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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第15話 『世の中は思い通りにはならない。だけど、報われる時もある』:1



・・・・・神は居た。





色々と辛い思いをした僕を、神は見捨てはしなかった。そう、神はいたのだっ!!





なんやかんやで、本日はお休み当日。今日から三日間は僕はフリーダム。そして幸せの時間だ。





・・・幸せの時間っていうと、なんかドロドロしてエロな感じがするけど、そんなことはない。










だって、今の僕の心は、この空と同じように、清々しいまでに晴れ渡っているからっ!!




















「・・・なぎさん、私達より嬉しそう」





白いワンピースに、ピンクの上着。まるでどっかのお嬢様ルックなキャロが何を言おうと、まったく気にならない。





「というか、さっきからはしゃぎまくりだよね・・・」





エリオは、ジーパンジージャンに白シャツ。僕とほぼ同じ格好。ま、僕は黒の無地だけど。





「でも、そんなに喜んでもらえると、誘った甲斐があったな。ヤスフミ、三日間よろしくね」

「うん、よろしくフェイト〜♪」





黒の薄手のカーディガンに、黄色いワンピースを着ているフェイトの声に、楽しげに返事。

あぁ、なんていうか・・・。





”エリオ、キャロ、ありがとう。本当に感謝してるよっ!!”

”なぎさん、それもう94回目・・・”

”一日20回近く言ってるよ・・・”





だって、そんな気持ちなんだよっ!





三日間フェイトと一緒・・・うぅ、一緒に暮らしてたというのに、これで感激するのは色々間違っているのだろうけど、そこはいいっ!!





とにかく・・・楽しむぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!




















≪・・・いや、あなたいい加減落ち着いてくださいよ。なんで頭から『♪』マークが出まくってるんですか?≫

「気にしないで」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第15話 『世の中は思い通りにはならない。だけど、報われる時もある』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あははは・・・。なんていうか、恭文、子どもみたいだね。





「仕方ないよ。本当に嬉しかったんだと思うから」

「そうだね。話通りなら、フェイトさんと旅行なんて、最近は無かったんだし」





まぁ、さすがにもう落ち着いて、フェイトさんと楽しそうに話してるけど。・・・うん、やっぱりだよね。





「キャロ」

「なに?」

「恭文、気持ちが通じるといいよね」

「・・・そうだね。うん、いっぱい泣いちゃったんだもん。そのぶん、幸せにならないとダメだよね」





うん、そうだよね。いっぱい、いっぱいフェイトさんとの時間、作れるようにしないといけないよね。

僕達が、恭文から借りちゃった時間、返していきたいな。




















・・・ということで、僕達が来たのは・・・ミッドの北部。

首都から、飛行機で降り立ったのは、新臨海第8空港。

4年前に焼け落ちた空港の跡地に建設された、まだぴかぴかの空港。



・・・あ、スバルさんがなのはさんに助けてもらったのって、ここなんだよね。





「そうだよ。私やヤスフミも、ここで救助活動に参加してたんだ」

「そうなんですかっ!?」

「なら、もしかしてなぎさんもその時にスバルさんや、ギンガさんとは・・・」

「あー、なのはやフェイトは、スバルやらギンガさんを救出したらしいんだけど、僕はそこには居なかったのよ。
外で、救助隊の突入口の確保作業に付き合ってたから」



あ、そっか。それなら、スバルさんが恭文のこと知っているはずだよね。体型変わってないんだし。



「・・・エリオ、あとでグリグリね」

「どうしてっ!?」





でも、なんだかニアミスしまくってたんだね。すごいなぁ・・・。





「でも、あの時助けたのが私じゃなくてヤスフミだったら、もっとギンガと仲良くなってたかもね」

「・・・そうしたら、もうちょっと大人しくなってくれてたかな? すごい勢いで世話焼き女房化してるし」

≪マスターが無茶苦茶ですからね。どうしてもそうなりますよ。・・・さ、バス来ましたよ≫





なんて話していると、ホテルの送迎バスが来た。・・・今日は、ここで一日ノンビリ過ごす。というか、北部に来たのは初めてだから、楽しみだな。




















部屋割りは二つ。フェイトさん・キャロ。僕・恭文。・・・うん、さすがに同じ部屋はアウトですよフェイトさん。





「でも、私達は家族なわけだし・・・」

「フェイト、僕はキャロとフェイトの着替えにいちいち気を使うのは非常に辛いんだけど」

「僕だって同じです。さすがに・・・」





部屋を一つにしようと言ったフェイトさんの意見は、僕達の正義によって却下された。

そうして部屋に入ると・・・うわ、結構広いね。





「だね。うわ、ベッドが二つあるし。フェイト、また高い部屋を・・・」

≪部屋を一つにしたかったのって、もしかして金額の問題でしょうか?≫

「アルトアイゼン、さすがにそれはないよ。フェイトさんは執務官だから、結構なお給料だろうし・・・」

「エリオ、それはむしろ僕のセリフだよ。というか、10歳児が金の話をしないで・・・」










とにかく、僕達は荷物を置いて、部屋の戸締りをしっかりとして・・・というか、オートロックなんだけどね。

とにかく、僕達はロビーで仕度を整えて待っていたフェイトさん達と合流。さっそく観光に繰り出した。




















「・・・で、恭文。どうして僕達は市場になんて居るのっ!?」

「知り合いのお勧めだよ。ホラ」





そうして、恭文が渡してきた1枚の紙・・・というか、メモを受け取る。そこには、ここの場所と、お店がかかれていた。





「くろすふぉーど印の、ミッド北部の隠れスポット?」

「旅行に行くって話をしたら、ここはこの時間に絶対行っておけって力強く言われたんだよ。で、1時間並べとか」

「1時間っ!?」

「・・・というか、ヤスフミ。このくろすふぉーどってまさか・・・『あの』クロスフォード財団の関係者か何かなの?」

≪そうですね≫

「えぇぇぇぇぇぇっ!?」










とりあえず、恭文が案内してくれたお店に並ぶ。

その間に、驚きまくっているフェイトさん、それに恭文から説明を受けた。





クロスフォード財団というのは、ミッドでも有数の財団・・・資産家で、管理局や、聖王教会の大株主のスポンサーとか。

・・・え、恭文、そんなにすごい所の関係者と知り合いだったのっ!?










「いや、偶然だよ? というか、その人は分家の方だから、本家とかに比べるとそんな影響力ないとか言ってたし。つか・・・」

≪ほら、マスターのデンバードや、フェイトさんが母神になる原因になった、トゥデイを作ってくれた人ですよ≫

「そうなのっ!?」

「そ。ヒロリス・クロスフォードさんって言って、局の特殊車両開発部のスタッフさん。ここ2年くらいの間に知り合った友達なんだ」





あれの開発者さんだったんだ・・・。ビックリ・・・した・・・なぁ・・・。





「でも、その人とヤスフミって、どういう経緯で知り合ったの?」

「うんとね・・・かくかくしかじか・・・というわけなの」

「同じゲームをしていて・・・」

「オフ会で会おうって話になって・・・」

「それで会ってみたら、関係者・・・。本当にすごい偶然だったんだね。というか、私まったく知らなかったよっ!」

「だって、その時フェイトはフェイトで長期間任務とかしてたじゃないのさ。僕は海鳴で、フェイトはミッドに来ていたわけだし。そりゃ知らないって」





・・・恭文、なんかフェイトさんが不満そうだよ?





