小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース11:おまけとあとがき
おまけ:きっと誰にも予想など出来ない急転直下の超展開
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・とにかくテスタロッサ。ティアナを厳しい視線で見るのはやめろ。ティアナはもうすぐお前の副官になるんだぞ?
そんなことをされたら、ティアナも解散後の行き先を今この段階で考え直さなければならないだろう」
「・・・・・・はい」
「シグナム副隊長の言う通りです。ティアが今日隊舎に居ないのは、その辺りが原因なんですからね?
スバル達もそうですけど、隊長であるフェイトさんがそれだと、居づらくなるに決まってるじゃないですか」
「・・・・・・・・・・・・はい」
なぎ君とティア、リイン曹長とアルトアイゼンが自宅でデンライナーな方々と楽しくやっている時、私は会議室に最近情緒不安定なフェイトさんを呼び出して、座らせていた。
そして、シグナム副隊長と一緒に私、シャリオ・フィニーノもお説教です。ありえない、いくらなんでもこれはありえないから。
てゆうか、本当にどうしたんだろ。フェイトさんの心配性はいつものことだけど、これはひどい。いくらなんでも笑って許せる範囲を超えてる。
なぎ君だけじゃなくてティアにまで被害が及んでるもの。副官として、ここまでやってきた同僚として、これはさすがに見過ごせない。
「フェイトさん、なぎ君が旅に出ること、そんなに嫌なんですか?」
「うん」
「理由は、六課という場所があるから・・・・・・ですよね」
「・・・・・・うん」
私も話は聞いた。まぁ・・・・・・ちょっとショックではある。私やフェイトさん、なのはさん達にとって、六課はただの仕事場じゃない。大事な仲間が居る、帰るべき場所。
それなのに、同じ六課の仲間であるなぎ君にとってはそうじゃないというのは、私も平気には聞けない。でも、それはあくまでも私達の考え。
思い入れが強くなるのは、過ごしてきた時間に比例するというのが、一つの答え。私達にとっては1年近く居た場所でも、なぎ君にとっては、ほんの1ヶ月程度居ただけ。
なのに、私達と同じだけの価値と重さを六課に見出せというのは、少々身勝手だと思う。価値観を一緒だと考える方がおかしいと思う。・・・・・・まずいな、私もそのおかしい部類だ。
「でもフェイトさん、どんな形であれ、今のなぎ君の気持ちを認めていかなかったら、ずっとこのままですよ?」
「そうだ。なにより、ずっと居なくなるわけではない。一人ではなく、モモタロス達も居る。今までとは違う時間の中で、自分の答えを探してみたいというだけだ。
ティアを見てみろ。アイツの感情を認めて、受け入れたからこそ距離を縮められた。ここに居てもらうために話すにしても、お前がやるべきことはまずはそこからじゃないのか?」
「でも・・・・・・私とティアは違います。私は、家族でもあります。そんな簡単にここから居なくなる事を認めることなんて、出来ません」
「・・・・・・フェイトさん、いい加減にしてください。私、怒りますよ?」
少しだけ語気を強くしてそう言うと、フェイトさんがハッとした顔で私を見る。・・・・・・あはは、私も喧嘩することになるのかなぁ。
でもいい。さすがにこれはカチンと来た。フェイトさんの副官として、妹分として、なにより大事な友達の悪友の一人として、しっかり言わせてもらう。
「ティアはなぎ君の家族じゃないから、そんなことが言えるんだって言ってるように聞こえます。・・・・・・ティアがどれだけなぎ君の事を心配したのか、知ってますか? 休職してからずっとですよ。
だからなぎ君だって、ずっと女の子と恋愛なんて出来なかったのに、頑張ったんです。あのリイン曹長が感心してたくらいなんですから。色んな話を聞いて、自分やフェイトさんみたいな昔馴染み以外で全部受け入れてくれたのは、ティアぐらいだって」
「リインが・・・・・・」
「えぇ。ティアはちゃんと対価を払ってます。きっと楽じゃなかったはずなのに、見えないフェイトさんの影が怖かったりしたかも知れないのに、手を伸ばし続けた。それが、あの子が払った対価。だからこそ、今の時間に繋がってます」
・・・・・・てゆうか、私は・・・・・・怖かった。だから、アプローチとかそういうことは考えられなかったからなぁ。あの状態のなぎ君にそれをしても、フェイトさんと比べちゃうと思ったから。
私もそれは嫌だったし、なぎ君も自己嫌悪すると思って、中々・・・・・・うーん、失敗したなぁ。若いのに若さが足りなかったよ。泊まることもあったりしたんだから、押し倒すくらいのことしていいのに。
