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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Report12 『unripe hero 前編』



恭文「前回のあらすじ。追い詰められた僕達は、一か八かの賭けに出る事にしました。
アレクの存在を囮としたアイアンサイズ捕縛作戦。しかしその最中に事態がまたもや急転」

シルビィ「なぜかEMPに降り立っていたのは三人の人物。公女と側近のオーギュスト。
そしてカラバクーデター派トップのマクシミリアン・クロエ」

恭文「公女とオーギュストにより、アイアンサイズは自由意志を奪われた上で親和力に取り込まれた。
そしてマクシミリアンも呆気無くオーギュストの手にかかり・・・・・・一行は消えた」

シルビィ「というかというか、どうなってるのよコレっ! 普通になんで間が悪く事態が動いていくのっ!?」

恭文「とにかく、そんな状況下で始まる最終決戦。前中後編に分かれて描かれる僕達の最後の戦い、ここから始まります」

シルビィ「それでは、どうぞー」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・急いで全員で転送魔法の反応が有ったポイントに来た。でも、遅かった。





そこにあったのは一つの死体だけ。というか、見覚えがあるんですけど。










≪マクシミリアン・クロエ・・・・・・カラバのクーデターの主導者ですよ≫



アルトの言うように、それはマクシミリアンだった。僕も資料で見た事あるから、顔だけは知ってる。



「心臓を一太刀・・・・・・そうとう鋭くやられてる。いい腕してるわ。でも」

≪えぇ。無念そうな顔ですよ。もみ合った形跡もありますし、普通に戦って死んだというわけじゃありませんね≫



僕はとりあえず右手をその男の顔に当てる。当てて・・・・・・開いたままの瞳を閉じさせてあげる。



「・・・・・・マクシム」

「アレク」

「いいえ、大丈夫です。ただ、お願いが」



言いながらアレクは僕とフジタさんを見て、頭を下げる。



「マクシムを・・・・・・もっと静かな所で眠らせてあげてくれませんか? こんな冷たくて薄暗い所じゃなくて」

「・・・・・・分かりました」



僕はその冷たくなった身体をお姫様抱っこして、抱える。

・・・・・・人の死は、こういうものだって分かってる。でも、やっぱり重いわ。



「アレク」

「はい」

「・・・・・・ごめん。仲直りは難しそうだわ」

「いえ、大丈夫です。もう・・・・・・気持ちは固めましたから」



それでも、やっぱりごめんだよ。そんな気持ちを固めさせないくらいの事、出来たらいいなとか思ってたから。



「フジタさん」

「一端仕切り直しだな。公女達がなぜEMPに居るかも分からない以上」



フェイトとバルディッシュのサーチでそこは特定出来た。公女と側近のオーギュスト、どういうわけかEMPに来ているらしい。

そしてアイアンサイズと共に消えた。でもその理由が・・・・・・うーん、分からない。



「・・・・・・待て。通信・・・・・・維新組屯所から?」



なんて言っていると、また通信がかかった。フジタさんは嫌な予感がしつつも、それを繋いだ。



『あぁ、補佐官にGPOのみなさんっ! 大変なんですっ!!』



その画面の中に居るのは、シンヤさんとキョウマさん。相当に慌てた様子だから、嫌な予感は的中らしい。



『どうも工業区のサードムーンに何者かが侵入して、勝手に稼働させているようなんですっ!!』

『はぁっ!?』



ちょ、ちょっと待ってっ! サードムーンって確か、建造中だったよねっ!?

この話の3話でシルビィから教えてもらった、惑星型の宇宙船っ! それがなんでっ!!



「・・・・・・って、考えるまでもないか」



動かしているのは、間違いなく公女達だ。転送魔法でサードムーンに向かった事だけは間違いないから。



「サードムーン、親和力、影響下・・・・・・まさか」

≪フジタさん、何か覚えがあるんですか?≫

「サードムーンには確かヴェートルとのリアルタイム通信用に、かなり高度なシステムが搭載してあったはずだ」



その言葉を聞いて、僕とリインとシルビィは顔を見合わせる。・・・・・・そうだよ、その話をこの間したばっかりだ。

それで・・・・・・そのシステムって、次元世界へのリアルタイム通信も視野に入れてる相当高度なのじゃ。



「つまり、アレですかっ!? 公女がサードムーンに向かったのは、そのシステムを使うためっ!!
公女は親和力を次元世界中に今までよりも強く振り撒いて、一気に世界征服狙ってるですかっ!!」



くそ、さすがにずっとこのままちまちましてるとは思ってなかったけど、まさかこう来るとはっ!!

舌打ち気味に悪態を突きつつ・・・・・・僕は気づいた。



「シルビィ、シルビィ前に・・・・・・ノリで作業スピードが上がってるみたいな事言ったよね」

「えぇ。・・・・・・ま、まさか」



僕の言いたいことが分かったから、シルビィが驚愕の表情でサードムーンのある方角を見る。



「多分そのまさかだよ。公女が作業員の『ノリ』を上昇させちゃってたんだ」

「つまり・・・・・・かなり前の段階から公女達はサードムーンを切り札として活用する事を考えていたっ!?」

「そうだよそうだよっ! 通信システムどうこうも、仕様通りじゃなくて次元世界掌握のための装置に作り替えられちゃってるかもっ!!」



あぁもう、なんですかこれっ! てーか、この段階で読者は『サードムーンってなんだっけ』状態なのに、これってありえなくないっ!?



「ヤスフミ、まずいよ。このままだと本当に私達」

「フェイト、皆まで言うな。それでシンヤさん、それに対してEMPDや中央本部は」

『それが・・・・・・ダメなんです。いくらこちらから連絡しても、上は『問題ない』と言うばかりで全く動きません』

『EMPDと市庁の方は、市長自らが主立って動いてくれているのでまだ大丈夫だ。
だが、中央本部は今シンヤが言った通り。彼らを戦力としてアテにするのは無理だろう』



くそ、根回しはしっかりしてるってわけっ!? どんだけ念入りに世界征服の計画立ててたんだよっ!!

・・・・・・でも、チャンスでもある。公女はこの段階で一気に色々とやらかしてくれた。



「アシナ総大将代理、俺からも再確認を一つ。その何者かは、正式に稼働の許可を取っているわけではない。
そしてこちら側には誰が入っているかの情報は一切提示されないし、サードムーンの設備で何をするかも分かっていない」

『その通りだ。少なくとも市長は何もご存知なかった』



そう言えばその市長さんって、反対派の一人だったんだよね。

もしかするとアンジェラや僕みたいに、元々親和力が効きにくい人なのかな。



「なら、話は決まったな。・・・・・・マクシミリアン・クロエの遺体を近隣のEMPDのスタッフに預ける。
そこから準備が出来し次第、俺達はサードムーンへ向かう」



さり気なくこの腕の中のおっちゃんの事も含めてくれるのは、補佐官が出来る人だからだろう。

まぁ、確かにこのまま放置ってのもちょっと違うしね。



「そしてサードムーンを中央本部上層部はともかく、EMP市長やEMPDに市民。
そして俺達現場に許可もなく勝手に動かしている実行犯を取り押さえるぞ。フェイト執務官」

「はい。私も証言しますし、EMPの混乱を鑑みた現場判断という事にすれば大丈夫です。・・・・・・多分」





言い切れないのが辛いね。だって上がもう信仰者揃いなんだもの。これはありえないって。

でも、ここは勝負所でもあるんだ。相手がこうやって行動を開始してくれた事で、僕達は大っぴらに動く大義名分が得られた。

なんにしてもEMPDやGPOは、サードムーンを誰が稼働させているか確認する必要がある。



中央本部がアレだとしても、市長も知らないなら違法稼働の疑いありで調査名目も十分に成り立つ。

つまりだよ、こっちがそのために多少荒っぽい手段を使っても、ある程度はEMPの市庁がカバーしてくれるって事だよ。

公女のミスは、親和力を過信し過ぎて計画発動のタイミングや周りの状況を見誤った事。うん、見誤ってるよ。



こんな真っ昼間からあんな巨大なもんを動かせば、当然だけど目立つもの。

完全に僕達が親和力の虜になってると勘違いしてる。だからまんまと尻尾を出してくれた。

危機的状況なのには変わらないけど、ここで踏ん張れば・・・・・・僕達にも勝機はある。





「それじゃあ・・・・・・まずはこの人を眠らせてあげないと。さすがに僕の腕の中でずっとじゃ、アウトだし」

「そうだな。・・・・・・アシナ総大将代理、サードムーンへは俺達が対処します。
すみませんが維新組は、市民の安全の確保をお願い出来ますか? あとは市長に諸々の事を」

