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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース04 『ギンガ・ナカジマとの場合 その4』:1



「・・・恭文とアルトアイゼン、六課辞めちゃうの? 居なく・・・なっちゃうの?」

「なる・・・の」

「嫌だよ」



・・・ヴィヴィオ。



「恭文、ただお友達を助けたいだけなんだよね。どうして・・・それなのにどうして、六課から居なくなっちゃうの?」



・・・ヴィヴィオにも、なのはと二人で一応の事情説明。いきなりだと、やっぱりビックリするだろうから。

でも、納得出来ないという顔を、私達に向けている。



「ヤスフミは、六課を辞めないと部隊長や私達に一杯迷惑がかかっちゃうからって・・・そう言ってた。ヴィヴィオも分かるよね? 地球みたいな管理外世界で勝手に戦闘は、いけないことなんだ。ヤスフミもそれが分かってるから、辞めるんだ」

「おかしいよ、そんなの。恭文、言ってたよ。友達が困ってたら、助けたいと思うのは普通だって。なのに、助けたらいけないなんて・・・おかしいよ」





うん、そうだよね。おかしいよね。・・・私だって、もしなのはやシグナムが同じことになって居たら、ヤスフミみたいにしたいよ。それにヤスフミにとってフィアッセさんは、やっぱり大事な人なんだから。止める私は・・・間違ってる。

・・・うん、私はある意味では正しいけど、間違っても居るんだ。だって、私は今居る場所と今危機に瀕しているフィアッセさんとスクールの人達を天秤にかけて、今居る場所を選んだんだから。もう、選んでる。私個人としてじゃない。執務官として、局員として選択した。



多分、私が背負わなきゃいけない枷。これからじわじわと・・・私を苦しめ続ける一つの後悔。でも、いいよ。私は背負うから。例え私個人としての選択じゃなかったとしても、私の選択であることは間違いないから。

これを背負って、本当に・・・本当に少しでもヤスフミの気持ちが、後悔を忘れず背負い続けるあの子の気持ちが分かるなら、力になれるなら、それでいいから。





「・・・ね、ヴィヴィオ」

「うん」

「ヤスフミが六課を辞めるのは・・・多分、避けられない。私達にも、止められないの」



真っ直ぐにヴィヴィオを見る。不安で揺れている朱と翠の瞳を見つめる。



「でもね、ヴィヴィオやスバル・・・皆がヤスフミの友達っていうのは、変わらないよ。・・・ヴィヴィオ、そうだよね? 恭文君が六課を辞めたから友達まで辞めるなんて、言わないよね」

「そんなの当たり前だよっ! 恭文もアルトアイゼンも、ヴィヴィオの大事な友達だもんっ!! 六課から居なくなっても、二人がいっぱい遊んでくれた事や、お話して楽しかったこと、何にも変わらないっ!!」

「・・・うん、それだけ聞きたかったんだ」



私は、ヴィヴィオを抱きしめる。結構力いっぱい。ギュって・・・抱きしめる。



「フェイト・・・ママ?」

「変わらないよね、何も。・・・なんで、怖がってたんだろ」

「あの、フェイトちゃん?」





私、怖がってた。忘れず、下ろさず、そうしてどこまでも進んでいくあの子がわからなくて。同じじゃないことが、凄く不安になって。

でも、分からないのなんて当たり前だった。だって・・・私達、全く違う人間なんだから。違うから、ちゃんと向き合って、話して・・・そうして絆を結んでいかなきゃいけなかったのに。私、家族という関係に安心しきって、いつの間にかそれを放棄してたんだ。



だから考えようともしなかった。どうしてヤスフミが忘れたくないと思うのか。どうして辛くて苦しい思いをしてまで背負おうとするのか。・・・忘れないヤスフミと付き合う覚悟を決める・・・か。ヒロさん、サリさん、その通りです。私、覚悟が無かったんです。

違う事が認められなくて、それで居なくなるのが怖くて、だから私達と同じで居て欲しくて・・・あの子のこと、子ども扱いしてました。縛ろうとしてました。でも、それじゃあだめですよね。





「・・・よし、ヴィヴィオ。ヤスフミとアルトアイゼンが帰ってきたら、ちょっとお説教しようか」

「お説教?」

「うん。・・・私達にこーんなに心配かけて、どういうつもりなのーって。私達で、いっぱいいっぱいお話するの。それで、またお詫びしろとか言って、ご飯作ってもらおうか」

「・・・うんっ!!」










私、バカだった。忘れることを願う必要なんて、きっと無かった。





ヤスフミ、一緒に考えるから。どこへ行きたいのか、何をしたいのか、ゆっくりでいい。時間がかかってもいいから、一緒に答えを出していこう?





