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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第119話 『Infinity&W Pike/弱き化物(けもの)、今ここで永久に眠るべし』



ドキたま/じゃんぷ、前回の三つの出来事っ!!

一つ、佐伯のぶ子の占いでイクトと星名専務達の居場所・・・・・・決戦の地がドリームエッグランドだと分かったっ!!

二つ、咲耶が連れてきた増援としてなのはとアギトがドリームエッグランドに駆けつけたっ!!

三つ、眠っていたしゅごキャラ・てまりが覚醒し、迷いを振り切ったなぎひこと二人でヤマトマイヒメにキャラなりしたっ!!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「えー、今回は作者さんが考えてみました。てゆうか、やっぱ分かりやすいね」

ミキ「シンプルにいけるからね。さて、まだまだ続く最終決戦。ついに目覚めたてまりと、キャラなり・ヤマトマイヒメ」

スゥ「もちろんなぎひこさんも頑張りますけどぉ、先に進んだあむちゃん達の様子も気になりますぅ」



(立ち上がる画面に映るのは、光を放ちながら踊り続けるクイーン。そして黒き鎧と対峙する二つの矛)



ミキ「未だイクトへの道は険しいけど、恭文もあむちゃん達ももう止まらないっ!!」

スゥ「最初から最後までクライマックスな最終決戦の第2話目スタートですぅ。それではぁ」

ラン・ミキ・スゥ『じゃんぷっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時刻は7時半を過ぎた。ミッドと地球の時間は基本同じで・・・・・・本当に異世界なのにこういうところが不思議。

宇宙における惑星の位置や環境なども似ている部分があるせいかも知れないけど、やっぱり不思議。

とにかくそんな時間に私はシャッハとオットー、それにセインと聖王教会の執務室で遠い世界に居るあの子達を思う。





局員でもなければ特別な訓練を受けた精鋭でもない、ただの生徒会の子ども達に世界の全てが預けられている。





それが恐ろしいやらありがたいやら・・・・・・とにかく戦々恐々としつつも、私は通信でマクガーレン長官とお話中。










『・・・・・・そうですか。向こうはもう始まっているんですね』

「えぇ」



あとはもう彼らに任せるしかない。覚悟を決めていたとは言え、やはりこういう時は落ち着かない。

JS事件の時の六課・・・・・・ううん、それ以上かも。基本的に恭文君達以外はただの子どもだもの。



「ですがこれだけの異常事態が起こっているのになお普通に見えるのが怖いというか」

『基本×たまというのは他の人間には見えないのですから、しょうがないでしょう。
それでこちらの方ですが、話を聞いてうちの連中も一応分署で待機はしています』

「ですが何も起こってはいない・・・・・・ですよね」



ミッドの方でも大きな混乱を示すような事件事故は起きない。それでも普段通り小さなものは起きているんだろうけど。



『まだ予言の最終段階に到達していないという事でしょう。その前にガーディアンが事を止めてくれるのを祈るしかない。
しかし・・・・・・ハラオウン親子にも困ったものです。リンディ提督もですがクロノ提督もですよ。どうしたらこうなるんですか』



メルビナ長官が本当に呆れたと言いたげな顔をしている。それで私もまぁ、それに乗っかる形で頷く。



「前に恭文君やはやてが、クロノ提督は対人・交渉スキルは低いとは言ってたんですけど」



でも普通に仕事をしている分は普通なの。だからそんな事はないと思っていたんだけど・・・・・・どうやら違っていたみたい。

というか、知っていたわ。今表情が苦くなるのも、いつぞやのリンディ提督の家出の事を思い出したからだし。



『まさしくその通りだったと。まぁ現場向きの人間には良く居るタイプですよ。
現場でのあれこれを重視する余り、上の人間としてのノウハウが疎かになる』

「お詳しいの・・・・・・いえ、これは失礼ですね。メルビナ長官はGPO分署を預かっているわけですし」

『まぁ私もそれなりに失敗したりはしていますから。そういうのは現場に立つのとはまた別系統の経験値が必要です。
悲しいかな私は、GPO設立当時のヴェートルの状況やうちの無駄に個性の強い連中のせいでそこがしっかりと入ってますから』

「そ、それはその・・・・・・どうお答えしていいか困ってしまいますね」



ヴェートルの状況が相当混乱していたのは、親和力事件より前も同じだったからそこは知っている。

でも人員の個性? ・・・・・・確かにそういう部分ではクロノ提督は経験が少ないのかも。納得してしまう自分が居るのが不思議。



『とりあえず私達が心配するべきは事後でしょうか。またバックヤードが大暴れしてくれたようですし』

「そうなりますね。リンディ提督も完全にキレてお話を聞いてくれない状態ですから」




















All kids have an egg in my soul



Heart Egg・・・・・・The invisible I want my






『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!


第119話 『Infinity&W Pike/弱き化物(けもの)、今ここで永久に眠るべし』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



空中に居たはずのなぎひこ君が、突然白い光に包まれた。その光が周囲の空間を昼間みたいに照らしていく。





それによって私達も×たま達も完全に動きを止めてしまった。というかあの光、私見覚えがある。










「おいおい、なんだよアレっ! アイツ一体なにやったんだっ!!」

「・・・・・・まさか、まさかあの・・・・・・あの時と同じっ!?」





そして光が弾けた。再び落ち着きを取り戻していく闇の中、その輝きを内包した『女の子』がゆっくりと舞い降りた。

淡い桜色が混じった無地の白色の着物に、裾から羽衣みたいな布が出ている。

それで帯は紫色で、だけど裾がやたらと長い。あと、印象的なのは背中から生えている布の翼。



まるで蝶の羽根のような形の半透明な桜色のそれは、キラキラと光る粒子を内包している。

というか、裾から出ている羽衣みたいな布がそれなんだ。多分同じような素材じゃないかな。

それで光の中から出てきた子は桜の花びらが連なったしだれ桜みたいな飾りを頭に付けている。



というか、それは髪留めらしくて長くて下ろしたままだった髪が一纏めになってポニーテールになってた。



あの、というかこれ・・・・・・これってもしかしなくても、なでしこさんっ!?





