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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第9話 『また会う日まで、どこまでも続いていくクライマックス・ジャンプ』:2



「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」





左右から、フェイトと挟みこむようにアルトを袈裟に打ち込む。でも、僕は左手の手のひらで。フェイトは鎌で、それを受け止められた。



つか・・・硬いよコイツっ!!





”・・・ヤスフミ、少し離れてて。真・ソニックで一気に決める”

”だめっ! デカ物でどんな手使うかわかんないやつに真・ソニックっ!? 危な過ぎるよっ!!”





・・・死神ギガンテスが両腕を押すようにして、僕達を弾き飛ばす。そしてそのまま身体を回転させながら、口から光の・・・弾丸っ!?



そう、口から光の弾丸を乱射してきた。当然、僕達に向かって。



フェイトは、なんとか切り払いつつ回避してる。でも、僕は・・・あそこまでは動けない。だったら・・・!!





「アルトっ!」

≪はい≫





七鉄アルトから二鉄だけが外れて、それを僕は左手に取る。そして、その場で両手で構え・・・光の弾丸に向かって、二刀を打ち込むっ!!

鉄の斬撃の盾で、やむことのない光の雨を切り払う。・・・こんなアドベントなことをマジでやる羽目になるとは、思わなかったよ。



そうして、光の雨が止む。すると、奴は雄たけびを一声あげる。

そのまま上空数十メートルに一瞬で飛び上がる。翼を羽ばたかせると、なにか銀色の弾丸が・・・・・・って、やばいっ! とにかく回避っ!!

僕もフェイトも、すぐに範囲外に逃げる。でも・・・追ってきたっ!? 待て待てっ! 誘導弾の類かいっ!!



仕方ないので、下がりつつも二刀で先ほどと同じように斬り払う。フェイトは、なんとか逃げつつランサーをセット。それで撃ち落してる。





『グルァァァァッ!!』





そんな僕の真上から、悪意が襲ってきた。鎌の切っ先が、勢いよく振り下ろされる。それを、二刀を交差させて・・・受ける。いや、しっかりと固めて軌道を逸らす。



でも、その代わり僕は勢いよく弾き飛ばされるように後方へと吹き飛び、地面に激突した。

身体を襲うのは強烈な痛み。地面を身体を使って滑ってる熱と痛み。でも、まだマシな方だと思う。バリアジャケットもあるし、それに・・・。





「リイン、ありがと・・・」





リインが咄嗟にフィールドを高めてくれた。おかげで、動けなくなるほどじゃない。でも・・・不覚取った。





【大丈夫ですよ。・・・まだ、いけますよね】

「もちっ!!」





そのまま、飛び出す。・・・そして見えた。フェイトがこちらとは反対方向に逃げつつ、死神ギガンテスの相手をしているのを。距離にして数百メートル。・・・一気に行くっ!!





≪Sonic Move≫





蒼い閃光が身体を包む。そうして一気にフェイトの近くへと跳ぶ。数百メートルだった距離は、たちまち100メートル以内に・・・え?



・・・目の前の光景が信じられなかった。フェイトは、自分の前に居た死神ギガンテスの鎌の斬撃を後ろに下がり避ける。でも・・・その後ろには忍び寄るように銀色の弾丸があった。当然、これでフェイトは上に逃げる。



でも、死神ギガンテスはいつの間にかフェイトの上を取っていて、そこから鎌を振るう。それを大きく左に飛んで避けた直後銀色の弾丸が一斉にフェイトに向かって下から襲いかかってきた。



更に・・・返す刀・・・もとい、返す鎌が来る。フェイトの首目がけて。そして、今までの経験から分かる。あれは回避不可能だと。



そして気づく。今のままだと・・・間に合わないと。こうしている間にも身体は前に進んでいる。でも、この80メートル足らずの距離は一気には縮められない。時間が少しだけ・・・本当に少しだけ足りない。目の前で、フェイトは・・・死ぬ。



・・・死ぬ? フェイトが?





「んなの・・・!」










守れなかった。全部忘れちゃって、辛い思いをさせた。忘れられる方が辛いなら、忘れる方だって辛いはずなんだ。





まだ、謝ってない。守れなくてごめんと。そんな苦しい思いをさせて・・・ごめんと。





まだ・・・聞いてない。フェイトが大事なことだって言った話を。





まだ・・・知らない。フェイトが僕を見て出した答えを。





なのに・・・なのに・・・!!










「こんなの・・・・認められるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










最大出力のブースト・・・もう最大だよっ! あそこまで一瞬で行く手札なんて・・・いや、ある。





僕は知ってる。でも、今まで使えなかった・・・いや、使わなかっただけだ。そうだよ、何度もそれっぽい感覚は感じてる。足りないんだ。力を出せなかった。





なら今は? 大事な、惚れた女が目の前で死にかけてるんだ。これで出せなきゃ・・・!





手を伸ばす。今までは見ていることしか出来なかった領域に。今あるありったけを賭けて。





今までずっと、伸ばし続けてきた。不可能だと思うことでも、諦めないで、諦めきれないで。認められなくて、悔しくて、変えたくて。





そうやって後悔することも取りこぼすことも何度もあって・・・それでも、伸ばし続けてきた。





だから、今も手を伸ばす。覆したいから、今をっ!!





届け・・・! 届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届けっ!!





届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!




































































































瞬間、視界がボヤけた。いや、色を失った。ただ、その代わりに、全ての物の行動が動きを遅くした。






まるでスローモーション映像のように動く世界。でも・・・僕はその中で、周りの物より本当に・・・本当に少しだけ速く動けていた。ただ、それでも普通に飛んでたんじゃあ絶対にあの場に間に合わない。だから・・・こうする。





足元に小さな魔法陣を発生させる。魔導師が使う魔法陣には、物質的な足場としての効果もある。それに右足を乗せて・・・一気に飛ぶっ!!





本当に・・・少しずつしか進まない跳躍。でも、『届かなかった』距離は、その一回で『届くかもしれない』距離に変わった。





だから、跳躍の勢いがなくなりかけた頃に、もう一度足場を発生。瞬間詠唱・処理能力のおかげなのか、このスローリーな世界でも変わらぬスピードで魔法陣は構築される。





そうして、もう一度飛ぶ。





もう一度・・・。




もう一度・・・・・・!





もう・・・いち・・・ど・・・!!





