[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Report・IF After 『He and her new step』



「・・・・・・・・・・・・もう、大丈夫?」

「えぇ。ただ、またちょっと泣きそう。・・・・・・アバンチュール、おしまいだもの」



それはシルビィ。シルビィは、手を差し出さない。ただ、両手の後ろに回している。



「そうだね。というか、入院中はありがとね。ホントに毎日来てくれて」

「ううん。・・・・・・ね、ヤスフミ」

「何?」

「私、あなたの事・・・・・・本気で好きになりかけてた」



・・・・・・うん、そうだね。なんかこう、そういうの気づいてたから。



「だめよね。アバンチュールだって分かってたのに、本気になっちゃうんだもの」

「シルビィ、あの」

「何も言わないで? ・・・・・・前にも言ったでしょ? 一瞬で燃え上がって、綺麗なまま散りゆく淡い恋もあるって。
私、本当に嬉しかったの。私のワガママなのに、それでもヤスフミと一緒にそういう恋が出来たもの。だから」



シルビィは、瞬間的に踏み込んで抱きついてきた。それで・・・・・・そのまま、僕の唇のすぐ横にキスをする。

唇を離して、すぐ目の前にシルビィの顔。吐息がかかるくらいの距離で、とてもドキドキする。



「ヤスフミ・・・・・・お願い」

「同じ、ように?」

「うん」





だから僕は、シルビィの唇のすぐ横に・・・・・・ううん、シルビィの唇にキスをした。

初めての女の子との口づけは、凄く甘くて・・・・・・柔らかくて、幸せな気持ちになった。

僕は数秒の口づけの後、シルビィから顔を離す。シルビィは目を見開いて、泣いていた。



・・・・・・その、色々考えた。アバンチュール終わっちゃうなとか考えて、かなり色々。





「・・・・・・・・・・・・ヤスフミ、ダメよ。アバンチュールはもう終わりなのよ?」

「そうだね。だから・・・・・・本番、行こうよ。僕、もう覚悟を決めた」



この3ヶ月間、ほぼ毎日シルビィと居て・・・・・・その、好きになりかけてる。

もうだめ、抑えられない。僕は、この人の事がもっと知りたい。



「シルビィ、僕じゃだめ? というか、遠距離恋愛は趣味じゃないかな。
僕は・・・・・・シルビィがいい。シルビィの事、今よりももっと知りたいんだ」



顔を近づけ、囁くように話す。シルビィの吐息が顔にかかって、くすぐったい。



「・・・・・・そういうのも、趣味かも。でも、もうちょっとだけ・・・・・・ヤスフミの気持ち、確かめさせて?
一回のキスだけじゃ足りないわ。アバンチュールから本番にするには、もっと刺激が必要なの」

「分かった。ならその・・・・・・頑張る」










そうして、また・・・・・・二回目のキス。今度は、シルビィがリードしてくれている。





柔らかい唇が凄く甘くて、頭の中が痺れてくる。それでも、一杯求める。





僕・・・・・・この子とはアバンチュールなんて出来ないから。もう、本気の恋愛になってる。




















『とまとシリーズ』×『メルティランサー THE 3rd PLANET』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々


Report・IF After 『He and her new step』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・メルビナ長官、まぁ・・・・・・あの、よかったんですか?」

「仕方なかろう。あの場で別れを惜しんで何度もキスしようとしては、ああするしかない」

「まぁあたしら全員、三日は特に仕事もないしな。今日一日くらいだったら大丈夫か」



現在、我々は次の仕事場である世界に到着した。しかし・・・・・・のどかな風景だ。

だが遠くに見えるEMP分署と同デザインの新分署が、非常にミスマッチだな。



「しかしアイツ、いつフェイト執務官からシルビィに乗り換えたんだ?」

「長官、私達が親和力に魅入られている間に、何があったのでしょう」

「あー、メルビナにサクヤ、そこを説明すると・・・・・・こう、非常に長くてな」

「そうね、相当長いわよね」



ナナとジュンが非常に疲れた顔をするのは無理もない。あの二人の息の合い方は、俺でもおかしいと思う。

なんだかんだでガンナーと近接型で、呼吸が合うのだろうか。いや、それにしても・・・・・・うーん。



「でもま、別に問題はないのよね。だってフェイト執務官と付き合ってるわけでもなんでもないし」

「そうなんですよね。心変わりはよくないですけど、正式にお付き合いしている人は居ないんですから。・・・・・・それに」

「フェイトお姉ちゃんは7年スルーなのだ。それに『いやぁぁぁぁぁぁっ!!』でドーンなのだ」

「あぁそうだよな。あたしさ、あんな風に言ったけど見ててマジで泣きそうだったんだよ。
アイツ、きっと切実に言ってたのに即でぶった切るだろ? アレだよ、鬼畜だって」



言いながら、メルビナとサクヤ以外のメンバーは涙目になる。かく言う俺も同じくだ。

・・・・・・蒼凪、お前よくアレで7年頑張れたな。俺だったら1時間で諦めるぞ。



「・・・・・・でも、シルビィ先輩と恭文さんが・・・・・・あぁ、これって遠距離恋愛ですよね?」

「シルビィ好みの『燃えるようなラブロマンス』なのだー。シルビィ、良かったねー。
あ、でもでも・・・・・・そうなるとアンジェラ、恭文を『お兄ちゃん』とか呼ばなくちゃいけないの?」

「アンジェラ、お前はまた『お兄ちゃん』の呼び方が艶っぽいなっ! 俺は色々ビックリだぞっ!!」










とにかく別れを惜しんで接吻を繰り返そうとしていた蒼凪とシルビィは、長官がその場から叩き出した。

そしてリインには本局に居るというご家族・・・・・・シャマル医務官に引きとってもらった。

なお、リインから話を聞いたシャマル医務官が鬼の形相で俺達に詰め寄ったのは、実にいい思い出だ。





蒼凪、とりあえず俺はお前がシャマル医務官に何をしたかは、全く知らん。というか、知りたくもない。





ただ・・・・・・シルビィを五体満足でこちらに送れよ? シャマル医務官は相当にご立腹だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、とりあえず・・・・・・私達、両想いになったのよね」



メルビナさんに蹴り飛ばされる形で、僕とシルビィは一日時間をもらった。

まぁ、あの・・・・・・お互いに色々と気持ちを確認しろという事らしい。



「そ、そうだね」



現在、僕達はミッドの中央本部に入って・・・・・・あぁ、久々だよ。

僕達の目の前には、青い空と二つの月。僕達、ミッドに帰って来たんだ。



「・・・・・・あー、みんなの前で私にキスしたの、今頃恥ずかしがってる」

「だ、だってその・・・・・・ファーストキス、だったし」

「そ、そうよね。あははは・・・・・・うん、そうなのよね」





・・・・・・シルビィ、なぜ慌てるの? 僕、色々気になるんだけど。

とにかく、シルビィと・・・・・・その、そのまま手を繋いで歩く。

というか、さっきからずっとそうしてた。僕が右手で、シルビィが左手。



シルビィの手は銃を扱うせいか、ほんの少しだけ大きめ。



でも、その手に包まれる感覚がまたなんとも言えず、楽しい。





「でも、どうして? 普通に『好き』って言ってくれるだけでも良かったのに」

「その・・・・・・それだとか、同じようなキスだとシルビィに伝わらない感じがして」

「そうなんだ。やっぱりヤスフミ、テクニシャンよねー。こう、女心をくすぐるツボを心得てるもの」

「あははは、心得てても7年スルーなんですけど。てゆうか、多分心得てないと思うな」



そこだけは、自信持って言えるわ。でも・・・・・・うん、なんかなぁ。

だめだめ。フェイトの話は、今はなし。だからシルビィだって、ちょっと視線を厳しくするもの。



「ね、ヤスフミ」

「何?」

「機会があったらさ、フェイト執務官に言ってみたら? 『実はずっと好きだった』ーって」

「はぁっ!? なんでっ!!」



シルビィは、歩きながらも右手の人差し指をピンと立てて、お姉さんキャラでこう言い切る。



「そういうのってね、やっぱり悔いだったり傷になりやすいんだ。私も一応経験あるの。
ヤスフミとフェイト執務官は、姉弟ではあるもの。だから、いつか伝えた方がいいと思う」

「・・・・・・迷惑じゃない?」

「焼けぼっくいに火がつかなければ大丈夫よ。
それにそんな悔いを残されて、ずーっと引き摺られる方が・・・・・・私は嫌かな」

「そういうものか。なら・・・・・・考えておく」

「うん」










時刻は丁度朝の11時。というか、お昼間近。やっぱり、まずはお昼だよね。





あ、そうだ。せっかくミッドに戻ってきたんだし、ここはやっぱり・・・・・・アレだよね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・アイツがGPOのシルビィ捜査官とくっついたっ!?」





この間のアレコレもようやく片付き始めて、うちは止まっていた部隊新設の準備を再開。

まぁ、フェイトちゃんがヴェートルの『独立』の事とかで、相当参ってたりするけどな。

その辺りはまたうちやシグナムでフォローするとして、仕事仕事・・・・・と思うてる時やった。



普通にシャマルとこっち戻ってきたリインから通信がかかってきた。で、用件がそれ。





『そうらしいんですっ! 私というものがありながら・・・・・・ありながら、転送ポートの前で二度もブチューってっ!!』



はぁっ!? アイツ、チューしおったんかいっ! フェイトちゃんのためにずっと取っといた初物をっ!!