「とにかく、フェイトさんもそうですけど、ハラオウン家の人達も『家族』という言葉をなぎ君を束縛する免罪符にしてませんか? なぎ君はもう大人で、自分の道を自分で選んでいい年です。
ただ、今まではそれよりも自分の周りにいる大事な人達のために動く事が多かっただけ。だけど、それは当たり前のことでもなんでもありません。・・・・・・なぎ君は、フェイトさんやハラオウン家の人形じゃないんですよ?」
そして、フェイトさんはまた落ち込んだ。てゆうか、泣きそう。うーん、さっきからテンションは違えどこれの繰り返し。全く話にならない。
てゆうか、なんだろ。最近やたらとティアの事を気にしてるんだよね。ティアがなぎ君とどういう付き合い方をしてるとか、この話の事でどうするとか。
うーん・・・・・・フェイトさんのティアを見る視線の色がなんか覚えがあるんだよなぁ。どっかで同じような事を見た記憶がある。なんだろ・・・・・・。
少し腕を組んで考える。フェイトさんを見ながら、ここ数日の事を反芻しながら。
「シャーリー、どうした」
「いえ。もしかして私達、なにかこう・・・・・・すごく大事な前提を忘れているんじゃないかと思って」
「大事な前提?」
「はい。だからフェイトさんはこの状態から抜け出せないし、私達もそのための手段を行使出来ないんですよ」
思い出して。アレは・・・・・・そうだ。陸士学校時代だ。卒業間近で、通信科の同級生がなんだか泣きそうで、その時の子も、今のフェイトさんと同じ感じで・・・・・・。
あ、そっか。私ようやくわかった。
「フェイトさん」
「うん」
今から開ける箱は、下手をすればパンドラの箱。だけど、開けないわけにはいかない。
開けなくても絶望が襲ってくるから。なら、その箱の中にある希望を信じるだけ。だから私は・・・・・・箱に手をかけた。
「フェイトさんもしかして、ティアにヤキモチ・・・・・・焼いてません? だから、そんな風に自分のたった一つの優位性である家族という部分に固執するんですよ」
「え?」
シグナム副隊長とフェイトさんがわけが分からないという顔で私を見る。まぁ、当然だよね。いきなりヤキモチなんて場違いな単語が出てくるし。
とにかく、頭の中の考えを高速回転で纏めつつ、私は話を進めていく。
「いいですか。フェイトさんはなぎ君と恋仲で、いろんな意味で通じ合えるティアにヤキモチを焼いてるんです。
だから、厳しい視線でティアを見ちゃうんですよ。というか、ティアを見てモヤモヤとかイライラとかしてますよね?」
「・・・・・・うん。あのね、変なの」
どうやら、正解だったらしい。フェイトさんがようやく話し始めたから。
建前じゃなくて、自分の気持ちを。
「ティアはヤスフミの力になってくれてるのに。なろうとしてくれているだけなのに、ティアがヤスフミの側に居る事をすごく邪魔に感じるの」
少しずつ吐き出していく。それを聞いて、疑問が確信に形を変え始める。これは間違いないと、さっきよりも強く自信を持って言える。
「ティアが居なければ、もっとちゃんと話せていたんじゃないかって、そんなヒドイ事を考えるの。私は感謝するべきなのに、ダメだって分かってるのに、それが全然止まってくれなくて」
やっぱり。これと同じような事が前にもあった。あの時は、通信科の同級生の子が魔導師科の子と付き合ってて、進路が別々で、だけどその子の友達はその魔導師科の子と進路が同じで・・・・・・というシチュだった。
そのせいで友達同士だったのに、一時期険悪だったことがある。まぁ、今はもう全然そんなことなくなったんだけど。と言うより、原因の子と別れちゃったから、仲間内の間では笑い話になってる。
「・・・・・・シャーリー、どういうことだ? 私にはさっぱりなんだが」
本当にさっぱり顔だから困る。うーん、こういうのは鈍い人だとは知ってたけど、ここまでか。
とにかく私は簡潔に、分かりやすく隣に居る副隊長に説明する。
「ようするに、フェイトさんは自分はなぎ君と8年も付き合いがあるのにこれで、だけど会って1年どころか半年も経ってないティアはなぎ君の事を理解し、近くに居る事が嫌なんです。
はっきり言えば、フェイトさんは自分の出来ないことを出来ているティアに嫉妬してるんです。もしかすると、そこにコンプレックスのようなものも感じてるのかも。だから、視線が厳しくなる」
「なるほど、大体わかった」
大体って・・・・・・いや、大体でもいいか。全くわからないよりはきっといい。
「だが、それはまた・・・・・・こう言ってはあれだが、随分勝手だな」
「勝手ですね。なぎ君にもティアにもいい迷惑どころか、とんだとばっちりですよ」
