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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第25話:おまけとあとがき(とある魔導師と彼女と機動六課の日常・パイロット版)



おまけ:とある魔導師と彼女と機動六課の日常・パイロット版




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・あたしには、大事な友達が居る。

今のあたしより少しだけ身長が小さくて、強い男の人。

5歳とかそれくらい年の差があって・・・・・・あたしはその人と出会った。





色々な縁があった、あたし達は一つの事件に立ち向かった。

それが解決したのは・・・・・・うわ、丁度1年くらい前なんだ。

それからまた、今年の3月くらいまで一緒に居て、それから少しだけお別れ。





その人・・・・・・蒼凪恭文は、友達の居る部隊を外から手伝うために、ミッドチルダという世界に帰った。

そしてあたしは、中学生になった。それで半年が経過。そして現在、あたしは恭文と一緒に居る。

ただし、状況が色々と問題がある。恭文は鉢巻をして、必死に書類の海と戦っている。





だから当然のように、あたしはこう声をあげる。










「あのさ、シオンにヒカリ」





声をかけるのは、翠色の髪の子・・・・・・シオン。そして、銀色の髪の子・・・・・・ヒカリ。

二人はしゅごキャラと呼ばれる・・・・・・まぁ、妖精みたいなものなんだ。

大体手の平サイズの子で、あたしにもランとミキとスゥとダイヤって言うしゅごキャラが居る。



しゅごキャラは、こころの中から『なりたい自分』が出てきた存在。



そして、二人は恭文のしゅごキャラ。だから、当然のように二人に聞いた。





「恭文、なんでこの状況?」

「ひどいわ。恭文君の中の輝きが、弱くなってる。あんなに強くて、優しい輝きだったのに」

「ね、どういう事? ・・・・・・連絡が取れなくなって、ボク達みんな心配して来たけど」

「ねー、どうして恭文がなんか元気ないの? これじゃあ、恭文のこころに×がついちゃうよ」

「ス、スゥは今すぐハーブティーを淹れるのですっ! 恭文さん、待っててくださいねー!!」



そして、スゥは台所に・・・・・・あぁ、あの子の恭文の好きだって気持ちは、変わらずだなぁ。

てゆうかさ、普通にあたしのしゅごキャラはみんな恭文大好きだし。あははは、これなに?



「それは・・・・・・まぁ、なんと言いましょうか」

「恭文、あむに説明してもいいか?」



恭文は左手だけ上げた。それで・・・・・・OKという事らしい。



「まぁ、話すと長いのですが・・・・・・簡潔に言いましょう。私達とお兄様、今回は負け戦でした」

「はぁっ!?」



それで、スゥの淹れてくれたハーブティーを飲みながら事情を聞いた。

・・・・・・フォン・レイメイって奴を殺した事とか、片想いしてるお姉さんを守れなかった事とか。



「それだけじゃなくて、恭文がその人を殺した事で実家の人達にあれこれ言われて」

「事件中に色々ルール違反しちゃったから、その反省文とか始末書とかを作成してて、それがこれと」

「・・・・・・ひどいですっ! 恭文さん、悪くないですよねっ!?
だってだって、そのアギトって子を助けたくて」

「それでも、殺しは殺しだよ」



その声は、リビングのテーブルに向かって、ハーブティーをゆっくり飲んでた恭文。

あたし達は、その背中側の床に座ってる。アイツの周り、書類の山で座れないもの。



「なんつうか、『魔法使い』になるのを諦めたりとかってのは、ないんだ。
・・・・・・あむ達と一緒に過ごした時間の中で見つけた事、無駄にしたくないし」

「うん」

「でもさ、何にも守れなかったなって・・・・・・かなりね」

「それは違うわ」



言いながら、恭文の前にダイヤが飛ぶ。

ダイヤは、オレンジ色のツインテールの髪を靡かせながら、恭文の前に立った。



「あなたは、今を覆す魔法使いでしょ? ・・・・・・ちゃんと、思い出して。
その時、あなたには守りたいものが、壊したいものがあったはずよ」

「・・・・・・ダイヤ」

「お願い。それを大事な人を守れなかった事を理由に、否定しないで。
全部守れなかったんじゃない。そういうのもあるけど、守って・・・・・・覆せたものもあるの」



ダイヤは、恭文に近づく。ここからだと、恭文がどんな顔をしているのか、今ひとつ分からない。



「・・・・・・ごめんなさい。分かったような口、聞いちゃったわね。
でも、信じて? 恭文君、あなたは間違ってない。何も守れてないなんて、絶対に違う」

「ダイヤ・・・・・・あの、ありがと。うん、伝わった。すっごい伝わった。でも、大丈夫。
落ち込んで、そこからまた立ち上がって・・・・・・どうして行くか、考えるつもりだから」

「ホントに?」

「うん。・・・・・・ダイヤが認めてくれた輝き・・・・・・シオンとヒカリ、大切にするから」

「なら良かった」



声はちょっと無理してる感じ。でも、それでも恭文はこっちを向いて笑ってくれた。

瞳の下にクマが無ければ、普通に安心出来る笑顔だった。



「というかあむ、わざわざミッドまでごめんね。てゆうか、どうやって来たのさ」

「ヒロリスさん達に頼んだんだ。ここまで、送ってもらった。
・・・・・・あ、歌唄や唯世くん達にも改めて連絡してあげてね」

「みんなに、心配かけちゃってた?」

「かなりだよ。特に歌唄なんて自分が行くって言い出して、ゆかりさんが大変だったし」



もちろんその事件が終わってから、普通にメールはしてる。大丈夫だからというのも、あった。

ただ、全員が同じように心配した。恭文が自分で背負い込む方だって、みんな知ってたから。



「そっか。悪いことしちゃったな。てゆうか、海里も同じ感じだった。
何かあるなら、相談に乗るしこっちにも来るって・・・・・・申し訳ないくらいだよ」

「当然だよ。アンタと海里は侍と魔法使いって違いはあっても、同じ方向性の夢を追いかけてるんだもの」

「単純に、恭文を目標の一つとしているというのもあるしね。
というか、海里もムサシも、恭文の事が好きなんだよ」

「あなたの輝きには、人の運命さえも変えて惹きつける力があるわ。
・・・・・・海里君も、その一人なのよ。そしてあむちゃんや歌唄ちゃんに私も同じ」



ミキとダイヤがそう言うと、恭文は苦笑して・・・・・・視線を外して、ハーブティーを飲む。

ゆっくりと飲んで、最初の時の疲れきった印象は少しだけ消えていた。



「というか、アルトアイゼンは? さっきから黙りっ放しだし」

≪居ますよ。ただ、すみません。今はこの人のサポートで手が離せないんです≫

「・・・・・・そっか。うん、ごめん。今のは私が悪かったよ」



てゆうか、普段は自分のことは自分でやらせるのに・・・・・・そこまでなんだ。



「あー、それと恭文」

「何?」

「あたし、しばらくこっちに居る事になったから」



瞬間、空気が凍った。というか、沈黙が襲ってきた。

そして恭文は、ハーブティーを持ちながらあたしを見る。



「・・・・・・どして?」

「知っての通り、あたしって一応魔法使えるじゃん?」



本当にまだまだ一般レベルって感じなんだけど、資質はあるらしい。

それで、この半年考えてた。考えて考えて・・・・・・結論を出した。



「あたしなりの『なりたい自分』、色んな可能性を探してみたいんだ。だから、こっちに留学することにした。
学校は来年度からだけど・・・・・・それまでは、こっちに居て実地で言葉とか文化とか覚えようと思うんだ」

「「「え?」」」



いや、そんなシオン達と揃ってビックリしたような顔しても、もう変わらないから。



「ボク達がここに来たの、実はそのついでだったりするんだ」

「というわけで、また一緒に頑張ろうねー」

「お世話になりますぅ」

「恭文君、大丈夫よ。この私が来た以上、あなたの輝きは消させない。
そう、私が責任を持ってあなたの輝きを元の状態に戻してみせるわ」

「「「・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」










これが、あたしと恭文の日常の始まり。あたし達の新しい旅の始まり。





そして、あたし達は・・・・・・ここからまた、未来への可能性と向き合う事になる。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と彼女と機動六課の日常


第1話 『始まりはいつも突然。そして、来訪もいつも突然』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文、ボクも手伝おうか? 書類整理くらいは出来るけど」

