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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第20話『とある魔導師と閃光の女神のきっかけ』



・・・なのは。










「なに? というか、18話と出だし同じだね」

「気にしないで。でもさ・・・僕、運ないのかな?」

「そういうレベルじゃないよね。でも、クロノ君どうするんだろ」





知ったこっちゃないよ。正直、僕が聞きたいよ。



さて、季節は12月に入ったばかり。というか、1日の朝。



うちのモンスターどもの対応をなのはに、相談中である。

フェイトも考えてはくれているけど、僕もあれこれ思案中なのだ。



全く、何で自分の事はさておき人の世話を・・・。





「まあ、クロノ君の事は・・・なんとかしなくちゃいけないね」

≪そうですね。正直、平穏に過ごせませんから≫










・・・神様、僕・・・何かしましたか?









・・・とにかくこうして始まる。










色んな意味でターニングポイントになった一月が、始まったのだ。













魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第20話『とある魔導師と閃光の女神のきっかけ』




















・・・ということで、本局に来ました。仕事? 訓練? そんなもんより家の都合だよこんちくしょうがっ!!










「・・・フェイト、覚悟はいい?」

「うん」





そして、僕とフェイトは乗り込む。そう、某提督さんのお部屋へ。



すると、そこに居たのは・・・のん気にケーキ食べてるいい年した男が二人だった。



・・・って、ヴぇロッサさんっ!?





「アコース査察官、いらっしゃったんですか」

「やぁ、フェイト執務官。あ、恭文も久しぶり」



・・・あぁ、事態が読めたよ。



「クロノさん、すみませんがその話に僕とフェイトも混ぜてもらってもいいですか?
あなたの対応のおかげで、家が魔窟になっている件と、すばらしく結びつくと思うんですよね」

「・・・やはりお前の所だったか」





えぇ、そうですよ。つか、なんですかあれっ!? ありえないでしょうがっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・それはまた、偉いことになってるね」

「なってるならないの話じゃありませんよ。ありえませんよアレ」





いや、六課メンバーのセカンドハウスになるとかならあるよ? でも、実の家族に蹂躙されるってのはないでしょ。



新しすぎて涙が出るよ。いや、斬新過ぎて殺意が沸くね。





「それでクロノ、お願いだから迎えに来てくれないかな?」

「・・・すまないが、今すぐは無理だ」



うん、予想はしてた。ただ、それで『はい、そうですか』じゃ、僕は納得出来ない。当然である。



「理由を聞かせてくださいよ。つか、こっちはAAA試験の準備やらもあるし、この状態は正直辛いんですけど」

≪予想はつきますけどね≫



うん、つく。クロノさんは提督職だ。しかも、リンディさんやレティさんと違って、あちこちの世界を回る次元航行艦の艦長さん。

明日休みを取りますとか言って、はい、そうですかで取れる役職じゃない。つまり・・・。



「お前の想像の付いている通り、仕事が立て込んでいる。1〜2週間は動けない」

「クロノ、話はわかるけど、今のままだとヤスフミが・・・」

「次に二つ目っ!!」



分かるけど、納得は出来ないという顔のフェイトを、少し語気を強めることで止める。そして、クロノさんは言葉を続ける。



「・・・どちらにしてもだ、僕がちゃんと母さんやエイミィと向き合って話さないと、意味がない。
通信やメールではだめだろう。恭文、フェイト、迷惑をかけることは、申し訳なく思っている。だが・・・そのための時間を、僕にくれ」



そう言って、クロノさんは頭を下げた。・・・安くない頭なのに。しかし・・・まぁ、しゃあないか。



「・・・分かりました」

「ヤスフミっ!?」

「まぁ、すぐにどうこうしろって言いませんよ。解決していこうとはしてくれているわけですし」

≪そうじゃなければ、ここで強制的に来てもらう予定でしたけどね≫





うん、そのつもりだった。ま、結局は夫婦間だったり、母と息子間の問題だ。当人同士で決着つけさせればいいでしょ。



それまで、あの魔窟で暮らしていこうじゃないのさ。うん、がんばろう。





「ヤスフミ、いいの?」

「いいよ。ま・・・家族だしね。たまにはこういうこともあるよ」

「・・・すまないな。この埋め合わせは、必ずさせてもらう」










・・・とにかく、話がまとまった所で、ヴェロッサさんがケーキを追加で出してきた。





四人でそれを食べつつ、世間話をすることになったのだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ヤスフミが、本局の人事の人に呼ばれて、少しだけ席を外した。





そこを狙って・・・頼れるお兄ちゃんと、その友達に相談をもちかけた。





そう、昨日のことだ。




















「・・・それはサリエルさんの言う通りだね」

「やっぱり・・・ですか?」

「あぁ。しかし、またキツイ言い方をされたようだな。ギンガ陸曹の一件で何回か話したが、そういう印象は受けなかったんだが・・・」



うん、私も最初はそう思った。だけど、そうじゃなかった。あの人は、いろんな意味で強い。凄く、強い人だ。



「いや、クロノ。それは違うよ。彼は普段こそアレだけど、トウゴウ先生の弟子なんだから」

「・・・納得した」





少しだけ、暗い気持ちを持ちつつ、ケーキをぱくり。程よい甘さが、そんな気持ちを吹き飛ばす。だけど、また雲がかかる。



見て・・・いないか。でも、どうすればいいんだろう。ちょっとだけ、悩んでる。



ううん、かなり。





「・・・根から崩れたのか?」

「そうだね。今まで、ちゃんと知っていた。全部じゃないけど、知っていた。
そう思っていたことが・・・実は、全部私の思い込みで、なんにも知らなかった。そう考えたら、少し・・・」

