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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第28話 『やりすぎ、ノリすぎ、暴れすぎな、今を覆すクライマックス・カウントダウン』



えー、みなさん。すみませんが、今回は初っぱなからぶっ飛んでます。ぶっちぎりです。ここ、絶対に了承しておいてくださいね?










それでは・・・そんな今回のお話、スタートっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・日付は1月10日。ようするに、試験当日。試験会場は廃棄都市部。見事なゴーストタウンである。





そして、僕とアルトは・・・その上空で頭を抱えていた。いや、アルトは頭無いけど、気持ちとしてはそんな感じ。





そんなのはお構い無しで、いい感じで風が吹きすさび、これからの時間がタダで済まないことを感じさせる。





というか・・・済まないだろうね。その上空に、飛行魔法で佇みながら、強く思っていた。





今、僕達がそう思い、頭を抱えている原因はある。・・・試験内容だ。





試験内容は至って簡単。魔導師一人を撃墜せよ。これだけである。





なお、これは滅多に出ない課題だそうだ。内容だけなら、あんまりにも簡単過ぎるから。





ただし、落とし穴がある。それも、デッカイのが。





それは、相手の魔導師・・・仮想敵を勤めるのが、教導隊所属のエース・・・オーバーSランクの魔導師だと言うこと。





ここまで言えば、賢明な方々は気付くだろう。この試験がどういう形で行われるのかを。





つまり、実際に戦いながら、総合技能を見るそうだ。それも、教導・・・戦闘のプロが、本気を出した上で。





そういう訳なので、場合によっては勝っても厳しく採点された結果、ピンハネされることも多いとか。





まー、結論を言うと、この課題はその内容と反比例して、非常に難易度が高いということだ。だからこそ、滅多には出ないらしい。





・・・試験内容を聞いた時、昨日エリオとお風呂で話していた『JS事件による、局内の綱紀粛正』が原因じゃないかとちょっと思ったのは、内緒である。





ま、ここは別にいい。正直、僕の運の無さを考えると、来るかなと予想と覚悟はしてた。





うん、覚悟を決めてはいたよ? いたん・・・だけどさ。





なんで選りにも選っておのれが居るっ!? 予想飛び越え過ぎて固まったわっ!!




















「・・・端末でランダムに選定したら、出てきたんだって」



いや、そういうことじゃない。普通顔見知りと知ってたら、こういう場に持ってこないでしょうが。

それ以前に、後遺症後遺症っ! どうなってんのよ、教導隊っ!!



「私も断ったんだけどね、先輩方に怒られちゃった。『今ここでやらないのは、知り合いに手心を加える教導官と認めるのと同じだ』・・・てね。
あと、身体も・・・無茶苦茶しなければ問題ないよ」

「・・・そう、そりゃいい先輩方だね。良すぎて良すぎて、本気で感謝したいわ。今度ぶぶ漬けでもご馳走するって伝えといて」

≪しかし、見事にジョーカーですね≫





そうだね。でも・・・だ。負ける訳にはいかない。ううん、コイツだけには、絶対に負けたくない。



場合によっては・・・出さないとダメか。





「恭文君」

「なに?」

「私・・・加減しない。教導官として・・・ううん」



そう言って、空中で・・・構えた。手にした不屈の心を。



「そんなの、私達の間では邪魔だよね。私として、全力でぶつかるから。もちろん、採点はキッチリした上でね」

「とーぜんでしょうが。そうじゃなきゃ、潰し甲斐がない。・・・あと」

「うん」

「楽しむよ。勝ち負けはともかく、せっかくの最高のシチュだ。そうしなきゃ・・・損でしょ」



アルトを構えながら・・・笑って言う。うん、笑うのよ。だって、楽しいから。



「そうだね、楽しもう? それじゃあ・・・!」

「始めますかっ!!」










・・・こうして、試験は開始された。僕が合格する最低条件はただ一つ。





高町なのはを・・・倒すこと。ただそれだけ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第28話 『やりすぎ、ノリすぎ、暴れすぎな、今を覆すクライマックス・カウントダウン』




















・・・さて、どうする? ま、行くしか無いんだけどさっ!!










≪Flier Fin≫





久々登場の飛行魔法。・・・ま、いいでしょ。使えるもんは何でも使ってくのよ。



というわけで、突撃っ! だけど、簡単にいくわけがない。





≪Divine Shooter≫





構えたレイジングハートから生まれたのは、十数発の桜色の誘導弾。迫ってくるそれらを、アルトを振るい、切り払いながら直進する。

だけど・・・。なのはは距離を取る。取りつつまた撃ってくる。



やっぱ、接近を許しちゃくれないか。そうだよね。僕の得意レンジだし。

追いかけてくる誘導弾を、動きを止めず、斬り払う。足を止めるのは、絶対に無しだ。止めた瞬間に、砲撃がくる。



でも、それは・・・!





≪Stinger Snipe≫





向こうも同じっ!!



シューターを斬り払いながら、詠唱して撃つのは、僕の得意魔法。青い光が、なのはを追いかけて行く。

そのまま、僕は最後のシューターを斬り払う。で、フライヤーフィンを羽ばたかせ・・・突撃っ!!



なのはは、スティンガーに追われつつ、こちらへも警戒を向けてくる。このスティンガーは、現在僕の操作は受けてない。アレンジ版だ。

熱量で自動追尾するプログラムを仕込んでいる。だから・・・。



前後から挟み込むなんていう攻撃も、出来るわけですよっ!!





「鉄輝・・・!」



魔力を込め、何時ものように鋭い刃を打ち上げる。



「一閃っ!!」



僕は、アルトを上段から打ち込むっ!!





≪Round Shield≫





だけど、簡単にはいかない。なのはは、右手を前・・・スティンガーへと向け、左手を後ろ・・・僕へと向け、シールドを二つ展開。

カートリッジを使った上での斬撃と針を、難なく受け止めた。



つか、固いっ! あーもうこのバカ装甲がっ!!



斬るのは無理。そう判断して、アルトを引く。で、すぐに術式をえい・・・



視界の端に桜色が見えた。なので、下がるっ!!



僕が数メートル下がると、それまで僕が居た位置を、二つの弾丸が通りすぎる。くそ、誘導弾を隠してたか。いや、それだけじゃない。



レイジングハートが変化した。音叉を思わせる形に。その先を僕に向ける。





≪Short Buster≫





次の瞬間、僕へと砲撃が飛んだ。左へ回避。うわ、ギリだったし。僕のすぐ脇を、桜色の砲撃が通り過ぎた。

威力を殺したスピード重視の砲撃か。まず当てることから考えた?



でも、当然それで終わらなかった。レイジングハートから、カートリッジが消費される。





≪Accel Shooter≫






一気に30発もの魔力弾が生まれた。それが、僕へと放たれる。



とりあえず、これっ!!





≪Stinger Snipe≫





またアレンジ版を放つ。だけど・・・スティンガーに数発のアクセルが殺到。それで潰された。くそ、読まれてるっ!?



さすが、腐っても教導官。簡単にはいかないか。なら・・・。ここはっ!!



僕はそのまま動かず、殺到するアクセルを・・・受け入れる。



次の瞬間、アクセルが着弾。爆発が空間を支配した。




















≪Axel Fin≫










・・・生まれ変わった青い翼が舞うと、僕はなのはの後ろに移動した。





だから・・・移動しながらカートリッジを3発消費。刀身を包むのは、凍れる魔力。

背後はがら空き隙だらけ。上段から、アルトを打ち込むっ!!





≪Flash Move≫





・・・え? からぶったっ!? つか、なのははどこっ!!





≪Divine Buster≫

「ディバイン・・・!」





聞こえてきたのは、足元から。つーか下。確認するより速く、僕は・・・その声の発生源へと、突っ込むっ!!



発射体制はバッチリ。もう撃てる。というか。





「バスタァァァァァッ!!」





放たれたのは、砲撃と言う名の魔力の奔流。・・・まだ。



目前へと、それは迫る。・・・まだ。



奔流の先との距離が、あと1メートルを切った。・・・今っ!!



僕は、右へと僅かに移動。



バスターをスレスレに避けつつ、全速力で突撃っ! バスターがジャケットとフィールドを掠めるけど、気にしないっ!!



現在、なのはは撃ち終わった直後でノーガード状態。これならっ!!





≪Protection Powered≫





・・・無駄だよ。何がこようと。





「氷花っ!」





そんなの関係無いっ! ただ・・・ぶった斬るだけだっ!!





「一閃っ!!」





上段から、真一文字に打ち込んだ凍れる刃は、バリアを真っ二つにした。そして、その刃はそのままなのはへと・・・。



次の瞬間、爆発した。



その元は、僕が斬ったバリア。挟まれる形で爆発を受け、攻撃がストップした。まさか、バリア・バーストっ!?

