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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Report07 『Affinity and the world will be eroded』



恭文「前回のあらすじ。・・・・・・負けまくりです」

シルビィ「そうね。というか、公子どこに行っちゃったのかしら。うーん、おかしいわね」

恭文「そうなんだよね。あ、おかしいと言えばさ」

シルビィ「何かしら」

恭文「アンジェラ風邪引いたらしいけど、どうしたの? 仕事休みっぱだしさ」

シルビィ「・・・・・・そうなのよね、それもおかしいのよ。あぁもう、これから先一体どうなるのー!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・シンヤさん」

「なんですか?」

「その鎧、僕にください」

「ダメですよ。まぁあなたが後20センチくらい身長があれば」

「あのゴキブリ甲冑みたいな事言うなー!!」





さて、維新組のパワードスーツには地球で言うところの四神の名前が付けられているらしい。

今僕の目の前のシンヤさんが装備しているのが、白虎。レイカさんが朱雀で、キョウマさんが青龍だっけ?

シンヤさんの甲冑は、その名の通り白色で少し細身。そして両手には・・・・・・剣?



いや、違うよね。両刃の剣のような形だけど、刃があるわけじゃない。これはそういう形状の棍棒の類か。

鍔元から切っ先までは大体アルトと同じくらい。そして両横にパイプラインみたいな装飾がある。

それを身体の左側に引いて、シンヤさんが腰を落とす。距離にして20メートル程の間隔を開けて、僕達は対峙する。



僕は・・・・・・バリアジャケットを装備した上で、アルトを無形の位で構える。もちろん油断はしない。

シンヤさんは和風のデザインな甲冑を着込みつつ、微笑みながら僕を見る。

というか、マジで文化関係が似てるんだよね。もうデザインが正しく戦国時代の甲冑だし。



このあたりの因果関係を調べたら、面白い事実が出てきそうで楽しい。





「それでは両者、よろしいな」



審判というか、見届人はキョウマさん。維新組の制服の上からでも、ガタイの良さが分かる。



「5分間一本勝負。蒼凪殿は遠距離攻撃系の魔法無し。
先程使っていた暗器の類も禁止。それでよろしいか?」

「問題ないです」



逆を言えば、『近距離攻撃系統の魔法』はOKだもの。一応、覚悟は決めておこう。



「では」



右手を上に挙げて・・・・・・声高らかに試合開始の合図を告げた。



「始めっ!!」



シンヤさんが前に踏み込む。だけど、僕も同時に踏み込む。そして互いに、右薙に相棒を叩きつけあった。

そのまま交差して、開始時と同じだけの距離を開きながらも木造りの床の上を滑る。



「・・・・・・やっぱり電磁警棒だったか」



アルトの刃と接触した時、火花が激しく散った。ようするに、接触したものに電気ショックを与える武装なのよ。

それも相当高圧だね。一瞬目の前が明るくなったし。それで・・・・・・シンヤさんは振り返りつつ笑っていた。



「あらら、見抜かれてたんですか」

「当然でしょ」





武装が刃物関係じゃなかったし、打撃で叩き潰す方向も考えた。

けど、それだけじゃ足りないと思ってた。で、何が有るかと考えて・・・・・・電撃系と思った。

でも残念。アルトは電気関係への耐性持ちだもの。通電しない。



いくら打ち込もうが、アルトで受ける限りダメージはない。だから当然、次の手は決まってくる。

あの鎧に暗器の類が仕込まれていない限りは、あの警棒なり格闘による攻撃がダメージ源。

つまり、こっちの防御と回避をかいくぐった上での急所への一撃。・・・・・・ちょい集中しますか。





「うーん、困りましたねぇ。武装からの通電も視野に入れてたんですけど、対策済みですか」



だって向こうも今の一撃で、そこまで見抜いてくるんだから。まずいなぁ、この人普通に強いわ。



「その上」



電磁警棒の一部に、浅く亀裂は入る。そこは僕がさっき抜きでアルトを叩き込んだ箇所。

それを見ながら、シンヤさんは困ったような楽しむような、そんな顔で笑う。



「特殊合金製の警棒にヒビ・・・・・・うーん、剣術の技量に関しては、あなたの方が上ですか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・マジかいな」

「シンヤが技のキレで遅れを取るとは」





隅で今の手合わせを見学していた維新組の隊士達がざわめく。それが少しだけ誇らしかったり。

ヤスフミは私より年下だけど、それでも今までずっと戦ってきた歴戦の勇士だもの。

そこはシンヤさんも同じ。そう、同じだからこそ、こういうところで差が出てくるものだと私は思う。



あとは武器の差だけど、今のは魔法無しでの純粋な打ち込みだもの。なら・・・・・・ってわけ。





「よし。恭文さん、いい感じなのです」

「そうね。でも・・・・・・まだよ。シンヤさん、まだ本気じゃない」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なら」





シンヤさんの右足が僅かに後ろに動いた。そして、一気に前に突っ込んでくる。

前に飛び込みながら、警棒の先を向けながら突撃体勢。

僕は右に動いてそれを避ける。避けつつ、シンヤさんの方へと踏み込んだ。



狙うは背中側からの横薙ぎの一撃。僕はアルトを左薙に叩き込む。

そして、シンヤさんは楽しげに笑いながら跳んだ。軽く跳んで・・・・・・僕のところへ飛び込んでくる。

もちろん、警棒を僕の頭頂部に叩き込みながら。反撃をしっかり忘れないところがエグい。



前転するようにシンヤさんの足元を潜り抜けて、その打ち込みを回避。起き上がり前に踏み込もうとした。

だけど、着地と同時にシンヤさんの姿が消えた。・・・・・・右に一気に移動したな。

シンヤさんの跳躍の音が道場に瞬間的に連続して響き、僕の五時方向から斬撃が襲ってくる。



僕は右薙に刃を叩き込んで、それを払う。すぐさま刃を返して、袈裟に撃ち込む。



シンヤさんは警棒の柄でそれを受け止めて・・・・・・やっぱり、笑っている。





「いやぁ、驚きました。白虎のスピードについて来れるなんて」

「あいにく、魔法無しでもアンタよりずっと速いのを知ってる」

「そうですか」



くるりと柄を回転させて、僕の刃をいなしつつ峰の上に柄を乗せる。



「はぁっ!!」



そのまま、器用にも僕の頭目がけて電磁警棒を叩きつけた。『ドン』と鈍い音が走る。

アルトの切っ先が突き刺さらないように、身体ごとの突進で威力を高める。



「・・・・・・邪魔っ!!」





右手のみでの右薙の斬撃を叩き込む。なお、さっきの攻撃はジガンで防いだ。

互いに後ろに下がりながら獲物を振り切る。そして5メートル程距離が開く。

どうやら、アレでは決定打にならないらしい。まぁ、装甲を薄く引っかいた程度だしなぁ。



とにかく僕とシンヤさんとの距離がまた開くけど、僕達はすぐに踏み込んだ。

なお、僕は左腕は動かさないで、右手のみで斬撃を袈裟に叩き込む。

シンヤさんも同じように踏み込んで、両手で電磁警棒を袈裟に叩き込む。



互いに力任せに振り切って、またも電磁警棒から火花がはじけ飛ぶ。それでも、次の斬撃。

獲物を互いに右薙に振るって、先程と同じようにする。なお、左手は動かさない。

・・・・・・訂正、左腕は今は動かせない。だからそれに気づいたシンヤさんの攻撃が激しくなる。





「ほらほら、まだ行きますよっ!!」





そこからシンヤさんが警棒での突きを叩き込む。僕は下がりつつ・・・・・・いや、思いっ切り右に跳んだ。

僕のジャケットの左の二の腕を、僅かに斬り裂く。その時にも火花が散るけど、これは大丈夫。

というか・・・・・・瞬間的に三連発で突きが叩き込まれていた。あの場に居たら、捌き切れなかった。



シンヤさんんは楽しげに・・・・・・そしてビックリという顔でこちらに向き直りつつ、また飛び込んでくる。

斬撃に突きに払いを。アルトで払いつつも下がる。つーか、普通に動き速いし。

でも、楽しい。甲冑の力があるとしても、普通にこの人は強い。あくまでも甲冑は補助っぽいの。



再び打ち込まれた突きに向かって僕は・・・・・・アルトの刃を唐竹に叩き込んだ。



アルトの刃は、鈍い警棒の切っ先を捉える。シンヤさんはすぐに引こうとするけど・・・・・・遅い。





「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





警棒を叩き落すように斬撃は叩き込まれる。アルトの倍くらいの太さのある警棒が、床に叩きつけられた。

そのまま僕は踏み込んで、刃を返しながらシンヤさんの首を狙って斬撃を叩き込む。

シンヤさんは咄嗟に警棒から手を話して、両手でアルトの刃を平手で掴みとった。・・・・・・白刃取りっ!?



シンヤさんの左足が宙に軽く浮かぶ。そして、次の瞬間に左足での蹴りが僕の胴に向かって叩き込まれた。





「・・・・・・そこまで」



キョウマさんの声が響く。そして・・・・・・勝敗が告げられた。



「この勝負、時間切れにて引き分けとする」





その理由は簡単。シンヤさんの蹴り、ジガンでまた受け止めたから。うん、左腕動かせたのよ?