まぁ、普通なら私もシグナム副隊長もここまで言わない。現に、フェイトさんがすっごい落ち込み始めたし。ただ、普通じゃないから言う。
フェイトさんは、その位置に立てるチャンスがあったのに、自分からそれを断ってる。つまり、なぎ君の告白をだ。受けていたら、こんなことを考える必要がないから。
「それで、フェイトさん。それだとフェイトさんは、なぎ君が好きってことになるんですよ。家族としてではなくて、男の子として」
「え?」
手にかけた箱の蓋を全開にする。もう、閉めることなんて出来ない。
だって、その中にあった真実は、私達の目の前に出てきたんだから。
「少なくとも私の知る限り、こういうシチュでヤキモチを焼く人は恋愛感情を持っている場合がほとんどです。というより、持ってなかったら妬きません」
その場合は家族なり友達として・・・・・・ここで言うところのティアとは違うスタンスで応援していけばいいだけなんだから。
でも、フェイトさんはそれが出来ない。つまり
「テスタロッサは、ティアの位置・・・・・・恋人としての位置に居たがっているということか?」
「はい」
フェイトさんがそう言われて、固まった。固まって、顔が一気に赤くなった。
「そう、なの? でも、私は告白されて、それを断って・・・・・・ありえない、ありえないよ」
「多分、フェイトさんは自分で気づいてなかっただけなんでしょうね」
まぁ、元々そうだったのか、告白がきっかけで見るようになって無意識にそうなったのかはわからないけど、少しばかり恋愛感情が絡んでるのは間違いない。うん、間違いない。
そうじゃなかったら、ここまでこじれないと思うもの。うーん、そうすると私も失敗だったなぁ。フェイトさんがあんまりに家族としてのスタンスにこだわってたから、見抜けなかったよ。
・・・・・・そっか、こだわってたから気づかなかったんだ。フェイトさんはいい意味でも悪い意味でもなぎ君に対して、友達や仲間、家族としてのスタンスを崩そうとしない。ううん、崩すのが怖かった。
だから、知らないうちに気持ちを押し殺してたんだ。昔の事で色々あって、恋人になれば家族でなくなるんじゃないかとか考えてしまったのかも。
今まで表面化しなかったのは、なぎ君がシスコン気味で距離が近かったから。なぎ君が今みたいに他の女の子を見れなくて、フェイトさんのことを引きずってたから。
つまり・・・・・・なぎ君がフェイトさんの方を理由どうこうは抜きにして見ていたから。フェイトさんはそれに安心して、そんなとても中途半場でずるい位置を保ってたんだ。
でも、その均衡は破られた。なぎ君がティアに惹かれて、ティアを見るようになったから。だから、今この状態になっているんではないかと、私は思う。
「私が、ヤスフミを・・・・・・好き」
呆然とするフェイトさんを見て思った。ここで気づけたのは本当に幸運だったと。そうじゃなかったら、なぎ君にとってもフェイトさんにとっても、ティアに・・・・・・ううん、違うな。
なぎ君がフェイトさんのことを吹っ切って選んだ別の誰かにとっても、不幸を呼ぶ要因にしかならないから。こんな中途半端な事をされて、気にしない子なんて居るわけがないよ。
「だから、ティアにヤキモチを焼くんですよね? 恋人としてそばに居られるティアが羨ましい。居られない自分がとても嫌になる」
「・・・・・・かも、知れない。ううん、そうだよ。だから私、ティアが羨ましい。羨ましかったんだ」
・・・・・・フェイトさんはそのまま俯いた。というか、泣き出した。うーん、どうしよう。なぎ君ごめん、本当にパンドラの箱、開けちゃったかも。
たださ、このまま自覚させないという選択肢はないんだよね。だって、それだとフェイトさんはずっと『家族』という免罪符を使い続ける。
それに固執し続ける。ティアに対しても自分では理解出来ない感情に支配されて辛く当たる。それはさっきも言った通り、いい結果を呼び込まない。
これでまた揉めたら、私も責任取って解決出来るように協力するからさ、許してくれると嬉しいな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
自分の気持ちに気づいて、ヘコんだり情けなくなったりしている間に、事態が動いた。というより、動いて一日経って知った。
深夜、部屋を抜け出して私は談話室に入り、通信をかける。その相手は・・・・・・大切なパートナー。
「・・・・・・アルフ、お願いだからやめてくれないかな。なんでこんなことする必要があるの?」
『あのバカにちゃんと分からせるためだ。自分の考えてる事が、やろうとしてる事が、どれだけ周りの人間を傷つけるかって。絶対に分からせなきゃいけない。フェイトだってそうだろ?
