小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第5話 『自由気ままにゃ 未知との遭遇』
歌唄と別れてから、僕はフィアッセさんの控え室に向かった。そこがみんなとの待ち合わせ場所なの。
そして、ドアの両脇にガードの人達が仁王立ちしているドアの前まで行く。
ガードの人達は、僕の姿を見ると敬礼してそのままドアを開けてくれた。うん、色んな意味で僕有名だから。
そしてそのまま部屋の中に進むと・・・・・・そこは大きな鏡張りの部屋。
そこに数人の子どもと女の子と女性達。その全員が僕を見て、表情を驚きに染める。
「あ、ヤスフミ」
いの一番に声をかけてくれたのは、やっぱり・・・・・・フェイトだった。うん、なんか嬉しい。
「フェイト、お待たせ。ごめんね、遅くなっちゃって」
「ううん、大丈夫。・・・・・・というか、どうしたの。その服」
「にゃははは・・・・・・ちょっと色々ありまして」
フェイトは、僕の言葉に訝しげなものを浮かべたけど、自分の中で色々決着をつけたのかすぐに元の温和で優しい表情に戻った。
”・・・・・・何か、あった?”
あ、納得してなかったのね。というか、心配そうな念話が。
”うーん、ちょっとゴタゴタしたの。ごめん、歌唄の方から口外しないで欲しいって頼まれてるからさ”
”そっか。・・・・・・歌唄? え、どうして恭文は呼び捨てにしてるのかな”
なぜだろう、フェイトの穏やかな視線に鋭い物を感じたのは。き、気のせいだ。
うん、きっと気のせいだ。よし、話を逸らそう。それしか手が無い。
”ね、フェイト”
”なに?”
”みんなの印象・・・・・・どう?”
”いい子達だよね”
よし、食いついてくれたね。いやいや、本当にフェイトがいい子でよかったよ。
”私もシャーリーもティアも、話してて好印象だよ”
”そっか、それならよかった”
”あと”
”なに?”
”やっぱり私も距離を詰めていくべきだと思った。
というより、なんだかヤスフミやリインが心苦しいって思う気持ち、よく分かったよ”
少しだけお仕事モードに入った声でフェイトがそう言った。そんな声の中に、僕に対しての申し訳なさを感じた。
心苦しさというか、そういうものがあったのは、気のせいじゃない。
”あの、ごめん”
”なんでフェイトが謝るのさ”
”私、ヤスフミにらしくない事させてるし、嘘つかせてるし、それにあの”
”大丈夫だよ。・・・・・・ただ”
ただ、本当に少しだけ・・・・・・うん、少しだけでいいな。
”もうちっと、あむ達には手札晒していきたいかな。
今のままでも友達に、仲間になれるって言ってくれたの、やっぱり嬉しかったから”
”うん、そうだね。あのね、年齢の事とか魔法の事とか管理局の事、話すタイミングはヤスフミに任せるよ”
”いいの?”
”いいの。この中で1番交流してるのはヤスフミだもの。そのヤスフミの判断、私・・・・・・信じるから”
フェイトの優しい微笑みが深みを増した。それがなんだか嬉しくて・・・・・・ありがたくて、僕はちゃんとお礼を言う事にした。
”フェイト、あの・・・・・・ありがと”
”ううん。でも、一つ気になってるの”
”なに?”
”ヤスフミ、そのスーツ・・・・・・どうしたの?”
あぁ、これか。やっぱり気になるよね。気にならないはずがないよね。
”僕も分かんない。あの、ちょっと今まで着てた服が汚れちゃって”
”・・・・・・突然に水かけられちゃったの?”
”まぁ似たようなもんだね。それでガードの人にこれを渡されて”
「恭文君、愛しのフェイトさんと再会できて嬉しいのは分かるけど、私達の事は忘れないで欲しいわ」
そのからかうようななでしこの声に、僕達の体温が急上昇する。というか、顔が真っ赤になる。
「そうだな。俺達の事置いてけぼりでずーっと微笑みながら見つめ合っちゃってるし」
「やや達、入り込む隙なかったよ」
「なんと言うか、あの・・・・・・すごいね」
空海とややと唯世の言葉に、ガーディアンの面々が全員うなづく。結構力強く。
あははは、僕もフェイトも真っ赤だよ。面白いくらいに真っ赤だよ。
「というかというか、恭文ー! 生の歌唄ちゃんとお話とかしたっ!? ねー、そこんとこやや達に詳しくー!!」
「あ、それは俺も聞きたいな。今人気沸騰のアイドルのガードを担当した気分はどうだ?」
そう言いながら、ややと空海が若干興奮気味。
・・・・・・あ、あははは・・・・・・とりあえずおちつけー!!
「結木さんも相馬君もだめだよ。蒼凪君は遊びでほしな歌唄に付いていたわけじゃないんだから。・・・・・・でも、どうだった?」
おのれも気にしてるんかいっ! だから、その上目使いはやめろー!!
「・・・・・・恭文」
「あ、あむー! お願いだからこの人達になんとか言ってー!!」
「まぁアレだよ、同年代の女の子にも興味持ったら? フェイトさんは確かに素敵だけどさ。
でも、それだけで大人になるってのもちょっと違うんじゃないかな」
「だから一体なんの話っ!? というか、文脈繋がってないしっ!!」
・・・・・・あぁ、とにかくお前ら全員下がってっ!?
お願いだから僕と距離を取れー! そんなに迫るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「おじいさま、モテモテですわね」
「そうね、アレ・・・・・・両手に花どころの騒ぎじゃないわよ」
「そう言いながら放置するのはやめてっ!? フェイトもお願いだから苦笑いしてただ見るだけで終わるのはやめてっ!!」
『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説
とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご
第5話 『自由気ままにゃ 未知との遭遇』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「お待たせー!!」
僕が『こんなの嫌だ』って本気で思ってる時、救いの手が差し伸べられた。
やっぱアレだ。神様って居るんだよ。うん、だから助けてくれる。
「・・・・・・あ、恭文くん。歌唄さんの方はもういいの?」
それはフィアッセさん。フィアッセさんが部屋の入り口のドアを開けて入ってきた。全員の視線がそこに集まる。
「はい。他のガードの人達に引き継ぎましたから」
「そっか。でもありがと。うーん、やっぱ恭文くんについててもらってて正解だったなぁ。あっという間に解決だし」
「あはは・・・・・・そうですね」
フィアッセさんは白で胸元に赤い花のアクセサリーを着けた、舞台用の衣装。やっぱり綺麗。
つい見とれてしま・・・・・・だめだめ、最近ポンコツ要素増えてるんだから、ちょっと気を引き締める。
「解決って・・・・・・恭文君、何かあったの?」
「ま、ちょっとした人生勉強をね。僕が講師になって、とある連中に色々教えてあげたのよ」
軽くお手上げポーズをしながら、そう言って終わらせる。というか、他に言いようがないし。
「・・・・・・あ、あなた達が恭文くんの同級生の子達だよね。あと、恭文くんのお仕事関係の人達」
フィアッセさんは、あむ達を見て優しく微笑む。
「恭文くんとフェイトちゃんとリインちゃん以外は初めましてだね。私がフィアッセ・クリステラです」
それを受けてあむ達と初対面のティアナとシャーリー、咲耶はペコリとお辞儀する。
「今日は忙しい中、ここまで足を運んでくれて本当にありがとう。とても嬉しいよ」
「いえ、こちらこそお誘いいただきまして、本当にありがとうございます。
・・・・・・あ、自己紹介遅れました。僕は聖夜小学園5年生の辺里唯世と言います」
「日奈森あむですっ! あの、よろしくお願いしますっ!!」
他の面々も、それに続くように緊張気味に挨拶をする。
フィアッセさんは一人一人に手を伸ばし、握手をしながらそれに応える。
・・・・・・うーん、なんか不思議な光景。どうしてこうなったんだろ。
だって、本来なら絡む事なんてないはずなのに。
”・・・・・・というか、恭文さん”
”なに?”
”すみません、フェイトさん関連で嘘が上乗り・・・・・・じゃなかったです。えっと、上塗りされました”
”はい?”
・・・・・・リインから話を聞いた僕は、こう思った。心から思った。
”シャーリー・・・・・・ありがとう。そしてごめんなさい”
”え、そこ感謝と謝罪なんですかっ!?”
”だってシャーリーがそう言ったのって、僕がバカやったからだし。うぅ、やっぱり最近ポンコツ気味だよ”
”まぁ・・・・・・好きな人が居るって辺りで止めておくべきだったのは間違いないですね。ホントにしょうがないですねぇ”
”うっさいバカっ! 唯世達に真っ先にバラしたのリインだよねっ!?”
あははは・・・・・・・やっぱ僕、色々ダメなのかも。うん、反省しよう。
”というかさ、リイン”
”はい?”
”なんかこう・・・・・・僕達、最近らしくないと思うのよ”
”そう言えばそうですね”
確かに仲間や友達だからって、全部話さなきゃいけないなんてルールはない。
そんな理屈は必要ない。ただ、ある程度腹を割る必要ってのはあるのよ。
・・・・・・フィアッセさんがフェイトやあむ達を一緒に誘ったのって、そこの辺りが原因だから。
僕の話を聞いてて、そういう機会が必要なんじゃないかと思ったかららしいし。
昨日お話してる中でそう言われて、僕はびっくりしたさ。ぶっちゃけさ、これが局員とかなら振り切るのよ。
スバル達にやってたみたいに『お前ら友達じゃない』とか言ってさ。僕は局員嫌いだから。
でも、あむ達は・・・・・・うーん、なんか違うしなぁ。
”うし、手札ある程度晒していこうか”
”いいんですか?”