「でも、本当に色々お世話になってるんだ。ミッドで引っ越す時も、物件紹介してくれたしさ」

「あそこ・・・なぎさんの家?」



恭文は、キャロの言葉に頷いた。というか、すごいね。マンションなんかも扱ってるんだ。



「え、あそこってクロスフォード財団の所有物件だったのっ!?」

「本家じゃなくて、ヒロさんの分家の方だけどね。・・・というか、今度マンション名確認しなよ。表に思いっきり書かれてるよ?
『メゾン・ド・クロスフォード』って」

「・・・バルディッシュ、気づいてた?」

≪Yes Sir≫





・・・バルディッシュは気づいてたのに、マスターのフェイトさんは知らなかったんだね。





「・・・僕、気づいてるもんだと思ってた」

≪私もですよ。というかマスター、私・・・時々この人が優秀な執務官っていうのが、信じられなくなるんですけど≫

「そんなの関係ないからっ! ・・・ヤスフミ、今度、その人を紹介して」

「なんでっ!?」

「だって、ヤスフミが本当にお世話になってるみたいだし、ちゃんと挨拶したいの。いいよね?」

「わ、わかった。時間を見繕って紹介するから・・・とりあえずその真剣な目はやめて。今、一応休日よ?」










あははは・・・。ヤスフミ、なんか大変そう。




















そんな話をしていると、お店が開いた。というか・・・ビックリした。



僕達は、結構最初の段階で並んでたんだけど、待っている間に凄い長蛇の列。あれ、今から並んでたら、一時間で入れないよね・・・。





とにかく、お店に入る。





木で出来ていて、首都のレストランなんかとは違う雰囲気。というか、言い方悪いけど・・・ちょっとボロいかも。





とにかく、恭文の友達のお勧めというモツ煮込み定食というのを注文。なぜか大盛りできなかったのが残念だった。

あ、でもご飯はお代わり自由だからいいのか。





そうして数分後、僕達の前に、ちょっとだけ無愛想な叔父さんが出してきたのが、その定食。というか、すごく速いね・・・。



えっと、白いご飯に、お鍋に・・・これがモツ煮込みなんだね。なんでか、ちっちゃいお玉が入ってる。

お味噌汁に、煮物に・・・。これだけ見ると、本当に普通の定食だよね。





とにかく、僕とキャロはお箸を持つ。使い方は、フェイトさんやアルフから教えてもらってるから問題ない。





そうして僕達四人は、同時にモツを箸に取る。・・・モツって、内蔵だよね? 臭くないのかな。とにかく・・・パク。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。




















『美味しい〜♪』










僕達は、四人とも声を揃えて、狭い店内だというのを弁えずに声を出してしまった。

でも、だって・・・美味しいんだよっ! すごくっ!!





内蔵だって聞いてたから、くさいのかなって思ったけど、全然そんなことない。

コリコリして、中の脂肪がとろとろで、この・・・おだしの味がしっかり染みてて、すごく美味しい・・・。

ちょっと濃い目な味付けかと思うけど、これならご飯に・・・あれ?





恭文が、お玉におだしとモツを取って、ご飯の上に乗せて・・・えぇっ!?










「な、なぎさんっ!?」

「ん、どうしたの? これ、こういう食べ方してもいいもんなんだけど」



そうなのっ!?



「あ、そっか。うん、そうだよね。私、なんのためにお玉が付いてるのかと思っちゃった」

≪・・・フェイトさん、あなた、一応地球育ちですよね?≫

「ヤスフミも、そんな呆れた目をしないでっ! ・・・じゃあ、私達も」





フェイトさんの言葉にならうように、僕とキャロも、当のフェイトさんも、モツとおだしをお玉ですくって、ご飯にかける。



すると、モツが上にのって、おだしがご飯にかかる。おだしのあめ色で、白いご飯が薄く染まる。それを・・・四人同時に、口にかき入れる。




















『美味しいー♪』




















・・・僕達全員、口元にご飯粒をいくつかつけてそう言った。でも、気にならない。

だって、本当に美味しかったから。




















・・・恭文曰く、あのお店は安くて早くて凄く美味いをモットーとしているらしい。

それで、市場というのを活かして、新鮮な材料を安く仕入れて、色んな定食を作っているそうだ。・・・他のも食べたかったな。まぁ、仕方ないけど。





よし、また来よう。今度は、スバルさん達も連れてこれたら、いいなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その後は、四人で普通に観光を始めた。





この地域は温泉もあるので、それ関連で色々。










ぷしゅー!










「きゃっ!」

「うわっ!」

「エリオ、キャロ、危ないっ!」

「・・・フェイト、大丈夫だから。ちゃんと距離はあるから」

≪お願いですから、ソニックムーブを使って、一気に後方に逃げるのはやめてください。客が全員引いてるじゃないですか≫





間欠泉・・・凄かった。理論としては分かるんだけど、やっぱり不思議。










「ほい、エリオ」

「ありがと。えっと・・・」

「パクっ! ・・・美味しいっ!!」

「・・・きゃーっ!」

「・・・フェイト、なにやってるの?」

≪私、温泉卵に塩をかけようとして、全部ぶちまけた人、初めて見ましたよ≫

「うぅ・・・、これ、もうたべられな・・・え?」

「フェイトは僕の食べていいよ。つか、塩なくても十分だから」

「あの、ダメだよっ! それすごく塩辛いし・・・」

「玉子を無駄にするよりまし。・・・うん、なんとかいけるや。美味しい美味しい」

「ヤスフミ・・・。あの、ありがと」





恭文、その後、ずっと平気な顔してた。だけど、水をちょっと多めに飲んでたけどね。やっぱり、塩辛かったんだ。










「・・・泥風呂なんてあるんだね」

「そうだね。というか、これは温度高いから無理だけど、泥風呂は美容効果があるんだよ?」

「あ、それいいなぁ」

「キャロ、泥風呂に入ったら、お肌スベスベになるよ」

「ホントですかっ!? あ、でも・・・フェイトさんが入ったら、もっとスベスベかも。今だって、すごくスベスベですし」

「恭文、空が青いね」

「うん、青いね」

「というわけで、なぎさん触ってみて?」

「はぁっ!?」

≪さりげなく会話から外れようとしたのに、引き戻しますか≫

「あ、私は大丈夫だよ? 腕くらいなら・・・はい、ヤスフミ」

「あ、うん・・・」

「どう・・・かな?」

「・・・・スベスベ」





・・・恭文、顔がどうしてか赤かった。まぁ、仕方ないかな。










とにかく、温泉施設をあれこれ巡りながら、僕達は再びホテルに戻ってきた。





そう、なぜなら・・・。




















「・・・・・・すごいね、これ」

「4年前よりパワーアップしてない?」





ホテル自慢の温水プール。というか、すごい広いよこれっ!!




「ウォータースライダーに、波のでるプール。人口ビーチに、競泳用みたいなのもあるのか。あ、こっちも温水だね」

「すごいね・・・」





なんて言いながら、僕達はフェイトさんとキャロを待ってるんだけど・・・こないね。





「女性の着替えってのは、時間がかかるもんだよ。あー、そうだエリオ、一つお願い」

「なに?」

「キャロの水着姿、フェイトより先に誉めるんだよ?」

「え?」





キャロの・・・どういうことだろ。

僕が疑問そうな顔をしていたのか。右隣に立っていた恭文が、しゃがんで僕に目線を合わせる。

そして、右手の人差し指をピンと上に立てながら、話を続けた。





「いい? キャロはこのために水着を新調している。やっぱり自分の評価ってやつは気になってるよ。そうなると・・・」

≪誉める順番で、今後のキャロさんの機嫌が変わりますね。フェイトさんはまぁ、大丈夫でしょ。ああいう方ですし。
ただ、キャロさんは・・・エリオさん、あなたの評価を、かなり気にしてると見ていいですね≫

「そ、そうなのっ!?」

「そうなのよ。いい? 僕達は、まずキャロを誉める。例えキャロが着てるのがスクール水着とか、妙に派手なビキニだったとしても、絶対にキャロから誉めるの。
多分隣のフェイトと自分を比べてもいるだろうから、そこで真っ先にキャロを誉めれば・・・僕達は今日、幸せに生きられるよ」





な、なるほど・・・。

恭文の瞳は、戦っている時と同じで、どこか真剣なものを感じさせた。

まるで、僕達がこれから命がけの実戦を挑むかのような気持ちになってくる。





「・・・前に、これと同じ状況があったから」

「え?」

≪ヴィータ師匠とフェイトさんが出てきたとき、フェイトさんを真っ先に誉めたばかりに、ぶっ飛ばされたんですよ≫

「・・・痛かった。ギガント出してくるんだもん。
防御魔法張ってなかったら、死んでたさ。瞬間詠唱・処理能力があって、よかったと思うもの」










・・・本当に、大変だったんだね。うん、納得したよ。とにかく、キャロから先に誉めよう。










「そうだよ、そうしないと・・・」

「ヴォルテールにふんづけられるとか?」

「あぁ、そうそう。さすがにあれには勝て・・・な・・・い・・・」





恭文の言葉が止まった。だらだら汗なんか流れてる。

というか、僕も止まった。だって・・・恭文の後ろに、満面の笑みの笑顔があるから。

その傍らには、僕達の誰よりも身長のある一人の女性。



その人は、苦笑いなんて浮かべながら、恭文と、恭文の後ろにいる女の子を見比べてる。





「なぎさん。私ちょっと話があるんだ。特に・・・スクール水着とか、妙に派手なビキニってあたりかな?」

「きゃ、キャロっ!? お願いだから耳をひっぱらないでっ!
あ、キャロ、水着素敵だよ? ピンクの生地多めのビキニって、また頑張ったね。凄く可愛いよっ!!」

「うん、ありがと。でも、フェイトさんには負けるよね」

「いや、キャロの方が可愛いよ」

「ありがと。でも、フェイトさんの方が綺麗だよね」

「いや、キャロの方が綺麗だよ」

「そっか。うん、ちょっとお説教だね」

「え、なんでっ!? 誉めたよね僕っ!!
・・・いやっ! エリオっ!! フェイトも助けてー!!」





だけど、僕達は、恭文の耳をつかんで、ズルズルとどこかへ引きずっていくキャロを、見送るしか出来なかった。

僕の傍らには・・・黒のビキニをその身に纏うフェイトさんが、それに手を振っていた。





「まぁ、ヤスフミとキャロもすぐに戻ってくるだろうし、二人で先に遊んでようか」

「そ、そうですね」










・・・それから10分後。どこかすっきりしたようなキャロと、頭を抱えた恭文が合流。四人で、楽しく遊んだ。

なお、僕は心からキャロの水着を誉めたら、キャロは喜んでくれた。うん、よかったよかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「よくないよっ!」

