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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース01 『ギンガ・ナカジマとの場合 その1』



・・・雨が降っている。かなりのザーザー降り。





ちょっとだけ、薄暗い部屋で同じタオルケットにくるまって・・・見つめあう。





その相手は、女の子。長くて青い髪と、翡翠色の瞳。白い肌には赤い紅が差している。その色が、こうしていても・・・分かる。





右手で頬に触れる。・・・熱い。










「・・・ギンガさん」

「うん」

「・・・ごめん」

「謝らないで・・・欲しいな」



それは、怒りや否定じゃない。むしろ優しさ。安心させようとしてくれている。



「その・・・あの、私の方こそ、ごめん」

「なんで謝るのさ」

「私が・・・わがまま言ったから。迷惑、沢山かけたから」

「いーよ、そんなの。つか、ギンガさんのせいじゃないでしょうが」





その・・・あれだよ。うん、僕が悪かった。



ギンガさんの気持ち、考えて・・・みようとも、してなかったね。



フェイトにされてたこと、ギンガさんにも、してた。





「私は、大丈夫。・・・8年だもの。簡単には、見れないよね。あの、それでね・・・なぎ君」

「うん・・・」

「私・・・ね」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース01 『ギンガ・ナカジマとの場合 その1』




















・・・それは、12月の頭のことだった。というか、朝。





思えば、この呼び出しが無ければ・・・まぁ、言っても仕方ないでしょ。とにかく、話はここから始まる。










「・・・ギンガさん、大丈夫?」

「あの、ありがと。すぐに駆けつけてくれて」

「礼ならシャマルさんに言いなよ。転送魔法で僕を飛ばしてくれたの、シャマルさんだし」

「うん・・・」

≪ギンガさん、気にしてはいけません。マスターは少しツンデレ入ってますから≫










どういう意味だよアルト。





・・・呼び出しはギンガさんだった。





なんか、AMF・・・ガジェットの技術を悪用しようとしてた連中のアジトを108でガサ入れしたらしい。

・・・いや、いきなりだから、背後関係分からないのよ。





で、連中の戦力が思ったよりも多くて、エース級のやつまで出てきて大変なことになった。

・・・いや、エースっつっても昨日の騎士二人に比べれば、まだまだ。うん、一瞬自分の人生の歩みについてあれこれ思ったけど、気にしないでいく。





で、ギンガさんの判断で、僕を緊急召集というわけです。なお、現在は事後。現場で事後処理中だったりします。










「・・・しかし、それならそうと前もって言ってくれればよかったのに。朝隊舎に着いたらいきなりだもん。びっくりしたさ」



地面に、バリアジャケット姿で座り込むギンガさんに、先ほどもらったドリンクを渡す。

・・・そう、このおねーさんはリハビリ途中にも関わらず、戦闘に参加したのだ。本気で間一髪だったし。

シャマルさんに一気に跳ばしてもらわなかったら、どうなってたことか。



「・・・見積りはしっかりしてたの。でも、ダメだった」

「・・・そっか」

「やっぱり、戦力が足りない。それに一般局員の、対AMF戦の練度も・・・」



・・・やばい。そういや、ラッドさんの顔見てなかったな。うし、行くか。



「なぎ君」



・・・振り返り、逃げようとする僕の左手を掴むものがあった。うん、考えるまでもないね。



「逃げないで、ちゃんと私の話を聞いて」

「い、嫌だな。逃げようなんて・・・」



・・・すみません、しました。なのでそんなに問い詰めるような目で、僕を見ないで。



「お願い。108に入ってくれないかな」





きた。うぅ、迷惑とかではないけど、困ってしまう。

だって、僕の返事は決まっているから・・・。



だけど、ギンガさんもそれは百も承知。簡単には、引かない。





「地上では、またこういう事件が起こる。戦力が足りないの。なぎ君の力、私達に貸して」

「そういう時には、依頼していただければ・・・」

「他にやりたいことある?」

「楽しく自由に戦いたい。自分のために、好きなようにね」



うん、僕らしいね。部隊に入ったら、それは無理だもの。



「そういうのじゃないよ。こう・・・どこへ行きたいとか、なにかやってみたいとか・・・。戦う以外で、指針はないかな」

「うーん・・・。局どうこうで言うなら、無い」





まぁ、資格関係なら興味のあるのが・・・。ただ、そのために局に入って仕事は嫌だ。





「なら、まずはやってみてから考えようよ。中のこと分からないから、そう思うだけかも」

「・・・先生みたいにやっていいとかなら」

「それは絶対ダメっ! あの方は無茶苦茶過ぎるよっ!!」



でしょ? だから無理なの。いや、実際僕も資料見て思ったもん。フリーダムだって。



「・・・はっきり言ってさ。僕は局・・・信用してない」



ギンガさんの表情が変わった。悲しいものに。でも・・・いい機会かも。ちゃんと、言っておこう。



「まぁ・・・知ってる人は信用してるよ? でも、局員になって、局の都合や命令のためには戦えないし、戦いたくない。
世界やらそこに住む人間のためにも同じ」



まぁ・・・あれだよ。



「自分にはそういう事を言う資格も、やる権利もない」



・・・え?



「・・・なぎ君、もう・・・いいんだよ?」

「なにがよ」

「忘れても、いいんだよ。そんな風に戒めなくたって、きっといい」

「ギンガさん」



もしもし?