「ならスゥは、お食事関係をお世話しますねぇ」

「なら私は・・・・・・頑張れー! 頑張れー!!」

「そしてやっぱりランは応援かいっ! 普通に変わりなくて僕は逆に安心したよっ!!」



夜、普通に・・・・・・うん、重い気持ちが楽になった。あむ達のおかげですよ。



「さぁ恭文君、私を見て。輝きを取り戻すには、同じだけ輝いている私を見るのが1番」

「よし、とりあえず僕の視界から消えて。そんな超零距離に居られたら、書類書けないから。断(たち)も撃てないから」

「あむちゃん、恭文君がいじめるー!!」

「やかましいわボケっ! いじめられてるのはむしろ僕なんですけどっ!?」



まぁ、アレだ。色々励ましてもらってるのは伝わった。だから、そこは感謝している。



”私達、あむさん達に感謝しないといけませんね”

”・・・・・・そうだね。これが片付いたら、自主勉強も手伝おうっと。でも、ダイヤが自由過ぎるんですけど”

”何を今更。ダイヤさんは、元からこういうキャラじゃないですか”

”うん、知ってる。知ってるけど、それでも気になるの”



あむとは年の差はあるけど・・・・・・なんかこう、気が合う。

去年、一緒に立ち向かっていた事件の中で、友情を深めたの。



「そう言えば日奈森さん、月詠兄とはその後進展は?」

「・・・・・・い、いや。普通だよ? アイツ、楽団の仕事で忙しそうだしさ」

「ラン、ミキ、スゥ、ダイヤ。今のコメントは本当か? 私はどうにも信じられないのだが」

「一応はね。でも、イクトからメールが来るとすっごく嬉しそうに」

「こらー! ミキ、バラすなー!!  てゆうか、普通だしっ! すっごい普通だしっ!!」



とりあえず、色々と進展はちょっとずつしているようである。・・・・・・僕はサッパリなのに。

まぁいいか。そこの辺りも、色々対策を考えていこうっと。



≪せっかくですし、書類が片付いたら一度戻ってみましょうか。
歌唄さんや唯世さん達にも元気な顔、見せたいですし≫

「あ、そうだね。・・・・・・歌唄に会うのが怖いけど。色々見抜かれそうだし」

「ダメだよ。ちゃんと会ってあげて。あの子、言い方はともかくアンタと連絡が取れなくなって、マジで心配してたんだから」

「エルもイルも同じくですよぉ。だから、ちゃーんとしてあげてくださいね?」



歌唄というのは、僕とあむとの共通の友達。ほしな歌唄の芸名で歌手をしている。

で、僕とは色々縁があって・・・・・・なんかこう、狙われてるの。貞操というか、恋人の座を。



「分かってるよ。うし、じゃあ早めに書類を片付けて」

『はーい。元気してるかしら』



その声は・・・・・・うちの家長。というか、普通に通信画面を勝手に広げてきたし。



『あら、お友達とお話していたの? ごめんなさいね。それで用件なんだけど』

「あの、僕は今非常に忙しいんですけど。自業自得ですけど、忙しいんですよ」



だから睨み気味に、不機嫌にそう言うのだ。あむは会釈して、通信モニターの視界外から離れた。



『なら、手短に伝えるわね。実はあなたに、一つ依頼があるの』

「お断りします。僕はしばらく、局の業務関係には一切関わらない事にしたんです。
なお、理由はお分かりですよね? JS事件なんてバカを起こす局も局員も、大嫌いだからです」

『それは最後まで話を聞いてから判断してくれないかしら。
・・・・・・依頼はね、あなたも知っている機動六課絡みなの』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



翌日、恭文は非常に疲れた顔で家に帰って来た。なお、あたしの部屋は恭文の隣。

ヒロリスさんの好意で貸してもらえることになった。

家賃? ・・・・・・出世払いだって。うぅ、ミッドの通貨とか、現在は0だからなぁ。





というか、恭文の家に下宿状態? 恭文大変だし、お世話は必要だし。





それで・・・・・・結局恭文は、あの人の依頼を受ける事にしたらしい。










「・・・・・・みんなに会いに行くの、しばらく後だわ」

≪断れないシチュですよね。話は分かりましたし≫

「ですがお兄様、いいのですか? いくらなんでも消耗が」

「そうだぞ。お前・・・・・・無理し過ぎだろ」



今日はさすがに疲れたのか、書類を放り出して恭文はハーブティーを飲む。

で、あたしとラン達は話を聞いて・・・・・・シオンとヒカリ達と全く同じ事を思った。



「恭文、アンタいくらなんでも無理し過ぎだって。それじゃあ、マジでゆっくりなんて出来ないし」

「そうだよ。その・・・・・・機動六課に、恭文の好きなフェイトさんや友達が居て、今困ってるのは私達でも分かるけど」

「ちゃんと休まないとダメですよぉ。この書類を片付けてすぐに出向なんて、身体壊しちゃいますぅ」

「そう言ったよ。言ったけど、聞いてくれないのよ。事件解決直後で、治安も悪くなってる。
ここで奇跡の部隊である機動六課が弱みを見せるような事になるのは、絶対だめだって言って」



・・・・・・何それ。完全に恭文の都合無視じゃん。あの人って、恭文のお母さんなんだよね。

それなのに・・・・・・あぁもう、マジムカつく。一体どこのイースターだよ。



「まぁ、リンディさんとしては知り合いも多いから、休めるに違いないとか思ってるんだろうけどさ」

「いや、それないから。大体アンタ、あたしレベルで外キャラキツいじゃん」





外キャラ・・・・・・外向けのキャラ。恭文も最初の頃は、外キャラであたしや他の子と接してた。

いい加減で、意地悪で性悪で・・・・・・そして、人に対して心を開かない。それが恭文の外キャラ。

特に恭文は、ハードボイルドって言うの? そういうのを戦いの時は通すって決めてる。



そんな状況でそこに入っても、ダメだよ。普通に外キャラ全開で、疲れるだけだし。





「・・・・・・これはまずいわね。私の『恭文君の輝きを取り戻そう計画』がパーになるわ」

「よし、まずおのれはどうして電飾で武装してるっ!? そのシリアスな顔が台無しだからっ!!
てゆうか、それってうちの倉庫に仕舞ってたクリスマスツリー用じゃないのさっ!!」

「輝きをパワーアップしてみたの。電力消費の力も借りて、今の私はスーパーダイヤよ。あ、電気代はお願いね」

「輝きはアップしてるけど、品性は著しくダウンしてるじゃないのさっ! てーか、ちゃんと片せっ!!
そして電気代は僕任せっておかしくないっ!? あぁもう、マジでフリーダムだしっ!!」



ごめん、恭文。ダイヤは普通にアンタの事が心配らしくて、暴走しまくってるの。

ダイヤ、アンタの中にある『輝き』って言うのがあたし達より見えるらしいし、そのせいだね。



「・・・・・・いっその事、失踪しようかな。しゅごキャラの事は、クロノさんとヒロさんサリさんとリインくらいしか知らないし、ごまかしようはある」

「・・・・・・リイン? 恭文、またボク達と居た時みたいにフラグを」

「違うわボケっ!! ・・・・・・ほら、前に話したじゃないのさ。僕が魔法を知るキッカケになった子。
まだ8歳とかそういう年齢のせいか、普通にしゅごキャラが見えてたんだよ。で、説明したの」