ヤスフミはもう、何にも・・・諦めなくていいんだから。だから、手を伸ばそうよ。人じゃなくて、自分の未来に。





人を殺したことは許されないかも知れない。忘れていいことじゃないのかも知れない。でもね、もう・・・いいよ。





誰かのためだけじゃなくて、自分のための時間を守るために、手にするために頑張ったって、いいんだよ。もしヤスフミが許されてるとしたら・・・そういう時間を持つ権利。





きっと、それを手にすることは、許されている。魔導師になるずっと前から、許されている・・・はずだから。





それをどうしてもためらうなら、迷うなら、全部私にぶつけてくれていい。私も、ぶつけるから。





あなたはあまりにも優し過ぎるから、もう少しだけ、本当にもう少しだけ、傲慢になっていいんだよって。




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース04 『ギンガ・ナカジマとの場合 その4』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、ギンガさんに話です。外・・・雨が降り始めた。なんか、通り雨らしいからすぐ止むとは言ってたけど。





・・・そして当然、どうにもこうにも雰囲気が重い。










「・・・なぎ君」

「悪いけど、止まれない」

「どうしてっ!? 六課での居場所やみんなの信頼まで賭けて、どうしてそこまでするのっ!!」





・・・そんなの決まってる。





「僕のやらなきゃいけないと思う事だから。僕、このスクールの人達やフィアッセさんのファンなの。だから、見過ごせない」

「そのために・・・無くしちゃうんだよ。本当にそれでいいの?」

「いいの」





勝手を通して無くす覚悟なら・・・ある。それでも、いい。ちっぽけでも、守れるものがあるなら、それでいい。ううん、違う。

ちっぽけだから・・・絶対に守らなくちゃいけないんだ。離せばすぐにどこにあるのか分からなくなるようなものだから、絶対に離しちゃいけないんだ。



なにより僕は、フィアッセさんやクリステラ・ソング・スクールの人達の歌声が聴けなくなるのは、嫌。壊れたら、あの歌は二度と戻ってこないかも知れない。沢山の願いが詰まった平和の歌が消える? 勝手な理屈で潰される?

・・・納得できるわけがない。そんなの、絶対に納得出来るわけがない。





「・・・よく、無いよ」



・・・そうだね、でも止まれない。止まりたくない。



「ね、帰ろうよ。事情を話せば、エリスさんもフィアッセさんもきっと分かってくれる。お願いだから、居場所を・・・居たいと思う場所を諦めないで。今ここで帰れば、なぎ君の居場所は守られるから。だから・・・」

「それで何かあったらどうするのさ。僕のせいじゃないとでも言うの?」

「それは・・・あのね、私も背負う」



・・・みんなと同じこと言うんだね。



「なぎ君がその選択を取って苦しいなら、もし壊れて・・・後悔するなら、一緒に背負うから。辛いなら、寄りかかってくれてもいいから。だから・・・」

「・・・ギンガさん」

「うん」

「それで何が変わるの」



・・・・・・なにも、変わらない。



「何も変わらないでしょうが。そうなった時、壊れた事も、僕が何も出来なかった事も、自分の都合優先で目の前の人達見捨てた事も、なんにも変わらない。居れば全部変わったなんて言うつもりない。でも・・・変えられたかも知れない。
もしここで戻れば、そんな後悔を背負うかも知れない。そして、そんな後悔とずっと付き合う?」



・・・・・・・・・・・・・・・ごめんだよ。



「・・・僕はごめんだよ。ギンガさんが居ようと・・・何も変わらない」

「なぎ・・・くん」





後悔は、なんにも変わらない。変わらなかった。時間の経過じゃ、あの時の後悔・・・変わらなかった。もう、あんなの嫌なんだ。今ここで引けば、絶対にあの時と同じ思いをする。



そんなの・・・!!





「・・・・・・ごめん」

「・・・え?」



あぁもうっ! 僕なにやってるんだよっ!! ギンガさんに当たったって・・・意味ないじゃないのさ。

ギンガさん、びっくりした表情してる。だけど、どこか悲しげで・・・。



「なぎ君・・・」

「うん・・・」

「戻れ・・・ないの?」

「・・・うん」



やっぱりバカだって思う。でもね、諦めたくないんだ。



「フィアッセさんとスクールの人達の歌声と想いを守ること・・・諦めたくないんだ。このまま何もせずに見て見ぬ振りなんて、絶対に出来ないんだ」



あの時感じた気持ち、ティオレさんのビデオレターで聴いたフィアッセさんとティオレさんの歌声。僕の大事なもの・・・ここにある。

壊されたくない。絶対に守りたい。六課が大事じゃないわけじゃない。出向してきたのだって・・・放っておけなかったから。でも、だからってこのままなんて・・・!!



「・・・いいよ」



・・・・・・頭に手が乗っかる。



「ごめん、きっと私が・・・間違ってた。フィアッセさんもエリスさんもなぎ君の大事な友達だものね。その人達が危ないかも知れないのに帰るなんて・・・出来ないよね」



それはギンガさんの左手。優しく・・・撫でるように動く。というか、撫でられてる。



「帰ったら・・・私も皆さんと一緒に謝るよ。そうすれば、大丈夫なはずだから」

「・・・いいよ、ギンガさんにこれ以上迷惑かけられない。それに、嫌なことも言ったし」

「あの、私は大丈夫だから。・・・ただ」



ただ?



「・・・どうしても、止まれないの? 今回の話だけじゃない。何か起こる度に飛び込んで、その度に傷付いて。六課の皆さんの言う通りだよ。止まることが正しくて、大人だと思う。
それで辛かったら、そういうの皆で共有し合って、ぶつけ合って、また頑張ろうって気持ちになって・・・。社会や組織って・・・そういうものじゃないかな」

「うん、そうだね。きっと・・・そうだ」

「きっとね、六課の皆さんはなぎ君にそうして欲しいんだよ。仲間としてここに居るから、気持ちを共有し合いたいって・・・声をかけ続けていたんだと思う。私も、そうだったから」