「なるほど・・・。それで、フェイト執務官・・・フェイトちゃんは、どうしたいのかな」

「どうしたい・・・か。ですよね」





・・・なんとかしたい。サリさんに言われただけじゃない。当人のヤスフミにも言われた。

私の、今までの接し方に、不満があると。今のヤスフミを、ちゃんと見ていないと。だったら、やることはひとつしかない。



私は、そんな感情をヤスフミに抱かせているのは嫌だ。だから・・・ちゃんと・・・。





「知らなくちゃ、いけないんだよね」

「そうだな。今のあいつの姿を、お前はしっかりと見なくてはいけない。すべては、そこからだろう」

「でも、どうすれば・・・」

「そうだな・・・」





やっぱり、話すことだよね。でも、それだけでいいのかな? なんだか、今までと同じことになりそうで、少し・・・不安。





「いっそ、デートでもしてみればいいんじゃないの?」

「で、デートっ!?」

「・・・なるほど、それがいいな」





え、クロノ。それで納得するのっ!? 私、結構戸惑っているのに。





「フェイト、君は母さんにそのあたりを相談していたんだろ?」



・・・相談していた。ナカジマ三佐からのアドバイスをもらってから、ずっと。



「なら、その中で、恭文を家族や弟としてではなく、異性として見てみろ」

「異性として・・・」

「別に特別な意味は必要ない。ただ、同年代の男の子として見ていけばいい。
君が今までその状態だったのは、恭文に対して、家族として接する部分が強すぎたからだと思う」

「そうだね。だから、本当に少しだけ、その部分を外してみたらいいんじゃないのかな。そうすれば、きっと今まで知らなかった恭文の一面が、見えてくると思うな」





家族としてじゃなくて、男の子として。今まで、私が知らなかったヤスフミ・・・。





「そうすれば、分かるのかな?」

「それは君次第だ。だが、現状は変わってくるはずだ」

「・・・うん、そうだね。やってみるよ。クロノ、ありがとう。アコース査察官も、ありがとうございました」

「いえいえ。あ、それと追加アドバイスだよ?」










アコース査察官からの追加アドバイスは、まずは、普段からそういう目で見ることを心がけた方がいいということだった。





・・・そうだよね。いきなりなんて上手くいくわけないんだから。これから、少しずつだよね。うん、がんばろう。





今のヤスフミのこと、知っていこう。このままは、きっとだめだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、戻ってきた恭文と一緒に、フェイトちゃんは帰っていった。どこか吹っ切れたような顔をしていたのが、微笑ましかった。





だけど・・・さぁ。










「・・・なんていうかさ、クロノ」

「なんだ?」

「君の妹さんは・・・こう、なんていうかアレだよね」

「言うな」





あの突っ込み所満載な理論でなんとかなるとは思わなかったよ。びっくりしたさ。



でも、これで・・・いいのかな?





「そうだな。これで、少しは状況も改善されるだろう。いや、されていって欲しい。さすがに・・・不憫だ」

「そうだよね。そうとうヒドイ状況だし」





ありえないよね、アレは。いや、そこまでされてもがんばろうとする恭文は真面目にすごいよ。



やっぱり、報われて欲しいね。うん、絶対に報われて欲しい。





「・・・で、君の方はどうするんだい?」

「とりあえず、反省するさ。無神経な自分を罵りつつ、業務を行っていくことにする」

「そうだね。それが正解だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あの、フェイトさん」

「なにかな?」



いや、なにかなじゃなくて・・・。



「うん、僕が言いたいこと分かってるよね」

「なんだ、足りないものがあるのか?」

「そういうことじゃないですからっ! なんでいきなり僕は隊舎にお泊りコースっ!?」




そう、僕は家ではなく、隊舎にお泊りすることになった。しかも、どういうわけかアルフさんに荷物を持ってきてもらって。



つか、まてまて。準備よすぎるぞこれ。どうなってるのさっ!?





≪もしかして、解決まで隊舎に居させる気ですか?≫

「・・・うん、その方がいいかなと」

「いや、僕は大丈夫よ?」

「だめっ!」



いや、なんでそんなしたり顔。そして、なんでお説教モード。



「ヤスフミ、試験はもうすぐなんだよ? 特に今週は、朝練も多めだし、家に居たら集中できないよ。
というか、これ・・・」

「お母さんとエイミィからの指示なんだよ」

「二人のっ!?」





・・・さすがに、ちびっ子二人が居るし、このままは迷惑と判断したらしい。で、それなら隊舎に居てもらうのが吉かと。





「・・・納得した」

「ま、そういうわけだからさ。アタシらのことは気にせず、ここはキバっていきな?」

「あの、アルフさん。すみません」

「いいっていいって。んじゃ、がんばれよ〜」










そう言って、アルフさんは帰っていった。うーん、またエリオの部屋か。ま、楽しいからいいけどさ。





あー、でもいきなりで大丈夫かな?










「あ、それなら大丈夫だよ。私が前もって連絡しているから。すごく、うれしそうにしてたよ」

≪また準備がいいですね≫



よすぎて怖いよ。僕の意思が何一つ存在していないあたりとかさ。



「・・・それでね、ヤスフミ」

「うん?」

「エリオの部屋に行く前に、ちょっと付き合ってくれるかな。少しだけ、真剣な話」




















・・・そう言って、中庭に出てきた。空に浮かぶのは二つの月。実は、この夜空が好きだったりする。





だって、地球はこんな光景見られないもの。うん、異世界だって認識できるのが、楽しいのだ。










「・・・あのね、昨日も少しだけ話したけど、私・・・ヤスフミに不満があるの」



そう、昨日そう言っていた。不満という言い方はしていないけど、フェイトは確かにその話をした。



「そんなに、ダメに見える?」

「うん」



言い切りますか。・・・別に、たいしたことじゃないんだけどな。

僕がわがままを通したい。そう思う。そのためには代価が必要。じゃあ払いましょってだけで。



「それが、嫌なの。あの、押し付けとかそういうことじゃないよ? うん、それは本当にっ!!」

「そんなに念押ししなくても・・・。じゃあ、なにが嫌なのさ」

「自分を、大事にしていないところ」



そんなことない。僕は自分が大事だし大好きだ。痛いのだって嫌だし。



「そういうことじゃないよっ!!」

「・・・じゃあ、どういうこと?」

「ヤスフミ、立場とか、信頼とか、風評とか、そういうのを捨ててなんとかしようとする。どうして、そういうのを大事だと思えないの?」





大事だと思っていないわけじゃない。ただ、自分の感情のままに進むと、どうしてもそうなってしまう。



僕の守りたいものは、きっと、フェイト達と同じ。だけど、まったく違う。

違うから、守り方も違ってくる。そういうのを蓄積していけないのが、僕の戦い方なのかなと、ちょっと思った。

・・・先生も、そんな感じだったらしいしね。





「私は、それがすごく嫌なの。その、ヤスフミがそれより大事なものがある。それは分かるよ?
でも、ひとつ忘れてる」

「なに?」

「・・・たとえば、ギンガの一件。勝手で、押し付けだって分かってる。だけど、話してくれなかったことが、凄く嫌だった。
例えば、嘱託魔導師の試験の時。ミッド式をがんばって習得しようとしていた時。私、知っていたら、あんなこと言わなかった。そんな後悔ばかりしてる」





・・・話して、どうこうしていいのか、分からなかったしね。



ギンガさんの一件は、正直に言うとフェイト達に話す選択肢は無かった。だって、ギンガさんと知り合いでもなんでもなかったんだから。・・・はやて以外ね?

