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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース11 『ティアナ・ランスターとの場合 その5』



「・・・・・・というわけで、あなた達の行動のおかげで恭文くんの状態が悪化したわ。全く、どうしてヒロリスさん達が応援するようなことを言ったのか分からなかったの? どんな形であれ、恭文くんは先の事を考え出した。
現実的な問題との折り合いは、これから少しずつ、時間をかけて付けていけばよかったのに。モモタロスさん達と一緒にデンライナーに乗るのだって、そこから先に進むきっかけになれば問題ないのよ。どうしてそこまで拒否反応を示しちゃうの」

「でも、恭文君、あのまま居なくなってしまうかも知れないんです。そんなの、認められません」

「なのはさんの言う通りです。それに、私もみんなも、恭文とちゃんと話したい事が沢山あります。なのに、ここから居なくなるなんてダメですよ」



シャマルさんになのはとはやて、あとティアを除いたフォワード四人が呼び出された。



「そのために、恭文くんをここに閉じ込めるの? そんなことしても、あの子の病気が治るわけがないでしょ。
というかはやてちゃん、どうして私が居ない時にフェイトちゃんやスバル達に面会の許可なんて出したんですか」

「いや、さすがにこれはフェイトちゃんに何も話なしで決定言うんはまずい思うてな。てゆうか、スバル達に許可出した覚えないし。
・・・・・・・・・・・・あの、シャマル。うちいつまでこの体勢なん?」

「当然、話が終わるまでです。もう二度とこんなことをしないように反省してもらわないといけませんから」

「・・・・・・納得しました」



そして、はやては硬くて冷たいタイル張りの床に正座で、他の皆は椅子に座って、シャマルさんのお話・・・・・・というより、お説教を聞いた。



「で、でもシャマルさん。フェイトちゃんもスバル達も、恭文君の先の事を心配した上での事なんです。なにより、恭文君だって言い方があんまりです。
私達だけじゃなくて、部隊のみんな力になりたいって考えてるのに、ここに居る意味がないなんて・・・・・・それなのに、なんで私達だけ」

「そんなの理由になりませんっ! 特にフェイトちゃんっ!!」



・・・・・・はい。



「ハッキリ言って、あなたの行動が1番余計よ。えぇ、本当に余計だったわ。もうどうしてここまでって言うくらいに余計だったわ。
せっかくこのままハッピーエンドになる感じだったのに。お願いだから空気を読んで。本当に読んで。私、話を聞いて思わず泣いちゃったのよ?」

「あの、シャマル先生?」



な、なんだろう。背中から赤い炎のオーラが見える。

というか、私の行動はそんなにダメだったのっ!?



「・・・・・・いい? みんなどうもちゃんと理解出来ていないようだから改めて話すけど、ここ最近の恭文くんの状態が以前と同じだったのは、良太郎さんや桜井侑斗さん達の影響があったからなの。それと・・・・・・ティアね」





そうして出てきた名前に、胸が苦しくなる。ティア、本当にヤスフミと仲が良い。私は言葉を通じ合わせることすら出来ないのに、ティアは出来る。ヤスフミの側に居られる。

・・・・・・最初、イマジンの話を聞いた時、療養中のヤスフミに私達はなにも伝えないつもりだった。でも、良太郎さんが来た日の夜に普通に事件に巻き込まれて、普通に戦って、隊舎に居るようになった。

その後ティアの記憶が取られて・・・・・・療養中で、危険だと判断したから私達に任せるように言ったのに、いきなり最終決戦の場に乗り込んできて大暴れして、そのまま最後まで・・・・・・。



アレを見て、今のヤスフミにとって、ティアの存在がとても大きい事に気づいた。だから、身体も限界まで行使して、神速なんて言う危ない技を使ってボロボロになった。





「目の前の認められない今をなんとかしたいと思ったから、あの子は立ち上がれたの。きっと、それがあの子のなりたい自分で、やりたいことにも近かったのが要因ね。
あの子が立ち上がるのに、戦うのに必要なのは、正義でも、組織の大儀や権力でもなかった。本当に必要だったのは、そうありたい、そうしたい、目の前の今を覆したいと思う意思だけ。あの時にね、私はそれを再認識したわ」





うん、そう言ってた。『弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それはなにもやらないことの言い訳にはならない』って言ってた。

自分がやらなきゃいけないと思ったらやるだけとも言った。だから、飛び込んだ。今までと同じように、迷いも、躊躇いも無く。

それが少し嬉しくて、同時にすごく怖かった。ずっと感じてた危機感が、さらに強くなったから。うん、怖かった。私は怖かったんだ。



あんなに無茶するヤスフミなんて、どこかへ行ったまま帰ってこなくなりそうなヤスフミなんて、見たくなかった。だから止めた。





「だけど、決して病気が完治したわけじゃなかった。それでもいい兆しではあったのに、それをみんなはぶち壊しにした。これからみんなは恭文くんの状態がまた安定するまで・・・・・・いいえ、完治するまでね。
私やサリエルさん、リインちゃんやアルトアイゼンのいない時に恭文くんに接触する事を一切禁止します。メールも手紙もだめ。今のあなた達が恭文くんと直接的な会話なんてもっての他です。あと、なのはちゃんも」

「私もですかっ!?」

「当然よ。あなたが今みたいにフェイトちゃん側に立って恭文くんを責めれば、また状態が悪化するわ。恭文くんだって、自分でそこはわかってるもの。分かってるのにどうにもならないのが、心の病気の怖いところなの。
それをまた自分で理解するから、自分で自分を責めるようになる。というより、もう責めてる。感情がコントロール出来なくて、フェイトちゃんを傷つけた事をちゃんと分かってるもの。それで更に落ち込んでる」



なのはは納得いかないような顔だけど、ここはきっと仕方ない。

本当に私が悪化させたようなものだから。でも、完治までなんて・・・・・・。



「それでシャマル先生、なぎさんは」

「もう家に帰しました」

「えぇっ!? でも、あんなに怪我してるのにっ!!」

「本当はまだ安静にしてなきゃいけないけど、あなた達の行動を見る限り、ここではちゃんとした治療が出来ないと判断したの。
なにより、私どうこうではなく、恭文くん本人の要望が大きいの。そして、アルトアイゼンやリインもよ。この意味、分かるわよね?」



そう若干睨み気味に言われて、全員が押し黙る。言っている意味が分かったから。

つまり、ヤスフミはあんな状態でもなお、ここに居る事を拒んだ。ここに居たくないと思った。そして、私達がそう思わせたんだ。



「・・・・・・本当にお願いだから、みんなもうちょっと考えて。普通の状態なら恭文くんも言い過ぎな部分があるとは私も思う。でも、今はその普通の状態じゃない。気をつけてあげなくちゃいけないことが、たくさんあるの。
私やリインちゃんやティアだけが気をつけていても、本当に意味が無いの。こんなことが続くようなら、恭文くんは一生苦しい思いをしなきゃいけなくなる。本当に今居る場所を嫌いになっていく。みんな、それでいいの?」










私達は何も言えなかった。だって、それを一切無視していたから。

そうだ、どうして忘れてたんだろ。シャマルさんから完治の話が出たりしたわけでもなんでもないのに。

私、本当に自業自得だ。勝手な理屈でヤスフミを振り回して、イエローカードまで出された。なにやってるんだろ、私。





本当はティアみたいに、ヤスフミの力になりたいのに。私、会って半年も経ってないあの子に負けてる。





私とヤスフミのこれまでの時間8年間は、ティアとのほんの数ヶ月に負けてるんだ。





悔しい。すごく、悔しいよ。私は家族なのに。なんで、家族でもなんでもないティアに負けてるんだろ。




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース11 『ティアナ・ランスターとの場合 その5』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・思うにさ、僕とティアと一緒にお風呂ってのは、描写していいのかな」