「あぁ、それでか。納得した。うーん、普通ならお仕事を放り出しちゃだめって、あたしも言うところなんだけど」



でも、あんまりに話が強引すぎて、あたしもそうだしみんなもムカついてるもの。

もちろん、スーパーダイヤも。だから、いつもより余計に輝いてるし。恭文の家の電力を、勝手に使った上で。



「でもぉ、怪我した人達がいっぱいで、困っているのも事実ですよぉ?」

「そういうのを助けて欲しいというのだけは、間違いないと思うし・・・・・・簡単に放り出すのは、ボクは反対かな」

「というかスゥ、私思ったんだけど、リメイクハニーで恭文の疲れを『お直し』出来ない?」

「うーん、身体だけなら大丈夫だと思いますよぉ? でも、恭文さんの場合心の問題もありますからぁ」



つまり、理由はどうあれ恭文がちょっと悩んでるのは事実。通せた事と通せなかった事の両方が出たから。

そっちの方の疲労は、恭文がこれから考えていかないとダメってことだね。



「でも、身体が疲れてると気持ちまでダメになることもありますし・・・・・・やってみましょう。あむちゃん」

「ん、キャラなりだね。恭文、効果は期待出来ないけど、それでもいい?」

「あー、スゥ・・・・・・というか、あむもありがと。
もうやってくれるだけで充分だよ。うぅ、スゥのリメイクハニーも久しぶりだなぁ」

≪怪我した時は、色々お世話になりましたよね≫





とにかく、リメイクハニーで恭文の疲れは『お直し』出来た。まぁ、悩みの方は変わらずだけどさ。

ただ、それでもシオン達がたまごの状態に戻らないのは凄いと思う。・・・・・・ギリギリで踏み止まってる。

ミキが、小さく呟いたのに納得した。きっと今の恭文は、ギリギリで自分の夢を信じてる。



ううん、信じたいと思ってる。・・・・・・なんか、ダメだな。あたしもなんとかしたい。

恭文は、弱くて情けなくて、ビビリキャラなあたしのこと、何度も信じてくれた。

信じて、沢山力を貸してくれて・・・・・・あたしは、ラン達の顔を見る。



ラン達はあたしの考えている事が伝わったのか、すぐに頷いてくれた。だからあたしは、一歩踏み出す。





「ね、恭文」

「何? ・・・・・・あ、このお礼は必ずさせてもらうし」

「違うの。あのさ、あたしもその機動六課って部隊の仕事・・・・・・・違うな。
アンタがそこでやる仕事だね。それを手伝ったりとかって、出来ないのかな」

「え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・六課に来るのに、アイツが条件を提示してきた?」

『えぇ。まず一つは、休みの定期的な確保。
そしてもう一つは・・・・・・この子を自分の補佐として付けること』



アースラのうちの部屋の中、通信画面の中のリンディ提督から送られて来たデータには、一人の女の子。

その子の名前は、日奈森あむ。13歳のまだほんの子どもで・・・・・・この子、局員でもなんでもない?



『あの子のお友達らしいんだけど・・・・・・はやてさん、知ってる?』

「いえ。うちも初耳です」



ピンク色の髪をボブロングくらいまで伸ばして、くりくりとした金色の瞳が好印象。

てゆうか、どこでこんな可愛い子と知り合ったんや? ・・・・・・去年1年、また地球で暮らしてた時やろうか。



『今からミッドで留学準備をしたいらしいの。当面の生活資金の確保とか、言語や生活文化に慣れるためにね。
そして、そこが最後の条件よ。この子のその辺りの事に協力する事。それが出来ないなら、絶対に引き受けない』

「・・・・・・で、リンディさんはどないに返事を?」

『一つ目はともかく、二つ目と三つ目は最初は跳ね除けたわ。
部隊は学校やバイト先でもなんでもないんですもの。それが1週間前の話』



まぁ、『最初は』っちゅう所がミソやな。アイツがこの状況で条件として出す以上、普通にそれで納得するわけがない。



『そうしたら即行で通信を切られて、1時間前まで音信不通よ。
それだけじゃなくて、クロノの所に未処理の書類をそのまま送って来たわ』

「それはまた・・・・・・てーか、今は所在地は分かるんですか?」

『・・・・・・メールだけ送ってきたわ。それも捨てアドでね。当然のように、行方知れずは継続。
自宅にも帰ってない様子だし、少なくともミッドには居ない。条件を飲まなければ、このままよ』

「そうなるでしょうね。てかリンディさん、もうちょい発言気を付けた方がいいですって。
アイツ、本来やったらマジで局に関わりたい状態ちゃうんですよ? 普通にこれくらいはやるでしょ」



なんや画面の中のリンディさんは不服そうやけど、マジそうして欲しい。

本来やったら、うちもアイツは呼びたくないもん。完全にうちの不手際もえぇとこやし。



「とにかく、細かい事情は別にいいとして・・・・・・その捨てアド、多分チェックはされてるでしょうし、返信しとってください。
うちの権限で条件を全部飲むし、他に要望があるならエコひいきにならないレベルで譲歩はさせてもらうと」

『でもはやてさん、さすがにそれは』

「えぇですから。うちらが無理言うてんですし、それくらいはやらせてもらいます。
このままアイツが失踪し続けるより、ずっとマシでしょ? フェイトちゃんになんて説明するんですか」

『確かに・・・・・・あぁもう、あの子はいくらなんでもおかし過ぎるわよ。
特にここ1年半の間はそうよ。異常と言ってもいい』



確かになぁ。地球の某都市に1年近く常駐やろ。なんや、クロノ君の依頼でずっとや。

そこで何してるのかとかも一切うちらに説明なしやったし、突然それが今年の3月くらいに終了やし。



『依頼主のクロノは何も教えてくれないし、突然知らない子を連れてくるし。
保護責任者としては見過ごせないわ。はやてさん、悪いんだけど』

「一応は聞いてみますけど、無理やと思いますよ?
仕事の事情込みやったら、話すわけがないですよ」

『そうよね。・・・・・・クロノを尋問しようかしら。
でも、そっちも無駄っぽいし・・・・・・あぁもう、本当にあの子はどうなってるのよ』










でも、日奈森あむかぁ。アイツがこんな真似するっちゅうことは、もしかしたら深い関係なんかも。

お、なんやそう考えると色々楽しいなぁ。長年空白やった、フェイトちゃんへの対抗馬の誕生か?

それで書類の処理に関しては、クロノ君がアイツに泣きついて無期限で全部処理する事になった。





その時に色々とバカな返しをしてしまったリンディさんと、クロノくんはやり合うんやけど・・・・・・まぁここはえぇやろ。





とにもかくにも、こうして日常は始まる。少しだけ不思議なダークホースも加えた上でな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



やばい、あたしすっごい緊張してる。てゆうか・・・・・・うーん。





なんかこう、地上部隊の制服ってあたしの美的センスに合わない。










「うーん、やっぱり地味だ。色合いが今ひとつおしゃれじゃない」

「でしょ? あの本局ってところの青い制服とかはカッコ良かったのに、なんで地上本部はこれなの?」

「まぁ、それは僕も常々・・・・・・でもあむ、だからってゴスロリチックなアレンジはダメだって。
てゆうか、それ聖夜小の制服の着こなしと同じだし。やったらおしゃれだし」



恭文が困った顔をしているけど、同意してくれているらしい。だから、普通に少し口元が緩んでる。



「そうですね。日奈森さん、お気持ちは分かりますが、局員制服でそれはやめた方がいいかと」

「部隊って、そういうのうるさいの?」

「かなりね。そして、僕の顔馴染みでうるさいのも居る。
あー、それならやっぱり、こっちのアンダースーツでいいんじゃないかな」



失踪している間に、唯世くん達に会いに行ってた。そうして恭文は、少し元気になった。

それが嬉しくて、あたしは出向前日に恭文と自宅でファッションショー。



「こっちなら、まぁそれくらいのアレンジは許される」

「そっか。なら・・・・・・いやいや、せっかくだしバリエーションは沢山作りたいな。
あぁもう、こういう所はめんどくさいなぁ。聖夜小はこの辺り寛容だったのに」

「聖夜小は、ガーディアンが居たからというのもあるよ。さすがに一般社会じゃあぁはいかないって。
まぁアレだね。特に局は軍隊的な性質が強いから、そうなるのよ」

「階級も一等空尉とか、二等空佐とかって言うくらいですしねぇ。あまり勝手もダメなんですねぇ」










とにもかくにも、少しだけワガママになって、元気になった恭文と一緒に・・・・・・あたしは新しい事にチャレンジする。





部隊での仕事なんて初めてだけど、恭文に基本的な事は教わったし・・・・・・よし、頑張ろうっと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『日奈森あむちゃんかぁ。うーん、私も聞いてないなぁ』

