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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第105話 『Dream Dream/なぞがなぞ呼ぶ大暴走っ!?』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「ドキッとスタートドキたまタイムー。さて、本日のお話はー?」

ミキ「長かったなぞたま編もついに最終章っ! ナナのうっかりで明かされた真実に、恭文とあむちゃん達が迫るっ!!」

スゥ「でもでも、やっぱり誰かに言葉を届けたりするのは本当に大変でぇ」





(立ち上がる画面に映るのは、大きな大きななぞたまと夢を惑わせ見えなくする光)





ラン「でもでも、きっと大丈夫っ! ここまで来たらドーンとぶつかるだけだよっ!!」

ミキ「そうだね。ぶつかって、手を伸ばして・・・・・・きっとあむちゃんなら」

スゥ「恭文さんなら、出来ますぅ。それでは本日もいってみましょお」





(・・・・・・せーの)





ラン・ミキ・スゥ『じゃんぷっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



何でも叶うと、なんでもやりたいと思っていたあの頃。それは私の嫌いな私の居た頃。





完璧さも何もないのにヘラヘラと笑っていたあの頃の私は・・・・・・たくさんの本を見ながら迷っていた。





なのにすごく楽しくて、目に見える世界は輝いていて、本当に幸せだった。










「ケーキ屋さん・・・・・・お花屋さんもいいなぁ。でもやっぱり、靴屋さん? あぁもう、みんなやりたいー」



そう願った時、どこからともなく部屋の中で笑い声が聴こえた。そして私の目の前にたまごが現れた。

そのたまごは淡い桜色の基本色の上に、色とりどりの宝石をはめ込んだアクセサリーが描かれていた。



「やりたい事は」



たまごが割れて出てきたのは、とても小さな赤毛の女の子。

妖精みたいに可愛らしいその子はいっぱいに笑って、声を上げる。



「やったらえぇがねー!!」










その子は近づきながらも、私に向かって笑いかけてくれる。それで自然と私も笑っていた。





多分直感的に分かったんだと思う。この子は私にとってとても大切な存在なんだって・・・・・・本当に簡単に。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ルル、次は何やってみる。テニスか? 乗馬か? ロッククライミングか?」

「別にどれもやらないわ」

「えぇっ!?」




あの子と出会ってからいくつか年を超えた。部屋の中で本を読んでいると、あの子はまたうるさく叫ぶ。

全く・・・・・・私はもう目標を見つけたというのに。余所見なんてしていられないというのに。



「ルル」

「おばあ様」

「また読書ですか」




そんな私におばあ様は近づいて来て、私の手にある本を見る。



「ジュエリー作りの勉強ですね」

「いえ、読んでいただけです。・・・・・・・おばあ様のお言いつけ通り、私は完璧を目指しています。
今はママのお手伝いやうちの事で精一杯です。他の事に時間を割いている余裕はありません」




これが私の見つけた道。私はおばあ様のような完璧を目指したい。子爵の末裔としてあるべき姿を通したい。



「・・・・・・また完璧主義かぁ? そんな無理せんでも、楽しかったらそれでえぇやん」



誇らしげに胸を張って私は立ち上がり、読んでいた本を閉じて右手で持った上でおばあ様にお辞儀をする。



「勉強の時間ですので、失礼します」










そう、私は完璧を目指す。だってママもパパもおばあ様も完璧だもの。

兄さんは・・・・・・まぁまだまだ修行中だからこれはよしとしましょう。

でも兄としては完璧よ。だっていつも本当に申し訳なくなるくらいに助けてくれるから。





だから私も完璧でありたい。みんなのように完璧に・・・・・・完璧に。




















All kids have an egg in my soul



Heart Egg・・・・・・The invisible I want my






『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!


第105話 『Dream Dream/なぞがなぞ呼ぶ大暴走っ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文君、すまないが近々ロイヤルガーデンに伺ってもいいか?」

「いや、それは構わないですけどまたどうして」

「少し話しておきたい事があるんだ。あとは相談だな。もしかすると俺だけで解決は」

あぁもうっ! ルルしっかりせんかっ!! もうどーんとやったらぁえぇがねっ!!



ルルは相当必死なナナに励まされてるけど、反応0。それに苛立ったのか、ルルが腕を振り上げて叫んだ。



ママさんの事なんとかしたいのかて、ルルの気持ちっ! やったら迷う必要なんてねぇやっ!!
さー! 今日も頑張ってなぞたま作って、エンブリオをとっととゲットするでー!!


『・・・・・・え?』



その言葉に僕も、ヘイも、それに気が抜けたような顔をしていたあむでさえも反応した。

ルルもこれにはさすがに反応して、完全に固まった。



「ルル、どういう事? 今の・・・・・・今のナナが言った事って」



あむがそう言いながら近づいている間に、ヘイが僕から少し距離を取った。

あと、近くでまた天を指差してたシオンとインもだよ。



「な、なんの事だみゃあっ!? うちなんも言っとらんってっ!!」

「そうよ」

「ルルっ!!」

「私がなぞたまを抜いていたの。エンブリオを手に入れるためにね」



真実は・・・・・・真実は余りにも突然に出てきてしまった。てゆうか、捜査とか尋問とかそういうのすっ飛ばしやがった。

おかげで僕もちょっと固まってるぞ。ただそれでも僕は息を吐いて・・・・・・ルルに近づく。



「その原因は、いったいなによ」



ルルが僕の方を睨みつけるように見た。でも僕はお手上げポーズでその視線をかわす。



「イースターに美味しい餌でも出された? それとも何か叶えたい願いがあるとか」



ルルは何も答えない。答えずにただ僕とあむを睨みつけるだけだった。



「どっちにしても、そういう事なら放置は出来ない。・・・・・・お前には、罪を数えてもらう」

「罪っ!? は、笑わせるわねっ! 夢を叶えてあげただけじゃないっ!!」

「ザケるなよ、ボケが」



僕がどうやら本当に怒っているのがご理解いただけないらしい。だから軽く睨みつけてやる。



「アレのどこが夢を叶えたっ!? どいつもこいつも勘違いしまくりだろうがっ!!」





ティアナも、シグナムさんも、優亜も、それに他のみんなも・・・・・・そういう錯覚をしただけだ。



夢は叶ってるって錯覚させられて、その錯覚の上で大暴れしてた。それがいい事なわけがない。



・・・・・・そこまで考えて、一瞬止まってしまった。それがいけなかった。





「兄さんっ!!」



ルルが不敵に笑いながら声をかける。僕は反射的にヘイの方に身構えるけど、ヘイは立ち尽くしただけだった。



「ルル、もうやめるんだ」

「兄さん、何言ってるのよっ!!」

「お前の夢はなんだ」



ヘイの言葉で、今度はルルの動きが止まった。それでなぜか震え出す。



「やりたい事はなんだ」

「だから、それは・・・・・・兄さんも知ってるでしょっ!? 何度も言ったわよねっ!!
私はエンブリオが欲しいのっ! 叶えたい願いがあるのっ!!」

「ならお前はその願いを叶えた上で、どんな自分になりたいんだ」



ルルの言葉を遮るように放たれた鋭い言葉で、ルルの震えが強まった。でもヘイの鋭い言葉は続く。



「今のお前の気持ちを一度でも母さんに伝えたか? 一度でも話し合おうとしたか?
少なくとも俺は話していない。おそらくはお前と同じ。だからこそ、言い切らせてもらう」



僕もあむも、何も言えなかった。言っている意味は分からないけど、あまりにもヘイが真剣なのは伝わったから。



「もし本当にそうなら、俺は・・・・・・もう今までのようにはお前を守れない」



ルルはその言葉でヘイを睨みつけるように目を見開いて、全速力で右に走った。ナナもそれを追いかけていく。

それを止めようと僕は踏み込もうとするけど、ルルは近くの雑踏に紛れてあっという間に消えてしまった。



「・・・・・・ルル、そんな・・・・・・ホントにそうだったなんて」



呆然としているあむはそれとして、僕はその場に残ったヘイとインの方を見る。二人は視線に気づいて僕の方に向いた。



「二人とも、ちゃんと事情説明してもらうから。なんでここに残ったのかとか、そういう事までだよ」

「ヘイさんもインさんも、まさかルルさんの事を知らなかったというわけではありませんよね?」

「あぁ、分かっている。まずは俺達から・・・・・・全部話す」

「ヘイ、それでいいの? ルルの夢を守るんじゃ」

「守れないだろ」



ヘイはため息を吐きつつ、ルルが居なくなった方を見る。



「俺が守りたかったルルの夢なんて、輝きなんて、どこにもないんだからな」










どこか寂しげにそう言ったヘイの横顔が、やけに印象に残った。





守りたい・・・・・・夢、かぁ。なんだろ、やっぱり胸の中がざわつく。





何かが引っかかってるんだ。だから今のルルやヘイを見ていると苦しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その後、休日だけど緊急で唯世達をロイヤルガーデンに呼び出した。