『心得た。市長には我らの方から話を通しておく。必要であれば遠慮なく暴れてくれ。
GPOの諸君、古き鉄・・・・・・すまないが、後は頼むぞ』

『僕達は混乱している人達の対処に回ります。あ、ハラオウン執務官も頼みますね。
じゃないと、うちの総大将がまた『やっぱり局の魔導師は』とか言い出しかねないんで』

「・・・・・・はい。あの、ありがとうございます」










こうして最終決戦の幕は開かれた。それで・・・・・・ようやくだよ。





ようやく、公女に罪を数えさせられる。だからアレク共々、気合いを入れるのよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というわけで、EMP分署で作戦会議だよ」

「ヤスフミ、それちょっと説明セリフ過ぎない?」

「シルビィ、気にしないで。でもフジタさん、稼働してるとなるとまずはコレの突破ですよね」

「そうだ。そして当然だがマトモにやり合えば誰もサードムーンに近づく事は出来ない」





まずサードムーンは非常に大きい。そして当然の事ながら、外からの攻撃への備えもある。

一応自衛程度にあるらしいのよ。自動迎撃システムがさ。まぁ、外宇宙目指すしなぁ。

現在サードムーンは、別にヴェートルの軌道上に向けて上昇を開始しているとかではない。



言うなれば、ただ自動迎撃システムも込みで稼働してそこに居るだけ。

だからサードムーンがこれ以上下手に動き出さない内になんとか乗り込みたいところ。

だけど、そこで自動迎撃システムが邪魔になるのよ。





「なら私とヤスフミが先陣を切って、外郭に穴を開けます。そこから突入というのは」

「却下です。サードムーンのスペックを見る限りその装甲は、下手な要塞より硬い。
閃光の女神の実力は俺も伺っていますが、それでも危険過ぎます」

≪Sir、私も同意見です。内部で何が待っているか分からない以上、消耗は避ける必要がある。
お忘れですか? 向こうにはマクガーレン長官やランサイワ司祭が居るかも知れない」



バルディッシュにそう言われて、フェイトがハッとした顔になる。

で、僕の方を見るので頷いてバルディッシュと同意見だと伝える。



≪Sirと彼ならば出来ない理由はないと思いますが、それでも危険手です。
二人・・・・・・特にマクガーレン長官の能力は、恐らくSirでさえも正面からは太刀打ちが出来ない≫

「・・・・・・確かにそうだね」





フェイトは当初、自分でも出来る事としてメルビナさんやサクヤさんの保護(場合によっては戦闘)を申し出た。

ただ、シルビィ達からメルビナさん達の能力の詳細を聞いて、僕共々両手を挙げた。

メルビナさんのフォースフィールドもそうだけど、サクヤさんもサクヤさんで実はチート技があるのよ。



はっきり言って一般的な魔導師は、オーバーSだろうがなんだろうが二人には勝てない。





「なら私達は、極力消耗せずに突入する手段を考える必要がある。
というか、私の案だと時間がかかっちゃうか。そうすると・・・・・・うーん」



だけど、当然の事ながらそんな簡単にはいかないのよ。そんな簡単にいくなら、魔導師なんていらない。



「でもフェイトさん、なんかこう・・・・・・私達全然ダメですね。今回は今までの常識や戦術が全く使えない」





これでもフェイトは経験豊富な魔導師であり執務官。

そして今苦い顔でそんな事を言ったシャーリーは、そんなフェイトの補佐官。

でも、そんな二人でも戦力として微妙になってしまうのが、今の状況だよ。



魔法は管理世界では一般的・・・・・・ある意味では絶対に見えるけど、実はそんな事はない。

前に作った俳句(季語抜き)で『魔導師は、魔法無ければ、ただの人』ってのがあってね。まさしくその通りなんだよ。

魔導師は自分達の魔法が通じなかったら、基本的に能力を大きく削がれる。



だからフェイトだって今の状態なのよ。相当に頭が痛かったり苦しかったりするわけ。





「そうだね。・・・・・・悔しいな。私、ちょっと自信なくしそうだよ」



うーん、どっちにしても相手は何時プカプカ浮き始めるか分からないわけでしょ? だったら・・・・・・うーん。



「それなら、いい方法があるわよ」

「え、いい方法?」



シルビィが自信満々に胸を張って、そう言い切った。そして、僕を見ながら頷く。



「もうみんな知っていると思うけど、ここ・・・・・・EMP分署は、移動分署になっているの」



そこは知っている。EMPの分署は、いわゆる駒の形になってるのよ。で、一番下が地面に刺さってる。

なんか立地関係とかの問題ですぐに移動とか出来るように、これ自体が一種の浮遊移動を可能にする要塞・・・・・・え?



「シルビィ・・・・・・僕は今、凄まじく嫌な予感を感じてしまったんだけど」

「リインもです。まさか、まさかとは思うですけど」

「その通りよ。この分署を浮上させて、サードムーンに突っ込むの。
一応外郭はそれなりにあるから、この程度の自動迎撃システムなら耐えられる」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



そ、それはあの・・・・・・いわゆる特攻っ!? うわ、すっごい過激な事考えながらも頷いたしっ!!

でも、確かにそれなら人員が戦闘する必要はない。上手く行けば、マジで消耗無しで突入出来る。



「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! さすがにそれは危険過ぎますっ!! もうちょっと冷静に」

「フェイトさん、もういいじゃないですか。他に手段も無さそうですし。
なにより上手く行けば、戦闘行動による消耗は0で内部に突入出来ます」

「シャーリー!!」

「・・・・・・というか、こういうの大好きなんですよっ! 前々からやってみたかったんですっ!!
シルビィさん、分署の操舵を手伝わせてくださいっ! もう頑張りますからっ!!」

「あ、いいわよ。それじゃあ二人で一気に特攻ね。
・・・・・・ふふふ、私もこういうの一度やってみたかったのよね



ちょっと待ってっ!? このお姉さんは、普通に聞き逃せない発言をしてくれたんだけどっ!!

てゆうか、シャーリーおのれもかいっ! また嬉しそうな顔するしさっ!!



「・・・・・・あぁもう、分かったよっ! 私も認めるっ!!」

「フェイト執務官、心中お察しします。俺も最初はそんな心情ばかりでしたので、色々分かりますよ」

「補佐官、それってどういう意味ですか? とにかくみんな、すぐに準備を」



シルビィが言いかけた時、普通に衝撃で分署が揺れた。そして、全員がたたらを踏む。

これ・・・・・・外からの攻撃っ!? くそ、一体どこのバカだよっ! EMPD・・・・・・いや、中央本部かっ!!



『・・・・・・フェイトちゃん、みーっけ♪』



突然にミーティングルームに広がった画面の中に映るのは・・・・・・嘘。

白いバリアジャケットに、栗色のツインテールの髪。それに左手には不屈の心。



「「・・・・・・なのはっ!?」」

「なのはさんっ!!」




















『とまとシリーズ』×『メルティランサー THE 3rd PLANET』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々


Report12 『unripe hero 前編』


















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「「・・・・・・なのはっ!?」」

「なのはさんっ!!」



フェイトと声をハモらせたのは当然だ。だって、いきなりなのは出てるもの。

というか画面の隅の方に見えるのは、EMPの街並み。まさかコイツ、普通にヴェートルに居るんかい。



『もう、ダメだよフェイトちゃん。それに恭文君とリインもだよ。
そんな反逆者達と一緒に居ちゃ。さ、一緒に帰ろ?』

「ま、待ってなのは。今の・・・・・・まさか」

『うん、私だけど』



あっさりと言い切りやがった。それに僕もフェイトも、リインさえも唖然となる。

あの女は、まだ笑っている。いつものように・・・・・・そう、いつものようになんだ。



『今のは警告ね。でも出てこないと・・・・・・どんどん撃っちゃうから』

「おうおう、ちょっと待てよっ! お前、あたしら指していきなり反逆者とは失礼過ぎだろっ!!」

「そうよっ! 私達が何時反逆したって言うのっ!? てゆうか、アンタは誰よっ!!」

『私は高町なのは』



そう言うと、場が騒然となった。そしてみんなが顔を青くする。



「ま、まさか・・・・・・管理局の白い魔王っ!? おいおいマジかよっ!!」

「私、聞いた事ありますっ! 管理局を影で牛耳っている、古き鉄以上の恐怖の代名詞っ!!」

「星をも砕く魔法が使えるっていう、あの噂の・・・・・・最強最悪の悪魔が、この女っ!?
あぁ、でも感じるわっ! 私、この女から悪の気配を凄まじく感じているわっ!!」



あぁ、ジュンとパティとナナが完全に取り乱してるー! てゆうか、フジタさんが顔真っ青になってるしっ!!

