うのだよね。もっと言えば、こっちの世界の昔の質量兵器」

「質量兵器って・・・。んな拳銃やミサイルほど火力も範囲も無いって」

「でも、殺せる。・・・ううん、殺すための武器だよ。非殺傷設定も当然無い」

「当たり前でしょうが、魔法じゃないんだから」





やっぱり反対気味かぁ。うぅ、前に問い詰められて教えた時も、相当だったからなぁ。絶対使わないでと何度言われたことか。でも、たまに使っちゃうからそれでまた怒られるのよ。

とにかく、話しながら準備をする。左手を地面に当て・・・ブレイクハウトっ!!



そうすると、数十メートル前の地面が隆起して、5つの的が出来る。形状としては、人体を模した巻き藁みたいなの。そのまま左手首のホルスターに付けている飛針を取り出し、投げる。

真ん中の的を射抜くような速度で飛び出した飛針は、その切っ先から真っ直ぐに的の首の部分に突き刺さった。





「なぎ君、やっぱりだめだよ。こんなの使ったら、また・・・」

「殺すかも・・・知れないね」



そのまま、次は右の二つを狙って投擲。狙ったのは、今度は右手。・・・狙いたがわず、しっかりと突き刺さる。



「だったら、ダメ。使うのなんて・・・ダメだよ」

「それで殺されるのは、もっとダメでしょ」



左手から鋼糸を巻きつけたリールを取り出す。糸の番号は一番細い0番。そのまま、それを投擲する。狙うのは、右の二つ。

その先に錘を付けた鋼糸は、その重さによって一種の投擲武器へと姿を変えている。僕が左手をくんと動かすと、そのまま的二つに巻きつく。



「それに、ギンガさん知ってる?」



その直後に僕は更に左手を動かす。もっと言うと・・・引く。

すると、糸はその輪を小さくするために動く。つまり・・・二つの的を縛り上げる。・・・否。そのまま的二つを輪切りにした。



「魔法無しで戦うって、こういうことだよ? 非殺傷設定になんて、頼れるわけがないでしょうが」





輪切りにされた土人形が地面に落ちる音が響く。そして、リールを操作して鋼糸を回収する。・・・さすがに0番はいいね。凄く切れる。でも、これが人の身体だったら魔力なしでは無理。

人間の身体って、意外と丈夫よ? 皮膚には油があるし、肉にその奥の骨。斬ろうと思って簡単に両断出来るもんじゃない。僕は美沙斗さんや恭也さんみたいに達人ってわけでもないしなぁ。・・・とにかく、もう一度地面に手を当てて・・・ブレイクハウトっ!!



すると、今度はその手前の地面が隆起して、同じく人体を模した的が今度は1つ出来上がった。距離は30メートルほど。そしてアルトを抜いて・・・構える。ただし、いつもの正眼や蜻蛉の構えじゃない。

右手を引いて、アルトの切っ先を前方に向ける。そして・・・峰に左手を添える。まるで、それで照準を定めるように。・・・ま、こっちも必要かもしれないから、いちおう復習。





「どうしても・・・やるんだね」

「やらなきゃいけない事だから。・・・もちろん、殺すことが正しいことだなんてこれっぽっちも思ってない。むしろ最悪手だと思う。でも・・・それでもやらなきゃいけないなら、やる。そして背負う」



集中する。・・・美沙斗さんに突きを教えてもらったことがある。僕は体格も小さいし、腕力も魔法なしではあまりある方じゃないから、一撃必殺の手段として。と言うより・・・実戦形式で強制的に叩き込まれた。なお、拒否権はありませんでした。だって、美沙斗さんは僕が魔導師だってこと知らないから。魔法ありますから大丈夫ですなんて、言えなかった。

まぁ、突き技なんて普段は使わないけどさ。・・・マジで殺す技だし。非殺傷設定使えるなら、そっちの方がいいじゃないのさ。



「戦うって、殺す殺さずに関わらずそうでしょうが。結果は背負うしかないんだよ。それに・・・知ってる?」



そのまま、真っ直ぐに踏み込む。もち、魔力は無し。・・・それでも、距離が一気に縮まる。今まで・・・魔法無しでも戦えるように訓練してきた成果。取りこぼしたくなんてなくて、迷いたくなんてなくて、その気持ちに従って真っ直ぐに進んできたから得られた力。

そして、それを次はアルトに込める。そのまま・・・!



「はぁっ!!」



アルトの切っ先を、土人形の胸元に突き込むっ!!

すると、綺麗に切っ先は土人形を貫いた。そのまま刃を返して・・・右に向かって中から抉り斬るっ!!