「なぎさん、なにがよくないの?」

「うんとね、10歳児に尻に敷かれた辺りが」

「・・・みんなに言おうかな。なぎさんは打算で女の子を誉める人だって」

「ごめんなさい。是非ともやめていただけるとありがたいです」










・・・キャロとの上下関係がハッキリと決定した残酷な時間から、数時間後。僕達は、再びホテルの外に繰り出していた。





ホテルの食事も味気ないということで、各世界の郷土料理を出しているお店があるとのことで、そこに来たのだ。

・・・つかさ、なんで沖縄料理なんてあるのっ!? またピンポイントなとこをつくなぁ。










「でも、これ美味しいね。このゴーヤチャンプルーって言うの。
こう、苦いんだけどそれだけじゃなくて、玉子がフワフワして、ちょっと甘くて・・・」

「このブタの足も。トロトロして・・・保護隊に居た時の食事を思い出しちゃう」

≪キャロさん、意外とカントリーガールなんですね≫

「うん。豚さんや羊さんを捌いたこともあるよ? こう、食事になってくれてありがとうって、感謝しながら食べるの」





・・・かたや都会っ子。かたやカントリーガール。

うん、上下関係は決まったね。エリオ、頑張れ。キャロはきっと強くてしたたかな女の子になるよ。





「というか恭文、平気なの?」

「なにが?」

「だって・・・それ、お酒だよね?」





そう、僕はご飯をいただきながら、某沖縄の地酒をちびちびいただいていた。あー、美味しい・・・。





「あ、大丈夫だよ。ヤスフミ、すごいザルなの」

「「そうなのっ!?」」

≪まぁ、10歳の頃から、グランド・マスターやレティさんやリンディさんに、散々付き合わされてましたからね。
おかげで、普通に飲む分には全く酔わない体質になったんですよ≫




・・・普段は飲まないけど、ミッドじゃあ、地球の地酒なんて滅多に味わえないからね。

なお、『むむ、ちょっと意外。見た目からは想像出来ないよ』・・・とは、キャロの談。うん、ほっとけ。



「というか、フェイトさん・・・いいんですか?」

「まぁ、本当に酔わないから・・・。吐いたりとかして、迷惑もかけないしね。一応認めてるの。あ、でも、基本的にはまだダメなんだからね?
私もそうだけど、ヤスフミ、未成年なんだし」

「分かってますよー」





なんていいつつ、一口飲む。

あぁ、この口に広がる香りがまたなんとも・・・。やっぱ、泡盛美味しいなぁ。





「・・・あ、エリオとキャロはダメだよ? さすがに、10歳児に飲酒なんてさせるわけにはいかないし」

≪意外とちゃんとしてますね、あなた≫

「・・・ちゃんとしてないのに仕込まれたんでね。僕が11とか12で、どんだけ宴会に付き合わされたと? しかも、フェイトは逃げちゃうし」

「あの、逃げたわけじゃないよっ! ちょっとかかわりたくなくて・・・」

「フェイトさん、それ同じことですよ・・・」

「なぎさん、その頃から大変だったんだね・・・」




















・・・とにかく、みんなで楽しくご飯を頂いた後、僕達はホテルに・・・戻ったんだけど・・・。あの、フェイト?





「うん・・・」

「・・・どこに落とした?」

「・・・ごめん、わからない」





だぁぁぁぁぁぁっ! なにやってるのさ本当にっ!?



そう、フェイトは、キャロとの部屋の鍵を、見事に落とした。部屋の前に到着したらこれですよ。

やっぱり、プライベートのフェイトは、一本ネジ抜けてるって・・・。





「というか、マスターキーがないなんて・・・」

「・・・よし、魔法でドアぶっ壊そうか」

「ダメだよヤスフミっ! それなら、窓を壊したほうがいいよ。それなら、修復魔法で直すのも楽だし。
ほら、ヤスフミだったら、気づかれる前にすぐに直せるよ」

「フェイトさんもなんでそんな物騒な事言ってるんですかっ!?」

≪こんなことなら、シャッハさんから物質透過魔法を教わっておくべきでしたね≫



そーだね。そうすれば、隣同士なんだし、一瞬で侵入できたというのに。よし、今度教わるか。



「アルトアイゼン、ドアのロックのコンピュータに侵入して開けるっていうのは無理かな?」

≪キャロさん、また大胆な方法を考えますね。ですが、それはやめておいた方がいいと思います。
ここのロックは、それ対策が施されている物ですからね。下手をすれば警察沙汰ですよ。やはり、ここはドアを破壊して・・・≫

「だから、キャロもアルトアイゼンもどうしてそういう物騒な話をするのっ!?
あと、ドアのロックにハッキングするより、ドアを破壊するほうが騒ぎになるよっ!!」

「そうだよキャロ。ガラスだったら、魔法を使わなくても割れるし、警報装置も大丈夫みたいだし。
さっきも言ったけど、瞬間詠唱・処理能力持ちのヤスフミが修復魔法を使えばわからないよ」

「フェイトさんもその考えはやめてくださいっ! というか、執務官がそんなことしちゃマズイですよっ!!
いや、そもそもこんな話になること自体がおかしいからっ!!」





うむぅ、エリオも意外とツッコミキャラなんだよな。うん、これは僕は楽できるな。





「しないでよっ! どうして途中から適当に傍観してるのっ!? お願いだから一緒に考えてっ!!」

「じゃあどうしろっていうのさっ!? ハッキングもダメ、破壊もだめじゃ、手段のとりようないでしょうがっ!!」

「あ、でも問題無いかも。私とキャロも、この部屋で寝ればいいんだよ」

「あ、そうですね。それなら、ドアも窓も壊さなくていいですよっ!」




















今、フェイトがすごく嬉しそうに発言した。キャロも、とても嬉しそうに同意した。

それを、僕とエリオは聞き逃すことなど出来なかった。・・・よし。




















「恭文、ネカフェって近くにあったよね」

「うん、帰るときに何件か見かけたから」

「なら、そこ行こうか。ほら、僕達は男だし」

「そうだね。いこいこ」



いい感じで話が纏まったので、部屋の外に出ようとすると・・・僕はフェイト、エリオはキャロに手を捕まれました。



「なに? 僕は早くネカフェに行って、ドラゴンボー○の完全版を全巻読破したいんだけど」

「そんなのダメだよっ! ほら、せっかくなんだし、一緒に寝ようよ」

「・・・エリオはまだいいさ。僕は男だよっ!? つか、どこで寝ろっていうのさっ!!」

「僕だって嫌だよっ! お、女の子と一緒の部屋はさすがに・・・」

「エリオ君、他に女が居るのっ!?」



そうなのっ!? うわ、意外とプレイボーイだね、おいっ!!