”さっきフェイトの許可はもらった。問題は無い。というかさ、そうしないと進展しない気がする”
全部知る必要は無い。でも、それでもだよ。×たまも頻繁に出るってわけでもないしね。
ここは多少切り込んでいかないと、こっちの仕事が全く通せないのよ。
”そうですね、話していきましょうか。正直リインも色々心苦しかったですし”
”そうだね、らしくなかった。んじゃここからは”
”はい。らしく、いきましょう”
とりあえず、リインとの話し合いはそんな感じで方針決定した。
で、僕は次の議題に移る事にした。もうちょっと言うと、さっきから気になってる事。
「あの、フィアッセさん」
みんなへの挨拶が程良く済んだところを見計らって、僕はフィアッセさんに声をかける。
フィアッセさんはティアナと握手しながらも僕の方を見て、また優しく笑ってくれる。
「うん、なにかな」
「実は僕・・・・・・結構気になってる事がありまして。このスーツなんですけど」
僕が着ているスーツを右手の人差し指で指すと、全員の視線が集まる。
「あ、そうだよね。というか恭文、中々イケてるじゃん」
いきなりと言えばいきなりなあむの言葉。でも、それに全員が乗ってきた。
「そうだね、普段よりも3割増しでかっこいいかも」
「あ、ファッションメーカーなミキが誉めてる。恭文、これ自信持っていいよ?」
「恭文さん、素敵ですぅ」
まずはキャンディーズからである。というか、ミキってファッションメーカーだったのね。
・・・・・・あ、そう言えばミキが生まれたのってあむの『センスがよくなりたい』って気持ちも絡んでるんだっけ。
だからなんかまじまじと・・・・・・うん、まじまじと見られてるね。
あ、あの・・・・・・そんなまじまじと見ないで? ちょっと恥ずかしいの。
「確かにそうだな。てか、そうしてるとお前もいっぱしのボディーガードに見え・・・・・・あ、悪い。お前は十分立派なボディガードだったな」
「というかさ、普段の制服とかもそれくらいピシっと着こなせばいいのに。
あたし、ちょっと見てて思ったんだけど・・・・・・恭文って服とか髪型とかにちょっと無頓着だよね?」
あむの視線が何故か厳しくなる。・・・・・・そんな事はありませんよ? 僕だって人並みにおしゃれくらいは。
「うーん、確かにそうかも。ヤスフミ、基本的に動きやすくて丈夫な服ならなんでもいいってところがあるし」
フェイトー!? ナチュラルにばらさないでー!!
「あ、やっぱりそうなんですか?」
「うん、持ってる服もジーンズ系が多いの。あんまり流行物とかは着ないほうかな」
「確かにそうだね。恭文くんはカジュアルな格好オンリーなのかな」
「あら、それはいけないわね。流行を追い求める気力も若いうちには必要なのに。
恭文君、あなたもうちょっと頑張った方がいいと思うわよ?」
なぜか失礼な話で意見があっているフェイトとフィアッセさんとあむになでしこ。
その四人を見て、僕はなんとも言えない心地に襲われていた。というか、辛い。
「おじいさま、とりあえず皆さんに謝ってください」
「そうだね。なぎ君、みんなに謝った方がいいよ」
「え、なんでっ!?」
え、なにこの空気っ!? なんでこんな僕が悪いって感じになってるのさっ!!
「・・・・・・あの、咲耶さん。どうして蒼凪君の事を『おじいさま』って呼ぶんですか?」
「あぁ、あだ名なんです」
なんか平然と大嘘ついたっ!? いや、未来から来たなんて話せないの分かるけどっ!!
「てゆうかさ、私も普通にあのいつものジーンズ上下だと思ってたのに・・・・・・アンタ、それマジでどうしたのよ」
「なぎ君、もしかして突然おしゃれに目覚めた?
・・・・・・あ、違うな。それなら自分からスーツの話なんてしないはずだし」
ティアナ、シャーリー、それを今聞いてるのよ。というか、マジで分からないんですが。
あと、僕がまるで今まで目覚めてないみたいに言うな。僕は充分ハイセンスだっつーの。
「あぁ、それはエリスと私からのプレゼントだよ」
「プレゼントっ!?」
「うん。今日、少しだけでもコンサートの運営をお手伝いしてくれたから、そのお礼。それね、エリスの会社で開発したものなの。
最新型の耐刃・耐弾素材で作られてるんだ。それを恭文くんサイズに合わせて仕立ててもらったの」
それから、フィアッセさんは少しだけ顔を近づけて・・・・・・声を潜めて言った。
「あと、少しくだけたデザインだから日常でも着易いと思うし、私のデザインでアレンジもしてるの」
「フィアッセさんの?」
「うん。内ポケットやホルスターも作ってるから、飛針や鋼糸、取り出しやすいでしょ?」
「・・・・・・これはそのためだったんですか。あ、確かにちょこっと試してみたら取り出しやすかったです」
僕がそう言うと、フィアッセさんが満足そうに笑ってくれた。
・・・・・・というか、あの・・・・・・必要だよね。うん、ちゃんと言おう。
「あの、フィアッセさん・・・・・・ありがとうございます。すごく嬉しいです」
「うん、どういたしまして。みんなにも好評みたいだし、私も嬉しいよ」
そう言いながらフィアッセさんが見る。なんか呆れてるとも取れるようなあむとか。
「ところで、あの・・・・・・一つ聞いていいかな?」
「はい?」
フィアッセさんが突然僕に近づき、耳打ちしてきた。・・・・・・あの、どうしました?
「なんというか、コンサート前で緊張してるのかな」
「はい?」
「あの子達の周りにこう、ふわふわ浮いている小さな子達が見えるの」
・・・・・・・・・・・・・はいっ!?
「フィ、フィアッセさん。あの、それは・・・・・・どういう事でしょうか」
若干声が上擦ってるのは、気のせいだとしてもらいたい。うん、気のせいなのよ。
「うん、どういう事だろ。この間、歌唄さんと対談した時にも見えたし」
え? 歌唄と対談した時にも見えたって・・・・・・いや、ここはいい。今はいい。とにかく続きだ。
「それで、その子達が喋ってる声も聞こえるの。あれ、私本当にどうしたんだろ」
や、やばい。なんかフィアッセさんが困り顔だ。コンサート直前でこれはまずいよね。・・・・・・こうなったら。
「スゥ、ちょっと来て。というか、手の平の上に乗って」
とりあえず、あむの近くで浮いてるスゥにそう呼びかける。みんなが驚いた表情を浮かべるけど、気にしない。
「恭文さんっ!?」
「いいから、お願い」
「は、はい」
スゥは素直に僕の差し出した右の手の平の上に乗る。僕はそれをフィアッセさんの前に差し出す。
「フィアッセさん・・・・・・どうです? 見えますか?」
「うん、見える。小さな女の子・・・・・・だよね」
その言葉に、全員が驚きの声をあげる。表情に浮かんだ同じ色が、更に強い色に染まる。
「外見、言えます?」
「えっと・・・・・・フリフリの白の服で、緑と金が混じったような髪をツインテール・・・・・・違うね。
ショートカットで、一部だけ長いんだ。頭の所に緑色のクローバーのアクセサリーを」
言えてるっ! 言っていくと結構大変なスゥの描写を普通に言ってるっ!!
