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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第10話 『全力全開 ハラハラドキドキな模擬戦』:1



・・・学校は終わった。そして、僕とティアナとリインは当然・・・捕まっていました。具体的には校門のところで。





あはは・・・やっぱり逃げられるわけがなかったか。










「いやぁ・・・マジで小学生やっとるとは。よし、写真撮ったるな」

「なぁ、バカ弟子。はやての撮った写真、教導隊の奴らに見せていいか? これがアタシの弟子だーとか言ってよ」

「あ、それいいね。私も分けてもらおうっと」

「というわけで、早速撮るな。アタシもルールーに送ってやりたいから。・・・八神二佐、お願いします」

「あぁ、えぇよ。ほないくでー。はい、チーズ」



そうして僕はにっこりと笑顔を浮かべて目の前でデジカメを構えた狸に向かって微笑みかけて・・・出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

とりあえず、懐に仕込んでいたねこちゃんスリッパで四人の頭を叩く。まさしく電光石火。誰にも止められない。



「い、痛ぁ・・・なにすんだよお前っ!!」

「・・・師匠、アギト、ついでに狸とついでのついでについでな横馬」

「なっ! どうして私だけそんなに扱いが・・・わ・・・わ・・・るいの・・・?」



僕は、穏やかに話をしたかったので、にっこりと笑いかける。すると・・・その場に居る全員が何故かガタガタと震え出した。

なぜだろう、僕は特に怖い表情はしてないのに。ただ温和に威圧してるのに。



「写真撮ったら・・・潰します。人に話しても潰します。記憶していても潰します。オーケー?」

「「「「イエス・ユアマジェスティンッ!!」」」

「うんうん、素直でよろしい」

「・・・恭文君、あなた・・・恐怖政治って言葉の意味、知ってる?」

「知ってるけど知りません。で、それが何か?」



僕がにっこりと笑いかけると、うちの『元』保護責任者はなぜかため息を吐いた。



「まぁ、そこはともかく・・・元気そうね」

「えぇ、おかげさまで。どっかの誰かさんのアホな勧誘が無くなったせいで、実に素晴らしく人生送ってますよ」



リンディさんは苦い顔するけど、僕は気にしない。だって、絶縁してるもの。

で、周りはなんかオロオロしてるけど気にしない。だってついさっき自分でそうするって言ったもの。



「・・・・・・恭文君、どうしても分かってくれないの? ちゃんと考えるだけでいいの。
現にあなたはフェイトの事まで巻き込んでる。フェイトはあの事件での功績が」

「あー、はいはいっ! リンディさんやめましょうねっ!! てーかうちらとお茶飲みいきましょっ!!」

「はやてさん、待って。私はこの子とちゃんと話を」

「いいから行きましょうねっ! なのはちゃん、フェイトちゃんも恭文の事頼むなっ!!」

「「う、うん」」



それであのアホ提督は、そのままはやてに引っ張られてどっかに消えた。それで師匠も後を追う。

・・・・・・てーか、マジで変わり無しかい。どんだけ図太い面の皮厚く・・・・・・アレ、フェイトがなんか後ろから抱きついてる。



「フェイト?」

「ん、大丈夫。というか、ごめん。母さんには事前にちゃんと言っておいたのに・・・・・・本当に」

「別にいいよ、気にしてないし。てーかまた同じ事するなら、ぶっ潰すだけだし」

「そうだね。というか、そうしてくれてるよね。ずっと、そうしてくれてる」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”・・・・・・ヒロ、リンディ提督は相変わらずだな”

”だね。まぁここ1年でフェイトちゃんがやっさんの評価に引きずられてる部分もあるし、そのせいでしょ”

”うぅ、身内として申し訳ないです。なんというかリンディさん、本当はあんな人じゃないんです。
ただその、六課時代に二人にこっぴどく手を振り払われたのを根に持ってるらしくて”

”あー、なのはちゃんが謝る事ないよ。てーか、そこもまぁ分かる”





賭けたもんの重さの分だけっていうのはあるからなぁ。簡単に否定していい話でもないんだよ。



ただやっぱやっさんは相当根に持ってるな。てーか、何故に怒りが再燃してる?



・・・・・・しゅごキャラ絡みの事件で、何か感じるものでもあったのかね。なんかそう感じてしまったよ。





”あの、リンディさんが何か言いそうになったら私とはやてちゃん達で押さえます。
・・・・・・せっかく模擬戦するんですし、見学する子達も居るんですから”

”頼むわ。私とサリもやっさんにちと言っておくから。みんなの前なんだからーってさ。
しかし、リンディさん呼んだの誰? 私らは当然話してないし”

”その、そこの辺りが私にも。ここは予測ついてたので・・・・・・うぅ、どうなってるんだろ”










あの人が勝手に察したか、肩書上でも保護者になってるから連絡がいったとかか?

まぁどちらにしろ、あの二人が衝突しないようにしとくか。とばっちりをあむちゃん達が受けてもマズい。

ただ心配はないと思うが。リンディ提督はともかく、やっさんはそこの辺り空気読むだろ。





見てるとやっさん、現状ではただの子どもに過ぎないあの子達の事・・・・・・それなりに信頼してるようだしな。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第10話 『全力全開 ハラハラドキドキな模擬戦』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、あたし達ガーディアンは見事全員集合という形でフェイトさんの家に集まった。もちろん、魔法戦闘の見学のため。





・・・な、なんかドキドキしてきた。魔法戦闘・・・というより、魔導師同士の戦闘って見るの初めてだし・・・どうなるんだろ。





というか、怪我とかしなきゃいいんだけど・・・。










「・・・まぁ、初めまして・・・やな。うちが八神はやてです。なんや皆、あのチビスケやリインがめっちゃ世話になってるみたいで・・・ホンマ、ありがとな」

「初めまして、リンディ・ハラオウンです。もう知ってると思うけど、フェイトの母親で恭文君の保護責任者です」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”ちょっとちょっとっ! この翠髪早速関係詐称してるけどいいのかよっ!””