「そっか。・・・・・・母さんが頭抱えてるの。ただの一般人をこの状況で引っ張ってくる理由が分からなくて」



現在、一人だけの自室で病院のなのはと通信中。・・・・・・そして、少し頭が痛い。

蒼凪恭文・・・・・・ヤスフミが、どうしてあの子を補佐というかそういう位置に付けたのか、その理由が分からない。



『フェイトちゃんもそうだけど、はやてちゃんやヴィータちゃんもサッパリなんだよね』

「うん。魔法資質があって、来年度からミッドに留学予定という事だけしか」



その魔法資質も、ビックリするほど高いというわけじゃない。資質は平均的で、ミッドチルダ式に適性のある子。

あ、でも一応簡単な飛行は可能なんだっけ。ヤスフミが送ってきた資料には、そう書いてた。



『・・・・・・もしかして、何か複雑な事情がある子なのかな』

「複雑な事情?」

『うん。ほら、去年1年恭文君がまた地球で暮らしてる時に、実は何か事件があって』



あぁ、クロノからの依頼でそうしてた時か。私達はみんな、観測任務の一つだって聞いていた。

でも、実は違った? まぁそれなら分かる。それで、この日奈森あむちゃんがその事件の鍵。



『それでその子と仲良くなって、それで・・・・・・って。あとは・・・・・・あ、そうだそうだ。
もしかしたら能力自体は平均でも、恭文君レベルで凄い実力者という可能性もあるよ』

「ヤスフミレベルでっ!? ・・・・・・もしかして、ヤスフミが私達のサポートのために呼び寄せたのかな」

『あ、そうかも知れないね』



自分一人だけじゃ手が回らないと考えて、その何かの事件で出会ったあの子にSOSを出した。

出して、その上で六課に・・・・・・あぁ、それなら納得出来る。そういう事だったんだね。



『まぁ、実際は恭文君に聞いてみないと分からないよ?
単純に友達だから、この子の方が恭文君の力になりたかっただけかも知れないし』

「ヤスフミ、それだったらそれでちゃんと母さんには説明すればいいのに。
いや、クロノに口止めされてるのかな。事件絡みなら、守秘義務もあるし」

『いや、あの・・・・・・フェイトちゃん? どうしてそんな真剣に考え込むのかな。
ほら、私の言った事はかなり適当だし・・・・・・って、話聞いてるっ!?』










日奈森、あむさんかぁ。とにもかくにも、明日少し話してみよう。

ヤスフミのお姉さんとしては、少し気になるもの。この状況で入ってくる以上、切り札だと思うし。

あー、でも明日は外回りがあったんだよね。なら・・・・・・シャーリーに頼んでおこうかな。





何にしても、私達にとってはダークホース。一応の警戒と注目は必要だもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・やっと、帰ってきました」





ここは時空管理局所属・機動六課隊舎のロビー。



部隊員は前線もロングアーチもバックヤードも、みんな並んで整列しとる。



うちはそれを見て、泣きそうになる。でも、今は我慢や。





「あの襲撃事件から2ヶ月が経ちました」



隊舎は丸焼け、人員は怪我しまくり。そして、攫われた人間まで出た。

マジで、負け戦やったなぁ。ほんま・・・・・・辛かった、なぁ。



「今日、私たちはようやく自分たちの居場所に帰ってくる事が出来ました。
この2ヶ月の間、アースラに乗り込んでくれていたクルーを始め、みなさんには本当に苦労をかけました」





あの事件で隊舎が壊滅してから早2ヶ月。ようやく隊舎は復旧して元通りになってくれた。

だけど、全部が全部元通りゆうわけやなかった。例えば、前線メンバーや。

なのはちゃんとヴィータはゆりかご内部での戦闘が原因でまだ本調子やない。二人とも、相当無茶したしな。



完治するのにも、時間がかかるやろうというのは、シャマルの談や。

ヴァイス君やザフィーラ、ロングアーチやバックヤードのスタッフも負傷。

ほんまやったら、ここに来て通常業務するだけでも厳しい人間も、多い。



でも、みんな来てくれた。・・・・・・ありがとう。ほんまにありがとうな。





「私のような未熟者にここまでついて来てくれた事。ただただ感謝する他ありません。
ほんとに・・・・・・今日ここに来てくれて、ありがとうございます」





そんな訳で、機動六課はまだまだ完全復活には程遠い状況や。

でも、リンディさんのおかげで人を借りる事が出来た。

うちとうちの子達になのはちゃん、それにフェイトちゃんの昔からの友達。



ちゅうか、幼なじみやな。嘱託として、あちこちの現場を渡り歩いてきた優秀な魔導師。

実力はうちらがよく知っとる。もう8年の付き合いや。あんなことからこんなことまでよう知っとる。

アイツが居てくれたら、うちらは相当に楽になる。長年の友達でやり口や性格は熟知しとるもん。



そのために、うちら隊長陣とも連携も取り易い。あと、気持ち的にも楽になれるしな。

・・・・・・まぁ、事件中はアイツも大変な目に遭ってたわけやし、呼ぶことに躊躇いが無かったわけやない。

ただ、緊急事態やし、どうしても手段を選べなかった。今回の一軒で、アイツはほぼノーダメージやったのも大きい。



ただし・・・・・・精神関係と、後処理以外な? 色々負担かけてもうてるよなぁ。うぅ、申し訳ない。

ただ、気になることもあるんよ。・・・・・・マジで今アンタの隣に居る子は何者や。

リアルにどうしてこうなったかが気になるんやけど。まぁ、そこの辺りはまた確かめようか。とりあえずはこれからの挨拶でな。





「さて、湿っぽいのはここまでにしましょう。・・・・・・実は、今日という日を祝うように、めでたい話があります。
今日から、この機動六課で私達の新しい仲間として、一緒に仕事をしてくれる方がおります。では、こちらに」



まずはあの子や。少し着崩してゴスロリ風味に味付けしたピンクのアンダーシャツを着たあの子が、壇上に上がる。

上がって・・・・・・少し息を飲む。飲んで、あの子は視線をぶっきらぼうに逸らしながら・・・・・・こう言い放った。



「日奈森、あむです。・・・・・・ま、よろしく」










普通やったら『そんな挨拶して、部隊ナメとんのかっ!!』言う所やったと思う。

ただ、この時はこの子が出すカッコいいというか、出来る女的な空気にやられた。

まぁ、ようするにや。このぶっきらぼうなのも含めた上で、うちら全員思ったんよ。





・・・・・・カッコいいと。そうや、うちより背の高いこの子は、マジカッコいいんや。





ヤバい、うちは色々負けとる。主にかっこよさとか負けとる。マジで負けとるし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・サリ」



本日は、やっさんとあむちゃんの六課入り初日。だから俺とヒロは、オフィスでハラハラしまくっている。



「なんだ」

「やっさんとあむちゃん、大丈夫かね」

「まぁ、やっさんは大丈夫・・・・・・なはずだ」



フォン・レイメイの事とかがあって、ダメージ癒えてないってのに・・・・・・ハラオウン家は、何考えてやがる。

クロノ提督に気になって連絡したら、リンディ提督主導でどうしようもなかったらしいが、マジおかしいぞ。



「今回ばかりは、普通に自信持てないわ。
シオンとヒカリが産まれて、アレだったからな。お前だってそれらしいの聞いてるだろ」

「・・・・・・戦闘者として覚悟は決めていても、自分の夢に嘘をついたんじゃないかとか言ってたね」

「まぁ、俺らも定期的に連絡して様子は見ておこうぜ。あとは・・・・・・あむちゃんか」



こっちも何気に心配なんだよなぁ。やっさん助けるために飛び込む所が、あの子らしくはあるが。

あとは生活費だな。さすがにヒロや親御さんにお世話になりっぱなしは、気が引けたらしい。いい子だよ。



「あの子なら大丈夫・・・・・・あぁ、違うよね。あの子、外キャラと内キャラのギャップが激しかったんだっけ」

「そうだ。下手したら、よく二次創作である勘違い物みたいな事がリアルで起こるぞ」





外キャラ・・・・・・外向けのキャラ。いわゆる外見から見た、その人の感じだったりらしさだな。

そして内キャラが、中身のキャラ。実際のその人自身だ。そして、あむちゃんはこの差が非常に激しい。

俺とヒロの知っているあむちゃんは、何気に内気で口下手で、素直じゃない子だ。



ただ、それでも芯は強いし純粋ないい子でもある。そういう所にやっさんも惹かれて、友達になった。

まぁ、ここまでが内キャラだな。では、あの子の外キャラはどういうのかと言うと・・・・・・もうすごい。

勘違いされまくりなんだよ。内気で素直じゃないのはクールと見られ、口下手なのはスパイシーと見られる。



やっさんの話だと、今年の春に卒業した聖夜小と言う小学校の中であの子の人気は凄かったらしい。



クールでスパイシーで、カッコよく決めていて・・・・・・そんな自分の噂が一人歩きしまくりだったとか。





「あむちゃん、早速やらかしてなきゃいいんだけど。あー、でも心配だな。
これって、実際に留学始めてからでも言えることじゃない? 学校とかでさ」

「確かにな。でもまぁ、多分大丈夫なはず。六課ではやっさんも居るんだし、多少はフォロー出来るはず」

「全部『はず』って付くのが悲しいとこだよね。あー、でもやっぱ心配だよ。やっさん、マジでフォローしなよー」










ヒロは、何気に面倒見がいい。だからあむちゃんに対しても妹みたいな感じで接する。





だから思いっ切り気にしているんだが・・・・・・ヒロ、そろそろ仕事しろ。局長が睨んできてるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・や、やらかしやがった」

