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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第16話 『身も心も裸になって、そうやってようやく話せることもある』:1



あー、暇やー。つか、うちの末っ子はホンマに・・・。





「主、仕方ないかと。リインは蒼凪を心から好いていますから。
元祖ヒロインとしては、危機感を持つのでしょう。出番が欲しいと泣き出しましたし」

「アンタいつからそんな軽い言い回しするようになったんやっ!?
いや、まぁ・・・そりゃ分かるで? なんやかんやであの子、登場回数少ないしなぁ」





部屋で、ザフィーラとヴィータと一緒に夕飯を頂きながら、そんな話をしとる。議題は、海鳴に男追っかけて休みとったうちの可愛い末っ子。

まだ8歳とかそこらなのに・・・育て方、間違えたんかなぁ。





「はやて、ザフィーラのセリフじゃねぇけど、バカ弟子とリインは、本当に繋がりが深いんだ。下手すると、アタシら以上にな」

「・・・せやなぁ。リインは、祝福の風であると同時に、古き鉄の一部やしな」

「それに、高町とヴィヴィオのことも気になったのでしょう。
第三者であり、普段から可愛がられている自分がいれば、多少なりとも棘が立つのを防げると考えたのでは?」

「あー、それがあったか。いや、しかしなぁ・・・」





なーんか、うちはちとヤキモチ妬いとる。相手は恭文。原因は、リインとの絆の深さや。

もちろん、リインと恭文は出会い方が出会い方やし、繋がり深いのは分かるで?

あの子にとっては、自分の命を守ってくれた恩人でもあるしな。



恭文も、リインを妹かなにかみたいに思うてるし、リインも、兄っちゅうか、大事な存在として思うとる。ある意味相思相愛や。



それにや、どんな理不尽な状況も覆せる、あの二人にしか切れない、最高の切り札があるしな。それもあるから、余計にそうなるのも分かる。

せやけど、主としては危機感覚えるんよー! いや、真面目な話やでっ!?





「・・・よし、今度リインと一緒に休みとって、好感度アップのために頑張るわ。つか、うちは努力が足りんのかもしれん」

「主、頑張ってください」

「まかせてーなっ! ふふふふ・・・恭文には負けんでー!!」

「バカ弟子も大変だな・・・」










うちは、窓から見える月を見上げて、心から思うた。そうや、うちは主人公の一人。せやから・・・恭文には、負けんっ!!




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第16話 『身も心も裸になって、そうやってようやく話せることもある』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで・・・久々にやってきました海鳴・スパ・ラクーアッ!!





早速、僕達は男湯組と女湯組へと分かれて入ることになった。いや、楽しみだなぁ。










なんて言いながらも、服を脱いで、タオルを巻いて浴場内に入ると・・・うん、懐かしい気持ちになった。





だって、去年の年末の時と変わってなくて、逆に安心した。これで絢爛豪華にだったらどうしようかと・・・。










「そうだね。あ、でも変わってることが一つ有るかな」

「なに?」

「恭文が一緒ってこと。前回は、男の子は僕だけだったから」

「そういえばそうですね。それで、みんなから『一緒に入ろう』って言われてたです」





ここは羨ましいって言うのが正直な反応なのだろう。だけど、僕の口から出てきたのは・・・一つの言葉だった。





「エリオ、大変だったんだね・・・」

「ありがとう・・・。というか、アレ逆セクハラだよねっ!? 僕、完全にアウェイだったよ・・・」





色々大変だったんだね。うん、よく分かるよ。・・・それはさておき。





「それじゃあ、思いっきり楽しむか。今回は僕も居るしね」

「うんっ!」

「楽しむですよー♪」










そうして、僕達はお風呂巡りへと繰り出したのだった。




















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとまってっ!!」




















そのまま、歩き出した僕達を呼び止める声。・・・エリオだった。




















「エリオ、どうしたですか?」

「どうしたじゃないですよっ! なんでリインさんがこっちに居るんですかっ!!」





そう、ここは男湯。リインも来ていたのだ。というか、最初から。リインの衣類は、男湯のロッカーにある。

というか、このタイミングでツッコむのか。もうちょい早く来ると思ったのに。





「そういうことじゃないよっ! だって、リインさん女の子だよっ!?」

「リインは、11歳以下ですから、大丈夫ですよ?」

「そういうことじゃなくてっ! その、平気なんですかっ!?」

「当然です。まぁ、エリオはちょこっとアウトですけど」

「なんで僕っ!?」



なんでだろうね。うん、僕には分かんない。



「それなら、恭文はどうなるんですかっ!!」

「いや、特に気にならないし。だって、リインとお風呂入るし」

「恭文さんとは、何回もお風呂入ってるから、大丈夫ですよ♪」

「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」










そう、僕とリインは、出会った当初から一緒によくお風呂に入っている。

・・・いや、出会った本当に最初の頃は、リインが大きくなれなかったから、僕がフォローしないと危なかったんだけどね。

で、それはリインがフルサイズになれるようになった今も変わらない。

泊まりに来た時は、一緒にお風呂に入って、頭を洗ったり背中を流したり、お風呂の中で一緒に100まで数えたりするのだ。










「というか・・・リインさんはいいんですか、それ?」

「大丈夫ですよ。恭文さんとは、長い付き合いですし。
というか、今はこういう場所ですからバスタオルしてますけど、本当ならいらないですよ?」

「あぁ、そうだね。僕もつけないしね」

「おかげで、モザイク入るですよ」



リイン、その表現はいろいろアウトだよ? いや、こち○とか、お風呂のシーンで湯気とかじゃなくて、ガチなモザイク入ったアニメ多いけど。

あ、じゃあ今の僕もモザイク? いや、それはさすがにリリカルなのはじゃないって〜♪



「そんな表現しないでくださいっ! というか、恭文も、そんな楽しそうに笑わないでっ!!」



なお、僕も腰にタオルを巻いてるので、モザイクはありません。



「エリオ、私と恭文さんは、これくらい普通です」

「とにかく、せっかくのお風呂、楽しまないとね。いこうか、リイン」

「はいです♪ さ、エリオも来るですよ〜」

「・・・これ、本当に普通なんだよね?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・私、リインちゃん見習って行ってこようかな? ほら、最近カップル風呂って出来たし」

「美由希ちゃん、シャレにならないからほんとにやめてね。つーかカップルじゃないでしょカップルじゃっ!!」

「いやだなぁエイミィ、わかってるって。冗談冗談」





そう言いながら笑って手を振るけど・・・どうだか。美由希ちゃん、恭文くんのこと本当に可愛がるもの。というか・・・好き?





「違う違う。弟として可愛がってるだけだって。いや、反応が可愛くてさ〜♪」

「本当に? いや、私はときどき怪しく思うよ」





よく抱きついたり撫でたりしてるし。あぁ、いつかはお姫様抱っこした時も有ったなぁ。恭文くんが風邪引いて倒れたからだけど。



それで、恭文くんもやっぱり男の子なのですよ。えぇ、間違いなく。

美由希ちゃんみたいに可愛くてスタイルのいい女の子にそういう事をされて、口ではなんだかんだ言いながらも、本能的な部分では悪い気はしない。



というか、強く言うと泣きそうになるので、あまりハッキリとした拒絶が出来ない。

なんていうかさ・・・不憫だよね。どうしてこれがフェイトちゃんに出来ないのか・・・。





「でも、私は大人だもの。ちゃんと分別はつけてやってるつもりだよ? 優しくするばかりじゃなくて、ちゃんと厳しくもするし」

「いや、見ててそうは思えないんだけど」





厳しくするっていうのは、恭文くんが迂闊なこと言う度にアイアンクローや当て身を食らわせるのとは違うと思うよ?

しかも、その後は痛い思いさせた分だけすっごく優しくするじゃないのさ。今日だって、膝枕して告白紛いなこと言ったっていうし・・・。





「飴と鞭の使いようと言って欲しいなぁ」

「いや、飴が多いからっ! 9:1くらいの割合で多いからっ!! うちの末っ子を糖尿病予備軍にするつもりなのっ!?」

「そんなことないと思うんだけどなぁ。・・・じゃあ、そういうエイミィはどうなの? 私からするとエイミィこそ甘いと思うけどな」

「まぁ・・・ね。でも、美由希ちゃんやすずかちゃんほどじゃないよ。あくまでも、末っ子として可愛がってるだけだし」





そりゃあ、ついつい頭を撫でたりしてしまうけど・・・あの撫でられて、文句言いながらも照れてる顔がまた可愛いんだよね〜。

声も顔立ちも身長も女の子みたいだしさ、あの年であれは反則だって。

クロノ君だって昔はそうだったけど、今の恭文くんの年には、身長も伸びて声変わりもしてたよ。



でも、変わりないようで安心した。

そりゃあ、通信とかメールはしてたけど、やっぱ心配だったんだ。あの子、こうと決めたら誰にも止められないもの。

アルトアイゼンもそうなんだよね。本気の古き鉄は、だーれも止められない。敵も、味方も。



だから・・・ちょこっとだけ、不安だったりする。



いや、例外はリインちゃんか。あの子は蒼天を行く祝福の風であると同時に、古き鉄の一部だから。言うなれば、緊急ストッパーだね。



・・・でもさ、いつか、フェイトちゃんやなのはちゃんでも届かないようなところに、フラって飛んでいっちゃうんじゃないかって、思うのよ。

本当に、ちょこっとだけ。





「・・・ま、あの子は自由に、自分のために戦うのが性にあってるだろうしね。または、フェイトちゃんやリインちゃんを守るため」

「やっぱり、御神の剣士から見ても、そう思う?」

「思う思う。あの子は不特定多数のために命張るような子じゃないって。
世界なんてどうでもいい。でも、たった一人の大切な人のためなら、命だって賭けるタイプだよ」





あぁ、それは正解だね。私もそう思う。現にフェイトちゃんにそれだし。





「フェイトちゃんやリインちゃんっていうストッパーが無かったら、多分エイミィの危惧どおりになると思うな。
・・・命を賭けた戦いが嫌いでもないみたいだし、不安はよくわかる。恭ちゃんをちょっと危なくするとアレだよ」



