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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第2話 『ライド・オン・ミッドチルダ』(加筆修正版)



恭文「前回のあらすじ。電王が来ました。というわけで、僕はデンライナー署のデカになります」

フェイト「ヤスフミ、落ち着いてっ!? いくらなんでも話が飛び過ぎてるよっ!!」

恭文「フェイト、大丈夫。僕には理解出来てるから」

フェイト「ヤスフミだけが理解出来ても意味がないよっ! ハードボイルドハードボイルドッ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・恭文君ごめんっ! そこは僕達も分からないからっ!!
というか、少し落ち着こっ!? 君ちょっとテンションおかしいからー!!」

「私の方は問題ありませんよ? むしろ協力していただけるならありがたいですし」

「ありがとうございますっ! 粉骨砕身の決意で頑張らせていただきますっ!!」

一体どこの横綱就任っ!?



あぁ、どうしよっ! ヤスフミが六課に来た中で一番なレベルで瞳キラキラさせてるっ!!

でもこれはだめだよっ! ほら、みんなも完全に置いてけぼりだしっ!!



「・・・・・・良太郎さん、デカ長達もこのバカの事お願い出来ますか?」

「えぇっ!? 止めないんですかっ!!」



はやてが投げ出してるっ! というかほら、部隊長として止めようよっ!! 止めなきゃだめだよっ!?



「止められるわけがないでしょっ!? 見てくださいよっ! アイツのダイヤモンドと言わんばかりの目の輝きをっ!!
アレ見るだけでうちら全員『汚れてしまった』って痛感させられるんですよっ! それを止めるなんて、絶対無理やしっ!! 不可能やしっ!!」



はやても涙目なのは、ここまでになったヤスフミを止めても意味がないって分かってるから。

そこは昔馴染みは全員同じ。微笑ましくもあるけど、でも同時に・・・・・・なんだよね。



「・・・・・・もちろんうちらも全面的に協力しますから。具体的には捜査活動の関係をですね。
改めてクロノ提督とも相談して、うちらだけで事件に対処する流れを作りますから」

「ねーねー、狸のお姉ちゃん。それやるとどうなるの? 僕よく分かんないよー」

「誰が狸やっ! アンタぶっ飛ばすでっ!? ・・・・・・それやると、他の管理局員が事件絡みの情報をうちらにくれる。
で、うちらはその情報を元に捜査して、イマジンが出てきたら良太郎さん達で秘密裏に対処。そうすりゃ簡単にはバレません」



ようするに以前六課でガジェットを対処してた時と同じようにするって事だね。確かにそれなら可能だけど・・・・・・うーん。



”ねぇはやて、それ本当にいいの? 私もその、実はちょっと疑わしくて。
最初はみなさんにはおとなしくしてもらっていて、私達だけで対処していいんじゃないかな”





現にヤスフミが倒せたところを見ると、イマジンの戦闘能力はそこまで高くないと思う。

確かに専門家の力は必要かも知れないけど、好き勝手に動かれて面倒が起こるのも困るよ。

私も正直キャロが言った通りなんじゃないかって思うんだ。この人達の存在もかなり疑わしい。



確かに常識外の事を受け入れられないのはダメだろうけど、だからって常識を無視したらだめだよ。



ここは私達の世界で、私もそんな存在が実際に出たなんて聞いた事がないのは事実なんだから。





”えぇよ。というかフェイトちゃん、一つ忘れとるやろ”

”何かな”

”万が一にもイマジンが過去に跳んだら、うちらに対処出来んよ?”



・・・・・・あ、そう言えばそういう話してた。過去に跳んだイマジンは、デンライナーで追いかけて倒すって。



”で、おそらく自分達ならそうなる前に倒せる思うとるかも知れんけど、そないに簡単ちゃうよ”

”・・・・・・はやて、それどういう事かな。六課の戦力なら充分だと思うんだけど”

”まずフルで動かせるかどうかいう問題があるやろ。他のとこにバレんようにせんとアカンのやで?”



まぁその・・・・・・それはある。というか、私達はそうするしかない。

もう後見人がこの話を、あの人達の事を信じて『そうする』と確約しているわけだし。



”なにより今念話でヒロリスさんやなのはちゃんに改めて確認したんやけど、今日遭遇したのはどうも雑魚っぽいんよ”



考えている事が見抜かれた衝撃よりも、私は続いた言葉の方が重かった。だから私は、はやてにこう聞く。



”つまり・・・・・・もっと上が居る?”

”そうや。単純に強いのも居るし、二体が合体して一体になっとるのも居るらしいわ。
一気に10数体と出てくるタイプも居るらしい。現に今日かて二体出てるやろ”

”それは・・・・・・うん、出てるね”



あぁ、でもそっか。どういう形でそのイマジンがどれだけの数出て来るか分からないって言いたいんだ。



”まずこっちの世界にどんだけの数のイマジンが入ってるか分からんし、それを全部うちらだけで止めるんか?”

”それは無理だと判断してるの? でも他の部隊に捜査を協力してもらうなら、出来ない事はないと思う”

”無理やな”



はやてが念話で困ったような声でそう言った。ううん、実際困ってるんだと思う。

どうしてはやてがそこまで言うのかを考えて・・・・・・私は納得するしかなかった。



”現に今の時点で管理局はうちら含めて後手に回りまくりや”



ここなんだよ。現に今日ヤスフミとティア達が遭遇するまで、怪物を見つける事すら叶わなかった。

そこは私も全く否定出来無くて、表情を苦くしてしまう。隣に居るヤスフミとは本当に対称的だよ。



”なによりおかしいやんか。今の今まで怪物の事、全然察知出来んかったんは”

”だからって事?”

”だからって事や”





つまりはやては、そういう過去の改変が既に行われている可能性を考えている。

そのために私達はイマジンを認識出来ないで、今まで見過ごす結果になった。

もしそうなら・・・・・・あぁ、そうなるのかな。私達は電王のみなさんが居ないと対処出来ない。



だけどこの人達を、本当にそのまま信じていいのかな? こう思う私は、やっぱりダメなのかな。

・・・・・・なんか私、嫌な子だよ。ヤスフミが喜んでるの、素直に受け入れられない。

どうして私達と居る時にはそんな風になれないのかって考えて、またズルい私になってる。



こんな私は振り切りたいのに。こんなに弱くて汚い私は、もう変えていきたいのに。





”ま、それで納得してな?”

”・・・・・・うん”










私はまだ弱さを振り切れない。私の中の弱さが、新しい私を目指すための邪魔をする。





でも私は・・・・・・引きずられる自分が、振り切れない自分が情けなくて、私は両手を強く握り締めた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・それで恭文、ヘイハチさんなんやけどな」

「分かってる。もう居ないんでしょ? 後は僕達に任せたとか言ってさ」

「正解や」



うん、予想はしてた。これは僕や良太郎さん達の戦い。先生がそれに首突っ込むとは思えないもん。



「あ、それで・・・・・・実はヘイハチさんから預かってたものがあるんだ。・・・・・・はい」



良太郎さんがそう言って僕に手渡してきたのは、手の平サイズの一枚のチケット。



「・・・・・・これっ!!」



僕はそれを受け取って驚愕した。だってそれ、デンライナーのチケットだったの。しかも無期限。



「今回、可愛い弟子に押し付ける形になっちゃったから、そのお詫び・・・・・・だって」



先生・・・・・・空気読めてるっ! めっちゃ空気読めてるよっ!! 僕これ欲しかったんだからっ!!



「先生ありがとー! やったー!! これで僕もこんなブラック部隊とはおさらばして旅に出れるー!!」

『ちょっとっ!?』

「あ、ごめん。ついつい本音が出ちゃったよ。てへ♪」

『せめて否定してっ! というか、可愛くないからその顔やめろっ!!』



有象無象の言う事など、僕は知らない。重要なのは、これで僕がいつでも旅立てるという事なんだから。

あぁ、世界が広がる。きっとドキドキワクワクな事が沢山・・・・・・楽しみだなー。



「あぁ、タダではありませんよ?」



でも、そんな僕に冷水をかけるようにそんな事を言う人が居た。



「・・・・・・へ?」



僕は当然のように、その人の方を見る。その人は我らがボスであるデカ長。



「あの、デカ長。それってどういう」

「良太郎君には話していませんでしたね。チケット代は恭文君からもらうという事になっているんですよ」

「「・・・・・・え?」」

「手持ち金が無かったそうです。まぁ君なら買えない額ではないから問題ないかと、笑っていましたけどね」

「・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

あの人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
返せっ! 僕の感謝の気持ちを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!