アイツ散々無茶して、心配かけまくって、JS事件の時だって私達の言う事聞かずに無意味な殺しをした。もう充分じゃないか。これ以上アタシ達がアイツの勝手に付き合う道理はない』
「アルフ、いい加減にして。その話は何度もしたよね。ヤスフミは」
重荷を背負って、苦しんでる。否定されて、居場所すら失いかけた。
なのに、それをそんな風に言うなんて、ダメ。
『苦しむなら局に預ければよかったんだ。アタシやフェイトの時みたいに、周りに居る人が、お母さん達やクロノさんが助けてくれる。
アイツがあんな状態なのは、全部自分で背負えるなんてバカな事を考えたせい。言うなら自業自得なんだ。だからアタシは言うよ。アレは、無意味だ』
「アルフっ!!」
『フェイトがどう言おうと、絶対に曲げない。・・・・・・アタシもさ、そういう事をやりかけたことがある。だから、言える。あんなの、絶対に間違ってる。しちゃいけないんだ。
そんな覚悟する必要なんてない。だからフェイトだって何度も何度もアイツのバカに振り回されて・・・・・・その上今度は旅に出る? バカも休み休み言えってんだよ』
・・・・・・確かに心配はした。もう無茶なんてして欲しくない。あんな事して欲しくも無い。だけど・・・・・・だけど、こんなの違うよ。
そうだ、こんなの私やアルフの勝手なんだ。ヤスフミがやりたいことは、通したい事は、もっと別の形なんだから。
「アルフ、もう一度だけ言うね。もう、やめて」
『フェイト、心配しなくていいよ。フェイトの気持ちはちゃんと分かってるから』
・・・・・・なにが分かるの?
『フェイト?』
「アルフに、私の気持ちの何が分かるの?」
『わかるさ。フェイトはアイツに居なくなって欲しくないだろ? だから止めるんだ。アタシはもう、フェイトにあんな想いはさせたくないし』
「分かってない」
私は、分からなかった。自分の気持ちが。だから、今すごく後悔してる。怖がって、押さえ込んだりしなければよかったと、すごく後悔してる。
ほんの少しだけ勇気を持って好きだと言えば、胸の奥で生まれていた小さな気持ちに素直になっていたら、もっと違う結果になっていたはずなのに。
それになにより、私はヤスフミに言った。やりたいことがあるなら、真っ直ぐにそこに向かってと。私のために諦めたりなんてしないでと。
「アルフ、私の気持ちなんて分かってないよ。だから、そんな勝手な事をする」
『フェイト、なに言ってるんだよ。ちゃんとわかってるよ』
「分かってない。・・・・・・アルフ、もうやめて。じゃないと、魔力供給に制限をかける。ううん、契約を解消する」
その言葉に、通信画面の中のアルフが固まる。
アルフが生きてるのは、私と使い魔の契約を結んでいるから。その内容は『ずっといっしょに居ること』。
それがあるから、私からアルフへと魔力を供給されている。だから、アルフは生きていられる。
でも、それに制限がかかればどうなるか。いや、契約が無くなればどうなるか。
・・・・・・火を見るより明らかだ。アルフは、ここからすぐにでも消滅する。
本当ならこんな札は切りたくない。今も、自分に対してすごく嫌悪感がある。
だけど、それでもこんな勝手は絶対に止めなくちゃいけない。アルフは私のためと言って、ヤスフミの願いを潰そうとしてる。そんなの、許されない。
もしコレでヤスフミが負けて、夢ややりたいことを諦めたら、それは私がやったのと同じなんだから。
だけど私は、そんなの嫌だ。絶対に・・・・・・嫌なんだ。それは、ヤスフミとした約束を破ることになる。
『フェイト、何言ってんだよ。そんなこと』
「出来ないと思う?」
だから、こう続ける。
「・・・・・・アルフ、私本気で怒ってるの。そんな言葉が、世界や組織の勝手な理屈が、ヤスフミをどれだけ苦しめたかどうして分からないの?
