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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第113話 『The stack of lies/壊れるトライアングル』



シオン・ヒカリ(しゅごキャラ)・リズム「しゅごしゅごー♪」

リズム「ドキッとスタートドキたまタイム・・・・・・じゃねぇよっ! アイツらマジでなにやってくれてんだっ!?」

ヒカリ(しゅごキャラ)「さぁな。というわけで、ドキたま/じゃんぷの1クールの最後は大荒れ模様全開だ」

シオン「日奈森さんがnice boatになる様をじっくりとご覧頂きたいと思います」





(立ち上がる画面に映るのは・・・・・・かなーしみのー♪ 向こうーへとー♪)





リズム「いやいや、それダメだろっ! てーかどうにも・・・・・・ならないな」

シオン「むしろなったら奇跡かと。というより、普通にありえません」

ヒカリ(しゅごキャラ)「それこそご都合主義だろう。・・・・・・あむ、じゃあな。というわけで」

シオン・ヒカリ(しゅごキャラ)・リズム『じゃんぷっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



前回のあらすじ。あむがとんでもないダウトかましてくれました。それを指摘して嵐の予感です。

というわけで、あのお父さんが戻ってこない内にリビングのテーブルに着席して会議です。

というわけで、あのお父さんが戻ってこない内にリビングのテーブルに着席して会議です。





・・・・・・大事な事なので二回言いました。どの辺りが大事なのかはもう全部察してください。

もうね、本当にあの人居なくてよかったよ。あの人が居たら・・・・・・確実に血が流れてた。

それで事の起こりは大体1週間前・・・・・・てゆうか、かおるさん達がフランスに戻った当日だよ。





夕方家に戻ったら、猫男は普通にあむの家のベッドに上がり込んでたらしい。

体調も悪く、その上諸事情込みでまた失踪される可能性があったので僕達にも簡単には話せなかった。

なのでそのまま自分の部屋に匿いつつ、僕達を頼るように説得をしていた・・・・・・という事らしい。





そこはどうやらマジらしい。猫男の証言もあったので僕もなぎひこもお母さんも一応は納得した。後先は考えてたのよ。





話は分かったので、僕はお母さんの右隣の席から立ち上がってあむに右拳でげんこつを叩き込んだ。










「これはお父さんの代わりだ。この場には居ないし、一応ね」



あむは両手で頭を押さえて、涙目で僕を見る。それでも僕は遠慮せずに声を荒らげた。



「・・・・・・このバカがっ! 一体なにやらかしてんだよっ!!
僕達はアレとしても、なんでお母さん達に話してないわけっ!? ホントありえないしっ!!」

「そうだよあむちゃん、この事はあむちゃんだけでどうにかなるわけがないよね?
最低でも家族の理解は得るべきだったんじゃないのかな」

「本当に信じらんないっ! やりようはいくらでもあったはずでしょうがっ!!
なのにどうしてコレかなっ! さっきも言ったけど今回は本気で呆れたわっ!!」

「・・・・・・ごめん」



あむ、涙目やめて? 僕達が悪いみたいじゃないのさ。てーかおのれが悪いんでしょうが。

あぁもう、なんだろコレ。ヴェートルでアレクを見つけた時のあれこれ思い出しちゃったんですけど。



「特に・・・・・・特にゆかなさんのライブがパーになった辺りとかっ!?

「そうそう・・・・・・って、そこ違うからっ! 恭文君、ほらまた血の涙流れてるよっ!!」



まぁここはいい。もうダメなものと思って覚悟は・・・・・・覚悟は決めてても腹立つんだよこんちくしょうがっ!!



「あの、二人とも? 私の仕事を奪わないでくれると助かるんだけど」



なんて言いながらあむのお母さんは僕を苦笑気味に見ている。

でもその表情を収めて、厳しい視線で自分の向かい側に居るあむと猫男を見出した。



「とにかくあむちゃん、事情は分かったけどそれでもこれはありえないわ。
なにより彼、妙な人達に追われてるのよね? だったらどうして話してくれなかったの」

「あの、あむは悪くないんです。俺が勝手に上がり込んで、そのまま世話になってしまって」

「そうね。はっきり言えば犯罪よ。そういう事情が込みじゃなかったら、警察に突き出してもいいレベルでね」



そこまで言って、お母さんが僕の方を見上げる。なお、今僕は立ち上がった状態。

なので座ってるお母さんより目線は上になっていたりする。



「恭文君、彼をずっと探してたそうだけど・・・・・・警察に相談はダメなの?」

「ダメですね」





まぁ普通はそうなるよね。でも・・・・・・僕は猫男の方をチラ見する。

あぁもうしょうがない。こうなった以上お母さんにもちゃんと事情を話さないと絶対納得してくれないよ。

もちろんコイツは遠慮無く保護だけど、普通ならともかく僕は子どもって事で通ってるもの。



勝手に連れてこうとしたら、お母さんは絶対に止めようとする。だから事情説明は必須。



というか、そういうのを抜きにしてもお母さんはもう既に事の当事者よ? このまま置いてけぼりは出来ない。





「でもお母さん、これオフレコでお願いしますね? ちょっと色々めんどい事情絡んでるんで」

「そこは事情次第かしら。・・・・・・それで?」

「このニア犯罪者な奴にちょっかい出してる連中、コイツの親族なんですよ。ぶっちゃけると義理の父親」



それだけ言うと大体の事情は分かったらしくて、お母さんは表情を険しくする。・・・・・・それで合ってはいるはず。

ただどうしてそういう形になってしまうのかが僕には本当に疑問だったりはするんだけど。



「つまり、警察に保護を求めてもそこを理由に捕まる可能性が高いのね」

「えぇ。てーかむしろ危険ですね。その義理父、社会的には信用されてる相手ですから。
警察は間違いなく猫男より義理父の言う事を信用する。その結果・・・・・・アウトです」





下手したら警察に圧力かけてでも猫男を確保しようとするかも。

悲しいかなイースターという企業にはそれだけの力がある。

世界有数の企業とケンカしようと思ったら、それなりの力が必要になるのよ。



まぁまともにやり合えばーだけど。やっぱあの襲撃の処理を警防に手伝ってもらって正解だったかなぁ。



あれから特に動きもないし、もしかしたら僕が警防関係者なのが一種の圧力になってるのかも。





「だから僕とフェイトの方で保護しようって考えてたんです。それならなんとかって感じで。
あむ以外のガーディアンのみんなもコイツとは知り合いで、もし見かけたら教えて欲しいともお願いしてて」



とは言え、一昨日の事があるしなぁ。普通に地球に居る事そのものが危険かも。

こうなったら・・・・・・本局に連れてく? それでしばらく軟禁させてもらうとか。もちろん扱い良くだよ。



「そこの辺りは確実なのね? というか、本当の事」

「もちろんです。とりあえず少なくともここに居るよりはずっと安全なところに隠れてもらおうかなと。
・・・・・・あむ、おのれ分かってなかったでしょ。まぁまぁそこが一番ありえないわ」

「何が、かな」

「コイツがここに居る事がバレたら、その妙な連中がおのれの家族をターゲットにする可能性があったって事をだよ」



あむが目を見開いて、猫男の方を見る。猫男は何も言わずに視線を落としているだけ。

それからあむは『やめて』と視線で言ってくる。でも僕はやめない。



「そうなった時自分の身や家族の身を守れるならいい。いくらでも関わっていいし匿ってもいいさ。
『恋人はスナイパー』の水野美紀の家族張りに全員カンフー出来て強いならいい」

「こい・・・・・・はい?」

「あ、恭文君もあのドラマ好きなの? 私もアレ一時期すっごいハマっちゃってー」

「ですよねー。てゆうか楽しかったですよねー。アクションバリバリで見応えあったしー」



ワケの分からないと言いたげなあむの方は無視で、お母さんと談笑。

それで改めて息を吐いて・・・・・・このバカを睨みつける。



「・・・・・・でもそうじゃない。あむ、見つかった時のリスクを考えてなかったでしょ。
てーか考えてたら必ず誰かしらに相談するわ。さっきも言ったけど家族にだけはさ」



まぁ言えなかった理由は分かる。だってお母さんはともかく・・・・・・お父さんがアレだしなぁ。



「もちろん襲われたのが猫男がここに居るせいと言うつもりはない。だって一番悪いのは襲う奴なんだもの。
・・・・・・でも、こんな事でどこまで猫男を守れるかをきっと考えてなかった。こんな事、長続きするわけがないのに」