と、という事は・・・・・・間違いない。もう確定だよ。
「フィアッセさん、もしかして・・・・・・あの、しゅごキャラが見えるんですかっ!?」
「・・・・・・しゅごキャラ?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
とにかく、僕達は簡単にフィアッセさんに事情説明。いや、心残りを無くしていくのは必要かと。
あんまりと言えばあんまりな話。だけど、フィアッセさんは全部・・・・・・受け入れてくれた。
「なりたい自分が形になったもの・・・・・・か。そっか。だからこの子達はこんな純粋で、輝いてるんだね」
「え、ボク達・・・・・・輝いてます?」
「うん、とっても。えっと・・・・・・ミキ、だったよね」
フィアッセさんに優しく微笑まれて、照れたように頬を染めながらミキが頷く。
「あなたもそうだし、ランにスゥ、キセキにてまりにペペにダイチ・・・・・・・みんな、私から見るとすごく輝いてる。
きっと、みんなのパートナーの『こうなりたい、変わりたい』ってエネルギーからあなた達が生まれたからだね」
フィアッセさん、なんだか楽しそう。ワクワクというか、そういうので表情が明るいの。
「とっても素敵なもの、あなた達の中から沢山感じるよ」
「・・・・・・ふ、ふん。この僕が輝いてるのは当然だ。なぜなら僕は世界の王なのだからな」
「キセキ、そう言いながら顔赤くするのはやめるでち」
「あ、赤くなどしていないっ! ペペ、貴様なにを言っているっ!!」
なんか口げんかし出したちっこい子達を見て、フィアッセさんがまた嬉しそうに微笑む。
「あの・・・・・・フィアッセさん」
「うん、なにかな?」
「信じて、くれるんですか?」
あむがそう言うと、フィアッセさんは力強く頷いた。
「うん。だって、現に私は見えてるもの。信じない要素なんてないよ」
「いや、そうじゃなくて」
「・・・・・・私もね」
あむやガーディアンの皆が不安そうな表情をする。
フィアッセさんは静かに自分の胸に右手を当てて、優しく、安心させるような声で話す。
「恭文くんの能力みたいに、不思議な出来事や不思議なもの、小さな頃から沢山触れてきたんだ。
それだけじゃなくて・・・・・・人とは違うもの、使い方次第で人なんて簡単に殺せるものも沢山見た」
「人を・・・・・・殺せるもの?」
「そうだよ。悲しい事だけど、人と違う事は時に争いを生む要因になってしまうの。
強い力が、誰かと違うという事が人の心を歪めて、悲しい事を呼び起こすんだ」
それは、フィアッセさん自身がそういう力を持っているから言える事。
だから、フィアッセさんの言葉には真実味がある。だからこそあむ達は何も言えずにフィアッセさんの話を聞いてる。
「多分そこについては、私なんかより『能力者』である恭文くん達の方がよく知ってると思うな。
とにかくね、私はそういうものを見てきてこう・・・・・・『違う』ものを受け入れる体勢って言うのが出来てるの」
フィアッセさんは少し表情を崩して、安心させるように微笑む。それを見て・・・・・・場違いにも、綺麗だと思った。
「だから信じられるし、分かるよ。あなた達の言う事が、今目の前に居るこの子達の存在が、絶対に嘘なんかじゃないって。
そして、怖くもない。だってこの子達はあなた達一人一人の『もう一人の自分』で、あなた達自身の夢が詰まっているから」
声は優しく、耳から自然に心に染み渡るように届けられた。
だけどその中に確かな確信と力強さも内包していて・・・・・・なんだか、不思議な感覚。
「あ、もちろん人に言いふらすような真似はしないよ?
恭文くんと同じく、しゅごキャラの皆の事は内緒にしておくね」
その言葉に、ガーディアンの面々はようやく安心した表情を浮かべた。あ、ラン達も同じかな。なんか嬉しそう。
「・・・・・・でも、どうしてフィアッセさんには見えてるんでしょ。私やフェイトさん、ティアはさっぱりなのに」
「うーん、どうしてなのかな」
やっぱり、霊感とか『なりたい自分』という要素が関係してるのかも。
「デバイスであるアルトアイゼンにも見えてるくらいだから、フェイトちゃん達にも見えていいと思うのに」
≪ただ、デバイスの中でも見えているのは私とリインさんと咲耶だけなんですよ。
逆にバルディッシュやクロスミラージュは見えていないそうなんですよ≫
「あ、そうなんだね。それはちょっと不思議かも」
そう、今アルトが言ったように・・・・・・あれ、なんか今爆弾発言かましたような。
「ね、恭文。デバイスってなに?」
あむがなんか食いついてきたぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁっ! あぁ、そう言えば詳しく説明してなかったー!!
「それだけじゃなくて、バルディッシュやクロスミラージュ・・・・・・新用語が飛び出したわね」
なでしこまで食いついてきたっ!! ・・・・・・いや、ここは当然か。もう普通に納得出来る。
「というかというか、その『でばいす』って言うのの中にリインちゃんと咲耶さんが入ってたよ?
ねね、どういう事それー! やや達にも分かるように説明してー!!」
ややっ!? え、いつからそんなツッコミキャラになったのさっ! お兄さん色々びっくりなんだけどっ!!
「・・・・・・あ、ごめん。私、つい」
「フィアッセさん」
≪全く、迂闊ですね≫
「うぅ・・・・・・ごめんなさい」
「一番迂闊だった奴が言うなっ! フィアッセさんよりおのれの発言の方がまずいんだよっ!!
普通にデバイスって言うだけなら問題無かったのにっ!!」
や、やばいっ! なんとかごまかさなくちゃ・・・・・・よし、ここはアレだっ!!
えっと、喉の調子・・・・・・よし。心の去勢手術・・・・・・よし。なりきり度・・・・・・MAX。
「禁則事項です♪」
僕がにっこり笑顔で言うと、場の空気が固まった。というか、凍った。
それから、ガーディアンの面々が全員揃ってとても厳しい表情を僕に向けてきた。
「・・・・・・可愛くない」
「・・・・・・ややも同じく。恭文、可愛くない」
「あなた、それでごまかせると本気で思ってたの? だとしたら、いくらなんでもそれは甘過ぎよ」
「なぁ、恭文。そろそろ色々手札晒していかねぇか? もう俺達、知らない仲ってわけじゃないだろ」
「そうだね、君が居ない間にフェイトさん達とも少し話をさせてもらっているんだ。
そろそろ君の能力の事とかも含めて、話してくれてもいいんじゃないかな」
・・・・・・やっぱごまかせるわけないよねっ!? うん、すっごい分かってたわっ!!
「僕達、やっぱり分かり合っていくべきだと思うんだ。
・・・・・・もちろん、蒼凪君だけに全部晒させるような真似はしないよ。そんなの、フェアじゃないから」
だぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんかまた五人で詰め寄ってきたしっ!! でも何も言えないっ!!
全くなにも言えないっ! だって正論だものっ!! 間違いなくその通りなんだものっ!!
というか、唯世っ! その上目使いでウルウルするのはお決まりの手なのっ!?
いくらなんでもやりすぎでしょうがっ! くそ、もしかしてコイツ天然っ!?
「み、皆落ち着いて? さすがに私もヤスフミもここでは説明出来ないから」
「・・・・・・それもそうですね、なら、近いうちに必ずという事で」
「うん、そうしてくれると助かる」
フェイトの優しい説得のおかげで、みんな引いてくれた。あぁ・・・・・・助かった。マジで、助かった。
”・・・・・・もしもし、アルトさんや? 今のはなんですか”
助かったところで、一つ詰問ですよ。さ、キリキリ答えてもらおうか。
”話していくんでしょ? 前振りしてあげたんですよ”
”一体どんだけレベルの高い前振りっ!? いや、確かに話しやすくはなったような感じがするけどっ!!”
ど、どんだけ無茶振りするんだよ。恐ろしいなぁ、もう。
「・・・・・・ところでフィアッセさま、お時間の方は大丈夫ですか?」
「あ、そうだね。ごめんね、結局あんまりお話出来なくて」
「あ、いえ。大丈夫ですから。・・・・・・あの、コンサート頑張ってください。あたし達、応援してます」
「うん、ありがと。みんなが楽しんでくれるように、私達・・・・・・頑張るね」
そう言って、その場は解散となった。フィアッセさんはその後ガードの人達を付けて舞台袖へ移動。
僕達も、自分達の席へ移動する事になった。あー、ついにこの瞬間が来たー。楽しみだなー。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・皆で席に移動して、ようやくコンサートが始まった。
まずは、スクールの少女合唱団という子ども達の歌から入り・・・・・・スクールの卒業生の人達が続々と出てきてうたう。
えっと、映画とかで見た事ある人も居る。というかというか、スクール出身者の人達ってすごい活躍してる人ばかり?
「うわぁ、素敵ー」
「というか、綺麗」
「そうね、堂々としていて・・・・・・それで輝いている」
なでしこにややと声を潜めて感想を言い合う。だって、大きな声出したら他の人の邪魔になるじゃん。
空海や唯世くんも口には出さないけど、感心した表情を浮かべてる。あ、唯世くんはなんか感動してるのかちょっと涙目。
それで視線を、恭文達の方に移す。・・・・・・うわ、特に恭文がまたなんか嬉しそうな顔してるし。
でも、これちょっと楽しいかも。コンサートってもうちょっとお堅い感じがするものなのかなって思ってたんだけど、全然違う。
いや、あたしが普段聞いている歌からすると十分お堅いんだけどね?
ただそれでも、何か胸に直接伝わってくるものがあるんだ。だから、全然飽きない。
それでフィアッセさんが出てきたけど、あたしはびっくりした。だって、さっき見た時とは雰囲気が違ってるの。
こう、なんて言えばいいんだろ。スター的なオーラって言うのかな。そういうのが出てる。
「・・・・・・それでは次は・・・・・・・涙の、誓い」
静かにフィアッセさんの歌が響く。会場に優しくて、温かくて、幸せを呼ぶ歌声が響いていく。
あれ、なんだろうこれ。心の中が・・・・・・あの、不思議。暖かいもので満たされて・・・・・・あの、あれ?
「あむちゃん? あの、なんで・・・・・・泣いてるの?」
ランに言われて気づく。あたしは泣いてた。目からポロポロと涙が零れ落ちて・・・・・・だけど、不思議。
感動したとか悲しいとかそういうのじゃない。ただ、静かに心の中が温かい物が降り積もっていくの。
それで胸の中がいっぱいになって・・・・・・全てが瞳から零れ落ちる涙になっていた。
「と、というか・・・・・・ランだって」
「泣いてる・・・・・・よ?」
「うぅ、私はいいの。というかというか、あれ・・・・・・スゥ?」
「・・・・・・ひぐ、な、なんか・・・・・・ダメですぅ」
・・・・・・あ、まだ泣いてる人を発見。まずは恭文。
みんなと同じくボロボロ泣いてる。あ、フェイトさんにハンカチ差し出されて慰められてる。
うーん、なんでだろう。私、あの様子にどうしても違和感があるんだよね。
まぁ、ここはいいか。とにかくあたしは胸元からハンカチを取り出して、差し出す。
「・・・・・・え?」
「涙、拭きなよ」
それは、あたしの右隣に座っている唯世くんに対してのもの。
唯世くん、さっきからボロボロ泣いてた。ファンだって言ってたから、そのせいかな。
「でも、日奈森さんも」
「あたしは大丈夫だから。てゆうか、隣でボロボロ泣かれてると集中出来ないし」
あぁっ! あたし何言っちゃってんのっ!? どうしてもっと優しい言葉が出せないのー!!
