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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第8話 『Remake The Dream&EGG』:2



「・・・・・・あむっ!!」

「恭文、そっちはっ!?」

「全然ダメ」



2階部分をぐるりと回る形で移動して、ある程度は片した。片したけど・・・・・・全然だめ。

だから合流したあむも僕も、苦い表情をするのよ。



「片せど片せど幻影ばっかり。ロボットの方はだいぶ減ったけど」

「そっか。ごめん、こっちも同じく」

≪やっぱり、こういう状況は向こうのテリトリーですね。
真正面向かい合ってなら私達に分があるのですが≫

【ここ、隠れるところ沢山あるもんね。恭文の話通りなら、幻影に全部の攻撃任せられるわけだし】



そこなんだよなぁ。くそ、普通にこの混戦だと取れる手段が無いぞ。



【ねぇ恭文、こういう時普段の恭文だったらどうするの?】

「んなもん、外に脱出して高火力攻撃で建物ごと吹き飛ばすに決まってる」

「恭文、いつもそんな事してるのっ!?」

「してるね。人質無視は僕の常套手段だもの。ただ、今回はもうだめ」





まず×たまを巻き込む事になる。そんな事したら、普通にイースターの連中と同類だよ。

昨日のはそれをやるというハッタリが通じる相手だったけど、今回は違う。

そして次にあむと唯世達の存在だ。増援が欲しかったのは確かだけど、そこはメリットばかりじゃない。



内部に味方が多数突入するという事は、外からの過剰火力による攻撃の選択を潰す事になるもの。





【確かにそうだね。唯世達もティアナさん以外の×たまだって居るわけだし、それは絶対だめ】



ミキはとても頭のいい子だと思う。だって、魔法の事とか戦略の事とかさっぱりのはずなのによ?

それでもちゃんと僕の思考についてきてくれてる。だから唯世達の話がすぐに出てくる。



【でもさ、おかしくない?】

「ミキ、おかしいってどういう事?」

【あむちゃん、考えてみて。唯世達も相手してるらしいし、ボク達が倒しただけでも結構数が居るよ?
それを同時に動かして攻撃して再生産・・・・・・恭文、魔法でもそこまで出来るものなの?】





僕はその言葉に首を横に振って答えた。・・・・・・ティアナの魔力容量ならこんな真似は絶対に出来ない。

幻影は出すのもそうだし、動かすと唯世さえ・・・・・・じゃなかった。ただでさえ大きい魔力消費が更に増加するんだから。

でも、唯世達が今相手をしているのも含めて、最低でも同時に10数体はコントロールしている。



それもしっかりこちらの攻撃行動に対応させた上でだ。



それだけじゃなくて、次々に新手を生んでもいる。どう考えてもおかしい。





「なら、多分ティアナさんの×キャラが幻術を使っているからだよ。
元々×キャラの能力は魔法とかとは違うものなんだし、一緒にするのがおかしいんじゃないかな」





ランが困った顔をしながらそう言って・・・・・・あ、なんか膨れてる。

でもそうだね。人形のおかげで能力強化もされてるらしいし。

そして、×キャラ自体も普通のものより強い力を持ってたって言ってたし。



ティアナが昏倒するまで夢を大事にしていたから、そのせいなんだろうね。





「あぉもうっ! 二階堂先生、本当にとんでもない事してくれたよねっ!! 私、ちょっと今回はプンプンだよっ!!」

「はわわ・・・・・・でもでも、どうすればいいですか?
このままじゃ恭文さんもあむちゃん達もお疲れで倒れちゃいますぅ」

≪確かにそうですね。これは消耗戦の装いになっています≫





僕はまだ大丈夫だけど、あむや唯世達の体力の方が問題だ。てーか、マジでよかったよ。

こっちの幻影が、シャーリーやこっちの機材で調べられてさ。

アルトが感じる×たまや×キャラの気配、暫定的でもデータ化しておいて正解だった。



そうじゃなかったら、普通にアウトだったかも。うーん、さすがはシャーリー。出来る女だね。





「大丈夫、そういう時は二曲目で」

「あ、それなら安心ですねぇ」

『それで安心するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・なぎ君とアルトアイゼンから送られてきた幻影のデータ・・・・・・よし。





研究室の全体像に、現在その中に居る存在全ての位置の把握・・・・・・よし。





というわけで一斉検索・・・・・・いくよっ!!










「・・・・・・・・・・・・ビンゴっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『なぎ君、あむちゃん、お待たせっ! 本体と幻影の割り出し作業、終わったよっ!!』