・・・・・・なお、チケットはかなり高額だったけど、貯金の3分の1を崩して購入可能になった。

そして事件の間はこのチケットを機動六課のメンバーで共有する事で話がついた。つまりみんなも出入り自由。



「・・・・・・フェイトとリインだけ共有はダメなんですか?」

「ヤスフミ、どうして不満そうなのっ!!」

「嫌だなぁ、フェイト。僕だって分かってるよ? 冗談だって」

「全然冗談に聞こえなかったよっ! 限りなく本気だったよねっ!?」










まぁ即行で購入を決めたのには、みんな呆れてたけど・・・・・・いいのよっ! だって無期限だったしっ!!





あぁ、これは絶対に家宝にしようっ! というか、とっとと事件解決して旅に出るんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!




















ー時の列車・デンライナー。次に向かうのは、過去か、未来かー










『とまとシリーズ』×『仮面ライダー電王』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間


第2話 『ライド・オン・ミッドチルダ』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



こうして会議は・・・・・・終始キラキラなヤスフミのペースに乗っかる形で終わった。





それで解散になったけど、私はシグナムと一緒にはやてと改めてお話。










「主、本当にいいのですか?」

「なんやシグナム、不満か?」

「そうですね、いささか不満は残ります」



シグナム的にも、さすがにあれは受け入れがたいらしい。でもシグナムは、そこから『ただ』と続けた。



「蒼凪やヒロリス殿ではありませんが、『ありえない事はありえない』というのは事実です。
これが嘘だと証明する術も、今の私達にはない。事実ならば事態は相当に急を要するでしょう」

「事実なら・・・・・・やな」

「はい」

「まぁ、そこはヘイハチさんの紹介っちゅうんがあるから大丈夫やけどな。うん、うちかて動揺はしとる。・・・・・・電王見てる組は別やけど」



そうなんだよね。ヒロリスさん達になのはやヴィータまで嬉しそうにしてる。あとはザフィーラも? 尻尾振ってたし。



「はやて、私の方でちょっとあの野上良太郎って人の事、調べてみるよ」

「どうやってよ。なによりそないな時間はないって。
てーかそないな辛そうな顔しとるアンタに、やらせられんよ」

「それはそうなんだけど・・・・・・そんな顔、してる?」

「しとるなぁ」





あ、シグナムも頷いて来た。・・・・・・なんだろ、やっぱり自分が嫌いになりそうだからかな。

ヤスフミの世界が広がった事を、どこかで認められないって思ってる自分が居るの。

あんなチケットなんて必要なくて、あんなどこの誰とも分からない人達の仲間になる必要なんてない。



それなら私達を見て欲しい。私達の作った夢の場所を見て欲しい。

それでずっとここに居て居場所にして欲しいって・・・・・・そう思ってる。

もちろんそんなのダメだって、私はもう分かってる。



そんなのヤスフミの事を縛りつけてるだけだ。これはきっと今までの私の声。

それは今の私の声じゃない。今の私の声は、ヤスフミのキラキラがとっても嬉しい。

六課に来てからあんなにハシャいで目を輝かせてるヤスフミ、そんなに見た事がない。



でも私はそんなヤスフミが認められなくて、今の私の声は嘘であり間違いだとも思いたくて・・・・・・だから苦しい。



私は過去に引きずられてる。過去に引きずられて、私は今からまた逃げようとしている。





「まぁフェイトちゃんには言うたけど、実際問題としてイマジン『らしき』怪物は出とる。
あの人達が今回の事件の鍵を握ってるんは間違い無いやろ。そやから」

「・・・・・・分かった。不用意に警戒されたり、衝突して距離が出来るような行動は避けるよ」

「うん、それでえぇ。シグナムもお願いな?」

「心得ました」










私は弱い。ダメだって分かっている声さえ振り切るのに、とても苦しんでしまう。

だけど、それが出来なきゃ私・・・・・・あの子と向かい合えない。今それを改めて痛感した。

今の私のままだと、ヤスフミの事縛りつける。ヤスフミのキラキラを壊しちゃうだけだ。





だけど私はそんなのは嫌で・・・・・・なんだろ、上手く言えない。私は、ヤスフミの側に居ない方がいいのかな。





こんなに弱くてダメで醜い私は、ヤスフミの彼女になんて・・・・・・なっちゃいけないのかも知れない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕は会議を終えて、良太郎さんと二人で隊舎内を歩きながらお話。

時の運航の事とか電王やデンライナーの事。僕の知識と差異が無いかどうか、確認してた。

・・・・・・ほぼ差異0ってどういう事だろ。もうね、全く違うとこがないの。





オーナーは否定してたけど、本当にロストロギアの影響とかでTVから飛び出して来たんじゃないかと疑ってしまう。





ただ、それも無いというのは分かった。だって、良太郎さんの話がところどころおかしい。










「それで良太郎さん、さっき少し言ってましたけど・・・・・・本当にSPDってあるんですか?」

≪それに恐竜やもですよ≫

「うん、あるよ。・・・・・・あ、ドギーさんがうちのコーヒー気に入ってくれてるんだ」

「そ、そうなんですか」





SPD・・・・・・Special・Police・DEKARANGERの略。熱いハートでクールに決める、五人の刑事達だよ。



ドギーというのはそこのボスであるドギー・クルーガーの事。いわゆる獣人だよ。



そして恐竜やは、アバレンジャーだね。つまりよ、良太郎さんの周囲に戦隊物な方々も居るのよ。





”アルト、これどういう事だと思うっ!? 僕は素晴らしい冒険の日々の始まりだと思うんだけどっ!!”

”いや、落ち着きません? 気持ちは分かりますけど、落ち着きましょうって。
・・・・・・まず良太郎さんの地球と、私達の地球は違うようですね”

”ヴェートルとかと同じように、文化形態が似てる世界なのかな”

”にしては似過ぎですけどね。で、あなたは行ってみたいんでしょ?”

”うん”



だってー! やっぱワクワクだものっ!! ワクワクのドキドキで、スペクタクルだよっ!!



「あ、そう言えば僕も一つ質問」

「はい?」

「ヘイハチさんからも実は聞いてたんだけど・・・・・・旅や冒険とか、不思議な事って、大好きなの?」

はい♪



・・・・・・あれ、なんで良太郎さんは僕から目を逸らすの? なんでちょっと逸らす前に目を細めたのかな。



≪直視出来ませんか?≫

「うん。あの・・・・・・瞳が凄いキラキラしてて、眩し過ぎるの」

「あの、二人共なんの話を・・・・・・あ、そうだ。僕の事は呼び捨てでいいですよ? 敬語も無しで」

「・・・・・・いいの?」



いや、だからどうして伏せ目で僕を見るんですか。なんで目を細めちゃうんですか、あなた。



「じゃあ、恭文君で・・・・・・いいかな?」

「はい」



あ、僕は敬語のままで。だって・・・・・・尊敬する人なわけだしー。



「それで、良太郎さん達はデンライナーの方に常駐ですか?」

「いつもならそうするんだけど・・・・・・でも、こっちに居た方が動きやすいんだよね」

「・・・・・・モモタロスさんとか、大丈夫かな」

「着ぐるみでごまかす事にするよ。あの、なんとかする」










僕達は楽しくお話しながら、食堂へと足を進めた。そうしながら、少し考えた。

・・・・・・うん、絶対に守ろう。イマジンが相手だろうと、僕のやる事は変わらない。

僕は僕のためにケンカするんだ。あんな奴らに何も壊させない。絶対に・・・・・・守り通す。





胸の中で決意を固めながら、僕は良太郎さんと一緒にまずは食堂を目指す。





時間もいい感じだし、ご飯ですよご飯。ご飯を食べて、すっきりしなくちゃ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・とにかく、今後ともこういう事は避けてくださ」

「てめぇ、ふざけんじゃねぇぞっ!!」

「それはこっちのセリフだっ!!」

「やめてくださいと何度言えば、分かっていただけるんですかっ!?」





どうしてこうなるのかしら。元々はすごく仲がいいと評判だったのに。

・・・・・・私、ギンガ・ナカジマ。現在頭を痛めています。

原因は、警ら中に会ったこの二人。30代前半の土木作業員なんだ。



それはもうなんとかファイトって言わんばかりのすごい取っ組み合いの喧嘩をしていた。

当然私はそれを見過ごせず、なんとか取り押さえて事情を聞いてた。

すると、いつもこの調子と言うから呆れた。何回か局員にお説教されてもこれだって言うし。





「「けどよ、コイツが」」

「・・・・・・仲良く、してくださいね?」

「「・・・・・・・・・・・・はい」」










・・・・・・はぁ。これで収まってくれるといいんだけどな。これ以上続くとさすがに見過ごせないよ。





ケンカに巻き込まれて周囲の人が怪我する危険性だってあるんだよ? 絶対止めなきゃだめ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・へぇ、ここが食・・・・・・って、みんな居るね」

「居ますね。てか、なんですかあの荷物」

≪床が沈んでますね≫



見ると早々にご飯を食べてたモモタロスさん達がいる場所の近くに、机やらポスターが大量に・・・・・・って、あれはなに?