”いいんよ。そこの辺りは協議済みやから。というか、学校ではそういう認識だからもんだいないやろ”

”いや、まぁ・・・・・・それはなぁ。あぁ、ゴタゴタしなきゃいいんだけど”

”なのは、今更だ”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あたし達をフェイトさんと一緒に迎えてくれたのは、栗色の髪をショートカットにしている女性。この人がリインちゃんの保護者・・・なんだよね。





それに、翡翠色の髪の女の人・・・フェイトさんのお母さんかぁ。あ、雰囲気がちょこっと似てるかも。










「あ、いえ。蒼凪君やリインさんにお世話になってるのはこっちの方ですから。初めまして、辺里唯世です。それと・・・」

「藤咲なでしこです」

「結木ややですっ!!」

「日奈森あむです」

「相馬空海ですっ! あの、本日はお日柄もよく」



空海っ!? だからどうしてそんな風になるのかなっ! そんなにお見合いしたいわけっ!!



「おう、よろしくな。それじゃあアタシらも・・・アタシはヴィータだ。いつもいつもバカ弟子が・・・きっと迷惑かけてるんだろうな。
悪いな、アレは悪いやつじゃないんだが、若干おかしい所があってな・・・」

「あ、いえ。さっきも言いましたけど、蒼凪君には本当に助けてもらっていますから」





次に出てきたのは、6,7歳くらいの女の子。赤い髪を三つ編みにして・・・あれ、ヴィータ?

なんか聞き覚えがあるぞ。確かそれって、恭文とヒロリスさんから説明されたような・・・。



あ、そうだ。恭文の魔法戦闘の先生。小さいけど、あたし達より年上だからその辺り気をつけてって言われてたんだっけ。





「高町なのはです、初めまして。・・・お昼はうちのヴィヴィオのお世話してくれたみたいで、ありがとね」

「ありがとうございましたー」

「いいえ、お世話だなんて・・・。主に恭文君と楽しそうにお話していたのを暖かく見守っていただけですから」

「にゃはは・・・そっか」



あー、でも恭文やヒロリスさんから事前情報与えられてなかったらちょっと混乱してたかも知れないよ、これは。

だって、あんまりにも家族構成がばらばらというか、なんというか・・・。



「・・・でも、この人達も魔導師・・・なんだよね。それもすっごく強いんでしょ?」



あたしの隣に浮かぶランがそう言って来た。ちょっとだけ疑問な表情で。

・・・らしいね。その上なのはさんとヴィータさんは、教導官・・・魔導師の先生が出来るくらいにすごい人って聞いてるけど、そうは見えないんだよね。普通になのはさんはお姉さんって感じだし。



「でも、外見だけで判断するのは間違いだと思うな。ほら、恭文だってアレですっごく強いし、リインちゃんとユニゾンしたら更に強いし」

「そうですねぇ〜。恭文さんは、すっごく強いです」



なんだか自分の事のように言うスゥを見て、ちょっと苦笑。・・・あれ以来、スゥの中で恭文の株は急上昇らしい。やたらとガーディアンの会議の時も隣に居るし。

まぁ、シチュ的には恭文はスゥを助けてくれた正義のヒーローみたいな感じだしね。そうなっちゃうのも無理ないのかも。



「というよりミキ? どうしてそんなに気合い入りまくってるんですかぁ」

「いや、この間の『マタタキキワミー』が見れるかなぁ・・・と」



・・・ミキ、その言い方やめない? 恭文じゃないけど、色々台無しな気がするんだよ。うん、すっごくね。



「まぁ、立ち話もなんやから・・・ほら、みんな中にはよ入り? もうそろそろ始まるからな」

「あ、はい。それじゃあ・・・お邪魔します」










そうして、もうお馴染みなリビングに全員が座る。そして、空間モニターって言うのが開かれてて、その中に映っている人達が居る。その数は四人。





もう見慣れたマント姿の恭文と、袖なしの白のベストに赤と黒のインナー、腰に○の中にバツがついたデザインのバックルをつけて、ミニスカートにニーソックスを履いているのは、ティアナさん。・・・あれがティアナさんのバリアジャケットなんだ。

というかおしゃれー! 普通にイケてるしっ!! あれだけ見たらちょっと戦闘服とは思えないけど・・・でも、いい感じっ!!

そして、両手にはあの人形が持っていたのとほぼ同じデザインの銃。多分、前に見せてくれたクロスミラージュの武器としての形態。






サリエルさんは、緑のアーミーパンツに同じ色の長袖のジャケット。黒のインナーに先が十字になってる槍を持ってる。・・・こっちの方が戦闘服に見えるんだよね。

それから、ヒロリスさん。ヒロリスさんは、白のロングスカートに腰の両側と胸元に装甲。両腕に恭文がつけているような小手。

その腰の装甲には、アルトアイゼンより細身で、真っ直ぐな剣が二振り、鞘に収められる形でくっついてる。





・・・って、あれ? なんかどこかで見たような。










「・・・なぁ、ヒロリスさんのジャケット・・・アレ、なんだ? あんなの使ってたか?」

「あぁ、なんかフェイトのセイバー参考にした即席で作ったらしいで? つーか、白ってだけでほぼそのままやなぁ」



フェイト? えっと、つまり・・・フェイトさんの・・・あ、違うな。フェイトさんのジャケットは、もっとこう・・・黒かったもの。

それでスカートも短くて、絶対領域があって、胸もこう・・・大きくて。うぅ、仕方ないけどあれはうらやましい。



「・・・だからアレか?」

「だからあれやな」

「えっと・・・私の?」

「あぁ、ちゃうよ。あのな、『Fate』っちゅうめっちゃ有名なゲームがあるんよ。
その中に出てくるセイバーって言う剣使うキャラクターが居てな、ヒロリスさんの今のジャケット、ほぼそのままなんよ。まぁ、言うたら2Pカラーのコスプレ?」



あれ、ゲームキャラクターのパクリっ!? というかコスプレっ! ど、どういうセンスしてるんですかそれはっ!!



