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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第24話 『この話のメインタイトルをTV本編風に言うと『魔導少年マジシャルやすふみ』になる(友人談)』



・・・朝日も昇り始めた中で、音が響く。





木と木が小気味良くぶつかり合う音。





その瞬間、手から伝わるのはいい感じの手応え。





・・・いや、楽しいわこれっ!!





僕は、距離を取るために後ろに飛ぶ。

だけど、追撃は当然のようにくる。なので、それを迎え撃つ。





相手が両手に持った小太刀を模した木刀は、空気を斬り裂きながら僕へと迫る。

それを、手にしている木刀で受ける。・・・いや、流すようにして弾く。





だけど、それは一度じゃ済まない。相手は二刀流。嵐のような連撃が襲ってくる。

それを、木刀で防御。もしくはステップで軸をずらして、斬撃を弾きながら避ける。攻撃の隙・・・ないな。ま、いいか。





相手は僕より格上だ。この場合最優先は・・・防御と回避っ!!





何度目かの斬撃が来る。右手からの斬り上げるような攻撃。持ち方は逆手。





胴を抉るかと思うような深い斬撃。それを、なんとか防ぐ。

だけど、重い。その衝撃に圧された・・・瞬間だった。





相手の姿が消えた。そう、消えたのだ。そして、僕は考えるよりも速く、木刀を背後に向かって、左から横一文字に打ち込んでいた。





身体全体を使い、周囲を360度斬り裂くような一撃は・・・なにも捕らえなかった。

そして、上を見る。・・・跳んでた。そして、攻撃体制を取ってる。だから、こっちもそうする。

刃を返す。そして、上空からの襲撃者に対して、右から一閃っ!!





次の瞬間、落下する勢いを乗せた一撃と、僕の斬撃がぶつかり合った。




















・・・勝負は、そこで決まった。





空からの一撃は食らわなかった。だけど、衝撃に耐えきれず、そこで体制が崩れてしまった。

そこは相手も・・・同じじゃない。僕がちょっとよろめいている間に、距離を詰められて、詰みだ。

首に木刀の刃の部分が当てられる。なので・・・。










「・・・ここまでにしとこうか」

「・・・はい、ありがとうございました」





首から木の刃を引いて、ニッコリと相手が・・・美由希さんが笑う。



・・・早朝、朝稽古つけてもらってました。でも、また負けた。悔しいー!!





「あはは・・・。そんな落ち込まなくていいよ。うん、成長してるしてるっ!!」

「そう・・・ですか?」



僕がそう聞くと、美由希さんがポンポンと背中を叩いてくれた



「そうだよ。だから、自信持って」

「・・・はい」



まぁ、御神の剣士のお墨付きだし、自信持っていいかも。

とにかく、話をしながらも歩き出す。だって、お腹ペコペコだし。



「ま、この調子なら大丈夫かな?」

「・・・はい?」

「いや、サリエルさんやヴィータちゃんやシグナムさんから色々ね〜。これから何がしたいのかーとかさ」





その瞬間、顔が熱くなった。いや、だって・・・。



・・・あの人達はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





「まぁまぁ。いや、やっぱり私はもう現地妻じゃいられないね〜。邪魔しちゃ悪いし」

「み、美由希さんっ!? なに言ってるんですかっ!!」



いや・・・その・・・。あぁもうっ! 何バラしてくれちゃってるのっ!?



「でも・・・」

「でも?」

「恭文のお姉さんでは、いていいよね?」





瞳に見えるのは、どこか懇願するような感情。だから・・・こう、答える。





「・・・当たり前じゃないですか」



うん、そこは変わんない。大事な、色んな事を相談出来るお姉さん。それが美由希さんだ。



「・・・ありがと。なら、これからも抱きついていいよね」



あはははは・・・。そんなの決まってる。



「ダメです」



躊躇い無く即答で言い切った。



「なんでっ!? 姉弟のコミュニケーションなんだからいいでしょっ!!」

「良いわけあるかっ! つーか女の子にあんまり優しくしないようにって言ったのあなたでしょっ!?」

「私は別だよっ!!」



いやっ! どんな理屈っ!?



「・・・そういうこと言うなら分かった。やっぱり、このまま現地妻で行くっ!! 恭文、私は3番目でいいから」

「お願いだからやめてくださいよっ! つーか3番目ってなにっ!? 2番目も居ないからっ!!」

「え? 2番目はリインちゃんだよ。つまり・・・『恭文×フェイトちゃん+リインちゃん+私』になるわけだね。・・・うん、納得だ」

「納得するなバカぁぁぁぁぁぁぁっ! どんなトンデモ方程式組み上げてるんですかっ!?
お願いだからやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




















「・・・楽しそうだな、やっさん」

「あれ、サリさん。つか・・・ヒロさんも」

「お二人とも、どうしたんですか?」

「とーぜん、美由希ちゃんとの楽しい組み手♪ つかやっさん、アンタ・・・抜け駆けとは汚ないね」

「失礼なこと言わないでくださいよっ!!」

「ま、そこはいいさ。・・・美由希ちゃん、頼める?」

「・・・はいっ!!」










早朝の隊舎の中庭は、こうして凄いことになった。いや、本気の美由希さんが凄まじいのがよくわかった。・・・ヒロさんとサリさんもね。










・・・これが、この日の始まりだった。そう、ちょこっと大変な1日の始まりである。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第24話 『この話のメインタイトルをTV本編風に言うと『魔導少年マジシャルやすふみ』になる(友人談)』





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・昨日の訓練の後、結局お姉ちゃんは隊舎に泊まった。いや、楽しかったなぁ。久々に姉妹のコミュニケーションを取ってしまいました。





ただ、またもスバルやティアの私を見る目が微妙でした。うぅ・・・そんなにお仕事モードな感じに見えるのかな?

