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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第23話 『「見てのお楽しみ」と言って、本当に楽しみにするだけの価値のあるものが入っていることは、本当に少ない』




































































































恭文「・・・あの、もしもし?」

古鉄≪なんですか?≫

恭文「いや、なんですかじゃなくて。もう始まってるよ?」

古鉄≪そうですか≫







































恭文「・・・あの、ちょっとっ!? なんで話進まないのっ! つかなんでいきなりあとがき形式っ!!
こんなにダラっと始める必要ないよねっ!!」

古鉄≪いえ、ありますよ≫

恭文「なんでっ!!」

古鉄≪この話も23話・・・幕間も入れたら26話≫





(作者注:この話を書いている時点での話です)





古鉄≪アニメ本編なら最終回。一年続く作品なら、折り返しですよ。まぁ、この話の場合、まだ続くわけですが」

恭文「まぁ、まだ色々と書くことあるしね。フェイトとの楽しい今後とか」

古鉄≪・・・あなたはまずそこですよね。そして楽しいのは決定済みですか。
とにかく、それでこれなんですよ。せっかくマスターも心機一転で頑張ろうとしているわけですし、ここは特別編で行こうかと」

恭文「・・・あ、なんか納得。それで、来週からOPやEDが変わるとかなんだね。でも・・・それならなんで素直に始めないの」

古鉄≪簡単です。せっかくですし今回から色々と新しい手法を盛り込んでいこうかと。最近オーラがめんどかったですし≫

恭文「・・・作者、自由だよね。それで、どうするの?」

古鉄≪まずは、これからの方向性を決める意味でも、現在起きている問題をピックアップしてみましょう≫










1・空戦AAA+の試験。





2・ハラオウン家の家庭問題。





3・恭文の進路問題。





4・恭文×フェイトルートが開いたことによる、現地妻・・・もとい、ギンガ・すずか問題。





5・はやて×ヴェロッサ問題。










恭文「・・・事件起きてないのにこれっておかしいよね」

古鉄≪今さらですよ。それで、マスター的には何かありますか? 早々に書いて欲しい話があるとか≫

恭文「あー、ある」

古鉄≪なんです?≫

恭文「まぁ、IF:ENDとかは僕の設定のめんどくささがあるから、手間取るのはいさ。
つか、作者は最近気付いたんだって」

古鉄≪なにをですか?≫

恭文「経緯まで書くと、それはENDじゃなくてルートってことに」





(・・・場が静まり返る。そして、誰もが思った。それを口にしたのは、青いウサギだった)





古鉄≪・・・あー、あれですか? 十人分のENDじゃなくて十人分のルートを書こうとしてたと≫





(・・・そうです)





古鉄≪どんだけめんどいことを。というか、バカじゃないんですか? しかもそこに気付くのに何ヵ月かかって・・・≫

恭文「まぁ・・・バカだしね。ただ、そこに気付いてからは気が楽になったらしいよ?」

古鉄≪ラスボス戦の内容は書かなくていいですしね。言うなら、EDテーマが流れた後だけでいいんですし≫

恭文「ま、ここからは大丈夫でしょ。で、話を戻すけど・・・ほら、この間TVの7〜9話に関してコメントしたじゃない? あれでちょっとね・・・」

古鉄≪あぁ、わかりました≫

恭文「分かったのっ!?」





(当然だと言わんばかりの青いウサギ。そして・・・言い放つ)





古鉄≪あれでなんやかんやして・・・ティアナさんをその百戦錬磨の毒牙に≫

恭文「違うからぁぁぁぁぁっ! つーか毒牙って何っ!? 百戦錬磨ってなにっ!? 人を女ったらしみたいに言うなっ!!」

古鉄≪何言ってるんですかっ!? あなたを一言で言うと・・・≫





1・豆



2・性悪チビ



3・可哀想な子



4・『このチート野郎っ!!』





5・≪私の相棒兼友人兼イジる対象≫





古鉄≪・・・と、なるんですよっ!!≫

恭文「なるかボケがぁぁぁっ! つかっ!! 毒牙も女ったらしもどこ行ったっ!?
何より四番目で最近僕がティアナやキャロから言われて気にしてる傷に遠慮なしに爪を突き立てたのは誰っ!?
あと、最後はアルトの幕間そのにでの発言じゃないのさっ! もうあれ一言でもなんでもないしっ!!
何より何よりっ! おのれは一体何がしたいっ!! わけわからんわっ!!」

古鉄≪そんなのっ! 現在過去未来でこのページを開いている全員が思ってますよっ!! あなたそんなことも分からないんですかっ!?≫

恭文「だったら最初からやるなぁぁぁぁぁっ!!」





(・・・こうして、話は進みます)





恭文「進むのっ!?」

古鉄≪進みますよ。・・・ようするに、我々がもし六課に最初から居たと仮定して、あの場に居たらどうなるかを、答えとして出した方がいいと。
実際、事後話でその辺りは私達は第三者ですしね。コメントするのであれば、そこは欲しいと≫

恭文「なんでちゃんと分かってるのさ・・・。まぁ、現時点でも大風呂敷広げてるし、ここは出来たらって感じだね。アルト的にはどう?」

古鉄≪まぁ、私は・・・まずすずかさんとの出会いの話ですね。IF書くにしても、まずそこでしょう≫

恭文「だね・・・。ん、追加台本?」





(青いウサギと青い古き鉄。一緒に追加台本を受けとる。そして、びっくりする)





恭文「次の幕間・・・すずかさんとの出会いの話なんだっ!!」

古鉄≪なお、ちょっと待たせるかもしれないと・・・≫

恭文「まぁ、ちゃんとしていこうとしてるし、良いことでしょ

古鉄≪そうですね。・・・あ、それとそろそろ今回の話に行きたいと思います≫

恭文「そーだね。キリもいいし。・・・で、今回の話は?」

古鉄≪私が主役になります≫





(青い古き鉄、固まる。それはもう見事に)





恭文「・・・は?」

古鉄≪私が主役です。今回は、全編私視点です。そう・・・返り咲いたんですっ!!≫

恭文「はぁっ!? つか、返り咲いたって言うなっ! 主役は僕だからねっ!?」

古鉄≪それでは行きましょうっ! 主役の返り咲きですっ!!≫

恭文「無視するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」






















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第23話 『「見てのお楽しみ」と言って、本当に楽しみにするだけの価値のあるものが入っていることは、本当に少ない』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・さて、改めて自己紹介です。





