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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第124話 『I finally Met/こころのたまご、なりたい自分とホントの自分』



ドキたま/じゃんぷ、前回の三つ出来事っ!!

一つ、巨大×キャラの叫びによって地球を超えてあらゆる人達が悲しみに包まれたっ!!

二つ、『探偵のおじさん』との記憶を取り戻し再び立ち上がった恭文に鼓舞されて、仲間達も立ち上がったっ!!

三つ、仲間達の奮闘と謎の声の力の導きで繋がった人たちの声援でリインフォース・ライナーがパワーアップっ! あむと共に巨大×キャラを浄化したっ!!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



空には元の静けさが戻り、あれだけあった×たま達も消え去った。そして光が降り注ぐ中、ひかるは目を覚ましていた。

一応でも世界の危機は去った。僕達は自分で決めた自分のケンカを通す事が出来た。

でも僕の仕事はまだ終わっていない。まず地下でひかるに会ってから気づいた事をひかるに伝える。



そして絶望を未だに苦い顔で僕達を見るこのバカに突きつける必要があった。





「で、おのれ本当に誰っ!!」



その前に僕はやっぱりキャラなり解いたら出てきたハードボイルドルックなしゅごキャラが気になってしょうがない。

だってあの声がコイツなのは分かったけど、いきなりなんだよ? それも前フリなしだしさすがに表情も厳しくなる。



「オレはショウタロウ。お前のしゅごキャラだ」

「ショウタロウ? ・・・・・・恭文、アンタまた特撮から影響受けたんだ」

「その冷たい視線はやめてくれますっ!? 確かに僕のキャラなりそういうの大半だけどさっ!!」

「あー、違う違う。オレはWの左翔太郎が出てくるずっと前からコイツのしゅごキャラだ」



左手を振りながらそう言うので、全員がショウタロウの方を見る。それでショウタロウは、僕を真剣な目で見上げた。



「ただ今まではどうしても外に出て来れなかったんだけでな」

「ショウタロウ、それはどうして? 君だって蒼凪君のしゅごキャラだよね」

「ヤスフミがオレがたまごとして出てくる前に、オレが形になった時の事を全部忘れてたからだよ。
オレはシオン達とは違って、ヤスフミが本当の子どもの頃に生まれたたまごの中のキャラだからな」



唯世達は僕の10歳までの記憶があやふやで無いに等しい事は知ってる。だからすぐに僕と同じように納得した顔になった。



「でもコイツは悲しみが引き出されてしまった時、全部思い出した。その時描いた『なりたい自分』・・・・・・オレもな。
そうしたらコイツとの繋がりも復活して、それで思いっきりピンチだろ? だから急いで出てきたんだよ」

「ならあの、恭文アンタ・・・・・・例えば両親の顔とか」

「うん、もう思い出せる。僕の両親・・・・・・二人揃ってちょっと痩せ過ぎなくらいだった。
てーか母親ぺったんこ過ぎて抱き心地最悪だった。いつも抱き締められる度に硬いって思ってた」

「いやいや、そこ聞いてないしっ!! ・・・・・・でも、そういう事なら納得かも」





あむが安心したように笑って、僕も釣られたように苦笑する。

それで両手を出して、その上にショウタロスを乗せる。

改めてその姿を見て、僕の考えが間違いないと強く確信する。



あの時の僕はきっと探偵のおじさんに憧れて、おじさんみたいな人になりたいと思った

そんな自分に変わりたいって思って、それでこの子が生まれたんだ。だからこの子はソフト帽にコートのハードボイルドルック。

多少カジュアルな色は含めているけど、基本ラインは変わらない。僕は・・・・・・申し訳なくて表情を曇らせる。





「なら、今まで辛い思いさせちゃってたね。ごめんショウタロス、ずっと忘れてて」

「いや、いいさ。ただ表に出れなかっただけで、お前の事はずっと見てたしな。
ただまぁ、せっかく出てきたししばらく世話になってもいいか? お前の友達たちにも挨拶したいしよ」

「うん、いいよ。ありがと、助けてくれて・・・・・・ずっと見ててくれて。ほんとに感謝してる」

「おう」



そう言って照れくさそうにショウタロスは笑う。でも次の瞬間固まり、不満げに僕を見た。



「・・・・・・って、ちょっと待て。ショウタロスってなんだよ」

「え、おのれの名前でしょ?」

「ちっがーうっ! オレはショウタロウなんだよっ!! なんでイマジンみたいに呼ぶんだよっ!!」

「「ショウタロス先輩、これからよろしくお願いします。手始めに焼きそばパン買って来てください」」

「だからお前らもそれやめろっ! あと先輩とか言いながらオレをパシリにするなよっ!!
ないってわけかっ! オレを先輩として尊敬するつもりが全くないってわけかっ!!」



とりあえず納得は出来たので、僕は騒がしい子達は置いていて視線を左側に移す。

そこにはひかるが居て、ひかるは僕とショウタロスにシオン達をジッと見ていた。



「・・・・・・本当に」

「何?」

「本当に君や日奈森あむが言っていたように、無価値なものなど世界には存在しないのか?」

「うん」



ショウタロスが手の上から離れるので、ひかるの前にしゃがみ込みながら頷いた。



「ひかるはその事、もう分かってるんじゃないの? あの部屋の中には、確かに金額にすると高い石もある。
でもそれだけじゃなかった。そこら辺の河原に落ちてそうなキラキラとした石もあったりしたしさ。あれらだって世間的には無価値でしょ」

「そうだな。そう言われると・・・・・・ちょっと待ってくれ。君、なぜその事を」

「あの部屋で散らばった石をいくつか見てたら、自然と気づいた。
僕も同じようにそういうの集めて大事に取ってあるから」

「・・・・・・そうか。なら納得だ」



それから僕はそっと、ひかるの右手を取る。それで優しく開くと・・・・・・そこには青い小さな石があった。

その周りには赤いアザのようなものが浮かんでいて、ひかるが相当強く握り締めていた事が分かる。



「ひかるがこの石を大事にしているように、ひかるやそこの元専務が『無価値』と判断したものを大事だと思っている人も居る。
ただまぁ、そこについての道徳の授業はまた後かな。今はもっと話していかなきゃいけない事がある。ひかる、一つ質問」

「なんだ」

「ひかるはどうしてエンブリオを・・・・・・『価値』のある石を求めたのかな。僕達はよく考えたらそこを知らない」

「ふん、貴様は本当にバカだな。いいか、御前はエンブリオをコレクションに入れようと」

「もうアンタは黙れっ!!」



その瞬間、星名は背中をティアナに蹴飛ばされ、なのはとアギトとリースとナナに足でボコられ始めました。



「少し・・・・・・ううん、かなり頭冷やそうかっ! 人の夢や心をなんだと思ってるのかなっ!!
私も娘が居るから分かるけど、あなたみたいなのが一番嫌いなタイプだよっ! 本当にどこの悪の首領っ!?」

「元はと言えばテメェのせいで世界が滅びかけたんだぞっ! そこんとこ分かってねぇだろっ!!」



・・・・・・あ、一つ訂正。ボコるのはひかるの前なのでマズいと思ったのか、囲んで睨んでいる模様です。



「ほんとですっ! それなのにどうして自分は悪くないって顔が出来るのか理解に苦しみますっ!!」

「この場で殺されないだけマシと思いなさいっ! あの子に免じて命だけは助けてあげるっ!!
でも・・・・・・しばらく再起不能になるまで徹底的にボコってあげるから覚悟しなさいっ!!」

「待て、やめろっ! 貴様らこんな事をしてただで済むと・・・・・・えぇい、やめんかっ!!」

『だが断る。そして絶対に許さない・・・・・・絶対にだ』



まぁ暴力は振るわないようなのでひかるも僕も気にしない。・・・・・・みんな、ソイツも一応けが人だから死なない程度にね?



「だが星名一臣ではないが僕も気になる。そこは説明したはずだが」

「ほら、エンブリオはコレクションの一つとして集めてたんでしょ?
だったらどうして石をコレクションしようとしたのかなと」

「あ、そう言えばそうじゃん。そこあたしも気になるかも。ひかる君、それってどうして?」



僕の隣にあむがしゃがみ込んで、同じようにひかるを見る。それで・・・・・・僕達の顔を見てから、手の中で輝く青い石を見た。



「隙間を埋めるんだ」

「隙間?」

「僕が望んで手に入らないものなんてない」



それがイースターのトップだからこその言葉。でもそこに喜びはなかった。ただただ、虚しさが含まれるだけ。



「でも何かを手に入れる度、僕の中の隙間に気づく。そうだ、あの男の言うように僕は空っぽだ。
だから、綺麗な石を集めるんだ。そこを埋めるために。なのに」



ひかるは開いた両手を、また強く握り締めた。



「どれだけ集めても、隙間は埋まらない」

「・・・・・・そっか」

「で、エンブリオを見つけてもその隙間が埋まらなくてポイっと」



ひかるは静かに頷いた。まぁ、そりゃあなぁ。僕の予想通りなら・・・・・・それで埋まるはずないし。



「でもそれは当然でしょ。ひかるは絶対的な勘違いをしてるんだから」

「勘違い?」

「そうだよ。その隙間は、お金やイースターの権力があったからって絶対に埋まらない」



そう言いながら僕は、右手をそっと胸に当てる。それで・・・・・・なんかこういうキャラはらしくないなと思いつつ笑う。



「その隙間はきっと、形にならないたくさんの大事なものを入れるためのもの。
そこにはもしかしたらあの石達もあるのかも。でも、それだけじゃあ足りない。だから隙間に気づく」