「もう、許されるよ。なぎ君、たくさん苦しんできた。だから・・・」

「・・・ギンガさん?」



・・・ね、ちょっと。



「そうやって、自分を縛ったってなんにもならないよ。下ろしていい。ううん、そうしよ? それで」

「うるさい」





静かにその言葉を発したのは・・・僕。僕のその一言で、僕達二人だけの空気が凍る。

周りは変わらない。だから、他の局員のやり取りが、凄くうるさく聞こえる。



でも・・・なんだ。





「・・・なぎ、君」



分かってる。きっと、そういう風に見えるって分かってた。でも、違う。絶対に違う。

だって僕は、忘れたくないから。



「・・・後処理の続きしてくる」










そう言って、振り返らずに他の局員さんの方へと歩いていく。





ギンガさんとは結局・・・全部の事が終わるまで、話せなかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ね、恭文」

「どったのスバル」



・・・あれから三日。事態解決まで、隊舎で寝泊まりが決まった。それで、ボーっと仕事をこなしていると・・・スバルに話しかけられた。



「あの・・・ね。ちょっといい?」

「うん?」

「ギン姉のことで、ちょっと話があるの」




















「・・・それで、ぶった斬ったんだ」

「・・・斬りました」



スバルが言うには、この三日間の間にギンガさんから相当回数通信をもらったらしい。

用件は・・・。



「ギン姉、相当気にしてるよ? ・・・恭文が悪いのに」



・・・はい、その通りです。短気でした。もうちょい言い方がありました。



「ね、私も一つ質問」



スバルの表情からうかがえる真剣さが増した。それだけで、言いたいことが分かった。



「・・・人を殺したこと、どうしても忘れたくないの?」

「・・・ない、ね」



うん、忘れたくない。三日間考えて、答えはこれだけだった。



「戒めるため・・・だったよね」

「そうだね。まぁ、それだけじゃないけど」

「・・・忘れられない?」

「だったら、戒めようとはしない」



うん、忘れるんだ。残酷だよ? 殺した時に感じた手応えも、血の匂いやその熱さ。

なにより、その衝撃。全部、時間の中で置き去りにしそうになる。それにふとした瞬間に気付くの。これがキツいんだわ。



「あのね、私・・・当事者じゃないしさ。恭文がそうしたいの、認めて・・・その上で友達で居たいと思ってる」

「・・・スバル」

「あ、まだ終わりじゃないよ? でも、ギン姉は違うんじゃないかな」



うん、違うね。その、理解はしてくれていると思う。でも・・・。



「それは違うんじゃないか。そう思ってる」

「だよね」

「で、私も思ってるんだ」

「・・・はい? いや、さっきと言ってることが違わないっ!?」

「うん、違うよ。だって、別問題だから。・・・まぁ、そこもギン姉から聞いてみなよ」



・・・そう、結局そこしかない。

つまり、これからやらなきゃいけないのは・・・。



「そうだよ。・・・ギン姉と、ちゃんと話して。そうじゃなきゃ、このままだよ?」

「・・・そうだね」




















と・・・言うことで、思い立ったが吉日。スバルにお礼を言ってから、通信を繋ぐ。





・・・冷静に話そう。うん、絶対だ。





そして・・・繋がった。










『もしもし・・・あの、どうしたの?』

「ギンガさん、今いいかな」

『・・・うん』



まずは・・・だね。



「ギンガさん、ゴメン。・・・言い過ぎた。というか、無神経で、短気だった」

『・・・ううん。私の方こそ、ごめん。なぎ君にとっては、すごく大事なことだったのに。無神経なの、私の方だよ。自分の都合、押し付けてた』



・・・僕もだけどね。うん、ギンガさんにどうこう言う資格無いな。



「・・・あの、僕は気にしてないから。それに・・・悪いのは僕だもん。ギンガさんが謝ること、無い」

『なぎ君・・・』

「それでね・・・。あの、この間の話の続きなんだけど」



ギンガさんの表情が硬くなる。あー、落ち着け僕。冷静にいかなきゃ。



『・・・あのね、私は・・・もう忘れていいと思う』

「・・・どうして?」

『私、なぎ君見てて・・・思ってた。忘れないことで、心の奥でずっと苦しんでて、どこかで、自分を縛ってる。
・・・どこかで思ってるよね? 『自分は奪った人間だ』って。だから、誰かを助けたり、人のために動いたり・・・そういうことに、蓋をしてる』

「そうだね。うん、事実だから」



僕は奪った。命だけのことじゃない。その先の時間、得られたかも知れない幸せ。僕が殺した連中が居れば生まれたはずのものを、全てだ。

だから、許せないの。それを無かったことにするのも、置き去りにするのも、絶対。



『でも、もう充分だよ。もう、そういうの・・・やめよう?』

「・・・どうして?」

『そんなことしても、なぎ君、幸せになれない。私、なぎ君と3年しか付き合いないけど、それでも思うよ。もう許されるから』





・・・誰に?