コイツ、どんだけ無茶苦茶な風評が広がってるのっ!? 昔馴染みからすると、さすがにびっくりだしっ!!



「あ、アンジェラ知ってるよー。それでロストロギアをちゅーちゅーなんでも吸っちゃう、すごく悪い子なのだ」



・・・・・・アンジェラ、僕の時もそうだったけど基本アンジェラの知ってる噂は、ロストロギアを食にしている噂ばかりなんだね。



「・・・・・・高町教導官、EMPのツグロウ・フジタ補佐官と言います」



フジタさんが顔を真っ青にしながらも、画面の中のなのはを見る。なお、瞳が怯えた様子なのはなのはが全部悪い。



「単刀直入にお聞きします。GPOと管理局は協力体制を結び、互いにある程度の線引きをしているはず」

『うん、そうらしいね』

「ならばなぜ、俺達に攻撃する。これは明らかに問題行動でしょう」

『それはね・・・・・・あなた達が私の大事な友達を洗脳した悪党だからだよ。
私はリンディ・ハラオウン提督の特命を受けて、ヴェートルに来た。命令内容は、とっても簡単』



あのバカ提督・・・・・・この状況でまだ足引っ張るかっ! くそ、真面目に何やってんのっ!?



『あなた達に攫われたフェイト・T・ハラオウンと、蒼凪恭文。それにリインフォースUの三名の救出。
・・・・・・あなた達こそ問題行動でしょ? 局員達を誘拐して、反逆行為に加担させている』

「待て待てっ! 僕は局員じゃないしっ!!」

『大丈夫だよ。もうリンディさんが、クラウディアの武装隊入りを取り付けているから。
恭文君もこれで局員かぁ。・・・・・・よかったね。これで私達、同じ道を進める』

「やかましいっ! くそ、あの若作り・・・・・・帰ったら絶対ぶっ飛ばすっ!!」



普通にハタ迷惑な事してくれてんじゃないよっ! あぁもう、洗脳された人間って、なんでこんなウザいっ!?

そして逆だからっ! 洗脳どうこうで言うなら、それはリンディさんなんだからっ!!



『それにアルパトス公女からも、直々に頼まれちゃったんだ。GPOは自分や世界に害を成す存在だから、助けて欲しいって。
・・・・・・本当はシグナムさんやヴィータちゃん達も誘ったけど、他に仕事があるから動けないんだ。みんな冷たいよねー』



そしてダメ押しされてるっ!? くそ、エース・オブ・エースって事でこれなんかいっ!!

やばい、普通にやばい。親和力の影響のせいで、無自覚魔王モード発動してるし。



『だから早くみんなを開放して。じゃないと・・・・・・私はあなた達を徹底的に叩き潰す』

「そうはさせないよ」



そう言ったのは、フェイト。フェイトは言いながら、通信画面の中のなのはを見据えていた。



「なのは、なのはが知っている事は逆なの。母さんもここの人達も・・・・・・なのは自身も、少しだけ本当の事が分からなくなってる」

『フェイトちゃん・・・・・・可哀想に。でも大丈夫だよ。フェイトちゃんは大事な友達だから、すぐに助けてあげる。
それでその悪い人達は、徹底的にお仕置きだね。もうこんな事をして公女を困らせないように、徹底的に』

「無理だよ。なのははここで、私に倒されるから」



言いながら、フェイトは術式を発動。足元に金色のミッドチルダ式魔法陣。



「ヤスフミ、フジタ補佐官、手はず通りにしてください。私は・・・・・・なのはを止めます」



フェイトは転送魔法を使っている。外に出て、なのはと一騎打ちするつもりだ。



「・・・・・・分かりました。フェイト執務官、御武運を」

「ありがとうございます」

「フェイトっ!!」



いくらなんでも、フェイトだけなんて危険過ぎる。他に同じように送り込まれてる人間が居ないとも。



「振り向いちゃだめ」



言いながらフェイトは顔だけを僕に向けて、僕をジッと見る。



「ヤスフミは公子を・・・・・・大事な友達を助けて、公女に罪を数えさせるんでしょ?
だったら足手まといな私の方になんて、絶対に振り向かないで」



少しだけ残念そうに微笑みながら・・・・・・言葉を続ける。



「本当はこんなのは絶対に嫌だけど、今だけはこう言う。・・・・・・振り切って。
私もなのはも、全部を振り切るくらいに速度を上げて、全速力で飛び込んで」

「・・・・・・フェイト」

「ごめん。ヤスフミに殴られてから、私なりに覚悟は決めてたんだ。
だから本当は最後まで付き合いたかったんだけど、私・・・・・・ヤスフミより遅いみたい」



フェイトは言いながら、右手を上げる。その手は拳を作っていた。

だから僕は同じように自分の右手で拳を作って、フェイトの拳に軽くぶつける。



「いいよ。・・・・・・ここまで一緒に居てくれて、心強かったから。んじゃ、ちょっと暴れてくるわ」

「うん。またあとでね」



そしてフェイトの姿が光に包まれて消えた。僕は俯いて拳を見つめて・・・・・・そして、顔をあげた。



「アルト、リイン・・・・・・行くよ。連中に・・・・・・連中に、全ての罪を徹底的に数えさせる」

≪えぇ。そして私達のクライマックスは、ここからですよ≫

「やるですよー! というわけでシルビィさん、シャーリー!!」

「了解っ! EMP分署、全速前進っ!! 目標、工業区画・・・・・・サードムーンッ!!」



あいつら・・・・・・待ってろよ。僕は今、お前達をぶっ飛ばす理由が一つ増えた。



「普通に局入り勝手に決定されて、マジでムカついてんだよっ! アレク、お姉さん一発ぶん殴っていいっ!?
いいよねっ! 答えは聞いてないからっ!! てゆうか、僕帰ったらどうすりゃいいのっ!? 真面目に頭痛いんですけどー!!」

「あぁ、恭文さん落ち着いてくださいっ! 姉さんを殴るのはいいですけど、色々空気が壊れてますからー!!」

「・・・・・・アレクさん、どんどんキャラが恭文さん寄りになるですね」

≪朱に交われば赤くなるんですよ。まぁ、今回は良いことだと思いますが≫

「ですです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私の後ろで分署が僅かに浮上して・・・・・・そのまま直進する。

なのはは砲撃を撃とうとするけど、私が盾になって射線を防ぐ。

なのはは悲しげにレイジングハートを引いた。それに少しだけ安心する。





やっぱり完全な洗脳とは違う。なのははなのはのままだけど、公女への好きの感情の強さ故にどこか歪んでしまっている。










「・・・・・・フェイトちゃん、どうして邪魔するのかな。やっぱり洗脳されてるんだね」

「違うよ。・・・・・・なのは、もうやめて。こんな事、意味がない」



EMP分署は浮上を続けて民家やビルを超えた。そしてどんどん飛んでいく。

私はバリアジャケット装備でバルディッシュを両手に構えて・・・・・・なのはを見据える。



≪レイジングハート、お前も何をしている。お前がマスターに付き従う性格なのは知っているが、これはおかしいだろ≫



バルディッシュが声をかけるけど、全く返事がない。



≪レイジングハート、聞こえているのだろう? 私の声に答えろ≫

「あ、無駄だよ。レイジングハートには、ちょっとお休みしてもらってるから」

≪・・・・・・高町教導官、どういう意味ですか≫

「レイジングハート、最近ずっとうるさかったんだ。こんなの絶対違うって。
私は落ち着いているのに、落ち着けーって何度も言うの」



どうやらインテリジェントデバイスは親和力の対象外らしい。だからレイジングハートは気づいたんだ。

なのはが徐々におかしくなっていることに。だから、止めようとしていた。



「でも私は普通でしょ? それなのにここに来るまでにこれ以上やるなら、もうマスターとは認めないって言うの。
私すごく悲しくなって、リンディさんに相談したんだ。それで・・・・・・レイジングハートのAIを一時的に封印したの」