私は古き鉄・アルトアイゼン。アームドデバイスと呼ばれる機械です。





なお、私の名前は私の前マスター・・・グランド・マスターが付けてくれた大事な名前です。私が私であることの証明と言っていいでしょう。





アルトアイゼン・・・グランド・マスターの先祖が居た世界のとある国の言葉で『古き鉄』を意味する名前。私は、この名前が大好きだったりします。





某孤狼がどうとか言う人が居ますが、一応その国の言葉なんですよ? ジガンスクードも同じです。いや、国は違いますけど。





そこの所、ちゃんと踏まえていただきたいと、勝手ながらに最近思ったりします。





少し話が逸れましたが、この言葉はグランド・マスターの心根をそのまま映し出していると、私は勝手ながら思っています。





・・・私にとってそれを否定されるということは、存在そのものを否定されることで。











「待て待てっ! なにいきなり妙な話してるのっ!? いきなり過ぎてびっくりしたわっ!!」

≪いえ・・・。ちょっと≫



今話しているのは、皆さんご存知私の現マスター。二人目の男とも言えるでしょう。



「アルト、その呼称はやめて・・・」





そして、読者の皆様を除くと、グランド・マスターと同じく、私を『アルト』と呼んでいる人間です。



いえ、ちょっと違いますね。私がそう呼ぶことを許している、ただ一人の人間です。

グランド・マスターのデバイスとして産み出された私が、自分の意志でマスターと認めた人間。それが彼です。

グランド・マスターと同じく、心に錆びた鉄を持っている難儀な人。・・・ま、能力は比べるまでもないですが。



まぁ、この辺りはいいでしょう。問題はここからです。・・・マスター。





「お願い、何も言わないで・・・」

≪私、さらば電○見たかったんですけど≫

「僕だって同じだよ。・・・あぁ、なんでこんなことに。本気で逃げればよかった」

≪逃げても捕まえられそうですけどね≫





捕捉が必要ですね。現在は10月。つまり・・・第1話の段階です。



まぁ、3クール目突入記念の特別編ですし、まずは私視点でのダイジェストが妥当かと。最初だけではありますけどね。





≪しかし・・・高町教導官達はまた無茶を≫

「・・・本気で六課に居ればよかったとちょち後悔してるよ」

≪フェイトさんフラグも立てられてましたしね≫





・・・そう、機動六課という部隊への出向を依頼されたのです。

この辺りの経緯は・・・簡単に言ってしまえば、その部隊の人間が関わった事件の中で、戦闘要員に多数ケガ人が出たからです。



もっと言うと、後遺症を負った人間も居ます。それも・・・マスターと私の友人達です。





「・・・とりあえず、書類関係だね。全く、休みも無しで二期突入って、おかしくない?」

≪その通りですよ。我々の都合を考えてから無茶をして欲しいです≫





まぁ、そんな事を言っても仕方ないのですが。放っておけるほど、この人はクールにはなれません。・・・身内には甘いんですよ。



















・・・そうして、書類を必死で片付けて六課に出向となりました。ただ・・・。




















「・・・アルト」

≪はい?≫

「六課ってことは・・・居るよね」



・・・あぁ、居ますね。フェイトさんの保護児童が。



「どうしよか・・・」



・・・実は、マスターはその子達にヤキモチを妬いていました。

その子達の世話で、フェイトさんとの時間が少ないですしね。そのせいで、今まで一度も会ったことが無いのです。



≪どうしようも何も、仲良くしていくしかないでしょう。フェイトさんとの関係を進展させようと思ったら、関わらないわけにはいきませんよ≫



まぁ、きついですよね。色々と。本気で何を話していいか分からないようですし。



「・・・そーだね。気合い入れないと、ダメか」

≪アレですよ。いきなり模擬戦とかすればいいんですよ。肉体言語で仲良くなればいいでしょ≫

「あー、それがいいかも。・・・でも、そんなどっかの魔王みたいなことするのもなぁ・・・」

≪そうですね。相手は魔王でも冥王でもないんですし、普通にコミュニケーションすればいいでしょ≫

「それもそうだね」

≪「あはははははははははっ!!」≫




















・・・きっと、こんなことを言っていた私達は、まだ幸せだったんでしょう。あ、もしくはバチが当たったのかも知れません。なぜなら・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・で、アンタにちょっと聞きたいんだけど。何で途中までカートリッジ使わなかったのよ」





そう、本当にやりましたから。相手はスバル・ナカジマ。六課所属の陸戦魔導師で、マスターと私の友人であるギンガ・ナカジマ・・・ギンガさんの妹さん。



いや、まさかいきなりこうなるとは。というか、なぜ姉妹揃ってこういう流れに・・・。





「いや、省エネ思考だから」

「そういう問題じゃないわよっ! スバルが全力でかかってきてるのに、それにちゃんと応えないってどういうことっ!?」

≪あー、別にそういうわけではありませんよ。元々私とマスターは、カートリッジやデバイスの機能は使わずに戦うようにしているんです≫





私の方に視線を向けたのは、オレンジ髪のツインテールの女の子。それに、10歳前後の男の子と女の子。



ツインテールの方が、ティアナ・ランスター。まさにツンデレですね。



そして、男の子がエリオ・モンディアル。女の子がキャロ・ル・ルシエ。六課所属の陸戦魔導師です。

なお、エリオさんとキャロさんが、マスターの懸念事項だったフェイトさんの保護児童です。



まぁ、ゴタゴタしてもあれですよね。しっかり説明しましょう。





「えっと・・・アルト?」

≪キャロさん、すみませんがアルトアイゼンでよろしくお願いします。私をそう呼んでいいのは、マスターと認識している人だけですので≫

「あ、ごめん」



まぁ、ここはハッキリしておきましょう。私にとっては大事な要素ですから。



「・・・ってそうじゃないっ! 使わないようにしてるってどういうことよっ!!」

≪ほらマスター、説明しろ≫

「なんでいきなり命令口調っ!? ・・・あー、わかったよ。
まず僕には、魔法での戦い方を教えてくれた人が二人いたの」




















「・・・つまり、そのチートレベルで無茶苦茶強い先生の教えと」

「それで、ヴィータ副隊長やみんなも承知の上で・・・」

「そーだよ。その手のを使わなくても、エース級やらなのはやフェイトみたいなオーバーSに勝つのが目標なの」

≪まぁ、まだまだですけどね≫





現に、スバルさんには後半押されっぱなしでしたし。バインドや射撃は使いたくなかったですし、クレイモアも躊躇ったから、仕方ないんですが。



まぁ、あれを一撃で墜としたんですし、まぁまぁでしょう。





「・・・でも、今日それをする必要はあったんですか?」



そう言ってきたのは、一人の少年。エリオさん。・・・ご不満ですか。



「エリオ君の言う通りです。一種の歓迎会みたいな感じだったのに、それでやる必要ありません」

「そーよ。言ってることは分かるけど空気読みなさいよ。ここで通す必要は・・・」

≪残念ですが、それで戒めを解除する理由にはなりませんよ≫



・・・そう、私達にはならない。ちゃんと理由があります。



「・・・ぶっちゃけると、初対面の人間の前で戦闘に関する手札を晒したくないってのもあった。
まー、あれだよ。フリーの魔導師なんてやってるとさ、結構色々な状況で戦うのよ」



