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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第15話 『あなたの魔法を『魔法』にするススメ』



空を見る。夜の闇を生み出し、星の輝きに満ちる空を。

ネオンの輝きのせいであんまり見えないけど、それでも輝きは確かに存在している。

見えないから存在してないなんて、間違いだ。





だって、星は確かに、そこにあるんだから。










「・・・ミキ、身体大丈夫?」





後ろから話しかけるのは女の子。なお、お風呂上りなのでピンクのパジャマで頭にタオルなんて巻いてる。



ボクは、ベランダの手すりに座っている状態で、首だけをその子に向ける。





「あむちゃん。・・・うん、なんとか。まだギシギシ言ってるけど」

「あはは・・・。実はあたしも。あと、恭文とエルも同じ状態らしいよ? さっきティアナさんからメールが来た。アイツがここまで疲労するなんて、一体何したんだーって聞かれたよ」

「やっぱり、持ち主以外とのキャラなりは体力使うみたいだね」



そのまま、視線を空に戻す。戻して・・・考える。



「なに考えてるの?」



あむちゃんがそのままこっちへ来る。僕は視線を動かさずに、声に答える。



「・・・今日の事」



思い出すのは、あの時の声。あの時触れた何か。



「恭文とキャラなりする直前にね、声が聞こえたんだ」

「声?」

「うん。少しだけ、ボクに力を貸して欲しいって。ただ、姿も見えなくて、聞いたことのない声だったから、誰のかは分からないんだ」



だけど、無関係じゃない。その声がした次の瞬間には、もう恭文とキャラなりしてたんだから。



「そっか・・・。一体誰の声だったんだろうね」

「わかんない。ただ・・・ね」

「ただ?」

「その声、不思議な感じだった」





星を見る。ネオンのせいで見えにくいけど、確かに存在する星の光を。





「優しくて、強くて、だけど、どこか悲しいものも含んでて・・・。それでね、恭文とキャラなりしてる時にも、同じものを感じたんだ」










もしかしてあの声、恭文の魔法が×たまを浄化したり出来ることに関係してるのかな。・・・ううん、してるんだと思う。理由は分からないけど、そんな感じがする。





真実は未だ闇の中。目の前には見えないこと、分からないことだらけ。





だけど、それでも・・・それらは確かに、ボクやあむちゃん達の前にあるんだ。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第15話 『あなたの魔法を『魔法』にするススメ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・夕方の空の色は、いつもどこか切ないものを含んでいる。





もしかしたら、あの茜色の空には、どこか・・・こう、人の涙腺に左右する何かがあるのかなと、ちょっと思った。





まぁ、今日はあいにくの曇り空だったから、特に関係なかったんだけど。ただ、ふとそう思ったのだ。





とにかく、そこは置いておくとして・・・。くそ、やっぱりこっちに残ればよかった。





つーか、あの性悪女は・・・!!










≪仕方ないでしょ、最近あなた活躍しすぎなんですから。てゆうか、負け知らずなんですし、出ない回があってもいいでしょ。というか、むしろ苦戦してください≫

「なに言ってんの、僕がトーシロー連中に苦戦する方が間違ってるでしょうが。
つーか・・・また猫男の時やら二階堂の時みたいなことになったら、今度こそマジなお仕置きが・・・!!」

≪・・・あぁ、それがありましたよね。確かに、トーシロー連中に遅れを取ると今度は模擬戦じゃあ済みませんよね≫





同業者ならともかく、さすがにトーシロー相手にこれ以上最初の時みたいな負けや弛んだ戦い方など出来ない。方針は『さぁち・あんど・ですとろい』なのだ。

もっと言うと、猫男とイースターの関係者には負けられない。絶対に負けられない。連中絡みは確実に『さぁち・あんど・ですとろい』なのだ

シャーリーがきっとヒロさんとサリさんにチクるから負けられない。従って、なにがなんでも誰が相手でもなんやかんやで『さぁち・あんど・ですとろい』なのだ。



僕はパワーバランスより、お仕置きの回避の方が重要なのだ。文句のある方は、何のチート能力も無しで一度砲撃魔法の雨嵐にさらされてみるといい。僕の今の気持ちが痛いほど分かると思う。





「というか・・・あぁもう、むかつくー! なんなんだよ、あのわがまま娘はっ!!」

「蒼凪さん、そこを言っても仕方ありません。というより・・それを言えば俺の作戦が根本的に間違っていました。
出来れば身内同士のゴタゴタは控えたいというのに、その火種を作ってしまったのですから」

「・・・ごめん」

「いえ、お気になさらずに」





拳を握る。・・・今日、放課後・・・学校に沸いてきた×たまを捕獲するため作戦が行われた。まぁ、簡潔に言えば担当はあむとりま。なお、人選は今回はキャラなり出来る二人に任せるというのが理由。

今日の×たま、相当速い動きをしていたから。で、僕は・・・ここはいいからゲリラライブを潰してくれと頼まれたので、リインと外に居た。結果は空振りだったけど。というより、ここ数日の間、ほしな歌唄のゲリラライブはピタリと止んでいる。

フェイトとシャーリーと咲耶がネット巡回で目撃情報なんかも調べたりしてるんだけど、先日の遭遇以来、さっきも言った通りピタリと・・・だ。こっちは一応警戒はしているけど、それと同時に楔はしっかり打ち込めたのかなと安堵もしている。



それで、話を戻すと・・・あむが×たまを屋上まで追い詰めて、りまが来たのを足止めという作戦。そうこうしている間にあむがオープンハートでフィニッシュ・・・ってのが流れだったのに、あのバカ、×たまを壊しやがった。

その上、あむがそれに対して意見しても聞く耳持たずでとっとと帰って行った。

あむ曰く『足止めなんてめんどくさい。×たま狩りが仕事なんだから、壊そうが浄化しようが同じ事』・・・と言ってたとか。



おかげで、直帰なリインと別れて、学校に戻ってきて海里に報告なんてした僕はどうにももやもやした気分で、再び学校を出ることになった。



時刻は、もう陽が沈みきったような時間。空は今の気分を表すように、あんまりいいお天気じゃない。





「・・・蒼凪さん、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なに?」

「そこまで浄化に拘らなくてもよいのでは? クイーンがジョーカーに対して言った事、決して間違いではないかと。俺達の仕事は×たま狩りであり、浄化は必須項目では」

「間違いだよ」



語気が鋭くなったのは、気のせいじゃない。だけど、止まらない。



「たまごの中には、壊れたら・・・簡単には元に戻らないものが入ってる。それを壊さずに返してあげるのと、壊して元に戻らないようにする。全然、違うでしょうが」



そう言いながら上を見る。上に広がっている鉛色の空を。これのおかげで、春先なのに肌寒いと着ている。ケープ着ててよかったとちょっと思った。



「それに、壊さない方が気分はいいじゃない? 絶対にその後のご飯の味が変わるもの」

「・・・確かに、そうですね。すみません、失言でした」

「ううん、大丈夫。・・・というか海里、こんな遅くまで残ってて家族の人とか心配しない?」

「はい、それは大丈夫です。家族の者も帰りが遅いので」



・・・ふむ。ということは、海里はいわゆるかぎっ子なのか。

それなら・・・ちょっと誘ってみようかな。



「海里、なんなら夕飯僕の家で食べてく?」

「え?」

「いや、愚痴も聞いてもらっちゃったし、その礼代わりになればいいなぁと」

「・・・ありがとうございます。ですが、家族の夕飯を作らなければならないので」



海里はペコリとお辞儀してきた。そこには社交辞令ではない断る事に対しての申し訳なさも伺える。ここが海里の人の心を掴む部分なのだと、リインが言っていた。

・・・というか、話を聞いていると、マジで家事一切をやっているらしい。僕は色々びっくりなんですが。



「というか、その家族の人・・・海里にご飯作らせてるの?」

「はい。・・・まぁ、姉なのですが、家事一切がさっぱりでして」



僕は納得した。というか、あの・・・その人は大丈夫なのか? せめて自分の食事くらいは・・・さぁ。



「でも、そういうことなら分かった。食事はまた機会があればってことで」

「はい。せっかく誘っていただいたのに、すみません」

「いいよいいよ。で、今日は何作る予定?」

「はい、今日は少し肌寒いので、鍋物にしようかと。姉はお酒も嗜む方なので、それに合うような具材を選んで・・・」

「あ、いいねー。春先ではあるけど、それでも寒い日は鍋だよねー」










・・・そんな話をしながら、少し思った。なぜ、あの子はああ言う行動に出たのかと。





というより、よくよく考えたら・・・僕は真城りまという子の事をほとんど知らない。いわゆる、外キャラな部分しか知らないのだ。





やっぱり、もうちょっと踏み込む必要・・・あるのかな。仲間内であるのは間違いないもの。知って批判するのと、知らないで批判するのとでは、大きく違いがあるでしょ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ややさん、それは?」

「えへへ・・・今人気沸騰のダーツのニューシングルの4バージョン全部ですっ! もう大ファンなんですよー!!
そういうフェイトさんは何のCDを?」

「私は・・・これ。水樹奈々さんの新作のアルバム。あと、この間のライブDVD」



フェイトは嬉しそうにややにCDを見せる。ややはそれを見てどこか感心したようにフェイトとCDとDVDを見る。



「ややもその人知ってますけど・・・フェイトさんがファンなのは意外です。そう言えば、カラオケでも歌ってましたよね」

「うん、ヤスフミにCD貸してもらってから大好きになったんだ。今ではすっかりファン。・・・それで、ヤスフミは?」

「え? 超・電王のディレクターズカット版。実は買ってなくてさー」



僕がそう言うと、失礼なことに二人はため息を吐いた。・・・なにか問題ある?