「いないよっ! というか、女も居ないよっ!! キャロ何言ってるのっ!?」

「エリオ、正直に言った方がいいと思うよ?
こういうのは、ちゃんとしないとダメ。キャロだって、正直に話せば納得してくれるよ」

「だから、居ないって言ってるじゃないですかっ! というか、フェイトさんまでのらないでくださいっ!!」

「エリオなに言ってるのっ! 戦いはノリのいい方が勝つんだよっ!?」

「それが飛び出す意味がわかりませんからっ! というか、本当に落ち着いてくださいっ!!」



大変だね、エリオ。じゃ、そういうことで・・・。



「フェイト、なんで離してくれないのっ!?」

「せっかくの旅行で、ヤスフミだけ勝手なんてダメっ!!
・・・一緒に寝ようよ。その、迷惑は絶対かけないから」




















・・・結局、僕達の抵抗など無意味だった。





ベッドは二つ。一つは、左からフェイト・キャロ・エリオ・僕。





・・・意味が分からないしっ! なんでベッドが二つあるのに、一つのベッドで寝なくちゃいけないんだよっ!?





なお、抵抗は無意味でした。フェイトが、どうしてもそういう風に寝てみたいと言い出したのです。

まぁ、エリオとキャロが間に入るわけだし、大丈夫と思って納得を・・・。





パジャマなどがなかったので、フェイトは購買で買いました。

結構真剣に選んでました。普段はネグリジェだそうなので。

キャロには、あえてエリオの予備のパジャマを貸しました。

女の子が、男の子の服を借りて着るのは、萌えだからです。

『あの、エリオ君・・・似合うかな?』って、上目遣いで見られながら言われた時のエリオは、茹蛸騎士でした。

フェイトが、それを見て子どもの成長に感動したのか、泣いてました。

とりあえず、チョップしてやりました。

痛がっていました。

で、フェイトとキャロは、着替えはお風呂場でやりました。

着替えている間、すごく居心地悪かったです。

エリオ共々頭を抱えてましたさそりゃ。





とにかく、フェイトにだけは、極力目を合わせないようにした。うん、絶対に。










「それじゃあ・・・お休み。ヤスフミ。エリオ、キャロも」

「「はい、おやすみなさい・・・」」

「おやすみ。フェイト・・・」










・・・お酒が入っていたということもあり、僕は・・・すごく気持ちよく夢の中へと突入した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私は、ゆっくりとベッドから抜け出す。





だって・・・トイレだから。





それで、なんやかんや(なぎさんに、こういう言い方をするとみんな納得してくれるって教わった)して、戻ってくると・・・あれ?





フェイトさん、エリオ君の隣りにきちゃってる・・・。





あ、エリオ君抱きついて・・・ちょっとイラってする。





まぁ、いいか。今日はみんなで寝てるんだし、少しくらいは・・・ね。





私は、さっきとフェイトさんと位置を入れ替える形でベッドに入る。そしてそのまま、眠りについた。





・・・やっぱり、幸せ。





だって、こういうのって家族みたいだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・目が覚めた。だって、トイレに行きたくなっ・・・あれ?





なんか暖かくて・・・えぇっ!?





な、なんで僕フェイトさんに抱き締められてるのっ!?





叫びそうになる気持ちを必死に抑える。





そして・・・フェイトさんを起こさないようにして、その腕から抜け出す。





あー、びっくりした。というか、どうして?





だってキャロが・・・あ、何時の間にか位置が入れ替わってる。





なにがあったんだろうと頭を捻りながらも、僕はトイレに行く。





それで、中でなんやかんや(アルトアイゼンが、いいにくい事でも、こういう言い方をすると、皆納得してくれるって教えてくれた)とした。





戻ってくると・・・僕は言葉を失った。





だって、フェイトさんと恭文が・・・抱き合って寝てるんだもん。さっきの僕と同じように。





というか、そのせいでさっきまで僕がいた位置がフェイトさんによって埋められて、空いてる個所は・・・ベッドに入った時、フェイトさんが居た場所。





だって、キャロまで寝返りを打って、そうなったんだもん。





とにかく・・・うん、明日の朝とんでもないことになるのは覚悟しておこう。





でも、こういうハプニングはフラグになるって言ってたし、問題ないのかな?





そして、僕はまたベッドに入る。キャロの隣りに。





・・・キャロも、びっくりするかな?





でも、それはまぁいいや。今はすごく幸せだから。





だって、本当に家族みたいなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・腕の中に、温もりを感じる。





凄く暖かくて、優しくて・・・私がずっと前から知ってる温もり。





何度も抱き締めてるその温もりに気づいたところから、私の眠りは覚めた。





ゆっくりと重い目蓋を開ける。





するとそこにあったのは、栗色の髪の男の子。





私を強く抱き締めてくれる腕の感触に、少しだけ胸が熱くなる。





だって、必要としてくれてるってことだと思うから。





でも、どうしてヤスフミが私の隣りに?





だって、エリオとキャロが間に居たはずだし。





・・・あれ、私、ベッドの一番端の方に居たはずなのに、位置が変わってる?





まぁ、いいかな。





きっと、なんやかんや(ヤスフミが、こういう言い方をすると、色んなものが納得出来るって教えてくれた)あったんだよね。





それに、腕を解いて、ヤスフミ起こしちゃうのも可哀想だし。





きっとアレだよ。なんやかんやしちゃうのにも、意味があるよね。うん。





それに、ヤスフミとこうして寝てるの、初めてだし、ビックリしちゃったけど・・・別に嫌じゃないから。





だって、かぞ・・・。





「フェイト」





腕の中の男の子が、小さく呟いた。





起こしたのかと思って、その子を見る。





だけど、その様子はなかった。





もしかして・・・夢の中に、私が出てる?





なんだか、ちょっと嬉しい。





「好き・・・」





ヤスフミの、私を抱き締める腕の力が強くなる。





そうしながら出てきたのは、いつも、本当にたくさん言ってくれている言葉。





いつでも、どんな時でも、好きで、特別で、大事で、守りたいと言ってくれる。





こんな私のために、たくさん力になろうとしてくれる。





「僕・・・味方に・・・なるから・・・」





うん、そうしてくれてるよね。





小さな身体の中にある、たくさんの想いと力、その全部を青い翼にして、私を包んでくれる。





いつも、感謝して・・・しても、してもし足りない言葉。





だけど・・・なんでだろう。





私は、その言葉達にいつもとは違う、胸を貫かれるものを感じた。





それだけじゃなくて、凄く嬉しくて・・・切なくて・・・。





口にしたときのヤスフミの表情が、苦しそうで必死な感じがして・・・。





私は、ヤスフミを抱き締める。





さっきよりも強く。





もう、苦しそうになんてして欲しくなくて・・・もう一度眠りにつくまで、ずっと頭を撫でていた。





だけどその間ずっと・・・胸の中を貫いた甘い衝撃は、消えることは無かった。




















そして、それから数時間後。





目を覚ましたヤスフミとキャロが、状況にビックリして大騒ぎになった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・翌朝、フェイトとキャロの部屋は、ホテルの人たちがなんやかんやとしてくれたおかげで、無事に空くことになった。





だけど・・・だけど・・・!!










なんであんな状況になってたんだよっ!?





フェイトのむ、む、む・・・胸に顔埋めて寝てたと気づいた時に、僕がどんだけ肝を冷やしたとっ!?

しかも、フェイトも意外と普通に・・・してなかったな。なんか、ちょっとだけ顔赤かった。なんだろ、あれ。




















≪・・・まぁ、アレですよ。なんやかんやしちゃったんですよ≫

「あぁ、なるほ・・・納得出来るわけないでしょぼけっ! 僕以外全員色んな位置が変わってたってどういうことだよっ!?」

「そ、そうだよっ! ・・・私、もうお嫁にいけないっ!! だって、エリオ君が・・・あんな・・・あんな・・・」





そう、頭を抱える状況は僕だけじゃなかった。キャロもだ。

エリオに抱き締められる形で眠っていたからさぁ大変。



しかも、目が覚めた時にちょうどエリオが作為的な寝返りを打って、覆い被さってきたし。





「作為的じゃないよっ! というか・・・ごめん」

「あ、あの・・・大丈夫だよ? ほら、私達は・・・」

≪フェイトさん、その一言で片付けられない事って、多いですよ?≫

「・・・まぁ、そのなんていうか・・・あの・・・フェイト」





荷物を持って、ホテルを出ながらそんな会話をしていた。

一応必要なことかと思って、フェイトに・・・話しかけた。フェイトは、僕を見て、少しだけキョトンとしたような顔を向けた。





「・・・あの、ごめん。抱きついたりして」

「あの、大丈夫だよ? その・・・どうも私からそうしたみたいだから」





そう、エリオとキャロの証言により、フェイトがなんやかんやとして、僕の隣りに来たそうだ。そして、あの状態・・・。





「ね、ヤスフミ」

「なに?」

「・・・ううん、なんでもない。ほら、いこう? みんなへのお土産、買いに行かなきゃ」










・・・フェイトが、ニッコリと笑って、出口を目指すために、補足を上げる。エリキャロもそれに習う。なんやかんやいいながらだけど。



僕もそれに着いていく。だけど、ちょっとだけ気になった。さっきのフェイトの表情が、どうしても引っかかった。



真剣な顔だったから。なに・・・言いたかったんだろ?




