特にヒロさんとサリさんと親しくなってからはそうですね。実戦訓練と称して、仕事をすることもありましたから。

それも、キツい状況ばかりなんですよね。



「味方に内通者が居て、こっちの情報が駄々漏れとか。敵方が徹底調査してて、こっちのスキルバレバレとかさ。
そういうのに備えて、何が出来るかとかは、あんま見せたくないのよ」



悲しいかな、それは現実です。管理局というのは、綺麗な組織では無いんですよ。



「私達、そんなことしませんっ!!」

「そうですよっ! それに、あり得ませんっ!! そんな風に局の仲間を疑うなんて・・・」



・・・坊やですね。いや、年齢がそうなんですけど。



≪ですが、そういう現実もあるということです。
・・・それにあなた方、そうは言いますけど、JS事件はその『局の仲間』が原因ですよ?≫





私がそう言うと、二人は口を閉ざしました。そう、最高評議会やレジアス中将が原因で起きた事件。それが・・・JS事件です。



蓋を開けてみれば、スカリエッティが悪の組織の中ボスの位置だったのには、ビックリしましたけどね。





「・・・あー、もうわかったわよ」

「ティアさんっ!?」

「仕方ないでしょ? 言ってることは間違いじゃない。アンタ達は知らないかも知れないけど、そういうのが原因で部隊が危機に陥るって・・・多いのよ?」



・・・意外とカンタンに納得しますね。ふむ、興味深いです。というか・・・マスターと同じ匂いが。



「で、一応確認。・・・他に理由はないの?」

「あとは・・・僕、ポテンシャル低いから、知られると対処されやすくなるからとか?
それくらいだね」

「・・・りょうかい。納得したわ。ただし、スバルにもちゃんと説明して。で、私らは手貸さないから」



まぁ、そうですよね。そう思ってました。なので・・・。



「うん、もちろんそのつもり。揉めるのもゴメンだしね〜」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・まぁ、あとは皆さんご存知の通りですね。揉めるんですよ、別口で。





こんな感じで、六課の日々は始まっていきました。まぁ、中々楽しかったですけどね。

懸念事項とも仲良く出来始めて、すっかり上下関係が出来上がりましたし。

・・・というか、なんでキャロさんルートなんて話が出てるんですか? 理由に覚えのある方はぜひ詳しく教えてください。私の好奇心を満たすために。




















「・・・アルト、それ分かったら僕にも教えて。真面目にわからないの」

≪そうですよね。私も分かりません≫

「・・・二人とも、何を話してるの?」





気にしないでください。



・・・さて、ダイジェストはここまでです。ここからは本編ですよみなさん。

現在、最近色々な意味で進展したフェイトさんとお話中です。理由は・・・。





「・・・うーん、結構資格関係って大きいよね」

「そうだね。補佐官資格も大きいけど、他も取ってみたらどうかな」

「・・・通信関係取れたら大きいよね。ほら、アルトさんだってそうだし」

「前線での通信管制能力・・・。うん、大きいかも」





最近、二人で進路の事をあれこれ話しているんです。今も、仕事が終わってから談義中。

色っぽい話題はありませんが、それでも、コミュニケーション出来ているから、よしとしましょう。



なお、本日の議題は資格関係です。局もバカではありません。能力の無い人間を雇用するわけがありません。



・・・いや、これまで散々やらかしてきましたし、問題は無いんですが。有名なんですよこの人。色々な意味で。



とにかく、魔法能力以外でもそういうのがあると、この先色々と便利です。そんなお話をしています。





≪マスターの場合、戦闘バカな傾向が強いですしね。仮にフェイトさんの補佐官になった場合・・・あ、それでいいかもしれませんね。
そもそも、それ以外で勝てないでしょう≫

「・・・言わないで。確かに色々負けてるけど、言わないで」





渉外・事務・デバイス整備関係に強いシャーリーさんに、捜査官として動くであろうティアナさん。



・・・戦闘能力とノリ以外では勝てませんね。





「でも、それでも資格取得は考えていいと思う。スキルアップは大事だもの」

「・・・あ、それなら取りたいのが」

「なに?」

「デバイスマイスターの資格」





・・・フェイトさん。その不安そうな顔はやめてあげてください。いや、分かりますよ? とんでもないのを作りそうとか思いますし。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇいと?」

「あ、あの・・・なんで?」

「だからっ! なんでちょっと涙目なのっ!! 顔が青ざめてるって、おかしくないっ!?」

≪いや、無理ありませんから≫





・・・本気で杭打ち機とか、アレとかコレとか作りたいと思ってるのかと考えると、私のか弱いハートがびくびくなんですよ。





「いや、どこがか弱いのっ!?」

≪全てです≫

「自意識過剰だねおいっ! そして即答かいっ!! どんだけ自分に自信持ってるっ!? どうしてそうなるのかぜひとも詳しく聞きたいんですけどっ!!」

≪あなたより私の方が人気があるからに決まっているでしょ? だからこその特別編なんですよ≫

「うっさいバカっ! つーか人気の話を今ここでするなっ!!」

「まぁまぁ・・・。でも、どうして?」



きっと、杭打ち機を作りたくて・・・。



「・・・取ったら、自分でアルトのメンテしたり、なにかあってもすぐに応急修理してあげられるかな・・・と」



・・・え?