嘱託魔導師の試験の時・・・。これは、少し違う。なんというか、ビックリさせたかったってのがあるのかも。

これだけ出来るようになった。それを見せることで、少しは認めてくれるんじゃないかと。あと、手札さらしたら負けそうだったし。





「・・・ごめん」

「なんでいきなり謝るのさ」

「私、また保護者気取りになってた。違う、言いたいこと・・・そんなことじゃない」



じゃあ、なにが言いたいのさ。

そして、そう思ったことが顔に出ていたのか、フェイトが僕をまっすぐに見て・・・続けた。



「悔しかった」

「悔しかった?」

「うまく言えないけど、話せなかったこと、話そうとしなかったこと、もっと知ろうとしなかったこと。悔しかった。なんにも力になれなかったのが、悔しいの。
いつの間にか、ヤスフミに向き合うこと、放棄してたんだって、気づいた。だから・・・その・・・」



フェイトが、少しだけ俯く。そして・・・顔を上げた。見えたのは、頬を染めた、一生懸命な表情。見ているだけで、胸が締め付けられる。

そして、その表情が二つの月の光に照らされて・・・言葉を紡ぐ。



「もっと、話したい。色んなこと、一緒に背負えるように、分け合えるように、分かり合えるように。ヤスフミと、もっと話したい。
・・・その、直訳すると、こういう感じかな」

「・・・僕でいいの?」

「ヤスフミじゃなきゃ意味がないよっ! あの・・・えっと・・・だから・・・ね」

「うん・・・」

「デートしない?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?



あー、まてまて。いきなりすぎて意味がわからないよこれ。なんでここからデートっ!?

いや、嬉しくないわけじゃない。ただ、わけがわからないっ!!





「あの、私たちはコミュニケーションが決定的に不足していると思うの。だから、そういうのを埋めるために、デートが必要なの」

「・・・そうなの?」



いや、誰に聞いてるわけじゃないんだけどさ。だけど、フェイト的には必要らしい。力いっぱいうなづいた。

・・・やっぱりこのおねーさんは天然だよ。ひどい。ひどすぎる。

でもまぁ、断る理由・・・ないよね。うん。



「じゃあ、あの・・・うん、デートしようか。久しぶりだし、張り切ってさ」

「・・・うん。あの、私頑張るからっ!」

「いや、なにをっ!?」









ごめん、やっぱりキャラ変わってるから。というか、ひどい。ひどすぎるよこれ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・・・・・・・とにかく、それから一週間が経った。それはもう、あっという間に。





ということで・・・やってきたのは、ラトゥーアっ!!





最近、海上の人口島の上に出来た娯楽施設である。





えっと、室内プールにアミューズメントパーク。シネコンに隣には併設している豪華ホテル。・・・すごいねおい。





これ、一日で遊び切れないんじゃないの?










「本当だね。凄い・・・」

「CMとかではやってたから知ってはいたけど、すごいね・・・」





はい、フェイトも当然一緒です。一緒に施設を見上げてポカーンとしています。というか、すごいです。



まー、こうしていてもダメか。うん。今からは・・・楽しくですよ。





「じゃあフェイト、入ろうか」

「そうだね。ここでぼーっとしてても仕方ないし」










しかし・・・今回はいきなり過ぎてわけわからないよ。なんでこんな状況にっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



だ、だってその・・・鉄は熱い内に打てって言うから。とにかく、勢いが欲しかった。うん、凄く。





とにかく、私とヤスフミは一緒にラトゥーアへと入っていく。当然、お休みはとってる。というか、人事部の人がひどかった。

私が有給を取りたいと聞いて、パニック起こしたっていうし。なんというか・・・そこまでだと思われているのかな?










「・・・水着ショップ?」

「うん」

「でも、この間の旅行の時に、新しいの買ったんじゃ」





うん、買った。確かに買った。だけど・・・シャーリーに言われた。『枯れてる』と。系統が似通っていて、枯れていると。



さすがに、私だって女の子。そういうことを言われると傷つく。だから、頑張ることにした。





「なるほど、納得した」

「ごめんね。いきなり私の都合につき合わせちゃって」



正直、申し訳ない。仕事があったとは言え、こういうのは事前が定石だと思うから。



「いーよそんなの。・・・というかさ、あの」

「なに?」



そんな話をしつつも、私たちは水着ショップへと入る。ラトゥーア中にある、スポンサーの系列店。

きっと、室内施設との相乗効果を狙っているんだよね。うん、納得。



「いや、僕はなんなら外で時間つぶしてくるけど」

「・・・ヤスフミ?」





そんなのダメだよ。デートなのに、勝手な行動なん・・・あ、もしかして。





「あの、ヤスフミ。居るのが辛いのかな」

「あー、そうじゃなくてさ。その・・・」

「うん?」

「僕が居たら、選びにくくない? ほら、僕男だし」





・・・そういうことだったんだ。まぁ、確かに・・・その、サイズとかを知られるのは少しだけ躊躇う。

でも、うん・・・いいかな。それに、きっとこういうことが必要なんだ。



二人で、一緒に話しながら、色んなことをしていく。そういう事から始めないと駄目なんだ。





「あの、大丈夫だよ? というか・・・一緒に選んで欲しい」

「いいの?」

「うん。今日は思いっきりイメチェンしたいから、アドバイザーが欲しいんだ。お願いね」

「・・・わかった。なら、頑張る」










そして、二人で水着を選ぶことにした。ヤスフミ、少しだけ顔が赤い。・・・無理ないよね。こういうの、初めてだし。





というか、私も少し・・・ドキドキしてる。あの、なんかおかしいな。うん、いつもみたいに出来ない。あ、でもいいのかな?