「それはどこにある。どこに売って・・・・・・いや、この質問は無意味か。形にならないものと言っているのだからな」

「うん。例えば僕だったら、いつも一緒に戦ってくれる相棒達」



そう言いながら胸元のアルトと左手のジガンを指差す。



「信頼出来る仲間に、心を許せる友達。ありったけで笑顔と夢を守りたいと思える愛する人。
それに夢と『なりたい自分』。それはひかる達が『無価値』と判断したものばかりだけど、僕にとっては大事なもの」

「それはあたしも、みんなも同じ。だからそれが守りたくてあたし達はここに来た。
まぁさ、ひかる君の隙間に埋まる物があたし達と全く同じかどうかは分からないよ?」



あむは苦笑しながら右手を上げ、人差し指でひかる君の胸を指差す。



「でも、その隙間が気になるなら・・・・・・まず自分でその隙間を見つめていく事が大事なんじゃないかな。
その隙間はお金や物じゃ埋まらない。自分で色んな事を見て、探して・・・・・・初めて埋まっていくものだよ」

「僕が?」

「そうだよ。だからまず、ひかる君が自分で自分に何が本当に何が欲しかったのかをこころに問いかけていくの。
少なくともイースターやおじいちゃんの力でそれが手に入らないのは、もう確定じゃん。もちろんエンブリオでも無理」

「・・・・・・僕が、本当に欲しかったもの。僕の、こころ」



ひかるは両手を開いて、自分の胸元を押さえる。その時に握っていた石が落ちたので、咄嗟に左手でそれをキャッチ。

それでひかるを見ると・・・・・・ひかるは、困ったように俯いて視線を泳がせ始めた。



「だけど僕は、空っぽだ。こころになにもない」

「そんな事ないよ。きっとここから」

「そうかも知れないね」

「ちょっと恭文っ!?」

「だから『あの子』は、ずーっとひかるを探してた」



立ち上がりながら、僕は空を見上げる。そこには・・・・・・姿を消していたエンブリオがいつの間にか現れてた。

そのためにこの場はまた輝きに包まれ、全員が驚きながらエンブリオを見る。



「ひかるを探して、たくさん旅をして、伝えたがってた。今のひかるが全部じゃないってさ。
空っぽなのが今だっていうなら、そんな今を嘘にしたかった。だからここに来た」

「あの、恭文? アンタなに言って」



僕はエンブリオに向かって右手を差し出す。それで少し安心させるように笑いかける。

するとエンブリオは少し戸惑うように身を震わせてから、僕の手の中に降りてきた。



「ちょ、恭文っ! これどういう事っ!?」

「ナナ、ナナならもう分かるよね?」



星名を睨みつけていたナナが、荒く息を吐きながらこちらを見る。

・・・・・・てーか孫の前だってのに加減なしかい。全員揃って殺し屋の目してるし。



「はぁ? アンタいったい」



そこまで言いかけて、ナナは僕の手の中のたまごをマジマジと見る。それで・・・・・・納得したように頷いた。



「あぁ、なるほど。そういう事か。でもアンタ、よく気づいたわね」

「この子の昨日と今日の不審な行動の数々を見てたら自然とね。・・・・・・星名、よく見とけ。
さっき言った通りこれまでのお前の全部を否定してやる。それで全部おしまいだ」



星名は魔王とそのしもべ達の殺気に満ち溢れた視線を受け止めながらも、憎々しげに僕を見る。



「・・・・・・返せ。それは、私と御前のものだ。貴様のような奴が持っていいものではない。
それを使ってみろ。私はお前を一生許さんぞ。何があってもイースターの力を持って叩き潰してくれる」

「アンタまだそんな事言ってるわけっ!? 本気でどういう神経してんのかなっ!!」

「黙れっ! 私こそが御前の・・・・・・ひかるの幸せを誰よりも知っているっ! 願っているっ!!
だから認めんっ!! 貴様らのような甘い事を言う奴らに負けたなど断じて認めんっ!!」

「そう。ならこの子は今幸せだって言い切れるんだね? この子は自分の心の隙間に気づいてたのに」

「そんなものは貴様らがごちゃごちゃ抜かしたために御前が迷っただめだっ! そうだ、御前は幸せだっ!!
イースターの御前となり、金と力を手にしている今の御前が幸せでないはずがないっ! 隙間など存在しないっ!!」



どこぞのバカ提督の影がちらつくのは、やっぱり僕の気のせいじゃないらしい。

本当に、本当に憐れ過ぎてかける言葉も見つからない。ただそれでも、絶望を突きつける必要はある。



「よく分かった。だったら、これから起こる事をよく見てろ」



僕は呆れながらももう一度しゃがんで、ひかるにそのたまごを差し出す。



「ひかる、もう一度この子に触ってみて」

「何のためにだ。・・・・・・隙間は自分で埋めるものなんだろう? 僕の隙間は、石達では全て埋まらない」



あ、なんか困ったように僕の事睨んできた。もしかして・・・・・・一応言葉が通じてる?



「だからさっきとは違う意味でもうこれは」

「いいから触ってみて」



強めにそう言うと、ひかるは渋々という感じで僕の手の中のたまごに触れた。



「蒼凪君、ちょっと待ってっ! その子にエンブリオを渡すつもりっ!?」

「アンタなに考えてんのよっ! そんな事したらイースターがまたなにしてくるか」

「唯世、歌唄、それはちょっと正確じゃないね」

「「え?」」

「僕はこの子をひかるに返すだけだよ」



たまごはひかるの両手の中で輝きを放つ。今度は・・・・・・すぐに輝きが消えたりしない。

間違いない、ひかるはさっきみたいにこの子を否定していない。多分この子が本当はなにか、もう分かってるんだ。



「ひかる、その子はさっきも言ったけどずっとひかるを探してた。ひかるもその子を探してた。
だから分かるんじゃないの? その子は今もひかるに声をかけてる」

「・・・・・・よく、分からない」

「うん、だと思う。だからまずその子の温かさを感じて。その子は、宝石じゃない。
その子は今もこうして生きてる。生きて・・・・・・ずっとひかるに会いたがってた」

「あの恭文、お願いだからちゃんと説明してっ! マジであたしワケが分かんないんだけどっ!!」





そして白く輝いていたたまごの輝きが静まる。でもさっきみたいに輝き自体が消えたわけじゃない。

輝きは少し落ち着いたものに変わり、真っ白だったたまごに翼の柄が描かれて普通のこころのたまごになった。

それにひかるが驚いた顔をしてたまごを見つめる。そしてたまごはその手からゆっくりと浮き上がる。



そのままひかるの胸元に向かって行って、まるで水面に石が投げ込まれたかのように波紋を立てながら吸い込まれた。





『・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



僕はまた立ち上がって、呆然とした顔でこちらを・・・・・・ひかるを見る星名を見た。



「ヤスフミ・・・・・・今のなにっ!? あ、まさかエンブリオにひかる君の隙間を埋めるようにお願いしたとかっ!!」

「じいちゃんマジかよっ! そりゃいくらなんでもないだろっ!!」

「恭文ズルいー! てゆうか、ひかる君の前にまずやや達と相談しようよー!!」

「ほんとよ。そういう使い方するならするで考えるのに。全く、うちのジョーカーVはバカなんだから」

「あぁもう違うわボケっ! てーかさっき言ったでしょっ!? 『返す』ってっ!! まず」



声をあげながらひかるの方を右手で指差した。



「あれはエンブリオでもなんでもないっ! あれは・・・・・・ひかるのこころのたまごだよっ!!」

『はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

≪・・・・・・あぁなるほど。だからあなたちょっと電波入ってたんですか≫

≪主様、それどういう事なのっ!? だってだってアレは・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!≫





どうやら気づいてたのは僕と司さんだけだったらしい。まぁなぎひこ達はともかくとしてあむと唯世までコレって・・・・・・はぁ。

僕はため息を吐きながらひかるを見る。ひかるは・・・・・・嗚咽を漏らしながら瞳から涙を零していた。

そして次の瞬間、声を張り上げながら泣き出した。その泣き声は、さっきの巨大×キャラと同じ叫び声だと思う。



ひかるから星名に視線を移すと、星名は泣きじゃくる孫を戸惑ったような、信じられないような目で見ていた。










All kids have an egg in my soul



Heart Egg・・・・・・The invisible I want my






『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!


