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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース10 『ティアナ・ランスターとの場合 その4』



「・・・・・・ね、またしたくなってきたの?」



えっと、ティア。いきなりなに言ってるの?

これ冒頭一発目よ? 一発目からそんな発言はありえないって。



「いや、朝起きた時、アンタの」

「き、気にしないでっ! あれはその生理反応なんだからっ!!」





ホテルから二人で出ながら、そんな話をする。そう、今日は12月の26日。僕とティアはまぁ・・・・・・そうなりまして、それで一緒に目を覚まして、お風呂に入って、ご飯を食べて・・・・・・で、帰路に着くところ。なんだろう、朝日がまぶしい。



昨日、結局・・・・・・やめよう。数えると僕がいかに最低かという話になってくる。というか、ごめんなさい。





「気にするわよ。・・・・・・あのさ、もし我慢できないようなら、このままアンタの家でいいわよ? 痛いのも収まってきてるし」



そ、それはだめ。だってあの、まだ付き合ってないし、ちゃんと返事もして・・・・・・というか、出来ないし。



「私、夕べ言わなかった? こういうこともたまにはしていいって。ただの欲求の解消じゃなくて、私と気持ちを通じ合わせてくれるなら、別にいいわよ」

「でも・・・・・・」

「いいの。今は言葉じゃなくて、いいから。だから、お願い」



・・・・・・分かった。



「でも、今日はだめ。・・・・・・仕事あるんだしさ」

「それもそうか。たださ、我慢出来なかったら遠慮しなくていいから。うん、しなくていい」

「あり、がと」

「ん・・・・・・いいよ」










好きに、なりかけてる。でも、言えない。言わないんじゃなくて、言えない。





言おうとすると、怖いのが出てくる。もし拒否されたらと、そんな考えが出てきて、潰されそうになる。





どうしよう、言葉が全部じゃないけど、言葉にしなきゃいけないことだって、あるはずなのに。





そしてそれは、隣を歩く女の子に伝えなきゃいけないことのはずなのに。




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース10 『ティアナ・ランスターとの場合 その4』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、それから約1ヵ月後。・・・・・・うん、飛ぶのよ。すっごい勢いで飛ぶのよ。





僕は、ティアと通信やデートでお話したり、たまにその・・・・・・そういうコミュニケーションをしてみようかとティアに誘われて、それにストップをかけたりして、非常にごめんなさいな生活を送っていた。





送っていたんだけど・・・・・・どうやら、そのツケが来たらしい。





現在、六課隊舎の医務室のベッドとお友達になっています。










「やっぱりさ、釣りかけてるのに中途半端なことしてるのが悪いんだって。だからそうなっちゃうの。因果応報ってやつだね」

「そうやな。男としてもうちょいはっきりせんとあかんやろ」

「あぁ、ごめんなさい。真面目にごめんなさい。テレビの中のヒーローから言われると非常に反省したくなるのが不思議です」



先日、電王が来ました。で、ティアの記憶が取られたりネガタロスとガチでやりあったりして、なんとか勝ちました。なお、療養中なのでじっとしてるようにと言われたけど、結局いつも通りに飛び込みました。

結果、僕は二週間の安静です。あははは、神速使っちゃったしなぁ。そして本編以上に包帯だらけだしなぁ。



「でも恭文、真面目な話これからどうするの? 六課は居辛いんじゃないかな」

「そうやな。なんやかんやで今回のことかて、巻き込まれたも同然やろ。お前は動けるようになったら自宅に戻った方がえぇかも知れんなぁ」



・・・・・・ウラタロスさんとキンタロスさん、すごい相談に乗ってくれている。会ったばかりだけど、先生から僕の事をあれこれ聞いてて、その上六課に来てはやてや師匠から今の僕の状態を聞いて、親身になってくれているのだ。

そう言えば、今まではこう・・・・・・ほぼノリ全開で行動してたから気になってなかったけど、これからどうしよう。なんか、そう考えたらうちに帰りたく・・・・・・あぁ、やばい。これは普通に引きこもりの思考だ。



「うーん、でもなぁ・・・・・・」

「せっかくやから、このまま居たいとか考えとるんか?」

「はい」



一応は平気だし、辛い感じもないから、そうしたいなと。



「せやけど、心の病気っちゅうんは治った思うてる時が1番危ないって、シャマル先生やサリエルさんも言うてたやろ」

「金ちゃんの言う通りだよ。あ、それとも・・・・・・ティアナちゃんと離れるのが辛いとか?」

「それもあります」

「それも?」



まぁ、ティアの事はある。ティアは力になってくれたのに、僕はなれなかった・・・・・・とかさ。

ただ、それだけじゃない。僕が今の六課に居たい理由・・・・・・良太郎さんやウラタロスさん達、侑斗さんにデネブさんだ。



「なんて言うか、良太郎さんや二人もそうだし、リュウタや他のみんなとももっと話したいなと。・・・・・・僕のなりたい形の一つではありますから」

「・・・・・・そっか。まぁ、そうしてくれると僕や金ちゃんは助かるかな。リュウタもちょっと気にしてたしね」

「やっぱりですか?」

「やっぱりだよ。恭文が元々六課に復帰したのは、イマジン関係に強いって言うのがあったしね」



あぁ、そう言えばそうだった。そっか、事件が解決したから、僕がもう居なくなるとか思ってんだ。

別に問題ないのに。だって、六課に居なくても僕とリュウタが友達なのは変わらないし。チケットだってあるんだから、いつでも会いに・・・・・・あ、そっか。



「そっか。そうなん・・・・・・だよね」

「恭文?」



・・・・・・そうだ、それなら少しだけ、本当に少しだけ・・・・・・色んな事をちゃんと整理したうえで、やってみてもいいかもしれない。

僕がずっと思ってた夢の一つ。そのための切符は、もうあるんだから。今までちゃんと考えてなかったけど、もしかしたら本当に後は踏み出すだけなのかも知れない。



「それなら」

「それなら?」

「これからしばらくの間、僕もデンライナーに乗り込んでいいですか? ほら、無期限チケットはありますし」





・・・・・・あれ、ウラタロスさんもキンタロスさんもなんで黙るんですか?





「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

「なんやてぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

「ちょ、大きな声出さないでくださいよっ! 痛い・・・・・・耳痛いからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文がデンライナー乗ってしばらく旅に出る言うてるんですかっ!?」

「そうなんですよ。あんまりに前振りなしな発言だったんで、もう僕も金ちゃんもビックリしちゃって」

「で、でも・・・・・・あの、事件は解決したし、ヤスフミが今ここでそうする理由はないと思うんですけど。それなら、自宅休養とか」



もし、出来るようなら六課に復帰して欲しい。解散まで目前になってはしまったけど、みんなヤスフミに戻ってきて欲しいと思ってくれてるから。

ちゃんとここに居場所がある。局の中にだってヤスフミを否定せずにちゃんと認めてくれてる人達は居るんだって、知って欲しいのに。



「俺らも最初はそう言うたんや。でもな、なんや『旅の中で自分のなりたい形にどうすれば近づけるのか、考えてみたい』言うてるんや。
まぁ、俺らはえぇんや。リュウタも喜ぶやろうし、オーナー的にもチケットあるからな。乗車拒否言うことにはならん。ただ、嬢ちゃん的にはそうやないやろ」



一連の事件が解決した翌朝、ウラタロスさんとキンタロスさんが部隊長室にやってきて、そんな話をした。私もはやても、あとその場に居たなのはにシグナムにヴィータもあっけに取られるばかりだった。

た、たしかにチケットあるし、そうしても問題はないんだろうけど、えっと・・・・・・あの、でも待って。いくらなんでもいきなり過ぎるよ。ヤスフミ、一時的にだけど復帰して、いつも通りな感じになってたのに。



「アイツはまた・・・・・・」

「まぁ、理由は大体察しがつくがな」

「だな」

「あの、ヴィータちゃんにシグナムさんもどうしてそんな分かったような顔してるんですかっ!?」



そ、そうだ。そこが分からない。私達はかなり混乱してるのに。



「いいか、アイツのなりたい形は、多分良太郎さんや桜井侑斗さん、あとモモ達に割り合い近いんだよ。正確じゃねぇけどすごく分かりやすい言い方をすると、正義の味方ってやつか?」



正義の・・・・・・味方。



「じいちゃんや良太郎さん達みたいに、自分が守りたいものを守るために、助けるために真っ直ぐに進める。それが、アイツのなりたい自分なんだとアタシは思う。
ここ数ヶ月のこともそうだし、今までのことを見てても分かるだろ。アイツが局員になりたがらないのは、局の中では無意味な柵のためにその意思を貫けないから・・・・・・ようするに局は真っ直ぐじゃないからだよ」

「だからこそ、ここ数日アイツはとても楽しそうだった。ヘイハチ殿以外で、自分のこうありたい、こうなりたいという形が目の前に現れたわけだからな。
なによりテスタロッサ、アイツの元々の精神状態を考えてみろ。アイツは周りに存在する大半のものに否定され、それらに失望し、疑いを持っている状態だったんだ」