・・・そこまでいいますか。



「まぁ、先輩剣士としてはね。それに、今だって完全に、局の中に入ってるわけじゃないんでしょ?」

「そうだね。やっぱり・・・美由希ちゃんも知ってると思うけど、昔のことがあるから。局の正義とかに背中は預けたくないみたい」

「だろうね。見てて変わってなかったから、そうだろうなって思った。・・・やっぱり、ちゃんとして欲しい?
そんなこと言わないで、局のこと完全に信じて、重いものとか預けて、役職とかにもついて貰って・・・って」

「・・・うーん、どうだろ。半分半分ってとこかな。恭文くんの、そうしたいっていう気持ちは分かるから。
私も、美由希ちゃんと同じ意見だし」





実際、なのはちゃん達が今回関わった事件だって・・・局上層部の不正と横暴。ぶっちゃけちゃえば腐敗が原因の一つだしね。

なんていうかさ、私の周りには比較的まともな人間ばかりだったから、気づかなかった。

でも、子育てし始めて、客観的に見る部分が増えて・・・気づいたよ。



管理局って、まともじゃないよね。



組織自体がさ、志のちゃんとしている人の数が多いから、なんとかなっているだけだと思う。・・・身内擁護とか言わないでね?

私、前にヘイハチさんが『こんな胡散臭い組織のために戦うのなんて、真っ平ゴメンじゃ』って言った時、頭きてたけどさ。

だって、元はあの人だって局員なのに。



でも、今ならその気持ち、分かるもの。まぁ、それでもですよ・・・。





「でも・・・家族としては、理屈抜きで心配なんだ。保証みたいなものがあるわけでもないしね。
貯金とかはしっかりしてるみたいだし、あの子は、本当に人にも恵まれてるとは思う。だけど、保証のある生活して欲しいなとか、ちょっと思ったり」

「・・・そっか。お姉ちゃんは大変だね」

「大変だよ〜。うちの末っ子とそのパートナーは、誰にも止められないし、答えも聞かないんだから」

「あ、それなのはも。というか、あの二人似てるよね」

「恭文くんの方が性悪だけどね。したたかで、狡猾で。まぁ・・・そんな子だから、多少は安心出来るんだけど」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・あぁ、いいお湯だね。





「本当です・・・」

「なのはママ、銭湯って・・・楽しいね」

「そうでしょ? 隊舎で入るのとは、また違うしね」

「うんっ!」





確かにそうだね。色んな人が居るし、お風呂もいつもより広いし。

あー、でもこの檜のお風呂は気持ちいいなぁ。凄く暖かくて、良い匂いで、安心する。





「あの・・・フェイトさん」



聞いて来たのはキャロ。なんというか、すごく疑問顔。



「どうしたの?」

「エリオ君・・・はともかく、リインさんは向こうでいいんでしょうか?」

「そういえばそうだよね。リイン曹長、女の子だし」



・・・そっか、二人は知らないんだ。そう言えば、私も話してないし。



「あー、リインはあれでいいんだ。恭文君とは、何回もお風呂に入ってるし」

「てゆーか、あの二人はいつもあんな感じよ? いつでもどこでもベタベタベタベタ」

「なんというか、付き合ってるみたいに見えるよね。私、時々リインちゃんが羨ましくなるよ。なぎ君と本当に仲良しさんなんだなって」





そうだね。リインも、ヤスフミもなんだけど、互いに、相手に裸を見られても平気なくらいに、付き合いが深いから。

海鳴で暮らし始めた頃は・・・週1かな。リイン、うちにお泊りに来てた。一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、遊んで、寝て・・・。



そして、ヤスフミや私達がミッドの方に来てからも、それは変わらない。

頻度はちょっとだけ少なくなったけど、それでも、一緒に過ごす時間は消えたりしない。もちろん、それまでの記憶も。





「だからはやて、ちょっとだけヤスフミにヤキモチ妬いてるんだ」

「八神部隊長がですか?」

「そうなの。なんだか、自分やヴィータやシグナムより、ヤスフミの方が、リインの正式なロードに見えるって」

「ロードって・・・アレだよね。アレをアレしてアレしちゃうの」

「ヴィヴィオ・・・。その恭文君やアルトアイゼンみたいな言い方はやめて」

「アイツ、こんな子どもになに教えてんのよ・・・」



あははは・・・。ヤスフミと仲良くなってから、ヴィヴィオ、どんどん強くなっていくなぁ。うん、いいことなんだけど、ちょっと心配。



「でも、本当にそうですね。ご飯も、時間が合えば一緒に食べてますし」

「よくお話したり、一緒にお仕事したりしてるよね。・・・あ、そう言えば、この間の、リイン曹長とのコンビ戦闘、凄かったね」

「そうだね。敵役として出てきたガジェット数十体が、3分とかからずに全滅だし」

「リイン曹長も恭文も、すれすれで攻撃するんだよね。それで、合図とかも全然交わさなくても、一発もミスショットなんて無くて・・・」





そう、ヤスフミ・・・は、さすがにリインとの体格や装甲の厚さで差があるし、自分の攻撃力も考慮するから、そこまでギリギリにはやらないけど、リインはやる。



そのスレスレの攻撃の合間を縫うようにして、ヤスフミが前線として攻撃。

それで、リインが、ガードウィングみたいな感じかな。援護したり、入れ替わってフリジットダガ―で攻撃したり。

二人で過ごしてきた時間と、その中で一緒に培ってきた記憶が、二人の呼吸を完璧なものにする。



・・・そういうのも、はやてやヴィータのヤキモチに拍車をかけるんだけどね。『うちらより上手いのはどういうわけやー!?』って。





「二人・・・というか、アルトアイゼンも入れて、三人は、最初から最期までクライマックスだったねっ!!」

「うん、そうだね。恭文君とアルトアイゼンとリインのチームは、最強かな。誰にも止められないの。実際、一緒に戦うとノリがすごいし」





・・・そうだね。あの三人は、本当に強い。

息も相性もコンビネーションもピッタリ。まさしく、熟年夫婦だよ。あれが本当の古き鉄の姿なんだ。



でも、最初から最期までクライマックスって、どういうことだろ。ヤスフミもよく言ってるし、最近なのはやヴィヴィオも口にしてるし・・・。





「というか、なのはママ」

「ん、なに?」

「恭文も一緒、お風呂入れないの、少し寂しいね・・・」



そう、私やなのはと同年代であるヤスフミは、さすがにこちらには来られない。というか、来てもだめだよっ!

私だけならともかく・・・あ、そういう意味じゃないよ? ヤスフミは変な事を強要したりしないってわかってるから。

というか、なのはやアリサ、すずか達以外の、他の人も居るんだし・・・。



「じゃあヴィヴィオ、後で一緒に男湯の方にいってみる? そうすれば、なぎさん達と一緒に入れるし」

「でも・・・なのはママとフェイトママが寂しいよね」

「ヴィヴィオ、私やなのはのことは気にしなくていいよ。大丈夫だから、ヤスフミのところに」

「・・・ヴィヴィオ、もしかして、みんなでお風呂に入りたいの? 恭文君だけじゃなくて、エリオとも」





なのはが、少しだけ真剣な顔で聞いて来た。え、なのはっ!?





「うん」

「よし、なら・・・・ママに任せて」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いやぁ、いいお湯だね。エリオ」

「そうだね・・・。このボコボコいうのって、クセになるね」

「なるですー。というか、日ごろの頑張りが癒されるですよ〜」





わかってるよ。さすがに配水管に流されるとかは嫌だし。

さて、僕達は泡風呂で幸せに浸っていた。それはもう見事に。エリオも、リインがいることにだいぶ慣れたようだ。実に普通にしている。





「あー、そういやエリオ」

「なに?」

「本当に慣れてるね。もうちょい緊張するかと思ってたのに」

「うん。・・・前に皆で入って、本当に楽しかったから」





さて、一応補足。六課メンバーは、僕やなのはにフェイトが元々暮らしていたこの街、海鳴市に、出張任務で訪れたことがあるのだ。

ロストロギアの回収任務だったらしい。・・・いや、本当におかしいから。どうしてそんなことが起きるのさ。



僕が居た時にも、何回かあって、巻き込まれたりしたしなぁ。大事にならなかったのが救いだったけど。



とにかく、その任務の中で、みんなで海鳴のスーパー銭湯・・・つまり、ここに来た事があるのだ。





「それで、エリオはティアのオープンをみたです」

「・・・は?」



オープン・・・全開・・・開店・・・。ティア、ショタコンだったか。わかります。



「わからないでよっ! というか、違うっ! 本当に見て・・・すみません、見ました。上から下までくっきりと」

「・・・エリオ、どうしてそうなった? 少なくとも、ティアナからそれはないよね」

「うん。その、原因はスバルさんなんだ」





あのバカかっ! つか、どうしてプライベートだとそうやってバカなのっ!? いや、もうバカ以外の表現しか出来ないけどっ!!





