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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Report04 『Starlight and flash purification』



ある意味では衝撃的とも言える出会いだった。

私より身長が頭一つ分くらい小さな男の子は、あっという間に職場に馴染んだ。

まぁうちの職場は濃いのが揃ってるから、そういうのもあるのよね。





それで私は実は・・・・・・まぁ、世話役というかそういう感じの役回りを補佐官から頼まれてる。

あの子と積極的に絡んでいくのには、そういう理由が主なのよ? うん、やましい感情とかじゃないんだから。

それになにより本命が居るんだし、そういう色っぽい事にはならないなーと思いつつ、この子と歩く。





でも運命の出会いに遭遇するのは、やっぱり難しいなぁ。私、どうしようかしら。

ここに来てから悲しくて報われない恋に慣れっこになってしまったのは・・・・・・ちょっとだけ辛いな。

もちろんそういうのも素敵だと思ってる。その中で大人の階段を昇った事も後悔はしてない。





でも、それでも・・・・・・ちょっとだけね。やっぱり私、白馬の王子様に抱きしめられたいもの。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フジタさん」



あのオーディションの翌日、蒼凪が小さめのダンボールを持ってきた。それも朝一番で。普通に俺はビックリする。



「蒼凪、なんだそれは。というよりお前、今日はシルビィと待ち合わせだろうが。そろそろ出ないと遅刻するぞ」

「いや、出かけようと思ったらなんかEMPDから届け物らしくて・・・・・・よっと」



それを俺の個人オフィスの机の上に置く。そして俺を見る。

俺が頷いて答えると、蒼凪はそのダンボールを開いた。



「中身は・・・・・・書類ですね」

≪というか、なんですかこれ。・・・・・・ポータブルキャノン?≫

「ポータブルキャノン? なんだそれは」



俺は気になってすぐさま資料を右手に取る。そして目を通す。・・・・・・なるほど。



「緊急時に使用する、バッテリーを利用した荷電粒子砲だな」





なお、名前の通り携帯性の強い武装になっている。大きさも1メートル前後だな。

砲身のサイズは丸みを帯びて人の胴体くらいの太さがある。

そしてその後部に、白いタンク型のバッテリーが二つ搭載されている。



専用のターレットレンズを右目に装着して、両手で抱えて撃つという仕様のものだ。





「・・・・・・僕の知り合いの管理局員連中が聞いたら、悲鳴あげそうだなぁ」

「なんだ、お前は魔法無しで戦闘出来るのに、知り合いはそれなのか」

「それですね。ただ、あんま無理も言えないんですよ。
次元世界全体で、質量兵器アレルギーにかかってますから」

「アレルギー・・・・・・なるほど、言いえて妙だな。確かにあの反応の数々はアレルギーだ」





なんでもヴェートルのような科学技術が発展した世界が、いくつも滅びた歴史があるらしい。

原因は質量兵器。なお、次元世界では質量兵器は『魔法技術に依存しない兵器』という認識らしい。

魔法とそれとのハイブリッド兵器なんて言うのもあったらしいが、それも同じくだな。



それを聞くと管理局の徹底した魔法至上主義も少し納得が出来る。

人は・・・・・・歴史は同じ間違いを繰り返す。それは既に証明されていることだ。

それに歯止めをかけたいという気持ちは、評価していいものだと俺は思う。



俺達がその道を進まない保証など、どこにもないのだから。・・・・・・この辺りは命題だな。

俺達が本当に自分達の世界を守ろうと思うなら、絶対にクリアしなければならない。

そうだな。管理局から、次元世界から学ぶべき所はまだ沢山ある。



魔法至上主義さえも、もしかしたらそれかも知れない。





「でも、どうしてその資料がGPOに?」

「こちらでテストをして欲しいそうだ。だが・・・・・・どうやらこれは色々問題があるらしい」

「問題?」

「総重量が100キロ以上ある」



・・・・・・蒼凪が固まった。というより、若干呆れている。

まぁそうだな。この重量は、全くポータブルではないだろう。



「そして発射時の衝撃が凄まじい。その重量分の負荷が使用者にかかるとか」

「・・・・・・あの、それは普通に戦車とかに搭載した方が良いんじゃ」



蒼凪、奇遇だな。俺も資料を読んで、全く同じことを考えた。



≪というより誰がテストするんですか? こんな無茶なもの、使える人間が居ないでしょ。
まぁ、相当剛力な魔導師とかならともかく・・・・・・あなた、やります?≫

「やめとく。でもこうして資料が来たって事は、こっちの人員でテストして欲しいって事ですよね?」



蒼凪の言葉に俺は頷く。だから蒼凪の表情が、更に疑問の色を強める。

つまりだ。そういう人員の宛てがあるから、わざわざ開発中の武器の資料を届けたと思っている。



「これのテスト・・・・・・ジュンですか? パワータイプのパワードスーツ使うとかって言ってましたし」

「外れだ。実はな・・・・・・シルビィなんだ」

「え? いやいや、ちょっと待ってくださいよ。シルビィがどうして」

「そう言えば、お前には説明していなかったな。シルビィはレアスキル保有者だ」

「はぁっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・超筋力開放?」



元々シルビィから『話しても問題ない』と言われていたとかで、あっさり教えてくれた。



「あぁ。一種の遺伝性スキルらしい。シルビィの家系は、全員使えるそうだ」



超筋力開放。それがシルビィのスキル。なお、内容は読んで字のごとくです。



「シルビィはその技能を用いて、魔導師の強化魔法などを遥かに上回る怪力を発揮出来る」

「なるほど」



それを使えばこのバカ兵器もテスト出来ると。うん、納得したわ。



「組み立て自体はまだらしいが、それもこっちがGOサインを出せば五日程で出来上がるとか」

「じゃあ、それが出来てからテストお願いしますってことですか」

「正解だ。よし、これは俺からオーケーと返事しておこう」



そう言いながらフジタさんが、デスクからはんこを取り出そうとする。それを見て・・・・・・少し考えた。



「フジタさん、なんなら僕の方からシルビィには伝えておきましょうか? どうせこれから会いますし」

「そうだな・・・・・・よし、頼めるか? 詳細は俺から伝えておくので、差し障りだけでいい。
あとはお前からも、体調管理をしっかりしておくようにとだけ言っておいてくれ」

「了解です。あ、そういうわけで行ってきますね」

「あぁ、気をつけてな」










とにかくポータブルキャノンのテストは引き受けることになった。





僕は急いで分署から出て、昨日から視線が厳しいリインを気にしつつ、僕は街に飛び出た。





青い空を見上げると・・・・・・空の中には、白い月がしっかりと見えていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「全く・・・・・・EMPの観光案内がしたいならしたいと、なぜ昨日のうちに言わないのさ」



急なシルビィのお誘いで来てみた所は、映画館。なお、もう普通に見終わった直後。

あれからギリギリでここに到着して、シルビィに連絡事項を伝えてから映画鑑賞に入った。



「あら、デートコースを細かく説明したら、楽しみがなくなっちゃうじゃない」



そしてここから、EMPの観光・・・・・・え、ちょっと待ってっ!? 今気になるフレーズ聞こえたんですけどっ!!