アップに纏めた髪、お風呂に浮かぶ程よい大きさの胸、くびれた腰に太もも、そういうのが見えてしまうわけですよ。

あと、僕もだね。こう・・・・・・描写してはいけないものがある。映像だったらモザイク入るであろうものが。



いや、小説媒体だから大丈夫だけどさ。それでもアウトだと思うのよ。





「いいんじゃないの? 一応そういうエロな描写がなければ。てゆうか、バスタオル巻いてればなんとかなるでしょ」

「いや、一緒に入ってる時点でアウトだと思うんだよ。なによりティア、巻いてた?」

「・・・・・・巻いて、なかった。いや、だってさっきまで見るどころの騒ぎじゃないことしてたんだし、今更恥ずかしがるのもおかしいかと思って。アンタだってそうでしょ?」

「まぁね」





なんて話しながら、僕はティアの長いオレンジ色の髪を、後ろからドライヤーで乾かす。なお、お風呂から上がった所。入っている最中ではありません。

うん、一緒に・・・・・・入っちゃった。なお、中での行動はご想像にお任せします。その様子なんて書いたらR18な可能性が出てくるので。

服装は二人とも色違いのチェックのパジャマ。僕とティアは体型的には比較的近いので、ギリオーケーだった。出来ればこのままずっと行って欲しい。



でもティア、どこであんなの覚えたの? この間もアレとかソレでビックリしたんだけどさ。





「まぁ、ネットとかで? いや、早熟な部隊の先輩とかの話では知ってたんだけどさ、聞きかじったレベルだから具体的なのはわかんなくて。・・・・・・どうだった?」

「あのね、嬉しかった」

「気持ち良いとかじゃなくて?」



もちろんそれもあったけど、そうじゃなくてティアが一生懸命してくれたのが嬉しかったの。



「そういうものなのかな」

「うん、男ってそういうものだよ。あの、ありがと。ほんとにね、嬉しかった」

「・・・・・・うん」



・・・・・・あ、髪乾いたかな。



「でも、身体大丈夫? お風呂に入ってる時に見ちゃったんだけど、結構傷残ってたし。というより、あの・・・・・・私、頑張りすぎたかな」

「大丈夫だよ? それにさっきも言ったじゃない。嬉しかったし、すごく気持ちよかったから」

「ほんとに? 無理してない?」

「うん」



んじゃ、次は梳かして・・・・・・と。櫛で優しく丁寧に。



「・・・・・・よかった」

「何が?」

「ん、押し倒して迷惑じゃなかったって言うのと」



ティアが右手の指を使って数を数えるようにしながら言葉を続ける。



「覚えたテクニックで喜んでくれたって言うのと、あとこれが1番大事。恭文、元気な感じになってるから」



・・・・・・なんて言うか、ティアと繋がってると幸せだったから。うーん、これも不思議。ただ気持ちいいとかだけじゃないんだよね。



「ね、もしかしたらセックス・セラピーってあるのかな。だからそういう感じになるのかも。私もそうだったし」

「・・・・・・ありそうだけど、それ多用はちょっとなぁ。負担かかるのは絶対女の子だろうし」

「確かにね。私もそれを掲げて女の子に迫る男が居たら、ちょっと引くわ」

「そっか、覚えておくよ」



でも、ティアの髪きれいだよね。つやつやしてるし、枝毛とかもないし。触ってて心地いいもの。

・・・・・・・・・・・・うーん。



「どうしたの?」

「いやさ、ツインテールだとこの素敵なストレートロングが堪能出来ないなぁと思って。でもツンデレは捨てがたい」

「アンタどんだけツンデレ好きっ!? いくらなんでもそこまでこだわるのはおかしいでしょっ!! ・・・・・・でも、言いたい事は分かる」



ティア・・・・・・嬉しいよ、ようやく自分がツンデレだと自覚してくれたんだね。

そう、ティアはツンデレなんだよ? それもツンデレオブツンデレ。ツンデレの髪・・・・・・もとい、神と言ってもいいよ。柊かがみとタメが張れるよ。



「違うわよバカっ! 下ろしてるのとそうじゃないのとじゃ、どうしても差が出てくるってことっ!!
・・・・・・でも、普段からストレートロングにはしないつもりなんだ」



え、なんで? ツインテールもツンデレ抜きでいいと思うけど、これも中々なのに。



「あ、ツンデレは抜きにしてそう思ってくれてるんだ」

「まぁね。あと、ガンナーでも動き回るから、まとめて置いた方が楽なのかなとも思ってた。ちょうどなのはや」



言いかけて、止まった。あんまり想像したくなかった可能性に気づいたから。



「うん、そうよ」



出来れば外れて欲しかった。だけど、現実ってのは残酷らしい。ティアのその言葉で、肯定されたから。



「・・・・・・フェイトさんと被ってるから」



そう少しだけ申し訳無さげに言われて、髪を梳かしていた手が止まる。



「あの、ごめん。僕ティアに負担かけてるよね」



あ、もしかして・・・・・・この間のお泊りデートの時に僕ティアに抱きつきながら『フェイト』・・・・・・とか寝言言ったんじゃっ!!

や、やばい。ありえるかも知れないのが無茶苦茶怖い。



「バカ、謝らないでよ。てゆうか、そういうのは無かったから」

「ホントに?」

「ホント。というより、有ったらさすがにぶっ飛ばしてるわよ。だって、初エッチした後、一緒のベッドで寝てる時にそれよ?」



ティアの言葉に妙に納得してしまう。うん、僕もそれは怒ってるかも。しかもかなりのレベルで。



「大丈夫、そんな不埒な寝言言ってないから。普通に私の名前を呼んで『巫女姿も捨てがたい』とか・・・・・・ね、何の夢見てたのよ」

「いや、こうツンデレ的というか、柊かがみ的な感じ? 覚えてないんだけど」

「だからアンタ、それから離れなさいよっ! そして柊かがみって誰っ!?」



詳しくはらきすたを見ていただければ。・・・・・・でも、それもまずいな。よし、ティアが見ないように手を打っておこう。



「でさ、ツインテールも被ってるのよね。バリアジャケットの時だけの話なんだけど」

「あぁ、そうだね。んじゃ、ポニーテールとか?」

「それね、前にやったの。スバルと女の子同士の会話してる時に、物は試しって事で」



まぁ、女の子だからそういうのはありそうだ。で、どうだったのかな。



「スバルに『まるで地球の映画に出てくる侍』みたいって言われた」



・・・・・・ちょっと髪を弄って、仮想ポニーテールにしてみる。あ、ほんとだ。りりしい女性顔の侍だ。



「・・・・・・って、こらっ! 遊ばないでよっ!!」

「ごめんごめん。だけど、普通に可愛いよ?」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、ちょっと気にしてるのよ。なんかこう・・・・・・違うなって」



でも、これは中々だと思うんだけどなぁ。うん、これはこれで印象変わるし、可愛らしい。



「ヴィヴィオみたいなツーテールサイドポニーはどう? 髪は下ろしたままで」



というわけで、鏡の前なのでやってみる。・・・・・・なんだろう、某キャラの幻影が見えた。

ヤバイ、素直に見れない。何故かオタクフィルターがかかってる。



「なんて言うか、可愛いけど私の趣味じゃない」

「納得しました」

「いっそ髪切ろうかな。こう肩くらいまでの感じでさ」

「あの、ティア。そこまでこだわらなくていいよ? フェイトの事は、その・・・・・・昔の事なんだし」

「別にこだわってないわよ。ただ」



・・・・・・ただ?