『え?』

「一体、誰に許されるの?」



・・・あー、ダメだから。熱くなるの禁止。こんな話しても、水掛け論だし、ギンガさんは反論出来ないじゃないのさ。



「許されるとか、許されないって問題じゃないんだ」



もちろん、そういう部分で考えてるとこもある。でも、それが全部じゃない。



「僕が、忘れたくないの。・・・ギンガさんには話したよね。魔導師になる前のこと」

『・・・うん。ずっと一人で、毎日過ごしてたんだよね』

「そうだよ。だから、リインやみんなと出会えて、思い出して、覚えてて意味のある記憶を持てて、幸せだったんだ」





だから、あの時、あの人に言い切れたんだ。『リインと出会えて、幸せ』だと。



だから、事件が解決して、皆から忘れてもいいと言われても、首を横に振れた。





「・・・僕にとって、あの時の記憶と時間の全ては、必要で幸せなことなんだ。忘れていいことなんて、なんにもない」



あの時の時間があるから、今に繋がっている。それに、僕だけのものじゃない。リインとも共有してる・・・繋がりで、始まり。

ま、軽くは無いけどね。



「もちろん、ギンガさんが心配してくれてるのは、分かる。言ってることも、間違いじゃない。でも・・・ゴメン。忘れることは出来ない。
僕には、あの時のことを無かったことにして得られる幸せなんて、許しなんて・・・いらない。絶対に」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ベッドにうつ伏せに倒れ込む。そして・・・呟く。










「・・・どうすれば、いいの」





私、ずっとなぎ君から感じていた。すごく危うくて、消えそうな所を。



その原因は、自らの手で、人を殺めた事実。それが、なぎ君の心に枷を付けてる。



その枷が、なぎ君を私達とは違う場所に置いている。だから、忘れれば、それが外せる。下ろせば、消えたりなんてしない。そう思ってた。



でも・・・なんだ。なぎ君は、その記憶すら、必要で、幸せと言い切った。それを忘れて、得られる幸せなんて、絶対にいらない・・・か。

分かんない。なぎ君にとって記憶と時間が、凄く大事なのは分かる。でも、どうして忘れていいことなんて無いなんて・・・言い切れるの?



でも・・・。





「『一体、誰に許されるの?』・・・か」





あの時のなぎ君の表情が、忘れられない。私でも、今でもない。どこか遠い所を見て言ってた。



私、どうしてあの時、すぐに言えなかったんだろ。『自分を、許していい』・・・って。忘れる選択を取る事を、許していいんだって。

でも、言っても変わらなかったんだろうけど。なぎ君は、忘れたくなくて、必要で幸せだと思ってるんだから。



・・・よし、悩んでいても始まらない。私は、なぎ君の危うい所をなんとかしたい。あのままなんて、絶対に嫌。





「・・・まずは、行動あるのみよ。ギンガ・ナカジマ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・というわけで、少しの間、なぎ君をお借りしたいんです」

『・・・いや、それは構わんのやけど・・・アイツ、絶対嫌がるよ? 柔らかい言い方はしてる思うけど、局のこと嫌いみたいやから』



分かってる。でも、こうするしか思い付かなかった。



『まぁ・・・一週間だけな? アイツも試験控える身やし、ゴタゴタはさせたくないんよ』

「ありがとうございますっ!!」



私は、モニターの中の八神部隊長に深々と頭を下げる。感謝と、無茶を言った事への謝罪を込めて。



『でもな、ギンガ』

「はい」

『なんでそこまでするん?』



八神部隊長からの突然の問いかけに、私の思考はストップした。



「あの、お話した通りなんですけど」

『うん、それは分かっとる。ギンガの言うように、アイツは危ういとこがある。でも、それをどうしてそこまで気にするんかな?』

「・・・部隊長は、気にならないんですか?」



部隊長は頷いた。それも・・・すぐに。



『生き方なんて、結局個人の自由やからな。本人が納得してるなら、ええやろ。なによりアレは、組織に入っても幸せになれるやつちゃうよ?』

「そんなことありませんっ! なぎ君だって、しっかりとやっていけますっ!! それに・・・」



そこで、言葉が止まった。続きが出てこない。・・・あれ?

私、何を言おうとしたの・・・。



『・・・ま、ここはえぇわ。でもな、アンタが干渉してくれば、絶対にそこが鍵になるよ。答えは、ちゃんと出しとき?』

「・・・はい」










・・・答え、か。





私、どうして・・・なぎ君にここまでしようとするんだろ。





局のことを信じて欲しいから?





108に入って欲しいから?





助けてくれたことへの恩返しがしたいから?





心に付いている枷を、外したいから?





友達・・・だから?





・・・違う。どれも、完全な答えじゃない。なら、私はどうして・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・帰っていい?」

「ダメっ! というか、術式展開させてホントに帰ろうとしないでっ!! なにより、その転送魔法、許可取ってないよねっ!?」

≪許可なんて必要ないでしょ≫

「あるからっ!!」










・・・いきなり108の仕事を手伝えと言われた。というか、通常業務を一週間体験してこいと。

妙な感じがして、タヌキをシバき上げた結果・・・。





僕に、普段の局の仕事を体験させて、局入りを促すためだと言う、素晴らしい答えが返ってきた。いや、それでもここまで来た自分がすごいと思うけど。





なお、発案者は・・・。










「・・・でも、中をもっと知った上で」

「もう充分知ってるんですけど。アレやらコレやらJS事件やらでね」



・・・やたらと腰が重かったり、縄張り関係ウザかったり、上層部は腐ってたりね。

こう言ったら悪いとは思う。でも、僕はそんなのに巻き込まれるのはゴメンなのだ。



「・・・そうだね。でも、それが全部じゃない。いい所だって、沢山ある。いい人だって、沢山いるよ」



発案者・・・ギンガさんが、少し悲しそうに言ってきた。ま、それは分かるけどさ。



「それに、局だってバカじゃない。変わっていこうとしてる。・・・まず、そこを見てくれないかな?
それでどうしてもダメなら・・・」

≪・・・マスター≫

「・・・いいよ」



甘いよね。でもま・・・いいか。



「答えは変わんないけど、まぁ・・・見てみようじゃないのさ」

「・・・うん、それでいいよ。見てくれるだけで、それだけでいいから」










・・・というわけで、めんどい事この上無い一週間は始まった。あぁ・・・フェイトと話す時間がー!!




