言いながらも僕は左手を伸ばして、あむの胸元を掴む。それからまたグイっと引き寄せる。

あむは瞳を揺らしながら僕の事を怯えたように見ていた。



「お前の行動は、猫男のためになんてなってない。
いや、むしろ猫男のためにやったのかどうかも怪しいわ」



そこまで言ってもあむの反応は薄くて・・・・・・僕は乱暴に手を離した。それで苛立ち混じりに息を吐く。



「そうね、そこは本当に・・・・・・相談して欲しかった。
あむちゃんのお友達で、本当に力になりたかったなら余計によ。でもそれなら」



お母さんは僕から猫男の方に、表情そのままに視線を移した。



「イクト君・・・・・・だったわね」

「はい」

「どうもこの事はあなたが周囲の人達を頼らずに一人で逃げていた事も原因みたいね。
この事は不問にするから、おとなしく恭文君とフェイトさんを頼りなさい」



猫男は目を見開いてお母さんの方を見た。どうやら不問にはされないと思ってたらしい。



「正直に言わせてもらうと、このままあなたをここで預かる事は無理よ。あむちゃんやパパ達に何かあっても本当に困る。
でも恭文君達はあむちゃんの話だとそういう荒事の専門家のようだし、対策もあるようだからそうしてちょうだい。いいわね?」

「・・・・・・はい。すみませんでした」



改めてお母さんを見た上で、猫男は頭を大きく下げる。それを見てお母さんは少し表情を柔らかくする。

でもまた厳しい顔をして、さっきまで頭を両手で押さえ続けていたあむの方を見る。



「それであむちゃん」

「・・・・・・うん」

「私も恭文君と全く同じ事を思ってる。だから言わせてもらうわね。
・・・・・・そういう事情がある子を見つけていたのに、どうして恭文君達に相談しなかったの?」



お母さんの視線は、猫男に対してのものよりずっと勢いが強い。

ここの辺りは身内ゆえに厳しいって感じみたい。



「私の場合はさっきの二人の話とは逆の視点になってしまうけど、そこが本当に疑問よ」

「あの、それは」

「イクト君が逃げる事が怖かった。それは分かる。さっきも聞いたしね。ただそれでもなのよ。
そうね、あくまでも勝手な感情論の押しつけになってしまうけど・・・・・・悲しかったの」



お母さんの声が少し沈んだものになる。それであむは目を見開いて・・・・・・軽く震え出す。



「あむちゃんがママ達を信じてくれなかった事が、友達を信じられなかった事が・・・・・・悲しかった。
あむちゃん、あなたはいったいなんのためにこんな嘘をついたの? 誰もなんの得もしないじゃない」

「・・・・・・ママ」

「例えば私達が危ない目に遭う。それは同時にイクト君に重荷を背負わせる結果にもなる。そういう可能性が確かに有った。
しかもそれに対しての解決法が確かにちゃんとあった。あむちゃんはそれを知ってたのに・・・・・・どうして?」



あむは何も言えなくなって、ただ俯いてしまう。それで場が一気に静まり返った。

僕はもうこれ以上話を続ける意味を感じなくて、お母さんの方を見た。お母さんは視線に気づいてこちらを見る。



「とにかく、僕はフェイトに連絡・・・・・・というか、このバカの引き取り準備を整えてきます」

「あ、そうね。というか・・・・・・ごめんなさいね。
うちの娘が迷惑かけちゃったし、あなた達に押しつける形になったし」

「いいですよ、別に。あむは一応でも仲間ですし、こっちの事も考えてくれてたっぽいですから」



完全に私的感情ってわけじゃないから、まぁまぁ救いかな。

・・・・・・というかね、お母さんには見えてないから無反応を通してるけど、一つ問題があるのよ。



「・・・・・・本当なんだにゃっ! あむもラン達も何も悪くないにゃっ!!
むしろ最初からオレやイクトの事無茶苦茶心配してくれて・・・・・・信じてくれにゃー!!」



・・・・・・猫男のしゅごキャラのヨルがさっきから耳元でうるさいうるさいのよ。

僕が聞こえてないと思って凄い叫んでるし。というかもう辛いし。



「いえ、ですから落ち着いてもらえませんか? あなたどれだけ叫べば気が済むんですか。
お兄様は反応出来ないだけで、あなたの言ってる事は分かっていますから」

「そうだぞ、少し落ち着け。そうだ、クッキー食べるか?」



そう言いながらおのれはクッキーを出すなっ! てーか家から持ち出してたクッキーまだ残ってたんかいっ!!



「お前何言ってるにゃっ! こんなとこでクッキー食べてる場合じゃ・・・・・・あ、美味しいにゃ」



それでおのれも受け取るんかいっ! 普通に自由だなっ!!



「だなー。あ、オレはリズム。よろしくなー」

「おう、ヨルにゃ。よろしくー」





それでリズムも何クッキー食べてるのっ!? てゆうか何時の間にこっち来たっ!!



・・・・・・それで見つめ合って握手するなよっ! 一体何が通じ合えたのか分からないしっ!!



どこまでも自由なコイツらは無視で、僕は改めてなぎひこの方を見た。





「なぎひこ、僕ちょっと出て来るから後お願い出来る?」

「分かった。でも家の方から迎えの車をよこすとかは」

「あ、そっちの方がいいか」



妊娠中のフェイトや未来の時間の人間なリースはともかくシルビィが居るから、すぐに来てくれるでしょ。

それでなんとかって感じで・・・・・・うし、やってみようっと。



「とにかく急いでこっちで迎えの車をよこしてもらうから・・・・・・猫男」



なぎひこから猫男の方に視線を移すと、猫男は僕の方をいつもの澄まし顔で見た。



「もう言いたい事の大半は言ったから今回の事はいい。
でもそれとは別に言いたい事がある。・・・・・・覚悟を決めろ」



軽くそう言うと、なんでか猫男は目を見開いた。それは気にせずに話を続ける。



「悲しいかな、お前が逃げ続けてたら僕達は何も解決する事が出来ないのよ。
てーかおのれが逃げてたから、あむまでズルズルと引っ張られてこの有り様だ」





あむがこういう行動を取ったのは、猫男の心情に引っ張られたせいとも言える。あむ、猫男の事好きっぽいもの。

それで・・・・・・多分猫男と会えなくなるのとか、嫌われるのとか怖かったんじゃないかとも思う。

でさ、そうするとちょっと妙な結論になるのよ。さっきからあむがどうしてそういう行動を取るかを考えてたわけよ。



責めるのは簡単だけど、それじゃああんま意味もないしさ。なによりそれは『勇気』でも正しい事でもない。

戒めるべき悪を、否定するべき過ちを知ろうとする『勇気』がなければ、それを戒める事も否定する事も出来ない。

ううん、そんな権利そのものが無いと言っていいのかも。結局は的外れな事をして、不幸を呼ぶだけだもの。



なにより猫男が『もう迷惑かけないように』って考えてまた失踪してもアレだし。

で、色々考えて・・・・・・一つとんでもない結論が出てしまった。

これはあくまでも仮定なんだけど、『居なくなって欲しくない。側に居て欲しい』は恋に近い。



つまりその・・・・・・ね、とんでもないでしょ? まぁ当たってるかどうかは別としてよ。

とにかくあむには猫男の考えや方針に引っ張られる要因がある。だからここでそこを釘刺してる。

『お前がこのままだと、あむはまた引っ張られて嘘をつくはめになる』・・・・・・ってね。





「だから覚悟を決めろ。お前は助けられる立場でもなければ、守られる立場でもない。お前は、僕達と一緒に戦う立場だ」





いや、事実そうなのよ。ここはさっきのあむの事どうこうは抜きで話をしている。

コイツがイースターに対しても僕達に対しても逃げの姿勢を示し続ける限り、事態は好転しない。

さっきから響くヨルとラン達の話だと、当事者であるみんなもそこの辺りも今ひとつさっぱりっぽい。



だからこそコイツには覚悟を決めてもらわなくちゃいけない。まぁその、一応歌唄の彼氏でもあるしね。

ここまで言うのはそういうのもある。どっちにしてもこのままは困るのよ。

猫男は何も言わない。さすがにお母さんにあれだけ言われた直後だから言うつもりもないらしい。



その様子を見て張り合いが無いなと思いつつ・・・・・・僕は話を続ける。





「だから僕はお前に対して『助ける・守る』とは言わない。お前はそんな弱い立場には居ない。
お前は僕達と一緒に最後までケンカしてもらうから。それで・・・・・・これ以上歌唄を泣かせるな」



歌唄の名前を出すと、猫男が驚いたような顔になった。

僕は頷いて、まぁ・・・・・・あの時のアレコレを肯定したりした。



「このままだと歌唄は誕生日の夜にも楽しい気持ちで眠る事も出来ない。
お前が、歌唄からそんな時間を奪ってる。お前が歌唄を泣かせている」





実は一昨日の夜、歌唄と添い寝してる時・・・・・・歌唄、寝ながら何度か寂しそうな声で『イクト』って呟いてたんだよ。

まぁそこを責める程僕は野暮ではないから、歌唄には何も言わなかったけどさ。

というか、ちょっとカチンと来たから寝てるとこで唇奪って起こして、ディープに責め立てた。



いや、アレも中々・・・・・・とにかく歌唄は今でも猫男の事を心配している。





「だからもう逃げるな。ここにはまず僕が、なぎひこが、初対面なのにお前の事心配してくれてるお母さんが居る。
なにより・・・・・・お前の一番の味方になろうとしたあむが居る。お前は、絶対に一人じゃない。みんなお前に手を伸ばしてる」