「・・・・・・あ」

「良太郎さん?」



良太郎さんが何かに気づいたように目を見開いた。それでそのまま・・・・・・ダッシュする。



「みんなダメだよっ! ここに荷物持ち込んじゃー!!」



そう言って、良太郎さんが走っていく。・・・・・・え、まさかアレは。



「デンライナー署の荷物なんだって」



後ろから聞こえて来た声の主は、ティアナ。なお、その周りにはスエキも居た。



「そう。でもどうしてみんなはそんなに疲れきってる?」

≪そうですよ。あなた達なんでそんな死にかけなんですか≫



しかもこの四人達は、妙に疲れきっていた。というか、なんか抜け出てる。



「だって、アイツらテンションおかし過ぎ」

「もう、元気で元気で・・・・・・というか、僕は上手くやれる自信ないよ」

「マトモな人が一人も居ないんですけど、私はどうすれば」

「・・・・・・なんか私、嫌われてるのかな?」



まぁクセの強い人達ではあるし、何分僕も今まで相当好き勝手やってたのでここに関しては言うつもりはない。

無理に良太郎さん達を好きになれとは言うつもりはない。ただ、なんというか・・・・・・一つ気になった。



「スバル、嫌われてるってなに? アレか、豆芝ヒップアタックとか言う寒いギャグでもかましたか」

「そんな事してないよー! どういうワケかあの赤い人が私の事避けるのー!!」

「スバル、お風呂ちゃんと入った? モモタロスさんは鼻が利くから、匂いで避けられるとか」

「入ったよっ! というか、恭文ひどいよー!!」

「・・・・・・おい、お前らっ!!」





僕は後ろから聴こえた声の方に視線を向けた。なお、今のはモモタロスさん。

・・・・・・あ、確かに避けられてる。というか、こっちとすっごい距離取ってるし。

そのせいでやたらと声がデカくて、食堂中に響いてる。だから全員がモモタロスさんを見る。



でもなんで椅子の影から声出してるんですか。良太郎さん達は・・・・・・あ、困った顔してる。





「イマジンだっ!!」



あぁ、なるほど。イマ・・・・・・え?



「イマジンッ!? もしかしてまた出たんですかっ!!」

「モモタロス、ホントにっ!? 昼間倒したばっかりなのにっ!!」

「んな事言ったって仕方ねぇだろっ! マジなんだからよっ!!
おい青坊主、お前俺達をそこまで連れてけっ!!」

「僕達、こっちの世界の地理はサッパリだしね。出てるなら道案内は必要か」



うし、それならこうしちゃいられない。モモタロスさんが言うなら、十中八九イマジンは出てる。



「はぁっ!? ちょっとちょっと、落ち着きなさいよっ!!」

「そうですよ。もしそうなら、サーチャーとかに反応が出ているはずです。
まずは八神部隊長達に相談して、調べてからです。僕、ちょっと報告に行って来ますから」

バカかお前らっ! そんな事してる間に逃げられちまうだろうがっ!!
おい良太郎っ! 俺達だけでとっとと行こうぜっ!!


「バカってなんですかっ!? 私達は部隊なんですっ!! あと、勝手な行動は謹んでくださいっ!!」



だから声うるさいっ! そしてなんでそんな怯えてるっ!? アンタさっきまで普通だったように感じるんだけどっ!!

・・・・・・えぇい、もうここはいい。過去に跳ばれる前に捕まえないと、真面目に大変な事になる。



「モモタロスさん、車出しますからナビお願いします。他のみんなはワゴンで追っかけてきてください」

「恭文っ! ちょっと待ってっ!! まずは部隊長達に報告を」

「そんな暇あるかボケっ! お前らマジ空気読めっ!! ・・・・・・アルト、いくよ」

≪えぇ。しっかりやりましょうか≫










というわけで、静止するスバル達は軽くシバイた上で僕達は隊舎の外へ急ぐ。





でも、またいきなり・・・・・・もしかして気づく前から、これくらいの頻度で出てた?





ただ僕達が気づかなかっただけで、ただ僕達が分からなかっただけで・・・・・・僕は自然と両の拳を強く握り締めた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



廊下を全力疾走している僕達の足音が、廊下内に響き渡る。





まずは駐車場に出るために、ロビーを目指す。それから車を動かしてアクセル全開だ。










「あの、恭文君っ! いいのっ!?」

「何がですかっ!?」

「あの子達だよっ! 恭文君が蹴り飛ばしたせいで目を回してたけどっ!!」

「気のせいでしょっ!!」

「絶対気のせいじゃないよー!!」



良太郎さんは、やっぱり良識派らしい。だからこういう細かい事を気にする。

それはきっと僕も見習うべきだと思う。でも大丈夫。これは奴らの自業自得なんだ。



「いや、仕方ないですよね? 『通りたければ自分達を倒せ』とか言うから」

「いや、確かに言ってたけど・・・・・・恭文、多分普通それで躊躇いなく蹴りは入れないと思うなぁ。しかもちょっとフライング気味だったし」

「大丈夫です。全てにおいて公正な判断でした。不正は何一つありませんでした」

「むしろ蹴った事が不正よねっ! あぁ・・・・・・やっぱりヘイハチさんの弟子だったんだっ!!
もう行動とか言動とかが似通ってるしっ! 予想して然るべきだったわっ!!」



ハナさんが僕と先生の事を誉めてくれてるので嬉しくなっている間に、僕達はもう隊舎のロビーに来た。

するとそこには・・・・・・む、息を切らせながら立ちはだかる影がある。



「みんなストップっ! ヤスフミも一旦止まってっ!!」



当然ながら、それはフェイト。なので即座に作戦を組み立てて・・・・・・うし。



「良太郎さん、このまま全力で駆け抜けてください。いいですね? 絶対に止まらないように」

「まず私達が調べてみますから、止まってっ! その上で反応があるようならすぐに出動するっ!!
みんな本当にお願いだから、ここに居る以上はここのルールを守った上で行動してっ!!」

「え? あの、恭文君」

「いいですから」



言いながら僕は、アクセル全開の正真正銘の全力疾走。この時のフェイトとの距離は、約50メートル。

つまり・・・・・・僕の距離。僕は一瞬でフェイトの懐に入り込んだ。



「・・・・・・フェイト」

「なっ!!」



フェイトが驚いた顔するけど、僕は気にしない。僕はそのままフェイトの右手を引いて、一気にダッシュ。



「一緒に行くよっ!!」



フェイトはバランスを崩しかけたけど、咄嗟に走って僕の事を止めようとする。でも、結局はそのまま引っ張られる。



「え・・・・・・・えぇっ!? あの、ヤスフミっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おいおいっ! アイツあの嬢ちゃんそんまんま引っ張ってったでっ!!」

「バカっ! 見りゃ分かんだよっ!! とにかく俺達も急ぐぞっ! また止められても仕方ねぇっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ヤスフミ待ってっ! お願いだから止まってっ!? まずちゃんと調べてから」