そうして・・・不可能は覆された。そう、僕は届いた。










「・・・鉄輝」









何度目かの跳躍で、距離は零へと縮まった。僕は、襲い来る鎌を持つ腕を・・・。










「一閃」










右手のアルトに魔力を込めた上で一気に叩き斬る。すると、面白いように腕は中ほどから分たれ、宙に落ちた。





フェイトの首を狩ることなく、ゆっくりと落下し始めたそれを足場に、今度は後ろに飛ぶ。そうしてフェイトの下に回って・・・ゆっくりと襲ってきた弾丸達を二刀で次々と斬り落とす。

数は多い。でも、全部斬れる。僕の動きは・・・それよりも少しだけ速いから。





そうして、全てを斬撃の盾で斬り落とした直後、世界は色を取り戻した。










「・・・フェイト、だい・・・じょうぶ?」





上を見る。・・・そして視線を戻す。



だって・・・見えちゃった。やばい、顔熱くなって・・・!!





「・・・え? ヤスフミっ!?」

【あの、今なにがあったですかっ!? あの距離をほんの数瞬で・・・!!】










悪い、今は答える気力無いわ。だって・・・身体がギシギシ言ってる。悲鳴で合唱が出来そうだよ。あと、顔が熱い。





守れた・・・今は、その事実だけでいい。あと、今見た光景は心の中の秘密フォルダに永久封印しようと思う。










『グガァァァァァァァァッ!!』










死神ギガンテスが叫ぶ。腕が突然斬り落とされたんだから、当然って言えば当然か。でも、もう遅い。このまま・・・一気に潰す。





僕は、腰のサウンドベルトのエンターボタンを押してから、もう一度パスを通す。すると、ここまで空気を読むように止まっていた音楽が、再び流れ始めた。










≪The song today is ”Double-Action”≫

「さて・・・」

≪まだいけますか?≫

「もちろん」










二鉄をアルトに再び装着させ、七鉄アルトにした後、構える。殺意を増した瞳を僕達にぶつける死神を見据えながら。





あぁ、怖い怖い。でもね・・・まったく負ける気がしないねっ!!










「フェイト、みんなで必殺技・・・いくよ。いいよね?」

「当然。それに・・・答えは聞いてないよね」

「もちろんっ!!」










死神ギガンテスが左腕を突き出してきた。それを、僕達はまた左右に分かれて飛ぶ。










「フェイトっ!」

「うんっ!!」










フェイトがバルディッシュのカートリッジを数発ロード。そうして、ランサーが数十発セットされる。










「プラズマランサー・・・ファランクスシフトッ!!」





そうして、雷の槍が連射されていく。それらは全て死神ギガンテスへと命中していく。連射・・・いや、乱射される槍はアルトの刃やライオットを受け止めた硬度の皮膚を、たやすく削り、侵略していく。



そうして連射が終わり、死神ギガンテスの身体がぐらついた。でも・・・まだまだっ!!





【グラキエス・・・!!】





一気に接近。左手に生まれていた氷結属性付与の魔力スフィアをそのまま死神にかざし、ぶっ放すっ!!





【「クレイモアっ!!」】





グラキエス・クレイモア。クレイモアの氷結属性付与バージョン。要するに・・・氷の散弾をぶちかます技っ!!



ベアリング弾サイズの氷の弾丸達は、これまた皮膚を侵略し、凍れる傷口をいくつも作る。再び叫びが辺りに木霊するけど・・・叫んでる暇、あるっ!?





【「さぁっ!」】





七鉄アルトを両手にしっかり持って・・・!





【「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」】





本日二度目のホームランで、上空へ吹き飛ばすっ!!



そして、上から・・・。





「はぁぁぁぁぁぁっ!!」





いつのまにか真・ソニックフォームになっているフェイトが、ライオットザンバーを死神ギガンテスの胴に打ち込む。そして、刃が火花を散らしながら死神ギガンテスの身体に少しずつ・・・少しずつ食い込んでいき、その勢いに押されるようにフェイトも死神ギガンテスも落下してくる。





【「必殺っ!」】





そのまま上へと飛び出す。





【「僕達の・・・必殺技っ!!」】

≪クライマックスバージョンッ!!≫










アルトにリインと一緒に魔力を込める。氷結属性の凍れる大剣が生まれる。










「と見せかけて・・・!」










フェイトはそのまま上から、僕は下から・・・挟み込むようにして、互いの相棒で往生際の悪いこのシルバーアリーマーを・・・ぶった斬るっ!!










【「「ストレートッ! ど真ん中っ!!」」】










そうして、死神ギガンテスは、氷と雷の二つの斬撃を両側から食らい、胴から真っ二つに両断された。僕とフェイトは、そのまま斬撃と共に交差する。










『グゥ・・・グルアァァァァァァァァッ!!』










死神ギガンテスは、爆散。辺りに雷と氷が交じり合ったような爆風がはじけ飛ぶ。










「・・・ふ、決まったね」

【やっぱり楽しいですー♪】

≪正しくクライマックスでしたね。やはりDouble-Actionは名曲ですよ≫





なんて言ってると、フェイトが傍らまで飛んできた。・・・まったく、また真・ソニックになって。そんなに脱ぎたいのか、あなた。





「そんなわけないよっ! ・・・ヤスフミのエッチ」

「仕方ないでしょ? 男の子はエッチなんだから」

「仕方なくないよ。さっきだって・・・下から見たよね」





・・・は、はて・・・僕にはいったいなんのことやら。





「まぁ、不可抗力なのは分かるし、スパッツ履いてるからいいけど・・・」

「いや、だから僕は・・・」

「見たよね」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし。





「はい、すみません。見ました、見えました。スパッツも見えました。でもラインは見えました」

「その・・・私、待たせてるし、我慢もいっぱいさせちゃってるから・・・分かるよ? でも、その・・・」





フェイト、お願いだから真・ソニックで顔赤くしてもじもじしないで。無駄にかわいいから。身体のラインとか揺れとか丸見えだから。





「・・・またエッチな目で見てる」

「見てないからっ!!」

「聞きません。だから、禁止。その・・・私、嫌じゃないけど恥ずかしい」

「えっと・・・ごめん」





あれ、なんで僕謝ってるのっ!? といいますか、なぜこんなことにっ!!





【・・・またリイン達の事忘れてラブラブしてるです】

≪本当になんなんでしょうね、この二人≫





・・・僕は何も聞こえない。フェイトも何も聞こえない。なので、二人して顔が赤くなってるのはまったくの別件だ。





≪・・・しかしフェイトさん、電王見てないのによくわかりましたね≫

「え、えっと・・・その、こう勢いで」










勢いで分かるものなのかと思う人も居るだろう。





でもね・・・分かるのよっ! それが電王クオリティっ!! もっと言うと、『DEN-O SOUL』!!