その隙を見逃すなのはじゃない。当然、レイハ姐さんを構えて、零距離・・・いや、少し下がりつつ。





≪Short Buster≫





抜き打ちで、ぶっぱなすわけですよ。普通の回避・防御、暇がない。



だから・・・反射的にアルトを打ち込んだ。

スピード重視の砲撃だったから良かった。斬られながらも攻撃する意志を消さない魔力にジャケットを焼かれながらも、僕は砲撃を斬り裂く。



・・・今度はこっちの版だ。一気に懐へと踏み込む。

飛び込みながら・・・カートリッジを3発消費。左手に生まれた青い魔力のスフィアを、撃つっ!!





「クレイモアっ!!」










カートリッジにより、巨大になった青い魔力スフィアが、全て散弾となり、なのはを襲った。





そして、爆発。それになのはは、飲み込まれた。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「や、恭文・・・なのはさんに躊躇いなくクレイモア撃ちましたよっ!?」

≪そりゃ撃つだろ。そうでもしねぇと、ボーイは勝てないしな≫

「相手はあのエース・オブ・エースだ。躊躇ったら、そこで終わるよ」

「・・・つか、始まって数分経って無いのにこれ? 心臓に悪いわよ」





・・・うん、すごく悪い。見ているだけでハラハラする。



ここは、六課隊舎のロビー。そこでみんなで、ヤスフミの試験を見ていた。でも・・・。





「まさか高町教導官が来るとは」

「えぇ。つか、アイツはまた・・・」

「はやても知らなかったの?」



はやては部隊長なのに・・・。



「うち、教導隊の方の要請で、高ランククラス試験の相手勤めるとしか聞いてへんのよ。で、リミッターも限定的に解除するから、それも許可して欲しい言われて・・・」

「いや、それで・・・って、無理か。今日試験受けるのは、やっさんだけじゃ無いしね」

「なにより、試験内容が漏れたら大変ですよ・・・。なぎ君となのはさんは身内ですし」

「・・・いや、それでも八神部隊長にも知られないように話を進めるって、どんな手使ったんだよ」

≪主にも出来る範疇かと。しかし・・・蒼凪氏の運の無さもここに極まりですね。これはあり得ませんよ≫



そこを言われると辛い。なのはは、絶対に加減しないだろうし。



≪ま、ボーイとねーちゃんはそれでも楽しそうだけどな≫

「なぎさん・・・ちょっと笑ってたしね」

「この状況でも、変わらないんだね・・・」

≪変わるはずがありません。だからこそ、蒼凪氏とアルトアイゼンは強いのです≫



サリさんの胸元の金剛の言葉には同意。うん、それがヤスフミらしいというかなんというか・・・。



「ほんとにあのバトルマニアは・・・」

「ヴィータちゃん、心中察するに余りあるよ」

「いや、だからそう言いながら、私とシグナムさんを見るのはやめてくんないかなっ!?」

「私もヒロリス殿も普通だっ! それを言ったら、テスタロッサはどうなるっ!?」

「私はちゃんと状況を見てますっ! 一緒にしないでくださいっ!!」





・・・まぁ、ここはいいよね。うん、気にしなきゃいけないのは・・・。





「ヴィヴィオ」

「フェイトママ・・・」



やっぱり、不安そう。いきなりだもんね、ヤスフミとなのはが、こんな形で戦うなんて。



「・・・ヴィヴィオ」

「大丈夫だよ。ヴィヴィオ、最後まで見てる。恭文とアルトアイゼンの応援するって、約束してるから」

「そっか。うん、なら・・・フェイトママと一緒に、最後まで見ようね」

「うんっ!!」










・・・画面の中の状況は、まだ動かない。





でも、緊迫感だけは加速度的に上がり続ける。





ヤスフミ。ヤスフミは、私の騎士になりたいんだよね?





なら、お願いだから・・・勝って。勝ち負けで答えを決めるつもりなんて無い。でも、負けて欲しくない。





うん、このままアッサリ負けたりするのは・・・無しだよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・これで、終わるかな」



すぐに距離を充分に取り、警戒しながらもカートリッジをリロード。次に懐からカードを取り出しつつ、自然と出た言葉はそれだった。



≪終わると思います?≫



カードに念じると、青い光が身体を包む。消費した体力と魔力が、それで回復する。

・・・そう、回復魔法のカード。新型のおかげで、今までよりも効果が高い。



「無理だろうね」



まだ、向こうは札を切ってない。だから・・・まだだ。警戒は緩めちゃ



「・・・正解だよ」



その声が聞こえた瞬間、身体を桜色のリングに縛られた。



「でも、ちょっと甘い」



・・・バインドっ!?



「エクセリオン・・・!」



カートリッジの排出音。それも、1発じゃない。そして、バカデカイ魔力反応。あぁ、やっぱりかっ!!



「バスタァァァァァァァァァァッ!!」










爆煙を突き破り、打ち込まれたのは先ほどよりも大きな砲撃。バインド解除・・・くそ、間に合わないっ! ならっ!!

左の手のひらに、カードを3枚出現させる。1枚・・・発動っ!!





僕の目の前に生まれたのは、ベルカ式のラウンドシールド。カードに入力していた術式。それが、僕とエクセリオンを隔てる。





でも・・・それだけだった。





やっぱり、エクセリオンには耐えきれない。シールドがどんどんひび割れる。そして、壊れた。





でも、時間は稼げた。





アルトのサポートも有って、バインドの解除は完了。即座に左に移動して、ギリギリだったけど回避出来た。





・・・あんま高位のバインドじゃなくてよかった。くそ、僕の魔力量を見越して、やっぱ一撃当てること重視で動いてるか。

確かに、僕はエクセリオンなんて一発食らったら、一気に沈むしなぁ。

それだけじゃない。大量の誘導弾も、バインドも、僕の対処の苦手領域だ。射撃戦闘とロングレンジの火力なら、僕はなのはには勝てないし。





あー、知り合いってやっぱやり辛いっ! こっちの弱点丸見えじゃないのさっ!!





そして、僕は2枚目、3枚目のカードを投げる。それはなのはへと飛んでいき・・・発動。





一定空間の水分を材料に、でかい氷が生まれた。





リインの『フリーレン・フェッセルン』と原理は同じ魔法。でも、意味が無かった。だって、回避されたし。

つか、手札切りやがった。さっきまでのミニスカニーソックスジャケットじゃない。なのはのバリアジャケットが、変わってる。





つーか、ロングスカートになってる。・・・なのはの本気。エクシードモードっ!!





とにかく、なのはがこちらへ突っ込んでくる。ショートバスターを撃ちながら、真っ直ぐに。





それを回避しつつ・・・突っ込むっ!!





斬りかかろうとした瞬間、なのはの姿が眼前から消える。そして、後ろに気配。










≪Icicle Cannon≫





振り返りつつも、左手をその気配えとかざす。

その行動中に聞こえるのは、カートリッジの排出音が1発。うん、向こうのだ。こっちは暇がない。



そして、近距離で互いの砲撃が衝突。その衝撃と爆風で、僕もなのはも吹き飛ばされた。



でも、すぐに体勢を立て直す。そしてまた・・・突っ込むっ!!

爆風を突き破るようにして、アクセルが10数発飛んでくる。それを斬り払いながら・・・詠唱。



そして、左手をかざして発動っ!!





≪Stinger Rey≫





1発じゃない、連続発射。手応え・・・あり。というか、お返しにまた砲撃が飛んできた。それを回避。



そうしながらもカードを3枚、なのはにぶん投げる。そしてそれは真っ直ぐになのはへと飛んでいき・・・。



ちゅどーんっ!!



・・・うそ、アクセルとショートバスターで撃ち落としやがったっ!!





「おのれは・・・! 人の個人資材になにしてくれてるっ!!」





怒りの余り、アクセル最大出力で加速。



そうして、一瞬でなのはに肉薄。



横薙ぎにアルトを震い、斬りつける。





「だって、敵の攻撃に対処するのは当然でしょっ!?」



なのはは、それをレイジングハートで受け止める。



「やかましいっ! 無駄に魔力多くて無駄に装甲熱くて無駄に正月太りしてるんだから、全部受けとけっ!!」

「なにそれっ! というか、正月太りなんてしてないよっ!!」





こんな会話をしつつも、攻防は続く。なのはがレイジングハートで僕の斬撃を何度も受け止めながら、後退する。

でも・・・僕の方が踏み込みの速度は速い。簡単には逃がさない。





「太ってるでしょうがっ! 今だってお腹の辺りがプックリっ!!
それに、聞いたところによると体重計に乗るのが・・・」

「それを・・・」





む、高速移動で一気に下がった。しかも・・・砲撃体勢っ!?