「スバルが、ティアのバスタオルを剥ぎ取ったですよ。ティアが『見れるうちに見ておきなさい』って言ったので・・・」

「自分の見せなさいよそこは」



人をさらし者にしちゃアウト・・・いや、それをやらないからこそのスバルか。



「アレですよ。スバル的には、ティアが初めてで、自分が二番目だと衝撃が強いと思ったんじゃないですか?」

「あ、あれか。『ほら・・・。私(ドガ―ン)』みたいなことをするわけか」

「そうですよ。ティアという美人をあえて最初に見せるんです。そして、、自らの、それより秀でている部分を後から見せる。
そうするとアラ不思議、スバルの方が、ティアより素敵だと思うですよ。それによって、完全にティアというライバルを崩そうとしてるんですね、わかります」



というわけで、僕達の結論は一つ。



「「スバル・・・恐ろしい子っ!!」」

「話が変な方向に行ってないかなっ!? というか、その会話完全にアウトだよっ! それに、リインさんものらないでくださいっ!!
・・・でも、アレ本当に困ったよ。僕、みんながフォローしてくれなかったら、しばらくティアさんと話せなかったもん」





そりゃそうだよなぁ。上から下まで真正面がオープンでしょ? しかも、ティアもスバルに負けないくらいにスタイルいいし。

なんていうか、スバルはどうなの? いや、ああだからこそ、部隊のムードメーカーになれるんだけどさ。





「まー、アレだよエリオ。大変だったね」

「うん、大変だった。・・・というか、恭文と仲良くなってから、最初から六課に恭文が居てくれたらって何度か思ったよ。前線メンバーって、男は僕だけだよ?」

「いや、ザフィーラさん居るじゃないのさ」

「でも、ザフィーラは狼だし、どっちかっていうと隊舎でずっと居る方が多いし」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん? まてまて、なーんか嫌な予感が。






「あー、エリオ。一つ質問」

「なに?」

「ザフィーラさんが、人の姿になれるって知ってる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」










その時のエリオの顔が、非常に面白いものだったのは付け加えておこう。




















「・・・じゃあ、ザフィーラさんがずっと狼形態なのは」

「はい。はやてちゃん達と一緒に暮らし始めた時、自分だけ男の人だったので、まだ小さかったはやてちゃんに気遣ってのことだったそうです」

「で、局に勤め初めてからは、はやてやシャマルさんの護衛につくことが多かったんだって。
その時、あの形態だとやりやすいそうなんだよ。あと、狼形態だと、人材制限に引っかからないとか」





ようするに、六課が所有する隠し手の一つになっているわけですな。



しかしビックリした。ここまで一度も人の姿になってなかったなんて・・・。





「・・・うん。というか、僕はザフィーラが始めて喋れるって知ったときもビックリしたよ」

「でもさ、それでようやく納得出来た。なーんでスバルやエリオがザフィーラさんのこと呼び捨てにするのかわからなかったんだけど、理解した」

「・・・今からさんづけにしたほうがいいかな?」

「しなくていいと思うよ? あの人、そういうこと気にする人じゃないから。むしろ親近感持ってくれて嬉しいんじゃないかな」

「ですです。だから、大丈夫ですよ?」



僕とリインの言葉に、ようやく安心した顔を浮かべたエリオを見ながら思った。

ザフィーラさん、なんというか・・・『盾の守護獣』が、『影の守護獣』になってませんか?



「あの、話を戻すけど、男が僕一人って、やっぱり色々大変だよ」

「あー、確かになぁ。そこに僕が居れば、まだ中和されるもんね」

「でしょっ!? 本当に大変だったんだからっ! 特にスバルさんっ!!
よく抱きつかれたり、お風呂に連れて行かれそうになったり・・・」





・・・スバル、どんだけフリーダムなんだよ。つか、10歳児にそんな感想を持たれるって大概だよ?

なんかシャマルさんやすずかさんや美由希さんの影が見えたのは、気のせいじゃなかったか。やっぱ恐ろしい子だよ。





「最近はそうでもないの?」

「そうだね。恭文の方に興味が出てきたみたいで、僕にはあまり」

「・・・その言い方は誤解を招くからやめて」

「でも、恭文」

「ん?」





エリオが、僕の顔を見て、少し真剣な顔と声をぶつけた。

本当に、真っ直ぐに。





「ありがと、六課に来てくれて」

「・・・またいきなりだね。どうしたのさ」

「なのはさんの身体のこととかがあったかもしれないけど、恭文が来てくれてよかった。みんな、本当に楽しそうに過ごしているから」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まて。今、凄まじく引っかかるフレーズが聞こえたよっ!?





「あの、エリオ? 今言ったのって、どういうことですかっ!?」

「・・・休み明け、僕達訓練の前に、医務室に行ったんです。訓練用のファーストエイドキットを補充するために」

「・・・エリオ、盗み聞きは関心しないよ?」





ホントだよ。つまり・・・僕達・・・六課のフォワード陣は、あの僕とアルト、なのはとシャマルさんの会話を聞いてたわけだ。



なるほど、それで納得したよ。

ここ最近の気合の入り具合や、スバルやティアナがやたらとなのはの身体を気遣っていたのは、あれが原因か。





「あの、ごめん。僕達、聞くつもりじゃなかったんだ。ただ、話が聞こえてきて・・・」

「そのまま最期まで同席しちゃったと・・・」

「バレてたですか・・・。あのエリオ、その話は他の誰かにしたりとかはないですか?」

「それは無いです。相談して、話すのはやめておこうと。・・・話されても、困るよね?」

「まーね、部隊の士気に関わるし。つか、どうしてその話を今?」





正直、僕も気づいてなかったから、このまま知らないことにしてもいいと思うのに。





「フェイトさんからね、恭文が、本当に頑張ってここに来てくれたって聞いてたから、どうしても・・・言いたかったんだ。
ありがとう、僕達のこと、助けに来てくれて。すごく、うれしい」





・・・エリオ、とりあえず頭を上げて。つか、顔がお湯に浸かってるからっ!!





「あははは・・・ごめん」

「・・・礼なんていいよ。僕は、自分の好きでここに居るしね。まー、それに意外と楽しんでるから」

「・・・そっか」

「そうだよ。・・・あ、一つ確認。僕とリインに話してるのは、スバル達は知ってるの?」

「ううん、知らない。僕が言いたかっただけだから」





その言葉に、僕とリインは顔を見合わせ、頷く。そういうことなら、しかたないでしょ。





「・・・スバル達には、そういう体で接することにするよ。全く、エリオのおかげで秘密がまた一つ増えたじゃないのさ」

「ごめん。というか、恭文は秘密の部分が多いよ。スバルさんボヤいてたよ? もっとちゃんと教えて欲しいって。特に戦闘技能だよ」



そうしたいんだけどねぇ・・・。その辺りは先生達のお達しなのよ。



「どういうこと?」

「恭文さんの資質は、それほど恵まれてるわけじゃないんです。
例えば、遠距離攻撃の資質は、なのはさんやフェイトさんはもちろん、リインよりも低いですから」





うん、低い。そのおかげで、誘導弾のコントロールも出来なかった。

砲撃も、威力と魔力量が比例する物は使えなかった。そんなもん使ったら、あっという間に魔力がすっからかんだから。





「それでも、スティンガーのような誘導弾が撃てたりするのは、本当に頑張った成果なのです」

「その辺りを知られないために、自分が何が出来るかというのは、教えないようにしている?」





エリオの言葉に僕は頷く。これはクロノさんの言い含めなんだけど、味方内が実は敵だったという事例もある。

その辺りを鑑みて、使うかどうかは慎重に行けと教えられたのだ。

まー、みんなにはもういいと思ってるけどね。そうじゃなきゃ、バインドやらスティンガーなんて使わないし。





「・・・そだ、エリオ。今度の組み手、射撃も交えてやりあおうか。練習してるんだよね?」

「あ、うん。一応は」

「うし、なら決まりだ。せっかくだし、手札を晒してやろうじゃないのさ」

「え、いいの? だって、教えるとまずいんじゃ・・・」

「いーよ。ティアナとやりあった時に、大方のもんは出しちゃったし。それにだ、『他人』には教えたくなけど・・・僕達はもう、他人じゃないでしょ?」





僕がそう口にすると、エリオの表情が一瞬だけ固まる。だけど、それはすぐに解除された。

お風呂の影響で顔を赤くしながら、笑顔を浮かべる。年頃の男の子らしい、はつらつとした笑顔を。





「うん、そうだね。僕達・・・他人じゃないよね。仲間で、友達っ!」

「そういうことだよ」

「うふふ・・・恭文さん、嬉しそうですね〜」

「今までの訓練だと、隠し手が出す機会があんまりなかったしね。やっぱ楽しいよ。久々にあれとかこれとか撃てるかと思うと」





この間の囮捜査は、そういうの出来なかったしね。いや、楽しみだな〜♪




















「エリオくーんっ! リインさんっ!!」

「恭文ー♪」





・・・ん? この声は・・・・キャロか。それに・・・・ヴィヴィオっ!?