「・・・・・・チビ」

「でもお前がビビってたら、話そうともしなかったら、僕達はいつまで経ってもお前をちゃんと助けられない。
だから教えて。お前は、本当はどうしたいの? お前は・・・・・・本当はいったいどこに行きたいのさ」










それでも猫男は何も言わない。それがイラっともしたけど、もうこれ以上はやめておく事にした。

このバカは・・・・・・ずっと逃げ続けやがって。正直あむのバカよりそっちの方がずっと腹立たしいわ。

まぁいい。とにかく自宅に連絡だ。それで早急にシルビィ辺りに家に来てもらって頑張るとしますか。





それでじっくり話すとしましょ。予言どうこうは抜きに、純粋にこのバカの行く末は気になるもの。




















All kids have an egg in my soul



Heart Egg・・・・・・The invisible I want my






『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!


第113話 『The stack of lies/壊れるトライアングル』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・というわけなのよ」





というわけで、早速おトイレに入りながらお電話。

いや、電話かけてる途中に便意来ちゃって・・・・・・一昨日のたまご悪かったのかなぁ。

なお、どういうわけかシオンとヒカリも一緒に居るけど気にしてはいけない。



てーか気にしても意味ないと思う。ただ僕にプライバシーが存在しないだけなのよ。





『それはまた・・・・・・あむもちょっと困っちゃったね』

「困っちゃったねぇ。ただマジでかなり説得してくれてたみたいだから、そこはありがたいかな」

『そう。とにかく分かったよ。今丁度シルビィさん買い物から帰って来たから、すぐに向かってもらう。
それで・・・・・・唯世君が遭遇した例のキャラなりについては何か?』

「これがさっぱり。電話の前に改めてヨルやラン達から話を聞いたんだけど、全く知らないそうなんだよ」



ヨルも問題の日はぐっすり眠ってたらしくて、猫男がそんなキャラなりをした事は知らなかった。

むしろ僕達が来る前にラン達から聞いて仰天したくらいなんだよ。というか、なんか不思議だなぁ。



「だけど猫男が持ってるヴァイオリンが妙な感じになってるのは確かっぽい」

『ただ色が変わってるだけじゃなくて、その・・・・・・そういうしゅごキャラにしか感じ取れない妙な感じになってる』

「その変化はヨルにしか感じ取れないそうなんだけどね。それでも変化は変化」



そこがまた分からないのよ。まぁアレだね、やっぱりそういうステルス持ちの能力って事なのかも。

ただこうなってくると・・・・・・それよりもずっと大きい疑問が噴出してきてしまうわけだよ。



あむちゃーんっ! お客様よー!!



でもそこを話す前に、外からお母さんの声が響く。・・・・・・あむにお客?

まぁよそ行きの服着てたっぽいし、ソレ関連かな。あむも色々あるんでしょ。



『でもヤスフミ、それってどういう事? 月詠幾斗君のしゅごキャラは何も知らない』



だからフェイトも通信の向こうで首を傾げちゃってるわけだよ。



『というか、特に×やハテナが付いてるわけじゃない。じゃあ大鎌持ちのキャラなりは』

「うん。ヨルとのキャラなりが変化したものじゃないって事になる」



ヨルには確実にアリバイがある。いや、ミキが時間確認してくれてて良かったよ。

ミキが寝てる途中で起きた時間、問題の戦闘の最中だったんだよ。つまり完全にヨルはシロ。



『なら・・・・・・そのキャラなりは誰としたの?』

「全く分かんない」



それで今までの話の結果、僕達が最初に立てた『洗脳されてキャラなりも変化した説』は覆されてしまう。

もちろんヨルが嘘をついているとか覚えていないだけという可能性もあるけど、そういう感じには見えなかったしなぁ。



『月詠幾斗君に新しくしゅごキャラが生まれたとかかな』

「だったらヨルが気づくはずだよ。というか、みんなに言うはず。
ヨル、ここに転がり込んだ当初からあむ達にはかなり協力的で主導で猫男説得してたそうだし」



ここの辺りはあむとラン達の必死の説得があったかららしい。一応あむ達も役には立ってるのよ。



『じゃあ月詠幾斗君は、しゅごキャラであるヨルにすら分からないような何かとキャラなり。
その上で能力を発動してたまごを抜き出してた事になるね。・・・・・・これっておかしくない?』

「かなりおかしいね」



もちろんランやミキ・スゥがしたわけでもない。ならキャラなり以外の能力?

だめだ、やっぱり分からない。こりゃあのヴァイオリンの事とかも調べないとさっぱりだな。



『あ、そう言えば当人はそこの辺りについて証言は』

「あ、そこはまだ聞いてない」



なぎひこの話も鑑みるとあのキャラなりの話は、あむ達も本気で戸惑ってたみたい。

つまり妙な隠し事はしていない。だから当人に聞く必要もあるんだけど、ちょっと無理でさ。



『ヤスフミ、さすがにそれはダメだよ。本当に大事な事なのに』

「いやいや、お母さんも居るからちょっとタイミング掴めなかったのよ。お母さんしゅごキャラが見えないんだよ?」

『あ、そう言えばそうだったよね。ランちゃん達にも無反応だったし」



なんて言ってると、外から足音がとたとたと響く。



「ならお母さんにバレないようにすぐに確認を』

アンタなんか・・・・・・アンタなんかもう、どこへでも行っちゃえっ!!





部屋の外から、なんか凄い声があがった。というか、あむの声?

それで外からドタドタと何かが走り去るような足音も響いてくる。

あれ、てーかさっきも足音・・・・・・そこまで考えて猛烈に嫌な予感がした。




これは急いで通信を切った方がいいかも知れない。





「とにかくフェイト、早急にシルビィこっちによこして。一応は納得してるけど、ちょっと不安だし」

『分かった。それで転送ポートの手続きも急いで取るよ。多分地球には居ない方がいいだろうし』

「お願い。じゃあまたかけ直すね。あと・・・・・・大好きだよ」

『・・・・・・も、もう。突然なんだから。でも・・・・・・ありがと。私も大好きだよ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ママの事、嘘ついてきっとすごく傷つけた。恭文も相当キレてて、げんこつなんて初めてされた。

ただそれでも、話は上手く纏まった。そこだけは本当に良かったと思った。

あたしの部屋になぎひことイクト共々戻って、荷物整理・・・・・・って、ヴァイオリンくらいしかないんだけど。





ただそれでも荷物は荷物。・・・・・・これで、いいんだよね。二人のところならもう昨日みたいな事は起こらない。

というか、アレは絶対イクトじゃないよ。ヨルだって話聞いてびっくりしてたくらいなんだよ?

ならイクトは何とキャラなりしてたのかな。イクトのしゅごキャラはヨルしか居ないはずなのに。





もちろんラン達でもない。つまり・・・・・・そういう事なんだよ。アレは、イクトじゃないんだ。





だから少しは安心出来る。というかあの、あたし思考おかしいのかな? いや、普通だよね。










「あむ、このシャツ」

「あ、それもう使わないシャツだからいらないって。スラックスも同じく。そのまま着てって?」

「そうか。・・・・・・お前の母さん」

「うん?」

「使わなくなったシャツでもちゃんと洗濯して、アイロンかけてくれんだな。洗い立ての匂いがする」



イクトがそう言いながら、夕日が差し込み始めた部屋の中で左手を動かす。

Yシャツの袖を鼻に当てて、匂いを嗅いでいるみたい。それで幸せそうな表情を浮かべる。



「こういうの、なんかいいな」

「そうかな? 考えた事なかった」

「それが当たり前だからだろ」



少し呆れたようにそう言ったイクトは、やっぱり幸せそうにしている。



「考えてなくても、気づかなくても、いつも家族を想ってる。・・・・・・いいな、そういうの」



どうもそういうものらしい。それでなんとなしに、隣にいるなぎひこを見る。

なぎひこもイクトと似たような表情をしてた。・・・・・・やっぱりそういうものらしい。



あむちゃーんっ! お客様よー!!



下からママの声が響いた。それで足音が響いてくる。あー、これは階段上がってるな。



「・・・・・・あむちゃん、突然ごめんね。やっぱり僕から来た方がいいかなと思って」



その声は意外と近くから聴こえて・・・・・・唯世くんっ!?