「マジっ!?」

『マジだよマジ。・・・・・・二人とも、この借りは大きいよ? あとでしっかり返してね』

「あの、ありがとうございますっ!! ・・・・・・それで、あの人形の本体は?」

『・・・・・・それがね、3階・・・・・・なぎ君達がさっき居た場所なの。あの大広間に居る』



・・・・・・幻影で姿を消してたって事か。くそ、なんつうめんどい事を。

という事はもしかして、今3階に居る二階堂、かなり危ないんじゃ。



「あむっ!!」

「うんっ!!」





そこから全速力で一気に3階に駆け上がる。そして、再び機械の置いてある大広間に突入。

すると・・・・・・二階堂が居た。なお、放置してました。

だっていくらなんでもこの状況であむなり僕が張り付いて、それで戦力減らすわけにはいかないし。



でもとりあえずは良かった。普通に蜂の巣も想像してたしさ。





「・・・・・・君達、どうして戻ってきたのさ」

「簡単だ。ここに人形の本体が居るらしい」

「はぁっ!?」



でも、どこに? 気配は探ってみたりするけど、どこにもそれっぽいのが。



【・・・・・・あむちゃん、恭文、アレっ!!】



そう思った次の瞬間だった。大量に有った×たまが・・・・・・消えた。



「×たまが消え・・・・・・いや、違う」



×たまが消えた代わりに現れたものがある。それは黒い人形。

だけど、今までとは違う禍々しい感じがする。というか、なんか黒いオーラ出してるし。



「・・・・・・そっか。あの×たま達を吸収してたんだ」

【だから本来のティアナさんの魔法を越える形で、幻影も大量に作れた。
そして大量の同時コントロールも出来た。・・・・・・というかさ】

≪あぁ、そうですね。自分が作った人形に知らない間に勝手をされて、計画を自分からぶち壊しにしてたんですよ。
あれ、マジでバカですね。多分マスターを含めた戦力を潰すにはこれくらいしないとだめと判断したんでしょ≫



まぁ、そこはいいじゃないのさ。とにかく、ようやくご本人と対面だ。

コイツを浄化すれば、あの×たま達もそうだしティアのたまごも取り戻せる。

まさに一石二鳥どころか三鳥・・・・・・いや、四鳥くらいついてもいい状況。



僕はアルトを構える。あむは筆。そして、黒い人形も構えた。





「・・・・・・え?」





あむが驚いた声を上げる。それはそうだ。だって自分の眼前に人形が居るんだから。



そのまま、銃を構え・・・・・・いや、銃剣に変えて斬撃を打ち込む。



待て待てっ! なにさあの速度っ!? くそ、マジでパワーアップってわけっ!?





「きゃあっ!!」

「あむちゃんっ!!」





そこに即座に飛び込む。いや、左に大きく跳ぶ。次の瞬間、右のガトリングが火を噴いた。

床に着地して再び人形を見据えると、もう目の前に居た。

そのまま身体を時計回りに回転させながら、刃を打ち込んでくる。



僕はアルトで斬撃を防いで、そこから身体を捻るように人形の左側に回りこむ。それから唐竹に反撃。





「はぁぁぁぁぁっ!!」





人形はその斬撃を銃剣の左の刃で受け止める。そのまま人形が引き金に指をかけ、引いた。

ガトリングが火を吹き、弾丸が大量発射された。だけど、それでは遅かった。

僕はもうまた左斜め後ろに跳んで、大きく距離を取って散弾を避けてる。その間に人形も動く。



人形が両手の銃剣を天井近くまで放り投げる。それから、人形の周辺に変化が起こる。

自分の近くに現れた黒い歪みに向かって手を伸ばす。

伸ばして取り出したのは、ライフル。それを僕に向けて、数発撃ち込んできた。



僕はそれから放たれた弾丸を全てを斬り払う。その間にあむが動く。





「カラフル・・・・・!」



後ろからその隙にと言わんばかりに筆を振るう。その軌道から生まれるのは、虹色の絵の具の奔流。



「キャンバスッ!!」





でもライフルが中ほどから折れて、その先にもう一つ銃口が存在している。

実はこのライフルは、仕込みギミックで瞬時にマシンガン形態になる。

作ったヒロさんが・・・・・・あの、あれだよあれ。00が大好きなのよ。



もっと言うとケルディムが好きで、こういう仕様に・・・・・・って、こんな話してる場合じゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





≪あむさんっ! 下がってくださいっ!!≫

「え?」



遅かった。その瞬間、銃口から大量に弾丸が放たれ、あむに雨のように降り注ぐ。

自分に迫っていた絵の具を弾丸で蹴散らし、霧散させてあむへと無慈悲に直進。



「く・・・・・・!!」





あむが筆を目の前にかざすと、僕達の使う防御魔法・・・・・・プロテクションのような青い障壁が発生。



それが盾となり、黒い弾丸を防ぐ。防ぐけど、数発突き抜けて迫る。



・・・・・・って、やらせるかいっ! ソニックムーブで一気に。





≪Sonic Move≫



瞬間、あむの身体がその場から消えた。生まれたのは光。その光はあむを40メートル程後ろに連れ去った。

ソニックムーブなんだけど・・・・・・僕じゃ、ない。あれは金色に染まりし、全てを斬り裂く雷光だ。



「・・・・・・あれ、あたし大丈夫? え、無事?」

「間に合ってよかった。あむさん、怪我とかないかな」

「見る限りは大丈夫そうですけどね」



あむを抱えて、優しく声をかけるのは、金色の髪をツインテールにして、マントを羽織った一人の女性。

そしてもう一人は黄色を基調としたチャイナドレスを着た身長30センチ程度の同じく金色の髪で、こちらはポニーテールにしてる女の子。



「はい、あの・・・・・・え、フェイトさんっ!? あと、もしかして横の小さいのは・・・・・・咲耶さんっ!!」

「正解です。あむさま、よくお分かりになりましたね」



その二人は、バリアジャケット姿のフェイトと咲耶だった。・・・・・・さっきのはフェイトのソニックムーブ。

で、ここで話が終わればいいんだけど、終わるわけがない。人形はあむとフェイトに銃口を向けていた。



「・・・・・・させるかボケっ!!」

≪Sonic Move≫





今度は僕のソニックムーブ。一気に踏み込み、人形の眼前へと青い閃光となり迫る。

そしてそれに対して人形が、右足でミドルキックをかましてきた。

僕は伏せて回避。続けてかかと落とし。そこから薙ぎ払いと足での追撃が来た。



それらも横へのローリングとジャンプで避けてなんとか無傷。ジャンプしてから、アルトを右薙に打ち込む。

それを人形はしゃがんで避ける。すぐに刃を返して唐竹に打ち込むけど、今度は後ろに転がるようにして避けた。

そこを狙って、僕も右足での回し蹴り。人形はライフルでガードしたけど、僕は当然のようにそこから力押し。



無理矢理足を振り抜いて、人形をそのまま後ろに吹き飛ばした。





「恭文さんっ!!」

「リインっ!!」





いつの間にか、リインが横に居た。・・・・・・なら、やる事は一つっ!!