『リインは衝撃的だったのです。というか、ヒドいです。リインだってほっぺた止まりなのに。
ほっぺたしかしてくれないのに、シルビィさんは唇・・・・・・どうしてですかっ!?』

「あほっ! 当たり前やろっ!? アンタまだ7歳やんかっ!!
普通にそれでチューかますほど、アイツは人として堕ちてへんよっ!!」



もうな、それだけは救いやて。アイツがマトモな感覚でよかったわ。ロリコンじゃなくて、良かったわ。



「・・・・・・ちょお待とうやっ! ほっぺたにチューってなんやっ!? アンタら、そんな事しとったんかいっ!!」

『おやすみやおはようのちゅーなのです。問題ないのですよ』

「大有りやっ! くそ、アイツはやっぱ鬼畜やなっ!!」



もうアイツ、ナチュラルにうちの大事なもんをどんどん奪いとっていくんやけど、どないしたらえぇかなっ!?

リインもそうやし、シャマルかてこれやもんっ! いつぞや突然に『メイドになる』言うた時は、うち泣いたしっ!!



『とにかくはやてちゃん、はやてちゃんの権限ですぐに手数を揃えてください。私達は恭文くんとシルビィ捜査官にお話を』

「アホかっ! そないな事で権力使えるわけないやろっ!!」

『はやてちゃん、一体なんのために出世したんですかっ!? それも出番が少なくなるというリスクを背負ってまでっ!!
こういう時のためでしょっ!? こういう時に何も出来なかったら、影が薄くなるリスクを背負った意味がありませんっ!!』

「やかましいわボケっ! てゆうか、普通に通信かけてっ!? 普通に通信かけて問い詰めてやっ!!」










まぁ、アイツの事やから、普通にこの事態を予想して電源切ってはいるやろうけどな。

でも、シルビィ捜査官・・・・・・あぁ、確かにアイツの好みやな。金髪でスタイルよくて、その上巨乳やし。

フェイトちゃんやシグナム程やないけど、うちやなのはちゃんよりは大きいと思うんよ。





そうやなぁ、多分シャマルくらいはあるな。85のE・・・・・・いや、ギリFくらいか?





やばい。権力使うわけにはいかんけど、うちも気になってきたわ。仕事あるんに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あ、美味しい。私、このカレー屋さん知らなかったんだけど」

「シルビィ、ご両親は」

「あ、もちろんミッドよ。でも・・・・・・うぅ、ここは見逃していたなぁ」



シルビィと一緒に、ヒロさん達とよく来るカレー屋さんに来た。なお、メニューはシュリンプカレー。

うむぅ、シルビィが喜んでくれて嬉しいなぁ。というか・・・・だめだめ、唇見つめちゃ。



「でも」

「でも?」

「なんだか、まだ信じられないな。ヤスフミが私に本気になってくれたなんて。
私、それは無いかなーって思ってたから。ヤスフミ、一途だもの」

「・・・・・・ダメ、かな」

「ダメじゃないわよ。多分、まだなりかけって感じよね?」



僕はシルビィの言葉に頷く。うん、そんな感じ。シルビィとの時間が楽しいから、その・・・・・・そうなれたらいいなって。



「それだけで充分。これから少しずつ、気持ちを育て合っていけばいいから。
まぁ、距離の問題は大きいけど・・・・・・それも楽しみつつよね」

「そうだね。でも、何気にそういうのは楽しいよね」

「分かるの?」

「フェイトの仕事が仕事だもの。普通に距離は開くよ」



そう言うと、シルビィが納得したように頷いた。それで二人で、またカレーを食べ始める。

・・・・・・あぁ、クロノさんの言っていた事は、こういう事だったんだなぁ。やっと戻ってきた感じがする。



「あ、それとクリステラさんにも報告しないといけないわね」

「へ?」

「ほら、この間の飲みの時に教えてくれたじゃない。婚約者が居るって」



そう言えば・・・・・・あぁ、話してる話してる。あの、昔の事とかも結構話したから。

僕、何気にシルビィには心開いてるんだよね。・・・・・・なんか、不思議。



「・・・・・・そっか。アバンチュールが終わったら、婚約者2号にシフトすればよかったんだ。あ、ここは盲点だわ」

「その盲点気づく必要なくないっ!? 普通に僕達、もうその・・・・・・両想いなんだし」

「それもそうね。でもヤスフミって、やっぱりフラグメイカーでモテるのよね。
クリステラさんもそうだし、地球の方にも仲の良い女の子多いし。あ、それと現地妻」

「その人達の事は言わないでー! 何気にどう報告しようとか、かなり考えてるんだからー!!」



シルビィの意地悪な言葉に、僕は頭が痛くなる。だって・・・・・・だって、普通に言うしかないよ?

でも、美由希さんはまぁともかく、シャマルさんとすずかさん辺りはやばいかなとか色々さ。



「私、ちょっと心配だな。浮気とかされたら嫌だもの。特に現地妻」

「う、浮気って・・・・・・しないよ。その、そういうお誘いはしっかり断ってるし」



なお、意地悪なだけじゃなくて視線も厳しい。なので、僕もここはハッキリと言う。

・・・・・・だってさ、普通に怖いもの。あのノリは怖いもの。それに僕、本命居たし。



「まぁ、とにかくちゃんと話すよ。明日以降」

「あ、ダメよ。そういうのは早い方がいいんだから」

「じゃあシルビィは、今ここでフィアッセさんやシャマルさん達にあれこれ話す方がいいの?」



ナンを両手でちぎりつつそう聞く。聞いて・・・・・・シルビィは少し考える。そして数秒後、答えを出した。



「それは嫌かな。だって、今日は両想いになった初めての日だもの」

「でしょ? だから今日一日は、シルビィの事だけ見てたいの」

「ふふ、ありがと。じゃあ、ずーっと見ててもらおうかしら。私のことだけ・・・・・・ずっと」










なんて話しながらも、またカレーを食べる。冷めない内に、沢山である。





久々のミッドの味は・・・・・・やっぱり懐かしくて、幸せで、楽しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・自宅謹慎食らいました。実質、新部隊設立まで教導出来ません。

うぅ、ひどいよ。確かに色々問題行動しちゃったけど、私だって被害者なのに。

というかというか、私そこまでだったの? レイジングハートも、口聞いてくれないし。





とりあえず、自宅(本局の寮)のリビングで落ち込んでいると・・・・・・更にキツいニュースが飛んできた。










「・・・・・・恭文君がGPOの人とお付き合いを始めたっ!?」

『そうらしいんよ。それでなのはちゃん、アンタんとこにもシャマルとリインから連絡来るやろうけど、相手したらあかんから』





確かGPOの人って美人揃いで・・・・・・・誰だろう。というか、フェイトちゃんはどうしたの?

いや、今回の事でアレコレあったから、もう見切りつけて・・・・・・とか?

あ、それならありえる。だって、鬼畜なことに7年スルーだし。私、さすがにもう見てて泣きそうだった。



恭文君がガマン強い子だから今まで大丈夫なだけであって・・・・・・あぁ、そっか。



そのGPOの人は、そんな恭文君の気持ちを揺らがしちゃうくらいに魅力的な人なんだ。





『あの二人・・・・・・つーかシャマルが、恭文とシルビィ捜査官から話聞こうとして必死になっとるんよ。
話聞いたら今日一日は邪魔したらアカン言うんに、普通に空気読まんし』

「ま、まぁシャマルさんは・・・・・・アレだしね」



とりあえずここが海鳴じゃなくて良かったと思った。だって、海鳴だったらすずかちゃんやお姉ちゃんも絡むよ?

