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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース13 『ティアナ・ランスターとの場合 その7』



・・・・・・今日の予定は、三人でデート。なお、ティアの要望。リインをのけ者な感じはまずいのではないかと言うことらしい。





というか、最近三人体制について真剣に考え始めてるらしい。リインとそんな話をするのだ。僕ともそんな話をするのだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・三人体制かぁ。私がまぁ、第一夫人ってことになるんですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ? リインは、恭文さんの側に居られるだけで幸せですから」



キッチンで僕はクッキーをお皿に盛る。盛る・・・・・・そして、二人はそんな話をリビングのソファーで、お茶を飲みつつする。



「てゆうか、リインが居てティアは大丈夫ですか?」

「あー、それは大丈夫です。・・・・・・恭文から、リイン曹長と会った時の事とか、その中でどう思ったのかとか、色々聞いたんです」



その2で話したアレか。とにかく、お菓子を盛る。若干手が震えてるのは気のせいじゃない。



「だから、リイン曹長と縁を切るとか、そういうの・・・・・・無理っぽいなと。私とは意味合いが違っても、やっぱり好きではあるでしょうし。
だったら、まぁ器量の大きいところを見せるべきなのかなと。でも・・・・・・リイン曹長。私、リイン曹長だから認めるんですからね?」

「ありがとうです。そう言ってもらえると嬉しいです。でも・・・・・・」



とにかくお菓子を盛る。どんどん盛る。もう盛らなきゃやってられないから。

うし、次はせんべいだ。



「これ以上はダメですよね」

「当たり前ですよ。てゆうか、第三夫人とか増えたら撃ちます」



あれ、なんで殺気を感じるんだろう。それも二つ。すっごい突き刺さる勢いで僕に向けられているような。

おかしい、ここは平穏無事に過ごせる自宅のはずなのに。なんでこんなことに。



「ティア、リインと二人で恭文さんをしっかり占拠しましょうね」

「はい、頑張りましょう」



とりあえず、なんか寒いものを感じながら、お皿を持ってリビングへ行く。

で、声をかける。若干上擦っているのは、気のせいとしていただきたい。



「お待たせ・・・・・・」

「わー、お菓子で・・・・・・恭文さん、なんですかそれ」

「クッキーとおせんべい」

「そういう問題じゃないわよ。なんで同じお皿にクッキーとおせんべいが存在してるのよ。そしてなんでそんなドカ盛りなのよ。おかしいでしょうが」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・聞いていて、凄まじく未来が不安になっている。





そして、僕に期待に満ち溢れた瞳をぶつける。あと、『絶対に第三夫人は許さない』という想いも込めて来る。それがちょっと怖い。





そんなわけで、まずはティアの私物の買い物。だけど・・・・・・だけど、さぁ。





なんで下着売り場っ!? 僕男ー! 女性用の下着なんてつけないからー!!










「なに言ってんのよ。私のを買うに決まってるでしょ?」

「そういうことじゃないよっ! なんで女性用下着売り場に男の僕が居るのかってことを聞きたいのっ!!」



いろんな色にいろんなデザインがクライマックスフォーム張りにてんこ盛りなこの空間は、非常に居心地が悪い。それはもうたっぷり。

僕が女の子なら、まだ大丈夫だったろう。だけど、あいにく僕は男だ。やっぱり見てはまずいのではないかとか、色々考えてしまうのだ。



「問題ないわよ。ほら、恋人同士で買いに来る女の子も居るんだし」



ここはクラナガン市内のデパート。で、僕はなぜかこんな所に連れられてきた。確かに、ティアの言うようにそういうカップルも居る。うん、ちらほら見かける。

なんかすっごい楽しそうにしてるし、一緒に更衣室に行こうとしてるのまで居る。・・・・・・あ、店員さんに止められてる。



「・・・・・・さすがにアレはやり過ぎだと思うな」

「実は私もそう思う。私達はやめましょ? 目指すのは、節度ある関係よ」

「うん」



というか、あの・・・・・・やり過ぎなのもやり過ぎじゃないのも居るには居るけど、恥ずかしいって。まず三人は恥ずかしいって。この時点で節度がないって。

だって、大体二人なのよ? 明らかに僕達は珍しいじゃないのさ。なんか視線集めてるし。



「でもでも、どうして一緒に買うんですかね」

「アレですよ、彼氏の好みの下着を一着持っておくといろいろ便利とか」

「なるほどですー」



なんか僕をのけ者にしてすっごい通じ合ってるっ!? てゆうかリイン、お願いだから納得しないでー! 絶対はやてに知られたら怒られるからっ!!



「よし、リインも恭文さんに選んでもらうのです。ティアもそのつもりだから、ここに居るですよね」

「はい。・・・・・・まぁ、アレよアレ。好みに合わせてあげるから、一緒に選びなさい」



だからなにそれっ!? なんかおかしくないかなっ! てゆうか、僕の好みにしてどうするつもりだー!!



「で、こっちの青と黒の、どっちがいいかな」



そう言ってティアが出してきたのは、レース付きの下着の上下。右手には青。左手には黒。

・・・・・・うーん、青の方が清楚な感じはするけど、黒のベージュのラインが色っぽい。ここはやっぱり



「黒」

「そっか。よし、じゃあこれは買いと」



・・・・・・あ、しまった。なんか乗ってしまった。

その瞬間、腰につけた四角いポーチが揺れる。コトコトと揺れる。身につけていて、ようやく分かるようなそんなかすかなレベル。



「・・・・・・何が言いたいのかな。えっと、ツッコミ?」





そのポーチに目を向ける。あ、また揺れた。どうやら正解らしい。この赤と白のチェック柄のポーチは、さっき購入したもの。

四角い箱のような形で、たまご二個がちょうど入る大きさなのだ。つまり、あの子達用。

中に衝撃吸収用のクッションも仕込んであるので、暴れても問題ナッシング。



うーん、やっぱり持ち運びは考えないほうがいいのかなぁ。壊れても嫌だしさ。よし、この辺り対策をしっかり考えておこうっと。





「・・・・・・恭文さん、こっちの白とピンク、どっちがいいですか?」

「両方ダメ」

「うー、どうしてですかっ!?」

「サイズが全然違うでしょっ! それ大人用だしっ!!」



リインが持ってきたのは、普通に成人女性用。リインがつけるとブカブカなものばかり。胸元だけじゃなくて腰もプカプカなものばかり。

ごめん、さすがにそれは止める。止めないといけないかなとか思っちゃうの。



「うー、恭文さんは女心を理解していないのです」

「そうですね、ぜんぜんだめ。アンタ、反省しなさい」



あ、またポーチの中のたまごがゴトゴトと。え、二人も同意見?



「だからなんでそうなるっ! お願いだから話を聞けー!!」

「なるのですよ。うー、リインだって究極体になれば『ボンキュっボン』なのですよ?」

「究極体ってなにっ!? そして自分をどっかのデジモンみたいに言うなー!! はやてが泣くでしょうがっ! てゆうか、僕が泣くっ!!」



なんて話していると・・・・・・なんかぴーぴーと音がする。

それは、ティアとリインの端末から。・・・・・・どったの?