第124話 『I finally Met/こころのたまご、なりたい自分とホントの自分』










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おい恭文、ほんとどういう事だよ。ちゃんと説明しろ」

「蒼凪さん、俺も同意見です。今ひとつ事態が・・・・・・なぜアレがこの少年のたまごだと分かったんですか」



後ろを見ると、みんなワケが分からないという顔で僕を見る。

というか魔王とそのしもべ達も見る。・・・・・・これ僕が説明しなきゃだめなんだろうなぁ。司さんはこっち見てるだけだし。



「・・・・・・まず一番最初に変だと思ったのはここにみんなが来る直前だね。
エンブリオ、星名のところに来て星名を守るような行動を取ったからさ」



そこでなにかこう、エンブリオとして今まで追っかけていたものに対して疑念が出てきた。

ただそこを気にしてる余裕もなかったから、僕はシルビィ達連れて地下に降りたけど。



「それで昨日、あむが触るのを拒絶もしたんだよ。なのに星名を守ろうとした上に、アイツが触れるっておかしくない?」

「・・・・・・確かにそうですね。それではまるでエンブリオ自身が所有者を選んでいるような感じがします。
星名専務の行いどうこうを抜いても、そこはおそらく変わりません。ですがこれだけでは理由にならない」

≪そうなのそうなの。そういう風にエンブリオから所有者を選ぶ性質があるという可能性もあるの≫

「うん、僕も同じ事を思った」





多分あむが触ろうとしたのを拒絶した理由はそれに適合しなかったからとも思ってた。

でも実際は違ってたけどね。ようするに捕まって自分の宿主に会えなくなるのが嫌だったのよ。

だからあむが宿主じゃないって何かしらの理由で分かって、反射的に拒絶したんだよ。



『お前は僕の宿主じゃないから近づくなー』ってさ。さて、こうなるとどうしてもだったらどうして星名に近づいたのかが気になるよね?



そこを気にする前にまず、地下でのエンブリオの突然の攻撃行動について触れないといけない。





「次に地下でたまごに攻撃された時、ひかるだけには何もしてなかったんだよ。だけど星名は違う。
その直前にひかるに『いらない・無価値』と否定された星名には殺すような勢いで力を加えてた」

「それは更におかしいわね。一度星名専務はエンブリオから所有者と認められたのに」

「ならなら、エンブリオから『お前はもう僕を持つなー』って見限られちゃったって事だよね」

「うん。多分アレはひかるの言葉に応えたんだよ。星名がひかるを傷つける敵とでも思ったんでしょ」



原因はひかるの言動が星名とほぼ同じだから。だから自分が捨てられたと思ったのかも。

つまり星名はひかるのこころを空っぽにした諸悪の根源として断罪されていたのよ。



「それでダメ押しはこの子が中心になって出来た巨大×キャラ。あの能力・・・・・・もしかしたらだけど」

「宿主である一ノ宮君に『いらない・無価値』だと否定された悲しさや寂しさが原因でしょうか」



海里の言葉に頷きつつ、ひかるに視線を向ける。まぁシオン達もあのたまごが悲しがってるのは感じてたらしいし、それは確定だよ。



「それに同じようなエネルギーの塊である×たまが反応してしまった。
互いに力を増幅し合ってあのとんでもない能力が発現したと言ったところでしょうか」

≪じゃあじゃあ、あの巨大×キャラはひかる君の×キャラそのものかも知れないの?≫

≪こころを持つ事すら許されない・・・・・・そこから生まれる可能性そのものを否定した事で×が付いたわけですか。
いや、もしかすると私達があのたまごを目撃した時点で×たまと同じだったのかも知れませんね。心の外からは出てるわけですし≫

「しかし、あのたまごには×は付いていなかった。だから俺達もエンブリオと思った。
・・・・・・ここは当初の予測通りですね。こころのたまごがしゅごたまでもないのに外に出れば」

「うん。×たまになるか、あのたまごのように特殊な状態になって宿主を探していくんだよ」





まぁ普通の状態ならまだ良かったんだけど、あの子がちょっと特殊な状態になっていたせいで力が強くなっていた事。

そして星名のバカがデスレーベル作戦なんてやらかしたせいで相当数の×たまがそれに反応した事。

あとはひかるの本当の気持ちだよ。ひかるはたまごを、こころそのものを追い出す時本当はこうしたかった。



でもそれがいけない事だと星名に教え込まれていたから、だからこころを叩き出してしまった。

つまりひかるは・・・・・・本当はずっとこんな風に、さっきの×キャラのように泣きたかったんだよ。

それらの要因が大きく作用して、あのとんでもないチート能力を持った×キャラが生まれてしまったというわけ。





「ならアレ、宿主が泣けないから代わりにたまごが泣いてたんだな。
コイツきっと・・・・・・ずっと泣きたかったんだろ。こんな風にわーわー喚いてさ」

「だよな。空海だって昔はこんな感じだったんだろ? 兄貴達が楽しそうに話してたよなー」

「うるせぇよっ! 俺はまだがっちりしてたっつーのっ!!」





つまりよ、星名を最初守るような行動を取ったのはひかるに会うためなんだよ。

多分あの子は宿主をずっと探していて、それがひかるという確証もなかったんじゃないかと思う。

でもイースターが散々しつこくやらかしていて、もしかしたらこう思ったのかも。



『もしかしたらこの人達が僕の宿主を知っているのかも』ってさ。というか、出てきた時にひかるの存在を感じた?

タイミングは分からないけど、イースターが動くとそこにひかるの存在を感じ取ったとかかな。

それがイースターが見つけたエンブリオが呼び寄せられる『波長』の正体なんじゃないかと思う。



多分ひかると無意識の間に呼び合ってたんだよ。だからこの子は一か八かの賭けに出た。

その結果賭けには勝ったけど、とうのひかるが自分の事が分からなかった。

結果ひかるの中に戻る事も出来なくて否定されて・・・・・・どうしていいかも分からなくなってこれってわけ。





≪アレ、主様ちょっと待つの。それならなんで今までこの子は出てきたの?≫

「多分だけど、ひかる・・・・・・今までこの子が出てきた場に居たんじゃないかな。僕達が気づかなかっただけでさ」

≪そこはこの人に確認するしかないんでしょうけど、今は無理ですしね≫

「今までの分吐き出すかのようにめちゃくちゃ泣いてるしなぁ。つー事はあれか? じいちゃん達今まで」

「勘違いしてたという事になりますね。僕達、ひかる君のたまごを探して無駄に衝突してたんですよ。
というか、エンブリオじゃなかったんだ。あははは・・・・・・ならエンブリオってどこにあるんだろ」





唯世が軽く肩を落としているので、なぎひこと恭太郎がそっと背中を叩く。・・・・・・さて、もう一つ仕事があるかな。

まだ『絶望』を受け入れられなくて首を横に振ってるバカのところに、足を進める事にする。

うん、これは絶望だよ。星名はこれがひかるの幸せと、これがひかるのためと信じて疑わなかった。



でもひかるは今泣いている。なによりもまず泣く事を、溜まっていた悲しみを吐き出す事を選んだ。つまり・・・・・・そういう事だよ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そんな・・・・・・なぜ、なぜ泣くんだひかる。私は、泣くなと言っただろう。
ほら、泣くんじゃない。私はいつでもお前の幸福を願って」

「アンタバカじゃないの? 泣く事も出来ない生き方が幸せなわけないじゃないのよ」



ナナちゃんがめちゃくちゃはっきり言うと、驚きながら星名専務はナナちゃんを見る。・・・・・・本気でこういうのも分からないのか。

泣く事が許されない孫と、こういう形でしか家族に触れられない祖父か。正直悲劇も同じよね。



「しかもそれを考える事の出来るこころすらも、アンタはあの子から叩き出した。自分勝手な都合を押しつけてね。
きっと一人で、親も居なくて寂しかったのに・・・・・・あの子はアンタに今まで一度もそういう気持ちをぶつけようとしなかったの?」



ナナちゃんにそう言われて星名専務は戸惑いながらも固まって何も答えない。

どうやら、覚えはあるらしい。それを見てアギトちゃんは大きくため息を吐いた。



「でもそれは出来なかった。アンタがそんな風に・・・・・・さっきみたいに自分の幸せを、価値観を押しつけたから」

「だからあの子は、自分の中からそんな痛みや感情を沸き上がるこころを追い出してしまった」



そして司さんがナナちゃん達に続く。その視線は・・・・・・やっぱり泣いているあの子に向かっていた。



「いいや、こころを持つ事そのものが無意味で無価値だとあなたの姿から学習してしまった。
それがどんなに悲しくて寂しい事かも自分では分からずに、そう感じるこころそのものを捨てた」

「ならあの子はずっと、当たり前に注がれる愛も喜びも知らなかったんですね。
悲しい時に悲しいと感じる事が、泣きたい時に泣ける事が幸せとも知らなかった」

「えぇ」



だから今、私達の目の前で泣いている。少なくとも今あの子は幸せなんだ。泣く幸せを・・・・・・涙を流す幸せを知ったから。

あぁ、だからヤスフミがちょっと親身になってたんだ。あの子の痛みが、同じような境遇だったヤスフミには分かるんだ。



「そんな・・・・・・嘘だ、そんな事は嘘だ。私も父も幸せだった。この生き方で幸せだった。だから」

「私にもさっき言ったように娘が居ます」



まだ現実を否定する星名専務を、なのはさんが厳しい瞳で見る。それで星名専務はなのはさんを見た。



「私は娘の幸せもあの子の幸せも分からない。だってそれは、あの子達が自分で決めるものだから。
専務、あなたはあの子の幸せを本当に知っていたんですか? ううん、きっと知ろうともしていなかった」

「知っていた。私は知っていた。お前達とは違う。私は」

「ならどうして、今あの子はあんなに泣いてるんですか。自分のこころに隙間を感じていたんですか。
どうしてあの子は、自分のこころそのものを追い出してしまったんですか」