僕は急ぐように左手で取り出した蒼い空色のベルトを腰に巻く。

そして同じ色のパスを取り出し、素早く開いてからカードスロットを展開。



そこにアルトを持ちつつ右手で二枚のカードを入れる。



挿入するカードは、『Sound』と表記がされているカードと、リインのカード。





≪Sound Ride Set up&Fusion Ride RinforceU Set up≫

「リイン、一気に行くよっ!!」

「はいですっ!!」



僕はパスをそのまま・・・・・・セタッチっ!!



≪Vinculum Form≫





そして光が僕達を包んだ。生まれるのは極光。今を壊す闇を払い、光と言う名の未来へと繋ぐための力。

僕とリインはその光の中で一つになる。身体を包むマントと制服デザインなジャンバーが外れる。

左肩に蒼い肩当てを装着。肩当ての根元に丸い銀色の金属製のパーツ。その丸の中に、雪の結晶の形が刻まれる。



肩当てから左の二の腕を包むように白いケープが現れる。腰にはリインと胴型のフード。

それと白のインナーとジガンスクードと右のガントレットと足の具足が、薄い氷に包まれた。

そうかと思うと、それがすぐに剥がれ空色に染まる。そして、蒼い光が弾けた。



弾けた光は雪となリ、それらが集まり一つの形を作る。それは・・・・・・羽。



氷の羽が舞う中で、僕達は本当の姿を現した。





≪The song today is ”Double-Action Vinculum Form”≫

「・・・・・・最後に言っておくっ!!」



アルトの刀身を右肩に載せつつ、左手で驚くように動きを止めた強化ボディを指差す。

こんな状況を終わらせるために。大事な友達の今を取り戻すために・・・・・・最初に言っておく。



「僕達はかーなーり・・・・・・強いっ!!」

【ついでに言っておくのですっ! リインは放置プレイでプンプンなのですよっ!?
普通にムカつくので、ストレス解消に大暴れしてやるのですー!!】

「・・・・・・ごめんなさい」





これはリインとの結構久々なユニゾン形態っ! その名も皆様ご存知ヴィンクルムフォームッ!!



なお、現在流れてる曲は・・・・・・うん、なんでか僕達がうたってるバージョンなの。



あれ、おかしいなぁ。うたった記憶ないんだけど、前回パス渡された時には普通についてたし・・・・・・あれ?





「な、な・・・・・・なにやってんのアンタっ! つーかマジでどんだけ電王大好きっ!? それ以前にこの歌はなにっ!!
いやいや、それ以前に・・・・・・リインちゃんどうしたっ!! なんでしゅごキャラみたいに恭文と一つになってるのっ!?」

【あむちゃん落ち着いてっ! あんまりにアレ過ぎて混乱するのは分かるけど落ち着いてー!!】

「うっさいっ! 細かい事は気にするなっ!! 行くよ、リインっ! アルトっ!!」

≪【はいっ!!】≫





そのまま、僕達は倒れていた黒い人形目掛けて飛び出した。人形は・・・・・・もう立ち上がりかけていた。

そこに丁度銃剣が落ちてきた。人形はライフルを再び現れた黒い歪みの中に放り投げる。

それからそれらを上手くキャッチすると、即座にショットガンを1発。僕は右に大きく跳び、すぐに迫る。



銃口がこちらを向く前にアルトを右から銃に対して打ち込み、その先をズラす。

今度はガトリングが向いてくる。だけど、人形の右側に回りこむようにして、その銃口から逃れる。

当然銃口が僕達を追いかけてくるけど、僕の動きの方がずっと速い。



やや背中側まで移動して、そこからアルトを左から振るっての一閃。

それを人形は身体の正面を向け、両手の銃剣の銃口の下の刃を盾にして受ける。

次の瞬間、やっぱりと言うべきだろうか。散弾とガトリングが火を噴いた。



僕の居た空間を弾丸達が埋め尽す。でも、僕は攻撃を受け止められてからすぐに上に飛んでる。

やっぱり長期戦は不利か。僕はともかくあむ・・・・・・いや、下の唯世や空海達が持たない。

向こうはロボットと幻影の混成軍団に苦戦してると思われるので・・・・・・短期決戦で決めるしかない。





≪Axel Fin≫





飛びながら僕は、左手のジガンからカートリッジを1発消費。

背中に蒼い翼が生まれ、羽ばたき、その羽を辺り散らす。

そうして身体を捻り、人形を飛び越えながら、人形の左の肩口に向かってアルトの刃を打ち込む。



刃を包むのは青い魔力。それは鋭く斬れる刃を構成する。

一人分じゃない。僕とリイン・・・・・・二人の魔力が交じり合っていく。

混じり合い、一つの新しい力となって、普段よりも強い形となる。





【「鉄輝・・・・・・!」】



上下の概念から言うと刃を斬り上げる形で振るい、人形の肩の後ろ側に切っ先より少し下の部分を叩き込む。

人形は避けられずに、刃をその身に食らう。刃と柄を通して、手から伝わる感触は多少硬いけど・・・・・・問題ない。



【「一閃っ!!」】



そこから一気に引き斬り、その腕を・・・・・・肩から斬り落とした。

そうしながら僕は後ろにしゃがむように着地。それからすぐにアルトを鞘に収める。



【リイン達の全力全開、いくですよっ! アルトアイゼン、フルドライブスタートですっ!!】

≪Standby Ready≫

【イグニッションッ!!】

≪Charge and Up≫





アルトの刀身に魔力を込める。そして、鞘の中で込めた魔力がアルトを包み込む。

僕は瞬時にその魔力を蒼く・・・・・・鋭く斬れる刃とする。

凍れる息吹を内包した、一振りの刃を、鞘の中で打ち上げる。



ただしそれは普段よりも強く、鋭い形となっている。・・・・・・これで決まりだっ!!