「だから、今居る場所にこだわる理由が無い。だから、このままデンライナーに・・・・・・。でも、それは」

「まぁ、逃げ言われたらそれまでやな」



はやての言うように、目の前の現実から逃げてる部分もあるんじゃないかって、私は思う。

というより、そうとしか思えないよ。いくらなんでもこれは・・・・・・。



「でもな、フェイトちゃんになのはちゃん。アイツから見て、その『なりたい形』を貫ける道が局や六課の中に無いんもまた事実やろ。もしあるんやったら、アイツは休職なんてする必要ないで?
アイツは疑っとるんよ。ここでは、自分の想いや理想は貫けないってな。そして、それは悲しいかな事実や。例えば局は『局員』を求めとる。今ヴィータが言うたような形は必要ない。二人かて知っとるやろ」



なのはと私は顔を見合わせて、苦い顔をする。うん、知ってる。はやての言うヤスフミのなりたい形に1番近いであろうヘイハチさんが英雄と称えられる一方で、組織人として失格と酷評もされていることを。

だからこそ、今の母さんやアルフ、そして以前の私はヤスフミに局員になって欲しい。ヘイハチさんと同じにはならなくていいと思ってた。家族がそんなことになるのは嫌だったから。



「でも、アイツはそれになれんし、その立場になりたいとも思わん。組織や世界の都合で動くんは、そのなりたい形とは程遠いからや」

「それは、そうだけど・・・・・・。でも、これは納得出来ないよ。これだと恭文君、本当にそのままデンライナーに乗ってもう戻ってこないかも知れないし」

「それなんよなぁ、アイツ前に言うてたもん。いつかヘイハチさんみたいに、色んな所を旅してみたいって。
もうそのための切符とチャンスがあるし、ティアの事除いたらまじで他にはここにこだわる理由がないもん」



そう、なんだよね。これはヤスフミにとってずっと持っていた夢を、自分の望んだ最高の形で叶えられる本当に最初で最後のチャンスかも知れない。

でも、だめ。やっぱり納得出来ない。そうして一人になって、それで本当にいいのかどうか、疑問に思う。だって、ここにだってちゃんとヤスフミの居場所があるのに。みんな、居て欲しいと思ってるのに。



「だがテスタロッサ、そうやって蒼凪の本当の気持ちを縛り付けるのも問題だ。そんなことをしても、アイツは元の状態になど一生かかってもなれない」

「んなことして今度なにかあったら、マジで何も言わずに失踪して、そのまま一生会えない可能性だってあるぞ? それもどうなんだよ」

「そう、だよね。ヤスフミ、本当に局や局員が嫌いになったみたいだから」



今までとは違う、決定的な決別というのかな。そういうのが見える時がある。ヤスフミはもう、管理局や局員に対して、組織やそんな立場に対して、何も期待してない。

私の補佐官をやってくれるという約束は反故にしてないみたいだけど、それだって私が友達で、仲間で、家族だからなんだ。そうじゃなかったら、きっと・・・・・・。



「・・・・・・どうしましょ。正直、僕達も止めた方がいいんじゃないかとか良太郎やボクちゃんも交えていろいろ協議してまして」

「あー、すみませんね。うちのチビスケが色々と問題起こしてもうて」

「いや、それは問題ない。アイツはリュウタの友達やからな」

「えぇ、問題ないですよ。ただ、問題ある人も居ますから。一人はティアナちゃん。そしてあと・・・・・・」



ウラタロスさんが私を見る。いや、みんなも。

うん、あとは私・・・・・・というより、ハラオウン家のことだ。



「私、少しヤスフミと話してみる。さすがに家族としては話さないわけにはいかないよ」

「そやなぁ、一度話した方がえぇかも知れんな。ただし、わかってるとは思うけどアイツの病気は治ったわけやない。
下手な否定や衝突は症状もそうやけど、事態を悪化させるだけ言うのは、忘れんようにな」

「・・・・・・うん」










どうすれば、いいんだろ。





どうすれば私はお姉さんとして、ヤスフミの中の疑いを晴らしていけるんだろ。





どうすれば、私がヤスフミにしてもらったように、ヤスフミがかけられた言葉を嘘にしていけるんだろう。





世界や今居るこの場所は、ヤスフミが思ってるよりもずっと優しくて、明るいもののはずなのに。ヤスフミの中にある夢や希望は、ここに居たとしても、私達の側に居たとしても、持っていて許されるものなのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・え、そこまでもめてるんですか? 何気なく言ったのに」

「うん。デンライナー組だけじゃなくて、なのはちゃん達も大騒ぎだよ」

「つーか、当たり前だ。お前の状態でそれやると洒落効いてないんだよ」



医務室で本を読んでると、サリさんとヒロさんと来て、いきなりこんな話になった。

原因は一つ。僕が何気なく言ったリアル『デンライナーの車窓から』発言。うー、確かに言った後の反応があれだったから気にはしてたけど、やっぱそうなるのか。



「で、真面目な話本気なのか?」

「・・・・・・結構」

「お前なぁ」

「ただ、条件がつきますけど」



ティアとのことやうちの『家族』のこと、どうしていくか決めてからだ。

そうじゃなきゃ、ただ逃げてるだけだもの。それを決めて、その上で行きたかったら・・・・・・かな。



「あ、ちゃんとしていこうって気持ちはあるんだね」

「ならいいが、具体的にはどうするんだ?」

「・・・・・・とりあえず、告白とか」



今回の事で、その・・・・・・ティアのこと好きになってるのははっきり自覚したし。

うん、まずティアのことでちゃんとしなきゃいけないのはそこかな。今までが中途半場だったんだし。



「で、うちの家族に関しては・・・・・・もう縁切っていいですかね」



結構真面目に言うとヒロさん達が苦い顔をした。うーん、やっぱまずいか。

確かに僕もこれはなぁ。切り捨ててどうこうなんて、僕の主義に反するし。



「いや、さすがにそれは・・・・・・」

「まぁ、これは最悪中の最悪の手段ってことでいいだろ。とりあえず、普通に旅に出るのを話して、それで揉めるようなら・・・・・・もうやっちまえ。
リンディ提督やフェイトちゃんの使い魔が家族って免罪符でそこまで言うんなら、その札自体無効にしたっていいだろ。いくらなんでもお前の意思を無視し過ぎだ」



ただ、それはあくまでも最終手段。理想は普通に話して、納得・・・・・・してくれないだろうな。きっとここに居ろって言われるに決まってる。もう分かってる。

なりたい形は六課の中で、局の仕事の中で探せばいいって言われるに決まってる。もう分かってる。



「でも、旅に出るってどれくらい行くつもり?」

「とりあえず、今からなら2ヶ月とかそれくらいですか? フェイトとの約束もありますし」



あー、そうするとフェイトとも話さないと。やることたくさんだけど、それでもなんだろう。

こうやって話して具体的なものを固めていくと、行ってみたい気持ちが強くなってくる。



「あ、そんなに長くないんだね。とりあえず、今ある環境から離れて考えてみたいってわけ?」

「はい」

「でも、きっとみんな寂しがるぞ? フェイトちゃん達やスバルちゃんは言わずもがなだが、他の部隊員だってお前が戻ってきてくれてそうとう嬉しがってたからな。
お前が居たのは実質1ヶ月ちょいだが、それでもみんなの中にちゃんと居場所があるんだよ。そして、全員そのままのお前でいいと思ってくれている」





そう、なのかな。それでもここはやっぱり管理局の1部隊で、今回のは本当に特殊で、みんなはそこの局員で・・・・・・うーん。だめ、やっぱりここ自体にはあんまりこだわりが持てない。

元々そういうのが嫌いってのが大きいけど、フェイトやみんなみたいに六課ここに思い入れが持てない。あくまでも、ただの仕事場。仕事のために来ていただけの場。それが僕にとっての六課。

その中に居場所があって、居てもいいって言われても、ずーっと居る理由が見つからない。それに手を伸ばす意味がわからない。もちろん、別に嫌いとかじゃない。



ただ・・・・・・特別、好きでもない。なら、僕の居場所は、僕はどこに居れば、いいんだろ。



あぁもう、イライラする。色々決着つけられそうな感じがしたのに、ゴールが遠くなったように思うもの。





「デンライナーや良太郎さん、桜井侑斗って言うお前が憧れてた形が現実のものとして、目の前に現れたせいだろうな。
遠かったものが、世界は違うけど一つの現実としてある。それを知って、今までのものとどちらがいいか悩んでるんだよ」

「・・・・・・それだと僕、最低ですよね」



みんなは必死に助けてくれようとしてたのに。ティアやリイン、シャマルさんに至っては、自分の全部で僕を受け入れて、認めて、傷を癒してくれようとしたのに。

僕、簡単にそれから別のものに乗り換えようとか考えてる。やっぱり、最低だ。・・・・・・そう思って、俯く。



「でも、それでいいんじゃないのか?」

「え?」



俯きかけていた顔を上げると、サリさんが僕を見ていた。いや、ヒロさんもだ。



「元々、リンディさん達ハラオウン家の言うように、局の事だけにこだわるのが間違いなんだよ。お前の今やってみたいことがここにないと思うなら、それがある別の場所へ行ったっていいだろ。
なりたい形がお前の今見えている世界に無いのなら、今まで知らなかった別の世界へ足を伸ばして、時間がかかってもいいから探しに行けばいいだろ。旅ってのは、そういうもんだ」