「久々にあむちゃん、意地っ張りキャラ発動だ」
ミキが小さく言ってきた。・・・・・・うぅ、否定出来ない。だって、その通りなんだから。
「日奈森さん」
「な、なに?」
「・・・・・・ありがと」
そう言って、唯世くんがにっこりと笑って・・・・・・あぁ、なんだろうこれっ!!
あたし今、幸せかもー! というか恭文、コンサートに誘ってくれてありがとー!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・あのあの、ややさん」
「なに、リインちゃん」
「もしかして、あむさんって」
「あ、正解。うちのKにホの字なんだよ」
「あぁ、やっぱりそうですか」
なんだかフェイトさんに片思いしてた時の恭文さんに空気が似てたから、そうじゃないかと思ってたです。
具体的には・・・・・・意地張っても、微笑まれるとデレーってなっちゃうと事とかですね。
「というかよ、リイン」
「はいです?」
「そろそろさ、マジで手札晒していかねぇか?」
リインの左隣に座っている空海さんが少し真剣な顔で、リインに言ってきました。それにリインは、笑顔で返します。
「大丈夫ですよ。緊急会議で早急にそういう方向にする事になりましたから」
「そうか。まぁ、それならいいんだよ」
「ただ」
「ただ?」
リインはニヤリと笑って、小さな声で・・・・・・返します。
「リイン達、ぶっ飛ばしますから。ちゃんとついてきてくださいね?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「素敵な歌ですね」
「そうですね」
「そう言えば・・・・・・なでしこさま」
「はい?」
「私、一つ気になっていたんですけど」
・・・・・・驚いた。だって、普通に見抜いたのは・・・・・・隣でステージから目を逸らさずに歌を聴いている人だけだったから。
「家の事情・・・・・・とだけ言っておきます。うちは日本舞踊の家系なので」
「納得しました。なら、おじいさま達には黙っておいた方が」
「えぇ、お願いしますね。まだ話す時ではありませんので」
・・・・・・恭文君、実は君の事受け入れてる理由・・・・・・もう一つあるんだ。
君と同じなんだ。決定的な隠し事・・・・・・というか、嘘をついている。だから、君の事をあんまり言えないの。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そうして無事に・・・・・・本当に今回は無事に、コンサートは終わった。
襲撃とかも無かったし、平和に・・・・・・本当に平和に終わったのだ。
僕達はフィアッセさん達に簡単な挨拶をしてから、会場の外に出るために足を進めていた。
「平和に終わった。今回は本当に平和に終わった。そうだ、終わったんだ」
「・・・・・・なぎ君、そこまで強調しなくても」
「いや、分かるわよ? アンタ無駄にトラブル体質だしね」
「あの、ティアナさん。恭文ってやっぱり運ないんですか?」
会場を出て、歩いているとややが突然にそう聞いてきた。
それで、魔導師組は表情を重くして全員で顔を見合わせる。
「えぇ、運無いわよ。私はコイツとつるむようになって1年ちょいなんだけどさ、それでも相当数トラブルに巻き込まれてるのよ」
「アンタ、やっぱりそうなんだ」
「蒼凪君、その・・・・・・頑張ってね?」
「よし、あむも唯世達も言いたい事あるなら聞くよ? ちょっとお話しようじゃないのさ」
なんて言いながら空を見上げる。なんというか、すっかり暗くなって・・・・・・ないな。
うーん、1ヶ月くらい前ならもう暗くなっている時間なのに、まだ夕暮れですよ。
もうすぐ春だからかな? でも・・・・・・密度の濃い一日だったなぁ。
特にアレだよ、会場に入るまでに僕達を尾行していた妙な視線とか? ・・・・・・うん、あの視線をまた感じた。
ねちっこくて、見てる奴の性格の悪さが出てるような視線だよ。ここは学校の外だって言うのにこれだもの。びっくりしたさ。
多分、フェイト達がこっちに入ってから・・・・・・ううん、合流する前辺りから見られてた可能性がある。
僕はほら、そういう視線とか殺気とかに気づくの得意だから何とかって感じだね。
でも、誰が監視者なのかの割り出しが全く出来ない。そこで・・・・・・僕はアルトに頼んでちょっと考えた。
”・・・・・・そういやアルト、調子はどう?”
”結構該当者が居ました。学校の近くだったのがネックになりましたね”
”じゃあ、絞り込むのって無理っぽい?”
”いえ、シャーリーさんと咲耶に協力してもらえば・・・・・・多分三日もかからずに特定出来ると思います”
うん、ならよかった。んじゃ、悪いけど早めに。
「・・・・・・あむちゃんっ!!」
念話でそう言おうとした時、突然あむの隣に浮いているランが慌てているような顔で叫んだ。
「ラン、どうしたの? てーかアンタ、またいきなり過ぎだから」
「いきなりはこっちのセリフだよっ! 近くに×たまの気配があるのっ!!」
・・・・・・×たまっ!? え、こんなところでかいっ!!
「あの、ヤスフミ・・・・・・みんなもどうしたの?」
あ、しゅごキャラが見えてないメンバーが、戸惑ってるな。まぁ、ここは仕方ないか。
「フェイトさま、×たまがこの近くで出たそうなんです」
「はぁっ!? ・・・・・・ちょっとちょっと、アンタなに土壇場でカード引いてんのよ」
「僕のせいかいコラっ!!」
そんな話をしていると、シャーリーが懐から端末を取り出す。フェイトもバルディッシュを取り出して、サーチ開始。
「・・・・・・ダメです。やっぱり反応掴めません」
「バルディッシュ、どう?」
≪Sorry Sir≫
「だめ・・・・・・なんだね」
こっちのサーチ関係はアウトか。なら・・・・・・餅は餅屋な方向だね。
「ラン、どこに×たまが出てるか分かる? 悪いけど僕達をすぐに案内して」
「うんっ! えっとね・・・・・・こっちっ!!」
ランに道案内を頼むしかないと思って聞いてみたんだけど、どうやら分かるらしい。
そのまま暗い道の中へ飛び出した。僕とリイン、あむと唯世達もそれを追いかけるように飛び出す。
「フェイト、ちょっと行ってくるっ!!」
「うん、気をつけてね。・・・・・・って、ダメだよっ! 私達も行くっ!!」
フェイトもそのまま走って来て・・・って、ちょっとっ!? 来ても×たまへの対処が出来ないでしょうがっ!!