「でも、ヤスフミ大丈夫?」

「なにが?」

【だって、あんな超高速機動で動いたのに・・・】

「大丈夫。全部終わったあとにフェイトの膝枕で寝させてもらうし」





そのために、もうちょい頑張ろうじゃないのさ。うんうん。





「そ、それは・・・!!」

「・・・フェイト、ごめん。言ってる場合じゃなかった」

「え?」

「だって・・・あれ」










上空を指差す。すると・・・空高く逃げようとするネガデンライナーが居た。そのまま時空の入り口を開け・・・。










「ヤスフミ、あれって・・・」

「時間の中に逃げようとしてる・・・ね。デンライナー、なんか地面で火花あげて止まってるし」

【それってやばいじゃないですかっ!!】










やばい・・・よね。





とにかく、ネガデンライナーは入り口へと進路を取って、進行。





そのまま・・・ぶつかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



な、なんだこれはっ!?





ようやくうるさい連中を潰して、にげ・・・もとい、戦略的撤退をしようとしたら、時間の中に入れない。





いや、それだけじゃねぇ。空が・・・妙に薄暗くなった。それが俺様の電車と時間への入り口を容赦なく阻む。





なんなんだこれはっ! なぜ俺様は・・・時間の中に入れねぇっ!!





次の瞬間、すさまじい衝撃が上空から襲ってきた。そしてその勢いのまま・・・俺様と電車は、地上に叩きつけられた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪The song today is ”ブレイブ フェニックス”≫










・・・よし、コンポと巨大スピーカーはセットよしっと。










「ヒロ・・・。お前ずいぶん余裕あるな。俺とシャマル先生はテンぱりっぷりがクライマックスだってのに」

≪むしろ、緊張感がないですね。主は必死だと言うのに≫

「だってー! 私だって音楽で士気高揚とかしたいのよー!!」

「それでどうして・・・カタカナなんだよ・・・! このフェイトちゃん似の声の子が歌ってる子の曲・・・英語表記だったろうが・・・!!」



あ、スペルをド忘れしちゃってさ。仕方ないからカタカナで登録した。



「マジで・・・適当だなっ! お前は本当によっ!!」

「そこが私の素敵なところだって、昔の彼氏は言ってくれたよ?」

「あー、そいつは今すぐ病院行った方がいいな。もしくはお前が怖かったんだろ」

「サリ、覚えときなよ。後で絶対殺すから」










ん、ベルトじゃないのかって? いや、イルドのやつが私の分作ってくれなかったのよ。まったく、やっさんだけってどういうことさ。時間無かったから、自分で作るのも出来なかったしね。あれ、意外とハイテクノロジーの結集なのよ?





ま、そこはともかく・・・再生ボタンをポチっとっ! さて、今からこのフルボッコな音楽に乗せて、電車フルボッコタイムですっ!!





あ、カラオケで今度フェイトちゃんに歌ってもらおーっと♪




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・いくぞっ! アイゼンっ!!」

≪了解っ!!≫





リミットブレイク状態のアイゼン抱えて、アタシは空で行き止まりにぶつかって、間抜けに立ち往生してる電車へとかっとぶ。



そして、そのまま・・・!!





「アタシとアタシの大事なバカ弟子ナメてくれた礼だ・・・!」





カートリッジをフルロードっ! 思いっきり巨大化させて、電車の中ほど目がけて上段から打ち込むっ!!





「しっかりと・・・受け取りやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










手に感じたのは確かな手ごたえ。不意の攻撃だったからなのか、さほどの抵抗も回避も無く、振り下ろされたアイゼンの勢いに圧されるままに、電車は落下。





そうして、あの気持ち悪いパチモン電車は地面に叩きつけられた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うーん、ナイスボ・・・もとい、ナイスショット。










「うし、ヴィータちゃん。そのまま待機してて。あとは・・・」

『了解です、任せました』





・・・さて、長かった長かった。やっさん達待たせ過ぎちゃったね。時間の中にも逃げ込まれないような結界を構築するのに時間かかったからなんだけどさ。



ま、とにもかくにもですよ・・・!





「さて、ようやく・・・」





隣で、錫杖姿の金剛構えて、必死こいてシャマルさんと一緒に結界維持しているサリには悪いけど、少し暴れさせてもらうよ。





「私らの時間だね」

「悪いけど、すぐに決着つけてくれよ・・・?」

「本当にお願い。私とサリエルさんだけでこの特殊結界の維持は・・・キツイの」





らしいね。だって二人とも必死こいて油汗流してるし。つーわけで、まずはザフィーラさんにシグナムさん、よろしくお願いしまーす♪





「心得ました。・・・はぁぁぁぁぁぁっ!!」





本日はナイスなガタイの犬耳お兄さんになったザフィーラさんが、両手を前方にかざし、白いベルカ式魔法陣を出現させる。そうして・・・魔法発動っ!!



白い刃が再び動き出し、空へと逃げようとしていた電車に突き刺さる。そうして、動きを止めた。・・・古代ベルカ式の攻撃をかねた拘束魔法。いや、やっぱエグイよね。電車にも有効なのがビックリだけど。





「・・・いくぞ、アギト」

【おうっ!!】





当然、ネガデンライナーは止まったままじゃない。上空に突然現れた私達に気づいて、攻撃を仕掛けてくる。でも・・・無駄だね。





≪行くぜっ! 姉御っ!!≫

「何でアンタがシグナムさんの立ち位置っ!?」





私はシグナムさん達の前に出て、飛んできた砲弾やらミサイルやらを・・・。





「アメイジアっ!!」

≪うっしゃぁぁぁぁぁぁっ! サァァァァペントッ!! フォルムッ!!≫





・・・私は今はツッコまない。とにかく、アメイジアが片刃の双剣から、蛇腹剣へと姿を変える。





「・・・カリム、シャッハ。悪いけど許してね」





アメイジアに魔力を込める。ただし・・・普通の魔力じゃない。雷撃属性に変換した魔力を。白い電撃が、刃を包む。



以前、宴会芸でちょっとやんちゃして二人に叱られて以来封印し続け・・・いや、JS事件中に一回封印解いたけどさ。とにかく、私の手札の一つっ! 雷撃属性の術式っ!!





「でもさ、私も少しは暴れないと・・・!」





両腕を振るう。そうして、蛇腹剣を広範囲に展開。そうして砲弾やらミサイルやらを防ぐ盾・・・いや、それらを斬り裂く雷撃の鞭と変え、襲い来る全ての存在に打ち込むっ!!





「気が済まないのよっ!!」





空を切り裂く白い雷鞭によって、シグナムさん達に襲いかかろうとしていた悪意は全て塵となった。





≪・・・姉御、俺達、今輝いてるな≫

「当然でしょ? まだまだやっさん達には負けないよ」





ま、ロートルの出番はここまでだけどねっ! シグナムさんにアギト、あとよろしくっ!!