「そうだね。それが結局無駄足でさ、やっぱりフェイトちゃんの補佐官やることになったとしても、そうじゃなくても管理局の中にあったとしてもそれでいいじゃん。
アンタがそうやって自分の足で歩いて探していった時間は、絶対に無駄になんてならないよ。きっと、それからのアンタを支えてくれる力になる」



別の場所へ行って、別の世界へ足を伸ばして探す・・・・・・。



「行ってみたいんだろ? 自分の知らなかった世界へ」

「・・・・・・迷ってます。それも、かなり」



なんだろう、逃げかも知れない。だめなことかも知れない。

だけど、やっぱり胸が高鳴る。六課に居る時には全く感じてなかったドキドキが、心と身体を支配する。



「だけど、行ってみたいんです。それでもいいから、行きたいんです」

「なら、考えるだけ考えなきゃ。このままフェイトちゃん達の意見を尊重しても後悔するだけだし。たださ、マジな話ずっとはだめだよ? 今の状態だとそのままズルズルな感じになるだろうし、どっちにしろ六課解散直前までには一度帰って来た方がいい。
あと、今アンタが自分で言ったようにティアナちゃんとの事や家族の事、どんな形でもいいから決着をつけてからだよ。その二つが出来るんなら、私らはなにも言わないよ」

「ヒロさん、サリさん・・・・・・」



それで、いいのかな。本当にそれで・・・・・・。



「いいの。アンタ、今まで自分以外の誰かの時間を守るために必死だったもの。リインちゃんしかり、フェイトちゃんやなのはちゃん達しかり、ギンガちゃんしかり。JS事件の時はなんだかんだで世界までなんとかしようとした。
そろそろさ、自分の時間を守るために、それを先に繋ぐために、必死になったっていいんじゃないの? きっとアンタが先生から貰ったチケットは、そのために必要なものなんだよ」



貰ったと言うべきか、買わされたと言うべきか。でも、このチケットは大事なもの。僕を知らない世界に誘うもの。きっと、とても大事なもの。

だから、手放せない。このチケットに触れていると、幸せな感情が襲ってくる。未来への希望・・・・・・言葉にするとそんな陳腐な言葉に出来る気持ちで、胸の中がいっぱいになる。



「大丈夫、私らが誰にも文句なんて言わせないよ。だから、本当に気持ちが固まったなら、行っておいで。アンタの帰る場所は、しっかり守っておく」

≪姉御、たまにはいいこと言うな≫

「でしょ? ・・・・・・って、たまにはってなにっ!!」



・・・・・・まだ、迷いはある。だけど、決めた。それは行くことじゃない。真剣に考えてみること。知らなかった世界へ、行った事の無い時間へ、踏み出してみたいというのは、本心だから。

いろんなものを見て、探してみたい。自分の本当に今やりたいことと、なりたい形を。そうだ、それだって本心なんだ。嘘なんて、つけない。



「ヒロさん、サリさん」

「決まったか?」

「はい。とりあえず真剣に考えてみることだけ」

「うん、いいことだ。でさ、それを記念して、私からプレゼントがあるのよ」



・・・・・・え?



≪姉御、ボーイの症状を悪化させたのを気に病みすぎて、とんでもないもん作ったんだよ≫

「いや、あの・・・・・・えっと」

「まぁ、原因の一旦を担っちゃったからね。・・・・・・これ」



そう言ってヒロさんが取り出して僕に渡して来たのは・・・・・・え、これってゼロノスのベルトっ!? というか、カードまであるしっ!!

ま、まさか・・・・・・Den-oジャケットのゼロノス版っ!!



「ううん。元はそうだったけど、もう違う」

「え?」

「やっさん、カードホルダーのカードを見てみろ」



そう言われて、カードを抜き出す。・・・・・・あれ、色が違う。ゼロノスのカードは緑・錆びた色合いの赤・黄色なのに、これはオレンジと蒼になってる。というか、全部それで統一されてる。

あと、ベルトも同じくだ。本物のゼロノスのベルトはラインが緑と黄色なのに、このベルトのラインは今目の前にあるカードと同じ色合いに統一されてる。



「元々作ってたもんを改良して、やっさん用に調整したのよ。ようするに、新しいバリアジャケットだね」



・・・・・・え、どういうことですか。僕やっぱりまだダメなのかね。こう、頭の動きが鈍いのですよ。よく分からないのですよ。



「いいか、そのカードは魔力バッテリーだ。そして、そのベルトはそれを使用して起動するジャケット構築用デバイス。カードを挿入するとそのデータを読み込んで、ジャケットが装着される。もちろん、カードは一枚使ったらなくなる仕様だ。
けど、その分高出力なもんが出来上がるようになってる。魔力消費も増えたが、カード自体にかなりの量の魔力が込められてあって、それも併用してジャケットは維持する。あ、AMFの完全キャンセル化でも使えるんだぞ? もちろんそのための装備込みだ。このあたり、ヒロが相当頑張った」

「オレンジの面は通常ジャケット。で、蒼の面はリインちゃんとのユニゾン用ジャケットなんだ。使い方は言わなくても分かるよね? 蒼のユニゾン用ジャケットの方は、前々から八神家のみんなに相談の上で調整したの」

「それ、マジでまんまゼロノスじゃないですか。侑斗さん達に怒られますよ?」

「大丈夫、話して許可は取ってある。というか、取った。ちなみにオデブはすっごい嬉しそうだった」



どんだけ力押しっ!? てゆうか、もう僕が使う事決定かいっ!!

でも、ゼロノス・・・・・・なんかいいかも。これ、使ってみたい。



「お、表情が明るくなったね。やる気満々?」

「かなり。でも、これどんな性能なんですか?」

「まぁ、そんな装着して10分で魔力が切れるとか、Den-oジャケットみたいにそこまで突飛な感じじゃないよ。あくまでも普通のジャケットとして構築した。ただし」



・・・・・・で、詳しく話を聞いてぶったまげた。というか、普通にすごいってこれ。ヒロさんスカリエッティより天才なんじゃ。



「いや、まぁ・・・・・・そんなことあるかな? にゃはははははは」

「あの、ありがとうございます。大事に使います」

「うん、ならいい。で、ジャケットの名前どうする? デザインとかは私で勝手に決めちゃったんだけどさ」

「そんなの、決まってるじゃないですか」



そうだ、そんなの決まってる。これは、形を模しただけかも知れないけどあの人達のベルトなんだ。

だったら、その名前は決まってる。



「・・・・・・消えていくその一瞬に刻み込むのは、揺ぎ無い強さ。そして、このベルトはそれを貫き通す覚悟の証。なら、そこから生まれる姿の名前は当然」










僕が言った名前に、二人は納得してくれた。というより、やっぱりかと言う顔をしていた。





・・・・・・あぁ、これ早く試したいなぁ。すっごく試したいなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とは言え、試す前にやることがある。まずは、ティアだ。





医務室から出て・・・・・・訂正、出れないので、ティアを呼ぶ。だって、絶対安静期間は解かれてないし。なので、当然ジャケットも試せない。うぅ、それがちょっと悲しい。





ティアは、仕事が一段落した時間に来てくれた。なんかニコニコしてるのは、なぜ?










「・・・・・・いやね、アンタが隊舎に居るのが嬉しくて。で、何の用?」

「えっとね・・・・・・」



僕がどう話そうかと考えて言いよどむと、ティアが納得した顔になった。

そして、ちょっとしかめっ面になる。あの、なんで?



「あのさ、その・・・・・・まぁ、この間はかなり頑張ったとは思うのよ」



はい?



「私も最初は痛かったけど、もう最後は全然そんなことなくて、こう・・・・・・ちょこっとだけ感じるとか、そういうのが分かったたし」



・・・・・・はい?



「だけど、ここはまずいわよ。アンタも溜まってるかも知れないけど、私だってその・・・・・・あの、我慢してる部分があって」



バシっ!!



「痛ぁ・・・・・・! いきなりなにすんのよっ!!」

「それはこっちのセリフだっ! いきなり何の話してるっ!? てゆうか、ありえないからっ!!」



いや、自業自得だけど。何も言えないけど。でもそれでもツッコませて欲しい。これはありえないもの。



「とにかく、そういうことじゃない。・・・・・・えっとさ、ここだとムードが無いのでアレなんだけど」



だめだ、言い方がだめだ。ティアが『やっぱりそっちなんだ』という顔をして赤くなってるから。と、とにかく話を続けよう。

あんまり深刻な感じでやるからだめなのかも知れない。だから、こう・・・・・・いつもの調子でだ。



「僕も、ティアと同じだから」

「え?」



怖い。もし断られたらなんて、やっぱり考える。今までのティアの行動を考えるとそれはないってわかるけど、それでも相当やらかしてるから考えてしまう。

だけど、だめ。このままは絶対にだめなんだ。一歩、踏み出さなきゃ。



「・・・・・・前に、言ってくれたでしょ? 僕の事、好きになりかけてるって」

「あ、うん。・・・・・・え、同じって」



そう、だよ。



「僕も」

「ヤスフミ、今大丈夫かな?」










・・・・・・ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!