「これ、六課からだ」

「なにかあったですかね」



なんて言いながら、二人はその通信を繋ぐ。

聞こえてきた声は、かなり慌てた感じ。そして、僕のよく知る声。



『ティア、リイン、今どこかな。大変なの』



そう、なのはだ。六課分隊長でティアの使えない上司と評判のなのはだ。



「横馬、僕も居るんだけど?」

『・・・・・・恭文君はもう六課をやめるんだから、関係ないでしょ? 話に入って来ないで』



・・・・・・あ、なんかすっごい機嫌悪そうな声で言ってきた。そうかそうか、そう来るか。



「・・・・・・なのはさん」

『ティアは黙ってて。・・・・・・というか、これくらいは言いたいの。みんな居るのに、また勝手するし。フェイトちゃんは納得したけど、私はしないんだから』



おのれは僕が六課を辞める事に不満タラタラな子だったね。忘れてたよ。だったらいいよ。僕にだって考えがある。



「そっか、じゃあ今から皆にあの事を話そうか」

『え?』

「・・・・・・中三の夏休みに盆踊りに行って、奮発して買ったばかりの浴衣を着てると」

『あー、お願いだからそれはやめてー! 私が悪かったからやめてー!! というか、それ皆には内緒だって約束してくれたよねっ!?』



そう、これはフェイトやはやて、師匠達や高町家のみんなも知らない事。僕となのはだけの秘密。さすがに事態がアレだったので、僕も秘密にすると約束したのだ。

でも・・・・・・約束に時効ってあったよね。



「フェイト達が遅れてくるから、二人であれこれ見てると、何故か浴衣の前の」

『ごめんっ! 本当に私が悪かったと思うからそれはやめてー!!』



・・・・・・横馬、人に文句言うのは勝てる立場に居てからやろうよ。

横馬、僕より立場低いんだからダメだって。



『それどういう意味っ!?』

「なお、原因は横馬が一人で着付けにチャレンジしたこと。それが甘かったから、自然とその浴衣の帯が気づかないうちに」

『あぁ、だからやめてー! ・・・・・・とにかく、今大変なことになってるのっ!!』



だから、その大変なことを今すぐ話せ。おのれの不機嫌に付き合うほど僕は暇じゃないのよ。



『・・・・・・あのね、やぎが居なくなってるの』

「「「・・・・・・はい?」」」



やぎ・・・・・・あの紙とか食べるやぎさんですか。

え、それがこれとどう関係があるの?



『ミッド西部の自然牧場から、やぎが大量に連れ去られたの』

「・・・・・・横馬、そんなどっかのおなか空かせた人の犯罪をなんで六課が追うのよ。しばらく僕に話しかけないで」

『そういうことじゃないよっ!! ・・・・・・いや、最初は私もそんなこと考えたんだけど、フェイトちゃんがもしやと思って現地に連絡を取って、詳しく話を聞いたの。
それで、目撃者の証言から判断すると・・・・・・犯人は多分、イマジン』



イマジンっ!? くそ、まだ残ってたのが居たのかっ! てゆうか、なんでこのタイミングでっ!!

あぁ、でも納得した。やぎを大量ってなんかこう・・・・・・それっぽいもん。でも、何に使うんだろ。



≪ヤギの顔の皮で覆面でも作るんですかね≫

『その想像は怖過ぎるよっ! というか、それだけじゃないのっ!! あの・・・・・・』

「なのはさん、まだなにかあるですか?」



少しだけ、沈黙が訪れる。本当に数瞬。それから、なのはは口を開いた。



『キャロの姿が朝から見えないの。というか、通信も応答がなくて、ケリュケイオンも部屋に置きっぱなしで、現在も行方不明なんだ』

「キャロがっ!?」





・・・・・・・・・・・・さて、これはどう見る? 関連性がないとするには、タイミング良過ぎではあるしさ。



でも、あのリアリストが単独で突っ込むような真似をするとは思えない。だって、キャロの手持ち技能は単独戦闘に向いてるわけでもなんでもないし。



とにかく、この場合・・・・・・。





「なのは、キャロの捜索は僕とティア、リインでやる」

『え?』

「どうせ六課はこの緊急事態の対処優先でキャロの事は二の次でしょ?」



悲しいかな、部隊・・・・・・組織と言うのはそういうものなのだ。理由も告げず、原因も不明で居なくなった人間一人のために業務を停止するわけにはいかない。

もう分かってる。残酷で冷たいように聞こえる人も居るかも知れないけど、それが社会のルールであり常識なのだ。



「あいにく、僕達は今その六課から離れてる。だから、キャロのことは僕達で好き勝手やらせてもらう」



だけど、残念ながら僕はそんなルールなど知ったことではない。やりたいようにやるだけ。

ティアとリインを見る。二人は・・・・・・力強く頷いてくれた。



「それと、フリードは居るかな」

『う、うん。フリードも置いてけぼりを食らった感じみたいで・・・・・・あ、そっか』

「そういうこと。どうせ召喚師のキャロが居ないんだし、借りても問題ないでしょ」



キャロとフリードは、契約を結んだ主と竜。もしかしたら、フリードなら今のキャロの居場所が本能的なあれこれで特定出来るかも知れない。

でも、僕とティア、リインだけじゃだめだ。フリードの反応やアイサインを多分ちゃんと受け止められない。だから、もう一手間。



「あと、エリオも借りるよ。エリオならフリードとちゃんと意思疎通できるだろうし。・・・・・・エリオまで居ないとか言わないよね」

『それは大丈夫。でも、恭文君』

「なに」

『会って、どうするの? 二人とも、相当追い詰められてる』



さぁね、知ったこっちゃない。つーか、昨日ティアとあれこれ話してやっと決心がついた。どう話そうとかどう言おうなんて、考えても無駄だと。

だって、僕は馬鹿なんだから、結局ぶつかるしかないのよ。・・・・・・とりあえず、隊舎に寄って、その後の捜索スケジュールなんかも組み立てつつ、言葉を続ける。



「とりあえず、会ってから考える。考えは決まってるけどね」

『・・・・・・分かった。とにかく、隊舎で待ってるから』

「お願い。あー、フェイトにも話しておいて。絶対仕事の効率が変わってくるから」

『あ、そうだね。・・・・・・というか、恭文君』



うん、なに?



『いつもの調子、戻ってきてる?』

「なんとかね。いや、どっかの誰かさんが関係ないとか言っても問題なく動けるのよ。というわけで、みんなに浴衣がバーンについてメールを」

『それはお願いだからやめてー! あの、本当に私が悪かったからっ!!』





そのまま、通信は終わった。でも、トゥデイで来ててよかった。ここからなら隊舎まではハイウェイを高速でぶっ飛ばせば20分かからないし、すぐに合流できる。



とにかく、僕は二人の顔を見る。





「ティア、リイン、ちょっと付き合ってもらうよ」

「わかった」

「さぁ、やるですよー。そして試し斬りなのです」

「そうだー!!」

「いや、二人とも気にするとこ違わないっ!?」




















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ケース13 『ティアナ・ランスターとの場合 その7』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、買い物を中断して全速力でサイレンを鳴らしに鳴らしまくってハイウェイをぶっ飛ばす。





そして、最短記録を樹立な形で隊舎に到着。そのまま準備していたエリオとフリードを乗せて、再び出発。





なお、良太郎さん達と侑斗さんにデネブさん、スバルやフェイトは現場に向かってる。





なので、僕達は・・・・・・。










「きゅ・・・・・・きゅきゅっ!!」

≪キャロさんとのリンク、切れかけてるみたい・・・・・・と言ってます。ただ、契約が解除されているという事ではなく、今は意識を半分失っている状態だそうです≫



つまり、一時的な問題でそうなってるってことか。うー、もうちょっと早く対処出来てれば・・・・・・って、言っても仕方ないか。



「恭文、この状態だとキャロを探すのは難しいよ。フリードも反応が微弱過ぎて掴めないみたい」



ミッドの道路を飛ばしつつ、後ろから聞こえる声に耳を傾ける。・・・・・・でも、これで手がかりは一つ得られた。

ハンドルを握る手の力が強くなる。ギュッと、絞り込むように。



「これで間違いないわね。キャロはイマジン絡みかどうかは別として、何かに巻き込まれてる」

「だから、意識をなくしてる。そして、フルバックと言えどA+相当あるキャロをその状態に追い込める存在が居る」

「デバイス無しだから、抵抗しようがなかったとも言えるけどね」



全く、魔法至上主義の弊害だよ。デバイス無し魔法無しでも戦えるように訓練しとけっての。



「アンタやヒロリスさん達がマイノリティなのよ。普通は出来ないから。・・・・・・いや、それだとマズイって分かってるわよ? そこはマジでよ。
なのはさんやフェイトさんのアレを見たら、そりゃあ反省もするわよ。だって、ひどかったもの。うん、ひどかった」