「言わないでよっ!!」





なにかが撃ち込まれた。・・・見えないけど。だから、アルトに魔力を込めて・・・それを、斬るっ!!

手応え、あり。斬られたものは、僕の目の前で爆発する。そして・・・目の前に大量の魔力弾。それらが一気に襲ってきた。



クレイモア・・・無理っ! カートリッジを使って、しっかりと防ぐっ!!





≪Round Shield≫





現れたベルカ式魔法陣の盾が、アクセル達の猛攻を防ぐ。



だけど・・・。



それすらも飲み込んで、桜色の魔力がぶつかってきた。





「ブレイク・・・!」





魔力の奔流の勢いが、さらに強くなる。そう、完全に向こうの策にハマった。



動きを止めちゃいけないって、分かっていたはずなのに・・・!!



てか、ヤバい。真面目にヤバい。



ヤバい・・・。シールド、もたないっ!!





「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥットっ!!」










・・・そして、シールドが破れ・・・爆発に 飲み込まれた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・うそ、恭文」

「・・・届かへんかったか」

『・・・試験、終了』



なのはがどこか無機質な声でそう告げた。そう、終わったと。



『受験者は撃墜。これで』



言葉がそこで止まった。それに、全員の目が画面に集まる。



『・・・驚いた。どうやって防いだの?』

『知ってる? 斬ろうと思って斬れないもんなんて・・・ないのよ。まぁ・・・』





爆煙が晴れると・・・そこには、ヤスフミが居た。でも・・・。





「アイツ・・・ボロボロじゃない」

「あんななぎさん、初めて見た」



そう、ヤスフミのジャケットはボロボロだった。上半身の青いジャンパーは吹き飛び、インナーも肩口が破けて、胸元が見える。

ジーンズも煤汚れて、穴が空いてて・・・。



『余波でボロボロだけどね。魔力の大半持ってかれたし』

『・・・ギブアップするのも、選択だよ?』



多分、それは教導官としての意見。負けを認めるのも、大事だと言いたいんだ。



『すると思う?』

『しないよね。うん、するわけがない。恭文君もアルトアイゼンも、諦め悪いもん』



だから、なのはは構える。



『だから、徹底的にいくね。・・・ブラスター1』



・・・え?



『リミット・リリースっ!!』



えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?



「ブラスターシステムっ!?」

「あのバカっ! なに考えてやがるっ!!」

「・・・やりおった」

「すみません、使用出来ないように処理をしておくべきでした。というか・・・どうしよー!?」





そのなのはの行動で、ヤスフミもそうだし見ている私達もあ然となった。





「えっと・・・なのはちゃんばか? つか、リミッターとかどうなってるのっ!? いや、今さらだけどっ!!」

「バカっ! 解除されてるんだよっ!! おいおい、これは・・・」

「・・・なのはちゃん、なにしてるのかしら」



あ、シャマルさんの視線が・・・。



『・・・バカでしょっ! 本気でバカでしょっ!? つーかなにやってるっ!!』

『うん、そうだね。でも・・・これが私の全力全開だから。恭文君相手だもの、ちゃんとぶつかりたい。私達、ライバル・・・でしょ?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あぁ、そうだったね。僕達は結局」

「こういうのが、ピッタリなんだよ。こっちの方が楽しいし、分かり合える。それに・・・約束、してるよね」

「そーだね」




・・・どんな時でも、ありったけで、全力でぶつかりあって、それを受け止め合って、心を通わせていこう。そう、約束してる。



「・・・なのは」

「うん、馬鹿げてるよ。でも、ここで私のありったけをぶつけないのは、もっと馬鹿げてる」





・・・8年前、初めて模擬戦した時に言ったセリフと全く同じことを、なのはは口にした。

そういや、あの時も復帰直後なのに、エクシード使ったんだっけ。



そう、なのはは言ってる。あの時と同じ・・・いや、それ以上に、全力全開で、ぶつかりあいたいと。





「私は、大事な友達との約束を、違えたくなんてない。だから・・・」

「いいさ。・・・受け止めてあげるよ」




止めるのが、正解なんでしょ。でもね・・・それは世界や常識の正解であって、僕となのはの正解じゃない。

僕達の・・・僕の正解は、目の前のバカに付き合うことだ。僕達、そういう付き合い方してんのよ。友達になった時から、ずっとね。



「まったく、これで納得出来るってどうなんだろ。・・・あ、そうだ。なのは、ここから一つルール変更ね」

「ルール変更?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『4分41秒だよ』

『・・・え?』

『ちょっと準備がいるけどね。でも、それだけもらえりゃ・・・僕が勝つ。すぐに終わらせてあげるよ。
それを過ぎたら僕の負けでいい。つか、勝手にギブアップするから』

『・・・本気?』

『もちろん』



その言葉に、また場が騒然となる。だって、今ヤスフミが口にしたのは・・・。



「ブラスターシステム発動中のなのはさん相手に・・・勝利宣言っ!?」

「それも、5分弱でなんて・・・」

「む、無茶だよっ! 恭文もうボロボロなのにっ!! 魔力だって、空に近いよねあれっ!?」

「アイツ、本気でなに考えてるのっ!? バカだバカだとは思ってたけど、今回のは極めつけよっ! これはないでしょこれはっ!!」

「・・・いえ、やれます」



慌てふためくスバル達を抑えるように、静かにリインが口を開いた。強い確信を持って。



「恭文さんもアルトアイゼンも、やれます。古き鉄は・・・この状況で負けたりなんてしません。いつものノリで、ぶっ飛ばすだけですっ!!」



いつも通りに・・・『最初から最後までクライマックス』・・・でいけば、大丈夫。うん、きっと大丈夫だよね。



『また言ってくれるね。でも、そうしてくれると助かるかな。やっぱキツいし』

『だったら、最初からそんなチート機能を搭載するなよバカっ!!
・・・まー、いいさ。今から見せてあげるよ』



そう言ってヤスフミは・・・。



「恭文、笑ってる・・・」

「フェイトママ・・・」

「大丈夫。・・・きっと大丈夫だから」





・・・ヤスフミお願い。本当にすぐに終わらせて。4分と言わずに今すぐに。



だって・・・ヴィータとシャマルさんのオーラが怖いのっ! 長引くと真面目にどうなるか分からないのっ!!





『僕とアルトの新しい変身と・・・新しいクライマックスってやつをね』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「面白そうだけど・・・させないよっ! ・・・バスタァァァァァァァッ!!」



抜き打ちで構えて、なんか撃ってきたので、カードを複数枚取りだし、発動。





「無駄だよっ!! ・・・え?」





結果・・・なのはの砲撃がかき消され、その進行を留める。うん、一瞬だけね。

とーぜんなのはは驚く。で、その間に・・・僕はそのまま、重力に従い下に堕ちる。で、空気の読めない教導官には。



「お仕置きだよっ!!」

≪Struggle Bind≫





とにかく、バスターの斜線外に移動してから、魔法発動。

なのはの身体を、青い縄が縛りあげる。なのはのバスターは、そのまま僕の真上を通り過ぎた。



・・・ギリギリだった。さすがにブラスターは手強い。





「AMF・・・!!」





そう、あれはAMFを仕込んだカード。ま、範囲はカードを中心に1メートル程度だけど。

でも、複数枚を近距離で同時発動させて、その濃度を重ねがけで上げれば、あれくらいは出来る。



・・・それでも、ブラスターのエクセリオン相手だと、耐えたのは一瞬だけ。やはり、恐ろしい。

あと、これの難を言えば、現在の保有枚数が少ないこと。・・・ちょい手間と魔力がかかるのよ。



そして、左手からまたカードを3枚出し、発動を命じると、青い光が身体を包む。先ほども使った回復魔法。

・・・回復魔法を同時に重ねがけ、身体に負担かかるから、ほんとはダメなんだけどね。



ま、そんなこと言ってる場合じゃないか。とりあえずこれでここからの4分41秒、全力で動ける。





≪あなた、お約束くらいは守ってくださいよ。やってることがまるっきり雑魚敵その3ですよ≫

「ざ、雑魚敵っ!?」

「そーだよ。そんな不粋な真似しないでさ、おとなしく見てなよっ! 僕達の変身をっ!!」



そして、アルトを鞘に納めてから、右手を上げると、宙から回転しながらカードが出てきた。ただし、マジックカードじゃない。

二回りほど大きく、色は全て銀色。表面には、剣を持った巨人のレリーフが刻まれている。



「いくよ、アルトっ!!」

≪はいっ!!≫



僕は、そのカードを自分の前へと放り投げる。



≪Standby Ready≫



せっと・・・いや、ここはやっぱこれでしょっ!!