「あのヤスフミっ!? あの、ごめんっ! タイミング的に悪かったのは分かったからお願い、物は投げないでっ!! あぁ、花瓶はやめてー! ぶつかったら死んじゃうからっ!!」

「ちょ、アンタ落ち着きなさいよっ! いや、タイミング的にアレだったのはわかるけどっ!!」

「頼むから空気を読めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・で、何の用さ。いや、もうティアも戻ったから早く話してよ。





さっきまで必死で気持ち奮い立たせたのが全部おじゃんになったから、もう話せないしさ。ほんと空気読まないよね。










「あの、ごめん。というかお願いだから花瓶はやめて。本当に死んじゃうから」

「バカは死ななきゃ治らないのよ。知らないの?」

「それはひどいよっ!!」



やかましい。僕のイライラはクライマックスなんだ。これくらいは許して欲しい。

あぁもう、せっかく頑張ってたのに。ちゃんとしようと思ってたのにー。



「・・・・・・あの、それでね。ウラタロスさん達から聞いた。本当に、デンライナーに乗るつもり?」

「うん」



『まぁ、真剣に考えるだけ考えてみるつもり』・・・・・・と、付け加える。

そして、フェイトは悲しげな顔をした。それだけで言いたい事が分かった。フェイトは、止めるつもりだ。



「あのね、六課はだめかな。なりたい形に近づく方法を探していくなら、みんな協力する。もちろん私だって」

「だめ」



・・・・・・泣きそうな顔してもだめ。もう、気づいちゃったんだから。僕、特にここに居る意味や理由がないの。

ここに居ても、僕が見つけたいものは、探せないの。ううん、違う。今の僕じゃ有っても、気づけない。



「そんなに、行きたいの?」

「まぁ、とりあえず六課解散直前までは。・・・・・・ここ数日さ、色々あったけどすごく楽しかったんだ」



電王・・・・・・良太郎さんやモモタロスさん達に会えて、一緒に戦えて、納豆塗れな現場を見て失神したり、目が覚めたらティアとリインが二人とも僕の手を繋いでてなんか火花散らしてたから胃が痛くなったりとかあったけど、それでも楽しかった。

リュウタと友達になったりとかも嬉しかった。あ、ナナタロス大事にしないと。でもでも、本当に楽しい。まさかテレビの中のヒーローと仲良くなれるなんて思ってなかったから。



「それで再認識したの。僕のなりたい形は、やりたい事はこれなんだと。そして、余計に考えた。やっぱり現実的じゃないなと。
それでね、通す道、もしかしたら別のところにあるんじゃないかって、考えるんだ。あるかどうかわかんないけど、旅をして探したいなって、思った」

「・・・・・・ヤスフミ、それをただ楽しい時間の中に逃げようとしてるとは、考えられないかな」



その言葉が、胸を貫いた。なんだろう。心がすごい勢いで冷めていく。

指先に力が入らなくなっていく。・・・・・・うん、逃げてる。逃げてるね。知ってたよ、そんなの



「現実的じゃない願いなら、それを現実にしていく必要がある。そのためには、やっぱり現実の中に居るべきだよ。私は、ヤスフミの現実はここだと思う。答えもきっとここにある。
現実の中で、私やなのはにはやて、ヴィータ達やスバル達みんなと一緒に答えを探してみようよ。今は見つからないかも知れない。でも、きっと見つかるから」

「でも、デンライナーや良太郎さんもモモタロスさん達も、侑斗さんやデネブさんだって現実だ」



フェイトが息を詰まらせる。・・・・・・それでも、言葉を続ける。



「・・・・・・あの、ごめん。その、あの・・・・・・否定とかじゃないの。ただ、少しショックで」

「・・・・・・もういいよ。よく、分かったから。僕が願ってることは、欲しいものは、ダメなものばかりなんだよね。
だからフェイトもリンディさんもアルフさんも、他の皆も止める。もう、分かったからいいよ。もう、いい」

「違う、違うよ。傷つけたなら謝る。謝るから・・・・・・お願い、ちゃんと話していこうよ。私はただ、一緒に考えたいだけなの。だから・・・・・・」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なんとか花瓶で頭部を全力全開で叩かれるのだけは避けて、私は医務室を出た。ヤスフミと、ちゃんと話せなかった。あれから、ずっと私から視線を外して、言葉を発しようとはしなかった。

・・・・・・吐き出してしまった。そんなの認められない。絶対に行かせない。私も一緒に探すから、お願いだからみんなとここに居てと。

そうだ、そうやって否定した。今のヤスフミの気持ちを、知らない世界への憧れを踏みにじった。多分、あの時の母さんやアルフが、フォン・レイメイを殺した事を責めたのと同じように。





私、本当にだめだ。あの時・・・・・・スカリエッティに言われた言葉を、ヤスフミは否定してくれたのに。ヤスフミとの時間が、積み重ねたものが、一緒に作ったものライオットが、あの男の言葉の全てを嘘にしてくれた。

だけど、私には出来ない。私はフォン・レイメイの言葉を否定出来ない。嘘に出来ない。だって私は、フォン・レイメイの言うようにヤスフミを否定してる。ヤスフミと恋人になるという時間を、否定した。

それが遠因ではあるけど、現状に繋がっている要因。・・・・・・私は今、それを後悔してる。大好きなのに、大切なのに、力になれないから、後悔してる。





それだけじゃなくて、また・・・・・・傷つけたっ! 今のヤスフミは自分を、自分の気持ちを誰かに否定されるのが本当に苦しいって知ってたはずなのにっ!!





こんな事になるなら、求められるところか言葉を通じ合わせることすら出来なくなるなら、少しずつでもヤスフミの気持ちを受け入れていけばよかった・・・・・・!!





その後部屋に駆け込んで、泣いた。声を殺して、誰にも気づかれないように。仕方の無いことだと分かっていても、今更そんなことを言ってもどうしようもないと分かっていても、涙が、止まらなかった。





数分後、帰ってきたなのはに見られてびっくりされたけど、それでも止まらなかった。なんか、本当にだめ。私・・・・・・自分が嫌いになりそう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・告白、潰された。大事な話も連鎖で潰された。フェイトと喧嘩した」

「それでそんなにイライラ顔で不機嫌さんなのですか」

≪まぁ、笑って許してあげましょうよ。多分、今フェイトさんがあんまりに落ち込みモードなのは、そのせいですよ?≫



フルメンテからアルトとリインが戻ってきた。なお、フルサイズ。うー、医務室から動けないって辛い。なんかアグレッシブな感じになれないもの。

きっと読者はつまらないと思う。僕、今現在健全な意味で総受け状態だし。



「あはははは、でも正直理解はして欲しいな。だって、人が頑張ろうと思ったところで邪魔だよ? 正直三日間くらいナイトメア見るくらいのことはしていいと思うんだ」



あれ、なんでだろう。なんかすっごい涙出てきたし。てゆうか、悲しいんですけど。

嫌だ。なんで事件解決したばかりなのに、こんな・・・・・・。僕、どうしちゃったんだろ。フェイトにあんなこと言うつもりじゃなかったのに、言葉が止まらなかった。感情が、抑えられなかった。



「もう嫌だ。もう、嫌だよ・・・・・・」

「・・・・・・泣かないでください。あー、よしよしです」



リインが頭を撫でてくれる。それで、なんとか落ち着く。だけど、だめ。なんか・・・・・・だめ。



「・・・・・・でも、真面目にデンライナー乗るつもりですか?」

「うん。・・・・・・アルト、リイン。まだ本決まりじゃないんだけど」

≪一緒に行きますよ?≫



でも、正直逃げな部分はあると思う。そこは否定出来ない。それでも、いいの?



「いいですよ。リインもヒロリスさん達から少しお話を聞きましたけど、同意見なのです。本当の意味で自分のためだけにわがままになったっていいですよ。きっと許されます」

≪長い人生、そういう時間があってもいいでしょ。きっとそれは後で笑い話になります。いえ、私がします。こんな面白そうな話、ネタにしないなど私の芸人根性が許しません≫

「・・・・・・ありがと」

「大丈夫ですよ。それにそれに、リインもはやくあのフォームがやりたいです。そのためには、恭文さんと離れるわけにはいかないのです」



・・・・・・あぁ、ヒロさんがくれたゼロタロスのリインとのユニゾン用フォームか。確かにあれもかっこよかったなぁ。

ユニゾン用のジャケット、なんだかんだでずっとそのままだったし、新規一転な感じでいいのかも。



「ですです。きっと、それをやればいい感じで気分も変わって目の前の視界も開けるですよ」

「だと嬉しいよね」

≪でも、ゼロタロスってなんですか≫

「あ、ヒロさんとサリさんと一緒に考えて、名前つけたんだ。最初ヒロさんは鞘はナナタロスだから、ベルトはベルタロスとか言ってたんだけどね」



さすがにベルタロスはないから、新フォームにあやかってゼロタロスにしたのですよ。ゼロノスベルトだとパクリっぽいし。



≪パクリっぽいで言えばそっちも相当危険ですよ。しかし、またよくこんなものを思いつきましたね。
データを見せてもらいましたけど、カード型の魔力バッテリーの点だけでも、ギリ質量兵器のラインじゃないですか≫



