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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース14 『ティアナ・ランスターとの場合 その8』



「このぉ・・・・・・ゼロノスの真似っ子に負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





雪は変わらずに降り続ける。そんな世界の中、イマジンは走ってくる。

だから、僕は剣の形態に組み立てたゼロガッシャーを両手に持ち、突っ込む。

そのまま、勢いよく袈裟から刃を叩き付ける。そこで互いに足を踏ん張り、刃をぶつけ合う。



というか、鍔迫り合い。刃が叩きつけられたその瞬間、衝撃が走り、僕達の周囲の雪が吹き飛ぶ。周囲へと破裂するような白い色を含んだ風が、吹き荒ぶ。

イマジンも刃を押し込む。だけど、負けない。身長の差を含めても、僕は正面から立ち向かえる。

・・・・・・うし、大剣形態だけあって、重さもあるから押し負けしない。で、長さもそこそこだから取り回しも一応○。こりゃ想像以上に使い勝手いいぞ。





「真似っ子じゃねぇよっ!!」



そう、これは真似っ子じゃない。そして決してパクリでもない。違う、断じて違う。

そんな意思を乗せて、僕はゼロガッシャーを更に押し込む。押し込んで・・・・・・僕より身長が30センチ近く高いイマジンを威圧する。



「アッチが本家本元で、こっちが元祖だっ!!」

「はぁっ!?」



左手は、そんな事を言いながらももう動いている。

左手の親指でベルトの上部、ボタン式のスイッチを押す。



≪Full Charge≫





それから、ベルトに挿入したカードを取り出す。カードの模様から同じ色の光が溢れるように輝く。そのままゼロガッシャーの持ち手にあるスロットにそれを挿入する。

接触部からオレンジ色のエネルギーが雷撃のように弾け、それがゼロガッシャーの銀色の刃に届き、包む。そうしてこの子ゼロガッシャーに更なる力を与える。

そう、だから・・・・・・カードをベルトに戻した上で、遠慮なく刃を打ち込む。



刃は、立ちはだかる脅威を斬り裂くために、込められた力を解き放った。





「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





強引に、力押しに、僕は刃を袈裟に振るう。僕の刃を受け止めていたイマジンの剣を、オレンジ色の斬撃が襲う。

それは剣を粉々に砕き、その衝撃でイマジンの身体を吹き飛ばした。刃と刃が接触した箇所には、『A』をモチーフにしたオレンジ色のエネルギーエンブレムが浮かぶ。

・・・・・・ここまでこだわってるんかい。ヒロさん、やり過ぎです。



なお、どうやってこうなってるとか、理屈どうとか、そういうことはもう考えない。そう、考えても意味がない。というより、僕にはきっと理解出来ない。





「壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

≪ついでに言っておきます。もうめんどくさいので、さっさと終わらせますね。そうして家に・・・・・・あぁ、そうでしたね。≫





そう、壊れた。だから、こうする。





「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





そのまま、数度乱暴に前へと踏み込みながらゼロガッシャーを打ち込む。刃は鎧に叩き付けられ、火花を上げる。



上げた火花の数だけ、イマジンが後ろへと踏鞴を踏む。だけど、問題ない。僕はさっき言ったように前へ踏み込んでる。





「これがテーブルの恨み」





斬撃は止まらない。





「これが椅子の恨み」





刃を振るう。ただただ振るい続ける。





「これがPS2(BBユニット内蔵型)の恨み」

≪なお、現在では生産していないために入手困難です≫





袈裟、真一文字、逆袈裟、唐竹割り、下からの斬り上げ、斬撃の嵐は止む気配を見せない。





「これがテレビの恨み」





勢い任せの乱舞。斬撃は徐々にスピードを増していき、今や火花は息つく暇も無く立ち上っている。



イマジンの鎧には、嫌というほど傷が刻まれていく。





「これが」





苛立ちの全てを叩き付けながら、僕は袈裟に振るった刃を返し、振りかぶる。



そのまま、両手でしっかりとゼロガッシャーを持って、力いっぱいに左から真一文字に刃を打ち込む。





「六課出向前に自分へのご褒美として買って、まだそんなに遊んでないWiiの恨みだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





斬撃は今までで一番大きい火花を散らし、イマジンを後方数メートルへと吹き飛ばした。イマジンがその衝撃で、雪の中を滑るように転がる。



・・・・・・ゼロガッシャーの持ち手を右手で、刀身の真ん中の部分を左手で持って、外す。剣は、元の小さな二つのパーツに戻った。

それから外した持ち手部分をクルリと回転させて、今まで柄尻だった部分をはめ込む。

すると、両刃の刀身は傘のように開いて、その形をボウガンに変える。



そのまま、またベルトのボタンを押す。





≪Full Charge≫

「・・・・・・く、終わらせられてたまるかっ!!」





それを見て、イマジンが雪の中に潜った。当然、僕はボウガンを構えた。



構えて、よく狙う。イマジンは、雪・・・・・・地面の中を走る。



走っているその先を狙って・・・・・・。





「行けっ!!」





僕は、引き金を引いた。放たれたのは、先ほどの斬撃と同じ色の射撃・・・・・・いや、射撃というにはあまりにも大きい光の矢。



その発射の衝撃に僕は耐える。そうして放たれたそれが、雪を、地面を貫き、その奥に居る敵意を貫く。





「ギ、ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!」





声が上がった次の瞬間、地面から土を、雪を吹き飛ばすほど、爆発が起きる。起きた爆発は、まるで柱のように僕の目の前に姿を現す。



・・・・・・普通に高威力だし。なんですかこれ。





≪というより、私出番がないじゃないですか≫

「そんなことないよ。もう一体残ってるし」

「・・・・・・・・・・・・必殺っ!」





え?





「俺の必殺技・・・・・・パートT!!」





・・・・・・そちらを見ると、走り抜けながら刃を左から横薙ぎに叩き込んで、イマジンを一刀両断にしているモモタロスさんが居た。



そのまま、イマジンは爆発。そして、終わった。



というわけで、アルトを見る。





「ごめん、もう終わったみたい」

≪・・・・・・アフター、期待してますからね?≫

「うん、そっか。やっぱりそっち行くんだ」

≪当然でしょう≫










ある地点を見る。倒れたキャロに、それをかばうように倒れているフェイトがそこには居た。





それから、空を見る。戦いの最中も変わらずに、辺りを白い世界に染め上げる雪を降らせる空を。





・・・・・・あぁ、そっか。





どうやって二人エリオとキャロとぶつかればいいのか、やっと分かった。あと、ついでにスバルも。





白い世界の中で分かったのは・・・・・・僕はどこぞの横馬とは違うということ。僕はお話も『お話』も出来るほど、真っ直ぐな心根は持ってない。





だからかな、雪の冷たさが、少し心地よくて・・・・・・ちょっと、悲しい。





悪いね、行くのを許してもらうつもりはないわ。だから、置いてく。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース14 『ティアナ・ランスターとの場合 その8』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、白い過去から現代に戻った。戻ってまずやったのは、預金通帳とかその関連が無事かどうかというところ。

実は、家が元に戻ってたとか、そういうのを期待してたんだけど、全然駄目だった。

瓦礫の中での荷物整理は、やっててとっても悲しくなった。・・・・・・ゆかなさんのライブのパンフレットが斬り刻まれてて、ちょっと泣きそうだった。





とにかく、そんな惨状でも本当に大事な物とか、金銭的に今すぐ必要な物とかはギリギリで無事だった。ただし、最小限に。

とりあえず、時間もないからデンライナーの売店にお世話になるのは決定した。だって、旅行のために準備してた荷物まで駄目になってたから。

・・・・・・やばい、まじめにまた泣きたくなった。うぅ、ライブ限定のゆかなさんのCDとかどうすりゃいいの? 2月の大阪のライブも行けなかったしさ。





というわけで、僕は現在・・・・・・隊舎に居ます。










「・・・・・・まぁ、アレだよ。家財道具とかなんやらはもう駄目なんだよね?」

「はい」



談話室で、ヒロさんとサリさんがこう・・・・・・微妙な顔で僕を見ている。



「ゆかなさんのCDに、ライブのパンフレットに、メルティランサーのゲームディスク3作全部とドラマCDに、あとあとTOAのゲームディスクとドラマCDと」

「いや、そこはいいだろっ! てゆうか、まず気にするのがゆかなさん関係のグッズっておかしくないかっ!?」

「だって・・・・・・だって・・・・・・!!」



大事にしてたのにー! 特にCDとライブのパンフレットー!!