私は、そこから思いっきり上空に飛ぶ。もう、二人の準備は出来てるから。私がここに居ても邪魔だし、なにより・・・巻き込まれる。





【剣閃・・・烈火ッ!!】





シグナムさんが、左腕に炎の魔力エネルギーを収束して、右に振りかぶる。そしてそのまま・・・!!





【「火竜ッ!!」】





そいつで、ネガデンライナーをぶった斬るッ!!





【「一閃ッ!!」】





・・・あ、斬るって表現はおかしいかな? この攻撃は中距離範囲攻撃なんだし。



何千度という灼熱の業火が電車を・・・その兵装として搭載されていたギガンテス達を焼く。そして、そのまま・・・爆発・・・!!





【しねぇじゃねぇかよっ! 兵装はともかく電車は無事だぞっ!?】

「ありま、ホントだ。いやぁ、失敗失敗。でもさ、熱そうだからいいんじゃない?」

≪そうだな。中のやつもこんがり焼けて上手そうだぜ≫

【そういう問題かっ!?】



そういう問題よ。



『・・・ヒロ』



なに?



『・・・悪い、もう限界だ。魔力が・・・切れる』

「バカっ! もうちょい我慢しなっ!! 今逃げられたらアウトでしょうがっ!! 魔力ならマジックカード使って回復しとけっ! ちゃっかりアンタも常備してるでしょうがっ!!」

『鬼・・・!!』










失敬な。私は天使のように心優しいと次元世界で評判なのよ。





とにかく、炎の中を突っ切るように電車が再び外に・・・って、あれはどんだけアウトコースな存在だよ。あれで止められないなんて。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・熱いっ!!」





なんだこれはっ!? この世界の人間・・・魔導師の力は、あそこまでのことが出来るってのかっ!!





「しかしあいつら、こんな隠し玉を」





油断しすぎていたのか? いや、それはない。俺様は一度負けた。負けて学習して、ここまで来た。



なのに・・・なぜだっ!? 俺様や俺様の部下、この電車の方が、奴らより数も戦力も強さも違うっ! なのに、なぜ俺様はこんなに・・・!!



瞬間、電車が止まった。アクセルをどれだけ捻ろうと、ちっとも進まなくなった。





「くそ、なんなんだ一体っ!!」



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・銀月の宿木」





答えを教えてあげようか? 実に簡単だ。





「ミストルティンッ!!」










はやてちゃんの砲撃魔法だよっ! それも、石化属性持ちっ!!






・・・全部このためだ。あのパチモン野郎がまた電車を持ち出してくるのは分かってた。それでまた時間の中に逃げ込まれたら、非常に困る。もう一回復活とかされても、ウザいしね。

だから・・・私とサリ、はやてちゃんにヴォルケンリッターの皆様は電車対策に回ることにした。





このために、シャマルさんとサリさんはデカ長と協力して、時間の中に入れなくする特殊結界を構築した。すさまじく魔力の消耗が激しいらしく、二人とももうグロッキーだけど。




このために、シグナムさんは好敵手のフェイトちゃんのことをやっさんに全部任せた。本当は自分も戦いたかったのに。もっと言うと、あのイマジンを潰したかったのに。




このために、本当は電王と一緒にクライマックスで暴れたかった私とヴィータちゃんとザフィーラさんは、涙を飲んでここに残った。本来なら、やっさんの位置には私が居たのに。





このために、はやてちゃんはそんな私達の様子を見てなぜかあきれた。・・・ま、ここはいいか。





とにかく、あとは・・・任せたよっ! モモタンッ! オデブっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・オデブ、まだ・・・行けるよなぁっ!!」

『当然・・・だっ!!』





だったらよぉ・・・行くぜぇぇぇぇぇっ!!





『あぁっ! 行こうっ!!』





デンライナーとオデブの電車がまた動く。まず、また空へ走る。そして、旋回しつつ正面に奴を見据える。





「あのパチモン電車ッ! 今からスクラップに・・・!!」





アクセルは最大加速。そのまま・・・俺達は石みてぇに固まってやがる電車に、真正面から・・・突っ込むっ!!





「してやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










オデブの電車のドリルが、先を穿つ。そのままドリルは車体を削って・・・俺達は、それが空けた穴を広げるように、突っ走った。





そして、パチモン電車をドリルで全て穿つと・・・そのまま俺達の後ろで電車は、爆発した。










「・・・へへ、どうだっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



奴らの電車が真正面から突っ込んできた瞬間、俺様は飛び出した。そして・・・なんとか地上に着地した。









「だから・・・ドリルなんざ嫌いなんだよ」









くそ・・・。俺様の切り札が。こうも・・・あっさりと・・・!!





空の上で俺様の電車が爆発する。破片があちらこちらに降り注ぐ。俺様は、それを見てとても苦々しい気持ちになる。





なぜだ・・・! なぜ、俺様は強いはずなのに、ここまで追い詰められるっ!? 俺様と奴らとで、なにが違うと言うんだっ!!










「・・・そんなの、決まってるでしょうが」





声は後ろから聞こえた。





「青坊主の言う通りだぜ。知ってるか? どっちが強いかじゃねぇ」

「ましてや、数でもない」





俺様がそちらを見ると・・・やつらが居た。そう、やつらが・・・!!





「「戦いってのはなっ! ノリのいい方が勝つんだよっ!!」」










そんな時だ、声が聞こえた。どこからともなく・・・声が。










(時の警察列車・デンライナー)





そのまま、奴らは俺様に向かって歩いてくる。





(時を越える犯罪者・イマジンが起こす事件を、徹底的にクライマックスで解決する刑事達)





俺様を見据え、揺らがず、迷わず、止まることなく・・・こちらへ来る。





(彼らに警察手帳や捜査令状はいらない)





あのチビと特異点を中央に、なおかつ先頭に、一歩ずつ確実に奴らは来る。





(彼ら自身が手帳であり、礼状である)





そして、足を止める。





(彼らに逮捕出来ないものはただ一つ)





そのまま、チビが笑う。不敵に笑う。





(神のみっ!!)





まるで、この状況が楽しくて仕方がないと言わんばかりに・・・!!





(それがっ! チィィィィィィィムッ! デンライナァァァァァァァァァッ!!)










そして、そのまま奴らは一斉に自分を右手の親指で指す。










「チーム・デンライナーっ!」

「機動六課っ!!」

「「俺達ッ!」」










そして、そのまま両手を大きく広げ、全員がいっせいに同じポーズを取る。










『参上っ!!』

【ですっ!!】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ふ、決まった。





いや、やりたかったのよ・・・これっ!!