ただ、意表をつくために『動かせなかった』だけ。いわゆる演技による騙しだね。

でも、結局は向こうの攻撃の防御のために、札を切る事になるとは・・・・・・うぬぅ、修行が足りない。



てーか何気にもう5分経ってたんだ。結構時間ギリギリだったんだね。





「くそ、クレイモア生成のタイミング遅れたな」

≪スフィア形成だけでも詰みでしたでしょうしね≫



とにかく僕達は、互いに出していた攻撃を引く。僕はアルトを。そしてシンヤさんは左足を。



「・・・・・・蒼凪さんは嘘つきなんですね。左腕、ダメージなかったんですか」

「残念ながら。僕、電撃攻撃を使う輩の相手は、大得意なんですよ。
それにシンヤさんみたいな高速タイプも」



高速タイプはフェイトや恭也さんや美由希さんに美沙斗さん。電撃は・・・・・・フェイトの電撃だね。

アレも強烈だから、きっちり対策を整えておかないと簡単に痺れちゃうもの。



≪片想いしてる魔導師の女性が、高速機動の電撃タイプなんですよ。
で、負け越してるんですよ。だけどこの人は男の意地で負けたくないので≫

「あぁ、なるほど。それで対策を色々整えまくっていると。それならば納得です。
いやぁ、青春してますねー。うちの総大将にもそういうところは是非とも見習って欲しいですよ」

「何僕の許可無く勝手にバラしてるっ!? お願いだから個人情報保護に協力してー!!
そしてシンヤさんも言いながら頭を撫でるなー! いきなり子ども扱いするなー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・シンヤの奴でも引き分けかい。いや、魔法関係はほとんど無しやったし」





試合の様子を見ていた他の隊士達も気づいているらしい。もしこれでヤスフミが魔法を使っていたらどうなるか。

ただ、私の意見としてはそれでも分からないと思うな。多分シンヤさんも本気を出していないだろうから。

現場でのシンヤさんは、正直もっと強い。私達GPOは、現場でちょくちょく維新組と鉢合わせも多かったから知ってる。



それに多分格闘術・・・・・・ゼロレンジの点では、シンヤさんが上だと思う。

剣術や武器の扱いはヤスフミだとしても、そこは間違いないわ。うーん、やっぱ維新組は強いなぁ。

一応ライバル組織的な関係だし、現場で散々衝突も有ったから色々思う所はある。



だけど、それでも実力は認めているの。えぇ、そうしなかったら見下してるのも同然だもの。





「古き鉄の異名は伊達やない言う事か。よし、今度はうちが」

「・・・・・・レイカさん、さっきキョウマさんがレイカさんの甲冑は整備中だって」

「うっさいチビ妖精っ! 分かっとるわボケっ!!」










正直、素で忘れてたんじゃないかと疑ってしまう。まぁ、ここはいいか。





でも・・・・・・とりあえずこれでお仕事は完了かしら。維新組の狙いも潰せたしね。




















『とまとシリーズ』×『メルティランサー THE 3rd PLANET』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々


Report07 『Affinity and the world will be eroded』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕とシンヤさんは、さすがに動きまくったので近くの水場で顔を洗わせてもらいに着た。

なお、甲冑は携帯収納装置(ブレスレッド)に収納したので、シンヤさんは普通に維新組の制服姿。

なんだかんだで9月も下旬。もうすぐ10月という段階のせいか、来た頃に比べると幾分涼しい。





その涼しさが、大暴れした身体にはとても心地いい。あと、水も気持ちいいしね。










「いやぁ、シンヤさん・・・・・・わざわざタオルありがとうございました」

「いえいえ。面白い話も聞かせていただきましたしね。・・・・・・まぁ、頑張ってくださいね?
というより、他にも素敵な女性は居ると思いますし、目を向けてみるのはいいのではないでしょうか」

≪あなた、いきなり何の話してるんですか?≫

「おのれのせいじゃボケっ! なに僕の悲しい歴史をバラしてるっ!?」



道すがら、アルトがシンヤさんと意気投合して色々バラしてくれた。おかげで僕はちょっと慰めモードだよ。

・・・・・・ね、泣いていいかな? 僕すっごい涙出てきそうなんだけど。



「いや、蒼凪さんのおかげで中々に有意義な組み手が出来ましたよ。助かりましたよ」

「いえいえ。こっちも勉強が出来ましたし、色々覚悟決まりましたし」

「アイアンサイズ・・・・・・ですか?」

「・・・・・・えぇ」



シンヤさんと道場に戻りつつ、そんな話を始めた。さすがにあれ・・・・・・チートだしな。

魔力ダメージによるノックアウトが出来てるなら、中央本部の魔導師隊で出来てるはずだもの。



「シンヤさん、公子の行方って維新組の方でも」

「もう全くですね。ここに関しては本当に。・・・・・・ですが、おかしいんですよ。
今回の一件に関しては、中央本部も珍しく働いてくれています」



軽い口調だけど、フェイトなりリンディさん辺りが聞いたら苦い顔しそうな発言に、僕は苦笑する。

でも実際そうなんだよね。中央本部もEMPDやGPOと協力しつつ、EMPをひっくり返す勢いで探してる。



「まぁその場に居た蒼凪さんはお分かりでしょうけど、そもそも公子は状況的に着の身着のままです」



アイアンサイズに捕縛されそうになって、仕方なく・・・・・・という事なら、そうなる。

というか、パーティー用の正装のままだったし、お出かけルックとはまた違うのよ。



「しかも失踪当日とその翌日、EMPは大雨ですよ。僕達も事故処理に担ぎ出されてずぶ濡れになりましたし」



僕とシルビィとフジタさんは、月面で宇宙ウサギを見たりチェスを打ったりしてたからなぁ。

あとはアイアンサイズのキュベレイとバトル? だから雨の事はあんま気にしてなかったんだけど。



「そんな状況で失踪から四日。行くアテも手持ちの荷物やお金もないはずなのに、いったいどこに居るのか」



確かに・・・・・・普通に変だよね。アイアンサイズから逃げて来たなら、ここまで長引くはずがない。

それならEMPDなり中央本部やGPOに、普通に保護を求めない? なんで失踪する必要があるのさ。



「今考えられる可能性は、二つあります。一つ目、どこか誰かしらの人間に匿ってもらっている。
姿を現せないのは、何かしらの事情で公子が動けないか、その人間が公子の事を知らない」



知らない・・・・・・まぁ、考えられない事じゃないか。公子は公女と違って、メディアにはほとんど出てない。

確かに公女に似てはいるけど、それでも市民は顔を知らない人が大半じゃないかと思う。



「二つ目は」

「死体が見つかっていないだけで、とっくにアイアンサイズに殺されているか」

「・・・・・・えぇ。あぁ、または三つ目。今回の件とは全く関係のない、別の人間に何かの理由で誘拐・・・・・・ですか?」



それも有り得るよなぁ。何にしても、状況はあんまり良くない。

というかさ、月分署のメルビナさんがすごい勢いなのよ。アレも早々に・・・・・・アレ?



「シンヤさん、僕・・・・・・四つ目の可能性を思いついたんですけど」

「と言いますと?」

「シンヤさんが言った一つ目とわりかし近いですけど、これはその真逆」



シンヤさんが言ったのは、何かしらの不測の事態で公子自身が動けない状況だ。

例えば風邪を引いてしまったとかでもOKなのよ。でも、僕が言ってるのはそうじゃない。



「何かしらの事情で、公子が自分の意思で失踪状態を維持してるんです。
別に自分の事を知らない人間に匿われてるとか、そんな理由じゃない」



シンヤさんの表情が、少し真剣なものになった。

でも否定はしないから、可能性はあると思っているらしい。



「その事情が何かは、ここでは分かりません。でもそのためにアイアンサイズだけじゃなくて」

「僕達EMPDや蒼凪さんとシルビィさん達GPO、それにヴェートル中央本部からも逃げ続けていると」



この可能性、今話していてちょっと思いついたの。ただ・・・・・・シンヤさんに言って思った。

本当にコレだとすると、正直楽しいことにはならないなと。



「もしそうだとすると、僕達からも逃げる原因はなんでしょ。
少なくとも僕は公子にお会いした事はありませんし、失礼をした覚えもないんですが」

「そこは僕もです。特に話したわけでもなんでもないですし。うーん、月に戻りたくない・・・・・・とか?」



公子を保護したら、当然早急に安全なうちに月の公女の元に帰すと思う。そうしない理由が分からない。

EMPにずっと居るよりは安全だもの。公子もそこを分かっているから、逃げているってこと?