「え、これデートなのっ!?」

「えぇ」



・・・・・・ま、いいか。フェイト以外の子とデートとかって、してないわけじゃないから。

すずかさんとかシャマルさんとか美由希さんとかに・・・・・・あれ、なんか泣きたくなってきた。



「でも、よかったなぁ。・・・・・・あぁ、やっぱり憧れるわ」



今日見た映画は古典的な恋愛映画。なお、結構古め。

でも、そこは僕も同感。古典的だけど、だからこその良さがある。



「なんかさ、主人公とヒロインのすれ違いがたまらないよね」

「でしょでしょ? 今みたいに携帯用の通信機器が無かった時代のお話だから、そういうのが切ないのよー」

「すれ違ったらすれ違いっ放しで、だけど互いの心は想い合ってて。
・・・・・・今が舞台じゃ、ああいう話は書けないだろうなぁ」

「今は携帯なりメールなりで、即座に連絡ーってしちゃえばいいものね」



なんて話しながら、劇場の外に出る。・・・・・・今日は一日中とってもいい天気。

見上げた空は、映画館に入る前と同じ青空だった。



「待ち合わせ場所に来るかなー、来ないかなーって言うのも、余りないわよね」

「連絡取り易いもの。しゃあないよ」



普通にメールだったり通信だったりで確認出来るしなぁ。

なんというかそういうデジタルな部分が、アナログな部分の良さを奪ってるのかも知れない。



「まさしく作品・・・・・・創作物の中だけの恋になっちゃってるのよねぇ。・・・・・・ちょっと寂しいわね」

「でも、仕方のないことなのかも。ほら、今の常識だって50年後にはそうなってるかも知れないよ?」

「確かにそうね。なら、今出来る恋を一杯しなきゃ。うんうん」



なんか、気合いの入り始めたシルビィの後を追うようにして、僕達は街を歩く。



「そういやさ、シルビィ」

「なに?」

「工業地区の方に見えるあのでっかい黒いのって、なんなの?」





ここは市街地だけど、それでもちらちらと見えるのは巨大な丸型の建造物。

EMPに来た時から気にはなってたんだけど、早速バトルとかですっかり忘れてた。

あ、今更だけど説明。EMPは幾つかの区画に分かれた超巨大都市でもあるの。



今僕達が居る商業区にEMPDが立っている行政区。そして住宅区。

EMPと同様の浮遊都市からの荷物を持った船が出入りする港湾区。

工業設備の密集地である工業区。あとは中央本部・・・・・・入管区。



基本ヴェートルへは、本局からの転送ポートを使う。だから中央本部は、入管区画でもあるの。





「あぁ、あれはサードムーンよ」

「サードムーン?」

「簡単に言えば外宇宙開発用の巨大船。この世界では、宇宙開発が本当に盛んなの」



それは知ってる。だって月面にコロニーなんてあるくらいだもの。でも、すごいよなぁ。

あぁ、行ってみたいなぁ。とまとも色々行きはしたけど、宇宙はまだないしさぁ。



「じゃあその宇宙開発のための・・・・・・でも、あれ船なの?」

「一種のコロニーも兼ねてて、長期間の居住も考えられてるの。
それで実験的に乗組員の精神安定効果を増幅しようとして、あの形とか」

「なるほど。球体状で惑星を模ってるんだね。中々ユニークな発想だ」

「でしょ? でも、あれを見ただけじゃあ宇宙船だなんて考えられないわよね」



少しおかしそうにシルビィが笑う。・・・・・・普通にシルビィはよく笑う子だ。

恋愛に関して暴走気味になるところはあるけど、それでもシルビィは魅力的な方だと思う。



「さて、そろそろ次の目的地に着くから、ちょっと頑張ってもらうわね?」

「え?」

「最近忙しくて、中々買い物出来なかったのよ。
でも、今日はヤスフミも居るから多少買い込んでも大丈夫」

「おのれ、人を荷物持ちにするために連れて来たんかいっ! あぁもう、話がおかしいと思ってたよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・で、どっさり買い込むと」

「当然よ」

「何がどういう具合に当然か、真面目に色々と聞きたい」



デパートの中、普通に荷物持たされてます。で、シルビィは当然手ぶら。

靴に服に日用品に・・・・・・この女、どんだけ買い物してんのさ。



「てーかこれ、普通に持って帰れるの?」

「え、当然家まで持ってきてもらうつもりだけど」



振り返り、なんかアッケラカンと言ってきた。その様子を見て、僕は少し頭が痛くなる。



「・・・・・・待て待て。普通に初めて会ってから時間も経ってない男を家まで連れてくって、ダメなんじゃ」

「問題ないわよ。いかがわしいことしようとしたら、撃つし」





お願いだからにっこりと笑顔でそんな事を言うな。うん、分かってる。すっごい分かってる。

具体的には、Yシャツ着てネクタイ締めてスカート履いてる今の姿に騙されちゃいけないとか?

この女、外から目立たないように銃を携帯してるし。歩き方とかで分かるもの。



まぁ、普通に僕も武装してるけどさ。腕とか背中とか腰とかに色々と。





「大丈夫。そうしたら僕はその銃弾を斬り払うから」

「そんなこと出来るのっ!?」

「うん。もち魔法なしで」



さすがにガトリンクとかあっち系は無理だけどね。



「でもそれは・・・・・・中々にスリリングね。私の銃弾とあなたの剣術の対決かぁ」

「そうなるね。で、勝った方の言う事を聞くと。まずいね、普通になんかの映画のノリだ」

「・・・・・・・・・・・・自分ら、何を平日のデパートの中でとんでもない会話かましとるんや」





声は後ろから。そちらを見ると一組の男女が居る。でも、一般人じゃない。

額には白の鉢金を巻き、白を基調とした和服チックなデザインの制服を着ている。

動きやすそうで普通に組み手とかも出来そうな服を着ている男女は、呆れたように僕達を見る。



女性の方は栗色のソバージュの髪。気が強そうで、今話しかけてきたのはこっち。

男性の方は黒髪短髪で、温和な感じ。身長はシルビィと同じくらいか。

で、女性を見てシルビィがビックリして1歩引いた。というか、ちょっと警戒してる?



待て待て、なんかシルビィとこの二人との間では色々通じてる感じだけど、これはなに。





「い、維新組っ! こんなところで何してるのっ!?」

「アホ、仕事に決まっとるやないか。で、いきなり不振な会話をし出す二人組を見つけたから声をかけただけや」

「正確にはこのデパートの設備点検ですね。我々はたまたま通りがかったんですよ」

「シンヤッ! 余計な事は言わんでえぇっ!!」

「な、なるほど」



維新組? ・・・・・・あぁ、EMPDが設立したって言う、GPOと中央本部のライバル組織。

確かすっごい過激で容赦がないので有名だって、サリさんが言ってたっけ。



「シルビィさんはお買い物・・・・・・いえ、デートですか?」

「はい」



あ、なんか迷い無く言い切った。ちょっとビックリしてると、シルビィが僕を見てウィンクした。



「シンヤ、からかったらあかんて。・・・・・しかし、自分にこんな可愛い弟が居たとは」

「「え?」」



あぁっ! こっちの人は思いっきり僕を子ども扱いしてるっ!? てーか、なんか目が優しいんだけどっ!!



「レイカさん、ダメですって。彼、あの古き鉄なんですから?」

「はぁ? シンヤ、自分バカ言うたらあかんって。こんな子どもがあの凶悪魔導師なわけが」



で、『レイカ』と呼ばれた女性は『シンヤ』と呼ばれた男性をジッと見る。で、男性は真剣な顔で頷いた。

女性の方がビックリした顔で僕とシルビィを見るので、頷いた。・・・・・・僕、どんだけ?



「・・・・・・局はこないな子どもまで戦わせとるんか。全く、これやから次元世界の人間は」

「あの、この子17歳ですから」

「嘘やっ!!」



・・・・・・レイカさんという人が色々とカルチャーショックを受けて、ようやく自己紹介に入れた。

いや、長かった。普通にここに来るまで長かったよ。



「とにかく・・・・・・うちはレイカ・ミドウ。維新組の総大将や」



総大将? ・・・・・・なるほど、納得した。だって普通に強そうだし。

仮に今この場で襲ったとしよう。多分不意打ちでも一撃では仕留められない。



「僕はシンヤ・ソウマ。蒼凪さん、これからよろしくお願いしますね」

「はい、よろしくお願いします。・・・・・・うーん」

「どうしました?」

「僕達、目立っているなと思いまして」



シルビィとレイカさんとシンヤさんがハッとした顔になる。で、周りを見渡す。

・・・・・・気づいてなかったんかい。僕達、思いっきり注目集めてるし。



「全く・・・・・・GPOのおかげで、客寄せパンダになってもうてるやないか」

「私達のせいじゃないわよねっ!?」

「やかましいっ!! ・・・・・・シンヤ、そろそろ行くで。あぁそうそう、古き鉄」



いや、僕には名前・・・・・・あぁ、もういいや。



「なんでしょ」

「うちらの邪魔するなら、容赦せぇへんで。この街はEMPDとうちら維新組が守るんやからな」



ほう、いきなり警告ですか。これは中々に楽しいねぇ。なので・・・・・・遠慮なく僕も、かます。



「いやだなぁ、それはこっちの台詞だよ。邪魔するならぶっ潰す。僕にも通さなきゃいけない道理ってのがあってね」

「まぁそうやろうな。自分は次元世界の人間」

「違う。・・・・・・局もGPOも、次元世界もどこの生まれかなんて事も一切関係ない。
つーかそんなのにいちいちこだわるなんざ、ケツの穴が小さい女だね」

「なんやとっ!? 自分、随分言うてくれるやんかっ!!」

「言うさ。僕が自分で通すと決めた事だ。だからここに来て、アンタの前に居る。
それの邪魔なんて、お前達にも管理局にも絶対させない。だからもう一度言うよ?」



不敵に笑って、厳しい視線を受け止めつつ軽く返しながら・・・・・・言い切る。



「僕にケンカ売るなら、みっともなく地べたに這いつくばる覚悟くらい決めてから来い」



そう言い切るとと、目の前の女性は納得したように笑った。



「そうかそうか。なら、そん時が来るのを楽しみにしとこうか」



で、そのまま歩き出す。振り返らずに、凛々しく足音を鳴らしながら。



「あぁ、レイカさんっ!! ・・・・・・では、シルビィさんも蒼凪さんも、ごきげんよう」

「シンヤッ!!」

「はいはい、今行きますよー!!」



そのまま、二人はデパートの中へと消えていった。・・・・・・しかし、目立つなぁ。

モーゼの十戒の如くサーって人ごみが割れて、道が出来てるもの。



「・・・・・・今日は初対面だから、優しかったわね」



シルビィが少し驚いたように呟いた。で、僕はシルビィの方を見上げる。



「いつもはもっと厳しいの?」

「えぇ。私達、完全に目の敵にされてるから。・・・・・・この世界の人達は、管理局やGPOの保護から『独立』したがってる。
そして維新組は、ヴェートルのみんなが持っている『独立』の意志そのものを具現化していると言ってもいいわ」