「前に読んだ漫画のセリフだけど、人を救うって、殺すこと以上に、ずっと覚悟が居るんだよ? 少なくとも、これくらいはね」



土人形は、胸元から右に綺麗に胴を斬り裂かれた。・・・うん、これもいい感じ。やっぱ手札は多く蓄積しておくもんだね。これだけあればなんとかなりそうだよ。あと徹や斬に雷徹もあるわけだし。



「でも・・・その分、そっちの方が強い。だから背負うの。覚悟を決めるの。忘れず・・・下ろさずね。ギンガさんだって、同じでしょ? だから局員やってる」

「なぎ君・・・」

「まぁ・・・アレだよ、ようするに何が言いたいかと言うと・・・止まれないってこと」





腰から左手で鞘を抜く。そうして、逆手に持ったそれを人形の頭に打ち込む。



ただし、普通にじゃない。使うのは徹。御神流の内部破壊の技。で、僕の得意技の一つ。





「ごめん、また心配かけちゃうけど」





響くのは轟音。それは鞘が人形の頭に打ち込まれた音。そして、その次の瞬間・・・。





「使用出来ないのは無理だわ」










人形の頭は、見事に砕けた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、納得してくれた・・・いや、そういうことにしておいて。





とにかく、納得してくれたギンガさんには戻ってもらって、僕はそのまま訓練継続。一応教えてもらった技を一通り試す。で、結果は良好。





普段使わないって言っても、身体に染み付いてるものだしね。簡単には錆びたりしないか。今更だけど、恭也さん達に心から感謝だよ。










≪マスター≫

「なに?」

≪出来るなら・・・殺さずに済ませたいですね≫

「だね・・・」



出来るなら・・・だけどね。つか、僕は殺しなんてやりたくないのよ。肯定もしたくない。そこは絶対に変わらない。

ただ、守るためにそれが必要な手なら、躊躇いたくない。それだけの話。



≪それで、話は変わりますが≫

「ほい?」

≪通信がかかっています。相手は・・・フェイトさんです≫










・・・なに、また全力全開なお話タイム? あぁ、鉄火場は目前だって言うのに、どうしてこうなるのさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・ヤスフミ、はやて今ちょっと忙しいから、私から報告するね。さっきはやてからギンガと話してもらった』

≪ギンガさんだけでも帰るように・・・ですよね≫

『そうだよ。でも、ギンガは納得してくれなかった。ヤスフミ残して帰れないし、なにより・・・ヤスフミの側に居たいんだって。こんな無茶しても、一人じゃないってちゃんと知って欲しいから、だから迷惑かもしれないけど残るって、聞いてくれなかったよ』





・・・バカ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが。ぶっちぎりで規約違反なのに。



うーん、そうすると色々不確定要素が出てくるな。・・・雑魚だけでありますように。強敵とか出ませんように。そうして頂けると、主に僕が嬉しいです。





『それで、ナカジマ三佐にも事情説明して話してもらう事になった。でも・・・どうなるか分からない』

「だろうね、ギンガさん強情だもん。あ、僕は無理だったよ? 知ってるかもしれないけど、ちゃんと話はしたんだから」

『うん、はやてから聞いてる。・・・ヤスフミ、本当に戻れないんだね』

「・・・うん」





ごめん、また傷つけるわ。でも、止まれない。迷いたくも無いし、躊躇いたくもないの。



そうして取りこぼすのなんて、絶対に認められないから。





『あのね、ヤスフミ。私・・・前に言ったよね、ちゃんと話したいって』

「うん」

『それって、こういうことについてなの。ヤスフミ・・・いつも無茶して、飛び出して、色んなもの振り切って・・・そういうのやめて欲しかったんだ』



・・・フェイトも・・・か。どうやら、僕はそうとう心配かけまくってたらしい。



『もし昔の事が原因でそう思うなら、忘れてもらいたかった。本当に、本当に少しだけでいいから、自分を大事にして欲しかった。・・・その、今までは一つの形として局員というのを進めてたけど、そうじゃなくて・・・やりたいことや、行きたい場所。自分だけのそういう・・・夢って言うのかな。そういうものを見つけて欲しかったの』

「・・・そっか、同じだね」

『うん。・・・同じ?』

「ほら、ここ最近僕、ギンガさんと一緒の事多かったでしょ? ギンガさんもね、同じこと言ってた。僕は、昔の事で・・・自分を奪った人間だと思う事で、そういうやりたいことや行きたい場所・・・自分の夢を持つ事を諦めてるって。ギンガさんがずっと僕に部隊に入らないかって声かけてくれてたのね、それが原因みたい。
分からないなら、見つからないなら、まずは居場所を持って・・・そこから探してみてもいいんじゃないかって。僕が諦めてるの、友達として見てられないとも言われたよ」





諦めてる・・・よね。何をどう諦めてるのか分からなかったけど、今は少しだけ分かる。





『そっか・・・。そうなんだ。私、やっぱり遅いな』

「遅いってなにさ」

『ギンガに先越されちゃった。私の言いたい事、もうヤスフミはちゃんと分かってるんだもの』





うん、ようやく分かった。何をどう諦めているのか分からなかったけど、ようやく分かった。



僕、自分の先の事を諦めてたんだ。





『なら、忘れることも・・・選択だよ? 少なくとも、ヤスフミがその道を選んでも、誰も責めないよ。少なくとも私は』

「それは、無理だわ」

『それは、自分が変わると思うから?』

「そうだね、変わる。きっと・・・変わる」



容易に想像出来るから。殺す事を・・・壊したことを忘れた人間は、きっと狂う。そこに喜びを見出す。

僕なんて、あっと言う間だよ。ただでさえ真性バトルマニアの気があるんだから。



『なら、どうするのかな。忘れなかったら、ヤスフミはずっと自分を奪った人間だと思って・・・諦め続けることになるよ。私はそんなの認められない。そんなヤスフミ、私は見たくない。
もしそうなるなら、私は誰がなんて言おうと忘れて欲しいって言い続ける。忘れてもヤスフミはきっとそんな風になったりしない。なるわけがないって、言い続ける。・・・家族だもの。家族がそんな寂しい道を歩くなんて、絶対に・・・絶対に認められないよ』