それになにより、私を理由に、誰かを傷つけることを正当化しないで。そんな事をされても、私は嬉しくなんてないし、そんなこと望んだりなんて絶対にしてない」
『フェ、イト・・・・・・』
「お願い、私に・・・・・・ヤスフミとの約束を破らせないで。私は今はアルフより、そっちの方が大事なの。だから、容赦しない。これでアルフが私を信じられなくなるなら、それでかまわない。
もし本気で今話してくれたようなバカなことを理由に、明日ヤスフミと戦おうとするなら、私はアルフとの契約を解除する。ためらいなく、今すぐに、1番手っ取り早い手を取る。・・・・・・どうする?」
約束、した。
『一つは・・・本当に自分がやりたいと思う事が他に出来たら、我慢しないで向かって欲しい。悪いけど、私はそれを我慢されてまで・・・ヤスフミに守られたくない。そんなの、私はいやだ』
一つは、こんな約束。そして、もう一つある。
『・・・・・・これも、同じと言えば同じかな。もし・・・もしも、恋をして、好きな人が出来て、私よりもその人の側に居たいと思ったら、それも我慢しないで欲しい。私は・・・大丈夫だから』
強くなって、ヤスフミが心配したりしないようにすると。やりたいことや通したい事を真っ直ぐに追いかけられるようにすると、約束した。
好きな子が出来たらその子のことだけ見て欲しいとお願いして、約束してくれた。
そうだよ、せめて・・・・・・せめてその約束だけは守らないといけないんだ。
あぁもう、私は本当にバカだ。なんで私から言い出したこんな大事な約束を、今の今まで忘れてたんだろ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いよいよ決戦の日。僕はリインとティアナと一緒に隊舎に来た。で、着いた途端に入り口で敵に頭を下げられた。
そして、詳しく話を聞いた。
「・・・・・・と、というわけで、昨日の夜そんな話になってさ。決闘はなしになったんだよ」
「・・・・・・へぇ」
≪Struggle Bind≫
足元に魔法陣。それはストラグルバインド。相手の強化魔法の一切を無効化するとっても便利な魔法。なので当然苦笑いで僕を見るちびっ子使い魔もそれに縛られると、脱力気味に床に這い蹲るわけである。
≪さて、どうしましょうか≫
使い魔はその生命活動のほとんどを主からの魔力供給で補っている。そして、それは強化魔法の類に分類される。
これで縛られちゃうと、その供給が死なない程度にカットされて、見事にエンプティになるのだ。
「とりあえず、演習場に連れてこうか。せっかくだし僕が許可するよ。さ、足でもなんでも喰いちぎってもらおうか」
「い、いや・・・・・・だからフェイトがあんまりにマジで、アタシもちゃんともう一度冷静に話すって約束したし、なにより勝手に大人化出来ないように魔力の供給制限もかけられちゃったから」
「うん、だったらそのままでいいや。僕は手加減しないし問題無いでしょ」
「・・・・・・大有りだから。アンタも落ち着きなさい。冷静に話すんだからいいじゃないのよ」
大有りだよ。すっごく大有りだよ。
だからこそ、そんな視線を向けて、ティアにこう言い放つのである。
「それだったらゼロタロスの試し切りの相手は誰がするのっ!? ちょうどいい実験台だと思って内心うきうきしてたのにっ!!」
≪それなのに今更キャンセル? ありえませんね、あんだけ散々言っておいてそんな調子のいい事が許されるわけがないでしょ。死んでも実験台になってもらいますから≫
「え、そこっ!? そこのためにアンタらこれやってたわけっ!!」
「そうだよ。というわけで、演習場行こうか。大丈夫、徹底的に壊してあげるから。宣言どおりにすればネタ振りでフカシこいたなんて誰も思わないし」
ニッコリ笑うと、バインドで縛られまくった敵が何故か怯えた目で見る。うーん、謎だ。
「い、嫌だっ! さすがにこの状態でそれは嫌だっ!! フェイト、どこに居るのっ!? お願いだから助けてー!!」
≪だが断る≫
「なんでっ!?」
「自業自得ですよ。なお、リインは助けないのです」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・また英断したなぁ。いや、うち的には助かったんやけど。
でもフェイトちゃん、マジでアルフさんだけで話させるつもりか? アレ、何時殺されてもおかしくないと思うんやけど。
現在、うちとフェイトちゃんは部隊長室でモニター越しに殺気交じりの笑顔で演習場へと向かう鬼とそれを止めようとして結局引きずられている一団を見ております。
あぁ、アルフさんの顔が真っ青に。まさかフェイトちゃんにこういう形でストップかけられるとは思ってなかったやろうしなぁ。JS事件の時のどうしようもないとこまでボロクソに言うたらしいから同情する気は全くないけど、とりあえず合掌。
「いいの。私は今回はアルフに対して一切手助けはしません。というか、私だってヤスフミとちゃんと話さないといけないんだから、余裕ない」
「まぁ、そういうことなら・・・・・・なら、覚悟決まったんか?」
「・・・・・・うん。送り出すことにした。ヤスフミが本当にそうしたいなら、それがいいなと思って」
ふむ、こりゃよかった。なんやかんやで問題の大半解決したやないか。・・・・・・まさかアイツ、ここまで読み切ってアルフさんに徹底的に喧嘩売ったんとちゃうよな?