「・・・でも、それじゃあ僕は納得出来ない」



止まれない。止まりたくない。勝手なのも、わがままなのも分かってる。でも、そうあり続けたい。そうで居たい。



「やっぱり目指すところは・・・最悪で、最強?」

「かも、知んない。知ってる? 正義だろうと悪だろうと、最後の最後まで貫いた信念に、偽りなんてなんにもないんだよ」



嘘に、したくないんだ。見出した答えを。見つけた理想を。それを通したいと思う自分の想いを。だから、貫く。そう決めたから。



「・・・って、前に呼んだ漫画のセリフだけどね」

「そっか。あと・・・ね」



・・・あれ、なんでギンガさん顔赤らめるのさ。



「私も・・・実は諦めてることがあるの」

「そう、なの?」

「でも、だめ・・・だよね。だから、なぎ君に言葉が通じなくて、すごくぶつかり合っちゃって・・・」



真っ直ぐにギンガさんが見つめてくる。緑の瞳が、震えてる。



「私・・・諦めなくていいかな?」

「・・・事柄によるけど、犯罪とかじゃないなら。というより、同じような人にあれこれ言われたくないというのが道理かと」

「そう、だね。うん、なら諦めないよ。だから・・・」



だから・・・?



「私も、ここに残る」



・・・・・・はいっ!?



「あの・・・ギンガさんっ!?」

「なにを言っても無駄だよ? もう、決めたから。帰らない。絶対・・・帰らないから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



翌朝、早く目が覚めたので、中庭に出てアルトを持って素振り。





結局、ギンガさんの説得は失敗した。うぅ、やっぱり強情だよあのお姉さん。





とにかく、ギンガさんには早速エリスさんと一緒に、フィアッセさんの傍に付いててもらってる。なお、本人たっての希望。エリスさんも帰るように説得したけど、無駄だった。





とにかく、このままはマズイ。なんとかはやて辺りに説得してもらって、すぐにでも帰ってもらわなくては。





なんて懸念を払うように素振りに熱中していると・・・通信がかかった。










『・・・話は聞いた。アンタ・・・マジでなにやってんのよっ! 経歴調べてからいつかやるんじゃないかやるんじゃないかとは思ってたけど・・・!!』



んじゃ、問題ないじゃん。予感がしてたなら当然受け入れる覚悟も。



『無いわよ馬鹿っ! 寄りにも寄って管理外世界で魔法も無しにドンパチっ!? ありえないわよそんなのっ!!』

「あぁ、怒らないで怒らないでっ! 朝のさわやかな空気が一瞬で吹き飛ぶからっ!!」

『恭文・・・。本当に、戻ってこれないの?』

「・・・うん、これない。やんなきゃいけないこと、出来たから」





そう、スバルとティアナである。そして、それだけじゃない。





『なぎさん、フェイトさんもなのはさんね、すごく心配してる。あと、副隊長達は帰ってきた時のために、嬉しそうな顔でグラーフアイゼンとレヴァンティン磨いてた』

「え、殺る気満々っ!?」

『当たり前だよ。いくらなんでもいきなり過ぎるもの。でも、どうして六課での居場所を放り出す覚悟をしてまで、そっちに残るのかな。言い方は悪いけど、局の仕事とは・・・』

「あー、エリオ。それはもう昨日散々言われて耳タコだから。そして、気持ちは変わらない。・・・友達見捨ててまで居場所に固執なんざしたくないのよ」



そう、キャロとエリオも居る。・・・くそ、フェイトとあの横馬はちびっ子二人まで持ち出して僕を説得するつもりかい。



『そうね、なのはさんとフェイトさんから頼まれたわよ。無駄とは思うけど、一応私達からも話して欲しいって。・・・ただ』

「ただ?」

『私、止めないからね』

『ティアさんっ!?』



結構真顔で通信越しにティアナがそう言い切った。それから、タメ息を吐く。



『いや、なんていうかさ。私・・・アンタの経歴調べてたじゃない? それから考えても、ここで止まる選択は無いなぁーと。てか、アンタがこういう選択する奴ってのはこの一ヶ月でよく分かってるわよ。・・・止めないわよ。でも、絶対無事に帰ってきなさい。じゃないと、私は許さないから』

『なんでそうなるんですかっ!? ついさっき、僕達で説得してみようって言ってたじゃないですかっ!!』

『あ、ごめんごめん。一応そういう雰囲気だから乗ってみたの』

『ティアさーんっ!!』



・・・なんつうか、あなたいい性格してるね。誰の影響?



『間違いなく恭文だよね。最近ティア、恭文とドンドン距離縮んでるし』

『変な言い方するんじゃないわよっ! このバカっ!!』

『ふぇー、叩くの勘弁ー!! ・・・あ、実は私も止めるつもりなかったり』



はいっ!? ・・・あ、なんかエリオが頭抱えてる。



『スバルさんまでっ! さっき僕たちの中で一番気合入ってたじゃないですかっ!!』

『ごめんごめん。なんかそういう空気っぽかったから。・・・恭文、その歌手の人・・・好きなんだよね。なのはさん達から聞いたけど、凄く大事な人でもあるって』

「・・・そうだね、好きだよ。あ、別に恋愛感情とかじゃなくて・・・なんて言えばいいんだろう。こう、近いものを感じてるのかも」



フィアッセさんの歌を聴いてからは特に・・・かな。普通にファンだし、友達だし、ちょっとだけ不思議な関係。年の差とか問題なく話せちゃうから。



『なら、頑張らないと。大事な人を守るためだもん。ここで引いちゃったら・・・きっとそれは恭文じゃないよ』

「そう思ってくれる?」

『うん。・・・その・・・もちろん六課から居なくなるのは嫌だよ? それは、絶対に絶対』



胸元で両手をぎゅっと握って、スバルが不安げに僕を見る。



『でも、私は変えないから。・・・私と恭文が友達って言うの、私は・・・絶対に変えない。誰がなんと言おうと、絶対に変えたくない。あの時・・・恭文とちゃんと繋がった時の事、私はちゃんと覚えてるから。
その記憶があるから、私は恭文のこと、全部含めて友達なんだって、思えるから。・・・変えない、変えたくないの。だから、恭文も変えないで。それだけ、お願い出来る?』