「・・・恭文ってさ、アニメとか特撮とか好きなんだよね。カラオケの時もそればっかりだったし」

「やや、色々誤解があるみたいだから少しお話する? あの時、僕は一度も自分では曲を入れてないんだけど。
入れようとする度にみんながリモコンをふんだくり曲を入れて『歌え』と迫ってきたんだけど」





ちなみに、ややもそれに加担していた。僕はしっかりと覚えている。

ややは平然と僕からリモコンを奪って平然と僕の歌を入力していた。みんなは普通に流行のJ-POPとか演歌とか変わらぬ名曲とか歌ってた。

なのに、僕だけがオタク色に染まっていた。なのに、僕だけがオタク色に染まっていた。・・・大事な事なので、二回言ってみた。




正直、何かのいじめかなとか思って、後半はちょっと泣きそうだった。僕、嫌われてるのかなって、ちょっと思っちゃった。

だって、僕だけオタク色強いんだよ? 空気読む権限すら奪われたんだよ? 泣きたくなるって。

とにかくだ、人にそんな人権否定をかましておいて、どの口でそういうことが言えるのか、僕は非常に疑問である。





「そ、そうでした・・・。でもでも、好きなのは確かでしょ?」

「男の子はいつでもヒーローに憧れるもんなのよ。それに・・・電王はちょっと特別だもの。ね、フェイト」

「・・・うん、そうだね。私も大好きなんだ。ヤスフミと同じで、ちょっと特別だから」



僕達が笑顔でにっこりとそう言うと、分からないというような顔でややが唸る。・・・まぁ、本当に電王居たなんて話をするわけにもいかないし、これでいいか。

とにかく、あれから数日後・・・というか、その週の日曜日。フェイトとややと僕という珍しい組み合わせのメンバーは、ウィンドウショッピングと相成った。・・・あぁ、あと一名居るね。



「で、あむちはなに買うの?」

「・・・え?」

「いや、だからCD」

「あぁ、これ」



そう言って差し出してきたのは・・・演歌。香川まさしという演歌歌手のCD。



「なでしこ・・・好きだって言ってて」



どこか寂しげにそう言ってきたあむの手から、ややはCDを取って、ゆっくりと商品棚に戻す。

それから・・・肩をポンと叩く。



「・・・あむちん、一緒に電王見る? ほら、恭文がディスク買うしさ」

「いや、あたしは香川まさし様のファンになれたらいいなぁと」

「落ち着けー! そのうつろでつや消しな目でCDを見るなー!! 怖いっ! ややはめっちゃ怖いからっ!!」





・・・現在、日奈森あむは壊れている。原因は・・・まぁ、分かるよね? あの近親相姦カップルと、真城りまが×たま壊したおかげでなんか空気が微妙なのとで、空海のフォローも半分くらい無駄になった。

実は、僕達がここに集まったのはこれが原因だったりする。まぁ、外に連れ出して気晴らしでもさせてあげようかなと。

でも、ご覧の通り全然気晴らしさせてあげられてない。なので、僕達は内心頭を抱えている。そして思う。なでしこカムバックと。



理由? あんまりに追い詰められ過ぎてて、ここに居ないなでしこにすがりつくような感じになってるのよ。・・・どうしろって言うのさ、これ。いっそヨーロッパに転送魔法で跳んで連れてこようかしら。





「あー、ごめんごめん。ちょっとふざけてみた。・・・大丈夫だよ? うん、大丈夫」

「・・・本当に?」

「うん。本当はね、これを見てたの」



左手から出したのは・・・あ、ほしな歌唄のCD。・・・それを見て、なんか納得した。やっぱ気になってたんだなと。


「あむさん・・・」

「大丈夫です。・・・今は、止まったりなんて出来ないから。というか、フェイトさん」



そう言って・・・あれ、ちょっと不満そうな顔になった。



「実はずっと思ってたんですけど・・・なんであたしのこと、さん付けなんですか? こう、ちょっと距離を感じるというかなんというか」

「あ、それはややもっ! 普通に呼び捨てとかでもいいのにー!!」

「え、えっと・・・それでよかった? なんだか、年上だからって子ども扱いしてると思われるんじゃないかって、ちょっと考えて・・・」



少し困ったように、わたわたし出すフェイトを見て、なんかおかしくてついクスクスと笑う。いや、面白いなぁ。こういう可愛いところはずっと変わらないってのが素晴らしい。



「ヤスフミ、笑わないでっ!! ・・・じゃあ、あむちゃん・・・ううん、あむで、いい?」

「はい」

「で、ややの事は・・・ややで。もうどーんと呼び捨てにしてください」

「うん、ありがと。やや」



どうやら、女性陣の間で話はまとまったようである。

さて、そろそろ次の問題に行こうか。僕は話を切り出した。



「・・・でさ、みんな」

「なに?」

「そろそろ僕に押し付けたCDを回収してくれるとありがたいかな」



そう言って、みんなが僕を見る。・・・まさかCD6枚とDVD1枚押し付けられるとは思わなかったから、かごなんて用意してなかったし。



「というかさ、普通に荷物持ちっておかしくない?」

『男の基本だよ』

「全員声をそろえて即答っ!?」










とにかく、あむもなぜだかほしな歌唄のCDを買って、みんなでCDショップを出た。





空は青く、気分は爽快。気候もぽかぽか・・・あぁ、暖かい。すっごく暖かい。平和っていいなぁ。・・・思いっきりかりそめだけど。










「・・・あれぇ?」



スゥが、声を上げた。そして、ある一点を見ている。



「スゥ、どうしたの?」

「あぁ、恭文さん。えっと・・・あの、あれ空海さんじゃないでしょうか」



空海? ・・・僕とあむとやや、フェイトは、その言葉にスゥの指差す方を見る。

店内にピアノが置いてあり、内装がアメリカの映画に出てきそうなセンスがあり、落ち着きのある喫茶店。その中に・・・空海が居た。もち、私服姿。



「・・・空海君、なにしてるんだろ」

「というか、あの・・・なんだか女の人と親しげに話してるよっ!? わわ、熱愛発覚っ!?」

「あ、ホントだ。・・・いや、というかやや、あれは制服着ているから店員」



あむがもっともな事を言った瞬間、あのツインテールは・・・突っ込んでいった。店内に突入。空海に突撃取材をかました。

・・・と、止める間もなかったし。



「・・・挨拶だけは、していこうか」

「そ、そうだね。というか・・・空海君ごめん、私達、きっとお邪魔だよね」

「いや、フェイトさん。あれは間違いなく店員さんですから。そういうのじゃない・・・はず」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・しっかし、奇遇だよな。こんなとこで会うなんて」

「あはは・・・。空海、なんというかごめん、ややは止められなかった」

「私もごめん。デートの所に突撃したりして」

「あたしもごめん。ややとフェイトさんの勘違いはとめられなかった」

「あぁ、いいっていいって。一人で食うよりは楽しくなりそうだしよ。あと・・・フェイトさん、デートじゃないですから。あれは普通にここの店員ですから」



空海がそう言うと、二人が驚いたような顔に・・・マジで気づいてなかったんかいっ! それは普通にびっくりなんですけどっ!?

そして、空海が僕を見る。視線の中に『・・・これ、マジ?』という意思を感じたので、僕はうなづく。・・・マジだと。



「でもでも、デートじゃないのに、空海よくこういうお店に入れるよね。やや、ちょっと意外〜」

「そう言われてもな、ガキの頃から出入りしてる店だし・・・」

「そうよね、空海はミルク代わりにここのサンドを食べていたわけだし」





そう言って、僕達の前にそのサンドが差し出される。典型的なBLTサンド。なお、BLTとは『ベーコン・レタス・トマト』の略語である。



そして、それを置いてくれたのはこのお店の店員。そして、空海と話していた女性。

黒の髪をアップにして、年は恐らくフェイトと同じくらい。凛とした瞳が好印象なお姉さんである。

あ、それとティアナに声が似てるね。うん、クリソツですよ。でも、ツンデレ分はないな。そこが大きな差異だよ。



・・・だが、そこがいいっ!!