それが、それが・・・・・・ビリビリのぐちゃぐちゃの粉々でー!!



≪・・・・・・ボーイ、泣くなよ。てゆうか、そんなにゆかなさん好きか?≫

≪ファンだというのは知っていましたが、さすがにこれは・・・・・・。ちなみに、ランスター二士とどちらが好きですか?≫

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ティア」

≪「「そこ迷うなよっ! 即答じゃないっておかしくねっ!?」」≫

≪ランスター二士には絶対聞かせられませんね。確実に嵐が待っています≫



とにかく、家は寝泊りが出来る状態じゃない。隊舎に来たのは、出発まで・・・・・・って、明日なんだけど、今日一日だけ安心して眠るため。

だけど、僕はきっと泣くだろう。絶対泣くだろう。だってだって・・・・・・。



≪でさ姉御、ねーちゃんから写真データ見せてもらったけどよ、駄目とか駄目じゃないってレベル超えてるって。
ありゃもう、普通なら全部廃棄処分コースだぜ。最近流行のリサイクルも修復魔法を使わないと無理だ≫



・・・・・・そうだ、修復魔法ってあったじゃないのさっ! 僕、魔導師なのになんで忘れてたんだろっ!!



「あー、そっか。そこまでか。とにかく、アンタはもう出発だし、その辺りの補修はハラオウン家の方々と協力してやっておくよ。
家財道具以外も、多分災害保険が適用されると思うからなんとかなる。というか、なんとかする。ここは私に任せておいて」

「いいんですかっ!?」



いや、さすがにそれはないと思って、出発延期で家財道具の処分はやるつもりだったのに。

多分、やってる最中に泣くんだろうけど。それも号泣。あぁ、でもよかった。修復魔法万歳。魔導師万歳。魔法至上主義万歳だよ。僕、これから魔法至上主義に生きるわ。



「いいよ。・・・・・・ただし、アンタが今最低限やらなきゃいけないことをやってからだ。それが条件かな」

「ようするに、スバルちゃん達と話せってことだ。もう、腹は決まったんだろ?」

「はい」



うん、腹は決まった。過去でのフェイトとキャロを見て、決まった。でも・・・・・・多分、爆弾だとも思う。

思うけど、これが本心だもの。これを隠した上でこれからも付き合い続けるなんて、僕には出来ない。



「んじゃ、気にする必要はないよ。まぁ、アレだよ。今回のことは、自業自得な部分もあるってこと、忘れないようにね?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし。



「はい」

「タメが長いねオイっ!!」

「そして泣くのやめろっ!! そこまでショックだったのかっ!?」





だって・・・・・・だって・・・・・・!!





「ゆかなさんのCDやライブのパンフレットがー!!」

「「やっぱりそこかいっ! てゆうか、どんだけゆかなさん好きっ!?」」

≪普通に憧れの眼差しで見ますからね。もうライブの前後なんてすごいすごい≫

≪・・・・・・そっか、そこまでか。ボーイ、元気出せよ。大丈夫、きっといいことあるからよ≫










とにかく、涙を拭いながら僕はそこを出た。





・・・・・・侑斗さんやフェイトにも迷惑かけたって言うし、もうモタモタはしてられない。





爆弾、ぶん投げる事にしますか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ということで、エリオの部屋に来た。





事前に話は通してたので、三人とも集まっていた。で、アルトは居るけど、ティアとリインには・・・・・外してもらった。





あんまりにも頼りっぱなしだからね。ここは一人でなんとかしたかった。まぁ、『話すだけ話すけど、結果はどうなるか保証出来ない』って言ったら、苦笑いされたけど。





とにかく、エリオの部屋の床に座って・・・・・・対決です。










「・・・・・・正直、僕は恭文に六課から離れて欲しくない」



そんな言葉を厳しい視線と共に投げて来たのは、エリオ。



「侑斗さんやフェイトさんはあぁ言ってたけど、やっぱり納得出来ないんだ」

「で、僕に身内部隊の馴れ合いとみんなの自己満足に付き合えと」



エリオの視線が厳しくなる。だけど、それをあざ笑ってやる。

だって、別に僕は仲良しこよしするためにここに居るんじゃないんだから。



「恭文、どうしてそんなこと言うのっ!? 私達」

「事実でしょうが。・・・・・・六課ここに居てね、ずっと考えてたんだ。多分、来る事になった時からずっとだな。ズレを感じてた」



うつむくキャロも、僕を止めようとしたスバルも、視線が厳しいエリオも、僕は真っ直ぐに見ながら言葉を続ける。

・・・・・・なんつうか、めんどくさい。何がめんどくさいって、色々気遣ってた事がだ。そうして、本心を隠してた事がだ。どうせこうなるなら、最初から話せばよかった。



「六課で、嘱託扱いでも部隊の一員になって、ずーっとズレを感じてた。フェイトやなのは、親しい人間が居て、ティアみたいに仲良くなった相手が出来ても、どうしてもここを自分の居場所だと思えなかった」

「それは、恭文がここに居る時間が短かっただけだよ。でも、まだ時間はあるし、これからそれは変えていける」

「無駄だよ。・・・・・・それをさ、最初は方向性の違いとか、そういうのだと思ってた。エリオの言うように、時間が短いせいだとも思ってた。
だけど、休職して、六課から離れて、気づいたんだ。それ、ズレでも何でもなかった。僕・・・・・・単純に、ここに居ること自体が嫌いだったの」



三人の瞳が見開く。それでも、僕は言葉を続ける。



「違う人間なはずなのに、同じになれる。きっと変われるなんて言われるのが嫌だった」



スバルの肩が震える。



「好きな相手との時間を今なお占領し続けている相手と顔を合わせるのが嫌だった。今でもヤキモチ・・・・・・違うな、嫉妬してるのに、それを押し隠してまで仲良くなろうとしている自分が嫌いだった。
そんな事をしてまで目の前の二人と仲良くなる意味なんて、繋がる意味なんて、僕には無いのに。僕にとってはもうどうなろうが関係のない存在なのに。八つ当たりだって分かってても、止まらなかった」



キャロの肩が震える。瞳から涙が零れる。

そして、エリオの目が見開き、口を開こうとする。



「たった一ヶ月程度しか居なかったのに、まるでずーっと前から付き合いがあるみたいに言われるのが、嫌だった。つーか、馴れ馴れしい」



だけど、開いた口を動かすのを止める。



「そうして、『ここに居てもいい。一緒に考える』なんて言われても、そっちの都合で縛り付けられてるようにしか感じない」



エリオは、半立ち状態でいつの間にか動き出していた身体を止める。

止めたまま、睨み気味なエリオの視線を受け止めつつ、僕は言葉を続ける。



「それで、何が一番嫌かってさ」

「恭文、もういい」

「・・・・・・・・・・・・それで」

「もういいからっ!!」



エリオが叫ぶ。それを聞いて、僕は言葉を止める。



「・・・・・・嫌だね。話はまだ終わってない」

「これ以上、話すことなんてないよっ! もう分かった・・・・・・分かったからっ!!」

≪なに温い事言ってるんですか≫



それを無視して話を続けようとすると、今まで黙っていたアルトが口を開いた。

エリオも、泣き出していたキャロも、俯いていたスバルも、僕を・・・・・・違う、胸元に居るアルトを見る。



≪あなた達が望んだことでしょ? 話し合って、理解する。そして、まだそれは終わってません。・・・・・・最後まで聞きなさい≫

「もう聞く必要ないっ! それに、こんな事望んでないっ!! こんな・・・・・・スバルさんやキャロ、六課の皆を傷つけるような言葉」

≪聞けと言ってるんですよ。あなた、話した結果や内容がどうなるか考えてなかったでしょ? 話せば私達は旅に出ず、六課に居ることを選んでくれる。きっと自分達の気持ちを分かってくれる。
そんなことばかり考えてるから、みんなその状態なんですよ。・・・・・・そんな覚悟の無い姿勢だから、あなた達の言葉は何一つ通用しないんですよ。無力で、無意味な言葉しか使えないんです≫