「そんなにひどかったの?」

「そりゃもう散々。なのはさんは背中から不意打ちしようとしてコケるし、フェイトさんは怖がってるのか反射が鈍いし」



・・・・・・横馬、そこまでかい。よし、からかうネタが一つ増えた。いいことだ(鬼)。



「それで恭文、どうする? 正直これで見つけるのはかなり難しいと思うんだけど」



流れる風景、窓から入り込む風を受け止めつつ、思考を働かせる。ティアの言うように、フリードもだめな以上どうしようもない。



「かと言って、放り出すのもアウトだよね」

「そうね。状況から見るに、何かあったのは間違いないでしょ。多分、不意打ち気味にかな。そういう予感とかなんかがあるなら、ケリュケイオン持ってくでしょうし」

「持って行くことがNGって考えられるよ?」

「あー、それもあるか」



不思議。やっぱりティアと話してると楽。状況はアレだけど、軽快なリズムでドンドン考えが纏まってく。やっぱり、相性はいいらしい。

うー、どっかにいないかな。ワード三つ言えばなんでも調べてくれる人とかさ。それでキャロの居場所なんて一発なわけですよ。



「いや、どこの人間グーグルよ。そんなのが居たら、私マジでびっくりだし。
でも、どうして居なくなったかだけでも分かるとありがたいんだけど。そこから足取り追えるわけだし」

≪確かに、捜査の基本ですね。エリオさん、そのあたりの事は?≫

「ごめん、僕もさっぱり。早朝訓練になっても居なかったから。ただ・・・・・・」



バックミラー越しに視線が突き刺さる。責めるような、そんな視線。



「恭文の事、僕達の中で一番気に病んでる感じだったから。もしかしたら」

「僕のせいだと」

「そうだね」



隠しもせずにいいますか。まぁ、いいや。別に仲良しこよしする状況じゃないし。

でも、それなら手がかりはもう一つ。・・・・・・うし。



「ねぇ、恭文。どうしても旅に出なきゃいけないのかな。やりたいことがあるのは分かるけど、今やる必要はないよ。
解散まであと少しなんだし、もう少しだけ恭文は六課でみんなと居るべ・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」





エリオがなんか叫んでるけど気にしない。サイレンを鳴らしつつ、交差点に突入。





「や、やす・・・・・・ちょ、やめてー!!」





そこからブレーキをかけ、ドリフト気味にUターン。





「アルトっ!!」

≪ルートはとっくに検索済みです。ナビはしますから、最短で行きますよ≫





そこから、逆車線に突入してアクセルを踏み込む。





「お願いっ!!」





トゥデイはそれに呼応して、勢い良く加速する。前の景色も見つつ、右脇に開いた小さな空間モニターで、アルトの出してくれた最短ルートを割り出す・・・・・・じゃなかった、確認する。



・・・・・・ここからなら、すんなりいけて15分程度か? くそ、下手にぶっ飛ばすんじゃなかった。





「アンタ、どこに」





言いかけて、助手席のティアが止まる。そして、納得した顔を僕に向けてくれた。





「・・・・・・って、聞く必要ないわよね」

「そういうこと」



リインもアルトも、納得してくれているのか何も言わない。それがありがたかったり。

だって、説明するのめんどいし。



「あー、それとリイン」

「はいです。ポーチは任せてください」



その返事に、僕は安心する。リインの両手にはさっきまで腰につけていたポーチ。しっかりと両手で守ってくれてる。

だから、僕は遠慮なくぶっ飛ばせる。



「あ、あのティアさん? リイン曹長もこれはいったい」

「コイツの家に行くのよ」

「えぇっ!?」










まぁ、本当にアレではあるけど、可能性が0なわけでもなんでもない。





早朝に居なくなったなら、それまでに僕の家に到着するとは思う。ティアとリインと外に出たの、10時頃だし。





だけど、万が一という事もある。なので・・・・・・エンジン全開。










「さー、ぶっ飛ばすよっ!!」

『前方の車両に告げますっ! 緊急事態のため、道を開けてくださいっ!! 繰り返しますっ! 道を開けてくださいっ!!』










助手席のティアがマイクで警告をすると、道が開く。それはもうモーゼの何たらの如く。





僕はアクセルを踏み込んで、道を開けてくれた前方の車の運転手の方々に心の中で感謝しつつ、それを次々と追い抜き、自宅に向かう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、10分後。自宅に到着した。荒っぽく車道に止め、エンジンを止め、シートベルトを外し、運転席のドアを開いてトゥデイから降りる。





また・・・・・・世界を、縮めてしまった。あぁ、自分が怖い。










「・・・・・・や、恭文。運転あら・・・・・・う、気持ち悪い」

「きゅく・・・・・・」



なんか約一名と一匹、沈んでるけど。



「情けないよエリオにフリードっ! いいっ!? 二人に足りないのは情熱理想なんちゃらかんちゃらなんちゃらかんちゃら・・・・・・そしてなによりっ!!」





三回転捻りでターン。そうして、後部座席でへばっている二人を右手で指差す。





「速さが足りないっ!!」

「ワケわかんないわよそれっ! てゆうか、途中の『なんちゃらかんちゃら』ってなにっ!? ちゃんと言いなさいよっ!!」

「えー、だって覚えてないし」

「だったらやるんじゃないわよっ!!」





エリオとフリードがダウンしてるけど、気にしない。ティアのツッコミも気にしない。だって、そんなことしてる場合じゃないから。



僕達はトゥデイから降りて、周辺を見渡す。とりあえず、見る限りは外に居るとかそういうのは無し。





「アルト」

「クロスミラージュ」

≪・・・・・・マスター、当たりですよ≫





なんですとっ!? うお、結構やけっぱちだったのにそうくるとはっ!!



あぁ、怖い。自分の勘のよさが怖い。僕、もしかしてすごいんじゃ。





≪Sir、私も掴みました。というか・・・・・・≫

「どうしたのよ」

≪蒼凪氏≫



クロスミラージュが声をかけてきた。・・・・・・うん、どうした?



≪非常に言いにくいのですが≫

「うん?」




そして、数秒沈黙。ティアが懐から出していた赤と白で構成されたカードが、非常に申し訳なさげというか、言いにくそうな雰囲気を出してる。



出して、それでもしゃべらなきゃいけないと思ったのか、ようやく重い口を開いた。





≪あなたの家、破壊されてます≫










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?









≪あぁ、クロスミラージュの言うように破壊されてますね。それはもう見事に。まず、ドアが吹き飛んでいますよ。これで当たりと私は判断しました≫

≪私も同じくです。そして内部に≫





全力疾走。神速なんて使ってないけど、それレベルな速度で僕は走り、階段を駆け上がり・・・・・・そう、6階まで一気に駆け上がった。



そして、僕の家を・・・・・・・・・・・・。





「・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





ど、ドアがー! プライバシーを守る守護神がなんかめためたに吹き飛んでるー!!



てゆうか、玄関部分がぐちゃぐちゃにー!!





≪マスター、中に≫





とりあえず、ガスガスと踏み込む。踏み込んで、リビングに突入。



突入して・・・・・・固まった。





「・・・・・・あぁ、なんだお前は?」

「なぎ、さん」





縄でがんじがらめに縛られたキャロが居た。そして、錆びた赤い鎧を着けて、これまた錆びた色の刃渡り70センチ程度の両刃の剣ロングソードを持ったイマジンが居た。なお、顔はツバメっぽい。

まぁ、ここはいい。ここはいいんだ。イマジンが小脇にキャロを抱えているのかとかはもういいんだ。

問題は、部屋の中。・・・・・・すさまじく破壊されていた。まるで嵐でも来たかのように。



テレビも、ソファーも、ゲーム機も、テーブルも、椅子も、棚や壁も、斬られたり吹き飛ばされたりでもうグチャグチャ。



ちょっと視線を向ける。・・・・・・キッチンが半壊してた。

更に視線を向ける。・・・・・・なんか、布団の残骸がある。

そして、もう一度視線を向ける。・・・・・・イマジンは怪訝そうな顔で僕を見る。そして、キャロは申し訳なさそうというか、泣きそうな顔で僕を見る。





「・・・・・・潰す」





うん、大体分かった。今この場で僕がやらなきゃいけないことが、大体分かった。





「はぁ? お前なに」





瞬間、アルトをセットアップ。そのまま抜き放ち、刃を左から横薙ぎに叩きつける。



イマジンは右手に持った剣でそれを防ぐ。そして、僕はそのまま刃を返し、袈裟に叩き込んだ。





「ちょ、待てっ! いきなり攻撃行動はおかしいだろっ!! それに見ろっ! こっちには」





・・・・・・・・・・・・やかましいっ!!