「こらこら、来てどうするっ!? 来ても意味ないでしょうがっ!!」
「だからってこのままって言うわけにはいかないよっ! 私達も近くまでは行くっ!! あの・・・・・・心配、なんだから」
お願いだから、そのウルウルな瞳はやめて。僕はそれに弱・・・・・・あれ。
なんで僕、唯世の顔が隣に浮かんでるんだろ。よし、気にしない方向で行こう。
「・・・・・・分かった。んじゃ、行くよっ!!」
「うんっ!!」
僕は隣を走るあむの方を見る。あむはそのまま、首を傾げた。
「首を傾げるなバカっ! この場合はとっととキャラなりでしょうがっ!! 全く、これだから魔法少女は使えないっ!!」
「バカとか魔法少女って言うなー! あたしはアンタみたいに戦うのとか慣れてないんだから、しかたないじゃんっ!!」
「言い訳すんなボケっ!! ・・・・・・アルト、行くよ」
「言い訳じゃないしっ!! ・・・・・・ラン、お願い」
というわけで、走りながらシンプルパンクで一気に変身だよ。
「変身っ!!」
≪Riese Form≫
「あたしのこころ・・・・・・アンロックッ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして、現場に到着。ここはホテルの敷地内にある広場。その広場の真ん中にはかなり大きめな噴水。
直接水面から水が出ているわけじゃなくて、2メートル程の台座がある。そこから水が高く巻き上げられてる感じだね。
あ、もうすぐ夜で少し薄暗くなってるから、ライトアップされていてすごく綺麗。
『ムリィィィィィィッ!!』
『ムリムリー!!』
『ムーリィィィィィィィィィィィィッ!!』
でもそんな中で、×たまが3個も浮いてる。それで当然のようにその下には三人倒れてる。
年齢層・・・・・・うわ、ばらばらだね。おじさんやお兄さんやお姉さんだもの。
僕とあむが先方を務める形で、現場に乗り込んだ。だってほら、僕達もう変身してるし。
”・・・・・・たまごは見える。見えるけど・・・・・・あぁもう、対処できないってのがムカつく”
少し離れた所から状況を見る事にしたティアナから、そんな念話が届く。
もう言うまでもないけど、現時点で魔導師組は僕以外は対処出来るかどうか分かんない。なので、こうなった。
”・・・・・・ヤスフミ。私達、このまま下がってた方がいいよね”
”うん、悪いけどそうしてて。それと、人が来るようなら”
”分かってる、結界かけちゃうね。・・・・・・うぅ、本当なら今すぐかけちゃいたいんだけど”
まぁ、ここは仕方ない。万が一にも魔法の事とかがマジで無関係な人にバレると色々まずいし。
なお、ここで言ってる無関係な人はあむ達の事じゃない。本当に第三者の事だ。
「あむ、また×キャラになる前に浄化しちゃうよ。それで・・・・・・平和にコンサート編は終了なんだっ!!」
「恭文、アンタそこまで?」
【まぁ、私達と合流する前にも何かあったぽいし、仕方ないのかも】
なんて言いながら、僕とあむは×キャラに・・・・・・予定変更。左手であむの右腕を掴んで、後ろに引く。
そうしてあむを後ろに引っ張るようにしてぶん投げる。それから、アルトを抜き打ちにして・・・・・・斬る。
「はぁっ!!」
前方、1時方向から来た黒い衝撃波をだ。真下から真上への斬撃によって真っ二つにして回避した。
衝撃波は僕の両脇を通るようにして、地面を抉り・・・・・・そのまま消えた。
「あむ、大丈夫?」
僕は言いながら後ろを見る。あむは丁度僕が盾になるような位置になったので、無傷。今起こった事態に眼をぱちくりさせてる。
「てゆうか、ちょっと乱暴した。ごめん」
「あ、ううん。あの・・・・・・ありがと。てゆうか恭文、今の」
「どうやら、僕達にたまごを浄化されると困るのが居るらしいね」
そうじゃなくちゃ、レンガ式な地面を削るような威力の衝撃波を撃ってくるはずがない。
【あ、私分かった。それで邪魔しようとしたんだね。でもでも、一体誰が】
「正解だ」
そう言いながら、僕とあむ・・・・・・そして×たまの間に入るようにして人影が一つ出てきた。
猫っぽい耳に尻尾。黒の薄手のスーツに右手には銀色の三本の爪・・・・・・というか、クロー。
身長は、僕はもちろんフェイトよりも多分上。フェイトと比べても、多分15センチ以上ある。
そして中々に色男。少しずつ闇に染まっていく世界の中に溶け込むような、整えられた適度の長さの髪。
どこか凡庸としては居るけど鋭い瞳。へそ出しルックに胸元にデカイ十字架のアクセサリー。
首元に付けてるマフラーが背中の結構下の方まで伸びていて、マント的な要素も含んでいたりする。
つーか、あれは・・・・・・なに? いったいどこの怪盗ですか。
「・・・・・・イクトっ!?」
あむが後ろで、驚いたように叫ぶ。・・・・・・いくと? え、あなたの知り合いですか。
≪あむさん、知り合いですか?≫
「あ、うん。少し」
「そういう事だな。悪いがこの×たまはいただいていく」
【お前ら、オレやイクトの邪魔するんじゃにゃいぞー?】
言いながら、イクトと言う色男が×たまに手を伸ばそうとする。
「え、あの・・・・・・ちょっと待ってっ!!」
なので、とりあえずは前に踏み込んで袈裟に斬撃。猫男は身を左に捻りつつそれを華麗に避けた。
身を伏せながら、そこから一気に右手のクローで僕を追い払おうとする。でも、甘い。今の斬撃は左手だけで打ったのよ。
「遅いっ!!」
つまり、僕の右手は空いている。左薙にアルトを叩き込もうとした猫男がそれに気づく前に、まずは胸元に一発。
即座に腕を引いて、それでも襲い来る爪による斬撃をしゃがんで避けつつもアルトを離す。それから左手で掌底。
ジガン装備の掌底が猫男の右腕の肘を捉え、その動きを制限する。そのまま時計回りに回転。
回転しつつも掌底を振り抜き、落ちていたアルトを右手で即座に拾って右切上の斬撃を叩き込む。
猫男は、咄嗟に真横に跳んでその斬撃を回避する。でも、右脇腹が浅く斬られた。
それに顔をしかめつつも一旦地面に足をつけてからバク転するように数度跳躍。距離を20メートル程取って、僕達は再び対峙。
【イクトっ!?】
「大・・・・・・丈夫だ」
そう言えるんかい。てか、何気に丈夫なんだね。アレは内蔵にキテるはずなのに。
「イクトっ! ・・・・・・恭文、アンタイクトに何してんのよっ!! なんでいきなり攻撃するわけっ!?」
「やかましい、止めなきゃあのまま×たまぶん取られてたでしょうが。そっちの方が良かったてーの?」
「・・・・・・それは、その」
・・・・・・拳による打撃というのは、基本的に接触時間が短ければ短いほどいいのよ。
まず、そういう素早い打ち方の方が内蔵にダメージを浸透させやすいの。
だから突きは射出スピードよりも、腕の引きの速さの方が重要だったりする。
単純に伸ばしたままだと、相手に腕を取られる危険性もあるしね。そういうのもあるのよ。
そして、人間の弱点というのは往々にして身体の中心線上にある。
人中や水月、顔で言うと鼻や口や顎とかもそれだね。人体への攻撃の基本は、そこなの。
だからさっきの拳もそこを狙ったのに・・・・・・うーん、加減しなきゃよかったなぁ。
【お前、いきなり何するにゃー! イクトとオレの邪魔をするんじゃにゃいっ!!】
「黙れ謎の声。テメェらこそ僕とあむの邪魔をするな。・・・・・・唯世ー」
とりあえずこのバカは無視して・・・・・・僕は声をかける。
あむの後ろから突撃かまそうとしてたキングに向かって、それを止めるようにだよ。
「・・・・・・なにかな?」
僕の声に足を止めて、唯世はどこか焦ってるような・・・・・・感情任せならしくない声で返事してくれた。
「細かい事情は分かんないけど、一つ確認。この猫っぽいのはとりあえず敵って認識で・・・・・・OK?」
「・・・・・・OKだよ」
「そっか、そりゃよかった」
瞬間、僕はまた風となった。それで猫男の前面に一瞬で回り込む。
そのまま、アルトを右から叩き込む。そうして、あの猫男をぶった斬る。
・・・・・・訂正、避けられた。僕を飛び越えるようにして、噴水の縁に着地した。
距離を取ったのは、さっきみたいに殴られないようにするため。でも、反射と跳躍力が凄い。
一瞬どこぞの魔導師かと思ったもの。でも、攻めるなら早めにしたいな。・・・・・・ダメージ回復されても困る。
「おい、何の真似だ」
「それはこっちのセリフでしょうが。順序間違えてんじゃないよ」
僕は振り返りつつ一気に突っ込み、噴水の縁に乗った上で猫男に右薙にアルトを叩き込む。
そこから続けて袈裟に逆袈裟、そこから左切上にまた逆袈裟と斬撃は走る。
猫男はそれを見極めて、身を捻りつつも下がる。縁から落ちないように爪を盾にして回避。
斬撃と爪がぶつかる度に火花が走り、五撃目で僕達は互いに押し込むように足を止めた。
「あむ、唯世と一緒にすぐに×たま浄化っ! コイツは僕が足止めするっ!!」
「・・・・・・へ?」
呆けた声に、軽く舌打ちしつつも大声で僕は言葉を続けた。
「ウダウダやってんじゃねぇよっ! とっとと浄化しろっつてんだろうがっ!! このタコっ!!」
「は、はいー! 分かりましたー!!」
・・・・・・とにかく、相手の目的は×たまを入手する事だ。でも、それは認められない。
現段階でコイツが何の目的でそうしようとしてるのかすら、さっぱりなんだから。
だったらどうする? 簡単だよ、×たまが入手出来ないようにすればいい。具体的には、浄化するの。
浄化してしまえば、×たまは元のたまごに戻る。×たまを壊すという選択が無い以上、これが一番ベストだ。
【あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! また勝手にゃ事してー!!