【「・・・・・・・・・・・・キャラなり、ヤマトマイヒメ」】

「おいおい、アレ前のQチェアのなでしこじゃないかよっ!!
なんでアイツが・・・・・・・あ、双子だからおかしくないのか」

「え、えっと・・・・・・そこを説明し出すと非常に長くなるんだけど」



ど、どうしよ。りまさんはなんか気づいてる感じだけど、アギトはさっぱりみたいだし・・・・・・でも勝手に話すのもアレだし。

困っている間に、キャラなりしたなぎひこ君はゆっくりと私達の前に降りてくる。それでにっこりと優しく微笑む。



「りまちゃん、この姿では初めまして」

「・・・・・・あなたが前Qチェアのなでしこ? じゃああの、本当にあの会話」

「えぇ。でも驚きよね。一発で見抜かれちゃったんだもの」

「いやいや、ちょっと待ってくれよっ! コイツはなでしこの兄貴だよなっ!? だから双子で・・・・・・何がどうなってんだっ!!」

【簡単です。なでしこはなぎひこで、なぎひこはなでしこというだけですわ】



声がするのと同時に、なぎひこ君の肩の方に半透明な小さな和服の女の子が現れた。

・・・・・・どうもこれが例のてまりちゃんらしい。これ、やっぱりてまりちゃんとのキャラなりなんだ。



「あの、あなたがてまりちゃん・・・・・・かな」

【はいな。なのはさん、初めまして】



以前は私もしゅごキャラ見えてなかったし、一応初めましてになるんだよね。

でも、なでしこさんそっくりなのがちょっと驚きかも。



【それと・・・・・・ありがとうございます】

「え?」



半透明な女の子は口元を袖で押さえたまま、嬉しそうに笑う。



【私やリズムがこんなに早く目覚めたのは、あなたのおかげです。
あなたはなぎひこと夢を分かち合ってくれた。あなたの輝きが、なぎひこに力を与えてくれた】

「そ、そうかな。でもあの、そんな事ないよ」



私はレイジングハートを胸元で両手に持ったまま、首を横に振った。



「私だって・・・・・・なぎひこ君にたくさんたくさん、力をもらったから。
なぎひこ君が居なかったら私、ずっと勘違いしたままだったのかも知れない」



なぎひこ君と出会えたおかげで私、どこかで置き去りにしてた最初の気持ちを思い出せた。

私は空の青さと広さに惹かれたから『とびたい』んだって思い出して・・・・・・うん、だからお礼を言うのは私の方だよ。



「でも、今はそこは後かな」

【えぇ】



私はなぎひこ君の背後でまたこちらを狙っている×たま達を見る。

なぎひこ君はゆっくりと振り返りながら、×たま達と向き合った。



【なのはさん、みなさんの事をお願いします。あとお得意の砲撃や射撃はちょっとご遠慮願います】

「にゃにゃっ!? て、てゆうかそれでどうするのかなっ!!」

【あら、その質問は無粋でしてよ? 当然・・・・・・踊るんです。さぁなぎひこ】

「えぇ。なのはさん、見ていてくださいね。私達の踊りを」



なぎひこ君はそう言いながらもこちらを振り向かない。でも、声は優しくてどこか嬉しそうに聞こえる。

それで右手を大きく横に伸ばすと、その手の平の中に金色の開かれた状態の扇子が現れた。



「今この瞬間私は、あなたのために舞います。イースターもガーディアンも関係ない。私は、あなたのために踊りたい」

「え?」

「あなたの笑顔が、あなたの夢の輝きが永久に続くように・・・・・・そんな願いをこの舞に込める」





×たま達が輝いて、また私達に弾丸を撃ち込んでくる。私は咄嗟にレイジングハートを構えた。

でもシューターを生成する前に、なぎひこ君が扇子を持った右手を振るう。するとそこから桜色の風が生まれた。

その風はこの空間そのものに柔らかく広がって・・・・・・弾丸をあらぬ方向へ吹き飛ばした。



それに私もそうだし×たま達も完全に固まった。でもそんな私達に構わずに、なぎひこ君は動く。



ゆっくりと右手を上げて、扇子を口元に持っていく。すると足元から桜色の光が立ち昇る。





「だって私、そんなあなたの事が好きで・・・・・・ずっとずっと、笑ってくれればいいと思っているから」

「・・・・・・なぎひこ君」










なぎひこ君が言葉を続ける毎に、光が強くなっていく。今は女の子状態のはずなのに、その言葉がとても頼もしい。

光が強くなっていく毎に、私の胸の中のドキドキも強くなる。それでつい顔を赤くしたりしてる。

なぎひこ君は右腕を伸ばして、ゆっくりと・・・・・・だけどとても綺麗に、優雅にその場で回った。





それが踊りなのは、なぎひこ君の動き方を見てすぐに分かった。ただ回っただけじゃないんだよ。

一回転してから正面を向くと、今度はすり足で10時方向に移動。当然腕は伸ばしたまま。

なぎひこ君がそうやって舞を続ける度に光は風に乗って周囲に広がり、私達や×たま達に当てられていく。





なぎひこ君の一挙手一投足を誰も見逃さない。そして×たま達に変化が現れた。というか、なんか赤くなってる。

まるで人間が頬を染めたかのように、×たまの真ん中の部分が赤くなってるの。それでその子達はそのまま地面に落下。

砕けたりする事もなく柔らかく次々とたまご達は落ちていき、その全てが落ちた瞬間に白いたまごに戻っていく。





瞬く間にこの周囲に100近くはあったであろうたまご達は、全て浄化されつつあった。

でも、それよりもなによりも・・・・・・私は光の風の中で踊るなぎひこ君から目を離せなかった。ううん、離しちゃいけない。

・・・・・・あの踊りは、私のための踊り。もちろんそれだけじゃないけど、そう言ってくれた事が本当に嬉しかった。





私はずっと・・・・・・ずっと、踊り続けるなぎひこ君の事を見ていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・すげーなおい。初登場補正かかり過ぎじゃね?」

「いやいや、ナギーだったらこれくらいやるぜ。てーかてまりもやるな」



な、なんというかムカつくわ。結局なぎひこだけで片づけちゃったようなものじゃないのよ。しかもあとは・・・・・・アレよアレ。



「なぎひこ君・・・・・・あの、ありがと。ほんとにありがと。それで、凄かった。
綺麗で、優しくて・・・・・・私あんな綺麗な踊り見たの、初めて」

「ならよかったです」

「・・・・・・歳の差カップルが出来上がりつつあるのってどうなのよ。今戦闘中よね?」

【みんな仲良しで良い感じー。クスクスクスクスー♪】



軽く息を吐きながら、涙目でなぎひこの両手を握るなのはさんから視線を外して上を見る。それで固まってしまった。



「・・・・・・なぎひこっ! なのはさんもイチャついてる場合じゃないからっ!! 上見て上っ!!」

『え?』



他の三人も上を見て、私と同じく声を失ったらしい。・・・・・・頭上を覆い尽くすばかりの×たま達がそこに居た。

数は当然だけどさっきよりずっと上。どうやらこっちが浄化したのを察して、増援を送って来たらしい。



「おい、なんかアタシ達完全に囲まれてるぞっ!!」



アギトさんが声をあげるので、改めて周囲を見渡す。するとそれぞれの道からこの広場に押し寄せんばかりに×たまが来ていた。



「ど、どうしよっ! てゆうか私のバカっ!! 戦闘中だって事すっかり忘れてたー!!」

「なのはさん、慌てないで? ここは冷静に」

「なれないよっ! さすがにこの数は・・・・・・こうなったらはやてちゃんからなんでか『絶対使うな』って言われてたけど」



なのはさんはそう言ってレイジングハートを頭上に向ける。

それを見て私は寒気が走った。ま、まさかとは思うけど。



「砲撃で一気にっ!!」

「「それはだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」

「タイトロープ・ダンサー!!」



とりあえず私はタイトロープダンサーを発動。一気になのはさんをぐるぐる巻にする。するとなのはさんは不満げに私を見た。



「りまさん何するのっ!?」

「うるさいっ!!」

「年上なのにいきなり叱られたっ!?」

「もうやっぱりやるんじゃないかと思ったわよっ!! でもそれはダメっ!!
真面目に例のプログラムがあってもたまご壊れそうじゃないのよっ!!」



なのはさんが構えた瞬間に思い浮かんだのは、あの戦技披露会で放った砲撃の数々。

特にあのストライク・スターズ? アレは怖いわ。アレを普通に撃ちそうだから止めたの。



「大丈夫だよっ! 私は元魔法少女なんだから、これくらいはなんとかなるっ!!」

「砲撃撃つ方向にレベルアップした魔法少女なんて聞いた事ないんですけどっ! てゆうか砲撃以外の・・・・・・転送とかっ!!」

「ごめん、アタシもなのはさんもその手の魔法ちょっと苦手で・・・・・・てーか使えません。むしろ使えたら自力でこっち来てます」

【そんなー! 恭文は色々出来るのにー!! 勉強不足勉強不足ー!!】

「そう言われると反論出来ないけど、アイツと比べんなよっ! アイツ無駄に手札多いんだしよっ!!」



絶望だわ。どちらを見ても絶望しかないわ。むしろ色々出来る恭文の方が稀有だって知らなかった事が敗因だわ。



『ムリームリー♪』

『ニゲラレナイー♪』



言っている間に×たま達は十字路の入り口にまで来ている。空も×たま達で覆われてもう星さえ見えない。



【りま、どうするのー!? てゆうか四方八方から迫られたら砲撃でも踊りでもさすがに無理だよー!!】

「これだけの数だものね。なぎひこ、あなたこれ」

「多分無理ね。一斉に襲いかかられたらさすがに相手に出来ない。だから」



なぎひこは私の方に近づいて、じわじわ迫ってくる×たまを気にしつつも右手を差し出した。



「一緒に踊って欲しいの。私だけの力では、どうにもならない。あなたの力が必要なの」

「・・・・・・私、踊りなんてした事ないわよ?」

「大丈夫。私がリードするから。それで二人でリズムに乗るの」



それでどうにかなるとは思えないけど、他に方法が無い以上・・・・・・砲撃なんて撃たせるわけにはいかないから、私はなぎひこの手を取った。



「嘘つきは嫌いだけど、今だけならいいわ」

「ありがと」





不満げになぎひこの手を取った瞬間、私達の足元から金色の光が立ち上った。それで地面から柔らかく風が吹く。

その風が私達の髪をなびかせ持ち上げ、風と一緒に光の粒子まで周囲に舞い上げられる。

それから私達はその光の中で両手を繋いでゆっくりと回る。それで・・・・・・ううん、やっているのはただそれだけ。



でもそれが楽しい。それがドキドキして、なぎひこと本当に一つのリズムを共有している感じがする。

言うならそれは三拍子・・・・・・ワルツ。難しい事は何もしていないのに、どうやら私は踊れているらしい。

二人で自然と笑いながら踊りを続ける。なのはさんとアギトさんが目を見開いて私達を見ている。



そしてなぎひこは右手を離して、その場で足を止めて右手を横に伸ばした。





艶やかに



私はなぎひこと左手を繋ぎながら回転し、なぎひこと背中合わせになる。それで今度は私が左手を横に伸ばす。



美しく



そして私達は、二人一緒に横に伸ばした手を大きく上に掲げた。



クイーンズ・ワルツ










次の瞬間、足元から吹き上げていた光が大きく広がった。言うならその形状は光の柱。

煌く光の柱は大きく広がり、そして伸びようとこの空間一体にどんどん広がっていく。

でも×たま達がそれをせき止めようと光から真正面にぶつかってくる。それと同時にまた弾丸を放つ。





次の瞬間、私達を閉じ込めようとする×たまにそれが放つ弾丸が、私となぎひこの『リズム』と正面衝突した。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