それで全員集まったところで、未だに動揺しているあむはともかくとして僕とヘイが事情説明。

ここはヘイとインに敵意がない事も、ルルにこれ以上協力するつもりがない事も含めてだね。





それで五人が五人とも・・・・・・自然と今にも泣きそうなあむの方を見た。










「それでヘイさん、もう一度確認させてください。まずあなたの妹さんがなぞたまを抜き出していた」

「あぁ」

「それであなたが恭文とやり合ったっていう、やたらと強い仮面男の中身。
二人で協力してなぞたまを使ってエンブリオを呼びだそうとしていたのね」

「その目的はイースターの計画の手伝い。でもそれは表向きの理由。
本当はルルちゃんのお母さん・・・・・・黛かほるさんを、昔みたいな映画女優にするため」



ルルがイースターのエンブリオ探しに乗っかっていたのは、その願いをエンブリオで叶えたかったかららしい。

確かに現状のかおるさんに不満そうな感じだったけど・・・・・・失敗だった。確かに理由はちゃんとあったんだよ。



「ルルちゃんは元々今のお母さんに不満を持っていて、あなたはその後押しをしていた」

「でもでも、お兄さんはそういうのなんか違うなーって思ったから、ルルちゃんについて行かなかったんですよね?」

「そういう事になるな」



それでヘイは頷いて・・・・・・唯世達は顔を見合わせた。話がいきなり進展したから戸惑ってるっぽい。



「恭文さん、それでどうするですか?」



唯世達とは違う顔をしているのは、リイン。腕を組んで、いつになく表情を険しくしている。



「当然ルルを止める。それでこれ以上面倒起こされる前に、罪を数えさせる」

「罪、なのかな」



右隣のあむが呟いて、僕の方を涙目で見る。キャンディーズも唯世達も、心配そうにあむの事をずっと見ていた。



「大事な人に笑っていて欲しいって気持ちは、キラキラしていて欲しいって気持ちは、罪なのかな」

「何、今更迷ってんの? 可能性はあるって分かってたじゃない」

「だって、なんか分かんなくて。ルルの気持ち、間違ってるのかなって・・・・・・考えちゃって。
ルルはあたし達よりお母さんの事知ってて、それでたくさん考えてこれだと思うと」

「間違ってるよ。それで考えたところでそんなのは無意味だ」



あっさり言い切ると、あむの視線が少し厳しくなる。それを受けて軽く息を吐いた。



「もちろんそれ自体は罪じゃないよ。僕だって、そういうの覚えがある。
フェイトにキラキラしてて欲しい。夢を大事にして欲しいってさ。でも、それだけじゃあダメなんだ」



・・・・・・そう言って、やっと分かった。やっぱり僕は・・・・・・つい苦笑してしまった。



「恭文?」

「あ、ごめん。・・・・・・僕はバカだなって思ってさ」



そうだ、僕はバカだった。迷ってうじうじする必要なんてなかった。僕はもう、答えを手にしてる。

あの時フェイトから手を伸ばされて、抱きしめられて・・・・・・それで始めて、ここまで来たんだから。



「あむ、はっきり言うけどルルのやってる事は罪だ。もちろんそこは手伝ってたヘイも同じ。
ルルはかおるさんのためと言いながら、一番大事なところを抜かしてる。だからズレるんだ」

「大事なとこ?」

「そうだよ。それが抜けてるから、ルルは今なぞたま事件の被害者だけじゃなく、かおるさんにも暴力を振るってる」



まだ迷っているのか、あむは少し瞳が揺れている。きっと本当にあの時仲良くなれたのが嬉しいんだよ。

それに事情が事情だから・・・・・・どうしても考えてしまう。だけど僕は、そうはなれない。



「だから間違ってる。こんな事、絶対に止めなきゃいけない」

「なにかな、それ」

「すぐに分かるよ。きっと、あむならすぐに分かる」



視線を左横に居たヘイの方に向ける。ヘイは腕を組んで僕の事をずっと見ていた。



「ヘイ、確認なんだけどルルもヘイもかおるさんとそういう話したの? こう、現状に不満があるとかそういう話。
もっと映画に出て欲しいーとか、昔と比べて今ひとつな感じがするーとか。とにかくそれ関連で話した事は」



ヘイは首を横に振った。横に振って、さっきの僕と同じように苦笑する。



「俺も今の君と全く同じ事を考えた。おばあ様のおかげでな」

「へ?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヘイ」

「なんだ。今日はお互いに疲れてるんだからもう寝ろ」

「そういうヘイだって起きてる」



布団に入ったのに、全然眠れない。昼間のおばあ様のお話が何度もリピートされてしまう。

その度に胸が締めつけられてしまい、俺は午前0時も過ぎたというのに天井とにらめっこだ。



「ルル、相当カッカしてたね。ナナもかなり気にしてた」

「あぁ」



今日イースター本社に行ったら、締め出しを食らったらしい。それで・・・・・・アレだな。

一応予測はしてたが、実際にやられるとショックはあるな。少なくともいい気分はしない。



「それにデスレーベルだったか。完全に俺達は時間稼ぎに使われたな」



おそらく星名専務は、元々なぞたまでどうにかしようなどとは考えていなかったんだろう。

ただなぞキャラなりとBYによる攻撃でガーディアンを潰せればいいと思っていた・・・・・・とかだろうか。



「こうなったらイースター本社に乗り込む?」

「お前、それはいったいどこの映画だ。・・・・・・まぁ犯罪だという事を除けば楽しくはありそうだが」

「ヘイ、その手の大立ち回りのシーン好きだものね」

「まぁな」



それで場が少しだけ静かになる。ただ外の音や自分の呼吸音だけが聴こえる中、俺達はきっと天井だけを見ている。

眠れずに、どこかに触れるのを躊躇うように口を閉ざしてただ同じ時間を過ごしていた。



「・・・・・・前にヘイ」



それでもインは、口を開いて手を伸ばした。どうやら俺は、しゅごキャラよりチキンらしい。



「『ルルの輝きはとても曇っている』って言ってたよね。だからその輝きを取り戻したいって思った」

「あぁ」

「それでルルもママに対して同じ事を言ってる」

「あぁ」



イン、頼む。何も言わないでくれ。もう分かってる。そうだ、俺は迷ったフリをしてるだけだ。

今まで分からなかったが、うちのおばあ様のおかげで・・・・・・ガツンと突きつけられた。



「なら」

「ならルルの輝きは、いったいなんなんだろうな」



インに言われると非常に腹が立つので、言われる前に自分で言ってしまった。



「母さんの輝きは? 父さんの・・・・・・おばあ様の輝きは?
それを俺が決めて『守る』と言って守って・・・・・・意味があるのだろうか」

「・・・・・・うん、そういう事だと思う。それでそれは、ルルにも言える事。
確かに映画に出ているママは、あの授賞式に出た時のママは凄く綺麗だった」



インが言っているのは以前恭文君達がこの家に来た時に話に出た、ルルの作ったジュエリーを身に着けた上で出たアレの事だ。

ルルはあの時本当に喜んでいてな。あの完璧主義者が子どもの頃に戻ったようで見ていて微笑ましかった。



「それでね、シオンに聞いてみたんだ。CMに出ているママは、本当にあの子の言うようにキラキラしてるのかなって」

「それで、なんて?」

「・・・・・・私と同じだった」





ちなみに俺は、インが母さんの日本での芸能活動をどう思っているかは知らない。



俺のように『コレはコレでアリなんじゃ』と思っているのか、ルルと同じなのかも知らない。



そこはイン自身が一番分かっているのに・・・・・・俺は静かに笑う。





「・・・・・・そうか」










人の輝きなど、人の夢など、他人が決めていいわけがない。それは俺にだって分かる。





まぁイースターに加担していた時点でもうアレだが・・・・・・だが、そうなんだよな。





自然と頭の後ろに置いていた両手に力が入ってしまう。どうやら俺は、本当に修行が足りないらしい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それでまた色々考えて、何も知らないと気づいたんだ。俺は・・・・・・今を何も知らない。
今の母さんの事を、そして守りたいと言ったルルの事をちゃんと知っていると言い切れない」



それでようやく、ヘイがなんで事情を話そうとしていたのか分かった。てゆうかあのおばあさん、本気で何者?