アルフさん激情家やから、フェイトちゃんのことも絡めた上で挑発すれば、自分のことをボロクソに言うに決まってる。JS事件後に、フェイトちゃんに言われて抑えた分も含めてや。実際そうしとる。
それを聞いたフェイトちゃんがギリギリでこういう行動に出るのも、実は全部計算ずくで・・・・・・いや、そないなわけないか。だって、アイツ脳筋やし。
きっとヒロリスさんからもらった新装備の実験台にしようかとか考えてたんやろ。アイツ、そういうの遠慮するやつちゃうもん。
「あのね、はやて」
「なんや?」
「私、ヤスフミの事・・・・・・好きだったみたいなんだ」
・・・・・・ほう、そりゃまた大胆発言やな。
察するに、ティアとのあの微妙な空気で気づいたいう事やろうか。
「というより、気づかされた。シャーリーに私はティアがヤスフミの恋人になったことに、ヤキモチを焼いてるって言われた」
「そっかそっか。で、どないするつもりや?」
「・・・・・・どうしよ。シャーリーには完全に吹っ切っていけないようなら、告白も考えた方がいいって言われたんだけど」
まぁ、そうやなぁ。それやと自覚なしで失恋と同じやもん。成就どうこう言うより、自分の気持ちの問題言うんが大きいやろうなぁ。
ただ、そう考えると問題が一つ。この二人の元の関係性や。元々恭文はフェイトちゃん好きやったんやで? 告白したら・・・・・・やばい、ヘタしたらやけぼっくりに火がついてまう。
「どないする? フェイトちゃんが告白してヤスフミがやっぱフェイトちゃんがいい言うてきたら」
「そ、それはうれしいけどやっぱりティアのこともあるし・・・・・・うぅ、その問題があるよね。あの、うぬぼれかも知れないんだけど」
「いや、大丈夫や。うちも同じ事考えたから。うーん、とりあえず時期を見た方がえぇんやないか? 今は付き合いだしたばかりでアレやし、恭文どうこうもあるけどティアもいい顔はせぇへんよ」
ここは時期を置いて、笑い話に出来るくらいになったら話す言うんが理想的やけどな。ただ、問題がある。
それは、もしフェイトちゃんがそういうんが嫌で、付き合いたいとか考えてるとしたらや。
「その場合は、もうアプローチしてもうたら?」
「でも、ティアのこともあるし」
「せやけど、結局選ぶんは恭文やないか。浮気どうこうやのうて、ちゃんと考えた上での選択やったら、ティアかて納得はすると思うんよ。まぁ、ようするに・・・・・・」
「今とこれからの私の気持ち次第、なんだよね」
そうやな。とりあえず、何も言わん言うんは無しがえぇと思う。フェイトちゃん頑固で一途やから、区切りはつけんといつまでも引きずりそうやもん。
シャーリーやうちみたいにその辺りの切り替えちゃんと出来そうなタイプならともかく、そうやないし。・・・・・・言っておくけど、うちも好きやったとかそういう意味やないからな?