「・・・あの、一ついいですか?」

「なんや、唯世君」

「実は、前から少し気になってたんですけど・・・蒼凪君のバリアジャケットって、前に見せてもらったフェイトさんのジャケットと似てるような気が・・・。
ジャケットのデザインって、どういう所で決めるんですか? というか、コスプレデザインって・・・」



唯世くんの言葉に、全員が顔を見合わせる。そして・・・なんだか、魔導師組はフェイトさんを除いてニヤニヤしだした。

フェイトさんは・・・こう、顔を赤くしてる。どこか恥ずかしそうに、もじもじというか何と言うか。



「じゃあ、その質問は私が答えようかな」



そう優しく声を出してきたのは、なのはさん。あたし達の目を真っ直ぐに見ながら、言葉が続く。



「・・・まずね、ジャケットのデザインは・・・基本自由なんだ」

「そうなんですか?」

「うん。まぁ、この辺りはジャケットが使用者の魔力を元にした特殊防護服と言うのが大きいんだけどね。
どっちかと言えば、外見よりジャケットの性能の方が大事なの。外見は、術者のイメージや性能についてくる感じ?」



・・・性能? 普通に防護服というだけじゃないのかな。



「例えば、恭文君のジャケットは前方へのダッシュ力とそのための出力、あとは防御力を重視した仕様なの。誰よりも速く、鋭く、一瞬で前へ出て、敵を斬り伏せるための服なんだ。簡単に言っちゃえば、過剰な突撃仕様なの。
逆にみんなの見た事のあるフェイトちゃんのジャケットは、装甲を落として・・・あ、バリアジャケットの防御力の事を装甲って言うんだけど、その装甲が薄め・・・つまり、防御力が低めなんだ」

「そうなんですか? というかというか、ややが思うに、防護服なのに防御力低めっておかしいんじゃ」

「でも、これでいいんだよ? フェイトちゃんの売りは縦横無尽に動ける機動性・・・ようするに、速く動く事だから。敵からの攻撃は、フェイトちゃんは全部避けて対処しちゃうの。
私や恭文君でもフェイトちゃんの速さには追いつけないから。・・・あ、恭文君は違うね。直進限定でなら、フェイトちゃんの速さに対抗出来る」

「・・・もしかして、その速さの確保のために防御力を落としてるってことっすか? 装甲が厚いと、動きに限定される部分が出来るから」



空海の言葉に、なんだか嬉しそうになのはさんがうなづく。



「空海君すごいわね。どうして分かったの?」



リンディさんが感心したように言うと、空海が照れたように・・・まぁ、綺麗だしね。ここは仕方ない。



「・・・あぁ、俺サッカーやってるんっすよ。それで、やっぱり体型とか体重とかが動きに関わってくるから、ジャケットでもそうなのかなーと」

「なるほど、納得だわ」





なんだかリンディさんに誉められて、空海が嬉しそう・・・というか、あの・・・なんか装甲とかダッシュ力とか、ロボットアニメに出てきそうな単語がさっきから多いんですけど。



ま、魔法って言うからこう・・・ファンシーな要素があるのかなぁと思ったら、そういうわけじゃないんですね。

もしかして、恭文が自分の魔法は『魔法』じゃないって言ったの、これが原因とか?

いや、それは無いか。アレは多分マジキャラ発言だろうし。





「まぁ、ようするに・・・そういう術者の特性や使用目的に合わせて、ジャケットってのは作られてるってことだ。
デザインは、普通に共用データ使わずに自分で構築する場合、それに基づく使用者のイメージから構築される事がほとんどなんだ」

「ヴィータちゃんの言う通りだよ。・・・というか、美味しいところを持っていかないで欲しいんだけど?」

「うっせぇ、お前がグダグダ話してるからだろうが。大体お前はいつもいつも話が長ぇんだよ。
こいつらが聞きたいのはどうしてバカ弟子とフェイトのジャケットのデザインが似てるのかって所なんだから、そこまで説明する必要ねぇだろうが」

「あぅ、ヴィータちゃんひどいよー!!」



・・・よし、少しずつだけどどんなキャラしてるのかつかめてきたぞ。とりあえず、ヴィータさんはちょっとキツめなツッコミキャラ・・・と。

それで、話は戻るらしい。なのはさんが咳払いを一回してから、もう一回あたし達の方を見る。



「それでね、フェイトのジャケットと恭文君のジャケットが似てるのは・・・」

「ペアルックなんよ」

「・・・まぁ、間違いではねぇよな」

「ふふふ、二人のジャケットはね。恭文とフェイトさんがラブラブな証なんだよ〜」



あぁ、なるほど。ペアルック・・・へ?

ぺ、ペアルックっ!? どういうことですかそれっ!!



「はやてっ! ヴィータもスバルも・・・違うからっ!! そうじゃないからねっ!?」

「あら、いいじゃないの。私も若い頃は」

「母さんっ! どうしてそこ乗っていくのっ!? 違うって知ってるよねっ!!」



フェイトさんが慌てふためき、涙目でリンディさんやなのはさん達を見る。でも、なのはさん達は変わらずニヤニヤ・・・。



「・・・フェイトさん、あの・・・なんて言うか、ややはすごくびっくりなんですけど」

「フェイトさん・・・そこまで恭文君のことが好きなんですか? 今時ペアルックはさすがに・・・」

「そうじゃないからー! ヤスフミの今のジャケットが、私のジャケットをベースにしてるからこうなってるだけなんだよっ!!」



いや、だからそれをペアルック・・・。



「だから違うのー!!」

「・・・まぁ、フェイトちゃんが泣き出さんうちにネタバラシをするとや。恭文が来てるジャケット・・・リーゼフォーム言うんやけどな。あのジャケット、出来てまだ1年ちょいしか経ってへんのよ」