恭文君が来てくれたお陰で、大分そういうのは改善出来たと思うのに。





とにかく、朝。みんなでご飯を食べてから、恭文君はお姉ちゃんを自分の家へ送っていきました。

お姉ちゃん、ミッドは初めてだしね。こういうのは絶対に必要。そして私は・・・。




















「なのは、お待たせ」



ここは、隊員寮の入り口。その声は、目の前に来たミニパトの運転席から。それを運転するのはもちろん・・・。



「ううん、大丈夫。お姉ちゃんは?」

「ちゃんと送ってきたよ。・・・つか、着いた途端にエイミィさんとクラナガン観光するとか言って、飛び出した。僕が送った意味無いし・・・」



にゃははは・・・。想像出来る。



「ま、そこはいいから、早く行こう?」

「うん」










そして、私は助手席に乗る。それから、トゥデイは動き出す。これから、ちょっとだけ恭文君とドライブです。




















「・・・恭文君」

「うん?」



うん、いい機会だから聞いておこうかな?



「フェイトちゃんとは、本当になにも?」

「・・・いかがわしい事は0だよ」



やっぱりか・・・。まぁ、あっても大変だよね。気まずくなりそうだし。



「あ、そうだ。なのは、ありがとね」

「なにが?」

「ほら、教導隊の資料やらなんやら、揃えてくれて。助かった」

「いいよ。というか・・・本気?」





私、今一つ信じられない。恭文君が局員なんて・・・。





「本気で考えるってだけだよ。まー、なっても先生2号な感じが・・・」

「・・・うん、そう思うよ」










きっと、命令や規律なんてすっ飛ばすんだろうね。自分の守りたいもののために、壊したいもののために・・・ね。

・・・そうだよね。それが、恭文君なんだよね。





どこに居ても、きっと変わんなくて、いつも通りのノリで・・・。









「でも、恭文君が局員になったら、楽しくなりそう」

「そう?」

「うん、きっと」





色んな事が起きそうだしね。・・・まぁ、頭を抱える事も多そうだけどさ。



上層部の皆さん、御愁傷様です・・・。





「で、帰りは何時だっけ?」

「うんとね・・・5時くらいかな」

「りょーかい。こっちもそれくらいには終わると思う」










・・・私達がこれから向かう所は、管理局本局。私は、教導隊のオフィスに顔を出して、解散後・・・そう、解散後の教導スケジュールの打ち合わせ。





そして恭文君は、ピンチヒッターなのです。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ミッド地上の中央本部から転送ポートで本局へ。着いてからなのはと別れたあと、僕はある場所へ向かっていた。





あー、でも・・・結構久しぶりだね。










≪そうですね。しかし・・・相変わらず忙しそうですね≫

「年中戦場だしね」





とにかく、着いた。・・・入り口は、近代的な本局の内装とは合わないシックな色合いの木目の扉。



そこのインターホン・・・というか、警備端末のスイッチを押す。聞こえてきたのは、女性の声。





『はい、こちら無限書庫です』

「ども、嘱託魔導師の蒼凪恭文です。書庫の手伝いに来ました」

『あぁ、蒼凪さんっ! 待ってましたよっ!! とにかく、中へ』





そして、扉が開く。僕はその中に飛び出す。

そこは、それまでと違う無重力の世界。そして、上から下まで。360度本の数々。



ここは、時空管理局が誇る超巨大データベース『無限書庫』。次元世界の知識と歴史の全てが存在しているとも言われている場所。





「恭文君っ!!」



聞こえてきたのは、僕のよく知る男の人の声。それは上の方から。・・・おぉ、また・・・すごいなぁ。目の下のクマとか。



「ユーノ先生っ!!」



金色の長髪を後ろで一つに纏めて、局の制服では無く、スーツ姿の男性。

そう、この人がユーノ・スクライア。無限書庫の司書長さんだ。



「久しぶりっ!!」

「一体何徹したんですかっ!?」

≪初登場おめでとうございますっ!!≫




















・・・瞬間、場が凍りついた。え、なんでっ!?




