声のした方を見ると、身体にバスタオルを巻いて、キャロがヴィヴィオと手を繋いで、ゆっくりと歩いてくる。

あ、そうか。エリオも女湯に入れるけど、キャロも男湯に入れるんだ。もちろんヴィヴィオも。





「二人とも、どうしたよ? ・・・あ、エリオとリインを呼びに来たとか?」

「うん、二人もなんだけど、なぎさんも呼びに来たの」

「恭文、一緒にお風呂入ろう〜」

「よし、二人を連れて行って戻りなさい、早く。つーかとっとと戻れ」





二人が泣きそうな顔になったけど気にしては負けだ。

普通に入るならともかく、呼びに来たって言ったのがポイント。つまり、ここじゃない何処かへ入ろうという話だ。

・・・あのね、僕はまだ死にたくないのよ。確かにこの外見だけど、一応男で18歳よ?

なのは達に見つかったら、挿入歌の調べと共にフルボッコだよフルボッコ。





「別に女湯に入ろうなんて言ってないよっ!」

「そうだよ。・・・恭文のエッチ」

「・・・ヴィヴィオ、正直に答えてくれるかな? その言い回し、誰から教わった?」

「スバルさんが言ってたよ?」





・・・よし、スバルは少し痛い目に合わせてやろう。グリグリがゲシゲシかガリガリのどれかの刑に処してやる。

そう心に決めたと同時に、疑問が湧いてくる。女湯じゃないとすると・・・・どこに入るのよ?





「家族風呂だよー♪」

「「「家族・・・風呂?」」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、僕達三人は、二人の少女に連れられて、施設内のある一角にやってきた。



ドアを開けると、そこは露天風呂。

入り口からエリオ共々空を見上げると、泡風呂を堪能している間に、空は暗くなり、夜の色へと染まっている。



ここから見上げる空は、星が見える。なんというか・・・綺麗だ。

・・・こんな所があったんだね。





「うん、今年の10月に新築されたんだって。それで予約式なんだけど、今日はたまたま空いていてすぐに入れたの」

「ママー! 恭文とエリオさんと、リイン曹長連れてきたよ〜」



・・・ま・・・ま・・・・っ!?



「あ、来た来た。恭文君、エリオもリインもこっちこっち〜」

「キャロ、ヴィヴィオ、案内ありがとうね。私たちが男湯に入ると、大変なことになっちゃうから・・・」





・・・よし、今やるべきことは一つだ。足を踏み出そう。そう、後ろへとっ!!





「エリオ、リイン戻ろうか」

「ですです」

「恭文、なんか身体が熱いんだけど、どうすればいいの?」

「じゃあ、水風呂入りなさい。でも、急に入っちゃだめだよ? 心臓のところにまず水をかけて冷たさに慣らしてから、身体を入れるの。
それをやらないで急に入って、ショック状態とかになって、病院に運び込まれた人も居るから」

「そっか、分かった。やってみるよ」










あー、なんか『ちょっとまってー』とか聞こえてるけど気のせいだ。

うん気のせいだ気のせいに決まっているっ! 頼むからそうだと言ってくれ神様っ!!





・・・なんだこの状況はっ!?

というか、なぜになのはとフェイトがバスタオル巻いて湯船に浸かってるんだよっ!

エリオがまたもや茹蛸になってるじゃないかよっ!!










「えっとね、ヴィヴィオが恭文君と一緒にお風呂入りたいって言いだしたから、ここのこと、ロビーのチラシで見たの思い出して、お願いしてみたの」

「そうしたら、丁度予約が空いてたんだ。それで、せっかくだからみんなで入ろうって思って・・・」

「なるほど・・・、事情は分かったけど、いいのか二人はっ!? 僕はこれでも男なんですけど」





いちおうね、あなた方は鈍いからあれかも知れないけど、エリオはまだいいさ、子どもなんだし。

でも、僕に裸とか見られるのは・・・嫌じゃないの? まぁ、タオルは巻いてるけど、ラインとかはくっきりだよ?



なのはは成長無くぺったんこかと思ったら、意外と着痩せしてるんだなとか。

フェイトは・・・・うん、すばらしい。ただただすばらしい・・・・とか思ってしまったりしてるんです。というか、今朝感じてた柔らかさとぬくもりが・・・。



でも、当のなのはとフェイトは目を合わせて、クスリと笑った。・・・なにがおかしい?





「あぁ、ごめんごめん。・・・私たちは、そういうの気にしないから平気だよ?」

「気にしろよ19歳っ! つーかそういうのは彼氏に言え彼氏にっ!!」

「・・・あのねヤスフミ。私も大丈夫。
ヤスフミとは、付き合い長いんだもの。ヤスフミが変なことしないっていうのは、分かってるから」

「そうだよ。だから、別にお風呂くらいはOKだよ? 裸はともかく、私もフェイトちゃんもこうやってタオル巻いてるんだし。
・・・あ、もしかして、私の事見て変なこと考えちゃうのかな? もう、恭文君ったら・・・。そういうのはだめだよ。私にだって心の・・・イタッ!」





なのはの一言に、手元にたまたたまあった風呂桶を手にとって、なのはの頭頂部目掛けてスローインしたとしても・・・きっとそれは罪などではない。



そう、それは・・・正義だっ!





「痛いよやすふ・・・・ごめんなさい。私が悪かったと思うのでその目はやめてください。泣きたくなってくるんです・・・うぅ」

「・・・ほう? だったら泣けっ! 泣いてしまえこのうつけがっ!!」

「ヤスフミ、おさえておさえて・・・。
あ、もちろん、私もなのはも、ヤスフミを小さいからって男の子として見ていないっていうわけじゃなくてね。そのなんていえばいいのかな・・・・あぅ・・・・」





僕が身長や体格を気にしているのを思い出したフェイトが浴槽の中でアタフタしている。

その様子を見てたら、さっきまで動揺しまくってたのが馬鹿らしくなった。

まったく、この二人は・・・。





「あぁ、もういいから。それ以上小さいって言われるとムカツク」





そう言いながら、湯船に浸かる。・・・ふぁ、少しだけ夜風に当たっちゃったから、お湯の温かさが骨身にしみるわ〜。





「恭文君・・・いいの?」

「いいも悪いもないでしょうが。ここで出て行っても、ヴィヴィオが追っかけてくるだろうし。
それに・・・ちゃんと僕のことを男としてみていて、それでも大丈夫だって信用してくれてるから、ここに誘ってくれたんでしょ?」

「・・・うん」

「だったら・・・スケベ心は封印しなくちゃね。それが男のやることってやつでしょ」



・・・まったく、大変だよ。大変で大変で・・・・それで楽しいってのが、タチ悪いよ



「恭文君・・・・」

「ヤスフミ、ありがと」

「別に礼なんていらない。まぁ、多少は目の保養もさせてもらうしね。そのためだよそのため、うん」

「そっか。うん、じゃあ・・・いっぱい目の保養していいよ。私は大丈夫だから」



えー、お風呂の中でずっこけました。お湯飲みました。というか・・・苦しい。



「恭文君、しっかりしてー! というかフェイトちゃんも変な事言っちゃだめだよっ!!」

「え、だってヤスフミだし・・・。その、変な事とかじゃなくて、あれ、あのその・・・」



・・・フェイト、顔を赤くしないで。僕が悪いような気がしてくるから。うん、僕は悪くないよね、絶対。



「あのとにかく・・・。そういうことだからエリオも来てくれないかな。リインもだよ。皆で一緒に入ろう?」

「は、はい。それじゃあ・・・お邪魔します」

「お邪魔するですー♪」





そう言って、リインと茹蛸騎士とキャロとヴィヴィオも、浴槽に入る。

家族風呂と言うだけあって、浴槽自体はそれほど大きくない。あと大人が2〜3人入れば、満杯と言ったところだ。



スケベ心を封印するとは言ったものの、フェイトやなのはとの距離が近い。

しかも、二人とも肌がほんのりと紅色に染まって、すごく色っぽい。

・・・これでドキドキするなというのは、無茶な相談である。僕だってお年頃。色々と感じるのだ。





「恭文、温かいね〜♪ というか、大丈夫?」

「なんとかね。でも、本当に温かい。夜空も綺麗だし・・・いや、こりゃいいわ」

「うんっ!」

「でもさ、ヴィヴィオ。なんで僕とそんなにお風呂入りたかったの?」

「うーんとね・・・」



僕がそう聞くと、ヴィヴィオは少し考え込んだような顔をして・・・こう答えた。



「なのはママがね、一緒にお風呂に入ると、いっぱいお話して、いっぱい仲良くなれるって言ったの。
だから、恭文と一緒に入れば、もっと仲良くなれるかなって、思ったの」

「それは、私もかな。・・・なぎさんの事、もっと知りたいなと思って。それでこんな感じに・・・。
なぎさん、前に言ってくれたでしょ? フェイトさんと家族なら、自分とも家族だって。
だから、互いに色んな事話して、コミュニケーションしたいなと」





そのヴィヴィオの言葉に乗っかったのはエリオとキャロ。

・・・はやて、僕もコミュニケーション不足してたのかもしんない。ふと、そう思った。





「なるほど、納得したわ。・・・ヴィヴィオ、湯当たりしない程度にお話しようか。もちろん、エリオとキャロともね」

『うんっ!』




















オハナシその1:僕の嘱託魔導師認定試験。



「え、なぎさん勝っちゃったのっ!? 負けてボロボロに泣いて、それでフェイトさんに認められるって言う展開の方が面白いのにっ!!」

「そうだよっ! 恭文なんで勝っちゃったのっ!? そんなことしたら、俺最強物とか言われて、クレームついちゃうよっ!!」

「面白いってなんだよ面白いってっ!? つか、そんな僕が空気読めてないみたいに言うなぁぁぁぁっ!!」



なんなんだよその意見はっ!? しかもグサって刺さったじゃないのさっ!!