星名専務の身体に震えが走り始める。そして首を何度も・・・・・・何度も横に振り始めた。



「・・・・・・あなたはただ自分だけが幸せな世界を作ろうとしただけだよ。誰の幸せなんて考えていなかった」

「やめ・・・・・・やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



なのはさんの真剣な視線と言葉が耐え切れなかったのか、星名専務は首を横に振りながら崩れ落ちる。

それで頭を両手で抱えて震え出した。そうやって、泣いているあの子から目を逸らした。



「私は・・・・・・そんな。それでは今まで私は・・・・・・嘘だ、誰か嘘だと言ってくれっ!!」

「嘘じゃねぇよ。なぁ、お前だって分かってんだろ? アタシには、今の叫びの方がさっきよりずっと悲しく聴こえる。
・・・・・・ずっとこうしたかったって気持ちが詰まってるあの子の声が、あの子追っかけてここまで来たあのたまごがその証明だ」

「違うっ! こころのたまごなど・・・・・・あんなガラクタなどイースターのトップには不要なんだっ!!
ひかるは今、幸せなんだっ! 心に隙間などないっ!! 全てに置いて満たされて幸せなんだっ!!」



嗚咽混じり否定の声はさっきまでのものとは違う。さっきまでは無駄に大きい自信が確かにその中にあった。

でも今はもうない。きっとこの泣き声が、ひかる君が石を集めていた理由がそれを砕いている。



「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ! こんな事は嘘・・・・・・デタラメなんだっ!! だからひかる、泣くなっ!!
私を・・・・・・私を否定するように泣かないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! もう許してくれっ!!」



でも泣き声は止まらない。というか、専務も泣き出す。泣き出して身体を震わせて怯え続ける。

そんな専務を見てどうしようかと思っている時、専務の頭を掴む手があった。それで専務の頭が無理矢理引き上げられる。



「誰もお前のこれまでを絶対に認めないし許さない。ひかる自身ですらもだ。お前はずっと、間違いだらけで無駄な人生を送っていた」





はっきりとそう言い切ったのは、こちらに来ていたヤスフミ。それでも星名専務は泣き続ける。

さっきまでの自信を持って声をあげていたあの人はもう居ない。

そこに居るのは、家族との向き合い方も分からないおじいちゃんだった。



そんなあの人を見てヤスフミは、呆れたように頭から手を放しながらお手上げポーズを取った。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お前は、自分の幸せをあの子に押しつけてた。あの子だけじゃなくて他のみんなにも押しつけて一人だけで笑っていた」

≪それがあなたに突きつける絶望ですよ。あなたはとんだピエロだった。
一人だけで笑っててさぞかし楽しかったでしょうね。というか、ずっとそう見えてましたよ≫

≪でも他のみんなは誰も笑っていなかったの。今日の事だけでもよーく思い返してみるの。
九十九達も猫男君も・・・・・・ひかる君だってそうなの。みんなの笑顔や幸せを、あなたが奪ってたの≫

「許してくれ。このまま、このまま・・・・・・そうだ、殺してくれ。そうすれば私は楽になれる。
なぁ、お前達は私が憎いんだろう? だったら殺せ。それで全て終わらせ」

「ダメだ」



とんでもない事を言い出したので、全力で否定してやる。それで更に嗚咽が大きくなった。



「僕達はお前を絶対に許さない。お前は最低な卑怯者だ。自分で拳を痛める事もせずに家族すらも踏みつけ続けた。
だから殺しはしない。お前にはその苦しみを抱えたままずっと生きてもらう。逃げ道も許しも、絶対に与えない」



どうやら僕が突きつけた『絶望』は効果があったらしい。そこはアギトや横馬、ナナのお説教も効果があったと思う。

だから星名は崩れ落ちて、また瞳に涙を溜めながらまるで神にすがるかのような視線を僕に送る。



「だから生きろ。そして逃げるな。僕達よりなにより自分とあの子から絶対に逃げるな」

「え?」

「・・・・・・呆けてんじゃねぇよっ! お前はあの子の・・・・・・たった一人の家族なんだろうがっ!!
それで簡単に命捨てようとしてんじゃねぇっ! お前が死んだら、あの子はどうすんだっ!!」



声を張り上げて睨みつけると、星名が大きく目を見開いた。



「お前が世界を滅ぼしかけた極悪人でも、どんなにひどいヤツでも、それは絶対に変わらないんだよっ!!
お前はあの子に幸せになって欲しかったんだろっ!? だったら今からでも・・・・・・死ぬ気で全部やり直せっ!!」



僕は右手を肩まで上げてスナップさせて、星名を指差す。



「さぁ、お前の罪を・・・・・・数えろ」





その言葉でもう充分だったのかも知れない。星名はふらふらと立ち上がりながら、ゆっくりひかるの方に歩いて行く。

その手は震えていて、表情も疲れ切っていて・・・・・・さっきまでとは別人だった。

それでも足を進めて、声が枯れ始めているのに泣き続けていたひかるの前に来た。



ひかるはそれに気づいて振り向き、怯えた視線を星名に見せる。星名は右手を伸ばして、そんなひかるの頭を撫でた。





「・・・・・・ひかる」



そのまま星名は膝をつき、そのままひかるを抱き締めた。



「ごめんな。おじいちゃんを、おじいちゃんを許してくれ・・・・・・!!」



弱々しく嗚咽を漏らしながら、星名は自分の孫を抱き締める。ひかるは驚きながら目を見開く。

ただそれでも・・・・・・ひかるはそれでも、両手で星名の事を抱き締めた。それを見て、ようやく終わったんだと息を吐いた。



「ヤスフミ、お疲れ様」



隣にシルビィが来て、声をかけてきた。なのでまぁ、笑いつつ頷く。



「お疲れ様。シルビィ、ありがとね。手伝ってくれてかなり助かった」

「大丈夫よ。私も貴重な経験させてもらったし。・・・・・・ねぇヤスフミ」

「何?」

「自分で言った通り、責任の取り方については協議してもらうわよ? まぁ時間をかけてね。
それで一緒に探したいな。私とヤスフミと・・・・・・みんなで笑える未来の形を」

「うん、頑張るわ」





こうして、あむ達にとっては2年弱。僕とリイン達魔導師組にとっては9ヶ月弱に及ぶイースターとの戦いは終わりを告げた。

戦いの中で壊れたものも確かにあって、全てにおいてハッピーエンドとは正直言いがたい部分もあったりする。

だけどそれでも確かに守れたものはあると信じて、僕達はドリームエッグランドを後に・・・・・・いやいや、ちょっと待って。



僕そう言えば一つ気になる事がある。この謎を解いておかないと安心して帰れないや。





「あの、司さん」

「なんだい」

「気になってたんですけど・・・・・・ほら、こころのたまご。
あの絵本の破かれたページの中身って何が描いてあったんですか?」



ひかるが激昂して破いちゃったくらいだし、それはそれはファンタジーな結末なのかとも思う。

いや、もしかして読者に想像丸投げな打ち切りエンド? 何気に気になってるのよ。



「ふむ・・・・・・それは」

「それは?」

「ひかる君、せっかくだからみんなに教えてあげてくれないかな。君が見たあのページの中身を」



・・・・・・って、感動のシーン邪魔するんかいっ! それでひかるも・・・・・・あー、なんかあっさり頷いたしっ!!

なんか悪い事したような気分になりつつも、僕は星名から離れて涙を拭き始めたひかるの方を見る。



「僕が破いたページでいいんだな?」

「そうだよ」

「あ、それあたしも気になるかもっ! てゆうかガーディアン入った時からずっと気になってたっ!!」

「やや達もー! ひかる君、教えて教えてー!?」



それで全員の視線を受け止めつつ、ひかるはやっぱりどこかぼんやりとした表情をしていた。でもすぐに頷いた。



「分かった。あの絵本の続きには」

『続きには?』

「何も描かれていなかった」

『・・・・・・え?』

「白紙だった。だから不良品か何かの類だと思って破り捨てた。いや、違うな。
今考えるとどこか惹き込まれていたのかも知れない。それなのにあれだから怒ったんだ」



納得するようにうんうんと頷いているひかるはともかく、絵本の事を知っているガーディアンメンバーは全員固まった。



えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!