「ヤスフミ、トマトもちゃんと食べないとダメだよ?」

「・・・はい、頑張ります」

「恭文さんはトマト嫌いなんですかぁ?」



フェイトの方に、スゥが来て話しかける。フェイトはそれに・・・うなづく。


「むむ、好き嫌いはいけませんよ〜! ちゃんと食べなきゃだめですっ!!」



なお、トマト抜きはフェイトに却下された。なので、僕は頑張るしかないのである。まぁ・・・多少大丈夫になったけどさ。



「でも、空海もお年頃かぁ」





お姉さんがなんか僕達・・・というか、空海以外のメンバーを見ながらにやにやとする。

・・・なんだろう、あの瞳の色に見覚えがあるんですけど。

あぁ、思い出した。狸だ。狸の目にそっくりなんだ。



そうして、空海に耳打ちする。だけど、僕達にもそれは聞こえる。





「一度に四人なんて、中々やるじゃないの。で、誰が本命? やっぱり、あの金色の髪の人かな。美人でスタイルもいいし」

「バカっ! 違ぇよっ!! みんな学校の仲間ってだけだしっ! あと、フェイトさんにはちゃんと彼氏が居るんだよっ!!」



なぜか僕を気にしたように空海が慌てる。・・・なぜだろう、殺気なんて微塵も出してないのに。



「あら、それは残念。まぁ、綺麗な人だしそこは仕方ないか。じゃあ、他の子達よね。ね、誰よ。教えなさいよー」

「だから違うって言ってるだろっ!? つーか・・・詩音っ!!」



その言葉に思考が固まる。し・・・し・・・しおんって・・・いや、落ち着け。あの女の人の名前なんだ。大丈夫、僕じゃない。

そうだ、あれは架空の人物なんだ。フィクションなんだ。そうだ、そうに違いない。



”ヤスフミ、大丈夫? 顔色が悪いけど”

”フェイトさん、それを聞きますか? 理由なら察しがつくでしょ”

”・・・うん、分かる”



とにかく、僕は軽く右手を上げて大丈夫だとフェイトにサインを送る。で、そんなことをしている間にも会話は続く。



「四人ってなんだ四人ってっ!! 女は三人だけだぞっ!?」

「え、でも・・・ボブロングの子に」



あむを指差す。



「ツインテールの子に」



次はやや。



「金髪の人に」



フェイトに移って・・・。



「そこのショートカットの子。ほら、四人じゃないのよ」



最後にそう言って、僕を指差す。うん、大体分かった。

・・・とりあえず、拳を握る。



「ヤ、ヤスフミっ! ダメっ!! お願いだから落ち着いてっ!?」

「バカっ! コイツは男だっ!!」

「・・・そうなのっ!?」



なぜか信じられないように驚くのは、詩音と呼ばれた女の人。・・・やっぱり1発殴る。もちろん、顔じゃなくて頭頂部に拳骨だよ拳骨。

え、女を殴るのはダメ? 何を今更。女を斬った事なんて(模擬戦や実戦で)何度もあるし、なにより僕は男女平等主義者だ。問題は無い。



「だからだめー! 恭文、マジで落ち着いてっ!!」

「大丈夫っ! 恭文はちゃーんと男の子だからっ!! やや達はちゃんと分かってるからー!!」

「うん、そうだね。でもこの人にはご理解いただいて無い様子だからちゃんと示していかないと」

「「「それはだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」」



・・・今年、19なのに。なのに・・・なぜこれ? ちょっとおかしくないかな?

あはは・・・なんか泣きたくなってきた。なんですかこれは。



「あら、それは悪いことしちゃったわね。あー、ごめんね。悪気があったわけじゃないのよ」

「恭文、マジ悪い。詩音には後で俺からよく言っておくからさ。ささ、とりあえず食ってくれ。ここのサンドは美味いぞー」

「まぁ、そういうことなら。とりあえず・・・いただきますか」



とりあえず、一口パクリ。・・・あ、美味しい。素材もいいの使ってるみたいだし、ベーコンもレタスも、あと・・・苦手だけどトマトも美味しい。うん、これなら食べられる。

で、もう一口パクリ。そのまま続けてパクリ。その様子に、空海と詩音が胸をなでおろしたようにほっとした表情になる。・・・僕、殺気本当に出してないのになぁ。泣きそうにはなったけど。



「ヤスフミ、生のトマト入ってるけど食べられそう?」

「うん、これならいける」

「ならよかった」

「・・・あれ、もしかしてトマト嫌いだった? もう、言ってくれれば抜いてあげたのに」



詩音と言う人がなんか言ってくるけど・・・残念ながらその選択肢はなかった。フェイト居るし、スゥも居るし。



「あぁ、大丈夫だぞ。現在克服の最中らしいから」

「あ、そうなんだ。なら、頑張らないとね」



頑張っておりますよ? そんな微笑まれなくても僕は頑張りますよ?

まぁ・・・好き嫌いはいけないかなと、思いますので。



「トマト嫌いなのは損してるわよ? トマトがあれば医者も顔を青くするって言うくらいに栄養豊富なすごい食材なんだから」



ようするに、栄養満点な食材なので、病気予防などにも役に立つ・・・という意味の言葉である。



「私だってここのサンドでトマトをしっかり食べているから、風邪も引かないし、お肌もつやつやでスタイルも崩れることなく維持出来て、健康的な生活送っているもの。空海だって、同じくだから、無駄に元気だし」

「いや、無駄に元気ってなんだよ。そして自分の事持ち上げすぎだろ。なんで俺がちょっと適当なんだよ。
なんだよ、お肌つやつやって。なんだよ、スタイル維持って。そこはトマト関係なくね? つーか、俺達にそれでどんな反応をしろと」

「詩音さん素敵ですって言ってもらえればいいわよ?」

「お前、絶対バカだろっ!! ・・・あぁ、もういいや。なぁ、詩音。せっかくだしピアノ弾いてくれよ」



そう言いながら、空海が視線で指差すのは、店内の隅に置かれたクラッシクピアノ。それに対しこのお姉さんは、ちょっと呆れ顔で返す。



「あのね、空海。私は今見ての通り接客中なの。さすがにそれは」

「いいよ、詩音ちゃん。今なら手も足りてるしさ」



カウンターの方から声。多分、このお店の店主らしきおじさんが、にっこり笑顔でそう言う。それに対しお姉さんは、苦笑しつつうなづき、ピアノの方へ行く。

そうして、その様子を店内に居たお客が全員注目。少しの静寂の後、それは破られた。



「・・・ジャズだね」

「うん」



小声なフェイトの言葉に、僕も同じように小声で返す。曲はジャズ。テンポが良く、それが耳に心地いい。というか・・・普通に上手いし。素人じゃないよね、このお姉さん。

自然と右手と左手の指が動く。この曲・・・うぅ、僕はここまでは弾けないなぁ。まぁ、僕は趣味の領域を出ないんだけど。



「恭文、楽しそうだね」



横を見る。そう言ってきたのはミキだった。そして、僕の指を見る。

ついついこうかなーこうかなーと動いてしまう指を。



「うん。僕もピアノ弾くから」

「そうなの?」

「フェイトに片思いしてた時に、サリさんと知り合いのお姉さんから教えられたんだよ。弾き語りとピアノはモテ要素だから覚えておけーって」

「なるほど、納得だ。・・・で、成果は?」



そうニヤニヤした顔で言われて、思い出す。あの綱渡りなお泊りデートを。

うぅ、やばかった。サリさんの陰謀のおかげで図らずともヤバイ橋を渡る事になってしまったから、かなり怖かった。



「今に繋がっている要因の一つ・・・かな?」

「あぁ、そういうことですか」

「まぁ、そういうことだね」










なんて話しながら、ピアノの音色に耳を傾ける。とりあえず、冷めない内にBLTサンドをいただこうと思い、それを手に取りまた一口。





・・・うん、これならトマトは行ける。





ちょっと克服が上手く行っていると感じた瞬間だった。でも・・・素敵なピアノだなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、その翌日の月曜日の放課後。なぜかガーディアン会議の議題にとんでもない話が上がった。





それは、僕とミキに関する話だった。まぁ、僕は今日のお茶のアッサムティーを飲みつつ、スコーンを食べつつ、話を聞くことにする。










「・・・というわけで、恭文とミキちゃんのキャラなりの強化訓練を行いたいと思いますっ!!」

≪「「・・・はい?」」≫

「やや、いきなりなに?」



その提案者はやや。なにやら自信満々にいつもよりテンションが三割増し(当社比)で発言してきた。

そして、あむが『いきなりなに?』・・・とか言うのも当然だ。だって、あんまりに唐突で前振り無かったし。



「いや、だって・・・ねぇ? せっかくのパワーアップなんだから、ちゃんと使いこなせないとダメだと思うんだよ」

「確かにそうだね。蒼凪君と日奈森さんの報告を聞くに、えっと・・・ハイセンスブレードだっけ?」

「違うよ、スペードフォームだって」



なぜだろう、全員が僕を微妙な目で見出した。どこか慰めるような物も含んでいるのは、気のせいじゃない。



「それはダメだからっ! そんなダサいネーミングにしたら、ボクのセンスまで疑われちゃうでしょっ!?」

「はぁっ!? これのどこがどうダサいのさっ! 全然かっこいいでしょうがっ!!」

≪そうですよ、かっこいいじゃないですか≫

「ですです。リインもかっこいいと思うですよ?」

『三人揃ってセンス無っ!!』



・・・なにやら失礼な連中だ。僕のどこがどうセンスがないと言うのだろうか。



「とにかく、話を戻しましょう。・・・エースの意見としては、そのスペードフォームを使いこなすために訓練が必要だと」

「だからそれはやめてー! 本当にお願いだからやめてー!!」

「そういうことっ! なので、ややとペペちゃんが一生懸命考えてきましたっ!!
題して、きっとこれをすればパワーアップ間違いなしな訓練っ!!」





そう言って、ややがスケッチブックを出してきた。そこには・・・クレヨンで描いたと思われる、また独特な絵があった。



まぁ、絵を見れば言いたい事は分かる。うん、大体わかった。





「訓練その1っ! 崖から落ちて来た岩を受け止めるっ!!」



書かれていた絵は、崖の上に悪人面なややが経っていて、それが岩を落とす。それをキャラなりした僕とミキが受け止めるというものだった。・・・単純明快なのはいいことだ。



「・・・エース、一つよろしいでしょうか」

「うん、海里なに?」

「この・・・特撮物に出てきそうな崖はどこに行けばあるのでしょうか。何より、岩がありません。これほどの大きさで、その上見事な球体をした岩はそうそうないかと」



海里の的確なツッコミに、ややの額から冷や汗が流れる。だけど、そこにまだ容赦なく続く。



「それになにより、蒼凪さんの報告によればミキとのキャラなりは防御力の低い高機動型・・・つまり、敵の攻撃に対しては回避が常です。これでは真逆のタイプの訓練です」

「う、うぅ・・・。それならいいよっ! 訓練その2いくからっ!!」



え、まだ続くのっ!?