「いいっ!? 僕はなにがなんでも勝たなきゃいけなかったんだよっ!!
フェイトは、負けたら絶対にそのまま能力リミッタ―とかつけて、僕が戦えないようにしたに決まってるしっ!!」

「そんなことしないよっ!」

「・・・嘘だ。だって、そういう話したじゃないのさ」





無理矢理にでもやるとか言って迫ったくせに、なにを言うか。





「う・・・。ごめん」

「まぁまぁ・・・。恭文君も抑えて。今は、そんなことないんだから」

「・・・まーね」





うん、今は応援してくれてる。心配だけど、否定なんて絶対したりしないって、気持ち・・・届けてくれてる。だから、戦える。





「でも、その後はフェイトさんには勝ったりしたの?」

「・・・これがぜーんぜん。しばらくは負けっぱなしだった。本当にガチでやりあって勝てるようになったのって、ここ2、3年くらいの間だよ?」

「今でも、勝率・・・3割がいいところかな。私が7割。・・・うん、まだまだ譲らないよ。ヤスフミも強くなったけど、私だって強くなるんだから」





・・・結構頑張ってるのに、5割どころか4割が抜けないってどういうことだろ。いやまぁ、フェイトが本当に強いからなんだけどさ。

でも、やっぱり・・・好きな女の子より弱いのは、ダメな気がする。うん、頑張ろう





「そうなの? でもなんでだろ。だって、その時はフェイトママに勝ったんだよね」

「そんなの簡単だよ。・・・手札が知られちゃったから」





あの勝負では、僕が勝てたのには、一つの理由がある。

クロノさんと一緒に必死で訓練して覚えたバインドや、氷結系への魔力変換。それに砲撃などが、とても大きなアドバンテージになったからだ。

特にバインドと氷結系習得による火力の向上は大きかった。それをフェイトが知らなかった所を突いた故の勝利だと、僕は思う。



そう、色んな状況を利用したからこそ、得られた勝利だ。つまり・・・。





「あ、そっか。その後は、フェイトママがバインドとか使えるって知ってたから・・・」

「うん。その辺りを気をつけながら戦ったの。知っていれば、発動スピードの速いヤスフミの魔法でも、対処のしようはあるから。
だけど、この一戦で、図らずともクロノの言い分の正しさが立証されたことになるのかな。ヤスフミは、自分のスキルをあれこれ言わない方がいいっていう教え」

「まー、僕が自分のスキルを人に話さないようにしてたのは、そういうわけもあるの。これも、ある意味戒めになるのかな?」

「スバルはこの説明しても、納得してくれなかったですけどね・・・。リインが言ってもだめでしたし」





あぁ、そうだったね。強いんだから、手札が知られてもなんとかなる。仲間にまで内緒にする意味がわからないの一点張りだった。

この辺りも、アルトがキレかける原因だったりした・・・んだけどさぁ。



つか、あの豆柴は僕の実力を過大評価し過ぎてるって。

クレイモアなり、鉄輝一閃なり、火力重視で、一発で決められる術を多めに構築してるから、オーバーS相手でもやれるってだけの話なんだし。





「でも、六課だけのことじゃなくて、他のところでもそうしてるの。基本は、平凡な近代ベルカ式のフロントアタッカー」

「私やなのはも、はやて達もなんだけど、ヤスフミがミッド式を多数習得してたり、実はオールラウンダーっていうのは、他の人には話さないことにしてるんだ。
やっぱり、知られると格上相手には不利になるって実例が出来ちゃったから」

「そうだったんだ・・・」

「ま、僕はそんなに強くないしね。それくらいしないと、格上には勝てないのよ」

「でも、なんで?」



その疑問をぶつけて来たのは、キャロだった。なんでって、なにがよ。



「なぎさん、どうして遠距離攻撃を習得しようと思ったの?
剣術って特化部分があるから、わざわざそこまでして習得する必要もないと思うのに・・・」

「・・・○レイヤーズみたいな魔法使いたかったの」

「あ、納得。それで頑張ったんだ」

「なんというか、恭文君・・・私もなんだけど、すごくファンだしね。魔法使えるようになったころ、少しでも試したくてあれこれ頑張ってたんだよ」

「・・・というのが、表向きの理由なんです♪」





あ、しまった・・・。リインには話してたんだっ! つか、みんなが僕を見る。あ、なのはとフェイトも。・・・説明してなかったしね。





「リイン、そのあたりで・・・」

「リイン、話していいよ」



なぁぁぁのぉぉぉぉはぁぁぁぁぁっ!!



「恭文さんが、ああいう遠距離攻撃を多数取得しているのは、フェイトさんに負けたくなかったからというのと、力になりたいと思ったからなんです」

「え、どういうこと?」





フェイト、その真っ直ぐな瞳で僕を見つめないで。悲しくなってくるから。いや、言わなきゃいけないように感じるから。

つか、他のみんなもそんな興味深い目で見ないで。悲しくなってくるから。



あぁ、仕方ないか・・・。





「・・・みんなの知っての通り、フェイトってオールレンジのスピードアタッカーじゃない?」

「あ、うん」





執務官という単独行動が多い職業柄、フェイトは多彩な状況に合わせた術式を習得している。

砲撃や誘導弾。広範囲攻撃。果ては近接用の斬撃魔法。あ、儀式魔法とかもあったな。





「・・・で、嘱託の試験の時まで、僕はフェイトに一回も勝ったことがなくてさ。近づけないし近づいても避けられるし」

「うん、そうだった。それで恭文君、すっごく悔しがるの」

「で、クロノさんに試験対策であれこれ教えてもらうことになった時に、対フェイトを目標に掲げることになったんだよ」



ここには理由がある。フェイトは、その時の僕が一番苦手としているタイプだから、目標としても丁度いいってこと。

あと、僕はどういうわけか格上相手とやりあうことが多いんだから、絶対に遠距離攻撃の手段は必要だと言う話になったのだ。



「・・・そうだったね。恭文君、どういうわけか魔導師に成り立ての頃から、オーバーSとか、AAA級とかとやりあうことが多いんだよね」

「「「そうなのっ!?」」」

「うん、そうなんだ。下手をすれば、私やなのは以上に・・・」





はい、そこの二人。かわいそうなものを見る目で僕を見るな。つか、僕が聞きたいわ。

なんでそんなもんがゴロゴロしてて、それの相手をすることが多いのかが分からないよ。僕がビックリだよ。



確か、AAA以上の魔導師って、局の中でも5%以下のはずだよね。なのになんで・・・。

いや、局の規模が広いっていうのが、倍率の低さに拍車をかけてるからなんだけど。実際は相当数居るでしょ。



あと、練習する動機はそれにプラスして『好きな女の子に負けっぱなしというのも、嫌』と言うのがあったんだけどね。





「あと、僕も誘導弾や砲撃なんかが使えると、フェイトみたいなタイプと連携戦などした場合、幅が広がるって言われたんだよ。
近接戦闘オンリーだと、どうしてもフェイトは射撃戦が中心になる。それだと、せっかくの近接戦能力とスピードが生かせない。だから・・・」

「覚えたんだね。あの、それならどうして今まで黙ってたの?」

「・・・聞かなかったから」

「そういうことじゃないよっ! あの時、ちゃんと話してくれれば、私、ケンカなんてしなかったのに・・・」





あぁ、もうそんな暗い空気を出さないでほしい。つか、こうなるのが分かってたから嫌だったんだよっ!!





「まぁ、実際その通りだったよね。フェイトちゃんと一緒に戦うの、それから凄く上手になった」

「マジックカードなんかも使うようになったしね」



アレだって、魔力量でスタミナ切れしやすい僕の弱点を防ぐためのものだもの。あと、文字通り手札を増やす。



「でもでも、フェイトさん」

「あ、うん」

「恭文さんが、すっごく大事に思っているフェイトさんの力に、少しでもなりたいから、頑張ったっていうのは、認めてあげてくださいね?
リイン、ちょこちょこ練習お手伝いしてたですが、本当に大変だったんですから」

「・・・うん、そうだね。あのヤスフミその・・・ありがと」

「いや、礼を言われるようなことしてないからっ! つか、僕の勝手でやったことだしっ!!」





あー、リインはまた余計なことを・・・。とにかく、次行こ次っ!!




