横馬達の居る場所で、なにやらデカい光が立ち上った。でもそれに構っている余裕は僕達には悲しいかな無い。

目指すべき塔は未だ遠く、その上あそこで待ち伏せされてた事を考えるとジッともしてられない。

そんなわけで僕達、そうこうしている間に例の白い塔の前まで到着しました。さすがにこの人数で全力疾走だしなぁ。





ただ当然のように・・・・・・待ち伏せされちゃってるわけですよ。なお、今度は×ロット連中ですよ。数はザッと100以上は居る。





でもそれだけじゃなくて、塔への入り口を塞ぐように3メートルほどの人型の重機械のようなものが二体居た。










『ガーディアン、今日がもう年貢の納め時だっ! この九十九がお前達を叩き潰してやるっ!!』

『もうこれ以上私達の邪魔をしないでっ! これ以上やると・・・・・・怪我じゃ済まないんだからっ!!』



どうやらあの重機械は人が乗り込むタイプらしい。てゆうかデザイン的には装甲ぶ厚めなパワーローダーって感じだね。

ただ疑問がある。それは・・・・・・そのパワーローダーに乗っているであろうバカを僕達が知らないという事。



『よし、九十九は分かった。あと一人・・・・・・誰?』



だから全員揃って首を傾げながらもこういう事を言うわけですよ。



『あぁそうよねっ! 私の事なんてあなた達は全く知らないわよねっ!!
じゃあ九十九主任の部下って言えば分かるかしらっ! 名前は萬田よっ!!』

「・・・・・・ほう、九十九の部下か。あむー、先行ってていいよー?」

「恭文っ!?」



言いながら僕はゆっくりと前に踏み出す。それにシルビィとナナ、ティアナも続いてくれた。



”恭文さん、私も”

”ダメ。ディードはザフィーラさんと一緒にあむに最後までついててあげて。・・・・・・何が来るか分からないから”

”・・・・・・分かりました”



うし、あとは恭太郎も居るしもう一度くらいなんかやられても問題はないでしょ。

話もまとまったので、僕は黒いパワーローダーに向かって笑いかける。



「いや、ちょうど出てきてくれて良かったよ。九十九、幸運に思うんだね。
僕今日は専務もそうだけどお前をぶっ潰しに来たんだよ」

≪おねだりCDの事、シュライヤさんへの洗脳、なぞたまの一件に今回のコレ。
さすがに私達も我慢の限界なんですよね。というわけで、そろそろ倒されてくれません?≫

「安心して? 殺しはしない。てーかこの件で人死には出さないって決めてるからさ。
ただし・・・・・・生まれて来た事を後悔するくらいには傷めつける



殺気混じりでそう言うと、こちらににじり寄ってたパワーローダーが動きを止めた。

それで二体揃って、僕の方を右のベンチ型のアームで指差す。



『お前達のせいだ』

「はい?」

『お前達が邪魔してくれなきゃ・・・・・・千々丸はあんな事にはならなかったっ!!
千々丸はな、お前達が邪魔してくれたせいで幾斗君に大鎌で斬られたんだぞっ!!』

「イクトがっ!?」



あむが思わず驚きの声を上げると、パワーローダーは両腕を広げて声と同じように荒ぶった。



『あぁそうだっ! お前達が邪魔さえしなきゃ、千々丸はあんな目に遭わずに済んだっ!!
僕達が早々にエンブリオを手に入れて、それで話が終わっていたんだっ!!』

「なるほど、だから僕達が千々丸を怪我させたと」

『その通りだっ! だからもう邪魔をするなっ!! お前達は僕達イースターの言う通りに行動して、エンブリオを呼べばいいっ!!
それで全て話は丸く納まるだろうがっ! だから・・・・・・だから頼むからもう、これ以上余計な事をするなっ!!』

『エンブリオを手にしたらもうあなた達には何もしないからっ! そこは約束するから言う通りにしてちょうだいっ!!
今のままじゃ治療も出来なくて千々丸は死んじゃうのっ! もうこれだけやったんだからいいでしょっ!?』

「人のせいにしてんじゃねぇよ、タコ共が」



遠慮無く言い放つと、場の空気が固まった。でも僕は揺らがずにローダーを見ながら鼻で笑う。



「話は分かった。だからどけよ。だったら余計に僕達はここでグズグズしてる暇はないんだからな」

『蒼凪恭文・・・・・・貴様、貴様はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

『許せない・・・・・・! 私達の仲間を、一体なんだと思ってるのよっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あむさん、いきましょう。ここは恭文さん達に」

「あ・・・・・・うん。でもイクト、そんな・・・・・・あたしが、あたしがもっと」

「あむさん」



あむさんは私が手を伸ばす前にハッとして、自分の頬を右手で叩いた。それで・・・・・・ガッツポーズを取る。



「・・・・・・恭文、後は任せたからっ!!」

「あいよ」










そのまま私達は相手の布陣を迂回する形で塔への接近を試みる。

最悪私なり恭太郎が壁を破壊すれば問題ないはず。もしくは転送魔法・・・・・・あ、それが一番早いかも。

でもあむさん・・・・・・それなりに腹はくくってるようで安心した。でもこれはマズいかも知れない。





星名専務はあの二人の話しぶりによると、かなり暴走しているらしい。千々丸という人が斬られたのもアクシデントっぽいし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「仲間? 笑わせんなよ三流。その仲間を放っておいてお前らここでなにしてる」



パワーローダーの中にこもっている二人が完全に固まったのが分かった。だから軽く笑って言い切ってやる。



「結局お前らはその千々丸ってのを見捨てたんだろうが。ソイツと同じように斬られるのが怖かった。
だから斬られたままで治療も出来ないんだっけ? そんな奴を放置して専務の言う通りにしてる」

『う・・・・・・うるさいうるさいっ! 黙れっ!!』

「だからどけよ。情けないお前らの代わりに僕達がその千々丸とやらを助ける」



一息にそう言うと、シルビィとナナとティアナは僕の方を見ながらなぜか苦笑する。・・・・・・ふん。



「別にそんな自業自得で死にかけてる奴なんざどうでもいいけど、だからって死なれても困るのよ。
・・・・・・人を殺す重さなんざ背負ったら、アイツはマジで不幸の黒猫を一生通しかねない」

≪私達はあなた達が人形にしてくれているあの人を助けに来たんですよ。
もしそのクズを見捨ててあの人を助けられないなら・・・・・・クズも一緒に助けるしかないでしょ≫

≪だからとっととどくの。そうすればジガン達はこれ以上は何もしないの。
それで・・・・・・何があったってその千々丸さんに出来る限りの事はするって約束するの≫



それでもどかない。パワーローダーは両手を構えて僕達を威圧する。それを見て、僕は大きく息を吐く。



「どけ。お前らに力がなくて助けられないなら、僕が代わりにやるっつってんだ。
幸いな事に僕達の中には傷の治療に長けた人間も居る。ソイツにも手伝ってもらう」

『うるさいうるさいうるさいっ! お前達がとっとと僕達に倒されれば済む話だっ!!』

「そんな事してる間にその千々丸とやらは死ぬぞ。こんなケンカ、してる場合じゃないだろうが。
その必死さを見るに嘘ってわけじゃないんでしょ? ここはお互い冷静になろうよ」

『いいや、してる場合だっ! そうすればエンブリオも早く出て捕まえられて・・・・・・もうそうするしかないんだっ!!
お前に何が分かるっ! 僕達のような力のない弱い人間はな、強い人間の言いなりになるしかないんだよっ!!』



その言葉に苛立つけど、それでも説得の姿勢は解かない。そのためにキツい言い方はしなかったくらいだし。



『もうどうしようもないのよっ! 私達はこうするしか・・・・・・専務の言う通りにするしかないのっ!!
脅しじゃないわよっ!? これはホントに危ないんだからっ! これはね』

「ヘイのコートと全く同じ素材で作ったパワーローダー。察するに動力源は偽エンブリオ」

『な・・・・・・どうしてそれをっ!!』



そんなのは決まっている。てーかあれだ、やっぱこの九十九っていうのは相当バカらしい。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時間は少しだけ遡る。イースターの作戦をパソコンで見ていた二階堂が、一つ気になる情報を見つけた。



ラジオ局出発直前に、もしかしたら出てくるかも知れないという事で僕達にそれを教えてくれたのよ。





「パワーローダー?」

「そうだよ。エイリアン2とかに出てくるアレ。九十九の奴が作ったものらしい。
それどうも、電気を流すとやたらと硬質化する物質を使ってるんだよ」

「・・・・・・ヘイのコートか」

「覚えがあるの?」

「かなりね」




まぁ強力な素材だし、使わない方がおかしいか。でもアレ、キャラチェンジで電撃が使えるヘイにしか使えないはずだったのに。

・・・・・・いや、ちょっと待て。ローダーにバッテリーか何かを積んで使うなら大丈夫なはずだ。消費電力もさほどじゃないし。



「ちなみに動力源は電気バッテリーに偽エンブリオ。まぁ出てくるかどうかは分からないけどね」

「一応気をつけておくよ。てゆうか、そういうのが出てきたら僕なりシルビィの領域かな」

「相手に出来るの? 耐久度を見たら普通に斬ったり殴ったりする程度でどうにかなるようなレベルじゃないけど」

「大丈夫。そういうのは普通にやらなきゃいいんだから」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「もう一度だけ言う。お前達が弱くて力が出せないって言うなら、僕達の手を使え。
今回に限りタダで手を伸ばす。まぁ、必ずなんていう確約は出来ないけどさ」