「やっぱりこうなったか。まぁ、私は分かっていた」

「私も同じくです。やはり人間、いきなり180度の方向には変われませんね」



あぁ、頭抱えてる。絶対内心あの子は頭抱えてるよ。みんな感動したような視線を向けてるけど、ダメだって。

やばい、マジで誤解されてるわ。あむはここでもクール&スパイシーだわ。



「あぁ、私がキャラなりすればよかったかな」

「いや、それはダメだから。あむちゃんのためにならないよ」

「結局ここでも、ヒロインへの道は通そうなのですぅ」



僕の近くで待機していたキャンディーズが、困ったようにそう口にする。

いや、実際困ってるんだよね。だって、いきなりアレだもの。



「あむちゃん・・・・・・本当に仕方ないわね。恭文君、こうなったらあなたの出番よ。
さぁ、あなたの輝きを見せてあげて。そして、この空気を一気に変えるの」

「いきなり僕に全部吹っかけるの、やめてもらえますっ!? てーか、マジで無理だってっ!!」



フリーダムダイヤとバカな会話を小声でしている間に、あむが壇上から降りて来る。

クールを装っているけど、内心はビビっていると見ていいだろう。



”とにかく、あなたも”

”分かってるよ”



そして、あむと入れ替わる形で壇上に行く。・・・・・・ど、どうしよう。普通にやり辛い。



「恭文君、私がキャラチェンジするわね」



うん、絶対にしなくていいよっ!? てゆうか、僕は逆に聞きたいなっ! 普通にしてどうするんだよっ!!

てゆうか、ダイヤのキャラチェンはただキラキラするだけに終始してるじゃないのさっ! それで何が変わるのよっ!!



「えー、ここは私だって」



とにかく、早く終わらせよう。なんかシャシャリ出てきたランにキャラチェンされないうちに、僕は壇上に急いで上がる。



「いや、だからお前ら・・・・・・恭文とあむや私達の話を聞いてなかったのか? 基本ここでは」



でもその瞬間、足がもつれた。そして・・・・・・僕は、思いっ切り前にコケた。



「・・・・・・あ」

「コケたね」

「あわわわわわわわっ! 恭文さん、大丈夫ですかぁっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、彼女と恭文はどうだ?」

『いや、あの子カッコえぇな。もうあれやで? 服の着こなしばっちりで、壇上に上がって一言『・・・・・・ま、よろしく』や。
シグナム辺りはなんや苦い顔してたけど、他のみんなはもう大騒ぎや。もうな、うちから見てもめっちゃカッコよかったんやから』






クラウディアの艦長室で、はやてに通信をかけて確認。その理由は、今日出向になったあの二人だ。

しかし、彼女がこちらに留学しようと考えていたとは・・・・・・最初に話を聞いた時、僕はビックリしたぞ。

だがあの子・・・・・・あぁ、またやってしまったんだな。僕の知っている日奈森あむは、そういう子ではない。



人見知りで口下手で、そして内気な少女だ。強い部分も内包しているが、それでもだ。

そういうのが色々誤解されて、聖夜小でも今のはやてやシグナムのような評価をされたらしい。

だが確かあの子、転校初日でそれをやって、外向きのキャラが暴走したのではなかったのか?



今頃頭を抱えていなければいいが。正直、僕は知人として色々不安だ。






『で、恭文は・・・・・・壇上から転げ落ちた。それも思いっ切りや。
アレや、アイツはちょおあむちゃん見習った方がえぇ。カッコ悪過ぎやし』

「・・・・・・そうか」





やはり勘違いしている。はやて、日奈森あむという少女はそういうキャラじゃないんだぞ?

そんなに目をキラキラさせるな。君は幾つだ? 13歳の子にそこまで憧れるのは、間違ってるだろ。

マズい、僕まで色々と不安になってきた。はやてが目をキラキラさせているのが、異常に怖い。



まさかとは思うが、一部を除いて基本こんな感じなのか? ・・・・・・あむ、心中察するぞ。





「それで今は恭文とあむは? また失踪されては困るのだが」

『シグナム達にお願いして、探索の真っ最中や。もうすぐ来るやろ。
・・・・・・で、クロノ君。ぶっちゃけあの日奈森あむっちゅう子は、何者なんよ』



はやての視線が厳しい。まぁ、それは当然か。彼女がどういう人間かは、僕達の身内の中でも極限られた人間しか知らない。

もっと言うと、僕と恭文、ヒロリスさんとサリエルさんだけだ。はやて達には、しゅごキャラやイースターの事は伝えていない。



『恭文の友達でめっちゃカッコいい子言うんは分かったけど』



いや、あの・・・・・・はやて? お前はやっぱり色々と勘違いをしているぞ。



『それだけやないやろ? 魔力資質はあるけど、正規の教育を受けてない言うから、局や嘱託の魔導師繋がりでもない』

「そうだな、簡単に言えば恭文とは戦友と言っていい。そして、恭文を深く理解している。
下手をすれば君やフェイト、僕達ハラオウン家の人間よりずっとだ」

『はぁ? どういう事よ』

「すまないな。詳しい事情はほとんど話せないんだ。ただ、そういう存在で恭文も心を許している。
だからこそ恭文の現状を知って、力になるために一緒に出向したんだ。そこだけ覚えてくれればいい」

『・・・・・・なるほどなぁ』










はやては僕が曖昧な言い方をしたにも関わらず、一応は納得してくれた。

というよりあむ・・・・・・すまない。本来であれば、僕がフォローするべきだと言うのに。

いや、こういう場合はやはり同じキャラ持ちの方がいいのだろうか。





僕は未だにしゅごキャラが見えていないわけだし。キャラ持ちの危機には、やはりキャラ持ちか?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あたしまたやっちゃったー!!」

「あむちゃん、落ち着いてっ!? 大丈夫、大丈夫だからっ!!」

「・・・・・・あむ、学習しない子だね。きっと聖夜小転校後のアレコレがまた襲ってくるよ」



外キャラ・・・・・・外向けのキャラ。あむの外向けのキャラは、クール&スパイシーなカッコいいキャラ。

そして、それが最初の挨拶で炸裂した。やっちまった。この子、マジでやっちまったよ。



「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! もう外キャラどうこうは外そうって決めてたのにー!!」





現在、あむは廊下で頭を抱えている。まぁなぁ・・・・・・僕もあれ見た時、やっちゃったって思ったもん。

だって、普通にみんなの前で『・・・・・・ま、よろしく』だよ? それもクール&スパイシーでだよ?

僕は僕で壇上から転げ落ちたけどさ。正直それはいいのよ。僕はただ、あむが心配でならない。



あむって、初日でトチったりトラブルに見舞われる悪癖でもあるのかな。ダイヤに×が付いた時も、コレだったし。





「大丈夫よ、あむちゃん。ほら、恭文君を見て?
恭文君は隊舎復旧初日で転げ落ちたんだもの。それに比べれば、まだ平気よ」

「ダイヤ、うっさい。そこは僕も分かってるから言わない・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁっ!!
僕もどうすりゃいいのっ!? もう嫌だっ! 六課になんて一秒足りとも居たくないんですけどっ!!」

「恭文、お前までそれなのかっ!!」

「・・・・・・初日に墓穴を掘る悪癖は、お兄様も同じくですね。二人して外向きのキャラが定着です」

「「それは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」



あぁ、僕達どうすればいいのっ!? マジでこういうのゴメンなのにー! 普通にゴメンなのにー!!