1年? ・・・その言葉にあたしは思い出す。確か、恭文は19歳で、魔導師も10歳の頃からしてて・・・あれ、計算合わなくない? それだったら、それより前はどうしてたのかな。

そんな疑問が顔に出ていたのか、スバルさんが引き継ぐように説明をしてくれた。なぜそうなるのかという疑問について。



「恭文はね、元々着ていたジャケットがあったんだけど、ちょっと新規一転というか、リ・スタートっっていう感じで、新しいジャケットを1年前に作ったんだよ。なお、まだフェイトさんと恭文が付き合う前だね。
それで、その時にさっきなのはさんが言ったような特性に、あらゆる意味での『速さ』・・・機動性をプラスしたのがアレなんだ。でも、こういうのは珍しいことじゃないんだよ? 私やティアのジャケットも、なのはさんの物を参考に作られてるし」



へぇ、そうなんだ。・・・ということは、なのはさんのジャケットってかなり凄いのかな? 具体的にはデザインが。

だって、ティアナさんのジャケットがアレなんだもの。きっと・・・こう、すごいハイセンスでかっこいいと思うんだよね。あ、今度見せてもらおうかな。



「なるほど、そのために同じように速さ重視のフェイトさんのジャケットを参考にしたんですね。なので・・・恭文君のジャケットがフェイトさんのそれとデザインが似てて当然と」

「正解や。うーん、みんな飲み込みの速い子で嬉しいなぁ。話がサクサク進むで。スバル、アンタも見習わなあかんで?」

「はいっ! ・・・って、それはひどくありませんっ!? 私だって飲み込み速いですよー!!」



はやてさんがなんか嬉しそうだけど・・・出来ればそこにあたしは入れないで欲しい。

だ、だって・・・なんか許容量をオーバーしそうで・・・。あたしに分かるのなんて、ティアナさんのジャケットがあたしのセンスにビビっと来てるってことくらいだし。



「まぁ、バカ弟子は作ってる当初からこの事を危惧してたけどな。・・・実は、あのジャケットはアタシ、フェイトにシャーリー。あとこの場には居ないけどリインにヒロリスさんにサリエルさん、うちの家族の一人も作業を手伝って完成させたんだよ。
けど、バカ弟子の奴はリーゼフォームが表に出る前に、何度かデザイン変更を要求してたんだよ。『せめてマントはやめよう、お願いだからマントは外そう、やっぱりマントは必要ないと思う』・・・ってな」

「あぁ、してましたね。まぁ、私達としては当然、却下しましたけど」



却下したんですかっ!? そ、それはまた・・・どうしてっ!!



「だって、そっちの方が面白いじゃない? フェイトさんとなぎ君はともかく、私達的に」

「だな。現に初お披露目の後のみんなの反応は面白かった 訓練の時とかも二人揃ってジャケット装着すると、もうニヤニヤなんだよ」

「ニヤニヤでしたねぇ。だって、隣同士になるとやっぱり似ていて・・・まさしくペアルックなんですよ」

「いや、アタシらはそれで楽しく訓練出来たからよかったよ」



表情からあたしの考えてる事が分かったのか、遠慮なく言い切ったのは、シャーリーさんとヴィータさん。

・・・あ、あはは・・・まぁ面白いと言われたら確かにそうかも・・・現に、今がそれだし。



「・・・私ね、どうしてヤスフミが何度も『マントはやめよう』って言うのか分からなかったの。最初、私のジャケットのデザインが嫌いなのかなとか思ってたんだけど・・・そうじゃなかったんだね。
マントがあると、ペアルックって言われそうだからだったんだね。私、全然気づかなかった」

「お前、マジで気づいてなかったんだよな。アタシ達は手伝っててこりゃそうなるなって思ってたのに」

「気づいてたなら教えてよっ!!」

「・・・いや、フェイトさん。多分それはフェイトさんが悪いですって」



というか、普通は気づくから。マントって言う大きなアイテムが同じだったら、そうなるのは分かりきってると思うし。



「あむさんまで・・・」



いや、だって・・・ねぇ? どうしてもそうなりますって。そんな恨めしそうな顔をされてもそこは変わりませんから。



「とにかく・・・そろそろ時間だね。それじゃあ皆、私はちょっと出てくるから」

「アタシもだな」

「え?」



そう言ってなのはさんとヴィータさんが立ち上がって・・・あの、どうしたんですか?



「今回の模擬戦のシチュは市街地戦・・・ようするに街の中での戦闘なんだ。ただ、本当にそのまま戦うわけにはいかないの」

「だから、アタシらが結界を張って・・・まぁ、ようするに派手にどんぱちしても、街に被害が出ないようにするんだよ。しっかり結界を張って、その中で戦うなら、例え歩道が砕けようが家が吹き飛ぼうが実際には何も壊れない。
一応もう張ってはいるけど、どんぱちが始まったらちゃんと現地で結界のコントロールしないと、簡単に壊れちまうからな」

「・・・あの、あたしはよく分からないんですけど、簡単に壊れるって・・・そういうものなんですか?」



というか、もしそれが壊れたら、普通に街に被害が出るんじゃ・・・。

え、もしかして模擬戦ってそうとう危ないっ!?