「・・・そうなの?」

「うん。ヒロさん達も、開発局に入ってから、アメイジアや金剛にはそうしてるって言うし、僕も資格取るならやってみたいなと・・・」

≪マスター≫

「うん?」



まぁ、こういうのは必要でしょ。きっと。



≪ありがとうございます≫

「・・・うん」

「なら、AAAの試験が終わったら・・・勉強してみようか」

「そうだね。優秀な先生が、ちょうど三人も居るわけだし」





全く、この天然フラグメイカーは、私のフラグまで立てるつもりですか。



・・・いや、嬉しいですよ? マスターに気遣ってもらえて、デバイスとして嬉しくないはずがありません。

ま、どんなにバカでも、こういう人だから、私も一緒に戦えるんですけどね。





「でも、やっぱり羨ましいな」

「どーして?」

「だって、ヤスフミとアルトアイゼン、本当に繋がっているから。いっぱいコミュニケーション出来るし」

≪・・・まぁ、あれですよ。この人バカですし、ちゃんと話さないとダメなんですよ≫

「そんな理由っ!? もうちょい良い言い方してよっ!!」



わかってないですね。



≪そんなこと言ってもつまらないじゃないですか≫

「断言するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

≪主に私がっ!!≫

「だからなんで断言するっ! それもさっきよりも力を込めてっ!! そして『私が』ってなにさっ!?」










なお、なぜかフェイトさんが優しい顔で笑っているのは、気のせいとしましょう。





そして、話を終えてエリオさんの部屋に戻る道すがら、通信がかかりました。・・・問題ありませんね。ポチ。




















『もしもし、なぎ君』

「ギンガさん?」



そう、かけてきたのはギンガさんです。確認した上で繋ぎました。はい、こういうの結構やります。だって、この人の反応が面白いですから。

しかし、また嬉しそうな顔を・・・。やはり、真ヒロインですね。



「どうしたの?」

『えっと、なぎ君に話が・・・』



あぁ、なるほど。つまり・・・。



≪愛のこくは≫

『違うわよっ! お願いだからなぎ君も顔を赤くしないでっ!!』

「じゃ、じゃあ・・・どうしたの?」

『だからどうしてドギマギしてるのっ!?
・・・だから、その・・・聞いたよ』



聞いた?



『局に入るの、すごく真剣に考えてくれてるんだよね?』

≪「はい?」≫



ついハモってしまいました。・・・なにか悔しいですね。



『・・・違うの?』

「・・・ううん、さっきもちょうどその話をしてたんだ。というかギンガさん、その話どこで・・・」



なお、マスターや私は話していません。・・・あ、予測がつきました。



『うん、スバルから』

「あの豆柴ぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・スバルさんとティアナさんに、災害担当での仕事の話を聞きましたからね。

いや、あの時の熱の入りようは伝説ですよ。一緒に特救に入るのが決定しかけましたし。(スバルさんの中で)



『というか・・・それならなんで相談してくれなかったのっ!? 私も父さんも力になったのにっ!!』





・・・簡単ですよ。その瞬間に108部隊入りが決定しそうだからです。あと、大事な理由が一つ。





「・・・あくまで考えてるって話なんだよ。やりたいこと無いかどうかね。つか、決定事項じゃないし」

『でも、それならそれで相談には乗れたよ?』

≪まぁ、察してください。何度も誘っていただいて、何度も断っていますから≫



私がそう言うと、ギンガさんが黙りました。で、次に出てくる言葉は当然・・・。



『・・・そんな気、使わなくてもよかったのに。ね、それならうちに来てみない?』



・・・予測はしていました。それはマスターも同じ。だから苦い顔をしているわけですよ。



「・・・いや、あのね」

『でも、実際に中に入ってみてみないと、分からないこともあるよ』



・・・フェイトさんと同じことを言っているんですよね。ただ、こっちはガチな誘いですけど。



『局のこと、信じてくれるようになったのなら、問題無いと思うし』

「信じてないけど?」



・・・またハッキリと言いますね。ギンガさんが固まったじゃないですか。



「・・・局を信じてどうこうじゃないの。このまま嘱託続けていいのか疑問に思っててさ。やりたいこと、他にないか探してるだけ。
入ったとしても、基本は同じだよ。局の正義とやらに背中を預けるつもりも、命令を理由に戦うつもりもない。僕の根っこは、変わんなかったし」





・・・この人は、世界や組織、不特定多数の他人のためになど戦いません。いつだって力を振るう理由は、一つだけです。

自分が守りたいと思ったものを守り、壊したいと思ったものを壊す。誰のためでもない。自分のためにです。



ま、色々あってそう思うようになったんですけどね。



・・・わがまま? 身勝手? いいじゃないですか、それで。

戦った結果の大半はその人の荷物になるんですから。守れたのならその温もりが。壊したのならその重みが。



私から言わせれば、命令や組織の正義を全肯定して、そのために戦えと言う方がわがままですよ。いや、傲慢でしょ。



命令は動くきっかけにはなっても、戦って、我を通す理由にはなりません。いえ、してはいけないんですよ。絶対に。

組織の正義? きっかけにもなりませんね。少なくとも私はそう思います。





『・・・そっか』

「そーだよ。・・・まぁ、アレだよ。他はもう少しだけ信じることにしたけど」

『え?』



そう言っていますね。やらなきゃいけないと思ったらやる。迷うことも、躊躇うこともしない。わがままなのはもう自覚してる。ただ・・・。



「だから、その中に居るギンガさんやゲンヤさんは、もうちょい信じてもいいかなと・・・思ってる。見て、知っていった人くらいは、そうしたいかなと」

『なぎ君・・・。あの、ありがと』

「・・・礼を言われるようなこと、してない」

『いいの。・・・信じてくれて、嬉しいから』





本気で嬉しそうな顔になるのは、どうしてなんでしょ。やっぱ、立ってますよね。色々と。



そして、こんな話をしながらも歩いていきます。廊下では迷惑になるので、一旦方向転換。隊員寮のロビーの方に。





『あのね、なぎ君』

「うん?」

『・・・うちに来ない?』

「・・・ギンガさん?」

『あの、さっきとは違う意味合いなの。なぎ君も知っての通り、地上の戦力不足は深刻だから・・・』





そう、ミッド地上は慢性的な戦力不足が騒がれています。JS事件後は特にですね。事件が起きた遠因でもありますから。

ですが、管理局は愚鈍ではあっても、バカではありません。現在、その見直しの真っ最中です



で、ギンガさんがその話をここでしたということは・・・。





「僕にもその見直しの手伝いをしろと」

『そう・・・なるね。現実問題として、うちは対AMF戦関連はさっぱりだし。なぎ君みたいな優秀な魔導師が、今の地上には必要なんだ』

≪・・・私もマスターも、そんなの知ったことではないんですが≫



ハッキリ言って、そんなのはこの人の進路には関係ありません。というか、私はそんなのに巻き込まれるのはゴメンです。

だって、めんどくさいじゃないですか。



『うぅ、アルトアイゼンきつい・・・』

≪いえ、事実ですし。大体、AMFなんてなんとかなるでしょ。ギンガさん、あなたノリが足りませんよ。
戦いは、ノリのいい方が勝つんですから≫

『ならないよっ! というか、ノリでなんとかなるのはなぎ君達だけだからっ!!』



失礼な。この人はともかく、私は世界のスタンダードですよ。・・・いや、さすがに本気じゃありませんよ? なんとかなる人間ばかりじゃありませんし。



『そうだよ。それに私やスバルみたいな特殊例はともかく、普通の魔導師は完全キャンセルされて、質量兵器なんか使われたりしたら・・・』



まぁ、ギンガさん達は戦闘機人の能力を使えばなんとかなりますしね。・・・ん?