「それでも、大事な人ではあるだろうからさ。・・・・・・あー、ごめん。やっぱこだわってるのかも。だって、せっかくこうなれたわけだし、私だけ見てて欲しい」

「・・・・・・ごめん、多分それ無理かも」

「なんでよっ! アンタ、付き合って24時間経ってないのにいきなり浮気宣言はヒドイと思うんだけどっ!!
それも恋人になってから初めてのエッチと、お風呂での洗いっこの直後でよっ!? 普通にありえないでしょっ!!」



あー、違う違う。浮気とかじゃないの。うん、そっちじゃない。・・・・・・リインの事だよ。

そう、僕のソウルパートナーだ。自称・元祖ヒロインのことだ。



「いや、なんというかリインが居るからさ」

「・・・・・・あー、そっか。繋がり深いんだったわよね。リイン曹長も、アンタの前だと甘々でラブラブだし。そうすると、私はリイン曹長とうまくやってく必要があるわけね」

「そう、だね。それでさ、まだ問題もあって」



ティアの髪が終ったので、今度は僕の番。入れ替わって、ティアがドライヤーで乾かしてくれる。・・・・・・なんだろう、くすぐったいけど、この感触は嬉しい。



「問題?」

「リイン、僕がデンライナー乗るにしても、ミッドに残るにしても、ずっと側に居るって言ってるんだ。ようするに、はやてのとこから離れて僕のところで暮らすって言ってるの。
てゆうか、話してる。僕が休職した時からこうなるんじゃないかって言うのを予測して、予め相談してたんだって。で、オーケーもらったとか」

「・・・・・・そっか、それは確かに考えないといけないわね。じゃあさ、私・・・・・・泊まりの許可取っちゃうから、その辺りの事話さない?」



少しだけ、髪を撫でてくれるティアの手つきが優しくなったように感じた。

鏡越しにティアの顔を見る。・・・・・・とても優しい、暖かい顔で微笑んでいた。



「一人で溜め込んじゃうとまた症状悪化するかも知れないしさ、一緒に考えようよ。まぁ、アンタが疲れない程度にね」

「・・・・・・ありがと」

「ううん」





でも、いいのかな。ティアだってやること沢山あるのに。うー、なんだか申し訳ない感じがする。



ありがたさと同時にそういうごめんなさいと謝りたくなるような感じが一緒に襲ってきて、なんだか複雑。





「でも、そうするとリイン曹長と一緒の三人体制か・・・・・・。うーん、まさか自分が一夫多妻の一角を担うとは思わなかったなぁ」

「その言い方やめて・・・・・・。色々辛いの。すっごく辛いの。てゆうか、ハーレムなんて無理なの、絶対無理なの」

「あ、ごめん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・イマジンの残りが居る気配は今のところ0ですか」

「俺達が見た感じではな。まぁ、ネガタロス辺りはもう大丈夫だろ。チビがタイマンで叩き潰したようなもんだし」

「ですね。あれで生きてたらアタシはビックリですよ」





・・・・・・そんな話を侑斗さんやデネブと六課の会議室で話してる。まぁ、事後の事はきっちりしておくのも仕事のうちってことで。なお、コレが終ったらアタシ達も今日の仕事は終わりだ。

てゆうか、うちの部隊長は足痺れて動けねぇし、分隊長とフォワードはティアナ以外全員沈んでるし、シャマルとヒロリスさん達は今度こそ成就だって言ってパーティーしてるし。

アタシとシグナムしかちゃんとしてるのが居ないってどういうことですか。



とりあえず、終ったら成就記念のパーティーには混ざってやる。アタシだってたまには美味しいもん食べてドンチャン騒ぎしたいんだ。





「そういえば、恭文君が使ったあの神速・・・・・・でしたよね。あれはどうするんですか?」

「あぁ、なのはの兄貴のところで少しの間修行させることにしました。バカ弟子にはその辺りはこっち運ばれてきてからすぐにアタシから話してます。コントロールさせとかないと、いつ無茶な使い方するか分かったもんじゃないですし」

「今回のはティアの事や蒼凪自身の精神状態の関係で暴走に近い形だったからな。その辺りはきっちりさせておかないとまずいだろう。・・・・・・しかし、蒼凪が神速か」

「あぁ。きっと・・・・・・」



そうだ、きっと・・・・・・。



「チート呼ばわりされてキレるんだろうな。最強物とか言われてヘコむんだろうな」

「間違いなくな。まぁ、体型の問題もあるからそこまで多用は出来ないから、そこだけが救いか」

「あぁ」

「いや、アンタら心配するとこ間違えてないかっ!?」



いや、だって・・・・・・なぁ。バカ弟子マジでその辺りを気にしてたし。てゆうかしてるし。もうトラウマだよアレ。言われるだけで泣きたくなるみたいなんだよ。

とにかくだ、バカ弟子がどういう選択するにしても、安心して選べるように今出来ることはきっちりやっておかねぇと。



「・・・・・・アンタらは反対してないんだな」

「え? ・・・・・・あぁ、蒼凪が旅に出ることですか」

「あぁ。あの金髪の姉ちゃんとかギンガの妹とかは相当だったってのに」

「やっぱり、居なくなると寂しいからなのかな」



まぁ、そうでしょうね。てゆうか、アイツの放浪癖というか世捨て人的なところを知ってるとどうしてもそうなるんでしょ。

フィアッセ・クリステラさんのコンサートの時は平然と三ヶ月くらい海鳴を留守にしてたしなぁ。やっぱじいちゃんに似て自由気ままなんだって。・・・・・・ただ、アタシやシグナムなのは達とはちと違う。



「アイツが約束破って帰って来ないようなら、師匠として責任持ってアタシが行方を探し出せばいいだけの話ですから。
なにより、旅することは悪い事でもなんでもないでしょ。結構前なんですけど、同じような事してちゃんと答えを見つけて、帰ってきてますし」

「テスタロッサ辺りは少々過保護なところがあってああなので、あまり気になさらないでください。アレとてちゃんと分かってるはずです。今ここで蒼凪を止めてもロクな結果にならないことは。
なにより、蒼凪は男です。男と言うのは往々にして、道なき道を行き、その中でしか見つからないものに興味が出るものです。私もヴィータも特におかしいことはなにもないと思うのですが」

「・・・・・・なるほど、なんか納得したわ。てゆうかよ、それを連中に言えばいいだろうに」



あはははは、確かにそーですね。ただ、それもまたトラブルの火種なんですよ。

理由は実に簡単。バカ弟子とも付き合いは長ぇけど、アイツらとはもっと長い。



「なのはもフェイトも、あとスバル達も無茶苦茶頑固なんですよ。アタシらが外から言っても、結局は自分で考えて納得する選択をしないと意味ないんです。
てゆうか、言ったらアタシらとも衝突して、部隊内が内部分裂する可能性もありますし、下手にバカ弟子を擁護したり否定するような行動は避けたいんです」





・・・・・・ティアナの時はその辺り失敗したしなぁ。その事でバカ弟子と話したりとかして、すっげー反省したりした。

こういう場合、ある程度中立に立つ人間が絶対必要なんだよ。バカ弟子の側にはもうティアナやリイン、シャマルが居る。はやてもちょっと話せばアタシ達と同じ位置に来るだろ。

とにかく、アタシとシグナムのスタンスはもう決まってる。旅に出たいと思ってるバカ弟子の側にも、それを出来るなら止めて、ここに残って欲しいと思ってるなのは達のどっちにも付かない。



あくまでもバカ弟子の自由意志に任せるのは変わらない。だけど、中立的に両方の間に入ってクッション役・・・・・・か?





「なんだかそれ、とても大変ですね」

「大変ですね。まぁ、私もヴィータも副隊長で、言わば下と上に挟まれる中間管理職です。これはいつもの事と言えばいつものことですから」

「だな」



今まであんまりそういうのがなかっただけで、アタシ達の本来の仕事はこういうことなんだ。

上と下の間に挟まれ、クッションとなり、ぶつかって磨耗して部隊その物が壊れるのを防ぐ。いや、とっても大事な仕事だって。



「・・・・・・なんか、悪いな。半分俺達のせいだってのに」

「ごめんなさい」

「いや、いいですよ。てゆうか、良太郎さんや侑斗さん達のせいってのはちょっと違います。・・・・・・みんなのおかげで、バカ弟子はやってみたいこと、なりたいものをこんなに早く思い出す事が出来たんですから。むしろアタシは感謝してんです」

「というより、私達はみんな感謝せねばならないでしょう。シャマルの話では、その辺りでそうとう迷っていたようですが、向き合う踏ん切りがついたのですから」

「そっか。ならいいんだけどよ」










・・・・・・全部を守れる正義の味方。『魔法』が使える魔法使い。突飛もなくて、叶えることなんてきっと出来ない夢。というより、ゴールがどこかがわからねぇよ。





でもな、バカ弟子。それでいいんじゃないのか? どんなものだって、お前の心の中で生まれた大切なものなんだからよ。





だから、大事にしろ。どんな形でも夢は夢なんだから、少しずつ育てていけばいいだろ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして、数日が経った。戦いの傷は癒えて、僕はもう全開バリバリ。





最近始まったディケイドなんて見つつ、電王の世界はどうなるのか非常に楽しみだったりする。うーん、これもリ・イマジネーションなのかな。










「そうすると、良太郎さんはどうなるですかね。もしかして、すっごく強い人になるとか」

「あー、それはそれで面白そうですよね。こう、足りないものをこのもやしとの邂逅で埋めていく感じですし、それで本当の強さを見つけるとか」

「ありえますねー」



・・・・・・まぁ待て。いや、色々待とうよ。なんであなたティアここに居る? なんで普通にうちのリビングでソファーに座ってリインと一緒にテレビを見てる?