そのあと、再び市場に向かう。特産品売り場なんかも併設されていたので、そこを回る。





まー、そこもなんやかんやとしながら・・・え、だめ? わかったよ。じゃあ、本当にちょこっとだけね?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・えっと、サリさんとヒロさんの分は」

「ね、ヤスフミ。そのサリさんっていうのも、お友達?」

「うん、ヒロさんの同僚。というか、ヒロさんと一緒に知り合ったの」

「・・・そっか」





まー、お土産にかんしては、事前にアレがいいとかコレがいいとかリクエストは受けてるしね。問題は・・・あれ、エリキャロは?





「うん、あそこで一緒におみやげ選んでる」





フェイトが指差した方を見ると、本当にすぐ近くで、ガラス工芸の品を見ている。すごく楽しそうに。

うむぅ、さっきまでちょこっと微妙な空気だったのに。子どもの順応力はすごいなぁ。すぐに仲直りできるんだから。

・・・というか、フェイト。





「なに?」

「いいの? 口出し・・・というか、一緒に選んだりしなくて」

「しないよ。というか、アレは二人が買うお土産だよ? 私が一緒に選んだり、自分からアドバイスしたらダメだよ」



・・・うそ、すごいまともだ。正直私、信じられませんよ。



≪間欠泉から、充分に距離が離れていたにも関わらず、守ろうとしてソニックムーブを使った女性と同一人物とは思えませんね≫

「そ、それは言わないでー!」





ギャグ顔で慌てふためくフェイトを横目で見ながら、お土産を・・・あれ、通信?





『やっほー! やっさん、お休み堪能してるかな〜♪』





・・・僕がなんにもしてないのに、通信立ち上がるってどういうことだろ。





「堪能してますよ。つか、どうしたんですか。ヒロさん・・・だけじゃなくて、サリさんまで」

『いや、お土産のリクエストの追加でもさせてもらおうと思ってな』





今繋がった通信モニターに映る一組の男女。



白いセミロングの髪を、二つに分けている柔らかい顔立ちの女性。こちらが、ヒロリス・クロスフォード。



そして、その隣りに居る黒色の少し長めのざんばらな髪の男性が、サリエル・エグザ。



今まで何度か話しているけど、僕の友達。本局の、特殊車両開発局で働くスタッフさんである。なお、オタク。





「あぁ、それなら丁度よかった。今選んでるとこだったんですよ」

『お、そうか。じゃあ悪いんだけど、今、メールでリスト送ったから、それもお願い。
分からないようなら、そこの店員さんなり、市場の人なりに聞けばOKなはずだから』

≪また手際のいいことで・・・今確認しました。間違いなく送りますので。・・・というか、開発局宛で本当にいいんですか?≫





だって、お酒もそうだし、事前のリクエストの中に生ものとかもあるのに。





『・・・やっさん、アルトアイゼンも、コイツにそれ言って意味あると思う?』

「・・・ありませんよね」

≪あるわけがないですよね≫

『なにさアンタらっ! 私をなんだと思ってるっ!?』

「・・・あの」





僕達がそんな楽しい会話をしていると・・・フェイトがやたらとかしこまっていた。





『ほえ?』

「・・・なんでヤスフミも含めて不思議そうな顔をするの?
あの、ヤスフミのお友達・・・ですよね。ヒロさんに、サリさん」

『あぁ、そうだけど・・・やっさん、この怒りを感じるほどにナイスバディなおねーさんはだれ?』

『・・・ヒロ、自分が無いからってそんなこぐべはっっ!』





あ、画面の中のサリさんが吹き飛んでフェードアウトした。相変わらず良い攻撃するなぁ。





「あ、申し遅れました。私、現在は機動六課の分隊長を務めている、フェイト・T・ハラオウン執務官です」

『・・・あぁ、思い出したっ! そうだそうだ、広報誌で見たことあるよっ!!
本局の航行部隊の切り札で、プライベートだとネジの外れた天然って噂で、やっさんの保護責任者になってるリンディ・ハラオウン提督の娘さんっ!』

「た、多分それです・・・」



本当にそういう噂出てるしね。すごいよね、管理局って。



『いやぁ、初めまして。本局の特殊車両開発部の開発主任、ヒロリス・クロスフォード。フェイトちゃんの話は、やっさんからよく聞いてるよ。
で、さっき吹っ飛んでそこで机とディープキスしてるのが、副主任のサリエル・エグザ。やっさんとは友達やらせてもらってる。よろしくね』

「あ、はい。よろしくおねがいします」





二人してお辞儀しまくりである。うむぅ、ヒロさんがちゃんとしてる。奇跡だ。





≪いえ、奇跡ではないでしょう。敬語じゃありませんし≫

『はい、そこうっさいよっ!?
・・・あー、やっぱこう言う場合は敬語使ったほうがいいのかな? かたやエリート執務官。かたや開発局のしがないスタッフだし』

「あ、いえ。問題ありません。あの、おすすめのお店、本当に美味しかったです」

『あ、ならよかった〜。あそこ小汚いからさ、少し人を選ぶから、どうなるかなって思ってたの。喜んでくれたならうれしいよ』



本当に嬉しそうな顔で笑うヒロさんに、フェイトも笑顔で返す。・・・つか、こうやって係わり合いをもたれるとは思わなかったな。



「それと・・・って、順番が逆かもしれないんですけど、ヤスフミが色々お世話になっているようで・・・。本当にありがとうございます」

『あー、いいっていいって。
つか、色んな意味で有名な嘱託魔導師であるやっさんの現場行動への協力って名目だと、色々好き勝手やれるしさ。
うちらとしては、むしろ助かってるくらいなのよ〜♪』

「そ、そうなんですか・・・」





・・・うん、そうだよね。もちろん普通ならそれで黙らせたりなんて出来ないよ?

でもね、ヒロさんって、『権力無し』でも『権力有り』を黙らせられるの。どうやってかって?

とーぜんなんやかんやしてだよっ!!





『いやー、でもやっさん』

「なんすか?」

『・・・頑張りなよ。こりゃ、とてつもなく大変だ。
でも、アンタはアンタのノリを通せばいい。どんな状況でも、最初から最期まで、徹底的にクライマックスでね』

「・・・はい」





フェイトが不思議そうな顔してるけど、そこはいい。ま、そうだよね。大変だけど・・・やることは、一つなんだから。





『ま、そういうわけだから、お土産よろしくっ! あと、やっさんもフェイトちゃんも、旅行楽しんでね。そいじゃあまた〜♪』





そうして、通信は終了。少しだけ、僕達の周りは静かになった。





「・・・あ、今度挨拶に行きますっていうの忘れてた」

「するつもりなのっ!?」

「当然だよ。だって、本当にお世話になってる人達なんだよね? だったら、ちゃんとしないと。それに・・・」

「それに?」

「なんか、最近ヤスフミと距離感じるし」





・・・え、距離ってなにがよ。普通にしてるのに。





「色々と感じるの。だから、もしあの人たちに会いに行くなら、私も同行する。本局なら、名目は色々とつけられるしね」

「・・・りょーかい」

≪大変な事になりそうですね、マスター≫





だね。あー、なんにも起こらないといいけど。




















とにかく、こんな話をしつつも僕達はお土産を購入終了。

もちろん、それを隊舎宛てへと送る。あ、ヒロさん達は本局の方ね。





その足で早々に中央本部へと向かい、本局に入る。

なお、ヒロさん達には会いに行かない。だって、こっちの時間の都合があるのよ都合が。





なぜならこれから僕達は・・・里帰りするのだから。





目的地は、第97管理外世界。惑星名称は地球。





そう、これから目指すべき場所は、その星の小さな島国の小さな海沿いの街だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