だって、いつも・・・今までとは違う形にしていくんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、水着を無事に選び、ショップを出た。そうすると・・・もうお昼だよ〜。





「そうだね。結構時間、使っちゃった」

「でも、その分いいものが選べたしね。うん、十分イメチェン出来てるよ」

「なら、うれしいな」





・・・やっぱり、フェイトおかしい。こう、なんかいつもと違う。まぁ、保護者モードが入らないってのは、いいことなのかな?



とにかく、お昼だよね。・・・僕は、パンフレットを開く。確か・・・あった。




















そして、僕達はラトゥーアの中にあるバイキング店にきた。





つか、規模が凄い。各世界の名物料理が食べ放題ですよ。結構珍しいのもあるし。ま、デート中だから、臭いのきつくなるのはアウトだけど。










「・・・美味しいね」

「うん。レベル高いわ」



僕も、フェイトも、恵比寿顔。というか、幸せ感じております。



「というか、ヤスフミ」

「なに?」

「なんか、ちょっとだけ真剣」



・・・バレてたか。そう、僕は食べながら、真剣なオーラを出しまくっていた。理由は簡単だ。



「うちで再現するために、しっかり味わいたくて・・・」

「・・・納得した。というか、料理好きだよね」

「まぁね。作るの楽しいし」





・・・自分の作ったものを、フェイト・・・だけじゃないな。みんなが食べてくれて、美味しいと言ってくれる。それが嬉しい。



壊すことだけじゃない。戦うだけじゃない。ささやかだけど、そんな幸せを紡ぐことが出来る。そういう料理の時間が、僕は、好きだったりする。

ちょっと照れくさいから、フェイトには言えな。





「・・・なんか、隠し事してる?」





・・・なんでこう勘が鋭いのさ。恐ろしさすら感じても、それは罪じゃない。





「ダメだよ。ちゃんと話して? 今日は、たくさん話して、コミュニケーションしていく日なんだから」

「うー、わかったよ。えっと・・・」





今思っていたことを、正直に話した。すると・・・あれ、なんでそんなに微笑む?





「だって、今までそんな話してくれなかったから、嬉しいの」

「なんか、照れくさいの」

「照れることないよ。もっと、そういう話聞きたいな。あの、聞くだけじゃない。私も・・・話していきたいから」

「・・・うん、そうだね」





フェイトと、美味しいご飯を食べながら、話した。普段は話せないことを、少しだけ。うん、幸せかも。こういうの。




















・・・うん、不幸せかも。こういうの。










「というか、フェイト。ごめん・・・」

「あの、ヤスフミっ!? 大丈夫だから、落ち込まないでっ!!」





さて、僕がなぜダウナー入ったかと言うと・・・原因があります。そう、お腹が膨れたのです。



こんな状態で、僕はともかくフェイトはプールに入れないよっ! 見事に大食いしたから、ぷくってなってるしっ!!

あぁ、失敗した。もうちょっと気遣うべきだった。うぅ・・・。





「あの、それならどこかで時間をつぶそうよ。そうすれば・・・」

「大丈夫・・・?」

「うん、だと思う」





確かに、それが正解か。なら、どこがいいかな?



せっかくだから、フェイトと一緒に楽しく出来るところがいい。そうすると・・・あ、それなら。





「フェイト、映画見ない?」

「映画?」





そう、映画だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ラトゥーアという施設は、本当にいろいろなものがある。例えば、プール。例えば、バイキング。そして・・・映画館。シネマコンプレックスだ。





パンフレットに目を通しててよかったよ。すぐに思いついた。映画だったら、2時間くらいは楽勝だし、さすがにお腹もへっこむでしょ。





そうして、僕達はシネコンへ来た。行き当たりばったりなのを、フェイトに謝りつつ。フェイトは、それでもいいって言ってくれたけど。





でもね、男としては、ちょっと考えるの。うん、いろいろとね。










さて、どの映画を見るかだよね。これによって、今後のいろいろなものが変わってくる。





・・・あ、さらば電王やってるんだ。うん、却下。だって、フェイトが知らないから。なのはやヴィヴィオ曰く、見てないそうだし。

そういや・・・僕も映画見られてないんだよな。結局。うぅ、悲しい。





なら、別だ。恋愛映画・・・R18的なシーンがあったらアウトだよね。一発で雰囲気がまずくなる。ギャンブルだよね。





ホラー・・・食べた直後でこれ? 嫌ですよ私は。肉とか魚とか散々食べたのに。





SE○ AND・・・大却下だよ。面白いけど、気まずくなる。ギャンブルにもならないよ。





そうすると・・・うーん。










「あの、ヤスフミ」

「どうしたの?」



僕があれこれ考えていると、声がかかった。当然、フェイト。僕はフェイトの方を見ますな。当然。で、フェイトはある一点を指差した。



「私、アレ見てみたいな」



そうしてフェイトが指差したのは・・・おいおい。恋愛映画じゃないのさっ!? またギャンブルに出たねっ!!



「あの、シャーリーがお勧めだって言ってたから」



・・・納得した。自分の情報じゃないところかが色々。そしてシャーリー、いい仕事・・・だろうね? ちょっと怪しく感じるんだけど。



「うし、ならアレ見てみようか」



恋愛映画なんて、ほとんど見ないしね。新ジャンル開拓と考えれば、きっと楽しめるさ。

R18? まぁ、なんとかなるでしょ。



「あの、本当に大丈夫? 無理してないかな」

「してないよ?」

「でも、さっきあれこれ悩んでたみたいだし・・・」



うん、色々と。まぁ、そこはいいさ。



「無理とかしてないから大丈夫だよ。それに、シャーリーのお勧めなら、さぞかし面白いだろうし」

「あの、本当に大丈夫? ヤスフミ、アニメとか特撮好きなんだし、それでもいいんだから。見たいのあるなら、無理しな・・・痛っ!」



そりゃそうだ。僕がデコピンしたんだから。痛そうに、フェイトがおでこをさする。うん、加減しなかった。だって、また保護者モード入りかけてたし。



「あのね、フェイト」

「うん・・・」

「まぁ、見たいものが無いって言ったらうそになる」



さらば電王とかね。



「でも、それじゃあフェイトと一緒には楽しめないの。・・・これは、デートだよ?
二人一緒で楽しめなくちゃ、意味ないじゃないのさ。僕は、フェイトだけ楽しいのも嫌だし、自分だけ楽しいのも嫌」