・・・・・・アルト。



≪『どうしてこんな事を・なんでそんな事を言う』なんて、マスターを恨むのは筋違いですよ。こうなるのが分かったから、今まで黙ってたんです。だから、話そうとしなかったんです。だけど、あなた方は全員望んだ。
誰でもない、マスターこの人と『話す』ことを、そうして気持ちを知ることを望んだ。だったら・・・・・・存在が否定されようが、心が壊されようが、最後まで聞きなさい。誰でもない、自分が知りたいと望んでおいて、逃げるのはやめなさい≫

「違う・・・・・・。違う、違う。僕達は逃げてなんか」



・・・・・・アルト、もういい。



”ですが、これはあなたどうこうは関係なしにムカつきます。もう2、3時間くらい説教を”

”いいの。・・・・・・てか、逃げてるどうこうで言われたら、僕は何も言えないもの”

”まぁ・・・・・・それはそうですね”



否定しないんかい。・・・・・・まぁ、それもそうか。ある意味最大級の現実逃避だしさ。



”ま、ありがとね。・・・・・・ちょっとカチンと来てたし”

”傲慢ですね”

”傲慢ですよ? そんなもん、とっくに知ってる”



奪って、壊して、自分の存在を、守りたい何かを未来に繋ぐ道を選んだ時から、知ってる。



”僕は、自分がとんでもなく傲慢で歪んだ人間だって、知ってる”

”そうでしたね”



さて、話を続けるか。まだ、肝心な部分を言ってない。



「・・・・・・でさ」

「もう、いい。もういいから」

「その中でも一番嫌いだったのが」



もちろん、無視して言葉を続ける。両耳を塞ごうとするエリオの両手を取り、捻り上げる。

かなり力を入れて、折るくらいの気持ちで。



「選べ。腕をへし折られて話を聞かされるか、自分から聞く覚悟を決めるか。・・・・・・これはお前らが心から望んだ時間だ」



僕はもう気にしないと言った。問題はないと言った。だけど、三人はそれで納得しなかった。

だから、話すことにした。僕の抱えていたもの全部を。ここに居る理由が無いということを。



「僕は、それに必要もないのに付き合ってんだ」



居たいと思う理由もないことを。三人の言葉なんて、意味が無い事を。



「だったら・・・・・・壊れようがどうなろうが笑って受け入れろ」



エリオの目が怯えた物になった。だから、両手を離す。エリオはもう耳を塞ぐようなことはしなかった。

うし、これで安心して話せる。



「その中でも一番嫌いだったのはね・・・・・・。それでも、皆の事が本当の意味で嫌いになれなかったことだよ」



グスグスとさっきまで響いてた泣き声が途切れる。そして、三人は顔を見上げて僕を見る。



「ここに居る人間全て嫌いになれたら楽だったのに、なれなかった。スバルとバカやるのが楽しくて、キャロとメールのやり取りしたり、料理の話したりするのが楽しくて、エリオを弄るのが楽しくて、六課自体に価値は何も感じてないけど、それでも楽しくて・・・・・・」



瞳に映るのは疑問の色。そして、戸惑いの色。二つがマーブル状に入り混じって、不思議な色になる。

なぜ、そんなことを言うのかと。なぜ、それならここに居られないのかと。だから、僕は言葉を続ける。



「だけど、ここに居るのが嫌いで、どこかへ行きたい感情は止まんなくて、どんどん自分の中で大きくなって、押さえ込めないくらいに強くなって、それで・・・・・・止まりかけた。
止まって、自分が何をしたいのかとか、何のために戦うのかとか、そういうの忘れかけた。それがまた嫌で、嫌で・・・・・・堪らなくてさ」

「恭文・・・・・・」

「まぁ、今は大丈夫だけどね。・・・・・・もう一度言うね。悪いけど、僕はみんなほど六課ここに愛着は無い。フェイトやなのはにはやて、師匠達やみんなに・・・・・・あと、ティアとリインが居ても、しがみ付く理由がないのよ。
僕にとって、六課は帰るべき場所でも何でもない。ただの仕事場・・・・・・違う、ただ僕を縛り付ける檻でしかない。だからね、みんながどうしてそんなに『ここに居て欲しい』と思うのか、全く理解出来ない」



とりあえず、立ち上がる。もう・・・・・・いいでしょ。これ以上やっても、僕の独壇場になっちゃう。それじゃお話にはならない。



「まぁ、そういうわけだから・・・・・・行くわ。僕の今居たい場所は、六課でも、管理局でもない」



僕が今居たいのは、デンライナー。そこで見てみたいものがある。ずっと夢見てた形にはならないかも知れないけど、それでも知りたい事が、見てみたい物がたくさんある。

その中で探したい答えがあるかも知れない。だから、それを探すために旅に出る。・・・・・・そのまま、玄関へ向かう。



「・・・・・・なら、恭文はどこへ行くの?」



玄関の前で足を止める。声は、後ろから。それは、エリオの声。

若干それが涙声というか、上擦ってるように感じるのは、気のせいじゃない。



「そうまでして、この場所を否定して、どこに行くの? 僕には分かんない。分かんないよ」

「・・・・・・なんで、それをエリオに教えなきゃいけないわけ?」



後ろを振り向き、あざ笑うように唇を歪める。



「僕にとっては、六課は居場所でもなんでもなかった。何の価値も無かった。たったそれだけのことがどうして分からないのさ」



歪めて、言い放つ。



「僕は全力で、自分の決めた道を最高速で駆け抜ける。みんなのことは遠慮なく置いてく。その先が知りたきゃ、聞かないで勝手に追いついて来い」










そのまま、前を向いて外に出た。そのまま、廊下を歩き出す。










≪・・・・・・カッコつけ過ぎじゃありません? 実は自分でもよく分かってないくせに≫

「言うな。でも、一応目標はあるよ。こう・・・・・・私立探偵というか、ハードボイルド的なアレ。で、顧客はフェイトやティアナ」

≪あぁ、そういう形ですか。でも、やっぱり他力本願ですよね≫

「そうだね。うん、もうちょっと煮詰めていくことにしよう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・うーん、心配だよ。





ヤスフミ、スバル達とちゃんと話すって言ってたけど、どうなるんだろ。うまくやってくれてるといいけど。










≪Sir、それは無駄な願いかと。確実に揉めるでしょう。アルトアイゼンも居ますし≫

「そう、だよね」





オフィスで一人、今日の事について報告書を打っている。だけど、やっぱり心配。



こう、腹が決まったというか、本気の顔をしていたから。どんな爆弾を投げるかと、不安にはなる。



オフィスから見える外の景色に目を向ける。もう、外は真っ暗。二つの月が夜の闇の中で輝いている。





「・・・・・・いよいよ、明日か」










・・・・・・やっぱり、ここから居なくなるのは嫌だったりする。休職ではなく、本当に六課を辞める事にもなった。ヤスフミが来る前に、ここで自分の居場所を、やりたい事をこの中六課で見つけて欲しいと思った私の数ヶ月前の願いは、砕け散ったから。

・・・・・・違うな。今感じている寂しさは、それや六課とはあまり関係ないのかも知れない。

ただ単純に、ヤスフミが居なくなることが寂しいんだと思う。その・・・・・・好き、だから。





ティアとは同盟というか、勝負というか、ライバル宣言し合っちゃったし、この気持ち・・・・・・まだ持ってていいよね。

やっぱりね、このままは嫌なんだ。いつかはちゃんと伝えたい。

隠してズルズル引きずるのは、もうやりたくない。





だから・・・・・・。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのはママ、まだ恭文が六課から出てっちゃうの、納得してないの?」