あー、そうだね。魔法が使えない中で使えるものはイコール質量兵器って極論で指し示すと、そうなる。

まぁ、いいか。性能は折り紙付きで、なんかマンガみたいなパワーアップだしさ。あとあと、拍手でもアイディア来てたし。

カードなくなったらいつものジャケット使うことも出来るから、戦えなくなるというのもないし。でもでも、やっぱり楽しみだなー。早く怪我治したいなー。



あと・・・・・・気持ち、落ち着いたらフェイトに謝らないと。本当に、謝らないと。





「失礼しますっ!!」

「なぎさん、デンライナーに乗って旅に出るってどういうことっ!?」

「そうだよっ! 私達全員聞いて本当にびっくりしたんだからっ!!」

「・・・・・・ごめん、抑えられなかった」










・・・・・・えっと、その前に修羅場? てゆうかさ、怪我治ってない動けないとは言えこのパターン多すぎだって。





とにかく、慌てている三人と睨みまくってる一人に話した。色々考えて、少しの間ミッドを離れるかどうか考えることにしたと。










「・・・・・・ずっとじゃないの。ちょっと旅をして色々考えたいなと思って。本当に出てったとしても、一応解散直前には戻ってくる予定だから。だから、そんなにみんなが詰め寄る必要は無い。さ、というわけで帰った帰った」



なんか豆芝とちびっ子二人が泣きそうな顔になるけど気にしない。

今日の僕の状態は最悪なんだ。正直話したくないし人と関わりたくない。



「必要あるよ。ねぇ、どうしてそうなるの? そんなのないよ。だって恭文、せっかく戻ってきたのに。私、恭文にたくさん謝りたいことがあるのに」

「そうだよ。スバルさんと同じで私も」



え、キャロに謝るなんて感情があったの?



「ちょっとひどいよそれっ!!」

「だって、二代目魔王だし。魔王に涙と謝罪の感情なんて不要でしょ」

「私、魔王じゃないのに。というか、なぎさん本当にひどいよ。私、本当に・・・・・・」



・・・・・・泣かないでよ。まるで僕が悪いみたいじゃないのさ。



「恭文、今日なんだか僕達に冷たくない? さっきから言葉にトゲがあるし」

「さっきとっても大事な話をある空気を読まないバカに邪魔されてね。かなり虫の居所が悪いのよ。正直、もうリインとアルトと主治医シャマルさん以外の人と話したくないの」

≪冷静に話したいのなら日を改めた方がいいですよ? この人、相当イライラしてますから。あと、私は止めません。
理由は一つ。もう、休ませて上げて欲しいからです。そこに飛び込むなら、無意味な傷を背負うことくらいは承知して欲しいですね≫

「リインも同じくです。というか、みんないくらなんでも無神経です。恭文さんの病気、治ったわけでもなんでもないんですよ?」



そう言われて、全員がハッとする。そして、申し訳なさげに全員が僕を見る。

いや、一人を除いてか。睨むような視線が、実は困惑を押し隠すようなものだと、そこで気づいた。



「・・・・・・みんな、行こ? 今日話しても、きっと喧嘩になるだけだから。てゆうか、さっきからそう言ってたじゃないのよ。それなのにアンタ達は」

「あの、ごめん」

「私に謝らなくていいから、コイツに謝んなさい」

「うん・・・・・・ごめん」










・・・・・・うん、イライラする。ティアの言うように、きっと喧嘩にしかならない。





でも、イライラするのは人じゃない。自分のバカさ加減にだ。なんだろ、感情が上手くコントロール出来ない。ちゃんとしなきゃいけないのに、出来ない。





こういうの、しばらくなかったのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・私、どうすればいいのかな。力になりたいのに、なれないの。何もしないのが、出来ないのが、すごく辛いの。それだけじゃなくて、また傷つけた。
今のヤスフミのそうしてみたいという気持ちを理解しようともせずに、ただ否定して、居なくなってもう会えなくなるのが怖くて、そんな感情を押し付けて傷つけた。私、最低だ」

「あぁ、フェイトちゃん泣かないで」

「でも、でも・・・・・・」





・・・・・・恭文君、病気のせいもあるんだけど、本当にこれはひどいよ。フェイトちゃん完全に崩れちゃったし。

というか、私もショックだった。六課には居場所も、居て欲しいと思う人達も居る。みんな力になりたいと思ってる。

もちろん、私がフェイトちゃんに言い聞かせてるように、今の状態が状態だからそれがいいのかも知れない。恭文君にとってはここに居る意味がないかも知れない。



でも、そんなこと言って欲しくなかった。私も、泣きそうだよ。私達だって、恭文君に否定されたよ。みんなが居るこの場所は、私達の存在は、今の恭文君には必要ないって、否定されたんだから。





≪私が思うに、断って力になれないのなら、今からでも恋愛対象として見る努力をすればいいんですよ≫



そんな事をふと言い出したのは、胸元の相棒。



≪そうすれば口出しも出来ますし、彼もやけぼっくりに火が付いていい感じでハッピーエンドでしょう≫

「いや、あの・・・・・・レイジングハート? さすがにそれはどうなのかな。恭文君はティアと良い感じだし」

≪現状を見るに付き合ってる様子ではありません。言わば彼はフリーの状態。まぁ、付き合うのは問題としても、彼女以外の女性がアプローチをしかける分には大丈夫なのでは?≫



いや、さすがにそれは問題が・・・・・・あれ、フェイトちゃん?

さっきまでぐすぐす言ってたのに、黙ってる。というか、呆けた顔してレイジングハートを見てる。



「・・・・・・・・・・・・そっか、そうすればいいんだよね」



え?



「レイジングハート、ありがと。私、やってみるよ。今からでも、ヤスフミのこと男の子として見てみる」



えぇっ!?



「ちょ、ちょっとまってっ! フェイトちゃん落ち着いてー!! さすがにそれはダメだよっ! 恭文君のことバカにしてるのと同じだからー!!」



そ、そうだよバカにしてるよっ!? 恭文君は本気でフェイトちゃんの事が好きだったんだからっ!!

そんな恭文君に対して、気持ちが傾いたわけでもないのに、ただ現状を助けたいというだけで手の平返したようにそうするのなんて、失礼極まりないよっ! 私が恭文君の立場なら、今度こそ本気でフェイトちゃんのこと嫌いになるよっ!?



「じゃあどうすればいいのっ!? 私・・・・・・このままなんて嫌だよっ! 絶対嫌なのっ!!」

「お願いだから泣くのもだめー! というか、泣きそうなのは私だからー!!」

≪・・・・・・どうしましょう、私はさすがに冗談だったんですけど。というより、それを本当にやるのは男をバカにし過ぎでしょう≫

≪レイジングハート、頼むから学習しろ。Sirに冗談が通用するはずないだろうが。一体何年の付き合いだ。・・・・・・しかし≫



どうしたの、バルディッシュ。



≪いえ。・・・・・・彼にとって、本当にここに居る事がいい事なのかと思いまして≫

≪バルディッシュの言う通りですね。マスターや親しい人間はともかく・・・・・・いえ、その親しい人間にすら、彼のあり方を否定し、組織や世界のルールに契合しろと迫る存在が居ます≫



・・・・・・リンディさん達やその他の人達だね。



≪別にリインさんのように全肯定しろとは言いませんが、人の有り様は、結局その人間が決めることだと思います。マスターが教導官としての道を。フェイトさんが執務官としての道を決めたように。彼には彼の道がある。
それがヘイハチさんやあの騒がしくも強い方々と同じ道だと言うなら、私達はそれをまず認め、応援するところからなのではないでしょうか。そうでなければ、また傷を深くするだけです≫

「そう、なのかな。でも、みんな居るのに。ここには恭文君の居場所があって、居て欲しいと思う人達が居るのに。その人達の気持ちを無視してどこかへ行くなんて、絶対だめだよ」

≪・・・・・・少しキツイことを言えば、そもそもそこを理由に、マスター達と同じ場所・・・・・・六課に居なければならないという認識自体が間違っているのではないでしょうか。
その感情は、彼の可能性を狭める結果にしかなりません。と言うよりマスター、そうやって彼に六課に残ってもらって、どんな未来を選択して欲しいのですか?≫










レイジングハートにそう言われて、気づく。そうだ、私はただ一緒に考えていくこと、側に居る事だけ考えて、そこを考えてなかった。

ううん、考えてた。局の中にやりたい事がないかどうかとか。局がダメなら聖王教会とか、警防とか。

はやてちゃんが言ってたような形を100%じゃなくても、それなりに追いかけられる場所を探そうとしてた。でも、それはもう既に私達や恭文君の知っている領域。





もっと言えば、私達の世界の中。でも、もしもそこ以外で恭文君が本当にやりたいことがあったとしたら? もしも私達に頼る事で恭文君がそれに触れられないとしたら?