【「凍華・・・・・・!】





人形が肩を斬り落とされたのを気にも留めていないかのように、こちらに振り向く。

いや、後ろに跳びながら僕に銃口を向けてくる。・・・・・・でも、遅い。

僕はとっくに振り返りながらも踏み出して、体勢を整えているんだから。



背中のアクセルが羽ばたき、僕を加速させる。周囲に魔力で構成された蒼い羽が舞い散る。

その中を僕はアクセルの過剰とも言える加速力により駆け抜け、距離は既に零距離。

宙を飛ぶ人形がこちらへ振り返り、銃口が完全に僕のほうを向く前に接近は出来た。



なので僕はアルトを抜き放ち、黒き人形に打ち込んだ。





【「一閃っ!!」】



凍れる刃は鞘から瞬時に抜き放たれ、生まれた横薙ぎの一閃は人形の胴を薙ぎ、凍らせる。

そこから刃を返し右から袈裟にもう一閃。最後に切り抜けでの左下からの切り上げの一閃。



「・・・・・・瞬・極(またたき・きわみ)」



そのまま滑るように床に着地。僕は人形の左脇を一気に斬り抜けた。



【別名、リイン達の必殺技・クライマックスバージョンです♪】



振り返ると黒き人形は空中で動きを止めて、そのまま音を立てて地面に落ちた。

僕が斬った箇所から氷が這うように全身を周り、その身を包み始める。



「・・・・・・僕の、最高傑作が。どうして・・・・・・どうしてこんな」

「簡単な話だ」



・・・・・・こっちは全然簡単じゃなかったんだけどね。ま、いいや。僕はアルトを一振りして、鞘に納める。

その間に斬られた箇所から発生した氷は、完全に人形と手に持った銃を包んだ。



「お前の最高傑作より、僕とアルトにリイン、あむ達の方が強かった。
と言うより・・・・・・ノリがよかった。ただ、それだけの話だ」

≪知っていますか? 戦いと言うのは・・・・・・ノリのいい方が勝つんですよ≫

【そして、リイン達は最初から最後までクライマックスです。この程度で負けるはずがありません】



完全にアルトの刀身が鞘に収められた。鍔と鞘の鯉口から『チン』と小さく音がした。

その瞬間、人形は身を包む氷と共に・・・・・・弾けてその身が砕けた。



「・・・・・・やったの?」

【・・・・・・みたい。あ、あれ・・・・・・たまご】

「ねね、もしかしてあれ」

「ティアナさんの・・・・・・たまご?」



人形が倒れた所のほぼ真上・・・・・・ちょうど僕の目線くらいの高さに、たまごが現れた。

たまごは白く、翼の装飾がなされている。僕とアルトが何回か見たこころのたまごそのものだった。




【・・・・・・予想通り、ユニゾン状態の魔法でもたまごは浄化出来るようですね】

「まぁ、僕とリインの魔力を練り合わせて・・・・・・ってのが条件だけどね。
普通にリインが単体で魔法を使ったら多分だめだ」

【そうですね】



そのたまごがぱかりと開いた。その中から出てきたのは、ティアナと同じ髪の色をしたショートカットの・・・・・・あれは、男の子?

あ、見た事ある。この子、ティアナのお兄さんに似てる。写真で見せてもらった優しげな表情がこの子の中にちゃんとある。



「あの、もしかして」

「そうだよ。僕がティアの『なりたい自分』。でも、助けてくれてありがと。僕じゃあどうしようもなくて」

「ううん、それはいいんだ。・・・・・・とにかく、早くティアナのところに戻ってあげてくれないかな。
眠ったままで、きっとおなかを空かせてるだろうから。あのツンデレ、やたら食い意地張ってるし」

「あはは、違いないね。それじゃあ、恭文君。僕は戻るけど・・・・・・ティアの事、お願いね。
ティアは君の事・・・・・・あんまり言わないけど、大好きなんだ。大切にも思ってる」

「うん、知ってる」



ツンデレな反応の中にも、そういうのが見え隠れするの。僕もティアとは距離感合ってるし、楽だしさ。



「なら良かった。あと伝えておいてくれるかな。いつか、未来で・・・・・・って」



僕がその言葉に頷きで返すと、その子は満足した表情を浮かべた。

そうしてそのまま白いたまごに包まれて、消えた。ううん、帰っていった。



「・・・・・・大丈夫ですよ」



隣を見るとスゥが居た。どこか優しく・・・・・・安心させるように僕に微笑んでくれていた。



「ちゃーんと、あの子はティアナさんの所に戻りましたから。あ、それだけじゃなくて」



そう、それだけじゃなかった。そのすぐあとに白いたまごが沢山出てきて・・・・・・どこかへと消えていった。



「つまり、全部浄化出来た?」

「はい。きっと、恭文さんが何回も斬ったからですね〜」

「いや、それは違うんじゃ。というか、浄化に攻撃回数関係あるんかい」



あ、待てよ。それならクレイモア・・・・・・いやいや、さすがに衝撃でたまご割れそうだもの。

怖くて使えないや。うーん、僕もしゅごキャラが入ればこの辺り相当楽なんだけどなぁ。



【でも、あれすごかった。ねね、最後のマタタキキワミーって言うの】



ミキ、お願いだからそのカタカナ表記やめない?