もしかして、顔に出ているのかも知れない。だから、ヴィヴィオが心配そうな顔で私に対してそんなことを言うんじゃないかと思った。



「ヴィヴィオは納得してるの?」

「うん」



自室で、平然と言い切ったのは我が娘。それもエヘンと胸を張って。



「だってだって、デンライナーで旅するなんてすごいもん。うー、ヴィヴィオも行きたいくらいだよ」

「でも、まだ六課は解散にならないし、みんなすごく心配して、ここに居て欲しいって思ってるんだよ? ヴィヴィオだって心配してたよね」

「それはそうだけど・・・・・・でも恭文、六課に居てもつまんなそうだったし、いいんじゃないかな」



ヴィヴィオの言葉に、胸が詰まる。というか、なんで知ってるんだろ。

しかも、つまんなそうと言い切ったということは、ヴィヴィオ自身が自分の目で見て判断したということ。



「ヴィヴィオ、どうしてそう思うの? 恭文君、六課に来てからも楽しそうだったよ。私はそう思う」



フェイトちゃんが居て、はやてちゃんにヴィータちゃん達が居て、あとリインにティアも居て、スバルやエリオという友達が居て・・・・・・分からない、あの様子のどこがつまらなそうだったんだろう。



「うーん、ヴィヴィオも最初は分からなかったの。でもでも、良太郎さんやリュウタ達が来て、一緒に居る時の恭文、たくさん笑って、目がこーんなにキラキラして、すごく楽しそうなのを見て、分かっちゃった。
それ見ててね、もしかして、本当の恭文はこっちじゃないのかなーって思ったの。というか、ヴィヴィオは良太郎さん達と会う前の恭文より、会ってからの恭文がずっと好き。逆に、その前の恭文は・・・・・・あんまり好きじゃない」



なんだろう。ヴィヴィオの言葉に、納得してしまった。



「その前の恭文は、なんかこう・・・・・・ずーっと一人で居ようとしてた。皆と仲良くしてても、一人で居ようとしてた。
一人で居て、どこか遠い所へ行きたいってずっと考えてた感じがする。だから、あんまり好きじゃない」



確かに、今の恭文君の方が・・・・・・その、楽しそうではある。



「・・・・・・そっか。だから、納得するの?」

「うん。もしもこのままここに居る事で、恭文がまた元のつまんなそうな恭文になるなら、出ていちゃってもいいかなーって思う。
あの、もちろん寂しいけど・・・・・・寂しいけど、ヴィヴィオや皆のために恭文が我慢するのは、なんか違うもん」

「でも、そうすると私達が寂しいのを我慢することになるよ?」

「あ、そっか。うーん・・・・・・でも、それはなんだか違うし・・・・・・うーん、よくわからないよ。とにかく、ヴィヴィオは賛成なの」

「・・・・・・そっか」










そのまま、ヴィヴィオを抱きしめる。・・・・・・ホントの恭文君・・・・・・か。あぁ、そうだ。思い出したよ。





ホントの恭文君は、確かに今の恭文君だ。どうして気づかなかったんだろ。休職する前の恭文君より、ずっと元気で、笑ってて、楽しそうなのに。海鳴で暮らしてた頃の恭文君そのままなのに。





そうだね、六課に居ても、私達の側に居ても、それは違う。だってここは海鳴に居た時とは違うもの。私達は局員で、ここは職場で・・・・・・そんな簡単なことに、どうして気づかなかったんだろう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、お前は遠慮なく啖呵を切ったと」

『いやぁ、どうしてもそうなって』



ここは次元航行艦・クラウディアの艦長室。うちの弟から、通信が来た。まぁ、経過報告という感じだな。

しかし、どうしたらそうなるのか聞きたいんだが。思いっきりぶっちゃけるとはまた過激な。



『だって、あぁでも言わないと納得しないですし。そもそも、話すってのはそういうもんじゃありませんか? 自分の都合や思うとおりに行くわけがない』

「まぁ、確かにな。・・・・・・あぁ、そうそう。海鳴に寄るなら、ちゃんとアリサちゃんやすずかちゃん、美由希さん達に顔を見せておけ」

『・・・・・・やっぱりですか?』

「やっぱりだ」





アリサちゃん達を呼び捨てにしないのは、局の関係者でもないし、妹の大事な友達に対してそれもどうかと思うからだ。なお、さん付けもしない。それも、今ひとつ違う感じがするから。

というより・・・・・・呼び捨ては距離を近く感じさせ、相手を選んだ方がいいと悪友ロッサに教わった事がある。実際、そうだった。

なので、妻と家族と職場関係者以外ではこういう方向にしているので、あしからず。



クレームは受け付けない。誰がなんと言おうと受け付けない。自分でも違和感はあるが受け付けない。そして、喋り口調と同じく、誤字でもなんでもない。



まぁ、その・・・・・・アレだ。僕にも色々あったということで、察してくれ。エイミィの誤解を解くのは大変なんだ。局の関係者は大丈夫なんだが、そうじゃないと色々大変なんだ。





「特にすずかちゃんだ。お前の事を心配しているだろうし、ランスター二士との事も話さなければならないだろう」

『そうですね。まぁ、予定にはありましたから』

「やっぱりか?」

『やっぱりです』



さすがに・・・・・・なぁ。まぁ、ここは任せよう。

これはぶった斬りはしないだろう。というより、やったら説教する。・・・・・・アリサちゃんが。



「恭文」

『ほい?』

「出来れば、僕はお前には六課の中で出会った人達との絆を切るような真似はして欲しくなかった」



画面の中で弟分は、とても苦い顔をする。一応は理解しているらしい。自分の行動が、確実にその道筋を辿るものだと。



「特にエリオとキャロだ。・・・・・・二人とは、もう仲良く出来ないかも知れないぞ?」



というより、仲良くは出来ないだろう。確実に。ある意味では、二人からすれば裏切りだ。

今まで自分達は友達として、仲間としてやってきた。だが、恭文は違った。・・・・・・傷つけたのは、間違いないだろう。



『まぁ、そうですね。でも、いいですよ別に。てか、クロノさん』

「なんだ?」

『ここを隠して・・・・・・どう話せばいいんですか?』





表情を重くして、画面の中に映っているであろう僕を見ながら、恭文がそう口にした。





『三人は納得してくれませんよ。僕がどう話そうと、どう言おうと、自分達と僕は違うって、納得してくれない。
僕は少なくとも今は管理局の中に夢も、理想も描けないし、居場所も見つけられないって、分かってくれませんよ』





それを聞いて、僕は・・・・・・頷きで返した。





「そうだな。そこが分からなければ・・・・・・きっと、何を話しても無駄だろう。だが、迷いは無かったのか?」

『ありましたよ。実際、直前までやめようかとも考えましたし。でも、エリオの様子とか見て、それだと駄目だなと』

「そうか」





・・・・・・確かに、そうだ。話すにしてもまず、恭文にとって六課よりデンライナーという場所の方に行きたいという感情を。もっと言えば、六課という自分達の居場所が恭文にとって価値がないと言うことを認識しなければ、意味がない。

フェイトやあの桜井侑斗という方が話してくれたそうだが、それでも子ども達は納得出来ないだろう。というより、納得しなかった。

あの子達は六課に入れて、もっと広く言えば局員になれて、幸せと思える場所と、やりたい事を見つけられた子達だ。恭文とはそこが違う。



これを我がままや傲慢とは言うことなかれ。真面目な話をすれば、僕だって管理局に居るのは、自分なりに通したい理想があったからだ。まぁ、僕の場合は最初は色々と私怨絡みだったが。