【あぁ・・・リイン感動ですっ! これ大好きですーーー!!】

「・・・あの、うん・・・だいぶ慣れてきた。というか、私も分かってきたよ」

「これ・・・楽しいですね〜」

「アタシも楽しいー! てか、最高だぜこれー!!」

「いや、フェイトちゃんもスバルちゃんもアギトも分かってきたか。これで私らの立派な仲間だよ。・・・サリ、私・・・泣いていいかなっ!?」

「いいさっ! 泣けっ!! お前は・・・いやっ! 俺達は今っ!! 泣いていいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





その言葉に、電王を知っている組は全員涙目になる。場を弁えろとは言うことなかれ。なぜなら・・・僕達は今っ! 泣いていいのだからっ!!



なお、なぜサリさんの右頬に赤い拳大のアザが付いているかとかは、気にしてはいけない。





「リイン曹長、楽しそうですね・・・」

【当然ですよ、キャロっ! だって、こんなの一生あるかないかなんですからっ!!】

「・・・そっか、それはほんま、よかったなぁ」





そうだよねっ! こんなのもうあるかどうかわかんないんだもんねっ!! 楽しまなくてどうするのさっ!!





「な、なぜ私がこんな真似を・・・!!」

「シグナム副隊長、抑えて・・・! 私も同じですからっ!! つーか、なんなのよこれっ!?」

「・・・その、なんで僕まで。というか、今日は色々厄日な気が」

「その、私も少し・・・恥ずかしいわ。色々気にしちゃうもの。で、でも・・・恭文くんの現地妻1号としては、頑張らないと・・・あぁ、でもー!!」

「よかったなぁ、侑斗っ! これで俺達もデンライナー署の一員だっ!!」

【バカっ! それまだ引きずってたのかっ!?】





まぁ、若干名空気読めずに協調性に欠ける方々や、なんか妙な思考に陥っているお姉さんが居るのは気にしないこととして・・・。





「さて・・・決着つけようか」



分解状態に戻した一鉄アルトをまたホルダーから引き抜く。そして、その切っ先を向ける。



「そうだな、もうここで終わりにしようぜ。また出てこられても困るからな」

「お前、ここで終わらせてあげるよ。全部ね」





僕とモモタロスさんがそう口にすると、ネガ電王が笑った。それはもう、おかしいくらいに。




「終わり・・・? いや、終わらねぇっ! 言っただろうがっ!! 悪の組織は・・・永遠に不滅だっ!!」

「・・・そう。だったら、それが錯覚だって教えてあげるよ」

≪悪の組織は、倒されるから悪の組織なんですよ。そうして、見ている人達に悪意が長続きしないことを教えていくんです≫

【勝つ悪の組織なんて・・・悪の組織じゃないですよっ! ただの悪い人達の集まりですっ!!】





つーわけで、なんか思いっきり長くなって冗長感漂い始めてるけど、それもここで終わり。一気に・・・いくよっ!!





「みんな、僕達も行くよっ! せっかくだから・・・てんこ盛りっ!!」

『えぇぇぇぇぇぇぇっ!?』





なにっ! てんこ盛りっ!? マジですかっ!!





「りょ、良太郎? それはやめにしないっ!? ほら、ギャラリーも多いんだしさ」

「迷ってる暇ないよっ! ほら・・・いくよっ!!」










良太郎さんが、ベルトからケータロスを一旦外し、一番下の四つのボタンを右から順に押していく。










≪Momo Ura Kin Ryu≫










そして、そのまま通話ボタンを押すと・・・音楽が流れ始めた。









≪Climax Form≫










ケータロスが良太郎さんの手を離れ、虹色の線路をその周りに走らせる。そして、その線路の先はデンオウベルトのバックル部分へと繋がる。

ケータロスは虹色の線路を辿るように宙を走り、再びベルトに装着される。その際、小さな角のようなパーツが出てきた。









「リイン、アルトっ! こっちも行くよっ!!」

≪そうですね。マスター、やはり刑事ですし・・・アレで≫

【そして、最後の最後まで楽しく激しくぶっ飛ばしていくですよー♪】

「当然っ!!」










左手でパスを持つ。そして、親指でエンターボタンを押して、もう一回ベルトにセタッチ。・・・やっぱ、このシチュでクライマックスフォームなんだから・・・流す音楽はこれでしょっ!!










≪The song today is ”Double-Action Climax Form”≫










音楽が流れ始める。それだけで、ギシギシ言ってた身体から痛みが抜ける。心の奥から、どんどん力が沸いてくる。





そして、モモタロスさん達四人が吸い込まれる。吸い込まれてすぐに、ライナーフォームの良太郎さんの姿が変わる。仮面はソードフォームのものに。

ただ、スーツが違う。胸元に大きなレール付きのターンテーブル。そこから、手足に銀色のレールのように見えるラインが走る。





でも、ここからが変化の見所。・・・右肩にロッドフォームの青の仮面・・・ウラタロスさんが憑く。

左肩にアックスフォームの金の仮面・・・キンタロスさんが憑く。

胸にガンフォームの紫の仮面・・・リュウタロスさんが憑く。





それから、赤の仮面が発光したと思うと、そのまま仮面が剥けた。・・・いや、そうとした表現出来ないの。





・・・これが、電王の最強フォームっ! その名もクライマックスフォームッ!! 良太郎さんにモモタロスさん達四人が憑依した本当に本当にクライマックスなフォームッ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・クライマックス・・・フォームッ!? な、なんなのアレっ!! ダサっ! 真面目にダサっ!!





なんか、アイツやなのはさんやザフィーラにヴィータ副隊長、ヒロリスさんとサリエルさんは感激の余り涙目になってるし、スバルがなんか感動と言わんばかりの表情でアレを見ているけど・・・それ以外の全員の意見は一つだったっ! そう、あれっ!!











『・・・・・・やっぱりセンス無っ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



【りょ、良太郎っ! やっぱりこれやめようよっ!! ティアナちゃん達の目が微妙だってっ!!】

【なんや、恭文や高町嬢ちゃん達は喜んどるみたいやけど、辛すぎるわこれっ!!】

【というかというかっ! これやっぱり気持ち悪いー!!】

【だから、そんなことないって。これ、かっこいいよ?】

【【【そんなの良太郎だけっ!!】】】

【それもひどくないっ!?】





・・・なんだろう、やっぱりこれ嫌なんですね。でも、僕はかっこいいと思うんだけどなぁ。





【そうですよっ! リインもかっこいいと思うですよっ!?】

『うんうん』

「あ、私もですっ! すごくかっこいいと思いますっ!!」

【【【りょ、良太郎がたくさん居る・・・!】】】

「うっせぇてめぇらっ! 静かにしろっ!! ・・・行くぜっ! 青坊主っ!!」

「はいっ!!」





うん、まだいける。だから・・・飛び込むっ!!