「訓練その2っ! 階段でうさぎ跳びっ!!」



ページが捲られると、またまたそれっぽい感じの絵がする。夕焼けがしっかりかかれているのがきっとミソだと思う。



「却下。つーか・・・非効率。それは真面目に骨に響くからダメ」

「えぇっ!? でもでも、昔の漫画とかではよくやってるってパパとママが」

「だったらやや、やってみる? 真面目にひどいから」



なお、僕は一度やってみたことがある。まぁ、何事も経験と言う事で、少しだけ。

結果・・・もうやるまいと思った。あんまりにアレはヒド過ぎるから。



「ならなら・・・自信作の訓練その3っ! 道場破りで実戦修行っ!!」



また捲られたページには、道場らしき場所で、胴衣を着たお兄さんに僕がスティンガーらしき光線を撃ちまくり、蜂の巣にしている。そして、何故かニッコリ笑顔で悪人顔。

・・・やや、僕は今、ややの中の僕のイメージが激しく疑問なんだけど。



「でもやや、並みの相手じゃ恭文の相手にならないよ?」

「蒼凪さんの戦闘能力は、特殊な部分を差し引いても一般レベルのそれを大きく超えています。
例え素手であろうとも、普通の武術道場の関係者が太刀打ち出来る道理はないかと」

「う・・・」

「というか結木さん、これは・・・さすがにその・・・ちょっと古すぎないかな? いや、主にアイディアが」



さすがに見かねた唯世が言うのも無理はない。これらは70年代から80年代くらいの匂いがするもの。なんでややがコレを思いついたのかが不思議でならない。

なお、空気ですが真城りまもいます。平然とおやつのスコーン食べてるけど。



「まぁ、考えてくれたのはうれしい。やや、ありがと」

「うぅ、恭文ありがとー! やや、さすがに全部ダメ出しされるとは思わなかったから、ちょっと泣きそうだったのー!!
・・・というわけで、一つやらない?」



それは嫌だ。特にうさぎ跳びが嫌だ。



「というかさ、やや。1番根本的な問題があって・・・」

「なに?」

「僕とミキ、キャラなり出来ないの」

「・・・えぇっ!?」





当然、僕も継続使用は考えた。まぁ、それは別としても能力や性能を試したいと思って、あむとミキに頼んで結界を張り、その中で再びキャラなりを試みた。



でも、結果は・・・だめ。この間は上手く行ったのに、全くの無反応だった。





「・・・あれ、やったりしたのにさ。恥ずかしかったのに」

「あれって?」

「あむがいつもやってるやつ。・・・僕のこころ、アンロックって」



両手を動かし、実際にそのポーズをやると・・・何故か全員が少し笑った。

なんだろう、ちょっと『お話』したくなったのは気のせいじゃないと思う。



≪まぁ、キャラなりがなくてもなんとかなりはしますけど・・・原因が分からないのは気持ちが悪いですよね≫

「まぁ、それはね。でも、出来るようには・・・なりたいなぁ」





・・・僕の魔法がいつまで×たまに通用し続けるか、分からないしね。まぁ、みんなには言わないけど。





「やっぱりかっこいいしなぁ。・・・スペードフォーム」

「だから、それはダサいってっ!!」

「いいやっ! 絶対かっこいいからっ!!」

「そんなのボクは認めないからねっ!? もうハイセンスブレードでいいじゃんっ!!」










こんな事を言って、適当に誤魔化すのですよ。へらへらと笑いながら、いつも通りを装って。

・・・・・・もしかしたら覚悟、決めなきゃいけないのかも知れない。

壊して、背負う覚悟を。もちろん、あむも居るから大丈夫だとは思う。というか、たまごの浄化関係は正直あむに任せたっていいくらいだと思ってる。・・・これでも、信用はしてるしね。





でも、例の人形も本格参戦してきてるし、ガーディアンも常にフルメンバーで行動してるってわけじゃない。

時として戦力が足りない事だってありえる。なら、場合によっては・・・だ。

壊して、荷物として持つべきは人の夢・・・なりたい自分・・・イコール、未来への可能性。





あはは、下手すると命なんかより重いかも。・・・キツイなぁ。僕も、真城りまと同じ穴のむじな・・・かな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あむちゃん」



家に帰ってきて、宿題なんて片付けていると、ミキが真剣な顔であたしを見る。あたしはどうしたのかと首をかしげる。



「恭文とボクがキャラなり出来ない理由なんだけど・・・ちょっと考えてみたんだ。例えば、エルとあむちゃんは自由にキャラなり出来るよね」

「うん、そうだね」





恭文がミキとのキャラなりを試す時、ついでにエルとも試してみた。そうしたら・・・こっちは普通に出来た。

いや、出来てもあんまり意味がないと思う。だって、ホワイトフラッグだしなぁ。

うーん、恭文とミキはかなりいい感じだったんだけど。



もしかして・・・エルどうこうじゃなくて、あたしだとエルの力、ちゃんと引き出せないのかな。





「それで、前にランとのキャラなり、ちゃんと出来なかったことあったよね。結構最初の時」



思い出すのは、丁度一年位前。あたしがガーディアンに入った直後のこと。

・・・変わる事、変わっていく事が怖くて、変わらない方がいいって思った。そうしたら、キャラなり出来なかった。まぁ、あたしも若かったということで。



「あ、あったあった。あむちゃんに迷いがあって・・・あれ?」

「もしかして・・・恭文さんにも、迷いがあるんですか?」



ミキは、あたし達の視線を受け止めながらうなづいた。

だから、キャラなり出来なかった? そっか。そう考えると分かるよ。



「ボクね、あの姿は恭文の『なりたい自分』の一つだと思うんだ。恭文はキャラもちでもなんでもないけど、それでもキャラなりではあるんだから」

「まぁ、当然そうなるよね」

「・・・剣を振るって、そうして大切なものを守りたい。何かが壊れたりすることで、未来への可能性が消えたりするのなんて絶対に認められない。
助けられるなら、手を伸ばして全部助けたい。そうやって、『今』を、時間を守りたい。そんな恭文の強い気持ち、キャラなりしてる時に感じたんだ」



それが、恭文の本当の気持ち。なりたい自分の形・・・あ、だからなんだ。



「だから、あむちゃんや真城りまさんとは違って、普通の攻撃でも×たまを浄化出来るし、あのクレイモアみたいな過激な攻撃をしても、絶対にたまごを壊さないんですねぇ」

「うん。でも、どこかで恭文・・・それは無理だって思ってるんだよ。多分、『全部を助ける』って辺り」

「そんな、どうして・・・あぁ、あたし分かった」





宿題のプリントに視線を落としながら、だけど手は動かすことなく、あたしは思い出していた。

・・・恭文は、はっきり言えば普通の小学生であるあたし達とは違う。命がけの戦いを何度も経験して、その度に傷ついて、嫌な現実も見てきた『大人』なんだ。

あたしや唯世くん達は、戦うということをきっと概念的にしか理解出来ていない。でも、恭文やフェイトさん達は違う。本当の意味で戦いというのがどういうものか、何をすることなのか、知ってるんだ。



だから、否定するんだ。自分の魔法は『魔法』じゃない。自分は魔法使いなんかじゃないって言って、否定している。





「てゆうかさ、ミキ・・・そうだとしても、どうやってそれを覆すの? かなり難しいと思うんだけど」

「そう・・・だよね。やっぱり、恭文とボク達って色々と違う部分があるわけだしさ」

「でも、なんとか・・・したいですよねぇ。サリエルさん達のお話もありますし、恭文さんとミキがキャラなり出来るようになるのは大きいです」

「あぁ・・・それもあったか」










恭文の魔法が、いつまで×たま浄化出来るのか分からないっていうアレ。・・・そこまで考えて、一つ思った。

もし、もしも・・・恭文がそうなった時、どうするのかということを。

寒気が走った。一つしか結論が出なかったから。恭文は・・・きっと変わらず戦う。もし、もしも・・・どうしてもそれが必要なら、たまごも壊す。進んでじゃない。本当にどうしてもその手が必要なら・・・だ。





壊した事、言い訳もせずに荷物として持っていくに決まってる。・・・そう思う理由? もう二ヶ月も一緒に居るんだもん。アイツの行動パターンなんてお見通しだよ。

なんとか、しなきゃ。そんなことしたらアイツ、きっと・・・すごく傷つく。アイツは何かを壊して、なんとも思わないような奴じゃない。絶対に、絶対にそんな奴じゃない。

あたしはそういうのは嫌だ。だって、アイツはもう、あたしの大事な友達だから。あと、あたしが・・・まぁ、スタイル的に目標にしている人の彼氏だし。そういうのは嫌なの。





・・・フラグ立てられたとかじゃないからねっ!? というか、あたしは唯世くん一筋なんだからっ!!