『主任、信じちゃダメですっ! この子達は敵なんですからっ!!』

「そうだね。でもさっきも言っただろうが。この件でこれ以上誰かが傷ついたりするのはごめんなのよ」



そうしたらあの厨二病発症させたクソ猫の症状が更に酷くなる。さすがにそれは勘弁なのよ。

うん、理由としてはそれくらいかな。そうじゃなきゃ、会った事もないような奴を助けようなんて思わない。



「正直ここまでやられて助けるってのは腹が立つよ。助けない方が正解だとさえ思う。
でも、そんな事をしたら僕達は本当に助けたいものを助けられない。だから、どいて」



僕は右手を伸ばす。伸ばしてまずは一歩・・・・・・自分から踏み出す。これも『勇気』だと信じて、足を動かす。



「多分ここでお前達と僕達は・・・・・・戦うべきじゃない」

『だから・・・・・・黙れって言ってるじゃないかっ! こっちこそもう一度言ってやるっ!!
弱い人間は強い人間に従うしかないんだよっ! お前達だって同じだっ!! 僕達とイースターに従えっ!!』

『私達はもうそうするしかないのっ!! 今の専務を敵に回すような事は出来ないのっ!!
ほら、そこの金髪ポニーテールのあなたは私達と同じ大人でしょっ!?』



どうやらシルビィの事を言っているらしい。今の必死さで、本気でもうそうするしかないと思っているのはよく分かった。



『だったらこの分からない子ども達にちゃんと言い聞かせてっ! 子どもは大人の言う事を聞くべきだってっ!!』

「悪いけど出来ないわね。というか、あなた達言ってる事が無茶苦茶よ」



硬い声でそう言い切った瞬間、場の空気がなぜか固まった。それでシルビィは大きく息を吐く。



「・・・・・・ヤスフミ」

「分かってる」





戦うべきじゃないんだろうね。僕達も諸事情込みでソイツを死なせたくない。

アイツらだって、ソイツを死なせたくない。だから必死になってしまう。

きっと悪党だったとしても、そういう繋がりが大切で大きいのは変わらないんだよ。



僕は瞳を閉じて意識を集中させていく。それで・・・・・・今は遠いところに居る親友に心の中で謝る。

ごめん、シュライヤ。預かったケンカは二番目になっちゃうわ。今の一番は、綺麗事を通す事だから。

さっきも言った通り、そんな経緯でソイツが死んだらあむが昼間願った通りの展開にはならないんだ。



あむは大事な仲間で、僕もやっぱり・・・・・・あむの言う通りみんなでハッピーエンドが一番だと思うから。



瞳を開いて、僕は左手をアルトの鯉口に添える。それから右手を軽くスナップさせた。





「シルビィ、時間ないし速攻であのデカブツ潰すよ。一つは任せるから」

「了解」



確かに普通なら強敵だね。物理攻撃関係をほぼ無効化だし。でも、相手が悪かった。

ここに居るのはそんな『盾』なんてあっさり砕ける矛二人。そして矛はお互いの得物を握り直しながら少し腰を落とす。



「ナナちゃん、ティアナちゃん、サポートお願い」

「分かりました」

「パパっと決めなさいよ? やたらと数が居るんだし」



まずスタートは、ティアナが発生させた多数の誘導弾。そしてナナの火球。その数、30以上。



「シュートッ!!」

「いきなさいっ!!」



赤い火球とオレンジ色の誘導弾は僕達の行く手を塞ぐ人形達を貫き、爆散させる。

その炎の中、白いたまご達が出てきて一瞬で消えて行く。それを確認する前に僕は術式を発動。



『主任、なんか向こうの子達浄化出来てるんですけどっ!!』

『えぇい、気にするなっ! 数はこっちの方が上なんだっ!!
まずは×ロット達を一気に押し込んで、消耗させて』

「それは無理じゃないかな」

「えぇ、そうね」





驚いたようにパワーローダーが『振り向こうと』する。でもその前に僕達は動いている。

まず僕はジガンのワイヤーを左右同時投擲。ワイヤーは素早くローダーの胴体に巻いた。

その上で再び術式発動。発動する術式は、当然ブレイクハウト。



ローダーの装甲表面に蒼い火花が走ったところで、ワイヤーを根本から断ち切る。

断ち切ったらその先をまたアンカーに作り替えた上で、一気に巻き戻す。

その間にローダー二体は僕達の方に振り向く。その間にも向こうで爆発音が響きまくっている。





『えぇい、何をしたかは知らないが無駄だっ! このローダーの装甲は絶対に貫けないっ!!』

『もう私達も本気でいくわっ! ・・・・・・あなた達みたいな血も涙もない人達になんて絶対に負けないっ!!
エンブリオが手に入ったらもう何もしないって言ってるじゃないのよっ! 分かってっ!? もうこうするしかないのっ!!』

『この人殺しが・・・・・・! お前らが千々丸を殺すんだっ!!』










うわ、自覚がないのって嫌だねぇ。こういう奴らを見るといつぞやのブラックダイヤや歌唄の理論が正解じゃないかと思うよ。

・・・・・・確かに弱さは必要な時もある。誰かの痛みを、苦しみを理解するのには絶対必要。

ただ例えそうだったとしても、時としてそんな弱さに負けない強さを搾り出さなくちゃいけない時もある。





弱さは優しさという強さにも変換されるけど、同時に醜さという悪にもなるから。それが今のコイツらだ。





まぁ今までの経緯を考えたらしょうがないんだろうけど、それでも・・・・・・僕はコイツらを、コイツらの『弱さ』を認めない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文達に後を任せて、あたし達八人塔の中に突入。でも、どうやら塔自体もアトラクションの一つとして作られたっぽい。

上に上がる階段かエレベーターの類を探しながら中を少し進むと、ステンドグラスの天井で覆われた広い空間に出た。

そこは柱や大きなボールもあったりして、あと床もステンドグラスの模様に似たペイントがされてる。





それを見てややとディードさんが瞳を輝かせているのはまぁ・・・・・・うん、許されるよね。










「わー、なんか楽しそー! ややこういうの大好きー!!」

「実はその・・・・・・私もです」

「え、ディードさんもなんですかっ!?」

「はい。前にミッドで暮らしてた時、学習の一環で遊園地に行った事があって」



なんでそういう言い方をするのかが今ひとつ分からないけど、ディードさんがマジでこういうの好きなのは分かった。

ただ・・・・・・だからこそちょっと残念そうな顔もしていたりする。



「ドリームエッグランド・・・・・・イースターの悪だくみになど使われてなければ、そのまま遊びたいくらいなんですが」

≪まぁ確かに、遊園地自体に罪はないですよね。本当にしっかり作られているようですし≫

「罪があるのは人間だけってか? あー、あむ。とりあえず足止めろ」

「え、なんで?」



そんな事を言いながら歩いていると、恭太郎が舌打ちしながらあたしの肩を掴んで一気に引いてきた。



「ふぁ・・・・・・あぁっ!!」



あたしはそのまま後ろのめりに倒れて尻餅をつく。それで恭太郎に文句を言ってやろうとした瞬間、あたしの前を何かが通り過ぎた。

あたしは言葉を止めて固まってしまった。えっと、今のは右から左にざーって感じ・・・・・・それでやっぱり恭太郎を見る。



「きょ、恭太郎。今の」

「だから足止めろっつったろうが。ビルト、今の見えたか」

≪えぇ≫

「僕も見えました。なにかこう、爪の生えた犬・・・・・・犬?」

【唯世、それは違うぞ。あの大きさでは犬なわけが】



そして辺りから唸り声のようなものが聴こえてくる。それに思わず身体が固まった。

だってその唸り声・・・・・・一つじゃないの。周囲からいくつも、まるで合唱でもしてるみたいに重なってる。



「おいおい、まだなんかあるのかよ」

「てゆうかこの声・・・・・・ワンちゃん?」



あ、確かにややの言う通りに犬っぽい感じがする。でも犬ってここまで野太い声出すっけ?