なんかね、こう・・・・・・『フタエノキワミー』みたいに言われてる感じがしてちょっと嫌なの。



「全然いつ抜いたのかとか、いつ斬ったのかとか、ボクからは見えなかったん。あれも魔法なの?】

「ううん、あれは剣術の技。魔法とかの類は一切使ってないんだ」

【そうなんだ。あのさ、今度よかったらまた見せてくれる?
なんかね、こう・・・・・・もう一回見たら芸術的イメージが間欠泉の如く湧き上がりそうなんだ】



そ、そうなの。まぁ・・・・・・いいけどさ。というかミキ、テンション高いよ。いったいどうしたって言うのさ。



「ヤスフミ」





この優しく温かい声は、僕達が良く知ってる声。それで僕の大好きな声。

そちらを見ると、当然フェイトが咲耶とあむと一緒にこちらへ来る。

なお、咲耶のバリアジャケットは黄色をベース色に黒のラインが入ったチャイナドレスである。



現在のサイズは、妖精サイズ。それでも色っぽいのはどうして?





「あのフェイトさん、あたし今ひとつ分からないんですけど。
ただそれがフェイトさん達の・・・・・・あの、ジャケットなんですよね。恭文のと同じ」

「あ、うん。そうだよ。これが私のバリアジャケットなんだ」

「私も同じくです。あと、ユニゾンデバイスは本来、こっちサイズが基本なんです。
今リインさまがおじいさまと一つになっているのが、以前お話したユニゾンです」

「そ、そうなんですか。いや、すみません。
もうあたしは色々常識外な事ばかりなのでちょっと理解が遅くて」



・・・・・・よし、僕は何も見なかった。あむが胸とか見てたりしてるけど気にしない方向で行く。

とにかく、フェイトは僕達に微笑みながら・・・・・・いや、表情が険しくなった。



「まず、二人とも後で覚悟して」

「え?」

「私達もそうだし、ガーディアンの皆にも黙ってこんな無茶した事・・・・・・ちゃんとお説教するから」

「あー、僕は覚悟は出来てるから。でもフェイト、それは後にして」

「え、えぇっ!? あの、えっと・・・・・・お説教ってなにっ!!」



あむがなんか混乱して慌てたような顔してるけどここはいい。あとで色々痛感するんだから。



「うん、もちろんそのつもり」

「なにがそのつもりなんですかっ!?」

「それでヤスフミ、状況は?」



フェイトの言葉に僕は思考を回転させる。そして、現状を一応整理。



「無視しないでくださいー!!」



とにかく、これで大本は倒した。でも、まだだ。やる事が残ってる。

僕は再び歩を進める。目指すは下の階だ。まだ唯世たちがロボット相手に苦戦してるはずだし。



「これで例の人形は潰した。大半の×たまもOK」



ティアナのたまごと、あそこで放心してるバカが集めてた×たまもあらかたは浄化した。でも、まだ終わってない。



「ただ、ロボットの動力源に使われてる×たまの方はまだ残ってるの」

「・・・・・・そっか。なら、まずはロボットの対処だね。ヤスフミ、悪いけどもう一頑張り」

「あ、それなら大丈夫ですよぉ?」

『え?』



な、なんかスゥがやたら自信満々に言って来た。

そして見えていないフェイトは何がなんだか分からなくて、頭にはてなマークを出して居る。



「スゥ、何かいい手があるの?」

「はい。・・・・・・あむちゃん、スゥとキャラなり、お願いしますぅ」

「あ、うん」



そうしてあむが胸元のおしゃれな南京錠に指をかける。



「あたしのこころ・・・・・・アンロックッ!!」





あむが緑色の光に包まれて、同じ色のリボンが周囲に舞う。そのリボンにはクローバーの柄。



スゥがたまごの中に入って、そのたまごがあむの胸元に吸い込まれる。そして、光が弾けた。



弾けて出てきたのは・・・・・・かぼちゃパンツっ!? 緑のかぼちゃパンツに白いエプロンだしっ!!





【「キャラなりっ! アミュレットクローバー!!」】



そしてツインテールってどんだけコアな属性なんだよっ! てかこれが・・・・・・スゥとのキャラなりっ!?



「え、えっと・・・・・・ヤスフミ、これがそうなの?」

「・・・・・・みたい」

お砂糖・蜂蜜・シロップ・・・・・・イライラ、もやもや、みーんなスイーツに溶かしましょ



なんかリボンの付いた泡だて器を持って、カオスな事を言い出し始めたっ!?

でも、そんな僕達の心境に構わず、スゥとキャラなりしたあむは泡だて器を振るう。



リメイクッ!



そこから生クリームが溢れて、世界を染め上げた。



ハニー!!