そうなったらさしもの恭文君だって逃げられない。別れを惜しむ一日が、一瞬で逃亡劇に早変わりだもの。



「はやてちゃん、心中察するよ」

『ありがとな。で、そっちはどないな感じや?』

「正直あんまり良くない。というか、どういう事なの? 私、ワケの分からない事ばかりだよ。
公女や公子も表舞台から姿を消して、あんなに高かった人気ももう下火で」



そう言うとはやてちゃんが困った顔をする。・・・・・・うん、リンディさんやフェイトちゃんと同じ反応だ。

なんだか思い返すとおかしいの。まるで世界中が熱に浮かされていたような感じがして、怖くもある。



『ごめんなぁ。ブッチギリの部外者やのに担ぎ出されてアレやとは思うんやけど、そこはアンタには話せんのよ』

「・・・・・・カラバの王族絡みで、何かあったんだね」



はやてちゃんは何も言わない。ただ、それが公女達が表舞台から姿を消すような事態なのは分かった。

これでも私、局員で捜査官の真似事をしたこともあるもの。それくらいはまぁ分かる。



「分かった。なら、もう何も聞かない。これ以上聞いても、はやてちゃんを困らせるだけだもの」

『ごめんなぁ。一応うちや元凶のリンディさんからはアレコレ話しとるんやけど』



これは教導隊の先輩達に対してってことだよね。あ、そこはありがたいかも。



『でも、まだまだ難航しそうでなぁ。いや、これはほんま悪かった思うわ。
リンディさんも同じくやから近々謝罪行く言うてて・・・・・・・まぁ、一発殴るなりしてえぇよ』

「殴りはしないけど・・・・・・うーん、やっぱり不可解な部分は拭えないなぁ。またリンディさんに色々聞いちゃうかも」

『そやなぁ、それくらいして困らせるくらいはえぇやろ。あ、うちも同じくよ? 友達やしな』

「・・・・・・ありがと」










よくよく考えたら私なんかに対して公女が、直接あんなお願いをするのもおかしい話なんだよね。

それにいくら本局の高官とは言え、リンディさんに対してもだよ。アレ、圧力と同じだから。

こうやって冷静に考えてみると色々おかしいところはあったのに、なんで気付かなかったんだろ。





とにかくその辺りも含めつつまずは・・・・・・レイジングハートへの謝罪かな。まだ足りないから。





というか、なんだろ。なんだかこう、胸の中の穴がまた大きくなった感じがする。・・・・・・うーん。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ミッドは久々というシルビィと、楽しく徒歩デート。一箇所で長く遊ぶより、二人で色んな所を見て回る。

それでどういうわけかゲームショップによってアレコレ見て回ったり。

シルビィも、何気にゲームとか好きだからなぁ。アンジェラ曰く『休みの日は一日中こもってる』らしい。





というか、シルビィもウィハンやってるとここで聞いて、ビックリした。あ、それならゲーム上で会えるな。

二人でそんな話をしつつも二人だけのデートを楽しんで・・・・・・現在、時刻は夕方。

もうすぐ暗くなるような時間で、3ヶ月前とは全く違う日照時間に少し驚きつつも、僕達は歩く。





目指す場所は、僕の家。その、えっと・・・・・・まぁあの、色々話したりしたから。










「・・・・・・もっと時間があれば、ヤスフミのミッドの友達とかにも会わせて欲しかったのになぁ」

「そうだね、それは残念。あ、でもヒロさんとサリさんはウィハンやってるから、ゲーム内なら」

「あ、それもいいわね。というか、それだとまた毎日お話出来るかも」

「・・・・・・新しい職場、平和な感じなの?」





一応、新規に管理世界に認定されたところがシルビィ達の新しい職場。

ただ、ヴェートルみたいなカオスな感じではない。それで平和でのどかな所とか。

魔法文化や管理局の存在を現地政府は快く受け入れて、その世界の人々も同じく。



そういう意味では、一種の閑職的な所に派遣されたとも言える。・・・・・・やっぱ、ここは最低だな。

ヴェートルが『独立』したのはいいことだと思うけど、あんまりに仕打ちがひど過ぎる。

管理局は好きにはなれない。あんなに頑張ってたみんなを、あんな簡単に切り捨てて・・・・・・腹立つ。





「そうね。ヤスフミもデータで見てるだろうけど、実際はそれ以上という感じ。
だけど、それでも私達や管理局が頑張らないとダメな事件は起きてる」



シルビィは星が見え始めた空を見上げて、どこかスッキリした顔をしてる。

そこにはもう、あの時みたいな泣き顔の色は見えない。



「それでね、私ちょっと思ったんだ。GPOの仕事って、今回みたいな『独立』を目指すことなんじゃないかって」

「独立?」

「ヴェートルみたいな形じゃなくても、やっぱりいきなり『この世界は次元世界の一部だー』って言われたら、だいたい戸惑うと思うの」



まぁ、そうだよね。フェイトやリンディさん達辺りから見ると、ヴェートルが過剰反応してたという意見もある。

でも、逆を言えばそういう反応は確実にあるのよ。僕も資料とかで色々見たから。



「だからこそ管理局が必要なんだけど、管理局って軍隊色が強い組織じゃない?」



歩を進めながら、シルビィの言葉を考え・・・・・・色々思い出す。うん、そこは僕も納得だ。



「大きさも相当だし、どうしても小回りが利き辛い。結果、取っつきにくい印象を与える。
もちろんフェイト執務官や八神二佐のような良識的な人は居るだろうけど、全部が全部じゃない」

「うん、そうだね。腐った奴らは居るよ。そういう奴らと何度かやり合った事あるし」

「だからこそGPOだと思うんだ。GPOは局よりもその世界の人達寄りになるべきだと思う。
『異星人』の集まりであるGPOが、率先して理解のために手を伸ばすの」



シルビィの左手が強く握られる。それだけじゃなくて、歩調も心なしか軽やかになる。

僕はシルビィと右手を繋いでいるから・・・・・・そういうのがよく分かる。



「それでその世界の人達が、まぁ・・・・・・前にも説明したような次元世界の認識ね?
そういうのをしっかり持った上で、そこの世界の管理局とも本当に上手くやれるようになったら」

「・・・・・・それが独立。シルビィ達の仕事は仲介というか仲を取り持つというか、そんな感じか」

「うん。ヤスフミに撤退の事話してから色々考えて・・・・・・そうだなーって気づいたんだ。
そう考えると、私達のヴェートルでの仕事は成功だった。それだけは自信を持って言える」





確かに中央本部は撤退の話が出始めているけど、ヴェートル現地政府は変わり始めてる。

守り手でありたいという気持ちはそのままに、ほんのちょっとだけ柔らかくなったから。

どうやら変わってないのは管理局だけらしい。ただ単に親和力の影響がなくなったというだけ。



ヴェートルの独立はやっぱ嬉しかったけど、それでも・・・・・・腹が立たない部分が無いわけじゃない。



フェイトにはあんな風に言ったけど、それでもやっぱり色々と感じるところはあるよ。





「でもそうなると」

「うん?」

「GPOはどこの世界でも安住出来るわけじゃないよね。通りすがりのままだ」

「そうね。そこは・・・・・・ちょっとだけ寂しいかも。でも、それでもいいんじゃないかな」



シルビィが僕を見下ろす。20センチ近く高い僕の・・・・・・その、彼女だよね。

僕の彼女は、優しい目をしている。その瞳は、やっぱり綺麗で優しい色。



「通りすがりでも、頑張りは無駄じゃなかった。無駄になんて、なるわけなかった。
だから私、ランサーを続けられる。その『通りすがり』が私のやりたい事だって、自信を持って言えるから」

「・・・・・・そっか」

「えぇ。あ、そこは私だけじゃないわよ? 長官に補佐官、アンジェラにサクヤにナナちゃん。
ジュンにパティとランディも同じ。だからみんなでまた頑張っていける。それに」



シルビィが足を止める。そしてそのまま開いた右手で、僕の肩を掴んで抱きしめる。

シルビィの身体の柔らかさと、甘くて温かい・・・・・・お日様みたいな匂いが、鼻をくすぐる。



「私・・・・・・最後の最後で、こんなに素敵な『運命の出会い』と巡り合えたもの。
失恋ばっかりで、報われない恋には慣れっこだったから・・・・・・嬉しい」

「えっと、あの・・・・・・ありが、と」

「ううん、それはこっちもよ。・・・・・・ね、ヤスフミ。私、明日のお昼には戻らなくちゃいけないんだ」



知ってる。そういう風に、メルビナさんからメールが来たらしい。



「でも、逆を言えばお昼までは一緒に居られる。このままヤスフミの部屋に泊まっても・・・・・・いいかな」



身体の熱が一気に高まる。さすがにその、言っている意味が分かるわけだよ。だから、心臓の鼓動も高鳴る。



「私の心も身体も、全部預ける。それで私を一晩中、あなただけのものにして欲しいの。
それで、沢山教えて? 私達、本当に両想いになってるんだって。朝まで・・・・・・沢山」

「・・・・・・そ、それはあの」

「もう。こういう時は『うん』って言うものよ?」

「いや、そう言いたいんだけど・・・・・・よくよく考えたら、3ヶ月近く放置だしホコリとかって大丈夫かなーって」



そう言うと、シルビィが身体を離して・・・・・・納得した顔になった。



「確かにそうよね。人が居ないと、家ってすぐ痛むらしいし。じゃあ」

「ホテルとかの方がいいかも」



それならまだ、大丈夫。でもあの・・・・・・やばい、普通にすごい具体的過ぎない?