・・・全く、僕はなんつうかいい友達を持ったよ。なのにコレでしょ? 自分が凄まじい悪者に感じるよ。



「変えないよ。僕も、変えたくないから」

『ホントに?』

「ホントホント。・・・スバル、ありがと」

『うん』



・・・さて、スターズはよしとしよう。問題は苦い顔してるエリオとキャロだよ。あー、こっちはフェイト並みに頑固だしなぁ。どう話そうか。



『全く・・・二人ともずるいですよ』

『エリオ君?』

『そういう事言われたら、フェイトさんが悲しむからとか、感情はともかく部隊で働くものとしてどうなのかとか、あれこれ考えてた僕が間違ってるみたいじゃないですか。・・・恭文、僕も変えない』



エリオが僕を見る。真っ直ぐに、少しだけ笑みを浮かべながら。



『スバルさんと同じで、本当なら六課は辞めて欲しくない。僕達との場所、放り出して欲しくない。でも・・・だからって困っている友達を見捨てるような恭文を、見たくないんだ。だから、変えない。恭文と友達で、仲間だっていう事、絶対に変えないから』



エリオ・・・。



『じゃあ、次は私の番だね。・・・なぎさん』

「うん」

『正直ね、今回は本当に私怒ってるんだ』



・・・うん、分かる。だってさっきから視線厳しいんだもの。黒い感じはしないけど、ちょっと怖いくらいに。



『今の居場所を放り出して、自分のこと二の次で・・・そうしてなぎさんはどうなるの? みんな、きっとそこを凄く心配してる。このまま一人ぼっちになるんじゃないかって、ずっと。でも、みんな勝手には出来ない。だから、自分達の居る場所に来て欲しいって、考えてる。
・・・傲慢かも知れないけど、その気持ち、本当に分かってる? なぎさん、きっとこうやって飛び出す度に、フェイトさんやなのはさん達のこと、傷つけてるよ』



・・・知ってる。そうだなって思ってる。何度も何度も申し訳ないって思った。止まれたら、きっといいんだろうなって、何度も・・・思った。



「でも、ごめん。止まれないの」

『罪滅ぼしのために?』



・・・・・・え?



『あの、キャロ?』

『別に、なぎさんの昔のこと勝手に調べたとかじゃないです。ただ・・・フェイトさんに保護される前に会った人に、なぎさんによく似てる人が居た。昔の自分が許せなくて、それで自分の事二の次にして、誰かを助けるの。そうして・・・擦り切れる』



なるほど、このカントリーガールの妙に達観した所は、そういうハードな人生経験から来るわけね。色々納得したよ。



『・・・アンタ、どうなのよ。キャロの言うようにそういうつもりでこんなこと繰り返すなら、話変わってくるわよ?』

『あの、ティア・・・違うの。恭文はそういうつもりじゃ』

「いーよ、スバル。・・・あのね、めんどいからパパっといくわ。まず、罪滅ぼしなんてつもりで戦ったこと、一度も無い。何人助けようが、守ろうが、変わんないのよ。後悔したことは、なんにも変わらない」



ずっと感じてきたこと。変わらない事の中で、重いものの一つ。それを感じる度に覚悟を決める。



「ついでに、それで擦り切れるつもりもない。僕、楽して生きたいのよ? そんなのごめんだって。ただ・・・」



忘れず、下ろさず、背負う事を。でも、変わらないものはまだある。



「ただ、未来を消さないためにやってるの。今、目の前のくだらない理不尽で誰かの今が壊れそうになってるのを見過ごすなんて、僕には出来ない。・・・怖いんだよ? 抗う力も、なにもない人間がそういうのに踏みつけられるのって。すごく怖くて・・・泣きたくて、悔しいの」



変わらなかった。僕がやりたいと思っているもう一つのことは。・・・フェイトや皆の事や昔の事だけが戦う理由じゃない。その、やっぱりこそばいいしらしくないと思うけど、僕にだって一応ある。平和ってやつを守りたい心が。

管理局や局員みたいに世界なんていうのは無理でも・・・手の届く範囲くらいは、守れるはずだから。



「もし飛び込み続ける理由があるとしたら、それだけ。僕が戦って、剣を振るう事で変えられる事があるなら、変えたい。本当に、ただそれだけなんだ」



僕がそう言うと、キャロがじっと目を見つめてくる。それを受け止めて少しだけ・・・沈黙が訪れる。

そして、その沈黙は破られた。



『・・・分かった』



キャロの一言で、破られた。



『チョコレートパフェ、10杯』



・・・・・・はい?