「「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」





そのまま走り出す。すると、ネガ電王がパーツを銃へと組み替え、こちらへと撃ってくる。





「邪魔っ!!」




僕はモモタロスさんの前に出ると、そのまま直進しつつ、アルトで襲い来る銃弾を斬り払う。





「モモタロスさんっ!!」

「おうっ!!」





モモタロスさんが、僕の肩を踏み台に跳んだ。そしてそのまま・・・上空からデンガッシャーで唐竹割りで斬りつける。





「うおっ!!」

「もう逃がさねぇぞっ!!」





そのまま、いつものモモタロスさんの通り、斬撃の嵐が巻き起こる。斬り上げ、斬り下げ、左右からの薙ぎ斬りに袈裟に逆袈裟。

斬撃がネガ電王の装甲を斬り付ける度に、火花が散り、少しずつあのパチモン野郎は圧されていく。



そして、突きが胴に入ると、ネガ電王が吹き飛ぶ。





「まだまだっ!!」





入れ替わるように、今度は僕が前に出る。



僕が上段からアルトを打ち込むと、それをネガ電王は斧で受け止める。





「よくもまぁ好き勝手やってくれたよねっ! 早速だけど、お礼させてもらうよっ!!」

「・・・抜かせ、チビがっ!!」





斧でアルトを弾くと、すぐさまパーツを組み替え竿に変更。右手でそれを持って、突いてきた。





「がたがた抜かすなっ!!」





それを、アルトで弾き、軌道を逸らす。竿の穂先は、僕の左横を掠める。



そのまま踏み込み、左からアルトを打ち込むっ!!





「せっかくだっ!!」





僕は、そのまま左手で竿を掴む。そして・・・!!





「花束にっ! リボンとお礼状もつけて・・・!!」





アルトを先ほどのモモタロスさんと同じように振るい、至近距離で何度も・・・何度も斬り付ける。



そして、一旦引き、アルトに魔力を込める。そのまま青い刃と化したその切っ先を・・・胴目がけて突き出すっ!!





「返してっ!」





切っ先は、ネガ電王に突き刺さる。・・・そのまま右に振るう。





「あげるよっ!!」





すると、そのまま青い閃光がネガ電王を斬り裂き、爆発が起こる。その爆発の中から、ネガタロスが出てきた。



・・・そして、爆発の中から飛んで来たものがもう一つ。パスだ。それを、僕の傍・・・左側に来ていたモモタロスさんがキャッチする。





「コイツは返してもらうぜ?」

「き・・・貴様らぁぁぁぁぁぁっ!!」

「んじゃ・・・もう倒すけど、いいよね?」

【もちろん、答えは聞いていません♪】

【あー、それ僕のせりふー!!】










モモタロスさんが、左手でパスを取り出す。それを開いて、親指でケータロスのエンターボタンを押す。

まず一回セタッチ。そして、今度はそれを閉じて、二度目のセタッチ。










≪Charge and up≫










すると、モモタロスさんは右手に持ったデンガッシャーを放り投げると、右足を前に出した。・・・アルト、リイン、こっちもいくよっ!!





ジガンからカートリッジをフルロード。そうして、左足に魔力が宿る。いつも通りの僕達の力・・・氷結魔力が。










≪Charge and up≫

「・・・へ?」

≪せっかくですので≫

「そうだね・・・。せっかくなんだし、派手にいこうかっ!!」

【はいですっ!!】










クライマックスフォームな電王の各所に装着されている仮面が、右足にレールのラインを走りつつ装着されていく。





ロッドフォームの仮面を一番として、ガンフォーム、アックスフォームの順に。










「行くぜ・・・! 必殺っ!!」

【「俺達の・・・必殺技っ!!」】










そのまま僕達は跳ぶ。当然ネガタロスに向かって。そして、モモタロスさんはロッドフォームの仮面の角が先に突き出され、虹色の光に包まれた右足を。





僕は青い凍れる魔力に包まれた左足で・・・蹴りをダブルで叩き込むっ!!










【「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」】










足に確かな手ごたえ。そう・・・蹴りは決まったっ!!





そのまま、地面に着地。





蹴りによって吹き飛び、地面を転がる。そして、またふらふらと立ち上がる黒い鬼を見る。










【「「・・・StrikreSバージョン」」】

「お、俺様の・・・悪の組織はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










でも、立ち上がっただけだった。蹴りを叩き込まれた黒い鬼は、そう叫びながら吹き飛び・・・爆発した。その後には、何も残らず・・・ただ、炎だけが燃えていた。










「・・・うっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





・・・ふ、決まったっ! むちゃくちゃ決まったっ!! 今までの中で一番・・・決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





【わーいっ! やったやったー!!】



あ、なんか胸元からぴょんぴょんと・・・むむ、本当にTV通りだ。びっくりだよ。



「おい小僧っ! 少し落ち着けっ!!」

【でも、気持ちは分かるですよ? やっぱり・・・楽しいしうれしいですー!!】

【あー、リインちゃん】



あ、今度は右手がくねくねしだした。・・・ウラタロスさんだね。



【あんまり先輩のノリは真似しないほうがいいな。ほら、バカがうつるから。恭文はもう手遅れだけど、君みたいなかわいい子が頭空っぽになっていくのは、忍びないんだよね】

「なんだとっ!? てめぇそりゃどういうい」

【まぁ、えぇがなっ!!】



今度は左手ががしっとした感じに・・・本当に各所に憑いてるんだ。



【勝ったんやし、問題ないやろっ! なぁ、恭文っ!!】

「ま、そうですね。・・・あー、リイン」

【はいです?】

「ユニゾン・アウトして」

【・・・え?】










バタン。










「青坊主っ!?」

【恭文君っ!!】

【恭文さん、どうしたですかっ!?】

「・・・ごめん、もう・・・限界」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そうして、良太郎さん達のミッド来訪から端を発した一連の事件は、終わりを告げました。





まぁ、このあと10日ほど良太郎さん達はミッドに残って、私達と一緒に残っているイマジンが居た場合に備えてくれていたんだけど・・・特に問題無しでした。

デカ長曰く、ネガタロスがやったようにこちらの世界に居る存在が呼び込まない限りは、今後ミッドでイマジンが出てくる可能性は、非常に低いそうです。





その間は、戦いとは無縁の良太郎さん達を含めた私達の日常を満喫して、すごく楽しかったです。本当に・・・本当に、たくさんの思い出が出来て、良太郎さんと色んな話も出来て。

あ、ティアもウラタロスさんやキンタロスさんとは気が合うのか、始終仲良くしていました。





そうそう。最後に倒れた恭文なんだけど・・・あのフェイトさんの記憶を食べたイマジンからの攻撃や、死神ギガンテスとの戦闘中に使ったと言う超高速移動の影響で身体はガタガタ。