・・・・・・わからないよ。ただ頼って欲しい。力になりたい。一緒に考えたいだけなのに、それすら出来ないなんて。そんなの、わからないよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、全員日を改めることにしたらしい。なんかキャロに続いてスバルまで泣きそうだったけど、気にしない。真面目に今日の僕はイライラモードだ。





とにかく、もう時刻は夕方。疲れに疲れ切ったのでベッドに体重を預ける。・・・・・・もうだめ、限界。





あー、でも本当に疲れた。もう誰とも会いたくない。今日はもう僕の今後の行き先についてあれこれ言ってくれる方々とは誰とも会いたくない。










「というわけでシャマルさん、すみませんけど」

「えぇ、人払いはしておくわ。・・・・・・全く、フェイトちゃんもスバル達もちゃんと考えて欲しいわ。せっかく持ち直してたのに、症状が悪化してる」



ちなみに、小声で『私がいない間に許可を出したはやてちゃんにはしっかりお仕置きをしないと・・・・・・』なんて言ってるのが聞こえた。

はやて、ご愁傷様。てゆうか、今日のあれこれは全部おのれのせいか。よし、恨んでやる。



「シャマル先生、僕の症状悪化・・・・・・してます?」

「話を聞く限りはね。みんな今の恭文くんが、病気だと言うことを忘れてるとしか思えないわ。良太郎さん達のおかげで状態が持ち直しただけで、完治したわけでもなんでもないのに」

「ですよね。リインもちょっとプンプンです。うー、やっぱり早く家に戻るべきですよ」

「でも、今の身体の状態だとそれは許可出来ないのよね。もう少し診ておきたいし・・・・・・」



とにかく、今日は現在プリプリな医務室の女王のシャマル先生にお願いして人払いをしてもらうのだ。気分は保健室登校の子ども。

・・・・・・そう言えば、これはやったことなかったな。うーん、やっぱり家に戻ろうかなぁ。この調子だと良太郎さんや侑斗さん達とも話せないだろうしな。



「でも、その辺りギンガはしっかりしてるのよね」

「ギンガさん?」

「えぇ。あなたが休職してから、通信であなたの状態をよく聞きにくるの。自分にも原因の一端はあるから、力になれるならなりたいって」



そっか、心配かけてるんだ。でも・・・・・・やっぱり、傷つけるよね。

結局108にも入れない感じだしさ。なんか、ダメだな。



「まぁ、そのままずっとではないんでしょ? 例え旅に出るとしても、六課解散前には一旦戻ってくる。
というより、例のゼロタロスのカード補給やアルトアイゼンやリインちゃんの整備のためにも、ちょくちょく戻ってくる」

「はい。ヒロさんとも話してるんで、そこは確定かなと。チケットがあればどこからでも乗れますし」

「なら、本決まりになったら教えて欲しいな。私からも話すから、みんなには納得してもらいましょ? あ、それでもずっとはだめだから。私だって、寂しい。
本当だったらチケットを共有して恭文くんについて行きたいくらいなんだから。・・・・・・そうしちゃおうかな。どっちにしろ主治医は必要だし」



ちょっとっ!? 六課の仕事はどうすんですかっ! 僕はこんな状態だからまだ大丈夫ですけど、あなたそうじゃないでしょっ!!



「とにかくシャマルさん、僕はどれくらいで動けるようになります?」

「そうね・・・・・・今日は事情込みとは言えフェイトちゃんやみんなが回復の邪魔をしたわけですし、明日明後日はゆっくり安静かしら。
それで、絶対安静から面会謝絶にしておきます。そうすれば誰もこないでしょ。もちろん、私からもお触れを出します」

「すみません、そうしてくれると助かります」



・・・・・・でも、良太郎さん達とお話出来ないのは残念だな。特にモモタロスさん辺りの声が聞こえないと寂しくなる。

あれ、よく考えたらあんまデンライナー組出てないような。なんで?



「みんな、事後の調査に出てるから。残ったイマジンが居ないかどうかね」

「納得しました。・・・・・・ぬいぐるみを着てですか?」

「着てね。とっても可愛くて写真取ったから、後でデータを転送するわ」

「ありがとうございます」



うー、やっぱり外に出たいな。みんなの様子みたいな。でもでも、今日はいいや。今日は、ゆっくり休もう。

てゆうか、フェイトとその・・・・・・久々にやりあったから疲れた。なんか、だめ。気分がまた沈んできた。



「今は無理に全部をなんとかしようとしなくていいから。・・・・・・全く、本当に喜ばしい事なのに、どうしてみんなああなのかしら」

「そう、なんですか?」

「そうよ。先の事に目を向けだした事、そのためにやってみたい事が出来た。それは回復の兆しなの。無気力になりかけていた心が、動き出した証拠なんだから。
まぁ、フェイトちゃんやスバル達には私からフォローしておくわ。お小言つきでね。お医者さんとしては、今日のあの子達の行動は見過ごせませんから」



すみません。うー、なにからなにまでお世話になりっ放しで、なんとお礼を言っていいのやら。



「いいのよ。私はあなたの主治医なんですもの。・・・・・・それで、ティアとはどう?」



え、えっと・・・・・・あの、うぅ、また気分が沈んできた。



「ティアにも何か言われたの?」

「違います。・・・・・・ティアに、告白しようとしたんです」

「あ、そうなんだ。それで?」

「ちょうどいいタイミングでフェイトが空気読まずにやってきて潰れました」



あ、あの・・・・・・シャマルさん。どうして僕を急にギューって抱きしめるんですか? というかあの、なぜに泣く?



「・・・・・・フェイトちゃんには念入りにお説教しておくから、安心して。アレは自業自得だとも言っておくわ」

「え、えっと・・・・・・ありがとう、ございます?」

「うん」










きっと、シャマルさんには最後の疑問形は聞こえなかったのだろう。





だって、抱擁が深くなったし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・一応、面会謝絶ではある。





あるんだけど・・・・・・やっぱり、どうしてもちゃんと話しておきたくて、シャマルさんにアルトなりリインなり誰か置くことを条件に許してもらった。





そう、あの子だ。










「・・・・・・まぁ、さっきの話で一応納得はしたわよ。決定じゃなくて、本当にそれも含めて考えてるだけなんでしょ?」

「うん」

「六課に復職することも含めて・・・・・・よね」

「そう、だね」





そう、ティアだ。なお、またチャンスがあるかと思ってリインには退席してもらって、アルトに残ってもらった。



大丈夫、アルトは空気が読める子だ。大丈夫、大丈夫。





「特に六課に居る事にこだわりがあるとかじゃないんだ。局や局員が好きになったわけでもなんでもない。ただ、やっぱりみんな居るから」

「・・・・・・それ、こだわってるんじゃないかな。組織は人。その中で好きな人がたくさん居て、それに惹かれるなら、そこはこだわってるんじゃないかと私は思う」

「そういうもの?」

「じゃないかな。まぁ、あんまり確定的なことは言えないけどね」



・・・・・・なのかな。うーん、やっぱりこそばいいと言うか、違和感がある。

やっぱり、こういうのは好きじゃないらしい。というより、嫌いなんだと思う。



「でさ、さっき話そうとしてたことって、それ?」

「それも込み、かな。てゆうか、どこで知ったの?」

「スバルがどっからか聞きつけてきたのよ。でも、ホントごめんね。私も止めたんだけど、あの子達話さないとわかんないって全然聞いてくれなくて」

「うん、分かるよ。1発で分かった」



なんだろう、やっぱり落ち着く。・・・・・・一度そうなったからかな。通じ合える感じがする。前からしてたけど、もっと強い。

ティアも、同じかな。もしそうだと、嬉しい。



「でも、それだけじゃないんだ」

「・・・・・・うん」



ティアの顔が赤くなる。・・・・・・ドキドキするけど、大丈夫。言える。ううん、言いたい。あんな邪魔がもう入らないうちに、言いたい。



「僕、ティアのことが」

「おい青坊主っ! 面会謝絶ってまじかっ!?」

「恭文どうしちゃったのっ!? 面会謝絶って、なんでそうなるのか僕わかんないよー!!」





・・・・・・え?





「ちょ、先輩もリュウタも落ち着いてっ! 面会謝絶って言うのに飛び込んじゃだめだってっ!!」

「そうだぞ、お供その1に小坊主。邪魔をしてはいかん。早々に立ち去るのだ。・・・・・・少年、具合はどうだ? 私が直に見舞いに来てやったぞ。ありがたく思え」

「とか言いながらお前も入ろうとするんやないっ! 状況分かってないやろっ!?」





ぐいー!!





「こら、お供その3っ! 羽を掴むのはやめろっ!! もげるっ! 私の美しい羽がもげるー!!」

「あぁ、みんなだめだからー! シャマルさんに怒られちゃうよっ!?」










・・・・・・あははは。





あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!





あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!










「スターライト、ブレード」

≪Starlight Blade≫





いつの間にかセットアップしたアルトに、星の光が降り注ぐ。





『・・・・・・え?』





みんな見てるけど、気にしない。大丈夫、非殺傷設定だから、死にはしないと思う。





「バカっ! それはダメだからっ!! いや、分かるけどやめなさいっ! こんなとこでそんなもん撃ったら危ないどころの騒ぎじゃないでしょっ!!」

「あ、青坊主落ち着けっ! いや、俺達が悪かったから、その光がビュンビュンってのはやめようぜっ!! なっ!? もうどうにもそれからは悪い予感しかしねぇんだよっ!!」

「そ、そうだよっ! 僕達はイマジンと人間って違いはあるけど、話せば分かるからっ!! ね、そうだよねっ!?」

「亀の字の言う通りやっ! うん、君は出来る子やっ!! 俺は信じとるでっ!?」



だから・・・・・・!