季節は11月も半ば。あと少し経てば、色づいた落ち葉が町を色づき始めるそんな時期。



アタシは、ゆっくりと紅茶を飲む。・・・うん、美味しい。



オープンテラスで上りきった太陽の光を浴びながら、ゆったりと紅茶を飲む美女二人・・・。うん、いい絵だわ。





「アリサちゃん、そういうのは自分で言うことじゃないよ・・・」

「いいじゃない別に。てか、アイツみたいなツッコミしないでよ。せっかくの紅茶が台無し」





今、アタシに話し掛けたこの子は、アタシの友達。



紫がかった暗めの青い髪。それを、白いヘアバンドが彩る。

この子の名前は、月村すずか。小学校一年からの大親友。アタシと同じく、現在大学生。



・・・もう10年以上になるのよね。すずかと、あともう一人との付き合いも。





「そうだね。でも、ホントにあっという間。アリサちゃんやなのはちゃんと出会って・・・うん、あっという間だよ」





どこか遠い所を見るような目をするすずか。



まぁ、ホントにそうよね。そこにフェイトやはやてが加わって、なのはの魔法のこととか怪我とかがあって。

そのリハビリが終わった直後くらいに、あのチビスケがこの街に来て、友達になって、色々あったけど・・・楽しい時間だった。





「そうだね。・・・特になぎ君が来てからは、もっと楽しくなった。
ほら、中学に上がってからは、私達女子校だったから、男の子の友達出来にくかったし」

「まーね。でもすずか、アンタは間違いなくそういう理由じゃないでしょ」

「・・・うん。だって、なぎ君すっごくいい子なんだもん。なんでフェイトちゃんがなぎ君のこと見ないのか、理解出来ないよ」





まぁ、それはアタシも同じかな。ただしすずか、アンタは一つ忘れてる。



アイツは、いい子であると同時に『凄まじく悪い子』よ?

アタシは、初対面の時になんでなのは達と友達になれたのか疑問に思ったわ。ある意味水と油だもの。

・・・まぁ、すぐにその理由はわかったけどね。アタシも友達になったから。





「大丈夫だよ。私は、そう言うところも含めて、なぎ君の全てが大好きだからっ!」

「あ、はいはい。立ち上がってまで力説しなくていいから。全く・・・」





しっかし、あのチビスケはどうしてフェイトはダメで、他はフラグ立てられるのよ。

シャマルさんもそうだし、あと・・・ねぇ。いや、フェイトが超絶的にニブイからなのか。それなら納得だわ。





そんな事を考えながら紅茶をまた一口・・・うん、美味しい。





アタシの名前はアリサ・バニングス。現在大学生。





今は、すずかの家のオープンテラスで二人してまったりお茶をしながら、友達を来るのを待っている。



大事な・・・すごく大事な友達を。





「あ、来たみたいだよ。ホラっ!」





すずかが、そう言って、立ち上がりながらある一点を指差す。

その先は、この家の庭。そこに、大きな光の柱が立っていた。



普通なら驚くようなこの光景も、アタシやすずかにとってはもう見慣れたもの。



その光の柱が消えると、その中から人が現れた。だけど、それは一人じゃない。



それを確認してから、アタシとすずかはそこへと走り寄る。友の名前を呼びながら。





「フェイトちゃーんっ!!」





その声に、アタシ達の大親友の一人、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンがこちらを向く。

・・・次の瞬間、すっごく嬉しそうにこちらへ駆け出してくれた。





「アリサ、すずかっ! 二人とも、久しぶりだね。元気にしてた?」





手を繋ぎ会って、再会を喜ぶ。・・・それはこっちのセリフよっ! このバカちんがっ!!





「にゃにゃっ!?」

「『にゃにゃっ!?』じゃないわよっ! アンタ一体どこのなのはっ!?
・・・まったく、9月くらいに突然連絡取れなくなったから、心配してたのよ?」

「そうだよっ! 10月に入ってから『大丈夫だ』ってメールくれたけど・・・なにかあったんじゃないかって心配してたんだからねっ!?」





ホントよ。突然狙ったようになんの音沙汰も無くなったから、なにかあったんじゃないかって慌てたじゃないのよ。

フェイトだけじゃなくて、なのはと、はやても同じだったし。

それだけならともかく、その一月前からは、ナギとも連絡取れなくなっちゃってた。余計に不安だったわよ。



・・・ま、エイミィさんやアルフに部隊の仕事が大詰めだって言うのは聞いてたし、アイツにかんしても大丈夫だろうとは思ってたけどね。



アイツは、なのは達と違って、したたかで狡猾だし。悪魔が、悪党に負ける道理なんて、無いのよ。





「・・・アリサ、すずか。その・・・あの・・・ごめん」

「・・・アンタらに、色々と難しいことがあったのは分かってるから、そんな顔しないっ!
せっかく久々に会ったんだから」

「そうだよ、楽しく笑顔で・・・ね?」

「・・・うんっ!」





でも、本当に元気そうでよかった。なーんか、少しだけ憑き物が落ちたみたいになってるしね。

・・・アタシたちが話していると、後ろから残りの子達が近寄ってきた。





「お久しぶりです。アリサさん、すずかさん」

「ごぶさたしています」



そう言いながらお辞儀をするのは、6月になのは達が仕事で連れてきた子ども達。

フェイトが保護者をしていて、なのはが魔法での戦い方を教えている子ども達、エリオ・モンディアルに、キャロ・ル・ルシエの二人だ。



「うん、久しぶりだね。二人とも元気だった?」

「「はいっ!」」

「二人とも、背がちょっと伸びたんじゃないの? ・・・あ〜あ、もうエリオとは一緒にお風呂入れないわねぇ〜」





アタシがそうからかい気味な口調で言うと、エリオの顔が赤くなって『いや、その、それはあの・・・』などとパニくりだした。

それを、キャロがきょとんとした顔で・・・いや、ちょこっとにらんでる。え、なんか色んな変化が起きたのっ!?

なら、あんまからかっちゃ悪いわね。





「そーだよ。いたいけな少年をいじめないで欲しいね。エリオは未来の騎士さまだよ?」

≪そうです。マスターのように道を踏み外したらどうするつもりですか?≫

「そうそう・・・ってっ! 僕がいつ道を踏み外したっ!?」

≪まぁそれは置いておいて≫

「おいとくなっ!!」



・・・アンタ達、ホントに相変わらずよね。色んな意味で。特にアンタよアンタ。また身長伸びてないし。



「久しぶりねナギ。あいかわらずチビスケね。でも、アンタも元気そうじゃないのよ。
つか、メールでも言ったけど、連絡取れなくなって心配したのよ?」

「あはは・・・ごめん。ちょっとばかりヤボ用で一ヶ月ほど姿隠してたから」

「・・・いや、それはリンディおば様や、アルフから聞いてるけど。アンタ、本当になにやったのよ」

「いや、普通に戦ってた」





なるほど、『普通じゃない状況』で戦ってたわけね。こいつは本当に・・・。





「ま、元気そうで安心したわよ。ここに居るってことは、当然勝ったんでしょ?」

「もちろん」

「圧勝でしょうね?」

「とーぜん」



小さな胸を張って、自身満々に言うナギを見て、私は安心した。

本当に変わってない。これなら、これ以上言う必要はないかなと思ったから。



「ならいいわよ。これで負けてたらボコボコにしてるとこだったけどね」

「・・・というか、久しぶりだねアリサ。
あいかわらずツンデレだね。そして、クギミー的なのも変わってなくてすばらしいよ」

「いきなりそれっ!? そういうことを言う口は、この口かしら〜」

「い、いひゃいひょー!!」





この、アタシより身長の低い男の子の名前は、蒼凪恭文。アタシは愛称で『ナギ』と呼んでいる。

・・・まぁ、アタシにとってはあれよ。アタシの方が年上だし、子分というか弟みたいな感じかな。





≪そう言って、度々マスターの世話を焼いてくださって、本当に感謝しています。
あ、遅れましたがお久しぶりです。アリサさん≫

「はい、アンタも久しぶりねアルトアイゼン。相変わらずナギのサポートで大変なんじゃないの?
コイツ、相当やらかしたみたいだし」

≪それはかなり。ですが、問題はありません。マスターですから≫

「そっか。なら納得だわ」





ナギが胸元からかけている青い宝石は、ナギのパートナーでデバイスのアルトアイゼン。

なんか、こいつとは昔からウマが合うのよね。ナギの居ないところで色々話をしたりもするし。

でも、なのはのレイジングハートやフェイトのバルディッシュは、この子みたいには話さない。・・・無口な子なのかしら?