「・・・・・・お前達そこに・・・・・・何をしている」

「よし、ちょっと星の道に入ってくるっ! そうしてあたしは最初からやり直して」



星の道・・・・・・あぁ、あむと僕が卒業間近で入ったアレだね。

え、ちょっと待って。星の道って考えようによっては・・・・・・タイムマシンッ!?



「よし、あむ・・・・・・僕も付き合う。それで二人で今日と言う日をやり直そう。
大丈夫。今だけは、今この瞬間だけはやり直せるさ。はい、決定」

「恭文・・・・・・そうだね。うん、やり直そう。
今だけは、今回だけは許されるよね。というわけでダイヤ、今すぐキャラなり」

「あむちゃん、恭文君もダメよ。そんな事に星の道を使うなんて禁止」

「だったらどうすればいいのっ!? あたし、ミッドに来てまでクール&スパイシーに見られるなんて嫌なんですけどっ!!」

「僕だってハードボイルドキャラが台無しじゃないのさっ! マジでどうしろって言うのさっ!!」



ダイヤに詰め寄るように、僕達は近づく。ダイヤが怯えたように下がるけど、その分近づく。

もう僕達は必死なんだよ。必死過ぎて明後日まで全力疾走なのよ。何の問題があると?



「お前達、こっちを見ろっ! そして普通に廊下で騒ぐなっ!!」

「「うるさいっ! ちょっと黙っててっ!!」」



あぁもう、さっきからギャーギャーうるさいな。こっちは大事な話中だって言うのに。



「ふざけるなっ! それが上官に対しての口の聞き方かっ!! それになにより・・・・・・日奈森あむっ! その服装はなんだっ!!
さっきの挨拶もそうだが、部隊での仕事をナメているのかっ!? もう少ししっかりとしろっ! ここは遊び場じゃないんだぞっ!!」

「うっさいっ! こっちはその挨拶を何とかするために会議してんのっ!! 邪魔しないでくれるっ!?
大体、ギャーギャーギャーギャーうっとおしいっ! TPOを弁えて声出しなよっ!!」

「同じくだよっ! てーか空気読めっ!? 普通に空気を読めよっ! このバカっ!!
KYな奴はね、レジが打てない店員と同じくらいに必要ないんだよっ! とりあえず消えろっ!!」

「・・・・・・・・・・・・貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
もう許さんっ! 今すぐレヴァンティンの錆にしてくれるっ!!」

「あぁ、シグナム副隊長落ち着いてくださいっ! というか、なぎ君もあなたもこっちを向いてっ!?
今、すごく大事な局面だからっ! すっごく大事な局面なんだからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、揉めに揉めまくって時間かかったと」

「まぁ、そうですね。どういうワケか、あの人あたしと恭文に対してキレまくるし。
その上デバイスセットアップして、いきなり斬りかかるし・・・・・・どうなってんですか、アレ」



ホントだよ。あの人、カルシウム足りてないんじゃないの? いくらなんでもキレ過ぎだって。



「うん、多分シグナムがそれやったと思うけどな。間違いなくそうやと思うけどな。
・・・・・・まぁ、キレたからって廊下でデバイス持ち出したらあかんよな。うちからよう言うとくわ」

「おねがいします。・・・・・・あの、ところではやてさん・・・・・・じゃなかった。八神部隊長」

「あー、一応でもちゃんと敬語使ってくれるんやなぁ。うんうん、えぇ子や。恭文、アンタも見習い?」



現在、ここは部隊長室。ようやく僕達は、ここに到着した。で、色々と話し合っている最中。

ただし、僕と部隊長であるはやてとあむだけじゃない。他にも三人程居る。



「・・・・・・シャマル、頼むから日奈森を睨むな。なぜいきなりそうなる」

「だって・・・・・・恭文くんがまたフラグを」

「シャマル、ヤキモチ焼きですねー。というか、恭文さん久しぶりですー」

「・・・・・・うん、そうだね。久しぶり。でもさ、お願いだからリインもシャマルさんも、くっ付くのやめてくれない?」



シャマルさんとザフィーラさんとリインである。そして、シャマルさんはあむに対してライバル心全開。

・・・・・・なんでだろうね。きっとアレだね、シャマルさんはクール&スパイシーになりたいんだよ。



「・・・・・・恭文にちゃんとお休み、あげてもらえます?
コイツ、家でボロボロになりかけてて、マジ見てらんなかったし」



あむは、またもやぶっきらぼうにそう言った。そう、ぶっきらぼうになのよ。



「ホントにそこはお願いします。あたし、友達としてそこだけは本気でお願いしたいんですけど」



つまり外キャラ全開。今は知らない人沢山だから、現状で普通に警戒してると思われる。



「お兄様、日奈森さん・・・・・・きっと内心頭を抱えていますね」

「というより、はやては絶対にあむのキャラを誤解しているだろ。見ろ、あの目を」



シオンとヒカリに言われるまでもない。はやてのあのキラキラした憧れの目を見れば、それは予測出来る。

あぁ、シャマルさんのあむを見る目力が強く・・・・・・あむ、どうすんのさソレ。もう剥がせないでしょ。



「うーん、あむちゃん全然だめだなぁ。・・・・・・よーし、それなら」



アレ、なんかランがすっごい企んだ顔になった。・・・・・・ま、マズい。



「もうそこはもちろんや。しっかりお休みあげるし、有給かてバシバシ使ってえぇよ。
あ、あむちゃんのお給金もしっかりしとくから、安心してな」

「素直じゃない子は、素直な良い子に・・・・・・キャラ」



あぁ、やっぱりこのパターンだっ! ラン、今はダメっ!! 今はダメだよっ!?

ほら、空気読んでっ! 普通に今はマズ過ぎるからっ!!



「チェン」

「キャラチェンジです」



ランが言い終わる前に、シオンが右目をウィンクして横取りした。



「あー、私がやるのにー!!」



その時、あむの左側の髪を結わえている赤いバッテン印のアクセサリーが銀十字に変わった。



「・・・・・・ありがとうございます」



キャラチェンジ・・・・・・キャラ持ちであれば、誰でも使える特殊能力。

そのしゅごキャラの能力を使う事が出来ると考えてもらえれば、大体合ってる。



「え、あむちゃん? なんでうちの手を取るんよ」

「言葉だけでは、私の感謝の気持ちは伝わりません。
ですから・・・・・・この手からも、伝えたいんです。だめ、でしょうか」

「い、いいや? そないな事ないよ。てーか、また礼儀正しいなぁ」

「当然です。これからお世話になるのですし、ここはちゃんとさせていただきたいんです」





ただ、それだけじゃない。僕とあむの場合、キャラチェンジすると性格が思いっ切り変わる。

例えばランとキャラチェンジしたら、ランみたいに明るくて活発な性格になる。

あ、ちなみにランの能力は運動関係の事が得意になるの。すごい高度まで跳んだり出来る。



で、今はシオンがあむとキャラチェンジしたから・・・・・・あむの性格が、シオンみたいになってる。




「それは八神部隊長だけでなくて、みなさんも同様に。みなさん、これからしばらくの間、よろしくお願いしますね」



あむがこちらを振り向きながら、穏やかな天使の笑顔を浮かべる。・・・・・・それに全員、素直に頷く。

というか、若干戸惑いが無くはない。だっていきなり声色から変わってるんだもの。



「・・・・・・あの、よろしくお願いします」

「こちらこそ頼む。特に蒼凪には色々と気遣ってやってくれ」

「ですです。あむさん、よろしくですよー」

「もちろんです。恭文は私にとって、とても大切で・・・・・・いとおしい存在ですから」

『はぁっ!?』



や、ヤバいっ! 普通にキャラチェンジのせいで、言動がシオン張りに紛らわしくなってるっ!!

