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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第23話 『とある魔導師と閃光の女神のきっかけ』(加筆修正版)



フェイト「前回のあらすじ・・・・・・というか、デートを開始しました」

恭文「二人でいっぱい仲良くしようねー」

フェイト「うん。あの・・・・・・私、頑張るよ」

恭文「というわけで、フェイト・・・・・・さっそくだけどこれをやってもらおうか」





(そうしてまたまた、コンポを持ち出す)





恭文「というわけで、音楽スタート」

フェイト「え、えっと・・・・・・最後のガラスをブチ破れー♪」

ティアナ「アンタ、フェイトさんに何やらせてんのっ!? 普通にもうそれはいいでしょっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・さて、はやて」

「なんや。今えぇとこなんやから邪魔せんといてな」

「いや、そういうことじゃなくてさ。どうして僕はこんなところに居るんだい?」

≪尾行するために決まっているじゃないですか≫



うん、そうだね。そうらしいね。でも、そういうことを聞いているんじゃないんだよ、アルトアイゼン。



「・・・・・・なんで僕が、『恭文とフェイトちゃんのデートを尾行』するためにここに居るのかを聞きたいんだよっ!!」

「ヴェロッサ、アンタ何時ちゃん付けで呼ぶ程親しくなったんよ」

「当然だろ? さすがにこの場で執務官と呼ぶのは、普通に空気を読んで・・・・・・って、違うからっ! まず僕の質問に答えてっ!!」





はやてに突然呼び出されて、来たのは最近出来た海上の娯楽施設。ラトゥーア。

別会社が建てようとしているマリンガーデンに先駆けて出来た、一大レジャー施設だ。

まぁ、そこはいいさ。恭文がフェイトちゃんと楽しそうにデートしているのもいい。



だけど、なんで尾行する必要があるのっ!? まずそこから分からないしっ!!





「いや、アイツがなにかやらかしたら不安やろ?」

≪私の出番が欲しかったんですよ≫

「うん、アルトアイゼン。色々と自重していこうか」



・・・・・・恭文。まぁ、トウゴウ先生もなんだけど、凄いよね。この調子にずっと付き合っているんだから。

とにかく、僕達は二人の後をこっそりとつける。当然、バレないように。



「くそ、もうちょい近づかんと様子分からんよ」

≪ダメですよ。これ以上近づいたら、あの人のテリトリーです。確実に存在を掴まれます≫





いや、それでも500メートル以上は離れてるのに。

・・・・・・あぁ、そう言えば恭文は、魔法無しでの探知能力が凄かったんだよね。

僕、前にクロノの所に遊びに来た時、部屋の前に居るのを察知されてビックリしたよ。



でも、納得した。これ以上近づいたら、僕達の存在が軽く察知されると。



さすがに長年のパートナーだから、そこが分かるのか。





「くそ、また厄介な能力持ちおってからに。おかげで尾行もやりにくくてしゃあないで」

≪あの人のなりの努力と『なりたい自分』を目指した成果ですよ。
元からじゃないんですし、文句言わないでください≫

「まぁなぁ」





クロノから軽くは聞いている。恭文が目指しているのは、言い訳をしない自分。

『魔導師だから』、『局員だから』・・・・・・そんな言葉や理屈で、止まったりしない自分。

魔法無し、デバイス無しでも戦闘が出来るように、色々と頑張っていたらしい。



そしてそれは、僕達の苦労に結びつくというわけだよ。あれ、なんだか色々間違ってるな。





「・・・・・・というか、はやて。いいのかい?
君、ヒロリスやサリエルさんのことで、そうとう絞られたそうらしいじゃない」



それも昨日だよ。つい昨日の話だよ。色々聞いちゃったから、僕は知っている。



「それなのに、また勝手に行動して」

「・・・・・・うん、みんなひどいんや。うちが完全に悪者扱いなんよ」

「いや、実際悪者だろうしね」



恭文以外の誰にも相談無しでやらかしたわけだし、そりゃあみんなお冠になるさ。

特に高町教導官とヴィータは凄かったと、軽く聞いている。・・・・・・そりゃあなぁ。



「はやて、ある意味自業自得なんだから・・・・・・お願いだから、僕を睨むのはやめて欲しいな」

≪ただ、戦力強化の名目も含めて、最終的には納得してもらったらしいですね≫

「まぁな。ヒロリスさん達を動かすような自体にはせぇへんつもりやけど、それでもや」





はやては、ラトゥーア内を歩く二人を見ながらそう言う。なんでも、そうらしい。

ヒロリス達は、あくまでもバックヤードスタッフの一員として入る。

二人ともオーバーSクラスはあるけど、普通にもう引退しているもの。



だから、前線メンバーではない。だから、人材制限にも干渉されない。

なお、ここは二人も納得しているとの事。ただ、はやてはこうも確約しているらしい。

二人はあくまでも教導の補佐。何か起こっても、基本は元のスタッフだけで解決すると。



ようするに、二人を前線に出すような事態にだけは、絶対にしないように頑張るってことだね。



はやてなりの意地というか決意というか、そういうのを感じたのは、気のせいじゃない。





「・・・・・・チビスケに、色々と負担かけてもうてるしな」



そうしてはやては、ずっと見続けている。片想いの女の子と手を繋いで、幸せそうなあの子を。

見ている僕達も、少しだけその気持ちが伝わってくるような笑顔を、ずっと浮かべている。



「その上、ヒロリスさん達まで戦わせたりは出来んよ。マジでそこはしっかりせんと、また反省材料増えるよ」

「・・・・・・一応は、申し訳なく思ってるんだ」

「まぁな。泥被らせてもうた事には、めちゃくちゃや。ただ、うちはアイツに対しては絶対謝らん。
謝る必要なんてないし、そんな事をする意味もないと思う。ここも、なのはちゃん達に言い切ったわ」



ゆっくりと、気配を殺しながらも僕達は足を進める。二人は、とりあえず広い施設内を軽く見ることにしたらしい。

楽しげに話す様子は、身長差があっても恋人に見えると僕は思う。二人とも、それくらい楽しそうだしさ。



「それはまたどうして?」

「アイツに『謝る必要はない』って言われたからや。自分も同じだから、そんな必要ないってな。
つまり、うちらは共犯関係っちゅうわけや。そやから、どっちが悪いとかそう言うんはない」