デートの基本は、二人で楽しく・・・である。その原則、忘れちゃいけないのよ。



「僕はフェイトと二人揃って、楽しく過ごしたいの。だから、あの映画を見る。二人で楽しくね。・・・OK?」

「・・・うん、わかった。じゃあ・・・二人で楽しく・・・だよね?」

「うん」










やっと納得してくれたよ。まったく・・・。でも、いいか。





フェイト、なんか笑顔だし。うん、ちょっと嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うぅ、おでこひりひりする。ヤスフミ、ちょっと乱暴。





でも・・・そうなんだよね。





これは、デート。私とヤスフミが一緒じゃなきゃ、一緒に楽しくなくちゃ、意味ないんだ。ちょっとだけ、忘れてた。





それに、そう言った時のヤスフミの顔、いつもと違った。





いつもの、とぼけた事を言う表情じゃなくて。





戦ってる時の・・・その、あんまりなって欲しくないけど、戦ってて楽しそうにしてる時の顔じゃなくて。





真剣な時の顔でもなかった。





私の知らない顔、していた。なんて言えばいいんだろう・・・。





もしかしてアレが、男の子をしている時のヤスフミの顔なのかな?





うん、きっとそうだ。あんな顔、出来るんだね。知らなかった。





・・・違う。そうじゃないよね。





私が、知ろうとしなかっただけ。ヤスフミのことを、見ようとしなかっただけ。





きっと、何回もあんな顔をしていた。私が、見過ごしていただけなんだ。





なんだか、私・・・本当にダメだね。サリさんの言う通り、ちゃんと見ていなかった。





危なっかしくて、放って置けない。弟としての顔しか見ていなかった。見ようとしていなかった。





だから、今まで気づかなかった。こうやって、二人で過ごして、異性として見るように心がけて、ようやく気づけた。





・・・なんだろう、私。少しおかしい。いつもヤスフミと居る時の感覚じゃない。





これは・・・楽しいってことなのかな?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・映画の内容は、思いっきりベタだった。





片思いをしている男の子が居た。凄く不器用で、内気で。





その相手の女の子に、一生懸命アプローチするんだけど、ことごとくが失敗。





それでも、あきらめない。頑張り続ける。





周りから無駄と言われても、頑張る。失敗しても、頑張る。





一歩間違えたらストーカーだよね。でもさ、無理ないよ。





仕方ないの一言で、片付けられないんだから。振り向いて欲しい。それが無理なら、気づいて欲しい。





願うのは、たった一つだけ。知って欲しい。ただそれだけだった。





だけど、その願いは急展開を迎えた。





彼女には、他に片思いの相手が居た。





で、結局・・・主人公の男の子は、その子と、片思いの相手の橋渡しをした。





これは、上手くいった。今まではさっぱりだったのに、今回はちゃんと伝わった。





彼女は、幸せそうにその相手と歩いていく。だけど・・・男の子は違った。





泣いた。ただひたすらに泣いた。悲しくて、辛くて、悔しくて。ただ、泣いた。





そこで、映画はエンドロールだった。





陳腐といえば陳腐。王道と言えば王道。そんな映画だった。





そして僕は・・・泣いていた。




















「・・・ヤスフミ」





ごめん。大丈夫・・・だから。



フェイトに連れられて、劇場は出た。シネコンのロビーの椅子に座らせてもらっている。だけど、止まらない。



想像できたから。リアルに。そのおかげで、涙が・・・止まらない。

いけない、しゃんとしなきゃ。フェイトが居るんだから。うん、しゃんとしよう。





「・・・ダメだよ」





ぬくもりが包む。暖かくて、優しいぬくもり。それがフェイトの物だと認識するまで、少し時間がかかった。





「ふぇ・・・いと?」

「我慢、しなくていいよ。泣きたいんだよね?」



うん、泣きたい。まだ足りない。ちゃんと吐き出していない。だけど・・・だめ。フェイトが居るのに、こんなの・・・。



「だめじゃないよ。というか、私はヤスフミが我慢してるのなんて、楽しくない。
大丈夫だよ。ちゃんと受け止めるから。我慢なんてしないで、吐き出して。私、こうしてるから」










・・・ダメだよフェイト。





そんなこと言われたら、アウトだよ。泣く。というか、泣いた。





涙が止まるまで、フェイトの肩を借りて、ずっと・・・泣いてた。




















「・・・あの、フェイト」

「ダメだよ」

「また何も言ってない・・・」

「謝ろうとしてた。そんなこと、言わなくていいよ」





少しだけ時間が経った。ようやく持ち直した僕は、フェイトと一緒にプールを目指していた。



目が、重たい。結構、時間かかった。うぅ、本当にダメだぁ・・・。





「・・・ヤスフミ、私と居ても楽しくない?」

「え?」



フェイトの顔を見る。すると、ちょっと怒ってるような顔をしていた。え、なんでっ!?



「ヤスフミが、遠慮ばかりしてるからだよ。・・・あのね、私は今日一日居て、すごく楽しいよ?
一緒に映画を見るのも、本当に久しぶりだったから、すごく楽しめた」

「でも・・・」

「泣いたのだって、別にいいと思ってる。というか、感動したりするのは、悪いことなんかじゃないんだから」





それは分かってる。うん、分かってる・・・つもり。





「とにかく、私は楽しいよ。ヤスフミと一緒に居るの、凄く。・・・ヤスフミは、違うのかな?」

「違わない。うん、凄く楽しい」

「なら、それでいいから。もうちょっとだけ、楽にしてて欲しいな」

「・・・うん」





いい、のかな? ・・・うん、いいってことにしておこう。その、いつもと違うから、少しだけ気張ってるのかも。





「でも、凄く感動したんだね」

「・・・うん、感動っていうか、きた」





まさか、自分に重ねましたとは言えない。





「私も、少し。・・・切ないよね。ああいうの」



うん、分かってくれて嬉しいよ。色々と辛いのよ?