みんなで声を揃えて、さっきの巨大×キャラやひかるの泣き声にも負けないくらいの声で叫んだ。



「なるほど・・・・・・あー、本の趣旨を説明してなかったのは失敗だったねー。あははは、僕もまだまだだなぁ」

「いやいや、納得しないでそこっ! てゆうか司さん、マジどういう事かなっ!! あたし意味分かんないしっ!!」

「そうですよっ! ここまで気になる風に引っ張っておいて中身白紙っ!? なんですかそれっ!!」

「いや、それはしょうがないんだよ。だって」



司さんは詰め寄るように視線を向けてくる僕達は気にしていないように、楽しげに笑う。



「続きは、君達で描いていくんだからね。あれはそういうお話なんだよ。
そうやって人から与えられた物語ではなく、自分の物語にしていくんだ」





それから司さんは空を見上げた。僕達も同じように空を見上げる。



空は・・・・・・ここが郊外だからなのか、星が沢山瞬いていた。それを見てたら、全員揃って何も言えなくなった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・あの戦いから時間は流れ、もう季節は12月に突入していた。この街に来てから、早くも10ヶ月。

師走という事で街も人も少しだけ慌ただしく動いていて、最近めっきり冷え込んで起きるのが辛い。

まずヤスフミ達は全員無事に帰ってきた。それで・・・・・・いっぱいおかえりとただいまのキスをした。



ヤスフミ自体はみんなを家まで送ってから戻って来たから、再会するまでにちょっと時間かかったけどね。

でもいっぱいキスをして、それで寂しかったから・・・・・・繋がるのは無しでコミュニケーションもした。ほら、ちょうど偶数日だったから。

でもヤスフミ、やっぱり溜まってたのかな。あの、かなり凄かった。濃いというか不屈というか。



それで私の方も母子ともに元気。ヤスフミ達が頑張ってくれたから、影響が出るギリギリのところで助かった。

あ、それとショウタロウの事もちゃんと聞いた。挨拶もさせてもらった。というか、お礼も言った。

あなたのおかげで私達、ヤスフミと一緒に戦う事が出来たーって・・・・・・たくさんね。あの映像、あの子が見せたものらしいし。



それで私やみんなから集めた力と一緒にヤスフミのキャラなりに飛び込んで・・・・・・それが切り札になった。

そんな風に家族も増えつつまた落ち着きを取り戻した日々の中、私はお母さんになっていく準備をしてる最中。

お腹も結構大きくなったの。まだ臨月の時みたいにふっくらという感じじゃないんだけどね。



だけど、自分のお腹の中に確かに命が育っている感覚はしている。

それで私達はそれからしばらくアリサの家でご厄介になるかとも思ったんだけど、そうはならなかった。

クロノとアコース査察官とレティ提督がヤスフミ達が戦っている時に、母さんを更迭したから。



原因はあの日にやらかした職権乱用。話は本当にビックリするくらいに早く進んだ。

査察部や上の方としても見過ごせないレベルになっていたらしく、母さんは懲戒免職の処分を受けた。

ここの辺りはそういう不祥事として表に出たり母さんが逮捕されたりという事はなかった。



それは・・・・・・依願退職すら許されなかったのは、ここ1〜2年の間の母さんのやり方が相当強引だったせい。

六課の事をやたらと持ち上げるやり方もそうだし、あとは局の改革のために前よりスカウト熱が高まっていた事もそう。

私達は知らなかったんだけど、そのために内外から『強引過ぎる』と苦情が続出していたらしい。



しかも話を断ると、まるでそうする事が世界全体を裏切っているかのような言い方をされるから余計タチが悪い。

それは今まで培っていた功績すらも吹き飛ばすような勢いで、余りの必死さに昔なじみな私達以外の人の評判は最悪。

母さんを良く知る人もそのうち何人かは引いて距離を取っていた程だった。少し悲しげにレティ提督が教えてくれた。



けどだから、なんだよね。局は母さんの事でこれ以上問題が出る事を避けたの。

だから刑罰に処するよりもずっと辛い罰を下したんだよ。母さんにとって局の仕事は全てだった。

だから母さんからそれに関わる権利そのものを剥奪した。それで改めて気づいた。



母さんは私が思っていたような自分の足で歩いて、周囲から認められる素敵な大人なんかじゃなかった。



ただ局の事だけ・・・・・・それだけしか信じられないで、それにすがらなくては生きていけない寂しくて弱い人だった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・何気に気にはなってたのよ。あなたや恭文君がリンディと縁を切った状態になってからそれは続いてた。
そういう痛みや悲しみや辛さを忘れるように、もう自分には組織を守るしかないんだって言いたげな程に必死でね』

「そう、だったんですか」

「まぁ僕達はいいですよ」



私達は母さんと距離置いてたしね。というか、言われても困ってたと思うからヤスフミの言葉にすぐに頷けた。



「でもそこはクロノさんだったりエイミィさんには話してたんですか?
特にクロノさんですよ。息子だし、クロノさんの評価にも関わるとこじゃないですか」

『それとなくは伝えていたのよ。一応気をつけてあげてって。
でもリンディはあなた達の知っての通り、元々人の話を聞かないでしょ?』



本当に困り果てたと言わんばかりにレティ提督は右手で頭を抱える。



『世間で色々言われ続けている事も相当不満に思ってたようだし、自分だけは変わらずに信じていこうとしてた。
だから色んな情報をシャットアウトして・・・・・・それだけならともかく、それを人に押しつけてもいこうとするから』

「でしょうね。よーく知ってますよ。自分の幸せがみんなの幸せと考えてるとこがあるから」

『えぇ。ただ・・・・・・正直ね、私はあなた達にも不満があるのよ』



それでレティ提督は、視線を厳しくしてヤスフミの事をまるで責めるように見出した。



『どうしてフリだけでもリンディの事を信じられなかったの? ここまでヒドくなった原因はあなた達よ』

「レティ提督、ちょっと待ってください。それは」

『家族なら、仮にも母親だと一度は慕った相手なら・・・・・・もうちょっと気遣う事は出来たはずよ。
えぇ、フリだけでいいの。お願い、今からでもリンディの言うような大人になって。それで』

「それであの人に自分の信じたものは正しかったんだと安心してもらえと?
僕とフェイトは別にあの人を励ますために生きてるんじゃないんですけど」



ハッキリヤスフミがそう言い切るとレティ提督は更に視線を厳しくするけど、大きくため息を吐いた。



『えぇ、そうね。これはただの八つ当たり。完全に壊れた友人を見てどうしても納得が出来ない私の身勝手さ。
ただね、恭文君・・・・・・世の中の人間はあなたのように強くはない。組織や居場所に頼らないと生きていけない人間も居るわ』

「知ってますよ」

『だったら、余計に私の言う通りにして。ずっととは言わない。1〜2年程度でいいの。その間局員として普通にしてくれればいい。
それだけでもきっとリンディの状態はかなり良くなる。そこはフェイトちゃんもよ。もう私には、これしか思いつかないの』

「・・・・・・それ、違います」



今度は今まで黙っていた私が声をあげる番だった。それを驚いたようにレティ提督は視線をヤスフミから私に移す。



『フェイトちゃん・・・・・・確かにそうかも知れない。でもリンディは壊れてしまっている。
このままだと命にだって関わるわ。助けるためには、あの子の弱さを受け入れる必要がある』

「絶対に嫌です。なにより母さんは壊れたんじゃない。自分から、壊したんです。
それをダメだと否定したのはレティ提督も同じですよね? それなのにその言い方はないです」



右手で胸を押さえて、またあの時のように悲しみが呼び起こされるけど・・・・・・それでも私は、表情を硬くして言い切った。

レティ提督はまた不愉快そうに視線を厳しくする。そんなレティ提督を見ながらヤスフミは更に困った顔をした。



「・・・・・・なによりそれで立ち直った後はどうするんですか。僕達以外の人達はどうするんですか」



レティ提督はその言葉で表情を固めた。というか、困った顔を・・・・・・あぁ、その問題があったか。



「僕達だけがリンディさんに不満を持っているならともかく、他の人達だってそうなんでしょ?
あの人はさっきも言ったけど『みんな』にそうして欲しい。僕達だけがそうしたって意味がない」

『・・・・・・それは』

「みんなにもこんなバカなお願いするんですか? それは本当にナンセンスだ。
例え聞いてくれても、あるタイミングでみんな元に戻ったら余計に傷が深くなる。絶対揉めますよ」



そこでレティ提督は表情を固めたまま沈黙する。それから諦めたように息を吐いて、目を閉じた。



『・・・・・・知ってたわ。ただのその場しのぎになのも知ってる。でも、それでもと願う事は悪いのかしら。
立ち上がれれば、あの子は変わるかも知れない。そう期待する事は悪いのかしら』

「悪いですね」



レティ提督だってそこは分かっていたらしい。だから表情が苦いものに変わる。

私はそれに心が更に痛くなりつつも、旦那様を見習って意地を張る事にした。



「だから頷けません。私は・・・・・・私達はそうしなきゃ立ち上がれない母さんの弱さを、否定します」



訪れた沈黙の中、ヤスフミは・・・・・・揺らがない。私も揺らがない。

レティ提督は言葉を失ったようにヤスフミと私を見て、悲しげに笑った。



『・・・・・・そうね。そうやって強く生きられたら・・・・・・リンディもそうあってくれたら、本当に良かったのにね。
でもね、あの子はそんな風に強くなれないの。突きつけられてもそれと向き合えない。それは受け入れるべきよ』

「でも私達の気持ちは変わりません。レティ提督、レティ提督だって本当は分かっていますよね?
母さんだって受け入れる必要がある。私達はそれぞれ違う人間で・・・・・・同じにはなれないと」

『本当に・・・・・・残念だわ』



レティ提督は私の言葉に答えない。答えずに悲しげに私達を見る。



『今ならリンディの気持ちも少しは分かる気がする。リンディはきっと、あなた達の強さが怖かったのよ。
私も怖い。えぇ、怖いわ。あなた達の強さは・・・・・・あの子の心を傷つけるだけなんですから』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