くそ、あんなガラクタやっぱりいつも通りに壊すべきだったにゃっ!!】
苛立ち混じりでそう言った謎の声に、糸が一本切れた。とにかく、僕達は再び距離を取る。
猫男は噴水の縁を器用に走って、僕から背を向けて距離を取ろうとする。
なので僕は、僕は噴水の台座に向かって跳んだ。水しぶきの中を突っ切りながら、猫男の上に出る。
噴水を真正面から突っ切ったために、僕は完全にびちょ濡れ。そして水しぶきが周囲に撒き散らされる。
【イクトっ! 上だにゃっ!!】
僕は狙いを定めて、唐竹にアルトを叩き込んだ。
「・・・・・・・・・・・・ちぃっ!!」
逃げるのは不可能と思ったのか、猫男が右手の爪を盾にして僕の斬撃を防ぐ。・・・・・・ううん、流した。
爪の刃を斜めにして、僕の斬撃を自分の左側に流れるようにした。そこから猫男はまた回転。
斬撃を外されて隙だらけな僕に向かって、右足で回し蹴りを叩き込む。僕は空中で体勢を整えつつもジガンでそれを受け止める。
アルトから手を離して、上から袈裟に振り下ろすように襲ってきた蹴りを受け止め、右足で縁に着地。
すぐに両足を踏みしめて、左手を上へ払い上げる。猫男は器用に縁を側転しつつ距離を取る。
「全く、余計な事しやがって。なんでこんな・・・・・・あぁ、なるほど。
お前、あのお子様キング達から、イースターやエンブリオの事を聞いてるわけか」
【それでオレ達の邪魔してるんだにゃ? 全く、めんどくさいガキ共だにゃ】
「・・・・・・イースター? エンブリオ?」
なんですか、その新用語は。てゆうか、いきなり過ぎて異見分からないし。
まぁ、そんな事はともかくとして、僕はまた縁を走ってアルトを袈裟に叩き込んだ。
「知らないねっ!!」
猫男はそれを受け止めて、僕達はまた鍔迫り合いな体勢になった。
「んなもん、聞いた事ないし」
【はぁっ!?】
「・・・・・・マジかよ。だったらお前、なんでこんな事する。アイツら、お前に嘘ついてんだぞ?」
その言葉に、何かが心に突き刺さる。そして、そこから・・・・・・ある感情が噴き出す。
【そうだにゃそうだにゃっ! アイツらは嘘つきにゃっ!! お前の事利用してんだぞ〜!?】
「そういう事だな。分かったら邪魔すんじゃねぇよ、チビ。痛い目みたくなかったら、とっとと家へ」
猫男が腕を右薙に振るって、僕の刃を弾くようにする。そのまま身体を回転させて、僕に右足で後ろ回り蹴り。
「帰れっ!!」
おそらくはそうやって体勢を崩してどうこうってのを狙ってたんでしょ。
でも、甘い。僕はしゃがんでそれを避けた。続けて当然の事ながら、かかと落としが来る。
「飛天御剣流」
足を途中で止めて、そこから続けての連撃だよ。だけど、僕はそこも読んでた。
だからアルトの峰に手を当てて、足を狙って刃を打ち込みつつ飛び上がった。
「龍翔閃もどきっ!!」
「なっ!!」
猫男は、咄嗟に左足を動かして跳んだ。おそらくは本能的にやったために、縁から落ちて背中から叩きつけられる。
僕は飛び上がりつつも同じように再び地面に着地。すぐさま起き上がる猫男を見据える。
「とっとと帰れよ、愚図が。じゃないと、もっと痛い目見ちゃうよ〜?」
嘲笑うようにそう言いながら、僕は猫男の足を見る。・・・・・・傷は無しか。まさか外すとは思わなかった。
「・・・・・・何のために戦うのかって聞いたな。だったら教えてやるよ」
僕は左手から銀色のベルトを取り出した。そして、それを腰に巻きつける。
「確かに嘘つかれてるのかもね。でも、それはお互い様だ。僕だって・・・・・・嘘ついてる」
それもブッチギリでアウトなのだ。多分、僕の方が罪が重い。
「でも、んなのどうでもいいわ。それでもあの子達に通さなきゃいけない筋が出来た。
なにより・・・・・・僕はお前と、さっきからにゃーにゃー煩い謎の声の言う事が許せない」
別に、今後ろでフルメンバーで×たま相手に四苦八苦してる連中が嘘ついてようと、んなの知らないよ。
僕はいつだって、僕のためにケンカしてんだ。他人のために戦った事なんて、一度だってないね。
≪というか、あのたまごは元々あなた達のではありません。
それを奪おうとするのなんて、見過ごせるはずがないじゃないですか≫
「問題ないだろ。お前、知ってるか? 自分で自分のたまご割る奴だって居るんだぞ」
【そうにゃそうにゃー。だからあんなガラクタが無くなろうと、だーれも困らないにゃー。
壊そうが持っていこうが、そんなのオレとイクトの自由にゃ。いい加減邪魔するにゃ】
その言葉は、以前あむに聞いた事。そう言いながらたまごを壊してた奴が居ると。
なるほど、コイツらみたいな連中だったのか。うん、よーく分かったわ。
”フェイト、悪いけどちょっと暴れるわ。あと、これは僕の個人的なケンカだから・・・・・・邪魔、しないでね”
”しないよ。ヤスフミ、もう抑えなくていい。私もヤスフミと気持ちは同じ。
もし、そんな事をしてる人達が居るなら、絶対に・・・・・・絶対に許せない”
その言葉がありがたかった。だけど、同時に申し訳ないとも思ったりした。やっぱり・・・・・・ね。
”分かった。フェイト、また無茶してごめん”
”ヤスフミ、それ・・・・・・ちょっと違う。私、言ったよね。気持ちは同じだって”
”なら『ありがと』で、いい?”
”うん”
・・・・・・フェイト、ありがと。感謝するわ。さて、そうなると後必要なのは・・・・・・宣戦布告だよね。
「そういうわけだから、お前もう」
言いかけた猫男の表情が驚きに満ちる。そりゃそうだ。
僕が容赦なくアルトを真上から唐竹に叩き込んでるんだから。
その一撃を見て、猫男は咄嗟に左に避ける。
そして僕の斬撃は、轟音と共にレンガを敷き詰めた地面を砕いて斬り裂き、2メートル程の線を作った。
「黙れよ」
斬撃が衝突した箇所には、子ども一人が寝転がれば収まりそうなクレーターが広がっていた。
猫男に視線を向けると、唖然とした表情でこちらを見ていた。
「例えそうだとしても、あのたまご達は・・・・・・あの人達の『なりたい自分』は、確かにここに存在してる。
それを見殺しにするような真似、出来るか。僕はお前らが誰かなんて、何の目的かなんて知らない。いいや、どうでもいい」
≪重要な事は一つ。あなた達は私達にケンカを売った・・・・・・ただそれだけですしね≫
「あんな理屈振りかざして人の夢を・・・・・・目指したい未来の自分の形を壊そうって言うんなら」
僕はアルトの切っ先を猫男に向ける。そして今この瞬間、僕は・・・・・・僕達は、連中に喧嘩を売った。
「人の夢をお前らが『ガラクタ』と言って蔑むなら、僕がお前らの全てを否定して・・・・・・ぶち壊してやるよ」
≪すみませんが、あなた達の好きにはさせません。というか、ぶっちゃけ今の状況がもうめんどくさいんですよ。
なので・・・・・・徹底的に八つ当たりします。あ、答えは聞いてませんけど≫
僕は左手でベルトに取り付けられている赤いケータイのエンターボタンを押して、すぐに黒いパスケースを取り出して持つ。
つーわけで行くよっ! そのまま、パスをセタッチッ!!
≪The song today is ”HOWLING”≫
装着したベルトから音楽が大音量で流れだす。それに猫男が目を見張る。
そう、皆様ご存知・・・・・・サウンドベルトッ! いわゆる一つの固有結界っ!!
なお、なぜこの電王関連じゃない曲かと言うと・・・・・・僕の趣味。
まぁ、アレだよ。1年経って色んな意味で進化したと思って? 色々ノリのいい曲を入れまくったんだ。
ちなみにこれはabingdon boys schoolの曲だね。DARKER THAN BLACKのOPテーマー♪
「いい? うだうだと珍しく前振りなんざしちゃったけど」
響き出した音楽で心と身体が力で満たされる。だから不敵に笑いながら言葉を続ける。
「ここからは僕達は最後までクライマックスだ。・・・・・・さぁ」
アルトを右肩で担ぐようにして、僕は左手を下から上げる。それからすぐに左手の人差し指でアイツを指差す。
そして本日二度目となるあの言葉を、今この瞬間に刻み込んだ。それによって場に風が生まれて髪とマントをなびかせる。
「お前達の罪を数えろ」
そして僕はそのまま一歩踏み出して・・・・・・猫男に突撃した。
「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【・・・・・・え、あの・・・・・・えぇっ!?】
「な、なんか音楽が」
あたし達が×たまに対処していると、突然恭文がベルト着けて地面砕いて、それから音楽が・・・・・・って、なにあれっ!?
『ムリムリムリィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!』
「・・・・・・サウンドベルトですわ」
突然真横から声。それで私の目の前に、金色をした円形の何かが生まれた。
それが×たま達から発せられた黒い衝撃波を防ぐ。
「咲耶さんっ!?」
「えぇ。・・・・・・あむさま、驚くのは分かりますが敵から眼を離すのは愚の骨頂です。集中してください」
「は、はい。てゆうか、あの・・・・・・ありがとうございます」
咲耶さん、あたしの隣に来て攻撃を防御してくれた。恭文の方見てて、×たまの方に全然気づかなかったから。
「唯世さん、みんな・・・・・・大丈夫ですかっ!?」
「えっと・・・・・・リインさん?」
「わわ、なんかシールドみたいなのが」
「はいです♪」
声がした方を見ると・・・・・・あ、唯世くん達もリインちゃんが発生させた同じようなものに守られてる。でも、こっちは白。
「リイン、咲耶、大丈夫っ!?」
恭文がイクトと戦い・・・・・・そうだ、戦いながらこちらに声をかける。ただ、視線は向けない。
その言葉に、リインちゃんと咲耶さんが頷く。それを横目で見ながらも、恭文はイクトが振るう爪を寸前で避け続ける。
突かれても、薙ぐように払われても、後ろに下がりながら全部すれすれで避けて・・・・・・イクトが動いた。
イクトから顔面を蹴り上げるような蹴りが飛ぶ。イクトは身を伏せながら、突き上げるように左足を叩き込んだ。
恭文はそれを咄嗟に下がって避けるけど、イクトは地面についた手を捻って、薙ぐように恭文の右側から右足を叩き込む。
それは恭文の耳・・・・・・あれ、確か耳を叩いたりするのって、鼓膜破れるかも知れないから危ないんじゃ。
「恭文っ!!」
でも恭文は冷静にそれに向かって、アルトアイゼンの柄尻を叩き込む。
衝撃で空気が震えて、鈍く・・・・・・耳にいつまでも残るような音がした。
イクトが表情をしかめて、足を引いてから身体を回転しつつ、一瞬だけしゃがみ込む。
それから一気に後ろに跳んで、距離を15メートル程取った。その様子を見て、恭文がにやりと笑う。
「あむ、余所見してんじゃないよっ! さっきも咲耶に守ってもらったの、もう忘れたのっ!?」
「な・・・・・・そ、そんな事言ったって仕方ないじゃんっ! アンタマジで無茶苦茶するしっ!!」
「黙れバカっ!!」
はぁっ!? なにそれっ! こっちがせっかく心配してんのにっ!!