「・・・・・・なのは」



笑顔でそう言い切るなのはが信じられなかった。レイジングハートは、心を一つに出来る相棒のはずなのに。

私達にとってデバイスはただの武器じゃない。一緒に考え、迷い、前に進めるパートナー。それはなのはが一番分かってるはず。



「まぁ、後で話して納得してもらうけどね。
私はおかしくなんてないし、おかしいのはGPOや今のフェイトちゃん達だって」

「・・・・・・分かった。もういい」



なのはと久々の本気の勝負。あの事故以来模擬戦は全くしてないし、これからもするつもりがない。

だから・・・・・・もしかしたら最後の真剣勝負かも知れない。それがこんな形だなんて、私は嫌だったな。



「もういい。もう、喋らなくていいよ。・・・・・・なのは、私は引けないんだ」



引けない。私はここで、やらなきゃいけない事があるから。そのためにここに来たかったから。



「ヤスフミに殴られて喝を入れられて、ようやく思い出したから。
私がここに来たかったのは、局を信じてもらうためなんかじゃない」



私は現状に戸惑って、真実を見失っていた。

見失ったから、本当にどうにかしなきゃいけない事を忘れていた。私、やっぱりバカだな。



「私が・・・・・・大好きなあの子の力になりたかったからなんだって。だから」

「あはは、意味分かんないよ。でもしょうがないなぁ。
だったら・・・・・・今その目を、覚まさせてあげるっ!!」










勝負はなのはが唐突に放ったアクセルシューターから始まった。





だけど負けない。今のなのはは・・・・・・私の知っている『高町なのは』じゃないから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・この巨大な物体が、どうやって飛んでいるのか色々と疑問だったりする。

疑問だったんだけど、そんなものはもう必要じゃなかった。

だってすごい量の熱光線が放たれて・・・・・・・こらこら、ちょっと待とうよっ!!





普通に殺る気満々じゃんっ! 宇宙人から見たら、これ自動迎撃とかって思えないってっ!!










「シルビィ、本当に大丈夫なのっ!?」

「任せなさいっ! これでも車もバイクも運転は得意なんだからっ!!」

「分署と車を一緒にしないでっ!? 絶対色々違うからっ!!」

「いいから黙っててっ! 舌噛むわよっ!? ・・・・・・さぁ、最大速度で行くわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」





マジで最大速度で行きやがった。EMP分署は丁度サードムーンの中腹に埋まるようにして、突撃。

衝撃で・・・・・・あぁ、僕の荷物とかがっ! 普通にきっと部屋の中が凄い事にー!!

とにかく停止した。停止して・・・・・・僕達は何も言わずに立ち上がる。立ち上がって、衝突した部分へと急ぐ。



外郭は見事に破壊され、目の前には薄暗い黒塗りの通路があった。・・・・・・一応、成功らしい。





「それじゃあ、突入メンバーは私とヤスフミにリインちゃん、アンジェラとジュンとナナちゃんね」

「あとはアレクだよ。パティとフジタさんとシャーリーは」

「私達は分署のシェルターに隠れています。敵方がこっちに侵入してくる可能性もありますし」



まぁ、それがいいよなぁ。普通にそれで人質取られても、僕は無視するもの。うん、遠慮なくね。



「あ、それとなぎ君」

「ん?」



言いながら、シャーリーは自分の右耳に付けていたイヤリングを外して、僕に手渡す。



「これ、私にはもう必要ないから。もしも使う状況が来たら、遠慮なく使って」

「・・・・・・ありがと」

「ううん。じゃ、頑張ってきてね。フェイトさんから色々預かってるんだし、負けは許さないから」

「あいよ。・・・・・・じゃあみんな、行くよっ!!」










というわけで、僕達は早速サードムーンに乗り込んだ。なお、目指す場所も分かっている。





フジタさん曰く、公女達は中枢区のコントロールルームに居る可能性が大きいらしい。だからそこだね。





そこを目指して、僕達は全速力。とにかく急いで・・・・・・ダッシュしまくるのである。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・パティ、フィニーノ補佐官、シェルターから動かないように。俺は少し行ってくる」



なぎ君達が出た後、私達は分署の緊急フィルターに入った。そして、フジタ補佐官がそう言った。



「補佐官、ちょっと待ってください。あの、それって」

「・・・・・・強化甲冑・玄武、装着」



瞬間、フジタ補佐官の身体が黒い光に包まれた。そうして・・・・・・え?



「玄武、装着完了」



ちょ、ちょっと待ってっ! これって確か、維新組の黒い奴だよねっ!!

黒い甲冑で、バイザー装着で両手に十手持ちで・・・・・・えぇっ!?



「あの補佐官、それって」

「パティ、今まですまなかったな。俺はこういう立場の人間だ。
・・・・・・責めは後で受ける。だが今はアイツらを助けさせてくれ。頼む」

「・・・・・・分かりました。でも、絶対に戻って来てくださいね?
そこだけは約束です。『補佐官』の今の居場所は、GPOなんですから」

「・・・・・・・・・・・・心得た」



それだけ言うと、フジタさんは黒い甲冑のまま全速力で走っていった。てゆうか・・・・・・え?

いやいや、なんですかこれ。つまり、フジタさんは維新組の・・・・・え、スパイッ!?



「パティさん、いいんですか?」

「いいんです。というより、実を言うと薄々気づいてたんです」

「えぇっ!?」

「維新組の黒い奴が出てくる時、必ず補佐官が居ないんです。
多分みなさんも同じです。というか、さすがに気づきますって」



いや、なんで苦笑いっ!? ここって、相当驚愕の事実とか、そういう所じゃっ!!



「だって補佐官、恭文さんが来る前は事ある毎に登場してたんですよ?
それで私達の現場活動を助けたりしてた。だから・・・・・・まぁ、いいかなーって」

「そ、そうなんですか。なんというか・・・・・・局では信じられないです。こういうの、絶対問題になるから」

「GPOは、局よりも緩い組織ですから。だから、私みたいなのでも捜査官になれますし」










パティさん、それは私には何にも言えません。普通に無理ですって。でも・・・・・・あぁ、そうなのか。





それならあの人は、もう維新組の人じゃないんだ。本当にGPOの中に入り込んじゃってるんだね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