それも真っ昼間から。仕事はどうした、エリート部隊の優秀なタクティカルガンナーさん。



「大丈夫よ、仕事はきっちりこなした上で来てるから。てゆうか、持ち込んでる」

「はぁっ!?」

「いやさ、スバル達がすごい勢いで来るのよ。アンタのこと、本当に応援する形でいいのかーとかさ。
あと、フェイトさんの視線が厳しくて。副隊長達の許可もらって、こっちで仕事させてもらうことにしたの」



いや、スバルは分かる。エリオやキャロも分かる。でも、なんでフェイト? 別に厳しくなる要素・・・・・・あるかも。

もしかして、ティアが僕の旅に出たいって気持ちを認めてるのが不服とか。いやいや、さすがにそれは・・・・・・ありえる。



「やるのがあったら送ってもらえることになってるし、悪いんだけどしばらくの間ここに居させてよ。副隊長達にもそうした方がいいって言われてるしさ」

「なんというか、あの・・・・・・ごめんなさい」

「あぁ、謝るのなし。てゆうか体勢下げるのやめて? アンタ両手にお茶を乗せたお盆があるんだしさ」










うぅ、まずい。これはすっごくまずい。もう僕だけの問題じゃなくなってるのかも。





なにがなんでもいい形で決着つけないと、旅に出た後のティアの立ち場にも関わってくる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・まぁ、そう言うこともありつつ僕とティアとアルトとリインは楽しく・・・・・・うん、楽しく過ごしていた。





理由は簡単。お客様が来たから。










「・・・・・・なるほどね、ここが三人の愛の巣か。いやぁ、潮の匂いじゃなくて甘い花の匂いがしてくるから、不思議だよねー」

「ウラタロスさん、変な言い方やめて。何も否定出来ないのが苦しいけどやめて」

「てゆうか、私は暮らしてないから。私は仕事持込みでここに来てるだけだから」



そう、デンライナーな方々だ。なお、キッチンでナオミさんが普通に料理してる。皆は僕の部屋をあれこれ物色してる。・・・・・・すっげーカオスだ。ここだけ見るとすっげーカオスだ。

なお、みんなは着ぐるみ着込んで例のぬいぐるみ着用の上でやってきました。なんていうか、お見舞い? いや、これはいいのよ。許可は出してたから。



「いぇーいっ! 今日はパーティーだよー!! いいかなー!? 答えは聞いてないっ!!」

「お食事沢山作りますから、恭文ちゃんもティアちゃんもリインちゃんも、沢山食べてくださいねー」

『おー!!』



こらー! そこの桃金龍に鳥はあんまり騒ぐなー!! ここ集合住宅っ! ご近所様に迷惑だからー!!

・・・・・・あ、ツッコミのキレが本編並みに戻ってきてる。うし、これならあと10年は戦える。



「そうだよみんな、恭文君の家だってこと忘れてるよね? ・・・・・・いや、なんというかごめんね。いきなり押しかけてきちゃって。
みんな心配だから様子を見に行こう見に行こうって勢いがすごくて、止められなかったんだ。あの、迷惑なら帰るけど」

「あぁ、大丈夫ですよ。なんだかんだでリインも恭文さんも嬉しいですから。てゆうか恭文さん、防音対策に結界張りません?」

「そうだね、そうしようか」



とりあえず、リインと二人で術式展開。この部屋限定で防音結界を張る。外からの音はともかく、中からの音は外には漏れない仕様。

たまにたぬきが酔っ払ってカラオケセットを持ち込む事があるので、その対策のために組んだ魔法だ。なお、外からの音が聞こえるようにしてあるのは、火事や災害などの緊急事態に備えて。



「実はよ、俺タヌキ女からこういうの借りてきたんだよ。・・・・・・じゃじゃんっ!!」

「先輩、今時じゃじゃんって・・・・・・あらま、先輩にしては気の利いたもの持ってきたね」

「あー、これ僕知ってるっ! カラオケセットだよねっ!!」

「おう、なんかこれで歌って踊れるらしいぞ」



そうそう、ちょうどモモタロスさんが持ってる感じの奴をタヌキが突然『買ってきたから試運転ここでやるでー』とか言うわけのわかんないことを言って・・・・・・。

待ってっ! なんでカラオケセット持参っ!? てゆうか、それはどこから出したっ!!



「アンタ、ツッコミの切れが戻ってきてるわよ。やっぱよくなってきてるんだって」

≪そうですね、あなたの元気のバロメーターですし。それが良くなってるのはイコール体調や精神状態がよくなっているという事ですよ≫

「そ、そうかな。ならうれし」



・・・・・・って、そうじゃないっ! どうしたんですかそれっ!!



『つーわけで、歌うぜー!!』



バシっ!!



『だめー! 僕が歌うー!!』

『いやいや、やっぱりここは僕でしょ』

『ここは俺やな』

『当然私だ』

『だぁぁぁぁぁぁっ! お前ら俺の邪魔をしてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』



そうして5人一組のバトルロワイヤルが目の前で繰り広げられ・・・・・・って、だから部屋の中っ! ソファーが引っくり返るしテレビが壊れるから暴れるのやめてー!!

てゆうか羽っ! 羽が舞い散ってお掃除大変だからー!!



「だから・・・・・・喧嘩すんじゃないわよアンタ達はっ!!」



ドカッ! バキッ!! ゴキッ!!



「・・・・・・な、なにしやがる。ハナクソ女2号」

「うー、ティアナちゃん段々ハナちゃんに似てきてるー」

「うっさいバカっ! ここの掃除とか誰がすると思ってんのっ!? 全部コイツやリイン曹長でしょっ! 歌うなら順番決めてその通りに歌いなさいよっ!!」



ティアの俊足の拳を用いたツッコミにより、五人が一騎に動きを止めた。というより、沈んだ。

あ、あははは・・・・・・。ティア、近距離戦闘苦手とかって嘘でしょ? これは充分実戦で通用するレベルだって。



「確かに、そうやな。しっかし・・・・・・羽だらけやないか」

「うー、そうだよ。鳥さんバタバタしすぎー」

「何を言うかっ! お前達の扱いがぞんざいだからこうなったのだぞっ!?」

「あぁ、だめだよみんな。とにかく、掃除してご飯を食べて、それからだよ。ね?」

『・・・・・・はーい』










なんというか、嬉しいな。こうやってみんな心配して来てくれて。





うん、すごく嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「しかしよ、お前マジでデンライナー来るのか?」

「・・・・・・その前に解決しなきゃいけない問題がどんどん増えてるんです」

≪あぁ、そうですよね。何もしてないのに増えてるんですよね≫



家族の事、フェイトの事、ティアの事、リインの事、神速の事・・・・・・ねぇ、神様。僕の症状を悪化させたいの? ざっと上げたけど五つだよ? もう二つ増えたら願い事叶いそうだよ? ありえないでしょ。