はやてはそう言いながら苦笑する。顔を一旦僕に向けて、人懐っこい色をその苦笑いの中に含める。



「まぁ、なのはちゃん辺りは不満そうやったけどな。それも相当や」

「なるほどね。で、恭文がそこまで言い切る原因は」

「当然、フェイトちゃんやろ」



そして、はやての視線が自分の幼馴染に移る。それは、僕も同じく。・・・・・・僕は幼馴染じゃないけどね。



「つまり、恭文はスカリエッティのアジトでの事」

「相当気にしとる。アンタかて、見ていて分かったやろ?」

「まぁね。多分、最初の頃に恭文が色々力入れ過ぎていたのは、そのせい・・・・・・だよね?」

≪でしょうね。何も言いませんけど、今度こそ守ろうとしてたんでしょ。あの人、バカですし≫



それに、僕達二人は納得した。本当に色々と。・・・・・・そのために、かぁ。

フェイトちゃんが聞いたら、きっと色々気にしちゃうだろうな。また優しい子同士だから余計に。



≪あ、お店に入っていきましたよ≫

「・・・・・・あぁ、水着ショップか」



二人一緒に、色取りどりの水着を一緒に選んでいるね。アレだけ見ると、いい雰囲気だ。



「まぁ、二人ともこれくらいはな。というか・・・・・・なんで顔赤いんや?」

「やっぱり、照れるんだよ。サイズを知られたり、知ったりとかはね」

「経験談か?」

「ノーコメントで」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・水着ショップ?」

「うん。あのね、シャーリーに言われたの。服とかもそうだけどその・・・・・・『枯れてる』って。系統が似通っていて、枯れているって」

「よし、ちょっとシャーリー潰してくるわ」

「ダメだよっ! その・・・・・・事実ではあるものっ!!」



黒とか黄色とか、そういうのが多いとは自分で思っていた。だから、突き刺さった。

さすがに、私だって女の子。そういうことを言われると傷つく。だから、頑張ることにした。



「なるほど、納得した」

「ごめんね。いきなり私の都合につき合わせちゃって」



正直、申し訳ない。仕事があったとは言え、こういうのは事前が定石だと思うから。



「いいよそんなの。・・・・・・というかさ、あの」

「なに?」



そんな話をしつつも、私達は水着ショップへと入る。ラトゥーア中にある、スポンサーの系列店。

きっとこれは、室内施設との相乗効果を狙っているんだよね。うん、納得。



「いや、僕はなんなら外で時間潰してくるけど」

「・・・・・・ヤスフミ? そんなのダメだよ。デートなのに、勝手な行動」



言いかけて気づいた。・・・・・・ヤスフミ、基本的にこういうのでリードは出来る子だもの。

そこは私も知ってる。私以外でもデートの経験はあるし、そういうのでそこはちゃんとしてる。



「あの、ヤスフミ。居るのが辛いのかな。私の水着だと、他の女性のお客さんも居るし」

「あー、そうじゃなくてさ。その」

「うん?」

「僕が居たら、選びにくくない? ほら、僕男だし」





・・・・・・そういうことだったんだ。確かに・・・・・・その、サイズとかを知られるのは少しだけ躊躇う。

でも、うん・・・・・・いいかな。それに、きっとこういう事が必要なんだ。

二人で、一緒に話しながら、色んなことをしていく。そういう事から始めないと駄目なんだ。



きっと、私の胸のサイズとかを知られると恥ずかしいとかそういう事を思っちゃうのも、大事なんだ。





「あの、大丈夫だよ? というか・・・・・・一緒に選んで欲しい」

「いいの?」

「うん。今日は思いっきりイメチェンしたいから、アドバイザーが欲しいんだ。お願い」

「・・・・・・分かった。なら、頑張る」










それで二人で、水着を選ぶことにした。ヤスフミ、少しだけ顔が赤い。

・・・・・・無理ないよね。こういうの、初めてだし。

というか、私も少し・・・ドキドキしてる。あの、なんかおかしいな。





うん、いつもみたいに出来ない。あ、でもこれでいいんだよね。





全部を剥がして、今のヤスフミをちゃんと見ていくんだから。だから、これでいいの。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第23話 『とある魔導師と閃光の女神のきっかけ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、水着を無事に選び、ショップを出た。そうすると・・・・・・もうお昼。





なんだかんだで、一生懸命選んでしまった。だから、沢山頑張った。










「結構時間、使っちゃったね」

「でも、その分いいものが選べたしね。うん、十分イメチェン出来てるよ」

「なら、嬉しいな」



・・・・・・やっぱり、フェイトおかしい。こう、なんかいつもと違う。

まぁ、保護者モードが入らないってのは、いいことなのかな?



「とにかく、お昼だよね」

「そうだね。何食べようか」



フェイトの声を聴きながら、僕はラトゥーアのパンフレットを開く。確か・・・・・・・あ、あった。



「フェイト、ここなんてどう?」

「バイキング・・・・・・わ、なんだか豪華だね」

「でしょ? せっかくだしいっぱい食べようよ」

「うん」





そして、僕達はラトゥーアの中にあるバイキング店にきた。

つーか、規模が凄い。各世界の名物料理が食べ放題ですよ。

結構珍しいのもあるし。ま、デート中だから、臭いのきつくなるのはアウトだけど。



それでも、僕もフェイトも大盛りで食べる。食べて、幸せを満喫する。・・・・・・うぅ、楽しいなぁ。





「・・・・・・美味しいね」

「うん。レベル高いわ」



僕もそうだし、フェイトも恵比寿顔。というか、幸せを二人で感じてる。



「というか、ヤスフミ」

「なに?」

「なんか、ちょっとだけ真剣」

「・・・・・・バレてたか」

「うん、バレてた」



僕は食べながら、真剣なオーラを出しまくっていた。理由は簡単だ。



「うちで再現するために、しっかり味わいたくて」

「・・・・・・納得した。というか、料理好きだよね」

「まぁね。作るの楽しいし」





・・・・・・自分の作ったものを、フェイト・・・・・・だけじゃないな。

みんなが食べてくれて、美味しいと言ってくれる。それが嬉しい。

僕の中にあるのは壊すことだけじゃない。戦うだけじゃない。



ささやかだけど、そんな幸せを紡ぐことが出来る。

そういう料理の時間が、実は僕は、かなり好きだったりする。

ちょっと照れくさいから、フェイトには言えないなぁ。





「・・・・・・なんか、隠し事してる?」



なんでこう勘が鋭いのさ。恐ろしさすら感じても、それは罪じゃない。



「そんな事ないよ? もう全然隠してないし」

「ダメだよ。ちゃんと話して? 今日は、たくさん話すの。
話して、コミュニケーションしていく日なんだから」

「うー、分かったよ。でも、笑わないでね」

「ヤスフミが笑って欲しくないなら、絶対笑わないよ。それで、何かな」

「えっと」



今思っていたことを、正直に話した。すると・・・・・・あれ、なんでそんなに微笑む?



「だって、今までそんな話してくれなかった。だから今聞けて、嬉しいの」

「・・・・・・なんか、照れくさいの」

「照れることないよ。もっとそういう話、聞きたいな。
あの、聞くだけじゃない。私も・・・・・・話していきたいから」

「・・・・・・・・・・・・うん」










それでフェイトと美味しいご飯を食べながら、話した。





普段は話せないことを、少しだけ。うん、幸せかも。こういうの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、選び終わって試着。・・・・・・また大胆なのを着るね。察するに、イメチェンって感じかな?

しかし、恭文も中々だ。ちゃんと男の子として、頑張っていこうとしている。

まぁ、ちょっと気を張りすぎではあるけど。ただ、男の子って言うのは、それくらいでいいんだよね。





そして、水着・・・・・・購入か。うん、あれならイメチェンにはいいと思う。

それから二人はバイキング。僕達もバレないように、こっそりとお食事タイム。

・・・・・・だめだ。僕、完全に状況に流されてるよ。とにかく、遠目から二人をウォッチング。










「いい雰囲気だね。うーん、ただ・・・・・・遠目だから僕にはよく分からない。二人から見て、どう?」

「そやなぁ。フェイトちゃん、やっぱねじ外れたんやないか?
いつものチビスケ相手に対しての態度ちゃうで」

≪あの人もですね。それに感化されているようです。
恐らく、近年まれに見るいい雰囲気ですよ。もうこの時点で奇跡ですよ≫

「なるほど」










長年の付き合いのある二人がそう言うんだ。今回は相当だね。これは、期待できるんじゃないの?





・・・・・・・・・・・・いやいや、だから僕は状況に流され過ぎだって。普通にストーカーだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というかフェイト、ごめん。もうちょい気遣えばよかった」

「あの、ヤスフミっ!? 大丈夫だから、落ち込まないでっ!!
というより、私は嫌だよっ! そこまで気を遣われたら逆におかしいよっ!?」



さて、僕がなぜダウナー入ったかと言うと・・・・・・原因があります。そう、お腹が膨れたのです。

こんな状態で、僕はともかくフェイトはプールに入れないよっ! 見事に大食いしたから、プクってなってるしっ!!



「あぁ、失敗した。もうちょっと気遣うべきだった」

「いや、だからそれはセクハラになっちゃうよっ!!
・・・・・・あの、それならどこかで時間を潰そうよ。そうすれば」

「大丈夫?」

「うん、だと思う」



なんて言いながら、僕の頭を右手で撫でてくれる。それが嬉しくて・・・・・・幸せ。



「確かに、それが正解か。やっぱプールには絶対入りたいしね」

「うん。でも、それなら、どこがいいかな?」

「せっかくだから、フェイトと一緒に楽しく出来るところがいい」



そうすると、色々限られてはくるな。・・・・・・あ、それなら。



「フェイト、映画見ない?」

「映画?」



そう、映画。ラトゥーアという施設は、本当に色々なものがある。

例えばプール。例えばバイキング。そして・・・・・・映画館。シネマコンプレックスだ。



「映画見れば、腰も落ち着けられるし2時間くらいは余裕で潰せる。どうかな」

「その間に、お腹もへっこむよね。うん、ならそれで」

「じゃあ、決定ー。・・・・・・というか、行き当たりばったりだよね。ごめん」

「ううん、私は楽しんでるから謝らないで欲しいな。
大丈夫だよ。ヤスフミ、ちゃんとリードしてくれてるもの」

「・・・・・・なら、嬉しい」
                                                                                                    









本当に突然なデート。突然な休日。でも、楽しい。そして嬉しい。





隣に居る女の子と手を繋いでいるだけでも、僕は幸せだから。





幸せだから・・・・・・守り、たいな。この温もりがずっと笑顔で居られるように、ありったけで。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ラトゥーアという施設は、本当に色々な設備がある。