「いいからとっとと×たま浄化しろっつーのっ! リイン、咲耶、そのバカフォローしてっ!!」
「了解ですっ! 恭文さんはその黒猫さんをぶっ飛ばしてくださいっ!!」
「こちらは私達にお任せを」
「お願いっ!!」
それだけ言うと、恭文は再びイクトと向き合って・・・・・・飛び込んだ。それで、二人が交差する。
右薙に振るわれた爪とアルトアイゼンの刃が交差して、火花を散らす。それから二人は滑るようにしつつも振り返る。
恭文より早く、イクトは方向転換を終えて前に踏み込んでいた。それでイクトの爪が恭文を襲う。
でも、全部余裕綽々って感じですれすれで避けてて・・・・・・なんだろ、ちょっとイライラしてきた。
「あむさま、早く浄化を」
「でもアイツ」
「では、どうするおつもりですか? ・・・・・・はっきり言って、あの場に飛び込んでもおじいさまの邪魔になるだけです」
あたしはそう言われて、俯いて・・・・・・×たまを見据える。結局あたし、これしかないんだ。
「分かり・・・・・・まし」
「ダイチ、なんか知らねぇが」
「あぁ。音楽聞いてたら無茶苦茶・・・・・・力出てきたっ! 空海、行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「・・・・・・へ?」
「おうっ! 行く」
あたしが後ろに視線を向けると、空海はサッカーボールを地面にセット。
そのまま足に炎なんて点して・・・・・・シュートっ!?
「ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
サッカーボールは勢いよく炎に包まれながら蹴りだされ・・・真っ直ぐに×たまへと飛ぶ。
空中に浮いていた3個の×たまの間をバウンドして・・・・・・あ、×たまが炎に包まれながら落ちる。
「うっしゃっ! 大成功っ!!」
「そ、相馬君・・・・・・すごいね」
「というか、よく×たま割れないよね。やや、ちょっとびっくり」
「そりゃあ加減したからな。なんでかそこまで普段より上手く出来てるんだよ。・・・・・・ほら日奈森っ! ボサっとするなっ!!」
「あ、うんっ!!」
丁度一まとまりになってるし、これならいけるっ!!
「ネガティブハートに・・・・・・ロックオンッ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
”あなた、あむさんはいいんですか?”
”いいのよ。それに今は・・・・・・このケンカの方が優先だよ”
突き出された爪を、アルトを左から打ち込んで払う。猫男はその払われた勢いを利用して回転。
しゃがみつつ僕の左サイドを取るようにして、右切上に爪を打ち込もうとする。それを下がって避ける。
猫男は腕を即座に引きつつ、前に踏み込みながら身体を起こす。そして、続けて攻撃。
起き上がる時の身体の伸びも利用しつつ、僕の腹に向かって爪を突き出す。・・・・・・僕はアルトの刃を返す。
突きは時計回りに身を捻りつつ避けて、峰打ち状態にしたアルトの鍔元をその爪に当てる。そして一気に左薙に振るう。
そこからどうせ裏拳の要領で攻撃して、僕に距離を取らせようとか考えていたに違いない。
だから先読みしてそれを防ぎつつ、腕を滑るように顔に向かって左手のみでアルトを持って斬撃を叩き込んだ。
猫男は、咄嗟に身体を後ろに倒す。鼻先すれすれのところを斬撃が通って、僕の攻撃はミス。でも、残念ながらまだ続く。
空いている右手を伸ばして猫男の右手を強く掴んで、そこから時計回りに身体を回転させる。
その遠心力を利用して、猫男を地面から引き剥がす。
時計回りに3回転して、僕は狙いを定めて腕をやや下に下げた上で手を離した。
「はぁっ!!」
そこは噴水の縁。普通ならそのまま激突してお亡くなりというコース。
でも、猫男は身を翻して縁の角に着地。・・・・・・猫男の爪に、黒い光が宿った。
「スラッシュ」
そのまま、僕に向かって爪を突き出しながら跳躍した。そうして猫男は黒い閃光に早変わり。
「クロウッ!!」
僕は即座に反時計回りに身を捻って、右に回避。爪は僕の胴のジャケットを易々と斬り裂いた。
でも大丈夫、斬り裂いただけで肉や骨には到達してな。掠っただけだ。
それから猫男は、身を空中で捻って両手両足を使って滑るように地面に着地。それからすぐに走り込んで来た。
”・・・・・・猫ですね。四足で走りますか”
”確かに”
走り込んできた猫は僕に飛びかかるようにまた爪を振るう。僕はアルトを袈裟に振るってその爪と交差。
猫男は僕の5時方向に着地して、太もも辺りを狙ってまた右腕を払うようにして斬撃を打ち込む。
腕全体・・・・・・ううん、身体全体を使って、鞭のようにしならせての斬撃はやっぱり驚異以外のなにものでもない。
僕は時計回りに振り返りつつ、右足を上げてその腕を狙って踏み込んだ。
猫は咄嗟に気づいて腕を止めて数歩分下がる。足は、地面を遠慮無く蹴り砕いていた。
そして、しゃがみながら突撃。斬撃を右薙、袈裟、突きと叩き込む。
猫は下がりつつもそれを全て右の爪で捌いて、最後の突きの直後に僕の顔目がけて引っ掻くように爪を動かす。
僕も下がりつつもアルトを右薙に振るって、胴を狙って刃を叩き込む。アルトの刃の切っ先が、相手の皮膚を捉えた。
僕の顔には三本の浅い爪痕が残り、猫男の腹には刃で斬られた痕。それぞれの傷口から、赤い血が流れ出す。
猫男は爪を振り切った勢いを下ろさないように回転。僕に向かって左足で後ろ回し蹴り。
狙いは僕の足下。僕は軽く跳躍して避けると、今度は右足での回し蹴りが来た。
当然ながら、回転からの連続攻撃。僕はそれをジガンで受け止めて・・・・・・吹き飛ばされた。
猫男は足を振り抜いて着地してからすぐに、そんな僕に向かって突撃してくる。僕は地面を滑りながらも着地。
・・・・・・アルトに魔力を込めて、刃を打ち上げる。そして猫男の爪にも、黒い光がまた宿った。
「鉄輝」
「スラッシュ」
僕は前に踏み込んで、アルトを唐竹に打ち込む。そして猫男はまたまた引っ掻くようにして、爪を左薙に叩き込む。
「一閃っ!!」
「クロウッ!!」
僕達はそのまま交差。蒼い斬撃と黒い爪撃は衝突し合い・・・・・・蒼は黒を斬り裂いた。
地面に三本の爪が地面に甲高い音を立てながら落ちる。
【にゃにゃっ!? イクトー!!】
「・・・・・・ち」
会話しているのがお前の隙だ。僕はその間に振り返って、刃を左に構えつつ・・・・・・一気に右に跳んだ。
猫男に追撃しようと思っていると、殺気を感じる。それも猫男じゃない。それは近くの林から感じる。
身体中に突き刺さるような強烈な殺気が発せられている方向を見て、僕は愕然とした。
そこには紫と黒色の蝶が、僕目がけて大量に飛んできていた。
飛んでくる蝶から下がるように跳びつつも、左手に魔力スフィアを形成。
そのまま左手を蝶達に向ける。発動する魔法は、当然これ。
「クレイモアッ!!」
発射された散弾は盾となり、蝶達を貫く。そして蝶達は派手に爆発する。
僕とアルトは、広がっていくその爆発の中に飲み込まれた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・×たまはなんとか浄化した。それでイライラしつつも恭文の方を見ると・・・・・・え、嘘。
恭文・・・・・・爆発して、あのえっと・・・・・・うそ。
「蒼凪君っ! ・・・・・・まずい、すぐに救急車っ!!」
「すぐに連絡するわっ! えっと、119番」
「あー、みなさん大丈夫です」
「大丈夫って・・・・・・んなわけあるかっ! 思いっきり巻き込まれてるじゃねぇかよっ!!」
そ、そうだよ。炎が上がって、その中に飲み込まれて・・・・・・あれ、イクト・・・・・・イクトが居ないっ!!