「普通はちゃんと結界を張れば、壊れないよ? というより、壊さないように中の魔導師も考えて戦う。訓練は喧嘩でもなんでもないんだから」



そう真剣な顔で言ったのは、なのはさんだった。

そして、表情がすぐに変わる。なんというか・・・諦めが見えるような顔になる。



「ただ・・・今回は恭文君とヒロリスさんが居るから。ヴィータちゃん、二人にはこんな理屈通用しないよね?」

「通用すると思うか?」



ヴィータさんがなのはさんを見上げてそう言うと、なのはさんは首を横に振った。つまり・・・否定。



「サリエルさんとティアナの奴はともかく、あの二人は相当激しくやる。つーか、間違いなく結界の事とか忘れて戦うに決まってんだよ。前歴として二人は何回も訓練場やら壊してるしな」

「ヒロリスさんと恭文君、似たもの同士ですものねぇ。フェイト、最悪の場合あなたが介入しないとだめよ? そうすれば恭文君だけは止められるから」

「うん、もちろんそのつもりだよ。母さん」










あ、あははは・・・・これ、マジでどうなるんだろ? なんか胸の中が不安でいっぱいになってきたんですけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、夜の9時・・・街に閉鎖結界を張った上で、僕とティアナはヒロさんとサリさんと対峙していた。





なお、結界スタッフはなのはとヴィータ師匠とリインとアギトと咲耶。五人がかりで厳重にやるとか。・・・これなら、遠慮なく暴れられる。





辺りにはいい感じの緊張感が漂う。そして・・・わくわくしてくる。










「ルール説明しておくね。ガチに相手を一人でもノックアウトした方が勝ち」



つまり・・・片方でも倒されたらその時点で負けと。



「そういうこと。で、やっさんは例のパス持ってるようだけど・・・ユニゾンは禁止ということで、オーケー?」

「「はいっ!!」」



僕とティアナも元気良く返事をする。それにヒロさんはとても満足そうにうなづく。



「あー、なのはちゃん。結界の方はオーケー?」



ヒロさんの視線が別のものに向く。それは幾何学的な色をした空に向かって。

その言葉に答える声がある。・・・冥王だ。



『はい、そっちはバッチ・・・って、だから冥王じゃないよっ!! ・・・うぅ、久しぶりに会ったのになんだか意地悪だね』

「だって、なのはは『冥王星計画−星』だから。レイジングハートに次元連結システム搭載してるじゃないのさ」

『さりげなくランクアップさせないでよっ! そして搭載してないからね、そんな機能はっ!!
というか、普通に冥王って言えばいいでしょっ!? どうしてそういうややこしい言い方するのかなっ!!』



うむぅ・・・なんと言うか、相変わらずいじめ甲斐のある女である。反応がいちいち面白くて面白くて。



『いいもんいいもん。恭文君がそういう風に私に意地悪するなら、私にだって考えがあるよ?』

「ほう、なにさ」

『シャマルさんやお姉ちゃんから、なぜかずっと現地妻ズに入るようにって言われてるんだけど、もう入会しちゃおうかな。それで、私は恭文君の現地妻6号だよ』



お願いだからそれはやめてー! つーか、解散してなかったんかい、あのバカ組織っ!!



『なんだか、再結成したんだって。今度はあくまでもファンクラブ的な感じで、暖かく恭文君とフェイトちゃんの交際を見守っていこうとかなんとか』

「だったらまずその名称と会員ナンバーをやめてよっ! 普通に誤解されるでしょうがっ!!」



くそ・・・決めたぞっ! 今度絶対に叩き潰してやるっ!! 普通に存在しているだけでフェイトのヤンデレ化フラグが成立しそうじゃないのさっ!!



『・・・おじいさま、この頃からなのはさまに対してこれなんですよね』

『まぁ、世界広しと言えど、エースオブエースに対してこんな真似するのはアイツだけだけどよ。
・・・あ、ヒロリスの姉御。結界のほうはアタシに咲耶、リインも協力してそうとう硬いのに仕上げてるから、もう遠慮なくやっちゃっていいぞー』

「お、アギトあんがと。あとで美味しいアイス食べさせてあげるよ。・・・やっさんがね」

「僕かいっ!!」



まぁいいや。この模擬・・・って、やばい。今のは死亡フラグだ。あぶなあぶな。



『つーかよ、アタシとしてはお前が例のパス持ってるようなら、遠慮なくユニゾンしたいんだけどよー。なぁ、久々にブレイズフォームやろうぜー? アタシも暴れたいー』

『あー、アギトちゃん浮気ですー。シグナムに言いつけてやるですよ〜?』

『うっせぇバッテンチビがっ! 浮気じゃないっつーのっ!! つーか、お前は普通に恭文とユニゾン出来るからいいだろうがっ! アタシや咲耶はパスがなきゃ無理なんだからこれくらいでガタガタ言うなっ!!』

『バッテンチビじゃないですっ! なんでまた言い方が戻ってるんですかっ!?』



そう言いながら、空から盛大な口喧嘩が・・・あの、おーい。聞こえてるからね? お願いだから二人とも落ち着けー!!



『あら、ここは当然・・・私とユニゾンしてアクセルフォームに決まっていますわ。愛する人の代わりにその人のおじいさまと身を一つにする。・・・私、悪女ですわ』

「とりあえず咲耶は黙れー! そしてそんなR18要素を持ち込んでユニゾンしてたんかいっ!!」

『いえ、こう言えば恭さまがヤキモチを焼いてくれるかと』

「その当て馬として僕を使うなっ! そして本人どこにも居ないだろうがっ!!」



空に向かって叫ぶ。いや、姿が見えないからこうするしかないんだけどさ。と、というか・・・ガーディアンの皆が見てるんだから、そういう危ない発言はやめて欲しい。

もっと言うと・・・フェイトが怖い。いや、真面目に無いから。確実に無いから、これ。



「んー、じゃあアギトだけ来る? さすがにアクセルフォームは使われたら一瞬で終わりそうだしさ」

『え、いいのっ!?』

「いいよいいよ。燃える女の意地、久々に見せてやりたいだろ? せっかく観客も居るんだし、派手に行こうじゃないのさ」



待て待て、いいんかい。つーか、それでこの模擬戦をやることになった意義とかそういうのは・・・あぁ、無視ですよね。うん、分かってました。すっごく分かってました。



「あー、なのはちゃんにヴィータちゃん、それでいい?」

『・・・ダメです』

「なんでっ!?」

『結界スタッフをこれ以上減らせないからですよっ! 真面目にお願いしますからアギトを連れて行かないでくださいっ!! 私・・・もしこれ以上人が減ったら、恐怖に押しつぶされますっ!!』



・・・ねぇ、なのは。僕は色々気になるんだけど、どうしてかな。

なんか、結界スタッフ減ると被害が出るのが決定みたいな言い方されてるんだけど。というか・・・あの・・・ねぇ?