例えばプール。例えばバイキング。そして・・・・・・映画館。シネマコンプレックスだ。

あ、ここはさっき説明したか。いや、失敗失敗。つい二重に話してしまった。





予めパンフレットに目を通しててよかったよ。すぐに思いついた。

そうして僕達はゆっくりと歩きながら、シネコンへ来た。

行き当たりばったりなのを、やっぱりフェイトに謝りつつ。





フェイトは、それでもいいって言ってくれたけど。

でもね、男としては、ちょっと考えるの。うん、いろいろとね。

さて、どの映画を見るかだよね。これによって、今後の色々なものが変わってくる。










「・・・・・・あ、さらば電王やってるんだ」

「電王? ・・・・・・あ、あの列車の写真が載ってるのかな」

「うん。面白いのよー」





ただ、これは却下。だって、フェイトが知らないから。なのはやヴィヴィオ曰く、見てないそうだし。

そういや・・・・・・僕も映画見られてないんだよな。結局。うぅ、悲しい。

そう言えば、JS事件の時にヒロさんサリさんと一緒に、『さらば電王、絶対見るんだー』って気合い入れたなぁ。



スカリエッティに好きにさせたら、普通にさらば電王見られないもの。だから頑張ったの。

それなのに・・・・・・書類の海に潰され、スバルのKYに潰され、結局見られてないんだよなぁ。

あははは、なんだかおかしいなぁ。普通にこれ、おかしくない? ほら、色々とさ。





「あとは・・・・・・恋愛映画とかだね」

「そうだね。・・・・・・確かこれ、シャーリーが面白いって言ってたのだ」



恋愛映画・・・・・・R18的なシーンがあったらアウトだよね。

一発で雰囲気がまずくなる。ギャンブルだよね。



「ホラー・・・・・・ごめん、ちょっとダメ」

「ヤスフミ、ホラー物は怖い? まぁ、私もなんだけど」

「いや、お食事食べた後にそんな死霊のはらわた的なの見たら、来るって。出来てジョーズとかだって」

「・・・・・・納得したよ。そうだね、気分悪くなっても嫌だよね」



二人揃って楽しめるならいいけど、今だとそれは難しいしなぁ。うーん、中々難易度高い。



「SEX AND CITY・・・・・・あのヤスフミ、アレって」

「フェイト、気にしなくていいよ。アレはダメだから。面白いけどダメだから」

「ヤスフミ内容知ってるの? ね、どういう映画かな」

「いや、あの・・・・・・映画は映画なんだけど、地球の海外ドラマでね」



一応内容を説明した。すると、フェイトは途端に顔を赤くした。

真面目な内容ではあるのでそんな変な映画ではないけど、顔は真っ赤になること請け合いだと。



「な、納得したよ。というかこう・・・・・・私達が一緒に見るには、色々早いというかなんというか・・・・・・別のにしようか」

「そうだね」



そうすると・・・・・・うーん、色々削られてほとんど無くなったよ? こういうのはタイミングもあるけど、どうしよう。



「あの、ヤスフミ」

「どうしたの?」



僕があれこれ考えていると、声がかかった。当然その声はフェイト。

僕はフェイトの方を見ると、フェイトはある一点を指差した。



「私、アレ見てみたいな」



そうしてフェイトが指差したのは・・・・・・おいおい、二番目にピックアップした恋愛映画じゃないのさっ!? またギャンブルに出たねっ!!



「あの、シャーリーがお勧めだって言ってたから」

「あ、そう言えばそうだったね。うん、納得した」



自分の情報じゃないところかが色々。

そしてシャーリー、いい仕事・・・・・・だろうね? ちょっと怪しく感じるんだけど。



「うし、ならアレ見てみようか」



恋愛映画なんて、ほとんど見ないしね。新ジャンル開拓と考えれば、きっと楽しめるさ。R18? まぁ、なんとかなるでしょ。



「あの、本当に大丈夫? 無理してないかな」

「してないよ?」

「でも、さっきあれこれ悩んでたみたいだし、もしかして電王って言うの、見たいとか」

「無理とかしてないから大丈夫だよ。電王はDVDで見る。
それにシャーリーのお勧めなら、さぞかし面白いだろうし」

「あの、本当に大丈夫? ヤスフミ、アニメとか特撮好きなんだし。
見たいのがあるなら、無理しないで欲しいな。私の事は気にしない・・・・・・痛っ!!」



フェイトが痛そうにする。だって、僕がデコピンしたんだから。

フェイトは涙目でおでこをさする。うん、加減しなかった。



「あのね、フェイト・・・・・・ちょっとお話。まぁ、見たいものが無いって言ったら嘘になる」



うん、電王見たいよ? 普通に見たいよ? コレ逃したら、もうDVDだと思うしさ。

僕はフェイトを見上げながら、少し真剣な顔。ここはせっかくだし、ちゃんとしたい。



「でも、それじゃあフェイトと一緒には楽しめないの。・・・・・・これは、デートだよ?
フェイトの事を気にしない? 出来るわけがないじゃん。僕は、そんなの嫌だ」



フェイトの両手を握って、強く手を繋ぐ。胸の前で、手を繋ぎ合って・・・・・・言葉だけじゃなくて、体温でも気持ちを伝える。



「二人一緒で楽しめなくちゃ、意味ないじゃないのさ。
僕はフェイトだけ楽しいのも嫌だし、自分だけ楽しいのも嫌」



デートの基本は、二人で楽しく・・・・・・である。その原則、忘れちゃいけないのよ。



「僕はフェイトと二人揃って、楽しく過ごしたいの。だからあの映画を見る。二人で楽しくね。・・・・・・・・・OK?」

「・・・・・・うん、わかった。じゃあ、二人で楽しく・・・・・・だよね?」

「うん」










やっと納得してくれたよ。全く、相変わらず自己犠牲が強いというか・・・・・・でも、いいか。





フェイト、なんか笑顔になってくれたし。うん、ちょっと嬉しい。それに、手もずっと繋いでくれてる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うぅ、おでこひりひりする。ヤスフミ、ちょっと乱暴。でも・・・・・・そうなんだよね。

これはデート。私とヤスフミが一緒じゃなきゃ、一緒に楽しくなくちゃ、意味ないんだ。

ちょっとだけ、忘れてた。それにそう言った時のヤスフミの顔、いつもと違った。





いつもの、とぼけた事を言う表情じゃなくて。

戦ってる時の・・・・・・その、あんまりなって欲しくないけど。

戦ってて楽しそうにしてる時の顔じゃなくて。





ハードボイルドを貫き通すための、真剣な時の顔でもなかった。

私の知らない顔をしていた。こう、なんて言えばいいんだろう。

もしかしてアレが、男の子をしている時のヤスフミの顔なのかな?





うん、きっとそうだ。あんな顔、出来るんだね。知らなかった。

・・・・・・違う。そうじゃないよね。私が、知ろうとしなかっただけ。

今のヤスフミのことを、見ようとしなかっただけ。





きっと何回もあんな顔をしていた。私が、見過ごしていただけなんだ。

なんだか、私・・・・・・本当にダメだね。サリさんの言う通り、ちゃんと見ていなかった。

危なっかしくて、放って置けない。弟としての顔しか見ていなかった。





それしか見ようとしていなかった。だから、今まで気づかなかった。

こうやって二人で過ごして、異性として見るように心がけて、ようやく気づけた。

・・・・・・なんだろう、私。少しおかしい。いつもヤスフミと居る時の感覚じゃない。





これは・・・・・・楽しいってことなのかな?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



二人がご飯を食べた後・・・・・・お腹がアウトだったらしい。恭文、それはミスだよ。





女の子のそういう部分くらいは、しっかりとしておかなきゃ。










「・・・・・・いや、そこをむやみやたらに気遣われても、嫌やで?」

≪ある意味無神経ですよ≫

「そうかな? 大事だと思うんだけど」



まぁ、そこはいいさ。そうして二人はある場所へ向かった。そう、映画館だ。うん、これは正解だね。

ただ、見る映画は慎重に・・・・・・はぁっ!?