【てゆうか、犬じゃないような感じの声もするでちけど・・・・・・あ、みんなっ! アレを見るでちっ!!】





ぺぺの声にあたしも立ち上がりながら周囲を見た。それであたし達は思わず息を飲んだ。

まずあたし達は完全に囲まれていた。一体どうやって出てきたかはさっぱりだけど、『敵』に囲まれてた。

でも問題はその敵の正体。それは別に×ロットでも×たまでもなかった。それらは・・・・・・獣。



黒い体毛に赤い瞳を輝かせて四足で歩く犬が合計で10匹。なお、大きさは1メートルくらいある。

しかもそれだけじゃなくて、2メートル弱のゴリラみたいなのが3匹。それも色関係は犬と同じ。

あんまりに予想外な敵なので、あたしだけじゃなく恭太郎やザフィーラさん達まで固まってしまった。





「な、なんだよコレっ! コイツら中身×ロットとかじゃねぇよなっ!?」

≪サーチしましたけど、違いますね。生体反応があるので立派な生き物ですよ≫

「いやいや、生き物って・・・・・・それおかしいよねっ!!
だってこの子達、身体中から×たまの気配を出しまくってるのにっ!!










ミキの言葉で、その場に居る全員の表情がまた驚きに染まった。そしてその瞬間、この広場に咆哮が響く。

咆哮は空気を、空間を、あたし達の肌を震わせていく。あたし達は思わず両手で耳を押さえるけど、辛さがあんまり変わらない。

というか、そんな中でも聴こえるほどに大きな破裂音が聴こえた。それで上から何かがパラパラと落ちてくる。





それが身体に当たる感触がするけど、それが途端に止んだ。だからあたしは閉じていた目を開けて上を見る。

するとザフィーラさんが大人形態で両手を上げて、表情を苦しげに歪めながらあたし達の頭上にシールドを展開していた。

その青白いシールドによって、上から砕けて降り注いでいたステンドグラスは全て防がれた。





・・・・・・ステンドグラスっ!? まさか咆哮で・・・・・・嘘、そんなのさすがにありえないしっ!!





あたしが内心パニクっている間に咆哮は終わった。そして正体不明の獣達は、あたし達に向かって踏み込んだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、罪深き愚か者であるガーディアンの贖罪のために我々が用意したセクションは四つ。

一つ目は×たま達による襲撃。二つ目九十九達と×ロット。三つ目は・・・・・・動物ショーだ。

アレらは幾斗が捕まえてきたガラクタ共を大量に注ぎ込んで作った合成獣・キメラだ。





もちろんアレらもデスレーベルの力で操作可能。浄化すれば当然中の×たま達も浄化される。

そして万が一そこを抜けても、今度は幾斗が居る。これが最後のセクションだ。

既に幾斗のヴァイオリンによって、これまでとは比べ物にならない数の×たま達が集まっている。





今私達が居る展望台の周囲を見ろ。本当に素晴らしい。これだけの数を浄化すれば、おそらくエンブリオも出てくるだろう。

だが同時に、これだけの数の×たまを集めてもエンブリオが出てこないところを見ると・・・・・・どうやら仮説に間違いはないようだ。

エンブリオは×たまのマイナスエネルギーではなく、それらが浄化された際に発する波長に引かれて出てくる。





仮説が正真正銘の理論になった事が嬉しくなり、私は音叉を右手に持ったまま笑う。

そうだ、もっと来い。もっと来るんだ。所詮お前達はガラクタ。夢や友情など実にくだらないものだ。

だがそんなお前達のくだらないカスのような夢だが、一つだけ利用価値がある。





それは我がイースターのために、私のために、なにより御前のために働くという事。どうだ、幸せだろう?

そのためにお前達はたまごを持っていたんだ。だから差し出せ。そしてどんどん自分の夢に×を付けろ。

その分だけ私達がエンブリオを手にする時が来るのが早まるのだからな。あぁ、本当に愉快だ。





私は今、夢だの友情だのそんなくだらない妄想を描く罪人全てに救いの道を示している。本当に素晴らしい事じゃないか。





ひかる・・・・・・待っていてくれ。もうすぐ、もうすぐだ。もうすぐお前の望んだエンブリオが手に入るぞ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「思いっきり×ロットけしかける配置で動いてたのが仇に」



言いながらナナがロッドを振るって、また火球を撃ち出す。私はクロスミラージュを構えてとにかく連射。



「なったわねっ!!」

「ホントねっ! アイツ相手にあんな陣形取ったらアウトでしょっ!!」





あ、もうみんな分かってると思うけど一応補足ね? アイツは転送魔法でシルビィさんごと背後に回ったのよ。

アイツ、多分色々くっちゃべってる間に周囲の状態を確認した上で準備してたわね。いくらなんでもナメ過ぎよ。

アイツ・・・・・・蒼凪恭文は純粋な戦闘者。説得が通用しなかった場合に備えての二次策は、整えてて当然でしょ。



まぁ何も言わなくてもそこをちゃんと分かって合わせて動けるシルビィさんもかなりのもんだとは思うけどさ。

・・・・・・とにかく私達の仕事は、このやたらと多い×ロット達を掃除する事。もう今までとは違うから遠慮無く撃てる。

左右のクロスミラージュを動かし射線を変えつつ、こちらに迫ってくる連中を狙って引き金を引く。



その度にオレンジ色の魔力弾が真っ直ぐに飛び、×ロットの胴体を撃ち抜き爆散させる。

でもたまごを壊したりしない。ちゃんとその爆発の中からこころのたまごが出て、持ち主のところに変えるために消えていく。

本当にどういう原理でこうなるのかがさっぱりな術式なのがちょっと怖いけど、それでも戦えるのはありがたい。



それでアイツとシルビィさん達の方に行こうとしているのは・・・・・・背後を見せるバカは、遠慮なく狙い撃ち。





「クロスファイア」



周囲に10数発の弾丸を発生させて、一気にソイツら目がけて狙いを定めて引き金を引く。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」



弾丸は夜の闇を切り裂くように閃光となって、今迫ってきている一団を飛び越えるような軌道を描く。

そして二人の方に向かおうとする奴らの背中をほぼ同時に撃ち抜き爆散させる。



「うし、何気に数が減ってきてるわね」

≪当然の結果でしょう≫



普通に斬り合ったりとかするなら大変かもね。でも、残念ながら私もナナもこういう状況は得意なのよ。

私が上を見上げると、ナナは赤いマントをはためかせながら一団の上空に飛び上がっていた。それでステッキを右に振りかぶる。



「フランメン」



そのステッキの先に炎の砲弾が生まれ、ナナはそのままステッキを左薙に振るう。



「ランツェッ!!」





赤い炎の砲弾は渦を巻いた炎の奔流となる。奔流はただ直射されるだけじゃなくて、ナナの腕の動きに合わせて動く。

渦の動きに合わせた熱を含んだ風が辺りに吹き抜け、それが距離を取っている私の髪まで揺らしていく。

その渦は一団に向かって、まるで地面を薙ぐように横から襲ってきた。言うなら縦に長い津波のようなもの。



×ロット達は慌ててその地面を抉りながらも進む奔流から散開するように逃げようとする。

でも思ったよりその進行スピードが速くて、逃げ切れない20数体が派手に爆散。

それを見ながらも魔力弾を先ほどと同じ数生成。その逃げ切った奴らの動きが止まったところを狙って。





「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」



その魔力弾を放ち、胸元を撃ち抜く。そしてまた黒いボディは爆発して、たまご達は元の輝きを取り戻した上で消えていった。

なんだかんだで今ので最初に出てきたのは全て排除。私の隣にナナが降りてきて着地した。



「結構あっさりよね」

「当然よ。アンタもまぁまぁやる方だし、なによりこの私が居るんだから」



そう言いながら自信満々にステッキを右肩に担ぐナナを見て、苦笑してしまう。

・・・・・・ホント、アイツと関わってから退屈と常識って言葉がいらなくなったわ。それだけはよく分かる。



「でも」



そう言ってナナは突然に硬い声を出しながら上を見た。私も同じように上を見た。

そこには・・・・・・先ほどの×ロット達と同じ数の×たま達が居た。



「もうちょっと苦労はしそうね。アンタ、まだやれるわね?」

「当然よ」



アレ、レイジングハートから来た緊急連絡通りならあのバカ兄が操作してコレって事よね?