「えっと・・・アルトアイゼン?」

「アルト、空気読みなよ。ここはクマを突っ込むところだって。ほら、ユーノ先生ポカンとしてるし」

「そういう話じゃないよねこれっ! というか、君達いきなり何言ってるのっ!?」

≪いや、まずはそこでは無いかと。下手をすれば最終回まで出番なしだったんですから≫



・・・あ、なるほど。



「君、それで納得しちゃうのっ!?」

≪当然でしょう≫

「断言しないでっ! なんか悲しくなってくるからねっ!?」

「ユーノ・・・先生・・・! よかったで・・・すね・・・!!」

「お願いっ! 泣くのも止めて欲しいんだけどなっ!? いやっ! 確かにこのままかなとか思ってたけどっ!!」





まー、それはそれとして。





「僕とアルトはなにすりゃいいんですか」

「相変わらず切り替えが速いねっ! 速すぎてついていけないよっ!!」

「足りないよりマシですっ!!」

「そういうことじゃないからっ!! ・・・とにかく、早速で悪いんだけど、これをお願い」





僕の前に開いたモニターには・・・これ、かなりありますね。



えっと、裁判記録に魔法史にロストロギアの鑑定用資料・・・。それも大量。





「まず、これを一気にお願い。発掘は、司書のみんなに任せちゃっていいから」



また無茶を・・・。これを一気にって、普通にやったら、検索魔法の容量がバカみたいに重くなるのに。つまり、まともに動かなくなるのだ。

まぁ・・・。



「分かりました。んじゃ、さっそく・・・始めます」

「うん、お願い」





僕には、プログラム容量なんて関係ないんだけど。



この量なら、魔力も大丈夫だね。切れかけても、ユーノ先生なり、回復魔法のカード使えばいいでしょ。

そんな思考を巡らせつつも、足元に青いベルカ式魔法陣が生まれる。



そうして発動するのは、検索魔法。書庫に存在しているこれらの資料の在りかを、これで探し出す。

そう、無限書庫とは・・・それほどに巨大で、広大なのだ





「アルト、サポートお願いね」

≪了解しました≫

「さぁ、一気にいくよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・瞬間術式詠唱・処理能力。





その名の通り、魔法プログラムの術式詠唱や処理を、一瞬で行う能力だ。その速度は、デバイスの自動詠唱などよりも、圧倒的に速い。





本来、魔法プログラムの詠唱速度や処理は、使用する魔力量やプログラムの容量の大きさに比例して、遅くなる。

だけど、この能力を保有する人間はその限りじゃない。

分かりやすく言うと、普通の術者なら詠唱や発動にすごく時間のかかる魔法でも、一瞬でプログラムの詠唱と処理を終えて、発動させることが出来る。





そして、それの比例というか副産物というか能力の一部というか・・・この能力の保有者は例外無く、極めて高い魔力運用の技術が先天的に備わっている。

これも瞬間的な詠唱・処理を可能とする要因になる。詠唱・処理だけじゃなくて、魔力のコントロールもしっかりやらなきゃ、魔法って使えないしね。





まぁ、瞬間発動が可能というだけで、消費魔力やなんかは変わらないんだけど。あくまでも、大抵の術式は即時詠唱・発動が可能ってだけで。





あと、スターライトのような周囲の魔力を集める・・・とか、そういう術式は、即時発動出来ない。さすがに一瞬で魔力の集束なんて出来ないから。

そういうことも手伝って、局ではレアスキルには認定されていない。少し珍しい能力という程度の扱いの能力だったりする。





そして、恭文君はその珍しい能力の保有者。彼の能力は、この無限書庫では非常に重宝する。





普通では何回かに分けて、慎重に探す必要のある量の探し物でも、恭文君なら一回で検索出来る。(彼の魔力量のキャパシティに収まる範囲で)

そのため、恭文君に資料検索を任せると、それに取られる時間が大きく短縮出来る。

ヒットしたものを探して、取り出す必要はあるけど、それは恭文君に任せた分、手の空いた人間がやればいい。

なお、こちらも手数が増えて、結果的にスピードアップに繋がる。





そう・・・・。恭文君という超高速の検索エンジンの力を借りれば・・・3徹した上にまた徹夜・・・なんて悪夢は、避けることが出来るっ!!





・・・いや、あのね? 僕らもこれ以上はさすがに嫌なんだよ。福利厚生ってちゃんとしないといけないし・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文君、大丈夫? ごめんね、ちょっと飛ばしてもらっちゃって」

≪問題ありません。久しぶりで少し疲れただけみたいですから≫

「あと・・・お腹空きました。もうペコペコですよ。・・・あぁ、ポテトサラダがおいしい」





さて、お昼なので食堂に来ました。・・・でもユーノ先生、お願いですから。



『でも、君が頑張ってくれたお陰で、みんなのお昼休みは確保出来たよ。・・・うぅ、何週間ぶりだろ、食堂使うの』



・・・とか言うのはやめてください。泣くのもやめてください。嫌過ぎますから。





「・・・そこまでだったんですか」

「そこまでだったんだよ・・・。もうあり得ないよ。おかげで発掘にも行けないし」



なんか分かった。なーんで出番が無いのか。ワーカーホリックって、罪だよ、うん。



「なのはとも会えないしさ・・・」

≪・・・そうでしたね≫



あー、これ辛い。なんか黒いオーラ出してきたし。



「時に先生、最近の横馬との付き合いはいかに?」

「えっと・・・」





あの、ユーノ先生? なんで考え込む?





「メールしたり」



うん。



「メールの返事書いたり」



うんうん。



「メールしたり」



・・・うん。



「メールの返事書いたり」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「メールしたりメールの返事書いたりメールしたりメールの返事書いたりメールしたりメールの返事書いたりメールしたりメールの返事書いたり・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメじゃないかよこの人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか悪化してるっ!? 間違いなく悪化してるよっ!!



「あなた何やってますっ!? なんでメールでしか交流してないんですかっ! どんだけデジタルな関係に終始してるんですかっ!!
なんでリアルタイム通信とか送ってないんですかっ! どうせならそっちで顔見て話してくださいよっ!!」

「だってっ! 通信したら迷惑かもしれないだろっ!?」



力いっぱい力説したっ!? つか、本格的にダメな人じゃないのさっ! 発言がすでに20歳間近の人間から出ているとは思えないしっ!!