「ほ、辺里君っ!? あむちゃん、コレって」

「あの、学校帰りに待ち合わせしてて・・・・・・ヤバい、完全に忘れてたっ!!」

「おいおい、それヤバいじゃないかよっ! てーかナギナギ・・・・・・トイレ中だったっ!!」



この状況でまた嘘・・・・・・ううん、コレだけはだめ。コレだけは、本当にだめ。

だからあたしはイクトとなぎひこを見て、慌てて部屋のドアに近づく。



「あの、ちょっと待っててっ! それで二人とも絶対部屋から出ないでっ!!
なぎひこ、イクトの事お願いっ! イクト、アンタなぎひこの言う事ちゃんと聞くようにっ!!」

「・・・・・・分かった。でもあむちゃん」

「ごめん、全部後でっ!!」

「おい、俺はペットかなにかの扱いかよ」

「しょうがないじゃんっ! アンタ猫なんだしっ!!」



とにかく素早くドアを開けて部屋の外に出る。それで素早くドアを締めた。

階段の下からもう唯世くんは上がっていて・・・・・・というか、ドアの前に来るとこだった。



「あむちゃん、突然ごめんね。ちょっと心配になっちゃって」

「あはは・・・・・・その、ごめん」










そうじゃんそうじゃんっ! 完全に待ち合わせ時間過ぎてたじゃんっ!!





あたしすっかり忘れてた・・・・・・あ、でも今はマズいな。これだと今日はキャンセルかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あむちゃん・・・・・・また嘘の上塗りを。さすがにコレは」

「しょうがないだろ」



言いながらあのポニテの奴の双子の兄って言う奴に近づく。ソイツは俺の方を困ったように見上げてた。



「不吉な黒猫は、誰にも近づかない方がいいんだ」

「・・・・・・そんなの、違う。恭文君の話聞いてなかったんですか?」

「あぁそうだな。確かにそれがマジならそっちの方がいいんだろうな。けどよ」



言いながらも素早く右手を動かした。青髪ロングが目を見開いて、その場に蹲る。

その原因は、たった今俺が右拳で打ち込んだボディブロー。



「悪いが俺には無理だ。俺は・・・・・・黒猫でいい」



素早く拳を引いて、ソイツの傍らに居たしゅごキャラにデコピン。ソイツを近くのタンスに叩きつける。



「な・・・・・・どう、して」

「目覚ましたらチビに言っといてくれ。悪かったってな。・・・・・・それでもう、放っておいてくれ。
俺は不吉な黒猫のままでいい。助けてもらう必要なんてどこにもない」










ソイツは崩れ落ちて動けなくなる。あのニット帽のしゅごキャラも床に落ちて目を回した。

あむのしゅごキャラは外に居るから、なんの問題もない。ついでにさっきさり気なく窓の鍵は開けておいた。

俺は両手にポケットを突っ込んだまま、部屋のドアを目指して足を進めて一気にドアを開く。





それでそのままあむの背後に現れると、二人は俺に驚いた視線を向けてきた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・イクト兄さんっ!?」

「ちょ・・・・・・イクトっ!!」

「よぉ、お子様キング。突然だが実は俺、数日前からここで世話になってんだよ。いわゆる居候か」



それでいきなりとんでもない事を言い出した。あたしが止めようとする前にイクトは言葉を続ける。



「『好きになってもいいですか』ーだったか? クローゼットの中から聞かせてもらったぜ」



その言葉に思わず唯世くんの方を見ると、唯世くんは目を見開いて呆然とした顔でイクトを見ていた。



「お子様キングにしては、立派な告白だったな。思いっきり笑えたぜ」

「・・・・・・あむちゃんも、知ってたんだ」

「あぁ、知ってたさ。てーか知らないわけがないだろ。ひとつ屋根の下、同じ布団で寝たりしたしな」

「イクトっ! ・・・・・・あの、唯世くん違うのっ!! これはその」



唯世くんはそのまま早足で階段を降りていく。あたしはすぐに追いかけて、唯世くんを声で引き止める。



「唯世くんっ!!」





唯世くんはこっちを振り向いた。振り向いて・・・・・・悲しげな瞳をあたしに向けた。

それで動きが完全に止まった。そのまま唯世くんは走り去った。

あんな唯世くん、今まで一度も見た言なかった。それで何かがガラガラと崩れる音がした。



その音が怖くて、身体が震え始める。瞳にどんどん涙が溜まっていく。





「どうして・・・・・・どうしてあんな事言うの?」



気づいたらあたしは震えながら振り向いて、イクトを睨みつけた。

敵意を、怒りを、悲しさをそっぽ向いて知らん顔してるイクトに全て叩きつける。



「ヒドい・・・・・・ヒドいよっ! もうアンタの事なんて知らないっ!! もう二度と顔も見たくないっ!!」



知られたくなかった。あたしは知られたくなんてなかった。なのに・・・・・・許せない。

イクトは唯世くんの言う通りだった。本当に不幸を運ぶ黒猫だった。だからもう、こんな奴知らない。



アンタなんか・・・・・・アンタなんかもう、どこへでも行っちゃえっ!!










そのまま全速力で階段を駆け下りて、玄関から家に出た。それで必死に唯世くんを追いかける。

だけど見つからない。夕暮れに染まった道を必死に走りながら唯世くんを探すけどどこにも居ない。

・・・・・・分かってる。あんなの八つ当たりだって分かってる。あたしが一番悪いんだって分かってる。





でもああ言うしかなかった。あんな風に言う事しか出来なかった。でもあたし、最低だ。





嘘に嘘を塗り固めて、その覚悟も始末も自分一人じゃ出来なくて・・・・・・あたし、マジ最低だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



フェイトとの通信を一旦断った上で切って、トイレから素早く出る。





すると慌てた様子のランとスゥがこっちに迫って来たので、右手を伸ばして通せんぼ。










「こらこら、ちょっと待った。今のあむの叫びは」

「恭文どいてー! というかというか、イクトが最低な事したのっ!!」

「唯世さんが来て、イクトさんの事隠そうとしたのに勝手に出てきて今までの事バラしちゃったんですぅっ!!」

「はぁっ!?」



・・・・・・まさか、今の来客・・・・・・唯世っ!? おいおい、それじゃあマズいじゃないのさっ!!

ヤ、ヤバい。こっちに来る前に想像したnice boatな結末が見えてしまった。いや、それよりもまず問題がある。



「二人とも、それなら猫男とヨルは」

「もう知らないよっ! あむちゃんや唯世の事あんなに傷つけてさっ!! 唯世くんの言う事ホントだったっ!!
月詠幾斗は不幸を運ぶ黒猫って・・・・・・本当にそうだよっ! あんな事言う必要ないのにっ!!」

「というか恭文さんどいてくださいっ! 早くあむちゃんと唯世さんを」

・・・・・・・・・・・・このバカっ!!



何事かとこっちを見ているお母さんは気にせずに、二人を怒鳴りつける。それで二人は身をすくませた。



「全部自業自得だろうがっ! 宿主同様に揃いも揃ってバカじゃねぇのかっ!! ・・・・・・もういい、来い」





そんな二人を右手で一抱えにして、僕は素早く階段を駆け上がってあむの部屋に突入。

でも、もう遅かった。トイレでのんきに話している間にあのバカは本気でやらかしてくれやがった。

僕が目にしたのは、開いた窓に床に蹲って倒れているなぎひことリズム。



それで二人の様子を様子を見ながら悔しげに俯いているミキだけだった。・・・・・・やられた。





「・・・・・・ミキ」



ミキは僕の方を見上げた。それで大きく首を横に振る。



「ごめん、止められなかった。イクト、キャラチェンジして素早く逃げちゃって」

「そう。・・・・・・二人とも、よく見ろ」



僕は右手を離すと、二人は戸惑った表情で開いた窓や倒れた二人に視線を向ける。

どうやらあむと唯世の事重視で、ここの辺りは全く考えてなかったらしい。



「仮に二人の話が本当だったとしたら、それは間違いなくこのためだよ。あのバカ、逃げやがった。
こっちに迷惑かけないために、不幸を運ぶ黒猫通しやがった。・・・・・・本気で、バカだよ」



まぁまぁこの場に居なかった僕が言うのもアレさ。でも、やっぱり怒りは抑えられなかった。



「お前らも、あむも、猫男も・・・・・・どいつもこいつも、揃ってバカじゃねぇのかっ!!」



二人は落ち込んだように僕に背を向けながら視線を落とした。・・・・・・とにかくフェイトにすぐに連絡だ。

サーチでこの近辺を探してもらって、それで・・・・・・それで何がなんでも捕まえる。



「ジガン、アルト」

≪とっくにやってます。ですが・・・・・・反応、掴めません≫

≪こっちのサーチの射程圏外に出ちゃったっぽいの。・・・・・・主様≫

「謝らなくていい。正直そんなヒマも惜しい。とにかくすぐにでも手勢引き連れて捜索するよ。それで・・・・・・絶対」



なんて言っていると、着信音が鳴り響いた。それで僕は改めて端末を取り出す。画面を見ると・・・・・・二階堂?