「分かってるよ。だから・・・ね、諦めない事にした。でも、忘れることもしない」



・・・きっと、そこからなんだ。



「忘れず、下ろさず・・・はきっと変わらないし、変えられない。変えたらいけないから。飛び込むことも変わらないかも知れない。でも・・・その、ちょっと勇気使うけど、少しだけ枷を外すことにする」



前にギンガさんに言われたことだね。縛っている部分は外してもいい。忘れたらいけないかも知れないけど、それでも・・・そこを外す事は許されるからと。



「それで、探す。僕のやりたいこと、行きたい場所。かっこいい言い方すると・・・夢を。それくらいはきっと・・・許されるから」





先生みたいに旅をするとか、強くなるとか・・・そういうのとはまた違う。

僕だけの・・・僕が居たいと思う場所を、そこでやりたいことを見つける。今までとは違う物を探していく。



そうして、始める。新しい自分を、少しずつでもいいから・・・確実に。





『・・・きっと、すごく難しいよ。それは。忘れた上で、まっさらにしてから新しい自分を始める方が正しい選択だと、私は思う。多数決を取ったら、きっとそう言う答えが出るんじゃないかな。忘れても、狂ったりなんてしないで幸せになる道は、きっとあるよ』

「でも、それは世界の答えであって僕の答えじゃない。・・・忘れていいことなんて、なにもない。今日までの記憶と時間が全て必要で、幸せだから。だったら、なにも忘れずに幸せになっていけなかったら・・・ダメなんだよ。これが僕の答えだから」



迷う事なんてなかった。忘れない。下ろさない。だって、全部必要で、幸せなんだから。僕の答えはとうに出てた。ずっと前に。

アルトと、リインと一緒に戦って、三人で掴んだ大事な答え。そこから全部始まって、今に繋がってる。・・・そうだ。僕は迷う必要なんて、なかった。



『・・・ホントに、ホントに強情だ』

「んなの当たり前じゃないのさ。僕、フェイトの弟だよ? 筋金入りの頑固が何を言うか」

『そうだね、私達姉弟だから・・・似てるのは当たり前か』



・・・そうだね、姉弟だから・・・あれ?



『ヤスフミ、どうしたの?』

「あ、ううん。なんでもない」



なんだろ、僕・・・今フェイトが姉弟って言った時、すごく自然に受け入れて・・・というか、自分から弟って・・・。

前は嫌だったのに、あんまりそういうの感じなくなってる。



『あ、それと・・・きっと許されるよ』

「ん?」

『ヤスフミが自分の夢を持つことは、そのために少しだけわがままになることは、きっと許されるよ。・・・なのはもね、同じ事言ってたよ』



・・・全く、あの横馬はなんであぁ色々見抜くのさ。わけわかんないし。



「それで、はやてにね」

『部隊に入る選択も考えて欲しいって言われたんだよね。自分が局を変えるから。ヤスフミが飛び出さなくてもいいように、今ある矛盾ややるせなさを変えていくからって』

「うん、言ってた。・・・まったくあの狸は。本気で出世街道まっしぐらってどういう理屈さ」

『はやてだって同じ事を思ってたからだよ。ヤスフミ、知ってるよね? だから六課を作ったんだもの』



知ってますさ。友達で、近くで見てたから。でも・・・なぁ、僕みたいな無茶苦茶する経歴の持ち主を受け入れる部隊がいくつあるか。大体どこも無茶しないのを条件に提示してきてたし。

108は少し躊躇う。やっぱり、ゲンヤさんやラッドさん、ギンガさん達に迷惑はかけたくない。・・・って、これも違うか。枷は外していくって、決めたんだし。



「ま、そっち帰ってからゆっくり考えるよ。めでたく自宅勤務に戻るわけだし、時間はたっぷりあるもの」

『あんまり自信を持って言えたことじゃないけどね。私達のこと放り出して、フィアッセさん守りに行っちゃうんだもの』

「うっさい、そこ言わないで。自分でもバカやり過ぎてるなとか思ってるんだから」

『うん、バカだね。本当にバカだよ』

「うー、言うなー!!」



なんて言ってるけど、僕もフェイトもちょっと笑ってたりする。・・・あれ、なんだろこれ。今までとなんか違う。

こう、今までより素直に話せてるというか、楽と言うか・・・落ち着くと言うか。



『あと、ヤスフミ』

「うん」

『最後に二つだけ約束して欲しいの。まず一つ・・・御神流の技を使ったり、殺すようなこと、するなとは言わない。その場で戦うのはやっぱりヤスフミだと思うから、そこはヤスフミの判断に任せる。私は・・・何があっても受け入れる。もう、覚悟決めてるから。忘れないヤスフミとちゃんと向き合って、付き合っていくから』