「変身っ!!」

≪Riese Form≫










そして、カードが回転しながら青く、眩い光を放つ。

ボロボロだったバリアジャケットが、アルトも含めた装備が、一瞬でその全てを解除。再構築されていく。





まず、下半身は、ジーンズではなく、黒のロングパンツへと変わる。ブーツは・・・黒色でリインと同型。





上半身には、黒の半袖インナー。その上に、白のインナーシャツ・・・というか、リインやはやて、シグナムさんと同じものを着る。

その上からまた、青いジャンパーだ。こちらも、デザインが変わって、多少制服然とした装飾が付いている。





そしてジガンスクード。ただし、右手にも同じものを装着する。こちらは、カートリッジ無しのただのガントレットだけど。





でも、まだ終わらない。どこからともなく白いマントが現れる。そして・・・首元には空色の留め金。それを、全ての上から羽織る。






最後に、上から鞘に納められる形で回転しながら現れたアルトを手に取り、腰に差すっ!!





これでようやく完成である。これが・・・僕とアルトの新しい力だ。










≪「・・・俺達っ!」≫



右手の親指で自分を指す。そして・・・。



≪「ようやく参上っ!!」≫



左手を前に、右手を後ろにして、ちょうど歌舞伎役者が見栄を切るようなポーズを取るっ! というか・・・モモだよモモっ!!



≪・・・マスター、私これ・・・やりたかったんです。しかも、ポーズ付きですし≫

「ま、せっかくだしね〜」



いやぁ・・・。やっぱいいないいなこれっ! あぁ、ここまで溜めておいてよかったー!!



「・・・驚いた。そんなの用意・・・してたんだっ!!」



あ、バインド解除された。・・・ま、いいか。



「この状況で出してきたことから察するに、フルドライブ・・・かな? また手の込んだことするね」

≪「・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、違う違う。全然違う」≫

「・・・違う?」





なーんか勘違いしてる横馬や読者のために説明しておく。

これはエクセリオンみたいなフルドライブや、真・ソニックみたいなスーパーモードじゃない。ましてや、ブラスターみたいなリミットブレイクでもない。



あくまでも、通常時で使っていけるジャケット。・・・いや、違う。





「騎士甲冑だよ」





あの時・・・フェイトに騎士になりたいと話した後、フェイトからやってみようと言われたこと・・・。騎士甲冑の作成。

騎士になるなら甲冑は必要じゃないかと、言われたのだ。



そして、皆のお陰で出来上がったのがこれだ。そう、これが巨人の騎士甲冑。新しい僕の・・・僕達の姿だ。





≪マスターの騎士としての姿。それが・・・新しい私達であり、古き鉄の巨人です≫



うん、だから・・・ね。いちおう今までよりは性能上がってるけど、ブラスターやらには勝てない。でも、いいのよ。これで。



≪エクシード? ブラスター? 足りませんね。そんなのじゃ、聖王やゆりかごや神様は止められても、私達は絶対に止められませんよ≫

「理由を教えてやろうか」



左手から出てきたのは、銀色のベルト。バックル部分には、赤い携帯が付いている。そう、皆様ご存知、あのベルトとケータイっ!!

ただし、これで変身出来るわけじゃない。



「それは・・・!」



僕はそれを腰に巻き付ける。



≪Axel Fin≫



もう一度、ジガンからカートリッジを1発使った上で唱えるのは、青き翼を喚ぶ呪文。そうしながらも、左の親指でケータイのエンターボタンを押す。

それから、右手に持った黒いパスを・・・ベルトのバックラーに通す。



≪The music today is "Climax Jump the Final"≫





次の瞬間、ベルトから、電子音声が発せられた。いや、それだけじゃない。

マント・・・背中の肩胛骨辺りから、青い翼が生まれ、瞬いた。辺りに、羽根が舞い散る。大きく、空を速く舞うための翼が。



これはリーゼフォーム版のアクセル・フィン。某灼眼な作品を見て、良い機会なので、こっちもデザイン変更してみた。

なお、フライヤー・フィンだと、一回り小さくなります。




「・・・アルト、カウントお願い」

≪はい。スタートします≫



そして、ベルトから大音量で音楽が流れ始めたっ!!



・・・そして、僕が腰に装着しているのは、最近ヒロさん経由で知り合った地上本部・第十三技術部という部署に所属しているイルド・シーという人が作ってくれたアイテム。



その名も、サウンドベルトっ! なお、細かいツッコミは一切受け付けないっ!!



これは、今みたいに大音量で音楽を流すだけのアイテム。でも、そこに効用が二つある。

一つは、装着者・・・僕のテンション、ノリを高めて、戦闘力を上げること。

もう一つは、大音量で流すことで、敵に一時的でも動揺を誘うこと。



なんでも、実験でもこの二つの効能は科学的に証明されているとか。バサラな曲が流れると、本当にバサラになれるそうだ。



・・・すげーよイルドさん。どんな実験したのか、是非とも聞きたい。



ま、相手はなのはだ。さすがに動揺はしないだろうけど・・・。今回は、三つ目の役割がある。





「・・・いい? 戦いってのは、どっちが強いかじゃない」

≪何時だって勝つのは、ノリのいい方です≫

「そーいうわけだから僕もアルトも」

≪「始まる前からっ! 徹底的にクライマックスなんだよっ!!(なんですよっ!!)」≫










そして、そのまま僕達は飛び出した。・・・なのは、4分41秒だ。それがこの曲が終わるまでの時間。





そう、このデバイスの今回だけのもう一つの役割は・・・タイマー。

どんな手を使おうと、この曲が終わるまでに勝負をつける。というか、つく。





それまでに終わらせりゃ、ダメージも少なめ。シャマルさんにもあんまり怒られなくて済むでしょっ!!


