「あの、ギンガさん。一つ質問」

『なに?』

「・・・AMFによる完全キャンセル化状態での戦闘って、経験ないの?
ギンガさんだけじゃなくて、108の部隊の人も」



・・・頷きましたか。うん、それなら良い機会ですね。



「ギンガさん、明日暇なら六課に来て」

『え?』

≪まぁ、あなたの懸念の答えの一つがお見せ出来るかと≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。朝一番でやってきたギンガさんも加えて、ある一大イベントが行われました。










その場所は、六課の訓練スペース。シチュは、廃棄都市群。廃ビルが建ち並ぶその中で行われたイベントとは・・・。






















「・・・・つーわけで、今回は私とサリと特別ゲスト達による、ちょっとハードな特別講習〜♪」

≪ドンドンパフパフ〜♪≫

『サーイエッサーッ!!』





・・・アメイジア、ファンファーレなんて流さないでください。データ領域の無駄でしょそれ。

あとマスター、高町教導官を初めとした隊長陣も、頭を抱えないでください。



いや、分かりますよ? 何で居るのかと聞きたくなりますし。





「あれ、恭文・・・というか、みんなどうしたの?」

「・・・どうしたのじゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 何で居るのっ!?」





そう言ってマスターが指差すのは・・・一人の女性。黒髪の三つ編み。抜群のスタイル。その身を包むのは、エリオさん達と同デザインの練習着。



なんと言うか、あれですよね。・・・ほんとになんで居るんですか?





「いや、エイミィ経由でサリエルさんに頼まれたから」

「こないだやっさんちに行ったついでにね。いや、助かりましたよ。ツーと言えばカーでしたし」

「いえいえ。私もこっちの世界には興味がありましたし、あと・・・会いたかったしね」



そう言いながらマスターを見るのは、きっと愛ゆえにでしょう。いや、なんか艶っぽいですけど。



「サリエルさんっ! どういうことですかこれっ!?」



高町教導官、動揺してますね。まぁ、仕方ないでしょう。



「いや、問題ないだろ? つか、特別講師としては適任だったんだよ。御神の剣士の噂は、俺もやっさんから聞いてたしね」

≪本当は兄上様の方も呼びたかったのですが、さすがに無理でした≫



ドイツですしね・・・。



「ま、とにかく・・・みんな久しぶり。本日、特別講師に任命された高町美由希ですっ!!」






















・・・高町美由希。まぁ、今さら説明もいらないでしょうが、高町教導官のお姉さんであり、マスターの公式的な現地妻3号です。

・・・マスターにとっては、アンオフィシャルですが。





現在は翠屋の2代目店長に納まっている女性ですが、それは彼女の姿の一つに過ぎません。

高町家は御神流という小太刀の二刀流による実戦剣術・・・いえ、暗殺術と言った方がいいでしょう。とにかく、それを継承している家系なんです。

高町教導官と、母親である桃子さん以外の全員が、この御神流を継承しています。もちろん美由希さんも。





なお、美由希さんはその中でもスピードと突き技に特化しており、それはまさに神速。実際、マスターは本気の美由希さんにはついていけません。





私の見立てでは・・・クロスレンジであれば、オーバーSとガチでやりあえるでしょう。

防御フィールド? そんなもの斬れるに決まってるでしょ。バリアも発生する前に斬れます。

相手の攻撃は・・・全部回避ですね。広範囲攻撃でもないかぎり、無意味でしょう。





一応言っておきますが、高町家は高町教導官以外は全員非魔法能力者です。全ての戦闘行動は、鍛え抜かれた技と身体能力で行っています。

改めて考えると恐ろしいですね。いや、本当に・・・。






















"・・・まって"





聞こえた声は・・・ギンガさん。相当疑問顔だったので、マスターが説明してました



それはスバルさんとティアナさんも同じですけどね。エリオさんとキャロさんはまだ大丈夫ですが。





"・・・嘘よね"

"いや、本当だよ?"

"本当です。実際、僕は見せてもらいましたし、相手を相手をしてもらいましたけど・・・凄かったです"

"エリオ君もフェイトさんもなぎさんも、相手になりませんでした・・・"





あ、絶句しましたね。まぁ、仕方なしですが。



さて、そんな美由希さんを呼んでまでなにがしたかったかというと・・・。





「今日は、隊長陣を含めたみんなに『AMFによる魔力の完全キャンセル化状態での対質量兵器戦』を体験してもらう」





・・・そう、これが原因です。美由希さんは、恭也さんと香港の警防で質量兵器・・・銃器相手での戦闘訓練もしてますから。




マスターからその辺りの話を聞いていたサリさんが、そういう視点からの意見を言ってもらうために、呼んだそうです。





「あー、美由希ちゃん。後で組み手してもらえる? 私はやっさんから話聞いてて、戦ってみたくて戦ってみたくて仕方なかったのよ〜」

「あ、俺も頼みます。魔法無しのガチ組み手っ!!」

「はいっ! 是非やらせてくださいっ!! 恭文からお二人のこと、少しだけ聞いていましたしっ!!」

≪・・・まぁ、説得力無いですよね≫

「うん、無いね。仕事と私情を見事に混同してるよ」





なお、今回こんな特別講習を隊長陣にも受けてもらうのには、理由があります。





「みんなも知っての通り、AMFは魔導師殺しもいいとこだよ。実際、中央本部が襲撃された時には完全キャンセル化されて、厄介だったしね」

≪で、怖いのはだ。ガジェットはともかく、AMF自体は別に特別でもなんでもないってことだぜ。
使用適正ランクがAAAってバカ高いだけで、それ自体は昔からある魔法技術。使おうと思えば、誰でも使えるんだ。
魔法でどうこうってだけじゃねーぞ? ガジェットみたいに、機械的な発生装置を使うって手もあるしな≫





・・・スカリエッティの作ったガジェットが厄介だったのは、AMFが特殊だったからではありません。

その魔導師殺しなフィールドを、小型の自立兵器でありながら使用出来たことにあります。それも単独でです。

その上それが集団で出てくるんですから、恐ろしいことこの上ありません。



そして、アメイジアの言うようにAMF自体は昔から存在する魔法技術です。つまり・・・。





「悪用しようとする人間は、必ず出てくる・・・というわけですね? JS事件のおかげで、魔導師に対するAMFの有用性は、図らずとも証明されていますし」

「シグナムさん正解です。その場合、完全キャンセルにして、質量兵器や物理的なトラップを使ってくる可能性は高い。つか、俺ならそうする。
『魔導師は 魔法出来なきゃ ただの人』・・・だしな。なので、みんなには一回その辺りを経験してもらって・・・」