「・・・ヤスフミ、ああいう人が居るの?」

「人って?」

「その、片思いしてて、全然通じない人」



・・・内緒。



「だめ。ちゃんと話して」

「だーめ。話しません」

「なんで?」

「言うべきシュチュエーションってやつがあるのよ。今はすこーしだけ違うもん」

「そんなこと言わないで、教えて欲しいな。あの、ちゃんと聞くよ?」










・・・教えません。うん、少しだけ、今は勇気が出ないから。まぁ、なんていうかさ、アレだよね。










勇気が出たら、もう一回、頑張ろうかな?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、僕とフェイトは室内プールへ来た。というか、ちょっとドキドキ。





イメチェンフェイトのお出迎えだしね。少しだけ、ドキドキ。どんな水着を着るかは分かってても、それは変わらないのだ。










「ヤスフミ、お待たせ」










後ろからかかってきた声は、少しだけ緊張の色を含んだ声。そちらを向くと・・・フェイトが居た。でも、いつもとはちょっと違う。





少しだけ明るめの、青色のワンピースタイプの水着を着ているのだ。普段は紺とか黒が多いのに。





あ、脇というか、サイドのところが編み上げになっている。うーん、露出多いよね。ちょっとえっちぃ。





で、髪型も・・・ロングではなく、青いリボン(水もOKなやつ)を結んで、ポニーテールにしております。





うん、思いっきりイメチェンだよね。というか、別人だよ。










「・・・あの、どうかな?」

「うん、似合ってるよ。すごく綺麗。・・・というかさ、フェイト」

「うん?」



・・・僕、試着した時も同じ事を言ったはずなんだけど。



「あの、それでも少しだけ緊張するんだよ。やっぱり、初めてだから」



・・・ごめん、いやらしいこと想像した。だけど、罪じゃないよねっ!? これくらいは許されるよねっ!!



「ヤスフミ?」

「なんでもない。とにかく、泳ごうか。二人で、楽しくね」

「・・・うんっ!」




















それはもう、遊び倒しましたさ。





ウォータースライダーに乗ったり、流れるプールに流されてみたり、水のかけっこしたり。





ビーチボールを持ってきて、バレーを。でもさ・・・身体能力でフェイトには勝てないんだよっ! あんなスパイク受け止められるかっ!!





つか、二人で遊んでてスパイクをするなっ!! ・・・ま、そこはいい。





とにかく、今は・・・星を見ております。




















「・・・綺麗」

「うん、本当に」





実は、このプールのある室内ドーム。現在の時間、プラネタリウムのお時間がきたのだ。



なので、僕もフェイトも、ちょこっと遊ぶのを休憩して、空を・・・天井を見上げている。

目に映るのは、ぶっちゃけちゃえば偽者。だけど、輝きは本物。



見ているだけで、気持ちが広くなっていくのが分かる。前にもあったな。管理世界の出張で、野営した時に。あの時の星と、同じだ。





「フェイトってさ」

「うん」

「ミッドの星座って、分かる?」

「一応はミッド出身だから。・・・あ、分からないの?」



その言葉にうなづく。うん、分からない。まぁ、ちょこちょこって感じだけどさ。解説も入るし。



「なら、教えてあげるよ」

「あー、いいよ。なんとなく分かるし」

「だめ。というか、私が教えたいの。共通の話題、増やしたいしね」



・・・なるほど。なら、ここはハラオウン先生にご教授願おうかな。



「んじゃ、お願いします。先生」

「はい、任せてください。・・・なんてね」










ミッドの星空。今まではなんとなく見ていた。だけど、これからは少しだけ・・・違うかな。





フェイトから教わった意味とか逸話。思い出しながら見るから。きっと、この時間も思い出す。うん、また大事な記憶、増えた。




















そして、僕達はプールを出た。いや、色々堪能したしね。そして・・・お茶の時間です(マテ)





いいのよ。お茶の時間にしたいのさこっちは。というわけで、僕は友達(ヒロさん)から教えてもらった、美味しいケーキショップに、フェイトを連れてきていた。





というか、すごいよね。ラトゥーア内にも出展してるんだ。クロスフォード財団って。どんだけ幅広くやってるのさ。





・・・あー、思い出したくない話を思い出してしまった。出向、本決まりだそうです。おそらく、今週中に。





どんなことになるんだろう。いや、とんでもないことになるのは明白だけどさ。覚悟だけは、しておきますか。




















「・・・綺麗だね」

「なんというか、食べちゃうのがもったいないよ」





僕達が注文して、出てきたのはすばらしいほどに綺麗なチョコレートケーキ。



ケーキの上のちょこクリームは、まるで宝石か何かのように輝いている。そして、上にちょこんと乗っているアーモンドが、アクセントとなってかわいい。



とはいえですよ。食べないわけにはいかないので・・・。





「そうだね。それじゃあ」

「いただいちゃいますか」





二人して、にこにこ顔でケーキをぱくり。・・・ふわぁ、おいひい。



チョコのほろ苦さ。クリームの甘さ。スポンジのふわふわとした食感。すべてがパーフェクト。

すげーよクロスフォード財団。ただの金持ちの家系じゃないよ。ちゃんと商売出来る人たちだよ。





「・・・美味しいね。というか、凄い」

「うん・・・」

「ヤスフミ、また真剣な顔してる・・・」



・・・あ。



「にゃはは・・・。ついつい」

「まぁ、そういう所がヤスフミらしいのかな? 興味のあるところに、すごく貪欲なところ」

「まぁ、そのおかげで現状だもので・・・」





でもさ、凄いよねこれ。翠屋のケーキとタメ張れるんじゃないの?





「そういえば」

「うん?」

「ヒロさんとサリさんとの訓練。本当にあんな感じなの?」

「・・・そうだね」





まだ信じられませんか。いや、分かるけどね。





「そこまで頑張ってたんだね。私、何にも知らなかった」

「話してなかったしね。というか・・・余裕なかった」





いや、真面目にきつかったのアレ。何回か、命の危険を感じたもの。なんとか越えられたけど。



でも、そのおかげでね。色々と上手になった。みんなの力に、少しはなれたかな?