レティ提督はそれだけ言うと、悲しげに通信を一方的に切った。まぁ母さんの友達だからしょうがないと納得した。

というかね、どこからか話を聞きつけてきたグリフィスが通信でだけど謝り倒してきたんだ。うちの母が本当に無礼な事をーって。

その勢いが物凄かったし、まぁしょうがないと思っていた私達は苦笑し気味にグリフィスを必死になだめた。



あ、それで母さんのここ最近の話にはまだ続きがあるんだ。・・・・・・何気に上も母さんの行動には困り果てていたらしい。

組織のためと言いつつ暴走するし、既に母さんの組織愛は信仰者の類でもあった。それも絶対的な局至上主義。

その上それを身内だけじゃなく局の外にも平然と押しつけてくる。信じないとさっき言ったみたいにヒステリーを起こす。



今の次元世界ではそんな考え方を持っている局員は、間違いなく批判の対象になってしまう。

ここの辺りは、JS事件の影響で始まった組織改革は現在進行形の事だからなのも大きく作用している。

それで局員がそんな態度を取ると、改革する気があるのかどうかも疑われてしまうんだ。



やっぱり綱紀粛正や改革って、現状の組織の在り方を疑ってより良い形を模索していく姿勢が必要だから。

そういう意味では組織を信じるという感情は不要かも。疑い・・・・・・今の在り方を知ろうとする心が必要。

だけど信じる事は、盲目になりやすい部分もあるから。特に母さんの場合はその傾向が顕著。というかあまりにヒドい。



やっぱり局員は未だに市民から厳しい視線を送り続けられている状態だしね。

だから母さんみたいに『信じるのが当然』なんて言うのはありえない。そういう風潮になってしまっているんだよ。

・・・・・・まぁ、それを考えもせずに鵜呑みにしてヤスフミに押しつけていた私が言う権利はないんだけど。



それで上は、前々からそれを当然とする母さんを切り捨てるチャンスを伺っていたみたい。

そこに母さん自らが徹底暴走して今回のコレ。つまり上からすればこれは待ち望まれていた事でもある。

だからさっきも言ったように、すんなり更迭や懲戒免職の話が通ってクロノ達もビックリしてた。



刑罰関係がなかったのも、そこをマスコミにツツかれたくないというのもあったんだと思う。

そうなっちゃうとやっぱり外から『また不祥事』という目で見られるしね。そういう意味では母さんの存在は闇に葬られた事になる。

一応それまでの功績を鑑みた上での穏便処置という名目はついてるけど、それもまた怪しいよ。



あ、これらの話はもちろんあむ達の事がバレないように進んでいる事なのであしからず。

そこが出来なかったら本当に意味がないから、騎士カリムとマクガーレン長官も手伝って上手く説明してくれたらしいの。

クロノはほら、今ひとつ口下手だから。今回の事で本人が反省しまくりな程だから、もう任せちゃったの。



だけど変革を続ける組織にとって、母さんはもう不要の存在だったんだね。ううん、忌むべきがん細胞かも。

それは・・・・・・少しショックだった。私は母さんのように職務を全う出来る大人に、正しい人間になろうとしていた。

それが普通だと思っていて、それが出来ない事は悲しくて寂しい事だと思っていたから。



もちろん今は違うけど、これで改めてそれまでの私達がどれだけバカだったのかを突きつけられてしまった。

私が母さんから教わって描いていた理想は・・・・・・ただの信仰者になるだけの事だった。昔と何も変わっていなかった。

ただ信じて崇めて、それを広めていくだけ。たったそれだけの存在になっていたんだ。



私は9歳の頃から管理局教の信者だったわけだよ。私も星名専務やひかる君と変わらなかった。

局を、私達の居場所を信じられない者は無価値ってどこかで思ってたのかも。

そんな私は、外から見ると本当に滑稽だったんだったと思う。それはもうありえないくらいにね。



だって警備組織の人間としては仕事を全く通せていないし、通そうともしていないよね。

ただ信じる事を説いて、自分が信仰していた宗教の信者を増やす事だけを考えていた。たったそれだけだった。

だから当然だったんだよ。過去の私の在り方が、今の母さんが否定されるのは・・・・・・当然なんだ。



そこには他者の幸せを受け止める余裕もなにもない。ただ私達だけの幸せしかなかったもの。

それで現在レティ提督が悲しげに『壊れた』と称した母さんは、海鳴の自宅で引きこもってしまっている。

とりあえず殴りに行くのはしばらくやめる事にしてる。というか、もう必要ないかなとも思った。



・・・・・・それは母さんがあの時、ヤスフミ達が止めた巨大×キャラが原因で見た過去の悲しみの記憶のせい。

この話はね、向こうで母さんの面倒を見てくれているエイミィから聞いたんだ。

これもつい最近の話になる。まぁその、先輩ママとして今の私の状態が気になって電話くれた時に色々とね。



あの時母さんは組織からだけじゃなく、自分の過去そのものからも今を否定された。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



母さんは局をクビになってから、ずーっと部屋に閉じこもっている。まぁさ、クビになった一日目は普通に行こうとしたの。

まだ現実と信じられなかったみたいで、それで一悶着あったりもして・・・・・・それからずっとここ。

一応ご飯とかも部屋に持ってってるけど、ほとんど食べてくれない。カレル達も心配してるけど反応が薄い。



それで母さんは寝間着のままベッドの上から空を見ていた。私が隣でお茶を淹れていても・・・・・・ずっと。





「ねぇ、エイミィ」

「なんでしょう」

「あなたはあの時、何を見たの?」



・・・・・・あー、世界中で起きたアレの事か。みんなして悲しい記憶を思い出して動けなくなったーってアレ。

それで私はまぁ・・・・・・どうしよ。正直言いにくくてつい場違いな苦笑いを浮かべてしまう。



「あー、クロノ君がDNA検査って言い出した時の事ですね。
あははは、なんか私の中の悲しい事ってそれくらいで」

「・・・・・・そう」





まぁ実際は相当だったけどね。なんかさ、今までの積み重ねとか信頼とか全部はじけ飛んだような感じがしたんだ。

だからもう恭文くんと子作り・・・・・・なんかなぁ。仕事の事とかじゃなくてこれが一番ってどうなんだろ。

ただ見たのはもう一つある。こっちはアルフとカレルとリエラも同じ。てゆうか、話聞いたら高町家のみんなも同じだった。



あとは耕介さん達さざなみ寮メンバーもだね。たまたま帰省していた知佳さんも同じく。

だけど色々事情がありそうなので、そこの辺りはお母さんには内緒という事で口裏合わせてる。

カレル達にもしっかり口止めしてるので、私は内心お母さんに謝りつつ苦笑いを続ける。



お母さんはそんな私の笑いは見えてないのに、それでもだよ。・・・・・・よし、やっぱ二人には確認しておこうっと。





「私はね、クライドや仲間が亡くなった時の事だったの。その時に昔の自分の姿も浮かんで来てね」

「・・・・・・そうだったんですか」

「それでおかしいのよ。映像が浮かぶ度に今の自分が汚らわしい化け物のように感じるの」



母さんは窓の外を見ながら、無表情で涙を流した。



「その度にね、クライドが悲しげに私を見る映像まで浮かぶの。どんなに振り払っても、嘘だと思っても、ダメなの。
唐突に思い出していく思い出より、そっちの方がずっと辛かった。今の私の全てが否定されているようで、動けなくなった」



それで涙は止まらない。止まらず、あの時の私やアルフ達のように泣き続ける。



「エイミィ、私おかしいの。もうあんなワケの分からない悪夢は見てないのに、動けないの。何もやる気が起きないの。
あの時の悲しげなクライドの表情が頭から離れないの。私の全てを否定するような視線が忘れられないの」

「お母さん、あの」

「もう全部失ってしまったのに、クライドが私を責め続ける。仕事も、使命も、家族の信頼も・・・・・・なにもかもなのに。
今こうしていても、眠っていても、クライドがずっと私を見続けるの。どんなにやめてとお願いしても許してくれなくて・・・・・・あは」





お母さんは涙を流しながら笑おうとした。でも笑えずに、そのまま更に涙を流す。

私は何も言わずに立ち上がって、お母さんを抱き締める。それで頭を撫でていく。

だけどお母さんはまだ笑おうとして声を漏らす。でもそれは笑いにはならない。



ただ嗚咽となってお母さんはただ・・・・・・ただ私の腕の中で泣き続けるだけだった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