「そんなアバターパーツがどうなろうが知るかっ!!」

『はぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

「人の部屋半壊させておいて」





刃は打ち下ろされる。剣を斬ることは出来なかった。だから、もう一歩踏み込み、イマジンとキャロに殺気をぶつけながら更に踏み込む。いや、左側面に回りこむ。



柄を両手で持ち、キャロの頭のすぐ上・・・・・・イマジンの左腕を狙って、僕は刃を叩き込む。





「ふざけた事言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





刃が腕を斬り裂き、イマジンを吹き飛ばす。後ろはちょうど窓。わずかに残っていたガラスと窓枠を突き破り、イマジンは宙に投げ出される。



僕もそのまま飛び出し、急降下。地面に降り立ちかけていたイマジンに向かって、刃を上段から叩きつける。





「うおっ!?」





イマジンは後ろに大きく跳んで、それを回避。だけど、刃の切っ先がわずかに鎧を斬り、傷をつけた。



そして、アルトの刃は地面に埋め込まれる。いや、地面を砕く。そのつぶてが、接触点から飛び散った。





「・・・・・・ち」

『舌打ちっ!?』





・・・・・・それから、着地のためにしゃがみ気味になっていた身体を、ゆっくりと起こす。





「お前ら、地獄へ叩き落してやる。あー、そこの桃髪。しばらくはベッドとお友達になってもらうけどいいよね? 答えは聞かない」





一歩ずつ、一歩ずつにじり寄る。にじり寄ると、なぜか同じだけイマジンが下がる。



逃げるな。お前ら潰す。マジで潰す。あの部屋みたいにしてやる。





「・・・・・・おい、娘。あの凶悪生物が『なぎさん』なんだな?」

「違うよ。凶悪って所は合ってるけど」

「あぁ、そうか。そこは合ってるのか。だが、嘘をつくな」



イマジンは、剣の刃をキャロの首に当てる。

ただただ白い二つの瞳をキャロに向け、睨みを効かせる



「お前、さっきなぎさんって言っただろうが。そうかそうか、やっと本物に遭遇か」



・・・・・・どういうこと?



”なぎさん、お願い・・・・・・逃げてっ!!”



念話が届く。その声は、目の前のキャロ。

そんな戯言に構わずに足を進める。逃げる前に、コイツを叩き潰して憂さを晴らさないといけないんだ。



”あの、色々あってイマジンと契約しちゃって、それでそれで・・・・・・契約内容が『なぎさんと話す』事なのっ!!”

”・・・・・・そう、やっぱり共犯ってことか。よし、二人とも叩き潰す。念入りに叩き潰す。キャロ、念仏は唱えておけ”

”そうじゃないからー! なぎさんが居たら契約が”



そう、僕が居たら契約が成立する。話すだけでいいんだから。

なので・・・・・・



「これで、契約成立だな」

「え?」





キャロの背中が開き、その中にイマジンは吸い込まれる。そう、契約は成立した。

キャロが言葉を放ち、その後に僕が発言したから。それを『話した』という風に判断したらしい。

だから・・・・・・契約は成立した。キャロは、そのまま地面に落ちる。



アルトを鞘に収め、キャロに駆け寄ろうとすると、バイクの音がした。そちらを見ると・・・・・・デンバードに乗った電王が居た。





【恭文君っ!!】

「くそ、遅かったか。てゆうかよ、なんで桃っ子がこんなとこに居るんだよ。なんでイマジンと契約してんだ」

【とにかく、モモタロス】

「おうよ」



そのまま駆け寄り、電王は空のチケットを額にかざす。

かざして、時間が浮き出てくる。それは・・・・・・数年前の冬。



【とにかく、すぐにイマジンを・・・・・・】



そうだ、そうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだ。

あの野郎、ぶっ潰さないと。



「お、おい。青坊主?」

【恭文・・・・・・君?】





身体を支配するのはつい最近感じたばかりの本気の怒り。



だから、身体中から殺気が溢れ出る。あの野郎を叩き潰したいと、心が叫ぶ。





「地獄を、見せてやる」





たまごは大丈夫だった。一緒にお出かけしたくて、持って来てたから。持ち運んだ時に割れないようにポーチと中にクッションまで仕込んだから。今はリインに預かってもらってる。



だから、たまごは大丈夫だった。でも、もしも・・・・・・もしも、家に置いてたら。



それになにより、僕の家をぶち壊してくれた礼をしないと。





「絶対に・・・・・・叩き潰す」










とにかく、僕達の後を追ってきたエリオ、フェイトとスバルに侑斗さんとデネブにキャロを任せて、僕とティアとリイン、モモタロスさん達は過去へ飛ぶ。




飛んで・・・・・・あのバカを、叩き潰すっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ヤスフミとティアとリイン、モモタロスさんがデンライナーに乗り込んで、それが空に消えてから、私はキャロから詳しく話を聞いた。今日、何があったのかを。





まず、港湾区にある小さな神社でお願いをしたら、そこに待ち伏せていたイマジンと契約が成立してしまったこと。










「・・・・・・な、なんて言うか、あのイマジン、今までずっと待ってたんだ」

「はい。ずっと一人で待ってたって言ってました。そういうところならすぐに契約者が見つかると思って」

「それで契約成立かよ。まったく、なんでこう適当な事しかしないんだ」

「全くだ」





とにかく、それから抵抗して私達に知らせようとしたけど、ケリュケイオンもなくてあっさりやられてしまったこと。やってることはともかく、あのイマジンはそうとう強いらしい。ぶつかってそう感じたとか。



それで、イマジンは契約を成立させるために、なぜかヤギを大量にさらって目の前に連れてきたこと。・・・・・・どうして、やぎ?





「フェイトさん、俺が思うに・・・・・・キャロちゃんが『なぎさんと話したい』という事で契約したのが原因じゃないかと」



デネブさんが、補足するように私達に言ってきてくれた。

つまり、えっと・・・・・・。



「なぎさん・・・・・・なぎ・・・・・・やぎ・・・・・・やぎさん? あ、そういうことなんですね」

「あー、ありがちだな」



スバルと侑斗さんが納得した顔をする。それは私達も同じ。

そして、同時に固まった。固まって・・・・・・驚く。



「てゆうか、それ駄洒落じゃねぇかよっ!!」

「ありえないっ! さすがにそれはありえませんよっ!! というか、私なんで途中で気づかなかったのっ!?」

「私も同じことを言いました。そうしたらすっごい真面目に驚いてました」



え、これ驚くようなことなのっ!? ありえないと思うのにっ!!