「・・・というわけで、近隣部隊との打ち合わせと外回りです。こういうのをマメにしておくと、いざと言う時に円滑に動けるとか」

≪ま、大体は愚かにも無駄に終わるのですが、108の場合、ゲンヤさんの普段の尽力のおかげで、効果が上がっているそうです≫

「なお、これは地上部隊だけではなく、本局と各世界の地上本部とも、こういう形で連携強化を図っていくとか。
・・・つーか、今までしてなかったんかい。どんだけバカなんだよ管理局」

≪今さらですね。本局と各地上部隊は、大きな溝がありますし。恐らく、これも効果を発揮しだすのに10数年かかりますよ?≫



だねぇ。うん、やっぱ局員不自由だわ。



「なぎ君、アルトアイゼンも・・・誰に話してるの?」

「気にしないで。こういうのやってみたかったの」

≪アニメ的な手法・・・憧れていたんです≫



うん、結構ね。とにかく僕達は、ギンガさんにくっつく形であっちこっち回る。でも・・・普段の行いのせいか、他の部隊との関係は良好らしい。

これがうわべだけと思えないのが、108の恐ろしい所である。



「そうでしょ? うちの部隊の自慢のひと・・・って、なぎ君は知ってるか」

「何回も来てるしね。うん、ゲンヤさんやラッドさん達がどんだけ頑張ってるかは、知ってるつもりよ?」



ミッドに限らず、地上部隊は、やたらと縄張りやら管轄意識が強い傾向にある。それを考えると、108と近隣部隊との連携や繋がりは、すごい部類に入る。

こういうのが、あっちこっちで普通になってくれると、楽なんだけどねぇ・・・。



「なっていくよ。ううん、なってきてる。本当に少しずつで、なぎ君やアルトアイゼンから見たらイライラするかも知れないけど、それは事実。
言ったでしょ? 管理局だって、バカじゃないって」

「いや、バカでしょ。バカじゃなかったら、JS事件なんて最初から起きないよ」

「・・・そうだね」





・・・隣を歩くギンガさんが、暗い空気を出し始めた。あー、もうめんどいっ!!





「・・・ゴメン、言い過ぎた。ま、改善していこうとしてるのは、分かったから」

「・・・うん、それならいいんだ。あ、もうお昼だね。ご飯にしようか」

「うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



で、当然・・・すごい量が食べられていくわけですよ。ハンバーガーがどんどん消えていくって、どうなんだろ。










「・・・ね、なぎ君。局の仕事で、やってみたいことって、本当に無いの?」

「無い」



照り焼きライスバーガーをかじりつつ、即答する。・・・いや、だって本当に無いもの。



「僕は楽しく、自由に暴れられればそれでいいしね。あと・・・」

「・・・自分が守りたいと思うものを守り、壊したいと思うものを壊す?」

「そうだね。でも・・・局員になったら、それは出来なくなるから」



命令が無きゃ、目の前の悪党一人潰せない。上の判断が絶対で、自由には動けない。そうやって取り零す? 僕は納得出来ない。



「もしそうなっても、それはみんなで背負うよ。局として背負う。絶対になぎ君だけのせいになんて」

「そんなの関係ない。僕が納得出来ないし、許せなくなる。それに・・・組織になんて、重いものを預けたくない。そんなことしたら、僕が嘘になる」










・・・うん、預けたくない。力を振るうのは誰でもない、僕だ。その結果を、僕が一番背負わなくてどうするのさ。





ライスバーガーをもう一口噛みつつ、そう思った。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そのまま静かにご飯を食べて、また外回り。でも・・・付け入る隙、無いな。なぎ君、強い分頑なだ。