「じゃあなんでイマジンの存在が分からなかったのっ! 相当みんなしてちゃんと調べてたでしょうがっ!!」



陽が落ちかけている海の風景など気にせずに、僕は走る。そしてそう叫んだ。

抵抗し気味だったフェイトの足取りが、そこから少し変わった。



「・・・・・・あの人達を信じる根拠は何かな。専門家だからって、勝手に行動されたら私達が迷惑だよ」

「てーか、モモタロスさんはイマジンの気配を『匂い』として探知出来んのよっ!!
しかも的中率は100%! イマジンは確実に出てきてると見ていいっ!!」



そう言っている間に、僕達はトゥデイにたどり着いた。

アルトがオートロックを解除してくれたのか、運転席と助手席側のドアが一人でに開いた。



「ヤスフミ、それなら一つ質問」

「なにさ」

「どうしてあの人達をそこまで信じられるの? いきなり友達になれてるわけでもないよね」



僕は運転席の方に乗り込む。フェイトは助手席のシートを倒して、後部座席に身体を潜り込ませた。



「なのにどうしてかな。やっぱり、六課の事が嫌い?」

「嫌いだね。でも今回は違うよ」



僕はフェイトに視線を向けずに、すぐにエンジンをかける。横を見ると・・・・・・あ、モモタロスさんが乗り込んで来た。

隣に止めてあったワゴンもエンジンかかってる様子だし、このままいけるね。



「見て分かったんだ。あの人は、正真正銘の野上良太郎だってさ。・・・・・・だからだよ。
他はともかく、あの人なら信じられる。あの人はめちゃくちゃ強いんだから」

「・・・・・・そっか」










フェイトはそれだけ言うと、もう僕達を止めるような事はしなかった。

僕はそのままアクセルを踏み込み、再び街へ繰り出す。もちろんサイレン鳴らして全速力だよ。

モモタロスさんの指示に合わせて、公道をひた走る。その後ろをワゴンがついて来る。





そうしてたどり着いたのは・・・・・・・市街地の中にあるけっこう広めな公園。





モモタロスさん達に例の着ぐるみを着せた上で、その中に僕達は突入した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ヤスフミ、これなにっ!?」

「知らないよっ!!」





僕はフェイトの手を握り締めた上で、人ごみをかき分ける。いや、これは正確じゃない。

公園の中に居たと思われる大量の人が、公園の外に向かって逃げて来てるのよ。

てーかめっちゃ胸騒ぎがする。しかもこのパターンは、間違いなくトラブル関係が起きてる。



それだけじゃなくて、進行方向から・・・・・・なんか突き刺さる感じがするのよ。





「お願いですっ! 通してくださいっ!! 時空管理局の者ですっ!!」

「・・・・・・ヤスフミ、この声」

「うん」



ようやく人の波を脱出して、僕達は辺りを見回す。

するとかなり近くに、局の制服を着た青髪ロングヘアーの女の子が居た。



「「ギンガ(さん)っ!!」」

「・・・・・・なぎ君っ!? それにフェイトさんもっ!!」

≪あなた、こんな所でなにを≫

「丁度よかった。手伝ってっ!!」

「「はい?」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それじゃあギンガ、ギンガが昼間ケンカの仲裁をした二人がまた大喧嘩して・・・・・・これなの?」

「えぇ。私も信じられないんですけど・・・・・・というかフェイトさん」



私は現場に向かいながらも、なぎ君とフェイトさんに事情説明をしてた。

そして、その間ずっと疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。



「その方達は?」

「えっと・・・・・・この一件の専門家、かな」



でも見た感じ、局員じゃないよね。局員制服を着てるわけでもなんでもないし。

というか、狼やペンギンにゾウさんに竜の着ぐるみ着てる人が居るのはどうして?



「あの、ギンガさん・・・・・・だったよね」

「あ、はい。108部隊所属のギンガ・ナカジマ陸曹です」

「嬢ちゃん、恭文とは友達やったな」

「はい」



・・・・・・あれ? なんで着ぐるみの人達は、急に身体をくっつけ合うの?



・・・・・・みんな、どうやら正解らしいよ。この子が噂の

じいさん曰く、真ヒロインっちゅうやつか

アレだろ? あのジジイから見てもフラグが4まで立ってて、青坊主が望めばED直行っていうあの

恭文、フェイトお姉ちゃんが本命だよね。どうしてこうなるの?

リュウタ、それは彼が天然フラグメイカーだからだよ。そして、そういうのが本命を釣り上げるのに苦労するのは、お約束。
でもこの子、いくらなんでも外道にしておくにはもったいなさ過ぎるよっ! 一体これどういう事っ!?




・・・・・・なぎ君、本当にあの人達はなに? というか今、すごく気になるフレーズがいくつも聞こえたんだけど。

あのね、真面目に私は疑問なの。なにより専門家って言うのも意味が分からないんだけど。



「ヤスフミ、ただのケンカならやっぱり勘違いだったんじゃないかな」



なぎ君とずっと手を繋ぎっ放しのフェイトさんがそう言うけど、なぎ君は何も答えない。

というか、表情が硬い。なぎ君、肩を寄せ合って私の方を見ているあの人達とは対称的な空気を出してる。



「ヤスフミ?」

「そうだね、勘違いなのかも知れないね。・・・・・・普通のケンカならさ。
フェイト、何も感じないの? だったらいくらなんでも温過ぎだわ。修行し直した方がいい」

「あの、感じないって何かな。私やギンガにも」





言いかけたフェイトさんが気づいたらしい。というか、私も気づいた。

私達の進行方向・・・・・・あの先から、肌を突き刺すような気配が飛んで来てる。

それは敵意、殺気、闘気・・・・・・色々な言い方が出来ると思う。



でもあえて言い方を一つに絞るなら、これしか無い。

この気配を出してる人間は、相手に対して明確に敵意を持っている。

それも普通じゃない。とんでもなく相手を壊したがってる。





「・・・・・・これ」

「やっと気づいた?」

「ヤスフミ、これ何時から」

「僕は入った時から妙な感じがしてた。まぁ確定したのはついさっきだけど」



これをあの混乱の中で・・・・・・あぁ、出来る。だってなぎ君はそういう察知能力が高いもの。

私達がデバイスや魔法に頼らなきゃ・・・・・・ううん、それに頼っても分からないようなものでも、なぎ君は気づけるから。



「やっぱり修行し直した方がいいかな」

「いいだろうね。じゃなきゃ僕は安心して旅にも出れないわ」

「そっか。それは・・・・・・私的に凄く困るな。それじゃあヤスフミが夢見れなくなっちゃうもの」





そんな事を言っている間に、私達はその気配の発生源をようやく視界に入れた。

それは男二人がケンカしてるせい。ただし、ケンカによる余波がとんでもなくありえない。

まず周りの木が何本もへし折れている。地面にクーレターが出来ている。



私はそれを見て一瞬、なぎ君に聞いて試しに読んでみた有名なアクションマンガを思い出した。





おらおらおらおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

いい加減潰れろっ!!





拳は相手の身体を穿ち、蹴りは派手に身体を吹き飛ばす。でも互いにすぐに立ち上がり、零距離で殴り合う。

相手のアッパーが決まったかと思うと、それを打ち込まれた方は踏ん張って左脇腹に右フックを叩き込む。

そのまま吹き飛ばされた人の身体が木にぶつかって、木が中程から派手にへし折れる。でも、すぐにその人は飛び出す。



飛び出して顔面を殴って、同じように吹き飛ばす。また同じように飛び出して、また殴り合う。





「・・・・・・ギンガさん、アレ?」



なぎ君の言葉に、私は頷く。でも・・・・・・ありえない。



「ギンガ、あの二人は魔法」

「使えません」



使えてたら、もっと大事になってるはずだからここは事実。一応私からも確認はしたから。



「だからあんなの・・・・・・あんなのありえないっ!!」

「おい、ボーっとすんなっ! 止めるぞっ!!」





着ぐるみの人にそう言われて、止まっていた思考が動き始める。

私はあの二人へと走り出す。ううん、その前になぎ君が走っていた。だけど、それじゃあ遅かった。

だってなぎ君の射程距離に入る前に、決着がついてしまったから。



二人はクロスカウンターを入れて、そのまま仰向けに倒れた。

そして倒れたあの人達から、砂が吹き出す。

それはあっという間に、見た事もない異形の怪物を形取った。



それは二本足で立つ青いコウモリのような怪物と、黒い狼のような怪物。





≪・・・・・・二体ですか。しかもそれぞれに違うイマジン≫










そしてそのまま、その怪物は倒れたあの人達に吸い込まれた。





後に残ったのは、傷だらけでボロボロな親友だった二人だけ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕は良太郎さんから空のチケットを借りて、片割れのおっちゃんの額に当てる。