「アイツ、デコピンしおったでっ!?」

≪痛そうですね。聴覚センサーにかなり生々しい音が聞こえましたよ。・・・・・・なになに?≫

「なにか聞こえるのかい?」

≪信じられません。あの人のフラグメイカーが、フェイトさんに発動しました。今、私達は奇跡の目撃者になりましたよ≫

『はぁっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・映画の内容は、思いっきりベタだった。片思いをしている男の子が居た。凄く不器用で、内気な子。

その相手の女の子に一生懸命アプローチするんだけど、ことごとくが失敗。

それでも、諦めない。ただひたすらに頑張り続ける。周りから無駄と言われても、頑張る。失敗しても、頑張る。





一歩間違えたらストーカーだよね。でもさ、無理ないよ。

仕方ないの一言で、片付けられないんだから。

振り向いて欲しい。それが無理なら、気づいて欲しい。





願うのは、たった一つだけ。知って欲しい。ただそれだけだった。

だけど、その願いは急展開を迎えた。彼女には、他に片思いの相手が居た。

で、結局・・・・・・主人公の男の子は、その子と片思いの相手の橋渡しをした。





これは上手くいった。今まではさっぱりだったのに、今回はちゃんと伝わった。

彼女は幸せそうにその相手と歩いていく。だけど・・・・・・男の子は違った。

泣いた。ただひたすらに泣いた。悲しくて、辛くて、悔しくて。ただ、泣いた。





そこで、映画はエンドロールだった。陳腐といえば陳腐。王道と言えば王道。そんな映画だった。





そして僕は・・・・・・泣いていた。それも近年稀に見る号泣。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヤスフミ」

「ごめん。大丈夫・・・・・・だから」





フェイトに連れられて、劇場は出た。それでシネコンのロビーの椅子に座らせてもらっている。

だけど、止まらない。リアルに想像出来たから。そのおかげで、涙が・・・・・・止まらない。

いけない、しゃんとしなきゃ。フェイトが居るんだから。うん、しゃんとしよう。



僕は涙を拭いて、笑顔を無理矢理に浮かべながら立ち上がろうとする。





「ダメだよ」



そんな時、僕を温もりが包む。それは暖かくて、優しい温もり。

それがフェイトの物だと認識するまで、少し時間がかかった。



「ふぇ・・・・・・いと?」

「我慢、しなくていいよ。泣きたいんだよね?」



うん、泣きたい。まだ足りない。ちゃんと吐き出していない。

だけど・・・・・・だめ。フェイトが居るのに、こんなの。



「あの、だいじょうぶ。だいじょうぶ・・・・・・だから」

「大丈夫じゃないよ。というか、私はヤスフミが我慢してるのなんて、楽しくない。
・・・・・・ちゃんと受け止めるから。我慢なんてしないで、吐き出して。私、こうしてるから」










・・・・・・ダメだよフェイト。そんなこと言われたら、アウトだよ。泣く。というか、泣いた。





涙が止まるまで、フェイトの肩を借りて、ずっと・・・・・・泣いてた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あのさ、はやて」

「言わんといて」

≪上げた株、下げましたね≫

「見事にね」



まぁ、無理もないか。思いっきりどんぴしゃな状況だし。

自分に相当重ねたんだろうね。見たことのないくらいにぼろぼろ泣いている。



≪あぁいうのは、本当に久しぶりですね。滅多に無いんですけど≫

「せやな。・・・・・・あ、フェイトちゃんがハグしとる」

「うーん、いいのかなぁ。周りの視線集めてるよ?」

≪いいんじゃないですか? らしいと言えばらしいですよ≫










確かにね。少しずつ・・・・・・か。なんというか、あの二人らしいよ。





三歩進んで二歩下がるってやつ? 少しずつなのが、あの二人のペースなのかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あの、フェイト」

「ダメだよ」

「また何も言ってない」

「謝ろうとしてた。そんなこと、言わなくていいよ」



少しだけ時間が経った。ようやく持ち直した僕は、フェイトと一緒にプールを目指していた。

目が、重たい。結構、時間かかった。うぅ、本当にダメだぁ。



「・・・・・・ヤスフミ、私と居ても楽しくない?」

「え?」



フェイトの顔を見る。すると、ちょっと怒ってるような顔をしていた。え、なんでっ!?



「ヤスフミが遠慮ばかりしてるからだよ。・・・・・・あのね、私は今日一日居て、すごく楽しいよ?
一緒に映画を見るのも、本当に久しぶりだったから、すごく楽しめた」

「でも」

「泣いたのだって、別にいいと思ってる。というか、感動したりするのは悪いことなんかじゃないんだから」



それは分かってる。うん、分かってる・・・・・・つもり。



「とにかく、私は楽しいよ。ヤスフミと一緒に居るの、凄く。・・・・・・ヤスフミは、違うのかな?」

「違わない。うん、凄く楽しい」

「なら、それでいいから。もうちょっとだけ、楽にしてて欲しいな。
ここは仕事場じゃないから、そういうハードボイルドなのは禁止。いい?」

「・・・・・・うん」



いい、のかな? ・・・・・・うん、いいってことにしておこう。

その、いつもと違うから。もしかしたら僕達互いに、少しだけ気張ってるのかも。



「でも、凄く感動したんだね」

「・・・・・・うん、感動っていうか、きた」



まさか、自分に重ねましたとは言えない。言えるわけがない。



「私も少し。・・・・・・切ないよね。ああいうの」



うん、分かってくれて嬉しいよ。色々と辛いのよ?



「・・・・・・ヤスフミ、そういう人が居るの?」

「人って?」

「その、片思いしてて、全然通じない人」

「・・・・・・内緒」



僕は少しだけ歩速を上げる。すると、フェイトも同じようにする。

それから、ずっと繋いでいる手を強く握ってくる。



「だめ。ちゃんと話して」

「だーめ。話しません」

「なんで?」

「言うべきシチュエーションってやつがあるのよ。今はすこーしだけ違うもん」

「そんなこと言わないで、教えて欲しいな。あの、ちゃんと聞くよ?」










・・・・・・教えません。うん、少しだけ、今は勇気が出ないから。まぁ、なんていうかさ、アレだよね。





勇気が出たら、もう一回、頑張ろうかな? 色々あり過ぎて少しだけ忘れてたけど・・・・・・それでも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、僕とフェイトは室内プールへ来た。というか、ちょっとドキドキ。





イメチェンフェイトのお出迎えだしね。少しだけドキドキ。





どんな水着を着るかは分かってても、それは変わらないのだ。










「ヤスフミ、お待たせ」





後ろからかかってきた声は、少しだけ緊張の色を含んだ声。

そちらへ振り向くと・・・・・・フェイトが居た。でも、いつもとはちょっと違う。

少しだけ明るめの、青色のワンピースタイプの水着を着ているのだ。普段は紺とか黒が多いのに。



あ、脇というか、サイドのところが編み上げになっている。うーん、露出多いよね。ちょっとえっちぃ。

で、髪型も・・・・・・ロングではなく、青いリボン(水もOKなやつ)を結んでいる。

だから、いわゆるポニーテール状態。うぅ、これも可愛いなぁ。素敵だなぁ。



うん、思いっきりイメチェンだよね。というか、別人だよ。





「・・・・・・あの、どうかな?」

「うん、似合ってるよ。すごく綺麗。というかさ、フェイト」

「なにかな?」

「僕、試着した時も同じ事を言ったはずなんだけど」



そう言うと、フェイトが少し恥ずかしげに顔を赤らめて、困った顔をする。それがまた可愛い。



「あの、それでも少しだけ緊張するんだよ。やっぱり、初めてだから」



・・・・・・ごめん、いやらしいこと想像した。

だけど、罪じゃないよねっ!? これくらいは許されるよねっ!!



「ヤスフミ?」

「なんでもない。とにかく、泳ごうか。二人で、楽しくね」

「うん」





それはもう、遊び倒しましたさ。ウォータースライダーに乗ったり、流れるプールに流されてみたり、水のかけっこしたり。

ビーチボールを持ってきて、バレーを・・・・・・・・・でもさ、身体能力でフェイトには勝てないんだよっ! あんなスパイク受け止められるかっ!!

つか、二人で遊んでてスパイクをするなっ! お願いだからもうちょい緩めに遊ばないっ!? どんだけアグレッシブさっ!!