「納得した。なんかこう、次元世界の人間に対して敵意・・・・・・あ、違うな。
ライバル心がありありと見られたもの」



特にあの総大将のレイカさんだね。一応、公共の場だから抑えてたけどさ。

もう一人のシンヤさんは・・・・・・まぁ、結構普通かな。



「そうね。そのライバル心ゆえの学習への意欲の高さが、中央本部を出し抜き続けている要因よ」

「あと・・・・・・強いよね」





二人が歩いていった方を見ながら僕は言葉を続ける。・・・・・・やっぱ楽しめそうだ。

なのはやフェイトと言うより、恭也さんや美沙斗さんタイプかな。

一種のパワードスーツというか、そういうのを使ってるらしいけどそれでも。



魔法や能力に依存せず、自らを磨き上げた武芸者。そういう空気が二人にはあった。





「えぇ、すごく強いわ。あの二人だけじゃなくて隊長陣は言うだけの実力がある。
あなたがそういうの強いのはもう知ってるけど・・・・・・それでも強敵よ?」

「そう」

「でもヤスフミ・・・・・・あの挑発は下品だしセクハラになるからやめない? ほら、まだお昼だもの」

「あ、やっぱり?」

「やっぱりよ」










まぁ、現場で下手に衝突するような真似はやめておきますか。





異星人だからどうこうで喧嘩なんて、やっぱり馬鹿馬鹿しいししさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



買い物を終えて、現在僕は・・・・・・シルビィとお食事タイム。





二人で美味しいパスタに舌鼓を打ちつつ、今日のお話。










「・・・・・・でも、ホントにありがとね。付き合ってくれて助かっちゃった」

「いいよ。こっちも色々観光させてもらったしさ」



でもこの展開、おかしいって。なんでいきなりデートなんだろう。

時間は夕方だからまだいいけど、それでもだよ。



「でも、この場を奢りって」

「いいから。せっかく荷物持ちしてくれたし、ちゃんとお礼したいの」

「そっか。なら、お言葉に甘える」

「うんうん。人間、素直が一番よ?」



・・・・・・あー、でもいい匂いだぁ。というか、美味しいなぁ。

僕はカルボナーラでシルビィはボンゴレ。普通にレベルが高くて僕は嬉しい。



「でも、よくよく考えたら車は? ほら、あの赤い車」

「あぁ、あの子は今日から車検なの。車自体は昨日帰る時にお店に預けちゃって」

「納得した」



ここは10階建てのビルの最上階にあるお店で窓際の席。だから、とても景色がいい。

差し込む夕暮れが綺麗で、見惚れてしまって少し手が止まってしまう。・・・・・・なんかいいなぁ。



「・・・・・・ヤスフミって、結構デートとかって慣れてる?」

「へ?」

「色々言いながらもちゃんとお約束は守ってるから。自分が車道側を歩いたり、私に歩幅を合わせたり」



シルビィが楽しそうな顔で僕をジーッと見ながら、そう聞いてきた。僕はそれに頷く。



「慣れてるかどうかは分からないけど、知り合いのお姉さんとかに、よく連れ出されてたから」



シャマルさんとか美由希さんとかすずかさんとか。・・・・・・頭、痛い。

あれ? 僕は本命とのデートの回数より、なぜこっちの方が多いんだろうか。



「ふーん、意外とプレイボーイなんだ。まぁリインちゃんがあんな調子だから、当然なのか」

「いやいや、プレイボーイじゃないから。僕、モテたりとかしないよ?」



うんうん、真面目にモテたりとかしてないって。シャマルさんとかは色々おかしいだけだって。

まぁすずかさんはその・・・・・・ちゃんと答えてるけどさ。さすがにそれをいい加減に対処は、躊躇う。



「怪しい。・・・・・・でも今日みたいな調子なら、合格点かな」

「え、知らない間に試されてたのっ!?」

「当然よ」










何がどういう具合に当然か、僕にはよく分からない。でも、シルビィにとっては当然らしい。





だってどこか嬉しそうにしながら、またパスタを食べ始めたから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時刻は夜の6時。ここは昼間に説明したEMPの住宅区の一角。

というか、シルビィが暮らすマンション・・・・・・訂正。シルビィの部屋のドアの前。

シルビィの荷物を部屋の中に運び込んで、僕はお暇するところである。





『お茶でも』と言われたけど、遠慮した。さすがにちょっと躊躇うのだ。










「・・・・・・減点ね」

「いきなりなにっ!?」

「当然よ。女の子の誘いを断るなんて、アウトなんだから」

「やかましいわボケっ! さすがに一人暮らしの女の子の部屋に入るとか躊躇うのよっ!!」



フェイト・・・・・・はOKだけど。だって、一緒に暮らしてたんだから。



「ごめん、冗談よ。・・・・・・でも、ホントにありがと。帰り大丈夫かな」

「うん。アルトにナビもしてもらうし、観光がてらのんびり帰るよ」

「そっか。じゃあ気をつけてね。今日はとっても楽しかった」



言いながら微笑むシルビィが、普通に綺麗に見える。・・・・・・僕も微笑みを返しながら頷いた。



「うん、僕も。シルビィ、誘ってくれてありがと。じゃあ・・・・・・また明日ね」

「えぇ、また明日」










そのまま手を振りながら僕は歩き出す。シルビィは、見えなくなるまで手を振っててくれた。

僕は空を見上げる。空の上にはとても大きくて、神々しく輝く白い月。

EMPに来てあんまり経ってないけど・・・・・・なんか、楽しくなってきた。





素敵な出会いに面白そうな世界。それに胸がワクワクしまくって、その日は遅くまで眠れなかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミが帰った後、私は服や靴を整理中。そうしながら今日一日の事を思い出す。なんか楽しかったなぁ。

まぁ向こうは本命持ちだし、そういう色っぽい展開にはならなくて当然よね。でも、今日一日で色々と印象が変わった。

あの子、ちゃんと男の子出来る。一緒に居て男の子として女の子を守って、リードして・・・・・・なんでなんだろ。





そんな子に何度も『好き』って告白されて、どうして7年スルーなんて出来るのかしら。

白のワンピースをハンガーにかけながら、更に思う。やっぱり辛いだろうなと。

というか、辛くないわけないか。執務官の仕事って忙しいから、距離だって開いてるだろうし。





これでも元局員。色々とその辺りは、分かってるつもり。・・・・・・うーん、どうしよう。

別に好きになったとかじゃないけど、今の状況であの人の話をされたりするの、ちょっと嫌だな。

だってこの場にはあの人は居ないから。居るのは、私だったりみんなだから。





・・・・・・アレ、これはダメね。なんだか普通に好きになったみたいな言い方じゃないのよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・姉ちゃん、ようやくだな」

「あぁ。予定よりも数は集まらなかったけど、それでもだよ」










まぁしゃあねぇか。GPOの奴らが色々邪魔するし、俺達主催のファイトクラブも潰されちまったしよ。

ただ、それでもだ。それでも・・・・・・やれる。けけけけけ、連中が泡吹くのが目に浮かぶようだぜ。

コイツらは侵食する。俺達の一部を分け与えて出来た兄弟達だからな。





EMPを侵食し、腐らせる。そうなったらもう取り返せない。これでEMPはおしまいだ。




















『とまとシリーズ』×『メルティランサー THE 3rd PLANET』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々


Report04 『Starlight and flash purification』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてそれから丁度五日後。現在僕は分署で待機任務中。





ところで話は変わるけど、神も味方もGPOには全く居なかった。





だからロビーで端末を開いて、書類仕事をしつつ・・・・・・お話タイム。










「でもヤスフミって、肌すべすべよね」



言いながら左隣に居るシルビィが右手を伸ばして、僕の頬を撫でてくる。

え、えっと・・・・・・なぜコレ? いや、普通におかしいから。



「うーん、お肌のケアとか特別してないんでしょ? なのにこれはずるいわよ」

「そ、そう言われましても・・・・・・てーかシルビィ、お願いだから仕事をして」

「あら、ちゃんとしてるじゃないの。その合間にヤスフミのほっぺたを触って頑張ってるの」



待機任務なのはシルビィも同じ。そして・・・・・・あと一人も同じく。



「むー! シルビィさんは恭文さんとイチャイチャし過ぎですっ!!
自重してくださいっ! ヤスフミさんとイチャイチャしていいのは、今のところリインだけですよっ!?」

「だーめ。私だってリインちゃんと同じくらいに、ヤスフミと仲良くなりたいんだもの。
ね、ヤスフミだってそう思ってるわよね? だから、私の手を振りほどいたりしない」



何勝手に解釈してるっ!? てゆうか、普通に二人とも顔を近づけるなー! ここ仕事場だからっ!!



「落ち着けー! とにもかくにもお前らは二人揃って落ち着けー!! 僕、本命居るんだからねっ!?」

「大丈夫。私、男の過去は気にしないから。というか、影のある男の子はタイプよ?」

「ですです。リインも第二夫人で充分ですよ?
恭文さんのお嫁さんになれるだけで、リインはとってもとっても幸せなのです♪」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうかまず仕事してっ!?
まず仕事してくれませんかねっ! 話す前にまずそこからでしょっ!!」



なんて叫んでいると、次の瞬間に通信がかかった。

それをシルビィは慣れた手つきで繋ぐ。画面の中には・・・・・・ジュン?



『こちらカミシロっ! シルビィ、恭文とリインと一緒にすぐ来てくれっ!!』

「ジュン、助けてー! シルビィとリインが僕をおもちゃにするー!!」

『悪い、助けて欲しいのはこっちなんだよ。それも相当』

「ジュン、どうしたの? というか・・・・・・あの、後ろが真っ青なんだけど」



これ、港湾区の一角かな。何かこう妙なのがひしめいてて、それで建物がどんどん青くなってく。

変色されていくというか侵食されていくというか・・・・・・あの、これは何?