シャマルさんから、涙ながらに2週間ほどの安静を言い渡されました。もちろん、その間戦闘行動は禁止。

もちろん、さっき言った通り特に戦闘があったわけでもなんでもないから、普通に過ごしているだけで問題はなかったです。





実際、おとなしくしていたからもうすっかりいつも通りの恭文です。後遺症の類も無いので、いつも通りにアルトアイゼンに弄られて、叫んでいます。





そして・・・明日には戻ることになる夕方の事。良太郎さんから、私とギン姉に一つの提案が出されました。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・過去へっ!?」

「うん。デカ長がね、今回は特に二人に迷惑かけちゃったから、協力してくれたお礼と、そのお詫びも含めて・・・。
一度だけ、お母さんの生きている時代に跳ばしてくれるって。その、もちろん未来を変えるような行動は厳禁なんだけど・・・」



その良太郎さんの言葉に、私もギン姉も顔を見合わせる。そして、笑顔で頷き合う。



「良太郎さん」

「うん、じゃあ早速・・・」

「行きません」

「・・・え?」





・・・過去へは、行きません。





「あの、でも・・・」

「いいんです。・・・私の中にも、スバルの中にも、ちゃんとありますから。母さんとの時間が、絶対に消えない過去が。
だから・・・いいんです。私達の中に、ちゃんと母さんは生きています。今、この瞬間も」

「良太郎さん、記憶は・・・時間。ですよね? だから、大丈夫です。その・・・デカ長さん達の気持ちだけ、受け取っておきます。ありがとうございました、本当に、うれしかったです」

「・・・ううん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・まぁ、ギン姉は『私だけ行かせてもらってもよかったかもね。スバルは会ったわけだし』・・・なんて、冗談めいて言ってましたけど。





とにかく、その翌日。ついに・・・来ました。隊舎でお別れの挨拶。





楽しくて・・・楽しくて・・・。まるで、夢のようだった時間が、終わります。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・じゃあ、世話になったな。ま、なんかあったらまた来るさ」

「侑斗、もうちょっと言い方を・・・」





あはは・・・。まぁ、この10日間でだいぶ仲良くは出来たけどさ。うん、色々僕はお話しましたよ? 結構シンパシー感じてたし。





「・・・あの、侑斗さん」

「なんだ?」

「これ、持っていってください」




そう言って、ギンガさんが手渡してたのは・・・結構大きめな箱。侑斗さん、それを受け取ってちとびっくりしてる。





「ミッドの星関係の本に、小型のプラネタリウムです。本は、地球の言語に翻訳しているものを選んだので、読めるはずです。星・・・好きですよね」

「・・・お前」

「忘れないでください」




ギンガさんが、本当に・・・本当に真剣な目で侑斗さんを見る。




「ここに来た事、私達と出会ったこと、忘れないでください。それだけお願いします」

「・・・あぁ、分かった。忘れねぇよ。それと・・・ありがとな。これ、大事にする」

「はい」





・・・みんな、あちらこちらで別れを惜しんでる。かく言う僕も・・・ね。





「恭文・・・」

「リュウタ、泣きそうな声出さない。また会えるんだよ? チケットあるし、ベルト出来たら持っていくし」

「でもね、でもね・・・寂しいんだ。すごく・・・寂しいの」





・・・僕も。せっかく仲良くなれて、友達になれて、いっぱい遊んで、いっぱい話して・・・それで、それで・・・やっぱり、別れは寂しい。





「リュウタ・・・」

「ヴィヴィオ、あのまたね。僕のこと・・・忘れないでね。恭文もだよっ!?」

「・・・忘れるわけないじゃん」

「そうだよっ! 私も恭文も・・・絶対、絶対また会いに行くから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ま、嬢ちゃん達も元気でな」

「ボクちゃんの言うように、またなにかあれば・・・飛んで来るからさ。次元の海を越えてね」



バカ、かっこつけるんじゃないわよ。てか、私はなんでこんな寂しい気持ちに・・・!!



「家臣一同・・・大儀であった。特にお供その5、感謝する」

「いや、あのだから・・・。あぁ、もういいです」

「エリオ君、すっかりジークさんのお供だね。・・・あ、将来はジークさんの騎士もいいかもしれないね」

「きゅくー♪」

「キャ、キャロっ!!」



・・・エリオ、頑張んなさい。今回色々不憫な立ち位置だったし。



「なんかさ・・・寂しくなるね。ねぇ、ずっとこっち居ない? イマジンはなんやかんやしてこれるようになったーでいいじゃないのさ」

「ヒロ、お前それはどうなんだよ・・・」

≪姉御、無茶過ぎだぜ≫

≪・・・私も活躍、したかった≫





あはは・・・。ヒロリスさんは相変わらずね。そして金剛、あんた意外とそこ気にしてたのね。





「あ、そうだ。ティアナちゃん」

「なによ」

「せっかくだし・・・僕に、釣られてみる?」

「バカ言ってんじゃないわよっ! このスケベ亀っ!!」










ばちこーんっ!!





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・いや、ホンマに良太郎さんやデカ長さんらには、お世話になりました」

「協力してくださったこと、心から感謝します。ありがとうございました」

「いえ、私達は『でか』・・・ですから。当然です」





あはは・・・。まさかこれ、続くのかな? ずっとデンライナーの食堂車が刑事仕様だったりして。





「もし御用の際は、いつでもいらっしゃってください。皆さんは今回の一件でのせめてもの礼として、恭文君の持っているチケットを共有という形で、デンライナーには永久的に出入り自由としておきますので」

「ホントですかっ!?」

「デカ長、感謝します。これでヴィータやヴィヴィオが喜びます。・・・いえ、喜んでいます」

「とか言いながらザフィーラ? あなたもうれしそうね」

「・・・言うな」





尻尾、ぶんぶん振りまくってますしね・・・。本当にうれしいんだ。





「ところでデカ長」

「はい、なんでしょう。なのはさん」

「その話恭文君には・・・」

「もちろん、していませんよ。なお、恭文君のチケットが無いと入れませんので、あしからず」





・・・デカ長、それはどうなんでしょうか。お願いですからそんなにっこり顔はやめてください。そして恭文君・・・頑張って。





「・・・良太郎さん」

「スバルちゃん」





あー、そんな泣きそうな顔しないで。その、僕も寂しいけど。





「会いに行っても・・・いいですか?」

「うん。あの、家は教えたよね」

「はいっ! ミルクディッパー・・・ですよね」

「僕も姉さんも、歓迎するから。いつでも来てくれていいよ。あ、事前にメールくれれば居ないっていうこともないから・・・」

「はい・・・」



・・・やっぱり、この言葉かな。



「スバルちゃん」

「はい」

「またね」

「・・・はいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「それで・・・フェイトさん、これ」





デネブさんがこ・・・よし、私は気にしない。とにかく、取り出して渡されたのは、メモ帳。



あの・・・これは?