「とか言いながら、空海やイクトに目移りしてるよね?」

「恋多き乙女ですねぇ」

「馬鹿っ! 違うからねっ!? 目移りなんてしてないんだからー!!」

「うーん、でもどうしよう。ボクも無関係ってわけじゃないし・・・」

『・・・はぁ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・その週の土曜日。学校がお休みなので、フェイトとお買い物・・・というか、デート。





あんまりラブラブはダメだけど、普通に手を繋ぐくらいなら違和感はないのだ。というか、やっぱり幸せ。










「うし、新しい服を買う。しばらくすると夏だし、先立っていいのを見繕う」

「あ、いいね。というかヤスフミ、もしかしておしゃれに目覚めたの? 最近ファッション雑誌とか見てること多いし」

「まぁ、そんなとこ。今までのコンセプトも踏まえつつ、素敵な彼女がよそ見出来ないように頑張ろうかなと」



良太郎さんだって、センス無いとかって言われてるけど、服のセンスは僕よりずっといいのだ。なんというか、頑張りたくなった。

だ、だって・・・ねぇ? フェイトに振られたくなんてないし。うん、ずっと一緒に居られたらいいなって思ってるし。



「・・・そっか」





ショッピングモールの中を歩きながら、フェイトが微笑みながら力強く手を握ってくれる。だから、僕も握り返す。



・・・うぅ、デート久しぶりだから、嬉しいよー! というか、楽しいよー!!



なんて思いながら歩いていると、通りがかったのはオモチャ屋さん。ふと何気なくそちらを見ると・・・足を止めてしまった。止めたのは入り口のまん前。ちょっと邪魔だけど、止まってしまったのだから仕方がない。

フェイトが僕に釣られて足を止める。そうして、僕と同じ方向を見る。その先は当然オモチャ屋の中。そして、気づいたらしい。小さく息を呑んだから。

見知った顔が二人、私服で居るのを。で、その二人がこちらに気づいた。





「恭文、フェイトさんっ!!」

「いや、また・・・奇遇っすね」

「・・・大丈夫、あむ。僕は何も見なかったことにしてあげるから」



僕がそう言うと、なぜかあむが驚いたような顔をするけど、気のせいだ。だって、僕は気遣ってあげただけなのに。



「そ、そうだね。あむ、安心していいよ。唯世君には内緒に」

「なに勘違いしてるんですかっ!? 違いますからっ! そういうのじゃないですからっ!!」

「やっぱり、恋多き乙女認識だね」

「ですですぅ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・この間のお姉さん、留学するんだ」

「あぁ。なんでも、尊敬するピアノの先生の所で勉強させてもらえることになったんだってよ。
で、せっかくだから選別でも買おうかなと思って来たんだけど・・・」

「そこにあむが鉢合わせしたんだね」

「そうなんっす。それで、参考までにこれなんてどうだって聞いたんっすよ。そうしたら、日奈森の奴がどういうわけか即答でNG出すんだよ」



そう言って空海が取り出したのは、おサルがシンバルを叩くおもちゃ・・・いやいや、それを貰ってどうしろと? もうちょっと捻ろうよ。



「空海、別のにしなさい。あむの言う通りこれはだめだよ」

「私もそう思うな」

「そっか。なら、こっちはどうでしょ」



そう言って、今度は太鼓を叩くおサルのおもちゃ・・・おサルから離れない? あれかな、そんなにおサル好き? もしくはあのお姉さんがおサルっぽいからとかそういう理由かな?



「やっぱり、こういう場合指輪とかかな。それで告白とか」

「フェイトさん、頼むからそろそろマジでその勘違いから脱却しませんかっ!? 俺と詩音は本当にそういうのじゃないっすからっ!!」

「・・・空海、フェイトだけじゃなくて、話を聞いた唯世と話した張本人のややも勘違いしてる」

「マジかよっ!!」



残念ながらマジだ。・・・止めようとしたんだけどねぇ。全然ダメだったよ。全くダメだったよ。



「てゆうかフェイトさん、勘違いはともかく、それは自分が恭文から貰って嬉しいものを言ってません?」

「・・・分かっちゃった?」

「かなり直球ですから」



とりあえず、フェイトには後頭部にチョップをかます。なんか痛そうだけど気のせいだ。

そして、心にメモをする。フェイトは指輪をご所望・・・と



「空海、こういう場合は基本に戻っていかないとダメだよ。下手に凝ろうとすると、かえって失敗するって。だからおサルさんから離れられないのよ」

「はぁ? どういうことだよそれ」



とにかく、僕はショッピングモールをあむと空海、フェイトと一緒に歩きながら、順序立てて説明していくことにする。

当然だけど、指輪やおサルの人形はダメだということも含めて。



「ようするに、相手が欲しがってるもの、興味を持っているものだよ。プレゼントの基本と言えば、やっぱりそこでしょ。
例えば・・・あむだったら、自分のセンスに合うアクセサリー類とか。ここには居ないけどなでしこだったら、香川まさし関連のグッズとか」

「あ、なるほど。確かにそういうのは基本だよな。そうすると、詩音が欲しがってるものか・・・」



なにやら考え込み始めた空海に、一応アドバイスを続ける。



「で、こういうのは普段の何気ない言動が鍵になったりするのよ。まぁ、そういうのが無い場合は手作りでお菓子・・・というのも手ではあるけどね」

「そんなんでもいいのか?」

「いいの。空海、プレゼントの大事なところは、相手のために自分の時間をどれだけ使うか・・・という所にあると思うんだよ。
こういう風にプレゼント探しにショッピングモールに来たのもそうだし、空海が今考え込んでいるのもそうだよ。奇麗事かも知れないけど、物自体がどうこう、金額自体がどうこうって言うのは、また違うと思うな」





なお、お菓子等がいいのにはまだ理由がある。食べる物は『消え物』・・・つまり、食べたら消える物とされ、相手に重荷を感じさせないのだ。

ほら、よくあるでしょ? あんまりに高価過ぎる物をもらったりして逆に引いたり、恋人から手編みのセーターとかもらって、その後に別れちゃったんだけど、手編みだから捨てたら呪われそうで捨てられない・・・って話。

食べる物だと、こういうのが無い。だって、高くても食べ物は食べ物。食べちゃえば栄養素になるだけだし、缶詰でも無い限り、ずっと保存は出来ないのだ。まぁ、フェイトの前だからこういうのは言えないけど。



なにより、空海はまだ中学1年生。特に僕やフェイトみたいに10歳からなんか仕事してる・・・とかでもない。そうなると、金銭的な事情も絡んでくる。この場合、空海がいくら出せるとかではなく、相手が貰ってどう思うかだ。

つまり、あまりにその辺りの事情無視な金銭的に高価な物は、あのお姉さんが受け取ってくれない可能性もあるということ。

それならば、普通に『手作りしましたー』というような色が出ているお菓子とかでもいいのではないかと思う。幸い、それなら僕やフェイト、スゥがサポートに回ることも出来るし。



あと、あのお姉さんとは昔馴染みらしいし、そんな『金目のものじゃなきゃ嫌だ』みたいな事を言うとは思えないのも、理由の一つだったりする。





「普段の言動、詩音が欲しがってるもの、そして大事なのは時間をかけること・・・」



そして、空海が両手で拍手をポンと打つ。



「あ、そうだっ! あれならいけるっ!!」

「思いついた?」

「もうばっちりっ! 恭文、サンキューなっ!! こりゃ普通におサルの人形よりずっといいってっ!!」



何をプレゼントするかは知らないけど、どうやら空海はそれで行く気のようなので、気にしないことにする。

そして、気合い入りまくりな空海を見て、全員の表情がほころぶ。いや、なんか微笑ましいし。



「・・・みんなっ! なんか嫌な気配がするっ!!」



ランが突然辺りを見回しながらそう言ってきた。その言葉に、全員に緊張が走る。



「ランの言う通りだ。こりゃ・・・たまごの気配だぜっ!?」

「それも、沢山ですぅ・・・」

「ダイチ、スゥ、それホント?」

「あぁ、間違いねぇ」










僕達四人は顔を見合わせて・・・うなづいた。そして、そのまま全力で走り出した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうしてたどり着いたのは、ショッピングモールの外にある広場。近くに道路も面していたりするんだけど・・・その場に居た人間が全員、倒れている。