生クリームが部屋に広がると、その瞬間この大広間・・・・・・ううん、違う。





この社員寮全体が光に包まれた。その光の中から現れるものがあった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ねね、ロボット達が動かなくなったよっ!?」



いや、それだけじゃない。ロボットの中から×たまが出てきて、元の白いたまごに浄化、された。

僕達はその光景にただただ驚くばかりで、見ている事しか出来なかった。



「どうやら、日奈森と恭文の奴がやったらしいな。さっきから例の人形も出てこないしよ」





通路に・・・・・・違う。建物の中が光のシャワーで満たされる。

とても綺麗で、優しくて、心が温かくなって・・・・・・なんだろう、この感じ。

でも、分かる事がある。これでこの戦いが終わったという事。



これだけは、今の僕達でも分かった。





「そうみたいね。なら」

「うん、僕達も上に行こう。もう、終わったんだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・綺麗」

「フェイト、見えるの?」

「うん。これは・・・・・・なんとか」

「・・・・・・あ」





光が雪のように降り注ぐ部屋の中で横たわる二階堂の目の前に、たまごが現れた。

それが割れると中から、オモチャのマジックハンドを持って白衣を着ている男の子が出てくる。

青い髪にメガネを着けて・・・・・・もしかしてアレ、スゥが言っていた二階堂のしゅごキャラ?



なお、そう言い切れるだけの根拠はある。それは二階堂の表情。というか、視線?





「なくしたと、思っていたのに」



二階堂は、どこか懐かしむような優しい瞳で、あの子を見ていた。



よかった。やっと、会えた

「君が、僕のしゅごキャラ?」

うん。・・・・・・また随分ボロボロだね。いや、理由は分かるけど



なぜだろう、その瞬間全員の視線が僕に向いた。

その目に若干責めるような感情が含まれているのは、気のせいじゃない。



でも、もう立てるはずだよ?

「え? ・・・・・・あ、ほんとだ。というか、全然痛くない」



ふ、普通に立ち上がりやがったっ! なんでっ!? 足の膝踏み抜いたのにっ!!



【特別サービスで、せんせぇの折れた骨さんもお直ししちゃいましたぁ。お直しは、スゥの得意技ですからぁ】

「そこはリメイクしなくていいと思うのは僕だけかなっ!? というか、普通にそれ凄いじゃないのさっ!!」

でもごめんね。僕もう・・・・・・行かないと



その言葉に二階堂の表情が驚きに染まる。

だけど、その子は名残惜しそうにたまごの殻に包まれていく。



じゃあね、またね



そんな言葉だけを残して、あの子とたまごは消えた。

たまごが居た場所に手を伸ばした二階堂は、自分の手を見ながら小さく呟く。



・・・・・・やっぱり、ダメなんだ。僕は違う道を選んだ。
もう、戻れない。こわれたたまごは、元に戻らないんだ


「お前、やっぱりバカでしょ」





・・・・・・あぁもう、やっぱり甘くなった。でもいいや。



こんな目の前でうじうじされても困るし、抵抗しないならこれ以上攻撃しないとも言ったし。



とにかく驚いた顔で僕を見る二階堂に、呆れた視線を向けながら言葉を続ける。





「あの子、お前になんて言った? 『またね』って言っただろうが」

「恭文さんの言った通りですよぉ?」



スゥがあむとのキャラなリを解除して、ポンと姿を現した。あむは当然のように、元の制服姿に戻る。



「せんせぇのたまごが元に戻らない? そんなの、嘘ですぅ。
・・・・・・せんせぇのたまごはぁ、なりたい自分はねぇ」



それからその場でくるりと一回転して、両手を大きく広げる。

それから優しく、安心させるように二階堂に微笑みかける。



「リニューアルして、ぴっかぴかになって、何度でも、生まれ変わってくるんですよぉ。
・・・・・・だって、せんせぇにはまだ、スゥ達が見えているものぉ」



スゥの微笑みながらの言葉に、二階堂は目を見開いて・・・・・・ただただ、立ち尽くすだけだった。

きっと、これが本当の終わり。それで僕はなんというか・・・・・・すっごい負けた感じがした。



「・・・・・・スゥ」

「はい?」

「スゥ、僕より強いわ。てーかアレだね、スゥ最強だわ」



だからため息混じりに敗北宣言なんてする。その言葉に、スゥだけじゃなくてフェイト達まで驚いた顔をする。



「えぇっ!? そ、そんな事ないですよぉっ!!」

「あるよ」

「スゥは恭文さんみたいにあんなバーンなんて暴れられませんし」



僕は左手のジガンの装着を解除。素手になった左手をそのまま伸ばし、僕はスゥの頭を撫でる。



「・・・・・・あの、恭文さん・・・・・・撫でるのダメですぅ。なんというか、恥ずかしいですよぉ」



本当にちょっと恥ずかしいのか、頬を赤く染めてるスゥは気にしない事にした。



「・・・・・・強いよ、スゥは。だって人の心までお直し、しちゃったんだから。
それはね、ただ考えなしで剣を振るって、何かを斬るよりもずっと凄くて・・・・・・難しい事なんだから」

「あ、あの・・・・・・ありがとう、ございますぅ」










なんとなしに、フェイトの方を見てみる。フェイトは僕の方を困った顔で見てた。

ただ、スゥが一体何を言ったかとかは、なんとなく察したらしい。だから視線で『そうなの?』と聞いてくる。

だからまぁ、頷いて肯定した。この子は、僕やフェイトが出来なかった事、ちゃんと出来る子なんだと。





本当に難しくて凄い事・・・・・・やっぱり力で何かを潰すだけでは、色々と足りないらしい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして戦いは終わり、僕達は更にボロくなった社員寮から出た。なお、二階堂はそのまま。