「なら、もう少し考えてみる。当分の間は・・・・・・お姉さんとして」
「そやな、それでえぇと思うよ。しっかし、自分もバカやなぁ。それやったら両想いもえぇとこやんか。もうちょい早う気づいとったら、今頃エロエロカップルやのに」
「うん、それはそう思・・・・・・エロエロってなにっ!? 私はヤスフミと付き合っても、絶対そんな風にはならないよっ!!」
「いや、なる。確実になるって」
・・・・・・激動の1月ももう終わり。なんやかんやでゴールは見えてきたな。
しかし、後半は密度濃すぎやて。うちびっくりやし。いや、その前によくよく考えたらまずいな。
うち、ティアに先越されてもうた。もうティアは子どもちゃうやろうし。
うぅ、やばいっ! 仕事しとる前に、うちも恋愛せんとー!!
(本当に続く)
あとがき
古鉄≪というわけで、本日のあとがきです。・・・・・・あぁ、石を投げないでください。しかたないじゃないですか、これでアルフさん叩きのめして最強物なんて言われたくないんですよ。
私はともかくマスターがトラウマなんですと声を大にしていいたい、古き鉄・アルトアイゼンんです≫
恭文「別に最強物じゃないと思う蒼凪恭文です。だってそんな厨二能力なんてないし。
まぁ、そこはともかくティアナルート第5話目・・・・・・ね、これいつまで続くの? 真面目に先が見えないんだけど」
やや「先が気になる結木ややです。うー、これどうなるんだろうね」
(・・・・・・さぁ)
恭文「結局ギンガさんルートと話数同じって・・・・・・しかも、アフターもあるんでしょ? 仮に次回で終るとしても、普通に7話いくじゃないのさ」
古鉄≪おかしいですね。本当は3話辺りで終らせる予定だったのに。ついつい書き込んでしまうんですよ。止まらないんですよ。というか、誰か止めてくださいよ。最強物とか言われる流れを止めてくださいよ≫
恭文「そこはいいからっ!! ・・・・・・やばいね、もしかしてこれはパーフェクトヒロインの呪い?」
やや「いや、さすがに呪いはないんじゃ・・・・・・」
古鉄≪その可能性はかなりありますね。パーフェクトゆえにミクロン単位の妥協も許されないんですよ≫
(恐るべし、ティアナ・ランスター)
恭文「でも、フェイトも余計な事を・・・・・・ゼロタロスの実験台にしてやろうと思ったのに。これじゃあ出番はヘタするとアフターだよ?
もしくは突発的に某美少女戦士シリーズのSとかみたいに全部終ったのに後処理発生みたいなことをやる必要が出てくるよ?」
古鉄≪無事に片付きそうなんだからいいじゃないですか。というより、あなた、真面目に容赦ありませんよね。鬼ですよ鬼≫
恭文「やかましい。使えるもんはなんでも使う主義なのよ。そのために挑発しまくったのに」
古鉄≪容赦有りませんね≫
やや「恭文優しさないよねー。女の子には優しくしないといけないんだよ?」
(外道ー)
古鉄≪鬼畜ー≫
やや「冷血漢ー」
恭文「外道だもんー。鬼畜だもんー。冷血漢だもんー。もう言われなれてるから全然気にしない。でさ、アルト」
古鉄≪はい≫
恭文「なんかこう・・・・・・違和感が有るのよ」
(青いウサギ、それに頷く。そう、違和感がある)
古鉄≪ちょっと最初からやり直してみます?≫
恭文「あー、そうだね。というわけで、一回仕切りなおそうか」
やや「え、違和感ってなに? ややわかんないんだけど」
古鉄≪というわけで、もう一回最初からです。収録を一旦ストップして、最初からやり直しましょ≫
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
古鉄≪はい、というわけで、何気に二回目の収録。本日のあとがきです。・・・・・・あぁ、石を投げないでください。しかたないじゃないですか、どうしても違和感が拭えなかったんですよ。どうすればこのシチュが変わっていくのかを真剣に考えたい、古き鉄・アルトアイゼンんです≫
恭文「そうだね、そこは真剣にいきたいよね。でもさ、一回目の話をされても誰もわからないからこの話やめようよ。
というわけで、蒼凪恭文です。まぁ、そこはともかくティアナルート第5話目・・・・・・ね、これいつまで続くの? 真面目に先が見えないんだけど」
やや「先が気になる結木ややです。うー、これどうなるんだろうね」
(・・・・・・さぁ)
恭文「結局ギンガさんルートと話数同じって・・・・・・しかも、アフターもあるんでしょ? 仮に次回で終るとしても、普通に7話いくじゃないのさ」
古鉄≪おかしいですね。本当は3話辺りで終らせる予定だったのに。ついつい書き込んでしまうんですよ。止まらないんですよ。というか、誰か止めてくださいよ。最強物とか言われる流れを止めてくださいよ≫
恭文「そこはいいからっ!! ・・・・・・やばいね、もしかしてこれはパーフェクトヒロインの呪い?」
やや「いや、さすがに呪いはないんじゃ・・・・・・」
古鉄≪その可能性はかなりありますね。パーフェクトゆえにミクロン単位の妥協も許されないんですよ≫
(恐るべし、ティアナ・ランスター)
恭文「でも、フェイトも余計な事を・・・・・・ゼロタロスの実験台にしてやろうと思ったのに。これじゃあ出番はヘタするとアフターだよ?