「大丈夫よ。一緒にお掃除すれば、すぐに元通りよ」

「いや、お掃除って・・・・・・えぇっ! そ、それはいいのっ!?」

「いいの。ヤスフミの自宅にも興味はあるし、せっかくだし・・・・・・ね?」










結局一緒にお掃除することになった。なお、一応警戒しながら家に戻った。

だって、誰か居る可能性もあるし。リインとかも放置でメルビナさん任せだったし。

だけど僕達は無事に家に入って、さほど汚れていなかった部屋を軽くお掃除。





入る前にスーパーに寄って買い込んだ食材で、あれこれ料理を作って二人で食べる。





それで・・・・・・互いにパジャマに着替えてから、そういう時間が始まった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



圧縮機にかけていたので、普通にそのままふかふかだったお布団の上、シルビィと一緒に座り込む。

シルビィは薄手の青のパジャマ。だから柔らかなラインが服の上からでも見える。

髪を下ろして、パジャマのボタンを三つほど外す。だからその、谷間・・・・・・あの、色々気遣ってくれてるのかな。





とにかく僕達はそのまま足を崩して、唇を重ねる。舌を絡めるようなディープなキス。





というか、破壊力がヤバすぎる。普通に頭や心の中が・・・・・・シルビィでいっぱいになってく。










「・・・・・・ん」



シルビィが吐息を漏らしながら、唇を離した。それに寂しさを感じるのは・・・・・・さっきまでのキスが本当に良かったから。



「ヤスフミ、キス・・・・・・上手ね。私、ヤスフミのキスはかなり好きかも」

「そ、そうかな。かなり余裕ないんだけど」

「そうなの? うーん、やっぱり天然ジゴロだからなのかな」



何の話してるのっ!? てゆうか天然ジゴロってなにっ!!



「でも、ちょっと不満はあるかな」

「・・・・・・乱暴だった?」

「ううん、違う。だって私達、さっきからいっぱいキスしてるのよ?
それで・・・・・・これからそうなろうとしてる。だったら」



言いかけて、シルビィの言葉が止まる。止まって、そのまま意地悪く微笑みかける。



「ここまで言えば分かるわよね? じゃあまた」





そのまま、シルビィが僕の頬に両手を添えてまた唇を重ねてくる。というか・・・・・・うぅ、気持ちいい。

さっきと同じようにシルビィとキスしながらも、僕は色々考える。考えて、とりあえずの結論を出した。

そっと、さっきから気になっていたシルビィの胸元に・・・・・・の前に、そっと左の頬を右手で撫でていく。



それからゆっくりと口づけを続けながら、シルビィの耳や首筋を撫でて、指先で擽るようにもする。

シルビィはそれがくすぐったいのか、唇を重ねながらも吐息を漏らす。それがまた心地いい。

それでそっと、本当にそっと・・・・・・手を下ろして、シルビィの胸に触れてみる。シルビィの身体が少し震えた。



初めて触ったシルビィの胸は、とても大きくて・・・・・・なんて言えばいいんだろ。

柔らかさより張りがある感じなのかな。しっかりと重さというか質量があって、指を軽く動かすと弾かれちゃう。

僕は唇を少し離す。興奮してきて息が荒くなってるけど、ここは気にしない。



だってそれはシルビィも同じだから。シルビィ・・・・・・顔を真っ赤にして蕩けた目で僕の事見てる。





「これで、いいかな」



言いながらもそっと、まず撫でるようにシルビィの乳房に触れる。

温かくて張りがあるけど柔らかくて・・・・・・ふかふか。



「えぇ、正解よ。というかヤスフミ」

「何?」

「私の胸・・・・・・固く、ないかな」



少し不安そうな顔でシルビィがそう聞いてきた。僕は首を傾げてしまう。



「鍛えてるせいかな。こう、サクヤとかジュンとかフィニーノ補佐官とかに比べると・・・・・・固いなって。触ってて、気持ちよくないわよね」

「・・・・・・そんな事ないけど。てゆうか、どうしてそこを今?」

「・・・・・・だって、ヤスフミの初めての女の子になるのよ? それでその・・・・・・嫌な思いはさせたくないし」



そう言ってくれたシルビィが凄く可愛くて・・・・・・そっと不安げなシルビィの唇に口づけをする。

さっきまでの濃厚なのじゃなくて、優しく『ありがとう』という気持ちを込めた上で。



「ありがと。でも、ほんとにそんな事ないよ? シルビィの胸、僕は好き。
張りというか強い弾力があって、触ってて面白い」

「お、面白いって・・・・・・その、感想としてはあんまり喜べないんだけど」

「うー、ごめん。でも女の子とこうなるの・・・・・・ほんとに、初めてだから」



どう言っていいか分からない。そう言おうとしたけど・・・・・・やめた。

だって言わなくてもシルビィには伝わったみたいだから。表情が嬉しそうなものに変わった。



「んー、それなら許してあげる」

「ありがと。それであの、えっと」

「ん、もっと触っていいよ。大丈夫、私お姉さんだもの。ゆっくり、時間をかけて・・・・・・私も教えてあげる」



シルビィが言いながら、そっと僕の肩にかけていた両手を回して、僕のことを強く抱きしめる。



「愛し合い方だけじゃなくて、あなたと同じように私の気持ちも。いっぱい、いっぱい教えるから。・・・・・・ヤスフミ、大好きよ」










こんな感じで一晩恋人タイムを過ごして・・・・・・シルビィに沢山今の僕の気持ちを伝えた。





というかあの、どうしよう。シルビィ凄く綺麗で可愛くて・・・・・・このまま帰したくなくなっちゃった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『しかしクロノ提督、今回はお疲れ様でした』

「いえ。・・・・・・むしろ申し訳ないと思っているくらいです、騎士カリム。
あなたの予言詩がありながら、僕達は何の対策も打てなかった」





実は今回のこと、騎士カリムの能力でも出ていた。

『親和の鎖、世界を緩やかに戒める』・・・・・・などと言ってな。

だが、それでも有効な動き方がほとんど出来なかった。



だからこそ、自分の執務室で騎士カリムと通信ではあるが反省会というわけだ。





『仕方ないと思います。親和力の能力があまりにも無茶苦茶なんですから。
それにこちらの予言解釈に関しても不備があった事は否めません。これは反省ですね』

「いえ、例えそうだとしても現場の僕達の不手際は変わりません。・・・・・・それで」

『クロノ提督もそうですがリンディ提督が色々とお忙しい間に、準備は整えております』



軽くにこやかに言われて、僕は苦笑するしかない。まぁ、確かに母さんはそうとう忙しかっただろう。

公女の信仰者になったせいか、普段は抑えている色々な感情を躊躇い無く吐き出してたからな。



『隊舎に関しても、ようやくですけどいい立地条件のところを見つけました。
あとは人員に関してですが・・・・・・仕方ない事とは言え、身内の方が多いんですよね』

「えぇ。・・・・・・何が起こるか分からない以上、チームワークに関しては徹底する必要がある。
これに関してははやてとも何度も協議した上で決定・・・・・・って、これは失礼。ご存知でしたね」

『私もはやてから何度も相談は受けていますから』



なんというか、色んな意味で最低だと思う。僕達はやはり・・・・・・公女となんら変わりはない。



「いっそ降格して、ランクや立場を捨ててでも新部隊・・・・・・機動六課で現場に立とうと考えてしまいます」



母さん辺りが聞いたら『バカな事を言うんじゃありません』と言いそうだがな。



『GPOのマクガーレン長官のように、ですか?』

「えぇ。・・・・・・というか騎士カリム、ご存知でしたか」

『ヒロリスの友人だそうですし、局と協力体制にある外部組織同士での繋がりも多少ありますから』

「納得しました」





・・・・・・マクガーレン長官には、一つ逸話がある。それも僕達上の人間が見習うべき姿勢を示した逸話だ。

GPOが4年前にEMP分署を設立した当初、マクガーレン長官は今のように現場指揮などを執る事が出来なかった。

なんでもGPOの設立者の一人であるお父上の『心遣い』のために、今の僕や母さんの立場に納まったらしい。



ようするに、娘に危険な現場に立って欲しくなかったという事だな。そして、ここからがあの人の凄い所だ。

GPOは半民間組織ではあるが、それでも役職やちゃんとした立場もある。それに連なる福利厚生もだ。

そんな中でどういう手を使ったかまでは詳しく知らないが、自ら『降格』してEMP分署の長官の立場に納まった。





「いくらEMPの現状が今よりも荒れていたとはいえ、そこまでの決断は中々出来ないと思っています。
そしてそんな人が指揮するからこそ、GPOの面々は局以上にヴェートルの人達から慕われたのでしょう」