≪自身の能力でその状況に置かれた場合の打開策を、皆さんで考えていこうというのが、この講習の意義です≫



この辺りは個人差もありますが、一度経験しておけば、心構えは出来るでしょう。そう意味もあります。

そして、それで高町教導官達は納得したようです。ヒロさんサリさんの後ろにいらっしゃる迷彩服を着こんだ集団がなんなのか。



「で、このむさい男どもが、その質量兵器を使って、皆をぶっ飛ばそうとする仮想敵ってわけ」

「俺が入ってるサバゲー同好会の連中だ。ただ、舐めてかからない方がいいよ?
全員、質量兵器使用の許可持ちの武装局員だから。扱いは相当だよ」





・・・局では、厳重な審査の元でなら、質量兵器・・・銃火器の保有が認められています。

ただ、せいぜいピストル程度なんですが。バズーカやらミサイルはNGです。複数保有も原則的には禁止です。



しかし、よくそんな人間ばかり集めましたよね。私はビックリですよ。





「みんなの勝利条件は簡単。廃ビルに立てこもったこいつらを全員ぶっ飛ばせばいいから。
・・・んじゃお前ら、説明した通りで頼むぞっ!!」

『サーイエッサーッ!!』

「ケガしても安心しろっ! 俺と美人の女医さんがすぐに治してやるっ!!」

『サーイエッサーッ!!』

「特に美人の女医さんってとこが嬉しいだろっ!!」

『サーイエッサーッ!!』

「お前ら正直だなっ!!」

『サーイエッサーッ!!』





・・・なお、相手の使う銃器はマシンガンやアサルトライフル(サバゲー用)。弾はペイント弾。

こちらは、単独での作戦行動中に、敵方の罠にハマったという仮定の元なので、デバイスは起動状態です。

ただし、完全キャンセルされているので形状変換や魔法の行使は出来ません。カートリッジやフルドライブなどの機能も同じく。



この前提の元、互いの安全を考慮した防護作を整えた上で、行います。

・・・温いとか言わないでくださいよ? 訓練でケガするのもバカらしいじゃないですか。





「・・・で、私はどうすればいいんですか?」

「まずは皆にやらせますんで、美由希さんは採点をお願いします」

「魔導師とかそういうのは関係無くやっちゃっていいから」

「分かりました」





ま、とにかく・・・。





「それじゃあ、特別講習、始めるよっ!!」

『よろしくお願いしますっ!!』










訓練は、始まったわけです。











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ヒドイね」

「ごめん、ぶっちゃけ俺はここまでとは思わなかった」

「アンタら・・・。どんだけ魔法至上主義なのさ。クリアしたのが三人だけって、おかしいでしょ」

≪ガール達、本気で魔法出来なきゃただの人だよな・・・≫

『面目ありません・・・』





マスターを含めた全員が午前いっぱい使ってチャレンジしたのですが、結果は散々足るものでした。





「とは言え・・・ティアナちゃんとキャロちゃんは仕方ないんだよ。ポジションとスキル的な問題があるし」



まぁ、キャロさんやティアナさんは仕方ないですよ。後衛は、本気でただの人になりますし。



「・・・でも、あれじゃあだめです。すぐに捕まりましたし」



ティアナさんは凄まじく不満顔ですが。



「ティアナ的には不満?」

「当然よ。私、執務官志望だしね。単独捜査をやる状況も出てくるに決まってる。そんな時にあれじゃ・・・」

≪・・・確かに問題かもしれませんね≫

「かもじゃなくて、間違いなく問題よ。本気でなんとかしないと」

「私だって同じだよ。捕まって、人質にでもされたら、それで詰まれる。でも・・・」





・・・バックス二人は、色々と考えたようです。これだけでも、この特別講習は成功でしょう。





「まぁ、その辺りは今後一緒に考えていくから、心配しなくていいよ。シグナムさんとヴィータちゃんはさすがでしたけど」

「まぁ、ちと怖かったですけど、あれくらいならなんとか」

「我々は質量兵器の相手をしたことが、無いわけではありませんでしたから」



だ、そうです。というか、クリアした二人です。で、あと一人が・・・。



「ま、やっさんはクリア出来なきゃおかしいよ」

「誉めるまでもないな」

「なんか冷たいですね・・・」



そう、マスターです。ただ、これはマスターの能力どうこうじゃないんです。深い理由があって・・・。



≪何言ってるんですか。ヒロさん達とこの訓練してたでしょ≫

「そうだよ。それに、私と恭ちゃんと一緒に警防の演習にも参加したじゃない。恭文は、これくらいは、出来て当然。
というか、ヒロリスさんじゃないけど、出来なきゃおかしい」

「・・・はい」



経験値が違うんですから、ここで誉める理由が分かりませんよ。えぇ、全く。



「なぎ君そうなのっ!?」

『サーイエッサーッ!!』

「あー、まーね。美由希さんと一緒にやったのは、しばらく前だけど。
でも、訓練自体はガジェットのAMF対策の一環で、こちらのお兄さん達にも協力してもらって、やってたのよ」