もしかしてなぞたまの事とかルルの事とか全部分かった上でここに来たんじゃないかと思っても、バチは当たらないと思う。



「今を知らないのに何が夢だ幸せだと決める事が出来るはずがない。何を守るなど言えるわけがない。
二人も俺も同じままじゃない、変わっていくんだ。それなのにそんな事をしてしまってはただの傲慢だ」

「でもヘイさん、ヘイさんはルルのお兄さんですよね?
それに知らないって・・・・・・ほら、あたしから見てもめちゃくちゃ仲良さそうだったし」

「あぁ、そうだ。だが『ちゃんと知っている』事と『知っている振りをする』事は全然違うだろ?」



あむは少し考えて・・・・・・言っている意味が分かったのか、戸惑ったままの瞳で頷いた。



「あ、もしかしてだからあの場であんな事を」



次はヘイが頷く。それでヘイはなぎひこがさっき出してくれた紅茶のカップの中を見る。



「俺は、神様でもなんでもない。人の幸せが何かなど決められない。
だから聞くしかないと思った。俺は・・・・・・ただの家族だから」

「そう。だったら・・・・・・分かるよね」

「あぁ。それが俺の・・・・・・そしてルルの罪だ」



それだけ言うと、僕達は立ち上がって背伸びをした。それで互いに顔を見合わせて、頷き合う。



「でもヘイ、一つ訂正。それは僕の罪でもある」

「そうなのか?」

「うん。僕も・・・・・・ただ守りたいと、輝いていて欲しいと押しつけていた時期があった」





勝手に期待して、失望して・・・・・・壊されかけた時に自分の愚かさに気づいてさ。

だから迷ってしまっていた。押しつけていたのは・・・・・・あの時押しつけていたのは、僕も同じ。

フェイトやみんなだけじゃない。それが僕の数えるべき罪。数えて、変えるべき今だ。



フェイト、なんか甘えちゃってごめんね。僕、ちょっと色々バカだったわ。



きっと今見えている答えに手を伸ばすための気持ちが・・・・・・うん、そうなんだ。





「だから放置は出来ないわ。んじゃ、ちょっと行ってきますか」

「出来れば妹の不始末は俺だけで片づけたいんだが・・・・・・無理そうか」

「無理だね」



それでヘイは苦笑して、椅子にかけてあったコートを右手に取る。



「なら、頼む。妹を助けるのに・・・・・・力を貸してくれ」

「当然」



それで僕達はそのまま入り口の方に早足で歩き出す。・・・・・・うし、まずはフェイトに連絡して。



「あの、二人ともっ!? なに普通に男の世界入っちゃってるわけですかっ!!」

「ですですっ! 普通にリイン達の事忘れるなですー!!」



それで僕達は思い出したように置いてけぼりな六人を見る。少し固まって・・・・・・二人揃って両手をポンと叩いた。



「「・・・・・・あ、ごめん。忘れてた」」

『こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あん子と初めて会ったんは、本当に小さい頃。うちなぁ、めっちゃ感じたんよ。

あん子の『なんでもやりたい・なんにでもなりたい』って思うキラキラな気持ち。

うちが生まれたんはそんな気持ちがあるから。あん子の中に宝石箱があるから。





だからあん時も・・・・・・一人部屋の中で色んな本を読んで、目をキラキラしてた。










「ケーキ屋さん・・・・・・お花屋さんもいいなぁ。でもやっぱり、靴屋さん? あぁもう、みんなやりたいー」



あん子がそう強く願った時、うちは飛び出してた。一つの形を取って、あの子の目の前に現れた。

あの子は不思議そうな顔で、だけど楽しげな顔でうちの事を真っ直ぐに見てた。



「やりたい事は」



それが嬉しくてうちは・・・・・・周りの殻を破るようにあん子の前に飛び出た。



「やったらえぇがねー!!」










近づきながらもいっぱい笑うと、あん子もめっちゃ笑ってくれた。それがまた嬉しくなった。





たくさんの宝石は、たくさんの夢。キラキラに輝くあん子だけの宝石。それが目の前のあん子を輝かせる。





うちはナナ。あん子が・・・・・・ルルが描いた『なりたい自分』。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それからの日々は本当に楽しかったぁ。笑って色んな事をやって、それで失敗して泣いたりもして。

だけどまたやって・・・・・・ホンマにやりたいようにやってきた。キラキラに輝く宝石を見つけて、たくさん輝かせて。

でもルルは大人になっていく。大人になって宝石箱全部を大事に輝かせるのは本当に難しい。





もしかしたら目の前のルルがあの時とは全然違う感じになってもうたのは、しょうがないんかも知れん。










「ルル、次は何やってみる。テニスか? 乗馬か? ロッククライミングか?」

「別にどれもやらないわ」

「えぇっ!?」




ルルと出会ってからいくつか年を超えた。部屋の中で本を読んどるルルに、いつもの調子でぶっ飛ばしてく。

でもルルは無反応。前やったら『やるやるー』って明るい声で言うてたんに。



「ルル」



それでどうしたもんか思うてたら、なんかばあ様が来た。うちはこん人が苦手なんで、見えない思うても少し下がってまう。



「おばあ様」

「また読書ですか」




ばあ様はルルがテーブルに座りながら呼んでいるある本を見る。



「ジュエリー作りの勉強ですね」



最近ルルはジュエリー作りに興味があるらしい。何気にちょこちょこ作ってったりもするんよ。



「いえ、読んでいただけです」



でもルルは澄ました顔でこんな事を言う。前やったらばあ様にもニコニコ笑って『そうだ』って言うてたんに。



「・・・・・・・おばあ様のお言いつけ通り、私は完璧を目指しています。
今はママのお手伝いやうちの事で精一杯です。他の事に時間を割いている余裕はありません」

「・・・・・・また完璧主義かぁ? そんな無理せんでも、楽しかったらそれでえぇやん」




ルルはこのばあ様にでらぁ影響を受け取る。自分も完璧じゃなきゃーっていっつも言うとる。

だから今だって胸を張って立ち上がって、読んでた本を閉じて右手で持った上でばあ様にお辞儀をするんよ。



「勉強の時間ですので、失礼します」










そのまま部屋の入口を目指してルルは歩き出す。うちもついてく。そん時、ばあ様が軽くため息を吐いたのが聴こえた。

なんでばあ様がため息を吐いたのか、うちには分からんかった。だってばあ様が望むような答えやろ?