『妙な奴ら・・・・・・いや、生体兵器がEMP港湾区の建物や地表と融合して侵食し始めてんだよっ!!』

「はぁっ!? 侵食って・・・・・・どういう事よっ!!」

『こっちも分からないよっ! ただ、コイツらの侵食のせいでEMPのメインサーバーにも障害が出始めてるっ!!』



・・・・・・ちょっと待ってっ! ただ地表に侵食しただけでそこまでになるのっ!? おかしいでしょうがっ!!



『このまま侵食が進めば・・・・・・遅くても数時間後にEMPは丸々海に落下する危険性もあんだよっ!!
今港湾区はあたしらだけじゃなくて、EMPDも中央本部の魔導師隊も総出の大騒ぎに発展しちまってるっ!!』



ここが海に落下? とりあえずどうなるのかと思いシルビィに聞こうとした。

だけど聞く必要は無かった。シルビィの顔が、ジュンの言葉で真っ青になったから。



『とにかくお前らもすぐに来てくれっ! ぶっちぎりで手数が足りないんだっ!!』

「了解、今すぐ三人で急行するわ。・・・・・・ヤスフミ、リインちゃん」

「分かってる。すぐに出るよ」

「はいです」










てゆうか、なんなのコレ? 普通に無いでしょ。ありえないって。





・・・・・・そう言えばジュンはどうして『生体兵器』って断定出来たんだろ。何か解析でもしたのかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「補佐官、あの青いのってやっぱり」

「あぁ。アルトアイゼンが撮影したデータと完全に特徴が一致している。
アレら全てが・・・・・・ストリートファイターの参加者だ」





港湾区の一角、ここは他のエリアとの境目に設置したGPOの前線基地。

・・・・・・まぁ、俺が普段使っている指揮車周辺の事なんだが。

とにかく隣で青い顔をしているパティの言葉に俺はそう答えた。



カミシロとアンジェラとナナは、前線で防衛ラインを維持してもらっている。

カミシロとアンジェラが生体兵器を殴り、ナナが魔法で一気呵成に焼き払う。

動きは遅いが身体能力も並以上ではあるようだ。だが、三人の敵ではない。



ただし数が非常に多く、どこぞのスプラッタ映画のゾンビの如き数なので苦労している。



そして俺達二人は後方支援だ。現場に到着してから今まで、生体兵器の解析を急いでいた。





「察するにアレを造るためにストリートファイター達をさらっていたんだな。
だが、これはどんな技術だ。人を無機物に侵食させる兵器に変えるなど聞いた事がない」

「アイアンサイズが自分達の能力を利用した・・・・・・でしょうか」

「・・・・・・なるほど。パティ、いい着眼点だ」





連中の能力も考えようによってはアレと同系統だ。まぁ、能力自体はダンチだが。



つまり自分達の身体の技術を活用して、これらを製造したのか。



連中の後ろ盾をしている奴ら、俺やEMPDに管理局が思っている以上に黒いのかも知れん。





「でも、許せない。人の命を・・・・・・EMPに住む人達を、一体なんだと思ってるのっ!?」

「ゴミ程度にしか思っていないんだろうな。まぁ、そこは気にする必要もないだろ」

「補佐官っ!!」

「こういう事をやる犯罪者は、往々にしてそういうものだ。
・・・・・・パティ、冷静になれ。今は甘ったるいヒューマニズムなど必要ではない」



俺は隣に居るパティに視線を向ける。パティは怒りと困惑に満ちた顔をしていた。

パティは優しい子ではあるから、どうしてもこうなるのは仕方ないのだろう。



「こういう時にイチイチ相手の行動に怒っていては、キリがないぞ」



だが、それでも俺はそれを咎める。今はまだいい。後方支援に徹しているのだから。

しかしこれが前線で敵とやり合っている最中だったら、確実に隙だ。



「そんな事では足元をすくわれるだけだ。パティ、今後もこの仕事を続けたいなら一つ覚えておけ。
現場に出たら何があろうと一欠片も動揺するな。冷静且つ揺らがぬ鉄の意志を持って、対処に当たれ」



心の中で少し苦笑してしまう。かく言う俺が動揺している部分があるのに、これは偉そうだと。

だが、犯罪者は狡猾であり姑息。ヒューマニズムのせいで動揺など、戦う時にするべきではない。



「・・・・・・はい。補佐官、すみませんでした」

「謝る必要はない。さて、どうしたものか」

「現状ではEMPDや魔導師隊と連携を取っての殲滅しかないと思います。元に戻すのは、恐らく無理でしょうから」



生体兵器は完全に自我を失くした自動戦闘マシーンと化している。当然説得も無理だ。

アイアンサイズは完全無欠に、さらった連中をただの捨て駒として扱っているというわけだ。



「そうだな。そしてそんな時間はない。・・・・・・腹立たしい事にな」





とにかくこのままアレらの数を減らしてもらうしかない。幸いな事に今のペースならそれは可能だ。

パティも前に出してしまえば『アレ』を装着して俺も前に出れるが、それは無理。

そうなると指揮を取る人間が居なくなる。いや、パティにそれを任せ・・・・・・ダメだな。



そんな事をすれば、俺に疑いを持たれる。それでバレたらどうする。



どちらにしても前線任せになるのは決定か。なんというかこういう時は実にハラハラする。





『補佐官、聞こえるかっ!?』

「カミシロ、どうした」

『ヤバイぞ。なんか連中・・・・・・自己増殖始めてる』

「「えぇっ!?」」



すぐに俺は事前に飛ばしていたサーチャーで全体の様子を確認。

そこからカミシロ達が戦っている前線ラインから既に汚染されたエリアも見る。



「・・・・・・カミシロ、今こちらでも確認した。確かに増えているな」



それで気づいた。汚染済みのエリアからまるで湧き上がるようにして、新しい連中が生まれてくる。



『だろ? あたしらも今気づいたんだけどさ』

「というか・・・・・・ど、どういう事ですかっ!? 増える要素なんてどこにもっ!!」



そこまで異常な発生スピードではないが、見る限り俺達の撃退速度よりは上。

つまり、このまま殲滅という手段はなくなってしまった。どちらにしろ圧し負ける。



「もしかしたら侵食した地表自体が何かの媒介・・・・・・土壌の性質を持つのかも知れん」

『だったらヤバいな。現時点でもかなりのエリアが侵食されてんだぞ?
そこから増援が延々大量生産ってわけかよ。・・・・・・うわ、マジでホラーだし』



くそ。自己増殖機能付きとは、また念入りな連中だ。



「ジュン先輩、局の魔導師隊の人達の中に広範囲砲撃とか撃てる人は」

『ダメだ。・・・・・・連中、全然役に立ってねぇんだよ。アレがストリートファイター達だってさっき通達したろ?
それで上の方から救助のために極力手を出すなとかなんとかって言われたんだろうな。もう援護程度にしか動いてないよ』

「つまり中央本部の魔導師の戦力は期待出来ない。
当然のように、そちらからの新規の増援も無理と。・・・・・・あの役立たず共が」





この状況に置いてもまだ手を汚すことを躊躇うのか。くそ、これだから非殺傷設定に甘えた奴らは。

その上俺達や同じように前線に出ているEMPDに、全ての泥を被らせるつもりか。最悪だな。

・・・・・・いや、落ち着け。本来であればこれが正しい形なんだ。俺達の世界は俺達で守る。



局や局の魔導師の力は必要最低限でもいい。だから考えろ。どうすれば今の俺達でそれを成す事が出来る?