「青坊主、お前やっぱ運悪いって。ありえねぇだろそれは」

「やっぱりですか?」

「やっぱりだな。良太郎も相当だけどよ、お前も相当アレだって」



ナオミさんが作ってくれたご馳走を食べつつ思う、なんか頭の痛いことばかりだと。JS事件終った後と同じく事後の方が大変ってどういうことだと。



「まぁ、私は大丈夫よ。副隊長達が防波堤になってくれてるし、上手くやってく。神速は修行が必要だけど、それだってなのはさんのお兄さんが協力してくれるんでしょ?」

「・・・・・・まぁね」

「リインも、はやてちゃんとお話して納得はしてもらってます。つまり、差し当たっては・・・・・・」

「フェイトさんとその家族の事・・・・・・だね。最低でもこの二つを恭文は解決しなきゃいけない」



ウラタロスさんの言葉に頷きつつ、僕はエビフライをパクリ。・・・・・・あ、美味しい。海老が甘くてプリプリだし、衣もサクサクだし。僕が揚げてもここまでにはならない。

表情がほころびつつナオミさんを見ると、ニコリと微笑まれた。美味しいと思った事が伝わったらしい。



「うー、なんだかめんどくさいね。ねね、それなら皆には黙って勝手に乗ってきちゃえば? チケットが無ければ、誰であろうとオーナーは絶対乗せないしさ。
ね、そうしようよ。今のところチケット持ってるのは恭文だけなんだしさ。そうしちゃえば大丈夫だって」

「いやリュウタ、それはあかんやろ。そないな家出みたいな真似したら、恭文が帰り辛くなるだけやないか」

「あ、そっか」

「そうだな。少年の意思も大事だが、それと同じくらいに家族を大切にすることも、大事なことだ」



・・・・・・大事、なことだ。だからこそ、頭が痛い。

リンディさんやアルフさんは、絶対嫌がるだろうし。元々僕がヘイハチさんみたいにならないで欲しいって言ってたから。



「じゃあ恭文君、もう・・・・・・気持ちは決まったの?」



良太郎さんがこっちを真剣な顔で見て聞いてきた。だから、僕は頷いた。

ティアやリイン、アルトともあれこれ話して、決めた。旅に出る。



「でもね、僕達は」

「良太郎さんやモモタロスさん達どうこうは、あんまり関係ないんです。・・・・・・止まらないんです」



右手を胸に当てる。そのまま、言葉を続ける。



「見たことの無いものに触れられるのが、知らなかった世界に行けるのが、嬉しいんです。そんなドキドキが、止まらないんです。
その中に欲しい答えなんて無いかも知れないけど、それでも行ってみたいんです。それに、自由気ままに旅をするってのは、元々の夢でしたから」

「・・・・・・そっか。あの、ごめんね。もしかしたら僕達に過剰な期待とかそういうのしちゃってるのかなとか思ってたから」

「いえいえ。心配してくれるのはありがたいです。ただ、やっぱりダメなんです。なんかすっごく楽しくなりそうで、止められなくて、止まらなくて」

「うん、分かるよ。今の恭文君、そんな顔してたから。本当に旅をするのが夢だったんだって、見てて伝わったし」



・・・・・・そう、なんだよね。これは僕の夢なんだ。大事な、夢の一つ。叶えたかった願いの一つ。

やっぱり、なんとかして行きたい。そのためには・・・・・・女傑二人の説得か。



「そしてそれが1番難しいのよね。やり方はともかく、アンタのこと相当心配はしてるだろうし、納得はしてくれないわよ?」

「つーかよ、ごちゃごちゃめんどいから、文句あるやつは全員ぶっ飛ばせばいいんじゃねぇのか?」

「モモタロスだめだよっ! さすがにそれは・・・・・・」





まぁ、さすがにそれはなぁ。どっかの横馬じゃあるまい・・・・・・・・・・・・。



一瞬固まった。そして、モモタロスさんを見る。おいしそうにポテトサラダをつまんでる赤い鬼を。





「青坊主、どうした?」





僕を黒い瞳で見る。なお、手と口は止めたりしないところが純粋にすごいと思った。





「モモタロスさん」

「おうよ」





モモタロスさんに感謝しなくちゃいけない。その言葉で、糸が切れた。それはもういい具合にぷっつんと。



それなにより、しばらく抱えていたモヤモヤが一気に晴れていく。そうだ、結局僕は・・・・・・バカなんだから、こういうのしかないんだ。



だったら、やるしかないでしょ。最初から最後までクライマックスで。





「そのアイディア、頂きます」

「おう、そうか。ならこれで万事解決じゃねぇか。いや、よかったよかった」





モモタロスさんがそう言うと、全員黙った。そして、擬音がしそうな勢いで首が動いて、僕を見る。



顔を近づけ、目を見開いて、それはもう真っ直ぐに。だから、次に出てくる言葉はこうなる。





『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

≪・・・・・・マジですか?≫

「マジだよ。というわけで、早速行動開始ー♪」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・というわけで、しばらくの間デンライナーに乗って旅に出ますので」





同時チャンネルを開いて、フェイト・・・・・・は繋がらなかったので、リンディさんとアルフさんにエイミィさん、それにクロノさんに通信をかける。目の前に開くのは、三つの通信画面。

なお、アルフさんとエイミィさんは海鳴の自宅からなのでこうなりました。

とにかく、ここ数日の事を色々ぶっちゃけた。で、ぶっちゃけた上で話した。



そして、みんな納得してくれた。いや、よかったよかった。





『ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇっ! アタシは納得してないぞっ!?』

『私もね。まず、あまりにもいきなり過ぎるわ』

『・・・・・・恭文、まぁ、僕は止めないが』

『クロノっ!?』



おぉ、さすが我が兄。色々なことをちゃんと分かってくださっているのがありがたいですよ。



『あー、ごめんねアルフ。私も止めるつもりないのよ』

『どうしてだよっ! だって、せっかく部隊でも上手くやってるのに』

『うまくやってる子は、12月近辺から今の今までずーっと休職なんてしないよ』

『・・・・・・え?』



少し驚いてエイミィさんを見る。あ、なんか頷いた。で、クロノさんを見る。・・・・・・こっちも頷いた。

つまり、二人は知ってたんだ。僕がずっと休職してたのを。



『美由希ちゃんから話を聞いてね。あー、美由希ちゃん責めるのはなしね? ミッドに来た時に様子がなんかおかしかったから、私が無理矢理に聞きだしたんだ』

『僕はエイミィ経由で相談されて、はやてに少々尋問を行った。お前がどういう状態だったかはしっかりと聞いた。
・・・・・・本当にすまなかったな。気づいてやれなくて。そして、そんな状態のお前を追い込むような真似をしてしまって』

「・・・・・・いいですよ、別に。気にしてませんから」

『そうか、だったら心から頼むっ! 毎日毎日留守録に悪夢を見そうなメッセージを残すのはやめてくれないかっ!? 頭皮に来てるのか、抜け毛が多くなってるんだっ!!』



嫌です。それはそれ、これはこれ。報復はしっかりやらせてもらいます。そして、あと半年は続ける予定だから、いっそ全部髪の毛抜けて天然スキンヘッドになってしまえ。

・・・・・・何故か後ろの良太郎さんやモモタロスさん達の僕を見る目が微妙だけど、気にしない。



『クロノ、エイミィ、どういうこと? 私は何も聞いていないんだけど』

『アタシもだよ。休職ってなに?』

「・・・・・・それは私から説明します」

『ティアナさん?』





・・・・・・僕が話そうと思ってたのに、視線で制されて黙ってしまう。そして、そのままティアが全部の説明をした。というかティアとクロノさんとエイミィさんが。



そして、当然二人の表情が重くなる。





『・・・・・・そう、だったの』

『はい。なお、黙っていたのは局に入って欲しいと思っている二人に知られれば、どうなるか分からなかったからだそうです』



リンディさんの表情がさらに重くなった。というより、顔色が悪くなった。それから僕とティアを見る。・・・・・・その視線を受け止めつつ、頷いた。



『というより、僕も母さんやエイミィが家に戻ってからこの話を聞いて、本気で泣きそうになりましたよ。まさかそこまで追い詰められているとは思っていませんでしたから。
・・・・・・恭文、本当にすまなかった。出来ればあの留守録もやめて欲しいが、無理なら仕方ない。対価と思って受け入れることにする』

『まぁ、そういうわけで私とクロノ君は反対しないから。・・・・・・色んな所を旅するの、夢だったんだもんね。せっかく大好きになれる人達と出会って、行ってみたい場所が出来たんだもの。その人達と行って来なよ。
今度は守るためとか、助けるためとか、フェイトちゃんや私達のためとかじゃなくて、本当に自分のためにさ。あ、ただし・・・・・・お土産は忘れないようにね? 私達もそうだし、カレルとリエラや、みんなの分も』