完璧主義で、子爵の誇りを守るために頑張るー言うとるんやから。そやけど・・・・・・うちは今のルルが少し気になる。





もちろんルルがそのために頑張るんは楽しそうやけど、何かが違うように感じる。





昔のルルと今のルルは違う。もしかしたら大人になったんかも知れん。でも、なんか苦しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ルル、ごめんなぁ」

「いいわよ、別に。でも・・・・・・でも兄さんとインが」





それで今、ルルは苛立ちながら空港を出て街を歩く。

それも相当早足で、周りの人がルルを避けるレベルで表情が険しい。

うちがバラした事もスルーな感じでルルは歩く。



歩いてまたあん時みたいに・・・・・・なぞたまを壊した時みたいに表情を険しくしとる。





「裏切られた。守れないって・・・・・・嘘つき。力になってくれるって、約束してくれたのに。
ママの事を元に戻すために一緒に頑張ろうって言ったのに」

「ルル、あの・・・・・・アレはなんか事情が」

「裏切られたのよっ!!」



ルルは足を止めてうちの方を見ずに怒鳴りつけてきた。それでうちは軽く身を竦ませる。



「もういい。私が、私が全部取り戻す。あの完璧だった時間を取り戻して・・・・・・みんなを助ける」










どうして・・・・・・どうしてこうなったんよ。ルル、なんも悪くないのに。ただママさんの事を思ってただけなのに。





うちかてルルのためって思って・・・・・・それやのになんでルルは今、笑ってないんよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



裏切られた・・・・・・兄さんに裏切られた。胸が痛くて、苦しくて・・・・・・それで悲しくて辛い。

いつだって味方でいてくれたのに。いつだって味方でいてくれて、ママを助けるために・・・・・・信じていたのに。

でもいい。こうなったら私一人でも夢を叶えてやるんだから。まず、そのためには一つやる事がある。





今日はママもパパもお仕事で夕方まで帰って来ない。だから私は早足で歩きつつ電話をかけた。










『はい。・・・・・・ルル、お母様のお見送り任せちゃってごめんなさいね?』

「ううん、大丈夫。それでママ、タラランティーノ監督の映画に出るのよね」

『えっ!? ルル、あなたどこで・・・・・・あ、おばあ様』

「まぁそんなとこよ」



まさか廊下で盗み聞きしたとは言えないから、これだけでいいでしょ。さ、ここから更に後押しよ。



「ね、フランスにはいつ戻るの? 撮影はいつから?」

『あのね、ルル・・・・・・実はそのお話はお断りしようと思ってるの。
ほら、今の仕事も楽しいし、このままだと映画はちょっと無理かなーと』

「だめよっ!!」



私は足を止めて、電話の向こうのママを一喝した。心が痛むけど・・・・・・いいの。

これがママのためなんだから。ママにこれ以上ダメになって欲しくないから、一喝するの。



「せっかくのチャンスなのよっ!? 絶対引き受けなきゃだめっ!!
それでそれで・・・・・・ママはまた昔みたいに輝くんだからっ!!」

『ルル、落ち着いて? それだけじゃなくて、私あなたに』

「とにかくそのお話は引き受けてっ! お願いだから・・・・・・これ以上ダメなママにならないでっ!!」



それだけ言って、私は電話を切った。それでつい舌打ちしてしまう。



「やっぱりダメだ。ママは昔の輝きを忘れかけてる。それを取り戻さなきゃ、映画の話もきっと引き受けない」

「ルル、お願いだから少し落ち着こうや。ママさんかて今のお仕事が楽しいって」

「そんなの嘘よっ!! ・・・・・・きっと何かあるのよ。ママが映画のお仕事を引き受けられない理由が。
例えば誰かに圧力かけられてるとか、妙な事言われて自信喪失してるとか・・・・・・そうよ、そうに違いないわ」

「ルルっ! マジで落ち着かんかいっ!!」

「うるさいっ! 落ち着いてる場合じゃないでしょっ!? ママが・・・・・・ママがダメになっちゃうのにっ!!」










まずは家に戻って、作り溜めしてたジュエリーを全部回収よ。それで・・・・・・そうね、手段なんて選んでいられないわ。





エンブリオを手にして、ママを助けるの。助けて、映画女優に戻ってもらって・・・・・・それで全部解決なんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・というわけでフェイト、悪いんだけど聖夜市全体のサーチお願い』

「うん、分かった。そっちは任せて欲しいな」





あの噂の強烈なおばあさんのお見送りに行ったヤスフミから、緊急連絡が来た。

それでその・・・・・・話を聞いて、軽く頭を抱えてしまった。まさかそんなあっさり自供するなんて思わなかった。

でも向こうの強敵と思われていた仮面男・・・・・・ヘイ君がこちら側についてくれたのはありがたい。



だけどその分、ルルちゃんは追いつめられている可能性がある。だからヤスフミも私にサーチのお願いをしてきた。



これは本当に急いで見つけた方がいいな。なんだか嫌な予感もするし。





「あ、それとヤスフミ」

『何?』

「実はヤスフミとあむが出かけた直後に連絡があって、みんな準備完了だって。
今ティアナとシャーリーとディードが受け取りに行ってる」

『そうなのっ!? ・・・・・・でも、間に合うかどうかは微妙かぁ』



ヤスフミが困った声を出してるけど、それでもそこを待つつもりはないみたい。それを聞いて、私はなんだか嬉しくなってくる。



「とにかくみんなに連絡して、戻ったら合流するようにお願いしておく。だから場合によっては」

『分かった。じゃあフェイト、夕飯までには戻ってくるから』

「分かった。ならヤスフミの好きなもの沢山作って待ってるね。それでヤスフミ」



声の調子からだけど、なんとなく分かった。今のヤスフミは朝出る前のヤスフミと明らかに違う。



「迷いは、解けた?」

『ううん、解けてない。だから・・・・・・フェイトといっぱい話したい。話して、一緒に答えを探していきたい。
僕だけの答えでも、フェイトだけの答えでもダメだから。二人で答えを出していきたいんだ』

「そっか。ならきっと解けてるよ」





そう、そうだよね。それが私達の答えなんだ。私達はそれをずっと前に選んだ。

時々はお互いにどこか押しつけ合ってる部分があって、だからすれ違った事もあった。

だけどそれでも、お互いを知っていく事を諦めなかったから・・・・・・うん、大丈夫だよね。



ヤスフミはちゃんと答えを見つけている。だから電話口で私は、笑って送り出せる。





「ヤスフミ、しっかりね。きっと今なら・・・・・・本当の事が分かるはずだから」

『うん』



それで通信を終えて、私は後ろに控えていたリースを見た。リースは何も言わずに頷いてくれる。



「リース」

「ダメです。フェイトさん一人にはしておけません。・・・・・・向こうには姉様も居ますから」



・・・・・・私が前みたいに襲撃される危険を考えているのか、リースは表情が厳しかった。

今は私だけの身体じゃないのもそれが理由で・・・・・・そっと左手でお腹をさすった。



「分かった。なら後方支援頑張ろうね。ここを超えれば・・・・・・ようやく本命だから」

「もちろんです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・意外と時間かかったわね。子どもを釣るのも苦労するわ」

「いや、アンタもその子ども・・・・・・てゆうかルル、やっぱり無茶だみゃあ」

「何言ってるのよ。元々あなたのアイディアでしょ?」

「それは・・・・・・そうだみゃあ」





家から回収してきたジュエリーを、『願いを叶える宝石』と銘打って公園で子ども達にばら撒いた。

その数・・・・・・30から40。この数のたまごをなぞたまにして、そのパワーでエンブリオを呼び出す。

でも、ジュエリーを入れるためのかごの中を見て少し固まる。・・・・・・一つ残ってるのよね。



まぁコレは何かに使えるかも知れない・・・・・・というか、捨てるのが勿体ないので懐に入れておく。





「安心なさい、ナナ。暴走の危険性を考えてなぞキャラなりはさせないようにきっちりコントロールするから」



前に話したように、暴れた余波でエンブリオが壊れても意味がないもの。ここはきっちりやるわ。



「そないな事出来るのかぁ? やっぱ相当無茶じゃ」

「・・・・・・無茶でもやるのよっ! それで絶対にママには完璧になってもらうのっ!!」



隣のナナを睨みつけて一喝すると、ナナは身を竦ませて何も言わなくなった。

私は大きく呼吸してから、意識を集中。瞳を閉じて・・・・・・一気に両手を広げた。



・・・・・・やりたいように、やったらえぇがねっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



フェイトに連絡した上で各自手分けして街中を探していると、シオンとインが急に頭を押さえ出した。





アーケード街を歩いていた僕達は足を止めて、二人の方に視線を向ける。










「イン、どうした」

「シオンっ!?」

「お兄様、フェイトさんの連絡を待つ必要・・・・・・なくなりました」

「・・・・・・あっち」



言いながら二人が指差すのは、いつもの公園がある方向だった。

それでそこに遠目だけど、なぞたまっぽい輝きが集まってるのが見えた。



「でもこれはなんですか。今までのなぞたまの反応と全く違います」

「ヘイ、これ・・・・・・マズい。ルル、もしかしてアレ試しちゃったのかも」



インの言葉でヘイがハッとした顔になって、急に焦り出した。それを見て軽く首を傾げる。



「アレ?」

「あー、君は分からないか。ほら、最初の時以来エンブリオが出てなかったろ?
実はそれでルルと相談で、そこの辺りの問題の対策を考えていたんだ」

「簡単に言えば、普通のなぞたまより強いパワーを出そうという話になったんだ」



なるほど、エンブリオは×たまのマイナスパワーに引きつけられて来るってのが今のところの説だしね。

来ないなら、引きつけられる程にパワーを強めてやろうって事か。



「手段は二つ。一つはより強い迷いを持った対象だけを狙ってなぞたまにする事。だがコレは効率が悪くて時間がかかる。
それでもう一つは・・・・・・不特定多数の人間を同時になぞたまにする事。つまり、質より量に走った作戦だ」

「・・・・・・ではこのパワーの感じは、まさか」

「ルルの奴、大量の人間を同時になぞたまにしたって事っ!?」










ヤ、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ! 下手したらいつぞや想像してしまった大惨事勃発じゃないのさっ!!