・・・・・・ま、そこはいい。とにかく今は・・・・・・星を見ている。二人で人工の浜辺に座って、手を繋いで。





「・・・・・・綺麗」

「うん、本当に」





実はこのプールのある室内ドーム、現在の時間はプラネタリウムの時間。

なので僕もフェイトも、ちょこっと遊ぶのを休憩して、空を・・・・・・天井を見上げている。

目に映るのは、ぶっちゃけちゃえば偽者。だけど、輝きは本物。



見ているだけで、気持ちが広くなっていくのが分かる。



こういうの、前にもあったな。管理世界の出張で、野営した時に。あの時の星と同じだ。





「フェイトってさ」

「うん」

「ミッドの星座って、分かる?」

「一応はミッド出身だから。・・・・・・あ、分からないの?」



その言葉に僕は頷く。うん、実はあんまり詳しくは分からない。

まぁ、ちょこちょこって感じだけどさ。解説も入るし。



「なら、教えてあげるよ」

「あー、いいよ。なんとなく分かるし」

「だめ。というか、私が教えたいの。共通の話題、増やしたいしね」



・・・・・・なるほど。なら、ここはハラオウン先生にご教授願おうかな。



「それじゃ、お願いします。先生」

「はい、任せてください。・・・・・・なんてね」

「あ、そうなるとフェイトは女教師? なるほど、女教師フェイトか」

「そういうの禁止っ!!」



え、どうしていきなりお怒りモードっ!? なんでちょっと頬を膨らませて睨むのさっ!!



「あの、私知ってるんだよっ!? ヤスフミ今、エッチな事想像したよねっ!!
そういう言い方や女教師はエッチなんだって、はやての持ってる小説であったんだからっ!!」

「あのバカは何をフェイトに読ませてるっ!? くそ、帰ったら絶対シバキ上げてやるっ!!」





ミッドの星空。今まではなんとなく見ていた。だけど、これからは少しだけ・・・・・・違うかな。



フェイトから教わった意味とか逸話。思い出しながら見るから。



きっとこの時間も思い出す。うん、また大事な記憶、増えた。





「ね、フェイト・・・・・・一つ質問」

「何かな」

「僕がフェイトを対象にエッチな事考えたら、やっぱり嫌だよね?」



フェイトが驚いたように固まって、そして顔を真っ赤にした。それで、少し俯きながらももじもじする。



「・・・・・・あの、嫌ではないの。うん、それは絶対に違う。気持ち悪いとかそういう事でもない。
ただ・・・・・・すごく、恥ずかしいんだ。すごく恥ずかしくて・・・・・・だから、沢山は考えるのは禁止だよ?」

「分かった。てゆうかごめんね、意地悪な事聞いちゃって」

「ううん、大丈夫。・・・・・・沢山じゃないなら、エッチ過ぎたり乱暴じゃないなら、私とそういう事してるの、想像してもいいよ?」



僕は、当然のようにズッコケる。フェイトが顔からスチーム出してるけど、僕はもっと出してる。



「えっと、つまりその・・・・・・ヤスフミだって男の子だし、そこはちゃんと認めるという事かな。
性的欲求はちゃんと処理しないと、性犯罪に走りやすいって言うし、仕方の無い事だと思うし」

「あ、ありがと・・・・・・で、いいのかな。なんか、会話が変なような」

「で、でも・・・・・・私達、長い付き合いで、もう互いに大人だよ? こ、これくらいは大丈夫じゃないかな」










え、えっと・・・・・・フェイト、ごめんなさい。僕、沢山考えてます。





ほぼ毎日、フェイトを対象に考えています。ごめんなさい、本当にごめんなさい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



前だったら『家族だから』と答えていた。そう答えようとしていた。でも、やめた。

そんなフィルターを外していかないと、意味がないから。それで・・・・・・気づいた。

私、ヤスフミに姉とか友達とかじゃない。一人の女の子として見られるのが、嬉しいみたい。





だからさっきだって・・・・・・すごくエッチな会話しちゃったけど、嫌な気分はなかった。

ヤスフミが私との事を想像・・・・・・だ、だめ。もうエッチなの禁止。ヤスフミだって赤くなってるし。

でも、男の子と女の子として見合うって、そういう事なんだよね。私達が付き合って、そうなる可能性もある。





例えば今日が、同じ部屋で泊まりだったとするよ? その場合・・・・・・そうなる可能性、あるよね。

家族としてとか、友達としてというフィルターを取ると、そういう可能性が出てくるんだ。

ヤスフミと・・・・・・なんだか、想像出来ない。でも、嫌でもない。それは間違いじゃない。





とにかくセックスどうこうはともかくとしても、今までの関係を外すと新しい可能性が出てくるのは分かった。

それで・・・・・・あぁ、そうだ。今、少し期待が高まった。その中に答えがあると確信が持てた。

だって今までだったら絶対想像出来ない、ヤスフミと男女の関係になるという可能性が出てきたんだよ?





だったら、きっと掴める。私が・・・・・・ちゃんと目の前で、まだ顔を赤くしながら星を見ている子と、改めて繋がれる可能性も。





だから私は、ヤスフミとまた手をしっかりと繋ぎ直した。今度は指を絡め合って・・・・・・いわゆる恋人繋ぎ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そしてプールだ。当然僕達も・・・・・・はやて」

「なんや? てゆうかロッサ、その説明口調はどないしたんよ」

「気にしないで? ・・・・・・いや、それ以前に君がどうしたのさ。
その素敵な水着、いつの間に用意したんだい?」



水色のビキニタイプの水着。なんというか、いつの間に用意してたのさそれは。

僕は受付にあったレンタル物だっていうのにさ。はやては普通に自分の物だし。



「気にしたらあかんよ。備えあれば憂いなしや」

≪タヌキらしい思考ですね≫

「タヌキ言うか自分っ!?」

「二人とも、静かにっ! 気づかれちゃうよっ!?」



だけど、そんなのはあの二人には無意味だった。だって、固有結界作っているんだから。



「というか、プラネタリウムタイムなんてあったんだね。またサービスいいなぁ」

「せやな。・・・・・・お、なんや二人もえぇ雰囲気やな」

≪これでそうならなかったら、意味がありませんよ。
どんだけ小学生レベルかと、ツッコみたくもなります≫

「まぁ、そう言うと見もふたもないよね」

「・・・・・・でも、よかったな」



はやてが、安心しきったような表情で口にする。・・・・・・あ、もしかして。



「心配だったの?」

「・・・・・・せやな。どうしても・・・・・・な。ほら、最近はアイツ、ごたごたしとるしな」

「そう言えば、そうだったね」



クロノが頭を痛めていたよ。リンディ提督やアルフの言う事も分かるけど、それでもってさ。

なお、現在は別の問題で頭を痛めている。・・・・・・クロノも恭文も、災難だよなぁ。



「ちょっとずつ、進んでくれるとえぇんやけどな。
とりあえずフェイトちゃんとの時間がアイツの癒しになるんは、間違いないし」

「進んでいくさ。これから、互いのことを知っていこうとさえすればね」

「せやな。進んでいくはずやなぁ」

≪そうしないと、世界が泣きますよ≫

「あはは、そう言うと身も蓋もないね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それからしばらくして、僕達はプールを出た。いや、色々堪能したし、楽しかった。

そして・・・・・・お茶の時間です(マテ)。いいのよ、こっちはお茶の時間にしたいのさ。

というわけで僕はヒロさんから教えてもらった、美味しいケーキショップ直行。





当然のように、フェイトと手を繋ぎながら一緒に来ている。

とりあえず、あの『オカズにしてもいいよ?』発言は、脳内で永久録音だ。

仕方ないの。これは男の子だったら、仕方ないの。うん、許してね?





というか、すごいよね。ラトゥーア内にも出展してるんだ。

クロスフォード財団って。どんだけ幅広くやってるのさ。

・・・・・・あー、思い出したくない話を思い出してしまった。





出向、本決まりだそうです。おそらく、今週中に。

二人が六課入り・・・・・・どんなことになるんだろう。

いや、とんでもないことになるのは明白だけどさ。





覚悟だけは、しておきますか。あ、でも待てよ。





それなら、二人に頼んで進行中のアレ、もっと早く完成するかも。










「・・・・・・ケーキ、綺麗だね」

「なんというか、食べちゃうのがもったいないよ」





僕達が注文して数分後、出てきたのは、素晴らしいほどに綺麗なチョコレートケーキ。

ケーキの上のチョコクリームは、まるで宝石か何かのように輝いている。

そして上にちょこんと乗っているアーモンドが、アクセントとなって可愛い。



僕もフェイトも、思わず見とれるくらいに可愛くて綺麗だった。もう視覚から楽しんでいる。



とは言え、注文した以上は食べないわけにはいかない。だから、僕達は顔を見合わせて頷き合う。





「それじゃあヤスフミ」

「いただいちゃいますか」





そう言いながら、二人でにこにこ顔でケーキをぱくり。・・・・・・ふわぁ、おいひい。



チョコのほろ苦さ。クリームの甘さ。スポンジのふわふわとした食感。すべてがパーフェクト。



すげーよ、クロスフォード財団。ただの金持ちの家系じゃないよ。ちゃんと商売出来る人たちだよ。





「・・・・・・美味しいね。というか、凄い」

「うん」

「ヤスフミ、また真剣な顔してる」

「・・・あ。にゃはは、ついつい」

「まぁ、そういう所がヤスフミらしいのかな?」



嬉しそうに、微笑ましそうにフェイトが笑ってくれる。やっぱり、フェイトとの時間は好き。

ドキドキして嬉しくて、楽しくて・・・・・・凄く幸せになれるから。



「興味のあるところに、すごく貪欲なところ」

「そうだね。そのおかげで現状だもの」



でもさ、凄いよねこれ。翠屋のケーキとタメ張れるんじゃないの?