オハナシその2:高町なのはとの友情の始まり。



「・・・なのはママ、そんなにガチにケンカしたんだ」

「あの、ヴィヴィオもエリオもキャロも、お願いだからそんなに呆れた目で私を見ないでっ!!」

「いや、仕方ないでしょ。12歳の時でもそれなんだから・・・」

「でも、それから恭文は、なのはママが好きになったんだよね」

「・・・まぁ、バインドの借りは返せたからね。元々、それが返せなくてイライラしてたようなもんだから」





僕と出会ったとき、この横馬は入院して、リハビリの真っ最中だった。

まぁ、半年の入院生活の終盤も終盤だったから、日常生活には差し支えない程度に回復してたんだけどね。





「でも、魔法の借りは魔法で返さなきゃ意味がないというのが、なぎさんらしいというか・・・」

「フェイトさんやヴィータ副隊長の話も聞かなかったんですよね? 恭文、昔から強情だったんだね・・・」



エリオ、それはどういう意味? よし、小一時間くらい話そうか。



「でも、私は嬉しかったな。恭文君がそう言ってくれて」

「どうしてですか?」

「・・・それってね。『魔法をしっかり使えるくらいにまで、ちゃんと身体を直して、元気にならなかったら、絶対に仲良くなんてしない』って意味だったんだ。
恭文君、嫌いって言っても、会ったばかりの私のこと、ずっと応援してくれてたの。早く元気になれって、いっぱい声をかけてくれてたんだ」





・・・は?



まてまて、なによその妄想っ!? つか、なんでそんなに『あの時は感激したなぁ〜』みたいな顔で言うのっ!!





「恭文、そうなのっ!?」

「そんなふうだから、ギンガさんフラグとか、なのはさんフラグとか言われるんだよっ!!」



わけわかんないからそれっ! つか、ギンガさんの話は今は関係ないでしょっ!?



「・・・ちょっと横馬。それ誰から聞いたの?」

「え、フェイトちゃんからだよ」

「・・・ふぇいと、あとでいろいろとはなしをしようか。うん、けっこうながくね」

「あ、あの・・・お手柔らかに」

「恭文さん、角が生えてるですよ?」





気にしないで。つか、本当によけいなことを・・・。




















オハナシその3:SS02事件



「・・・僕、はやてから、僕が来る前の話とか色々聞かせてもらってるのよ。部隊運営の今後の参考にしたいから、意見が欲しいって言われてね」

「うん?」

「なんていうかさ、なんで六課ってコミュニケーション不足で問題が起こるってパターンが多いのっ!?
どんだけオフィスライクな付き合い方してるのさっ!!」

『め、面目ないです・・・』





さて、ここからはみんなの話だよ。というか、フェイトとエリキャロの話だよ。



要点だけ言うと、フェイトに心配をかけたくない。迷惑をかけたくないと思ったエリオとキャロが、自分達なりに、無理せず背伸びをして頑張った。



だけど、フェイトとしては、また違う不安を覚えてた。

二人には、子どもらしく、背伸びせずに、甘えたり、迷惑をかけたりして欲しかったのだ。

なのに、自分にそういう部分を見せなくなってきたエリキャロに不安を覚えた。

自分が、保護者として信用されてない。間違っているのではないかと。



で、それでまた悲しそうな感情を顔に出したフェイトを見て、動揺したエリキャロと・・・。

なんていうか、互いに話してないからそうなるっていうリンディさんとアルフさんの意見は正しいよ。

いや、真面目に思うから。気遣いすぎで行き違うってどんだけですか。



・・・まぁ、親子してるとは思うけどね。うん、うらやましいや。





「でも、今はそんなことないんだよね?」

「うん、いっぱい話すよ。僕達の気持ち、ちゃんとフェイトさんに伝える」

「うん、伝えてくれてる。私も・・・自分の、もっと甘えて欲しいって気持ち、エリオとキャロに伝えてるよ」





どこか嬉しそうに口にする三人を見て、口からため息が漏れる。

ほんとうにさ、ここまで親子されたら、僕の入る隙なんてないじゃないのさ。





「あ、ヴィヴィオもなのはママにちゃんと伝えてるよー」

「うん、伝えてくれてるね。偉い偉い」

「えへへ〜♪」





・・・こっちの親子は大丈夫そうだね。





「というか、ヤスフミも伝えて欲しいな」

「なんで僕っ!? あ、大丈夫。リンディさんにちゃんと伝えてるから・・・」

「そっちじゃないよっ!!」

「そうですっ! そこはリインに・・・」

「ごめん、リインでもないんだ。・・・私に、ちゃんと伝えて欲しい」



なんでっ!? いや、伝えてるじゃないのさ。色々と。



「だって、開発局のお友達のこととか、デンバードとかトゥデイとか、ジャン○式の訓練とか・・・」

「・・・はい?」

「あと、聖王教会の騎士カリムと友人になって、すごくお世話になってることとか、同じタイミングで、ギンガと凄く仲良くなったこととか。
さっきの遠距離攻撃の話もそうだよ。ヤスフミ、隠し事が多い。私、今言ったこと、後から知って本当にビックリした」





・・・いや、だって・・・ねぇ。フェイトはフェイトで仕事してたじゃないのさ。つか、色々と守秘義務が絡むことが多くてですね・・・。





「・・・私、信用されてないのかな?」

「違うっ! そうじゃないからっ!!
あぁ、エリオ、キャロ、もしかしてそのゴタついたときもこれ?」

「「うん」」

「あの、フェイト、隠してたわけじゃなくてね。あの、ちょっとなんて言えばいいのかな。だって、フェイトが聞かなかったから・・・」

「またそういうこと言うっ! というか、そう言う問題じゃないよっ!!
ヤスフミ、また今度色々オハナシしようね。隠してること、全部出してもらうから」





なお、この言葉に僕は素直に頷く他なかった。だって、フェイトの目がちょっと怒ってたんだもん。




















オハナシその4:ヴィヴィオの決意。



「うんとね、ピーマンの克服が大変なの」

「あぁ、苦手なんだっけ?」





ヴィヴィオが、僕の言葉に頷いた。そう、ヴィヴィオはピーマンが嫌いだ。



まぁ、仕方ないか。ピーマン嫌いってわがままとかじゃなくて、生物の本能的なものらしいし。



原始時代、言語やなんかが発達してなかった時代、なにを食べると危ないかというのを察知する項目の中に、苦味というのがあったらしい。

で、ピーマンの苦味は、そのDNAに刻み込まれている拒絶反応に引っかかるそうなのだ。



ただ、成長していくと、意識の中に、これは苦いけど食べて大丈夫なものという意識がすりこまれ、食べられるようになる人が多いらしいけど。





「なぎさん、物知りだね・・・」

「というか、それミッド生まれの僕達にも有効なのかな。いや、確かにピーマンは少し苦手なんだけど・・・」

「・・・多分」





いや、知らないけどさ。





「でもヴィヴィオ、最近は本当に頑張ってるんだよ?」

「そうだね。頑張って、全部食べようとしてる。うん、偉いよ」

「うんっ! だって、恭文みたいになりたくないしっ!!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?





「だって、恭文、生のトマト嫌いでしょ? 好き嫌いだめだもん。恭文見てて、よくわかったのっ!」

「ぷぷぷぷ・・・・」

「リイン、笑いたいなら笑っていいよ? 叩くけど」

「そんなのダメですよー!」

「というか、恭文も好き嫌いだめっ! ヴィヴィオはピーマン嫌い治すから、恭文も、生のトマト嫌い治そう?」

「・・・善処します」



よし、これで大丈夫だ。



「ダメだよヤスフミ、そうやって逃げようとしてる。善処したけどダメでしたって方向にするつもりでしょ?」



見抜かれてるっ!?



「ヴィヴィオ、恭文君は、フェイトママがしっかり見張るから、大丈夫みたいだよ?
じゃあ、これからもピーマン嫌い克服のために頑張ろうか」

「うんっ!」










・・・・・・・・・・・・あれ? なんでみんな笑いを堪えてるのさ。ほら、笑っていいよ? しばくけど。





つか、なんでこんなことにっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あー、このマッサージ機はキモチいいねぇ〜」

「美由希さん、すこしおばさんくさいですよ・・・」

「う・・・」

「でも、なぎ君・・・本当に元気そうでよかった」





まぁ、アンタと美由希さんは、本当に心配してたしね。





「いや、家の末っ子が心配かけちゃってごめんね。あの子もそうだけど、相棒も止まんない子だからさ」

「あー、大丈夫大丈夫ー。なんとかなるって信じてはいたから」

「なぎ君、ここ一番では強いですから」





そうよね。アイツ、普段はともかく、ここ一番の大勝負では凄まじく強いし。つか、あの引きはチートよチート。



でもま、だからこそ少しは安心出来るんだけどね。・・・姉貴分としては、心配なのよ。あいつ、本当にフラっていなくなっちゃいそうだから。





「でも・・・フェイトちゃんとは、相変わらずみたいだね」

「そうですね。・・・私がくっついても、フェイトちゃん、応援オーラとか出しちゃうし。ダメだよアレ。なぎ君が可哀想」

「あら、ひょっとして二人とも、それで恭文くんにくっついてるの?」

「まぁ、それも含めつつ・・・かな。恭文、反応可愛いし」

「なぎ君と居るの、楽しいですから」

「いや、それっておかしくない?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ、こんな感じでスーパー戦闘・・・もとい、銭湯タイムは終了した。