全部を守るのは恐らく無理だ。ならば俺達は・・・・・・そして俺は何を守りたい。

手を汚す事実を恐れるな。例えそうしてでも守りたいものがあるなら・・・・・・それは背負うしかないのだから。



そして守りたいものは決まっている。それは、このEMPに住む全ての人間の平和と安全。



それになにより現場に出ている全ての人間の命と安全だ。こんな事で、誰一人死なせたくはない。





「カミシロ、1分だけ通信を切るぞ。少し集中して考えを纏める」

『・・・・・・アイディア、出すつもり?』

「あいにく俺には全部を何とかするような神アイディアは出せそうにない。だが、それでもやる」

『分かった。なら・・・・・・待ってるから。あと、多少の時間オーバーは大目に見るよ。こっちはあたし達で持たせる』

「感謝する」





それで通信を切って、瞳を閉じた。閉じて考える。集中して、あらゆる可能性を瞬間的に模索する。

まず・・・・・・現時点の魔導師連中を除いた上での対処が前提だ。

ここは文句を言わせるつもりはない。連中は現時点で役立たずなのだから。



その防波堤には市長になってもらう事にする。こういうのはあの人の十八番だ。

現場の俺達の証言もあれば、多少の無茶は許容してもらえるだろう。

そしてストリートファイターの連中を助けるのは・・・・・・無理だ。手段を模索する時間もない。



カミシロ達に重い物を背負わせてしまう事、そこだけが心苦しい。ここは後でフォローだな。

現時点でEMPの浮遊をコントロールしている、市内中央のメインサーバーに障害が出始めている。

おそらくあれらは、一種のウィルスなのだろう。物理的にその土俵に侵食するだけではない。



しかしコンピュータにまで障害を及ぼすとは・・・・・・本当に性質の悪いものを持ち出してくれたな。

どちらにしろこれ以上のエリアの侵食を許すことは絶対に出来ない。だが、現状維持も無理。

何よりカミシロ達とEMPDの前線メンバーの消耗の問題もある。時間は本当に限られているぞ。



その少ない時間で今の状況を覆せる一手・・・・・・おそらく、これだけだ。

現時点での侵食されたエリアは港湾区の一部。逆を言えば、他の区画にはまだ入ってない。

だからこそこれでやれる。もちろん事後の観測調査は必要だろうが。



俺は瞳を開けた。打つべき布石も見据えた上で、再びカミシロに通信をかける。





「カミシロ、聞こえるか」

『ジャスト1分。・・・・・・補佐官、時間ぴったりだよ』

「すまないな。予定ではもう20秒程早くするつもりだった。それで方針が決まったぞ」

『そっか。それで、どうするの?』

「・・・・・・侵食エリアを、パージする」



画面の中で生体兵器を一体右拳で殴り倒しながら、カミシロが驚いた表情を浮かべる。

だが、納得したように次の瞬間には頷いてくれた。それが少しありがたかった。



『パージって・・・・・・マジ? 局の連中、黙ってないと思うけど。
救助を前提とした指示を出したってことは、当然のように手を打つつもりのハズだし』

「そこの辺りはEMPの優秀かつ強引な行政スタッフに任せるさ。
すまないが準備が整うまで、防衛ラインの維持を頼む」

『了解』










さて、まだやることはある。まずは・・・・・・シルビィ達に連絡だな。





こちらに来る前に準備してもらう必要がある。いわゆる『こういう事もあろうかと』的なアレだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・港湾区をパージって、本気なのっ!?」

『はい。補佐官はそのための準備に入っています。
それでシルビィさん達には、すぐにEMPDの技術開発部に向かって欲しいんです』



シルビィの運転で例の生体兵器退治のために港湾区に向かっていると、パティから通信。

それで僕達はそう指示された。で、事情も聞いて全部・・・・・・納得した。



『というわけで、よろしくお願いします。もしかしたら無駄になっちゃかも知れないんですけど』

「ううん、大丈夫。万が一もあるだろうし・・・・・・私達は指示通りに動くね。パティ、補佐官にもよろしく」

『はい』



通信を終えて、シルビィがハンドルとアクセルをせわしなく動かす。動かして、交差点でUターン。

サイレンをけたたましく鳴らしながら、反対車線に入る。向かう先は当然、EMPD。



「・・・・・・あの連中、マジで見境なしかい。てゆうか、局の連中は何してるのさ」



僕、他の部隊とかで仕事する事も多いけど、こんなのありえないよ?

実質中央本部は対処を僕達に押し付けてるも同然じゃないのさ。で、自分達では手を汚さない。



「多分、普段EMPDとかと衝突も多いせいだと思う。そのせいで余計にこちらのやる事に反発してるのよ」



運転しながら、シルビィはとても苦い顔。・・・・・・ヴェートルが好きだから、色々感じてるんだと思う。

出来れば現状が良くなって欲しいな。多分シルビィみたいな子は、辛いだろうから。



「というかシルビィさん、パージってなんですか?」

「あ、そう言えばそこは細かく説明してくれてなかった。エリアを切り離すとかなんとかって何?」



車は猛スピードで走り続ける。というか、シルビィは何気に運転が上手い。

だから、普通に安心して乗っていられるのが不思議。



「あ、そうよね。・・・・・・パージというのは浄化を意味していて、EMP各エリアに備わっている機能。
今回みたいに復旧不可能な状態まで、EMPのエリアが損傷を受けた場合に備えての緊急策なの」

≪具体的にはどうするんですか≫

「そのエリアだけを切り離して下の海に落下させるの。そうして残りのエリアを守る。
もちろん区画や人員への被害の観点もあるから、おいそれとは出来ないんだけどね」

「なるほど。被害の拡大を防ぐんだね」



だから浄化と。それなら納得出来る。ただ・・・・・・だよね。



「今回の場合、生体兵器も一緒にだよね」

「そう、なるわね。あのね、ヤスフミ」

「何?」

「辛いなら下がってていいのよ? あなたは魔導師だもの。・・・・・・殺しなんて、嫌よね」



視線は目の前に向けたままシルビィがそう声をかけてくる。だから僕は・・・・・・首を横に振った。



「弱かったり運が悪かったり・・・・・・何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない」

「え?」

「僕の知っている凄く強くて優しい人がそう言ってた。だから、逃げないよ」



というか、少し安心した。シルビィはこれを『殺し』だと言い切った。その上で気遣ってくれた。

シルビィも言い訳しない人だって分かったから。・・・・・・うん、だから気持ちが固まった。



「ここで『魔導師だから』で言い訳して目の前の事から逃げたら、僕が嘘になるもの。
そんな事絶対に・・・・・・絶対にしたくない。全部抱えて、それでも進む。それに」

「それに?」

「殺しは初めてってわけじゃない」

「・・・・・・そう」



なんというか弾みで言ってしまった。でも、いいか。・・・・・・シルビィは局の魔導師連中とはまた違うしさ。



「あ、リインちゃんは」

「リインもついて行くですよ。というか、シルビィさんヒドいです。リインはついでですか?」

「あー、ごめんね。私、今はヤスフミの事しか目に入ってなくて」

「なんか色々とムカつくですー!!」

「こら、リインもジッとしててっ! 普通に車内で暴れたら危ないからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



何気にこの子、重いもの背負っちゃってるんだ。というか、それを話してくれた。

私も一応GPOの仕事の中でね、同じものを背負ってる。だから分かる。キツいって事はさ。

銃はシビアな武器だもの。撃って急所に当たれば、相手は死ぬ。うん、そういう武器。





とにかくここでそれを話してくれたということは、信用・・・・・・してくれてるのかな。

だとしたら不謹慎だけどちょっと嬉しい。うん、それはね。

というか私、何かだめだなぁ。どんどんこの子との距離が縮まってる。





それはもう自分でも怖いくらい。でも、別にいいかなとか思っちゃう自分が居るのが、また不思議。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



シルビィ達に連絡してから、俺は大忙しだった。というより、こういうのが俺の仕事だ。

まずは合法的に市長へ直接連絡を取り付け、事情説明とパージの許可申請。

そしてEMPDの技術開発部に話を通して、例の物の受け渡しを円滑にする準備。





市長からのパージ許可も即行で取れたので、ここは無事に片付いた。

未だに豆鉄砲しか撃たない局の魔導師連中にも連絡だ。

例え役立たずでも、巻き添えで死なせるのは望む所ではない。





連中もここに住居を構えて生活を営んでいる。だったら、それは俺達が守るべき存在。

命は命だ。生まれも、境遇も、過ごしてきた過去など関係ない。

俺達の本来の仕事はそんな命とそこから生まれる幸せや笑顔を守る事。だから、ここは絶対だ。





それはあの生体兵器も同じく。今から俺が命令を下し、実行するのは大量虐殺。

俺達全員の不甲斐なさと失態による犠牲者を、俺達の勝手で皆殺しにする。

それに関しては全員が分かっている。分かっているから、各々の行動が変わってくる。





俺の無茶苦茶な命令を信じ、前線で防衛ラインを守ってくれていたカミシロ達。

覚悟を決めて、それに同調して同じく守ってくれたEMPDの連中。

そして助ける方法はないかとどこかで考えながら、戸惑っていた中央本部の面々。





俺達はある一つの事実を受け止め、そこから何かを感じて行動・・・・・・いや、反応をする。

目的や根っこの部分の考えは別として、同じ人であるゆえに俺達の反応は似てもいるがやはり異なる。

とにかく準備開始から10数分。ようやく準備は終わった。あとは、端末のエンターを押すだけ。





一度カミシロ達にも防衛ラインから下がってもらった。当然だ。巻き込んでは意味がない。










「・・・・・・お前達、よく頑張ってくれたな」

「別に私達だけでやったんじゃないわよ。EMPDも頑張ってくれたし」



言いながら肩で荒い息をするのはナナ。どうやら、消耗が激しいらしい。

無理もない。なんだかんだで1時間近くは戦い続けてる。



「補佐官、EMPDも局の魔導師隊も安全区域まで離脱完了。パージ、いつでもいけます」

「了解した。・・・・・・それでは行くぞ。港湾区、エリアB7からA3までを・・・・・・パージ」





俺はエンターキーを押した。そうしてプログラムは実行される。

・・・・・・EMPの各エリアを接続している箇所には、爆薬が仕込まれている。

もちろん地表で多少のドンパチがあっても点火しないほどに深い位置にだ。



パージ時にはその火薬が点火・爆発する事で、EMPの区画を切り離す仕様。



だから当然、爆発音だったり振動のような物が響くはずなんだが・・・・・・それが全くない。





「・・・・・・補佐官、どうしたのだ? 何も起こらないのだ」

「プログラムはちゃんと働いてるよな」

「あぁ」



そこは間違いない。もちろん使用したプログラムは、EMP建造の折に作成された正式なものだ。

だが、それでも何も起きない。・・・・・・そこまで考えて俺は『やはり』と思いつつ舌打ちした。



「・・・・・・ダメだ。プログラムからのパージは敢行出来ない」

「えぇっ!? ど、どうしてですかっ!!」

「パティ、思い出してみろ。連中の侵食はEMPのネットワークにまで障害を及ぼしている」

「・・・・・・あ、そっか。侵食でメインサーバーにも障害が出ているから」

「その影響でこっちのプログラムが点火システムまで届いてない? おいおい、なんだよソレ」










カミシロが困惑した顔で言うのも無理はない。肝心要のそれが届かないなど、本来ならあってはならない。





・・・・・・まさかアイアンサイズの奴ら、こっちがパージに出る事まで予測してコレなのか?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「くくくくくく。姉ちゃん、連中慌てふためいてやがるぜ」