「いや、それは前にも言ったけど、アルトアイゼンが特別だからだよ。普通は、インテリジェントデバイスでもここまでの対話能力はないから」

「じゃあ、これはなによ? 普通に喋りまくってるじゃないの」

「なんというか・・・ヤスフミやあの人のパートナーだったからかな? ごめん、そうとしか説明できないよ」





・・・・よくはわかんないけど、そういうものらしい。ナギの剣の先生は、コイツ以上にアクが強いらしいから。

そして、そんな私の横を、一陣の風が吹き抜けた。





「なぎ君、久しぶりー!」

「あ、すずかさんひさしぶ・・・って、いきなり抱きつかないでーー!!」

「どうして? しばらく会えなかったし、私すっごく寂しかったんだよ。それにそれにっ! 全然連絡取れなくなって・・・」

「あの、すずかさん・・・?」



あ、すずかがなんか泣き出した。つか、そこまで心配だったのね。



「あの、ごめん。こう、色々あってですね・・・」

「リンディさん達から少しだけ聞いたけど、危ない目に遭ってたんだよね。私、凄く心配で、寂しかった・・・」



いや、すずか。寂しいって、ちょっと関係なくない?



「ね、なぎ君は寂しくなかった? メールくれたけど、ちょっと普通だったし・・・」

「いや、それは・・・うん、寂しいと言えば寂しかったかも」





ナギ、アンタ・・・。いや、すずかをへコませたくないからだってのは分かるけど。まぁ、こういうやつだからこそ、私も友達やってるんだけどね。

でも、それは最悪手よ? ほら、すずかが感激してる。





「だったら、問題ないよね? あぁ、なぎ君だぁ・・・本物だよ〜♪」

「うん、本物だよ・・・って、あるに決まってるでしょうがっ!
みんな居るし恥ずかしいしなんか柔らかいし・・・とりあえず離れてっ!!」

「私は別に気にしないよ? それに、なぎ君に柔らかいって言ってもらえて、うれしいな。
それにそれに、私、なぎ君とこうしてるとすっごく幸せで・・・」

「お願いだから気にしてー! そして幸せは他のところで感じようよっ!!」

「・・・あ、そういうことなんだね。うん、いいよ。それなら、ノエルとファリンに部屋を用意してもらって」

「場所の話じゃないよバカっ! というか、部屋ってなに部屋ってっ!! なにを想像したおのれはっ!?」





すずか、アンタ・・・。いや、わかってたけど。そんな悦に浸った表情はやめて。あれよ、その表情だけでモザイクがかかるから。






「わかりました、お嬢様」

「すぐに、恭文くんと二人っきりでいられるように、準備してきますねー♪」

「ノエルさんにファリンさんっ!?」

「恭文さん、お久しぶりです」

「お久しぶり〜」





いきなり・・・いや、本当にいきなり現れたのは、二人の女性。この家のメイドさんである、ノエルさんとファリンさん。

ノエルさんは、青髪ショートカットで、クールで知的なメイド長。

ファリンさんは青髪ロングヘアーで・・・ドジっ子よね。うん。ナギが『アレは希少価値でステータスだ』って断言するくらいに。





≪お二人ともお久しぶりです。あと、部屋の準備は任せました≫

「アルトアイゼンも久し振りだね。うん、そっちはまかせて。それじゃあ、いきますよー!!」

「では、恭文さん。・・・マカビンビ○も置いておきますので、ごゆっくり」

「いきなり出てきてわけわかんないフォローはやめてっ!
つーか、すずかさん止めてくださいよっ!! 年頃の女性としてコレまずいでしょコレはっ!!」

「「お嬢様の幸せが私達の幸せですっ! あと、見ていて面白いですからっ!!」」

「断言するなぁぁぁぁぁっ! そんなことを断言するなぁぁぁぁぁっ!!
そして、ホントに行かないでっ! ねぇ、待ってくださいよお願いですからぁぁぁぁっ!!」





・・・あ、本当に二人とも屋敷に入っちゃった。まぁ、いいか。





「あ、あの・・・」

「すずかさん・・・のあれは・・・」

「あぁ、エリオもキャロも気にしなくていいから。すずか、ナギを前にすると、いつもあぁなのよ。止めても聞かないの」

「「は、はぁ・・・」」

「ヤスフミ、もうちょっと素直になればいいのに。すずかとなら、私は祝福して上げられるし・・・」





フェイト、それは無理ってもんよ。つか、アイツの本命はアンタだから。あ、ナギがちょっとヘコんだ。

・・・ちなみに、すずかが頭からハートマークを出しながら、ナギにハグしてるけど、これはいつもの事。



すずかは、どういうわけかナギのことが大のお気に入りらしい。

まぁ、恋愛感情とかそういうのとは違うって言ってたけど・・・説得力ないわよね? えぇ、私もそう思うから。



なお、この組み合わせに関しては、先ほども見た通り、すずかの家族は大賛成している。もちろん、ドイツの忍さんも。





「といいますか、お願いだから離して・・・。僕に抱きついたって楽しくないですよ」

「そんなことないよ。なぎ君、柔らかくていい匂いで温かいし。なぎ君とこうするの、好きだよ。うん、なぎ君・・・大好きだよ」

「って、力を込めないでっ! 当たってるっ!! 当たってるからぁぁぁぁっ!!」

「当ててるんだよっ! 私、フェイトちゃんより大きいんだからっ!! そしてフェイトちゃんより柔らかいんだよっ!?」

「力説するなぁぁぁぁぁっ! そしてなんのカミングアウトじゃこらぁぁぁぁぁぁっ!!」





すずか、昔から疑問だったんだけど、このチビスケのどこがいいの?

いや、前に聞いた通りなら、分かるわよ。でも、だからと言って、どうしてこうなるのかがさっぱりわからない。



とはいえ、いつぞやみたいにナギの意識のブレーカーが落ちる前に助けないと。

すずかのやつ、もうコイツが大人の男だってこと考えないでやるからなぁ・・・。










とにかく、私はゴネるすずかをなんとか引き剥がして、その場を収めた。つか、ナギのやつまた茹蛸になりかけてたし。



とにかく・・・うん、いこっか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あー、助かった。つか、予想はしていたけど、まさかあそこまでとは・・・。





えー、すずかさんとは何にも無いんだよ? いや、真面目によ。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すみません、ちょっとありました。えぇ、ありました。





すずかさんと、そのお姉さんの忍さんの出自関連に、海鳴に来たばかりの僕は巻き込まれて少しだけ、ゴタゴタした。

なぜだか魔法絡みじゃないのに、アルト使って戦いました。はい、やりあっちゃいました。





それ以来かな。すずかさんが僕に対してああいうことをするようになったのは。まぁ、その・・・うれしいですよ?

好きって言ってもらえるし、僕にはもったいないくらいだし。でもその・・・フェイトが居るから。





というか、ちゃんと断ったりもしてるんだけど『友達同士のスキンシップとしてやってるから、大丈夫だよ?』というお返事が・・・。

うぅ・・・どうしよう。やっぱ、早々にフェイトフラグを成立させるしかないのかな。




















とにかく、そんな話をしながらも僕達は海鳴の町を歩く。一応、顔を出しておかねばならないところがあるのだ。





そして到着したのは・・・一件の家。

中に入ると、純和風の佇まい。道場があったり、庭に池があったり。僕はよく出入りをしていた場所。





僕達は、インターホンを鳴らすと・・・中から足音がする。一人じゃない、複数の足音。そうして、引き戸式の扉が開く。





そこに居たのは、一人の黒髪の男性。その傍らに栗色の長い髪の女性。










「士郎さん、桃子さん、ご無沙汰しています」

「いや、本当にお久しぶりです」

「フェイトちゃん、恭文くんもお帰り」

「いや、しばらく会わない間に・・・伸びてないな」

≪士郎さん、言わないであげてください≫





この人たちは、男性は高町士郎。女性は高町桃子。僕は士郎さんと桃子さんと呼んでいる。



ここまで言えばわかると思うけど、ここは高町家。つまり・・・なのはの実家なのだ。



僕とフェイト達は、日ごろお世話になっているお二人に挨拶に来たというわけである。そして・・・。





「あの、初めましてっ! エリオ・モンディアルですっ!!」

「キャロ・ル・ルシエですっ! 初めましてっ!!」

「あぁ、あなた達が・・・。はい、初めまして。エリオ君とキャロちゃんね」

「・・・君達、うちのなのはは厳しいかな。向こうの世界で、悪魔とか魔王とか言われてるんだろ?」





その瞬間、そう口にした士郎さん以外の全員が僕を見る。

だけど、僕の視点は既に空へと向いている。なんの問題もないのだよ。あぁ、いい天気だなぁ〜。





「あ、あの・・・そんなことないですから。なのはさんは、すごく優しい方です」

「いつも、私達のことを気遣ってくれています。魔王っていうのは、性悪なぎさんの、不器用で意固地な意地悪なんです」

「それもヒドくないっ!?」

「まぁまぁ。とにかく、みんな中へ入って。お茶とお菓子も用意してるから、それでも食べながら話を聞かせてくれ」










そして、士郎さんの先導で、僕達は高町家へと入る。・・・いや、ここも久し振りだよね。うん、本当に帰って来た気持ちになるよ。



そして気づく。リビングの方から話し声が聞こえることに。・・・ん?