『フェイトさんやみんなのこと泣かせて、それでもわがまま通すんだから、チョコレートパフェ10杯。私とフリードに作って。そうじゃないと私、許さないから。私、スバルさん達みたいに優しくないの。スバルさん達と違って、飛び出すなぎさん見て『変えないから』なんて、言えないの。そんななぎさん、好きじゃないの。
・・・それで、私とエリオ君ともずっと友達で仲間で家族で居て、擦り切れないで幸せになるって約束しないと、私は絶対に許さない。今すぐ地球に行って、フリードでもヴォルテールでも呼び出して、なぎさんの事連れ戻す。だって・・・だって・・・! 私、なぎさんが居なくなるなんて絶対嫌だからっ!!』





そうして、キャロが泣き出した。思いっきり・・・ボロボロと。





「・・・約束するよ。パフェも作るし、擦り切れたりなんてしない。ずっと友達で、仲間で・・・家族だから」

『うん・・・うん・・・!!』

「キャロ、ごめん」

『謝るくらいなら、最初からこんなことしないでよ・・・! ほんとに・・・なぎさんはダメダメなんだから・・・!!』










そのまま、キャロが泣き止むまでずっと通信に付き合ってた。





なお、三人は『お前が悪いんだからなんとかしろ』と放置プレイでした。・・・あやつら、覚えてろよ。色々仕返ししてやる。










『あ、恭文。私もチョコレートパフェ作って欲しいな。お腹一杯になるまで』

「よし、今すぐバイキング行きなさい。そっちの方が早いから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・スクールは、静かに時を刻んでいる。明日・・・もしかしたらとんでもないことが起こるかもしれないのに。





私は、どうにも落ち着かない。こんなの、経験したことがないから。





経験はそれなりにある。でも・・・魔法無しでの質量兵器戦なんて、やったことがない。なぎ君は経験あるけど、それだって多分ミッドの中では少数派。





なんか・・・すごいな。あの喧嘩から、こんな風になるなんて、想像してなかったよ。










「でも・・・」





校長室で書類仕事をしながら、フィアッセさんが話しかけてきた。





「ギンガちゃんが残るとは思わなかったな。・・・お仕事、いいの?」

「一応休暇中でしたから」



少しだけ嘘。すごい問題だと思う。許可無しでの戦闘行為。それも、局の業務とは一切の関係なし。例え戦闘無しだったとしても、関与するだけでも局にバレたら、きっと大事になる。

でも、バレなきゃ・・・大丈夫だよね。・・・私、ダメだな。なぎ君の考えがうつってるよ。



「一応ね」



書類を書きながら、フィアッセさんの言葉が続く。困ったような、嬉しいような、そんな顔をしながら。



「恭文くんには言ったんだ。戻っても私は恨まないし、戻って欲しいって。でも・・・頷いてくれなかったよ」

「私も・・・言いました。戻る選択をして辛いなら、苦しいなら、一緒に背負うから・・・と。でも、やっぱり頷いてくれませんでした」

「恭文くんは、本当に強情だなぁ。全然変わってない。あの時もそうだった」



あの時・・・もしかして、護衛の話?



「私ね、一応言ったんだ。あの子はまだ子どもで、恭也達が認めるくらいに強くても、血生臭いことに巻き込みたくなくて。だから、帰っていいよって。でも・・・帰らなかった。傷だらけになって、最後の最後まで私を守ってくれたんだ。それで、帰っていいよって言った時、あの子なんて言ったか分かる?」



私は首を横に振る。意味は当然『わからない』。



「力が無いことも、弱いことも、ここで何もしない言い訳にはならない。誰でもない、自分の心が・・・止まらず、迷わず、戦えって言ってる。フィアッセさんを・・・私を、守りたいと言ってる。だから戦います。そう言ったの」

「本当に・・・変わって無いんですね。私の知ってるなぎ君も、そうです。止まったり迷ったりする言い訳、しないんです。周りの人達がどんなに言い訳してもいい。止まっても誰も責めない。それでもいいからって言っても・・・絶対に」

「そっか、本当に変わってないんだね」



子どものころからそうだったんだね。・・・フェイトさんやなのはさん達が心配するはずだよ。



「だからきっと、今迷ってるんだよ」

「え?」

「誰かを守ることに、そのために戦うことに真っ直ぐに向かっていくから・・・自分自身が二の次になる部分があるから、だから迷ってるんだよ」



・・・聞いた瞬間は言っている意味が分からなかった。でも、すぐになぎ君の進路のことだと気づいた。



「きっと、あの子自身は無いんだよ。どこに居たいとか、なにをやりたいとか。そういう・・・夢って言うのかな。そういうのが。だから、見る人から見ると危なっかしくて、どこへ行くかも分からなくて、心配になっちゃう」

「それ、分かります。すごく・・・」





そっか、だから・・・なんだ。なぎ君にはそういうのが無いんだ。簡潔に言えば夢・・・自分の行きたい指針や方向性が。スバルで言うなら救助隊のレスキュー隊員として働きたいとか、ティアならお兄さんの夢を受け継いで執務官になりたいとか。私なら・・・母さんのように世界や、そこに住む人達の幸せと笑顔を守りたい・・・とか。

いつだって、なぎ君が戦う時は泣いている誰かが居て・・・自分のためとか、戦うのが楽しいからなんて言ってるけど、実際はそれがどうしても見過ごせないからと言うのが大半で。その中でなぎ君は意識しているのかしていないのか分からないけど・・・ううん、きっと意識して無い。

私がずっと感じていたように自分のことを蔑ろにしている。大事にしていない。



どこへ行きたいとか、居たいとか、そういうのをやっぱり諦めてる。きっと、今もだよ。少しずつ色んなものが見えてきているのかも知れないけど、それでも諦めてる。六課を・・・自分の居場所を。





「だからね、スクールの子達の歌を聴いてもらって、少し話せば・・・気づいてくれるかなと思ったんだ。夢を持つって、行きたい場所を目指していくって、凄く楽しくて幸せで・・・大事なことだって。恭文君だって、そういう夢や行きたい場所を持っていいんだよって、そう話すつもりだったの」