「あとは・・・ヒロさん達来てくれるなら、武術関係をちょっと見て欲しいんだよね」



ケーキまた一口。あぁ、幸せが身体を駆け巡るー!!



「不安なの?」



フェイトも一口。・・・表情、変わるね。それも幸せそうに。



「うん。どーもね、まだまだな感じがする。というか、魔法戦闘に頼りすぎかなと」



そして、僕は紅茶の入ったカップを手に取る。



「・・・そっか。ごめんね、私やシグナムがもうちょっと参加出来ればいいんだけど」



フェイトも、カップと手に取る。



「あぁ、いいよいいよ。仕事やら編成上の都合なんだし」





そして、二人同時に紅茶に口をつける。・・・で、同時に、こんな声が出る。





『ふわぁぁぁ・・・・』





気が抜けてるね。うん、すさまじくだ。





「・・・あの、ヤスフミ」

「なに?」

「この後なんだけど・・・」





フェイトの言葉が止まった。原因はひとつだ。そう・・・窓の外。



ちょうど窓側の席に居た僕達は、外を見る。空は鉛色。そこから何かが振る。・・・雨だ。



あー、さっきまで天気よかったのにー! というか、天気予報のうそつき。





「そうだね。本日はずっと快晴・・・・って言ってたのに」

「こりゃ、早めにかえら・・・な・・・い・・・と・・・」





早めに帰らないと、雨に濡れて風邪をひく。そう言おうとした。だけど、言えなかった。だって、窓の外の光景がおかしいんだもん。





「あー、フェイト。気のせいかな? なんか、凄く激しく振ってない?」



雨が、激しい。



「・・・多分、気のせいじゃないよ」



そうだよね。だって、海もなんか大荒れだもん。あ、雷なった。・・・フェイト。



「わ、私はなにもしてないよっ! というか、これって・・・」

「なーんか、ひしひしと嫌な予感が・・・」










・・・そして、その予感は現実となった。




















『ラトゥーアにご来場のお客様に、お知らせいたします。現在、天候悪化のため、レールウェイの運転を見送らせていただいております。
繰り返します。レールウェイの運転を・・・』




















「ヤスフミ・・・!」





フェイトの表情が引きつる。そりゃそうだ。僕だって同じだもの。



さて、最初にも言ったけど、ラトゥーアは海上にある施設です。



なので、陸続きではありません。今回、僕もフェイトも、車とかじゃなくて、レールウェイで来ました。



で、そのレールウェイが止まったってことは・・・。





『帰れないってことっ!?』










・・・こうして、始まったのだ。










季節は12月の上旬。僕とフェイトの、どきどきの一夜が、始まったのだ。




















(第21話へ続く)




















おまけ:ミイラ取りがミイラになる。・・・そういうこと、結構あるよね?




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、はやて。










「なんや。今えぇとこなんやから邪魔せんといてな」

「いや、そういうことじゃなくてさ。どうして僕はこんなところに居るんだい?」

≪尾行するために決まっているではありませんか≫





うん、そうだね。そうらしいね。でも、そういうことを聞いているんじゃないんだよ。アルトアイゼン。



なんで僕が、『恭文達のデートを尾行』するためにここに居るのかを聞きたいんだよねっ!!



・・・はやてに突然呼び出されて、来たのは最近出来た海上の娯楽施設。ラトゥーア。

別会社が建てようとしているマリンガーデンに先駆けて出来た、一大レジャー施設だ。



まぁ、そこはいいさ。先日僕とクロノがアドバイスした通り、デートをすることになったのはいい。だけど、なんで尾行する必要がっ!?





「いや、アイツがなにかやらかしたら不安やろ?」

≪私の出番が欲しかったんですよ≫

「うん、アルトアイゼン。色々と自重していこうか」





・・・恭文。まぁ、トウゴウ先生もなんだけど、凄いよね。この調子にずっと付き合っているんだから。



とにかく、僕達は二人の後をこっそりとつける。当然、バレないようにだ。・・・というか、はやて。いいのかい?

君、ヒロリスやサリエルさんのことで、そうとう絞られたそうらしいじゃないか。また勝手に行動して。





「・・・うん、みんなひどいんや。うちが完全に悪者扱いなんよ」

「いや、実際悪者だろうしね。・・・お願いだからにらまないで欲しいな」

≪まぁ、戦力強化の名目も含めて、最終的には納得していただけましたが。・・・お、入っていきましたよ≫



・・・水着ショップか。

色とりどりの水着を一緒に選んでいるね。アレだけ見ると、いい雰囲気だ。



「まぁ、二人ともこれくらいはな。というか・・・なんで顔赤いんや?」

「やっぱり、照れるんだよ。サイズを知られたり、知ったりとかはね」

「経験談か?」

「ノーコメントで」




















そして、選び終わって試着。・・・また大胆なのを着るね。察するに、イメチェンって感じかな?





しかし、恭文も中々だ。ちゃんと男の子として、頑張っていこうとしている。まぁ、ちょっと気を張りすぎではあるけどね。





そして、水着・・・購入か。うん、あれならイメチェンにはいいと思う。





そして、二人はバイキング。僕達もバレないように、こっそりと・・・だめだ。僕、完全に状況に流されてるよ。





とにかく、遠目から二人をウォッチングだ。・・・いい雰囲気だね。うーん、ただよくわからない。ここは参考意見を取り入れよう。










「そやなぁ。フェイトちゃん、やっぱねじ外れたんやないか? いつものチビスケ相手に対しての態度ちゃうで」

≪マスターもですね。それに感化されているようです。おそらく、近年まれに見るいい雰囲気でしょう≫

「なるほど・・・」





長年の付き合いのある二人がそう言うんだ。今回は相当だね。これは、期待できるんじゃないの?




















そして、ご飯を食べた後・・・お腹がアウトだったらしい。恭文、それはミスだよ。





女の子のそういう部分くらいは、しっかりとしておかなきゃ。










「・・・いや、そこをむやみやたらに気遣われても、嫌やで?」

≪ある意味無神経ですよ≫

「そうかな? 大事だと思うんだけど・・・」





まぁ、そこはいいさ。そうして二人はある場所へ向かった。そう、映画館だ。うん、これは正解だね。



ただ、見る映画は慎重に・・・はぁっ!?