今も艦長として世界を飛び回る仕事をしているのも、自分の子どもに『パパ』と認識され難い生活を送っているのも、その通したい理想のためだ。管理局という場がそれを出来る場でなければ、僕だって恭文と同じことをしている。

それは多分、なのはやフェイト、はやてにヴィータ達も同じく。あの子達も同じく。管理局の中に、仕事の中に、自分のやりたい事を見つけている。だから、どんなに問題がある組織と言われても、働き続けて行くことが出来る。



だが、どうしてもそこが見つけられない人間だっている。理想も、居場所も、何もだ。それは当然のことだ。管理局に限らずどんな会社組織も、万人に受け入れられるというのはまずない。

我が弟は、少なくとも管理局・・・・・・機動六課という部隊に限定すれば、何も見つけられなかったというだけの話。・・・・・・こう考えると非常に楽なのだが、人間というのはやはり自分の経験から物を言ってしまう部分がある。

以前のフェイト然り、母さん然り、アルフ然り、エリオやキャロ、ナカジマ二士になのは然り。納得出来ないメンバーは、やはりそこがネックになっているのだろう。



自分達にはある。そして見つけられた。だから、きっと恭文にも出来ると期待を抱く。それがどれだけ重荷か、きっと気づいていない。





「とにかくアレだ、土産を頼む。毛生え薬などあるとうれしいな」

『分かりました。探しておきます。・・・・・・クロノさん』

「なんだ」

『すみません』





・・・・・・バカ。謝るくらいなら、最初からむちゃくちゃな事ばかりをするな。



別にいいさ。僕はお前が生粋のバカだと気づいた時から、トウゴウ先生と同じものを持っていると確信した時から、付き合う覚悟は決めている。



ただ・・・・・・これだけは、言っておくか。





「別にいいさ。ただな、恭文。・・・・・・幸せになれ」





そうだな、僕からバカな弟であるお前に言いたいことは、やはりコレだけだろう。



だから、真っ直ぐに画面の中の恭文を見る。多分、コイツの願っている事を叶えるよりもずっと、こっちの方が難しいとは思うから、楔を打ち込んでおく。





「どんな形でもいい。幸せになれ。誰でもない、お前自身の幸せと、居場所を見つけろ。だが、戦いの中に、誰かを助けるという行為の美しさの中に、それを見つけるな。・・・・・・それは、きっと不幸しか呼び込まない」

『見つかる、でしょうか。少なくとも、クロノさんやみんなみたいな形は、無理です』

「見つけるんだ。なに、心配はいらない。管理局に限定して考えると非常にアレなだけだ。限定しなければ、いくらでも道筋はある。第一、それを探すための旅だろうが」

『・・・・・・・・・・・・はい』










旅立ちの時は、もう目の前。





何が起きるかなど分からないが・・・・・・うまく行くことを、願おう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、翌朝。





朝一番で、僕達は旅立つことにした。










「・・・・・・まぁ、アレよ。ちゃんと帰って来なさいよ? フェイトさんと一緒に、待ってるから」

「そうだよ、ヤスフミ。ちゃんと補佐官になって、私の夢や理想を通す手伝いをしてもらうんだから。約束、まだ有効なんだからね?」

「うん、ちゃんと帰ってくる。というか、あの・・・・・・ありがと」

「「・・・・・・うん」」





朝の隊舎で、お別れ。皆もそれぞれにお話中。



僕はやっぱり・・・・・・ティアと、フェイトかな。



というか、やっぱり連帯感が強いような感じがする。あの、どうして?





「それは当然よ。フェイトさんはライバルで、同盟相手だもの」

「そうだよ、当然だよ。ティアとは上司と部下と言うだけじゃなくて、同志でもあるんだから」

「だから何が当然っ!? そして同志やら同盟ってなにっ! というか、あの・・・・・・どうなってんのこれっ!!」

「・・・・・・なぎさん」



後ろから声がかかる。そこには、キャロ。来ないもんだと思ってたのに、スバルやエリオと同じく、ちゃっかり来ていた。

・・・・・・どうしたの?



「・・・・・・ううん、恭文さん」



なぜか言い直した。それもあだ名じゃなくて名前で。

そして、僕の右手を取って、ギュッと・・・・・・強く、握る。



「昨日ね、やっぱりショックだった。一緒に居た時間は短くても、きっと私達と同じ気持ちだと思ってたから。
・・・・・・エリオ君やスバルさんほど強くないけど、それでもそうであって欲しい。そうだったらいいって、思ってた」

「だろうね」

「それで、色々考えたんだ。ここから・・・・・・友達になりたい」



僕を見上げながら、キャロはそう言った。少し息苦しそうに、言葉を続ける。



「恭文さんと、友達になりたい。仲間じゃなくていい。家族じゃ・・・・・・なくてもいい。それでも、友達になりたい。好き、なんだ。
私、恭文さんとメールしたり、お話したり、色んなこと話すの、好きだから。恭文さんとの時間が好きなの、今でも変わってないから。だから・・・・・・」



・・・・・・ため息を吐く。そして、右手をギュっと握り締める。

それにキャロが目を見開いて、僕を見る。



「いい、の?」

「いいよ。てか、言わなかった? 『知りたきゃ、聞かないで勝手に追いついて来い』ってさ」

「・・・・・・そうだったね。うん、そうだった。そっか、アレはそういう意味だったんだ。ありがと。私、本当に」



キャロがおかしいというように笑う。でも・・・・・・泣くな。まるで僕が悪いみたいじゃないのさ。



「いや、実際アンタが悪いでしょ」

「そうだね、ヤスフミだめだよ。ティアという彼女が居るのに、フラグ立てちゃ」

「フェイトさん、それもちょっと違いませんかっ!?」

「そ、そうかな」



・・・・・・後ろで何か聞こえるけど、気にしない。てゆうか、やっぱり二人の仲の良さがとても気になるんですけど。あの、なにこれ?



「・・・・・・恭文」



声がかかる。今度は、スバル。そして、傍らにはエリオ。



「何?」

「行く前に、私達と勝負して」

「手加減なしの、真剣勝負」

「・・・・・・・・・・・・はい?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、全員演習場に・・・・・・あの、これどういうことっ!?





どうして、いきなりスバルちゃんとエリオ君が、恭文君と戦うのかなっ!!










「・・・・・・あれから、三人で話したんです」





キャロちゃんがポツリと話し出した。





「私は・・・・・・もう一度、恭文さんとちゃんと友達になりたいって思いました。今までが嘘ばかりで、通じ合っていなかったなら、これからを変えて行きたいと思いました。
でも、スバルさんとエリオ君はやっぱり納得出来ない・・・・・・ううん、違う。あの言葉達だけでは足りないと思ったらしいんです。何より、自分達は何も伝えてない」

「キャロ、まさかと思うけど」

「はい。なのはさん仕込みの『お話』で、今の恭文さんに想いを伝えるって言って・・・・・・」



そして、全員がなのはさんを見る。六課メンバーは結構ジトーッとした感じで。



「なぁ、オビビの母ちゃん。さすがにこれはねぇんじゃないのか?」

「困りますね、出発時刻も迫っているというのに」

「そうだよー! そんなに恭文が僕達と旅に出るのが嫌なのっ!? ちょっとしつこ過ぎるよっ!!」

「わ、私が進言したわけじゃないですからっ! というか、私はもう何も言わないって決めて・・・・・・あの、ホントですよっ!?」



それでも、疑いの眼差しは消えない。・・・・・・なのはさん、そこまでですか?




「わぁ・・・・・・大変だっ! ゆ、侑斗、この場合どっちを応援したら」

「バカっ! 応援なんてしなくていいんだよっ!!
・・・・・・でも、発車時刻があるのにどうすんだよ」

「恭文くんには、多少であれば待つとは言ってあります。ただし、あくまでも多少です」

「オーナー、ちなみにどれくらいですか?」

「そうですね、5分です」



短くありませんっ!? いくらなんでもそれは無理じゃっ!!