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「時間の波を捕まえてー♪」

「たどり着いたねー♪」

「「約束の場所ー♪」」

「ヒロ、ヴィヴィオちゃんっ! それ危ないからストップっ!!」

「以心伝心♪ もーう」

「リイン、アンタもやめてーなっ! つか、アイツなにしとるんやっ!?」



あのベルトから流れだした曲。私は、それが何かを知っている。



「この曲・・・。ヤスフミ、ホントに好きなんだ」

「そりゃ、電王だしね。・・・でも、ファイナルでカウントダウンとは、やっさん分かってるじゃないのさ。私は、熱くなってきたよ」

「俺もだ。第28話でパワーアップだし、この話に合わせた言い方すると・・・『やりすぎ、ノリすぎ、ふざけすぎ』・・・ってか?」



そう、でも・・・なんだ。やりすぎようがノリすぎようがふざけすぎようが、自分のノリを通せるなら・・・勝つ。

だって戦いは、ノリのいい方が勝つから。



≪その通りです。新しき古き鉄は、誰にも止められません≫

≪ボーイもねーちゃんも・・・いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!≫

「ノリノリで、ぶっ飛ばすですよー!!」



ヤスフミが生まれ変わったアクセルを羽ばたかせると、一瞬でなのはの正面に。そして、斬撃がなのはを襲う。・・・しっかりとガードしたけど。

距離を取って、そこからまた攻防が始まった。でも・・・。



「・・・うそ、速いっ!!」





勝負は、あの曲が流れ始めてから、一気にヤスフミのペースになった。なのはが砲撃を撃つ。アクセルを撃つ。

でも、そのどれもが当たらない。だけど、逆にヤスフミの攻撃は、的確に当たり続けてる。いや、なのははキチンと防御してるけど。



そうして、桜色の光と青い軌跡が、廃棄都市部の空で、線を描きぶつかり合う。まるで、何かの絵を書いているように。





「・・・あの、あれホントにエクセリオンとかじゃないんですよねっ!?」

「そうだよ、通常状態の騎士甲冑。私とフェイトさん、リイン曹長に皆で作ったの」

「つまり、あれは本当に曲とか聞いてるノリだけで・・・」

「なぎさんとアルトアイゼンのノリ補正、チート過ぎるよ・・・」



まぁ・・・いいよね。うん。とにかく、なのはの身体を考えると手早く終わらせないといけない。この際、なんだっていい。

多分、ヤスフミもそれで時間制限をつけたんだ。



「勝っても負けても、なのはさんの身体に負担が極力残らないように・・・ですよね。どうせ使用が止められないなら、決着自体を早くする」

「なぎさん、そこまで考えてたんだ。自分の試験なのに・・・」

「だからこその恭文さんですよ。それに・・・」

「蒼凪とアルトアイゼンも、本気で時間内で倒すつもりだろう」



そこは間違いない。勝つ気満々な挑発してたしね。



「でも、それでも速すぎません? 今までのアイツとは、全く別物じゃないですか」

「そりゃそうだ。高速型のフェイトちゃんのジャケットがベースだしね」

≪そうやって今までのボーイのジャケットに更なる『速さ』をプラスしたんだ。いや、苦労したぜ≫

「蒼凪の今までのジャケットの魔力消費量を維持した上で、それプラス全体性能の若干の底上げだったからな」

≪いっそのことフルドライブにしようという話も出ていたんですが・・・≫



でも、それだと魔力量が並みのヤスフミはすぐにガス欠を起こす。それで、みんなで苦労して・・・。



「あの形に仕上げたと・・・」

「そういうこと。でも私さ、やっさんに追加報酬請求しようかどうか、悩んでるのよ」

「あ、俺も。あの働きはお中元じゃあ足りないし」

「な、なんというか・・・すみません」

「でも、それだと・・・」



私の隣に居たヴィヴィオが、モニターの中のヤスフミと私を見比べる。すごく疑問顔で。



「ヴィヴィオ、なにか気になるですか?」

「恭文とフェイトママ、お揃いのジャケットってこと?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

「だって、リーゼフォームはフェイトママのジャケットがベースで、マントも付いてるし。というか、あれフェイトママのマントと同じだよね?」









瞬間、場が凍りついた。・・・ヤスフミ、お願い。早く終わらせて。みんなのニヤニヤした視線が辛いのー!!




















「・・・なのはちゃん、覚悟は出来てるでしょうね」

「バカ弟子、アタシが許す。最強物とかふざけてるとか萎えるとか、そんな戯言を言いたいやつには言わせておけ。
・・・それでもいいからっ! とっととそのバカをぶっ潰して、止めやがれっ!! つーか、アタシが直接・・・」

「ダメですヴィータ副隊長、落ち着いてくださいー!!」

「あぁ、ヤスフミっ! お願いだから、早くなのはを止めてー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ブラスタービットっ!!」



だーかーらーっ!!



「無駄っ!!」





出てきたビット達は、アルトで真っ二つにする。そして、またアクセルを羽ばたかせ、突っ込むっ!!



・・・負けるわけがない。





「シュゥゥゥゥットっ!!」





なのはが唱えた直後、出てきた大量のアクセルシューター。

だけど、それらはここまで溜め込んでおいた虎の子のAMFカードで壁を作り、消し去る。



で、残ったまばらなのは。





≪High Blade Mode≫





アルトを大太刀に変化させて、一閃。それだけで、全ての魔力弾が撃墜出来る。そして、また動き出す。



・・・僕は、一人じゃないから。





「これにはねっ! リインにヒロさんサリさん、アメイジアに金剛っ!! シャーリーにシグナムさんに師匠とレヴァンティンとグラーフアイゼンっ!!
それにバルディッシュと・・・・・・」





なのはの、効果的な機動を絡めた誘導弾を、砲撃を、全て足を止めない形で防御・回避していく。

普通ならちょい難しい。でも、カードを使えば楽勝。魔力も消費しないしね。



そうして廃棄都市部の空に、銀色のカードと桜色の魔力が何度も飛び交い、何度もぶつかり合う。



青い空の中を、僕達は翼を広げ、羽ばたかせ、激しく舞い、ぶつかり合う。



もう、出し惜しみする必要はない。全部切っていくだけっ!!





「フェイトの想いがこもってんだっ! みんなが力を貸してくれて、初めて生み出せたっ!! 始められたっ!!」



そう、僕一人の力じゃない。だから・・・!



「絶対に負けらんないんだよっ!!」

≪コーヒーが無くても、心はてんこ盛りです。もう、私達は誰にも止められませんよ≫



そして、レイジングハートをこちらへ向ける。



「それでも・・・」



・・・ち、まだビット残してたのか。後ろから沸いてきた。



「止めるよっ!!」



そして、ビットが僕の回りを周回する。お尻から、桜色の縄を出して。それだけじゃない。またバカみたいに砲撃の発射体制整えてるし。

だから・・・邪魔っつってんでしょうがっ!!



「はぁっ!!」





縛り上げられる前に、大太刀アルトを、左から横に素早く一閃。ビット二つと発生途中のバインドを斬り裂いた。

つーか、やばい。速めに決着つけないと・・・。



言っておくと、時間制限のことじゃない。さっきから妙なプレッシャーを感じて仕方ない。なんか背中や肩に紅くて翠の重いオーラを感じる。



・・・絶対にスターライトとか撃たせる前に潰さないと。僕はヴィヴィオが泣くとこなんて見たくないし。

つーか、これ以上は時間をかけるなと、本能が告げてる。いや、告げられてる。





「・・・もうめんどいからさ、射撃も砲撃もビットもバインドもついでに正月太りも・・・全部、斬るわ」

「正月太りは関係ないよねっ!?」

「細かいことをガタガタ抜かすなっ! おのれをとっとと潰さないと・・・」



大太刀アルトを肩に担ぐ。そして・・・ブーストっ!!



「僕にまで飛び火しそうなんだよっ!!」





なのはの砲撃、誘導弾による迎撃の全てを、回避していく。



いや、大太刀アルトを上から、横から、全力で振るいながら、自らの道を切り開いて行く。



・・・やっぱり、感謝だ。今までよりも速く、自由に空を駆けていけるから。



でも、当然エース・オブ・エースはそれで接近なんて許さない。接近出来るコースを、全て潰していく。



・・・誘い込まれてる? なんかこう、距離が中途半端。





≪正解のようですね≫





次の瞬間、なのはが突っ込んできた。つか・・・A.C.S.っ!?



レイジングハートの先端部から、魔力の杭を出し、こちらに一直線に猛スピードで突っ込んできた。

そして、その周囲には魔力弾。だからそれに対して真正面から突っ込んで・・・。

カードをまたもや複数枚、魔力弾に向かって放り投げる。



次の瞬間、カードを中心に青い雷撃が発生する。・・・訂正、『雷撃もどき』が発生した。

前々から研究していた雷撃の形だけを再現した魔法。・・・フェイトの魔法の派手さが羨ましくて、作ってみたの。

で、その青いイナズマがなのはの周りの魔力弾を撃墜する。でも・・・なのはは健在。こちらにそれでも突っ込んでくる。

しゃあないか。派手さ重視で、威力あんまないし。あくまでも、魔力弾の広範囲迎撃用だ。



で、当然これは僕も予測済み。だから・・・!





「チェストっ!!」



大太刀アルトを打ち込むっ!!

一瞬で斬撃とそれは交差。・・・左の肩のジャケットが破れた。だけど、向こうも同じ。



「フレームがっ!?」



先端の魔力フレーム、斬ってやったもんね♪

んじゃ、締めだ。そろそろ時間だしね。・・・僕は、アルトを通常モードに戻して、鞘に納める。

ジガンから、カートリッジを3発消費。刀身に、凍れる魔力が宿る。



「・・・エクセリオン・・・!!」





振り返りつつ、僕に抜き打ちで近い形で、レイジングハートを向けてくる。



・・・遅い。



集中する。世界が少しだけ静かになり、世界がゆっくりと動いていく。別に御神の奥義じゃないだろうけど、それでもそうなる。



斬る。砲撃も、なのはも、全てだ。



そうしようと思って斬れないものなんて・なんにもない。そうだ、ここは今までと変わらない。僕はそうやって・・・。



今をっ! 覆すっ!!





「・・・いくよ、密かに暖めていた新必殺技」



僕は、踏み込む。



「氷花・・・」





背中のアクセルも羽ばたかせ、一気に零距離に近づく。





「一閃っ!!」





そして・・・アルトを抜き放つ。



真下から真上に勢いよく振り抜かれたそれは、発射寸前のエクセリオンを真っ二つにした。



・・・一つ。



それだけじゃない。踏み込み、手首・・・刃を返し、やや袈裟斬り気味に打ち込む。

それは・・・レイジングハートに打ち込まれ、その穂先を強制的に下にした。というより、地面に叩き落とした。



・・・二つ。



まだ終わらない。最後に、がら空きになったなのはの上半身に向かって・・・左斜め下から斬り抜けながらの一閃。



・・・三つっ!!