フェイト・・・。



『でも、それでも・・・どこに飛び込んでも、それでどんな結果になっても、絶対に・・・自分が今言った事を忘れないで欲しいんだ。自分だけの夢をこれから探していくって言った時の気持ち、絶対に忘れないで』

「・・・うん、約束する。絶対に忘れない」



僕も、あんな風になってみたくなったし。スクールの人達みたいに、自分の夢や目標に向かって、真っ直ぐに進みたくなった。



『なら、いいんだ。あのね、私も一緒に考えていくから、もう少しだけ・・・頼って? ヤスフミ、突っ走り過ぎだよ。迷いたくないかも知れないけど、たまには止まって、考えて、誰かに甘えたりしてもいいんだから』

「はい、ご心配おかけしてすみません。お姉さん」

『うん、すごく心配してるよ。・・・まぁ、分かってる様子だから良しとするね』



そう言って、フェイトが優しく微笑む。・・・やっぱり、おかしい。なんか僕、フェイトに対してドキドキしなくなってる。前だったらこういうの見たら苦しいくらいにときめいて・・・あれ、なんでっ!?



『あと、もう一つ・・・の前に、ちょっと報告。それも私のじゃなくて、なのは関連なんだけど』

「フィアッセさんのこと?」

『うん。・・・なのは、教導官としての自分を優先したから、口には出さないけどフィアッセさんやスクールの事、そうとう心配してる』



あの横馬は・・・。だったら通信でもなんでもかければいいのに。いや、やらないからこその横馬なんだろうけど。



『だから・・・言うまでもないだろうけど、守って欲しいの。あの、勝手だよ? 昨日ああ言った身で凄く勝手だけど・・・もし何かあったら、なのはがすごく後悔するだろうから』

「・・・ま、横馬のためになんざ戦うつもりないけど、フィアッセさん達は守るよ? 僕だって、壊されるのはゴメンだし」

『・・・ありがと』

「いーよ。で、あと一つは?」

『分かってるでしょ?』



まぁ・・・アレしかないなと思った。間違いなくアレだろうなと。



「何があろうと、無事に帰ってくること」

『そうだよ。夢を探すのも、居場所を見つけるのも、忘れずに幸せになって行く道を進むのも、全部そこからだよ。・・・約束、してくれるよね』

「もちろんじゃないのさ。絶対に勝って、そっちに戻るから」










僕がそう言うと、フェイトは満足そうに、そして嬉しそうに笑った。それが嬉しくて、僕も笑う。





そうして、時間は進む。明日と言う激動の日に向かって、少しずつ・・・でも、確実に。





その針は、きっと誰にも止められない。だから、僕は選択する。





闇に立ち向かい、理不尽な今を覆す事を。未来を壊されたくないから、今を守る。全力で。





それが僕のやりたい事で・・・夢の一つの形だと思うから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・用件は分かってるな?』

「うん、来るんじゃないかなと思ってた」



なぎ君の訓練の邪魔になるから、自室に戻った。すると、父さんから通信。

用件はきっと一つしかない。通信越しに浮かべている厳しい表情がそれを私に伝えてくる。



『八神から話は聞いた。まぁ・・・恭文とアルトアイゼンは仕方ねぇさ。アイツらが大事なダチを放り出すたぁ思えねぇからな。・・・ったく、アイツらは本当によ。これじゃあうちに来てもらってもダメかも知れねぇじゃねぇかよ』

「なに言ってるの。父さんはなぎ君が飛び込む度にまたやらかしたまた暴れたって大喜びしてたじゃない。それで、うちに来てもらったらさぞかし楽しいだろうなって下手をすれば私より熱心に・・・」

『・・・言うな。いや、確かにその通りだけど言うな』



まったくもう、本当にうちの部隊長は・・・。まぁ、だから私もうちに来ないかと遠慮なく誘えたんだけどね。部隊長からしてなぎ君の突撃癖を受け入れてたから。



『ただよ、ギンガ。お前は帰って来い』

「・・・無理です」

『出来ませんや帰りませんじゃなくて、無理ですと来たか。お前、自分の立場分かってるのか?』



父さんの言葉にうなづく。・・・私は局員で、一応立場もあって、本当ならこんなことに関わること自体が間違ってる。今こうしているだけで、立場を賭けてる。

だからなぎ君も八神部隊長も父さんも、こうして止めてる。それになにより・・・私はこの場に居ても役に立たない。



『そうだ、お前は恭文と違って魔法無しの戦闘が出来るわけでもねぇ。しかも、ちょっと前に死にかけて、リハビリ中の身。その上今回相手は、間違いなく質量兵器の類を持ち出してくる。恭文やそっちの警護担当からしたら、守る対象が増えるだけじゃねぇか』