「それでキャロ、契約は」

「話したら契約が成立しちゃいますから、使役の能力は伏せた上で、違うって言ったんです。私は動物とはお話出来ないと」



キャロの召喚師としての資質は、契約を結んだ竜と心を通じ合わせるだけじゃない。前の部隊では現地の動物を使役という形で会話し、生態調査にも役立てていた。

確かに、その能力を使われたら確実に契約が成立してたよね。いや、駄洒落があんまりに強引だったけど。



「あと、その駄洒落はつまらないと」

「キャロ、そこは絶対言わなくてよかったと思うんだけどっ!!」

「そうですね、言ったら落ち込んでましたから」

「落ち込んでたのっ!?」



でもごめん、私は初めて会った頃、能力抜きで話せそうな感じがしてたよ。

とにかく、キャロは契約が完了しないようにと抵抗した。だけど、イマジンはそれで満足するわけがない。



「それで、じゃあお前の言う『なぎさん』はどこだと言われて・・・・・・」

「ヤスフミの家に突撃したんだね。でも、居なかった」



ここはタイミングが良かったのかも知れない。ティアとリインとお出かけ中だったから。



「すみません。わざと隣の空き部屋だって言うところを教えたんですけど、そうしたら間違えて本物の部屋に突入しちゃって」

「・・・・・・あのイマジン、やっぱバカだろ。なんでそれでそっち行くんだよ」

「そうして、部屋の中で大暴れして、そんな時にヤスフミが帰ってきてしまった」





タイミングは悪かったのかも知れない。そんな状況で帰って来て・・・・・・アレだから。





「恭文君が怒って、斬りかかったけど、止められなかった。というか、怖かった・・・・・・」





さっき見せてもらったけど、家の家財道具も含めた一切が使用不可能だったもの。なにより、ヤスフミがあんまりにキレてて、私もどう話したらいいのか分からなかった。

多分、たまごの事もあったんじゃないかと思う。持ち出していて大丈夫だったそうだけど、もし家の中にあったら壊れていたから。

とにかく、それによってキャロとの契約はそのまま完了して・・・・・・これ。



うーん、どうしよう。話を聞く限りキャロが自分の意思で、望んだ形で契約を結んだわけでもなんでもないから、怒れないよ。





「というか、普通にイマジンに待ち伏せされてただけですし、キャロちゃんは悪くないですよ」

「そ、そうですよね。とにかくキャロ、怪我はない?」

「・・・・・・はい。あの、すみませんでした」

「いいよ。キャロが契約しちゃったのは事故みたいなものだって、みんな分かってくれるから」



というより、私だって同じ事をやられたらどうしようもないよ。どうやって契約を回避すればいいのかが分からない。

でも、盲点だった。こういう方法があるってもっと早く思いついていれば、すぐに見つけられたのに。



「そうだよキャロ、それにキャロは契約が成立しないようにがんばってたんだし」

「エリオ君・・・・・・」

「というか、恭文の・・・・・・せいだよ」



小さく呟いた言葉。だけど、それが鋭く突き刺さる。

エリオが苦く、腹を立てるような顔をしていた。



「恭文が六課をやめて旅に出るなんて勝手をしようとするから、フェイトさんもスバルさんも、キャロも、みんな心配して、振り回されて・・・・・・家が壊されたのだって、自業自得だよ」

「エリオ、ちょっと待って。さすがにそれは」

「・・・・・・勝手しちゃ悪いのか?」



その声は、侑斗さん。鋭い瞳で、エリオを見る。



「悪いですよ。恭文が旅に出たい、六課から離れたいなんて言い出さなければ、こんなことにならなかった。キャロだって・・・・・・」

「だったら、縁を切ればいいだろ。振り回されるのが嫌なら、もう付き合わなきゃいい」

「それが嫌だから、僕達全員力になろうとしてるんじゃないですかっ!!」



エリオが声を荒げる。荒げて、侑斗さんをにらむ。だけど、それを意に返さない。



「で、それであのチビは本当に幸せになれるのかよ。やりたいこと諦めて、お前達のために道を選んで、居たくもない場所に縛り付けられて、そうして幸せになれるのか?」

「それは・・・・・・なれます。だって、ここにはみんなフェイトさん達が居る。力になろうとする人も、居場所六課もある。それなのに幸せになれないわけがありません。
やりたいことなら、みんなと一緒に、同じ場所で出来る事の中から探せばいいんです。恭文の能力だったらなんだって出来ますし」

「なれるわけねぇよ」



一蹴した。だから、エリオの表情が怒りに染まる。染まるけど、冷静になろうと拳を握り締める。



「・・・・・・アイツは、お前や六課の連中のために生きてるわけでもなんでもない。管理局ってとこに居る義理立てもない。アイツの居場所も、道も、全部自分で探して、自分で決めるんだ。
その行き先が、進むべき場所が、お前達とは違うってだけだろ。それに気づいたから、旅に出て、その中に探しに行くんだ。てーかよ、俺はお前見ててよくわかったわ」



そのまま言葉は続く。エリオとスバル、キャロはショックを隠しきれてないけど、私は大丈夫。・・・・・・納得したから。



「ここに居ても、アイツの願いは叶えられない。お前達がアイツの願いを潰すんだ」

「ゆ、侑斗。さすがにそれは」

「デネブ、黙ってろ。どーせ言わなきゃわかんないんだしよ」



私は止めないと、理解すると、わがままな気持ちを知っていくと、そう決めた。それが必要な事だと知った。

でも、エリオもそうだし、キャロとスバルは違う。まだ、納得し切れてない。自分達が居るのに、別のところに行く理由が分からない。



「どうして、そう思うんですかっ!? 少なくとも僕とキャロはそうだったっ! フェイトさんやみんなが手を伸ばしてくれて、居場所を見つけられて・・・・・・幸せになれないわけがないっ!!」

「お前らがそうだからって、チビがそうとは限らないだろ。自分の価値観押し付けてんじゃねぇよ」

「押し付けてるのはあなたでしょっ!? とにかく、恭文の選択は絶対に」



もう、見てられない。私はしゃがんで、エリオの前に出る。



「エリオ、もういい」

「フェイトさん、でも」

「いいから」



優しく、だけど厳しく諭すようにエリオの目を見る。ようやく・・・・・・落ち着いた。



「スバル、エリオ、キャロ。ヤスフミの言ってる事は、確かにわがままで、今ある場所を大事にしてないかも知れない。
私達みんな、それに振り回されてるのかも知れない。それは、多分事実。ヤスフミ自身も認めてる」



それがショックだったり、心情的に嫌だったりするのは、私も同じ。出来れば、六課ここに居て欲しいと思う。居場所を、居て欲しいと思う人達の気持ちを大事にして欲しいとも思う。

・・・・・・しゃがんで、エリオとキャロに目線を合わせる。合わせて、言葉を続ける。



「でもね、侑斗さんの言うように、居場所があるだけじゃ、受け入れてくれる人だけじゃ、人は幸せになれないの。絶対に」

「・・・・・・どうして、そんなこと言うんですか。僕とキャロもそうですし、スバルさんやティアさん、フェイトさんやなのはさん達だって」



あぁ、やっぱりだ。自分の経験からそれを確信して言ってる。でも、確かにそうだと私は嬉しい。

でも、この場合は間違いだ。まずはそれを知ってもらわないと、どうにもならない。とにかく、話を続ける。



「事実だからだよ。あと、ヤスフミとエリオとキャロ、私達のことは一緒には出来ない。前提そのものが違うから。・・・・・・私は、六課という場所が好き。エリオやキャロと同じでね。ここに居る意味があると思ってる。
みんなとやりがいのある仕事が出来て、たくさんの仲間が居て、そんな場所だから、好き。だから私は、ここに居て、仕事をしたいと思う。局のためとか局員だからとかじゃない。私がここの仕事が好きだから」



それは、六課に限らず執務官という仕事に関しても。自分の夢の形がそこにはあるから。

そうだ、私の夢は・・・・・・たまごは、かえってる。執務官という仕事が、私の夢を叶える場所になったから。



「でもね、ヤスフミはそうじゃないの。ヤスフミのやりたいこと、なりたい自分に近づく道は、六課にも、局にも、私達の近くにもない」



ヤスフミのたまごは、なりたい自分、夢が詰まったたまご。それが姿を現したということは、ヤスフミの夢は叶っていないということになる。そして、その形はまだあやふや。

だから、たまごはまだここにある。だから、たまごからヤスフミの『なりたい自分』は生まれていない。今までの私達の時間の中では、ヤスフミの願いは叶えられなかったのかなと、ちょっと思った。



「・・・・・・ううん、あるかも知れないけど、今のヤスフミにはそれが分からないの。本当に私達の時間の中に居場所・・・・・・違うね。『ヤスフミ自身が居たいと思う場所』があるかどうか、わからないの。だから、探しに行く。
旅に出るのは、それが理由なんだ。ヤスフミは、私にそう話してくれた。さっき侑斗さんが話してくれた通りなんだよ。居たいと思う場所も、居る意味も、自分で見つけなきゃだめなの。人から『居てもいい』と言われるだけでは、だめなんだ」