『サーイエッサーッ!!』



なお、理由は・・・。



「「だって、コイツ運悪いから、完全キャンセルされた中に閉じ込められそうだったし」」

「・・・ヤスフミ」

「お願いフェイト。そんな目で見ないで・・・」



そのせいで、この訓練の比率は非常に多かったです。いや、真面目にありえそうなんですよ。



「・・・納得した。そりゃやらなきゃいけないわ」

「なぎさん、本当に運無いしね」



・・・これで納得されるってどうなんでしょ。



「で、エリオ君は・・・うん、惜しかった。ちょっとビックリした?」

「はい。こう、思ったよりいつもと違う感じで・・・」

「うん、それで正解だと思う。でも、その違いに合わせていければ、次は行けると思うな。頑張ってね」

「・・・はいっ!!」



美由希さん的には好感触だったわけですね。そして問題は・・・。



「フェイトちゃんにスバルちゃんにギンガちゃん。あと・・・なのはだね」

『はい、すみません・・・』

「わ、私もっ!? あのお姉ちゃん? 私、ティアナと同じポジションでありまして・・・」

「・・・いや、仕方ないでしょ」



マスターが言うのも無理はありません。

不意討ちしようと相手に飛びかかっていって・・・。



「漫画みたいにこけたし。お兄さん方が一瞬固まったじゃないのさ」

『サーイエッサーッ!!』

「うぅ・・・」

≪あれはポジションどうこうのレベルじゃありませんよ。あなた、そんなに萌え要素を増やしたいんですか?≫

『サーイエッサーッ!!』

「なのは、正直お姉ちゃんは悲しい。というか、そういうのが許されるのは15歳までだよ? 来年20歳でこれはないって・・・」

『サーイエッサーッ!!』





ホントですよ。あれ、色々アウトですし。





「みんなでヒドイよっ! というか、どうして同意しまくっているんですかっ!?」

『サーイエッサーッ!!』

「意味がわかりませんよっ! というか、それしか言えないんですかっ!?」





まぁ、こっちはいいでしょ。残りの三人ですよ・・・。





「・・・なんていうか、状況に合わせていけてなかったね」

「そうだね。それは俺らも思った」

「はい、面目無いです・・・」



・・・フェイトさん、すっかり落ち込んでいますね。まぁ、仕方ないでしょ。ある意味ブービーですから。



「恭文、どう思った?」

「・・・うーん、フェイトに関して言うなら・・・迷いが見えました」



フォローどころか突き落としますか。フェイトさん、何かが突き刺さりましたし。



「『魔法無しで戦いたくない。攻撃したくない』とか思ってるのかなと・・・。フェイトの身体能力や反応なら、充分対処出来るレベルなのに、そのせいで出来てない」

「・・・だ、そうだけど、フェイトちゃん的にはどう?」

「・・・正解です。あの状況だと、組み手みたいに加減出来る自信がなくて」



やっぱりですか。まぁ、普段は非殺傷設定でどかーんですしね。無理が無いと言えばないですが。



「うーん、やっぱフェイトちゃんは能力どうこうじゃなくて、まずメンタル面からだね。普段はいいさ。でも、特殊状況下に放り込まれた時があまりに弱い」

「自分でもそう思います。それに、ティアナの言うように、執務官の仕事中にこんな状況になったら・・・」

「アウト・・・だよね」



・・・マスターの表情がそう言いながら、重いものに変わります。

想像したんでしょ。そうなった時の状況を。これは・・・決定ですか?



「で、スバルちゃんとギンガちゃん。二人も・・・同じくかな」

「・・・はい」

「いつもみたいに全く動けませんでした」



なお、二人には戦闘機人モードの発動なしでやっていただきました。

リハビリ中のギンガさんはともかく、スバルさんは身体能力だけでも充分行けると思ったのですが・・・。

やはり、普段とは違うことが、その能力を鈍らせてしまいました。



「まぁ、二人は隠し技使えばOKだけど、こういう状況に関しての心構えと対策は決めておいた方がいいね。
特にスバルちゃん、アンタは念入りにね」

「・・・私ですか? 捜査官のギン姉とかじゃなくて?」

「そーだよ。理由は簡単。アンタの志望は災害救助担当・・・傷ついた命を背負って、助ける仕事だ。
背負っている時に、どっかのバカのおかげでこうなったら・・・どうする? 隠し技も使えなかったら」



ヒロさんの言葉に、スバルさんは考えて・・・考えて・・・考えて・・・ショートしました。



「スバルっ!? ・・・熱ッ! どんだけ考え込んでたのさっ!!」

「あの・・・! それでも・・・それ・・・でも・・・!!」

「助けたいんでしょ? 絶対に」



頭から煙を出しながらも、スバルさんは頷きます。それを見たヒロさんは、満足そうに笑うと、こう言いました。



「それなら、一緒に考えようじゃないのさ。まぁ、これを一人で打開ってのは無理かもしれない。でも、状況で心が潰されるような事は、回避していくよ」

「・・・はいっ!!」

「あー、そんなに気合い入れると、またフラつくよ。・・・ほい」



マスターがスバルさんの頭に手を乗せます。すると、顔が赤く、熱い感じだったスバルさんの顔が、少し楽な表情に・・・。



「ふぁ・・・。冷たくて気持ちいい」

「・・・なぎさん、なにしてるの?」

「冷却属性の魔力を手のひらに薄く覆わせるように構築して、それで頭冷やしてるの。まぁ、冷えピ○程度の温度だけどね」





マスターの得意とする凍結・冷却属性への魔力変換技能。その力の使い方の一つです。ちなみに、マスターは魔法のこういう使い方が好きです。



戦うだけでも、壊すだけでもない。ただ癒し、ただ幸せを作る。それが、嬉しいんでしょう。





「蒼凪、お前器用だな・・・」

「そんなこと無いですよ。氷結系の魔力はそんなにコントロール難しくないですし」

「いや、難しいだろ。物を冷やすって、簡単じゃねーんだぞ?」



マスターは魔力コントロールがずば抜けて上手いですしね。しかし、スバルさんはまた幸せそうに・・・。



「・・・恭文、私もして欲しいんだけど」

「熱出したら、してあげますよ」

「恭文・・・気持ちいいよ・・・」

「スバル、お願いだからその言い方やめてっ!!」










・・・この時、私は気付いてはいけないものに気付きました。





一つはギンガさん。こう・・・見てました。形容しがたい色を瞳に込めて。





そして、もう一つは・・・フェイトさん。なんというか、つまらなそうというか、不愉快なものを見る目でマスターとスバルさんを見ていました。





それが良いことなのかどうかは・・・マスター次第ですね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・で、スバルちゃんの熱も冷めたところで、一応のまとめね」