というか、止め・・・・・・られないよね。スバルちゃん達、本気の顔してたし。声かけ辛いと思うくらいに。



「そして、恭文くんはそれを聞いて『5分以内に乗車します』と返事をしました」

「・・・・・・あのバカは本当に。てゆうか、昨日一体なに話したのよ。いきなりなんでこんなことになんのよ」

「ヤスフミ・・・・・・」










とにかく、演習場の中の恭文君はアルトアイゼンを鞘に収めたまま、腰を低く落として構えた。





それを見て、場の緊張感が一気に高まる。吹き抜ける潮風が、どこか熱を帯びてきたように感じたのは・・・・・・気のせいじゃない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・いきなりこう来るって、おかしいでしょうが。





まぁ、いいや。僕には何か言う権利ないし。とりあえず・・・・・・アレだ。










「・・・・・・最初に言っておく」



森の中というシチュに設定された演習場のど真ん中で、僕は右手で二人を指して、こう言い放つ。

5分・・・・・・いや、移動時間を含めるとそれじゃ足りないか。



「1分以内に終わらせて、とっとと出発する」



今回はゼロタロスは使わない。つーか、使うまでもない。



「・・・・・・また言ってくれるね」



スバルが構える。拳を振りかぶり突撃体制を整える。



「私、恭文が休職した時からずっと訓練してて・・・・・・強くなってるよ」



そして、足元からは青い翼。そう、ギア・エクセリオン発動状態。



「僕も同じく。イマジンとの戦闘で変わってない所は知ってるけど、それだけじゃ足りない」



そして、エリオも同じく。どうやら小細工なしで正面から来るつもりらしい。



「僕達は、変わってる。強くなってるんだから」

「・・・・・・そう」



そのまま、アルトを腰に携えた状態で、低く・・・・・・這うように屈む。



「なら、グダグダ言わずに来い。・・・・・・叩き潰してやる」



そして、アルトだけを残してジャケットを全解除。それに二人が目を見開き驚く。



「なに、してるの」



僕は答えない。まぁ・・・・・・ちょっと試したいことがあるから、これなんだけど。

一応言っておくと、神速じゃない。つーか、神速を使っても僕が楽しくない。試すのは、もっと別のこと。



「恭文、答えて。なにして」

「スバルさん」

「・・・・・・そう、だね。恭文、そんなことして怪我しても、知らないから」










そのまま、二人は飛び込んできた。時間差をつけて、スバルが前、エリオが後ろ。スバルを避けても、エリオが仕留める。逆に、エリオのスピードならスバルを瞬間的に追い越して攻撃も出来る。

マジで正面突破でカタをつける気らしい。・・・・・・一瞬、横馬と師匠は今まで何を教えてたんだろうと思う。

いや、違う。二人にとっては、こうじゃなきゃ意味がないんだ。これは、模擬戦でもなんでもない。ただの『お話』なんだから。だけど残念、僕はそんなつもりはない。





だから・・・・・・そう、僕は遠慮なく叩きつける事が出来る。試す事が出来る。

集中する。そして、近づいてくる拳と槍を見据える。・・・・・・攻撃以外では、魔力は一切使わない。これも試す事の一つ。

アルトの柄に手をかける。左手の親指は鍔にかけた。目指すは『神速』。魔力に頼らずとも壁を越え、あの領域に辿り着く事。





瞬間的に、まさしく疾風という言葉が似合う速度で二人は近づいてきた。だから僕はそのまま・・・・・・。










「鉄輝、一閃」










アルトを、抜き放った。





僕は二人と瞬間的に交差。交差して、刃を振るう。










「・・・・・・瞬・極(またたき・きわみ)」





交差した瞬間に生まれたのは、『神速』の三連撃。抜き放たれた一撃目がスバルのわき腹へと入り、そのままスバルを斬ると共に脇を抜ける。

二撃目は、その攻撃の隙を狙って、突き出されたエリオのストラーダを、上段から打ち込み両断する。ストラーダは、柄の真ん中から真っ二つになった。

三撃目はまた左下からの切り上げ。その雷撃を思わせるスピードで打ち込まれた斬撃により、エリオをフィールドとジャケットごと斬り裂いた。



そのまま、後方の二人は倒れる。僕は刃を振るって・・・・・・そのまま、鞘に収めた。





「・・・・・・出来た」

≪あなた、これが試したかったんですか≫

「うん」





先生から教わった居合い・・・・・・『抜き』の技術の一つの到達点。『神速』の三連撃。そして、そのどれもが一撃必殺という大技。



その名も『瞬・極(またたき・きわみ)』。今までは二連が限界だった。先生から見せてもらったのに、ずっと練習してたのに、それでもダメだった。





「超えたい壁の一つだったから」

≪あぁ、そうでしたね≫





前までは出来なかった。でも、今の僕なら出来るかどうか試したくて・・・・・・やってみた。



そして、結果は出た。・・・・・・感じた手ごたえが嬉しい。これで、心置きなく旅に出れる。





「そういや・・・・・・防御フィールドやジャケットを解除したり、攻撃以外は魔法を使わなかった理由、話してなかったね」





振り向きながら、僕が見るのは倒れながらも顔を向ける二人。意識までは刈り取れなかったらしい。強くなったと言うだけの事はある。



だけどまぁ、動くのは無理でしょ。だって、徹も込みで撃ったから。





「お前ら二人を相手にするのに、んなもん必要ないからだよ。現に、攻撃はかすりもしてない」





なお、一応自分の今の服とかを確認した上での発言は留意していただきたい。



いや、これで袖とか二の腕が破けてたらかっこ悪いじゃないのさ。





「・・・・・・つーわけで、行くから」










そのまま、僕は演習場を・・・・・・六課を後にした。





なお、リインはこの間、ずーっとはやての抱擁を受けていて、僕の事よりもこっちがデンライナーの出発を遅らせる大きな要因となった事を、追記しておきたいと思う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・身体、動かない。というか、胸の辺りが痛い。





内臓器官への直接ダメージ? 私のISと同じ・・・・・・いや、これは単純な技能による攻撃。





私も、エリオも、演習場の真ん中で動けずに居た。というか、動こうとすると身体が・・・・・・痛む。










「・・・・・・かすりも、しなかった」





エリオが、空を見ながら呟く。そして、空を電車が走る。



白い電車と、黒い電車。その二つが、時間の中へと消えていった。





「ぶつかれば、分かると思ってたのに、圧倒された。ぶつかることすら出来なかった」

「そう・・・・・・だね。それも、魔法もなにも使わないで」



あんな速い攻撃、魔法無しで出来るんだと、痛む身体に顔をしかめつつ関心してしまう。

というか、うー、予定と違った。普通にぶつかって、それでちゃんと見送ろうと思ったのに。恭文、空気読んでないよ。



「・・・・・・スバルさん」

「なに?」

「僕、決めました。追いかけます」



・・・・・・え? あの、つまりそれはデンライナーに乗るってことっ!? で、でも無理だよっ! チケットがないと、オーナーは誰であろうと乗せないんだからっ!!