しかもパワーアップしてて・・・・・・私はやっぱり殴ってやろうと思いつつ、クロスミラージュを構えて。



≪Sir、少々お待ちを≫

「クロスミラージュ?」

≪ここはアレを試す時かと。作戦成功のためにも、今のSirの浄化能力はアピールするべきです≫





・・・・・・なるほど。確かにそういう作戦だったものね。出来る限りデスレーベルとやり合う組が楽出来るようにってね。

つまりここで私が浄化能力を持ってる事をアピールすれば、エンブリオの出現を狙って×たまがどんどん送られてくる。

その分向こうの本丸のガードは、ある程度は薄くならざるを得ない。ううん、これはちょっと違うわよね。



×たまは今もあのバカ兄が洗脳されてるせいで、延々と抜き出されているんだから。

だから薄くならなくても、これ以上厚くなる事だけは避けられると言った方が正解。

納得したから、私は一旦構えを解く。それに合わせるようにクロスミラージュは何も言わずに待機状態に戻る。





「ならいくわよ、クロスミラージュ」

≪Yes Sir≫





私は左手で取り出した新しいセブンヴィーナス・・・・・・インフィニットヴィーナスを取り出す。

なお、今命名した。とにかくそのインフィニットヴィーナスに、クロスミラージュを挿入。

クロスミラージュはその大きさを一回り増して、片面に無限の銃を持つ女神の絵を持つ一枚のカードとなった。



それからクロスミラージュを軽く前に放り投げる。クロスミラージュは私の前面で回転してオレンジと白が混じった輝きを放つ。





「・・・・・・コードドライブッ!!」

≪∞Gun Mode Ignition≫





クロスミラージュが白い光になり、それが二つに分かたれる。その内の一つが私の胸元に直撃。

そしてその光は、私の身体を包み込む濃い緑色の前が開かれた状態のコートになった。

その各所には白いラインが入っていて、全体のデザインのアクセントになっている。そして残った光がまた二つに分かれる。



それは私の手元に来て、元のクロスミラージュの形になって光が弾ける。

当然弾けた光の中からは私の相棒が出てくる。そして最後に、コートが大きくはためく。

そしてコートの内側から白い長方形の板のようなものが合計12個出てくる。



手の平サイズだったそれは私の周囲で一回転すると、大体70センチ程度のサイズに変わった。

でも変化はまだ続く。その分厚い板の上方の入り口が開いて、そこから次々とあるものが飛び出す。

飛び出したものは今私が両手で持っているクロスミラージュと同じ形のもの。というか、全く同じ物が12丁。



それらは私が持っているものと違ってグリップとトリガーガードを収納したような形で私の周囲に浮く。





≪・・・・・・インフィニティ・ガンモード、起動終了。ほぼシミュレーション通りに可動出来ます≫

「そう、なら良かったわ」





インフィニティ・ガンモード・・・・・・クロスミラージュファンタズムの新しいモード。

以前のセブンガンモードとの最大の違いは、その銃の数。これ、なのはさんとかが使ってるビットと同種なのよ。

構造的にはクロスミラージュと変わらないから、私がこのビットをそのまま使う事が出来る。



ううん、これらの銃全てがクロスミラージュと言っていいと思う。カートリッジも同じ数入れてあったりする。

だから基本的な可動はそのカートリッジを使用してるの。・・・・・・だから15発なんていう装弾数なんだとびっくりしたわ。

あとはこの分厚い板ね。こっちはそんなクロスミラージュ達を収納・防御壁として使えるビットなの。



名称はホルスタービット。ヒロリスさんがこだわったために全て魔剣X製。そしてアイツは当然大変だった。

しかもコレ、カートリッジ入れ替え機能まで付けてあって・・・・・・どんだけ便利なのかと言ってやりたい。

ただまぁ、このモードも弱点がないわけじゃないのよね。えぇ、あるのよ。それもある種致命的とも言える弱点が。





「クロスミラージュ、やっぱり連続稼働時間は」

≪今の私達では、フルでは20分が限度です。そこは注意を≫

「分かってる」





それは稼働時間に制限がある事。性能が無茶な分、ビットの操作や処理関係がホントに大変なのよ。

ここの辺りの対策を考えて整える時間もなかったから、そういう意味ではこのモードはまだまだ未完成。

普段ならともかく、この状況で時間稼ぎでしょ? どこまでやれるか・・・・・・正直不安もあるわ。



ただそれでも、私は不敵に笑って周囲のガンビット同様、腕を動かして銃口を×たま達に向ける。





「私にだってね、夢があるのよ」

≪Sir?≫

「彼氏だって欲しいし、女子力上げたいし、もっと色んな事も勉強したい。
・・・・・・だから、アンタ達の痛みが分かる。自分に×付けなきゃいけない時の気持ちが分かる」



私だって同じだ。出来ない事があって、それはやりたい事で、だから苦しくて色々失敗もしてさ。

それでも追いかけてきた夢が実は空っぽだったって分かって、本気でヘコんで・・・・・・だから分かる。



『ムリ』

『ムリムリ』

『ムリムリムリムリ』

『ムリムリムリムリムリムリムリ』

『ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ』



分かるから、ここに居るのかも知れない。分かるから、今空から響き続ける『ムリ』という声に首を横に振れる。



「ムリじゃないわよ。誰にだって、アンタ達にだって、私にだって、夢を追いかけて叶える権利がある。
どんなに無茶な夢でも、どんなに小さな夢でも、私達には・・・・・・その権利がある」





権利だから、叶うかどうかはやっぱり別問題だったりするのが悲しい。

実際、私だって言ってても考えててもそういうのはやっぱりよく分かんない。

今自分がやりたい事が本当に『夢』と言えるのかどうかも不安がある。



でもだから・・・・・・だから引き金を引きたい。考えて、悩んで、迷うための時間を守るために。

私にはもう『ハテナ』なんていらない。私は自分と必死に向き合って自分の夢を探したい。

そんな今まではどこかで欠けていた時間を守りたくて・・・・・・私はこのケンカに首突っ込むって決めたんだから。





「借り物の力だけど、それを振るう事でアンタ達の痛みがなくなるなら・・・・・・私は引き金を引く。
アンタ達は私と同じだから。だから伝えたい。私達は、夢を見ていいんだって」

『ムリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!』



声を上げながら、まるで何かの川の流れのように×たま達がこちらに迫る。私は足をしっかりと止めて・・・・・・声をあげる。



「無理じゃないわよっ!!」



私の周囲のガンビットの銃身が僅かに動く。クロスミラージュが銃身を操作した上で狙いを定めてくれる。

それで私は、躊躇い無く言葉通りに狙いを定めて引き金を引いた。



「さぁ・・・・・・乱れ撃つわよっ!!」





引き金を引いた瞬間、周囲のガンビットと私の両手のクロスミラージュの銃口から弾丸が放たれる。

それはまるで流星雨のように夜の闇を切り裂き、×たま達の一団の先に着弾。そこで大きく爆発が起こる。

その時発生した爆煙の中で自分達と同種の×たま達が浄化されても他の×たま達は構わずに私に突っ込む。



私はナナと二人左右に散開。私は右に走りながら、×たま達の突撃を避ける。

すると私に向かって近づいてくるのが10数個。私がそれを見て足を止めている間に、ホルスタービットが前面に展開。

四個のビットをくっつけるようにして、大型のシールドを形成。ただし僅かに角度を横に斜めにしている。



その結果、光に包まれながら突撃してきた×たま達はシールドによってその角度の分だけ突撃の方向を変えてしまう。

そうやって突撃をやり過ごしたところを狙って、私は右のクロスミラージュをその一団に向ける。

すると六丁のビットもすかさず私と同じようにあの子達を狙う。私はそれに満足したように笑いつつ連続で引き金を引く。



そうやって放たれた弾丸達は、こちらに向かって方向転換している最中だった×たま達を次々と撃ち抜く。

今度は左のクロスミラージュを動かすと、残っていた六丁のガンビットが同じように動いてくれる。

次の狙いは私達に迫っていた別の集団。私は躊躇い無くまた弾丸を放ち、先ほどと同じ数×たまを撃ち抜いた。



その爆発に構う事なく、また私達に向かってきた奔流に全ての銃で狙いを定める。・・・・・・これ、相当やりやすいかも。

機能ありきになってるのが少し怖い部分ではあるけど、単独での戦闘力は本当に上がってる。

それでも怖くなっちゃうのは、私がまだまだこの新モードに使われてる感じがするからって事かしら。



つまり完全には使いこなしていない。なら・・・・・・この最初の戦闘で、出来るとこまで使いこなしてやる。





「ほらほら、まだまだいくわよっ! もう私達は全員、最後までクライマックスなんだからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「血も涙もない? 私達がその人を殺す? それは心外ね」



ナナとティアナが暴れてくれてるおかげで、僕達はこっちに集中出来る。

だからこそシルビィだって余裕だしながらそう言って両手で銃を構えられる。



「ホントホント」





僕も左手のジガンからダガーを出して、それを腕を逆風に振るって、九十九が乗っていると思われるローダー目がけて投擲。

シルビィはそのまま萬田とか言う奴が乗っていると思われるローダーに向かって発砲。

乾いた発射音が響いた瞬間、ローダーの胴体に小さな穴が空いた。そこは僕の方も同じく。



ダガーは確かにローダーの搭乗員をガードしているであろう装甲を貫いた。





『『・・・・・・え?』』

「私達は血も涙もないんじゃないわ。私達は・・・・・・あなた達みたいなバカには優しくないというだけよ」

「ある人はこう言いました。『ダダをこねるだけのバカは、なまじ優しくするからつけ上がる』と」



某フレイム・ドリームの名言だね。今ならそう言いたくなる気持ちが分かってしまうのが不思議・・・・・・いや、ないな。

というかヤバい。もしかしたら僕は説得の仕方を激しく間違えたかも。アレが名言とか人として腐ってるって。



≪つまりそういう事です。私達はあなた達のバカに付き合ってる余裕はないんですよ≫



やめてー! なんか今すっごい反省モードに走り始めてるから余計突き刺さるのー!!