全速力で廊下を走っていると・・・・・・目の前には一人の女性が立ちはだかる。

青い髪をポニーテールにして、白と青の司祭服。というか、やっぱり居た。

その名はサクヤ・ランサイワ。本来であれば、月分署に居るはずの人物。





そのはずなのに・・・・・・この中で再会だよ。この理由、もう言うまでもないと思う。










「・・・・・・サクヤ」



シルビィは静かに銃口を向ける。一応は警告のつもりなんだけど・・・・・・それはダメっぽい。

サクヤさんの目、さっきのなのはやリンディさんと同じ目をしている。



「みなさん、どこへ行くつもりですか」

「アルパトス公女を止めるわ」

「サクヤ、お願いだから話を聞いてっ!? アルパトス公女、とんでもない事をしようとしているのっ!!」



ナナの必死な声にも、サクヤさんは首を横に振る。振って・・・・・・悲しそうな顔をする。



「それはなりません。あなた方の行動は、次元世界の真理に反しています。行くならば、この私を倒してから」



と言うので、僕は遠慮なく飛び込む。飛び込んでアルトを袈裟に振るう。サクヤさんは両手をかざす。

青いシールドを発生させて斬撃を防ぐけど・・・・・・残念ながら無意味。シールドはアッサリ砕けた。



「悪いけど」



そのまま刃を返して、サクヤさんの腹に向かって右切上でアルトを叩き込む。



「行く道引いてらんないのよっ!!」



だけど、その刃が止められた。それも・・・・・・右手の平で。防御魔法は一切なし。で、全然動かない。



「そうですか。なら仕方有りません」



瞬間、サクヤさんの目が強く輝く。僕は咄嗟に下がりつつ、魔力スフィア生成。



「クレイモアッ!!」



一気に掃射して、サクヤさんを穿つ。サクヤさんは散弾の雨と爆煙に飲み込まれた。

僕はシルビィの左隣まで戻りつつ、アルトを正眼に構える。



「アルパトス公女のため、次元世界の平和のため」



え、嘘。全く変わり無い感じで、なんか声出してるんですけど。

そして、爆煙の中からサクヤさんが出てきた。でも、ちょっとおかしい。



「今だけは拳を握り締め、あなた達に神に代わって裁きを下します」





クレイモア、直撃したハズなのに全くの無傷なのよ。いや、変化はそれだけじゃない。

青い髪が金色になって、同じ色のオーラが出ている。というか、一歩ずつ踏みしめながらもなんか床が砕けてる。

というか、なんかすっごい見覚えある。アニメでこういうの、見た事ある。もっと言うと少年ジャンプで。



な、なんですかっ!? あのスーパーサイヤ人はっ!!





「おいおい、マズいぞっ! サクヤの奴、スーパーモードに変身しちまったっ!!」

「はわわ、アンジェラ普通に怖いのだー!!」

「待って待ってっ! そのスーパーモードって」



あんまりの衝撃に、僕はちょこっとド忘れしてた。でも、すぐに思い出した。

そう、これがサクヤさんのスーパースキル。メルビナさんのフォースフィールド張りのチート技。



「サクヤ、キレると身体能力と魔力が通常の5倍に跳ね上がるのよっ! そういうレアスキル持ちなのっ!!
なお、この状態だと体の周囲の金色のフィールドのせいで、銃弾でも魔力攻撃でもダメージが通らないわっ!!」



ド忘れしていたシルビィが、僕に対してとっても丁寧に補足を即座にしてくれた。

だから僕とリインは、声をハモらせてこう言うのだ。



「「うん、今思い出しましたっ! てゆうか、やっぱりチートですよねっ!!」」



なによこのチート能力っ! くそ、どいつもこいつも普通にチート技使いやがってっ!!



「ちょっと恭文、アンタのせいよっ! アンタがいきなり攻撃するから、サクヤキレちゃったのよっ!! せっかくこの私が説得を」

「僕のせいにするっておかしくないっ!?」

「さぁ、祈りなさい。そして懺悔なさい。自らの愚かさを神に」

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』





あーもうっ! どいつもこいつも平然とチート技ばっか使いやがってっ!!

とまとのパワーバランス、普通におかしいことになってるよっ!?

だったらもういいよっ! お前らが揃いも揃ってそういう気なら、僕だってやってやろうじゃないのさっ!!



実はチート対策で使う覚悟決めてたもんがあるのよっ! 遠慮なく使って、ぶっ潰してやるっ!!



こんなとこで消耗なんざしてられないし、行く道も引いてらんないのよっ!!





「それでは・・・・・・いきます」





言いながら、サクヤさんが踏み込んでくる。いや、そうしようとした。

でも僕はその前に、左手をかざしてサクヤさんを青い結界に包み込んだ。

サクヤさんは足をもつれさせてこける。というか、その場でへたり込む。



金色だった髪は元の鮮やかな青に戻って、表情は怒りのそれから柔らかい笑顔になった。





「・・・・・・温いね。てーか、選ぶシチュ悪過ぎ」



確かにアンタは強いんだろうね。でも、この状況で突っ込んで来たのがアウト。

普通に結界を張って閉じ込めるくらいの事は出来るのよ。



≪性格なんでしょうね。普通に宣言して突っ込んでくるとは≫

「サクヤさんが恭文さんと違って、良識的な性格で良かったです」

≪そうですね≫

「はい、お前ら黙れっ!? そして相変わらずシリアスが長続きしないねっ!!」



でも良かったよ。スーパーモードで結界が弾かれるんじゃないかと思ってたからなぁ。

僕は何気にサクヤさんを心配してたナナの方を見る。で、安心させるように笑う。



「ナナ、もう大丈夫だよ。サクヤさん、この結界の中に居る間は動けないから」

「いや、あの・・・・・・アンタ、サクヤになにしたのよ」

「ヒーリング結界を使ったの」





癒しの境地へと人を誘う、僕の固有スキルと言ってもいいヒーリング結界。

どんなに怒った相手だろうと無力化させるそれは、まさしくリーサル・ウェポン。

ただ、リーサル・ウェポンであるが故に、禁呪認定されているという悲しい術。



・・・・・・親和力レベルで人に影響与えるしなぁ。魔力消費も多いし、ホイホイは無理。





「・・・・・・恭文さん、僕はそんな魔法聞いたことないんですけど」

「アレク、言わないで。僕もどうしてこうなるのか不思議なのよ」



術式自体は普通の結界治癒のはずなのにさ。

クロノさんは瞬間詠唱・処理能力の影響と見ているけど・・・・・・うーん。



「とにかくこれでサクヤはOKって事よね。あとは・・・・・・メルビナか」



ナナは安心した顔をしながら、そう言う。・・・・・・そう、なんだよね。

まだ最強のチートが居るのよ。なんですか、絶対領域って。



「でもでも、恭文がこういう結界使えるなら楽勝なのだ。結界でパーッと出来るのだ」

「あ、そうだな。てゆうか、普通にアルパトス公女もOKじゃね?」

「ごめん、それは無理なのよ」



ジュンとアンジェラ、あとシルビィの嬉しそうな顔を壊すみたいで言いにくいけど、ちゃんと通達しよう。



「え、なんでだよ」

「まず、この結界は基本一つしか作れない。
で、一個形成すると魔力を3分の1以上持ってかれるの」

「・・・・・・マジかよ。じゃあお前、今かなり消耗してる?」

「かなりね」



言いながら僕は左手からマジックカードを三枚取り出して、発動。身体を蒼い魔力が包み込む。

お馴染みな回復魔法のカードだね。これで失った魔力分を、全部じゃないけど補充。



「そうなると、普通に」

≪それなら心配ありませんよ≫

「アルトアイゼン、それどういう事なのだ?」

≪こういう事です≫



なんて言いながら、アルトが僕の目の前に通信画面を開いてくれる。

そこには・・・・・・一人の男性。というか、すっごい見覚えがある。



「・・・・・・ランディっ!?」

『あー、よかった繋がった。シルビィ姉さん、みんなもお久しぶり。あと、蒼凪さん初めまして。ランドルフ・シャインボルグです』

「あー、どうも初めまして」



なるほど、丁度通信かけてきたのか。てか、僕に直かい。



「・・・・・・あの、その後ろの光景を見るに」

『はい。僕もサードムーン内に居ます。それと八神二佐達は高町教導官と交戦中です』

「八神二佐って・・・・・・あぁ、思い出したっ! 確かリインの家族で恭文の友達よねっ!!」



ナナが驚いた声をあげながら、画面の中のランディさんを見る。ランディさんが頷くけど、僕も驚きだよ。

てゆうか、はやて・・・・・・あぁそっか。ランディさんがここに居るなら、当然一緒だよね。



「じゃあランディさん、フェイトは」

『大丈夫です。高町教導官以外の戦力も居ないようですし、ハラオウン執務官が四面楚歌な状況だけは避けられました』

「・・・・・・良かった」



そこが心配だったから、ここは普通に安心した。

中央本部なりリンディさんが、なのはの手伝いに誰か引っ張ってきてる可能性もあったから。



『それでメルビナ長官は僕と協力者の方々が対処します。
こっちの方は心配いらないので、みんなは蒼凪さんと一緒に公女を止めてください』

「協力者? おいおいランディ、お前この状況で良く増援連れてこれたな。
だってそれ、八神二佐達とは違う人間なんだろ? お前、新米のくせにやるじゃないか」

『新米って・・・・・・あの、ジュン先輩? 僕だってそういうアテくらいはありますよ。
大体、そういうのを作っておけって教えてくれたの、先輩じゃないですか』

「お、そういやそうだったな。悪い悪い」



そして、ランディさんが僕を見ながら頷く。・・・・・・なるほど、僕にはその『アテ』がなんとなく分かったよ。

でも、これで良かったよ。普通にメルビナさんは大丈夫と。なら、僕はひたすらに前を目指すだけだ。



『それじゃあみんな気をつけて。それで・・・・・・また後で』

「えぇ。・・・・・・ランディも、気を付けてね」

『うん。あ、それで蒼凪さん』

「ほい?」

『八神二佐からの伝言です。・・・・・・『未熟でもここではアンタはヒーローやらなあかん。
それで世界一つくらい軽く救ってもらうと助かる』・・・・・・だそうです』


・・・・・・あのバカ。激励にしちゃあちょお気を利かせ過ぎじゃないの?