でも・・・なんだ。これで納得なんて出来ない。でも、どうしよう。










「・・・なんつかさ」

「うん?」

「仮に108に入ったとしたら、お世話になってるゲンヤさん達に迷惑、かけちゃうだろうしね。・・・僕、迷いたくないし」

「迷惑だなんて・・・」





・・・あ。



一つ、思い付いた。もしかしたら、突破口かも知れないこと。



でも、対価が必要。きっと、大変だかさら。・・・うん、払うよ。躊躇う理由なんて、なにもない。





「なぎ君。私ね、局員になったの、母さんに憧れてたからなんだ」



なぎ君が、私を見る。・・・なんで、ドキドキしてるんだろ。



「かっこよくて、強くて、優しくて・・・。そんな母さんを追いかけたくて、局員に・・・魔導師になった」

「・・・うん」

「でもね、今局員を続けてるのは、それだけじゃないよ?」



対外的な理屈じゃダメなんだ。まず・・・私をぶつけよう。そうすれば、きっと・・・。

とにかく、私は市街を歩く人達を見ながら、言葉を続ける。



「なぎ君、なぎ君の『守りたいもの』の中に、世界や、そこに住む人達は・・・入れられないかな」

「・・・ギンガさん」

「分かってる。どうしても、躊躇うんだよね。それに・・・忘れることも出来ない」

「うん」



でも・・・それじゃあダメなんだよ? きっと、ダメだよ。



「私ね、傲慢で、偉そうだけど私が戦って、局員として働くことで、今、外を歩いている・・・ううん」



私は、首を横に振る。それだけじゃ、きっと足りないから。



「この世界で暮らす人達の笑顔が、少しでも守れればいいなって、思ってる。だから、なぎ君が不満に思うような部分があっても、局員を続けてる」



これが、私の想い。私の守りたいもの。私の戦い方。



「・・・僕にもそうしろってこと?」

「そうだよ。・・・あの、勘違いしないで欲しいの。忘れなくて、いいから」

「え?」

「なぎ君は、忘れたくないんだよね。どんなに重くても、大事な記憶で、繋がりで、始まりだから。全てが必要で、幸せだから



なぎ君が頷く。・・・きっと、コレがなぎ君の答えなんだ。まず、ここからなんだ。



「でも・・・お願い。そのために、自分を縛らないで?」



なぎ君の瞳を見つめる。真っ直ぐに。・・・だから、どうして私はこんなにドキドキして・・・。



「・・・でも」

「確かに、なぎ君はその手で奪った」





ここは、変わらない。どんなに変えたくても、変えられない・・・事実。





「命を、心を、時間を、幸せを。許されて、忘れていいことじゃないかも知れない。でも・・・」





私は自分の両手を、そっとなぎ君の両手に重ねる。なぎ君が驚いてるけど、構わずに言葉を続ける。





「これも忘れないで」





でも、事実はもう一つある。なぎ君の手に詰まっているのは、そんなものばかりじゃない。





「・・・私は、同じ手で守られたの」





あの時、命だけを守ってくれたんじゃない。なぎ君は、私の全てを守ってくれた。

恐怖と絶望で壊れそうになっていた私の心を。大切な記憶と時間を。全部を守って、助けてくれた。



この手が無かったら、私・・・ここに居ない。





「あなたが、私に今をくれた。守ってくれた。だから・・・私はここに居るの」





私にとって、なぎ君の手は、奪った手じゃない。



私にとって、なぎ君は、奪った人間なんかじゃない。



なぎ君は・・・なぎ君の手は・・・。





「あの・・・」

「おとなしく聞いてて」

「はい」



だから・・・その・・・。えっと・・・!!



「なぎ君、この間言ってたよね? 『一体、誰に許されるの?』・・・って」

「うん、言った」

「それは、なぎ君だよ。なぎ君が、自分を許して・・・いいの」



でも、それは忘れるとか、そういう話じゃない。



「『自分は奪った人間だから』。そう思うことで付けてる枷を外すことを、許していいの。忘れなくていい。覚えてていい。でも、そこはもういいんだよ」

「・・・よくないよ。現に事実だし」

「そんなことないっ!!」



つい、声が大きくなる。でも・・・止まらない。言葉が溢れてくる。



「絶対に、そんなことない。もう、外していい」

「・・・外したら、忘れそうになる」

「だったら、その度に思い出せばいいよ」

「また簡単に言うね。結構キツいのに」

「言うよ。だって、私はこのままなんて嫌だから。キツいなら、私を頼ってくれていい。ううん、頼って?」



なぎ君の両手を強く握りしめる。力・・・入っちゃう。



「お願い、少しずつでいい。局員になるとか、そういうことじゃない。
私は、友達として・・・なぎ君がそうやって、色んなものを諦めてるのは、見ていられない」



そこまで言うと、なぎ君はため息を吐いた。少し、呆れ気味に。



「・・・うん、縛ってる。僕、奪ったやつだしね。それを忘れることなんて、記憶どうこうを抜きに、許せないのよ。ううん、きっと・・・僕は誰にも、許されない」



・・・でも、でも・・・ね。あの・・・それでも、もういいの。



「だったら・・・忘れないで、変わっていけばいいから。きっと出来るよ」

「・・・手伝ってもらうからね。言うだけのことは、してもらわないと」

「・・・うん」










・・・ごめん、なぎ君。私ね、一つ嘘をついた。なぎ君にじゃない。私自身に。小さくて、大きな嘘。





でも・・・分からない。嘘をついたことだけ認識出来て、それがなんなのか、自分で、分からない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・変なこと、約束してしまった。うぅ、またフラグどうこう言われるんだ。





とにかく、現在は1日目の仕事を終了。僕は、ナカジマ家でお泊まりする事になった。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、これはなに?」

「局の仕事の資料だよ。善は急げって言うしね」

「予め準備してたでしょ、これ。いくら何でも量が多すぎ」

「・・・実は」



全く、このおねーさんは。



「そんなに僕に局に入って、局を好きになって欲しかったわけ?」



そう言いつつも、資料を手に取り、ペラペラとめくる。・・・全く興味が出ないんですけど。



「・・・そう・・・だと思ってた。でも、ちょっと違った。私ね、なぎ君が昼間話したようなことで、自分を縛ってるのが、嫌だったみたい」

「・・・そう」

「そうなんだ。・・・なぎ君なら、武装局員・・・は、ダメだね」



即答かい。つか、てっきり勧められると思ってたのに。



「命令が無いと動けないの、辛いよね」

「・・・まーね」

「でも、それなら指揮官の資格を取って、命令する側になるという方法もあるよ? 分隊・・・ううん、部隊の指揮官になるとか」

「僕は、うちのタヌキみたいにはなれないよ。つか、話が組織改革みたいになってるし」



そのために、半生捧げろと? 僕はごめんである。つーか、楽しく戦えないし。前に出れないし。



「・・・いい手だと思うんだけど」

「・・・ギンガさん、やっぱ嘱託のままがいい。どれもこれも不自由過ぎる」



だめ、無理。見ているだけで気疲れしてくる。つか・・・めんどいこと多すぎなんだよこの組織っ! もっとシンプルにいこうよっ!!