「あの、恭文・・・・・・どうしてそんな怖い顔してるのかなっ!? というか、僕怖いよー!!」

「しょ、少年待てっ! 私は悪くないっ!! 私は悪くないぞっ!?」

「恭文君、お願いだから本当に落ち着いてー! というか、そのつや消しな目はやめてー!!」





撃って欲しくなかったら・・・・・・!!





「どいつもこいつも僕を邪魔するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










なぜ、なの。





うぅ、ただちゃんと言いたいだけなのに、どうしてこんな風に邪魔ばかりー!!





あ、でもツッコミのキレが戻ったから、本調子になってきたのかも。うし、そこはありがたいからすこーしだけ手加減してあげよう。










『手加減よりも撃つのをやめてー!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・このバカっ! どうしてアンタ達はそう空気読まないのよっ!!」

「いや、でもよぉ。いきなりアレでコレだし、金髪姉ちゃんは沈んでるし犬っ子達も泣いてたし、心配にはなるだろ」

「そうだよーっ! それにそれに、ティアナちゃんとリインちゃんにシャマルお姉ちゃんは普通にお話してるよっ!? あと、アルトアイゼンもっ!!」

「面会謝絶の意味はね、バカなアンタ達にも分かるように言えば、『お医者さんと許可をもらった人以外は会っちゃいけません』って意味なのっ! ティアナちゃん達は恭文君本人からも許可をもらってるから会えるのよっ!? 会いたいならまず許可をもらいなさいよっ!!」



うん、言ってる事は間違ってない。確かにその通りだよね。



「いや、ハナさん? 先輩とリュウタはともかく、僕と金ちゃんは止めようとしたし」

「そや。それやのにこのバカ鳥まで」

「バカ鳥とは失敬なっ! お前には主を敬う心がないのかっ!?」

「そんなもんないっ!!」



・・・・・・いや、ウラタロスとキンタロスは本当に止めようとしてたんだけどね。うん、かなり頑張ってたけど、モモタロスとリュウタロスの勢いがすごすぎて。

なお、ジークは普通に現れた。うん、すっごい普通に突然出てきたからビックリした。



「言い訳しないでくださいっ! もう完全無欠にハナさんの言う通りですよっ!!
恭文ちゃんが心配なのは分かりますけど、面会謝絶って書かれてるのに許可無しでそこに飛び込む人なんて、聞いた事ないですよっ!? ちゃんと考えてくださいっ!!」

『・・・・・・ごめんなさい』



ここは六課の食堂。ハナさんとナオミさんにすごく怒られ、モモタロス達は正座で反省中です。なお、あのスターライトという魔法は撃たれずに済みました。うん、僕もなんとか無事。



「それで野上、恭文君は・・・・・・」



・・・・・・デネブ。それに侑斗。二人も帰ってたんだ。



「まぁな。で、あのチビがなんかやらかしたって聞いたんだが」

「あ、ティアナちゃんがそばについてるから大丈夫。ただ、止まった後にすごい勢いで泣き崩れたんだけど」

「・・・・・・何があった?」

「さぁ・・・・・・」










『こく』・・・・・・なんとかがどうとか、『すきと』・・・・・・がどうとか言ってたんだけど。





うーん、なんだろう。










「あ、俺わかったっ! きっと、濃い目のすき焼きとが食べたいんだっ!! うん、そうに違いないっ!!」



ガッツポーズしながらすっごい自信満々に言ってるっ!?

けど・・・・・・ごめん、デネブ。僕は多分違うと思う。



「バカ、さすがにそれはないだろ。でよ、お前マジでアイツをデンライナーに乗せるつもりか?」

「いや、僕が乗せるというか・・・・・・」



僕、デンライナーのオーナーでもないしさ。僕に権限ないって。あ、ちなみにオーナーはオーケーを出してる。

『他の乗客の方々にご迷惑さえおかけしなければ、問題はありませんよ? チケットは持っているわけですしね』・・・・・・という感じで。



「まだ本決まりじゃなくて考えてる最中らしいし、シャマルさんの許可が取れるようなら、モモタロス達と一緒に話してみるよ。多分、そう言いだしてるのは僕達が原因だろうし」

「・・・・・・そうだな」

「でも、恭文君がデンライナーに乗ると、きっと楽しいだろうなぁ。というより、ゼロライナーに来て欲しいかも。一緒にお料理したり、洗濯したり」

「ばかっ! 勝手に変な計画立てるなっ!!」

「だって・・・・・・」










・・・・・・恭文君。僕達はみんな、君にそんなに憧れられるようなヒーローじゃないよ? 取りこぼした事だってある。どうにもできなかったこともある。





ううん、きっと君にはそんなの関係ないんだよね。ただ新しい事、新しい自分、探して始めて行きたいだけなんだよね。そのきっかけが欲しいだけなんだよね。少し、分かるよ。





僕もそうだから。君やスバルちゃんにティアナちゃん達を見て、新しい事、始めていけたらなって、少し考えてるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ティア。










「うん?」

「ごめん」

「いいわよ。もう落ち着いたみたいだし。てゆうか、あんなキレるなんて珍しいわね。やっぱ、色々溜まってた?」



かなり。だって、二度目だし。もう邪魔されたくなかったし。



「そうね。だから・・・・・・ここなわけだし」

「うん」





現在、僕とティアは僕の自宅に居る。そして、リビングのソファーにティアと隣同士で座って、その・・・・・・ドキドキしてる。

もう隊舎では話せない。もう告白なんて絶対に出来ない。シャマルさんに涙ながらに直談判して、帰らせてもらうようにお願いしたのだ。

良太郎さんやリュウタ、モモタロスさん達に黙る形になってしまったのが心苦しいけど、落ち着いてから挨拶することにする。



今日は隊舎に泊まりのリインと一緒にだね。





「たださ、なんか・・・・・・さっきまで感じていためんどくさい気持ち、全部吹き飛んだ。で、不思議と根に持ってないの。なんかこう『仕方ないなぁ』って感じ?」



なんか、嬉しいな。あんな風に心配してくれるの。申し訳ないのと同時に、とても嬉しい。

やっぱり、楽しい。逃げでもいいから、あの人達との時間を、終らせたくない。



「そっか。なんか、本当に良太郎さんやバカモモ達のこと、好きなのね」

「そう見える?」

「見えないと思う?」





それはないよね。だって僕、多分今も笑顔だから。





「それでね、あの・・・・・・」

「うん」



・・・・・・あれ、声が出ない。ちゃんと言いたいのに、形にならない。

なんで僕・・・・・・こんなに泣きそうになるんだろ。だめ、すごく怖い。



「・・・・・・恭文?」



やっと言えるのに。伝えられるのに。なのに、どうしてこんなになるのかな。

お願い、もう少しだけでいいから。勇気・・・・・・出して。



「落ち着きなさいよ」



ティアがそれだけ言うと、そっと顔を近づけて、唇を重ねてきた。本当に一瞬だけのキス。

それだけで、頭が真っ白になって、動揺が止まった。



「ここなら、どうあっても邪魔なんて入らないから。鍵は取り替えてるし、チェーンもかけてるし。なにより、私はちゃんと聞く。・・・・・・大丈夫だから」

「うん」



深呼吸する。一回・・・・・・二回・・・・・・三回・・・・・・。

そうして、落ち着いてきた。もう一度ティアを真っ直ぐに見る。見て、唇を動かす。



「ティアのこと、好き・・・・・・なんだ」

「・・・・・・うん」

「友達とか、仲間とかじゃない。女の子として、ティアのこと好きになり始めてる」

「・・・・・・・・・・・・うん」



だから・・・・・・だから・・・・・・!!



「僕と、付き合って欲しい」

「だめ」



・・・・・・うん、そうだよね。ダメだよね。僕、現状これだし、ダメに決まってるよね。



「なんか、ドキドキし過ぎて・・・・・・だめ」

「え?」



よく見ると、ティアの顔が真っ赤。というか、息が荒い。



「あのさ、さすがに私だって・・・・・・そこまで鈍くないわけよ。一回目のアレでもしかしたらってずっと考えてたから、こう・・・・・・溜まりに溜まっちゃって」

「うん・・・・・・」

「私はさ、前に言った通りだから。てゆうか、好きだからエッチした、わけだし。うん、アンタがいいなら、付き合いたい」

「本当に、いいの?」



僕、色々あるし、なにより今・・・・・・きっと普通じゃない。



「病気なんだもの。仕方ないでしょ? 少しずつでいいから治していけばいいから。私も手伝う。・・・・・・でも、ありがと」



ティアの瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。零れ落ちた涙を、右手で拭う。拭いながら、笑う。



「考えてくれて、声を聞いてくれて。私の事、見てくれて。私、すごく嬉しい。あのさ、これから・・・・・・よろしくね」

「うん、よろしくね」



・・・・・・どうしよう、なんか照れくさい。というより、不思議。ティアと話してると、さっきまでずっと感じてたイライラや情緒不安定なものが消えていく。

すごく、強くなれる感じがする。なんだろう、これ。やっぱり不思議だ。



「でさ・・・・・・」

「なに?」

「まぁ、今二人っきりなわけ・・・・・・じゃない? でさ、一応恋人同士にもなった」



ま、まぁ・・・・・・そうだね。えっと、つまりそういうこと?