「あむちー、なでしこ、月詠幾斗が居ないよっ!?」
「黒猫さんは、どうやら逃げたようね。全くすばし・・・・・・って、そんな話してる場合じゃなかったっ! 早く救急車を」
「なでしこさま、その必要はありません。リインさまの言うように、大丈夫ですから。・・・・・・ほら」
咲耶さんの声に、あたし達はもう一度そこを見る。
私達の目の前に上がった爆煙を突き破るように、一つの影が生まれる。
それはそのまま、ゆっくりと出てきた。
着ている服やマントがちょこっとだけすすけたりしてるけど、普通に動いて元気そうで・・・・・・これは、嘘じゃないみたい。
「恭文君っ!!」
「こてつちゃんも、大丈夫なのっ!?」
「あー、大丈夫。クレイモアで撃墜した後に、すぐ爆発ぶった斬ったから。あー、てゆうか・・・・・・煙い」
顔の前で右手を振って、自分の身体の周りに纏わりつく煙やほこりを払うようにして、私達に近づく。
≪それにこの服は、銃弾の直撃でさえ簡単には傷がつかないようになっています。あの程度では死にませんよ≫
「そ、そんな便利なモン使ってたのかよ。お前ら凄いな」
「というより、爆発を斬ったって・・・・・・そんな事出来るのっ!? ややびっくりなんだけどっ!!」
「出来るの。そこもまたあとで詳しく話すよ。で、みんなは大丈夫?」
全員がその言葉に頷く。・・・・・・え、というかちょっと待って。いや、なんかおかしくない?
「いや、それはむしろお前に言いたいんだけどよ。てーか怪我もしてるじゃねぇか」
「致命傷じゃないよ。ま、らしくもなかったとは思うけどね」
はっきりそう言い切った恭文を見て、なんかこう・・・・・・イライラがパワーアップする。
「とにかく問題ない問題ない。どこぞの魔王の砲撃に比べればもうぜーんぜん」
ヘラヘラとしながら恭文が言ったその言葉に、あたしは頭がかーっとなって・・・・・・叫んだ。
「バカっ!!」
『・・・・・・へ?』
だめ、あたし・・・・・・もう止まんない。だって、あんなの・・・・・・あんなの、今までなかった。
刃物で互いにすれすれの攻撃して、血が出るような事になって・・・・・・だから、だめ。
「あたし達の心配より、自分の心配しなよっ! あんな・・・・・・あたし、マジで心配したんだよっ!?」
それなのに、なんでそんなヘラヘラ出来るわけっ! マジ信じられないしっ!!」
【そうだよっ! 確かに恭文やアルトアイゼンは、私達やあむちゃんよりずっと強いのかも知れないけど、それでも心配したんだからっ!!】
「え、えっと・・・・・・あの、あむ? なぜにそんなちょっと怒り顔?」
「怒るに決まってるじゃんっ! あんな・・・・・・あんな・・・・・・マジで怖かったんだからっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・イクト、大丈夫?」
「なんとかな。つーか、悪い。助かった」
「ううん、いいの」
というか、かなりやばかったな。爪は斬られるし何気に殴られたとこも痛いしよ。
キャラなり出来無くてあれなのかよ。くそ、マジで要注意だ。
「ただ」
「なに?」
「お前、一応アイツに助けてもらったんだよな? いくらなんでもアレ・・・・・・やり過ぎだろ」
なんかすげー爆発してたし、色々巻き込まれてたしよ。てゆうか、死ぬんじゃね?
「・・・・・・いいの。イクトの事、やっつけようとしてたんだから。それに、ちょっとは加減したよ?」
「いや、してないだろ。むしろ力注ぎまくってただろ」
【女って・・・・・・怖いにゃー】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
全員で別の人気の少ない場所に移動してから、とりあえずお話。
あむはお茶を飲んでだいぶ落ち着いてきたみたい。で、僕はフェイト達にお説教されてた。
・・・・・・あれ、おかしいな。僕何にも悪い事してないはずなのに。
「・・・・・・日奈森さん、落ち着いた?」
「うん。・・・・・・あの、恭文ごめん。あたし、ちょっとアレだった」
「そうだね。おかげでお説教だし」
「アンタ、マジ反省してないでしょっ! そりゃああむの反応もアレだったけど、途中で怒鳴ったりしたのはダメに決まってるじゃないのよっ!!」
どうもそうらしい。そこの辺りで皆々様は、僕にご不満があるようだ。
「そうだよ、ヤスフミ。あむさんもそうだけどみんなは、戦闘に関しては素人なんだよ?
でもヤスフミ、そこの辺り完全に忘れて普通に私達と同じレベルの判断求めてたよね。そういうの絶対」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 分かったからもうお説教はやめてー!!
うん、忘れてたよっ!? 確かに色々ぶっちぎってたと思うから許してー!!」
だってー! あんまりに呆けた返事するからちょっとイラってしちゃったんだもんー! というか、ごめんなさいー!!
「でも恭文君」
「なんでしょうか?」
「あ、私はお説教じゃないから安心して欲しいな。
・・・・・・あれがいつもの通りって。あなた、本当にどういう生活を送ってるの?」
「なでしこ、触れないで。お願い、思い出すと色々悲しくなってくるの。
まぁ、魔法以外であんな攻撃されるのはやっぱビビるけどさ」
「そうみたいね。分かったわ、この辺りは・・・・・・え、魔法?」
なでしこだけじゃなくて、全員が僕を驚いたように見る。
なので、頷いて答えた。それは僕だけじゃなくて、フェイトやティアナも一緒に。
「僕が使ってる能力・・・・・・『魔法』なんだよ。それが僕達が持っている能力の正体。
僕やフェイト、ティアナにリインに咲耶は、その魔法を修得している者・・・・・・魔導師なんだ」
「でも、私やヤスフミが使う魔法は、みんなが思ってるような魔法とは少しだけ違うんだ。
科学的に作られたプログラムを基に発動する、結構デジタルなものだから」
『魔法って・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
全員の表情が驚きに変わる。まぁ、当然だよね。いきなりこれなんだもの。
「おいおい、どういう事だよそれっ! つーか、なんでそんな話になるんだよっ!!」
「空海、僕・・・・・・色々説明するって言わなかった?」
「・・・・・・あー、そういやそうだったな。でも、いきなり過ぎないか?」
うーん、いきなりってわけじゃない。フェイトやリインとあれこれ相談はしてたしね。
「別に大した理由はないよ。ただ、あの猫男とまたケンカやろうって言うなら・・・・・・みんなの理解は必要かなって思っただけ」
「あぁ、なるほど。そういう事か。つまりお前は」
「あのバカを・・・・・・ううん、あのバカみたいなのが他に居るなら、ぶち壊して止める。
僕ね、この世の中で人の夢や願いを道具扱いするような愚図は、絶対許せないの」
だから六課の事も・・・・・・うん、許せなかったしね。だって、夢や願いは大事なものだよ。
それがなかったら、きっと人はキラキラして生きられない。だから・・・・・・大事。
「それがお前の仕事だからか?」
「違うよ。これは僕とアルトのケンカ。みんなもフェイト達も関係ない。勝手に暴れて、勝手にぶっ潰すだけだから」
空海の目を見ながらそう言うと、空海は軽くため息を吐いてあむ達の方を見た。あむ達は僕を見て、頷いてくれた。
「なら・・・・・・恭文」
「何?」
「いや、お前がどうとかじゃねぇよ。そうなると、俺らも腹割らないわけにはいかないって話だ。唯世、もう話してもいいよな」
「うん。・・・・・・蒼凪君。まずさっき君が戦った泥棒猫・・・・・・月詠(つきよみ)幾斗の事なんだけど」
「分かってはいるとは思うが、僕から補足だ。これがあの男の本名になる」
なるほど、アレは月詠幾斗って名前だったのか。・・・・・・え、なんで唯世やあむは名前知ってる?
それもフルネーム。僕、何かのコードネームかと思ってたのに。
「唯世君、どうして名前が分かるの? というより、顔見知りっぽい」
「はい、一応は顔見知りです。そこは僕や日奈森さんだけじゃなくて、他のみんなも同じ」
「そっか。ならもう一つ。私が一番疑問なのは、あの子は君達と同じキャラ持ちに見えるという事なの。
それであの猫耳に薄手の服装は、キャラなりだよね? あむさんのアミュレットハートと同じ」
「正解です」
フェイトの方を見ながら、唯世はそのまま頷いた。
「月詠幾斗は僕達と同じキャラ持ちで、アレはブラックリンクスというキャラなり。
それで蒼凪君が『謎の声』と言っていたのは、月詠幾斗のしゅごキャラのヨルだよ」
「宿主に似た、自由気ままな泥棒猫だ。そして性根は・・・・・・恭文、お前の聞いての通りだ」
「他のたまごを『ガラクタ』呼ばわりする、最低な奴と」
「そういう事だな」
だからいちいち口出ししてたわけですか。うん、納得したわ。
「いやいや、それがなんでアンタ達と対立してるのよ。キャラ持ちだって言うなら、アンタ達の仲間でしょ?」
「唯世君、みんなももうちょっと詳しく教えてくれないかな? 私も・・・・・・出来れば無理には聞きたくない」
フェイトは言いながら、僕の方を気にした様子で見ている。それからまた、唯世に視線を向けた。
「でも、ヤスフミにまた戦ってもらう事になる可能性が大きい以上、さすがにこのままっていうわけにはいかないよ」
「そこはフェイトさんだけじゃなくて、私達チーム全員の総意と思って欲しいんだ。
特に今日なぎ君は、軽めにだけど負傷してるしね」
「分かっています。僕達も腹を割って、全部お話します。・・・・・・あと、エンブリオについても」
・・・・・・こうして、ようやくうだうだと嘘や隠し事で互いの腹を探り合う時間は終わった。
ここからは・・・・・・らしく激しく暴れていく事になるはず。
(第6話へ続く)
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