そして、その中の数人の上に浮くのは×たま。数・・・15。










「・・・ヤスフミ、これって」

「ほしな歌唄? でも、ライブしてる感じじゃなかったし・・・」

≪いや、その前に気にするべき事がありますよ。空海さん、あれ見てください≫

「あれ?」

≪たまごを抜き取られたと思われる人の中に、例の詩音さんが居ます≫





その言葉に、僕達は倒れている人の中から・・・居た。今日は私服だけど間違いない。あのお姉さんだ。





「詩音っ!!」





空海の言葉に反応するように、×たま達が動き出す。そして・・・こちらに衝撃波をかましてきた。



僕とフェイトが前に出て、魔法を発動。





≪Protection≫

≪Defensor Plus≫





生まれるのは蒼と金の障壁。それが衝撃波を防ぐ。





「二人とも、早くキャラなりしてっ!!」

「フェイトさん・・・恭文もサンキュー! 日奈森、行くぞっ!!」

「うんっ!! ・・・あたしの心」

「俺の心・・・!」

「「アンロックっ!!」」





後ろで、緑と桜色の光がほとばしる。続けて放たれる黒い風を防ぎながら、右拳を握る。



・・・大丈夫、通用する。まだ、大丈夫だから。



そんな事を考えている間に、後ろの二人は変化が終わった。





「キャラなりっ! スカイジャックっ!!」



空海はブースター付きのボードに乗り、頭にゴーグルをつけ、緑色のフライトジャケットを羽織った姿に。



「キャラなりっ! アミュレットハートっ!!」



あむは基本形態のチアガール姿に。・・・というか、マジで基本形態だよね。



「フェイト、ここは僕達に任せて。フェイトは周辺の捜索お願い出来る?」

「・・・分かった。ヤスフミ、空海君もあむも、気をつけてね」





そのまま、フェイトは走り出しこの場を後にした。

これには理由がいくつかある。フェイトは×たまに対して対抗策が無いというのが一つ。そしてもう一つは・・・まだ誰か残っている可能性があるから。

まぁ、可能性としては薄いだろうけど、それでもだ。



僕もプロテクションを解除して、胸元のアルトに手を伸ばす。





「・・・ジャグリング」





リーゼフォームに変身しようとした時、声がした。それはか細く、小さく、だけど僕達の知ってる声。



その声を追いかけて、たどり着いた時、それは投げられた。





「パーティー」





その声の主は小さな道化師。ブラウンのウェーブかかった髪をなびかせながら、ボーリングのピンのようなものを複数投擲する。それはミサイルのように軌跡を描きながら飛ぶ。



数は全部で15。その15のピンのミサイルは何に向かって飛んでいる? 当然・・・10メートル前後上空に浮かぶ×たまだ。





「真城さんっ!?」





な、なんでこんなとこにっ!? 普通に増援みたいな形で登場しやがったしっ!!





【というかあむちゃん、まずいよっ! あれが直撃したら・・・!!】

「やめて真城さんっ! あの中には・・・空海の大事な人のたまごがあるのっ!! 壊しちゃだめっ!!」





だけど、ピンは動きを止めない。200メートル前後だった距離が、見る見る縮まっていく。





「そんなの、私には関係ない」





このままでは、たまごは全部破壊される。だけど、そうはならない。



だって、その時には僕はもう、動いていたから。





≪Sonic Move≫





青い閃光となり、一気に×たまとの距離を縮める。そして、ピン達とたまご達に挟まれるようにする。いや、飛んでくるピンの前に立ちはだかる。

・・・ここで全部浄化・・・無理。出来たとしても、途端にあれが着弾する。そうしたらたまごは全部パーだ。

あれが途中で止めるとは思えない。だって、目が言っている。たまごを壊すと。浄化なんてする必要ないと。



だったら、これっ!!





≪Stinger Snipe≫





左手を動かし、放つのは青い光の弾丸。それは鋭く空気を斬り裂きながら飛んで、あの小さな悪魔が打ち出したミサイルの1発を撃墜。正面から貫き、砕く。

そのまま大きく右に曲がり、横腹を狙うようにして三つ。

急ブレーキをかけて左に一直線。また同じように二つ貫く。



残り九つが跳んでくるので、僕はその場でアルトを抜く。

右からの袈裟、そこから返して横薙ぎに一閃と二度打ち込み、その内四つを撃墜。

だけど、残り五つが僕の脇を抜けて、たまごに迫る。スティンガー・・・だめ、間に合わない。でも、それでいい。



だって、僕は一人じゃないっ! 空海、あむ、お願いっ!!





「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ハートロッドっ!!」





空海がボードごと一本に体当たり。そのまま盾となって、二本を防ぐ。

あむが両手に出したハート型のピンク色の宝石が付いたロッドを両手に持ち、一本を叩き落す。

そうこうしている間に、スティンガーを左手に戻す。スティンガーは僕の人差し指の先で螺旋を描き、魔力を重点。そのまま、また左の指をたまごに向けて、発射する。



青い閃光はジグザグな機動を描いて、宙に浮き、再びたまごへと迫ろうとした五つのピンを一瞬で貫き、破壊する。



これで、一応全部撃墜。・・・なんとか、なった。



そして、僕は見据える。この状況が不服なのか、若干にらみ気味に見ているあれを。





「邪魔するなんて、どういうつもり?」

「それはこっちのセリフ。・・・いきなり破壊活動ってどういう了見さ」

「あなた、何言ってるの。ジョーカー・・・ガーディアンは×たま狩りが仕事でしょ? どう考えても、それを邪魔したあなた達が悪いじゃないの」



平然とそう言ってきた。・・・違う、そうじゃない。そうじゃないのに。

焦る心を落ち着かせるように、僕は息を吐く。それから、またあれを見据える。あれの周りには、また・・・ボーリングのピン。しかも、さっきより数が多い。



『ムリィィィィィィッ!!』





その声は×たま達から。見ると、お馴染みとなった黒い衝撃波を吐き出す。こちらのゴタゴタを悟ったのか、全員で集中的に。



それを、空海は緑色の障壁を。あむは桜色の障壁を眼前に張って、吐き出してきた衝撃波を防ぐ。





「空海っ! あむっ!!」

「大丈夫だっ!!」

「恭文、こっちはあたし達に任せてっ! 恭文は真城さん止めてっ!!」



黒い風に押されながらも、あむと空海が僕に向かって声を上げる。

いやいや、任せろったって・・・。



「大丈夫だからっ! お願い・・・あたしや空海のこと、信じてっ!!」

「・・・すぐにそっち手伝うから」



それだけ言えば、あむには十分だったらしい。あむは一言、元気良く返してきた。



「うんっ!!」



視線を動かさずに僕はあむの声にうなづく。いや、視線は動かせない。

目の前には事情はどうあれ、『敵』が存在するんだから。



「ほら、あなた達がもたもたしてるからこうなるのよ。もういい、しばらくじっとしてて」



りまの背中から、数本の縄。



「・・・タイトロープ、ダンサー」





それが意思を持ったかのように僕に飛んでくる。

僕はアルトを抜き放ちながら一閃を打ち込み、それを斬り払う。

それだけじゃなくて、先ほど撃ってそのままにしていたスティンガーを操作。それも動かして縄を貫く。



迫っていた縄は全て、僕の目の前で散る。





「全く、面倒ね。とっととどきなさいよ」

「嫌だね。つーか、ここは僕とあむと空海に任せて。頼むからたまごを壊そうとしないで」

「なに、あなたまであの子みたいな事言うつもり? ・・・馬鹿じゃないの」





アルトを握る手の力が強くなる。





「オープンハートだか浄化だか知らないけど、そんなのめんどくさいだけじゃない」





違う。





「私達の仕事は、×たまを狩ること。それが出来ればいいの。壊れようがどうなろうが、いいじゃない。てゆうか、仕事に私情挟んでるんじゃないわよ」





・・・違う。





「もういいわ。私、あなた達と違ってそんな馬鹿な事に拘れるほど時間があるわけじゃないの。
汗かいて、必死になって・・・ホントに揃いも揃って馬鹿みたい。ジョーカーも馬鹿なら、そのお仲間も馬鹿ばっかり」





・・・・・・それは、違う。





「・・・あぁ、ついでにこの間の仕返し、させてもらうわ。この間のあれ、もう通用しないから」





・・・・・・・・・絶対に、違う。





「ジャグリング」





だけど、目の前の子にはそれが分からない。だから、あの子は指を僕達に向ける。





「パーティー」



そして、僕目掛けて飛んできたのは白いボーリングのピン。数は相当。



「鉄輝・・・」



だから、僕は右手を、アルトを動かし、左から真一文字に打ち込む。



「一閃」



そうして放たれたのは、空間を斬り裂く青い一筋の閃光。それがピンを全て両断する。

方向も、角度も、何も関係ない。それらを全て、一刀の元に斬り伏せた。



「・・・うそ」

「・・・・・・そうだね、お前の言う通りだ。そんなの、もう知ってる。やんなるくらいに知ってる。知ってるから・・・もう、しゃべるな」



そう口にしながら、僕は更に動く。左手を地面・・・路面に当てて、魔法を一つ発動。



「ブレイクハウト」





その瞬間、鉛色の路面が大きな手となり飛び出す。りまを掴み、拘束する。



もちろん、それだけじゃない。続けてもう1発行く。



りまの周囲に杭が飛び出すように複数発生して、それらがりまの周りに浮かんでいたピン達を貫き、使用不可能にする。

その内の一本がりまへと伸び・・・その眼前に突き立てられた。

まぁ、寸止めだけどね。杭の切っ先は、りまの額に触れるか触れないかのラインで止まっている。このまま頭を貫こうと思えば、貫ける。



僕は身体を起こしつつ、左手を地面から外してりまを見据える。にっこりと笑顔なんて浮かべるのは、単なる威圧。決して友好的なものじゃない。





「一度しか言わないからよく聞け。・・・僕の邪魔をするな。もちろん、ここだけの話じゃない。どこに居てもだ。お前がどう思おうと、×たまは浄化する。お前の理屈で、壊させたりなんてしない。
それでこれ以上僕と喧嘩やろうって言うなら、命取られるくらいの覚悟はしとけ。・・・僕、自分の邪魔をする『敵』に対して容赦するほど、人間出来てないのよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