もう二階堂には、×たま一つ抜き出すだけの気力もない。うん、言うならアレはもう無害だよ。










「・・・・・・うぅ、やや的には納得できないー!!」

「俺もだな。てかよ、二階堂あのままでいいのか?」

「いいよ。僕は憂さをしっかり晴らしたし」



スゥが更生への一歩を示したしね。だから何気に僕とフェイトは、敗北感感じてるわけですよ。



「あぁ、らしいな。骨何本がへし折ってやったんだろ?」



夕方の空の色を見ながら、僕は隣を歩く空海の言葉に頷いた。



「うん、結構手ひどくね。で、それでまたケンカ売ってくるなら、こっちもまた潰せばいいだけの事じゃないのさ」

「・・・・・・お前、やっぱりすげーな。あんなのと散々やり合っておいて、平然とまたとか言えるって」

「恭文はバトルマニアだから、あれくらいはきっとまだ楽しいで通せるんだよ」

「やや、そんな事言うと、僕と言う人間の人格が疑われるから、やめて?」



なにより、なんか確信があるというだけの話。スゥの言葉が通じてないなんて、ちょっと思えないから。

ただ・・・・・・あむがヘコみ気味。どうやら先ほどのフェイトからのお説教宣言がだいぶ効いているらしい。



「で、ですから・・・あのですね、話すとスゥ達が危なかったので」

「そうみたいだね」



というか、現在既に前哨戦が始まっています。僕も、覚悟しておこうかな。



「なら逆に聞くけど、もしヤスフミにも教えるなと言われてたら、本当に何の連絡も無しで一人で行ってたの?」

「・・・・・・はい」

「・・・・・・あむさん、悪いけどうちにこのまま来てくれるかな。もうちょっと話さないとだめみたいだから。
というより、今日は遅くなるだろうから、もう泊まってもらうね。あとでお家の人には連絡しておこうか」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



あむ・・・・・・頑張って? 多分僕もその場に同席する事になると思うから、きっとダメージは半減するよ。

フェイト、内緒で蚊帳の外にされてたのが相当来てるみたい。うぅ、なんで一応でも報告しなかったのかって怒られるだろうなぁ。



「とにかく、咲耶。ティアナは」

「はい、先ほどシャーリーさまから連絡が。もう目が覚めて、早速ご飯の時間だそうです」

「ティア、元気ですねー。あ、それと恭文さん」



リインがにっこりと僕を見て笑う。それを見て・・・・・・何歩か後ずさる。だ、だって怖い。

リインの背中から・・・・・・笑顔と反比例するような強烈なオーラが・・・!!



「事情は分かりましたけど、みんな恭文さんのキャノンの反応を捕まえてすっごくびっくりしたですよ?
その辺りについて、リインと二人で沢山沢山たーくさん・・・・・・お話、しましょうね♪」

「あ、あはは・・・・・・もしかしなくても、怒ってる?」

「怒ってないですよ?」



いやっ! 怒ってるからっ!! 明らかに瞳が怒ってるからっ!! 笑顔だけど妙に威圧感があるのよっ!!



「まぁ、フェイトさんのお話が終わった後でいいので、じっくりいきましょうね? 今日は寝かせませんから」

「お、お手柔らかに」

「恭文、大変そうだね」



やや、分かってくれる? でもさ、それなら僕達から距離を取らないで欲しいなぁ。ほら、そんな引き気味な顔しなくていいから。



「あ、それならよ。明日俺らもやるか。黙ってこんな真似するなーってさ」

「あぁ、それはいいわね。なら、明日のガーディアン会議の議題はそれで」

「「お願いだからそれはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! というか、マジで黙っててごめんなさーいっ!!」」










こうして、一つの脅威は去った。季節は3月の上旬。もうすぐホワイトデーなんか来たりする日の事。

ただ、忘れてはいけない事がある。確かにラン達やティアナのたまごの一件は解決出来た。

でも、僕達が解決出来たのはただそれだけだと言う事を。問題は、まだまだ残っているわけですよ。





エンブリオの件も、イースターの件も、何も・・・・・・何も解決していないのだから。




















(第9話へ続く)




















あとがき



古鉄≪・・・またですか?≫

恭文「いや、なにがっ!?」

古鉄≪えー、大暴れをかましてなんとかいい感じに終わったしゅごキャラクロス第8話、みなさんいかがだったでしょうか? お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「あぁ、派手に暴れて楽しかった・・・」





(青い古き鉄、なんか色々すっきりらしい。・・・気楽なものだ)





古鉄≪またフラグ立てたくせに≫

恭文「僕が何時なんのフラグを立てたっ!? つーか、そんなシーンは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? なんか色々覚えがあるような」





(青い古き鉄、最近色々分かってきたらしい。いい事だ)





古鉄≪さて、これで原作だと3巻の辺りまで話が進んだわけですけど・・・そろそろセカンドシーズンとか幕間そのじゅういちとか書きません?≫

恭文「あ、書いてるんだって。特に幕間じゅういちは半分近くまで出来たとか。ただ・・・ちょっとこの話では珍しい事やってるから結構苦戦してるって。で、あとセカンドシーズンはあれですよ。ネタをまとめるのが大変大変・・・」

古鉄≪色々新しい事試すって言って筆が止まるのもあれだと思うんですけど≫

恭文「でもさ、ワンパターンもダメだと思うのよ。やはり意表は突きたいし」

古鉄≪・・・確かにそうですね。さて、次回からは再び日常に話は戻ります。そして・・・大事件が起こり、マスターの胃に穴が空きます≫

恭文「・・・うん、あくね。一応企画段階の本読ませてもらったけど、確かにこれは空くね。ある意味今回より大ピンチだよ」

古鉄≪まぁ、そこも楽しみにしていただければ、ぜひとも嬉しいです。さて、今回はここまでっ!
お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でしたっ! それでは・・・またっ!!」










(青い古き鉄、若干表情が重いけど、それでも手を振り楽しくエンディング。
本日のED:水樹奈々『アオイイロ』)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