このあと、全員でハラオウン家へと向かった。ちょこっとだけ、エリキャロとヴィヴィオと仲良くなれたような気がして、うれしかった。





ただし、一つの問題が・・・。




















「母さん、ただいま」

「「ただいま戻りましたー!」」





なお、エリキャロはただいまと言うことにしようと、事前に取り決めていたそうだ。まぁ、正解だね。





「「パパ、おかえりー!!」」





そうして、リビングから僕の方へと走りよってくるのは・・・一組の男女。というか、子ども。



同じ顔立ちで、ほぼ同じ髪型。ヴィヴィオよりも小さい身長のこの子達は、クロノさんとエイミィさんの子ども。その名も、カレルとリエラ。



そして、パパと呼ばれたのは・・・僕です。





「うん、ただいま。カレル、リエラ、元気だった?」

「「うん♪」」

≪お二人とも、お久しぶりです。というか、まだパパなんですね≫

「あるとあいぜんー♪ おひさしぶりー。というか、パパはパパだもんっ!」

「そうだよっ! パパには、パパって呼ばなきゃいけないんだよ?」





・・・さて、説明が必要? うん、そうだよね。エリオもキャロもヴィヴィオさえもぽかーんとしてるし。





「あのね、ヤスフミは、二人からパパって呼ばれてるんだ」

「いや、それは見れば分かるんですけど・・・」

「なぎさん、まさか・・・エイミィさんとそういう関係なのっ!?」

「んなわけあるかボケっ! 全くクリーンな関係だよっ!!」



あぁ、そうだそうだっ! これがあったんだっ!! 仕方ない、ちゃんと・・・。



「あー、それは私から説明するわ」



・・・エイミィさんが説明してくれるらしい。



「恭文くんね、この子達が生まれた時に、一年位魔導師の仕事休んで、私の子育て手伝ってくれてたのよ」

「あ、ひょっとしてそれでパパって呼んでるんですか?」

「うん。・・・なんでか、うちの旦那様より先にね」





あぁ、そうでしたね。その事実は忘れていたかった。



ちなみに、原因と思われることはこれだけではない。





「それだけじゃなくて・・・まぁ、その。私の出産の時、恭文くんが最期まで立ち会ってくれたのよ。
というか、出産してすぐ、私の次にこの子達抱いたの、恭文くんだよ?」

「なぎさん・・・」

「恭文、さすがにそれは・・・」

「まてっ! そんな非難の目で僕を見るなっ!! つーか、クロノさん航海任務で居なかったしっ!!
あと、僕に子ども抱かせたのは病院の助産婦さんだからっ! あの感動シーンで抱かないって選択肢はなかったんだよっ!!」





アレですよ。アレなんです。

『よかったね。パパに抱いて貰えて』って、言われた時の居心地の悪さとクロノさんへの申し訳なさは、思い出すと頭痛がしてくるレベルです。



実際、それからクロノさんはすごくヘコんだ。僕を責めるようなことは言わないけど、ヘコんでた。



なお、それだけで済めばよかったんだけど・・・。

僕がクロノさんより先にパパって呼ばれたもんだから、またヘコんだ。



一時期、本気で疑惑もたれてたし。何回ガチな家族会議が行われたと?





「・・・まぁ、実際問題として、恭文君とエイミィには何も無いんだけどね。ということで、みんなお帰り」

「ただいま、母さん」

「「ただいまもどりました」」

「リンディさん、ただいまです」





エプロンで手を拭きながら再び出てきたのは、リンディさん。当然、この家の家主である。





「・・・ねぇ、恭文君」

「ただいまです。リンディさん。あと、それは嫌です」

「まだなにも言ってないでしょっ!?」

「いや、なんとなく嫌な予感したんで。さ、とにかくあがりますね。つーか、ご飯ご飯♪」

「あぁん、いけずー。お願いだから一回くらい『お母さん』って言ってくれていいじゃないのよー!」





・・・言ったじゃないですか。ここにお世話になるようになってから、一回だけ。というか、気恥ずかしいので、あとにする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、それから楽しくお食事会を済ませた。高町家の面々や、アリサにすずかさん、なのは達も、ホクホク顔で帰って行った。



で、日帰りな予定を組んでいたなのはとヴィヴィオ、リインは、このまますずかさんの家の転送ポートから、ミッドに戻るそうだ。

・・・ま、しばしのお別れってことで。



で、僕はちょうどそのお見送りを済ませたところ。・・・いや、楽しかったな。うん。



家へと入ると、リンディさんとアルフさん、それにフェイトが、せっせとお食事会で使った食器などを洗っていた。

・・・すごい量。みんなよく食べて、よく飲んだしねぇ。



それを見て、僕もキッチンへ行って食器清掃隊に加わる。





「あら、手伝ってくれるの?」

「別にいいぞ? 自動食器洗い機あるし、今あるのをぶちこめば終わりだしな〜」



・・・あー、そうだった。僕の家にはそういうの無いからついつい。



≪いつもの癖みたいになっていますからね≫

「だね。・・・って、随分久しぶりに声を聞いた気がするよ」

「そうだね。海鳴に来てからは、ずっと黙ってたし」





胸元から聞こえた声は、考えるまでも無い。僕の大事なパートナーであるアルトアイゼンの声。

ここは部屋の中だし、居る人間も次元世界絡みの人ばかり。アルトが喋っても問題はないのだ。





≪・・・私だって好きで喋らなかったわけではありません。
リンディさん、早くこの世界も管理世界になりませんかね? どうにもこうにもマスターたちの会話にツッコみたくて仕方ないんですが≫



いや、そんな理由でなったりしないから。次元世界をなめているよ、アルト。



「そうね。さすがにその理由だと・・・弱いわね」

「てゆうか、お前がおしゃべりしすぎなだけだぞ? フェイトのバルディッシュやなのはのレイジングハートを見てみろ。あれが標準だ」

「・・・でも、バルディッシュは無口な子だから。
ちょっとだけ、アルトアイゼンとたくさんお話出来るヤスフミが羨ましいな」



まぁ、アルトと話すの楽しいけど、ツッコむの大変だよ?

でも、バルディッシュはそこまで無口なのか。相当稼動年数多いはずなのに。



≪・・・特に問題はありませんので。というより、アルトアイゼンが喋りすぎなだけかと≫

「そうかもしれないけど、私としてはバルディッシュともっと話したいな。
『Yes Sir』とか『問題ありません』ばかりじゃなくて、色んなことを」

「だ、そうだけど・・・。どうする、バルディッシュ?」

≪・・・善処しましょう≫



なんだか、照れたような顔が浮かぶような声に、僕とフェイトは顔を見合わせて笑う。

・・・うん、どっか対照的なのかも。フェイトとバルディッシュ、僕とアルトって。



≪まぁ、バルディッシュはそれでもいいでしょ。フェイトさんは優秀ですから。私はマスターがへタレだから大変で大変で・・・≫

「うっさいっ!」





この後、みんなで少しだけあれこれ話した後、僕達はそれぞれ寝室に入り、ゆっくりと眠りについた。

僕が使っていた部屋はそのままにしてあったので、僕とアルトはそこでお休みである。カレルとリエラが大きくなったら、片さなきゃいけないな。

もう部屋に空きは無いし、さすがにずっと親と同じ部屋ってのもあれでしょ。



・・・まぁ、帰るべき家に、自分の場所が無くなるってのは・・・ちょっとだけ寂しいけどさ。




















そして翌朝。僕は・・・ある場所に来ていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



辺りの空気が張り詰めている・・・。





原因などわかっている。僕と・・・・目の前に居るあの人だ。





あの人・・・美由希さんは両手に木製の小太刀を逆手に持って構えている。僕は、両手で木刀を持って、正眼の構えでそれを迎える。





この構えなら、一気に突撃して、振り下ろす。もしくは、胴を切り抜く。もしくは突く・・・。

選択肢は色々とあるけど、問題はやるべきタイミングだ。今はその時じゃない。





仮に今飛び込んだとしても、全て捌かれて、必殺の一撃を入れられる。それで終わりだ。

ならばどうすればいいか? 簡単だ、捌かれない攻撃を入れればいい。

一番いいのは、相手が視認出来ないスピードで攻撃・・・というのがあるけど、僕には出来ない。





なので、防御しても打ち抜くだけの攻撃をする。

まぁ、こちらがその気構えで打っても、それで足りるかどうかは疑問だけど・・・でも、それが一番いい方法だ。

そのために、自分の体の中で気持ちを刃へと打ち上げる。それと同時に、身体もそれを使うだけの状態に持っていく。





理屈ではなく、心で全部の器官が動くように。

思った瞬間に、身体が反応するように深い呼吸を繰り返しながら、身体と心の結びつきを、普段より強くしていく。





・・・そして。










今だっ!





そう思った瞬間に、美由希さんへと飛び込む。・・・飛び込みながら、上段斜め上から木刀を一気に振り下ろす。










カンッ!










木刀と小太刀が打ち合わされた音が、辺りに響く。





左手の小太刀で、僕の攻撃は止められた。普通ならここでつばぜり合い・・・にはならない。





相手は二刀流だ、止められた瞬間に、右の方から小太刀が襲ってくるっ!

それを見た・・・いや、感じ取った瞬間に、一気に後ろへと飛ぶ。そのギリギリなところを、小太刀の切っ先が横切る。

高さとしては、僕の首辺り。あれば本物の刃物なら、首をかっ斬って一撃で仕留められる。





まぁ、木刀だからぎりぎりに当てて詰みってところかな? 怖いよっ!