「ですがそうなると・・・・・・ますます分かりませんねぇ。というより、そうしたくなる原因が気になりますよ。
その場合公子からすると理由はどうあれ、月都市も決して安全地帯などではないという事になります」

「なんですよねぇ」



もっと言うと、月都市に居る事に対して何かしらの大きな『危険』を感じているんじゃないかと思う。

だから逃げてるのよ。公子からすると、月都市よりEMPに居る方がまだ気が楽って事になるもの。



「うーん、出来れば公子の事を知らない人が、おせっかいで保護しているとかだったらいいんだけどなぁ」

「そうですね。それなら僕達もそうですけど、そちらも取り越し苦労で終われます」



などと僕の冗談に合わせて、シンヤさんが笑う。・・・・・・この人は、何気によく笑う人だ。

でも、それでもその微笑みの中に鋭い刃を隠している。うん、やっぱ恭也さんや美由希さんに近いよ。



「ところで蒼凪さん、話は変わりますが、あなたは次元世界の人間ですよね」

「まぁ、一応は」

「では、参考までにお聞きしたいんです」



歩きつつもにこやかな笑みは崩さない。でも・・・・・・視線が鋭くなったのに、僕は気づいた。



「管理局や中央本部はよく『管理システムと管理局の思想と、何より自分達を信じて欲しい』と言います。
魔法文化や管理システムはこの世界にとって必要で、管理世界になるというのはそういう事だと」

「・・・・・・・・・・・・シンヤさん達にもそういう事言うんですか」



なるほど。リンディさんやフェイトとかのアレは、ある意味では局の思想そのものなのか。

正直僕だけに言ってるのかなとか思ってたけど、他の世界の人にまでコレとは。



「僕達にも?」

「あー、いえ。ここは気にしないでください。・・・・・・それで?」

「でも、ご存知の通り僕達はそれを信じられない。管理局任せになんて、決して出来ない」



でしょうね。だからこそ維新組という組織が出来てるし、上の方針そのものから徹底抗戦の構えだもの。

そしてだからこそ、僕もこの世界に興味を持って、ここに居る。じゃなきゃ、関わらないとさえ思う。



「次元世界出身のあなたから見て、僕達の行動はどう映りますか? 率直なご意見を伺いたいのですが」

「信じたくなければ信じなくていいでしょ」



歩きつつも両手をお手上げポーズで軽くそう言うと、シンヤさんが目を見開いてきょとんとした顔になった。



「・・・・・・え?」

「あ、聴こえませんでした? えっと、もう一度言いますけど」

「あ、そこは大丈夫です。・・・・・・そう言う理由も、良ければお聞かせ願いますか?」

「まず一つ、僕も管理局のやり方とか組織自体も好きじゃないんです」



軽く昔から局の不正や汚職、権力の横暴みたいな事件に何度か遭遇した結果とだけ言った。

で、昔から周りの人間にシンヤさんやヴェートルの人達が言われてるような事を言われ続けていると。



「入局のために・・・・・・あぁ、それでなんですか。納得しました」



シンヤさんは、さっきの僕の言葉の意図がコレなんだと納得してくれたみたい。



「組織は人だから、そこに居る人間が少しでも信じられないなら、信じる必要なんて全くないですよ」



それが見て取れたので、僕はそのまま話を続ける。9月末の太陽の光を浴びつつ、前に進みながら。



「自分の勝手で決めればいいと思います。だから僕は、僕の勝手で『局や局員は信じられない』という答えを出してる」

「まぁ、それは今のお話を聞く限り・・・・・・そうなるでしょうね」

「はい。なのに他人に『局を信じて欲しい』なんて、言えるわけがないですから。
だから、信じたくなければ信じなければいい・・・・・・なんです。だけど、それだけじゃない」



それだけだったら、ちょっと足りないので左手の人差し指を立てながら、軽く言い切る。



「信じたければ、誰がどう言おうと信じればいいとも思ってます。まぁ、その逆もまた・・・・・・ってやつですね。
少なくとも役立たずな現状なんかはともかくとして、掲げてる理念とかがブッチギリで悪いわけじゃありませんし」

「えぇ。そこは僕もそうですし、レイカさんやヴェートルの中央政府も思っています。
とにかく・・・・・・僕達で勝手に決めろと。これはまた、予想外でした」

「ダメでした?」

「いえ。・・・・・・予想外ではありますが、予想以上の答えでした。蒼凪さん、ありがとうございました」

「いえいえ」










僕にはどういう意図でこんな事を聞いたのかは、正直な所よく分からない。





ただ、シンヤさんがどこか満足そうというか嬉しそうなのは・・・・・・まぁ、いいことなんでしょ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてその後すぐ、僕達はようやく帰れる事になった。レイカさん、悔しそうだったけど。





そして僕はシルビィの運転で・・・・・・あぁ、夕方の街が綺麗だなぁ。










「・・・・・・てーか、今更だけど公子探さないでこんな事してていいんだろうか」

「まぁ、コレに関しては事件の前に決まっていた事らしいし、しょうがないわよ。
それに維新組との情報交換も兼ねていたから、問題ないのよ?」

「あ、いつの間に」

「向こうから言ってくれたの。今回は仲違いは無しにしようというのが、お互いの共通認識だから。
でも・・・・・・こんなに協力し合う感じになったのは今回が初めてだから、結構ビックリしてる」



右側の運転席のシルビィば、苦笑し気味にそう言う。というか、僕の右肩のリインも同じくだね。



「なんというか、維新組もそうだけどEMPDや中央本部も公女が好きなのよね。
だから頑張りたくなっちゃうのよ。弟君が居なくなって、心配じゃないはずがないもの」



・・・・・・なるほど。そこの辺りで自然と纏まってしまっていると。まぁ、確かになぁ。

てゆうか、公女の人気がすごい勢いでちょっとビックリだし。うーん、いったい何処のアイドル?



「実はさ、シンヤさんと顔洗いに行ってたじゃない?」

「あ、行ってましたね」

「その時に、シンヤさんとその辺りの話をアレコレしてたのよ。だって、さすがにおかしいもの」



シルビィとリインにも、そこの辺りの話をした。二人は当然のように納得してくれた。



「確かに・・・・・・うーん、こっちで保護したらそれなりに話を聞く必要があるのかしら」

「ですね。というか、早く見つけてあげたいですよ。公女さん達、きっと心配してるです」

「そうね。よし、頑張っていきましょ」










シルビィの気合いの入りようを見て・・・・・・なんつうか、すごいと思った。





だって、背中に炎見えてるしさ。普通にエンジンかかり過ぎだって。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それでユーノ、アイアンサイズの方だが」

『フェイト・・・・・・というか、フェイト経由でもらった恭文君の情報のおかげで、だいぶ進展した。
恭文君本人にも確認したから、だいぶ絞り込めたよ。ただ、普通に対処は無理』



自分の執務室で、段々恒例になりつつあるユーノとの秘密通信だ。

用件は、うちの愚弟でさえ苦戦しまくりというアイアンサイズの対処。



「・・・・・・それはどういう意味合いだ?」

『まず通常での魔法でのノックアウトは無理だと考えておいて欲しい。ここはフェイトにも伝えた。
そして物理攻撃関係も、相当なものを使わない限りは決定打になりえない』

「現段階でその『相当なもの』を使っているんだが、それよりも上なんだな?」

『うん。まぁ、恭文君が覚えてる雷徹とかそういうのを使うなら別だろうけど』





雷徹・・・・・・あぁ、徹を二つ同時に叩き込む事による徹底した内部破壊か。

恭也さんと美由希さんの習得している御神流の奥義の一つ。

だがアレは、恭文本人でさえも威力があまりに高過ぎると考えている。



そのために普段は封印状態だぞ? それまで持ち出さないとだめなのか。





「・・・・・・アレを人に対して叩き込むのか?」



前に10センチ近くある鉄板を粉砕したのを見た事があるんだが。

普通の徹でさえ殺人技だと言うのに・・・・・・ありえないだろ。



『うん。それでようやくだと思う。そして同時に』

「最低でもそれだけの衝撃と破壊力を持ち合わせた攻撃でなければ、倒せない」

『そういうこと。残念ながら、これはもう確定しちゃってる』

「だがそうなると・・・・・・困ったな。どっちにしても『排除』して対処となるのか」

『うん。ただね、手が無いわけじゃないんだ。クロノ、マリーさんをクロノさんの権限で動かせないかな』



マリーさんというのは、本局技術スタッフのマリエル・アテンザ女史。僕達とも付き合いが長い。

そしてアルトアイゼンの親友でもあり、ヒロリスさんとサリエルさんの後輩でもある。



『当然だけど秘密裏に。あと、数人口の硬い技術スタッフが居てくれると楽かも』

「それはまぁ・・・・・・出来ない事もないが。ユーノ、一体何をさせるつもりだ」

『さっきも言ったけど、普通の対処じゃアイアンサイズを捕縛することは不可能。
だけど、一つだけ手があるんだ。文献を調べて分かったんだけど』



ユーノから詳しく話を聞いて、事情は理解した。確かにそれならばマリエルさんの力も必要だと思う。

だから僕は頭の中でユーノの頼みを実現するのに必要な人員と資材とそれを動かすためのスケジュールを組み始める。



「よし、それに関してはすぐにマリエル技官に話を通しておく。ユーノ、すまないが」

『分かってる。追加調査は継続しておこなうよ。もちろん極秘裏にね』

「頼む」

『それと・・・・・・公子、まだ見つかってないんだよね?』



僕は画面の中のユーノの言葉に頷いて肯定する。・・・・・・あれから、1週間だ。

いくらなんでも、ここまで見つからないのはおかし過ぎる。EMPは浮遊都市だし、簡単には外に出られない。



『EMPから出たとかは?』

「出てどうする。あの世界は過去に起きた温暖化による海面水位上昇の影響で、地表の大半が海中に水没している。
EMPの周辺の陸地は殆どが砂浜だと言うし、なにより出る理由がさっぱりだ」

『確かにそうだよね。というか、おかしくない? まぁEMPに跳んだのがトラブルとするでしょ?
それならすぐにEMPDなりGPOなりに保護を求めるはずなのに』

「あぁ。だから関係各所は、そろそろ『最悪の事態』を想定しているようだ」










出来ればそんな事になっていて欲しくないと思う。そうなれば、きっと公女が悲しむだろう。

話した事はないが、優しげな声と温和な雰囲気はどこか儚げで・・・・・・見ていて心に訴えかけるものがある。

なんにしても、公女・・・・・・いや、それだけではないな。事件で泣いているのは公女だけではない。





フェイトも恭文がキッカケで、そろそろ止まっていられなくなっている。早く介入出来るようにしなければ。





このままEMPDやGPO任せなのは、絶対に避けなければ。そんな事をしては、僕達は本当に局に居る意味がない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・忙しい。すっごく忙しい。EMP全体がせわしなくて、普通に空気が悪い。

僕達、相当に忙しかった。というか、あれから1週間だよ。

EMPに跳んで来てるはずなのに、全く消息が掴めない。これ、どういうこと?