すると出てきた日付は・・・・・・3年前の3月24日。










「この日、何があったか覚えてませんか?」



あ、二人には回復魔法をかけて一応の治療はしてある。でも、これ以上は僕にはどうしようもない。

はよ病院に連れてくなりしなきゃいけないけど、それはギンガさんが呼んだ応援に任せる事にする。



「仲間内で、花見ってやつをしてたんだよ。そうしたら」

「そうしたら?」

「財布、盗まれたんだよ。俺がちょっと席を外した間だったんだ。どう考えても、アイツしか居なくて」

「それで仲が悪くなったんですか」

「俺は・・・・・・アイツが謝れば、許すつもりだった。人間、出来心ってやつはあるだろ?
アイツがその時、色々あって金に困っていたのも知っていたし。でも」



起き上がれないおっちゃんは涙ぐむ。涙ぐみながら、良太郎さんと話しているあの人を見る。



「なんでだろうな。めちゃくちゃ一緒に酒飲んで、飯食べて・・・・・・なのに、なんでだろうな」

「・・・・・・なんででしょうね。本当に、なんででしょ」



僕は起き上がりながら、少し息を吐く。吐いて・・・・・・気持ちを固めた。



「なぎ君、これどういう事?」

「後で説明する。ギンガさんはこの人達の事、お願い」

「だめ、今ちゃんと説明して。いったい」



ギンガさんが言いかけた瞬間、破砕音があちらこちらから聞こえた。

そちらに僕達が目をやると・・・・・・やっぱ始まったか。



「木が・・・・・・消えてくっ!?」



フェイトの言うように僕達が今居る公園の木が、消えていく。まるで砂が崩れ落ちるようにあっけなくだ。

それだけじゃない、地面にベンチにトーチに・・・・・・色んなものが前触れなく壊れ、抉れ、消えていく。



「あの、これって」

「過去でイマジンが暴れてるんだよ」



イマジンが過去で暴れると、こういう事になる。これが昼間話した過去が壊された時に起きる現象だよ。



≪こうやって時間を消していくんです。人も、過去も、現在も、未来も≫



もちろんイマジンが人を消せば、当然その人も今から消える。でも・・・・・・どうして?

なんのために奴らはミッドに来た? それでなんで時間破壊なんてしてるんだろ。



「本当・・・・・・だったんだ」

「何さ、信じてなかったの?」

「うぅ、そこを言われると弱いです」



少しヘコんだ様子のフェイトを見て、僕は苦笑する。それから左手で頭を撫でる。

フェイトは驚いたのか目を見開くけど、すぐに頬を赤く染めて僕の方を見て嬉しそうに笑う。



「恭文君」

「あ、はい」



・・・・・・集中しようっと。でも、よく分かったよ。うん、よく分かった。



「もしかしてそっちの人も、3年前の3月24日かな」

「という事は契約内容も」

「うん。相手と向かい合って白黒はっきりつけたいって契約したみたい。・・・・・・ただ」

「何かあったんですか?」

「実はその、殴り合いをするつもりはなかったらしいんだ。ちゃんと話して、仲直りしたかったみたい」



困ったようにそう言う良太郎さんを見て、僕はまたあのおっちゃんを見る。

おっちゃんは呆然とした顔で僕達の方を見てた。それから改めて、あの相手の人を見る。



”これは、同じようですね”

”そうだね”





ここもイマジンの特徴の一つだよ。イマジンは、契約が完了出来さえすればなんでもいいの。

今回も同じだよ。どっちのイマジンも『相手を叩きのめす』という方法で白黒をハッキリつけて、契約を完了させた。

でも実際は違う。二人はそんな暴力・・・・・・ケンカ以外での解決を、イマジン達にお願いしたはず。



もしかしたらギンガさんのお説教が通じてたのかも知れない。もしかしたらずっとそう思ってたのかも知れない。



でもその願いは歪められて、やりたくもない殴り合いを・・・・・・ふざけんな。





「とにかくすぐにイマジンを追う。君達も」

「はい、一緒に行きます」










こうして、僕達は過去に・・・・・・新暦73年の3月24日に跳ぶ事になった。





空から現れた、白い時を駆ける電車に乗り込んでひとっ飛びだよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・信じられない」

「でも、本当だよ。というか、現に列車乗ってるじゃないのさ」

「ヤスフミ、それはしょうがないんじゃないかな。あの、あんまりにいきなりだし」



結局、ギンガさんもついて来た。仕方ないので僕と良太郎さんで事情説明だよ。

当然ながら困惑気味な顔をしていて、僕が悪い事してるみたいで辛い。



「あの、ギンガさん」

「はい」

「さっきも話したけど、僕達の事が時空管理局にバレるとまずいんだ。
六課の人達や恭文君はまだいいんだけど」



・・・・・・ギンガさん、その苦い表情はやめてあげて。良太郎さん、困ってるから。



「本当は、局を信じていただけると嬉しいんですけど」

「それは・・・・・・ごめん。そう、だよね。ギンガさんやフェイトさんは局の人だし」

「・・・・・・すみません。ちょっと意地悪しちゃいました。今聞いた通りの事情なら仕方ないですし。
私も、皆さんやこの電車が存在している事は、黙っておきます」



ギンガさんがそこまで言うと、僕の方を真剣な顔で見た。



「その方がいいんだよね」

「うん。デンライナーの事は抜きにしても、仮面ライダーが実在してるなんてバレるとマズいし。てーかありがと」

「あの、本当にありがとう。それで・・・・・・ごめん」

「いえ」



到着まではあとちょっと。僕は両拳を握り締めて、気持ちを固める。



「フェイト、ギンガさん。悪いんだけど手出ししないでね?」

「あの、私は大丈夫だよ? 手出ししたくても・・・・・・うぅ」

「・・・・・・ごめんね、ギンガさん。僕は多分すっごい酷な事を聞いた」



マリエルさん、もしかしてギンガさんに相当プレッシャーかけてます? ギンガさんがめっちゃ怯えてるんですけど。



「ヤスフミ、それはだめだよ。私もその・・・・・・頑張りたい。
信じ切れなかった分頑張って取り返したいんだ。だから一緒に」

「フェイト、聞こえなかった?」



僕は隣に居たフェイトの方を見て、にっこりと笑ってあげる。なぜかそれでフェイトの身体が震えた。



「僕は、あのクソ野郎共をこの手でぶっ潰したいのよ。だから手出しされると困る。僕の獲物を横取りするな」

「・・・・・・ヤスフミ」

「・・・・・・てーかさ、大丈夫だって。フェイトやみんなの立場や常識的に難しい事が多いのは分かってるしさ。
いきなりこっちに合わせろとか、それが当然とか言うつもりもないよ。それが正しい事だとも思ってない」



これでも嘱託歴も長いし、そりゃあそれなりにさ。僕や良太郎さん達が無茶振りしたのも分かるさ。



「だからみんなが今手が届かない分は、良太郎さん達を信じてくれるまでは僕がやる。
でも、別に六課のためとかじゃない。これは僕のケンカだから。これは、やらなきゃいけない事なの」

「・・・・・・うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そう言ってくれるのは嬉しい。本当に嬉しいしありがたい。でも、それじゃあ嫌だよ。

それじゃあ嫌で・・・・・・私、どうしちゃったんだろ。私なりに気持ちは固めたはずなのに、また迷ってる。

それはきっと改めて弱くて情けなくて、言い訳ばかりの自分に気づいちゃったせい。





私、このままでいいのかな。ヤスフミに任せっ放しの守られっ放しなのに。





ううん、良いわけがない。でもそれなら私は、この状況でどうやって動いていけばいいんだろ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ようやく目的の時間に到着。デンライナーを降りると、そこは3年前のあの公園。





桜の綺麗なそこで。クソ野郎なイマジン達が大暴れしてる最中だった。





まぁここまでは予想通り。とっとといき・・・・・・お、狼とコウモリが睨んできてるし。いや、怖いね〜♪










「うし、バシッと」

「ちょっと待ったっ! モモタロスは昼間暴れたでしょっ!?」



飛び出そうとしたモモタロスさんを制したのは・・・・・・リュウタロスさん?