「うーん・・・」

「なにかご不満ですか?」

「うん」



キッパリ言い切ったっ!? あぁ、やっぱり譲歩するんじゃなかった。



「だってなぎ君は、今までの局への印象だけでしか、この資料を見てない。それじゃあダメ」

「・・・じゃあどうしろと?」

「もう少しだけ、中を見てみようよ。その仕事で何が出来るのかを。その中に、自分のしたいことが無いかどうかを」





・・・僕のしたいこと。





「1:楽しく自由に戦いたい。2:命令が無きゃ動けないのは絶対に嫌。3:指揮官とか出世とか、興味無い。つーか戦えないのは、絶対嫌」

「いきなり箇条書きっ!?」

「いや、まず条件を上げた方が速いかなと」



色々な意味でね。ま、これだけ無茶苦茶なら、ギンガさんも納得・・・。



「うーん、その条件だと」



しないよね。うん、分かってた。本気で資料を見出したし。



「・・・なぎ君、戦うの楽しい?」

「楽しいね。うん、命懸けってのも、嫌いじゃない」



実際、鉄火場で強敵相手にやりあってると、心が躍る。・・・ま、リインやフェイトを泣かせたくないから、二の次にはしてるけどね。

でも、僕が戦いや危険ってやつに喜びを見い出す人種なのは、事実だ。これは変わらない。



「そういうのも、治していこうよ。そうすれば、また・・・」

「治らないよ。・・・先生もそうだし、最近だとヒロさんやサリさんにも言われたよ。
僕のコレは、生まれついてから存在して、遺伝子レベルで根付いてるってね。上手く付き合う事は出来ても、根っこから治ることは無いってさ」

「そんなこと」

「あるよ。自分でもそう思うから。この8年でよく思い知ったよ。だから言い切れる。これは治らない。絶対にね」



やっぱ、分かるの。どこかでそういうのを求めてる自分がいるのが。うん、治らないね。

ただ、すばらしい師匠達のご教授と、昔の大ケガでしこたま怒られたおかげで、上手く付き合う自信はあるけど。



「・・・なら、これはどうかな?」



少し悲しげなギンガさんが出してきたのは、ある職業の資料。・・・執務官だった。



「なぎ君の望みに・・・一番近いんじゃないかな。それに、空戦でオールラウンダーだから、適性も低く無いと思う」

「確かに執務官なら・・・」





自由行動の権限はあるし、勤務の形も様々。うん、一番近い。でも・・・ううん。



・・・面倒な約束、しちゃったよ。



こういうの、出来うる限り無くしていくんだった。まったく・・・。





「興味、出てきた?」

「・・・すこーーーーし」



実際、資格取らなくても、嘱託で自由さは得られるし。それだけなら、これを取る理由にならないのだ。



「うん、いいよ。最初はそれで。その『すこーーーーし』が、きっと『すごく』に変わっていくから」

「・・・それで、108入りしろと」

「・・・なぎ君、私言ったよね? そういう話じゃなくて・・・」

「・・・ごめん」



だって、いきなりな展開で、ちょっと戸惑ってるのよ。



「・・・もちろん、入ってくれるなら嬉しい。執務官の資格持ちなら、部隊の法務関係を任せられるしね」

「あー、今は108、そういう人居ないんだっけ」

「うん。探してはいるんだけど・・・そういう優秀な人材は、本局に取られやすいから」



・・・いい加減に本局には学習して欲しい。そういうのが、各世界の地上部隊の反感を呼び込んで、JS事件の遠因になったってことを。



「・・・嘱託のまま、執務官の資格取ったり、仕事出来るかどうか、調べようかな」

「それは・・・現実問題として、かなり難しいよ? 受験資格に引っ掛からなくても、正規の局員じゃないと、推薦とかも受けられないだろうし」

「でもさ、正規の局員として、108にそういう形で入っても、『異動』なんて手を使われて引っ張られるかも知れないでしょ?
嘱託としてなら・・・それが防げるんだよ。長期間契約にしちゃえば、向こうの都合なんて関係無いし」



・・・こう考えると、嘱託というのは以外とメリットが大きい。命令や組織の都合を、スルー出来るから。

もし、これで取れるようなら・・・地でクライマックス刑○、行ける? 警察手帳も捜査礼状もいらないってやつだよ。



「なぎ君、それって・・・えっと、執務官の資格が取れたら、うちに来てくれるってことっ!?」

「え? ・・・あぁ、そうなるのかな」

「ホントにっ!? あの、どうしていきなりっ!!」





そうして、ギンガさんの顔がいきなりドアップ・・・待って待ってっ! 顔近いからっ!!