『い・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



そのままローダーが足を動かさずに走り出す。というか、足の裏側にATみたいなローラーがあるらしい。

それで走行して、僕達に向かって萬田機が勢い任せに特攻を仕掛けてきた。



『おい萬田っ! ・・・・・・クソっ!!』



萬田機が右のアームを振りかぶる。シルビィはそれを見て、息を吐きながら一歩踏み出す。

その上で次の瞬間に振りかぶられたアームを、左手で受け止めた。



『な・・・・・・!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なんだ、思ったより力がないのね」



私の足元のコンクリが僅かに砕け、ローダーは走行しながらも更に押し込む。でも私は微塵も動かない。

もちろん怪我の類も全くしていない。ローダーの駆動音が辺りに響き渡るけど、私は全然平気。やっぱり動かない。



『そんなっ! このっ!! このっ!!』

「無駄よ」










そう言って私は右手の銃をローダーに向けて、素早く引き金を五回引く。

瞬間的に発砲音が響き、銃口から放たれた弾丸は見事に胴体に穴を開けた。

それでローダーの動きが止まり、まるで怯えたかのように私から離れる。





また甲高い駆動音と走行音を響かせながら元の位置に戻った。





そしてその背後で炎の渦が派手に・・・・・・ナナちゃん、飛ばしてるなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



萬田のそれはそれとして、九十九も僕の方に突っ込んで来た。





そのままじゃシルビィの邪魔になると思った僕は、少し移動を開始。





右にある程度の距離走ると、ローダーは左のナックルを僕に向けてきた。










『ふははははははははははっ! バカはお前だっ!! 行け、ロケットパンチッ!!』



次の瞬間、黒塗りのアームの付け根が光り、僕に向かって射出された。

アレはどうやらブーストの類らしい。僕はため息を吐きながら足を止める。



「その言葉」





足を止めてからその場で大きめに左に跳んだ。その瞬間、アームが一気にその爪を開いた。

でも僕はアームの攻撃範囲外に居るので問題なし。続けて右のアームも飛ばされてくる。

それでアームと腕を繋ぐように太めのワイヤーがあるのが見えた。なので僕はそのワイヤーに向かって踏み込む。



踏み込んでロケットパンチの第二射の射線軸から退避しつつ、僕はアルトを抜き放ち逆風に振るう。



その瞬間、夜の闇を切り裂くように蒼い閃光が生まれ、アームと腕をつないでいたワイヤーが断ち切れた。





「そっくりそのまま返してやるわ」



なお、第二射のロケットパンチは僕の背後を取って地面を大きく砕いただけ。つまりは外れだよ。

操り糸を断ち切られた左のアームも同じように地面を砕きつつもその動きを止めてる。



『くそっ!!』





ローダーはその身体を反時計回りに回転させ、展開させたアームを振り回すように動かしてきた。



鈍く空気を切り裂くような音をさせながら、重い金属の塊が僕の方に迫ってくる。



僕は大きく上に跳び、その薙ぎ払いを回避。空中を飛びながらもリインが術式を発動。





【・・・・・・そこですっ!!】





白と青が混じったような色合いのベルカ式魔法陣が地面に浮かび上がる。

その場所は、薙ぎ払いで何も無い空間を動き続けるアームの軌道上。

魔法陣の上から白いもやのような冷気が浮かび上がり、その瞬間その場の空気中の水分が急速凍結される。



振り回されるアームはも当然ながらその氷に派手に激突。

ただ、それでもローダーのパワーやアーム自体の惰性は全て止める事は出来ない。

氷は次の瞬間には砕け散る。ここで大事なのは、激突によって勢いが殺された事。



スイングの速度を緩め、地面に落ちてそれを削りながらも動くアーム近辺を狙ってリインが更に動く。



僕の周囲に約30の氷の短剣が生まれ、それがアームとそこから出ているワイヤーを狙って一斉発射される。





【フリジットダガー・スペシャルッ!!】



発射された弾丸は次々と破砕音を響かせながらも着弾し、地面に穴を開ける。・・・・・・狙いが乱暴な。

ただそんな中でもワイヤーは切れたらしく惰性でアームはあらぬ方向へと飛んでいった。それから素早く僕達は着地。



『な・・・・・・何っ!? くそ、こうなったら』



ローダーの両腰の辺りから新しい駆動音が響き、何か長方形な砲身のような物が出てくる。



『ふはははははっっ! コレで』



僕はバカが笑っている間にアルトを軽く上に放り投げる。それから両手でジガンのダガーを再び出す。

ブレイクハウトをダガーにかけて、そのままその砲身に向かって腕を逆風に振るって投擲。



『終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「お前がな」





砲身の先というか、砲門に×たまが出す風なんかと同じ色の光が点って撃ち出されようとする。

でもその光に向かってダガーが突き刺さる。その瞬間を狙って僕は左の指をパチンと鳴らす。

右手で上から落ちてきたアルトを受け止めつつ、僕は左に移動。そして次の瞬間、両腰で爆発が起こる。



その発生源は当然あの砲門から。その爆発を受けて九十九のローダーがバランスを崩して後ろのめりにこける。





『な・・・・・・なんでだっ!!』





ブレイクハウトでダガーを変化させて、砲門に蓋をしたのよ。てーかちょっと甘いわ。

・・・・・・例えパワーがあっても、例え特殊な能力が使えても、ここは戦場。そして戦ってるのはお前。

今までの動きを見るに、九十九は戦闘に関しては完全に素人。だからあっさりと動きが読めた。



でもきっとこのバカはそんな事も分からない。だから舌打ちの音を漏らしながらローダーを立ち上がらせる。



それですぐに後ろに下がる。そしてその隣に萬田とか言う奴が乗っているローダーが来る。





『おい萬田、一体何をしているんだっ! 遊んでるんじゃないっ!!』

『それは主任でしょっ!? というかあの、違いますっ!!
最大出力で突撃したのに・・・・・・本当に受け止められたんですっ!!』



なんか涙声というか怯えた声が響いている間に、シルビィは銃身に収めている弾倉を展開。

それから使用済みの薬莢を排出した上で、スピードローダーで素早くリロード。また弾倉を収めた。



『そんなバカな事があるかっ! このBYUのパワーを考えろっ!!』



うわ、このローダーにもBYの名前付けてくれてるわけですか。それはまたムカつくわ。



【というか、バカなのですよ。恭文さんとシルビィさんにそんなガラクタなんて通用しないのです】

『なんだとっ!?』

「僕達は矛だからね。どんな盾でも砕く矛だ」



そう言いながらもアルトを鞘に収めて、パスを取り出す。それを開いてカードスロットを展開。

そこに一枚のカードを収めた上で、スロットを閉じてからパスも閉じる。



≪Final Attack Ride Set Up≫

「あなた達のバカさ加減を守る『盾』を砕いて、その上で今傷ついているその人を助けに行くわ。
だから・・・・・・ごめんなさいね? 本当に即行で終わらせてあげる」



左手を軽くスナップさせて、胸元まで上げる。シルビィは改めて銃口を向ける。



【「「・・・・・・さぁ」」】



そして僕が左腕を突き出し連中を指差した瞬間、夜の闇の中に風が吹き抜けた。



【「お前達の罪を、数えろっ!!あなた達の罪を、数えなさいっ!!」】

「おとなしく縛につきなさいっ!!」



僕達はそこまで言って、ほぼ同時に踏み込む。それを見て二体の機械の巨人はまるで怯えたかのように後ずさりする。

それでも萬田のローダーは腰から砲門を出して・・・・・・あぁ、こっちにも付けてあったのね。



『ふざけるなっ! 僕達はただ専務の言う通りにしただけなんだぞっ!?
それなのに邪魔をするお前達が悪いんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

『そうよ、私達は悪くないわっ! 弱い私達にはこうするしかないのっ!!
だからこれはあなた達のせいっ! 全部あなた達のせいなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』





そんな事を抜かすので、僕はさっきからずっと取っておいた取っておきの札を切る。

走りながらも左手の指を鳴らすと、ローダーの前面の装甲に蒼い火花が走る。そしてそれらは全て一瞬で粒子になる。

するとそこには驚いた顔をしている短めの髪に血のついた白衣を着た男が居た。



その驚きは機体にも伝わったかのように動きを止める。僕はそのまま右手で持っていたパスをベルトにセタッチ。





≪Full Charge≫



ベルトのバックルから生まれた蒼い火花が右足に走り、僕の足に蒼い光が灯る。



【「必殺・・・・・・僕達の必殺技っ!!必殺・・・・・・リイン達の必殺技っ!!」】



そのまま跳躍して、がら空きになったコクピットに向かって飛び込みながらも右足を突き出す。



【「クライマックスバージョンッ!!」】










突き出した右足は九十九の胴体を捉え、九十九は目と口を開き切って大きく息を吐く。

そして僕達の蹴りの衝撃に圧されるようにローダーは後ろのめりに倒れ・・・・・・ううん、軽く吹き飛ぶ。

仰向けに倒れたローダーが地面を削り、火花を散らしながらも滑る様子を見つつ僕達は着地。





そしてローダーがその動きを止めた途端、コクピットから蒼い冷たい息吹を含んだ爆発が起きる。





それと同時にローダーの関節部から黒い煙が上がった。どうやら機能停止らしい。・・・・・・うし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「甘えた事抜かしてるんじゃないわよ」