「うん、そういうこと。てゆうか、アンタ全然手出してくれないから、ちょっと寂しかった。私、オーケー出してたわよね?」

「いや、さすがに男として付き合う前段階でそれは・・・・・・」

「まぁ、いいわよ。そういう所もいいなぁとか思ってたから。・・・・・・だからさ、もう遠慮しなくていいわよ。あ、でも避妊はちゃんとして欲しいな。今日は大丈夫な日ってわけじゃないし」



そこは大丈夫。箪笥の棚に一応・・・・・・準備をしてるので。

まぁ、ここも男の子の基本ですよ。いや、ティアとそうなってから必要かなと思って買ったんだけど。



「なら、私も明日は朝練とかじゃないし、シャマル先生から治療に協力して欲しいとも言われてるし」

「うー、でも恋人になっていきなりそれって問題あるような」

「大丈夫、なる前からそうなってたんだから」

「そうでした」










そのまま、笑い合いながら、ゆっくりと唇を重ねて・・・・・・ティアにソファーの上に押し倒された。





そして、文量的な問題で次回に行くわけです。





え、最中の描写? あははははは、書けるわけがないじゃないのさ。作者は諸々の事情でその手のリミットブレイクはダメなのよ。




















(その5へ続く)




















あとがき



古鉄≪最低ですよね≫

恭文「いやいやっ! 普通に告白してオーケーもらった後だからいいじゃんっ!!」

古鉄≪さて、ティアナルート04話ですよ。お相手はティアナさんルート版電王話を書いてみたくなった作者はバカだと思う古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「家族の問題とか今後の話とかの決着を考えると、もう2話くらい必要だと思った蒼凪恭文です。てゆうかさ、ギンガさんルートより短くするためにフェイトに振られた完全なIF話にしたのに、結局このノリってどういうことさ」





(パーフェクトヒロインだから?)





古鉄≪そうですよ、身体の相性までパーフェクトだったんでしょ?≫

恭文「その下品なセクハラはやめいっ!!」

古鉄≪あ、アンパーフェクトだったんですか?≫

恭文「だから変な造語を作ってまでセクハラするなっ!!
とにかく、電王クロス終了後からお話ですよ。うーん、新しいなぁ。IF二人目なのに」

古鉄≪これくらいしないとバリエーションの問題が出てきますから。だって、普通に考えて20人ですよ?≫

恭文「そんな居ないよっ!!」

古鉄≪なら、数えてみましょうか。現在のIFヒロインな方々です≫





(ギンガ・ティアナ・スバル・なのは・シャマル・キャロ・すずか・美由希・メガーヌ・ディード・ディエチ・フィアッセ・あむ・りま・歌唄・リイン)





恭文「ちょっとまって。なんでディエチとあむにりまと歌唄が居るの?」

古鉄≪いえ、とりあえず要望が来ていて目に付いたものをあげるとこうなったんですよ。高町教導官がいるのも、そこが理由です。なお、ディエチさんは現在(9月14日現在)人気投票で10以内キープですから≫

恭文「えっとさ、なんで? 僕との絡み少ないキャラじゃないのさ。なのはに至ってはサブキャラだし。
それもディードとかメガーヌさんとかすずかさんとか差し置いて。その上シュリンプカレーも差し置いて」

古鉄≪ビックリですよね。なんか組織的なアレが働いてるんでしょうか。まぁ、まだ15日ありますからどうなるかわかりませんけど。あと、あむさんもすごいんですよね。順位的にはシスターシオン抜きましたし≫

恭文「あぁ、本人すごいびっくりしてたよ。なんで自分この順位なのかってビビッてたから」





(そりゃあびびるだろ。まずなによりリリカルなのはのキャラじゃないし)





恭文「あとさ、まぁ歌唄とかりまは票数少ないんだけど、サリさんがすごいんだよね。トップ10維持してもう外れる感じしないし」

古鉄≪この話じゃなければすぐ死にそうなキャラなんですけど≫

恭文「そこは触れるのやめてあげようよ。本人かなり気にしてるんだから。・・・・・・でも、あむのIFって。りまのIFって。歌唄のIFって」

古鉄≪普通にしゅごキャラのキャラクターであって、リリカルなのはじゃないんですけど。でも、ヤバイですね。この調子で女性キャラがメインで出てくる話とクロスしたら、これ以外にも出てきますよ? 例えば・・・・・・≫

恭文「例えば?」

古鉄≪やる予定ありませんけど、ネギまだとクラス全員とか≫





(・・・・・・ありえそうで怖い)





古鉄≪銀魂で言うと、神楽さんやお妙さんはないでしょうから、さっちゃんとか月詠さんとか≫

恭文「やばい、リアルにありえそうなのが怖い。銀魂クロスした時にさっちゃんIFとか要望が来たら僕リアルに泣くよ? 月詠IFなんて来たらそのまま土下座するよ? 空知先生に向かってごめんなさいだよ」

古鉄≪そうですね、本気で謝るべきですよね。まぁ、四捨五入すればIFルート要望も20人行くということで≫

??「ちょっとまったー!!」





(謎の声がした。そして、突然入ってきたのは・・・・・・エース)





やや「ちょっとちょっとっ! こてつちゃんも恭文も、大事な人を忘れてないかなっ!?」

古鉄≪えー、そういうわけで本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でし」

やや「いきなり終了させるのだめー!!」

恭文「ぐ、ぐるじ・・・・・・くびをはなじで」





(というか、なにしてるの? いや、真面目に)





やや「あ、そうだ。自己紹介しないと。・・・・・・えっと、しゅごキャラクロスの方に出ている結木ややです。というか、しゅごキャラのキャラクターです」

恭文「そっか。では帰れ」

やや「いきなりそれはひどくないっ!?」

恭文「やかましいわボケっ! しゅごキャラクロスのあとがきでもなんでもないのにいきなり出てきたやつに言われたくないしっ!!
つーかこれティアナIFのあとがきっ! あむとかりまとか歌唄のIF話ならまだ分かるけど、そうじゃないのにおのれが出てくる道理がわからんわっ!!」

やや「あのさ、ややはちょっと通りがかかったのよ。通りすがりの赤ちゃんキャラなんだ」

恭文「え、僕の今の的確なツッコミを一切無視っ!?」





(・・・・・・のようです)





やや「で、見てみたらIFの話をしてる。そこはいいの。でも、気になる事がある。・・・・・・どうしてややの名前がないの?」

恭文「・・・・・・え?」

やや「だってだって、あむちーやりまたんに歌唄ちゃんはややと同じしゅごキャラのキャラクターでIF話が来ててさ。なのになんでややだけそういうのないのー? うー、不公平だよー。リインちゃんだって来てるのに」

恭文「そっかそっか。だからこれなんだ」

やや「うん♪」

恭文「アルト、いつものお願い」

古鉄≪はい。・・・・・・この、バカチンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!≫





(青いウサギ、吼える。それにエースがびっくりする)





やや「ほえっ!? なんでいきなり怒鳴るのー!!」

古鉄≪ハッキリ言いましょう。ややさん、あなたのIFエンド要望が全く来てないんです。あと、作者も書くつもりがありません≫

やや「え?」

恭文「名前を挙げてないのはそれが理由だよ。なお、理由としては『赤ちゃんキャラに手を出すとリイン以上にまずいと思う』・・・・・・だね。読者からもそういう意見しか来てないね。それも1〜2通だよ」

やや「・・・・・・え?」

古鉄≪ようするに、お友達的な立ち位置がピッタリなんですよ。ヒロインという感じではないんです。少なくとも、マスター相手では。
同年代ならともかく、真面目にダブルスコアいくかいかないかですし、それでそうなったら犯罪チックですって≫

やや「・・・・・・・・・・・・ぐす」





(あ、なんか泣き出した)





やや「ぴぇぇぇぇぇぇぇっ! みんなひどいよー!! ややだって、ややだってそういうのやってみたいのにー! 赤ちゃんキャラがヒロインだっていいじゃんー!!」

恭文「・・・・・・とりあえず、終っておこうか」

古鉄≪そうですね≫










(だけど、青い古き鉄コンビはひたすらに冷静だった。そのままカメラがフェードアウトしていく。
本日のED:中原麻衣『あなたという時間』)




















ティアナ「アンタ達、マジで容赦ないわね。ややまだ泣いてるし」

恭文「いいのよ。しゅごキャラクロスの後書きでもないのに突然来る方が悪い。と、というかさティアナ」

ティアナ「なによ。・・・・・・あ、もしかしてもう一回?」

恭文「そうじゃないわボケっ! 普通にベッドシーンは恥ずかしいねって話をしたいんだよっ!!」

ティアナ「あぁ、そう言えばそうね。でもまぁ・・・・・・あれよ、あれ」

恭文「なに?」

ティアナ「相手がアンタだから、まだ大丈夫。うん、大丈夫だから。もう恋人同士ではあるしね」

恭文「そ、そっか・・・・・・」










(おしまい)




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あきゅろす。
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