僕はギンガさんの肩を掴んで、距離を強制的に離す。・・・あー、ビックリした。つか、ギンガさん無防備過ぎ。今は・・・あ。



・・・思い出してしまった。今は・・・二人っきりだった。ゲンヤさん、会議とかで隊舎に泊まりって言ってたし。





「あの・・・でも、どうして?」

「・・・つか、部隊に入る気ないからね? あくまでも、長期契約の話をしただけで。例え話例え話」



うん、ここ重要よ? かなりね。



「ただ・・・アレだよ今まで何回も誘ってくれてるしね。それで候補に上げないのはおかしいでしょ。つか、108・・・好きだし」





とりあえず、気付いた事実は気にしない方向でいく。・・・僕は、局は嫌いだけど、あの部隊は好きだ。

雰囲気もいいし、ご飯も美味しい。僕みたいな扱いにくいのにも、フレンドリーに接してくれる、気のいい人達も多い。それになにより、能力も高い。

上司部下として考えても、ゲンヤさんやラッドさんの指示は、信用出来る。安心して、背中を・・・そう、そうなの。



あの部隊の人間になること自体には、なんの抵抗も無いということを。ううん、むしろ・・・部隊に入るなら、あそこがいいと思ってる。

それでも断っていた理由は、局員というくくりになること。信用出来ない『組織』の人間になるということ。



なにより・・・それで暴走して、みんなに迷惑かける事になるのが、嫌だった。





「じゃあ、執務官は?」

「地でクライマック○刑事は面白そうだしね〜」

「・・・なんなの、それ」



電○見てください。



「じゃあ、これからいっぱい勉強しないとダメだね。それで、私と一緒に仕事していけば、捜査研修になるね。あと・・・」

「・・・あの、もしもし? だから、僕はまだ執務官になるなんて決めてないんですけど。部隊に入る気もない」



あくまでも、そうするならって話だよ? 例え話なんだからねっ!?



「でも、せっかくだし・・・」

「ギンガさん、せっかくの使い方、間違えてるから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・また、ぶっ飛んだ結論になったな』

「そうだね。でも、それでも私・・・嬉しいよ。なぎ君が、うちで仕事をしたいとは思ってくれてたから」

『ま、アイツはなんだかんだで古臭いっつーか、義理堅いっつーか・・・』

「・・・そうですね。今までのこと、無駄じゃ無かったんですよね」





・・・進路相談はひとまず中断。現在なぎ君はお風呂。私は、エプロン姿で夕飯の仕込み。というか、ちょっと楽しい。



そして、そのついでに父さんに経過報告です。





「それで・・・」

『まず、今のアイツでも、受験自体は可能だ』

「そうなんですか?」



正規の局員として、候補生にならないとダメだと思ってたのに・・・。



『ここ10年で、嘱託の権限も広がったしな。門戸を広げて、優秀な人材を発掘していこうってつもりらしい。ただ・・・』

「やっぱり、厳しいんですか?」

『あぁ。正規の局員じゃないから、上司の推薦を得るのも難しいだろうしよ』



でも、それならなぎ君にはハラオウン家が・・・あぁ、ダメか。きっとなぎ君が断る。



『そうだ。なにより、アイツの支援を、リンディ提督やクロノ提督がするとは思えねぇ。・・・家族だからな』

「そうですね。なぎ君の嘱託としての活動に、依頼を持ち込むことはあっても、そういう権限を使用した支援は、一切してないそうですから」



ハラオウン家というネームバリューだけでも・・・と、考える人も居るだろう。でも、それは勘違いにも程がある。現実を見ていないと言っていい。

・・・そこまで管理局は、甘くないよ。というか、そういうのを吹き飛ばすくらいに、なぎ君は暴れているから。



『まぁ、ここはいいさ。問題がまだある』

「・・・なんですか?」

『お前も知っての通り、JS事件の影響で、組織全体に綱紀粛正の動きがある。で、その中には資格試験の難易度の見直しも入ってるらしい』



つまり・・・実技・筆記のそれぞれが15%以下の合格率と言われる執務官試験の難易度が、上がるってことっ!?



「なんだか・・・間が悪いですね」

『そうだな。ま、そこも含めて、またあれこれ話してみろよ。俺も聞いてやるからよ』

「・・・はい」





なぎ君、どうやらこの道は、楽じゃないみたい。



でも・・・それでも、行こうと決めたら、行くんだよね。きっと。



・・・よし。





『・・・で、お前はどうなんだよ』

「え?」

『今、恭文と二人っきりだろうが。話はそういう進路問題だけか?』



・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば、父さんは帰ってこない。今、この家に居るのは、私となぎ君だけ。



『・・・おい、どうした? お前、顔赤いぞ』










えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



いや、いいお風呂だった。ついついゆったりしてしまったよ。・・・ま、そこはともかく。










「・・・ギンガさん」

「あの、なにかなっ!?」

「いや・・・どうしてそんなに挙動不審? というか、動きがぎこちないのさ」





ナカジマ家サイズのご飯を食べつつ思う。お風呂から上がった僕を出迎えたギンガさんは、すごくぎこちなかった。



まるで、油の切れ・・・やめよう。ギンガさんの身体のことを考えると、この例えはアウトだ。



でも、そうとしか言い様の無い動きだし。





「あの、大丈夫っ! なんでも無いよっ!? うんうんっ!!」





いや、なんでもあるでしょそれ。本当になにがあった?