「そういえば」

「うん?」

「ヒロさんとサリさんとの訓練。本当にあんな感じなの?」

「・・・・・・そうだね」



フェイト、まだ信じられないんだ。いや、分かるけどね。無茶過ぎではあるし



「そこまで頑張ってたんだね。私、何にも知らなかった」

「話してなかったしね。というか・・・・・・余裕なかった」



いや、真面目にきつかったのアレ。何回か、命の危険を感じたもの。なんとか越えられたけど。

でも、そのおかげで色々と上手になった。上手にはなれたけど、まだまだではあるんだよなぁ。



「あ、それでアレの作成も本格的に進められるんだ」

「アレ?」

「ほら、7本の剣」



フェイトは少し考えるように視線を上に向けて・・・・・・ハッとした顔になった。



「あぁ、アルトアイゼンの新しい形状変換」

「そそ」





第4話で話した、アルトの形状変換のモードだね。少しずつ、進めてはもらっていた。

でも、仕事があるから本当に少しずつだね。だけど、これからは違う。

設備や資材も六課のものが使えるので、進行速度は上がると見ていい。



シャーリー辺りも適当に巻き込めば、もっと上がる? いや、楽しみだなぁ。





「でもヤスフミ、実現は可能なの?」

「一応ね。ただ、二人曰くアルト単独の形状変換じゃ、僕の求めてる強度には届かないらしいの」

「確かに、ライオットザンバーの二刀流よりも数が多いし・・・・・・というか、どれくらいの強度を求めてるの?」

「なのはのSLBをを物理設定ONでマトモにくらっても、傷ひとつ付かないくらい?
で、当然だけどフルドライブやリミットブレイクは無しでの発動が最低条件」



フェイト、普通に呆れた顔をしないで。てゆうか、それくらいは必要なのよ。

各々の強度が思いっ切りなまくらだったら、七刀流にする意味がないし。



「だから拡張デバイスを作って、それとシンクロする事で形状変換する感じ?
ほら、アニメとかヒーロー物であるじゃない。元々の武器にくっつけて、パワーアップとか」

「そう言えば・・・・・・あぁ、確かにそういうのは見た覚えがあるよ。
じゃあ、新しいデバイスを1からだし・・・・・・時間はかかりそうだね。基本コンセプトは変わらず?」

「うん。目指すは変幻自在な7本の剣。でね、名前も考えてるんだ。
まず新しいデバイスがサヤタロスで、形状変換したら、それぞれが一鉄から六鉄」

「え?」



フェイトが目を見開くけど、僕はわくわく。そしてとっても楽しみ。

ふふふ、こういうのは好きなんだー。楽しいなー楽しいなー♪



「一鉄がアルト本体の変化で、二鉄から六鉄までがサヤタロスの変化かな。
それでそれら全部が合体したら、七鉄アルトになるの」

「いや、あの・・・・・・ヤスフミ?」

「それで名前が・・・・・・てんこ盛りソードモード。ふふふ、カッコいいでしょー」

「ごめんっ! 全然カッコよくないよっ!? というか、全てにおいてネーミングにセンスがないよっ!!
一鉄から七鉄って呼称も安直だし、またタロスって付けてるし、そして最後もちょっとくどいしっ!!」



フェイトがこちらに身を乗り出しながらそう言い切った。だから、僕は首を傾げる。



「首を傾げないでっ!? 普通に疑問顔はやめてくれないかなっ!!
・・・・・・あぁ、ヤスフミのセンス・・・・・・相変わらずだよ。というか、サヤタロスはないって」

「そんな事ないよ。アルトは賛成してくれたよ?」



もう即答だった。『いいんじゃないですか?』と、即答だった。

普通に長年の付き合いで、繋がっているおかげだと思った。



「アルトアイゼンも何気にセンス無いんだから、信じちゃだめだよっ!!
とにかく、もうちょっとちゃんと名前をつけてあげよ? それは適当過ぎるよ」

「うーん、だったら・・・・・・さっちゃん」

「だから、どうしてそっちに走っちゃうのっ!? そしてまた適当だからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミは、基本的にいい子だと思う。とても真っ直ぐで、強い子だとも思う。

そして優しい部分もあって、そういう所が人を惹きつける。フィアッセさんやすずかもそれ。

だけど、どうしても何とかしたい部分がある。それは・・・・・・センスの無さ。





昔からではあるけど、もしかして最近は更に加速してる? ヒドい、これはヒド過ぎる。

一鉄から七鉄ってネーミングはまだいいけど、サヤタロスにてんこ盛りソードフォームって。

もしかして中学卒業後にヤスフミと距離が出来たのって、間違いだったのかな。





もうエイミィやアルフに母さんとクロノは諦めてるし、アルトアイゼンは同類だし。

もちろん週1とかで会ってはいたけど、それでも一緒に暮らしていたのに比べると・・・・・・だし。

・・・・・・って、ダメダメ。また家族モードに入りかけてる。こういうのダメなんだから。





だったらこれは・・・・・・その、そうだよ。ヤスフミと同年代の女の子としての希望なんだ。

それでもうちょっとだけセンス・・・・・・特にネーミングセンスを良くした方がいいんじゃないかなと思ってるんだ。

ほら、こういうので好感度は左右されるし、将来的には子どもとか産まれるかも知れないし。





・・・・・・そこまで考えて、気づいた。ヤスフミ、そういうのどう思っているのかなと。

将来の仕事どうこうじゃなくて、もっとプライベートな所での未来へのヴィジョンって言うのかな。

そして、私。ヤスフミの事だから、私が出来てないと思ったら絶対にツッコむと思うし。





時間をかけて、ここも聞いてみよう。家族モードを外しつつ、一人の女の子として、目の前の男の子に。

というか、あの・・・・・・少しだけ分かってきた。最近ヤスフミを見ていて、なんでズレを感じていたのか。

私が何を知りたくて、何を一緒に話して・・・・・・知って、変えていきたかったのか、本当に少しだけ。





そこは一旦置いた上で私は、とりあえず現状から対処する事にする。もちろん、新形態のネーミングについて。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なぁ、ヒロ」



現在俺とヒロは、現職場で出向のための最終準備。具体的には、仕事の引継ぎ作業中。

一時的に離れる感じではあるが、それでもこういうのはしっかりしないといけない。



「何?」

「お前、マジでこのてんこ盛りソードフォームを認めるつもりかよ。
いや、具体的にはネーミングだよ。ないだろこれ。センスなさ過ぎるだろ」

≪主、私も同意見です。これは・・・・・・あまりにひど過ぎます≫

≪ボーイの奴、センスが無いセンスが無いとは思ってたけど、ここまでかよ。
てーかよ、平然とサヤタロスとか言い出した時にはもう俺、デバイスだけど泣きそうだったぜ≫



いや、姉・兄弟子としてさ、これは否定するべきだと思うんだ。いくらなんでもないだろ。

だけど、ヒロは俺達の発言にすっげー疑問顔だよ。普通に『何言ってんの、コイツら?』ってレベルだよ。



「いや、だってカッコいいじゃん。ほら、七刀流と言うことは、てんこ盛りの剣だよ?」



ほらな、だからアメイジアがデバイスなのにしくしくと泣き出すんだよ。

・・・・・・なーんでコイツらは、こういうセンス0なところまで似てしまったんだろうか。



「これほど分かりやすくてセンスビンビンなネーミングはないって」

「もうお前の今のトーク自体がセンスビンビンじゃねぇよっ! そしてこれをどう表記するつもりだよっ!!」



俺がそう声をあげると、ヒロは数秒考え込んで、端末と向かい合った。

向い合って、ポチポチと打って・・・・・・ぴったり1分後、答えを出した。



「出たよ。てんこ盛りソードは『Sword chock-full』だって。
だから『Sword chock-full Form』って打ち込めばオーケーだね」

「お前は一体何処のサイトを見たっ!? そして英語表記にしたら、なんかカッコいいのがムカつくなっ!!」

「えっとね、グーグル翻訳。ほら、地球の英語って、ミッド文字そのままだし応用出来るでしょ」

「確かにそうだが、それでも何かが抵抗するんだよっ! 俺の中の何かがやめろと言うんだよっ!!」





くそ、コイツらマジでセンスが欠片もねぇしっ! あぁもう、コイツらに任せてたらダメだっ!!