「恭文が、居たいと思う場所・・・・・・」



とりあえず・・・・・・これくらいかな。あとはヤスフミがちゃんとしなきゃいけないことだと思うから。

というか、私失敗だよ。うー、もっと早くちゃんと話してればよかった。



「エリオもそうだし、スバルもキャロも、お願いだからヤスフミが六課に、居て欲しいと思っている自分達のそばに居る事が絶対で、当然の選択だなんて思わないで。居て欲しいと思うことは、ヤスフミの家族としてはありがたい。
でも、だからってそれは間違ってる。ヤスフミは私達とは違う。違う人間なんだから、やりたいことも違ってて当然。ただ、それだけの話。本当に・・・・・・それだけなんだよ?」





そう、本当にそれだけ。まぁ、私もそこに気づくのに大分かかったけど。私もやりたい事執務官が見つかって、それが出来てるから、ヤスフミもきっと出来るはずって、ずっと思ってた。

というより、見つけて欲しかった。局なら、魔法の事どうこうも含めた上で受け入れてくれるし、問題は多いけど福利厚生もちゃんとしてる。あと・・・・・・私も、力になれることが出来るはずだからと思ってた。

局員という立場で苛立ちがあるなら、共有して一緒に超えていくことが出来ると思ってた。・・・・・・だめだね、私。自分の事ばかりだよ。ヤスフミの事、考えているようで考えてなかった。



だから、ヤスフミの事もそうだけど、今のエリオの気持ちも分かる。悲しげで、どうしてダメなのかと思っているのが分かる表情と瞳は、私もきっとしていたものだから。





「とにかくね、ヤスフミと話すにしても、まずそこを認めないとどうにもならないよ。このままじゃ、距離は開き続けるだけ。本当に友達でも、仲間でも、家族でもなくなっちゃう。エリオ、それでいいの?」

「よく・・・・・・ないです。でも、フェイトさんは、それで・・・・・・納得出来るんですか? あのまま居なくなるかも知れないのに」

「出来るよ。だけど、居なくならない。ちゃんと約束、してくれてるから」










空を見る。そして、デンライナーが消えた箇所を見る。・・・・・・大丈夫、帰ってくる。





というか、帰ってこなかったら探し出すから。ティアと一緒に、どこに居ても見つける。うん、絶対に。





私達だけじゃなくて噂の現地妻ズも居るし、逃げても無駄だよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・青坊主よ」



時間の中をデンライナーは走る。走って・・・・・・たどり着くのは数年前の雪の世界。あ、フェイトが小さい頃のキャロと一緒に歩いてる。

・・・・・・で、なんでしょ。もうそれから砂が噴き出して、フェイトがイマジンに攻撃されてるんですけど。それで倒れて、気を失ったっぽいんですけど。



「まぁ、アレだ。これが片付いたら、ちゃんと桃っ子やビリビリ小僧、犬っ子と話せ。さすがにこのままはまずいだろ」



やっぱり、そういう話ですか。まぁ・・・・・・なぁ。



「それは僕も同感だよ。こう言ったらあれだけど、対処がまずかったことが今回の遠因にはなってるわけだし」

「まぁ、キャロちゃんがイマジンと契約しちゃったのは本当に運が悪かった感じみたいだけど、ちゃんとしないとだめだよ? 釣り師として、女の子を泣かせっぱなしはまずいでしょ」

「そのつもりです。でも、その前に・・・・・・」





あのクソ野郎を・・・・・・叩き潰す。絶対叩き潰す。



そうだ、絶対叩き潰す。叩き潰す。てゆうかマジで叩き潰す。・・・・・・大事なことだから五回言ってみた。





「や、恭文っ!? あの、落ち着いてっ! 僕怖いよー!!」

「お前、殺気出とるからっ! めっちゃ出て空気震えとるやんかっ!!」



気のせいです。なんか空気がよどんでるのとか、全部気のせいですから。僕のせいじゃありません。きっと、空調が悪いんでしょ。



「まぁ、自宅が壊されちゃったわけですし、仕方ないと言えば仕方ないかも知れませんね。
でも・・・・・・恭文ちゃんやっぱり落ち着いてー! 私も怖いー!!」

「わ、私も同じくだわ。というか、もう・・・・・・だめ」

「わわ、ハナさんしっかりしてー!!」










とにかく、そのまま雪の世界に降り立つ。倒れたフェイトに向かって、イマジンが剣を打ち込み、ルビー色の斬撃波を出したのを、デンライナーがその間を通り過ぎることで防ぐ。





僕達はデンライナーが通過した後にその場に姿を現す。現して・・・・・・敵を睨みつける。










「・・・・・・俺っ!」



もう、僕も良太郎さんも変身は済んでる。

今の良太郎さんの姿は、赤い剣を持った電王。だから、当然のようにこう名乗りを上げる。



「参上っ!!」



両腕を広げ、見得を切るようにポーズを取る。雪が降りしきる世界の中で、吐く息が白い。

踏みしめる足の感触が、独特で場違いだけど少し心地いいと思ってしまった。



「電王・・・・・・。まだ邪魔をするか。というより、ここはどこだ。何も無いぞ」

「へ、決戦の舞台には丁度いいってことだよ。ここなら遠慮なく暴れられるぜ」

「・・・・・・お前、ぶっ潰す。本気でぶっ潰す」



そのまま、僕はアルトを抜き、モモタロスさんはデンガッシャーを剣にして、一気に飛び込んだ。



「地獄へ落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! キャロの前にお前を血祭りに上げてやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

【恭文君っ! なんかテンションが一人だけ違うんだけどっ!? というか、キャロちゃんになにするつもりなのかなっ!!】

「良太郎、そこはもう気にすんなっ! ・・・・・・行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





二人揃って突撃し、モモタロスさんが袈裟から、僕は逆袈裟で刃を打ち込む。打ち込んで・・・・・・それは両手でロングソードを持って、受け止める。





「・・・・・・ふんっ!!」



そのまま、刃を振るい僕達を払う。後ろに飛ばされるけど、なんとか着地。

すぐに魔法を発動。一気に踏み込む。



≪Sonic Move≫



青い閃光となり、イマジンの背後に移動。移動して刃を打ち込む。そして、イマジンはそれを背中に受けた。

受けたけど・・・・・・微動だにしない。



「甘いっ!!」





そのまま、右から身体を回転させながらの攻撃が来る。僕は後ろに飛んでそれを避ける。

斬撃が目の前を通り過ぎると、イマジンが左手をかざした。瞬間、金色のつぶてが僕に向かって飛ぶ。

雪の振る、日が射し込まない世界に置いてもそれは輝きを無くさずに、僕へと迫る。



僕はそのまま・・・・・・左手をかざした。





「クレイモアっ!!」





放たれたのは青い散弾。それがつぶてを撃ち落とす。その次の瞬間、感じたのは衝撃。

いや、鋭い痛み。右の太ももや左の二の腕。頬に落とし切れなかったつぶてが鋭くその肉を斬り裂く。

その痛みに顔をしかめるヒマもなく、イマジンが目の前から姿を消した。・・・・・・左に気配。僕はその気配に向かって、左から刃を打ち込む。



いや、防御した。上から叩き込まれた斬撃に対して。



少しの間鍔迫り合いをして・・・・・・僕は左足でイマジンの足を蹴り飛ばした。それでなんとか距離を取る。

体勢が崩れたところを狙って、刃を何度も叩き込む。

だけど、イマジンはそれらを剣で巧みに防御する。・・・・・・コイツ、もしかしてマジになったらかなり強い?