カボチャの煮物を食べつつ、心から思う。うん、心からホクホクと・・・。



・・・あ、これ美味しい。ホクホクして、すごく甘くて。さすがギンガさん。いい味出してる。





「あー、でもごめんね。先にお風呂もらっちゃって。これだとギンガさんは男の残り湯だし」



プシュー!!



「・・・・・・・・・・・・・・・もしもし?」

「あ、あんの・・・」

「大丈夫じゃないからそれ」



つか、スチームが出てるし。どうしたのさ。・・・まさか、あの事実に気付いたっ!?

いや、まさかね。ギンガさんがそんなことを気にするとは・・・してたらどうしよう。



「あ、ギンガさん。このカボチャの煮物すごく美味しいよね。どうやって作ったのっ!?」



方針を決めた。僕は気にしてないことにする。あくまでも普通にだ。そうすれば・・・。



「あ、うん・・・。特別なことはしてないよ? 母さんから教わったレシピも、料理本と大差無いし」



うし、ギンガさんも乗ってきたっ! この調子で、とりあえずNGワードは決めておくか。

『お風呂・ベッド・寝る』ってとこかな。・・・これから一番使う単語じゃないのさ。どうやって避けろと?



「でも、美味しいのよ。うん」

「・・・ありがと」










そんな美味しいカボチャの煮物を食べながら思った。





明日からは、108の隊舎で泊まろうと。ここはゲンヤさんが居ないと、あまりに危険過ぎる。





ギンガさんは、大事な友達。僕の暗い部分も見せられる、本当に大事な友達。





だから・・・そういうことで不安になんて、させたくない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ご飯を食べた後、洗い物をなぎ君に任せて、私もお風呂。





というか・・・どうしよう。私、本当におかしい。





だって、なぎ君とは本当に友達で・・・。





湯船に肩まで使って、考える。あ、お湯は・・・そのまま。





だ、だって・・・別段汚ないとかじゃ無かったし、なぎ君は本当に綺麗に使ってくれてたし、私は・・・嫌じゃない。





やっぱり私・・・おかしいのかな。





そうしてついつい湯船の中でじっくり・・・じっくり・・・考えてしまった。




















(その2へ続く)




















あとがき



≪・・・さて、皆さん大変お待たせしました。作者が一行書く度に血ヘドを吐いたルート話です。
私、皆様お馴染み古き鉄・アルトアイゼンと≫

「あとがきでは初登場っ! サリエル・エグザだ。・・・あー、オリキャラ同士とかってツッコミは無しで。今回呼べるの、俺しか居なかったんだよ。
つか、このルート話連載のあとがきでは、女性キャラの大半はNGらしい」





(ここには理由があります。・・・結構大きな)





≪マスターの天然フラグメイカーのおかげで、現在フェイトさんを除くと十一人もフラグが立っています。
というか、IF:END要望が来ています。そこでその人達は呼べませんから≫

「そういうことだ。で、誰がフラグ立ってたり、誰がIF:END要望があるかと言うと・・・」





(ギンガ、リイン、すずか、ティアナ、なのは、スバル、シャマル、美由希、メガーヌ、ディード、キャロ・・・です)





「・・・アイツ、マジでおかしいよな。てか、フェイトちゃん入れたら1ダースじゃねぇかよ。どこのシスプ○やストパ○だよ。
つーか、キャロちゃんは違うだろ」

≪今さらですけどね。で、この新連載は、そんなIF:ENDを書いていこうというお話です≫

「いっそのことと思い、幕間とは別個にしたそうだ。で、今回は・・・」

≪やはりトップバッターはこの人、ギンガさんのルート話です≫





(どこからか流れるファンファーレ)





「で、なんだあれ?」

≪はい?≫

「いや、こう・・・イライラさせる感じが。つか、やっさんが退化してるっ!?」

≪当然です。・・・なぜなら、今回の話のテーマは『共感出来ない』マスターVSギンガさんですから。マスターは、21話以前の状態でなければ困るんです≫

「・・・どういうこと?」





(青いウサギ、台本を読みつつ、しっかりと説明を始める)





≪やっぱりルートですから、趣旨は色々違った方がいいだろうというアイディアのもと、テーマを決めたんです。
ギンガさんの場合は、本編でもあったマスターの罪を背負うが故の柵です。そこがきっかけであり、大筋になって行くんです。あ、これが大まかな展開ですね≫

「えっと、なになに・・・?」





(青いウサギから、紙を数枚受けとる)





「元々それ関連でやっさんを心配していたギンガちゃんが、本編で言うところのフェイトちゃんの役割に立って、踏み込んで解決していくと」

≪そうです。ただ、フェイトさんとは関係も立場も経緯も違います。そこでまたゴタゴタすると言うわけです≫

「本気でルート分岐なのがアレだよな」

≪それこそ今さらでしょう。うちのバカ作家にそこまで高尚な事を求められても困ります≫

「いや、その言い方もどうなんだよ」





(青いウサギ、そんな言葉は気にせずいく。とにかく・・・)





≪なにしろアレな人のIF:END話なので、色々辛くはありますが・・・ここは頑張っていきたいと思います≫

「とにかく、次回だな」

≪はい。それでは、お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

「サリエル・エグザだ。それじゃあ・・・また次回にっ!!」










(二人、カメラに手を振る。そして、フェードアウト。
本日のED『優しい右手』)










(おしまい)






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あきゅろす。
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