僕はすぐに通話ボタンを押して電話を繋ぎ、端末を右耳に押し当てた。



「もしもし二階堂? 悪いんだけど今取り込み中で」

『すまないがこっちを優先にして欲しい』



その声に一気に思考が固まった。それで目を細めつつ、端末の方に視線を向けてしまう。



「・・・・・・お前、何やった。二階堂は人質ってわけ?」

『残念ながら違う。今私は確かに二階堂悠の所に居るが、人質にはしていない。
というより、お前と敵対行動を取る理由そのものがなくなった』

「信じられないね。今まで散々襲ってきたくせに」

『だと思う。だが頼みがある。私はお前と話したい。いや、もう一度・・・・・・会いたい』



・・・・・・どうやら僕は猫男の方には対処出来ないらしい。いや、対処する理由そのものがないか。

これは全部あのバカの不始末だ。だったらその始末はあのバカにつけさせるのが筋ってもんだ。



「分かった。ただし条件がある。こっちの手勢を連れてくるから。それで臨戦態勢を取らせてもらう」

『こちらにお前に対しての攻撃の意志はない。もちろん説得力がないのは承知しているが』

「もしそうなら、ちゃんとリスクを背負って欲しいって話だよ。・・・・・・僕達はお前の戯言に乗る事。
それでお前は、出会い頭に僕達に総攻撃を食らう可能性を受け入れる事」



猫男の事もあるし、時間がないのでかなり焦り気味になっている。でもここだけはしっかりと通させてもらう。

だから勝ち誇るように、当然と言わんばかりに、向こうから見えてないのに大いに笑ってやる。



「信じて欲しいなら、僕とどうしても話したいってなら・・・・・・リスクを背負って命を賭けろ。
僕達もお前の言葉が真実かどうか知るために同じようにする。それで対等だ」

『・・・・・・分かった。それで構わない。というより、それが当然なのだろう』










うし、話は纏まった。とにかくなぎひことリズム起こして、あのバカ見つけないと。





こっちにはシルビィに一応来てもらおうか。あとは事情を改めて確認した上で、唯世の方も対処しないと。





こっちは・・・・・・あぁもう、どうしてこう面倒事が続くのさ。てーかマジでアイツバカ過ぎだし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



唯世くんはどれだけ探しても見つからない。どこにも、あの影が居ない。

もう辺りは真っ暗になってるのに、それでも唯世くんの姿がどこにもない。

でもそんな時、今は絶対に見つけたくない影を見つけてしまった。





それが悲しくて、あたしはついこっちに必死な顔で飛んでくるあの子を睨みつける。










「・・・・・・なんの用? アンタもイクトと同じだよ。もう顔も見たくない。とっとと消えてよ」

「待ってくれにゃっ! 頼むから話を」

「聞きたくない」

「ならあのチビはどこにゃっ! アイツでもアイツのしゅごキャラでも髪の長いのでもいいから聞いてくれにゃっ!!」



あたしは無視して、にゃーにゃーうるさいソイツに背を向けて早足で歩き出す。・・・・・・最低だって、知ってるよ。

でももうあたし、どうしたらいいのか分からないんだよ。どうしたらいいのか、本気で・・・・・・本気で分からない。



「イクトが、イースターの奴らに捕まったにゃっ!!」



ただそれでも、あたしの足は止まってしまった。それで振り返ってヨルの方を見てしまう。

あたしはやっぱり中途半端だ。なんの覚悟も出来なくて、ただズルズルと引っぱられるだけで・・・・・・マジ最低だ。



「たい焼き」

「え?」



左横を見下ろすと、普通に金色の髪に青い瞳をした男のが居た。

それであたしのスカートを軽く掴んで引っ張ってた。というかあたし、ホントに引っ張られてた。



「ちょ、君なにっ!? てゆうかスカート」



言いかけてそのどこか無表情な印象の子を見て・・・・・・あ、思い出した。



「君、あの時の」



私が学校帰りにたい焼きを奢ったあの子だった。それでその子はあたしを見上げながら小さく頷いた。



「たい焼きの原料はたまご、小麦粉、水、あずきに砂糖」

「へ?」

「糖分と炭水化物の比率が大き過ぎる。無駄の多い食べ物だ」

「あの、君・・・・・・何言って」



いきなりとんでもない事を言ってきた。てゆうか、脈絡がなくて意味がさっぱりだった。



「調べたんだ」



それがたい焼きについてなのは、なんとか分かった。あー、でもそっか。

たい焼きの事とか知らなかった・・・・・・あれ、でも今『無駄の多い食べ物』ってとんでもないフレーズが。



「そして分かった。おやつなんて必要のないもの。いらないものだって」










その言葉であたしは完全にワケが分からなくなった。だってあの・・・・・・どういう事?

調べた結果を教えるためにこの子、あたしの事捕まえたって言うのかな。

しかもいらないものって言われるのは何気に衝撃だったんですけど。だったらあの笑顔はなんなわけ?





別にあげた事そのものを感謝しろって言うつもりないけど・・・・・・なんかこう、更にヘコんでしまった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



向こうがシャレにならない修羅場を迎えていた頃、私達も私達で大変な事になってた。





ただまぁ、あれだよね。突然にドアが光ってそこから普通に今まで居なかった人が出てくる光景に慣れるってどうなんだろ。










「やっほー♪ 宣言通りに来ちゃいましたー」

「みんなー! 久しぶりー!!」

「私達、再び降臨・・・・・・ですわ」





リビングから玄関に続く廊下のドアから出てきたのは、まずキアラ。

それで黒い革ジャンとGジャン姿の恭太郎と、黄色のワンピース姿の咲耶だった。

私達は普通に夕飯の準備をしてたので、思わずそっちを見て固まった。



でも次の瞬間、普通にみんなの事を受け入れちゃうって・・・・・・どうなんだろ。





「あ、みんなよく来てくれたね。というか恭太郎も咲耶もお久しぶり」

「もうすぐ夕飯出来るからちょっと待っててくださいですー」

「いやいや、アンタ達ちょっと待ってっ!!」



あ、テーブルに座ってもらってたナナちゃんがなんだか驚いて・・・・・・って、当然か。

ナナちゃんには未来の時間の事教えてないんだから。



「なんでこの不審者共を普通に向かえるわけっ! それおかしいでしょっ!!
てゆうかアンタ達誰っ! なんでナチュラルにそのドアから出てきたのよっ!!」

「・・・・・・アレ、この人」



恭太郎がじーっと訝しげにナナちゃんを見て、納得したように柏手を打った。



「あー、思い出した。プロミスランドの偉い人か」

「確か・・・・・・ナナイ・ナタレシオン・ナインハルテンさまでしたね。
この時間ではGPOのランサーをしていて、おじいさま達とは盟友のはずです」

≪GPOとおじい様との冒険譚は暗唱出来るくらいに聞かされましたね。今でもみなさんとは仲が良いですし≫

「なるほど、GPOも今回の事を察知してここに居ると。そっかそっか、アタシ納得だわ」

「いや、だからアンタ達はなんで私の・・・・・・てゆうか、プロミスランドの事まで知ってるのよっ! マジで誰っ!!」










とりあえず一緒に料理してたディードとリインとシャーリーと顔を見合わせてしまう。





えっと、事情説明って大事だよね? うん、かなり大事だから・・・・・・カット。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、ヤスフミ直伝の日本の文化『かくかくしかじか』で事情説明開始。





一旦みんなテーブルについた上でそれを行って・・・・・・ナナちゃんは困惑気味だけど納得してくれたみたい。










「・・・・・・まぁ私の存在も何気にありえないレベルだからアレだけど、アイツもフェイトさんもなんか凄いわね。
普通にタイムマシンみたいなのと関わって、それで孫と会うなんて・・・・・・マジドラえもんの世界じゃないのよ」

「あははは、それは否定出来ないかも。私も初めて遭遇した時は本当に信じられなかったから」



そう考えると、私の世界ってここ2〜3年で大きく広がってるよね。ホントに、一昔前なら信じられないくらい。

それが嬉しくて、みんなで飲むために入れた日本茶をすすりつつ笑ってしまう。



「それでおばあちゃん」

「ん、何かな。・・・・・・って、なんか気恥ずかしいなぁ。恭太郎とかで慣れてると思ったんだけど」

「そう? あー、でもアタシは向こうのおばあちゃんと会ってるから、そういう差はあるのかも」



それでこっちの孫と祖母コンビは初対面だけど、結構息が合ってるみたい。どことなく楽しそうなんだ。



「とにかく頼んでたものはどうなってる? アタシの方は早めに出来たから来ちゃったんだけど」

「ギリギリだけど完成してるよ。あ、それとあのディスクはあとで返すよ。この時間にあると面倒だろうし」

「ありがと。んじゃ早速中のデータ入れたいんだけどいいかな」

「うん、大丈夫だよ」



うん、やっぱり波長は合うみたい。もしかしたら同じものを時間を超えて作ったから、そういう繋がりが出来てるとか?