だからこそ僕とリインとシルビィは、仕事終わりに街を歩いていたりするのである。あ、フジタさんも一緒だね。










「・・・・・・俺はお邪魔じゃないか? まぁアレだ、若い二人は積もる話もあるだろうし」

「何気持ちの悪い気遣い方してるっ!? お願いだからちょっと目逸らすのやめてっ!!」

「そうですよ。補佐官、なに言ってるんですか。アンジェラのお見舞いに行こうって言い出したの、補佐官ですよね」

「まぁな」



し、しかしこの人は・・・・・・夜の街を歩きながらも思うけど、元からこういう人なの? なんかどんどんキャラ変わってるんじゃ。



「ね、シルビィ。フジタさんって最初からこんな茶目っ気溢れる人なの?」

「あ、全然。あのね、最初の頃補佐官は」

「シルビィ、その話はやめろ」



当然だけど、シルビィはやめない。フジタさんを見ながらもう楽しげに言葉を続ける。



「もうヒドかったんだから。私達、最初の時に分署で補佐官の歓迎会したの」



歓迎会・・・・・・あぁ、あのノリでね。あのノリで分署で歓迎会したんだ。



「そうしたらもうすごい剣幕でキレちゃったの。『仕事場をなんだと思っているっ! ふざけるなっ!!』って」

「・・・・・・うわ、それは空気読めてないわ。そこは内心そう思ってても、普通に良い顔するのが大人だって」

「ですです」



仲良くしてくつもりがあるなら、初っ端で・・・・・・アレ、ちょっと待って。

もしかして最初はフジタさん、仲良くしてくつもりとか一切無かった?



「それって別に仕事中とかじゃないですよね?」



ちょっと気づいて、僕はフジタさんを見る。苦い顔をしているフジタさんは、恥ずかしげというかそういう感じ。

・・・・・・少なくとも今のフジタさんがそういう対応をするとは思えないよな。来た時、なんか有ったのかな。



「もちろん通常業務が終わった後よ。それで準備してた料理や飾り付けは即撤去」



フジタさんが居心地悪そうだけど、とりあえずここは気にしてはいけない。

こういう話は僕達側からすると、とっても楽しいのだ。



「もうそのせいでアンジェラなんて最初は敵視しまくってたんだから。
ただ・・・・・・うーんこの3ヶ月の間で随分変わりましたよね」



鬼の首を取ったように嬉しそうな顔でシルビィがフジタさんを見上げる。

それでフジタさんは、そっぽを向いて視線を逸らす。



「さぁな」

≪なるほど、フジタさんはツンデレなんですね≫

「なんだそれはっ!? というより、お前らもそのニヤニヤはやめろっ!!
普通に俺は腹が立つんだがっ!! ・・・・・・とにかく、そのアンジェラだ」



あ、話逸らした。でも、確かに気になる所ではあるんだよなぁ。普通におかしいもの。



「風邪を引いたのはいい。だが、余りに突然過ぎるだろ」

「というか、リインから見てもおかしいのですよ。普通に引きこもりの子なのです」



あれから1週間、公子様は見つからない。そして、アンジェラが風邪を引いた。

引いて、ずっとお休みである。だからみんな心配しつつも公子を探す。だけど、見つからない。



「でも、変なのよね」

「あぁ」

「何が変なのですか?」

「アンジェラ、風邪なんて引いた事ないの。私、今までずっと一緒だったけど、それでもよ」



・・・・・・確かに。アレは風邪ウィルスを寄せ付けないと思う。元気一杯だもの。



「どうもそうらしいな。それになにより、アンジェラの自宅の近隣住民によると、普通に外に出歩いて買い物しているらしい」

「でも補佐官さん、アンジェラさん一人暮らしですよね? お買い物が必要だったら、無理してでも出るんじゃ」

「一応EMPでは店舗によっては自宅への宅配サービスなどをやっている店もある。
俺はアンジェラが以前そういう店を見つけて感心していたのを、よく覚えている」

「あ、そうなんですか? そこは私知らなかったかも」



シルビィが知らないって事は、アンジェラが一人暮らしするようになってから見つけたってことか。

・・・・・・アレ? そういうの知ってるんだったら、普通に出歩く必要無くないかな。



「そして出歩いてる時も、相当に元気いっぱいだとか。・・・・・・だから『お見舞い』だ」



なるほど、そこは納得した。で、お姉さんなシルビィと何気に仲の良い僕やリインも一緒と。

でもね、すごい気になる事があるの。スーパーの話は、フジタさんがプライベートでお話してる時の事だろうからいいの。



「・・・・・・フジタさん、アンタその情報をどうやって入手したんだよ」



買い物に出てるとか、買い物の様子とか・・・・・・マジでどうやって調べ上げた?



「怖いよ、普通に怖いよ。普通にストーカーって言われてもおかしくないよ」

「補佐官・・・・・・まさか、アンジェラに恋をっ!?」

「バカ者っ! 年がら年中恋してるお前と一緒にするなっ!!
・・・・・・安心しろ。あくまでも合法的手段にはこだわっている」

「それでもかなり怖いんだけどっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、僕達はアンジェラが住んでいるというアパートに到着。なお、部屋は3階の5号室。





緑色のドアの前で、どうした物かと考える。だって、これってお見舞いという名のガサいれでしょ?










「うし、ドア蹴破って侵入しようか」



方針を決めて、僕が足を上げるとなぜかシルビィとフジタさんが二人がかりで僕を持ち上げて、止める。



「バカっ! お前はいきなり何を言っているっ!!」

「そうよっ! そんなことしたら、私達犯罪者じゃないっ!!」

「大丈夫だよ。蹴破りつつもフジタさんを見習って、合法的手段にこだわるから」

「蹴破ってる時点で、合法的じゃないわよっ!!」



確かにその通りかも知れない。だけどね、お願いだから僕の話も聞いて欲しいわけですよ。



「でも普通にガサ入れしても、絶対隠されるよ?」

「・・・・・・それは確かに。補佐官、ヤスフミの言う事も一理あると思うんですけど」

「そう言われるとそうだな。ガサ入れの基本は相手に隠す準備を与えない事だ」



そうそう、こういうのは不意を突かないとだめだと思うのよ。だから、とりあえず離してくれると嬉しい。



≪蹴破る必要はありませんよ≫

「そうだぞ。例えそうだとしても、今回は合法的手段にこだわっていくんだ。ここでそれをやる必要は」

≪私が内部をサーチして、状態を調べましたから≫

「そしてお前も何をしているっ! もうこの時点で犯罪だろうがっ!!」



気にしてはいけない。大丈夫、バレなければいいんだ。昔の偉い人はそう言ったのよ。



「アルトアイゼン、そのデータは今すぐ消去しましょう? ね、いいわよね」

≪でも、私の話を聞いてからの方がいいと思いますけど≫

「聞きたくないわよっ! というか、聞いたら犯罪よねっ!?」

「アルトアイゼン、どんな感じなのですか?」

「リインちゃんも、そこを聞いちゃダメよっ! 普通に犯罪になっちゃうからっ!!」



だけど、もう止まらない。だって、リインは普通に聞いてしまったんだから。なので、アルトも答えるのである。

なお、僕は二人に肩から抱えられているので、未だに足がぶらんぶらんしております。



≪まぁ、結論から言いますと≫

「言わないでー! そうよ、私は聞かないんだからー!!」

≪アンジェラさん、中でアレクシス公子とカレー作って歌ってます≫

「なんだ、カレー作ってるなら元気だよね。しかもアレクシス公子と一緒だもの」



普通に僕は納得してしまった。で、そろそろ足のブラブラ状態を解消したくなった。

だから、フジタさんとシルビィに話そうとした瞬間に、気づいた。



「・・・・・・ちょっと待って。なんでアレクシス公子?」

「アルトアイゼン、それは・・・・・・間違いないのか?」



シルビィとフジタさんが聞くのも無理はない。僕とリインも、視線を向けてるもの。

で、遠慮なく我が相棒は、僕達の疑問を肯定した。



≪はい。身体データはいただいてましたから。
そこと照らし合わせた結果・・・・・・本人である可能性、99.9%です。というか、あなたは分かるでしょ≫



そう言われて、咄嗟に周辺の気配を探る。探って・・・・・・気づいた。

さっきからずっと小声でシルビィ達とドタバタしてたから、気付かなかっただけだった。



「・・・・・・シルビィ、フジタさん、確かにアンジェラの部屋の中に誰か居ます。それもアンジェラ以外」



僕の言葉に全員が顔を見合わせる。そして、ようやく僕の足は地面と再会した。

シルビィは懐から合鍵を取り出す。取り出して鍵穴に差込み、ゆっくりと回し・・・・・・そして一気に開け放つ。



「アンジェラ、突然だけどお邪魔するわよっ!!」

「同じくだっ!!」

「同じくパート2だよっ!!」

「同じくパート3なのですっ!!」

≪同じくパート5です≫





とにかく、ずかずかと全員揃って2LKくらいのお部屋に突入。



で、突入して玄関を抜けリビングに入った。入って、驚愕した。



ビックリした顔で、あの時会場で見た影の薄い男の子が、カレーの味見をしたまま固まってたから。





『・・・・・・・・・・・・一体何やってんのっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・このバカ者っ!!」