・・・・・・ネーミングは、俺の方で考えておこう。とりあえず、サヤタロスは却下だ。いくらなんでもヒド過ぎる。

しかし、やっさんのあの◯◯タロスってやたらと付ける癖はなんでだ? 魔導師になった頃からあんな感じだったらしいしよ。



あー、それでシャマルさんとその話をした時、ちょっと泣いてたんだ。

アイツの全てを愛せる自信はあるけど、センスだけは何とかしたいって。

それなら、普通に電王の影響とかでは無いよな? うーん、謎だ。



いや、センスが無い人間は〇〇タロスに走りやすいのか? それならまだ納得が出来る。





≪サリ、俺・・・・・・時々姉御が分からなくなるんだ。なぁ、どうしてかな。
あと、ねーちゃんも理解出来ない時があんだよ。ねーちゃんも何気にセンスねぇしよ≫

「アメイジア、俺から言える事は一つだけだ。・・・・・・慣れろ。もうコイツらのコレは、絶対治らない」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ほら、『Sword chock-full Form』という風に表記されて、カッコいいじゃないのさ。これの何処がセンス無いのよ」

「で、でもでも・・・・・・アレだよっ!? てんこ盛りソードフォームって言うんだよねっ! ソードチャックフルフォームとかじゃなくてっ!!」

「うん。だって、これもカッコいいけど、てんこ盛りソードフォームの方がもっとかっこいいし」

「ヤスフミ本当に落ち着いてー! あの、絶対大丈夫だよっ!? センスって矯正出来るんだからっ!!
というかごめんねっ! 私が仕事と子育てばっかりで、寂しい想いさせてばかりで、本当にごめんっ!!」



あの、フェイト? どうしていきなりそんなに謝り倒すのさ。というか、泣かないで。

おかしい。普通に携帯端末でグーグル翻訳をやってみせただけなのに、よりダメージが深くなった。



「と、とにかく・・・・・・サヤタロスもさっちゃんもだめ。
私も一緒に考えるから、もうちょっとちゃんとしたのにしよう?」

「・・・・・・分かった」



ちゃんとしているはずなのに、僕はそう返事をした。だって、フェイトがもう泣きそうだし。



「ヒロさんはもうすごい勢いで同意してくれたのに」

「ヒロさんもセンスないのっ!? ・・・・・・あぁ、やっぱりごめんだよ。
私、もっと早く・・・・・・もっと早くヤスフミに向きあえばよかった。そうすればこんな事に」

「いや、だからなんで泣くっ!? お願いだから落ち着いてっ! ほら、紅茶飲んでっ!!」

「う、うん」



とにかく、フェイトは紅茶を飲んで・・・・・・数分して、ようやく落ち着いた。

だから僕達は、止まっていたフォークを動かして、ケーキを改めて堪能するのである。



「あとは・・・・・・ヒロさん達来てくれるなら、武術関係をちょっと見て欲しいんだよね」



ケーキをまた一口。・・・・・・あぁ、身体中に幸せが駆け巡るー。



「不安なの?」



フェイトも一口。・・・・・・表情、僕と同じように変わるね。それも幸せそうに。

だから、フェイトはもう泣いてない。それがちょっと嬉しい。



「うん。どーもね、まだまだな感じがする。というか、魔法戦闘に頼りすぎかなと。
僕は『魔導師だから』なんて狭い枠でやってたら、あっという間に潰されるもの」





僕は、紅茶の入ったカップを手に取る。・・・・・・言い訳をしないという事は、可能性を広げると言うこと。

魔導師とか、普通とか、そういう枠を壊して成長する事。そういう枠に囚われずに、何時だってただの自分であり続ける。

言い訳って言うのは、きっと他人に対してじゃない。ぶっちゃけさ、他人や世界や仕事に対してなんて、言い訳していいのよ。



ま、基本は良くないよ? しない方がいいに決まってる。でも、絶対しちゃいけない事がある。

それは・・・・・・自分の『こうしたい』って気持ちにだ。それにだけは、絶対嘘をつきたくない。

別に他人に対しては、ズルかったりしてもいいのよ。それが本気の気持ちなら、それも一つの道筋としてはありだと思う。



そしてその典型例が、先生だと思う。まぁ、僕はこの領域にはまだ居ないけどさ。

うん、まだ居ないな。迷ったり躊躇ったり、間違ってばっかり。

真にハードボイルドなキャラを目指してはいるものの・・・・・・やっぱ僕は、ハーフボイルドだね。



うぅ、悔しいなぁ。ハードボイルドを通せるキャラになろうと思っているのに。



でも、それでも・・・・・・守れないものはある。僕が、1番守りたいのは・・・・・・うーん。





「・・・・・・そうなんだ。ごめんね、私やシグナムがもうちょっと相手を出来ればいいんだけど」



フェイトも再び、カップを手に取る。というか、さっきから動きが同調している。



「あぁ、いいよいいよ。仕事やら編成上の都合なんだし。
それに訓練がスバル達中心になるのは当然でしょ」



むしろ、ならなかったら大問題だと思う。いや、ならなかったら怖いよ。六課の神経疑うよ。

そんな事を思いながら、二人同時に紅茶に口をつける。・・・・・・で、同時に、こんな声が出る。



『・・・・・・ふわぁ』



気が抜けてるね。うん、すさまじくだ。



「・・・・・・あの、ヤスフミ」

「なに?」

「この後なんだけど」



フェイトの言葉が止まった。原因はひとつだ。そう・・・・・・窓の外。

丁度窓側の席に居た僕達は、外を見る。空は鉛色。そこから何かが降る。・・・・・・雨だ。



「あー、さっきまで天気よかったのにー。というか、天気予報の嘘つき」

「そうだね。本日はずっと快晴って言ってたのに」

「こりゃ、早めに帰ら・・・・・・あれ?」



早めに帰らないと、雨に濡れて風邪を引いてしまう。僕はそう言おうとした。

だけど、言えなかった。だって、どんどん窓の外の光景がおかしくなるんだもん。



「あー、フェイト。気のせいかな? なんか、凄く激しく降ってない?」



雨が、激しい。降り出しから、一気に土砂降りになった。



「多分、気のせいじゃないよ。私にも同じものが見えてる」



そうだよね。だって、海もなんか大荒れだもん。・・・・・・あ、雷鳴った。



「フェイト、何やった? ほら、雷だったら専門でしょ」

「わ、私は何もしてないよ。というか、これって」

「なーんか、ひしひしと嫌な予感が」



・・・・・・そして、その予感は現実となった。



『ラトゥーアにご来場のお客様に、お知らせいたします。
現在、天候悪化のため、レールウェイの運転を見送らせていただいております』



というか、館内放送で通告された。僕達、普通にやばい状況になったかも知れないと。



『繰り返します。レールウェイの運転を』

「ヤスフミ・・・・・・!!」





フェイトの表情が引きつる。そりゃそうだ。僕だって同じだもの。

さて、最初にも言ったけど、ラトゥーアは海上にある施設。

なので、陸続きではありません。今回、僕もフェイトも、車とかじゃない。



今、止まったと宣言されたレールウェイで来た。つまり・・・・・・うん、正解は一つだね。





『二人して、帰れないっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、時刻は夕方になろうとしている。





突然始まったデート尾行は、何事も無く終わろうと・・・・・・しなかった。










「・・・・・・はやて、アルトアイゼン」

≪あー、報告聞きたいですか?≫

「ごめん、もう必要ないわそれ」





そうだよね。だって・・・・・・もう、結果が出ているもの。

窓・・・・・・というか、建物の外の天気は、非常にひどいことになっていた。

まさに悪天候。僕達の目の前に広がるのは、まさしくその典型例だよ。



・・・・・・あ、恭文とフェイトちゃんの表情が引きつっている。それもそうか。この場合導き出される答えは。





『ラトゥーアにご来場のお客様に、お知らせいたします。
現在天候悪化のため、レールウェイの運転を見送らせていただいております』



コレだもの。



『繰り返します。レールウェイの運転を』

「・・・・・・ロッサ」

≪つまり、これは・・・・・・アレですよね≫

「うん、そうだね」



そう、つまり僕達は・・・・・・というか、僕達もだね。



『帰れないっ!?』

≪正解です≫










そして、始まった。季節は12月の上旬。長い一日が始まった。





そう・・・・・・色々な意味で、僕達にとってもターニングポイントとなった一夜が。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、フェイトを連れて必死に走っています。それはもう頑張って。