≪今日日、そんなことは初等部の子どもも言いませんよ・・・・≫

「大丈夫、なのはと僕の間にはしっかりとした絆が・・・」

「しっかりしてないからっ! 回線の使用料金滞納したらあっさり切れる絆ですよそれっ!! つーかなんてメル友っ!? いやもうメル友ですよそれっ!!」

「いいじゃないか別にっ! 返事はちゃんと来てるんだしっ!!」



・・・いや、なんつうか・・・来年20歳でそれはアウトでしょ。



「えー、ちなみに返事が来るのが徐々に遅くなってるとか、なんか文面が適当になってるとかは?」



まぁ、今言ったのは、相手がメールを迷惑に思ってる危険サインなんだけど・・・ユーノ先生は首を横に振った。

まぁ、横馬に限ってそれはないか。そう考えると、相手に恵まれていると思えるから、不思議だよね。



「大体、君は人の事を言えるの?」

「というと?」

「フェイトとはどうなってるのさ。まぁ・・・アレだとは思うけど」



・・・あれ、もしかして知らない? なんか、本気で気の毒そうな顔してるし。



「まぁ、アレだよ。頑張ってね」

≪いや、それはむしろあなたですから。というか、マスターに負けてますよ?≫

「・・・え?」

≪本気で知らなかったんですね≫



・・・劇薬だよね。まぁ・・・頑張ろう。



「えっと、実はですね・・・」




















・・・あー、ユーノ先生? そろそろ元気出してもらえますかね。










「・・・ね、世界なんてこんなはずじゃなかったことばかりだよね」

「なんですかいきなりっ!!」

≪そんなにショックですか≫



うーん、完全にダウナー入ってしまった。どーしよーかこれ。



「でも、どうしよう・・・」

「そ、そうですね・・・」



あー、アドバイス出来ない。でもなぁ、じっくりやってくださいとか言ったら、メル友どころか元旦に年賀状貰っただけで安心しそうだし・・・。



「ね、恭文君」

「ほい?」

「君は・・・・どうやってあの天然スルーを打破したわけ?」



いや、僕っていうか・・・人々頼りと気付いて、ちと落ち込む。うむぅ、ダメだなぁ。



≪まぁ・・・アレですよ。他力本願だったんです≫

「うっさいバカっ!!」



自分でも分かってるから言うなっ!!



「ユーノ先生」

「うん?」

「デートでもしたらいいんじゃないですか?」

「・・・断られないかな?」



どんだけチキンハートなんだよおいっ! というかこの人となのはって、10年来の友達だよねっ!?



「・・・じゃあ、隊舎にでも来ればいいじゃないですか。それなら大丈夫でしょ」



とにかく、ユーノ先生に必要なのはアナログ的な交流。メールのようなデジタルじゃ、どんどん退化する一方である。



「理由は?」



当然のように聞いてきたっ!? それくらい考えてくださいよ司書長っ!!



「うーん、僕に自分の書庫の本を貸す約束をしてるんですよ。それで、たまたま時間が取れて、昔馴染み達の顔を見るのも兼ねてひょっこりと・・・」

「・・・うん、それでいこう」

≪即決ですか≫



いいじゃないのさ、うれしそうだし。とりあえず、メンチカツを一口。・・・なんつううか、ここまでだったとは。手遅れにならなくてよかった。



「恭文君、ありがとうっ! これでなんとかなりそうな気がしてきたよっ!!」

「あはは・・・。よかったですね」









この時、僕もユーノ先生も気付いて無かった。ただ一人、アルトだけが気付いていた。





この理論には、大きな穴があることを。










≪・・・休み、確保出来るんですかね?≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・いやぁ、疲れたね」

「いや、そう言いながら楽しそうだったじゃないのさ」





・・・時刻は夕方。美由希ちゃんのミッド観光ツアーも滞りなく終了して、臨時の我が家まで帰還の途中。ま、もうすぐなんだけどね。



いや、でも楽しかったなぁ。独身時代に戻ったみたいだよ〜。





「戻りたいの?」

「・・・まさか」



今回はちとやりあっちゃったけど、これくらいは昔からだしね。いや、昔よりはマシかな。

出会ったころは本当に凄かったしね。全然笑わないし話そうともしてくれないし・・・。



「うん、なら安心だ」

「あー、ごめん。心配かけてたね」



もしかして・・・そのために来てくれたのかな? だとしたら、悪いことしたなぁ。



「別にそれだけってわけじゃないよ。可愛い妹の様子も、ちょっと見ておきたかったしね。
・・・ね、エイミィ」

「うん?」

「なのはのケガ・・・相当ヒドイの?」





・・・え? いや、母さんやフェイトちゃんから聞いて知ってはいたよ。でも、なんですかその聞き方は。



だって、まるで知らなかったみたいに・・・。





「昨日のなのはを見るまではね。まー、この間帰って来た時にも、変だなとは思ったけどね」



なのはちゃんは・・・! 家族に言ってないってどういうことっ!?



「まぁ、心配かけたくなかったとかだと思うから、そこはいいよ。・・・それで、どう?」

「・・・私も伝え聞いたくらいなんだけどね。後遺症みたいな感じで、ダメージが残ってるんだって。
ただ、無茶しなければ完治はするものだし、今すぐどうこうって話じゃない。本人も、治す気満々だって」