僕が着地すると同時に、美由希さんがこちらへと踏み込んできた。

右手の小太刀で、殴りつけるような横一文字の一閃。僕は、それを難なく受け止める。





受け止められてすぐに左手から一撃。ただし、逆手から本手に持ち替えて、叩きつけるような上段からの振り下ろしが襲ってきたっ!!

またもや後ろにとんで回避。そして元に戻る・・・って、意味がねぇっ!!





二刀流の厄介なところはここだ。連続攻撃が容易い所にある。

そして、最初に美由希さんがやったみたいに、一方を防御に使い、もう一方を攻撃に使うということも出来る。





片手で足りない場合は、両手で防御と攻撃を行うことも出来る。

・・・それも、一方向だけではなく、二方向からの時もある。そうして手数で攻められると、こちらはやりにくい状況に追い込まれる。現に今がそうだし。





ありとあらゆる方向から襲い来る刃の動きに、翻弄される。防御するのが手一杯だ・・・。





とは言え、ここで攻め手を見つけていかないと。






・・・いつもならアレだけど・・・・うし、今回は趣向を変えて、あの手で行こう。





襲い来る二刀を薙ぎ払い、壁際ギリギリまで下がる。そして、木刀を返して、峰の方を美由希さんに向ける。

美由希さんが怪訝な顔でこちらを見るが・・・構わずに突進してきたっ!!





本手に持った木刀二本が、同時に・・・いや、避けられないように少し、タイミングをずらしてやってくる・・・・まだ・・・まだだ・・・・。





美由希さんが腕を振り上げ、そしてこちらに対して斬りかかり、刃が当たる寸前まで待つ・・・今だっ!!





その瞬間に、思いっきり低くしゃがみこむ。いや、伏せるっ!!





そうやって、美由希さんの二本の刃をぎりぎりなところで回避。

伏せた瞬間に即座に立ち上がりながらも、がら空きになっている美由希さんの胴に向かって飛び込みつつ左斜め下から右上の一閃っ!!





これは、僕が美由希さんより身長が低いことを利用しての攻撃。これならば・・・がっ!?





・・・その刹那、頭に走る強烈な衝撃。それに何事かと驚いていると、それがいけなかった。

美由希さんが数歩下がって、次に回し蹴りが飛んできた!

体制が体制なだけに、ガードすることも出来ずに、身体の右側面にマトモに食らって・・・吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。





叩きつけられて一瞬意識が飛ぶが、それでも立ち上がろうとすると・・・・目の前に木の刃が突きつけられていた。





「・・・そこまでっ!」





道場内に、今まで黙って僕と美由希さんの組み手を見ていた士郎さんの声が響く。・・・・ちくしょー! また負けたっ!!










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



道場内の空気が一瞬にして和らぐ。





これまでの張り詰めたものから、優しく、包み込むような空気に。










「・・・身長差を活かして、回避から即座に攻撃に移るというのはいいアイディアだったが・・・まだまだ甘かったな」

「だね。小太刀だから、取りまわしも早いってこと、忘れてたでしょ?」



美由希さんが突きつけた木刀を下げて、ちょっとだけ呆れたような顔でそう言った。

・・・はい、忘れてました。というか、バカでした。あれは小太刀の柄尻でどつかれたんですね?



「そ。でも、大丈夫? 押し倒されるんじゃないかってくらいのスピードだったから、加減できなかったし、痛いとことかない?」

「あー、頭が少しガンガンしますけど大丈夫です。
つか、押し倒すってなんですか押し倒すって・・・。神聖な道場でそんなことしませんって」

「・・・恭文君。それはつまり・・・道場じゃなければ美由希を押し倒してもかまわないということかな?」

「違います」



神聖だろうが邪悪だろうが、押し倒しません。だって、僕はフェイト本命だし。



「そうか、ならば問題ない」

「ちょっとっ! 少しくらい動揺とかしてくれてもいいんじゃないのっ!? 私は別に構わないんだけどっ!!」

「朝っぱらからそんな話するなっ! アンタアホかっ!?」










美由希さんがプーたれてるけど気にしない。うーん、魔法戦闘だったらオートバリアとかがあるからあれでもいけただろうけど・・・。





さて、ここは高町家の道場。士郎さんと美由希さんにお願いして、少し稽古をつけてもらうことにしたのだ。

・・・正直、剣術の練習が中々出来ない。シグナムさんも忙しいから、そうしょっちゅうは無理だしね。

高町家は、知っての通りの使い手揃い。いい機会なのでお願いしたら、快く引き受けてくれたというわけである。

ま、海鳴に居る時には、ちょくちょく相手してもらってたんだけどね。





あ、僕だけじゃなくて、エリオとキャロにフェイトも居る。

エリキャロは、噂に聞く御神の剣士の実力を見たいうのがその理由。

フェイトは、ライオットザンバーで使う二刀流を少し見てもらうとか。





でも・・・ダメだなぁ。オートバリアの話なんてする時点でアウトだよ。剣術そのもの技能を上げるのにその話持ち出したらキリがない。










「あの場合なら、美由希の木刀を一閃で砕いて攻撃能力を無効化する、もしくは木刀ごと斬るという手があったんじゃないかな?
君の教わった剣術はそういうものだろ」

「・・・木刀折ってよかったんですか?」

「まぁ、そんなに何本も折られては困るけどね。まさか、それでやらなかったのかい?」

「いや、それも考えてはいたんですけど・・・美由希さんまで怪我させちゃいそうだったんで、やめたんです」





獲物が短いし、それに美由希さんクラスだと僕は加減出来ないし、むしろされるほうだし。

まぁ、一応嫁入り前の人だしね。顔や身体に傷つけるような可能性のある戦い方はちょっとしたくなかった。

あとは、毎度武器破壊に持ち込めるわけじゃないし、それ以外で何か無いかと思ってやってみたんだけど・・・ダメだったわけである。





≪それで負けていれば世話ありませんよ。マスターの場合、そんな小難しいことより、攻撃でしょ攻撃。バカなんですから≫

「・・・うん、そう思う。だけどバカって言うな」





道場の隅でプカプカと浮かぶアルトの言葉に激しく同意。バカ以外ね。



・・・うむぅ、やっぱり今ある技能を高めていくのが、今後の剣術での目標かな? 武器破壊を可能とする一閃もその一つ。



今みたいな状況になっても、武器のみで相手に怪我をさせない加減が出来るようになるわけさ。

それだって、腕を上げた証拠になるだろうし、芸が無いのはご愛嬌と思うことにしよう。





「そうだな。君の場合、身のこなしやスピードよりも、今持っている一閃の技術を更に高めるべきだろう。
あらゆる物を斬る一閃、小手先の業では敵わない、今よりも強い一閃をだ。そうすれば、今のような状況になっても必ず勝てる」

「・・・はい」










確かに、ティアナの模擬戦の時も反省したけど、魔法戦闘に頼りすぎな傾向はあるからなぁ。剣術もいい機会だし、しっかり磨いていかないと・・・。



あ、そういや思い出したよ。

先生に昔言われたことがある。うん、剣術を習い始めて、結構最初の段階で。




















『お前さんはバカじゃ。細かい理屈うんぬんはえぇから、剣を振るう時は、相手を真っ二つにすることだけ考えとけ。そうすりゃ、何でも斬れるわい。
たとえそれが、鉄だろうが鋼だろうが磁石だろうが岩だろうが水だろうが・・・魔力だろうがの。
ワシらにとっての『斬る』ということは、力学やら物理学やらじゃない。つか、そんなもんに頼って斬っているうちはまだまだじゃ。
・・・大事なのはハートじゃ。お前さんの、今を覆したいと思う気持ちが、太刀筋を強くするんじゃよ』




















・・・って言われた事があった。

言われた時はバカ呼ばわりはどうなのかと思ったけど・・・うん、そうなのかもしれない。僕の基本は、やっぱりそこなんだ。

理屈じゃない。そうしたいと思う気持ち。今を覆したいと思う気持ち・・・か。なんか、ちょっと忘れたのかも。










「・・・でも、恭文がそうやって気遣ってくれて、私はすっごく嬉しい。女の子はそういうのでキュンッときたりするのっ! というか、きたよ?」



・・・キラキラした目で僕を見ながら言うのはやめてください。なんか、頭の痛みが酷くなる感覚を覚えますから。



「・・・美由希の事は気にしなくていいから、とりあえず少し休んでいなさい。美由希、次はエリオ君と頼む」

「あ、はい。エリオ君お待たせ・・・って、あれ?」



美由希さんが不思議そうな顔である一点を見る。・・・あ、エリオとキャロがぽかーんとしてる。どうしたのさ?



「いえ、なんというか・・・」

「すごいと思ってしまって・・・・」

「二人とも、美由希さんの組み手みるのは初めてだから・・・」



まぁ、気持ちは分かる。うちの部隊には基本的に二刀流使う人間居ないしね。そういうのもあるんでしょ。

・・・ディードと会わせてみたいな。ディードって、ツインブレイズっていう二刀流使いだし。



「まぁ、関心するのは実際に手合わせしてからでいいから。ほらほらエリオ、早く準備する」

「あ、うんっ!」










そうして、美由希さんとエリオ。その次にフェイトと組み手をやって、最期に僕とフェイトで組み手をして、その日の朝練は終了した。

ちなみに結果は・・・まぁ、御剣の剣士の実力は半端じゃないとだけ言っておこう。美由希さん、フェイト以上に速いからなぁ・・・。






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