「うん、言われたよ。私、本当に今回はフィアッセさんの側に居る事しか出来そうにない」



なんとかなるかなとか実は思ってた。これでも、格闘術は得意だもの。でも・・・さっきのなぎ君の飛針や鋼糸での攻撃、普段は絶対に使わない突きを見て、無理だと思った。

私、多分出来ない。今ここでフィアッセさん達を救うための覚悟が。だってそれは・・・私が今までしたことのない、そのために殺す覚悟が必要だから。・・・殺すより、救う選択をする方が覚悟が居る・・・か。その通りだよ。



「でもね、それでもここに居たいの。なぎ君の側に・・・居たいの」

『なんでそう思う』



私はその問いかけに答えた。少しだけ迷ったけど・・・きっと話さないと、納得してくれない。



「・・・私、どうやら前に父さんに言われたみたいに、なぎ君のことが好きみたい。私、なぎ君に恋・・・してるの」



そう口にしただけで胸が高鳴る。心臓の鼓動が早くなる。胸が苦しくて・・・切なくなる。



『・・・おい、お前・・・マジか』

「マジ・・・だよ。だから、離れたくないの。私、なぎ君の側に居ることしか出来ないかもしれないけど、それでも側に居たいの。なぎ君のこと、一人になんてしたくない」

『そうか・・・お前、そうなのか・・・そうかそうか、やっぱりそうだったか・・・』

「・・・父さん、お願いだからそう言いながら母さんの仏壇の前に行こうとしないで。そしてその酒瓶はとりあえず置いて。まだ告白もなにもしてないんだからっ!!」



ま、まったくうちの父親は・・・。どうしてこうなんだろ。私、娘として色々恥ずかしいよ。



『よし、お前恭文を今すぐ押し倒せ。そうすりゃ万事解決だ』



なるほど、そうだよね。押し倒してそうなれば、万事解決・・・って、するわけないからぁぁぁぁぁぁぁっ! 父さんなに言ってるのっ!?



「あのですねっ! 娘にそんなアドバイスをする父親って、正直どうなのかなと思うんですけどっ!!」

『なに言ってやがる。俺はクイントにそうやって告白されたぞ? まぁ、俺が年齢差やらなんやら気にして止まってたからだけどな』



そうなのっ!? し、知らなかった・・・母さん、ちょっと大胆過ぎやしないかなっ!!



『・・・あぁ、ダメだな。お前押し倒すなら事件解決後にしろ。今はダメだ』

「そしていきなり方向転換しないでっ! 戸惑うっ!! すっごく戸惑うからっ!!
・・・で、その理由はなんですか」

『結局聞くのかよ』










そ、その・・・気にしないでっ! だってあの・・・もしなにか事情があるなら、私は我慢しなきゃいけないだろうし・・・!!





とにかく、父さんは一回咳払いをして、真剣に私の顔を見始めた。私がそれに視線で答えると、神妙な面持ちでゆっくりと話し出した。










『・・・簡単だ。事件解決前に男女の仲になる奴はな・・・死ぬんだよ』










し、死ぬっ!? あの、それってどういう










『世の中には死亡フラグってのがあってだな』










私は、そのまま通信を切った。うん、結構遠慮なくね。

誰だろう、うちの父に妙な事を吹き込んだのは。なぎ君? アルトアイゼン? あぁ、誰でもいいか。判明したらきつくお説教するから。





というか・・・死亡フラグってなにっ!? なんであんなバカな事を真剣に話すのかなっ!!





でも・・・本当なのかな。だったら、まずいよね。こう、ちゃんと状況を見て・・・って、なんで私は押し倒す方向で考えてるのっ!?

・・・そ、その・・・別になぎ君とそうなるのは嫌じゃない。うん、そこは絶対。むしろ・・・なりたい。

もし、もしも・・・なぎ君が私を女の子として扱ってくれるなら・・・すごく嬉しい。私の身体、その・・・少し特殊だけど、マリーさんからもそういうことは出来るし子どもも生めるって太鼓判押されてるし、心も身体も一つになれるなら、私・・・。





私・・・ダメだよ。やっぱり、おかしい。こんなこと考えるような女の子だったかな。というか、こ、子どもっ!? なぎ君と私との・・・子ども・・・!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ、恥ずかしいよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・突然、ナカジマ三佐に飲みに行こうと呼び出された。それはもうすごい勢いで。





なお、クロノ提督もどう言うわけかそこに居た。当然俺はビックリした。だって、本局の船の館長・・・もとい、艦長さんだよ? なんで普通に居酒屋で焼き鳥食ってるのさ。





ただ、それも事情を聞いたら納得した。だって・・・なぁ。










「・・・ギンガちゃんがやっさんへの愛に目覚めたっ!?」

「あぁ、そうなんだよ。アイツ、少し恥らいながら顔赤くして、恭文の事が好きで側に居たいから向こうに残るって言ってな。・・・いやぁ、俺は嬉しくてクイントの仏壇に一時間くらい報告しちまったよ。うちにも・・・息子が出来るんだな」



いや、ナカジマ三佐。さすがにそれは気が早いでしょ。まだ目覚めたばかりで何もないんでしょ? 言うなれば生まれたての雛だよ。そのままちゃんと育って巣立つとは限らないし。

現にやっさんは生まれて8年経つけど巣立つどころか殻すら破れてるか分からない。



「サリエル、てめぇ・・・ギンガの何が不満なんだっ!?」

「俺に言わないでくださいよっ! つーか、それはやっさんっ!! やっさんに言ってくださいねっ!? 俺に言われてもなんの返事も出来ませんからっ! そしてアンタは酔っ払い過ぎだよっ!? どんだけ顔が真っ赤なんだよっ!!」



そしてアイツはなにやってるんだっ!? 普通にドンパチって聞いてるからシリアスを想像してたのに、なんでラブコメ要素持ち込んでるんだよっ!!