「・・・そっか」



そうなのよ。・・・そのまま、美由希ちゃんは黙った。なに考えてるかなんて・・・推測するのは、野暮だよね。

それでも、私達は歩いていく。夕日が、さっきより少しだけ落ちている。



「あー、私も質問」

「うん?」

「恭文君・・・大丈夫だった?」



ちと、真剣な話しちゃったから、心配ではある。



「うん、大丈夫。というか、話したんでしょ?」

「うん、話した。それで言われたよ。わがまま通す。忘れないで、その上で変わるってさ」





いやはや、私とお母さんの予測は外れたよ。二人は納得してくれると思ったんだけどなぁ。まさか、一刀両断するとは。



・・・忘れていいものも、下ろしていいものも、自分達には何一つ無い・・・か。まったく、あの古き鉄達は。強いってのも考えものだよ。





「美由希ちゃん」

「うん?」

「綺麗事だよね」

「そうだね。綺麗事で、身勝手」



うん、綺麗事だ。組織って、そんなに甘くない。たださ・・・。



「そんなの、みんな同じだよね。恭文くん達だけじゃない」

「そう思う?」

「思うよ〜。私の周りはそういう人達多いし」





理想主義者と言ってしまえばそれまで。でも、それでいいじゃないのさ。



どこで戦っていても、一番賭けるのは誰でもない自分自身の時間。

だったら、身勝手でも、自分が一番信じられて、力を出せる理由で戦えばいいんだよ。



・・・ま、ヘイハチさんの受け売りだけどね。





「まぁ、恭文はきっと大丈夫だよ。リインちゃんとアルトアイゼンも居るから。あと、なのはも同じくだね」

「そう思う?」

「思う思う。なのは、ヴィヴィオちゃんのお陰でちょっと落ち着いてきてるし。恭文も、ちゃんと自分の行きたい方向、探し始めてる」



・・・うん、なら少しは安心かな?



「大丈夫、エイミィやリンディさんの言ったこと、伝わってるよ。たださ・・・」

「うん?」

「恭文の天然フラグメイカーはそろそろ矯正した方がいいよ。なのはから話も聞いたけど、また増えてるし、ガチな子もいるみたいだし・・・」



・・・あれはなんだろうね。フェイトちゃんが本命って公言してるからなんとかなってるだけだよね。

あ、私は立てられてないよ? うん、旦那様一筋だし。エイミィさん、意外と一途なのよ〜?



「あと、なのはもだよ・・・」

「なのはちゃん?」



・・・あの、美由希ちゃん。なんでさっきのケガの話より表情が真剣になるの?



「だって、そういう気配すらないんだよっ!? フェイトちゃんと恭文を見て、危機感を覚えたりとかもないみたいだし・・・」



あー、なのはちゃんはお仕事一筋だしね。ヴィヴィオちゃんの子育てもあるだろうし。



「ね、ユーノはなにしてるの? 私、母さんと父さんから、その辺りも見てきて欲しいって言われてたのに」



そんな裏目的があったのっ!?



「あれをそのまま報告するの? あぁ、こんなことなら、恭文となのはがくっつくように、けしかけておけばよかった・・・」

「・・・そこまでなの?」

「そこまでだよ。特にお母さんが」





あはは・・・。あり得る。



頭を抱え始めた美由希ちゃんをなだめながら、歩いていくと・・・あれ?

マンションの正面玄関に、人影を見つけた。

私より高い身長の黒髪の男性。どこか緊張した面持ちなのは、気のせいじゃない。



全く・・・やっとってわけ?





「エイミィ」

「うん、ちょっと行ってくる」





私は足音を殺して、そっと背後から近づく。まずは・・・驚かせて待たされた憂さ晴らしを。





「何をしている?」



声は振り返らず、私へと飛んできた。少しだけ、呆れたような感じなのは、気のせいじゃない。・・・可愛くない。



「いきなり失礼な」

「心を読まないでくれる? というか、可愛くないのは事実でしょ」

「当然だ。僕を今いくつだと思っている?」

「年齢は関係ないね。昔からそうだったし」



うん、基本は可愛くない。たまにムカついたくらいに。



「ちょっとは恭文くんを見習ったら? 恭文くんはこういう時は可愛いよ〜」

「アレと一緒にするなっ! ・・・その、アレだ」

「うん?」

「待たせて・・・すまない。それに、悪かった」



振り返って、私に男性はそう言ってきた。頭を、下げながら。

なので・・・私はこう返す。



「いーよ。私は・・・あなたがちゃんと来てくれただけで、嬉しいよ」





甘いよね、きっと。でもまぁ・・・年上女房は、包容力が大事ですから。





「エイミィ・・・」

「まーとにかく・・・次はお母さんだよ。私みたいには上手くいかないから、覚悟した方がいいよ〜?」

「・・・そうだな。気を引き締めていくことにする」










・・・・・・さて、愛しい旦那様? 我が家での地位をちゃんと取り戻せるように、頑張ってね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・いや、なんていうかさ。私、空気か背景だよね。





こう、空気が桃色なんだよ。絶対領域? 固有結界?





・・・結婚っていいかも。でも、相手居ないしなぁ。





あ、もしかして・・・なのはより私の方が危機感覚えなきゃいけないのっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・時刻は5時。僕のお手伝い時間の終了タイムが来た。





書庫が現在早急に片付けなければならない案件は、見事に片付いた。





なお、その瞬間に本局が震えるほどかと思うような歓声が上がったのは気にしないで欲しい。




















「・・・いや、助かったよ」

「いえいえ、無事に終わってよかったです。・・・そだ、ユーノ先生」

「なに」





ま、せっかくだしね。尊敬する先生のために、一肌脱ごうじゃないのさ。





「よかったら、一緒に夕飯食べませんか?」

「夕飯? ・・・あ、ごめん。僕はもうちょっと残って資料の整理を」

≪高町教導官が来ますが≫

「みんな、お疲れ様っ! 明日からもよろしくねー!!」





速っ!? つーか一瞬で身支度整えて入り口に移動してるしっ!!