まぁいいさ。それならそれでしっかり応えるよ。まぁ、世界を救えるつもりなんて0だけどさ。



「じゃあランディさん、はやてには『言うくらいなら自分で救え、このぺちゃぱいが』と伝えておいてください」

『はい。・・・・・・えぇっ! 僕からですかっ!?』

「えぇ、お願いしますね。じゃあ、そういう事で」

『ちょ、ちょっと待ってくださいっ! さすがにそれは・・・・・・あの、もしもしっ!?』



それで通信は切れた。僕達は顔を見合わせて・・・・・・前に走り出した。

なお、サクヤさんには例のイヤリングを装着。これで結界が壊れても、増援にはならない。



「シルビィ」

「うん?」

「どうやらいわゆるザコ敵は居ないみたいだね」



出てくるかと思ったけど、内部はがらがら。そういう気配も基本的にはない。



「えぇ。まぁ、乗り込んで来る人間自体が居ないと想定していたんでしょ。そして、それは間違いじゃない」

「局もそうだけどEMPDも上層部は市長以外は全員バカになってるしね。
・・・・・・それに何より、チート連中ばかりだし。くそ、才能豊かな連中ってやっぱムカつく」

「確かにそうよね。ホントに・・・・・・私達がどれだけ苦労してると思ってるのかしら」

「こうなったら、絶対に鼻を明してやる。生まれ持っての恵まれた才能にあぐらかいてる奴ら全員ぶっ潰してやる」

「あ、それは面白そうね。その話、乗ったわ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・シルビィも恭文も、なんだか燃えてるのだ」



燃えてるですね。前方を走って、リイン達とか置いてけぼりで気合い入れてるです。



「そ、そうね。でもあの燃え方は色々空気読めてないと思うんだけど」

「・・・・・・先天資質に恵まれた人達に、何か恨み辛みがあるんでしょうか」

「ま、まぁアイツらも色々あったんですよ。あたしもシルビィに関してはそこはちょこっと知ってるし。な、リイン」

「えぇ。恭文さんも色々あったのですよ。・・・・・・あぁ、そういう部分からも意気投合してるんですよね」










リインは改めて納得・・・・・・ん? センサーに反応です。この曲がり角の先、500メートル前方。





反応は二つで、データに適合する人物有り。・・・・・・・・・・・・やっぱり出てきたですか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ただ前に、ただ前に走って、公女を取っ捕まえるために中枢区を目指す。





目指している僕達の前にまた影。それはアイアンサイズ。





二人は立ちはだかるように、僕達の行く手を・・・・・・あれ、なんか表現おかしくない?










「ダンケルクにキュベレイっ!!」



あと、目もおかしい。瞳が虚ろで、口元からヨダレが出てる。

というか、あの目は見た覚えがある。アレは・・・・・・間違いない。



「・・・・・・殺す。侵入者は、殺す」

「アルパトス公女・・・・・・お守りするんだ」





あぁもう、コイツらもやられたんかいっ! てゆうか、普通にイヤリングないしっ!!

・・・・・・だから四人同時で転送したのか。納得したわ。さて、どうする?

真正面からやり合ってどうにかするしかないけど、ここで時間の問題が邪魔をする。



頼みの綱だったHa7が存在しない以上、熾烈な戦いになるのは明白。





「・・・・・・シルビィ、アンタは恭文達と公子と一緒に突っ切りなさい」

「あたしらが道を開く。お前らは遠慮なく暴れてこい」

「ナナちゃんっ!? それにジュンもっ!!」



走りながら僕達四人は二人を見るけど、それで・・・・・・何も言えなくなった。

というか、有無を言わさない目をしてたもの。



「私とジュン、アンジェラはアイツらの相手をする。アンジェラ、悪いけど付き合ってもらうわよ。
さすがにあたしと脳筋ジュンだけじゃ、アイツらの相手は厳しいのよ」

「分かったのだ。・・・・・・恭文、アレク、アンジェラはちょっとお別れだけど、しっかり頑張るんだよ?」

「アンジェラ・・・・・・あの、ありがと。ジュンさん達も、ありがとうございます。・・・・・・恭文さん」

「分かった。リイン、僕の肩に乗って」



僕は一端足を止めて、アレクを後ろから抱える。



「はいです」



リインが右肩に乗る。それを確かめた上で、ジガンのカートリッジを1発使用。そこから魔法を発動。



≪Axel Fin≫



両足に蒼い翼が生まれる。これなら、充分に一気に突き抜けられる。

その間にジュンは加速して・・・・・・右拳をキュベレイに叩きつける。



「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そしてアンジェラは両手に持ったロッドを右薙に振るって、ダンケルクに打ち込む。



「いっくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」



そうして二人がアイアンサイズを押さえ込んで一瞬開いた道に向かって、僕は全速力で加速して突き抜けた。

シルビィはその後を追って同じように走る。それで、進みながら叫ぶ。



「三人とも、またあとでねっ! あとアンジェラ・・・・・・アレクは僕達でサポートするから、安心してっ!!」

「分かってる・・・・・・のだっ!!」





ダンケルクはアンジェラを左手で乱暴に弾くようにして一旦距離を取る。

そして追撃で貫手を叩き込んできたダンケルクの動きを見切って、アンジェラは跳ぶ。

跳んで、僕達の背中を守るような位置まで跳び越えて、ダンケルクと対峙した。



キュベレイに殴りかかっていたジュンも同じく。カウンターの右拳を左に下がって避けて、アンジェラの隣に行く。





「シルビィ、恭文、リイン、そっちは任せたっ!!」

「しっかりと決着、つけてきなさいよっ!!」

「「「了解っ!!」」」





・・・・・・ただ前へ。ただ、ひたすらに前に。なんだろ、すごく心地がいい。

信じる、信じられてる。背中を預けて預けられるって、こういう事なんだよね。

確かにGPOは、肌に合ってるのかも知れないな。局よりはずっとだ。



でも、今は・・・・・・今はただ前へ。今を覆さなきゃ、行く先なんて無いも同然。





「シルビィ、リイン、アレク・・・・・・このまま一気に行くよっ!!」

「もちろんっ!!」

「全速力で行くですよっ!!」

「はいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえずアレだ、サクヤが妙な表情で癒されているのは分かった。