「恭文、今度は僕と一緒だよ。いいよね?」

「いいですけど」

「ありがとー。というか、おじいちゃんから色々話を聞いてて、興味あったんだー。ねね、強いんだよね?」

「まぁ、それなりに」



僕と良太郎さんはベルトを腰に巻き、紫のボタンを押す。



「・・・・・・恭文君、それは?」

「電王には変身しませんよ? ま、見てのお楽しみって事で」



とにかく二人でパスケースを右手に持って、ベルトにセタッチ。



『変身』

≪Gun From≫

≪Riese Form≫





良太郎さんの身体にリュウタロスさんが吸い込まれる。

良太郎さん・・・・・・いや、良太郎さんに憑依したリュウタロスさんの身体に、アーマーが装着されていく。

その姿を例えるなら、まさしく竜。紫の仮面を装着して、電王・ガンフォームはその姿を表す。



僕も同じだ。いつもと同じバリアジャケット・・・・・・騎士甲冑を装着。さぁ、ぶっ飛ばしていくよ。





≪The song today is "Double-Action Gun Form"≫



そして互いの変身が終わったのを見計らうように、音楽が流れ出す。

だから僕達はイマジンを指差し、こう言い放つ。



『・・・・・・お前達、倒すけどいいよね?』



身体をクルリとターンさせ、更に続ける。



『答えは聞いてないっ!!』










そのまま僕は、コウモリへと飛び出す。コウモリは身構えつつ僕の方に飛び込む。





右の翼・・・・・・甲剣のようになっているそれを、左薙に打ち込んでくる。僕はアルトを抜いて袈裟に叩き込む。





僕達はそのまま交差して、夜の闇に派手に火花が走った。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「これ・・・・・・試験で使ったベルトっ!? なぎ君、またこんなっ!!」

「あはは・・・・・・ギンガ、ごめん。ヤスフミかなりお気に入りみたいで」

「・・・・・・おい、アイツなんであんないいのを俺の時に使わなかったんだよっ!!」

「「えぇっ!?」」



思わずフェイトさんと声をあげて、鬼っぽい赤い人を見てしまった。というかあれ、いいものなの?



「彼、先輩と同じタイプだったんだ。これはまた」

「深い奴やなぁ」

「納得出来るんですかそれでっ!!」

「でも、アレのおかげでリュウタも恭文も楽勝モードだよ?」

「「・・・・・・え?」」



私達は改めて、電車の外に視線を向ける。そこには、当然戦っている光景が映っている・・・・・・あ、当たり前過ぎるかな。



「恭文、面白いの持ってるんだねっ!!」





えっと・・・・・・紫の人は黒い狼に近寄りながら、腰のパーツを組み立て始める。

黒い狼は乱暴に数度斬りかかってくるけど、それを全部余裕で避けてる。こう、踊ってる感じ。

ステップを踏みながら、その一歩で相手の太刀をすれすれで避けてる。



上から打ち込まれたら、それをクルリと回転しつつ左に動いて回避。



狼が刃を返して、そこに横から打ち込んでくるけど大きく後ろに跳ぶ。





「あらま、気に入ったんだっ!?」

「すっごくっ! なんかね、身体がすっごく軽いよ〜!! こう、踊りたくなっちゃうっ!!」

「てか、踊ってるしっ!!」

「うん、そうだねっ! 踊ってるっ!!」





なぎ君もイマジンが飛びかかっても、それをしっかり弾いて防御する。ううん、受け流してる。

身体を回転させ、アルトアイゼンを打ち込んで相手の攻撃を捌いた上で力を押し流している。

コウモリは振り返ってすぐさま翼を打つけど、なぎ君は後ろに下がりつつアルトアイゼンを振るってやっぱり受け流す。



というか、二人とも楽しそう。流れてる音楽にノリながら、リズミカルに動く。



特にあの紫の人。本当に楽しそうに・・・・・・踊ってる。





「くそっ! うっせぇぞこれっ!!」

「えぇいお前らっ! ちょこまかするなっ!!」

「そう・・・・・・だったらいいよ」



紫の人は踊りながら避けながら、遊ぶようにして組み立てた銃の銃口を狼に向ける。



「バンバンッ!!」



次の瞬間、銃口から光の弾丸が飛ぶ。その全てが黒い狼の装甲を叩く。



「うおっ!!」



至近距離で発砲っ!? それも、一発じゃないっ!!

これにはたまらずイマジンも怯んで下がる。そこに追い討ちでまた、身体をターンさせてから発砲。



「僕ね、今すっごく楽しいんだっ! だから邪魔すると、怒るよっ!!」










・・・・・・でも、強い。あんなわけのわからないのを相手にしてあの人、もろともしてない。





まぁ当然か。だって専門家なんだし。あとはなぎ君・・・・・・あの、なぎ君どうしたんだろ。





あの光景・・・・・・ううん、あの人達の事介抱してから、空気が一気に変わった。なぎ君、すごい怒ってる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





業を煮やしたのか、コウモリが低空飛行しながら飛びかかってきた。

僕はアルトを右切上に振るって、コウモリの胴体に刃を叩き込む。

またまた派手に火花が走りつつも僕達はそのまますれ違い、イマジンは墜落する。



イマジンは立ち上がりながら、またこちらに全速力で駆け込んできた。

そのまま右の翼を僕に向かって左薙に叩きつけてくる。僕はそれを身を伏せて避ける。

避けつつも踏み込んで、左薙にアルトを振るいコウモリを叩き斬る。





「それ僕も欲しいなっ!!」



お、なんか本当に気にいってくれたらしい。

リュウタロスさんは狼の剣を踊るようなスウェーで避けて、ステップで距離を取った。



「バンバンっ!!」



それから引き金を引いて、再び近距離で弾丸を何発も叩き込む。・・・・・・うん、いつものパターンだ。



「じゃあ、これ作ってくれた友達に頼んでみるわっ! もう一つ作ってくれないかってっ!!」

「ホントにっ!?」



僕は後ろに下がり、右薙に襲ってきた左の翼を回避。次は踏み込みつつ下から打ち上げるように右の翼が来る。

身体をその場で時計回りに捻り、突撃気味の斬撃を僕はすれすれで避ける。ううん、それだけじゃない。



「飛天御剣流」



相手の右サイド・・・・・・背後を取る形で、鋭くアルトをコウモリの背中に右薙に叩き込んだ。



「龍巻閃もどきっ!!」



僕が刃を振り切ると、火花が走った背中に確かに斬撃の後が刻まれた。コウモリは前のめりになりたたらを踏む。



「ホントホントっ!!」



そのまま僕は踏み込んで背中に左足で蹴りを入れて、コウモリを蹴り飛ばす。



「もうチケットあるし、出来上がったら届けに行くっ!! 絶対の絶対にっ!!」

「うんうんっ! 恭文、ありがとー!!」





楽しそうに会話しつつもその銃口は、狼イマジンを狙って弾丸を放ち続ける。



それを横目で見ている間にコウモリは立ち上がり、右の腕を僕に横から打ち付けてくる。



僕は素早く右に動いて、距離を取る。うーん、やっぱ中々にしぶとい。





「お前ら、何のためにこっちの世界に来た?」



でもちょうどいい。ここで情報収集だよ。でもコウモリは、僕の質問に対して鼻で笑った。



「答えると思うか?」

「うん、答えないだろうね。でも決めたわ。・・・・・・お前らはぶっ潰す」



言いながら思い出すのは、あのボロボロな二人。『どうしてこうなった』とリアルに言っていたあのおっちゃんの顔。

身体も心もボロボロで、それでもその痛みより過去を悔やんで泣いていた。



「お前らは時間だけじゃない。あの二人の願いも壊した。壊して、踏みつけにした。
これ以上こんな事かますなら、容赦しない。僕はお前らのやった事に、一ミリも譲れないわ」



きっとあの涙が、僕達が気づかなかっただけで色んなところで積み重なってた。

でも僕はもう気づいた。気づいて、これ以上は流させたくないって思った。だからまず、一歩前に踏み出す。



「これが絶対にやんなきゃいけない事だってのは、よく分かったよ。
・・・・・・テメェらなんかに、これ以上何か壊されてたまるかっ! 一人残らずぶっ潰すっ!!」

≪あなた方、ケンカを売る相手を間違えましたね。さ、いきますよ≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミが叫ぶ。それで改めてヤスフミが本気で怒ってる事に気づいた。

それであの人達のボロボロな姿を、意思とは無関係の殴り合いを思い出した。

・・・・・・私、やっぱりバカだ。アレを見ながらまた迷ってウジウジしてた。





私は今どうしたいの? それで私は、ヤスフミとこれからどうしていきたいと思った?