後ろは後ろで大変そうな事になっていた時、こっちはこっちで大変だった。





だ、だって・・・あの、えっと・・・。










【おいおい、×たまが・・・】

「孵化、しやがった」





そう、目の前に浮かぶ×たまが揃ってパカリと割れた。中からは赤い×を頭につけた×キャラ達。でも、それだけじゃない。



その×キャラ達は一つになって、人の姿を取った。・・・訂正、人間サイズの姿を取った。丁度、空海くらいの身長に。そして、ニヤリと笑う。





『ムリィィィィィィィッ!!』





そのまま踏み込んできたかと思うと、空海に向かって右拳を突き出す。それを空海はボードで受け止め・・・後ろへと飛んだ。



空海の身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。





「空海っ!?」

【あむちゃんっ! 前っ!!】





その瞬間、×キャラが飛び蹴りをかましてきた。あたしは・・・ロッドを十字に構えて受け止め・・・きれない。そのまま空海と同じように後ろに吹き飛ばされた。



あたしの身体は地面に直撃せずに、なんとか受身を取る。そこに、次の攻撃が飛んできた。





『ムリィィィィィィィッ!!』





×キャラの指が動く。まるでピアノを弾くように。すると、どこからか流れ出した軽快な音と共に、音符のマークがその周囲にいくつも・・・いくつも現れて、あたしと空海に向かって飛んでくる。



空気を切り裂くような音が聞こえる。そんな速度で飛んできた弾丸を、あたし達は上に跳んで避ける。





「じ、地面が抉れてるし・・・」

「つーか、なんだよあれ。なんで格闘なんて・・・あ」



空海、どうした?



「日奈森、あれ見ろよ。なんか空手着来たのが数人・・・」

【間違いなくあれのせいだな。で、さっきのピアノでどばーんは・・・】

「多分、詩音のたまごの影響だな。あの音、詩音のピアノの音だった」



なんて話している間に、変化はまた起きる。空中に居る。あたし達に向かって、音符の弾丸がまた放たれたから。



「日奈森、捕まれっ!!」

「うんっ!!」





あたしは空海に抱きつくようにする。理由は簡単、空海のボードに乗って飛ぶから。・・・あたし、単体だと飛行とか出来ないし。

襲い来る弾丸の合間を縫うように空海はボードを操って、飛ぶ。結構すれすれではあるけど、なんとか回避は出来ている。

そして、ボードの進行方向が変わる。それは・・・あの×キャラ。



真っ直ぐに、だけど弾丸の合間をまた縫うようにして回避しつつ、スピードを上げてあたし達は×キャラに迫る。





「日奈森、このままいけっ!!」

「うんっ!! ネガティブハートに」





右の手だけを動かして、×キャラを指そうとした瞬間、×キャラが消えた。



そして、空海が体勢を崩す。そのままあたし達は、地面に転げる。





【あむちゃん、大丈夫っ!?】

「う、うん。・・・けど、一体なにが」

「・・・悪い。踏み台にされた」





空海が左の肩を抑えながら、立ち上がろうとする。だけど、顔をしかめる。



つ、つまり・・・ジャンプして、空海の左肩を踏み台にしてあたしの攻撃行動を回避。それだけじゃなくて、体勢を崩して・・・。





「こりゃ、もうちょい気合い入れないと無理かもな」

「・・・そうだね」





あたしと空海は、立ち上がりながら見据える。想像以上に強くなっている×キャラを。



でもでも、×キャラが合体なんて・・・こんなこと、今までなかったのに。





「いや、あったろうが。・・・ほら、二階堂のとこで」

「そう言えば、そうだね」

「そういうことだ。まったく、なんでもありってか?」










確かに、真城さんの言うようにあたし達のやってることは馬鹿なことかも知れない。壊しても浄化しても、結果は同じかも知れない。





でも、それでも・・・助けたい。手を伸ばして、助けられるなら助けたい。





だって、あたしも同じだから。自分のたまごに×がついて、ようやく分かった。





自分の夢に、可能性に×がつくのって、すごく悲しい事なんだって、本当の意味で分かったから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文」



声がした。そちらを見ると、ミキが居た。真剣な顔で、僕を見ている。



「あむちゃん達が苦戦してる。ボクと、キャラなりして。あれなら一気に行けるはずだから」

「・・・でも、それは」

「出来るよ。出来ないのは、恭文に迷いがあるから」



僕に・・・迷い?



「あの姿は、恭文の『なりたい自分』。恭文の迷いは、それをどこかで無理だって思ってるせい。
でも、そのための力は、もう恭文の中にちゃんとある。迷う必要なんてどこにもないし、絶対に、絶対に無理なことじゃないんだ」



そしてミキは・・・優しく、まるでボクを安心させるように笑う。



「恭文、前にランに言ったんだよね。自分の魔法は、『魔法』じゃないって」

「・・・うん」

「確かにそうかも知れない。だから、ボクが恭文の魔法を『魔法』にする。・・・ううん、ちょっと違うな。
恭文の魔法は、『魔法』だってボクは信じる。誰がなんと言おうと、恭文がどう言おうと、絶対に信じる」



そのまま、その笑顔を浮かべたまま、ミキは言葉を続ける。



「ボク達と会う前の恭文がどうかは知らない。でもボク達と会ってからの恭文はずっと、敵を斬るためじゃなくて、大事なものを守るために、アルトアイゼンやリインと戦ってたんだもん。だから信じられる。
それにね・・・キャラなりした時、感じたんだ。恭文のそういう・・・壊れそうな何かを『守りたい』『助けたい』って思う気持ちを。それを未来に繋げていきたいって思う、強くて優しい想いを」



思い出しながら、だけど・・・なにか確信をしっかりと掴んでいるように、僕に優しく言葉をかけてくれる。



「ボクね、そんな恭文を信じることにしたんだ。色々考えたんだけど、それしか出来なさそうなんだ。
それしか出来ないかも知れないけど、お願い。恭文も信じてくれないかな? ボクのこと、それに・・・誰よりも自分のことを。自分の未来への可能性を」

≪・・・あぁ、それなら大丈夫ですよ。そういうのはこの人の十八番ですから≫



そういきなり口を出してきたのは、アルトだった。そして、その言葉の続きは、僕へと向けられる。



≪あなた、こんな素敵なレディにここまで言わせておいて逃げたりしませんよね?
大丈夫です、私も力を貸します。そして、信じ・・・あぁ、それだと少しつまらないですね≫



胸元で輝く相棒は、どこか優しさも含んだ声で、言葉を続ける。



≪私は、疑いません。誰でもない、あなたの事を。あなたの未来への可能性を。だから、あなたも・・・疑わないでください。迷わないでください≫

「・・・いったいどこのシンケンジャーだよ」

≪でも、私達らしいでしょ? 侍ですし≫

「確かにね。・・・分かってるよ。てゆうかさ、アルト。ここまで言われて『無理です』なんて、言えると思う?」

≪なら、問題ありません≫





僕は見据える。丁度空海くらいの身長になった黒い×キャラを。なんとか動きを止めようとするけど、二人ともやっぱ苦戦してる。



空海のタックルを避け、あむのロッドの投擲攻撃を受け止め、逆に槍のように投げて来ている。なかなかに強い。



まぁ、15人分の負のエネルギーの塊だしね。こりゃしかたない。





「変わらないまま変わっていくって、決めたしね。それは今でも変わってない。変えられるはずもない。
何が何でも通したい事があるなら、その瞬間だけは、『魔法』が使える『魔法使い』になったって、いいでしょ」





取りこぼしたり、失敗もきっとある。間違える事だってある。でも、そうしたい。

目の前に居る女の子の言葉が嬉しかったから。なんか・・・応えなきゃいけないかなと。

なにより、僕の中にはちゃんとあるもの。



壊れそうな何かに対して、手を伸ばせるなら伸ばして、助けたい、守りたいと思う気持ちが。





「そして、素敵な大人になってフェイトとずーっとラブラブするんだっ!!」

「結局そこっ!?」

≪・・・そうですよね、あなたはそういう人ですよね≫



そうですけど何か?



「ミキ、アルト」

「なに?」

「・・・・・・ありがと」



僕がそう言うと、帽子を深く被り、ミキは顔を逸らした。



「べ、別にお礼なんていいよ。これはボクがそうしたいからしてるだけだし」

≪フラグ立ちました?≫

「立ってないからっ! とにかく・・・いくよっ!!」

「うん」





そして、一歩踏み出す。見据えるは黒き脅威。でも、斬るのはそれであってそれじゃない。

僕が斬るのは、壊したいのは、あれの中にある諦め。未来への可能性を奪い、壊すもの。

・・・集中しろ。斬ろうと思って斬れないものなんて、この世界のどこにもない。



今を覆し、未来へと繋ぐ。そうやって時間を守る。それが・・・僕の選んだ、僕だけの道。僕の『なりたい自分』の形。



それに相手が誰かとか、何者かとか、状況がどうとか、そんなの関係ないっ! その道を行く邪魔をするなら、僕の目の前で未来を消そうとするなら・・・ぶった斬るだけだっ!!