「しかしそうすると・・・」

「あぁ、悪いな。ハラオウンのお嬢はしばらく独身決定だ。いや、アイツは俺のかみさんの娘だからな。きっと押しは強ぇぞ」

「・・・そうですか。それは・・・結構問題ですね。実はうちの方でも、フェイトの結婚相手はどうしたものかと言う議題がかなりあがってまして・・・」



・・・あぁ、やっぱりか。深刻そうな顔してるクロノ提督には言えないけど、分かってたよ。だってアレ、典型的なワーカーホリックレディだよ? その上少年とキャロちゃんと言う子育て要素まで付いちゃってるし・・・やっさん居なかったら、完全に恋愛ごとからさようならしてるって。



≪それはまた・・・難儀な議題ですね。むしろ蒼凪氏とハラオウン執務官が付き合うようになることよりも達成は困難なように感じます≫

「今までは恭文が居たからまだ大丈夫と思っていたんだが・・・。まずいな、これでは本気で縁組も考えなければ・・・いや、ダメか」

≪蒼凪氏が居ますしね、並大抵の相手ではハラオウン執務官の相手としては認めませんよ。確実に揉めます≫





あのさ、フェイトちゃんはやっさん居なかったらマジで結婚どころか恋愛出来ないんじゃないの? ああいう人だし。つか、今クロノ提督と金剛が言ったように、やっさんがそれを許すかどうか・・・。なんか言いそうなんだよな。例のアレ。



『フェイトと付き合いたかったら、僕に勝てるくらいじゃないとダメ』とか言ってさ、相手を潰すんだよ。で、アイツもまた無駄に強いから勝ち続けてさ、結局フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官はこれ以上苗字が追加されることも無く一生独身で・・・。





「・・・ナカジマ三佐、確かミッドでは一夫多妻制が認められてましたよね」

「あぁ、条件は少し厳しいけどな。・・・おい、まさか」



ナカジマ三佐の表情が変わる。そして、クロノ提督は真っ赤な顔で頭を下げる。



「すみません、場合によってはお願いしてもいいでしょうか。さすがにあのまま独身は僕達が色々辛いんです」

「まぁ、本人達次第だぞ? 俺からどうとかは言えねぇからよ。・・・ただし第一夫人はギンガだからな」

「もちろんです。僕も母さんも文句は言いません。ただ、そこにリインが追加されるとは思いますが」

「あぁ、それは問題ねぇよ。あのおチビの曹長さんは仕方ねぇ。ギンガも文句は言わねぇだろ」





要するに、やっさんには頑張ってもらって、ギンガちゃんを第一夫人、フェイトちゃんを第二夫人とするって話だな。下手をすればリインちゃんが第三・・・いや、リインちゃんが第二か。

・・・きっと、こんなバカな話が出てくるのは俺が来るまでに焼酎を何本か開けたせいだと思ってくれ。いや、思わせてくれ。いくらなんでもいきなり一夫多妻な家族作ろうとかってありえないから。しかも本人達居ねぇし。

つか、やっさん×ギンガちゃん×フェイトちゃん+リインちゃん・・・か?



アイツ、どんだけだよっ! つーか、俺は正直に男としてうらやましいんですけどっ!? ギンガちゃんもフェイトちゃんも相当スタイルいいじゃねぇかよっ!! リインちゃんだってロリ要素と考えればオーケーだし・・・それをあの極悪ショタが独り占めっ!? 三人に責められ総受けライフをエンジョイかよっ! おいおい、んな暴挙が許される訳が無いだろうがボケっ!!





「まぁ、そこは後々考えればいいだろ。とにかく今日はうちの娘が大人になった祝いだっ! 俺のおごりだからじゃんじゃん飲んでばりばり食べろっ!!」

「・・・しかし、フェイトはどうしたものか」

「クロノ提督、そこはもういいでしょ。つーか、一夫多妻でいいじゃないですかもう」

≪そうすると色々揉めるでしょうけどね≫










とにかく、俺は決めた。やっさんが帰ってきたらちと真剣に話そうと。





議題は、やっさんの将来の事でもなければ飛び出し癖でもない。





・・・・・・お前のこれから持つ家族の基本形は『ギンガちゃん×フェイトちゃん+リインちゃん×やっさん』と言う図式になったから、おとなしく受け入れろと。そう、この点についてのみ真剣に話したいと思う。




















(その5に続く)




















あとがき



古鉄≪さて、最後は色んな暴走しまくりなギンガさんとアホな大人三人で締まりました。・・・あぁ、石を投げないでください。こうなったんですから仕方ないじゃないですか。
というわけで、結構ノッてきたギンガさんルートの第4話、みなさんいかがだったでしょうか。最近、これで全ルート化は無理じゃないかと思い始めてきた古き鉄・蒼凪恭文と≫