とにかくあむ達に連絡して集合して・・・・・・なぞキャラなりとかされる前に止めてやるっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



こっちに転送されて、ヤスフミの家の近所まで来たところでナナちゃんが軽く身を竦ませた。





それで顔色が悪いから、少ししゃがみ込んでナナちゃんの方を見る。










「ナナちゃん、どうしたの?」

「・・・・・・シルビィ、すぐに恭文達と連絡取って。それも大至急よ。
多分向こうのしゅごキャラもコレ掴んでるから、一緒に対処しましょ」

「いや、だからそれどういう」



・・・・・・言いかけて気づいた。ナナちゃんはいきなり向こうのしゅごキャラの話をした。

それってつまりその・・・・・・何かたまご絡みで異常が起きてる?



「何か起こってるの?」

「起こってるなんてもんじゃないわよ。なによ、この妙な気配。
話に聞いたイースターとか言う奴ら・・・・・・マジで手段選んでない」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ふふふ、仰山くるわぁ。自分の夢も分からん無価値なたまごが仰山やぁ。

それが私の事を慕うように集まってくる。それで・・・・・・あぁ、やっぱり早くこうすれば良かった。

本当に気分がよくなるくらいにパワーが高まっている。それを感じて、確信が胸を昂ぶらせる。





これでエンブリオは確実に来る。というか、これで来んかったらでらぁおかしいだみゃあ。










「ルル、やっぱやめよう? これアカン・・・・・・マジアカンって」

「だからもやかましあっ! なんでそんなでらぁうじうじしとるんだみゃあっ!!」





右手をかざすと、なぞたま達はそれぞれその身を寄せ合うように集まって・・・・・・合計四つの巨大なぞたまになった。

いつもみたいにキャラなりするためだけに大きくなったわけではない。言うなら大きさの分だけパワーがこもっている。

私はその内の一つに飛び乗ると、その巨大なぞたまはゆっくりと浮上。上空10メートル程の高さまで浮上した。



街の様子を見渡しながら、私はエンブリオを探す。でも・・・・・・まだ来ない。それで軽く舌打ちする。



舌打ちしたのにはエンブリオが来ないからなのもあるけど、あのお邪魔虫共を見つけたのもある。





「・・・・・・ルル、もうやめてっ!!」



そう叫びながらピンク色のチアガール姿の日奈森あむが走りながら私に近づこうとする。

というか、他の連中もか。兄さん以外は姿が変わって、キャラなりしとるっぽいし。



「うるさい奴だみゃあ」










右手を日奈森あむ達に向かって近づくと、四つのなぞたまが口を開き、紫色の粒子の風を吹きつける。

それで全員の足が止まった。私を乗せたなぞたまは上昇しつつ後退していく。

それで・・・・・・あ、空がなんか幾何学模様になった。またチョロチョロとしてくれる虫だみゃあ。





ほんまでらぁ好かんわ。なんで毎回邪魔するん? 私はママの夢叶えたいだけなのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



風によって足を止められて、ルルを守るように近づいてくるのは三つの巨大なぞたま。





それで僕達は全員身構える。でもこの感じ・・・・・・あぁ、僕でも分かる。










「ねぇねぇ、なにアレっ!? キャラなりとかするわけじゃないよねっ!!」

【アレ、なぞたま達が集まってるでち。たくさん・・・・・・・たくさん気配がするでちから】

【×たまの時と同じく集合形態を取っているという事か。だがそれならどうする】

「あー、そうなんだよね。てーかこれは普通にキャラなりしてくれた方がマシだったんじゃないの?」





ルルの奴、多分こっちの妨害も読んだ上でなぞたまキャラなりをさせずにこういう手段に出てる。

あ、つまりよ。各々が勝手に暴走しまくるのを期待するのは、多分無しにしたんじゃないかな。

ヘイから聞いたけど、ナナ発案のこのアイディアを実行するの、ルル本人はかなり渋ってたそうだから。



ルルは、なぞキャラなりの暴走の余波でエンブリオに被害が出る事を恐れた。

でも数を揃えるしかないなら・・・・・・そう考えて、なぞたまの段階で自分のコントロール化に置いた。

それで何気にここは利点が高い。だって僕達は今まで、キャラなりしてから浄化していた。



というか、この段階で浄化が出来るかどうかのデータが揃っていない。当然無茶な事は出来ない。

つまりどうしても攻撃の手は緩むし、普通にやっても浄化出来ない以上防衛戦として使うならかなりの良カード。

多分その間にこのパワーはあっちこっちに撒き散らして、エンブリオが呼び寄せるのを狙ってる。



出てきたら一気に捕まえて願いを叶えて、それで詰み・・・・・・ってのが作戦かな。



中々に堅実な手だよ。こうなると時間との勝負か。それで突破力が必要になる。





「・・・・・・蒼凪君、日奈森さん、ヘイさん、ここは僕達に任せて」



そう言いながら唯世は僕達の前にでる。ううん、それは他のみんなも同じ。



「そうね。三人はあの子を止めて。それまでここは持たせるから。やや、やれるわね?」

「うん、大丈夫だよー。というかというか、ようやくだし・・・・・・ややここでは大活躍するんだからー」

「リインちゃん、悪いけどユニゾンは無しで。時間稼ぎしなきゃいけないから、手は多い方が助かるんだ」

「分かったです」



なぎひこもややもりまも、僕達の脇を通り過ぎるように歩いて巨大なぞたまに近づいていく。



「いや、任せてって・・・・・・唯世くんっ!!」

「多分僕達ではなぞたまは浄化出来ない。でも山本さんを止められれば・・・・・・あるいは」

「まぁ、それしかないか」

「やっぱり蒼凪君もそう思ってた?」

「うん」



一旦なぞキャラなりさせて浄化するにしても、このまま浄化するにしても、ここはルルを確保した方が早い。

ルルがなぞたま達をコントロールしているのはさっきので確定っぽいし、ガチなぶつかり合いがダメなら・・・・・・電撃作戦だ。



「それにほら、さっき教えてくれた増援も期待出来るよね。だから、ここは僕達だけで」

「・・・・・・・絶対に無茶はしないで。こっちも時間かかるかも知れないから、僕達の事は期待しないように」

「了解」



すると、唯世が微笑みながら僕に向かって右拳を向けて来た。僕は左の拳をそこに軽くぶつけた。



「あの、だから待って。いくらなんでもみんなだけで」

「あむ」



僕は何も言わず、戸惑った様子のあむの方を見る。するとあむは自分の両手を見た。

それからその両手で自分の頬を派手に叩く。それから拳を握り締めてガッツポーズを取った。



「・・・・・・分かった。みんな、気をつけてね。ヘイさん」

「あぁ、行こう」










ヘイが僕の方を見るので、僕は頷きつつ右に走った。真正面からではなく、回り込んでサイドを突く事にする。

あむとヘイも僕についてきてくれている。僕はバルディッシュを握り締めながら、空を見上げた。

その視線の先は忌々しげに僕達を見る勘違いなDQNと、そのDQNを不安気に見ているしゅごキャラの姿。





苛立ちも感じるけど、その前にまず対話だ。ヘイとも話したけど、僕達は伝えなくちゃいけない事がある。それも本当に大事な事だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「みんな、悪いんだけど少しお願い。やや、ちょっと集中しなきゃいけないから」