時間にすれば1秒にも満たない一瞬の間に僕が生み出したのは、三つの斬撃。



それが・・・魔力を、デバイスを、魔導師の三つを、一瞬で斬り裂いた。





「・・・瞬・極(またたき・きわみ)」

≪いわゆるひとつの・・・パートVです≫





示現流の剣術にも、居合いがある。滴り落ちる水滴を、一瞬で三度の斬撃を放ち、斬り裂くほどのスピードの居合いが。

もちろん、その全てが一撃必殺。一太刀防げても、意味がない。

・・・自身の防御と回避を捨て去り、相手より速く一太刀浴びせる事だけを、その一撃で相手を確実に倒すことを追及した剣術。それが、示現流だ。



そう、これはどんな攻撃も防御も回避も意味をなさない神速の三連撃。『一撃必殺』と『先手必勝』。その二つを同時に具現化した一つの形。

・・・先生が、僕達の剣術の奥義というか一つの到達点と言っていたものだ。



今までは二連が限度だった。でも、今は違う。今は、撃てる。偶然とかじゃなくて、自分の意思で。





「・・・終わりだよ」

≪Struggle Bind≫





僕の斬撃、そしてエクセリオンの爆発を受けて、勢いよく吹き飛ばされたなのは。

その身体を、青い縄が縛り上げる。というか、がんじがらめ。



なのはの身体が僕とは少し距離を開けて、縄の発生源である空中に浮かんだ青いベルカ式魔法陣の上で、固定される。

左手を上げると、そこにはいつの間にか、カードが2枚握られていた。





「で、続ける?」

「・・・そう言いながら、どうして詠唱してるのかな」

「悪いけど」



僕は、なのはを斬った直後から詠唱を開始してた。もうすぐ、星の光の刃は打ち上がる。

そして、2枚のカードを下に投げる。それは程なく、地面に僕が叩き落としたレイジングハートに接触すると、それを氷の中へと閉じ込めた。



「意識、落とすまでボコることにした。・・・咄嗟にフィールド出力上げて、ダメージ軽減させてるのは分かってる。まだピンピンしてるよね」



全く、僕の先ほどの説明が嘘になるじゃないのさ。どーしてくれんのよ。



「・・・で、下に墜落する振りして、レイジングハートを回収・・・とか企んでたでしょ」

「ちょっと違うけど・・・ほぼ正解。よく分かったね」

「手応えが鈍かった。あと・・・これでも、高町なのはの研究は怠ってないんでね。この程度でどうにかなるなんて、思えない」





・・・レイジングハート無しでも魔法戦が出来るように訓練してるのは知ってる。武器を落として終わり? んな甘くないよ。

僕が何度模擬戦でぶっ飛ばされたと? それでどんだけこやつの戦い方を研究したと? ・・・それでも届かなかった。それが、高町なのはだ。





≪Starlight Blade≫



アルトに降り注いでいた青い流星が、止まった。そう、星の光の刃は打ち上がった。あとは・・・斬るだけだ。



「・・・恭文君」

「なに?」

「次は負けないから」

「りょーかい」



でも、これからは違う。届かせる。新しい自分を始めたから。



「・・・いくよ、アルト」

≪はい、必殺技ですね≫





変わることはもう恐れない。だけど、変わらないものも大事にする。そうして、今よりも強くなるから。



・・・今、ちょうどそこなのよ。



とにかく僕は、正眼にアルトを構え直す。そして、踏み込み。





≪必殺っ!≫

「新しい僕達の・・・必殺技っ!!」



上段から、真一文字に打ち込むっ!!



≪「クライマックスバージョンッ!!」≫










・・・なのはを真っ二つに斬り、ぶっ飛ばすと、曲が終わった。





ギリギリだけど、僕達はなんとか・・・勝利をこの手に納めることが出来たのだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして、翌日。僕は・・・聖王教会の医療施設に入院していた。










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでっ!?




















「・・・恭文さん、それ・・・本気で言ってます?」

「あぁ、すみませんすみません。もちろん分かってます。単独でスターライト使ったからですよね」

≪つい、やってしまいましたからね≫





いや・・・ね。新フォーム初登場だから、つい・・・ね。やっぱりクライマックスバージョンだったし。





「なぎさん、それ意味分からないよ。というか・・・」

「・・・アレはダサいわよ」

「はぁっ!? なに言ってるのティアナっ! 最高にカッコいいじゃないのさっ!!」

「よくないわよっ! つーかダサダサよっ!! なによ『僕達の必殺技』ってっ!? つーか、試験でなにバカかましてんのよっ!!」

「あんなことするの、なぎさんだけだよ。きっと評価にも響いてるよ?」



な、なんか二人揃って失礼なことを・・・。つか、いーのよ。あーでもしないと、横馬ペースで潰れてただろうし。長々やって体調悪化されても困る。



「・・・ま、それはそうだけどね」

≪そうですよ。なにより・・・アレはカッコいいじゃないですかっ!!≫

「アンタも同意見なのっ!? つーか、そこはツッコみなさいよっ!!」

「でもでも、あの時の恭文さんとアルトアイゼンは最高でしたよ? というか、リインもやりたいですー!!」

「リインさんまで・・・」



とりあえず、リインとハイタッチ。・・・なぜかティアナとキャロが頭を抱えているのは、気にしない。



「・・・お前達は。幸いなことに大事は無かったが、もう少し気を付けろ。テスタロッサが青い顔をしていたぞ」

「・・・すみません」



少し呆れたように言ってきたのは、シグナムさん。・・・そう、先ほどの三人にシグナムさんは、わざわざお見舞いに来てくれたのだ。



「だが、よくやったな」



シグナムさんが、そう言って優しく笑うと、僕の頭にポンと手を乗せてくる。で、撫でてくれる。・・・うぅ、気持ちいいかも。



「まぁ、後半は勢い任せの力押しではあったが、お前達らしいといえばらしいだろう」

「・・・恭文さん、アルトアイゼン、よかったですね」

「ま、さっきはああ言ったけど・・・新しいアンタ達の戦い、見せてもらったわよ。・・・おめでと」

「なぎさん、アルトアイゼン。よかったね」



・・・みんな。



「・・・はい。シグナムさん、ありがとうございます。みんなも、ありがと」

≪ありがとうございます。・・・まぁ、まだ結果は出ていませんが≫





・・・そう、なのはには勝ったけど、それで合格じゃない。試験官であるなのはがしっかりと採点して、初めて合否が決まる。



ただ・・・なんだよね。





「・・・で、あのバカはどうなんですか」

≪本局の医療施設でしたよね?≫



僕が本局じゃないのは・・・また伝説の上書きをされるのではというみんなの素晴らしい心遣いだ。



「蒼凪、採点には時間がかかりそうだぞ」

「・・・ケガ、酷いんですか?」

「いえ。恭文さんがすぐに止めてくれたので、それほどではないです。ゆりかごの時みたいに、過負荷のSLBやバスターを撃っているわけでもありませんし」


とーぜんだ。使われたら終わってる。



「ただ・・・シャマル先生とヴィータ副隊長に八神部隊長とフェイトさんがお冠で・・・」

≪・・・お説教ですか≫

「そうよ。で、そこにヴィヴィオも加わってる。・・・あれ、今日中に結果が出ることは無いわね。相当・・・でしたよね」

「そうだな。まぁ、自業自得と言えばそれまでだが」



・・・本人はちゃんと考えた上でとか言いそうだけど、説得力ないよなぁ。あの時の目は、マジだった。うん。

よし、僕はフルドライブとかブラスターとかの類いは、絶対やめよう。怒られたくないし。



≪スターライトを使っている時点で遅いかと≫

「・・・言わないで」

「まぁ、シャマルとテスタロッサから、少したしなめられるのは、覚悟しておくんだな」

「ですですっ!!」

「・・・はい」










ま、いいか。一人無茶するより、二人無茶の方が・・・ね。




















「・・・ところでアンタ」

「なに?」

「いや、このお見舞いのお菓子やら食べ物・・・本気でアンタ一人で食べるの?」

「隣のベッド、占領してるよ? というか、ちょっと沈んでる」

「うん。スターライト使ったあとは、いつもこうだから。つか、病院食の量じゃ足りない・・・」

「・・・スバルやギンガさんにエリオのこと、言えないわね」

≪スターライトを使わなければ、普通なんですけどね≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・みんなが帰った後、僕は端末に向かっていた。とーぜん、隣のベッドに置かせてもらっている食料を食べながら。