恭文「そんなことしたら、真面目にこれだけで100話超えるだろと思ったりしてる蒼凪恭文です。・・・だってさ、これもう倍くらい続くよね? これ次回で閉めるとか無理だよね?」

古鉄≪絶対無理ですよ。・・・さて、今回はちょこっとゆうひさんとか出たりしましたね。あ、さざなみ寮のお話もきっちり書きますので。結構かかると思いますが≫

恭文「初の恭也さん以外のとらハ主人公との絡みも入れるしね。慎重に構築中なのですよ。で、今回のお話は・・・」





(二人してページを捲る・・・あれ? なんか捲らない)





恭文「ぶっちゃけこれって本編22話の焼き増しだよね?」

古鉄≪いやいや、リ:イマジネーションですよ。問題ありません。というより、これで忘れて部隊入りは違うでしょ。あなたじゃないですよ≫

恭文「まぁ・・・ねぇ。で、本編だと僕は『フェイトの騎士になって、フェイトを守る』って言う形で方向性は落ち着いたわけじゃない? この話だとどうなるのよ」

古鉄≪それがさっぱりですね。多分(キンキンキンっ!!)と言う感じになると思うんですけど、そこまでどう引っ張っていくかが問題なんですよ。ただ、方向性としては本編のような形とは違う形にはしたいと≫

恭文「まぁ、言い方は悪いけど、本編だとフェイト有りきではあるしね。もちろん好きな女の子を守りたいっていうのが悪いわけじゃないけど。つまり、この話では本編のキャラで言うと、スバルにとってのレスキュー隊員、ティアにとっての執務官みたいな、本当に『夢』と言えるような物に向かっていく形で締めたいと」





(青い古き鉄、ちょっと納得。でも・・・ねぇ)





恭文「あのさ、普通にこれは全ルート化無理じゃない? この調子でやってたらマジで100話超えるって。普通に4期終わって下手すれば5期始まるくらいに時間経つって」

古鉄≪そうですよね、普通に一週間に1話とか考えても、2年とかかかりますよね。それも休み無しですよ? 他のものも書きつつですよ? どこの週間漫画家ですか。やっぱり絞ることは必要ですね≫

恭文「で、誰を書くか・・・だけど、今のところ要望があるのはリインとすずかさん。なのはにティアナ。あとフィアッセさんにメガーヌさんか。なお、ギンガさんは今書いてるから除いてます」

古鉄≪あと、本編中でフラグ話があるわけではありませんが、要望どころか作者の情けない敗北宣言のためにプロットまで来ているのはアリサさんです。それも相当いいのが。それとカリムさんとはやてさんもですね。・・・あの、アリサさん達も足してしまったら15人なんですけど。さすがにこれはどうなんですか?≫

恭文「いや、あくまでも要望だからねっ!? 本編中ではこの三人にはフラグとか無いってっ! それにそうなったら、僕はなのは達全員にフラグ立てたことになるじゃんっ!!」

古鉄≪そうですね、高町教導官にすずかさんにアリサさん、はやてさんに本編メインヒロインで21話からなんか拍手でコメントが急激に増えたフェイトさん。これだけで真面目にハーレムじゃないですか≫





(青いウサギの言う事に、青い古き鉄、結構苦い顔で頷く。そう、ハーレムなのだ。現状でもかなりぎりぎりな)





恭文「で、誰を書くかって結構重要だと思うんだよ。過去の時間軸から話始めてガチなIF書くなら、如何様にもやり方も見せ方もあると思うし」

古鉄≪例えば、スバルさんやティアナさんは六課で初めて会ったと言う設定ですけど、そこから変えることも可能なわけですしね。まぁ、これは本当に本当に奥の手ですけど。
一応書く予定として考えているのは・・・≫





(リイン、すずか、なのは、ティアナ、フィアッセ、ディード。それに余裕があれば、本当に本当にIFとしてアリサ)





恭文「・・・よし、現時点で80話超えは決定だ。つーか、ルート話なんて5話とかでまとまらないよっ!!」

古鉄≪なお、メガーヌさんも書きたいそうなんですが、現時点で作者の頭の中に思いついているルートのプロットがR18仕様なんですよね。なので、今回は省きました≫

恭文「なんでそうなるっ!? つーか、最近シモやらエロやら多いんじゃないのっ! 作者っ!!」

古鉄≪まぁ、恋愛って奇麗事だけじゃありませんからね。ほら、真撰組の隊長さんが言ってたじゃないですか。人は恋をするとネバネバなのさと。銀時さんも言ってるじゃないですか、人は恋をすると原始に帰ると≫

恭文「あの人達の言う事を真に受けたらだめだからねっ!? ・・・でも、プロットとか考えてるんだ」

古鉄≪一応は。例えばティアナさんとか結構考えてるんですよ。一応次回ルート話の候補ですから≫

恭文「そうなのっ!? ・・・して、どんな話に」





(青い古き鉄、身を乗り出して聞く。・・・どうやら、パーフェクトヒロインに相当興味があるらしい)





古鉄≪一応テーマの一つとしては『コンプレックス』がいいかなと≫

恭文「・・・イマージュ?」





(バキュンっ!!)