右の耳にもうお馴染みとなったイヤリングも装着されているし、害は無いだろう。

とにかく俺も前だ。こうなっては、ただひたすらに正面衝突しかあるまい。





フェイト執務官のおかげで、後ろの方は大丈夫そうだ。少なくとも魔王の追撃はない。

軽く周辺をサーチしたが、状況は俺達にいい方向で動いている。

メルビナ長官もアイアンサイズも、カミシロ達やシャインボルグ捜査官と協力者達によって足止めされた。





公子とシルビィに蒼凪とリインは中枢区に向かって直進中。さて、俺も後を追う・・・・・・いや、待てよ。

賊の相手は蒼凪達に任せた方が得策か? 正面衝突している間に、公女が親和力を強引に振り撒いては敵わん。

公女がサードムーンの設備を利用した上で、ダメ押しの行動をしようとしているのは既に明白だ。





そして仕様書になかったとしても、それが出来るだけの何かを勝手に建造している可能性は大きい。

あとはサードムーンのシステムの中に、公女の次元世界征服の手がかりになるようなものがあるかも知れん。

どちらにしても事後はまた荒れるんだ。証拠固めなどは色々と必要になるだろう。よし、やることは決まった。





俺はその調査と阻止だな。これは今俺と言う存在が、敵や味方のどちらの目からも離れているからこそ出来る事だ。

それになにより、俺はこっちが専門だ。戦闘の心得はあるがそれでも。

・・・・・・維新組隊長陣の使う強化甲冑には、四神の名前を宿している。そして、それぞれに特化能力がある。





ミドウ総大将の赤の甲冑が朱雀。腕力重視のセッティングで、古武術に強い総大将仕様。

アシナ総大将代理の青の甲冑が青龍。ポータブルキャノンのような重火器の使用を前提とした、火力重視。

シンヤの白の甲冑が白虎。スピード重視の格闘戦仕様。そして俺の甲冑が黒の玄武だ。





玄武はシンヤの白虎を基本ベースとして作成された甲冑。一応軽量型と言ってもいい。

だが玄武が特化しているのは、他の三神のような戦闘ではない。

玄武は他に比べて、スピードはともかく・・・・・・腕力も火力も平均的な甲冑だ。





俺自身が多少心得があるというだけで、総大将達の甲冑ほどの能力はない。

そんな玄武の特化部分は・・・・・・索敵と電子戦、そして指揮能力だ。

これは俺の本来の得意技を、最大限に活用出来る仕様になっている。





まぁ結論だけ言おうか。この玄武のスペックと俺の持ちうる電子戦の知識。

それを最大限に活用すれば、サードムーンのシステム掌握も可能なはずだ。

蒼凪とシルビィ達が公女の行く手を阻むなら、俺はその間に公女の翼をへし折る。





そして地に堕ちてもらう。それで詰みとさせてもらおう。





とにかく俺はすぐに通信を繋いだ。向こうに探知されないように、ある人物に向けてだ。









『・・・・・・はい。というかフジタ補佐官、どうしたんですか?』

「フィニーノ補佐官、突然ですが少し手伝ってください」



玄武の能力を信じていないわけではないが、事態が事態だ。こちらも全力を持って当たらせてもらう。

聞くところによると、フィニーノ補佐官は機械・電子関係のエキスパートとか。ここで頼らない理由はない。



「確かフィニーノ補佐官は、先程の分署のような形の事を以前からやりたかったんですよね。
それなら・・・・・・今から俺達でサードムーンを掌握して、好き勝手に動かしましょう」

『はぁっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



突っ切る覚悟を決めて、僕達は前に進んで・・・・・・中枢区にたどり着いた。

外壁は黒く、だけどどこぞの体育館とかホール張りに開けた空間。

そこに連中は居た。赤い髪の集眼の女と、アレクと同じ色の髪の女。





中枢区の奥、何やらバカでかいコンピュータらしきものの前に、神を気取る女が居た。










「・・・・・・GPO、それに古き鉄・・・・・・あと、アレク」

「自分の弟をついで扱いたぁ、随分だね」

「役に立たない弟ですもの。私の願いを、理想を理解出来ないんだから」



僕達は警戒しつつ、構える。シルビィは銃口を公女に向け、僕は・・・・・・アルトを鞘から抜く。

確か、集眼の女はオーギュストだっけ? ソイツがサーベルを引き抜いて、僕達に切っ先を向ける。



「・・・・・・理解なんて出来ないよ」



そんな中、アレクは一歩踏み出して声を上げた。もう、アレクは逃げない。

迷いも躊躇いも、恐怖すらも抱えて・・・・・・公女を見据える。



「出来るわけ、ないよ。みんなおかしくなってきている。この力のせいで、みんながだ。
メルビナ長官も、EMPDに管理局・・・・・・恭文さんやシルビィさん達の家族もだ」

「アレク、どうして分からないの? みんな、幸せになっているじゃないの。
私を好きだと言ってくれる。そのために尽くす事が幸せになる。それの何がいけないの?」



本当に疑問という顔で、公女・・・・・・いや、アルパトスは首を傾げる。首を傾げて、言葉を続ける。



「でも、そのために沢山の人が死んだ。ううん、このままだとまた誰かが死ぬかも知れない」

「尊い犠牲よ。だけど大丈夫。その犠牲は決して無駄にはならない。私が・・・・・・この力がある限り。
私が、世界中の全ての人間を幸せにするわ。もう誰も悲しい思いをしなくてすむ」

「姉さん・・・・・・!!」

「まず手始めに」



公女が僕を見る。そして強烈な虚脱感に襲われて・・・・・・僕は、両手を降ろす。



「まずは古き鉄、あなたの事はリンディ提督から頼まれているの。
私からお話して、局入りを説得する約束もしたわ」



言葉は続く。公女は微笑みながら、僕に手を差し伸べる。僕は、俯きながら一歩ずつ近づく。



「さぁ、こちらへ来なさい。あなたはもう古き鉄などでなくていい。
これからは私の・・・・・・世界のために戦う、選ばれた騎士よ。オーギュ」

「は」



ゆっくりと、ゆっくりと歩く。両足にアクセルフィンを生やしたまま、歩いて・・・・・・前に進む。

進んで、公女との距離は20メートルを切った。



「古き鉄・・・・・・いや、蒼凪恭文。これからは私と共に公女のために命を賭けよう。まずは、あの不埒者共を処罰するのだ」

「・・・・・・姉さん、オーギュ」

「アレク、ごめんなさいね。でも、これは必要な事なの。カラバを、私達の居場所を取り戻すために」

「無駄だよ」



アレクがそう呟く前に、僕は踏み込んでいる。

そして・・・・・・アルトを公女に向かって、左切上に叩き込んだ。



「・・・・・・なっ!!」



・・・・・・でも、刃は届かなかった。金色の障壁が公女の周りに展開して、アルトの斬撃を防いだ。



「蒼凪さんに、僕達の『親和』は効かない」

≪・・・・・・やっぱり簡単にはいきませんか≫

「そうだねっ!!」



言いながら、一気に後ろに跳んで距離を開ける。

金色の障壁が大きさを増して、後ろのコンピュータと公女を守る半径5メートルほどのドームに変わった。



「・・・・・・オーギュ」

「はっ!!」



着地した所を狙って、10時方向から突きが飛んで来る。僕は身体を時計回りに回転させる。



「飛天御剣流」





回転させながら、襲撃者・・・・・・オーギュストの背中を狙って、アルトの刃を叩き込む。

刃は打ち込まれる。斬撃がオーギュストの背中を、髪を捉える。

捉えて、回転を鋭くしながら引き斬るようにして、アルトを振り切る。



髪とバリアジャケットが斬り裂かれて、オーギュストはそのまま僕に吹き飛ばされた。



僕の目の前にはオーギュストの赤い髪が舞い散る。髪は、振り切られた刃の勢いに乗せられるように右に飛ぶ。





「龍巻閃もどきっ!!」



・・・・・・オーギュストは近くの壁に叩きつけられ・・・・・・いや、身を翻して滑るように着地した。

信じられないという顔で僕を見ながら、サーベルをまた構える。というか、手応えがおかしかった。



「無駄な抵抗は」



どうやらまた公女が親和力を行使したらしい。



「おやめなさい」



でも、全く効かない。僕は平然とそれを吹き飛ばす。



「無駄だ。僕の二つ名、知ってんだろ?」



・・・・・・マジで自分の力が通用しない相手が居るとか、考えてなかったらしい。

でも残念。それがお前の本気だとしたら、僕に親和は通用しない。



「古ぼけた鉄は、親和という鎖じゃあ縛れないんだよ」

≪それよりもあなた、その身体はどうしたんですか≫



アルトが言うのも無理はない。僕達はコイツの身体を斬った時、金属質な手応えを感じた。表面ではなく内部的にだ。



「バリアジャケットだけじゃない。身体自体にも何かしてるだろ」



傷口からは血が流れてるけど、全然平気という顔でオーギュストは立ち上がって僕を見る。



「・・・・・・・・・・・・さすがは古き鉄と言ったところか」



多分コイツの身体、グリアノスみたいなサイボーグ状態になってる。

反応を見るに痛覚・・・・・・感覚的なものはある感じだけど、それでも普通の人間の身体じゃない。



「この目はな、クーデターの時に我が兄に潰された」



忌々しげに眼帯に覆われた瞳を左手で覆う。・・・・・・そう言えばそんな噂話もあったっけ。



「それだけではなく、私は公女のご家族を守れなかった。・・・・・・悔やんださ。
力がないからこれだと何度も・・・・・・何度もだ。そうして私は覚悟を決めた。人を捨て去る覚悟をだ」