ただ、母さんはこの話を聞いて呆れ返っていたよ。いくらなんでも無茶苦茶過ぎるとな。

上の立場の人間として、前線に出なくても出来る事はある。それを放棄するような事、決していいことではない。

自分が艦長時代に一時的に現場に出たのとはワケが違う。絶対にあり得ないと言い切っていた。



母さんには本当にそこまでする必要があったのかどうか理解出来ないようだ。

だが、僕は今言ったように・・・・・・正直見習うべきだと思う。

同じように上の立場に居るだけでは出来ない事がある。あの人はただ、それを選んだだけだ。



うちの愚弟と同じように、そういうのに対しての言い訳が全く出来ない人なのは想像に難くない。





「だが、僕にはマクガーレン長官のように踏み切るだけの勇気がない。
立場を振り切り一人の人間として現場に立って、同じ重さを知る同志になることを選べない」



艦長として、後見人としての仕事は決して軽くはない。それをしっかりとこなして、後ろ盾を作る。

下の人間が不条理に足を止める事にならないようにする。それが今の僕の仕事だ。



「今の立場や権力など、局員の資格など何一つ惜しくない。
ただ、上から命がけの厄介事を押し付ける事しか出来ないのが嫌だ」



ただそれは同時に、下の人間に命を賭けさせる仕事でもある。その側面だけは絶対に消えない。

だからこそ指揮官には重い責任が伴ない、同時にそれを背負ってでもやり通す気概が必要になる。



「僕は同じ場に立って、一人の人間としてみんなと戦う道を選びたい」





・・・・・・例えば局員を辞めて、一介の嘱託などになったとしよう。そうすれば、六課に絡む事は容易い。

だが同時にそれは、今やるべきそんな仕事達を放棄する事でもある。そこの辺りで、色々葛藤してしまう。

そう、これは言い訳だ。我が身可愛さの逃げだ。そう思って、自嘲の笑みを口元に浮かべかけてしまう。



もちろん騎士カリムの前なので、そこは抑え込んだが。しかし・・・・・・本当に我ながら情けない。





「ですが・・・・・・マクガーレン長官や我が愚弟のように、僕にはそんな事が言えない。
そこまで言い切って飛び出す事が出来ないんです。我ながら情けない」



僕は今回、不条理にはやてや何も知らないなのはにフェイト達に命を賭けさせるというのに。



『そうでしょうか。例えばクロノ提督には、大事なご家族もいらっしゃいます。
奥様に二人のお子様・・・・・・そういう部分からでも躊躇うのは、仕方ないかと』



だが、騎士カリムにはそんな虚勢は無意味らしい。色々と見抜いた上で、言葉をかけてくれる。



『決断は、同じものでも人によって重さは変わってきます。もちろん今名前の出た二人が、提督より軽いという事ではありません。
ただ・・・・・・クロノ提督がその決断をするためには提督本人からすると、どうしても重くなりがちという事ではないでしょうか』



家族を守るために、今ある仕事を継続したいと思うのは間違っていないと・・・・・・しっかりとだ。



「・・・・・・そう言っていただけて、ありがたいやら申し訳ないやら。
ただ、一応でも覚悟は決めておきたいとは考えていたりします」

『状況によっては・・・・・・ですね。そう言えば、恭文君の方はどうでしょう。
確かもうミッドに戻ってるんですよね。怪我も無事に完治して』



何気に騎士カリムも心配だったのか、表情が一段と柔らかいものになった。



「えぇ。ただしばらくは仕事関係は一切させないで、休ませてやろうと思っています。
・・・・・・今回の事、本当に重い出来事も多かったですから」





アレクシス公子の事も含めて、いい出会いも多かった。そこだけは救いでもあるが、それでもだ。

そしてなにより・・・・・・アイツが今回の事件の起爆剤になった。いや、なってしまった。

GPOのフジタ補佐官に事後に話をさせてもらった時、フジタ補佐官はアイツを『爆弾』と評した。



味方に対してはとても有効で、一気に状況を変える切り札になり得る。

なお、敵に対しては・・・・・・言うまでもないだろう。そこに関しては、僕も否定はしない。

ただ、それは決していいものばかりを引きつけるわけではない。例えば母さんだ。



母さんはそんな恭文だから、局の現状を変えられる爆弾になれると思っている。だから誘っているんだ。

色々諸事情はあるが、恭文が持っている『爆弾』で管理局という大きな組織を変え、引いては世界そのものを変えていく事。

それが恭文のやるべき事だと思っている節がある。そのための力だと信じたいと言った方がいいかも知れない。



その結果がどういうものかは、現在の着信拒否状態を鑑みればここも言う必要はないと思う。

とにかく事件の概要を知る人間にとっては、蒼凪恭文という『爆弾』の持っている可能性は証明されたも同然だ。

恭文にはあんな風に言ったが、正直僕はここがとても怖い。アイツがそれで増長することは、まずないだろう。



だが周りは違う。母さんのようにその『爆弾』の力を必要とする人間・・・・・・いや、訂正だな。

言い方は悪いが、それを我が物にしようとする人間が出てくるかも知れない。

ようするに我が愚弟は、なのはやフェイト達とはまた違った意味でとかくキーカードになりやすいということだな。



もしかしたらアイツの運の悪さは、恭文が『爆弾』であるが故の宿命なのかも知れない。





「そこが兄としての正直な意見です。しっかり頑張った後はしっかり休む事が必要ですし。
まぁ、ここは妻の受け売りですが。そのための余裕を作れるように尽力するつもりです」



この辺り、今回の件を恭文やGPOの人間に押し付けた罪滅ぼしも含まれていたりする。

・・・・・・最初から今言ったように飛び出せる勇気が僕にあれば・・・・・・本当に良かったんだが。



「あ、ここは無限書庫のスクライア司書長やフェイト執務官達も同様です。そして出来れば」

『六課の件にも現時点で既に遅いとは言え、出来るなら極力関わらせたくはない・・・・・・ですか?』

「えぇ」



アイツが何時もの不運スキルを発動して、大きな事件に巻き込まれなければという条件が付くが。

そしてもう一つ。六課の人員だけでこれから起こるであろう全ての事が片付けば・・・・・・だな。



「アイツ自身は外から関わる気満々ですから、無駄な願いではあると思っています。
あとは母さんですね。母さんはアイツにも六課の人員として入って欲しいようですが」



ここの辺り、恭文に局員になって欲しいという思惑からだろう。六課では自然と身内が多くなる。

そんな中で局の仕事に触れれば、多少は部隊や局に対しての印象も変わると考えているのだと思う。



「ここは無しでいきたいと思います」



なお数ヶ月後、色々な状況の変化からこの言葉を撤回する事になるとは、この時の僕は思っていなかった。

思っていなかったからこそ言えた言葉なのだと、一人猛省することになる。やはり僕は、色んな意味でダメなようだ。



「GPOという『組織』で上手くやれたから、六課や局の部隊でも大丈夫と考えているようです。
だが、僕はそうは思えない。局とGPOでは全く違う」

『それは・・・・・・まぁ、確かに』



表情が自然と苦くなるのは、色々と行き違う姿を見ているからだろうか。なんというか、やるせない。



「今回の事、ただ単にGPOの在り方がアイツに合っていたというだけです。
マクガーレン長官のような方が上に居たからこそ、我が愚弟はGPOの一員になれた」

『局では合わないとお考えなのですね』

「えぇ。今度会った時にGPOの話を詳しく聞いてみるといいですよ。
辛い事件の中で、恭文は本当に良い仲間達に恵まれた。きっと楽しそうに話してくれると思います」





なお、僕に対してはそうだった。色んな意味でヴェートルとGPOはアイツの肌に合ったらしい。

そしてそこはフェイトも気づいていた。だから余計に・・・・・・本当に残念なんだ。

今更言っても仕方ないのだが、ヴェートルにGPOが健在だったらと思うと、本当に残念だ。



もしかしたらあの『通りすがり』が、ずっと腰を落ち着けていられる居場所になったのかも知れないのに。

ここの辺りは僕達の中では、特にフェイトが一番残念がっている。撤退の話を聞いた時も相当だった。

フェイトはヤスフミに自分と同じように・・・・・・そんな一つの居場所を作って欲しいと、ずっと思っていた。



そして実際にGPOの方に出向いて、恭文の様子を見ていたから余計に来たんだ。



本当にその時の様子を嬉しそうに話していて・・・・・・何気に期待が大きかったんだろう。





「騎士カリムはどうでしょうか」

『・・・・・・実を言うと、全く同意見なんです。私の場合、ヒロリスという前例を見ているから余計に』



騎士カリムは苦笑気味にそう言った。確かに・・・・・・ランブル・ウィッチも相当だった。

そしてそんなヒロリスさんと恭文は相当似ているらしい。だから、騎士カリムもここまで言い切れる。



「なんというかそれは・・・・・・納得しました」










さて、まずはカラバとヴェートルの一件のせいで滞っていた新部隊設立の準備を急がなければ。





これも後見人ゆえの仕事だ。僕がもしマクガーレン長官二号になるにしても、ここだけはしっかりとしよう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・別れの時間は、あっという間に来た。本当に、あっという間。





中央本部のロビーで僕達は・・・・・・その、向かい合ってる。










「・・・・・・もう、また赤くなってる」

「だ、だってその・・・・・・シルビィ」

「ん」

「あの、昨日はありがと。ホントに嬉しかった」

「うん」



シルビィがそのまま身体を前に倒して、抱きしめてくれる。

温かくて、柔らかくて・・・・・・そしてやっぱりお日様の匂い。



「でもヤスフミ・・・・・・ホントに昨日が初めてだったの? というか、私が初めて」

「いや、あの言った通りだって」

「うーん、それにしては・・・・・・やっぱり天性のジゴロなのかしら」



ジゴロってなにっ!? 普通に僕は緊張しまくりだったしっ!!