・・・とにかく僕は、司書さん達にしっかり挨拶をした上で、ユーノ先生と一緒に外に出た。




















・・・食事終わりに、アルトにメールを送ってもらった。文面はこうだ。





『書庫の手伝いは時間通りに終わりそう。で・・・魔力ギリギリで疲れたまま運転しても危ないから、一緒に夕飯を食べよう』・・・と。





そして、OKのメールが帰ってきた。・・・なぜか(苦笑)なんて末尾に入れた上で。

あ、もちろんユーノ先生も同席していいかどうかを確認した上で。うん、OKだしてたけど。





で、若干色気は無いけど、またもや本局の食堂です。そして、僕達が着いてから数分後・・・。




















「ごめーんっ! 遅くなったっ!!」



そう、来ました。高町・W・なのはが。



「私は若○ボイスじゃないよっ!!」

「心を読むなっ! つか、『W』って言っただけで若○ボイスなんて言ってないしっ!!」

≪まぁ、正解ですが≫



気にしないで。・・・さて、仕事はOK?



「うん。後は帰るだけだよ」



そう言いながら、僕達が座るテーブルに着く。で、当然・・・。



「ユーノ君、久しぶり」

「うん、久しぶり。なのは」



お、意外と反応が普通だ。もっとしどろもどろかと思ったのに。

つか・・・あれ? なんでなのはは顔を赤らめてるのさ。え、もしかして脈ありっ!?



「あの、お仕事大丈夫?」

「うん、恭文君が頑張ってくれたしね。いや、はやてには感謝だよ。急な頼みだったのに、引き受けてくれてさ」





・・・そのまま、楽しそうに話し出した。うん、ユーノ先生はさっきと別人だね。年相応に見えるよ。



というかさ、アルト。





≪はい?≫



僕、いらない子だね。



≪仕方ないでしょう≫



・・・なら、ここは黒子に徹しますか。あー、なのは?



"なに?"

"食事、僕が取ってくるね"



・・・そう、この横馬は自分の分の食事を取らずに直行してきたのだ。全く、抜けてるというかなんというか。



"あ、ごめん"

"いーよ。で、リクエストはある?"

"じゃあ、Bランチで"

"りょーかい"










・・・ま、ここはからかっちゃだめだよね。





僕は、楽しそうに話をしている二人の邪魔をしないように、席を立った。本日の一番人気のランチを取ってくるために。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・母さん、すまなかった」



おー、クロノ君が頭下げてる。で、お母さんは・・・憮然としてるね。あ、子ども達は美由希さんアルフと散歩に出てもらってる。聞かせる話じゃないしね。



「なにがどうすまなかったのか、是非聞かせて欲しいわね」



・・・お母さん、もしかして結構怒ってた? 表情がきつめだし。



「無神経だった」

「そうね」

「自分の母親が女性だということを、完全に忘れていた。・・・もっと言い様があったのではないかと、ずっと後悔していた」



うそ・・・じゃないな。うん、その場の勢いで飛び出す言葉じゃない。



「その考えに至ったのは、どうして?」

「・・・エイミィが家を出たと気付いた時からです」

「随分遅いわね」

「自分でもそう思います。ただ・・・」



ただ?



「あの時、痛感しました。そして恥じました。自分の行動は、家族を・・・自分の帰るべき場所を蔑ろにする行動だったと。
母さんだけのことじゃない。エイミィと話している時もそうです。エイミィはどうしてこうなったかを言ってくれたのに、聞こうともしてませんでした」



・・・そうだね。クロノ君、母さんを連れ戻すことだけ考えてて、どうしてこうなったのか、考えようともしなかった。



「母さん、お願いします。帰ってきて・・・くれませんか? 僕が、帰るべき場所は、あの家で、母さんはそこに必要なんです」

「なら、ここに帰ってくればいいでしょう?」



いや、お母さんっ!? ここ恭文くんの家ですからっ! さすがにこれ以上の占拠はアウトですよっ!!



「ま、それは冗談よ。・・・そうね、許してもいいけど。条件があるわ」

「はい・・・」

「あの水着、着てもいいかしら?」

「・・・はい、着てください。その・・・素敵だとは思いましたから」



・・・あ、ちょっと顔赤い。むむ、これは後でお話かな



「そう、ありがとう。・・・それでエイミィ、あなたはいいの?」

「あー、そうですね。ちゃんと反省はしてるし、いいかなと・・・」



ま、これでしてなかったら、追い出すつもりだったけどね。



「・・・二人とも、ありがとう。そして・・・本当にすまなかった」

「・・・いいわよ別に。だって、私達は家族なんですもの」

「そーだよ。時々はこういうこともあるって」



時々は喧嘩だってする。だけど、それでも繋がっていける。うん、家族って、そういうものだと、私は思うよ。



「じゃあ、アルフと美由希さん達が帰って来る前に、夕飯の下ごしらえ、済ませちゃいましょうか」

「そうですね。あ、クロノ君も手伝ってよね? ここで好感度稼がないと、パパって呼んでもらえないよ〜」



テーブルから立ち上がりながら私がそう言うと、クロノ君がヘコんだ。・・・さっきもおじさん扱いだったしね。うん、真面目に改善していこう。



「・・・そうだな、頑張っていくことにする。ならエイミィ、アレを作るか?」

「・・・あぁ、あの焼きそば?」

「そうだ」

「りょーかい。ちょっと頑張っちゃおうか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・このままはあかん。