「このバカ猿っ! アンタ、マジで大バカでしょっ!!
私達が公子を早く保護しなきゃいけないって、知ってたわよねっ!?」

「アンジェラ、今回ばかりはあたしもフォロー出来ない。てーか、何やってんだ?」

「ごめん・・・・・・なのだ」

「アンジェラ先輩、お願いですからちゃんと事情を説明してください。どうしてなんですか?」





そしてそれから30分後。ここ、GPOのEMP分署は修羅場となった。・・・・・・うん、そうだよね。

だって休んでいたとは言え、アンジェラに公子の事はちゃんと伝えていたらしいし。それでこれだもの。

でも・・・・・・あれ、なんか変だな。またあの時感じた妙な感覚、出てるし。



そこは気にせずに僕は公子を見る。公子は熊の可愛いプリントがしてある黄色いトレーナーを着ている。

服はアンジェラがサイズを聞いて買って来たらしい。ジーンズに灰色の帽子姿の公子は、項垂れている。

いや、同じく項垂れているアンジェラをかばうようにして、公子は僕達の前に立った。



何がそんなに怖いのかと聞きたくなるくらいに、公子は・・・・・・手が、震えていた。





「あの、アンジェラは悪くないんです。・・・・・・お願いします。
もうアンジェラを責めないでください。僕が・・・・・・無理にお願いしてしまって」

「アレク、あの」

「ううん、大丈夫だから」

「・・・・・・公子、とにかくすぐに月面都市の方にお送りします。パティ」

「は、はい。すぐに月分署のメルビナ長官に連絡を」



フジタさんに言われて、パティが動く。そしてそのパティを、公子が止めた。



「あの、待ってください。・・・・・・お願いします。月には、姉さんには連絡しないでください」

「そういうわけには行きません。あなたは狙われている身なんですよ? これ以上ここに居ては」

「ダメなんです。あそこは・・・・・・ダメなんです。だって、僕は」

「補佐官、アレク・・・・・・お姉さんから逃げてきたのだ」



はぁっ!? ・・・・・・ちょ、ちょっと待って。今アンジェラが言ってること、かなりおかしいよ?



「待て。アンジェラ、それはどういう事だ?」

「アンジェラも良く知らないのだ。でもでも、アレク絶対に帰りたくないって、それで・・・・・・うぅ、ごめんなのだ」



アイアンサイズとかじゃなくて、姉・・・・・・公女から逃げてきた? どういうことさ、それ。

ま、まさかシンヤさんとのお話で推測した四つ目・・・・・・正解だったの?



「えっと、公子・・・・・・ううん、アレクって呼んでもいいかな」



なんか周りがビックリしてるけど、ここは気にしない。訳分からないなら、踏み込むしかないもの。



「僕は蒼凪恭文。管理局の嘱託魔導師なんだ。よろしくね。
あ、僕も名前で大丈夫だから、気軽に呼んで欲しいな」



そのためには、まずは話を聞くこと。そして、距離を縮めることだよ。



「・・・・・・あの、もしかして古き・・・・・・鉄?」

「そうだよ。まぁロストロギアをガリゴリ食べたり、腕を斬られて0.1秒で再生なんてしないし、見ての通り体長4メートルも無いけど」



少しおどけて言うと、アレクが笑った。クスリと、僅かにだけど・・・・・・それでも。



「あ、すみません。さすがにそれは信じていなかったんですが、想像よりもずっと可愛らしい方だったので」



・・・・・・ま、まぁいいか。ここはツッコまない。というか、僕の話じゃないんだから、ここはいいのよ。



「・・・・・・というか、あなたも」

「なに?」

「あ、いえ。・・・・・・アレクで大丈夫です。それで恭文さん、なんでしょうか」

「お姉さんから逃げてきたってのは、どういうこと?」



表情が重くなる。僕が聞きたいことは分かってたはずなのに、それでもだ。

少し心が痛むけど、それでも聞く。じゃなきゃマジで分からない。



「・・・・・・お願い、話して。アレクが話してくれなきゃ、僕達も訳が分からないの」



正直、無理矢理踏み込むようなマネはしたくないけど、ここでずっと事情も無しに匿うのも無理。

だから、アンジェラだって自宅に匿ってたんだ。僕達に話しても、こうなるのは分かるから。



「もちろん話しにくいことなら・・・・・・無理には聞かないよ? 一晩寝て、落ち着いてからでもいいし」

「蒼凪、お前勝手に」





僕は補佐官の目を見る。それで横槍を静かに止めた。補佐官も気づいてくれたからそこで引く。

そう、気づいていた。アレクはずっと何かに怯えてる。瞳を、心を、強い恐怖に支配されてる。

その怯えの対象は公女・・・・・・違う。話の流れだとそれになるんだけど、今ひとつ違う気がする。



だからアレクには・・・・・・話して欲しい。もちろん、話せる事ならなんだけど。





「分かり、ました」

「いいの? あの、マジで辛いならもうちょっと落ち着いてからでも」

「いえ、大丈夫です。・・・・・・僕達は、化け物なんです」



いきなりと言えば、いきなりな発言。だけど、それでも続きを聞く。驚きは胸に秘めたままだ。



≪・・・・・・どういうことですか≫

「僕達カラバの王族には、代々伝わるレアスキルがあるんです。その名は、親和力」



僕はフジタさんやシルビィ達を見る。みんな僕と同じように驚いていた。

僕もそんなレアスキルの話は聞いた事がない。つまり、非公式情報ということになる。



「アレク、それはどういうものなの?」

「人を気づかないうちに、無意識に自分の支配下に置く事が出来る・・・・・・最悪の力です」





アレクの話だと、こうだ。まずこのレアスキルは、カラバの王族だけが保有している。

それが代々受け継がれてきているというのは、さっきの話通り。恐ろしいのはその能力だ。

この能力は言うなれば・・・・・・徹底的に昇華され、強力な力を持ったカリスマ性。



人を洗脳して操るとか催眠術をかけるとか、そういうものとは根本的・・・・・・いや、次元が違う。

この力を持った人間を側に居る周囲の人達は、『極々自然に』敬ってしまうのだ。

気づかない内に能力の影響を受けてその人のことが好きに、大事に、大切に思ってしまう。



分かりやすく言うと『好き→シンパ→信仰』という感じに、力の影響を受け続けるとパワーアップする。

もちろん本人の気づかない内にだ。・・・・・・ここまでなら、洗脳と同じだと思う人も居るだろう。

でもね、違うの。洗脳は薬品や催眠術なんかで、意識の深層心理そのものに刷り込んでいくでしょ?