魔導師同士の戦ってる時に感じるシンパシーとかと照らし合わせると、意外と分かる部分が多いんだ。



「それでフェイトさん」

「何かな。というか恭太郎、そろそろ『ばあちゃん』って言って欲しいんだけど?」



ほら、私はもう結婚してるし・・・・・・で、困った顔もやめて欲しいな。まぁ少し意地悪だと思うけど。



「ダメだ。てーか未来は決定してないから未来なんだしよ」

「そっか。それは残念」



じゃあ恭太郎の『ばあちゃん』って言われるのは、未来の時間までお預けかな。

でも・・・・・・それも楽しいのかも知れない。だってそこまで頑張って時間を繋いでいく努力が必要なんだもの。



「・・・・・・とにかく現状に関してはさっき説明した通りなんだ。ヤスフミもそうだし、シルビィさんも今は外」



あと・・・・・・実はシルビィさんと一緒にというか、恭太郎より前にもう一人うちに来たんだ。

その人にも事情を説明してあむの家に向かってもらってる。あむの事、何気に心配してる様子だったから。



「デスレーベル作戦・・・・・・でしたね。確かにコレではオーナーや駅長が注目するのも致し方ありませんわ」

「人の記憶が時間。でもそれを刻む原動力になるたまごに・・・・・・未来への可能性に全部×が付いたら、時間も消えちまうしな」

≪少なくとも私達の時間へこの時間が繋がる事はなくなります。それはなんとしても避けないと≫





どうやら未来組も、世界中の人間全てのたまごに×が付く事で世界が崩壊する可能性は危惧するらしい。

・・・・・・多分2年前の私なら、死ぬわけじゃないのにそうなる事にも疑問を持っていた。

たまごに×が付いても、たまごが無くなっても人は死んだりしない。ちゃんと生きていける。



それだったら世界が崩壊するはずがないって笑ってたよ。でも今は違う。そんな事絶対に言えない。

人が・・・・・・人が本当の意味で輝いて生きていくために夢は必要だと思うから。

夢や『なりたい自分』があるから、可能性があるから、人は一生懸命に生きていくものなんだよ。





「とにかくフェイトさん、俺も咲耶もキアラも全力で手伝う。もうどんどん使ってくれ」

≪キアラのメンテで私達の体調もばっちりです。いつでも全開バリバリでいけます≫

「ありがと。もう本当にそこは感謝してる。そうだな、それならまず」



途中になっている夕飯の準備でも手伝ってもらおうかなと思っていると、着信音が響いた。

それで私がなんとなしに画面を開くと・・・・・・そこには非常に困った顔のヤスフミが居た。



『フェイト、ごめん。緊急・・・・・・あれ、女ったらしな恭太郎とエロキャラの咲耶が居る』

「じいちゃん、久しぶりだってのにいきなりだなっ!!」

「おじいさま、一つ訂正をお願いします。・・・・・・私は恭さま限定でエロいんです」

「お前も黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



あははは、咲耶は相変わらず飛ばしてるなぁ。うん、なんだか安心しちゃったよ。

でもその気持ちは分かる。私もその、ヤスフミの前ではエッチな女の子になっちゃうし。



「それでヤスフミ、どうしたの? あ、シルビィさんそっちに到着したとか」



そう言えばさっきも電話いきなり終了だったけど・・・・・・アレ、なんとなく嫌な予感が。



『ごめん、完全に僕の落ち度だわ。まず電話してる最中にあむの家に唯世が来た』

「唯世君がっ!?」

「なぎ君ちょっと待ってっ! それだと・・・・・・あの、まさか」

『・・・・・・多分みんなの想像より最悪だよ。猫男、唯世のあむへの告白も聞いてたらしくてさ。
そこバラして唯世とあむを突き放した挙句、居なくなっちゃったのよ』

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』










そ、それ・・・・・・・あ、少し落ち着こうっと。胎教に悪いもの。とにかくそれ、最悪だよね?





そうなるとかなりマズい。このままだと本当に月詠幾斗君がイースターの手に落ちる危険がある。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



フェイト達へ通信して、少しお願いをした後にとりあえずワケ分かんない状態だったお母さんには事情説明。





そうこうしている間にシルビィが到着した。・・・・・・いや、シルビィだけじゃなかった。










「・・・・・・ザフィーラさんっ!?」

「あぁ」



人間形態でGジャンGパン姿のザフィーラさんが一緒に来てた。だから玄関先で出迎えた僕は当然ながらビックリだよ。



≪あなた、どうしたんですか≫

「最近の事態をクロノ提督から聞いてな。主命令でお前達の手伝いに来た」

「ちょうど私と玄関先で鉢合わせしてね。それで一緒に来てもらったの。あむちゃんの事も心配してたから」



ザフィーラさん・・・・・・てーかはやて共々ありがとう。あぁ、よかった。これでかなり楽になるぞ。



「それで蒼凪、例の青年は」

「そうそう。私達とっても素敵な男の子に会いに来たんだけど」

「・・・・・・ごめん。実はその・・・・・・とりあえず二人とも中に」



まずお母さんにシルビィとザフィーラさんの事も紹介した上で、二人にも事情説明。

当然のように三人が普段食卓となっているリビングで頭を抱えてしまうわけですよ。



「恭文君、本当にごめんなさい。うちの娘がとんでもない迷惑をかけてしまって」

「いや、もういいですよ。てーかそこ言われても困りますし。
とにかく、猫男の事は僕達で対処します。シルビィ」

「分かってる。私の方は問題ないから・・・・・・久々にコンビ復活といきましょ?」



軽くウィンクしながらそう言ってくれるのが嬉しくて、つい表情を和らげてしまう。あ、でももう二つ。



「それでお母さん」

「なにかしら」

「もしも・・・・・・・無いとは思うんですけど、万が一にもまた猫男がこっちに来たとします。
もしくは街中で見かけた場合、こちらにすぐに連絡して欲しいんです」

「・・・・・・分かった。そっちの方は任せて? ただ、可能性としては少ないわよね」

「少ないでしょうね。飛び出したのも間違いなく僕達に迷惑かけないためでしょうし」



ここでお母さんが心良く頷いてくれたので良かった。本当に肝っ玉の据わったお母さんで本当に感謝だよ。



「あ、それとあと一つだけ」

「あむちゃんの事・・・・・・かしら」

「・・・・・・分かりますか?」

「話の流れ的にね。それで、私はどうすればいいの?」



本当に肝っ玉が据わってるらしいので、遠慮無く僕の考えてる事をぶちまけた。



「ちょっと待って。・・・・・・ヤスフミ、本気?」

「本気だよ。僕としても正直今回のコレは見過ごせないんです。あむには対価を払ってもらいます。
・・・・・・別に僕達に嘘ついたっていい。でも、絶対に一つだけは通してもらいます」

「・・・・・・分かったわ。むしろどんどんやっちゃって構わないから。ただし」



背中を押してくれながらもお母さんは、やっぱり心配そうな・・・・・・うん、母親の目だね。

僕も見覚えのある優しくて深い瞳をしながら、僕に頭を下げた。



「あむちゃんにむやみやたらに危険な事はさせないで欲しいの。・・・・・・分かってる。
これはあむちゃんが悪いとは分かってる。だけど、そこだけはお願い」

「・・・・・・分かりました。僕だって一生ものの怪我されても困りますから、そこは配慮します」

「ありがと」

「というわけでザフィーラさん」



右隣で困った顔のまま話を聞いていたザフィーラさんの方を見る。

ザフィーラさんは言いたい事が分かったらしく、すぐに頷いてくれた。



「こちらは我に任せろ。お前とニムロッド捜査官は心配しなくていい」

「ありがとうございます」










うし、これでまず話は纏まった。そろそろなぎひことリズムも復活してる頃だし、次は2階だね。





あんま時間もないし、パパっと準備は進めていかないと。それでこんな事、とっとと終わらせてやる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ごめん、恭文君。完全に僕のミスだ」