どうにもならん。





ちゃんと決着・・・つけんとあかん。





まぁ、あれや。そういうんも後になれば・・・笑い話になるやろ。とにかく、決着や。





うちは、端末を立ち上げる。とにかく話や。しっかりしてこ。




















『・・・もしもし?』

「あ・・・ロッサ。うちや」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・そっか。なのはとユーノ、楽しそうだったんだ」

「もうね、居心地悪かった。僕はほとんど喋ってないし」

「でも、安心した?」

「・・・まぁね」





さて・・・あの居心地の悪い食事が終わってから、僕となのはは隊舎に戻った。で・・・恒例のフェイトとのコミュニケーションです。



二人でお茶を飲みながら、のんびりとお話です。





「でも、ごめんね。いきなり留守にしちゃって」

「大丈夫だよ。ヤスフミ、デスクワーク優秀だしね。問題なかった」





ユーノ先生の手伝い、本当に急だったからなぁ。フェイトとエリオ達に押し付ける結果になったし。



そんなことを考えていたのが伝わったのか、フェイトが笑顔を向けてきた。大丈夫だと、言っているように感じる。





「言ってるんだよ?」

「・・・うん、伝わった。あ、それでメール見た?」



フェイトが頷く。そして、二人で嬉しそうな顔になってしまう。・・・そう、解決したとメールが来たのだ。



「今日はクロノさんも一緒にお泊まりか・・・。本気で別荘にするつもりじゃないだろうね?」



なお、美由希さんは自分がお邪魔と感じたらしくて、またこちらに来ています。・・・まぁ、ヒロさん達との組み手、またやるから、いいんだけどね。



「さすがにそれは・・・。でも、ヤスフミ戻らなくていいの?」

「うん。クロノさんが双子コンビとのコミュニケーションで四苦八苦してるのは目に浮かぶもん」



そこで僕が居てみなさいよ。どう考えてもうちのお兄さんはヘコむでしょ。



「それもそうだね・・・。でも、これで明日には戻れる。良かったね」



・・・あー、そうだね。



「・・・ヤスフミ?」

「うん・・・」



なんだろ。こう・・・アレなんだよね。家がようやく解放されたのは嬉しいよ? でも・・・。



「寂しい?」

「・・・かも」



こういうの、感じたこと無いんだけどなぁ。船に乗ってても部隊で寝泊まりしてても、帰れると決まった時は・・・嬉しかったのになぁ。



「・・・うん、きっといいことだよ」

「そうかな?」

「そうだよ、きっと。・・・ここに、ヤスフミが自分の居場所を、見つけ始めてるのかなと、思う」



居場所・・・ね。



「だとしたら、バカだよね」



お茶を一口。その暖かさと程よい苦味に、心が落ち着く。

うん、バカだよね。あと3ヶ月とかそこらで、ここは無くなる。なのに、居場所を見つけても・・・。



「バカなんかじゃないよ」

「・・・フェイト」



というか、ちょっと怒ってる?



「時間や時期なんて、問題じゃないよ。今まで気付けなかったことに気付けた。感じることが出来た。
ヤスフミが今感じている気持ちは、バカなんかじゃない。・・・そんなこと、言ったらダメだよ」

「・・・ごめん」

「謝らなくていいよ。でも、そういうのは無し。いい?」

「うん」



なんか、また居心地の悪い気持ちを感じて・・・茶をすする。こういうところが、子どもなのかね。うん、そうか。



「ヤスフミ」

「うん?」

「ヒロさん達が、また打ち合わせするから、時間空けておいて欲しいって」



あ、そうだね。アレも進めないと。書庫の手伝いの報酬として、参考資料は色々調達してきたしね。

ま、ちと照れ臭くはあるけど・・・せっかくだし、いいの作るぞ〜。



「・・・あの」



フェイト、なんでそんなに真っ赤?



「あの時言ってくれた・・・こと、すごく嬉しかった」



思い出して、身体が熱くなる。うぅ、こう・・・かっこつけたから、恥ずかしひ。



「あの、でもね。ヤスフミが他にやりたいことがあるなら、そっちを選んで? 迷惑とかじゃなくて・・・その・・・」

「言われなくても、そうするつもりだよ?」





うん、そのつもり。そうじゃなきゃ、変わっていけないし。



ただ・・・。





「ただ、こうも言ったよ? 今ある中で一番やりたいことで、通したいことだって」

「・・・うん」



だから・・・その・・・。アレだよアレっ!!



「・・・その、フェイトの都合もあるし、局員とか関係なしだから、ちゃんと考えてからだけどさ。でも、今のところは変わってない。あの時言ったこと、全部。
あの、もちろん他の道もちゃんと考えて、その上で決めていくよっ!? それは・・・絶対」

「あの・・・大丈夫だよ? 分かってるから。・・・ただ」

「模擬戦で5割以上?」

「ううん、それもあるけど」



あるんだ。



「私に、考える時間・・・くれる?」



・・・いや、アレはそれ前提の上で言ったんですが。なんで困り顔っ!?