「あぁ、分かった分かった。んじゃ・・・このまま始めようか」

「・・・いや、待て待て。お前ら待て待て」



サリさんがいきなり頭を抱えて僕達を見る。それも非常に残念そうな瞳で。・・・なぜだろうか?



「今まで黙って聞いてれば・・・なんだよ、その思いっきり原始人レベルなルールはっ! 出すヒロもヒロだが納得するお前らもおかしいからなっ!? ちったぁ落ち着けよっ!!」

「なに言ってるんだよサリ。人は戦いを前にすると、誰だって原始に帰るんだよ。闘争本能全開になるんだよ」

「そうですよ、今更何を言っているんですか」

「アンタ、そんなんだから彼女に振られるんだよ」



戦いと言うのは心が躍る。心が躍るというのは、本能的なもの。つまり、原始に帰るのですよ。

ほら、素晴らし過ぎて涙が出る理屈じゃないですか。一体なんの問題が・・・。



「なるわけないだろうがっ! そしてお前らが『何言っているんですか』だからなっ!? 普通に平然とふざけた事言ってるんじゃないよっ!!
つーか、そんなに原始に帰りたいならお前とやっさんだけで帰ってくれないかなっ!? 俺やティアナちゃんを巻き込むなっ! そして俺はドゥーエに振られてなんていないんだよっ!!」

「・・・サリ、大丈夫。みんな分かってるから。色々あったんだよね」

「お前もその慰めモード全開で発言するのやめろよっ! 普通に今も仲良くしてるっつーのっ!!」



どうやら、そこだけは重点的に分かって欲しいらしい。サリさんが見ていてちょっと悲しくなるくらいに・・・必死だ。



「・・・もうなんでもいいから、模擬戦始めましょうよっ!!」

「ティアナちゃんっ!? なに平然と受け入れてるのっ! ちょっとはおかしいとか思おうよっ!! ツッコミキャラなのに俺ばっかりにツッコませるっておかしいからねっ!?」

「誰がツッコミキャラですか誰がっ!! てゆうか、この二人相手にそれ思ってどうにかなるんですかっ!?」

「・・・なるわけがないっ! ごめん、俺すっごく分かってたよっ!!」



・・・なんだろう、すっごく馬鹿にされたような気がするんだけど、気のせい?



「そうだよね、ひどいなぁ。やっさんはともかく、私はまともなのに」

「なに言ってるんですか。僕の方がまともですよ」



今更何を言うのだろうか。僕がヘイハチ一門の中で1番まともなのに。



「なんだってっ!? アンタがまともなら私は神になれるよっ!!」

「どういう意味ですかそれはっ!! ヒロさんが神なら僕は神すら生み出す創造主になれますよっ!!」

「ふざけんなっ! アンタが・・・あれだよっ!? 神すら生み出す創造主なら、私はそれすら超越する原種だよ原種っ! 31とかをすべるなんとかマスターだよっ!!」

「ヒロさんが原種なら僕はソレを破壊するジェネシックな」

「あぁもう、お前らも落ち着けっ! つーか、いったいどこの子どもの喧嘩っ!? いや、もう中二病だよ中二病っ!!
しかもなんか途中からガオガイガーっぽい要素が混じってるしよっ! とにかく・・・始めるぞっ!!」










サリさんの宣言が入り、僕達は全員・・・構えた。





こうして、久しぶりに姉弟子、兄弟子達との戦いは始まったのである。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ん?」

「ヨル、どうした」

「いや、なんかこう・・・空気がおかしいというかにゃんというか」

「なんだ、それ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”で、ティアナ、作戦は?”

”まず、アンタは前に出て二人を引き付けて。その間に私は隠れて、誘導弾と幻術でサポートする”

”ということは・・・あれ? ヒロさん達を僕だけで相手しろと”

”そうよ”



またキツイなぁ。もうちょっとなんとかならない?



”でも、これしかないでしょ? 私が前に出ても、普通にやったんじゃヒロリスさんの接近戦スキルには当然対応出来ないし、サリエルさんも同じ。
あと、必要以上に固まるのもアウトよ。ヒロさんもサリさんも、範囲系の攻撃を持ってる。一気にやられるのがオチよ。やられなくても、崩されてそこからアウト。連携するにしても、私とアンタは距離をつかず離れず・・・って感じね”



アメイジアのサーペントフォルムや金剛のゴウカモード・・・特にサリさんは、砲撃や誘導弾も使えるからってことか。



”セブンガンモード使わないなら、基本はこれよ。まぁ・・・そう上手く行かせてもらえるとは思わないけど”

”大丈夫”



アルトを両手で握り締め、正眼に構える。そして、見据える。二人の・・・敵を。



”上手く行かせるから。ティアナ・・・後ろは任せたからね”

”了解”





そして、僕はそんな会話をしてから、ジガンからカートリッジを1発ロード。そこからすぐに魔法を発動。



それは当然・・・これっ!!





≪Axel Fin≫




背中から広がる翼は、青く、闇夜を照らすかのように輝いていた。僕の周囲に舞い散った同じ色の羽も同じ。



二人相手に戒めありでなんとかなるなんて思えない。ここは・・・一気に行く。




≪ほんじゃま・・・行きますか≫

「いや、それ僕のセリフだからねっ!?」





とにかく、僕はアクセルを羽ばたかせ、突撃した。そして、そんな僕に向かって当然のように誘導弾の嵐が来る。それをアルトで斬り払いながら、前へ進む。発生する爆風の嵐の中を突っ切るように、前へ・・・前へと突出する。



そうして、1番最初に突っ込んできたのは・・・ヒロさん。左のアメイジアを振り払うように袈裟に打ち込んでくる。僕も同じように、アルトを打ち込む。二つの刃がぶつかり、夜空に火花を散らす。