「そりゃそうだろ。私らがどんだけ時間をかけてあれを造ったか」

「てーかよ、これで成功してくれなかったら最悪だよな。もう造る資材もねぇしよ」

「するさ。もう連中に打つ手があるとは思えないしね」



なんて言うかよ、テロリストも地道にやってかなきゃ行けない時代なんだよな。

さぁ、どうする? 侵食区画全部を吹き飛ばすなんて、今更無理だしよ。



「でも姉ちゃん、マジで魔導師連中は援護以外しないな」

「予想通りさね。アレは自分で手を汚す覚悟もないバカ共の集まりだ」



大量虐殺だと言われかねないから、及び腰になってんだろ。

そんな事すれば、現場も管理局自体もバッシングの対象になるのは明白だ。



「だからこそ、中央本部もこれ以上の増援を出したがらない」



局では上の命令が絶対だもんな。ぶっ飛ばしたくても、許可が取れなきゃ無理。

そしてその上は世界や民衆が知っての通りの腰抜け共ばかり。こうならないはずがねぇ。



「ご自慢のオーバーSとか出ればバッチリなのにな。バカな連中だぜ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「補佐官、どうするよ。このままじゃどっちにしたってジリ貧だよ?」

「アンジェラ達だけじゃなくて、みんなもすごく疲れてるのだ。同じペースでみんなやっつけるのは、無理なのだ」

「分かっている。こうなれば手動点火を行うしかない」

「手動点火?」

「こういう時に備えて、手動で装置を作動させるためのレバーがある。なお、位置はここだ」



俺はカミシロ達に画面の中を見てもらう。そこは・・・・・・生体兵器の密集地帯。

ようするに汚染区域のど真ん中だ。だから全員の表情が、驚愕に染まる。



「な、なんだよコレっ! こんなとこに行って、レバー引けって言うのかっ!?」

「いや、その必要はない。点火のための動線がその下にある」



そしてここで注意事項が一つ。あの土壌自体がウィルスに近い性質を持っていると思われる。

生体兵器本体はまだ大丈夫のようだが、汚染された物質への直接的な接触は危険だと思う。



「ようは直接触れる事なく、その動線に点火出来ればいい。つまり」

「・・・・・・なるほど。ここに遠距離からそれが出来るくらいの火力を叩き込めって事か。
でも、どうするよ。普通にあたしの手持ちスキルじゃ無理っぽいし」

「アンジェラもダメなのだ。あ、それならナナちゃん・・・・・・もっと無理だよね」



本来であれば火炎系統の遠距離攻撃が得意で火力も高いナナに頼む所だ。

空中で最大火力で撃ってもらえれば、それだけで話が済む。だが、無理だ。



「大丈夫・・・・・・よ。補佐官、他に方法無いんでしょ? だったら、私がやるわよ」

「ダメだ。お前は消耗が激しい。撃った直後に落下されてはたまらん」

「そんなドジ踏まないわよ。てゆうか、それなら誰がやるって言うの?」



確かにナナの言う通りだ。この作戦には火力がいる。

ただ破壊するためではなく、動線に点火するための熱量を出せなくてはいけない。



「言っておくけど、局の魔導師は絶対引き受けないわよ。中央本部の上層部が許すわけがない」



だろうな。だからさっきまでこっちに任せっきりだった。最初から連中はアテになどしていない。



「EMPDの連中も同じくだな。向こうは単独で空飛べる人員も居ないんだぞ?
何か乗り物用意するにしてもその準備にだって時間がかかる。そんな時間はもう」

「分かっている。そして実を言うと、この状況は予測済みだったりする」

「え?」



そう言い切ると・・・・・・音が耳に入った。それは、車の走行音。



「お前達、忘れたのか? 俺達には・・・・・・切り札と成り得る魔導師がもう居るだろ」

『・・・・・・あっ!!』





そちらを俺達全員が見ると、こちらに向かって1台のバギーが走ってくる。



うちの車両ではない。恐らく、現地から運搬用に借りてきたのだろう。



そしてそのバギーの運転席と助手席には、俺達の知った顔があった。





「・・・・・・アレ、シルビィと恭文なのだっ!!」

「丁度いいな。みんな、よくやってくれた。ここからの作戦の要は、あの二人だ。
全員、ギリギリまで防衛ラインを維持してくれ。それで俺が指示したら・・・・・・全力で逃げろ」