「ダメだった?」

「ううん、ダメじゃなかった。・・・・・・あのね、凄く良かったよ。それに素敵だった。
でも、そういう事は二人っきりの時以外はあんまり言わせないで欲しいな。結構恥ずかしいんだから」

「えっと・・・・・・ごめん」

「ん、大丈夫よ。でも・・・・・・うん、本当に素敵だったなぁ。
私、いっぱい啼かされて、ヤスフミのものになっちゃったし」



や、ヤバい。シルビィの声は破壊力が大きい。耳元で囁かれて・・・・・・あ、そっか。

シルビィの声、ゆかなさんに似てるからそのせいもあるのかも。



「ありがと、沢山優しく愛してくれて」

「ど、どういたしまして。・・・・・・あの、本局まで本当に行かなくていいの?」

「大丈夫よ。それにこれ以上一緒だと私、帰りたくなくなっちゃうから」

「・・・・・・そっか」





少しだけ身体を離して、僕は背伸び。瞳を閉じながら・・・・・・唇を重ねる。

お日様の匂いに包まれながら、一杯幸せを感じながら、『またね』のキス。

人目は気にしないで、いっぱい求め合って・・・・・・そして、唇を離す。



シルビィ、頬を赤く染めて・・・・・・とても可愛い。というか、綺麗。





「シルビィ、あの」

「ヤスフミ、ひとつだけ約束」



・・・・・・言おうとしてた事が分かるように、シルビィが僕の唇に人差し指を当てる。



「私の事を理由に、夢を諦めないで?」

「え?」

「ヤスフミの夢、ヤスフミが信じてるもの、大切にして欲しいの。正直、離れるのは寂しいし辛い。
だけど、私と居る事を理由に自分の気持ちに嘘をつかないで欲しい。私もそうする。だから」



シルビィは青い瞳で僕を真っ直ぐに見て・・・・・・僕は、頷いた。

頷いて、思いっ切り笑う。遠慮なく笑って、右手でサムズアップ。



「約束する。・・・・・・シルビィが僕の無茶な夢、認めてくれた時嬉しかったから。
大事にしててもいいんだって、そういう勇気・・・・・・もらったから」

「・・・・・・うん」



シルビィも同じようにサムズアップ。それで、僕達は笑い合って、身体を離す。



「それじゃあヤスフミ、またね。またウィハンで」

「うん。・・・・・・てか、それだと色気ないね」

「それもそうね。なら・・・・・・また、お泊りしに来るわね。
それでまた・・・・・・いっぱい、好きだって伝え合いたい」

「・・・・・・うん」






そのまま、シルビィは歩いていって・・・・・・僕は、右手で手を振った。

シルビィも同じく手を振り続けてくれて、二人で見えなくなるまで、お別れの挨拶。

見えなくなっても・・・・・・僕は、その場に数分立っていた。



それで呼吸を入れ替えて、一端顔を落としてから思いっ切り上げて、上を向いた。





「うし、帰ろう」



振り向いて、僕は中央本部を出る。・・・・・・あのファーストキスから丁度24時間かぁ。

とりあえずアレだ、僕はフィアッセさんや他のみんなに色々報告しなくちゃ。あははは、荒れるよなぁ。



「・・・・・・アルト」



青い空と走る車、それに空に浮かぶ二つの月を見ながら僕は、ずっと空気を読んでくれていた相棒に声をかける。



≪・・・・・・お赤飯、買いに行きましょうか≫

「その妙な気遣いかたやめてっ!? そして、なんかいつもより優しいのが余計に気持ち悪いからっ!!」

≪失礼な。というか、GPO・・・・・・入るって言わなくてよかったんですか?≫



うん、そう言おうとした。色々片付いたら、それも出来るからーって。でも・・・・・・やめた。

シルビィに、お姉さんとしてお説教されちゃったもの。僕は年下の男の子として、ちゃんと聞くの。



「いいの。やりたいようにやって、それで・・・・・・考えていくから」

≪納得しました。あぁ、それと≫

「なに?」

≪通信の不在着信、200件近く入ってますから≫



・・・・・・・・・・・・え? いやいや、ちょっと待ってよ。なんですかソレ。

確か端末の電源切って、アルトにもその辺り自重してもらってたよね?



≪なお、そのうちの半分はシャマルさんです。そして41件がリインさんですね≫

「あの二人なにやってんのっ!?」



さすがに足を止めて、考えをまとめる。というか、普通にどっかのストーカーだし。

・・・・・・え、ちょっと待って。じゃあ残りの50件近くはどなたよ。



≪残りは関係者一同ですね。・・・・・・状況から見るに、もうシルビィさんとの事はバレてますよ。
リインさんはメルビナさん達に任せましたし。その関係でこれでしょ≫

「え、じゃあもしかして」

≪お泊りも予測していると見ていいですね。
なお、同じ数だけのメールが届いてますけど・・・・・・見ます?≫

「・・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










お昼真っ盛りな状況で、僕は頭を両手で抱えて叫んだ。叫んで、更に悩む。

な、なんでこの状況っ!? 普通におかしくないかなっ! あぁ、このまま失踪したいー!!

というか・・・・・・そうだ、こういう時はGPO・・・・・・だめじゃんっ! シルビィとの約束破るしっ!!





でもでも、普通に連絡取ったら絶対まずい事に・・・・・・どうしてこうなるのー!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、俺達は無事に職場復帰を果たしていた。うん、当然だな。