もしくは突発的に某美少女戦士シリーズのSとかみたいに全部終ったのに後処理発生みたいなことをやる必要が出てくるよ?」
古鉄≪無事に片付きそうなんだからいいじゃないですか。というより、あなた、真面目に容赦ありませんよね。鬼ですよ鬼≫
恭文「やかましい。使えるもんはなんでも使う主義なのよ。そのために挑発しまくったのに」
古鉄≪容赦有りませんね≫
やや「恭文優しさないよねー。女の子には優しくしないといけないんだよ?」
(外道ー)
古鉄≪鬼畜ー≫
やや「冷血漢ー」
恭文「外道だもんー。鬼畜だもんー。冷血漢だもんー。もう言われなれてるから全然気にしない。でさ、アルト」
古鉄≪はい≫
恭文「やっぱりなんかこう・・・・・・違和感が有るのよ」
古鉄≪私もです。というか、もう気づいてますよね≫
恭文「うん。多分答えは同じだと思うな。ちょっと一緒にツッコんでみる?」
古鉄≪はい≫
(青い古き鉄コンビ、頷き合ってから、ある一点を見る)
恭文「・・・・・・ややっ! なんでここに居るのっ!?」
やや「え、なんでって・・・・・・今日からややはIFルートのあとがきレギュラーなんだけど」
恭文「はぁっ!?」
古鉄≪なんでですか?≫
やや「あのね、やや思ったの。ややがIFヒロインになれないのは」
(説明しよう。結木ややは同じしゅごキャラの登場人物である日奈森あむ、真城りま、ほしな歌唄にIFルート要望が来ているのに、同じ女性キャラである自分はそうなれないし読者からの要望が来ていないのをかーなーり、気にしているのだ)
やや「ややがIFヒロインについて勉強不足だからだと思うの。だから、ここでお勉強」
古鉄≪意味が分かりませんよ。勉強したところであなたのキャラクター性に変化は出せないでしょ。というより、しゅごキャラクロスではその辺りの話をまだ書いていないだけで、あなた自体はいいキャラじゃないですか≫
恭文「そうだよ。赤ちゃんキャラなだけじゃないとこが原作やテレビでよく描かれてるじゃないの」
やや「うー、それでも頑張りたいのー。ややだってヒロインキャラできるんだからー」
(あ、キャラチェンジして涎掛けが追加された)
やや「てゆうか、ヒロインやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいー!!」
(そのまま、ひたすらにダダをこね続ける。それを見て・・・・・・青い古き鉄コンビは頷く)
恭文「えー、というわけで本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」
古鉄≪このあとがきではヒロインは基本1ルート最終回まで出さないという方向性があったりすると言わない事にする古き鉄・アルトアイゼンでした。それでは、また≫
やや「え、そうなのっ!? ということはややは」
(そして、映像が何故か突然切れた。うーん、謎だ。
本日のED:中原麻衣『センチメンタル』)
ティアナ「・・・・・・あぁ、アルフさんが死んでる。肉体的にじゃなくて精神的に死んでる。かわいそうに。まぁ、同情はしないけど」
恭文「大丈夫、肉を上げればすぐに復活するから。しかし・・・・・・対決フラグを早速へし折るとは」
ティアナ「突き抜けにもほどがあるわよ。予想外過ぎてどうコメントしていいのかわからないわ。でも、解決までの道筋は見えたわよね。なんだかんだで大体の問題はなんとかなってるもの」
恭文「そう言えばそうなんだよね。よし、きっと次回こそ終れる」
ティアナ「でも・・・・・・」
恭文「でも?」
ティアナ「それもちょっと寂しいわよね。ね、もう5話くらいやらない?」
恭文「・・・・・・ホントにやりそうだから怖いよね」
ティアナ「そうね、確かにそうよね。私も言っててそう思ったわ」
(おしまい)
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