古鉄≪・・・撃ちますよ?≫

恭文「そういうセリフは撃つ前に言えっ! そしてビームライフルを僕に向けるなぁぁぁぁぁぁっ!!
で、なんでんな重いテーマで話書くのよ。もっと明るく書けばいいじゃん」

古鉄≪全部あなたのせいですよ≫

恭文「なんで僕っ!?」

古鉄≪ティアナさんって、基本的に自分に対してコンプレックスがあった人じゃないですか。まぁ、そこはTV本編中に解決したんですが・・・今度はあなたといい感じになって、魔導師としてではなく女の子としてコンプレックスが再燃するわけです。その対象は、当然フェイトさん≫

恭文「・・・はい?」

古鉄≪特別な意味であなたが気になりだすティアナさん。でも、あなたはフェイトさん一直線で自分を女の子として見ようともしない。フェイトさんと比べると確かに自分は劣って・・・見てくれないのも仕方ないのかも知れない。でも、感情は抑えきれない。
それで段々フェイトさんとの距離そのものが微妙になっていくティアナさん。で、あなたがそれを気にして無自覚に口出しするもんだからまたごたごたしてアナタとも距離が微妙になる。ティアナさんは結果自己嫌悪で欝モードですよ≫

恭文「・・・・・・あの、もしもし?」

古鉄≪で、それらのストレスで暴走状態になったティアナさんが問題を起こして、それが原因で六課そのものの空気が微妙になって・・・という感じですね。で、あなたは何がなんだか分からないんだけど、シャーリーさん辺りにビンタされたり、高町教導官に白い目で見られたりして、更に訳がわからなくなるんですよ≫

恭文「・・・・・・いや、あの」

古鉄≪で、ティアナさんが暴走の結果あなたに告白して・・・って、本編13話の冒頭が正夢になるわけですね。それで・・・フェイトさんとティアナさんとあなたとで三角関係勃発ですよ。
エンジンかかったティアナさんはフェイトさんに『私、あなたからアイツのこと奪います。あなたには絶対に負けません』・・・なんて言って宣戦布告したりして。いや、おめでとうございます。これ、とても楽しそうじゃないですか≫





(その瞬間、ファンファーレが鳴り響く。それはもう盛大に)





恭文「めでたくないわボケっ! つーかなにそれっ!! どこのスクイズっ!? もっと穏やかで幸せな恋愛させてよっ! なんでそうゴタゴタさせようとするのさっ!!」

古鉄≪仕方ないじゃないですか。ルート話で本編中と差をつけようとしたらこうなるんですよ≫

恭文「つーか、これ昼メロっ! お昼の1時半とかにやる話だからねっ!? リリカルなのはのキャラでやる話じゃないでしょうがっ!!」

古鉄≪なら、他にいいプロットあげてくださいよ。あなた、最初から片思い状態で、相手からしたらフェイトさんは自分が生まれる前から居候状態ですよ? ゴタゴタさせて、相手との時間を多く割かなかったら、フェイトさんルート直行でしょ≫

恭文「う・・・」

古鉄≪特にティアナさんは、時間軸をさっき弄った通りに弄ったりとかしない限りは相当頑張らないといけないんですよ。まぁ、その分付き合うようになったら甘々でしょうけどね。あ、それと今私、スバルさんのルートプロット思いつきました≫

恭文「やめて。マジでやめて。これ以上重い話聞いたら胃に穴が開きそうだからやめて」





(青いウサギ、それに構わず話を続ける)





古鉄≪これは問題ないですよ。・・・自分と会う前からあなたに片思いなギンガさんの気持ちに気づいて、マスターの事が気になりだしたのに、積極的にアタック出来ないスバルさん。でも、とうのマスターも19話での一件以来どういうわけかスバルさんの事が気になりだしたわけです。
マスターは、スバルさんとの距離を縮めようとしますが、スバルさんはそれがダメだと距離を離そうとするわけです。で、ギンガさんもそこに加わって・・・≫

恭文「はい、今週はここまでっ! お相手は蒼凪恭文とアルトでしたっ!! さぁさぁ終わり終わりっ! 速くスタジオの後片付けして撤収だよー!!」

古鉄≪そして、ある日。スバルさんがとうとう我慢出来ずにマスターとそうなってしまうわけですよ。それをギンガさんが知って・・・≫

恭文「だから終わっとけっ! そしてその昼メロ思考はお願いだからやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










(とにかく、終了。何が何でも終了。
本日のED:橋本みゆき 『Faze to love』)




















恭文「あー、うちのばかウサギのプロット大量投与には参った参った。つーか、どうしてあんな昼メロ思考に走るのか・・・」

ギンガ「な、なんか大変だったね・・・。あ、あのね・・・なぎ君」

恭文「なに?」

ギンガ「私、諦めないから。だから・・・なぎ君も諦めないで欲しい」

恭文「・・・うん、そのつもりだよ」

ギンガ「なら、いいんだ。それだけ、聞きたかったから。よし、頑張ろうっと」










(おしまい)






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