私が居たら迷惑かななんて、迷う事なんてなかったんだ。私は、もう道を決めてる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕は足をまた踏み出す。一歩ずつ愚か者その1に向かって進んでいく。

そんな僕の進行を遮るように、コウモリの口から何かが吐き出された。

それは別に体液の類じゃない。感じるのは目には映らない空気の振動の形。





確かに迫り来る驚異目がけて、僕は迷いなく自分の決意を刃に乗せて叩き込む。










「無駄っ!!」



アルトを唐竹に打ち込み、不可視のそれを真っ二つにする。

・・・・・・衝撃波・・・・・・いや、超音波? コウモリだし。これは第1話で出したアレだね。



「なんだとっ!?」



まさか真っ二つに出来るなどとは思っていなかったのか、コウモリが驚く。うん、隙だらけだ。



「というわけで」

≪Struggle Bind≫



コウモリの足元に現れたのは、蒼いベルカ式の魔法陣。

そこから飛び出てきた縄が、コウモリを縛り上げ動きを止める。



「最後いくよ」



リュウタロスさんも同じらしい。膝立ちな狼イマジンを見ながら、パスを左手に持ってそれをベルトにセタッチ。



≪Full Change≫





パスを自分の前に軽く放り投げてから、銃口をゆっくりと狼に向ける。

紫の電気のようにも見えるエネルギーが銃口の先に集まり、紫の砲弾を生み出す。

なのでこっちも急ぐ。おそらく動きを止められるのはほんの少しだけ。



アルトに魔力を纏わせ、それを薄く鋭く研ぎ澄ます。その中に僕なりの決意も込める。





「さぁ、お前達の罪を」



僕はコイツらと、とことんケンカしてやるんだと・・・・・・強くだ。



「いいよね?」

「数えろ」

『ま、待てっ!!』

『答えは聞いてない』





リュウタロスさんが引き金を引くのも、僕が踏み出すのも同時だった。



撃ち出された紫の火花を走らせる人の胸元ほどの直径の砲弾が、真っ直ぐに狼へと飛んでいき着弾。



アルトの刃が上段から打ち込まれ、真一文字にコウモリを斬り裂く。





「「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」



そうして二体のイマジンは、同時に爆発した。でも、その爆発はすぐに収まる。

僕は辺りを警戒した上で息を吐く。それからゆっくりと構えを解いた。



「・・・・・・決まった」

「うんうんっ! やったよー!!」



とりあえず、リュウタロスさんに近づいて・・・・・・左手を伸ばしてハイタッチ。



『イェーイッ!!』

【・・・・・・仲良しだね】

「えへへー。あ、そだそだ。恭文。僕の事はリュウタでいいよ?」



僕が軽く首を傾げると、電王状態のリュウタロスさんは頷いた。



「・・・・・・いいの?」

「いいよー。だってほら、もう敬語じゃないし」

「あ、ホントだ」



なんか何時の間にやら・・・・・・でもま、いいか。僕は笑いながらリュウタロス・・・・・・リュウタの方を見て頷いた。



「分かった。なら・・・・・・リュウタ」

「うんっ!!」

≪では二人共、話もまとまったところでこの人の左の方を見てください≫



いきなりアルトにそう言われて、僕達は首を傾げつつも言われた通りにそちらを見る。

するとそこには、一匹の犬が居た。耳が垂れ下がった種類のもので、大型犬だね。



「あ、わんちゃんだ。可愛いなー」

【あの、ちょっと待って。あの子、なにか咥えてるね】

≪さすがは良太郎さん、気づきましたか。あれをよーく見てください≫



これだけ派手に暴れたにも関わらず、犬は僕達の近くに来ていた。

それでその口には・・・・・・あ、本当だ。長方形の何かが咥えられてる。



「あれ、もしかして・・・・・・財布?」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「まさか犬が犯人だったとはなぁ。そりゃ疑われた方はとんだとばっちりやで」

「確かにねぇ。宴会が楽しかったにしても、少し気が緩みすぎでしょ」

≪お酒や夜桜の力はすごいんですよ。それで納得しましょ≫

「・・・・・・でも、これで本当に大丈夫なんですか?」



現代へと戻る車内の中。ギンガさんが心配そうに聞くのも当然だったりする。なお、フェイトも同じく。



「そこは私もです。本当にあの、消えた人や物が全部戻ってるんですか?」

「はい。今回みたいに過去でイマジンが暴れて、物や人が消えても基本的には大丈夫なんです。
ちゃんとそれを覚えている人が居れば、その時間は元通りに修復されるんだ」

「二人共、人の記憶こそが時間なんだよ。・・・・・・ですよね?」

「うん、そうだね」



そこはミッドでも変わらないという事らしい。そこは僕達も一安心だよ。でも・・・・・・だ。

僕はまぁ、一応確認はしておきたいのよ。だから良太郎さんの方を、改めて見た。



「良太郎さん、いいんですか?」

「・・・・・・お財布の事かな」

「そうですよ。歴史変わっちゃいますし」





あのワンコから、僕はついついお財布を取り返してしまった。

良太郎さんはそれがおっちゃん達の片割れのものかどうかを確認した上で、返したのよ。

おそらくアレで、あのおっちゃん達は喧嘩で険悪になどならない。



仲良く現代で酒でも飲んでいると思う。多分負った怪我に関しても同じじゃないかな。

僕達は良太郎さん達と居て、デンライナーに乗ってるから覚えてるだけで実際はあの一件そのものがなかった事になってる。

それはつまり・・・・・・財布を戻した事で、歴史を変えてしまったという事になるんだよね。





「歴史が変わるっ!? ・・・・・・あぁ、そうだよねっ! ヤスフミ、良太郎さんもそれはいいのかなっ!!」

「問題はありませんよ? あの程度であれば、時の運行に支障は出ませんから」



慌てるフェイトを諌めるようにそう言ったのは、食堂車の隅でチャーハン食べ始めたデカ長。

フェイト達が不安げに視線を向けるけど、本当に大丈夫らしい。



「ただし、あまり度を越した改変は認められませんよ? そこはこの世界でも同じですので」

「・・・・・・はい」



良太郎さんは、そのまままたチャーハンを静かに食べ始めたオーナーの方を見る。それで少しだけ、場が静かになった。



「でも、どうしてですか?」



なのにフェイトは、いきなりこんな事を聞いてきた。別に良太郎さんを責めてるとかではなくて、本当に単純な疑問。



「あの人達の事は、あなたには直接には関係ありませんよね?
なにより小さくても歴史を変えるのには変わりはない。それなのにどうして」

「・・・・・・そう言われちゃうと、言いようがないです。そういうの、本当は良くないんだろうから」



良太郎さんは困ったような顔をしながら、改めてフェイトを真っ直ぐに見た。



「でもやっぱり、辛いと思うから。大好きな人と喧嘩して、仲良く出来なくなるのは。
あんな風に傷つけ合うようになるのは。・・・・・・見てられなかったんです」



それで良太郎さんは、今度は僕の方に視線を移した。それから、苦笑する。

それで他のみんなも全員僕の方を見る。それでフェイトは、諦めたようにクスリと笑った。



「・・・・・・納得しました」



それはフェイトだけじゃなくて、ギンガさんも同じ。納得したらしい。

僕は静かに、心の中でお礼を言った。きっと、気を使われた部分もあるだろうから。



”ヤスフミ”

”なに?”