≪・・・・・・そのために自分の身体を改造したわけですか≫

「そうだ。幸いなことにこの世界にはそういう技術が山ほどある。そして、そういう技術者もだ」



そうだね。ヴェートルもそうだけど、次元世界にもそういう技術は本当に色々ある。

戦闘機人だったり、人造魔導師だったり・・・・・・ホントに色々とだ。



「蒼凪恭文、公女のお心が伝わらぬ以上、お前はもう死ぬしかない。
私は・・・・・・お前より強い。人では私には勝てない。勝てるはずがない」



言いながらまたオーギュストが踏み込む。僕は左に大きく跳んで、その突きを避けた。

待て待て、初動が見えなかったぞ。普通にフェイトの真・ソニック・・・・・・いや、違う。



「私は人を捨てた。それによって強さを得られた。
何ものにも揺るがず・・・・・・今度こそ大事なものを守れる力をだっ!!」



系統的には多分美由希さん寄りだ。魔法じゃなくて、完全な身体能力でそれをやっている。

言うだけはあるって事か。でも、僕はコイツの言葉に違和感を強く感じていた。



「・・・・・・お前より強い? ザケるな、それはこっちのセリフだ」

「ですです。その程度で恭文さんに勝つ? 無理なのです」



言いながら僕の隣に来ていたのは、リイン。リインは、不敵に笑いながらオーギュストを見据える。



「ユニゾンデバイス、どういう意味だ」

「あなたは捨てたんじゃない。ただ逃げただけ。そんな人が恭文さんに勝てるわけがない」



オーギュストの視線が厳しくなる。そして、また右の刃を引いた。



「私は知っている。捨てる事より、捨てない事の方がずっと勇気が必要なのを。
それを今から見せつけてあげます。・・・・・・恭文さん」



リインは僕を見ながら頷く。だから僕は頷き返しながら、オーギュストを見据える。そしてリインと一緒にこう叫ぶ。



「「変身っ!!」」



身を包むのは、青と白の螺旋。螺旋が弾けて・・・・・・僕の髪と瞳は、空色に変化していた。

ジャケットはリインのそれを模したような薄手の物になり、僕は目を見開いて、倒すべき敵を見据える。



【「・・・・・・最初に言っておくっ!!」】



躊躇いも迷いも、恐怖さえも抱えて、僕はアルトを肩に担ぎながら左手でオーギュストを、そして公女を指差す。

今この瞬間に、過去に変わっていく一瞬に、今を覆すと言う決意を込めて・・・・・・最初に言っておく。



【「僕達はかーなーり・・・・・・強いっ!!私達はかーなーり・・・・・・強いですっ!!」】



・・・・・・あれ、なんかリインとハモってる? でもでも、リインって電王見てないんじゃ。



「リイン、今のどうした?」

【恭文さんがこの間言っていたの、真似てみたのです。
というかそれでハモるって・・・・・・やっぱり、リイン達の愛ゆえなのですね♪】



あははは、やっぱりシリアスが長続きしないなぁ。でも、いいか。これも僕達らしさだ。



≪ついでに言っておきます。私達は最後まで、徹底的にクライマックスです。止められるとは思わない方がいいですね≫

「・・・・・・ふざけているのか」

「お前の人生ほどふざけちゃいないさ」



即答でそう返すとオーギュストの表情が固まり、目を見開いた。



「てーかお前相手だと、ふざけないとやる気出ねぇし。・・・・・・バカじゃねぇの? 口を開けば公女公女。
それで色々捨てても無駄って感じ? だってお前、僕にここで徹底的にぶちのめされるんだから」



怒り心頭という顔で、僕に突っ込んでくる。だから僕は、右薙にアルトを叩き込んで・・・・・・交差した。

互いに手傷は無し。刃と刃はぶつかり合って、一瞬の間に火花を散らす。



「・・・・・・お前を、殺す」

「殺す? ・・・・・・立場弁えろよ、三下が。この状況で殺す選択を得られるのは僕だけだ」



振り返りながら、左手を向けてクイクイと挑発してやる。そして・・・・・・いつも通りにらしく笑う。



「さぁ来いよ。僕が今からお前達に叩き込んでやる。グゥの音も出ない、圧倒的敗北ってやつをだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミ、ぶっ飛ばしてるなぁ。私と公子、何気に置いてけぼりだし。というか、私はちょっと気づいた。





修羅モード・・・・・・自己催眠を発動している時のヤスフミ、口調が少し荒くなるの。





いつもより男の子分が強くなるのかな。でも・・・・・・うん、そういうヤスフミもちょっと素敵かも。










「シルビィさん、僕は大丈夫なので、恭文さんの援護を」

「ダメです。増援が来る可能性もありますし、私は離れられません」





あぁもう、悔しいなぁ。オーギュストは相当強敵っぽいし・・・・・でも、だからこそ私は動けない。

もう向こうは完全に公子を切り捨てている。つまり、殺しても何の問題もない。

一瞬の隙を突かれて、公子がマクシミリアン・クロエみたいになる可能性は大きい。



ヤスフミとリインちゃんがオーギュストの相手をしていて、公女はその観戦。



ううん、平静を装いながらも何度も親和力を送り続けてる。もちろん、その対象はヤスフミ。





「でも、これで恭文さんの邪魔をされても困るな。
跳ね返すにしても、もしかしたら何かしら消耗してるかも知れないし。・・・・・・よし」



言いながら公子は自分のイヤリングを外して、私に手渡してきた。

そして、これでカットされていた親和力が完全に開放された状態になった。



「公子、何を」

「前にも話したと思いますけど、親和力は親和力を打ち消し合うんです。
だからこそ、親和力の保持者には能力が効かない」



それはかなり最初の段階で説明された事項。

だからこそ公子は、公女に不信感を持って逃げ出せた。



「僕の親和力を広く、そして強く展開して、姉さんの出している親和力を打ち消します。
さすがに何の設備も無しでEMPやサードムーン全域は無理ですけど・・・・・・この中枢区だけなら」

「そんな事可能なんですか?」

「正直一発勝負ですけどね。でもここは、恭文さんを見習って」



目の前で斬り合いを始めたヤスフミ達から一端目を逸らして、公子は私を見ながら苦笑する。

・・・・・・初めて会った時は本当に怯えていたのに、今はもう違う。多分今の公子が、本来の公子なんだ。



「上手くいけば・・・・・・オーギュを支配している姉さんの親和力の効果を弱める事も出来るかも。つまり」

「彼女を弱体化させることが出来る?」

「はい。そうすれば一応、僕も戦う事が出来ます」



少しだけ誇らしげに王子が笑う。だけど、それは一瞬。すぐに真剣な顔で公女を見据える。



「・・・・・・シルビィさん、イヤリングをしっかり持っていてください。
恭文さん達はともかく、シルビィさんはそれでしか親和力を跳ね返せませんから」





あ、そっか。イヤリングがなかったら、下手をすると私が公子の親和力にやられちゃうって事よね。



打ち消し合うつもりが間違えて、公子の親和力の方が勝ってこの空間に広がる可能性だってあるかも知れない。



・・・・・・よし、気をつけておこう。やっぱり恋は自分の意志でしたいもの。親和力で好きになるなんてダメ。





「分かりました。・・・・・・公子、私がしっかりガードしますので、全力で戦ってください」

「ありがとうございます」










公子は瞳を閉じて集中し出した。特に変化はないけど、親和力を普通より放出しまくっているんだと思う。

・・・・・・こうして、いわゆる最終決戦は最後の局面を迎えた。

今このヴェートルを中心とした次元世界の命運の鍵は、私達の手に委ねられたのかも知れない。





そしてその中心人物は、二人の男の子。一人はこの間まで戦うことに怯えていた、本当に心の優しい男の子。





そしてもう一人は・・・・・・私のアバンチュールの相手。




















(Report13へ続く)






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