ヒロさんは打ち込んだ勢いを殺さず、今度は右のアメイジアを真一文字に打ち込む。それを僕は一歩下がって、ギリギリでよけ・・・られない。途中で剣先が止まって、突きになったから。

その鋭い突きを体を右に捻って、反射的にかわす。刃はそのまま僕の腹を狙って横に打ち込まれたけど、そこからアクセルを羽ばたかせて、大きく後ろに飛んで避ける。





「・・・へぇ、今のを避けるか。それもガードもせずに」





どこか嬉しそうにヒロさんが言う。それからその場でトントンと軽めに跳躍すると、飛び込んできた。



・・・いや、足を止めた。瞬間、僕に向かって左から大量の誘導弾が打ち込まれる。数・・・20。最初からまた飛ばしてるなぁ。

僕は右に大きく飛ぶ。誘導弾はなおも追いかけてくる。まず、左手を向けて・・・魔力スフィアを形成。それを誘導弾達に向ける。





「クレイモアっ!!」





放たれた散弾は貫く盾となり、誘導弾の大半を撃墜する。その爆煙を突っ切るように、数発の生き残った弾丸が襲ってくる。

アルトを袈裟に打ち込み、刃を返し切り上げ、目前に迫ってきたのをしゃがんで避けて、そこからまた袈裟に打ち込み1発。

体を捻るようにして、背後から迫ってきたのを左からの真一文字を打ち込んで斬る。



まだ迫って来るのが数発。丁度背後に来るそれを・・・僕は避けなかった。だって、避ける必要がないから。

下から突き上げるように、オレンジ色の誘導弾が撃ち込まれる。それは僕の背後を取っていた弾丸を全て打ち落とした。





”お待たせ”

”随分速かったね”

”私、待ち合わせには遅れたくない主義なの”

”そりゃいいことだ”





そしてそこから・・・近くの家の屋根にティアナが現れた。数発の誘導弾を周りに置いて、それらを放ち、ヒロさんを狙い打つ。



そこに白の誘導弾がすかさず入り込み、それらを撃墜。その間にヒロさんは・・・僕へと迫っていた。





”彼氏が出来てからもそうした方がいいよ? 末永くお付き合いが続くから”

”そう、じゃあそうしておくわっ!!”





下から逆袈裟に、右のアメイジアで打ち込まれた一閃を、後ろに下がる事で回避。そこから襲ってくる斬撃達を、アルトを使って防ぐ。

その間にもいつの間にか出現した幻影達からオレンジ色の弾丸が放たれる。それをサリさんが撃墜していく。

そして、それはティアナも同じ。僕へと迫ってくる誘導弾を、ティアナが撃墜してくれる。ここまでは・・・一応だけど互角。



・・・集中して。この1年の成果・・・見せなきゃ意味がない。それに、ヒロさんとサリさんはそういう意味でもいい相手だ。遠慮なく・・・試せる。





「ほらほらっ! そんな防戦一方でどうすんのよっ!!」

≪ボーイ、やっぱ弛んでるだろっ!!≫



そう言いながら、左のアメイジアから袈裟に打ち込まれる。それを左に身体をずらし寸前で避ける。



・・・ガタガタとうるさいっ! 弛んでるかどうかは、これを受けてから言えっ!!





「鉄輝・・・!」





打ち上げるは青い刃。これで仕留める気満々の一撃を放つ準備を、僕は調える。





「一閃っ!!」





そこから、アルトを左から打ち込む。それをヒロさんが少し距離を取って右のアメイジアで防ごうとする。

それを見て・・・いや、覚えた僕は、ただ打ち込むのではなく、刃を捻るように、リーチが伸びるように・・・右腕を捻った。



だから、ヒロさんは防げなかった。アルトの刃がアメイジアの刃をすり抜けるように動いて、そのまま・・・青い刃はヒロさんの胴を薙いだ。

体勢が崩れる。そこを狙って・・・刃を返し、今度は外側から打ち込む。

でも、ヒロさんは咄嗟に上に跳んでその斬撃を避けた。僕が追撃をかけようとすると、左側面に白い光が迫る。





「・・・邪魔っ!!」





刃を返し、右からの袈裟の一閃でその光を斬る。目の前には爆発。それの衝撃と爆煙が僕を包み込むけど、全く問題無い。



つーか、これ・・・サリさんの砲撃か。





”アンタ、大丈夫っ!?”

”問題無い。・・・この程度の砲撃なら斬れるの、知ってるでしょ?”

”・・・普通は砲撃なんて斬れないし、斬ろうなんて思わないのよ。アンタ、そろそろ自分がマイノリティだって自覚しなさい”

”失礼な。僕は世界のスタンダードだって言うのに”





そんな会話をしながら、僕は右からアルトを振るい、包み込む爆煙を斬る。



そして、その間にヒロさんには距離を取られて・・・再び、僕達は対峙する。だけど、ヒロさんの白のバリアジャケットには、確かに斬撃を受けた痕。





≪・・・上手く出来ましたね≫

「なんとかね。いや、高町家様々だよ」










アルトを・・・正眼に構える。そして、そのままアクセルを羽ばたかせて、僕はヒロさんに向かって飛び出した。夜空に青く輝く羽が舞い散る。





周りから襲って来る誘導弾は、ティアナが撃墜してくれる。だから、僕は遠慮なくヒロさんに向かえる。・・・やっぱ、ティアナが背中に居ると安心出来るわ。なんでだろうね、この感覚は。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・くそ、1発もらった。咄嗟に身を引いたから浅めで済んだけど・・・下手したらこれで終わってたぞ。





つーか、この感覚・・・私は知ってる。思い出せ、思い出せ・・・。










”ヒロ、大丈夫か?”