「・・・・・・はい。あの、ありがとうございます」

『うん』



頭を下げてそう言うと、二人が微笑みながら頷いてくれた。それが、なんというか嬉しかった。

・・・・・・とりあえず、二人クリア。Sランクなクロノさんが敵に回らないのは大きい。これで可能性は大きく上がった。



『・・・・・・ダメだ。アタシは絶対許さない』

『アルフ、お願いだから納得してあげてくれないかな。恭文くん、本当に追い詰められてたんだよ?』

『だったら、ここに居て、みんなと一緒に考えればいいだろっ!? なんでそれでみんなから離れるような真似するんだよっ! どう考えたっておかしいじゃないかっ!!
なにより、フェイトはどうなるんだよっ! お前、フェイトが家族が居なくなることがどれだけ嫌か知ってるだろっ!? なのにこんな真似すんじゃないよっ!!』

「知るか、あんなバカのことなんざ」



・・・・・・瞬間、空気が固まった。なお、発言したのは僕♪



「僕が選ぶ僕の道だ。それを僕のために選択して何が悪い。てゆうか、バカじゃないの? 僕はフェイトのために選択する義理立てなんざこれっぽっちもない」

『・・・・・・お前、それ本気で言ってんのか? あんなにフェイトのこと好きだったろうが』

「ふん、そっちこそ本気でそんなこと言ってんの? いちいち昔の事持ち出してんじゃないよ。僕はフェイトのために自分の時間を犠牲になんざするつもりない。だから、誰が止めようが何と言おうが僕は行く。
もしも家族だって事で止めようとするなら・・・・・・んなもん、こっちから捨ててやるよ。それを免罪符代わりにあれこれ干渉されるのはもううんざりなんだよ」



うん、それが本心。・・・・・・欲しいものがある。絶対に諦められないものがある。無謀だって思っても、拭えなかったものがある。

きっと、ゴールのない道。足を踏み入れること自体がバカげてる。



「僕はアンタ達の言うように局員になんてなれない。組織を信じる事なんて出来ない。忘れる事も、下ろす事も出来ない。変わる事なんて、きっと出来ない。
僕は・・・・・・全部抱えて、そのまま突き進むことしか出来ない。その道を選んだ。選んで、進んできた。だからこれからも進む。それで一人になろうと、進み続ける」



だけど、止まらない。止められない。僕は・・・・・・嘘なんてつけないから。



『お前・・・・・・! 今まで散々お母さんやみんなに世話になっておいて、そんな言い方するのかっ!? 恩知らずもいいところだろうがっ! いいか、お前は変わって、場所は違っても、皆と同じ世界に居なきゃだめなんだよっ!!
それがお母さんやアタシ、そしてなにより、お前のことをとても大事に思ってるフェイトの望みなんだっ!! なのに、どうしてそれが分からないんだっ!? いい加減そのバカな勘違いはやめろっ!!』

「勘違いはどっちですかっ!?」

『うるさいっ! リイン、お前は黙ってろっ!! これはアタシ達家族の』

「黙るのはそっちですっ! あなた、リインをなんだと思ってるですかっ!?」



普段は絶対に出さないような声に、通信越しでも異常な何かを感じ取ったのか、あの人が黙る。そして、リインを見る。見て、目が見開く。



「あなたが家族なら、私は祝福の風であり、古き鉄・・・・・・恭文さんの一部ですっ! あなたなんか・・・・・・いいえ、誰であろうと、私を止める権利は存在してませんっ!!」



リインの表情が、今まで見た事のないくらいにキレてたから。



「居なくなる事が怖いっ!? そうですね、怖いに決まってますっ! でも、そのためになんで恭文さんが自分のやりたいことを諦めないといけないですかっ!!
どうしてそのために、恭文さんが自分の願いを捨てなきゃいけないんですかっ! もしそれが家族だって言うなら、そんな家族、私だって要りませんっ!!」

「もういいよ、リイン」

「でも」

「いいの。どうせ言っても分かるわけないと思ってたし」



うん、分かってた。だから一つ魔法を使う。

僕が忌々しいことにあの横馬から教わったものの一つ。それは・・・・・・『お話』。



「言っても分からないのに、話す必要ないでしょ? てゆうか、愚か過ぎて話が通じるわけがないんだから。・・・・・・主が主なら、使い魔も使い魔だし」

「あぁ、それもそうですね」

『・・・・・・お前ら、なんつった』



ほら、喰いついた。



『アタシだけじゃなく、今・・・・・・フェイトのこともバカにしたのか?』

「はぁ? 誰もバカになんてしてないだろうが。ただ、使い魔がこれだと主の程度もタカが知れてるだろうなという話をしただけだ。ね、リイン?」

「ですです。あなたが怒るのは勝手ですけど、勘違いはやめて欲しいですね。はた迷惑なのにも限度があるです。というか、そう言う風にしてると主の程度が更に低く見られるですよ? 使い魔失格もいいところです」

「つーか、バカじゃないの? そんな言葉だけで人をどうにか出来るとか思ってるなんてさ。あ、そっか。程度が低いからこそ、そういうガキっぽい真似しか出来ないんだ。納得納得」



だから、さらに表情を険しくする。・・・・・・くくく。いや、いいねぇこういう感覚はさ。

そうだ、僕はこういう感覚が好きだ。嫌いじゃない。ゾクゾクするね、向けられた殺気がとても心地いい。



『そう、か。あぁ、よく分かったよ。・・・・・・お前、勝手にしろ。もうアタシはお前がどこで野たれ死のうが知ったこっちゃない。家族だとも絶対に思わない。
でもな、フェイトは違う。フェイトはお前がそんな恩知らずでも、見捨てたりなんて絶対出来ない。アタシがどんだけ言おうと絶対にしない。だから・・・・・・止める』

「へぇ、どうやって?」

『決まってるだろうが。お前はどうもアタシが弱いとか思ってるらしいから、力ずくで叩き潰してやるよ。お前の両足喰いちぎってでも、六課に居させてやる。
いや、それだけじゃ足りないか。それで、局員になってもらう。そんな家族を泣かせるようなことしか出来ない夢なんて、捨ててもらう』



・・・・・・どうやら、使い魔と主というのは似てしまうものらしい。例えばこれがリーゼさん達なら、僕とリインの安っぽい挑発など受け流してしまうと思う。当のグレアムさんがその手のことに動じないんだから。

だけど、このバカは引っかかる。簡単だ、主であるフェイトがこの手の攻撃に弱いから。そういや、ずっと一緒に過ごしてきた相手の細かい癖とかがうつってしまうって言うのがあるけど、これもその手なのかも。



『ちょ、アルフっ! 恭文くんもやめてっ!! どうしていきなりこんな話になるのっ!?』

『・・・・・・止めるな、エイミィ』

『クロノ君っ!?』

『恭文、本気か? まぁ、僕はさっき言った通りだから手出しをするつもりはないが』



僕は、頷いた。・・・・・・話しても分かってもらえない。いや、もうそんなのめんどくさい。

だから、道を切り開く。何が何でも、絶対にだ。



『・・・・・・分かった。まぁ、アレだ。また飲みに行くか。今度は下手をすれば兄ではないが、それでも友としては飲めるはずだ』



とりあえず、理解者足る兄に感謝である。それでもこのままで居てくれるというのだから、ありがたい。



『フェイトを泣かせるなら、誰であろうと敵だ。恭文、お前の道が間違ってるって、分からせてやるよ』

「・・・・・・やっぱり勘違いしてる」



そのまま画面の中の『敵』を睨む。それだけで、その中の小さな女の子は目を見開いた。



「お前と僕とじゃ、格が違うんだよ。・・・・・・来るなら来いよ、ただし、負ける・・・いや、壊される覚悟決めてこい。
もう二度と邪魔なんて出来ないように、立ち上がれないように、徹底的に破壊してやる」