母さんの中の『箱』から引き出された過去の悲しみの記憶は、今の母さん自身を全て否定する刃となっていた。

どうやら『箱』の中には悲しみの記憶だけが封じ込められていていたわけじゃないみたい。

その時感じた痛みから学んで感じた事、心に残った大切な思い出も悲しみと一緒に引っ張られていく。



だからヤスフミもあの時、悲しみと一緒に引き出された思い出に触れて立ち上がる力を搾り出せた。

パンドラの箱の話じゃないけど、痛みの中にも希望はあるものなんだね。だけど、母さんはそれとは真逆。

母さんは大切なはずの思い出そのものに、過去の自分そのものに断罪されてしまった。



それで私達が言葉で言うよりももっとシンプルで、そして組織が否定するよりもずっと辛辣。

母さんにとってはこの上ない程に残酷な形で、今と過去の違いを突きつけられてしまった。

そのために母さんは全ての決意と矜持をへし折られて、完全な無気力状態になってしまっている。



そういう意味ではレティ提督の言っていた事は正しい。こころに×が・・・・・・ううん、こころそのものが砕かれた。

というか、実はヤスフミがそこの辺りがどうしても気になって、海鳴の家に行ったんだ。

それでシオン達に頼んで母さんの様子を見てもらった。その結果は、もう言うまでもないと思う。



そこで私達はしばらく直接的に顔を見せない方がいいとエイミィに言われたらしい。

つまり、それくらいに状態は悪いらしい。あと・・・・・・いったい何に関わったのかと言われた。

というか私も通信で聞かれた。あの映像、エイミィとカレルとリエラとアルフも見たらしいの。



ここの辺りは笑ってごまかしたけど、近々母さんには匿名でお花でも贈る事にする。

実はビックリした事に、ここもヤスフミが自分からそうしようって言い出したんだ。

ヤスフミ、さっきも言ったけどあの時・・・・・・悲しみと一緒に自分のぼんやりとしていた過去を思い出したの。



それは私達と会う10歳までの記憶。本当の意味でヤスフミが子どもだった時の時間。

同時にヤスフミがずっと失っていた時間。昔の私や母さん達がヤスフミを『不幸』だと思っていた要因の一つ。

家庭が、家族が壊れていく様を思い出したくなかったからなのか、自然と封じ込めていたみたい。



それでね、私にも色々話してくれた。誘拐された時の事や、鳴海荘吉さんそっくりの探偵のおじさんの事。

あとは・・・・・・自分が両親を本当に好きだった事。だからお墓、本当に建てようって乗り気になってる。

それで両親の顔も思い出せて、今まで私も知らなかった小さな頃の事も話してくれて、そういう時は本当に楽しそう。



ただ同時に、『もっと早く思い出せてたら』と悲しげ・・・・・・ううん、悔しそうに言う事もあるんだ。

そうしたら自分のこころをアンロック出来たのにって言って、自嘲するように笑うんだ。

過去を思い出しても人の前にまず自分を、自分がそうしたいと思うように変えていこうとする。



ヤスフミの良いところは何も変わっていない。そうだね、だからヤスフミはガーディアンなのかも。

人の可能性もそうだし、自分の可能性もちゃんと育てていけるんだよ。それがヤスフミの輝き。

あの時引き出された過去の記憶は、そんなヤスフミの心をまた少しだけ強く、優しいものにしたと思う。



私は・・・・・・そんなヤスフミを見て負けていられないなと気合いを入れている毎日だったりする。

それと恭太郎達ももう元の時間に戻った。その前にはちょっとしたパーティーをみんなでやって大騒ぎしたりもした。

ユニゾウルブレードは、そのまま恭太郎達に預けてオーナーに返却。さすがにちょっと危ないしね。



フレーム自体は今の技術で作っているけど・・・・・・ほら、母さんのせいで接収対象になっちゃったでしょ?

その命令自体は当然のようにもう解除されているんだけど、それでも人目についちゃってるしね。

しばらく表立っては使わない方が良いという結論になった。それでパスとカードはそのままもう持ってる事にした。



あ、元の居場所に戻ったのは恭太郎達だけじゃなくてシルビィさんとナナちゃんもだね。



みんなと『また会おう』って約束をして・・・・・・笑顔で別れた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・みんな、忘れ物ない? 特にリース」

「はい、大丈夫です。あの・・・・・・本当にお世話になりました」



そう言いながらリースが涙目で頭を大きく下げる。それで紫色の髪が揺れて、私達はついニコリとしてしまう。



「リースー」



そんなリースにリインが飛び込んで抱きつく。リースは手元に持っていたボストンバックを下ろしてリインを抱き締めた。



「リース、向こうのリインにもよろしくです。あとあと、たまに遊びに来るですよ? リインは妹が居ないのは寂しいです」

「はい。また来ます。それでちゃんと伝えておきます。リイン姉様、またです」

「またですよ」



まぁ向こうはそれとして、それで私は・・・・・・ヤスフミと一緒に恭太郎と咲耶とキアラとお話かな。



「じゃあじいちゃん、フェイトさんもまたな」

「恭さまと結婚の予定が出来たら報告に参ります」

「行くなよバカっ! てーかそれわざわざこっちに言う必要なくないっ!? 向こうのじいちゃん達に言えばいいだろっ!!」

「なるほど。咲耶ー、予定を立てる事そのものは問題ないらしいよー?」

「そういう意味じゃねぇからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





……もうデンライナーの乗車時間が来た。私達はリビングのドアから時間の中に入る四人を笑顔で見送った。



ちょっと寂しいけど、それでも笑顔でいられるのは・・・・・・いつか未来で会えると、信じているからだと思う。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それからさほど経たずに、今度はシルビィさんとナナちゃん達のお見送り。GPOの仕事もあるしここはしょうがない。



マンションの屋上にゲートを開いてもらって本局に跳んで・・・・・・というコースだね。なお、あむ達も来てる。





「ニムロッドさん、ナインハルテンさん、マクガーレン長官によろしくお願いします。というか、本当にありがとうございました」

「えぇ、伝えておくわね。あとそういうのはもう言いっこなしよ。私達は大した事してないんだし」

「なにより知らせてくれて助かったくらいだしね。そうじゃなかったら私、この事に関わる事すら出来なかったもの」



ナナちゃんは表情を和らげて、私も見た事がないような優しい笑顔を浮かべる。それに軽く驚いてしまった。

ただヤスフミとリインは普通で・・・・・・なるほど、二人はナナちゃんのこういう表情を見た事があるんだね。



「あー、でもでもやや達ナナちゃんの世界行ってみたいかもー」

「そう言えばそうでちね、プロミスランド・・・・・・興味あるでち」

「美味しいものとかあるかなー。わくわくー」

「あ、それは私も興味あるかも。というかナナちゃん、向こうの郷土料理とかあったら教えて」

「「よし、もう帰りの時間だっ! というわけでさようならー!!」」



え、なんでヤスフミはどうして必死な顔でシルビィさんと声をハモらせながら二人に手を振るの?

というかシルビィさんもナナちゃんを引っ張りながらなんで私達から距離を取るんだろ。



「ちょ、シルビィ待ちなさいよっ! これから私がプロミスランド秘蔵のレシピを」

「ナナちゃん、みんな待ってるんだからそれは無理よっ! 諦めましょうっ!!
あ、ヤスフミ、私また遊びに来るからその時はまた色々協議しましょうねー!!」

「うん分かってるっ! とにかくシルビィ、ナナを絶対に離さないでっ!! ナナ、シルビィの言う事聞くんだよっ!!」

「だからちょっと待ちなさいよっ! アンタ達私になんか恨みでも」



そして足元に転送ポートに繋がる転送魔法陣が発生。二人はそのまま消えていった。ヤスフミはそれを見て軽く息を吐く。



「・・・・・・危なかった。危うく別れの場がエラい事になるとこだった」

「あの、ヤスフミちょっと待って。それどういう意味?」

「そうだよー。せっかくプロミスランドの郷土料理のお話聞けるとこだったのにー」

「聞かなくて良かったと思うよ? あれだとナナは帰りを延期してそのままみんなに振舞ってただろうし。・・・・・・あのね」





その後ヤスフミとリインの話を聞いた私を含めたみんなは、どうしてこういう事になったのかを理解した。



というか、パステルカラーって・・・・・・あの、それは食べなくて良かったかも。ほら、私妊婦だから。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ただヤスフミはシルビィさんとの向き合い方も改めて考えた方が良いと思う。うん、距離感近いもの。

それに以前も宣戦布告されてたし・・・・・・負けられないな。私ももっと女の子スキルを磨いていかないと。

とにかく世界は平穏を取り戻して、少しずつあの一件の余波も消えていっている。あと・・・・・・実は嬉しい誤算もあった。



はやてが教えてくれたんだけど、あれで悲しい記憶を呼び起こされた人達の中には当然犯罪者も居る。

それでね、そのために自責の念に駆られた人達が相当数管理局に出頭しているの。

その時過去の自分の姿や家族や大切な人の姿を見て、こんなのダメだって思って・・・・・・それでらしい。



もちろんそれは本当に極々一部だと思うんだけど、それでもその人達が今を省みて変えていきたいと思ったのも事実。

それは次元世界だけの話じゃなくて、地球でも同じなんだ。今もニュースで『どうしてこうなった』と大騒ぎしてる。

あとは・・・・・・スカリエッティだね。実はね、スカリエッティもあの後すぐに局への恭順と捜査協力を受け入れたんだ。



話を聞いてビックリして、ヤスフミと一緒に軌道拘置所に会いに行ったら更にビックリしたよ。

スカリエッティもあの映像見てたの。それでね、憑き物が落ちたみたいなすっきりした顔で言ってたんだ。

そろそろ他人だけではなく、自分という存在の可能性も研究対象にしたくなったーって。



・・・・・・あの時私達は、世界中が一つになっていた。だからこそと考えると・・・・・・やっぱりちょっと複雑かな?

それで嬉しく思うのと同時に、後悔のために胸がチクンと痛んだ。やっぱりあの時の私は仕事を通していなかったみたい。

ただ私情だけで怒りをたぎらせ、振り回して、道を間違えた人すらも助けていくという理念を忘れた。



前に話したかも知れないけど、局はそういう理念があるんだ。ヤスフミ風に言うと『犯罪者の心をも救う』って感じ?