昼間っから僕は、ベンチに座って空を見る。ボーっと無気力に空を見る。

大の大人ならとうに働いてていい時間なんだけど、今日はそういうわけにいかない。

なぜなら僕は、完全に無職になったから。うん、無職のプータローだよ。





学校もアレだし、イースターもエンブリオ生成計画が失敗したからクビになった。

いや、切られる時はあっさりって言うけど、本当だね。イースター、給料良かったのになぁ。

さて、これからどうするかね。とりあえず、折れて砕けた骨の数々は問題なく治ってる。





だから、それで就職できないとかそういうのはない。・・・・・・とりあえず、学習したよ。

もう二度とアイツらは敵に回しちゃいけないってさ。

ガーディアンのガキどもや日奈森あむはまぁいい。問題はたった二人だ。





一人は、蒼凪恭文。あれは戦闘にかけてはガーディアンやイースターの連中と一味違う。

アレは僕達一般人から見ると、怪物だ。戦闘力じゃない、一味違うのはその思考だ。

そんなのを、完全に甘く見ていたのが運の尽きだった。アレは思考がぶっ飛び過ぎてるって。





いくら僕でも、ほんの数秒の間に骨を何本もへし折られて半殺しにされたら、さすがに学習するさ。

もう絶対にアイツにだけは喧嘩は売らない。次やれば・・・・・・命、無いだろうしね。

そして、もう一人は・・・・・・はぁ、あの子が僕の手元に再び捕まったのは、もうアレだね。





もしかしたら、天恵か何かだったのかね。まぁ、そこはとりあえずいいとするか。

とにかく僕はここに来るまでに買っていた新聞を開く。早めに就職先でも探さないとだめだもの。

働かざるもの食うべからず。ご飯のためにも、夢はともかく人は働かなきゃいけないのだから。





そして数ページ新聞を流し読みするようにめくって・・・・・・ある記事が目に飛び込んだ。

その記事の名は、江戸時代のからくり人形を復刻させたという記事。

その人形は、世間的にもよく知られているお茶汲みの人形。時代劇とかにもタマに出るアレだね。





その人形を復刻させたのは、一人の老人。新聞の記事にも写真が載っていた。

その人はその人形に感銘を受けて、長年からくり・・・・・・ロボットの研究をしていた。

元々は小学校に勤めていて、工作クラブの顧問をしていた。





だけど、奥さんが身体を壊して仕事をやめたて・・・・・・それでも、やめなかった。





夢を諦める事を、しなかった。だから、叶えられた。










「先生・・・・・・やめてなかったんだ。ロボット作り」










そう小さく呟いてから、改めて空を見る。そして、もう一度思い出す。

あの小さくて、泣き虫で、だけどとても優しくて・・・・・・強い女の子を。その女の子の言葉を。

ぴっかぴかの、リニューアルか。何度でも、生まれ変わるか。





だったら、ここから探してみようかな。育てて・・・・・・みようかな。僕の・・・・・・新しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



事件から本当に短い・・・・・・もうね、1週間とか経ってないの。

経ってないからこそ、疑問に思うわけですよ。『おのれ、なんでここに居るのっ!?』と。

なお、時間は放課後。そして、場所は聖夜小の職員室。





ここに居る理由は、今日のお茶会のお菓子のメニューをメモでやり取りしていたなでしことあむが呼び出されたから。

普通なら問題ない。ただ、メモでやり取りを何時していたかというのが、ネックになった。

それは・・・・・・ぶっちぎりで授業中。そりゃあちょっとお説教もしなきゃいけないと納得である。





で、僕は二人に付き合わされてるのよ。うん、なんでだろうね。









「・・・・・・ねぇ、なんでここに居るの? ほら、イースターの誰も来ない資料室の仕事はどうしたのさ」

「そんな閉職任される事もなく、クビにされたんだよ」

「いやいや、教員免許はどうした教員免許」

「あ、それは本当に持ってるんだよ。ほら」



そう言って、机の引き出しからあるものを取り出して、僕達に見せる。

・・・・・・あ、本当だ。ちゃんとした正式なものだし。



「てゆうか、だからって担任継続って」

「問題ないでしょ? だって、働かないと僕死んじゃうし。働かざるもの食うべからずだよ?」

「・・・・・・せんせぇっ! 本当にせんせぇになったんですねー!!」



感激して、目の前の男にスゥが抱きつく。そして、男もスゥを抱き返し・・・・・・あれ?

なんかデジャヴを感じるのは気のせいだろうか。というか、やっぱりストックホルム症候群?



「ね、この子だけもらっていい?」

「ダメに決まってんでしょっ!? アンタマジでなに考えてるっ!!」



そのまま、あーだこーだと言い出した我がクラスの担任とクラスメートを見て、なんかもう気が抜けた。

もういいや、ここで敵だったとかどうこう言うのめんどくさいし。このまま担任でいいでしょ。



「・・・・・・恭文君」

「なに?」

「先生の新しいたまごは、なんだと思う?」



僕と同じように、言い争いと言うなのコミュニケーションをしている二人を温かい目で見ていたなでしこがそう聞いてきた。

なので僕は、担任の机を見ながら・・・・・・苦笑気味に答えた。



「『素敵な先生になる』とかじゃないの?」

「うん、多分そうね。というか恭文君、あなたなんだか嬉しそうよ?」

「さぁ、気のせいじゃないの? 僕は敵だった奴の事なんてどうでもいいし」

「ふふ、まぁそういう事にしておいてあげるわね」










微笑みながらなでしこも、僕と同じように机に視線を移す。そこには数枚の書類が置かれていた。





その1番上の書類には、こう書かれていた。





工作クラブ(4〜6年生) 顧問:二階堂 悠』・・・・・・と。




















(おしまい)





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