それになんとなく嫌なものを感じながら、リビングに入った。そして・・・僕は頭を抱えた。










「恭文さん〜♪」

「フェイトちゃん、エリオとキャロも、遅かったね。あと、恭文君・・・お話しようね。お父さんになに言ってくれてるのかな?」

「はむはむ・・・・。士郎さん、桃子さん、美味しいです♪ あ、恭文、フェイトママー!」










居たのは、空色のロングヘアーの10歳前後の女の子。

6歳くらいの、アリサと同じ髪をしたこれまたロングヘアーで両サイドをリボンでちょこんと結んでいる小さな女の子。



そして・・・魔王。










「魔王じゃないもんっ!!」

「あぁ、神なんて居なかったんだっ! 魔王はどこへ行っても逃げられないんだっ!!」

「だからっ! 魔王じゃないよっ!! というか、私をそんな恐怖の代名詞みたいに言うのやめてよっ!!」

≪Jack Pot!!≫

「アルトアイゼンもなんで『大当たりっ!』って言ってるのっ! どうしてD○Cっ!?
あれかなっ! 青くて刀使いだからOKとか思ってるのかなっ!? でもそれはまちがいだよっ!!
というかっ! この状況でそれが飛び出す意味が分からないよっ!!」





つか、どうしてリインとなのはとヴィヴィオがここに居るんだよっ! そっちの方がわからないからっ!!



てか、なんでアリサとすずかさんまでビックリしてるっ!?





「なのはっ!」

「なのはちゃんっ!!」

「アリサちゃん、すずかちゃんも久し振り〜」

「なのは、まってっ! どうしてここにっ!?」





やっぱり、魔王からは逃げられないから・・・。





「違うからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「士郎さん達にヴィヴィオを紹介するために・・・」

「そうだよ。もちろん、事情は説明してたんだけど、ちゃんと会わせたくて。まぁ、フェイトちゃん達と違って、日帰りなんだけどね」

≪ですが、どうやってこちらの世界へ?≫

「フェイトさん達のスケジュールは知ってましたから、その前に、ハラオウン家のポートから跳んで、待ち伏せしてたですよ」

≪そうして、私達をビックリさせようと・・・≫





アルトの言葉に、リインが頷く。うん、納得した。でも・・・なんでリインまで一緒っ!?





「そんなの、恭文さんに会いに来たからに決まってるですよー!」

「あぁ、それなら納得。リインは、ナギにとっての、元祖ヒロインだしね」

「はいです♪」



いや、それで納得するっておかしいからっ!!



「うぅ・・・リインちゃんは、やっぱり強力なライバルだね。よし、私もがんばらないとっ!!」

「すずかさんには負けないですよー!
元祖ヒロインには、元祖ヒロインとして、元祖ヒロインなりの譲れない、元祖ヒロインの意地があるですっ!!」

「はい、そこ変な対抗意識燃やさないでもらえるかなっ!? つか、何回も元祖ヒロインって言うなっ!!」

「恭文、もてもてだね〜♪」





士郎さん達と楽しそうに談笑しながら、ヴィヴィオが言ってきた。・・・うん、なんでかね。

おかしいな。僕・・・フェイトが本命のはずなのに。公言しているのに、どうしてこうなるのっ!?





「あの、でも二股とかはダメだよ? ちゃんと、辛いかもしれないけど一人を選ばないと、リインやすずかが可哀想だよ」

「フェイトも誤解しないでっ! つか、二股かけるつもりもなければ二人とそうなる予定もないからっ!! 僕、本命一筋だよっ!?」

「なぎ君、ひどいよー!」

「ですー!」





・・・なんか聞こえてるけど、無視っ!





「・・・ということは、ヤスフミは本命がいるの?」

「・・・内緒」

「内緒って・・・そんなこと言わないで欲しいな。ほら、教えてくれれば、いろいろ力になれるかもしれないし・・・」





あの、なってない故の現状ってことに、そろそろ目を向けていただけるとありがたいんですけどっ!!





「・・・そういや士郎さん、美由希さんはどこに?」



もういい加減疲れてきたので、話を変える。頭を抱えながら、入ってきた時に気づいた疑問をぶつけることにした。



「あぁ、美由希なら私用で出かけているよ。本当なら、君の出迎えがしたかったとゴネてたけどね」

≪・・・想像出来ますね≫

「僕、姿隠していいかな?」

「ダメ。お姉ちゃん、恭文君のこと本当に心配してたんだから。ちゃんと会ってあげて」

「ちくしょお・・・。魔王のバインドが僕を縛る」

「魔王じゃないもんっ!!」





こんな感じで、時間は過ぎ去り・・・。





「過ぎ去らないわよっ! ・・・てか、なのは」

「なに?」

「いや、さっきから疑問に思ってたんだけど・・・このヴィヴィオって子、ぶっちゃけ何者?」

「そうだよ。フェイトちゃんのことをママとか言ったり、なのはちゃんのこともママって言ったり・・・」

「まぁ、そういうのはナギで慣れてるけどさ」



どういう意味よそれ。



「ほら、気になってるから、とにかく説明して」

「あ、私の娘だよ」

「あの、初めましてっ! 高町ヴィヴィオですっ!!」





・・・・・・・あ、僕ちょっとトイレ。





「待ちなさい」

「アリサ、どうして止めるの? 僕、公衆の面前でそういうのを晒す趣味は無いんだけど」

「なぎ君・・・あの、私・・・変になったのかな? すごく危険なフレーズが聞こえたんだけど」

「・・・ねぇ、なのは・・・はまぁいいわ。フェイト、ナギ、なのはとこの子は・・・なに?」





僕とフェイトは顔を見合わせて、一息に言い切った。





「「親子だよ」」










・・・・・・・その瞬間、高町家が震えた。




















・・・事情を予め聞いていた高町夫妻は、実に平和的にヴィヴィオを受け入れたそうだ。

だけど、そんなの知らなかったアリサとすずかさんは当然混乱。





なので・・・僕とフェイトが事情説明・・・って、僕は別になのはの恋人でも夫でもないんですけどっ!

つか、なんで当のなのはに聞かないっ!?










「いいから、説明しなさい。どーいうことよアレ」

「わ、わかった。えっと、つまりね・・・」










・・・ヴィヴィオが、なのは達の居た部隊・・・六課の事件で、偶発的に保護された女の子だということ。





そしてヴィヴィオは、保護された当初から、どういうわけかなのはに懐いていた。





なので・・・。










「そのままの流れで、なのはが保護責任者と。
で、向こうの世界で法律関係に強い仕事をしていたフェイトが、二人の後見人って形になったのね」

「それで、フェイトママって呼んでたんだね」

「それで、なのはもなのはでヴィヴィオを娘みたいに思い始めたから・・・養子にしたと」





その言葉に僕は頷く。

横目で、なんで僕が事情説明しなきゃいけないのかという恨みの視線を、横馬にぶつけながら。





「まー、納得したわ。つか、考えたら当然よね。この子の年齢だと、なのははまだ13とか14だし」

「私達と一緒に居たときだから、もしそうだったら・・・気づくよね。
あ、もちろん、なのはちゃんとヴィヴィオがそうだから親子じゃないとは言ってないよ?」





ヴィヴィオの前だから、念押しするように補足を付け加えたのはすずかさん。

まぁ、ビックリするよね。僕もビックリしたもん。



だって、知り合いが3ヶ月とか半年とか、あんまり会わない間に、6歳前後の子どものお母さんになってたんだから。





「・・・まぁ、あれよ。ヴィヴィオ」

「あ、はい」

「なのはって、無茶するし、色々心配しちゃうかもしれないけど・・・見捨てないであげてね。
アンタのこと、中途半端な気持ちで娘にしたんじゃないと思うし」

「・・・はい、大丈夫ですっ!」

「うん、いい返事だ」

「あ、アリサちゃん・・・。私のことなんだと思ってるのかな?」

「魔王よ」

「アリサちゃんまでヒドいよー!!」






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