親和力のあれこれも結局非公開になったし、バレないように色々処置もした。

マクガーレン長官もいつもの調子に戻って、ヒロもまたまた嬉しそうだ。





だからこそ俺達は仕事終わりにやっさんを呼び出して、居酒屋の座敷であれこれ話だよ。










「やっさん、シャマルさんから聞いたけどアンタ、GPOのあの金髪の人とそうなったんだってっ!?」

「お前、ハラオウン執務官どうしたんだよっ! ・・・・・・あ、普通に第二夫人かっ!!」

「ヤスフミ、お前マジでハーレム構築するつもりかっ!? くそ、お前は世の中の男の敵だっ!!」

「やるかボケっ! てーか、なんで知ってるっ!? あぁ、三人は大丈夫だと思ってたのにー!!」



やっさんは叫びながらも座敷の机に頭を抱えて突っ伏す。それを俺達は、まぁ・・・・・・察した。

とりあえずアレだ、馬刺し食うか。・・・・・・お、上手いな。やっぱここはいい素材使ってるな。



≪ねーちゃん、普通に相当なのか?≫

≪大したことはありませんよ。メールと通信の着信が合わせてたった400程届いただけで≫

≪それは相当だろうが。まぁ、たしかに青天の霹靂ではあるしな≫

≪しかしシルビア・ニムロッドという女性は、そこまで素敵なのか。・・・・・・一度お目にかかりたかったな≫



7年スルーを色々乗り越えて、ここで遠距離恋愛コースだろ? 普通にすごいよなー。

まぁ、色々あったそうだし・・・・・・それくらいにニムロッド捜査官が素敵な女だったのは、納得しよう。



「まーまー、やっさんそんな落ち込まないの。ほれ、今日は私らの奢りだから」

「だけど俺の分はお前の奢りな? よし、ステーキ食いまくるぞ」



ジン坊、お前そんなにステーキにこだわってたのかよ。あとそれはマジでやめろ。

居酒屋来てひたすらステーキ食ってどうすんだよ。他のもバランスよく食べろよ。



「・・・・・・すみません、その優しさがなんか嫌なんですけど。てゆうか、普通になんで三人ともニヤニヤしてる」

「気のせいだろ。いや、しかし・・・・・・どうしたんだ? また乗り換えるなんてよ」

「別にそういうんじゃないです。ただ・・・・・・なんかシルビィ、いいなって思うようになってて」



・・・・・・あの人、すげーな。やっさんはハラオウン執務官の恋心ゆえにフラグブレイカーでもあったのに。

何やったんだろ。絶対決定打になるようなこと、してると思うんだよな。うーん、謎だ。



「まぁアレだ、その事はハラオウン執務官は知ってるの?」

「あははは、お祝いされましたよ。てゆうか、ちょっと軽めに頭叩いてやったんですけど、許されますよね?」

≪・・・・・・叩いたのかよ。まぁアレだ、きっとそれくらいは許されるだろ≫

「そ、そうだな。まぁやっさんの気持ちも分かる。だがもうそのくらいにしとけよ? それ以上はアウトだから」

「まぁ、ハラオウン執務官がヤスフミの第二夫人になるとかならともかく・・・・・・そうじゃないならなぁ」










しかし、あとひと月ちょいで今年も終わりかぁ。やっさんと関わるとマジで退屈しなくていいな。

ただ・・・・・・来年は今回みたいな世界規模の事件が起こるのは、もう無しにしてもらいたいところだ。

やっさんに対してどうこうはない。だけど世の中がまたザワつくのは、あんまりによろしくないだろ。





実際公女や公子が失踪も同然の形で表舞台から姿を消して、クーデター派のトップも『変死』している。

そして親和力という鎖は、いい意味でも悪い意味でも世間の注目を集めるきっかけになっていた。

だからこの件の注目度や影響度は、やっさんが入院している間に大分下火になったけど・・・・・・やっぱ高いんだよ。





これでまた来年、同じくらい大騒ぎになる事件が起こる? それは色んな意味で勘弁だって。

現に局の上の方はそう思ってるだろ。この一連の流れの中で、局への信頼度が下がったのも事実だ。

親和力の影響が消えても、それは簡単に取り返せるものじゃない。現に失態やらかしてるしな。





無事にその事件が解決出来るならともかく、またその中でバカをやらかす可能性だって大きい。

巻き込まれる市民の事など考えずに、その辺りの心配してる人間は多そうだよなぁ。

まぁ何が言いたいかと言うと・・・・・・来年はもっと平和で安全ないい年になりますようにって事だな。





今みたいに、やっさんとヒロとデバイストリオとバカな話で盛り上がれる日が沢山あると、なお嬉しい。





懸念事項が無い事も無いが・・・・・・それでもだ。やっぱ戦いより平和なのが一番だろ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・シルビィと結ばれてから、あっという間に半年以上が経った。

シルビィとはウィハンとかメールで通信して、楽しく遠距離恋愛を継続中。うん、ラブラブだよ?

それで月一で僕が向こうに行ったり・・・・・・事件捜査の手伝いさせられるんだよなぁ。





どういうわけか間が悪く事件が起きて、シルビィとのデート壊された恨みを晴らすために暴れるの。

それでメルビナさんとフジタさんから涙目で『デートは別所でやってくれ』と言われた。・・・・・・なんで?

だからシルビィと二人でミッドでデートしたりも・・・・・・と考えたけど、ちょっと迷った。





それだとシルビィの負担が大きいもの。親御さんのところへ定期的に里帰りも込みでも、それでも。

なので色々と二人でウィハン内で協議して・・・・・・デートは実質お泊り旅行になった。

まぁ、シルビィも忙しいからたまにやろうという事なんだけどね。二人で色んなとこ行くつもり。





あ、それで初回はヴェートルに顔を出した。で、そうしたらびっくりしたよ。具体的にはEMP分署。

そこが維新組の新しい屯所になってるの。で、レイカさん達もGPO制服着てる。

GPOと分署引き渡しの時になにやら組織統合というか、一種の提携を結んだ関係でそうなったの。





それがあまりに衝撃的で、二人して笑ったら僕だけが投げ飛ばされた。・・・・・・なんで?

遠距離恋愛だけど、そんなフェイトみたいに週1なんて無理だけど、僕は充分幸せ。

シルビィも同じらしくて・・・・・・距離感とかそういうの、僕達二人とも今はこれで大丈夫みたい。





ただ、最近また心配かけてしまったのは心苦しい。僕、色々な意味で散々だしなぁ。










「ヤスフミ、大丈夫?」

「まぁ、なんとかね」



だからこそ、六課隊舎の自室でシルビィとこんな話をするのよ。あははは、なーんで僕はRemixな感じで六課入ってんだろ。

現在フェイトと大事なお話を続けてたり、スバルやエリオとの距離感が微妙なのとか色々あるけど、それでもですよ。



「というか、あんまりよ。これならGPOに避難・・・・・・するわけないわよね」

「もちろん」





そして時刻は夜の9時過ぎ。大事な恋人と休憩がてら並んで床に座りつつお茶を飲んでるわけですよ。

え、彼女を職場に呼んでいいのかって? あははは、それじゃあどうしろって言うのさ。普通に自宅にも帰れないのに。

なお、シルビィは僕がフォン・レイメイを『排除』したと聞いて、仕事をしっかり処理した上でこっちに来た。



というか、はやてとメルビナさんと補佐官の密談の結果、戦略アドバイザーとして六課に滞在が決まってしまった。

この辺りシルビィが戦闘機人・・・・・・というか、魔法に依存しない戦闘術やテロ関係の専門家でもあるのが理由。

EMP・・・・・・ヴェートルの特殊具合は言わずもがなだしね。そこで4年間ランサーとして働いていたシルビィは、何気に凄いの。





「てーか、こっちに長期滞在決めたシルビィがそれ言う権利ない」

「それはまぁ・・・・・・確かにね。でも、なんていうか風当たり強いわよね。特にあの子よ」



あぁ、僕には『あの子』の顔が即座に浮かんだよ。うん、そうなるだろうね。

普通に魔法至上主義の申し子的な発言してるもの。



「でも、いいの? 正直ね、予言の事も含めて私は付き合う必要が無いと思ってる。
局の道理のためにヤスフミもそうだけど、ここの人達が世界を背負う必要なんてないわ」

「別にいいよ。・・・・・・今を先送りになんて出来ないから。そして巻き戻しも出来ない。
ケンカ売られたってのもあるけど、それだけじゃない。それにさ、前に言ったじゃん」



・・・・・・だから今ある中で変えていくために戦うのよ。世界や他人を変えるなんて言うつもりない。

そんなの、凄まじく難しい。だから自分を変えていくのよ。自分が望むままに、どこまでもだ。



「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても・・・・・・それは何もやらない事の言い訳にはならない」

「あ、そう言えば・・・・・・うん、そうだった」

「だからまぁ、僕はそう言った人達に比べたらアレだけど・・・・・・それでもね。
言い訳しちゃったら、きっと僕が嘘になっちゃうから」

「・・・・・・そっか」



シルビィが、言いながら床に湯のみを置いて、そっと右側から僕を抱きしめてくれる。

そうすると、一気に気持ちが緩くなる。だって・・・・・・お日様の匂いに包まれてるから。



「なら、私も出来る限り協力する。そのためにここに居るから。
ヤスフミがここで言い訳しない自分を諦めたくないなら・・・・・・応援するね」

「・・・・・・ん、ありがと」

「じゃあ話がまとまった所で、あの・・・・・・ヤスフミ」



僕の身体に右側から力が加わる。そしてそのまま僕はシルビィに押し倒された。

少し驚きながらシルビィを見ると、シルビィが頬を染めて僕の事を見下ろしていた。



「あの、さすがにここでは」

「・・・・・・私もそう思うわ。でもだめなの。私、もう我慢出来ない。ダメ・・・・・・かな」



あぁ、泣きそうな顔しないでっ!? 確かにその・・・・・・遠距離恋愛で色々アレだけど、それでも抑えてー!!