「アイツ、デコピンしおったでっ!?」

≪痛そうですね。聴覚センサーにかなり生々しい音が聞こえましたよ。・・・なになに?≫

「なにか聞こえるのかい?」

≪マスターが男を見せました≫

『はぁっ!?』




















・・・なるほど、確かに正論だ。うん、株は上げてるね。いい感じだ。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのさ、はやて。










「・・・言わんといて」

≪上げた株、下げましたね≫

「見事にね・・・」





まぁ、無理もないか。思いっきりどんぴしゃな状況だし。自分に相当重ねたんだろうね。見たことのないくらいにぼろぼろ泣いている。





≪ああいうのは、本当に久しぶりですね。滅多に無い・・・いや、最近ありましたか≫

「せやな。・・・あ、フェイトちゃんがハグしとる」

「うーん、いいのかなぁ・・・。周りの視線集めてるよ?」

≪いいんじゃないですか? らしいと言えばらしいですよ≫





確かにね。少しずつ・・・か。なんというか、あの二人らしいよ。




















少しだけ時間を置いた。恭文は、どうにか復活した。ただ・・・それで保護者モードが発動というわけではなかった。





・・・うん、僕やクロノが言ったことを、ちゃんと意識しているのかな。いい傾向だ。





そして、プールだ。当然僕達も・・・はやて。





「なんや?」

「いや、いつの間に用意したのさ。その水着」





水色のビキニタイプの水着。なんというか、いつの間に用意してたのさそれは。



僕は、受付にあったレンタル物だっていうのにさ。





「気にしたらあかんよ。備えあれば憂いなしや」

≪タヌキらしい思考ですね≫

「タヌキ言うか自分っ!?」

「二人とも、静かにっ! 気づかれちゃうよっ!?」





だけど、そんなのはあの二人には無意味だった。だって、固有結界作っているんだから。



・・・・・・・・・・・・というか、プラネタリウムなんて、あったんだね。





「せやな。・・・お、なんや二人もえぇ雰囲気やな」

≪これでそうならなかったら意味がありませんよ。どんだけ小学生レベルかと、ツッコみたくもなります≫

「まぁ、そう言うと見もふたもないよね」

「・・・でも、よかったな」





はやてが、安心しきったような表情で口にする。・・・あ、もしかして。





「心配だったの?」

「・・・せやな。どうしても・・・な。ほら、最近はアイツ、ごたごたしとるしな。それで泣いたりもしとるし」

≪・・・そうでしたね。アレはヒドかったですよ≫





あぁ、噂に聞くデート事件か。ナカジマ三佐から聞いたけど、ひどかったらしいしね。



うん、確かにそれなら心配になるよ。僕だって、いまさらだけど、心配になってきた。





「・・・ちょっとずつ、進んでくれるとえぇんやけどな」

「進んでいくさ。これから、互いのことを知っていこうとさえすれば・・・ね」

「せやな。進んでいくはずやなぁ」

≪そうしないと、世界が泣きますよ≫





あはは・・・。そう言うと身も蓋もないけどね。




















とにかく、時刻は夕方になろうとしている。何事も無く、一日はおわろ・・・うと・・・。










「・・・はやて」

≪・・・あー、報告聞きたいですか?≫

「ごめん、もう必要ないわそれ」





そうだよね。だって・・・もう、結果が出ているもの。



窓・・・というか、建物の外の天気は、非常にひどいことになっていた。まさに悪天候。その見本市だよ。



・・・あ、恭文とフェイトちゃんの表情が引きつっている。それもそうか。この場合導き出されるのは・・・。




















『ラトゥーアにご来場のお客様に、お知らせいたします。現在、天候悪化のため、レールウェイの運転を見送らせていただいております。
繰り返します。レールウェイの運転を・・・』



















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだよね。そうくるよね。



















「・・・ロッサ」

≪つまり、これは・・・アレですよね≫

「うん、そうだね」





そう、つまり僕達は・・・。というか、僕達も・・・。





『帰れないってことっ!?』

≪正解です≫










そして、始まった。










季節は12月の上旬。長い一日が始まった。










そう、色々な意味で、僕達にとってもターニングポイントとなった一夜が。




















(本当に続く)




















あとがき



ヒロリス「はい、そういうわけで第20話。どうだった? あー、自己紹介が遅れたね。私は今回は出番なしのヒロリス・クロスフォードだよ。
やっさんとアルトアイゼンが、あの状況だからね。ピンチヒッターってことで」

メガーヌ「はい、そして相方は私っ! あとがき初登場のメガーヌ・アルピーノですっ!!
いやぁ、どきどきよっ! すっごいどきどきよっ!?」





(無敵のお母さん、はしゃぎまくる。それを見て、最強の姉弟子、こめかみを押さえる)




ヒロリス「いや、なんつうかさメガーヌ。ちと落ち着きなよ。別にアンタがそうなったわけじゃ・・・」

メガーヌ「でも、これで一気に成立させちゃえば、安泰よ? あとはもう固有ルート一直線なんだからっ!!」

ヒロリス「そうそう上手くいけばいいけどね。・・・つか、ロッサやはやてちゃんまでなにやってるのさ?
心配だからって尾行・・・」

メガーヌ「私もいきたかったなぁ。どんな感じかぜひ見たかったっ!!」

ヒロリス「アンタ・・・。ほんとに変わってないってどういうことさ」





(最強の姉弟子。あきらめたように台本をめくる。そして、告げる)





ヒロリス「とにかく、次回はこの後半戦だね。絶海の孤島に閉じ込められた二組がどうなるか。見ものってことで」

メガーヌ「そうね。そこは楽しみだわ。・・・エロ、あるかしら」

ヒロリス「あっても書けないよっ! とにかく、本日はここまで。お相手は、ヒロリス・クロスフォードと」

メガーヌ「メガーヌ・アルピーノでしたっ! それじゃあ、またね〜♪」










(二人して画面に手を振る。そして、そのままフェードアウト。
本日のED:『雨な歌。こう、雨っぽい歌』)




















恭文「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、フェイト」

フェイト「うん・・・」

恭文「とにかく、泊まるところの確保、いくよっ!!」

フェイト「うんっ! あ、それではまた次回っ!! あなたのハートに・・・」

恭文・フェイト「ドライブっ! イグニッションっ!!」





(おしまい)







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