手は繋いで、もう全力ダッシュ。身体中を支配するのは、強い危機感。










「ヤ、ヤスフミっ!?」

「フェイト、急いでっ! このままだと・・・・・・まずいっ!!」

「え?」





このままだと危ない。そう思った。だって、今回はマジな緊急事態じゃない。

だから、飛行魔法も転送魔法も許可でないし。そしてそれは・・・・・・正解だった。

僕達がようやく辿り着いた場所は、人でごった返していた。



・・・・・・ここは、ラトゥーアに併設されているホテル・ラトゥーアのフロント。

そう、この悪天候で帰れなくなった人達が、寝床の確保のために動かないワケがない。

当然のように、ここに集まってきているのだ。うん、考えるまでもなかったね。



だって、レールウェイだけじゃなくて、車やバスの類も、全部アウトなんだもん。



だから、必要かと思って来たんだけど・・・・・・遅かった、かも。





「・・・・・・大丈夫かな、これ」

「泊まれると・・・・・・いいよね」

「ちなみにフェイト、野宿の経験は? なお、テントとかそういうの無しで」



まぁフィールド系の魔法を行使すれば、寒くて凍えて死ぬとかはないのよ。

ただ・・・・・・なぁ。それでも、人工物の中で野宿は、きっと辛いと思う。



「それは、無いかも。訓練校のサバイバル訓練も、基本装備ありきだったから。・・・・・・ヤスフミは?」

「ある」

「警防での訓練?」

「それもあるけど、ヒロさん達との修行中に宝探しとかした時にさ」

「そんなことしてたのっ!?」










フェイトの疑問の叫びは、聞こえないことにした。うん、聞こえると辛いから。

だって結局、お宝で一攫千金の夢、パーになっちゃったしさ。色々頑張ったのに。

とにもかくにも・・・・・・こうして12月最初の日に、僕とフェイトのドキドキな一夜が始まった。





てゆうか、ちょっと待ってっ!? さっきのあの会話からコレ・・・・・・ヤバいっ! 理性が吹き飛ぶかもっ!!




















(第24話へ続く)




















ねたばれしまくりなあとがき



恭文「というわけで、本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「コイツのセンスの無さにはもう開いた口が塞がらない、日奈森あむでした」

恭文「えー、どの辺りが?」

あむ「どの辺りっ!? 全部に決まってるじゃんっ! アンタ、マジでそのセンスの無さはなにっ!!
ありえないっ! もう人外レベルもいいとこじゃんっ!! フェイトさんだってそりゃあショック受けるさっ!!」





(現・魔法少女、ハイセンスなだけに色々と納得出来ないらしい)





恭文「じゃあ、あむはどんな名前がいいと思うのよ」

あむ「いや、だからソードメーカーとか、ソードアイゼンとかさ。サヤタロスよりはセンスいいの思いつくでしょ。ほら、どうよ」

恭文「・・・・・・うーん」

あむ「微妙なんかいっ! もうその疑問な顔つきやめてっ!?」

恭文「あ、そう言えばさ、あむ」

あむ「なに?」

恭文「今日(2010年3月20日)テレ東で放送されたしゅごキャラどっきどきで、男らしい作画だったね」





(現・魔法少女、普通にズッコける。だって、話が飛ぶし)





あむ「あぁ、そう言えばそうだったね。男らしい子になってなね。あたしの顔つき」

恭文「まぁ、そこはいいのよ。てゆうか、イグニッションしちゃったあの子と(ぴー)しちゃったりさ」

あむ「ちょっと待ってっ!? なんで規制音かけるのっ! 必要ないじゃんっ!!」

恭文「必要あるよ。ネタバレ防止のためだもの。見てない人も居るだろうし」

あむ「あ、まぁね。そういう事なら納得だよ」

恭文「でさ、どうよ。愛の共同作業をテレビという舞台でやらかした気分は」

あむ「ごめん、ネタバレ防止のためとは分かってても、アンタのその言い方は全然納得出来ないっ!!
普通に如何わしい何かを感じるんだけど、あたしの気のせいかなっ!?」

恭文「気のせいじゃない?」

あむ「言いながらニヤニヤ笑うなー! マジでそういうのじゃないしっ!!」





(青い古き鉄、言いながらニヤニヤ笑っている。どうやら現・魔法少女を弄るのは、楽しいらしい)





恭文「あぁごめん。愛の共同作業は、次回の予定だったよね。だってあのキャラがベッドの上で(ぴー)しちゃってたし」

あむ「だからこの規制音はやめてー! てゆうか、それはアンタじゃないのっ!?
この調子だと、次回に最後までいっちゃいそうな感じしてるしっ!!」

恭文「あー、それはないよ。改訂版は、基本ラインは同じにするんだし。
・・・・・・とにかく、次回はあのキャラとあむがベッドの上で」

あむ「そこでどうしてどっきどきの宣伝しちゃうっ!? そしてベッド言うなっ!!
あーもういい。本日のお相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。・・・・・・でもさ、3月で終わると思ってたんだけど、まだ続くんだよね。どうなるんだろ」

あむ「原作最後までやるんじゃないかな。ほら、アンコールの話も絡めつつさ」

恭文「あぁ、そう言えば描写してないところかあるしね。うーん、次回も楽しみだなぁ」

あむ「・・・・・・いや、だからどうしてどっきどきの話になってるっ!? 改訂版の話しようよっ!!」










(現・魔法少女は叫ぶけど、それでももう終わりだから意味はない。次回に期待しよう。
本日のED:サザーランド『君となら』)




















恭文「主人公の条件とは、足りなく不完全な部分がある事。それがある子は、みんな主人公になれる。
最初から王子様や幸せな家族が居るシンデレラは絶対に主役になれないし、なる資格そのものがない」

フェイト「え、ヤスフミいきなりどうしたの?」

恭文「いやさ、前に読んだ地球の小説で、そんなフレーズがあったの。・・・・・・主人公キャラって、どれも完璧ではないじゃない?
完璧なように見えても、実は僕みたいなハーフボイルドだったり、フェイトみたいに天然だったりで欠点やダメな所がある」

フェイト「・・・・・・あぁ、それなら納得だよ。でもそうだね。
外見の印象と実際の中身が違っていたり、何処かそういうので矛盾を感じたり」

恭文「でも、それでいいんだよね。そういう人だからこそ、主人公になれる。
多分完璧になるのは、お話の最後なんだよね。主人公に完璧さは求めちゃいけない」

フェイト「それがシンデレラとかで言うと、王子様と一緒に幸せに暮らしているという時間。
ということは・・・・・・足りないものがある子はみんな、何かしらのお話の主人公になっちゃうね」

恭文「あ、そうかも。つまり、フェイトも主人公?」

フェイト「そ、そう言われるとちょっと恥ずかしいけど、そうなるのかな。私も・・・・・・うん、足りないものだらけだから」

恭文「逆を言えば、完璧で一環していて強くて外も内も一分の隙も無い奴は、主人公なんて出来ないんだよね。つまり、なのははダメだね」

フェイト「なのははちゃんと主人公してるよっ!? ほら、プライベートとお仕事では差があるしっ!!
・・・・・・というかヤスフミ、どうしていきなりそんな話を?」

恭文「いや、暇潰し。ほら、今行列待ちだしさ。唐突だけど、話題を振ってみた」

フェイト「・・・・・・納得したよ。確かにこういう話なら、時間潰せそうだね。
じゃあ、もうちょっと掘り下げようか。どういう人が主人公キャラにいいかーとか」

恭文「うん」










(おしまい)






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