「悪い、ナギナギ」

「いや、いいよ。ミスで言ったらしっかりついてなかった僕も悪い。
てーかここで誰のせいかって話をしても全く意味がないよ。そういうのやめやめ」

「そうね。とにかく今は月詠幾斗君の事よ」



次はあむの部屋で目が覚めたなぎひことリズムからも事情を聞く。その上でどうするか考え中。

ただ諸事情で僕やシルビィに魔導師組の大半は猫男捜索に加われなかったりするんだよね。



「でもなぎひこ、ぶっちゃけおのれも手伝って欲しくはないんだけど」



ザフィーラさんが居るなら、大抵の事は大丈夫だろうし・・・・・・でもなぎひこは首を横に振る。



「そういうわけにはいかないよ。なによりそれだとあむちゃんのお母さんとの約束破っちゃうよ?
もちろんザフィーラさんに比べたら僕なんて今ひとつだろうけど、それでもあむちゃんの事は心配だから」

「・・・・・・分かった」



まぁしょうがないか。本気で一人にしたら潰れそうで怖いもの。ここはなぎひこの参加は認めましょ。



「それよりも問題は恭文君の方だよ。・・・・・・大丈夫なの? タイミング的に考えて罠って可能性も」

「かなりあるね。だからなぎひこが寝てる間にこちらの手勢を引き連れていく事を条件に出した」

「それで向こうはそれを了承したと。その場合、それでもなんとかなると踏んでいるか」

「ナギナギを呼び出したのはマジで罠じゃないかのどっちかって事か。
なんにしてもナギナギ達はそっちだな。で、オレらは月詠幾斗と。あー、そういや」



思い出したように言いながら、リズムが隣のなぎひこの方を見る。



「ナギー」

「あ、そうだね。実はその・・・・・・月詠幾斗から恭文君宛てに伝言を預かった」

「・・・・・・なんて?」

「『悪かった。・・・・・・それでもう、放っておいてくれ。俺は不吉な黒猫のままでいい。
助けてもらう必要なんてどこにもない』・・・・・・だって」



それで落ち着きかけていた怒りが再燃し始める。てーか謝るくらいなら最初からするなーっつーの。



「イクト、本当にあむちゃんやボク達を巻き込まないためにやらかしたんだね」

「そうじゃなきゃ、こんなメッセージを残す必要はないわよ。・・・・・・でも、良い子なのね。
ヤスフミやあむちゃんの気持ちとか、そういうの袖にするのをちゃんと分かってはいるんだから」

「実際しない方が僕的には助かるけど。てーか分かるならしないで欲しいんですけど」

「あら、それはヤスフミには言えないんじゃない? だって今まで色々やらかしてもいるようだし」



・・・・・・そこを言われると弱い。てーかなぎひこ、おのれも覚えがあると言いたげに笑うなっつーの。



「確かに蒼凪にはその青年の事は責められんな。我の知る限りでもそれはもう」

「だから何も言わないでー! ザフィーラさんも過去バラすとか無しでっ!!」



それで楽しげに笑うなー! 僕はもっと素直で純真無垢な主人公キャラだっつーのっ!!



≪私達は付き合いが浅いからアレですけど、基本偽悪的というか不器用な人なんですね≫

≪自分の気持ちとか、そういうのを上手にぶつけられない人っぽいの。主様とちょっと似てるかも≫

「おのれらも失礼な事言わないでくれる? 僕はもうちょっと人生楽に渡ってるよ。
・・・・・・あぁ、でもマジで頭痛いんですけど。この事が万が一にも歌唄にバレたら」



困りながらそう言うと、シルビィとなぎひこ・・・・・・ううん、全員の表情が一気に重くなった。

・・・・・・うん、あむの立てた死亡フラグは歌唄の事もあるのよ。もしコレがバレたら偉い事になるよ?



「ヤスフミ、この事は歌唄ちゃんには黙っておかない?
私もあの子とは本当にちょっとしか顔合わせてないけどそれはマズイわ」

「僕も同感。でも、自然とバレちゃいそうだよね。みんなに口止めしても無理っぽいよ」

「そう、だよね。しかも歌唄って異様に勘が良い時あるし・・・・・・ヤバい、なんかかなり怖い」










あのバカの嘘がどこまで波及して行きそうなのが怖くて、僕達は大きくため息を吐いた。





それでその直後、ようやくその元凶となったバカのご帰還となった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ようやくあむが帰ってきた。しかも猫男と一緒に逃げ出したヨルを連れてだよ。





で、ザフィーラさんやシルビィが居る事にビックリしてるあむは、容赦なく部屋に放り込む。





その上で睨み気味にあのバカに便乗したヨルに早速尋問を開始した。










「・・・・・・それで間抜けな事に飛び出して少しして、あっさりイースターの連中に捕まったと」

「そうにゃ。それでオレだけ逃げて・・・・・・うぅ」



もしかしたら連中、大体のアタリをつけてたのかも知れないね。そうじゃなくちゃ捕まるのが早過ぎるよ。



「ねぇヨル、マジで言っていい? ・・・・・・お前らホントバカだろっ!!」

「あぁ、ごめんにゃごめんにゃっ! オレも止めたんだけどイクト全然聞いてくれなかったんだにゃっ!!」



それで必死に平謝りしてくるヨルを見て、少しため息を吐く。・・・・・・まぁここはいいか。

ヨルは本当に猫男の事を止めようとも話そうともしてくれたらしい。ならここは許す。



「で、ヨル。ラン達からも話聞いたけど、例のヴァイオリンの事もうちょっと詳しく教えて。
・・・・・・ラン達もそうだし、リズムもシオン達も何も感じなかった。でもヨルは」

「そうにゃ。どうしてかオレだけは妙な気配がして・・・・・・よく分からないにゃ」

「そっか。で、そのヴァイオリンと一緒に猫男はイースターに捕まったと。ホントにあのアホは」



しかもなぎひこに妙な伝言まで残して・・・・・・冗談じゃない。そっちがその気なら徹底的に追いかけてやる。

僕も腹が据わった。徹底的に追いかけ回してストーカーしてやる。・・・・・・諸事情なければ出来たのになぁ。



「あむ」

「・・・・・・うん」

「なぎひことザフィーラさんをサポートにつけるから、猫男はお前が主導で追いかけろ」



あむは驚きながら僕の方を見る。でも僕は立ったまま、あむをただ見下ろし続ける。



「お母さんの許可は取ってある。で、二人以外には誰にもそこは手伝わせない。
フェイト達もそうだしシルビィ達も・・・・・・誰にもだ。三人だけでなんとかしろ」

「そんな・・・・・・どうしてっ!!」

「どうして?」



あんまりに分かりきった事を言うので、戸惑った様子のあむを鼻で笑ってしまった。



「元はと言えばお前が嘘ついてでも、猫男の力になろうとした事がキッカケでしょうが。
だからお前が全部なんとかしろ。なにより全員そっちにはいけない。・・・・・・二階堂のところにBYが居る」

「はぁっ!?」



ネタばらしをするとあの電話は、イースター印のBYからの電話だった。てーか声聞いた時ビックリしたよ。

それで僕に二階堂の家に来て欲しいっていきなり言ってきてさ。コレがまた更にビックリだわ。



「いやいや、意味分かんないしっ! なんでBYが二階堂先生のとこにっ!!」

≪考えられる可能性はいくつかあるの。例えば二階堂先生がイースターの手先に戻ったか≫

「そんなのありえないじゃんっ! だって二階堂先生普通に先生してるしっ!!」

≪それ以外だと例えば二階堂は、BYに人質として現在絶賛監禁中。
私達の関係者としてそれなりに痛い目を遭わされている・・・・・・でしょうか≫



まぁ大体の事情は聞いてるけど、僕がこっちを手伝えない理由付けのためにそこは伏せておく。

それであむもさすがにそれがどういう意味を持つかが分からないわけじゃないらしい。一気に顔が青くなった。



「猫男の事もそうだけど、もしBYがそういう手に出てるならマジで早めに対処しないといけない。
この調子だと二階堂だけじゃなくて、みんなの家族や関係者にも手を出してくる可能性がある」

「だから私もそうだし魔導師組からはティアナちゃんもBYの方に向かう事になってるの。あとは他の関係者の警護もある」





こっちはナナにとリイン、それにようやく戻ってきた恭太郎と咲耶にお任せって感じになってる。

基本は空を飛びつつサーチャーで状態観察って感じだけどね。

リースとディードは自宅待機でフェイトの警護。自分達の事も守れなきゃ三流だもの。



シャーリーとキアラは例のアレの最終調整のために本局に向かったから当然頼れない。



というわけで、何気に魔導師組はフルメンバー全員手が空いてない状態になるわけだよ。





「正直私達も余裕がないの。だからあむちゃん達にお任せってわけ」

「でも、あたし」

「そうやってうじうじするならずっとしてろ。でも僕達は一切手出ししない。・・・・・・シルビィ、行くよ」



ドアの横に居たシルビィは、静かに頷いた。そのまま僕はあむの傍らを通り過ぎる。

少し振り向いてなぎひことザフィーラさんの方を見るけど、二人は真剣な顔で『大丈夫』と視線を向けてくれた。



「そうそう、これだけはハッキリ言っておくわ」



そのまま出ていこうと思ったけど、足を止めて僕はあむの方を見ずに言い放った。



「お前、最低だわ」



酷な事を言っているのも分かる。でも僕はあえて突き放す。ここであむを助ける事は悪だ。

あむは自分のケツを自分で拭く事を覚え・・・・・・ううん、それが出来ると思ってるから突き放す。



「自分で力になると決めておきながら、信じると決めておきながら信じ切る事すら出来ない。
ついた嘘の後始末すら僕達の力を借りようとする。ホントに最低過ぎて殴る気も失せるわ」