「あの、そうじゃないです。・・・・・・追いかけて、強くなって、今度はちゃんとぶつかります。さっきまでは強くなったから、それが出来ると思ってた。でも・・・・・・違った。
恭文は、もっと強くなってた。僕達よりも高いところに居た。だから、追いかけます。僕は、まだ弱い。弱いから・・・・・・強く、なります」

「そうして今度こそ『お話』?」

「はい」



そっか。・・・・・・電車が消えていった空を見ながら、私も考える。

考えて考えて・・・・・・少し思う。確かに、このままはちょっと悔しい。力ずくで叩き伏せられたも同じだし。



「なら、私もかな。・・・・・・このままは、嫌だから。ちゃんとぶつかれるように、もっと強くなる」










・・・・・・結局、ちゃんとは話せなかった。だけど、なんでだろう。あの鋭い斬撃を喰らって、私達二人ともなんだかすっきりした。





とにかく、こうして恭文は旅に出た。私達は結局、見送ることしか出来なかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、それから1年が経った。





いや、いきなりでアレだけど、飛ぶのよ。私も正直ちょっとびっくりしてる。





恭文は、約束どおりに六課解散直前・・・・・・つーか、解散日に戻ってきた。そして、その場のノリで最後の模擬戦に参加。

というより、隊長陣VSフォワード陣VSヘイハチ一門というわけの分からないバトルロワイヤルに発展したために、桜の木は根こそぎ『消滅』した。

そのために、終わったあとは全員で桜の木に謝り倒すことになったのは、言うまでもないと思う。





旅から戻ってきた私の恋人は、どこかスッキリした顔で、シャマルさんの話ではもう病気も完治に近い状態。やっぱり、環境でそういうのは変わるもんなんだなと、胸の中で一人思った。

ただ、カウンセリングは今でも定期的に受けている。この辺りは私も恭文も、シャマルさんからまた同じことにならないようにと勧められて、納得した上でお願いしてる。

あと、エリオやキャロ、スバルとは・・・・・・まぁまぁうまくやってる。三人とも、なんだかんだで納得はしてたから。





それから、約束通りフェイトさんの補佐官として私と一緒に仕事するようになって、リイン曹長もそこに混じって・・・・・・日々は忙しくも、楽しく過ぎる事になった。

ただ、アイツはずっと気にしていた。アイツのたまごが・・・・・・なりたい自分が、かえらないことを。焦ると余計にかえらないと思っても、それでも。

だけど、転機が訪れた。それは、アイツにとってとても大きな転機。いや、ちょっと違うか。あと・・・・・・私にとってもだ。





あの子達と出会う事で、私も色々振り返って、考える事になったから。自分の夢を、なりたい自分を。そして、未来への可能性を。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でも、ビックリしたよ。そのガーディアンの子達が、ヤスフミと同じしゅごキャラの宿主だったなんて」

「うん、僕もビックリした。僕達みたいなのを、キャラ持ちって言うんだって。で、実際にその子達のしゅごキャラとも話をさせてもらったのよ」

「そっか。だからヤスフミ、なんだか楽しそうなんだね」

「・・・・・・うん」



・・・・・・えー、詳しくはしゅごキャラクロス1話を見て? 大体あんな感じで巻き込まれて、こいつに聖夜小学園でガーディアンと名乗る連中から話を聞いてもらった。

そして、私達全員びっくりしてる。だって、そいつら・・・・・・恭文と同じしゅごたまを産んだ子達だったんだから。しかも、全員たまごからかえってる。



「それで話を整理すると、その×たま・×キャラってのが、報告にあった異常事態を起こす存在なのよね」



私達がこの街に来たのは、黒いたまごが異常現象を起こすという情報を入手したから。そして、その黒いたまごが×たまということになる。



≪そう言ってました。たまごに×が付く・・・・・・ようするに、なりたい自分や夢を諦めそうになると、その状態になるらしいです。そして、そのままだと、そのたまごの持ち主達は夢を描けない。ネガティブな感情に苛まれ続ける≫

「ガーディアンは、そういうのに対処するのが仕事なんだって。×たまに対処出来るのは、基本的にキャラ持ちの子だけだから。
そんな子達が、×たまを浄化・封印するか、場合によっては壊す。だから、ガーディアンは代々キャラ持ちの子だけで構成されてるとか」



リビングで、お茶を飲みながら恭文が話す言葉に、私は少し引っかかるものを感じた。それは『たまごを壊す』という部分。

・・・・・・ちょっと待って。壊してどうするの? 壊したら、たまごの中のなりたい自分とかも壊れちゃうんじゃ。



「僕も同じ事を聞いた。なんでもね、そのままにしておくと夢自体が描けないから、浄化や封印が無理なら壊すんだって」



その言葉に、頭の中で少し情報を整理する。つまり・・・・・・ネガティブな状態に苛まれるたまごの宿主を助けるための手段として、壊すというものがあるってことか。

浄化や封印は、恭文がなぜか出来たように×たまから×を取ること。元のたまごに戻す事。だけど、壊して・・・・・・どうなるの?



「たまごを壊すと、夢もなりたい自分もなくなってこころが空っぽになる。ただ、そこからきっかけがあれば新しいたまごを産む事も出来るから、本当にどうしようもない場合はそうするって話してた」

「なるほど・・・・・・。でもなぎ君、その話通りなら、たまごって壊してももしかして問題なかったりするのかな」

「それが大有りなんだよ。・・・・・・まず、必ず新しいたまごが産まれるとは限らない。産まれてもそれが何時産まれるかとかも分からない。
そのまま、こころが空っぽのまま、夢も描けないで大人になる可能性が大きいとか。だから、浄化出来るなら浄化して、必ずたまごは助けるんだって」





・・・・・・あー、シャーリーさんがなんか不謹慎な事言ったって顔で落ち込み始めた。まぁ、さすがにこの話聞くとなぁ。



そうすると、私やフェイトさんは戦力外か。恭文と違って、魔法で浄化なんて出来ない可能性が大きいんだから。下手すれば、たまごを壊す。



いや、それだけじゃない。他のものも壊すことになる。





「そうなると、私達は手出しが出来ないね。たまごを壊すことは下手をすれば人の一生を左右するくらいにとても重い事で、ガーディアンのみんなはそれを助けたいと思っている。
なら、もしも私達が局員や管理局の道理を持ち出して、その子達のそういう意思や考えを無視してそれをやれば、確実にその子達の信頼を無くすよ」



そう、壊すのはここ。信頼関係という部分。これが壊れるのは、非常にまずい。だって、現状が上手くいき過ぎなくらいにいってるんだから。

恭文にガーディアンの子達が事情を話してくれたのは、自分達と同じたまごの持ち主で、浄化も出来る能力があるということで、決して悪意を持った相手ではないということが大きいもの。ここでそれをやるのは、それを覆すことになる。



「ようするに、なぎ君の関係者である私達が平然とたまごを壊すようなことをしたり、それを認めるようなことを言ったら・・・・・・確実にアウトと言うことですね」

「うん、確実に調査に支障が出るよ。それは絶対に望ましくない。私達はヤスフミとリインのサポートに回る事になるね。というか・・・・・・あの」

「・・・・・・ねぇ、提督ってぶち殺しても罪にならなかったよね。ジャスティスだよね」

「罪になるからっ! 頼むから落ち着きなさいよっ!! 大丈夫っ! 私も同じようなもんだからっ!!」

「あぁ、ヤスフミもティアもごめんっ! あの、ちゃんとフォローはさせてもらうし、クロノには私からしっかり言っておくから元気出してー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして、平然と小学生生活を送ることになった。というか、私は普通に中学生生活。





まぁ、つい先日のフィアッセ・クリステラさんのコンサートで遭遇した猫男の発言でアイツがキレて、悪の組織っぽい連中に喧嘩を売ったりで色々あったけど、日々は平穏に、そして静かに流れて行く。





・・・・・・で、もうすぐ3月の半ばという時期。今日・・・・・・学校に来たら、すさまじい事になっていた。










「・・・・・・なによこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





私が中等部の廊下で叫ぶのも無理はない。校舎1階の下駄履きの前の廊下に、あるものが貼り付けられてるから。

そこは、校内行事などのお知らせや、部活の部員募集などのチラシを貼り付ける掲示板。そして、今回貼り付けられているそれは、世に言う学級新聞・・・・・・で合ってる? とにかく、そこにはこう書かれている。

『次期ガーディアン候補・蒼凪恭文(五年星組)と中等部のティアナ・ランスター熱愛っ!? いつもの帰り道で二人だけの愛を語らうっ!!』・・・・・・と。



そうして、私達の歩く様子とかが・・・・・・こう、あの・・・・・・いつ撮ったっ!? アイツが帰りに『なんか、外でも誰かに見られてる感じがする』とか話してたの、もしかしてこれなわけですかっ!!