走りながらも私は腰の砲門に向かって銃を二連射。次の瞬間、砲門内部で爆発が起こる。

でもヤスフミがやったみたいに破壊したわけじゃなくて、砲門が歪に膨らんだだけ。うーん、まぁしょうがないか。



「魔力バッテリー、オン」





とにかく走りながらもバッテリーをチャージ。私は素早く銃口をコクピット前面に向ける。

普通ならともかく、今なら撃ち抜ける。だってあそこは・・・・・・最初にヤスフミがブレイクハウトで装甲を作り替えてるんだから。

もちろん話に聞いているような無茶な装甲じゃない。ダガーの投擲でも十分貫ける程度の強度しかない。



それがヤスフミの矛の一つ。そして私の矛の一つはコレ。だから意識は絶対に外さない。

例え相手が左の腕のロケットパンチを撃って来ても、私はそれを左の後ろ回し蹴りで遠慮無く蹴り飛ばす。

横に落ちたロケットパンチが響かせる轟音を気にする間もなく、次は右の腕が向けられる。





『この・・・・・・この化け物めっ!!』



私はその言葉を鼻で笑いながら、射出された右のアームを左手で受け止める。



「知ってる? 化け物かどうかは、力や身体の作りどうこうじゃない。心根で決まるのよ」



ただ弱いだけならまだいい。弱さは誰にでもあるから。でも、弱さのために心が醜くあってはいけない。

とにかく受け止めたアームを改めて軽く掴んで、右側に乱暴に放り投げた。そして銃口を向ける。



「ここで言い訳し続けるあなた達は、誇りを失っているあなた達は、自分の弱さに負けて醜くなった化け物の典型例よ。
・・・・・・確かに事情があったのかも知れない。どうしようもなかったのかも知れない。私はただ強さを押しつけてるだけかも知れない」



銃身に軽く青い火花が走っているのは、チャージがとっくに完了している証拠。だから私は、引き金を引ける。



「でもあなた達の『弱さ』は認めない。それは、不幸を撒き散らすだけの害悪よ。・・・・・・ライオット」



引き金を引いた瞬間、銃口からバレーボールサイズの青いエネルギー弾が飛び出した。



「シュート」



それは鋭く空気を切り裂きながら真っ直ぐに飛び、ローダーの装甲に着弾。爆発する。



「きゃあっ!!」





その爆発により黒い破片が辺りに飛び散り、爆煙の向こうに右手で顔を押さえる女の人が見えた。

私は素早く弾倉を展開させて、残っていた全ての薬莢を捨てる。それから左手で取り出した弾丸を一発だけ弾倉に入れる。

右手を振るって弾倉を銃身に再び収めてから、また右手でその爆煙の向こうを狙う。



先ほど捨てた薬莢が、足元からジャラジャラと落ちる音を響かせる。

次の瞬間右側・・・・・・ヤスフミの居る方から冷たい風が吹き、爆煙を一気に晴らす。

そして萬田という人は身体を震わせ、私の方を怯えたように見た。



時間にすれば一瞬。本当に一瞬だけ私達は視線を合わせて動きを止める。



でもまた風が私達の間に吹いたその瞬間、私は唇を動かす。





「・・・・・・Good NIght.Monster」










引き金を引くと、聴き慣れた発射音と共に込め直した銃弾が発射される。

それはあの女の胸元に直撃して、女は目を一度見開くとそのまま座席にもたれかかるように倒れた。

それと同時にローダーも完全に動きを止めた。私は周囲を警戒しつつ軽く息を吐く。





・・・・・・あ、今撃ったのは麻酔弾よ? 強力なものでまる一日ぐっすりなタイプ。

魔法無しで魔導師とやり合ったりする場合、やっぱりこういう武装も必要だから常備してるの。

もちろん直撃しても死んだりするような事はない。まぁかなり痛かったとは思うけど。





とにかくこれで邪魔者はお掃除完了っと。ちゃんと動けないように処置した上で次に行きましょ。




















(第120話へ続く)




















あとがき




恭文「というわけで、同人誌版の編集頑張ってます。修正とか頑張ってます。
今回のお話はしゅごキャラのアニメ第99話『思いは一つ! ガーディアンの戦い!』を参考にしております」

フェイト「でもヤスフミ、あのローダーや動物達って」

恭文「ローダーは元々考えていたので、動物関係はアニメと原作に出てたのなんだ。
ただしアニメではワンコ一匹だけだったけど。オリジナルはあのゴリラだね」



(ちなみにクイーンワルツも原作通りの合体技です)



フェイト「あ、そうなんだね。でもあれがBYUって」

恭文「ホント失礼しちゃうよねー。僕の愛らしさが全面的にカットだしさ。
・・・・・・というわけで、本日のお相手は珍しく居残り組な蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。そう言えばヤスフミはこういうの初めてだよね」

恭文「うん。まぁ九十九との絡みというか一応の決着の関係があるからこうなったそうだけどね」



(やっぱりここはちゃんとしないとダメかなーと)



恭文「とにかく僕とシルビィ達の方は一応でも問題なく決着。
で・・・・・・次回は更に先に進んだあむ達の続きです」

フェイト「あのキメラ達とって事だよね。でもあれだけ人数が居たのに結局ぎりぎりな感じって」

恭文「何気に質量戦で来られてるしね。その上デスレーベル止めない限りは無尽蔵と見ていいし。
でも×ロットに妙なローダーに・・・・・・連中どんだけ事前に×たま確保してたんだろ」

フェイト「あそこに集まってたのを急いで使った可能性もあるよね。
放送が開始されてからヤスフミ達が到着するまで、多少のラグはあるから」



(どちらにしてもここで一気に戦力が確保された状態だったりします。
何気に質量的にはインフレ状態だから、とっととこの状況は打開したい)



恭文「でも作者、次回からはそこの辺りは多少打開されるでしょ。ほら、ここからは数じゃなくて質の勝負になってくから」

フェイト「あ、そう言えばあのキメラやデスレーベルもそっち方向になるんだっけ」



(うん、一応はそういう方向)



恭文「だけどフェイト、イースターの作戦ってさ」

フェイト「うん?」

恭文「×ロットはまぁ原作で出てきた×たまで動く人形の延長線上だからアレとしても・・・・・・・凶悪だよね)

フェイト「・・・・・・そうだね。おねだりCDの時も相当だったけど、これも中々に凶悪な描写が多数あるよ」

恭文「マジで悪の組織なイースターとの決戦は続く感じだけど、今回はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

フェイト「日焼けして褐色の肌とかアリかなと思うフェイト・T・蒼凪でした」

恭文「なんでまたそれっ!?」

フェイト「だってヤスフミ、『レイチェル・ランサム』って人が好きだって。褐色キャラが好きだってアルトアイゼンが」

恭文「・・・・・・それは違うから。それGジェネのオリジナルキャラだから」










(どうやら蒼い古き鉄は初期の頃からあのキャラがお気に入りらしい。
本日のED:米倉千尋『ガンダムに愛を込めて』)




















ティアナ「というわけで、ついに登場したインフィニティ・ガンモード。
だけど、完全に使いこなせてるわけじゃないのよね。問題点もあるし」

恭文「そういう描写だね。それで実際やってみてちょっと分かったけど、どっちかっていうとこれは射撃戦能力が強化される形態だよね。
そういう意味ではセブンガンモードとはまた別のベクトルでのパワーアップだし・・・・・・まぁバランスをちょっとずつ取ってこうか」

ティアナ「それもそうね。というか、時間制限に関してはこのままでもよくない? ほら、それだけでバランス取れるとこもあるし」

恭文「それは確かにね。でもティアナ、そんなに彼氏欲しいの?」

ティアナ「欲しいわよ? アンタが私を第四夫人にしてくれないから」

恭文「出来るわけないでしょうがこのバカっ! てーかそれ本編でやるとかないからっ!!」

ティアナ「大丈夫よ。じゃあアンケートやる? 私が本編で第四夫人になっていいかって」

恭文「それはやめてー! ここの読者は普通に悪乗りして認めそうだから怖いのー!!
てゆうかそんなに乗り気っ!? そんなにIKIOKUREるんが怖いんかいっ!!」

ティアナ「・・・・・・怖いに決まってるでしょっ!? それなら私は躊躇い無くアンタとエッチ友達とかするわよっ!!
えぇ、IKIOKUREないならいいわよっ!? そこから一気に第四夫人になってエロエロ頑張るからっ! はい、問題ないわよねっ!!」

恭文「お願いだから自分を安売りしないでー!!」










(おしまい)






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あきゅろす。
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