これは不測の事態だったりが起きると、解けたりかけられた人間の精神に負荷をかけかねない。

つまり、不安定な部分があるのよ。でも、親和力にはそういう部分が一切ない。

能力の影響下にある限り、そこに居る人間は『大切だから守りたい』という純粋な気持ちを持ち続ける。



別に人格が歪むとか人間性が失われるとか、そういう事は一切ない。ただ好きになるだけ。

それも無条件に、ただその人の側に居るだけでだ。・・・・・・普通にチートなんですけど。

そして問題はまだある。この能力は、常に保有者の意志とは関係なく垂れ流し状態になっているらしい。



もちろんアレクや公女も同じ。自分の意思では力の放出を、完全に抑えることが全く出来ないらしい。

ようするに『洗脳してやる』みたいな意識が本人に無くても、力は行使され続ける。

され続けて、周りの人間を力の影響下に置く事が出来るのよ。保有者が生きている限りずっと。



そうして影響下に置かれた人間はさっき言った通り、無条件で能力の持ち主を自分の意志で好きになるってわけ。





「じゃ、じゃあちょっと待ってくださいです。もしかして、今こうやってアレクさんと話している状態でも」

「・・・・・・そうだよ。僕の親和力が、みなさんに影響を与え続けている」





一同が、驚愕の表情を浮かべる。・・・・・・浮かべて、戸惑う。

アレクの表情がまた悲しいものになる。うん、そうなるんだよね。

僕、アレクが何に怯えてたのか、ほんの少しだけ分かったわ。



アレクは、『化け物』である自分に怯えてたんだ。自分の、普通とは違う力に。





「ただし、恭文さんとアンジェラは除かれます。見ていてそれは気づきました。
二人は影響を受けている人間特有の目をしていないんです」



・・・・・・あぁ、そうだよね。アンジェラはどうかは知らないけど、僕は親和力の影響を受けてないわ。



「あの公子、なんでアンジェラと恭文が除かれるんだ?
だって、あたしらにも影響があるなら二人にだって」

「・・・・・・あ、そっか」

「シルビィ、お前分かるのか?」

「ヤスフミは分からないわよ。でも、アンジェラは少し生まれが特殊でしょ?
だからそのせいかも。元々こういう能力の影響を受け辛いんじゃないかな」



言いながら、アンジェラを見る。・・・・・・あ、照れくさいのか獣耳がぴくぴく動いてる。



「ね、ヤスフミ。あなたはどうして親和力の影響が無いの? あなた、その自覚あるのよね」

「まぁね」

≪この人も影響がないのにも、理由があります。マスター、話していいですよね?≫

「うん。てーか、話すわ」



まぁしゃあないでしょ。じゃなきゃ、多分納得してくれないだろうし。



「・・・・・・僕、自己催眠による潜在能力の解放が出来るの」

「自己催眠って・・・・・・え、それってレアスキル?」

「ううん、違う。レアスキルとかとは違う、僕の元々の能力」





・・・・・・と、先生は言っていた。それが自由意志で使えるように種は蒔いてたらしいけど、僕は知らなかった。

それで僕がホントに最初の時に暗殺者集団を皆殺しに出来たのも、極限状態のせいで自己催眠が発動してたからだとか。

僕の中にある、チートな親和力という鎖ですら戒めることが出来ない獣の正体。そして、僕の生命線。



というか、自己催眠が使えなかったら・・・・・・最初の時にお亡くなりな可能性もあったんだよなぁ。





「どうも僕が使ってる自己催眠は他の催眠能力に比べると、群を抜いて強固みたいでさ。
その原因に関わらず、催眠術や洗脳の類は簡単に跳ね返しちゃうの」

「だからアンタもアンジェラと同じく、親和力の影響を跳ね返せるのね?」

「まぁね。どうもこれも、そういう意識下に作用するものらしいから」





でも、これで納得した。パーティー会場でも感じてたあの感覚、発生源は公女とアレクだったんだ。

つまりあのパーティー会場の盛り上がり方は、親和力が行使されまくったことが原因。

なんかもうマジで、公女のシンパと信仰者の集まりって感じだったしなぁ。なるほど、あれが親和力の力なのか。



もう状況どうこう集まってる人間どうこうじゃなく、ガチに味方な人間しか存在出来なかったわけですか。





≪そして親和力というキーを使えば、今までの色々な事に説明がつきますね。
例えば・・・・・・ヴェートル政府が管理局に話を通さず、圧倒的多数で亡命を受け入れた理由≫



アルトがそう言うと、全員が納得した。確か交渉は、公女が主立ってやってたはずだ。

当然のように親和力をカットなんて出来るわけがないから・・・・・・その時も垂れ流し状態。



「つまりつまり賛成派の人達は、親和力の影響を受けてたですね。だから反対派が極少数だったですよ」

「確かに鶴の一声過ぎてEMPの市庁内でも当時は賛否両論でゴタついたが、そんな能力のためにそれとは」



だからこそ今の現状に繋がってるってことか。・・・・・・待てよ。

もしかしてここまでカラバのクーデター派がアレク達を狙ってるのって、これが原因?



「・・・・・・そうなんです」



いや、それだけじゃない。そういう事なら・・・・・・亡命当初から表に出て、自ら交渉もしていた公女の行動も怪しくなる。

公女が自分の能力の事を知らないとは、到底思えない。つまり親和力の影響を・・・・・・利用したんだ。



「でも、それだけじゃない。姉さんは親和力を徹底的に利用し始めてる。
ヴェートル政府・・・・・・ううん、次元世界全体を親和力の影響下に置こうとしてるんだ」

「はぁっ!?」



いやいや、親和力が凄い能力なのは分かるけど、それはさすがに無理じゃ。

ヴェートル政府はまぁあんな感じですよ? でも、次元世界ってすっごい広いし。



「そうして、次元世界全体を新しいカラバ王国にしようとしているんです。
そしてそれは可能。・・・・・・親和力は、直接会わなくても影響を受けるから」



そんな希望に縋りつくような僕の考えは、アレクが俯きながら発した言葉で砕けた。

シルビィ達も顔を見合わせる。見合わせるから、フジタさんがアレクに聞く。



「・・・・・・アレクシス公子、それはどういうことですか?」

「姉さんがテレビに出てるのを、見たことはありませんか? それで感じませんでしたか?
理由もなく惹かれるというか、力になりたいと思うというか、守りたくなるというか」



僕はその辺りはなかったんだけど、シルビィ達は思い当たる節があるらしい。

アンジェラ以外のみんなは顔を見合わせて『そう言えば』という顔をする。



「さっきは説明のために『側に居る人間』と状況を限定しましたが、実際はもっと幅広い。
親和力はテレビやラジオに通信、そういったメディア越しからでも他人に影響を与えます」

「え、ちょっと待って」





考えを必死で纏める。まず公女は、親和力を徹底利用し始めている。

というかしている。それにより、ヴェートル政府を懐柔し亡命成功。

で、親和力はテレビなんかのメディアを通しても、人に影響を及ぼす。



当然公女はそのことを知っている。なのに、テレビに出まくっている。・・・・・・おいおい、マジかい。



それだと公女は、管理世界全体を掌握しようとするクーデター犯になるじゃないのさっ!!





「じゃあじゃあ、もしかして管理局とかで公女の人気が高まってきてるのって、単純に状況とかの問題じゃなくて」

「姉さんのメディアへの出演を見たせいだと思います。
直接会うより効果は低いですけど、それでも回数を重ねれば」

≪公女・・・・・・というより、今回の亡命問題は次元世界中の注目を良くも悪くも集めています。
リアルタイムの放送自体はヴェートル限定でも、その映像はミッドでも流れています≫

「そこを利用したんですね。注目を集め続ければ、普通にアレクさんが言った事は可能なのです」



メディアを通して・・・・・・親和力の影響を不特定多数の人間に、ばら撒いてるんだ。

待て待て。そんなことしたら、マジで次元世界の大半が公女の信仰者になるでしょうが。



「アレク、一つだけ質問。親和力って、完全に自分ではコントロール不可なの?
例えば抑える事が無理なのと同じように、出力を上げるのも無理とか」

「いえ、力の放出量を上げる事は可能です。そうして一気に人を支配化に置く事も」



な、なんつう能力だよ。しかも意識しなくても能力が垂れ流し状態ってのが、なお性質が悪い。



「そうなるとかなり厄介な能力だな。俺達が公女やアレクシス公子の側に居る時はもちろんだが」

「普通のテレビなんかに出てるのを見ただけでも、親和力の影響を受けるわけだよな?
で、それを見たあたしらみたいなのは知らない内に、公女や公子が大好きになっちまう」



・・・・・・あれ? いやいや、ちょっと待って。親和力の影響・・・・・・あれ?

いや、ここは後でもいい。今は目の前のアレクの事からだ。



「やばいわよ、これ。普通にしてるだけなら、まぁいいわよ。
でも、マジで今言ったみたいな感じでやろうとしてるなら」

「本当に緩く、甘く、誰も気づかないレベルでの世界征服が出来るです。
しかも全員自分の意思での信仰。力の影響下に居る限り、洗脳の類と違って解ける心配もありません」





例えば公女やアレクに対して反対意見が出ても、それらは恐らく黙殺される。

例えば僕とかアンジェラみたいに、親和力が通用しない人間もだ。

公女の存在に異議を唱えれば、それを表に出せば、普通に総スカンだろうね。



今はまだいい。だけど、次元世界中で公女を信仰するようになったら・・・・・・おしまいだ。





「・・・・・・アレク、だから姉さんから逃げたんだね。一緒に居れば、アレクの中の力まで利用されるから」

「はい。僕・・・・・・嫌だ。人と・・・・・・普通と違うなんて、嫌なんです。
こんな力、欲しくなかった。自分が嫌で、嫌で、だけど・・・・・・どうしようもなくて」



俯き、涙を零す。目の前に居るのは怯えた迷い子だった。だから僕はその迷い子の頭に、手を乗せる。



「分かった。ありがと、話してくれて。僕達は必ず力になるって約束する。でもねアレク」

「はい」

「一つだけ叱るね? ・・・・・・自分を、『化け物』なんて言うな。そんな風に考えるな」



何か言いたげに顔を上げる。だから、僕は言葉を続ける。



「僕の友達にも、アレクみたいな子がたくさん居る」



開きかけた口が止まった。そして、僕を見る。ほんの少しだけ僕より高いから、見下ろす感じ。



「普通の人と違う生まれ方をした子とか、普通と違う力・・・・・・それも本当に強い力を持った子とか、結構知ってる。
アレク、意地悪な質問するね? 普通じゃない力を持ったアレクが化け物なら、その子達も化け物になるのかな」



アレクの目が見開いた。見開いて、震えてる。だけど止めない。



「人と、世界と、普通と、僕と・・・・・・自分と違う。
だから僕の友達は、大切な人達はみんな、化け物になるのかな?」

「ごめん、なさい」

「謝らなくていい。てーか言ったでしょ? 意地悪な質問だって。
それでさ、だから言い切れるんだ。僕はそんな理屈、絶対認めない」



そうだ、絶対に認めない。みんな大事な友達で、仲間で、大切な人達なんだ。こんな理屈、認めてたまるか。

普通と違うことのなにがいけないの? ただ、自分と人とが違うってだけじゃないのさ。そんなの、みんな同じだ。



「だから僕は、アレクを化け物だなんて絶対に思わない」

「恭文、さん」

「だって僕はアレクのこと、ちっとも怖くない。言っておくけど、親和力の影響を跳ね返せるからとかじゃない。
アレクはアンジェラの事を身を呈して庇えるくらいに、心の強い子じゃないのさ。だから、怖く・・・・・・ないよ?」