あ、この抹茶シフォン美味しい。シグナムさん達には感謝だね。





とにかく、お腹を満たしつつ、あっちこっちに試験の終了報告メールを送らないと。





というか・・・返事だね。スバル達にギンガさん、チンクさん達にルーテシアにアギトに、うちの家族からお疲れ様メールがきてるから。

・・・でもメガーヌさん、お願いですから合格祝いの話に(自粛)みたいなこと言わないでください。抹茶シフォン吹きそうになったじゃないですか。





そう言ったミッド関係者はもちろんだけど、それだけじゃない。試験のことを知っている士郎さんに桃子さん、美由希さんにアリサ。





それに・・・すずかさんもだ。





時間をかけて、一通一通のメールの返事を書いて、送っていく。まだ合否が出ていないことと、ありがとうと言う気持ちを、文面の中で形にしていく。





その中でも、すずかさんからのメールには・・・時間を相当かけてしまった。アレで、腹が決まったしね。





あと・・・『ちゃんと話しておきたい事があるから、またそっちに帰る時に会いたいです』・・・と、一言書いて、返信を終えた。










≪・・・きっちりさせる気、あったんですね≫

「まぁ・・・ね」



でも、やっぱ僕の勝手かな? うにゅう・・・。



「あ、イルドさんにお礼言わないと。サウンドベルト、役に立ってくれたって」

≪そうですね。忙しいのに、すぐ作っていただきましたし。しっかりとお礼を言いましょう≫

「なにより・・・楽しかったしね〜」

≪はい、アレは楽しかったです。イルドさん様々ですよ≫










とにかく、そうして・・・その日の夕方。もうすぐ夕飯時になろうかという時間に、全てのメールの返事を終えた。

お昼から始めたから・・・結構、たっぷりめに頑張った。というか、ちょっと疲れたー!!





なので、これからのお食事タイムに期待を膨らませていると・・・病室のドアがノックされた。










「はーい、空いてるのでどうぞ〜」





なんて言うと、ドアが開く。そこに居たのは・・・フェイトだった。





「・・・ごめんなさい」

「ヤスフミ、どうしていきなり謝るの?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・とにかく、単独でスターライトを使ったことに関しては反省してるみたいだし、これ以上は言わない。
でも・・・本当にああいうのは控えて? ヤスフミの身体は、強いようで脆い部分があるんだから」

「うん・・・。ごめん」





お説教はしっかりとされました、フェイト曰く、シャマルさんの分も預かってきたらしい。



・・・よし、それならこれ以上は無いな。安心だ。





「あ、それとなのはなんだけど・・・」

「うん、大事にはならなかったんだよね」

「ヤスフミの時間制限のおかげでね。それで、試験の結果も、明日中には通信ではあるけど連絡するそうだよ」

「分かった。それまでびくびくしてる」



しかし・・・そこまで時間かけるんだ。こりゃ、厳しいか?



「あ、そういう事じゃないの。・・・あの試験を、教導隊の人達も見ていてね」

「そうなの?」



もしかして、なのはを心配して? ふむ、じゃあ・・・。



「それで、伝言預かってる。『今度会いに行くから、ぜひぶぶ漬けをご馳走して欲しい』・・・だって」

「やっぱり聞かれてたっ!? でも、それと採点とどう絡むの?」

「・・・その人達からもお説教されているから。理由は、分かるよね」

「・・・うん」





なのは、別の意味で再起不能になりそうだよね。南無・・・。



まぁ、がんばれ。なにか好きなもの、奢ってあげるからさ。





「あと・・・」

「まだなにかやらかしてるの?」

「ううん、そういうことじゃない。ちゃんと・・・しておきたいなと思って。もう試験は終わったから、大丈夫かなと」





フェイトがそう言うと、空気が変わった。少しだけ甘くて、ドキドキする香りを含んだ空気に。





「・・・ヤスフミ、私の側に居て・・・騎士として、守りたい。そう言ってくれたよね」

「・・・うん」



言った。これからしたいこと。居たい場所。やっぱり・・・そこかなと。



「あのね、その・・・。言われた時からずっと思ってたの。うん、たくさん。それで、ちゃんと確認させて?」



フェイトは、そこまで言って深呼吸する。そして・・・言葉を続けた。



「あの言葉は・・・ヤスフミからの告白で・・・いいのかな?」




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?




















「・・・こくはく?」

「うん。・・・その、側に居たいや、私の騎士になる・・・だから、そうかなと」




















・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? そ、そうだよっ! そうなるじゃないのさっ!!










言ってることはともかく、そういう行動を取れば当然・・・! ぼ、僕のバカァァァァァァァァっ!!




















「・・・違うのかな?」

「あの、違うと言うか違わないと言うか・・・その・・・あの・・・!!」



完全に頭はパニック。だって、無自覚に切り札切ってたんだから。というか・・・どうしようっ!? 違うと返事を・・・でも違わないよっ!!



「ヤスフミ」



そのフェイトの言葉で、パニックが止まる。だって、それだけじゃなくて、まっすぐにフェイトに見つめられているから。



「私は、ヤスフミの正直な気持ちが聞きたい。・・・教えて」



僕の・・・。そんなの、決まってる。何度も言葉にして、何度も更新してきたから。

だから言える。迷わずに、今ある気持ちを・・・。



「好きだよ。フェイトのことが・・・すごく」



口にした時から、心の中がざわつき始めた。いつもとは違う。答えは・・・ここで出る。怖い。すごく。



「・・・ありがとう。嬉しいよ。でも・・・」



ダメ・・・かな?



「あの、何度か言ってるけど、私に時間をくれる?」

「え?」

「ちゃんと考えて返事をしたいから。・・・8年分の想いに、ちゃんと応えたいの」



8年? え、どういうことですか。



「ヤスフミ、私に何回も・・・告白してくれていたよね?」



えぇっ!? いや、確かにしてたけど・・・いつ気付いたのっ!!



「・・・一ヶ月前のデートから。うん、あれで気付いた。私が今まで、ヤスフミのこと沢山傷つけていたのに」

「あの、そんなことない。それを言ったら僕だって・・・無茶ばかりして、フェイトにいらない心配ばかりかけてた」



止まれなくて、止まりたくなくて。迷って取りこぼすのなんて絶対嫌で・・・。それだけじゃなくて、どこかで自分も縛ってた。うん、自業自得だわ。



「・・・うん、心配だった。ヤスフミ、本当にフラっと居なくなっちゃいそうだったから。家族が居なくなるのなんて、私・・・嫌だった」

「・・・ごめん」



考えればフェイトは、そういう経験を何回かしている。母親であるプレシア・テスタロッサに、その使い魔で教育係だったリニス。

僕、フェイトがそういうの嫌なの分かってたはずなのにな。うん、本当にバカだ。



「あの、それで・・・えっと、少し話が逸れたけど、アレで気付いたの。ヤスフミが私に沢山・・・言葉と想いを届けてくれていたことに」

「そんなこと」

「あるよ。・・・嘱託試験の時、プロポーズしてくれたり」



・・・お、思い出させないで。勢い任せにも程があると、反省してるんだから。



「補佐官の資格を取って、助けようともしてくれた」



・・・数年、IDカードのコヤシでしたが。



「それなのに、私・・・気付かなかった。今なら分かる。ナカジマ三佐とのパーティーの時、ヤスフミをどれだけ傷つけていたのか。
私がヤスフミを『家族』や『弟』なんて言う度に、すごく辛い思いをさせてたことが。・・・ごめん。ちゃんと気付けなくて」

「あの、そんなことない。フェイトはちっとも悪くないから。僕がちゃんと言わなかっただけで・・・」

「ううん、言ってくれていた。そうだよね」



まぁ・・・ね。うん、一回ではない。ただ話の中に出ていないだけで。



「だから、時間が・・・欲しい。その、情けない話なんだけど、一月考えても・・・まだ答え、出ないの」

「・・・そっか。今までの頑張りだけじゃ、フェイトの心は射止められませんか」

「・・・ごめん」



そんなに申し訳なさそうにしなくても・・・。まったく。



「じゃあしゃあない。もっと頑張ることにする」

「え?」

「だから、もっと頑張る。強くなる。成長する。それで・・・フェイトのこと、振り向かせるから。
だから、それを見ててくれる? 僕は僕のやり方しか出来ないけど、それでも・・・変わっていくから」





今までの枷を、少しずつでもいい。外して、新しい僕を始める。忘れずに、下ろさずに。バカかもしれないけど、それが僕の答え。



うん、それはこれで終わりじゃない。まだ・・・始まりなんだ。

だったら・・・ね。楽しくいきましょ。僕らしいノリでね。





「それで・・・本当にいいの? 私、どう返事するか、約束出来ない」

「いいの。フェイトが今と、これからの僕を見て答えを出してくれるなら・・・それで」



真っ直ぐにフェイトの顔を、瞳を見つめる。大丈夫だからと、ニッコリ笑いつつ。



「・・・分かった。じゃあ、見ていくね。今までと、これからと・・・今のヤスフミを」

「うん」

「でも、ずっとこのままじゃない。ちゃんと、私の答えを出して、ヤスフミに伝えるから。それまで・・・待ってて、くれる?」

「・・・うん」



時間、少しくらいかかってもいいよね。今までとは違うんだから。少し怖いけど・・・でも、それ以上に嬉しい。ちゃんと見てくれるから。



「ま、覚悟はしといてよ? これからビシバシアプローチしていくから。ある人曰く、『お前、僕に釣られてみる?』・・・ってね」

「それは誰が言ったの・・・?」



ウラで亀で青くてロッドで嘘つきな人だよ。



「あ、でもそういうのは、あんまりやり過ぎると評価に響くのであしからず・・・だよ」

「・・・厳しいね」

「当然だよ。ヤスフミは、未来の旦那様になるかも知れないんだしね。しっかりと見ていかないと。簡単には釣られません」

「納得した。・・・つかフェイト、それヒロさんとサリさんに言われたんでしょ?」

「どうして分かるのっ!?」

「分かるのよ」










・・・とにもかくにも現状維持。だけど、変化はしていくらしい。





フェイトは、応えてくれた。気付いて、見ていくねと。





うん、頑張ろう。フェイト・・・僕に、釣られてもらうからね?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・とにもかくにも、やっさんのAAA試験はこうして終わりを告げた。





で、皆が気になる試験の結果だけど・・・。




















見事、合格っ!!




