「青坊主、どけっ!!」




その声に、僕は左に飛ぶ。モモタロスさんがそこに飛び込んで、突きを放つ。

デンガッシャーの切っ先はイマジンの防御をかい潜り、その身を叩いた。

・・・・・・そう、貫いたのではなく、叩いた。その接触部分から火花が散り、白の世界を僅かに彩る。



その次の瞬間、モモタロスさんが吹き飛んだ。イマジンが刃を強引に胸元に打ちつけたから。



ただ、ここで心配して止まったりするほど僕はバカではない。そう、だってここは隙だから。



痛む傷は気にせずに、一気に踏み込む。数メートル開いていた距離は、一瞬で縮み、その移動に伴い発生した衝撃で、雪が吹き飛び、道が出来る。





「鉄輝・・・・・・!!」





そのまま、脳天から刃を叩き込んだ。



叩き込む刃は、鋭く、全てを斬り裂く青い刃。





「一閃っ!!」





そうして、イマジンは真っ二つになった。



いや、二つに分かたれた。



右には、左の目に眼帯をしたイマジン。そして、左には右の目に眼帯をしたイマジン。姿見は先ほどと変わらない。ただ、左に居るのが多少錆びた色合いの赤が濃いように感じる。





「お前っ!」

「邪魔だっ!!」





刃が突き出される。丁度僕はアルトを振り切った直後。突き出された刃を避ける事は、無理。



だから、ジガンで左に居る奴の刃を受け止める。左腕に強い衝撃が加わり、吹き飛ばされそうになる。だけど、そこをこらえて・・・・・・もう一つ魔法を発動。





≪Round Shield≫





発生したのは、青い障壁。それが刃を止める。そう、右の刃はプロテクションで受け止めた。



だけど、長くは持たない。・・・・・・いや、持たせるつもりもない。



まだ、刃に光は灯っている。





「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





そのまま、錆びた鎧を身につけた右側の剣士の胴に向かって、刃を突き入れる。いわゆる一つのカウンター。

だけど、その刃を身を捻って避ける。ラウンドシールドが砕けた。刃の切っ先が僕の身体に迫る。

その刃は、僕の右の肩口を薄く切り裂いた。回避のために動いた事で、多少軌道がずれたらしい。



痛みに顔をしかめる前に、次の手を打つ。僕の胴に魔力スフィア。それは蒼く、全てを撃ち抜く力。





「クレイモアっ!!」





放たれた散弾達が、ここで押し込もうとするイマジン達の身体を撃ち抜く。火花を散らし、それにたまらず二人は下がる。



ジガンを貫こうとしていた刃も引かれたので、僕はそのまま大きく後ろに飛んで、距離を大きく取る。



目の前には、雪も衝撃で舞い散ることで派手さを増した爆煙。・・・・・・また嫌な感じだなぁ。





「青坊主・・・・・・てめぇ、大丈夫か?」

「かすり傷です。モモタロスさんは?」

「なんとかな。てか、やったか?」



きゃー! モモタロスさんが変なフラグ踏んだー!!



≪あなた、バカでしょ?≫

「なんだとっ!? てめぇそりゃどういう意味だっ!!」



その答えは、目の前の爆煙から出てきた。右眼帯が僕に。左眼帯がモモタロスさんへと迫りながら、金色のつぶてを飛ばしてきたから。

僕はそれを左に飛んで、モモタロスさんは右に飛んで避ける。そのまま、二体は僕達に斬りかかる。僕達は腕を振るい、斬撃をぶつけ、それに対抗する。



「てめっ! 無傷かよっ!!」

≪・・・・・・巻き上がる爆煙に向かって『やったか?』は、敵の生存フラグですよ。ほら、あなた謝ってくださいよ≫

「あぁ、よくわかったわっ! そりゃ確かに俺が悪いなっ!!」





モモタロスさんが、もう一体のイマジンとにらみ合いながら右へ走る。数メートル走って、踏み込む。



そこから、剣をぶつけ合い、斬り合いを始めた。





「だけど・・・・・・ぜってー謝らねぇっ!!」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



デンライナーの中から、戦闘の様子を見る。見てるけど・・・・・・やばいわね。苦戦してる。





てゆうか、クレイモアの直撃喰らって無傷って・・・・・・。










「あー、モモタロスも恭文もなにやってるのー!? しっかりしてー!!」

「あれ、相当やるね。てゆうか、あのタイプだったとは」

「マジで二体分かれるタイプってやつよね。てゆうか、分離のときが生々しくて気持ち悪い・・・・・・。あの、まさか」

「僕達はそういうのはないよ。てゆうか、先輩が二人居ても嫌でしょ?」



・・・・・・亀、それはあのバカ鬼だけじゃなくてアンタや他のメンバーも同じよ。キャラ濃いし。



「ええい、桃の字変われっ! 俺がやるっ!! ・・・・・・はぁっ!? 変わりたくないってどういうことやっ!!」



なんかここから会話してるらしい。良太郎さんに憑いているイマジン同士だから出来るとか。

でも、どうしよ。アイツの勢いが凄過ぎて手助けするとかそういう雰囲気0だったからここに残ったけど、さすがにこれは。



「・・・・・・これなら、いけるです」

「リイン曹長?」

「これなら、試し斬りが出来るのですっ!!」

「え、まずそこですかっ!?」























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



刃を振るい、打ち合わせていく。雪は、そんな激しさを意に介さず、深々と降りしきる。





・・・・・・てゆうか、強さ変わらずっておかしいでしょう・・・・・・がっ!!










「・・・・・・いい加減、潰れろ」





鍔迫り合いになる。刃を押し込まれ・・・・・・体型が恨めしい。こういう時、やっぱり負けがちになる。



だけど、簡単にはやられない。





「誰が潰れるかっ!!」





そのまま、鍔迫り合いをしながら右足で蹴りを叩き込む。・・・・・・訂正、叩き込み合う。



どうやら、同じ事を考えていたようだ。衝撃がそこを始点に生まれ、空気を振るわせた。





「てゆうか、お前が潰れろっ! 人の家をぶち壊しやがってっ!!」

「やかましいっ! お前のせいで俺があの娘にどんだけ振り回されたか知らないだろっ!!」



そのまま、イマジンは強引に足を踏み込んで、僕を蹴り飛ばす。衝撃に押されて、地面を転がる。

立ち上がろうとした時、イマジンは上から刃を叩き込んできた。それを左に飛んで避ける。体勢を整えつつ、アルトを前に出し、追撃で来た右からの斬撃を受け止める。



「やたら口は悪いしつかみ所はないし、俺が何を言っても『なぎさんはなぎさんです』の一点張りだしっ!!」



それに圧されると、イマジンはこれを好機として、ドンドン斬撃を加える。嵐のように襲い来る脅威を、僕はアルトで防ぐ。

ヤバイ、反撃の機会が・・・・・・。



「ふんっ!!」



振るわれたのは、左からの力押しな斬撃。それを受け止め・・・・・・身体が宙を舞った。

そこを狙ってまた金色のつぶてが飛ぶ。



「知るかボケっ!!」



だから、飛ばされながら左手をかざした。



「あの性悪を契約者に選んだこと自体が間違いなんだよっ!」



左手の手の平に生まれるのは、青い魔力スフィア。ただし、これはクレイモアじゃない。・・・・・・アレ相手だと、クレイモアでも全部撃墜出来るかどうかわからない。

だから、方法を変える。すなわち、撃墜では無く、全部飲み込む。



「恨むなら自分を恨めっ!!」

≪Icicle Cannon≫





放たれたのは氷結の息吹を込められた魔力の奔流。それがつぶて達を飲み込み、イマジンへと迫る。イマジンは、後ろに数メートル飛んでそれを避ける。



着弾した砲撃は、爆発を起こし、雪を巻き上げた。僕はと言うと、その間にしっかり着地。それから、左手であるものを取り出す。





「アルト、あれいくよ」





そう言いながら、アルトを鞘に収めて、右手で鞘ごと腰から抜く。



そして、左手を動かし、腰に巻きつける。・・・・・・取り出したベルト、ゼロタロスを。





≪了解しました≫





左側には、カードケース。その上には何も無いホルダー部分。そこにアルトを当てると、鞘がそこに装着された。



右手をそのまま伸ばして、カードケースを開けて、カードを取り出す。オレンジと蒼の柄のカードを。





「・・・・・・さて、ここからがクライマックスだ。派手にいくよ」





左手で、ベルト上部の二つあるうちのスイッチの一つを動かす。左から右に。それにより、ベルトから音楽が流れる。高い、笛の音のような、そんな軽快で、どこか落ち着きもある音。