「・・・・・・分かった。なら結木さんは僕の後ろに」

「りょうかーい」



結木さんが後ろに回った直後に、またなぞたまから紫色の風が吹き出された。でもその風はすぐに消える。

それで風が吹いたところから、食べ物とか乗り物とか制服とか何かの道具が大量に出てきた。



「・・・・・・アレ、何? バットやスケボーに積み木や漫画とかもあるけど」

【察するになぞたまにされた奴らの夢ってとこか? ナギー、油断するなよ】

「分かって・・・・・・あ、ややちゃん」



藤咲君は僕の後ろの方の結木さんに視線を向ける。それで結木さんはキョトンとした顔で藤咲君を見る。



「集中する前にアヒルちゃん出してくれないかな。アレくらいのサイズなら、多分アヒルちゃんで止められる」

「あ、そっか。ならなら・・・・・・ゴーゴー!!」



結木さんは胸元で握っていた両手を上に上げた。それでそのままその手を開く。



「アヒルちゃんっ!!」



すると僕達の周囲に10数体のアヒル達が出現した。



「アヒルちゃん、ややはちょっと集中するからなぎーの言う事聞いて頑張ってっ!!」



アヒルは全員敬礼して、藤咲君の方に来てくれる。さて、これで準備完了。まずは・・・・・・僕だ。



「みんな、少し下がってて」



こちらに向かって接近してきた夢達を見定めながら、僕はステッキを右薙に振るう。



「ホーリークラウンッ!!」



杖から展開された金色の光は、まるでカーテンのように広がりながら夢達に迫る。

そしてカーテンと夢達が衝突して、まるで相殺されるかのように弾けて消えた。



【よし、こちらの攻撃は通用するようだな】

「うん」










でもこれはいわゆる攻撃に属するものだから、相殺出来るだけだ。まだ油断は出来ない。





再び迫る夢達に向かって、今度は藤咲君が動く。藤咲君は左手で青いフリスビーを出した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ブレイズ」



右手を右薙に振るって、まずはフリスビーを投擲。



「シュートッ!!」



フリスビーはさっきの辺里君のプラチナロワイヤルのように、夢達に衝突して相殺。・・・・・・あ、訂正。

バットに当たって相殺された。さすがに貫通してどうこうは無理らしい。何気にパワーが強いのかも。



【おいおい、まだ来るぜ】

「分かってる。だから」



左手を指差して、僕はアヒル達に指示を飛ばした。



「みんな、夢を食い止めてっ!!」



それでみんなは突撃して、それぞれに列車やグローブにカメラなどを持って向こう側へ押し返す。

その中にはケーキはパフェにオムライス・・・・・・お菓子好きか料理好きな子の夢もあるらしい。



【うし、お前らそれ食べようぜ。そうしたら楽だ】

「いや、リズム、さすがにそれは」



なんて言っていると、食べ物を押し返していたアヒル達がこちらを向いて敬礼してきた。



【「・・・・・・え?」】



それでそのままくちばしで食べ物をツツいて、食べ物の形状をした夢を美味しそうに食べ始めた。

その様子についまだまだ迫ってくる夢達への対処を忘れて、呆然としてしまった。



【・・・・・・どうだナギー、なんでも言ってみるもんだしやってみるもんだろ? どうなるかなんて分からないってわけさ】

「そ、そうだね。あの・・・・・・うん、参りました。でもリズム、リズムも驚いてるよね?」

【そこには触れないでくれ】










そうこうしている間に、吐き出された夢達は僕達と接触。辺里君はややちゃんのガードのために動けない。





だから僕とりまちゃんとリインちゃんで・・・・・・なんだけど、二人は黒い人型数人に囲まれていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・早速ピンチですか?」

「問題ないでしょ、このくらいは」



リインと背中を合わせながら身構え、周囲を警戒。それで人形達が全員動いた。

それを見て反射的に回避行動を取ろうとしたけど、それは止められた。



バラバラーンス♪



人形達全員、いきなりこんな事言ってきたんだから。なお、ポーズ付きよ。



「「え?」」

ズゴーンッ! ウヒョヒョヒョヒョヒョッ!!



そしてただそれだけだった。ただそれだけをやり続けて、ついリインとポカーンとしてしまう。



「・・・・・・あぁ、お笑い好きな子の夢ですか」

「そうみたいね。でも」

「えぇ。でも」



私達二人は一息に人形達に向かって、一番ダメージが来る攻撃を仕掛ける事にした。



「「全然笑えない(です)」」

ガーンッ!!



20体近く居る人形は完全に固まり、その動きを止めた。・・・・・・甘いわね。



「ジャグリング」



その間に私はジャグリングのピンを出現させる。



「フリジット」



リインも同じように青い氷の短剣を大量に出していく。背中を合わせたまま私達は、トリガーを引いた。



「パーティー!!」

「ダガー!!」



周囲を包囲していた人形達全員を、鋭く放たれたピンとダガーは撃ち抜く。



がぁっ!!

ぐぇっ!!

げぼぼっ!!



結果・・・・・・私達の攻撃で撃ち抜かれた黒い人形達は、粒子となって全て消えた。



「まだまだ修行が足りないわね」

「顔洗って出直してくるのですよ」










・・・・・・さて、いよいよ本命って感じかしら。巨大なぞたま三体、こっちに向かって接近してきてる。





私達は迫り来るそれを見据えながら、再びピンと短剣を出した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



向こうが騒がしくなっている間中、ルルは空をずっと見上げていた。それも相当焦り気味にだよ。





まぁ話に聞いた通りならしょうがないんでしょう。でも残念ながら、それは隙だ。










「・・・・・・どうして、どうして出てこないのよ、エンブリオ」

≪Sonic Move≫





僕は魔法を発動。蒼い光に包まれて急加速しながらルルに接近。

シザースフォームに既に変えているバルディッシュを右に引く。

ルルが僕に気づいて振り向いている間に、鎌の刃を左薙に撃ち込んだ。



蒼い鎌は鋭くその切っ先をルルの胸元に打ち込み。





「やめんかいっ!!」



その声と共に、僕は刃を止めた。ルルを守るように、ナナが素早く割り込んでいた。

鎌の切っ先は両手を広げているナナに突き刺さる寸前で動きを止めた。



「・・・・・・どけ」

「いや、どかんっ! ルルは・・・・・・ルルは絶対の絶対に悪い事のためにこんな事しとるんやないってっ!!
お願いやからルルに乱暴せんでっ! エンブリオが手に入ったらもうホンマにおしまいにするからっ!!」

「そう、だったら」



僕はすぐにバルディッシュを引いて、その場でバク転。僕の居た場所を黒い風が吹き抜けた。

ルルを乗せたなぞたまはすぐに下がって、僕から距離を取る。・・・・・・ち、仕留めそこなった。



「それは勘違いだ。現時点でお前もルルも、充分『悪い事』してる立派な悪党なんだから」



約40メートル程の距離で僕達は対峙。それで再び計算開始。まず下手にルルに攻撃は危ないか。

今みたいにナナが身を呈してかばって来られたら、さすがにどうしようもない。なら、やっぱり説得?