「いや、逃げろって・・・・・・えぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



どうやら、かなりギリギリな状況だけど間に合ったらしい。





フジタさんがしてやったりって顔してるのが、何故か気になったけど。










「補佐官、お待たせしました。ポータブルキャノン、拝借してきました」





さて、読者のみんなは覚えているだろうか。冒頭に僕とフジタさんが話していた会話の内容を。

ポータブルキャノン。重量は100キロを超える携帯用の荷電粒子砲。

そのテストをEMPDの技術開発部から頼まれ、補佐官は二つ返事で引き受けていた。



で、それの組み立ては今までコツコツと進められていて、もう完成していたの。

それが僕とシルビィがEMPDから借りた運搬用車両の後ろに積んである。

つまり・・・・・・僕達、これを引き取るためにEMPDまで寄り道していたのよ。



しかし普通にすごいスピードだった。シルビィ、運転上手いから酔わなかったし。





「ただ・・・・・・まだ試運転もしてなくて、最大出力で撃てるのは一発だけだそうなんです」

「そうか。・・・・・・シルビィ、重い仕事をさせてしまうが」

「大丈夫です。あ、ヤスフミも同じくですから」

「助かる。それで蒼凪、再確認だ。お前・・・・・・相当火力での遠距離攻撃の手札があるんだったな」



そう聞かれてリインと顔を見合わせて・・・・・・頷き合った。

作戦はこっちに来る途中で聞いてるし、フジタさんが僕に何を求めているかはもう理解している。



「それも集束砲・・・・・・スターライトだ」

「はい」



フジタさんは魔法の事とかを一通り勉強しているから、説明したらすぐに分かってくれた。なにげに努力家らしい。



「だが蒼凪、本当にいいんだな。正直に言えば、こういうのはお前達魔導師の仕事ではないとさえ思っている」

「シルビィの言った通りですよ。大丈夫です、そうやって気遣ってくれるだけで・・・・・・充分です」

「そうか。なら、お前達二人にはこれから重大な任務を引き受けてもらう」



そしてフジタさんが僕達に寄り道をさせたのは、この『重大な任務』のため。

そのためにポータブルキャノンが必要だった。そして、僕の火力もだ。



「手動点火装置周辺の生体兵器を、蒼凪のスターライトで薙ぎ払う」



僕のスターライトだと、動線に点火出来るかどうか分からないらしい。・・・・・・まぁそうだよな。

点火には相当な熱量を出せる攻撃じゃないとだめだから。だから、ダメ押しがあのポータブルキャノンよ。



「全ての障害がクリアになった後にシルビィがポータブルキャノンで狙撃」



でも、荷電粒子砲なら話は別。熱量重視のセッティングをした上でなら、やれるらしい。



「そうして装置下の動線に点火。出来るな?」

「「はいっ!!」」

「それじゃあリイン、お前は俺達と一緒に」

「あ、それはダメですよ」



言いながら、リインが僕の側に来る。来て・・・・・・身体を蒼い光が包む。



「・・・・・・何をしている」

「補佐官さん、リインはユニゾンデバイスですよ?」

「いや、それは聞いているが・・・・・・おい、まさか」



僕達二人は顔を見合わせて笑う。二人で・・・・・・一緒にだよね。

うん、一緒にだ。だってリインの目が、有無を言わせてくれないもの。



「リイン、アルト、行くよ。最後の最後まで、相乗りしてもらうから」

「はいです」

≪当然でしょ。さぁ、久々に私の出番ですよ≫



あー、二人がすっごいやる気だ。そうだよね、普通に二人はここまで出番なかったもんね。

だから僕は声をあげる。せっかくだし・・・・・・いつも通りに、らしく。



「変身っ!!」





声を上げて、僕達は蒼い光に包まれる。その中で僕はジャケットを装備。

ただし、何時ものジャンパータイプのジャケットじゃない。

リインが僕の胸元に吸い込まれ、一つになり・・・・・・そこからそのジャケットは構築されていく。



その意匠はリインのジャケットに似ている。なお、色は元の白ではなくて青色。

ジガンスクードと両足のブーツは白銀に染まり、まるで雪のようにも見える。

ノースリーブのジャケットは少し気恥ずかしいけど、それでも力が溢れてくる。



その力は、僕の髪と瞳にも変化を及ぼす。前髪の先から流れるように、空色に染まる。

今まで閉じていた目を開くと、髪とは色調がまた異なる空色に染まっていた。

胸元の青い宝石は一瞬で日本刀に代わって、僕の左腰に装着される。これで完了。





「・・・・・・さぁ、振り切るよ」

【はいです♪】



そして光が弾ける。弾けた光は、雪となって僕達の周りに降り注いだ。



「・・・・・・ヤスフミ、それ」

「ユニゾンだよ。シルビィだって、局員だったんだから分かるでしょ?」



舞い散る雪の中、シルビィが僕を驚いた顔で見る。というか、パティもだね。

そう言えば、ユニゾン出来る事は話してなかったかも。



「そ、それは一応魔法知識はあるけど・・・・・・あぁ、だから一緒だったのね」

「そうだよ。というわけで、ちょっと行って来るわ」

【シルビィさんは急いで狙撃の準備、お願いするですよ】

「分かったわ。気をつけてね」



というわけで、魔法を一つ発動。発動するのは・・・・・・これ。



≪Flier Fin≫





両足首に生まれたのは、青い翼。僕はそれを羽ばたかせて、一気に飛び立った。

目指すは攻撃目標の真上。距離にして、丁度3キロ。てーか、ここまでなんだ。

僕達、結構急いでたつもりだったけど・・・・・・もうここまでの範囲が侵食されてたんだ。



・・・・・・点火のための緊急用レバーの周囲を、スターライトで薙ぎ払うのが僕達の仕事。

この辺り、出来るだけ威力のロスを無くすためらしい。まぁ、そこは納得した。

そして局の魔導師とヴェートル中央本部が役立たずってのも、かなり納得した。マジで仕事してないし。



そして攻撃ポイントは普通に生体兵器が100単位で密集していて、それだけで防壁になっている。

ただ、救いもある。それは連中が遠距離攻撃の類を一切してこないということ。

攻撃力や防御力と言った基礎能力が高いだけで、射撃や飛行はしない。ガチな格闘仕様。



マジでEMPを汚染する事を目的とした兵器として、造り替えられているらしい。

・・・・・・右拳を強く握り締める。関わったのはちょっとだけだけど、やっぱり思ってしまう。

もっと早く止められていたら、こんな事・・・・・・無かったのかなってどうしても。



ぶっちゃけ虐殺もいいとこだよね。浄化なんて聞こえはいいけど、ただの切り捨てだ。

ただ、それでもやる。ここで局が腑抜けて傍観を決め込んでいる以上、僕達がやるしかない。

そして出来る。リインとアルトが力を貸してくれている。シルビィと補佐官が気遣ってくれた。



それだけで充分だ。言い訳もせずに一緒に戦う覚悟を見せてくれた。それだけで・・・・・・いい。

・・・・・・少しだけ、フェイトやみんなが組織というものに背中を預けられる理由が分かった。

シルビィや補佐官、あとはジュン達みたいな仲間と居るなら、そういうのも悪くないかも。



ただ・・・・・・やっぱり局は無理だろうなとも思う。GPOでは僕は僕で居られるから。

局よりも自由で、気楽で、ここに住む人達に根ざしている。

そんなGPOや補佐官、シルビィ達みたいな仲間が居るならきっと僕は・・・・・・うん、そうだ。



ここでは僕のままで、古き鉄のままで居られる。だから、心地いいんだ。



組織のために自分を、想いを変えることを望まれないから。





【・・・・・・恭文さん】

「なに?」

【補佐官さんもシルビィさん達も、いい人達ですよね。局は無理でもきっとGPOだったら・・・・・・大丈夫ですよ】



高度にして100メートル程の高さを高速で飛行しながら、リインがそう言ってきた。

きっと色々見抜かれてる。だから軽く笑いながらも頷いて答える。



「そうだね。でも、今はまだいい。まだやることがあるもの。・・・・・・その前にフェイトフラグ成立だよ。
しっかりフェイトフラグを成立させて、遠距離恋愛でも大丈夫なように頑張らないと」

【え、まずそこですかっ!?】

「そこだけど何か?」





こんな状況でも何時ものように話しながら、僕達は青い空を駆け抜ける。

駆け抜けて・・・・・・攻撃ポイントに到着した。だから、僕達はここで足を止める。

見下ろすのは青というより紫に近い地表。それを見据えながらアルトを抜いた。



無形の位の体勢を取りながら、威力調整も込みで急いでチャージ開始。





【・・・・・・ごめんなさいです】



周辺に蒼い星の光が生まれる。それがアルトの刃に降り注いていく。

降り注いだ刃は、まるで流星のよう。こんな真昼間でも、星の光は生まれる。



【言い訳はしません。全て私達は背負います。なんの償いにもならないですけど・・・・・・それでも】





アルトを両手で構えようとした。でも、その時だった。

空気を斬り裂きながら・・・・・・僕の後ろから何かが迫っていた。

僕は詠唱を一旦ストップして、大きく時計回りに回転する。



僕の背中を貫くように、狙撃弾丸が放たれていた。当然のようにそれに対処。

回転しながら右薙に振るっていた刃で弾丸を捉え、斬り裂く。

蒼の極光により弾丸は真っ二つに斬り裂かれて、粉々に砕け散った。



僕は弾丸が飛んできた方向を見つつ、意識を集中させて刃の魔力を維持する。





【な、なんですか今のっ!!】

「考えるまでもないでしょ。アルト、今の狙撃から距離と位置を算出して。で、フジタさん達に連絡」



言いながらもチャージを再開。一旦止まっていた集束が再び始まる。

流星達はただ静かに刃に降り注いでいく。



≪もうやっていますよ。しかし、また用意周到ですね≫

「陰険だから仕方ないでしょ」

≪納得しました。・・・・・・それでフジタさんから返信です。近辺のEMPDのスタッフ、すぐに向かわせるそうです≫

「そっか」



狙撃はもう来ない。でも、最後まで油断はしない。・・・・・・少しずつ、鉄の刃は姿を変えていく。



【でも恭文さん、よく分かったですね】

「一応、こういうのは警戒してたしね」



だから補佐官も、GPOの中で1番遠距離火力が高いっていうナナを出さなかったんだし。

消耗している状態だと横からの攻撃に対処出来ない可能性もあったから・・・・・・らしい。



「それになにより、狙撃弾丸なんて神速のスピードに比べたら充分遅いよ」



正直さ、美由希さんや恭也さんの斬撃は銃弾とかよりも速いと思うんだ。

そして恐ろしい。だって銃弾は真っ直ぐにしか飛ばないけど、神速込みの斬撃は違うもの。



「・・・・・・アレはマジでチートだし。くそ、やっぱり僕も使いたいぞ」

【・・・・・・納得したです】



・・・・・・鉄を進化させるのは、蒼い光。その光の名は星の光。

今を覆し、未来を繋ぎ続ける最高の切り札。僕とリインとアルトの奥の手。



≪Starlight Blade≫



そして蒼い星の光の刃は打ち上がった。だから僕はアルトを振り上げる。

振り上げて見定めるのは点火レバー周辺。あとは・・・・・・シルビィを信じるだけ。



【「・・・・・・猛撃必壊」】



振り上げて、左手も上げてアルトの柄尻を握り締める。

そして真下に向かってアルトを唐竹に打ち込んだ。



【「スタァァァァァァァライトッ!」】



身体は下を向き、星の光の刃は空間を斬り裂く。そこから力溢れる奔流が放たれた。



【「ブレェェェドォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」】










放たれた奔流は汚れた大地に降り注ぎ・・・・・・周辺の生体兵器を吹き飛ばす。





吹き飛ばして見えたのは、青く染まった地表の一部分。とりあえずこれでいい。





あとはシルビィの仕事だ。でも、ここからあそこまで狙撃・・・・・・なんかすげー。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



右目にキャノンと連動した装着型のスコープをかける。そして狙いを定める。遥か彼方にある、狙撃ポイントを。

でも、一発勝負か。ダメだな、ちょっと楽しくなってきちゃった。ガンナーとしての性というかなんというか、そういうものがあるの。

でも今は自重。私とヤスフミ、それぞれが放つ一発で全部決まる。重い物を一緒に背負うなんて、言うつもりはない。





そんなのは綺麗事。引き金を引く重さも、剣で相手を斬る重さも、全部私達のもの。

誰にも共有なんて出来ない。出来るわけがない。そしてしちゃいけない。

私はそんな事をすれば、奪った事実も重さも時間も途端にその意味を無くすと思う。





奪ったものは他人と共有し合って、背負い合える程軽いものなのかと、その存在を貶める。

私はそんな事は絶対に認めない。そんなのは・・・・・・間違いだ。

だけど、私達は同志にはなれる。同じ場で、同じものを壊した同志に。





だから私も引き金を引く。あの子が小さな手で剣を振るうなら、私は今ここに立って引き金を引く。





小さなあの子が重さで潰れないように・・・・・・支えられるようになるために。










「超筋力、開放」





身体に普段かけている枷を、言葉と共に再度外す。その瞬間溢れるのは強大な力。

・・・・・・女の子だけど、パワフルなのが売りなの。というわけでポータブルキャノンを両手で持つ。

ここは近くのビルの屋上。いやぁ、時間も無かったのにここまで持ってくるのは苦労したわ。



でも、あとひと踏ん張り。ヤスフミも、もうそろそろ攻撃位置に到着してる頃だもの。





「んしょ・・・・・・と」





左手は銃身上のホルダーを握り、右手は横のグリップ。そして、人差し指はトリガーに当てる。

当てて、すぐに外す。誤射したら、意味がないもの。そのまま・・・・・・私は左足を前に出す。

スコープで狙いを定める前に上を見る。ヤスフミ・・・・・・あ、ホントに集束砲使ってる。



うーん、意外と魔導師としてのスキルも高いのね。お姉さん、ちょっとビックリかも。

だけど魔力の集束途中に、ヤスフミが迎撃行動を取った。というか、狙撃された?