「・・・・・・ランスターさん、そうだったんだ」



後ろから声をかけるのは、同級生の淳。




「いや、分かってた。私は分かってた」



そして、その幼馴染の陽子。なお、二人とは普通に仲良し。

淳が黒髪ロングなおとなしめな感じで、陽子が若干赤の入ったショートカットの髪で元気ハツラツな感じ。なお、陸上部。



「ちょ、あの・・・・・・えっと」




違うと言いかけて、気づく。・・・・・・違わない。全然、違わない。

だって、付き合ってもう1年経ってるし、なんだかんだでその・・・・・・夜のコミュニケーションとかもがんばってるし。一応、フェイトさんとのライバル関係は継続中だけど、それでもやっぱり私達は恋人で・・・・・・。



「まぁ、あれだよティアナ。正直にぶっちゃけようよ」



陽子が、私の肩に腕をかける。そして、ニヤニヤと・・・・・・あれ、なんで私、普通に陽子からはやてさんの影を見るんだろ。

おかしい、おかしいなぁ。淳も同じ感じだし。



「ランスターさん、ガーディアンの蒼凪君と本当にそういう関係なの?」

「いや、だからそれは」

「別に恥ずかしがること無いって。私も実は一度話したことがあるんだけどさ」



いつの間にっ!? アンタ中等部でしょうがっ! なんで普通に初等部の人間と接点もってんのよっ!!



「私の弟、初等部なんだけどね。その弟が街でよその中学の奴に絡まれて困ってた時に、助けてくれたのよ。ちゃーんと相手方と話も付けてくれて、その上家まで送ってくれてさ」

「あ、そうなんだ」

「そうなの。てゆうか、それからうちの弟がもうすごいすごい。無茶苦茶尊敬してる感じだもの」





ガーディアンとは、聖夜学園初等部にある生徒会の総称。その生徒会の普段のお仕事は、生徒が悩んでいたり、なにか困っていることがあったら、助ける事。

場合によっては、先生とガチにディスカッションするらしい。キツ過ぎる校則に物申したりすると聞いた時、私は普通にすごいと思った。

でも、アイツちゃんと仕事してるんだ。関心関心。なんだかんだで、ガーディアンって一つのコミュニティであり組織ではあるけど、アイツには合ってるのかも。



六課の時みたいに、居場所を感じてないとか、そういうのも無い様子だし。・・・・・・ちょっと、考えちゃうな。どうしようかな。





「いや、あの子かっこいいよねー。小学生ってなんかガキっぽいけど、あの子はそういう部分もありつつ、大人な印象もあるし・・・・・・中等部でも狙ってる子が居るって聞いてるよ?」



そうなのっ!? ・・・・・・てゆうか陽子、大人な印象ってのは当たり前よ。アンタ達より5歳は年上なんだから。

それで子どもな部分・・・・・・まぁ、分かる。アイツはなんだかんだで大人になり切れてないとは思うから。ただ、そこがいいところだと私も思ってはいる。



「そこはともかくランスターさん、本当に付き合ってるの?」

「淳、アンタずいぶん食いついてくるわね」

「だって、ランスターさんからそういうお話、聞いた事がないんですもの。それで、どうなのかな」

「・・・・・・あぁ、もういいわ」



否定するのもバカらしくなったので、お手上げのポーズを取って、認めることにする。

まぁ、事実ではあるから。



「付き合ってるわよ? で、私はアイツの事が好き」










瞬間、凄まじい驚きの声が中等部の校舎を駆け抜けた。





なお、私のせいじゃない。それは絶対に違う。




















(その9へ続く)




















あとがき



やや「・・・・・・これ、ゴールはどこなの?」

古鉄≪というか、内容的にもうアフターじゃないですか。もうここで『おしまい』とかやってもいいじゃないですか≫

恭文「僕を責めるような目で見るのはやめてっ!? いや、大丈夫っ! ゴールは見えてるからっ!!
・・・・・・えー、パーフェクトカップルの呪いが恐ろしすぎて、10話突入は決定なIFルート、どうだったでしょうか。お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンと≫

やや「このお話のゴールはどこなのか、非常に気になる結木ややです。
・・・・・・それで、真面目にどこなのかな。やや、すっごく疑問なんだけど」

恭文「とりあえず、しゅごキャラクロスで出てる『アレ』が登場する所までやるつもりらしいよ? もしくは、『アレ』に匹敵するパンチのある物を出すかのどちらか。その場合は、多分産まれます。
この話のテーマはコンプレックスって最初に言ったけど、もう一つのテーマとして『なりたい自分、行きたい場所』というのがある。まず、『アレ』は、僕のそこに対しての一つの答えではあるから」





(すみません、普通にそうなりました。もうここで止めても結局アフターすぐ書くから同じ事になるんです)





古鉄≪そう言えば、確かにそんな感じにはなりましたね。とりあえず、六課という場所はマスターの行きたい場所ではなかったという答えがここで出たわけですが≫

恭文「だったら、その場所は、僕のなりたい自分はどこにあるのかって事に対して一応でも答えを出して、終わりたいって言うことみたい。『アレ』が出るところまで書くって言うのは、そこが理由なのよ。あと、ティアナもだね」

やや「えっと、資料によると」





(エース、たった今届いた資料を見ながら、ちょっとたどたどしくお話)





やや「ティアナさんも、恭文と付き合うようになって色々変わったから、そこに対しての話も書きつつなんだね」

恭文「まぁ、クロス本編でやった事は省略・・・・・・というか、出来れば変えつつだね。同じ事やったり、シーンコピペしても意味がないから」

やや「状況は同じだけど・・・・・・って感じかな。本当にIFルートのお話にする」

恭文「そうそう。・・・・・・でもさ、まずいよこのルート。普通に書くのが楽しくて作者が止まらないのよ。ロマンティックが止まらないのよ」

古鉄≪胸がー胸がー苦しくなるんですね≫

恭文「そうそう」

やや「ごめん、ややそれわかんない」





(それは無理もない。だって、年代がふた回りくらい外れてるし)





古鉄≪とにかく、一応でもゴールが見えてきたしゅごキャラクロス・・・・・・違いました。ティアナさんルート、どうなるかこうご期待ですね≫

恭文「そうだね。というわけで、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンと≫

やや「結木ややでした。それではまた次回に・・・・・・ドライブ・イグニッションッ!!」

恭文「・・・・・・やや、だめだよ。そんな魔王みたいな真似は。ヒロインになれないよ?」

やや「そうなのっ!? じゃあじゃあ・・・・・・やめるっ!!」










(どこかから抗議の声が聞こえるけど、気にせずに終了。
本日のED:中原麻衣『Shining☆Days』)










ティアナ「・・・・・・ゴールがマジでどうなるか気になるわね。てゆうか、続けようと思ったらどこまでも続けられそうなんだけど」

恭文「ティアルート版しゅごキャラクロスとか?」

ティアナ「そうそう・・・・・・無理よね」

恭文「作者の体力的にね。あれだよ、真面目に影分身の術だって。覚えないとダメだって。というか、覚えてメルティランサーとクロスしよう」

ティアナ「・・・・・・・・・・・・は?」

恭文「そうすればゆかなさんボイスなシルビィと絡める。僕、シルビィエンドだったら受け入れるよ? あー、サクヤさんエンドでもいいしツンデレ的な意味合いでナナもいいよね」

ティアナ「・・・・・・・・・・・・アンタは私IFの話でなにとんでもないこと口走ってんのよっ!!」(ギュー!!)

恭文「ぐ、ぐるぢぃ。ティア・・・・・・首だめ首。これはぢがたないの。ゆかなさんだからしかたないの。メルティランサーだから」

ティアナ「仕方ないわけないでしょっ!? てゆうか、どんだけゆかなさん大好きなのよっ!!」

恭文「だ、大丈夫。中原麻衣さんも好きだから。ラジオでの喋りは秀逸だと思ってるから」

ティアナ「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」(ぐぐぐぐぐ・・・・・・!!)

恭文「ぎ、ぎぶ・・・・・・!!」










(おしまい)





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あきゅろす。
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