あざ笑いながらそう言うと、通信が切れた。・・・・・・うーん、なんの断りもなく切るとはマナー違反な。フェイトの教育がなってないね。



『あなたが挑発し過ぎるからよ。・・・・・・どうするの? 私はアルフを止めるつもりはないわよ』

「言いませんでしたっけ? 破壊するって」

『・・・・・・本気、なのね』



もちろん。じゃなきゃ、こんな真似するわけないし。

で、どうします? もう一人くるならそれはそれでいいですけど。



『あいにく、そのつもりはないわ。・・・・・・保護責任者として、あなたの心情や道理を無視して、勝手な感情を押し付けていたのは明白ですし、これ以上私が何か言う権利は無いわよ。
というよりね、今ものすごく反省してるの。家族と言う免罪符・・・・・・あなたのあの言葉、中々にキツイ言葉だったわ。もうグサっと刺さったもの。それはもうグサッと』



まぁ、リンディさんは納得してくれた様子なのでありがたい。これでまた勝率が上がった。

ただ、お願いだから泣き真似はやめて欲しい。普通に泣き真似はやめて欲しい。



「恭文君、本当にいいの? 旅に出るなら、あんな喧嘩腰のやり方じゃなくて、もっとちゃんとした方法があるんじゃ」

「良太郎、それはもう無理っぽいよ。さっきのアルフさんの対応見てたでしょ? フェイトさんが悲しむから、離れちゃダメなんて無茶苦茶な理屈、子どもだって言わないよ。
完全に恭文のやりたいことや通したい事を無視だし、理解しようともしてない。あれを釣り上げて納得させるのは、そうとう難しいって。ちなみに、僕もごめんこうむりたいなぁ」

「そう、だね。うん、確かにあれは僕もちょっと・・・・・・」

『だからって、力ずくで納得させるというのも、本当ならダメな方法なんですけどね。・・・・・・でも、私も野上さんと同じでもう一度聞きたいわ。本当にいいのね?
アルフはあんな感じだから、きっと今すぐにでも力ずくで来るわ。あの子にとってフェイトが悲しむことは、世界の終わりレベルでの出来事ですもの』



でしょうね。よく知ってますよ。



『そして、あなたが局に入らず、ヘイハチさんと同じように旅に出ることは、フェイトがずっと恐れていた事。ようするに、悲しむ要因をたっぷり含んでいるもの。
絶対に、止めようとするわ。どんな形であれ、負ければアナタは局の一員にされる。その辺りのコネクションは、今のアルフにだって無いわけじゃないもの』

「負けなければいいだけの話でしょ。問題ありませんよ。てゆうか、そんなアルフさんを納得させる言葉・・・・・・あります?
僕、主であるフェイトを納得させられるかどうかも相当微妙なのに。というか、それも無理っぽいんです」

『・・・・・・フェイトも、同じ意見なのね?』

「使い魔と主ってやっぱり似るんですかね。フェイトには現実から逃げてるって言われました。現実はここで、その中で自分やなのは達と考えてみようと」



・・・・・・悪いけど、それは無理かな。だって、もう腹が決まったし。



『そう。それはまた・・・・・・あぁ、私の教育の仕方が間違ってたのかしら。フェイトもそうだけどアルフも。
普段は大丈夫でも、こういう時に昔の事があまりに尾を引き過ぎているんですもの』

「かも知れないですね」

『ねぇ、出来れば否定して欲しかったんだけど』



だって、フェイトが出自関連でメンタル面弱いのは相変わらずですし。リンディさんだってJS事件の時のアレ、知ってるでしょ?



『そこを言われると弱いわ。うぅ、やっぱり色々と間違えていたのかも。・・・・・・あのね、恭文君』

「はい」

『もし、もしもよ? 私とあなたが家族じゃなくなったら・・・・・・』





家族じゃ、なくなったら・・・・・・?





『私、現地妻ズに立候補していいかしら?』










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?










「なんですか、それ」

『あの、母さん。それは一体』

『だってー、シャマルさんやすずかさん、美由希さんの話を聞くに、あの組織の会合とっても楽しいらしいのよ。年に2回は温泉旅行に行くって言うし、定期会合もすごく盛り上がるって言うしー。
でも、私はあなたの保護責任者・・・・・・母親であったわけでしょ? それで入るのはまずいってみんなに言われて、今までは遠慮してたのよ。でも、そうでなければ私もその輪の中に入れるし』





とりあえず、通信を叩き切った。・・・・・・あ、なんか今まで空気だったクロノさんの分まで切ったけど、まぁいいや。もう役割は終えたんだし。



というか、現地妻ズってなにっ!? 僕そんな話一切聞いてないんだけどっ!!





「少年、現地妻とは・・・・・・あまり感心せんぞ?」

「お前、そんなもん作ってたんかい」

「青坊主、お前とりあえずハナクソ女2号に謝れ。な?」

「作ってないですからっ! 僕だって初耳なんですよっ!! ・・・・・・いや、ホントにですよっ!?」



や、ヤバイ。みんなが疑いのまなざしを向けてくる。怖い、すっごく怖い。

もっと言うとティアが怖い。僕、ティアの方見れないもの。



「・・・・・・恭文、大丈夫?」



でも、そんな中でリュウタだけは優しく声をかけてくれた。心配そうにこっちを見てる。

だから、僕は微笑みで返す。安心させるように、笑う。



「うん、大丈夫だよ。リュウタ。・・・・・・ちょっとゴタゴタしちゃうけど、安心して見ててくれていいから。リリカル式のトラブル解決法、見せてあげるよ」

「いや、あのムカつく小さい子じゃなくて、現地妻ズの方だよ」





言われて固まる。だけど、それだけじゃ止まらなかった。





「あ、それは私も心配です。なんだか名称からしてアウトっぽいですし。恭文ちゃん、あのアルフちゃんって子のことより、こっちを何とかするのが先じゃないですか?」

「・・・・・・あ、そっちね。うん、分かってた。すっごい分かってた。そうだな、どこから始めるべきだと思う?」

「とりあえず、ティアナちゃんの方を見ることからですかね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく夜。モモタロスさん達は隊舎に戻ったので、僕とティアとリインの三人だけ。そして、アルト。





まぁ、ティアとリインが二人でお風呂に入っている間に、僕はやらなきゃいけないことがある。そう、それはとっても大事なことだ。










「・・・・・・そんな組織を開設してたなんて」

『え、えっと・・・・・・本当に知らなかったのね』

「知ってたらわざわざかけ直したりしませんよ。よし、解散に追い込もう」

『それは無理だと思うわよ? 名称はともかく、健全な婦人同好会そのものなんですから。あなたが要因で集まったこととその名称と会員ナンバーを除けば、いかがわしい要因は0よ』

「なんつう性質の悪い組織なんだー!!」



夜、リビングで再びリンディさんに通信。で、現地妻ズという謎の組織についてもうちょい詳しく聞いてみた。聞いて・・・・・・マジで頭を抱えた。ありえない。無茶苦茶ありえないから。

しかもなんでリインが名誉会長っ!? 知ってて隠してたのが非常に謎だしっ!!



『あなたにバレたら間違いなくそういう反応を起こされるからよ。・・・・・・それで、アルフなんだけど』

「あぁ、果たし状が届きましたよ。メールで味も素っ気もない文面で」

『そう。ちなみにどこで?』

「明後日、六課隊舎の演習場で」



つまり、フェイトの前でやると。中々に頭に来てるらしい。そんなデリカシー0な真似をしてくるとは思わなかった。



『というより、あの子はもう局の業務自体とは関係ない生活を送ってるもの。そんなあの子のためにすぐに場所を用意出来るところなんて、そこくらいなのよ。
私やクロノ、エイミィはあなたの行動を認める姿勢を取ってるしね、多分、はやてさん辺りに泣きついたんでしょ』



納得しました。てゆうか、闇討ちすればいいのに。



『そんな真似をしたら、今度フェイトに迷惑がかかるもの。あなた、そんな真似されたら遠慮なく局に突き出すでしょ?』

「当然ですよ。喧嘩売ってくる『敵』に容赦するほど、僕は優しくありませんから」

『この場合、売ったのはあなたの方よ? まぁ、前後の色々な流れを無視すればだけど』



・・・・・・さてはて、どうなることか。一応はロートル組だけど、それだけで勝てるとは限らない。相手のテンションは異常なレベルまで上がってるだろうし。てゆうか、僕が上げた。