「ダメじゃ・・・・・・ない」



・・・・・・ごめんなさい。僕が抑えられませんでした。だってあの、結構その・・・・・・だしさ。



「なら良かった。あ、でも静かに・・・・・・よね」

「そうだね。それであの、いっぱいラブラブしたい。・・・・・・僕だって、シルビィと同じなんだから」

「うん、分かってる。同じだから・・・・・・分かるの。じゃあ、いっぱい愛し合いましょうね」










そのままゆっくりと白いYシャツ姿のシルビィの顔が降りてきて・・・・・・そっと、僕達は唇を重ねた。

僕を包んでくれるのはお日様みたいな温かい匂いと体温。それで甘い吐息が心を擽る。

・・・・・・何があっても、捨てられなくて拭えない夢がある。忘れる事なんて出来ない大事な時間がある。





でも、シルビィと付き合うようになって意味合いが少し変わった。それはきっとシルビィが背中を押してくれたから。

いつも笑って、お日様の匂いと温かさで僕を包んでくれるから・・・・・・うん、変わったの。

大事な夢の中に・・・・・・訂正。大事な夢が一つ増えた。それは僕の上に居る女性との事。





こうやって互いの夢を尊重して、応援し合うような形でずっと一緒に居られたらなぁって、よく考える。





だって僕・・・・・・太陽みたいなこの人の事が、本当に大好きだから。ずっと、ずっと抱きしめていたい。




















(とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々・IF After・・・・・・おしまい)




















あとがき



シルビィ「というわけで、ボーナストラックのIFアフターはいかがだったでしょうかー?
本日のあとがきのお相手は、今回のクロスのヒロインのシルビア・ニムロッドと」

恭文「蒼凪恭文です。というわけで、今回の話は『彼と彼女の新しい一歩』・・・・・・です。
あれだね、前回までのクロスの中でシルビィに気持ちが傾いて、そうなると」

シルビィ「つまり、唇でキスをすれば大丈夫なのよね。・・・・・・惜しかったなぁ。私からすればよかった」





(このお姉さんは普通に怖い事を言うなと思う。蒼い古き鉄は戦慄した)





シルビィ「あとは、事件後の簡単な様子よね。六課設立のためのあれこれとか」

恭文「というか、アレだね。これ自体がもうすでにIFシルビィルートにするという目論見は成功したよ」

シルビィ「これで私のIFルート、書く必要はないものね。・・・・・・あれ、なんか手抜きされたみたいで悔しいな」

恭文「大丈夫だよ。それでも普通にシルビィはヒロインしてるよ。その、凄く可愛いし」

シルビィ「あ、ならよかった。でも・・・・・・恋人同士になっちゃったわよね」





(お姉さんは嬉しそうなので、年下の彼氏はちょっと顔が真っ赤)





シルビィ「というわけで、ん・・・・・・お願い」





(瞳を閉じて、いわゆる『キスして』な体勢)





恭文「・・・・・・ちょっと待てっ! 普通にこの場でキスを要求するなー!!」

シルビィ「えー、いいじゃない別に。全く、照れ屋なんだから」

恭文「そういう問題っ!? それはまた違うからっ!!」





(なお、何気にシルビィのゲームでのENDの中には『キスして』なグラフィックがあったりします)





シルビィ「でもこのEND、普通にRemixな話に私が絡むわよね」

恭文「絡むね。で、アレだよ。地上本部襲撃の時に、見くびって襲ってきたノーヴェに向かって超筋力解放で右ストレートですよ。
ウェンディに関してはライオットシュートとサイコスマッシュで鎮圧コースですよ。で、その時点で二人捕縛」

シルビィ「・・・・・・え、そこまでっ!? というか私、そこまで活躍なんだっ!!」





(すみません、かなり適当に言いました)





シルビィ「ねぇ、それだったら続き書いて欲しいな。ほら、私頑張るわよ?」

恭文「いや、それも考えたんだけど・・・・・・ほら、これボーナストラックだから。
それやっちゃうともう第二期発生だから。メルとま永遠に続いちゃうから」





(とりあえずはここで一区切りさせるのがいいかなぁと思い、この一話で纏めました。
まぁ、最後はエピローグと思っていただければ)





シルビィ「ならアフターは私が介入したバージョンのRemixよね。よし、決定」

恭文「なんでそうなるっ!? てーか、落ち着いてっ! RemixのRemixって意味分からないしっ!!」

シルビィ「だって、もっともっとヤスフミと恋人タイムを過ごしたいもの。・・・・・・だめ?」





(少し潤んだ青い瞳で見つめながらそう言われて・・・・・・蒼い古き鉄、頷いた。というか、勝てるわけがなかった)





シルビィ「ならよかった。じゃあ私IFのアフターはRemix・Remixに決定ね」

恭文「いや、あの・・・・・・そうなると長期連さ・・・・・・いえ、なんでもありません」





(そこ止めてっ!? フィアッセさんIFアフターより難度低いけど、それでもアウトだからー!!)





シルビィ「大丈夫よ。コピペで大半のシーンは済ませれば」

恭文「・・・・・・そう思っていたあむIFルートがすごいことになったけどね。
基本ライン同じだけど、色々書き込むから予定より話数が倍加した」





(特にVS海里やVS歌唄だったりします)





シルビィ「大丈夫大丈夫。一度同じノリが出来たならきっともう一度出来るわよ」

恭文「あぁ、なんかすっごい乗り気になってるー! てゆうか落ち着いてっ!? もうちょっと楽な方向でいいんじゃないかなっ!!」

シルビィ「・・・・・・私IF、ホントは嫌なのかな」

恭文「そうじゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





(年上の彼女に蒼い古き鉄はタジタジである。というか、勝てる気がしない)





恭文「と、とにかくこれでメルとまは終了という形になります。まぁ前回のあとがきで言ったみたいな形でのクロスをしない限りは」

シルビィ「あとは拍手でリクエストいただいたみたいに、改訂版FSやドキたまで私達が出るという形よね。
・・・・・・というか、SSで現在止まっている結婚式話に私達出てもよくない? ほら、そうすればまだなんとか」

恭文「あぁ、それならね。一応この事件で関係者みたいになってるし、ヒロさん関係深いし。
と、とにかくそこの辺りでシルビィにフォローをしつつも本日はここまで。みなさん、ここまで応援ありがとうございました」

シルビィ「お相手はゲーム二作目とのクロスでもヤスフミとカップルになるのを楽しみなシルビア・ニムロッドと」

ヤスフミ「蒼凪恭文でした。てゆうか・・・・・・え、そこも決定なのっ!? 作者はIF・IFフェイトルートで考えてたのにっ!!」

シルビィ「だーめ。だって・・・・・・もう私はヤスフミのものだもの。どんな世界でも何があっても、離さないで欲しいな」

恭文「そ、その・・・・・・あの、あぁっ! お願いだからその潤んだ瞳はやめてっ!? なんか来るからっ!!」










(それでも当然だけど年上の彼女は止まらない。だって、年上の彼女はとっても強いのだ。
本日のED:abingdon boys school『HOWLING』)




















シルビィ「・・・・・・ヤスフミ、大好きよ。ホント、自分でもおかしいんじゃないかって言うくらい」

恭文「あの、えっと・・・・・・それは嬉しいんだけど、なぜにハグ?」

シルビィ「当然あなたの事を誰にも渡したくないからよ。このまま私、第四夫人になっちゃうんだから」

恭文「だからちょっと待てっ! どいつもこいつもまるで挨拶するみたいにそういう位置望むのやめてっ!?
いや、その前に第三夫人誰っ! 普通に僕にはそんな位置に立つ人間を作った覚えは・・・・・・ないんだからっ!!」

シルビィ「そんなの、あの歌唄って子に決まってるじゃない。まぁ、あの・・・・・・アレよね。
ドキたまでたまたま再会して、互いに火が点いちゃって第四夫人になったでいいと思うの」

恭文「いいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうか、フェイトとリインと婚約したのにそれは最低だからっ!!」

シルビィ「いいの。というかアレよ? 私はヤスフミのお嫁さんになる資格があるんだから」





第一夫人・フェイト・T・ハラオウン(CV:水樹奈々)

第二夫人・リインフォースU(CV:ゆかな)

第三夫人・月詠歌唄(CV:水樹奈々)





恭文「・・・・・・ちょっと待てっ! 歌唄はマジで第三夫人じゃないからっ!! 全然違うからねっ!?」

シルビィ「とにかく、CV:水樹奈々さんのキャラが第一と第三なら、第四はゆかなさんボイスなの。
つまりここでは私だと思うんだ。・・・・・・私、頑張るわよ? ちゃんと三人とも上手くいくように」

恭文「だから落ち着けー! てーかシルビィルートの話の最後がこれってありえないよっ!? もう全くありえないからっ!!」

古鉄≪・・・・・・なお、この会話が全てネタに等しいのは留意しておいて頂きたいです。
しかしこの人なんなんですか? 普通に拍手などの反応を見ると、大多数がハーレム支持してますし≫

はやて「こんなSSはどうもここだけみたいやしなぁ。あれよ? 最近もらった拍手であったもん。
『色々なサイト見てきて思った事。オリ主のハーレムを読者がプッシュしてるのってここだけだwww!!!!』って」

古鉄≪ありましたねぇ。普通は『ハーレムはちょっと』ってなるのに、なんででしょうか。不思議ですよねぇ≫

恭文「不思議がってないで助けてよっ! これがメルとまのラストなんだよっ!? ラストでこれはありえないからー!!」

シルビィ「大丈夫。私・・・・・・ヤスフミが真剣に考えた上での選択なら、ちゃんと認めるから」

恭文「だから落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










(おしまい)





[*前へ]

27/27ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!