そうよ、あれ狙撃じゃないのよ。まさか・・・・・・そうだ、アイアンサイズだ。



狙撃ライフルか何かを取り込んで、それでヤスフミを狙い撃ったんだ。随分念入りな事で。





「・・・・・・補佐官」

『こちらにも連絡が来た。お前は狙撃に集中しろ。そっちはEMPDの人員を回す』

「はい」





私は下に視線を移して・・・・・・あぁ、確かにこれはヤスフミに露払いをしてもらわないとダメね。

生体兵器が密集しているせいで、本当にピンポイントで正確には撃てない。

一応予測位置のデータは貰っているけど、色々な影響でこれがズレる可能性だってある。



本当は一発だけその辺りの実地データを取るために撃って、射軸調整するのが定石。

でも、コイツはその一発だけで限界。だから・・・・・・今あるデータを元にリアルタイムで調整をする。

なお、左手のホルダーに各種スイッチが有ってそれで調整可能。・・・・・・私限定でね。



距離、空気の温度、湿度、風の方向・・・・・・積み重ねた経験とほんのちょっとのひらめきも活用して計算。

そうして砲身の向きや細かい出力の調整を行っていく。自然と緊張で、身体全体が汗ばむ。

呼吸を一定のリズムで繰り返しながら、無駄な力と緊張を抜いていく。そして、気持ちを落ち着けていく。



一発勝負の狙撃に必要なのは、銃との一体化。まぁ簡潔に言うと、相当な集中力。

狙撃は大技の砲撃と違って精密作業。そして弾丸は一度放たれたらもう修正は効かない。

放たれたら、ただ何かを壊すまで飛び続ける。だからこそ集中する。



間違って無関係なものを壊さないように。今撃ち抜くべきものを、ちゃんと撃ち抜けるように。

呼吸と共に、どんどんと思考がまっさらになっていく。それは集中力が高まってきた証拠。

そして私の集中を待っていたかのように、星の光の刃が振り下ろされ・・・・・・狙撃ポイントを浄化した。



集中していたはずなのに一瞬見惚れかけてしまう程、綺麗な蒼色。それは生体兵器を薙ぎ払う。

それでちょっと思ってしまった。あの輝きと強さは・・・・・・あの子自身なのかもと。

そうして私が撃ち抜く目標の姿をくっきりと現してくれた。・・・・・・ヤスフミ、リインちゃん、アルトアイゼンもありがと。



心の中で感謝しながら私は・・・・・・・引き金を引いた。修正すべき部分は、もうない。



私の予測と狙撃ポイントのズレは0だった。だから、自分を信じて引き金を引く。





「・・・・・・・・・・・・シュート」





瞬間、白いエネルギーが奔流となって放たれる。そして、私の身体を衝撃が襲う。

でも大丈夫。私はすっごく力持ちなヒロインなんだから。これくらいは耐えられる。

轟音を上げながら、私が放った一撃は世界を切り裂く。そして、狙撃ポイントに寸分違わず命中。



命中して、汚染された地表を点火レバーごと撃ち抜く。撃ち抜いてきっかり3秒後・・・・・・大地が揺れた。

爆発音が辺り一帯に響き、私の足元にまでその揺れが伝わってくる。

大地が揺れて、少しずつだけど汚染された区画と、そこを闊歩していた生体兵器が落ちていく。



ゆっくりと・・・・・・だけど確実に、EMPの一部は海へと落下して行く。・・・・・・心の中で、それを見ながら静かに謝った。

もうさ、何を言っても仕方がないんだけど・・・・・・それでも。静かに私はキャノンを降ろす。降ろして、私はスコープであの子を見る。

あの子は・・・・・・ただ無表情に、その様子を見ていた。ただ、それでも気づいた。やっぱりあの子も同じなんだなと。



だって、左手がすごく強く握られてる。小さな手だから、そんな風にしたら壊れちゃうと思ってしまうくらいに・・・・・・強く。





『シルビィ、汚染区画のパージは完了した。
こちら側に乗り込んできている生体兵器も居ない。・・・・・・ご苦労だった』

「いえ。というより、それは私よりもヤスフミに言ってあげてください」

『・・・・・・お前達、本当に仲が良いようだな』



あの、補佐官。どうしてそんなに呆れたというか、感心したような目で私を見るんですか。



『蒼凪もさっき連絡したら、お前と同じことを言っていたぞ。自分はいいから、お前を労ってやれってな』

「ヤスフミが・・・・・・ですか?」

『あぁ。お前は女の子なんだから、ちゃんとフォローしてやって欲しいと、真剣な顔でな』



・・・・・・そっか。ふーん、やっぱりフラグメイカーなんだ。というかテクニシャンだなぁ。

私の方が年上なのにそういう気遣いしちゃうんだ。ふーん、そうなんだ。



『それで俺から一つ命令だ。後処理が終わり次第、蒼凪を引っ張って遊びに繰り出せ。
明日の仕事のことは、一切気にしなくていい。もちろんカミシロ達にも同じように言っておく』

「・・・・・・はい。補佐官、ありがとうございます」










補佐官は何気に優しいもの。魔導師で本来なら殺しなんてする必要のないヤスフミの事、気遣ってる。

だから私にフォローをして欲しいと頼んできた。うん、そういうつもりだったんだと思う。

ジュン達は古くからの付き合いだし自然と出来る。でもヤスフミは違う。だから・・・・・・って。





でも、私は大丈夫だとは思ってる。・・・・・・一応はね? フォローは必要だと思うけど。

あの子はきっと強いから。何があってもあの星の光のように、キラキラしてる。

あぁ、そっか。私・・・・・・あの子の中にあるそんなキラキラに、ちょっと惹かれてるのかも。





・・・・・・私は右目にかけていたスコープを外す。外して、あの子を見る。

あの子はこちらに戻ってきているから、スコープが無くてももう見える。

だから私は左手を上げて手を振る。優しく安心させるように、いっぱい笑顔で。





青い空の中を飛ぶキラキラはいつもより少しだけ不器用に笑って、私に手を振り返してくれた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえず後処理を終わらせて、みんなに『ありがとう』とお礼を言った。

結局僕達、オイシイとこだけ持ってっちゃったわけだし一応ね。

で、シルビィに引っ張られて私服に着替させられた上で入ったのは、居酒屋。





なお、携帯端末の電源は切らされた。邪魔はされたくないとかなんとか。

そして三人で掘りごたつ式の個室で、普通に豪華に宴会。ただここで非常に気になる問題が一つ。

あ、リインは・・・・・・横で顔真っ赤にしながら寝てる。理由? 簡単だよ。





シルビィが僕がトイレ言っている間に、カクテルちょびっと飲ませやがった。一舐めしただけでこれらしい。





・・・・・・リイン、やっぱり子どもなんだよなぁ。まぁとにもかくにも、僕とシルビィの酒盛りはどんどん続くわけですよ。










「さぁ、今日は朝まで飲むわよー!!」

「いや、仕事はっ!? 明日も仕事あるよねっ!?」

「大丈夫っ! 補佐官から『明日の仕事は気にするな』って言われたからっ!!」

「え、マジっ!? というかちょっと待ってっ! もう現時点ですっごい顔が真っ赤なんだけどどういうことかなっ!!
・・・・・・とにかく、僕はその前にご飯をしっかりと食べたいのよ。もうね、お腹空いてペコペコなんだから」

「・・・・・・ヤスフミ、あなたもう5人前くらい平らげているのに、これ以上食べるつもり?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・パティ」

「はい。補佐官、どうしました?」



ここはEMPの俺のオフィス。パティに手伝ってもらいつつ、俺は今日の報告書の作成だ。

しながら・・・・・・俺は一つ気になってきたので、軽く聞いてみる。



「全員に『明日の仕事は気にせずに、しっかりとリフレッシュしろ』と俺は言ったよな」

「えぇ」



まぁパティはそれでも手伝ってくれているので、申し訳ないやらなんやらなんだが。

ただ、それよりも気になることがある。だから俺は、デスクに座りながらも非常に頭が痛い。




「まぁ俺はその・・・・・・それくらいの勢いで気持ちを切り替えろと言ったんだ。
そうだ、そのつもりだったんだ。・・・・・・全員、本当に何も気にしなさそうで怖いんだが」

「いや、さすがにそれは・・・・・・すみません、なんだか先輩達だとありえそうで怖いです」

「だよな」










ノリがいいというか、勢いがいいというか、そういう部分の強い人間ばかりだからな。





特にシルビィが心配だ。蒼凪をリードしようとするあまりに、暴走しそうな気がする。





・・・・・・俺はもしかしなくても、色々とミスってしまったのではないだろうか。




















(Report05へ続く)






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