『はいっ!!』

「みんなにやってもらったこと。で、その中で各自が感じたこと。・・・ま、それがAMF対策の一つの形だね」



ヒロさんとサリさんが話を進めます。六課隊長陣もフォワード陣も、まるで生徒のように、その話に耳を傾けます。



「・・・というと?」

「魔法ってやつが使えなくなった時、自分に何が出来るか、ちゃんと把握しておくの。で、使えなくても戦える手段を構築していく」

「そうすれば、テンパったりしなくて済むしな。ただ、別に一人で状況を打破する必要はないぞ?
バックヤードの援護が来るまで持たせられるようになるだけでも、充分だ」

≪ヒロリス女史、主。それは私が言ったことです≫

「「うっさいなぁっ! 分かってるよっ!!」」





・・・まぁ、言うのは簡単ですが、やるのは難しいですよね。



相手をするのが人間ばかりとは限りませんし。





「あと・・・気構えが必要かな」

「気構え?」

「そうだよ」



・・・二人に並ぶようにして立っていた美由希先生が、話は続けます。



「まぁ、フェイトちゃん達を見ていて思ったんだけど、こういうのって・・・いつものみんなの戦い方とは違うわけでしょ?」



その言葉に全員が頷きます。そう、違います。根本となる魔法が使えないのですから。



「で、当然出てくる結果もいつもとは違うと思うんだよね。・・・多分、私や恭文、ヒロリスさん達寄りになるんじゃないかな?」





・・・そう真剣な顔で美由希さんが言うと、全員の表情に影が差しました。言いたいことが分かったからです。



非殺傷設定で安全に殲滅など出来ない。場合によっては・・・・。





「・・・美由希さんの言う通りだな。完全キャンセル化内での戦闘を考えていく場合、その問題は外せねー」

「そうだな。かと言って、今後の事を考えると、回避というわけにもいかん」

「悪党と外道は狡猾って、相場が決まってますしね」



サリさんが言ったようなシチュエーションは充分にありえますね。

・・・あー、空気が重いですね。よし、いい話をしますか。



≪・・・問題はないでしょ。相手を殺せるくらいに強くなればいいんです≫

「アルトアイゼンっ!?」

「アンタ、なに言ってるのっ!?」



あー、若い方々はどうしてこう拒絶反応を起こすのか。



「あー、みんな落ち着いて。別にアルトは殺せばいいなんて、言ってないから。・・・でしょ?」

≪その通りです。・・・みなさん、『活殺自在』という言葉を知らないんですか?≫

「かっさつ・・・」

「じざい?」

「あ、なるほどね」



・・・さすがに美由希さんやシグナムさんに師匠は気付きましたか。



≪・・・まぁ、簡単に言ってしまえば、相手を殺すだけの技量と覚悟を持った人間だけが、相手の命を奪わない戦い方が出来るという考え方です≫

「え、どういうことっ!? それわけ分かんないよっ!!」



まぁ、スバルさんはそうですよね。・・・綺麗事過ぎて私やマスターは好きじゃないんですけどね。



≪・・・殺すということは、相手の命を奪う事です。もっと言えば、相手の生きる権利を掌握し、好きに扱う事とも言えます≫

「アルトが今言ったのは、要するに相手方の生殺与奪権を握るってことだね。ただ・・・」

「それが出来るということは、相手の命を奪わずに組み伏せることも出来る・・・って考え方なんだ。まぁ、あらゆる意味で相手を越えていないと無理なんだけど」

「どうしてですか?」



エリオさんがそう聞きたくなるのも当然です。そして、その答えはマスターから出てきました。



「・・・その場合やらなきゃいけないのは、生かした上での完全な敗北を、相手に突き付けることだから。そんなの、簡単じゃないよ」



・・・そんな苦い顔をしてどうするんですか。落ち着いてくださいよ。



「完全な・・・敗北」

「やっさんの言う通りだよ。・・・スバルちゃん、分かる? 私、初めて会った時に同じようなこと言ったでしょ」

「あ、はい。あの時の・・・ですよね」

「そーだよ。・・・ぶっちゃけ、こういうのは簡単じゃない。私やサリも、出来ない時がある。現に私は、あの時のスバルちゃんに対して、それは無理だった。
でも・・・この問題の、答えの一つではある。端から見ると過激で、危なっかしいのは確かだけどね」



でも、皆さんにはいいかと。『殺し、傷つけるしかない』ではなく、それさえも自分の選択の一つという考え方ですし。



「・・・そっか、魔法無しでもそれくらい強くなればいいんだ」

「確かに、簡単じゃないですよね」

「でも、強くなることは、やらなきゃいけないよ。もちろん個人の力だけで何とかする必要はないけど・・・」

「救援来る前に捕まるとかは・・・アウトよ。つか、あれはもうごめんだし」










・・・ティアナさん、そこまで悔しかったんですか。いや、見事な潰され方でしたけど。










そして、六課でこの講習は、解散まで続いていくことになります。まぁ、マスターはどこまで行っても『出来て当然的な扱い』でしたが。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「では、今日の特別講習はここまでっ! みんな、お疲れ様っ!!」

『お疲れ様でしたっ!!』










・・・あの後、美由希さんも同じ条件でチャレンジ。その凄さで、周りを唖然とさせました。

いや、仮想敵の方達がスカウトしてましたし。御神の剣士は、次元世界レベルで凄いことが証明されましたね。





時刻はすでに夕方。このすぐ後に飲み会というサバゲーチームな方々には重ね重ねお礼を言って見送ったあと、全員で隊舎を目指します。





マスターと私は、その最後尾です。いや、なかなかに楽しめましたね。










「・・・そうだ、恭文」

「はい?」



隣を歩いていた美由希さんが、マスターに話しかけてきました。



「クロノ君から伝言が二つ。もうすぐ迎えに来れそうだって」

「本当にっ!?」

「うん。必ず解決するから、安心して欲しい・・・って、言ってた」



・・・こちらへ来る時の手続きなどを、クロノさんにお世話になったそうです。その時に、ですか。



≪よかったですね。マスター≫

「うんうん・・・!! 本当に・・・」

≪・・・泣かないでくださいよ≫

「で、もう一つは・・・『忘れても、誰も責めない。もう、許されていい』・・・だって」



あー、私は察しがついてしまいましたよ。というか、どれだけ勘がいいんですかあの人。



「・・・そうですか」

「あ、まだ続きがあるんだ。だが・・・」

「だが?」

「『それでも忘れたくないなら、それでいい。お前は、お前だ』。そう伝えて欲しいって、お願いされた。
結構、真剣な顔でね」

「・・・ったく、あの人は」



あの人、本気でいいお兄さんですよね。ただ・・・どこで知ったんですか? というか、マスターに直接言えばいいのに。



「・・・ね、恭文」

「はい?」

「話は変わるけど、フェイトちゃんと何かあった?」



あ、マスターが固まりましたね。やっぱり、あれとかこれとかでしょうか。



「えと・・・」

「・・・恭文、ハッキリ言って」

「・・・あの、少し話をして、弟や家族としてじゃなくて・・・・男の子として、見たいと言ってくれました」





・・・そう聞いた時、一瞬だけ浮かべた美由希さんの表情を、私は忘れないでしょう。



寂しさと、切なさが混じった顔を。だけど、それは一瞬。その次に浮かべたのは、優しい笑顔でした。





「・・・そっか、よかったね」

「・・・はい」

「ね、恭文」

「はい?」

「あんまり、フェイトちゃん以外の女の子に優しくしちゃだめだよ?」



・・・美由希さん。



「恭文、本当に優しいから、ついやっちゃうんだろうけど、ダメ。そんなんだから、フラグ立つんだよ。
もっと、フェイトちゃんが好きだって気持ち、出していいと思う。じゃないと、フェイトちゃんだって恭文の気持ちが分からなくて、戸惑っちゃうよ」



・・・正直、遅すぎますよ。今、心からそう思います。



「まぁ、あれだよ。頑張ってね。応援してるからっ!!」

「・・・はい」










・・・夕暮れは、闇へと変わります。私とマスターと美由希さんは、そんな話をしながらも、歩いていきます。





夜の闇のせいか、美由希さんの表情が泣いているように見えたのは・・・気のせいだと、しておきます。




















・・・今回の話は、残念ながらここまでになります。





結局、いつものノリではまだまだありませんね。とにかく、次回です。





まぁ、あれですよ。私視点というのも面白いですが・・・疲れますね。





私は、適当に横から口出ししていくことにします。





やっぱり主役は、私の大事な相棒ですよ。・・・多分ね。




















(第24話に続く)






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