優しく、暖かな笑顔でフィアッセさんが言った。・・・そして思い出す。私達がここに居るのは、フィアッセさんに招待されたからだと。そしてフィアッセさんは最初の段階でこう言っていた。

今回のコンサートに、将来の事に対してのヒントがあると。



「でも・・・裏目に出ちゃった。恭文くんにまた選択させちゃったよ。なんか、本当にだめだな」

「フィアッセさん・・・」

「ねぇ、ギンガちゃん。一つ頼まれてくれないかな」



フィアッセさんが、優しい表情で・・・だけど、真剣な瞳で、私を見る。私も同じ瞳でその視線に応える。



「恭文くんのこと、好き・・・なんだよね」

「・・・はい」

「恭文くん、今言ったみたいに危うくて・・・悪い言い方すれば、歪んだ部分があるよ? それでも、そう言える?」

「言えます。例えそうでも・・・それも全部含めて、なぎ君が好きです」





だから、放っておけなかった。気づいてなかったけど、私は側に居て欲しくて・・・居場所を見つけて欲しくて、ずっと部隊に入って欲しいって声をかけてた。





「それに私・・・もう決めたんです。なぎ君の事諦めない。諦めないで・・・この手で、なぎ君の事全部奪うって」

「フェイトちゃんのことがあるのに?」

「それでも、振り向いてもらいます。いきなりは無理でも・・・少しずつ」





だから、ここに居る。なぎ君の側に居たくて、居て欲しくて、なぎ君との時間が欲しいから。私ももう、諦めることなんてしたくないから。



だから、ここに居る。離れたくなんて・・・ないから





「なら、お願い。今回の事が終わって、向こうの世界に帰っても、あの子の力になってあげて欲しいの。・・・あの子の行動は、きっと間違ってる。だから、責められて・・・大事なものを沢山無くすかも知れない。
でも、あなただけは側に居て・・・力になって欲しい。私は恭文くんの側には居られないから。・・・お願い、出来る?」

「・・・はい、大丈夫です。それに、そのつもりですから」










私がそう言うと、フィアッセさんが嬉しそうに・・・満足そうな顔をして、一言『ありがとう』と言ってくれた。





それがとても嬉しくて・・・嬉しくて・・・。ちょっと、泣きそうになった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・と言うわけなのよ。ギンガさん、やる気満々でもう僕には止められないの」

『まためんどいことに・・・。でも、なんでギンガはアンタ無理矢理引っ張って帰らんで、そっちに残ることにしたんや? ぶっちゃけ、アンタに魔法無しで戦って欲しくはないやろうし、かと言って自分が居ても役に立たんのは、よう分かってるやろうに』

≪まぁ、それに関しては私達は何も言えませんけどね。そういう言い訳も出来ないと言い続けて無茶してますし≫



・・・キャロが泣き止んだので、次ははやてに通信して事情説明。で、ギンガさんの話を聞いて頭を抱えてる。



『・・・いや、当然って言えば当然やな。あぁ、うちもしかしたら余計な事言うたかも知れんなぁ』

「なに言ったのさ」



はやて、正直に言いなさい。なんで固まる。なぜダラダラ脂汗が出まくる。



『いや、無茶する恭文が理解出来んのやったら、あんたも一回無茶したら分かるんやないかーとかな』



それは真面目に余計な事だわ。でも、それで今回ギンガさん無茶してるってわけ? いや、さすがにそれは・・・ねぇ。



『あー、それとなぁ恭文』

「なに、どったのよ。また真剣な顔で」

『・・・うちな、また部隊作るわ』



・・・はい? なんでいきなりそんな話を。



『ちゅうか、管理局変えるわ。ぶっちゃけ、今の局はアンタと同じく、うちも好きちゃうもん』

「いや、だからどうしてそんな話を?」

『それで、アンタが入局したいと思えるような場所にしてくわ』



・・・え?



『アンタ、局員になりたくないんは、別にみんなが嫌いとかちゃうやろ? ただ、アンタの理想や意地を通せる場所とは思えん。背中を預けたいと思えるほど、局の規律や動きが信頼出来ん言うだけで』

「まぁ・・・そうだね」

『だから、うちが変える。うちの知る限り、アンタが一番知り合いん中で局が嫌いやからな。そんなアンタが飛び出して、無くしてまで守る選択をせぇへんでも、動けて守れる組織に変える。それやったら、局員になっても問題ないやろ』



自信満々に言うはやての意図する所がさっぱりだった。と言うより、なんでそんな話をするのかがさっぱり・・・。



『まぁ、そういうわけやから・・・将来の選択に局員言うんも、入れて欲しいんよ』

「・・・んな何十年かかるかもわかんないようなもんに期待して入れと?」

『うわ、酷いな自分。そないな時間かからんよ。・・・とりあえず、6年くれんかな。それで全部は無理でも、アンタの周りくらいは変えて見せるわ』

「・・・なんでそこまでするのさ」

『友達の力になりたい思うのに、理由要らんやろ。なにより・・・うちかて、アンタに居場所ややりたい事を見つけて欲しい人間の一人なんや。アンタ、もう分かってるやろ? フェイトちゃんやなのはちゃん、それにそっちに居るギンガが、なんであそこまでアンタに局に入って欲しいとか、六課での居場所を大事にして欲しい言うたか。
アンタの何が周りをあそこまで心配させて、みんなの気持ちを傷つけているか。もう、ちゃんと分かってるやろ?』