「変身」





そして僕は、カードのオレンジの部分が身体の前に出されるようにして、ベルトに挿入した。





≪Charge and Up≫











ベルトのバックル部分の円形の装飾が回転して、オレンジのラインが一つの模様として繋がる。それが輝き、同じ色の光がはじけて、僕の身体を包む。そうして、ジャケットが再構築された。

黒いロングパンツに銀色の臑まで守る金属製のロングブーツ。太もも前面にはオレンジのライン。ジガンは片手ではなく両手に装着され、手の甲には『Z』を模してると思われるマークが入る。色は当然オレンジ。

そして、インナーは少し青みを持ったものに変わり、真ん中に白のラインが入る。首元には、丸い輪の形をして、中に『×』が描かれた銀色のアクセサリー。





上に着ていたジャケットは、オレンジ色に変わっていた。二の腕側面に黒色で金属製の装甲。すべてを装着し終えて・・・・・・僕は左手を勢い良くかざし、天を指差す。





その瞬間、空から雷撃が降り注ぎ、目前に生まれ、僕とイマジンを隔てていた爆煙を斬り裂く。










「・・・・・・なんか降ってきたっ!? てゆうか、赤くなったっ!!」





右手を伸ばし、腰の右側に生まれていた追加装備に手を伸ばす。『持ち手』を取り外し、その下に同じように取り付けられていたパーツに取り付ける。




それは剣の形を取り、そのまま僕が手を引くとホルダーから外れた。





「最初に言っておくっ!!」





左手でイマジンを指差しながら、それを頭上でくるりと回す。すると、それは青い稲妻をほとばしらせながら、巨大な両刃の大剣へと変わった。



そのまま逆手に持ち、地面に切っ先を突き刺す。その衝撃で、地面が少し窪む。





「僕はかーなーりー・・・・・・強いっ!!」

「・・・・・・はぁっ!?」










さぁ、反撃開始だっ!!




















(その8へ続く)




















おまけ:見ていた方々の反応




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ちょ、恭文のジャケットが変わったー! てゆうか、アレ侑斗だよねっ!? 侑斗だよねっ!!」

「アイツなにやっとんねんっ! そこは俺やろっ!?」

「金ちゃん、気にするところ間違えてるから。・・・・・・えっとティアナちゃん、どうしたのあれ?」

「アイツの新装備よ。ヒロさんが開発した新ジャケット。あれの名前が・・・・・・えっと、ゼロフォームだっけ?」





なんでも、侑斗さんが変身するゼロノスのコスプレが出来て、そのまま戦闘も出来るっていうジャケットを改良して作ったとか。

えっと、確かチンクが使ってたシェルコートを参考にAMF特性を持った装甲を開発。それを各所に装備して、魔力攻撃に関して高い防御力を発揮する・・・・・・これすごいわね。

あと、カード型のバッテリーを使用する事で、AMFによる魔力完全キャンセル内でも変身可能。あのゼロガッシャーも普通に使用可能・・・・・・いやいや、あの人何者? なんで普通にこんなの作れてんのよ。



ただ、少々構築の仕方や装備が特殊なだけで、出力自体はフルドライブやリミットブレイクには劣るし、普段使ってるジャケットとそこまで性能差があるわけではない。

ジャケットのバランスとしては、ゼロフォームは今までのジャケット以上に突進力とダッシュ力を強化したバランスにしてある・・・・・・と。

ふむふむ、今までのアイツのジャケットの延長線上ってことか。これなら、特に問題なく使えそうようね。





「・・・・・・ティアナちゃん、何読んでるの?」

「あ、アレの説明書」

「そんなのあるのっ!?」





あるのよ。・・・・・・なお、全部今手元にある『ヒロリス特製・ゼロタロス使用説明書♪』を見て話してる。



てゆうか、こんな説明書作ってる暇があるなら、もっと仕事して欲しい。いや、してるんだけど。





「なるほど、だからボクちゃんと同じ感じと。でも、ヒロリスさんそんなの作ってたんだ」

「そういうバリアジャケットだけどね。なお、アイツの話によると、アンタ達電王の分もあるらしいわよ? それも全フォーム再現可能」

「嘘ぉっ!?」










後日、ヒロリスさんに話して見せてもらったら、マジであった。





これに関しては、私達全員驚きに驚きまくったのは、言うまでもないと思う。・・・・・・まる。




















(本当に続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、ついに登場したゼロフォームですよ。そして、次回は・・・・・・終われるといいですね。このままだとマジでゴールが見えませんし、区切りは必要ですよ。
というわけで、古き鉄・アルトアイゼンです≫

恭文「えー、蒼凪恭文です」

やや「結木ややです。ねね、これどうなるの? 次回気になるー」





(作者もです)





恭文「そう言えばさ、作者が最近DTBをまず2話見たのですよ」

やや「あー、今度二期やるってアニメだよね。おもしろかったの?」

恭文「うん、いい感じだったらしい。というかさ、absさんいいよね。HOWLINGいいよね」

古鉄≪あぁ、あの曲大好きですしね。・・・・・・曲と言えば、ややさん、あなた何か歌ってるそうじゃないですか≫

やや「うんっ! しゅごキャラのキャラソン集で『大きくなれー♪ 笑顔になれー♪』って歌ってるよー!!」





(作者は???で見ました)





恭文「聞いたよ。やや・・・・・・」

やや「なに?」

恭文「なんか、頑張ったね。というか、あの、僕は聞いててちょっと感動して泣きそうだったよ。あぁ、赤ちゃんキャラだけじゃなかったんだなと」

古鉄≪まぁ、あなたにしては頑張った方なんじゃないの? ・・・・・・べ、別に誉めてないんだからねっ!!≫

恭文「なんでツンデレっ!? てゆうか、またテンプレ的なあれだね、おいっ!!」

やや「ホントにっ!? あの、二人ともありがとー! ややすっごくうれしいー!!」





(エース、本当に嬉しそう。どうやら誉められると弱いようだ)





やや「ということはアレかな。もうそれがキャラクターソングアルバムの中で1番のお気に入りなんだよね? うんうん」

恭文・古鉄≪「あ、違う違う(違います)」≫

やや「・・・・・・え?」

恭文「僕は、『太陽が似合うよ』がお気に入りかな」

やや「そ、それ歌唄ちゃんの曲・・・・・・」

古鉄≪私はあむさんVerのシークレットプリンセスですか? 可愛いですよね≫

やや「・・・・・・あの、ややの曲は?」





(その言葉に、青い古き鉄コンビは顔を見合わせて、頷く)





恭文「ごめん、やや。でも『太陽が似合うよ』には勝てないの」

古鉄≪すみません、私もシークレットプリンセスの方が・・・・・・。ただ、あくまでも個人の主観なので、絶対的にあなたの歌が劣っているという話ではないんですよ?≫

やや「・・・・・・二人ともなんかひどいよー! ぴぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」





(あ、なんかキャラチェンジして泣き出した)





古鉄≪あぁ、泣かないでくださいよ。ほら、ビームライフルあげますから≫

やや「そんなのもらってもどうしようもないよー!!」

恭文「ごめんごめん、僕達が悪かったから。ほら、美味しいお団子だよ〜」

やや「あ、それはもらう」

恭文「もらうんかいっ!!」










(そうして、そのままお茶会に突入。とりあえず・・・・・・終っておこう。
本日のED:南楓(中原麻衣)『Fun ! Fun ! ふぁんたじー』)




















ティアナ「・・・・・・アンタ達、自由よね。私IFの話でしゅごキャラの話するなんて」

恭文「いやぁ、それほどでも」

ティアナ「誉めてないわよっ! このバカっ!! ・・・・・・でも、ようやくゴールが」

恭文「ごめん、まだ見えない。いや、オチは決めてるけど」

ティアナ「うーん、でも考えたらギンガさんの話もこれなのよね。ただ、やる分省略しただけで」

恭文「あれは絶対大問題になるしなぁ。でも、この話好評でよかったよね。なんだかんだでIFから独立してもいいくらいって言われてるし」

ティアナ「そうよね、それは嬉しいかな。まぁ、本妻としては色々あるから」

恭文「・・・・・・それ気に入った?」

ティアナ「かなりね」










(おしまい)





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