不安げに僕の瞳を覗くので、思いっきり笑ってやる。にっこりと、安心させるように。



「アレク、少なくともここにそう思っている人間が居るって事、覚えておいて?
今はそれだけでいい。本当に・・・・・・それだけで、いいから」

「・・・・・・はい」



その返事に満足しながらも、僕はアレクの頭から手を離す。

離す前に思いっきり髪をくしゃくしゃにしてやった。アレクは・・・・・・少し苦笑い。



≪・・・・・・それでこれからどうします? まぁ、これだと月に帰すのは当然無しですが≫



当然でしょ。帰した途端に、色々利用されまくるのは明白なんだから。



「とりあえず・・・・・・サクヤさんとメルビナさん対策でも整える?」

「ヤスフミ、何言ってるのっ!? なんでいきなり・・・・・・あ」



シルビィは気づいたようである。・・・・・・うん、そうなのよ。親和力の影響、その二人は受けまくってるの。

だからあの場に来て二人をエスコートしていたフジタさんも、相当苦い顔をしている。



「メルビナ長官もサクヤも、相当にアルパトス公女に入れ込んでいる様子だった」



どうやら、僕と全く同じ事を考えてたみたい。・・・・・・ここがさっき僕の気づいてた所なのよ。



「アレを見る限り、親和力の影響を受けに受けまくっていると見ていいだろう」



公女のガードのために二人が3ヶ月以上もの間、ずっと月に居たのが裏目に出てしまっている。

その間、この間みたいに公女の近くに居る機会がいくつかあったと考えると・・・・・・そうなっちゃうのよ。



「つまり補佐官、あれか? メルビナやサクヤ達が、あたしらの敵になると」

「アルパトス公女が親和力を行使して、手ごまにしようとすればそうなるだろうな。
いや、もしかしたら現時点でそのために動いている可能性も考えられるぞ」

「・・・・・・そんな」










それだけならいいんだけどね。親和力の性能がチート過ぎて、その気になれば管理局乗っ取るのもきっと楽だよ。





きっと今までは不自然じゃないように、少しずつ少しずつ力を使って下準備をしてただけ。





くそ、マジでこれはヤバいでしょうが。これだとカラバでのクーデターも、図式が180度変わってくるよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして夜の10時頃。とりあえずアンジェラとリインはアレクと僕のベッドで就寝。





他のメンバーも自宅に戻った。でも、僕はフジタさんとちょこっとお話。










「・・・・・・蒼凪、お前の方で信用出来る人間に協力は頼めるか?
正直今回の事、GPOの人員だけでどうにかなるとは思えん」

「局員関係が多数ですけど、それでもいいなら」

「お前の目を信じるさ。だが・・・・・・アテは多くないという感じだな」





フジタさんの個人オフィスで、二人で声を潜めながら話。まぁ、正直親和力の能力がアレだからなぁ。

まず協力を頼めるのは、現時点で親和力の影響が薄い人間だけに限られる。

メルビナさんやサクヤさんみたい状態だと、協力を仰ぐのはむしろ危険だ。そうするとやっぱアテは少ない。



下手をすれば身内全員が敵になりかねない。そこの辺り、慎重にやっていかないと。





「フジタさんの方はどうですか?」

「残念ながら、アテと言える人間は0に等しい。その辺りの理由はお前も知っての通りだ」

「・・・・・・納得しました」



EMPDの上層部は、市長以外の人間は最初の段階で親和力にやられちゃってるしなぁ。

本来であればEMPの行政スタッフであるフジタさんにアレコレ頼むのは、酷ってもんか。



「あとは増員を呼んでも下手をすれば敵に成りかねないと言うことだな」

「そうなんですよね。そこを考えると逆に・・・・・・ですよね」

「あぁ」





親和力を現在のメンバーで跳ね除けられるのは、僕とアンジェラだけ。あ、それとリインだね。

アレク曰く、影響は受けてるみたいだけどリインはその影響が薄かった。

だから今だってぐっすり一緒のベッドで寝てるのよ。うーん、リインとは前に催眠攻撃跳ね除けたりしたからなぁ。



そのせいで、深層意識に変化を及ぼす親和力の影響に抵抗出来るのかも。





「とにかく、頼れそうな人間に片っ端から連絡してみます。というか・・・・・・様子を見ないとヤバいかも知れません」

「それはお前の昔馴染みの大半が、局の中では有能かつ有名人な人間が多いからだな」

「はい」



シグナムさんやらフェイトやらなのはやらが敵に回ったら・・・・・・マジでヤバいって。対処出来なくなっちゃうよ。



「当然のように事件に注目していますから、この段階で親和力にやられてるのが多いんです。まだ信仰者って程じゃないですけど」

「・・・・・・くそ、完全に公女の手の平の上か。もっと早く気づいていれば、まだやりようはあったというのに」



あのヒロさんとサリさんでさえ公女に好感持ってたしなぁ。・・・・・・あ、そうだ。

ヒロさんには話しておいた方がいいかも知れない。メルビナさんの事もあるし。



「とにかく俺の方でも無いなりに、信用出来そうな人間を探してみる。すまないがお前も頼む」

「分かりました」










だったらまずは・・・・・・うん、ヒロさん達だね。ちゃんと話しておかないと、マジで今回は危ないと思う。





だけど慎重に話さないと、どうなるか分からないからなぁ。気をつけていかないと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・やっさん、マジなの? 言っておくけど、冗談なら私は怒るよ?
そのせいでメルビナが公女の人形にされかけてるとか、シャレが効いてない』

「残念ながらマジです。公女は悲劇のお姫様なんかじゃない。
ブッチギリで管理局への『クーデター』を起こそうとしてる悪女ですよ」



ヒロさんとサリさんに、同時に秘密の回線(サリさん作成)で連絡を取った。

まずは公女の話をしてアメイジアや金剛の反応をなんかも見て・・・・・・説明した。



『ヒロ、ちと冷静になれ。その条件だと、俺達も少なからず親和力の影響を受けてる事になるぞ。
それに俺は、やっさんが嘘を言ってるとは思えない。てか、こんな嘘つく程コイツは頭良くないだろ』



それはどういう意味かなっ!? 僕はちと小1時間問い詰めてやりたいんですけどっ!!



『あぁ、そうだね』



そしてアンタもそこで納得するんかいっ! くそ、マジで僕のイメージはどうなってるのさっ!!



『・・・・・・悪い、やっさん。らしくなかったわ』

「いえ、大丈夫です。それでメルビナさんの事なんですけど」



ここに関してはフジタさんにも事情説明して、ヒロさんに話すのは納得してもらった。

もちろんヒロさんの反応を見た上でだけど・・・・・・それでも、友達だもの。



『ボーイ、お前はつい1週間前にメルビナのねーちゃんに会ったんだよな?』

「うん」

『姉御に代わって、俺が聞くぜ。俺はその親和力ってやつの影響を受けてねぇから、冷静に判断出来る。
・・・・・・お前から見て、メルビナのねーちゃんはもう信仰者になってたか?』

「なりかけだね。僕だけじゃなくてフジタさんから聞いた反応を鑑みても・・・・・・かなりヤバいと思う」



ヒロさんの表情が一気に曇る。・・・・・・少し胸が痛むけど、それでもちゃんと説明はする。

そうするって僕が決めたんだもの。ここで踏ん張らなくてどうするってーのよ。



『そうか。で、ボーイはどうすんだ?』

「んなもん、決まってる。・・・・・・公女の計画をぶっ潰す。下がれない理由と意地が出来ちゃってね」



思い出すのは、あの男の子の怯えた姿。それを思い出して・・・・・・僕は右拳を握り締める。



「とにかくサリさん、ヒロさんも」

『分かってる。俺らは親和力の影響を極力受けないように、のらりくらりとやり過ごすさ。
ただやっさん・・・・・・気をつけろよ。今回ばかりは、相当危ない橋を渡る可能性もある』

「構いませんよ。僕はそれでも通すと決めましたから。あ、もちろん気をつけていきます」

『ならいい』










さて、次は・・・・・・あの子だね。あとはあの人にもか。遅い時間ではあるけど、それでもしっかり話さなくちゃ。





今回、僕は絶対に止まれないし引くつもりもないから、振り切るってさ。




















(Report08へ続く)




















あとがき



恭文「今回のサブタイトルは『親和力と侵食される世界』です。
・・・・・・というわけで、真実が明らかになったよ。あ、本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。てゆうか恭文、これマジなの?」

恭文「残念ながら、マジだよ。なお、ゲーム通りだから」





(ゲーム三作目でも、この親和力という能力は出ています。
そして、実際にメルビナは展開によってはガチで敵に回ります)





恭文「ゲームだとサクヤさんは・・・・・・というより、メルビナさんの補佐で月に出張するランサーは、敵には回らないんだけどね」





(今回のお話では期間の問題でサクヤ一辺倒ですが、ゲームでは月毎に受け持ちで変わります。
そのため、月にゲーム開始当初から常駐のメルビナと違って、継続的に親和力の影響を受けません)