「その通りです」



不可思議空間に隠れてもらってたはずのシオンが姿を表し、右手で髪をかき上げながらナナの方を見た。



「今までやった事を考えれば、あなたの言葉には何の説得力もありません。ナナさん、どいてください」

「違う・・・・・・違う違う違うっ! ルルはそんな事しとらんっ! ルルは悪い子とちゃうっ!!
ただママさんのためを思って・・・・・・だからうちかてルルのために力を貸してて」

「じゃあかおるさんの夢はなに」



あんまりにうるさいので僕は厳しい視線を送り続けながら、あの小さな子に一つ問いかけた。

ナナは揺れる瞳を僕に向けたまま、何も答えられずに固まる。ルルも同じくだよ。



「かおるさんの今やりたい事はなに? お前の宿主の夢は? 『なりたい自分』は?」

「それは・・・・・・そやけどルルは、それでもママさんのためにっ!!」

「それでも?」



僕は目の前のバカを鼻で笑って、言葉を続ける。



「笑わせんなよ、三流。そんな言葉を使う時点でお前らに正当性なんてない」



左腕を胸元まで上げて、軽くスナップ。改めてあのバカ共をよーく見る。・・・・・・うん、やっぱ腹立つわ。



「そう言いながらそこを知ろうとしなかった事がお前らの罪だ。だから僕はお前達にこう言う。
例え世界中の人間がお前達を『正しい』と、『間違っていない』と言っても僕はこう言う。・・・・・・さぁ」



それからゆっくりと上げて、あの二人を指差した。その瞬間に、周囲に風が吹き荒れマントが揺れる。



「お前達の罪を数えろ」

「嘘やっ! ルルに罪なんてないっ!! 家族を想う事に・・・・・・罪なんてないってっ!!」

「いいえ、あります。だって」



シオンはため息を吐きながら、泣き叫ぶナナの方に微笑む。



「あなた達は既に、あのお母様の家族なんかではないんですから」



それで完全にナナは固まった。ルルも明らかに不愉快そうに僕達を睨みつける。

だけど、僕達はそれでも揺らがない。てーかそんな視線怖くないし。



「・・・・・・ちょっとちょっと恭文っ! それにシオンもストップッ!!」



吹き荒れた風が止んだ途端に、下からハートキャリバーを装着したあむがこちらに向かって走り込んでくる。

それでその後ろから、空中に形成された道を走りながらヘイもコートを黒の面にした上で来た。



「まずそれ言い過ぎだからっ! あと恭文、マジなにしてるっ!? アレ下手したらナナ真っ二つじゃんっ!!」

「そこ僕に怒られても困るんですけどっ! てーかいきなり出てきたあのバカに言ってよっ!! 僕だって内心ドキドキだったのよっ!?」

「そうだぞあむちゃん、それに即時鎮圧すればこの現象も収まる可能性がある。恭文君の判断は正しい」

「・・・・・・まぁ、それは分かるけど」



分かるなら・・・・・・って、しゃあないか。元々こういう子だったし。

とにかくあむはピンク色の道の上で停止して、ルルの方を見る。



「ルル、ナナももうやめて」

「うるさいっ! あなたには関係ないわっ!!」

「あるよ。・・・・・・ルルとナナがどうしてそこまでこだわるのか、ヘイさんから聞いた。
ママに映画女優に戻って欲しくて、だからエンブリオを探してたって」



ルルとナナは瞳を見開いて、あむの後ろに居るヘイとインを厳しい表情で見た。

それから何かを叫び出しそうにするけど、軽く息を吐いて視線を落とした。



「・・・・・・そうよ」



視線を上げて、ルルは僕達を睨みつける。



「ママのためよっ! ママに・・・・・・ママに昔の輝きを取り戻してあげるためよっ!!
ママを昔みたいに、一流の女優に戻してあげるのっ!!」










・・・・・・色々勘違いしてるっぽいのでぶっ潰してやろうと思ったら、あむが何も言わずに僕を右手で制してきた。





あむの方を見ると、あむは僕の事をじっと見ていた。その瞳を見て僕は、おとなしく下がった。





だってあむの目に、もう迷いなんて無かった。あむは僕が思った通り、本当にすぐに分かったらしい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「どうして、かな」

「決まってるじゃないっ! それがママの幸せだからよっ!!
バラエティなんて、嫌々やってるに違いないわっ!!」





ルルの今の叫びを聞いて、あたしにもようやく分かった。

ずっと考えててそうじゃないかなと思ったけど、やっぱりそうだった。

確かにルルは一番大事なとこ抜けてるかも知れない。



恭文も下がってくれた事だし、まずはあたしが・・・・・・あたしがちゃんと話したい。





「・・・・・・ホントに? ママがそう言ってたのかな」

「そうに決まってるわっ! だってママは、あの頃が一番輝いていたものっ!!」





あぁ、やっぱり抜けてる。大事なとこが抜けてるから、恭文だってあんなに厳しいんだ。

だからヘイさんだって・・・・・・拳を強く握りしめて、不抜けてたあたしにしっかり喝を入れる。

その上でルルの事をもう一度見た。ルルは見ていて泣きたくなるくらいに焦った顔をしてた。



そんなルルをこれ以上刺激しないように、優しく・・・・・・優しく話しかけていく事にする。





「そうかな」



ルルが息を飲んで、あたしを睨みつける。それでもあたしは・・・・・・引かない。



「あたしは昔の事なんて知らないけど、ルルのママは今でも充分輝いてるよ。
ルルと居る時のママ、凄く綺麗で・・・・・・ドキドキする位にキラキラしてた」



多分ルルはバラエティやCMに出てる時のママが嫌いだから、ここからは外す。

だからパーティーの時やおばあさんが来た時のあの光景を思い出しながら話していく。



「なのにルルがこんな事してるって・・・・・・みんなの夢を利用してるって知ったら、きっと悲しむよ」

「・・・・・・違う」

「違わないよ。ルル、もうやめよ? こんな事しても・・・・・・ママも、みんなも、なによりルルだって悲しいよ。
まず、話し合おうよ。あたしも一緒に考える。どうしたらママやルルにとって一番いいのか・・・・・・見つけていこうよ」










手を握る事が強さで勇気なら、開く事も強さで勇気。あの時ザフィーラさんが言ってくれた言葉を思い出した。

だからあたしはまず、手を開く。今ならきっとまだ間に合うから、開いてルルに差し出す。

あたしはやっぱり弱くて情けないキャラで、大事な事を抜かしていた。だからさっきまでウジウジしてた。





でも、もう終わり。きっとルルとナナに必要なのは、コレだと思うから・・・・・・手を差し出す。





二人は視線を落として考え込むような顔になるけど、それでも手を差し出す事だけは絶対にやめない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そんな声で、私に話しかけないで。なんでそんな優しい声を私にかけるの?

そんな目で、私を見ないで。なんでそんな悲しげな瞳で私を見るの?

そんな事、言わないでよ。私の夢を、私の願いをもう否定しないでよ。そんなのたくさんなの。





私は・・・・・・私は、ただあの時のママがもう一度見たいだけなのに。










「やっぱり、いや」

「ルル」



もう、コレしかない。ここでコイツら全員を叩き潰さなかったら、私の夢が壊れちゃう。

きっとアレはそのために私の手元に残った。私はそう信じて、右手をポケットの中に入れる。



「それでも私は」



その中にあるものを掴んで、強く念じる。そして・・・・・・力を発動。



「ナナ」

「え?」



ゆっくりと掴んだものを取り出す。そこには、ただ一つ残ったジュエリー。

ナナは私を信じられないと言いたげな顔で見ている。私は・・・・・・泣く事しか出来なかった。



「ゴメン」

「・・・・・・ルル」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・まさか」





右手に持ったあの宝石を見て、凄まじく嫌な予感を感じた僕は一気に前に踏み出した。

でもそんな僕の動きを止めるように、なぞたまが口を開いて風を吹きつける。

そこにバルディッシュを袈裟に打ち込んでそれを散らして、更に前進・・・・・・しようとした。



でも足が止まってしまった。ルルの隣に居たナナを見て固まってしまった。





「あ、あああ」



ルルは呆然とした表情をしながら、顔を真っ青にしていた。

それでゆっくりと桜色の宝石に包まれ始めていた。



「ルル・・・・・・ルルっ!!」





その怯えるような叫びを聞いてもルルは何も答えない。結果ナナは完全にたまごに包まれた。



それで一瞬でそのたまごが色と殻を変えた。その色は赤と紫が混じったようなワイン色。そして表面には白いハテナマーク。



今のナナのたまごはもう言うまでもなく・・・・・・僕達がこの2ヶ月ちょいですっかり見慣れたなぞたまだった。





≪ナナちゃんを・・・・・・なぞたまに、したの?≫

≪自らのしゅごキャラを、アレだけ必死に自分をかばったあの子を・・・・・・なんという≫



僕も、ヘイも、あむも、完全に言葉を失った。その間にたまごはルルの後ろに回って巨大化。

右手で持っていた宝石を首元にかけながらルルは、不敵に笑っていた。



「これ以上の邪魔はさせにゃあて」

「・・・・・・そこまでか」



バルディッシュを強く握り締めながら、僕は・・・・・・倒すべき敵を正面に見据えた。

そして大きく沸き上がる怒りのままに叫ぶ。



「そこまで・・・・・・そこまで目が腐っていやがるのかっ! テメェはっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