・・・・・・そう、僕は分かってる。みんな同じだ。僕が・・・そういう居場所ややりたい事を見つけられないから。だから、声をかけてくれていた。

でも、僕は・・・やっぱりそういうのが分からなくて。それに縛られるのなんて、取りこぼすのなんて、絶対に嫌で、認められなくて。そんな後悔背負うことなんて納得出来なくて。



だから、止まらなかった。ううん、止まれなかった。どんなにフェイトやなのは達が、止まるのが辛いなら寄りかかってくれていいから、自分達に吐き出してくれていいからと言ってくれても、それも出来なくて・・・。





『だから、局に・・・いや、うちにチャンスもらえんかな。まぁ、今回のこれは特殊やし、なのはちゃん達が居た手前アンタにキツイこと言うたけど・・・うちかて友達見捨てる選択を当然とする体制なんて、ほんまに嫌いなんよ。
今はアンタにやめてもらうことしか出来んのが、めっちゃ腹立たしいんよ。今のアンタにとっての居場所がどこにも見出せないなら、うちがそれを作る。絶対に、絶対や』

「・・・約束は、しないから」



ここまで言われたら・・・ね。少しくらいは譲歩しないと、ダメでしょ。



「僕は、やっぱり飛び込むことしか出来ないから。納得出来ないなら、認められないなら、誰がなんと言おうと飛び出す。・・・6年も待つなんて、約束・・・出来ないから」

『・・・それでえぇよ、アンタのそれは性分でもあるんやしな。無理は言わん。でも、ここに一人・・・アンタに少しずつでも変わって欲しい思うてる人間が居るのだけは、忘れんで欲しいんや。
いや、恭文。アンタ・・・もう変わってえぇんよ? 昔の事は忘れたらあかんやろう。でも、それでも・・・自分の居場所作ったって、やりたいこと持ったって、えぇんや。それだけ忘れないで欲しいんよ。ホンマ、頼むな?』

「了解。・・・はやて、ありがと」



画面の中に映るはやてに、頭を下げる。謝罪と、感謝の気持ちを込めて。今は・・・これだけしか出来ない。



『そんなん、えぇよ。うちら、悪友同士やろ?』

「そうだったね。色気が全く無いのがあれだけど」

『それはアンタがフェイトちゃんに一筋過ぎやからやろ? 全く、ホンマ失礼なやっちゃ。こーんな素敵な女がすぐ近くに居るっちゅうに』

「いやいや、気づいてたよ? それはもうしっかりと」



僕がそう言うと、はやてが意外そうな顔をした。それはもうとても意外と言う顔。



『・・・ホンマか?』

「ホントだって。僕より身長低くて貧乳と言う貴重でステータス種だから、いつも大事にしてるでしょ?」

『よし、アンタ今すぐこっち帰って来るんや。ラグナロクブレイカーで塵に帰したるわ』

「無駄だよ、詠唱完了前に鉄輝一閃でぶった斬るから」

『ならえぇわ。今から全力全開でアンタとうちのカップリングでエロエロでディープなプレイ満載のR18小説書いて、それをフェイトちゃんにノンフィクション小説なんよとか言って見せるから』

「ごめんなさい、お願いですからそれはやめてっ!? つーか、そんなの書くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・・・・・・・・・・で、プレイの内容はどんな感じ?










『そこ聞きたいんかい』

「いや、八神大先生の思考がどんな感じか気になって・・・」




前に読ませてもらった二次創作のR18小説もなかなかいい感じだったしね。いや、あれはよかったよ。



なので、やっぱりそこは気になるのだ。





『よし、それなら説明したろう。まずな・・・』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえずあれや。うち部隊長でよかったわ。だってな、そうとうエロい話したのに、誰も聞いてないんやから。そのための部隊長室ちゃうけど、安心して同人モード入れたもん。





しかし・・・アイツ、マジ失礼やな。うちこう見えても胸は結構あるんよ? 貧乳ちゃうもん、並くらいあるもん。Bちゃうもん、C・・・いや、ぎりDくらいあるもん。なのはちゃんとフェイトちゃんやら、シグナムやシャマルやギンガやら、大きいのが居るから目立たんだけで。





それくらいのプレイは可能やっちゅうねん。要望には答えられるっちゅうねん。・・・なのに、なんであないに驚くんやっ!? ホンマに失礼な奴やでっ! うちとのカップリング要望かて来てるちゅうに、なんでそういうの無視で来るんやっ!!





まぁ、ここはえぇな。・・・なお、会話内容は想像に任せるわ。とりあえず、恭文に読んでみたいと言わせたからうちの勝ちやな。よし、ちょっと頑張って執筆するかな。六課出奔に対してのせめてもの選別や。










「・・・はやてちゃん、なに書こうとしてるですか」



なんか呆れ気味な声がしたからそっちを見ると・・・お、リインや。



「ん? 恭文がうちでエロイ事考えたいからカップリングで小説書いて欲しい言うんよ。ほんまにアイツは鬼畜やなー」

「違うですよね、ノンフィクション小説とか言ってフェイトさんに読ませるからですよね」



ち、聞いてたんか。なかなか聡い子や。・・・いや、えぇ傾向なんかな。うちの末っ子なわけやから。



「いや、でもマジで読ませてえぇんかと思うんよ。ただし、配役はうちやのうてギンガやな」

「なんでそこでギンガが出てくるですかっ!?」

「・・・ほら、ギンガがアレやから」

「あぁ、そう言えば・・・恭文さんのこと、好きなんですよね」



そうやな。・・・なぁ、リイン。やっぱりアレが原因かなぁ。ギンガが狙われたのを助けて・・・ってアレ。



「それしかないですよ。ヒロリスさんもその場に居たらしいですけど、ギンガ相当だったらしいですから」

「恭文が人殺したん聞いても、驚きはしたけど結局受け入れたんやろ? そりゃあなぁ・・・めっちゃ強固やて。ちゅうか、メインヒロインの展開やんかそれ」










・・・・・・恭文、どうやらそういう部分も変わっていかなあかんかも知れんよ?