私も当然そういう理念を知っていて、素敵だなと思って・・・・・・同時にその理念に助けられてもいて。

だから局員になるならそういう人になりたいって思っていたはずなのに、それだもの。私は自分にもあの人にも負けた。



それは今回の事で決定的になった。でもね、なんだかすっきりしてる。だってダメ過ぎてもう笑うしかないもの。

だからかな。だから・・・・・・時間はかかっても本当の意味で誰かの夢を、自分の夢を守れる人になりたい。

誰かの中にあるたまごを、その可能性を守れる守護者に私もなっていきたい。あの人と話した帰り道、私はそう決意を改めた。




・・・・・・私はそこまで打ち込んで、ワードパットを保存。自室のベッドの上で軽く息を吐く。





「うーん、さすがに疲れた」



報告書代わりの日記を打ち込み終わった直後、ドアがノックされる。そこからパジャマ姿のヤスフミが入って来た。

その手にはお盆とカップに入れたココアが淹れてある。というか、私がリクエストしたの。



「フェイト、お待たせー」

「ううん。というか、ありがと。あの、私もう安定期に入ってるからそこまで気を使わなくても大丈夫だよ?」



ここはかかりつけの近所の女医さんのお墨付き。だからその、一応OKはもらってる。



「いいの。僕が淹れたかったし。・・・・・・はい」

「ありがと」



ヤスフミが差し出してくれたカップを手に取って、隣に座ってくれた旦那様と一緒にココアを飲む。

それで二人でゆっくりと息を吐いて・・・・・・この平穏な時間が嬉しくて顔を見合わせてニコニコしてしまう。



「でも、家の中が一気に静かになったよね」

「あー、それはね。そういやフェイト、シャーリーとティアナどうするの?」

「あ、それなら二人はこのままこっちでお世話になりたいって今日お願いされた」

「そうなのっ!?」



ヤスフミが驚くのは、二人がミッドに戻ると思ってたからだね。私も同じだからつい嬉しくなって笑っちゃう。



「ティア、このまま聖夜学園の高等部を受験するんだって」



あ、ここで補足。聖夜学園って高等部があるんだ。初等部と中等部とはまた別の場所にある・・・・・・というかその隣なんだよね。

本当にあの学園は私の常識を尽く砕いてくれるよね。あのね、おかしいくらいだと思う。



「ほら、まだエンブリオは見つかってないから」

「・・・・・・あぁ、なるほど。それで学費関係OKにしちゃおうと」

「そのつもりみたい」



本人曰く『ここまで来たらエンブリオの正体見極めるまで付き合います』ってノリ気なんだ。

数ヶ月前のティアからはその発言が想像が出来なくて、また笑ってしまった。



「シャーリーは・・・・・・ちょっと違うかな。ここで暮らしはするけど、ここの外の方で仕事する事が多くなると思う。
はやてがシャーリーの事預かってもいいとも言ってくれてるし、多分はやての補佐官という感じになるかな」

「でもここに残ってエンブリオの正体は見極める?」

「うん。まぁイースターの事ももう大丈夫そうだし、そこは認めた」

「そう。まぁ僕も不満はないかな。このまま家事手伝いで常駐させるのもあれだし」



シャーリーは能力高いしね。それを錆びつかせるのもやっぱりダメで・・・・・・うん、やっぱりそういうの大事だ。



「それでさ、フェイト」

「何かな」

「いや、ディードも聖夜学園に通ってもらおうかーとか考えてるのよ。
今まではこっちの生活に慣れるまで保留にしてたけど」

「うん、いいんじゃないかな。そこの辺りは局の方にまた手続きしていけば出来るだろうし」



え、色々ズル? 経費の無駄使い? 大丈夫、そういう制度にしてるのは局だもの。

それにヤスフミもやっぱりエンブリオ探しの件が片づくまでは他の仕事出来ないし、使えるものは徹底的に使わなきゃ。



「ただねぇ、本人にそれとなく相談したらちょっと困った事言い出してて」

「なにかな」

「ディード、学校に通う事自体はOKらしいのよ。なんか僕やリインの姿見てていいなーって思ってたらしくて。
だけど・・・・・・せっかくだから僕と同じクラスに入りたいって言い出してるんだ。もっと言うと来年から中学1年生」

「ヤスフミ、それはさすがに無理じゃないかなっ! だってディード外見年齢だけなら高校生だよっ!?」

「僕もそう言ったんだけど聞いてくれないのー! 今は自分くらいの中学生も居るしバイリンガルなら大丈夫だって言い切るのー!!」





・・・・・・世界は一応でも平和になって、あの人達も平和な日々の中で新しい時間を刻み出した。

間違えた事は、犯した罪は消えないけど・・・・・・それでも笑顔で居る事を諦めないで罪と向き合う日々を送る。

それで私とヤスフミも、まぁ過去の事とか色々思い出したしね。振り返りつつ、先の事をまた考え中。



優しく手を繋ぎながら、たまにエッチに唇を重ねながら・・・・・・私達は穏やかな時間を思いっきり満喫している。





「あのね、ヤスフミ」

「何?」

「私、安定期に入ったから・・・・・・コミュニケーション出来るんだ」



それだけ言うと・・・・・・というか、かなりストレートだけど、ヤスフミは顔を赤くして頷いてくれる。



「もちろん勉強したみたいに激しくも深く挿入も無理だし、コンドームも必要だし」



あ、妊娠してるからってそのままなのはダメなんだって。あの、男の人のアレって膣内を収縮させる成分も含まれてるらしいの。

その影響でお腹の中の赤ちゃんにも負担がかかるらしくて、必須みたい。ただ優しく繋がるだけなら大丈夫だけどね。



「でもゆっくり愛し合う形なら・・・・・・ううん、愛し合いたいな。いいかな?」

「・・・・・・うん、いいよ。あの、ゆっくりラブラブしようね。僕もいじめるのは少なめで、優しくしてく」

「ん、お願い」





それで私達は飲みきったココアを入れていたカップを机の上に置いて、そのまままた唇を重ねる。

本当にゆっくりと私達はベッドの上に身体を横たえて、静かに電気を消して布団をかぶる。

この日、私はヤスフミと本当に久々の・・・・・・うぅ、ゆっくりだけど凄く幸せだった。というか、嬉しかった。



私何気に溜まってたのかな。確かにその・・・・・・偶数日の時は基本必ずだったから、そうなるのも当然なのかも。





(第125話へ続く)




















あとがき




恭文「というわけで、これにて光編は一応終幕。なお参考話数は122話で説明した通りアニメの第102話です。
でもすみません。実は次回からエピローグ入ります。結構分量あります。それでは本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

フェイト「ちょっと待ってっ!!」

恭文「・・・・・・フェイト、どうしたの?」

フェイト「あ、フェイト・T・蒼凪です。というかヤスフミ・・・・・・アレどういう事かなっ! エンブリオじゃないって何っ!?」

恭文「いや、説明した通りだって。アレはひかるのこころのたまごだったんだよ」



(なお、原作通りです)



フェイト「じゃああの、エンブリオってそもそも何っ!?」

恭文「なんだろうねぇ。ただそこの話はまた後になっちゃうけどさ。多分あと20話くらい後」



(ここは原作の最後の方まで謎な部分だったりします。というか、抽象的にしか描かれていなかったり)



恭文「というわけで、光編・・・・・・イースターとの最終決戦は今回で終了。次回はそのエピローグ回となります」

フェイト「あ、そう言えば事後・・・・・・うん、そうだね。事件中より事後の方が大変だっていうのはとまとのお約束だしね」

恭文「そういう事だね。何気にまだ解決してないところがあるのよ」



・ひかると星名専務の今後

・無事に救出された猫男も含めた月詠家とイースターの今後

・唯世のビギンズナイトの謎

・ロックとキーの謎



恭文「というわけで、次回でこの四つの事が大体語られる事になります。それで光編は一応終了かな」

フェイト「でも・・・・・・長かったね。ヤスフミ、お疲れ様。一応でもハッピーエンドには出来た」

恭文「僕だけの力じゃないけどね。うん、みんなが居なかったらどうにもならなかった。でも・・・・・・ありがと」





(それで二人揃って手を繋いでまたラブラブ・・・・・・お前らは。
本日のED: Buono!『ホントのじぶん』)










恭文「さて、作者が地震以降メールアドレスに迷惑メールの類が一切届いていないのを気味悪がっています。
あとは特に読んだりしないあっちこっちの通販のメルマガ? それ全部含めて一日30くらいはきてたのに」

フェイト「まぁその、しょうがないんじゃないの? ほら、こういう状況だし。
でも・・・・・・ちょっと腹が立つよね、それを『天罰』って言う人が居たりするし」

恭文「ありえないよね。まぁそう思う事自体は相当数譲ってアリとしても、それを公共の場で言うのがありえない。
しかも長年都知事として仕事してたのにだよ? あとは台湾の方の議員もか。もうね、日本はダメかも知れない」

フェイト「うん、それは思う。でも・・・・・・だからこそまず自分なんじゃないかな。
私はね、ヤスフミやあむ達を見てて痛感した。人の前に、まず自分を変えていく事は大切だよ」

恭文「そうだね。きっと・・・・・・そのための可能性が、僕達にはあるから。うん、まずは自分からそういう形を探していかないと」





(おしまい)





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