いや、なのはちゃん、結構辛めに採点したらしいんだけどね。それでもこれですよ。やってることはともかく、成果は出してるしね。

うん、私らもしっかりと鍛えた甲斐があるってもんだよ。よかったよかった。





で、蛇足だけど、この試験の後、元々高かった古き鉄のあくひょ・・・もとい、評判は、さらに上昇することになった。





理由は簡単。あの『エース・オブ・エース』、『管理局の白き魔王』、高町なのは一等空尉を、勝利宣言した上で、宣言通りにものの5分弱で倒したから。

・・・いや、やっさんの勝利宣言だけが広まっちゃって、その前段階すっ飛ばしてるのがアレだけどさ。





これによって、局内外を問わず、誰であろうと決して敵に回してはいけない・・・魔王すらも一蹴出来る存在として、その名は更に広まっていくことになった。

というか、悪化した。サリ曰く本気で『なの○タ』とか呼ばれ始めているらしい。・・・我が弟弟子がどこまでいくのか、楽しみでもあるけど、怖くもある。





なお、やっさんもなのはちゃんも、試験終了から5日後には退院した。なのはちゃんがやけにゲッソリしていたのは、きっと気のせいだ。





そして・・・やっさんは、フェイトちゃんが迎えに行って、その足で局のセンターに向かい、IDカードを更新。





新しいカードには、当然のようにしっかりと『空戦AAA+』の文字が記載されていた。





フェイトちゃん曰く、やっさんとアルトアイゼンはそれを見て・・・とても嬉しそうだったらしい。





そして、こう言ったらしい。





『これを返却なんてしたら、バチが当たるね。一生持ってないと』・・・と。





その時のことを、まるで自分の事のように喜びながら話すフェイトちゃんを見ながら私は・・・素直によかったなと、思ったよ。





うん、本当によかったよ。色々とさ。




















(第29話へ続く)




















おまけ:次の嵐はもう迫っていた。というか、今回は多分ぶっちぎりでアウト。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・合格祝いと称した宴会もあったりしたけど、いい感じで日常に戻った。そして、ここから始まった。





もしかしたら、六課最大の危機だったかもしれないと、後に関係者が口を揃えて言うことになる大事件が。




















「・・・戦技披露会?」

「うん。3月の末くらいにやるらしくてね。で、今出場者を探してる最中なんだって」



今日は、フェイトの外回りに付き合っております。その道中、車内でそんな話をされた。



≪また突然ですね。・・・あぁ、アレとかコレのせいですか≫

「そ、そこを言われると辛いけど・・・そうだね、それが大きいと思う」










・・・戦技披露会とか、局が定期的に行っている公開模擬戦だ。





局内でもエースとされている人間が選出され、大衆の面前でその技術をぶつけあう。これには目的がある。





ぶっちゃけると、犯罪者やアウトゾーンな方々に対する威圧だ。局には、これだけの人材が居ると言うアピールのため。

ま、そういうのは抜きで、これに選出されることは局員にとっては名誉とされているけどね。

だって、対外的にも『アンタは強いっ!!』って、局からお墨付きもらうのと同じだもの。





ただ・・・ねぇ、やるにしてもメンバーはきっちりした方がいい。










「うん、局もそのつもりみたい。・・・なのはとシグナムは酷かったから」

≪まさしく『血戦』でしたしね。というか、また出してブラスター使われても困りますよ≫



そう、なのはとシグナムさんは、以前これに出ている。ただ・・・すごい暴れっぷりで、観客を全員引かせた。そのお陰で、教材ビデオにも使えないとか。

まぁ、あの時はみんなに説教されまくったから、大丈夫だとは思うけど・・・。いや、油断は出来ない。相手はあの二人なんだから。



「はやても、もし要請が来ても断るつもりみたい」

「正解だよ。つか、あれは一般ピーポーにはキツいって」

≪マスターは楽しそうでしたけどね≫



気にしないで。『みんながモノクロの中、ただ一人カラーだった』とか言われるけど、気にしないで。



「・・・そうだ、ヤスフミ」

「なに?」

「はやて・・・様子が変なの。というか、どんどん酷くなってる」



フェイトの顔から、心配の色が窺える。・・・そう、あのタヌキの問題は未だに片付いていない。こりゃ・・・いよいよ放置出来なくなったな。

つか、こんがらがるなら、話を聞くって言ってたのに・・・。



「ヤスフミ、私にも話してくれないかな」

「・・・えっと」

「悪いけど、もう知らんぷりは出来ないよ。はやてもそうだけど、八神家のみんなも相当気にしてる」



だよ・・・ね。うし、こうなったら巻き込んじゃおう。僕の許容量を越えてるのは、間違いないんだから。

なにより・・・フェイトははやての友達だしね。



「・・・じゃあさ、今日ははやても入れて、三人で外で夕飯にしようか。ちょうどはやても中央本部に行ってるし」

「そこで・・・だね」

「うん。たださ、フェイト」



・・・ただ一つだけ、念押ししておこう。うん、絶対にだ。



「お願いだから、冷静にね? 絶対にザンバーとか真・ソニックとかはダメだから」

≪本当にお願いします。血の雨が降るのは避けたいんですよ≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・どうして、ヤスフミやアルトアイゼンが真剣な声でそう言ったのか、その時は分からなかった。





でも、はやてからご飯を食べながら話を聞いて・・・意味が分かったよ。うん、許せない。










絶対に・・・許せない。




















「・・・フェイト、そう言いながら箸を握りしめるのはやめて。
というか、折れちゃうからっ! 少なくとも箸に罪はないよっ!?」

「そうだね、罪があるのは・・・ヴェロッサ・アコースだよね」

「あ、あの・・・フェイトちゃん? マジで目が怖いんやけど」



気にしないで。というか、ヤスフミっ!!



「なんでこんな大事な事を黙ってたのっ!? そうと知ってたら・・・」

「そうやって怒りに駆られるからに決まってるでしょうがっ! みんながみんなそうなったら、本気でどうなるか判んないでしょっ!?」

「・・・そうだね、ごめん」

≪いきなり冷静になりましたね・・・≫

「ちょっと、想像しちゃって」



・・・うん、とんでもないことになる。間違いなく。その光景を想像して、身体が震えた。



「とにかくはやて。アコース査察官とちゃんと話そう? その・・・気にしないでと言ったから、どうしても連絡し辛いのは、分かるけど」

「つか、はやてはどうしたいのよ。まずはそこだよ」



私達がそう言うと、はやての表情が一気に重くなった。・・・やっぱり辛いよね。うん、辛くないはずがない。



「・・・あのな」

「「うん」」

「そういう問題や無くなったかも知れんのよ」

「「・・・はい?」」



え、どういうこと?



「・・・来ないんよ」

「来ない?」

「フェイトちゃん、知っとるやろ? うち・・・そんな遅れたりとかしないで」



あ、そ・・・うだ・・・よね・・・。うん、ちゃんと毎月決まった日に来るって・・・。



≪・・・はやてさん、まさか来ないというのは・・・≫

「正解や」

「・・・はやて、一応確認。避妊しなかったの?」



ヤスフミの言葉に、はやては・・・頷いた。重く、辛そうな表情で。



「つ、つまりはやては・・・」

「妊娠・・・してるかも知れないってことっ!?」










・・・こうして始まった。機動六課最大の危機と騒動が。





というか・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?




















(本当に続く)







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