フェイトちゃん行くにしても、他行くにしても、アンタは一回ちゃんと向き合わんとあかんよ。最低でも一人・・・ギンガの気持ちに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく通信は終わった。しかし・・・予想以上に良さそうな内容だった。ついつい読んでみたいと言ってしまったのは失敗だった。





だってさ、その時のはやての勝ち誇ったような顔。もうね、小説媒体じゃなかったら見せてやりたい。すごい勝ち誇った顔だったもん。くそぉ、なんか色々負けた。





ま、とにかく・・・話してたらだいぶ時間かかったな。そろそろ戻らないと。





とにかく、僕は中庭から立って、建物を目指し歩き始めた。・・・あれ?





入り口のほうから、でっかいボストンバックを抱えて歩く女性が一人。茶色のコートに白いスカート。季節外れだけど素敵な白い帽子なんてかぶってる。

で、一歩歩くたびに栗色でウェーブのかかった髪が揺れて・・・あぁ、そう言えば来るって言ってたよね。





なので、僕はその人に近づいて声をかける。










「・・・荷物、持ちましょうか?」

「あ、大丈夫ですよ。これくらいはいつも・・・あらま。なんで居るん?」



・・・フィアッセさんから聞いてなかったのか。なんかビックリしてる。



「コンサート、友達と聴きに来たんですよ。フィアッセさんに誘われて」

「なるほどなぁ。なぁ、その子って女の子?」

「そうですけど・・・なんで分かったんですか」

「いや、自分の交友関係考えたらそれは分かって当然やて」



まぁ、ここは考えない。確かに女の子大半だけど、気にしない。



「・・・恭文君、久しぶりやな」

「お久しぶりです、ゆうひさん」



僕がそう言うと、目の前の女性・・・ゆうひさんは優しく、にっこりと微笑んだ。



≪ゆうひさん、お久しぶりです。お変わりないようですね≫

「お、この声はこてっちゃんやないか。うんうん、お久しぶりなぁ。なぁ、自分相変わらず毒舌キャラで恭文君弄ってるんか?」

≪いえいえ、私はいつでも謙虚なサポートキャラですよ? だからマスターに日々虐げられて踏みつけられて・・・≫

「そんなことないからっ! むしろそれは僕のセリフだからねっ!?」

「はは、やっぱり変わりないみたいやなぁ」





なんて気軽に話し出したこの美人なお姉さんは、椎名ゆうひさん。クリステラ・ソング・スクールの卒業生で、フィアッセさんのお母さんであるティオレ・クリステラさんの教え子でもある。なお、歌手活動をしている時の芸名は『SEENA』(シーナ)。



このお姉さんも関西弁で気さくな感じにも関わらず、しっとりとした素敵な歌声を持ち、世界的に有名な歌手の一人として名を連ねている。なお、僕とは数年前に知り合っている。

・・・あのね、海鳴にさざなみ寮って言う魔窟があってね? 美由希さん経由でそこの手伝いを頼まれて、2週間ほど通ったことがあるのよ。ご飯作ったりとか洗濯したりとか掃除したりとか。で、ゆうひさんはその時さざなみ寮に滞在していたお客人・・・訂正、里帰りを果たしていた一人だった。なんでも、音大在学中さざなみ寮で住んでたらしい。

で、その時またごたごたして・・・年こそフィアッセさん以上に離れているけど、僕の魔導師としての顔も知っている友人となっている。でも、あの時はびっくりしたなぁ。そして思ったよ。やっぱり海鳴っておかしい街だと。だって・・・ねぇ?



とにかく、ゆうひさんとはなんかノリや勢いが合うのか、年齢差を感じないの。





「いやいや、うちもさすがに年やから。こう・・・若い子には負けるよ」

「あぁ、そうでしょうね。肌のハリとかが違いますもん。化粧も前に会った時より濃くなってますよね」

「そうやろ? どうも最近化粧のノリが悪いし肌も荒れるようになってもうてなぁ・・・って、ちょっとっ!? そこは『そんなことありませんよ、ゆうひさんはいくつになっても綺麗で可愛くて素敵です。もう今すぐプロポーズして教会に駆け込みたいくらいですよ』とか言う所やろっ!!」

「なんでいきなりそうなるっ! つーかおかしいからっ!! どんだけ自分持ち上げたいんですかっ!!」

「なに言うてんの。自分、フィアッセに初対面の時から口説きまくってたそうやんか。それに初めて会うた時も、お風呂場に居たうちの裸を・・・」

「それは言わないでー!!」



ま、まぁ・・・フェイトと喧嘩して色々あったので・・・あれ? なんか今と現状がさほど変わってないような。



「ま、そこはともかく・・・荷物持ちますよ。素敵なレディを助けるのは、男の役目ですし」

「うん、ほんならお願いな」









と言うわけで、荷物を渡されて僕はそれを慎重に持ちつつ、再びスクールの中に入った。





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あきゅろす。
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