僕はあむとリインの右手を取って、すぐさま部屋を退散。もちろん小走りで。



「じゃあ、予定通りオリエンテーリング言ってくるねっ!?
というか、リインの案内で隊舎見学ねっ! それじゃあみんな、お達者でー!!」

「ちょ、恭文くん待ちなさいっ! これはどういう事か、ちゃんと話をっ!!」




当然のようにシャマルさんの声は無視して、僕は全力ダッシュ。・・・・・・や、ヤバかった。



「・・・・・・シオン」



少し歩速を落としながら、ボクは右隣のシオンを見る。なお、シオンはどこ吹く風で僕を飛びながら追いかけた。



「私のせいではありません。日奈森さんの深層意識の問題です。というか、それならランさんでしょう」

「えー、だって私はあむちゃんが素直じゃないから」

「それでもダメだよ。ラン、忘れたの? ボク達、ここではキャラチェンジやキャラなりも出来る限り控えないといけないんだから」



ミキに呆れ気味に言われて、ようやくランが思い出したのか『あ』と小さく呟いた。

・・・・・・全く、この脳天気娘は。普通に忘れるってどうなのさ。



「あははは、ごめん。つい」

「ついじゃありません。もうランは本当に・・・・・・恭文さんとあむちゃんのお話、聞いてなかったんですかぁ?」

「き、聞いてたよっ!? ちゃんと私も聞いてたんだからっ! うん、そこは絶対っ!!」



つまり、聞いてた上で忘れてたと。でも、他は大丈夫そうでよかった。いや、普通に安心だよ。



「もう、恭文・・・・・・大胆ですね。このまま私をさらって、どうするつもりなんですか?」



・・・・・・ヤバい、キャラチェンジ解除したい。でも、した瞬間に大騒ぎになりそうで怖い。

事情説明しても納得・・・・・・してくれないだろうなぁ。あははは、どうしよう。



「あの、恭文さん」



左手で抱きかけたリインが、疑問そうに僕の顔を見上げる。そして、ラン達に視線を移す。



「シオン達は前にお話させてもらったので、分かるのです。でも、この四人は誰ですか? また生まれたですか?」

「違うよ。ラン達はあむのしゅごキャラなの。あむ、僕と同じキャラ持ちなんだよ」

「あぁ、それで・・・・・・えぇっ!? あむさんがキャラ持ちって、どういう事ですかっ!!」

「そこもオリエンテーリングしながら説明するよ。そうすれば、納得してくれると思う」










とにもかくにも、あむのキャラチェンジを解除した上で、オリエンテーリングは開始した。





なお、あむが非常に強い目で僕とランを見たけど・・・・・・いや、正直理不尽だと思うのよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それから、非常に色々あった。なお、詳しくはFS第2話を参照してもらう。

あははは、ぶっちぎりで色々重なる部分もあるのよ。これでいいでしょ?

で、あむは外キャラ全開なのにフォワード四人と食事して・・・・・・うわ、辛かったなぁ。





とにもかくにも現在、僕とあむは・・・・・・普通に演習場に居た。










「・・・・・・アンタがまた余計な事言うからっ!!」

「あぁもう、分かってる。分かってるから。とりあえず現状は何とかするよ」



お昼時に、スバルに模擬戦を申込まれた。なので、許可があれば出来ると言った。

そうしたら・・・・・・普通に許可取って、即日で申し込んできやがった。だから僕達、ここに居る。



「恭文、あむちゃんも全力で来てね。私達もしっかりやるから。ね、ティア」

「・・・・・・まぁ、アンタ達も諦めなさいよ。普通にこの子、聞かないから」



スバルとティアナが普通にやる気満々だったりする。てーか、マズい。これはマズい。

僕はいいのよ。でも、あむがマズい。キャラなりとキャラチェンジは極力封印なんだから、絶対勝てない。



「というわけで早速」

「だから待てっ! こっちは色々事情込みなんだから、ちょっと待てっ!!
・・・・・・師匠っ! 聞いてるんですかっ!? 師匠っ!!」

『なんだ? 言っておくが模擬戦のキャンセルは無理だぞ。これ、ある意味歓迎会だしよ』

「もうキャンセルしろとは言いませんよ。ただ、あむを参加はやめてください。絶対スバルとティアナに勝てませんから」



通信を繋ぐのは、師匠。この模擬戦に許可を出して、準備をしてくれた苦労人。

なので、お話してるの。ほら、あむは本気でどうしようか考えてるし。



『でも、ソイツ魔導師なんだろ?』

「違いますよ。確かに魔法は使えますけど、完全無欠に素人なんです」



僕が教えたのを一つ二つね。簡単な跳躍に飛行魔法を応用したりとかだけで、ほとんど素人だよ。

だけど、師匠は今ひとつ信じてくれないらしい。普通に首を傾げて、表情に疑問の色を浮かべる。



『いやいや、そんな事ねぇだろ。もうみんな知ってるぞ? お前が連れてきた以上、相当優秀で出来る奴だってな。
ほら、朝の朝礼見れば分かるだろ。アレは・・・・・・アレだ、一流だからこそ出せる空気だな。自信満々だったしよ』



きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 師匠まであむの外キャラに騙されてるっ!? てーか、みんな知ってるって何っ!!

まさか、そういう噂になってるっ!? や、やばいっ! これって普通に二次創作で言うところの勘違い物なんじゃっ!!



「違いますよっ! あむは本気で素人なんですよっ!? プロの職業魔導師の二人相手に出来るわけないでしょっ!!」

『またまた、そんなわけが・・・・・・マジか?』

「マジですよっ! てゆうか、なんでそんな話にっ!?
僕、事前にあむの能力値とか経歴とか送ってましたよねっ!!」

『いや、なんかフェイトとかが能力値は平均でも、相当な凄腕かも知れないって言ってて』



フェイトのせいかっ! くそ、だからはやてとかがやたらと評価してたってわけっ!?

あぁもう、この調子だと普通にあむの外キャラ、たった一日ですごいことになってるじゃないのさっ!!



『でも、そういう事なら分かった。ティアナとあむを下がらせて、お前とスバルのタイマンだな』

「えぇ、本当にお願いします。・・・・・・フェイトのバカ、絶対シバいてやる」

『あー、やめとけ。てーかアタシも悪かった。なんだかんだで噂に踊らされちまったしな』










とにもかくにも、涙目なあむと疑問顔なティアナには下がってもらって・・・・・・タイマンが始まった。





あはははは、普通に初日からコレって、すっごい不安なんですけど。ね、僕が何したっていうの?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・恭文が魔導師として戦うのを見るのは、実は初めてじゃない。

イースターの戦いもそうだし、定期的に地球に来てくれたヒロリスさん達との模擬戦も見学してたから。

だから、あたしは知ってる。恭文がどれだけ強いか。そして、スバルさんがどれだけ強いか。





あたしがずっと恭文の側でそういうの見てたの、見取り稽古って言うのになってるらしい。

戦闘や実戦形式の訓練の様子を見て、動きや呼吸、立ち回り方をそこから盗む訓練。

本当に自然となんだけど、あたしやラン達はそれが出来てるってヒロリスさんに言われた事がある。




確かに恭文と関わるようになってから、ミキの身のこなしがよくなったりしたし、一応効果はあるらしい。





だからなのかな。演習場でセットアップして対峙した二人を見るだけで・・・・・・色々と分かる。










「・・・・・・あの、ティアナさん」

「ん、何?」

「スバルさんって、強いですよね」

「まぁね。一応うちのチームのフロントアタッカーだから。・・・・・・あ、その辺りは」

「あ、そこはなんとか。恭文や恭文の友達から、色々教わったんで」



つまり、恭文と同じって事か。でもローラーに右手のナックル? どういう戦い方するんだろ。

まさか、あのローラーで走って突っ込むとかは無いだろうしなぁ。



「でもアンタ、マジで素人なの? 私もすっかり噂信じてたんだけど」

「あ、私もです。すごく強い魔導師だって、もう六課中で持ち切りでしたし」

「僕もヴァイス陸曹やグリフィスさんが、相当話しているのは聞きました」

「あは、あはははは・・・・・・なんというかごめんなさい。でもあたし、マジで留学準備中の一般人だから」



あぁぁぁぁぁぁっ! やっぱりアレのせいだよねっ!? 恭文からも『半分自業自得だよ』って言われたしっ!!

あたしのバカー! 小学校卒業して、中学生になったんだからもうこういうの無しだって決めてたのにー!!