”私、ヤスフミがあの時言ってた意味が少しだけ分かった。この人、優しい人なんだね”

”そうだね。優しくて・・・・・・凄く、強い人だよ。だから力になりたいんだ”

”そっか。でも、それは私も同じだって覚えておいて欲しいな”



僕は少し驚きながら、フェイトの方を見る。フェイトは照れたように僕の方を見て笑っていた。



”私ね、ヤスフミが戦ってるのを見ながら少し考えたんだ。やっぱり、まだ疑ってる部分がある。私は弱いから。
ヤスフミみたいに未知なものをワクワクしながら受け入れられない。どうしても怯えて、常識の中に逃げ込んじゃう”

”・・・・・・うん”

”でもヤスフミの事は違う。もしヤスフミがこの人達の事を、今の状況を本気で受け入れて何とかしたいなら、力になりたい。
というか、私バカだったね。迷う必要なんてなかった。だって私は、ヤスフミとは審査したりされたりする関係なんだもの”



走る電車の中、僕達はやっぱり見つめ合って・・・・・・少しおかしくなって、笑ってしまう。



”だからヤスフミは、そのまま突っ走っていいよ。私は、追いついて支えるから。
弱さを言い訳になんてしないで、全力で支えて抱きしめるよ”

”・・・・・・ありがと。てか、迷ってたの?”

”うん。迷って、それで自分で決めた。私は、私の出した答えに嘘なんてつけないってね”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今はなぎ君と、あの人達と一緒に六課隊舎に車で移動中、フェイトさんは通信で六課に報告。

それで判明した事がいくつかある。まずあの騒動自体が本当に無かった事にされていた。

私達はその・・・・・・良太郎さんやハナさんと居るおかげで大丈夫だったそうだけど、六課のみんなは首を傾げてたらしい。





あとはなぎ君の読みがここで確定した。イマジンの出現は、局のレーダー関係では掴めない。










「目視とかは大丈夫みたいだけど、こっちが使える探知関係のシステムはさっぱりだね。
その、モモタロスさんが感じる匂いだよね? それが無いと、私達はすぐに動けない」

「だねぇ。まぁ予測はついてたけどさ」

「ヤスフミ、それっていつ頃から?」

「電王が出てくる前からかな。ヒロさん達と冗談半分でそんな話した事があるんだよ。
その怪物とかの目撃情報が全く無いのは、こっちのサーチャー関係をスルー出来るからーって」



なぎ君は運転席で前を見ながら、いつもの調子でそう言った。それでフェイトさんは納得したらしい。



「もう。それならそれで教えて欲しかったのに」

「いや、フェイトなら可能性の中に入れてるもんだとばかり思ってたのよ。ほら、優秀な執務官だし」



あ、助手席のフェイトさんの頭の上に何かが突き刺さった。それですっごい涙目になってる。



「・・・・・・私、もう執務官辞めようかな。なんだか自信がなくなってきたよ。修行もし直したいし」

「フェイトさんが自信喪失してるっ!? なぎ君ダメだよっ! あんまりいじめちゃっ!!」

「僕のせいじゃなくないっ!? 大体、フェイトが執務官辞めるって言い出したのは今に始まった事じゃないしっ!!」

「ヤスフミ、バラさないでっ! あの、まだ本決まりじゃないんだよっ!?」



そうなのっ!? でもどうしてっ! スカリエッティも逮捕して、評価もうなぎ登りになっていってるにっ!!



「フェイトさん、それはまたどうして」

「・・・・・・ギンガと同じく、事件中に反省があってね。あとはまぁ、自分が嫌いになったの」

「嫌い・・・・・・ですか」

「うん、嫌いになったの。執務官で局員な私なんて、死んでしまえばいいのにーって思うくらい」



・・・・・・何があったかは分からないけど、とりあえず苦笑気味に言うのはやめて欲しいと思った。だって、話凄く重いもの。



「とにかく今はイマジンの目的だよ。ヤスフミと良太郎さんの言ってる通りだとすると、今までとは違う動き方のようだし」

≪正確には、以前の動き方なんですよね。ですが当然相手の目的も見えません。謎が多いですよ≫



どうやら何気にみんな困っている様子。まぁ確かに、これはあんまりに常識外過ぎるからなぁ。

現に私も軽く頭が混乱しかけてるもの。なら・・・・・・よし。



「なぎ君。私にも協力させて」

「え?」

「イマジン対策だよ。というか、私も協力する」

『「えぇっ!?」』



フェイトさんもなぎ君もどうしてか驚いているけど、ここはいい。それに理由もあるんだ。



「今日の事で実感した。イマジンは危険。このままなぎ君達だけに任せるなんて、私は出来ないよ。
それに局の上にバレないように、フリーで動けて地上に詳しい捜査官は居ても損はないでしょ?」

「いや、それはそうだけど・・・・・・身体の事とか」

「そうだよ。それに、108になんて言えば」





うん、そこも分かる。分かるけど・・・・・・やっぱりちゃんと力になりたい。

フェイトさん、私だって同じです。私だって、失敗した。それでとても後悔した。

今私の前で車を運転しているこの子の力になれなくて、本当に後悔した。



確かに今の私に戦う力なんて無い。だけど、だからってそれを言い訳にしたくない。



そんな決意を込めて、私は二人を見ながら安心させるように笑った。






「なぎ君、フェイトさん」

『なに?』

「私、答えは聞いてません」










こうして私もあの強い人達と関わって、一緒に戦う事になった。





うん、頑張ろう。このままなんて嫌だ。私にだって、守りたい今くらいはあるんだ。




















(第3話へ続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『仮面ライダー電王っ!!』





「先輩、スバルちゃんが怖いんでしょ?」

『えぇっ!?』



「トマト・・・・・・トマトの師団が・・・・・・!!」



「要するに連中は、どうやってこっちの世界の事を知ったかって事」



「まぁ、なんにしても」

「いるね。この世界の存在をイマジン達に教えて、呼び込んだ奴が」





第3話 『交わる過去と現在(いま)のウィングライナー』





「かあ・・・・・・さん?」

「・・・・・・え?」




















あとがき



恭文「というわけで、最初は1話と2話をまとめて修正していたために即日で出来上がった電王クロス2話目です。という事で、本日のお相手は蒼凪恭文と」

あむ「何が『という事で』っ!? マジ意味分かんないしっ!! ・・・・・・日奈森あむです。
何気にフェイトさんが後半恭文とずっと一緒に居たりとか、イマジンの契約の達し方とかが追加されてるんだよね」

恭文「そうだねー。もちろん基本ラインは変えずにだよ。というか、ここは変える要素あんまないし」





(いっそラスボスここで出して撃破って流れもアリだよね)





あむ「アリじゃないじゃんっ! そんなのめっちゃつまらないしっ!!
・・・・・・でも変更点と言えば、リンディさんが出るところがクロノさんになってるよね」

恭文「あー、そうだね。でもね、あむ。アレは別にリンディさんが黒だからとかじゃないのよ」

あむ「・・・・・・拍手ネタね? 知らない間に分裂してたしね。ならどうして? あたしもてっきりそうだって思ってたんだけど」

恭文「あのね、リンディさんが会議のために端末の電源切ってて通信繋がらなかったの」

あむ「はぁっ!? なにそれっ! そんなのアリなのかなっ!!」

恭文「アリなのよ。社会人は忙しいもの。ねー、作者」





(まぁカットシーンですけど)





あむ「ま、まぁ・・・・・・分かった。とにかくそういう方向であの流れだったんだね」

恭文「そうなるね。ところであむ、話は変わるけど」

あむ「なにかな」

恭文「クロックタワーはクリア出来た? あとゴーストポケモンに懐かれまくって」

あむ「・・・・・・・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! お願いだからマジ思い出させないでっ!!
辛いのっ! もうめっちゃ辛くて投げ出したいくらいなのっ!!」





(説明しよう。現・魔法少女はとっても怖がりな上に、なぜかお化けが苦手なのにゴーストポケモンに懐かれているのだ)





あむ「と、とにかく本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「あむの後ろに数体のゴーストポケモンが見える蒼凪恭文でした」

あむ「だからマジやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










(現・魔法少女、顔が真っ青。真面目にダメらしい。
本日のED:175R『夢で逢えたなら』)




















あむ「それで恭文、やっぱり次回はあのイベント?」

恭文「あのイベントだね。まぁここは特に変更もないかな。元々僕の関与が薄い話だ・・・・・・うっぷ」

あむ「恭文、アンタ顔真っ青だよっ!? あの、気持ち悪いなら想像しなくていいからっ!!
・・・・・・まぁ確かになぁ。でもこれ、1話でまとめる予定って聞いたんだけど」

恭文「多分出来ちゃうんだよね。こう、すっきりとした感じにするつもりだから。さて、僕は・・・・・・うっぷ」

あむ「だから気持ち悪いなら想像しなくていいからっ! 大丈夫、今だけはそこ許されるってっ!!」










(おしまい)






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