”なんとかね。つーか、やばかったかも”





やっさんの斬撃に対応しつつ、サリの声に応える。サリはと言うと、ティアナちゃんの射撃に対応中。そして、対応され中。あ、それと・・・幻影だね。

やっぱりティアナちゃんはこういうサポートやらせると強いなぁ。サリの援護、全部的確に潰すもの。それに、幻影のせいで本人がどこに居るかも分からないと来てる。

その上、サリの方にまで攻撃をしてくる。まぁ、全部撃ち落してるけど。・・・うん、フェイトちゃんの所でのうのうと補佐官してたわけじゃないね。かなり腕上げてるよ。



追ってくる誘導弾を飛び下がりながらサリが金剛の切っ先を向けて撃ち落す。その爆煙を突っ切ってきたものは、金剛を左から一閃させて斬る。

それからすぐ、魔力弾を数発生成。一気にぶっ放す。夜の闇を斬り裂く白い弾丸達は、屋根の上に居る数人のティアナちゃんを打ち貫く。

でも、ティアナちゃん達は消えた。・・・全部、幻影かい。そして、消えたのと同じ分だけ再び姿を現す。で、当然また連射ですよ。



こうなってくると・・・まずいなぁ。サリの遠距離攻撃は砲撃でもない限りは全部潰される。当のご本人様を攻撃したくても、相手の位置が分からない。砲撃に関しても、やっさんが砲撃斬るから、あんま効果ない。





”サリ、ゴウカモードで最大出力は?”

”それならさすがに斬られずに・・・いや、やっさんなら斬れるな。現に高町教導官のエクセリオンぶった斬ってるし”



・・・魔導師ランク試験の時か。確かにあれもすごかったねぇ。その内スターライトを斬れそうな片鱗が見えたもの。



”まぁ、直撃すれば沈められるだろうが・・・その前に避けられると思うぞ。アクセルの加速は半端じゃないしな”

”それ以前の問題として、私が形状変換を行えば・・・または、砲撃のチャージ時間で気づかれるに決まっています。蒼凪氏が気づかなくても、ランスター女史が気づくでしょう”

”ツンデレガール、指揮官資質持ちだしな。ボーイにも、この瞬間にも指示バシバシ飛ばしてるぜ?”

”くそ、パーフェクトカップルの名は伊達じゃないってか? そりゃあフェイトちゃんやスバルちゃんが嫉妬するはずだよ”





サリもやっさんに接近して・・・という手もあるだろうけど、それをティアナちゃんが許すはずがない。なにより・・・下手に接近はかなり危ない。今のやっさんの近接スキルは・・・下手したら私ら上だ。

もちろん、こう思うのは理由がある。やっさんの手札の中にはあるからだ。私とサリ、二人を相手取っても・・・一瞬で潰せるであろう切り札が。

あのスピード、見切るのはかなり辛いしね。反射神経と勘の良さに背中を預けるしかないのよ。



一人潰されたら即終了の状況で、それはやめたい。やっさんの事だ、私達二人が同時に襲ってきたら遠慮なく使ってくるに決まってる。





”ヤバイどころじゃないだろ。やっさんの奴、何時の間に貫マスターしてんだ”



・・・貫?



”ほら、前に美由希ちゃんとの組み手でお前がやられたやつだよ。相手の攻撃パターンを身体で覚えて、その合間をすり抜けるように攻撃を繰り出すってやつ”



あぁ、思い出したっ! あの防御をすり抜けられたような感覚・・・あれかっ!!

くそ、マジでチート剣術だね御神流。対応が・・・わっとっ!!



”ヒロっ!!”

”大丈夫っ!!”





今度は胸元に来た。そのせいで、こだわり抜いたジャケットにまた傷が・・・あぁ、しかも今回はちょっと深めだしっ!!



くそぉ・・・やっさんのくせにっ!!





”普通に弛んでたわけじゃないらしいな。1年前なら貫を連発なんて出来るわけがない”

”シャーリーちゃんから聞くに、件の猫男・・・あのガーディアンの子達の知り合いみたいらしいしね。そういうのもあったんでしょ”

”身内関係に甘いのは相変わらずと。だが・・・”





再び、私の防御をすり抜けるようにやってきた斬撃を下がって避ける。そこから刃を返すように袈裟から一撃。それを身を捻って・・・胸元のアーマーにちょっとかすったけど、なんとか避ける。そこから一気に地上へ急降下。私は近くの家の屋根に着地する。

なんだかその衝撃で若干屋根が砕けたけど、きっと気のせいだ。というか、結界張ってるからいくら壊してもオーケーだし。

でも、ジっとはしてられない。上空から青い翼を羽ばたかせて突っ込んでくる影があるから。そう、やっさんだ。



やっさんが上段から勢い良く私に向かって打ち込んで来る。それを身を前に転がるように回転させて回避する。やっさんの斬撃は屋根を斬り・・・いや、砕いた。やっさんの斬撃の衝撃で屋根に穴が空く。

私はその隙を狙って背中から右手を振るい、斬撃を打ち込む。やっさんがその場で身を回転させて、捻るようにその斬撃をすれすれで避けて・・・私の身体の右側を狙って斬撃を打ち込む。

私はすぐに刃を戻しそれに向かって打ち込む。だけど・・・外れた。刃がまた私の斬撃をすり抜けるようにして、私のわき腹へと迫る。



咄嗟に左に飛んで、刃ではなくナックルガードでやっさんの斬撃を防ぐ。そして、そのまま空中で着地。私は構えて・・・やっさんと対峙した。





”マジでチートでしょうが御神流っ!!
こりゃ・・・加減出来ないね”

”するつもりもないだろうが”

”当然、やっさんはまだ神速も使ってない。これで加減してどうこうなんてやってたら、私が潰される”



・・・なんか、悔しいなぁ。やっさんにここまで追いつかれてるとはさ。フェイトちゃんとラブラブしてただけじゃなかったってことですか。

でも、まだ抜かせない。ロートルではあるけど、私にだってね・・・姉弟子としての意地があるのよ。



”なにより・・・楽しくなりそうだしさ。サリ”

”分かってる。・・・そろそろ様子見は終わりだな。俺も俺で勝手させてもらう。ここからはサポートできないぞ”

”問題無いよ。さて、派手に・・・行こうかね”




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あきゅろす。
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