もう何を言っているのかも分からない。いいえ、分かる必要はないわ。





なぜなら私はママのためにもう戻れないんだから。そっと・・・・・・そっと右手を胸元に当てる。










「ナナ、ごめんね。でも・・・・・・力を貸して」

「そんな言葉を」



目の前に蒼凪恭文が迫っていた。あの子は私に向かって鎌を袈裟に振り下ろしてくる。



「お前が吐くんじゃねぇっ!!」



私はそのまま仰向けにたまごから飛び降りた。振るわれた刃は、倒れ行く私の眼前を通り過ぎるだけ。

そのまま縦に回転しながら落ちていくと、下にナナのなぞたまが回り込んで口を大きく開ける。



「行くわよ、ナナ。私達で夢を叶えるの」










身を捻り、その口元に足から飛び込んで私はナナに食べられた。




感じるのは、この子が力を貸してくれているという実感。そして私は・・・・・・姿を変えた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



たまごがゆっくりとひび割れていく。そこに巨大なぞたまが10個に分裂して飛び込んでいく。

まるで水面に飛び込んだかのように波紋を立てて、ナナのなぞたまはそのたまご達を受け入れた。

そしてたまごが割れた瞬間、あのバカがその姿を完全に変える形で出てきた。





金色の線上の金属を貼り合わせたようなボディースーツは、太ももやへそが丸出しな大胆なライン。

腰には白く裾に青のラインが入ったビスチェを纏うも、それでも露出度は高い。

胸元は青の布で包まれてるけど、全体的に露出は全開。多分真・ソニックよりも露出度は高い。





胸元には三個のダイヤモンドが輝き、金色の髪はエメラルド色になっていた。

そして頭にはまるで帽子のように貼りつけられた白いハテナマーク。

でも僕が気になったのは・・・・・・身体の各所に付けられたあの宝石と同じと思われるもの。





手首と両足首の左右に一個ずつ。それに髪の右側に一個。もしかするとあのなぞたまなのかも。





ルルはその姿のまま地上に降り立ち、紫色の目を見開いて左の腕を左薙に振るった。










キャラなり



まるで誇らしげに・・・・・・そしてこの場に居る全員に崇めよと言わんばかりにルルは輝きを放った。



ドリーム・ドリームッ!!





そのなぞたまと同じ色の輝きは周囲に撒き散らされ、僕は少し圧される。

それで・・・・・・何かが分からなくなるような、目の前にモヤがかかるような感覚がした。

それを感じた瞬間、反射的に自分の中の鎖を噛み砕いて獣を解放する。



それだけじゃなく、周囲に向かって大きく声を張り上げる。





みんな、この光から逃げてっ!!





でも、それは少し遅かった。まずあむのキャラなりが突然解除。当然展開されたウィングロードも消失。

そのためにあむは後ろに居たヘイ共々地面に落下した。なお、現在の高度は10メートル以上。

しかもそれだけではなく、あむの周囲にラン達のたまごが現れる。ううん、瞬間的にみんなたまごに包まれてた。



とりあえずあむとたまご達の方はヘイが受け止めて、近くの木をクッションにする形で落ちたから大丈夫。

そして遠目に見える唯世達の姿も変わっていく。みんな今日着ている私服にそれぞれチェンジ。

唯世の後ろに居たややだけは姿が変わらなかったけど、それでもみんなのキャラなりが解けた事に変わりはない。





≪・・・・・・・・・・・・主様、もしかしたらルルちゃんのなぞキャラなりの能力≫

≪こちらのキャラなりの無効化でしょうか。そうなると日奈森嬢達は戦えませんよ?≫

「分かってる。マズい・・・・・・これは、かなりマズい」










眼下のルルは、勝ち誇ったかのように笑っていた。でも僕は相当に困り顔だよ。

一気に形勢逆転された。今の状況でみんながキャラなり出来なかったら、なぞたま達を止められない。

いやいや、それ以前の問題としてみんなの身の安全だって。こうなるとここは、撤退か?





正直僕が無茶するのはアリだけど、戦えない唯世達を放置なんて絶対ありえない。





でも問題は、眼下で僕を見て不敵に笑ってるのがそれを許してくれるかどうかなんだよなぁ。




















(第106話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、なぞたま編のラスボスであるドリーム・ドリームの能力発動によって形勢逆転。
一気に大ピンチに陥ったところで次回に続きます。というか、尺が無くなりました」

シルビィ「ヤスフミ、ぶっちゃけるわね」

恭文「まぁね。あ、ちなみにあのドリーム・ドリームの能力はこのお話オリジナルですよね」

シルビィ「確かテレビではあむちゃんが説得して4分で勝負ついてたわよね」

恭文「うん。基本の攻撃に関しても次回出すからアレとして・・・・・・一応この話ではかなり強い感じにしたそうです」





(まぁさすがに4分で勝負つくと次回の尺が・・・・・・というか、予定イベントの消化が)





恭文「そうなんだよねー。4分決着だと予定イベントが消化出来ないんだよねー。
まぁそこの辺りは次回に期待していただくとして、シルビィ出てきたね」

シルビィ「えぇ。それで決戦に即時介入よ。だってほら、本当にピンチだもの」

恭文「撤退も考えなくちゃいけないレベルだしね。てーかこれでゴリ押しは選択肢に入らないって」





(入れたら色々大問題だしねー)





恭文「でも作者、チート能力とかそういうの入れないようにしてたのに・・・・・・どうしたの」





(いや、仮面ライダーWとか見てたら極端じゃなければOKかなーと。
テラーとかユートピアとかもそうだけど、そういう特殊能力特化型なキャラも出ると幅が広いし)





シルビィ「・・・・・・テラーが出てくると怖いわよね。だって精神的にやられちゃうでしょ?」

恭文「だね。まぁパワーバランスには本当に気をつけていこうか。すぐにインフレしちゃうから」





(はーい)





恭文「それでシルビィ、ついにW&オーズな劇場版が公開されたわけだけど」

シルビィ「あ、そう言えばそうよね。でも作者さんはまだ見に行ってないとか」

恭文「うん。平日の朝都合がつく時に見に行く予定っぽいから」





(超・電王の時と同じコースですな)





恭文「というわけで、ネタバレは極力無しでお願いしたかったりします。いや、だって僕とフェイトも見るし」

シルビィ「あ、それはお願いしたいかも。ただしょうがない部分はあると思うのよね。
例えば・・・・・・おやっさんがとってもカッコよかったとか」

恭文「あぁ、それはしょうがないね。それはしょうがない。もう予告の時点でハードボイルドだもの」





(普通にカッコ良いので、今から楽しみです)





恭文「というわけで、本日はここまで。そんなおやっさんが主題歌のPVで髪染めててびっくりした蒼凪恭文と」

シルビィ「素敵なおじさまは大好きなシルビア・ニムロッドです。それではみんな、SEE YOU AGAIN♪」










(というわけで、劇場がとっても楽しみです。でも吉川晃司さん・・・・・・すげースタイル。
本日のED:DaiKichi〜大吉〜『HEART∞BREAKER』)




















ナナ(メルティランサー)「・・・・・・というわけで、私も出たわけだけど」

シルビィ「出番は次回ね。だけどキャラなり無効って・・・・・・どこのエターナル?」

ナナ(メルティランサー)「いや、むしろAMFじゃない? ほら、アレもそんな感じだし」

シルビィ「あぁ、そうかも。でもこうなると」

ナナ(メルティランサー)「急がないといけないわね」

シルビィ「えぇ、それもあるけど・・・・・・私達に見せ場が増えて」

ナナ(メルティランサー)「このおバカっ! そんな事言ってる場合っ!?」

シルビィ「もちろん冗談よ。というわけで、次回までに急いでおきましょ」

ナナ(メルティランサー)「えぇ」










(おしまい)






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