あ、もしかして・・・。



「あの、僕フェイトのこと・・・困らせた?」

「あの、そういうのじゃない。・・・ちゃんと応えたいから。でも、すぐに返事出来そうもなくて・・・」

「あの、僕はフェイトが考えた上で返事してくれるなら、それでいいから」



返事はイエスでもノーのどちらでも構わない・・・と、付け加えておく。というか・・・だよね。



「あの、ごめん。やっぱり困らせてる」

「ヤスフミ、お願いだから謝らないで欲しい。・・・それじゃあ、少しだけ待っててくれる?」



僕が頷くと、フェイトが赤く染まった頬をしながら、微笑みを返してくれた。それが、凄く嬉しくて・・・。



「ヤスフミ」

「なに?」

「・・・ありがとう。あの、何度も言ってるけど・・・嬉しかった。本当に。絶対に、迷惑とか、困ってるとかじゃないの。
少し待たせちゃうけど・・・それだけ、信じてくれる?」

「・・・うん、信じるよ」










・・・二人して、同時にお茶を飲む。同時にむせた。





ケホケホ言いながらも、また時間は進んでいく。





うん、居場所見つけてるのかも。





こういう時間は、嫌いじゃないから。




















(第25話へ続く)




















おまけ:報告の時の話。




















・・・さて、みなさん覚えているだろうか? 僕が、メガーヌさんにデートの結果報告の約束をしたのを。





当然、それは行われた。というか・・・。




















「いや、ごめんね。きちゃった♪」





・・・すみません、頭抱えました。つーかなんで居るっ!? 聞くところによると、まだ病院とお友達な生活のはずなのにっ!!





「もう・・・そんなこと聞かなくても分かるでしょ? 私はあなたの・・・」



・・・僕の?



「あ、ごめんなさい。これはみんなの前では内緒だったわね」

「うぉぉぉぉいっ! その妙な言い方やめてっ!! つーかみんなの僕を見る目が痛いですからねっ!?」



具体的に言うと、スバルやなのは? シャマルさんもだけど。



?・・・なぎさん?



いや、もっと痛いのが居た。



"アンタ・・・これはなに?"

"いや、何と言われましても・・・"



メガーヌさんとしか言いようが。



≪現地妻4号ですよね?≫

「そうね、そうなるのかしら」

「ならないですからっ! つーかなにを自然に受け入れているっ!!」



あ、なんか視線が痛くなったっ! つーか殺気っ!?

その瞬間、両肩と頭を捕まれた。そして、声が聞こえた。



「・・・アンタ、ちょっと来なさい。現地妻って・・・なに?」

「恭文、知ってると思うけど、メガーヌさんって私のお母さんの友達なんだ。・・・なにしてくれてるのかな」

「・・・恭文くん、増えるのは構わないけど、現地妻1号である私に、事前に話して欲しかったわ」










そうして、僕はドナドナされました。・・・まる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文くんも大変ね」

≪そうですね≫



あら、アルトアイゼンちゃんいつの間に。というか、私の手のひらに。



≪これくらいは当然です。説教など聞きたくありませんし≫

「むむ、器用ね。さすが裏ヒロインと呼ばれるだけのことはあるわ」

「・・・いや、関係無いでしょそれは」

≪ねーちゃんがしたたかなだけだと思うぜ?≫



その声は二つ。後ろから聞こえてきた。振り替えると・・・居た。

私の親友と、その相棒が。



「あら、ヒロちゃん」

「よ。つか、元気そうだね」

「それはもうバッチリよ」



車椅子の上で、ガッツポーズなど取ってみる。お願いだから、それを見て苦笑いなどしないで欲しいわ。



「ま、気に入ってるのは分かるけど、やっさんはあんまからかわないでやってよ? フェイトちゃんと雰囲気良くなってるしさ」



ふーん、じゃあ成功はしてるのね。ならよかった。さて、ヒロちゃん。



「なに?」

「フェイト執務官、今居るよね? ちょっと話があるんだ」




















・・・話と言っても、別に恭文くんのことじゃない。





私やルーテシアのことなの。





現在、ルーテシアの裁判が行われている。フェイト執務官は、その辺りで色々と便宜を図ってくれている。

私が目を覚ますまでは、身元引き受け人にもなっていてくれていたしね。

何て言うか、そんなお世話になっている人に、改めてちゃんと挨拶しておきたくて。それに、私の命の恩人でもあるし。










「・・・なるほどね。そういうことか」

「そういうことよ」



車椅子を押してもらいながら、そんな話をしていた。少しだけ、安心な時間。ヒロちゃん、男前だしね〜。



「で、どんな感じよ?」

「島流しは決定・・・かな」

「・・・そっか」



うん、そうよ。ま、仕方ないわね。ただ、フェイト執務官の話だと、情状酌量の余地は充分だから・・・。



「そこでの行動次第だけど、ずっとでは無い・・・ってとこ?」

「そうね。まぁ、親子二人でこれまでの分、埋めていくわ。時間は思いっきりあるんですもの」





やりたいこと、色々あるわ。あの子に料理や家事を教えたり、一緒にご飯を食べたり。

大人になったら、好きな子のそうだ・・・まぁ、これは当分先ね。恭文くんはアウトっぽいし。



でも、親子としての時間を、しっかりと刻んで行きたいわ。罪は罪でしっかり償わなきゃいけないけど、それで幸せになれないなんて・・・おかしいもの。





「そうだね、そうするといい。ま、私もたまに会いに行くからさ」

「うん、お願いね。あと」

「うん?」

「・・・ありがと」

「いーさ別に。・・・私は、私の戦いってやつを、私の勝手でしてるだけだし。何時だって、どんな時だってね」





あら、照れてるわね。・・・照れ屋なところも変わらずか。うん、いいことね。



そう思った時、怒号が聞こえた。あら、すごいわね。空気が震えたわ。





「察するにバストタッチの話かしら」

≪でしょうね。そんな気配がします≫

「・・・いや、アンタらなんで分かるのさ」

≪レディとねーちゃん、スゴすぎるぜ・・・≫










当然よ。私は恭文くんの、現地妻4号ですから♪




















(本当に続く)







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