なにより、ロートルだけど現役のオーバーSも一蹴出来る人が姉弟子兄弟子に居る身としては、油断せずに行くのが正解でしょ。



『ところで、ティアナさんとはどういう感じなの?』

「・・・・・・微妙な感じです」

『あら、どうして?』



ほう、それを聞きますか。いいでしょいいでしょ、それならちゃんと答えましょ。



「現地妻ズの事でちょっとやりあったからですよ。僕は本当に知らなかったというのを納得してもらうのに、時間がかかりましたから」

『・・・・・・なんというか、悪かったわね』

「えぇ、本当に悪かったですね」



うぅ、なんとかして解散に追い込まないとまずい。非常にまずい。もっと言うと僕の身の安全が保障されない。



『・・・・・・実はね』

「はい?」

『私があなたに六課への出向依頼を出したのは、あなたの局への印象を少しでも変えたかったからなの』



唐突に話したのは、そんな言葉。そして、なんとなくだけど予想が出来た言葉。



『組織は、人よ。いい意味でも悪い意味でも、ずっと同じではない。どうしようもない部分があるのも確かだけど、そうじゃない部分・・・・・・組織を、世界をより良くしていこうとする人も居る。管理局に限らず、どこでもそう。
ただ、だから局に入ってもらうというのは、少し違うの。私ね、とにかくあなたに管理局の中で好きな人を少しでも増やして欲しかったの。そうすれば、さっき話したようにあなたの中の管理局という組織の印象も、少しはよくなるかと思って』

「よくなって、どうして欲しかったんですか?」

『うーん、そうストレートに質問されると難しいわね。そうね・・・・・・』



リンディさんは通信画面の中で右手を口元に当てて、少し考えて・・・・・・まず一言。



『ものすごく簡潔で、ありきたりではあるけどそういう人が居る部隊で働きたいと思う・・・・・・かしら。あ、これも局どうこうだけの話ではないわね。自分のやりたいこと、居たいと思う場所を見つけて欲しかった。
特に、居場所。もっと言えば、一生の仕事に出来るなにか。なのはさんのような教導官でもいいし、フェイトのような執務官、はやてさんのような指揮官・・・・・・そういう自分の天職と思える仕事を見つけて欲しかったの。もしくは、そう思えるきっかけを』

「・・・・・・すみません、無理っぽいです」

『やっぱり、管理局はあなたの理想を貫く場としてはふさわしくない? 執務官なんて、あなたの方向性や理想に合ってると思うんだけど』



少しだけ申し訳なく思いながら、僕は頷いた。

リンディさんはそのまま優しく微笑みながら『そう』とだけ、一言口にした。



「僕、組織の一員どうこうでは戦えないんですよね。イマジンの一件でそれがよくわかりました。六課の一員としてじゃなくて、個人として戦いましたから。
僕のなりたい形は、どうもそういう役職どうこうじゃないみたいなんです。良太郎さんやモモタロスさん達、侑斗さんやデネブさんに割り合い近い」

『私もあれからはやてさんに連絡を取って、改めて報告書も見させてもらったけど・・・・・・確かにそうなのよね。ティアナさんを助けるために、時間を守るために、あなたはただあなたとして戦った。
はやてさんも苦笑いしてたもの。結局、あなたはあなたで、自分や私がなんとか出来るレベルを超えてるって。でも、それがあなたの道なのよね。自由に、自分のために戦う。例え孤独でも、今を覆し、未来を消さないために』

「・・・・・・はい」



やっぱり、目指すは『魔法』が使える魔法使いなのかな。うぅ、凄まじく大変そうなのに。



『まぁ、そういうことなら仕方ないわね。きっとその道は、局員という柵の中では貫けないものだから。あなたの夢が、願いがそこにあるなら、局に入る道理は無いわ。
・・・・・・ただね、もしも局の中でやってみたいこと、興味があることが出来たなら、その時はいつでも相談はして欲しいの。今度は、ちゃんとあなたの力になりたいから』

「はい。あの」

『謝るのはなしよ? それは、むしろ私だもの。ごめんなさいね、ずっと・・・・・・苦しめてしまって』










それから少しだけ、リンディさんとあれこれ話した。これからのこととか、事件中良太郎さんやモモタロスさん達と会ってどう思ったのかとか。





なんだろ、僕・・・・・・今はすごく自然に話せてる。





もしかして、話して分かってもらうって、こんなに簡単な事だった・・・・・・のかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夜、ヒロと八神部隊長に呼び出され・・・・・・てゆうか、飲みに出た。





それで話を色々聞いたが、またとんでもないことになってるな。結局あのバカとそのバカを止めようとする使い魔二人で決闘と。





また派手にやらかすなぁ。さすがは我が弟弟子。










「いやいや、感心してる場合ちゃうでしょ。うちはシャマルが若干キレかかってるのがもう恐ろしくて恐ろしくて」

「あぁ、もしかしてシャマルさんが凄まじく機嫌悪そうだったのはそれが原因?」

「正解です。話聞いてると、恭文からそうなるように喧嘩売ったのは明白やから、アルフさんのせいやないと思うんですけど、シャマル的には対応そのものが不服らしくて」



お通しの枝豆をパクリと食べつつ、苦い顔で部隊長がそう言う。まぁ、なぁ。

てゆうか、ハラオウン家・・・・・・フェイトちゃんの使い魔ってなんか話聞いてるとフェイトちゃんバンザイ主義に聞こえるんだが、いいのかそれは。



≪使い魔的にはオーケーだろうけど、家族的にはアウトだよな。で、姉御、サリ、どうする?≫

「んなもん、やっさんに任せるしかないでしょうが。てゆうか、私らが口出しする道理がない」

「とりあえず、俺は医務室の準備しておくわ。・・・・・・あぁ、使い魔用の治療キットや魔力枯渇用の緊急補給剤もそろえておくか。傷の回復なら魔力供給の増加が1番いいだろうけど、フェイトちゃんに負担かかっちゃうだろうし」





明日とかじゃなくてよかった。明後日ならシャマル先生とも相談の上で準備出来るし。

しかし、今のやっさんとやり合おうなんざ自殺行為としか思えない。ヒロみたいな脳筋ならともかく、俺は絶対嫌だ。

もちろん理由はある。アイツがこういう喧嘩の売り方をする時は、大抵の場合、今の状況がもうめんどくさくなって全部ぶっ飛ばしたくなった時だけだ。



そんな状況で喧嘩を売った場合、相手にとっては死亡フラグも同然。・・・・・・フェイトちゃんの使い魔、下手すると消滅するぞ?





「やっぱそこまでですか? うちもヴィータもシグナムも、あとなのはちゃんもそこをめっちゃ心配しとるんですよ。でも、アルフさんもめっちゃキレててうちらじゃ止められんし」

≪そこまでですね、蒼凪氏は基本戦う時に躊躇いを持ちませんし。下手をすれば血の戦いと書いて血戦です≫

「あぁ、やっぱりそうなるんかぁ。始末書は嫌やなぁ。てゆうか、身内同士で殺し合いとかマジで勘弁やて」



頭を抱えて本気でうなるのは六課の部隊長。だけど、その威厳や凛々しさは今は微塵も感じない。てゆうか、フェイトちゃんはどうしてんだ?

フェイトちゃんが主なんだから、不服なら魔力供給を主の権限で消滅しない程度に抑えて言う事聞かせればいいのに。いや、それが無理ならせめて無力化とか。



「フェイトちゃんがそないなこと、身内に出来ると思います?」

「あの子は間違いなく出来ないね。そんなやっさんじゃあるまいし」

≪姉御、その発言はかなり問題だぜ?≫

≪思いっきり悪人扱いではないですか≫










いや、アイツを悪人かそうでないかと聞かれたら間違いなく100人中90人くらいは『悪人です』と答えると思うぞ。





しかし、どうなんだこれ? 俺達も鍛えているし、つい最近あんだけ暴れて錆び落としもしたからまさか遅れを取るとは思わないが・・・・・・。





下手すると、さっそくアレを使う事になるかも知れないな。










(その6へ続く)






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