「なら、あむさんはどうして恭文さんの補佐に? 私達みたいな局員になる予定があるわけじゃないんですよね」

「うん」



これも考えている事の一つ。でも、今はいい。もうちょっとだけ色々見てから、決めたいから。

あたしなりの現実との関わり方や、将来の形。何でもいいから今は、一杯勉強したいの。



「アイツ、ちょっとこっち来るまでに色々あってね。見てられなくて、手伝うーって言ったんだ」

「・・・・・・あむさん、それだけ、ですか? 他にないんですか? 局員になりたいとか、そういうのがあるとか。
あの、お昼の話だと地球からわざわざ来たみたいに聞いてたので、僕は他に何か色々あるのかなと思ってたんですけど」

「留学準備の事を除けば、それだけだよ。だって、友達が困ってたら全力で助けたいって、誰だって思うじゃん。
どこに居るかなんて関係ないよ。どこに居たって、世界が違ってたって、友達は友達じゃん」



特に恭文には、色々迷惑もかけちゃってるから余計に。大事な友達だから、そう思うのは当然。

だけど、なんでだろう。普通にそう聞いてきたエリオ君やティアナさんにキャロちゃんまで、疑問顔だ。



「うーん、ティアナさんやエリオくん達からすると、あむちゃんや私達の行動ってちょっとおかしいみたい」

「そうなんでしょうかぁ。お友達を助けたいと思うのは、普通だと思うんですけど」

「まぁ、それは当然かも知れないよね。普通こういうところには、局員になる事前提で来ると思うし。もしくは、功績を上げて出世するとか」

「恭文君みたいに自由気ままな子でなければ、基本それよね。さて、お話はそろそろにして・・・・・・始まったわよ」



ダイヤの言うように、二人が飛び込んだ。飛び込んで・・・・・・刃と拳が交差した。

てゆうかアレ、普通にローラーで走ってるしっ! それもすっごい加速してるっ!!



「これは驚きだわ。デバイスにはあんな物もあるのね」

「恭文、基本的にあんな機械仕掛けなタイプのは使わないしね。
アルトアイゼンだって刀だし・・・・・・あぁ、これは面白いかも。よし、早速スケッチだ」



ミキが鉛筆とノートを取り出して、忙しなく動かし始める。でも・・・・・・あたしは気づいた。

ううん、あたしだけじゃない。多分恭文の事を元から知ってるなら、全員だ。



「ねね、恭文魔法ほとんど使ってないよね」

「あ、ホントですねぇ。まだお疲れモードなんでしょうかぁ」

「違うよ。あのバカ、知らない人も多いからまた外キャラ出して、手札隠してるんだよ。
ほら、あたし達も最初の頃、何出来るかとか全く知らなかったじゃん」

「そう言えばそうだね。じゃあ、もしかして恭文・・・・・・魔法なしでスバルさんに勝つつもりっ!?」

「ラン、それありえるよ。・・・・・・全く、相変わらずひねくれてるんだから」










機動六課に来て最初の一日は、こうして波乱を含んだ上で継続中。





あたし、この調子が毎日続いて、やってけるかどうか・・・・・・かなり自信無いんですけど。




















(第2話へ続・・・・・・きません。すみません、これテスト版なんです。普通に続きません)





















あとがき



恭文「というわけで、シリアスモードもやりつつ改訂版25話ですよ。今回は改定前だと22話だね」

あむ「でも、書いてない部分もあるんだよね。あと、時間軸も変わってる」

恭文「まぁ、この辺りは普通に改訂だから。いやぁ、結局大荒れにしかならなかったよ。あはははは。
・・・・・・というわけで、本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。さて、忘れるか忘れないかって話だけど・・・・・・これもまた難しい問題だよね。
過去に囚われ過ぎてて今がダメになるのは、いけないことだけどさ」

恭文「結局、そこは自分で決めるしかないのよ。人が作った正解じゃ、本当の原動力にはならないから。
この話だと僕だけど・・・・・・僕はこういうのは全然捨てられない方だから。むしろ、引きずる」






(それでハードボイルドを通そうとするから、ハーフボイルドになるのです)





恭文「でもさ、ぶっちゃけ人を殺して平然と受け止めるような空気にはしないというのが、作者の意識らしい」

あむ「あ、それは聞いた。それでアレでしょ? 基本とまとの世界観だと、そういうのはいけない事にしてある。
だからJS事件でのフォン・レイメイとかも、基本は負け戦な感じにはしてある。というか、これってどこの少年漫画?」

恭文「道徳的な問題もあるけど、やっぱり法案が・・・・・・法案が怖いの。下手したら規制に引っかかるかも知れないし」

あむ「え、狙いはそこっ!? いや、なんか分かってたけどっ!!
とにかく、リンディさんの好感度がガタ落ちな今回の話だけど、今後は?」

恭文「あ、色々変えていくよ」





(もうそうするしかなくなりました。というか、またハードル上がりました)






恭文「で、みなさんが気になさっているアレとかコレな話も、ちゃんと登場しますので」

あむ「あ、そこは絶対なんだね」

恭文「うん。だって普通に出なかったらドキたまに繋がらないし」

あむ「でもさ、なんだかんだで話数増えたよね。もうプラス4話とかだし」

恭文「やばいね。この調子でやったら、何話になるんだろ。
別に話の本数増やして、同人誌にした時の巻数増やそうとかじゃないのに」





(普通にあれこれ改訂した結果、こうなりました。・・・・・・2年弱の経験のおかげ?)





あむ「でさ、まぁここはいいのよ。・・・・・・このおまけ、何っ!?」

恭文「ほら、アイディアもらったから、ちょっと実験的に勢いだけで書いたんだって」





(なお、あむの設定はしゅごキャラ原作終了後で、六課設立の1年前からクロスと動揺の時間軸でスタート。
六課始動直前に原作終了という形です。そのために、あむとの年齢差も縮まっています)





恭文「なお、ガチにやるなら今回は省いたシーンを色々加えた上でやるけど。
あ、それと僕達は自分や互いのしゅごキャラと普通にキャラなり出来たりします」

あむ「でも、色々変わる感じなんだよね。というか、アレだよね。
どっちかって言うとあたし主軸というか、そんな感じ?」

恭文「一応はね。ただ、僕も主人公やるけど。一度ヘコんで、そこからまた立ち上がる気持ちを固める感じ。
で、当然×たま絡みの単発的な事件とかも起きて、キャラなりとかして・・・・・・だったら、楽しくない?」

あむ「まぁ、それなら・・・・・・うん、分かる。すっごい分かる。とりあえず、今回のこれは実験ということだよね」

恭文「そうだね。その前にドキたま/だっしゅやRemixやあむルートだって。
というわけで、とにもかくにも次は26話。普通に2クール目最後だよ。気合い入れていこー」

あむ「それでは、本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。それでは、また次回に」










(そうして、やっぱりここでも仲の良い二人は手を振って、エンディング。というか、何気に楽しそう。
本日のED:ステレオポニー『泪のムコウ』)




















フェイト「・・・・・・海、綺麗だね」

恭文「うん。あ、フェイト寒くない? これ」(言いながら、着ていたジーンズジャケットを脱ごうとする)

フェイト「ダメだよ。そんな事したら、ヤスフミが風邪引いちゃうもの。
・・・・・・ね、私がお願いしたいのって、こういう事なんだ」

恭文「え?」

フェイト「ヤスフミはいつも、今みたいに自分のジャケットを寒がっている人に渡して温めようとする。自分が寒いのを我慢しちゃう。
それがその人の身体や心を温めるためなのは、分かるんだ。ただ・・・・・・これからは、別の選択も考えて欲しいの」

恭文「ジャケットを渡すなって事かな」

フェイト「違うよ。その人だけじゃなくて、ヤスフミも含めて一緒に温まる方法を探して欲しいの。
もちろん、状況によりけりだよ? でも、それでも・・・・・・そうして欲しい」

恭文「・・・・・・それならまぁ、分かる気がする」

フェイト「よかった。じゃあ」(言いながら、身体を強くくっつける)

恭文「フェイト?」

フェイト「私はヤスフミと一緒に温かくなりたい。私だけ温かいのは嫌なんだ。だから・・・・・・ね?」

恭文「・・・・・・うん。あの、ありがと」

リイン「・・・・・・リイン、すっかり忘れ去られてませんか? ほら、リインも居るですよー」

古鉄≪仕方有りませんよ。ここは空気をしっかり読んで、また次回目立ちましょうか≫










(おしまい)






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あきゅろす。
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