あむ「そこの辺りは次回以降として・・・・・・とにかく、これでクーデターはマジで図式が変わったよね。
だって親和力って言うのを使って、国民を信仰者にしちゃってたわけでしょ?」

恭文「うん。まぁ、ここに関してあーだこーだと言う権利は、多分僕達にはない。
ただ、問題は現状だよ。皇女はヴェートルとEMPを、実質自分の盾にしてる」





(なお、ゲームだと地球になります)





恭文「その上で復興支援というか、自分こそがカラバの正統な王族だとアピールするために、TV出演」

あむ「ただし、これも王族復興が目当てじゃない。狙いは親和力の影響をばら撒く事・・・・・・うわ、とんでもない悪女じゃん」

恭文「でも、この前段階で家族をアレク以外皆殺しにされてるってのも、また事実なのよ」

あむ「だからって、普通に次元世界征服なんて、しちゃダメに決まってるじゃん。
自分が不幸だからって、人を不幸にしていい理由になんてならないよ?」

恭文「・・・・・・あむがこのクロスに居たら、キラキラのラブマジックで解決出来そうだよね」

あむ「出来るわけないじゃんっ! 普通に無理だってっ!!」

恭文「あむ、世の中にはデンライナーって言うものがあってね?」

あむ「だからそんな普通にみんな乗れるような言い方をするなー!!
あたしだってアンタとチケットなりパスなり共有しないと乗れないんだよっ!?」





(とりあえず、キラキラのラブマジックに期待しつつも本日のゲストです)





サクヤ「みなさん、初めまして・・・・・・というのも変ですわね。
私、GPO・EMP分署のランサーの一人で、サクヤ・ランサイワと申します」

あむ「あ、あの・・・・・・どうも」

サクヤ「みなさん、次元世界の波動を感じていますか? 次元世界の真理は、常に皆様方の側にあります。
さぁ、その声に耳を傾けてください。神はいつでもあなた方を見守り、導いています。それこそが聖アーカネストの教えで」

あむ「あ、あのっ!? いきなり宗教的な話するのやめてくれませんかっ! ここ、そういう場じゃないですからっ!!」

恭文「・・・・・・というわけで、本日は聖アーカネスト寺院の一級司祭でもあるサクヤさんですよ」





(CVは岩男潤子さんです。なお、とっても歌が上手な方で作者と出身地が同じなのです)





恭文「そして決して咲耶ではありません。サクヤさんは、あのフリーダムと違ってすっごく良識派です」

あむ「・・・・・・恭文、アンタ普通にひどい事言うね。咲耶さん泣いてるよ?」





(『・・・・・・しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく・・・・・・です』)





恭文「サクヤさんは、劇中でも説明したけど聖アーカネスト寺院の司祭様。
原作だと地球への布教も兼ねて、ランサーとして仕事をしているの」

あむ「えっと、布教と言うと・・・・・・つまり、原作だと地球に。
ゲーム内だとヴェートルにあるの? その聖アーカネストの寺院が」

サクヤ「はい。まだまだ修行中の身ではありますが、頑張らさせていただいております」

あむ「というか、それだとその・・・・・・言い方は悪いけど副業持ちという事ですよね?
それって職務規定的に大丈夫なんですか? そういうの局だとうるさいそうですし」

サクヤ「・・・・・・あむちゃん」

あむ「あぁ、すみませんっ! で、でもそこの辺りがちょっと気になったんでっ!!」

サクヤ「いえ、謝る事はありません。むしろとてもいい着眼点を持っていると、私感心してしまいました」





(司祭様、ほんわかオーラで現・魔法少女を安心させるように笑う。・・・・・・すごい、格が違う)





あむ「え? あ、あの・・・・・・ありがとう、ございます?」

恭文「・・・・・・なんで疑問形なのさ」

サクヤ「とにかく私は、その辺りに関しては問題ありません。GPOには幾つか勤務体制がありますから」

恭文「まず正式なGPO職員であるオフィシャルランサー。これが三作目で言うとシルビィやランディさん、
あとはメルビナさんとパティとジュンもそれだね。そして準捜査官とも言われるセミオフィシャルランサー」

サクヤ「こちらが私とナナちゃんになります。準捜査官だと、如何わしい事でもない限りは副職などを持っても問題ありません。
そしてアンジェラがフリーランサー。こちらはセミオフィシャルランサーよりもより自由度が高い勤務形態になります」

恭文「一種の傭兵というか嘱託というか、そういう感じと思ってもらえればいいかも。
まぁ、僕と同じ感じだね。あむ、納得してくれた?」

あむ「うん、一応は納得した。サクヤさんの司祭職が、GPO的には問題ないって事は」





(この辺り、別作品ですけど管理局とかよりは緩めだったりするのです)





恭文「サクヤさんは、原作だとアーカネストでの修行の経験によって身に着けた神術が得意」

あむ「神術?」

恭文「うん。細かい説明は省くけど・・・・・・というより、資料が無いんだけど」

あむ「そういう内情をぶっちゃけるのやめないっ!?」

恭文「とにかく、サクヤさんが使う神術は傷を癒したり攻撃を防御したりと支援向き。
ゲームでの戦闘に関しても、攻撃はサッパリだけどそこはすごく重宝するという方だよ」

サクヤ「あと、体力面にもあまり自信がありません。
そういう部分ではシルビィやジュン達には負けています」

恭文「大丈夫ですよ、サクヤさん。RPGでも回復薬はそういうのがお約束で」

あむ「大丈夫じゃないじゃんっ! てゆうか、そのゲーム脳思考はやめなよっ!!」





(その様子を見て、司祭様はとっても楽しそう)





サクヤ「蒼凪さんとあむちゃんは、本当に仲が良いんですね」

あむ「はぁっ!? べ、別にあたし恭文の事なんてなんとも思ってないんですけどっ!!」

恭文「あぁ、サクヤさん気にしないでくださいね。あむは照れ屋だから、すぐこういう事言うんですよ」

あむ「違うからっ!!」

サクヤ「えぇ、それは見ていて分かります」

あむ「だから違うんだってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





(司祭様はニコニコ。蒼い古き鉄はニヤニヤ。そして現・魔法少女はタジタジ)





サクヤ「というわけで、私のお話は以上なのですけど・・・・・・大丈夫でしょうか」

恭文「はい、大丈夫です。サクヤさん、今日はありがとうございました」

サクヤ「いえ。それで次回はこの続き・・・・・・ですね」

恭文「えぇ。・・・・・・でも、マジでどうしよ。普通にやってもみんな敵に回るしなぁ」

あむ「あー、そうだよね。普通に攻撃しても親和力で信仰者にしちゃえばいいんだし。
そんなチート満載な敵を相手に恭文達がどうするかを期待しつつ、本日はここまで」

恭文「お相手は蒼凪恭文と」

サクヤ「サクヤ・ランサイワと」

あむ「日奈森あむでした。というか、これだとサクヤさん・・・・・・敵になっちゃいますね」

サクヤ「そうなんですね。困りましたわ、どうしましょう」

あむ「そんなほんわか口調で言う事ですかっ!? それは絶対おかしいですからっ!!」










(それでも司祭様はほんわかほわほわ。それに現・魔法少女はやっぱりタジタジ
本日のED:FLOW『CALLING』)




















恭文「・・・・・・というわけなの」

???『・・・・・・待て。恭文、お前正気か? そんなバカな事があるわけないだろ。
公女が管理局へのクーデターを企てていて、その影響を僕達が受けかけている?』

???『そうだよ。それになにより、そんな無茶苦茶なレアスキルがあるわけが』

恭文「ありえないことはありえないでしょ。・・・・・・てーか、二人ともマジで経験豊富な魔導師?
ロストロギアやらレアスキルやらが常識外でぶっとんでるのは、いつもの事でしょ」

???『そこを言われると・・・・・・弱いな。恭文、僕からもう一度聞く。それは事実なんだな?』

恭文「現時点でアレクの証言しか取れてないですけど、確定だと思います。
現に僕、親和力らしき能力の影響を受けかけたんです。まぁ、なんとか跳ね除けましたけど」

???『つまり実情はどうあれ、親和力と思しき力があるのは確かと。
そしてそれは、パーティーの際の公女だけに感じたものではない』

恭文「えぇ。アレクと居る時にも同じ感覚を覚えました。
で、親和力があるのが確定とすると、公女の今までの行動も怪しくなってくるんですよ」

???『確かにそうだな。公女が能力の事を知らないとは、僕にもどうしても思えない。
そして親和力というキーワードがあると、僕達が今まで疑問に思っていた謎が解けるのも事実』

???『あの、ちょっと待って。話の腰を折るけど、私は一つ疑問があるの。
・・・・・・ヤスフミ、跳ね除けたってどういう事かな。なんでそんな事が出来るの?』

???『・・・・・・そう言えばそうだな』

???『親和力の能力の幅を考えるに、そんなの普通の方法だと絶対に無理だよね』

恭文「そこに関しても説明する。とにかく・・・・・・増援なりアレクの身柄保護なり、なんとかなりませんか?
こうなってくると、EMPDや中央本部も信用出来なくなってくるんです。いや、それに関しては本局も同じ」

???『親和力の影響を受ければ、必然的にこちらの敵に回るからだな。
・・・・・・本当に厄介な事になってしまった。真面目に世界の危機じゃないか』










(おしまい)







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