「恭文のこころ・・・!」





ミキが両手を動かし、例のポーズを取る。・・・まぁ、少々恥ずかしいけど、ここは合わせるのが流儀かと。





「アンロックっ!!」





青い光が包む。そして、ミキはたまごの中に入り、そのスペードの柄がついたたまごは僕の中に吸い込まれる。

力が溢れてくる。リインとユニゾンした時に感じるものとそれはよく似ていて、心が温かくなる。

それを感じながらも姿は変わる。そう、それは当然・・・あの時の青い剣士の姿に。



こうして、再び切り札は切られた。自分を信じる。そんなありふれた言葉で、扉は開いた。





【「キャラなり・・・ハイセンスブレードっ!!」】





・・・マジで出来た。な、なんというか・・・びっくりなんですけど。





【びっくりなんてする必要ないよ。これは恭文の中で眠っている力なんだから、出来て当然。ボクはそれを引き出すお手伝いをしてるだけ】



肩の上に、半透明のミキの姿が見える。・・・あ、これは面白いかも。



「なるほど。・・・ね、やっぱりスペードフォームとかブルースペードの方がいいんじゃないかな。そっちの方がかっこいいし」

【だからっ! どうしてそっちいっちゃうのっ!? お願いだから素敵な大人になる第一歩として、そのひどすぎるセンスを直そうよっ! そんなんじゃフェイトさんに振られちゃうからっ!!】

「大丈夫っ! フェイトは『そんなヤスフミも素敵だよ』って言ってくれてるからっ!!」

【そうなのっ!?】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そんなこと言ってないよっ! むしろ直して欲しいんだからねっ!? 具体的にはネーミングセンスっ!!」

≪Sir、どうされました?≫

「あ、ううん。なんでもないよ。な、なんだろう。今こう・・・すごい電波が飛んできたような」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「恭文、ミキとキャラなり出来たのっ!?」

「おかげさまで。・・・んじゃま、さっそくいきますか」





とにかく、やることを整理。まずは・・・音符の弾丸を避けつつ僕に声をかけるあむと、同じくボードで回避行動を取る空海を助ける。



基本方針を決めると、僕は右についているカードホルダーから、あるカードを取り出す。それは・・・スペードの10のカード。





【恭文、それは? というか、そのカードって一体・・・】

「いい? この形態は僕の持ってるブレイドのイメージが元になってる」




この辺りには思い当たる節がある。僕の中での守るために戦う人間と考えて真っ先に浮かぶのが、ブレイドの剣崎さんだから。多分、蒼でスペードで剣というだけでこうなったのではないんじゃないかなと。



だって、テレビ版の最終回で号泣したのは、きっと僕だけじゃないから。僕は心からそう思う。





「ロイヤル・ストレート・フラッシュが使えたのがそのいい例だよ。普通ならないでしょ、こんなのはさ。
そして、カードのカテゴリーとその効果が剣(ブレイド)通りなら・・・かなり凄いことになる」





剣(ブレイド)のカード・・・まぁ、トランプがベースなんだけど、13のカテゴリーにはそれぞれ特殊能力がある。本編だと、カードを使用するとその能力をライダーが使用できる。スペードの場合だと・・・確か、こんな感じかな。

Aは変身用。2は武器・・・剣を用いた直接攻撃の強化。3はパンチ攻撃強化。4は突進攻撃。5はキック攻撃の強化。6は攻撃に雷のような、そういう自然現象にある属性の付与。7は金属、有機物などの物質特性の付与による、防御力の強化。

8は磁力を操作して、敵の動きを制限、抑制する。 9は高速移動。10は自分以外の存在の時間を停止・・・などのかなり特殊な能力を使用。JとQとKは・・・補助アイテムと一緒に使用することで、パワーアップ形態に変身出来る。



このように、多種多様な効果を用いて戦うのが剣(ブレイド)に出てくるライダーの戦い方なのだ。しかし・・・安直過ぎない、僕? いや、トランプでスペードで剣使いで青だから分かるんだけど、それでもイメージがこれって・・・。





【時間停止っ!? それすごいじゃんっ!!】





うん、すごいよ。まぁ、凄すぎて原作では時間を止めている間に、活動を停止している物に攻撃したら、その反動で吹き飛ばされるってデメリットが付いてるけど。

そして、劇中では全く使われなかった。とにかく、僕はカードを放り・・・投げない。

よく見たら、右のガントレットが左のとはデザインが少し違う。親指のある側にスラッシュリーダーみたいなのがある。試しにそれにカードを通す。



そのカードの絵柄になっているのは・・・あれ、よくよく考えたらなんでちょっとおしゃれなデザインで金色の音符マーク? 時間停止なら、時計とかのはずなのに。





≪Sound≫





・・・え?



その瞬間、両手と両肩のスペードの装飾が一瞬だけ白く輝く。そして、どこからともなく音楽が鳴りだした。





【・・・恭文、停止するどころか何か始まったんだけど。停止じゃなくて再生になってるんだけど。これ、なに?】

「え、えっと・・・どういうこと?」

≪・・・なるほど。10のカードは特殊効果のカテゴリー。つまり・・・あなたの場合、その特殊効果は音楽再生。ようするに、サウンドベルトと同じなんですよ≫

【「な、なんですかそれっ!?」】





というか、この音楽は・・・覚醒っ! マジでブレイドかいっ!!



いやいや、それ以前にカードの効果・・・あ、もしかしてブレイドそのままになってないのっ!? じゃあ、カード使うまで効果がどうなるかわかんないじゃないのさっ!!





「あははははっ! 恭文、やっぱお前面白いわっ!! キャラなりしてもそれってありえねーしっ!!」

【とか言いながら空海、すっげー楽しそうだなっ!!】

「だって、楽しいだろっ!? なんかよ、力がどんどん沸いてくるしっ!!」

【だなっ!!】





空中で、弾丸をボードになりながら・・・じゃなかった、ボードに乗りながら回避するお兄さんがそんな事を言ってるけど、気のせいだ。いや、僕だって驚きなのだからここは仕方ない。

とにかく、こうなった以上は仕方ない。・・・踏み出し、一気に飛び込んだ。

空海が囮になっているおかげで、こちらへの注意が逸れている。この機、逃すわけがない。



そして、空気を、空間を切り裂きながら、僕は踏み込んで一気に×キャラへと接近。拳を顔面に打ち込み、そのまま穿つ。





「うぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」





×キャラは吹き飛び、地面を転がる。立ち上がりつつ、僕を見据える。



それに大して、僕はニコリと笑顔で返す。





「はいはい、余所見は禁止だよ? こんなにいい男がここに居るんだからさ」

【あと、素敵なレディも二人居るね。それを無視っていうのは、ちょっと失礼かな】

「というわけで・・・ここからは一気にいくから、付いてきなよ?」

≪もちろん、答えは聞いていませんが≫










また踏み込む。全ては・・・今を覆す。ただそれだけのために、僕は僕の中にある切り札を切る。





さぁ、ぶっ飛ばしていくよっ!!




















(第16話へ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、次回に続きます。そんなしゅごキャラクロス第16話、どうでしたでしょうか?
本日のお相手は、古き鉄・アルトアイゼンと≫

りま「・・・真城りまです。てゆうか、ちょっと待ちなさいよ」





(ちびっ子、どうやらすっごく不満があるようだ)





りま「なんか、私すっごい感じ悪い上に悪者キャラなんだけど、どういうことっ!? 今やってるテレビの方と全然キャラ違うしっ!!」

古鉄≪仕方ないじゃないですか。あなた、この時心開いてないんですから、どうしてもこうなるんですよ。これで今やってるTVや漫画みたいにやるのも違うでしょ。あとの話が成立しないじゃないですか≫

りま「ま、まぁ・・・それはね。というか、ナレーション。ちびっ子って言うな。タイトロープ・ダンサーで縛り上げるわよ?」

古鉄≪あぁ、だめですよ。縛られたりしたらナレーさんが喜んでしまうじゃないですか≫

りま「キモっ!!」





(その瞬間、正解を示すSEが流れる。だけどちびっ子、なんか嬉しそうじゃない)





りま「当然でしょ? 全く・・・で、私の印象を良くする話、当然用意してるんでしょうね」

古鉄≪当たり前じゃないですか。・・・いいですか? 今あなたは思いっきり下がっています。だから、その分上げなきゃだめでしょ。そして、そのギャップで原作を知らない人は全部あなたのファンですよ。そのためにオリジナル話も現在構築中です≫

りま「ならいいわ。まぁ、不満が無いわけじゃないけど、頑張ろうじゃないのよ」

古鉄≪納得してくれて幸いです。・・・えー、それでは本日はこれまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

りま「皆さん、私はここまで感じが悪くありません。全ては蒼凪恭文のせいです。・・・そんな事を声を大にして言いたい、真城りまでした」

古鉄≪まぁ、そこは基本ですよね≫

りま「そうよね、基本よね」










(二人、なんだか話が合いつつカメラはそれを映しながら、ゆっくりとフェードアウト。
本日のED:Ricky『覚醒』)




















恭文「なんだか本格登場する感じのスペードフォームだけど」

ミキ「・・・それ、どうしても使いたいの?」

恭文「だって、かっこいいし」

ミキ(無視)「とにかく、次回は大暴れだよ。うんうん」

恭文「敵は中々に強敵・・・だけど、三対一か。ちとつまらん」

ミキ「もしかして、一人で戦いたいの?」

恭文「うん」

ミキ「なんかすっごい楽しそうな顔で言い切ったっ!!」










(おしまい)





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あきゅろす。
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