「・・・・・・恭文」

「だから僕はお前が何もしない内は絶対に手伝わない。フェイト達にも誰にも手伝わせない。
一応言っておくけどみんなに連絡しても無駄だから。もうみんなには全部話してる」



それで全員揃って本気で呆れてたよ。で、僕のアイディアにも乗ってくれた。そこは実はりまとややにも同じ。

BYの事があるから、警告も兼ねて教えたんだよ。もう言いようのないくらいにため息吐いてたし。



「どんなに泣き言を言おうと、無駄だから。・・・・・・猫男の味方でいたかったんでしょうが。
だったら世界中の誰がなんと言おうと、猫男を信じてそれを最後まで通せ」



それだけ言って、ドアを開けた。シルビィも後ろから何も言わずについてくる。

ドアが閉まる音が響いて、僕達は少し早足で左側にある階段に足を向ける。



「いいの? ヤスフミ」



何も言わないと思ったのに、階段を降りながらそんな事を聞いてきた。



「いいよ。・・・・・・別にさ、もう嘘ついてた事は怒ってないよ。
あむはあむなりに猫男と向き合いたかったんだろうし」

「うん」



だからって嘘をつく事は良いわけがない。それはどういう形であれ悪なんだろうしさ。



「なによりあむは」

「月詠幾斗君の事が好き。それも友達以上の意味で」



言葉の続きを言われて、少し驚きながら振り返る。するとシルビィはどこか楽しげに笑っていた。



「私も恋する乙女だもの。話を聞いて、あむちゃんの事を見てて・・・・・・そうかなーって」

「うん、多分ね」



僕は視線を前に戻して、また足を進める。



「だからここまでしちゃったのは分かるのよ。唯世も実際あむを不安にさせるだけの事をしてるわけだし」





きっとあむは、唯世と猫男の間で揺れている。あむの中で二人の存在はイーブンなのよ。

だから唯世に嫌われたくなくて、猫男の事を隠してしまった。それでその逆もまた然り。

猫男が唯世や周囲の敵意に向けられて傷つくのが嫌で、僕達にも何も言えずに迷ってしまった。



僕が今日のあむを見てて気づいたとこって、そこなんだ。そう考えるとこの行動も自然なのかなと。

あむは猫男が傷つくのが・・・・・・自分が傷つくのと同じくらいに痛くて、悲しい事だと感じてるんだよ。

でも肝心のあむには、そこの辺りの自覚が一切ない。ようするに自分の気持ちに気づいてない。



だからズルズルと無自覚な気持ちに引っ張られて、こういう行動を取ったんじゃないかと思うのよ。





「でも許せないのは」

「あむちゃんもミキちゃん以外の二人も、そういう嘘をついた末の現状を全部イクト君のせいにした事」

「正解」



階段を降り切ってまた足を止めて、僕は視線を上に・・・・・・あむの居る部屋の方に向ける。



「それは罪だもの。だから数えてもらわないと。なによりこのままじゃあむは絶対に後悔する」

「だから一線引いて嫌でも向き合わせようと・・・・・・また強烈ねぇ」

「何言ってるのよ。シルビィだってそういう強烈な手段に乗ってるでしょ」

「ふふ、それもそうね」










ホントはなぎひこやザフィーラさんも外したかったんだけど、さすがにダメだという事でついてもらう事にした。

ただ二人には口を酸っぱくして厳しくするようには言ってある。だからまず僕達はBYの事だ。

向こうが求めてるのは単なる対話・・・・・・だそうだけど、正直全部信頼出来ない。そのための要素も無い。


 


でもこのタイミングを考えると・・・・・・やっぱ罠って展開かな。うし、逃走準備はしとこうっと。




















(第114話へ続く)




















あとがき


恭文「というわけで、ドキたま/じゃんぷも1クールが終了。ついにあむがnice boatです」

シルビィ「その上BYの事も対処しなきゃいけないから、ここはあむちゃんチームだけでって感じね。
というわけで、本日のあとがきのお相手はシルビア・ニムロッドと」

恭文「蒼凪恭文です。しかし・・・・・・あむは株落としまくってるね」

シルビィ「でもあむちゃん・・・・・・うーん、そうだったかぁ。二人の人を同時に愛しちゃったのね」





(『いやいや、そんなの違うしっ! てゆうかあたし唯世くん本命だしっ!!』)





シルビィ「それで今回は未来組も参加して、一気に登場人物が増えたわね」

恭文「増えたねぇ。でも相手もそれなりに本気出してるから相当なんだけど」





(いわゆる大乱闘な勢いになりそうです。ただそれでも勝てるかどうかはまた微妙だったり)





シルビィ「え、そうなの? というかラスボス、そんなに強いのかしら」

恭文「強いというか、親和力以上のチート能力持ちだから。おそらくとまと史上最大かも」

シルビィ「そうなのっ!?」





(まぁそこは魔法少女的な要素満載な感じで・・・・・・なお、リリカルなのはは論外で)





シルビィ「あ、それで魔法少女で思い出した。ヤスフミ、私最近始まった魔法少女見たんだけど」

恭文「あ、『魔法少女まどか★マギカ』だね。セインやスバルも出ているあのアニメ。
・・・・・・第1話にしてマスケット大量召喚からの一斉放射なんていうのやらかしたアニメ」

シルビィ「でもリリカルなのはより魔法少女っぽいのよね」

恭文「そうなんだよね」





(『どうしてー!? だってだって、昔のライフル大量召喚とか魔法少女はやらないよっ!!』)





恭文「いやいや、横馬。おのれ分かってないね。あえてエネルギー弾とかじゃなくてそういうの召喚が魔法少女なんじゃないのさ」

シルビィ「そうそう。そこでエネルギー弾とかエネルギー砲撃とかしちゃうと魔法少女じゃないのよね」





(『そんな事ないからー! アレより私の方が魔法少女っぽかったよっ!!』)





シルビィ「でもあのアニメ、ニコ動で見たら凄い欝というかグロというか猟奇的な展開が予想されまくってたんだけど」

恭文「脚本家さんが今までそういうの書いてきた人だからね。ニトロプラスさんのゲームを見てもらえれば分かるかと。
でもBONESさんもいいけど、シャフトさんのアニメも癖があって楽しいよねー。演出が独特で色が出てるし」

シルビィ「そうなのよね。実は年始の化物語も見てたんだけど、アレは楽しいわよね」





(個性が出てるって素晴らしい事だと思うのです。とまとも見習いたい)





恭文「というわけで、僕の方はともかくとしてあむと唯世・・・・・・どうなるんだろ」

シルビィ「あ、そうよね。あむちゃんはともかく唯世君がマズいわよね」

恭文「まぁ次回にあむが刺されるのは確定だろうけど。というわけで、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

シルビィ「あむちゃんにちゃんとお別れを言っておきたいシルビア・ニムロッドでした。それじゃあみんな、SEE YOU AGAIN♪」










(あのマスケット召喚・・・・・・いいなぁ。圧倒的な火力って素敵だなぁ。
本日のED:栗林みな実『マブラヴ』)




















恭太郎「・・・・・・戻って来て早々こき使われるとは思ってなかったぞ」

ビルちゃん≪あいかわらずおじい様、人使い荒いですね≫

ナナ(メルティランサー)「愚痴らないの。でも恭文、本気なのかしら。あむだけにやらせるなんて」

恭太郎「本気だろうな。じいちゃん何気にマジギレしてたし。ただまぁ、なんかあるようなら助けないとな」

ナナ(メルティランサー)「いやいや、それだと話が」

恭太郎「あいにく俺はあむは助けるなと言われたが、なぎひことザフィーラさんは助けるなとは言われてない」

ナナ(メルティランサー)「・・・・・・あぁ、そういう事」

恭太郎「そういう事だ。じいちゃんだってそのつもりなんだろ。てーかナナさんだって分かってただろ?」

ナナ(メルティランサー)「それはね。これでもアンタより付き合いは・・・・・・あ、短いのか。だってアンタ孫だし」

恭太郎「まぁな」

ビルちゃん≪生まれた時からの付き合いですから、今のフェイトさんよりも上ですね≫










(おしまい)





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