「トマト嫌いな子でも、トマトが食べられるようになるレシピ集です。・・・道案内のお礼で、作ってみました」

「あ・・・」




あの時・・・桜井侑斗さんに憑いていたデネブさんを案内した時に、私はヤスフミの話をした。トマトが嫌いなのが直せなくて、どうしたらいいのか困ってるとか、その・・・色々。



デネブさん、覚えててくれたんだ・・・。





「ありがとうございます。・・・これ、ヤスフミに作って、試してみますね」

「そうしてみてください。これでトマトが好きになるといいんですけど」

「なります、きっと。デネブさんが一生懸命作ってくれたレシピですから」

「そう言ってくれると・・・とても、嬉しいです」





大事にしよう。これは物じゃない、理屈じゃない。私は・・・デネブさんの心と、時間をもらったんだから。





「それと・・・フェイトさん」

「うん、なにかな。ハナちゃん」

「恭文君、本当に気をつけた方がいいですよ」





・・・え?





「絶対に最終回のBパート前半が危ないですよ。フェイトさんは、その後半が危ないです」

「あ、あの・・・ハナちゃんっ!?」

「ちゃんと捕まえて気持ち向けておかないと、そうなるってことです。・・・気づいたんですよね?」





・・・その言葉で胸が震える。そう、気づいた。今は小さくて、本当に・・・本当に弱い炎。



でも、確かに胸の中にある。本当に無くして気づくことが出来た、小さな・・・小さな炎。





「そうだね、気をつけるよ。・・・ううん、捕まえていく」

「なら、安心です。あの子は基本フェイトさんに一途ですし」










まだ、審査中。そして、育てている最中。だから・・・今は言えない。





でも、いつか伝える。もう余所見なんて許さないよ? 私のことだけ、見ててもらうから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・しかしよ、青坊主」

「はい」

「お前・・・なんつうか、マジでアレだよな」





・・・はい?





「金髪ねーちゃんが記憶なくしても動揺一つしねぇし、戻らねぇかも知れないって言われても迷わねぇし、あのゴキブリ野郎から余計なこと言われても揺らがねぇしよ。どんだけだよ」

「・・・気にしないでください」

「ただよ・・・」



モモタロスさんが、まっすぐに僕を見る。黒い瞳は、どこか感心するようなものを含んでいた。



「お前、なかなかやるな。さすがはあのじじいの弟子だぜ」

「そんなことないですよ? 僕、むちゃくちゃ弱いです。ただ・・・」

≪優秀なパートナーであり、真・主人公である私と≫

「元祖ヒロインであるリインが一緒だから、恭文さんは無敵なのですよっ!!」





そうそう、二人が居るから僕は・・・ってっ! ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!





「真・主人公ってなにっ!? あと、また元祖ヒロインってっ!!」

≪いいじゃないですか。あなたが主人公なのは認めてあげますから≫




そういう問題じゃないっ! なんでアルトが立場が上なのかを聞きたいんだよっ!!



「リインが元祖ヒロインなのも認めてくれますか?」

≪もちろんですよ≫

「ありがとうです〜♪」

「お前らはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





だぁぁぁぁぁっ! こいつら最近マジで図々しさがパワーアップしてるしっ!!





「・・・ま、俺の言いたいことはあと一つだけだ」





そうして、モモタロスさんは思いっきり僕の両手をガシっと掴んで、顔を・・・また近いっ! 近いからっ!!





「あのベルトっ! 小僧だけじゃなくて俺にもマジで頼むぜっ!! なっ!?」










・・・そこ・・・なんですね。最後の最後まで。




















とにかく、全員は電車に乗り込む。そして、走り出す。





寂しくて、悲しくて、泣きたくて。でも、誰も止められない。だって・・・これが最後じゃないから。





また会える。今から始まる新しい時間の中で、きっと。そして、また今回みたいに騒ぎ続ける。





だから、時の中へと走っていこうとする電車を・・・僕は、追いかけた。










「ヤスフミっ!?」

「あんた、どこいくんっ!!」










いや、飛行するっ! そのままゼロライナーへ・・・。









「・・・元気でなっ!!」

「恭文君っ! トマト嫌い早く治そうねー!!」










はいっ! ・・・って、そこっ!?





とにかく、ゼロライナーは時の中へと戻った。次は・・・デンライナーっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ちょっとちょっとっ! 恭文君なんで飛んでるのっ!? 確か、勝手に飛行とかしちゃまずいんじゃっ!!」

「そんなのどうでもいいよっ! ・・・恭文っ!! またねっ!! 絶対会おうねっ!!」

「・・・ごきげんよう」

「フェイト嬢ちゃんと仲良うしいやっ! 浮気なんかしたら・・・あかんで〜」

「Bパートの前半には気を付けなさいよー!!」

「君、他の女の子を釣りやすいんだから、気をつけなよ?」

「・・・愉快であった」





・・・ったくよ、お前らぎゃーぎゃーうるせぇっ! 俺も言いたくなっちまったじゃねぇかよっ!!





「青坊主っ! 青豆っ!! じゃあなっ!!」

「恭文君っ! またねっ!!」

「また会おうぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・はい、また会いましょう。これで・・・お別れなんて、僕は嫌ですから。





時の中へと戻って行った白い電車を見送りながら・・・荒くなっていた息を整えながら・・・僕は空を見る。










≪・・・いつか・・・ですね≫

「うん、そうだね。いつか・・・」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・みんなにまたねと手を振ってから、僕はデンライナーを降りる。





そして、その足でまっすぐに向かうのは・・・懐かしの我が家。




なんだかんだで、2週間とか? うわ、ずいぶん長かったなぁ。あっと言う間だったから、全然その辺り気にしなかったけど。





とにかく、入り口を開く。するとすぐに懐かしい匂いが、鼻をくすぐった。










「・・・あら、お帰り。良ちゃん」

「・・・ただいま。姉さん」





カウンターの椅子の一つに座る。そして、写真立てに入っている絵にも目を向ける。・・・ただいま。





「ずいぶんと長い旅行だったのね」





姉さんが、コーヒーを淹れながら、そう話しかけてきた。





「まぁ・・・色々あって。あの、ごめん。長い間留守にしちゃって」

「ううん、いいのよ。・・・それで、良ちゃん」

「・・・うん」

「なにか、出会いとかあった?」





・・・僕は、その言葉にうなづく。きっと、笑顔を浮かべながら。





「あったよ。すごく素敵で・・・忘れられない人達との出会いが」










みんな、またね。





いつか、未来で。




















(いつか、未来で)









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