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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第2話 『なぜっ!? 突然始まるドキドキスクールデイズッ!!』



・・・・・・あの衝撃の事実発覚の翌日。後日、秘密裏に私とシャーリー、ティアは行動開始。

気づかれないように下校途中のガーディアンの子達の様子を伺って、その辺りを確認した。

ただ、五人の人間が揃いも揃って小学生の様子を伺うのは怪しいと思う。うん、怪しいよね。





思うんだけど、それでも実行するしかなかったりするのが悲しいところ。だけど・・・・・・うーん。










「・・・・・・どう?」

「私はだめ。シャーリーさんは?」

「同じく。フェイトさんはどうです?」

「私も・・・・・・だめ」



結果は見事なまでに全員NG。これはなんというか、ダメだね。



「なぎ君は見えてるんだよね? あと、アルトアイゼンとリインさんも」

「もうばっちりですよー」

≪どうして私達が見えてるのかが不思議ではありますけどね≫

「なんというか、ちょっぴし妙な気分だよ」



その場に居たヤスフミとアルトアイゼンとリインは見えてるらしいんだけど、私達は全くダメだった。

うーん、やっぱり霊感とかそういう特殊なものが関係してるのかなぁ。



「さて、こうなるとやっぱりなぎ君に頑張ってもらう必要があるね」



シャーリーがそう言うと、ヤスフミが苦い顔をし出した。



「ね、逃げていい?」

「ダメ。・・・・・・あの、頑張ってくれないかな?
変身魔法抜きでリアルに出来るのは、ヤスフミとリインしか居ないんだ」

「だったらフェイトもなってよ。いいじゃん、変身魔法使えばさ。それで僕と同じくだよ」



あ、なんかイジケ出した。ちょっと可愛い・・・・・・って、これは違う。

というか、目がつや消しの単色になり始めてる。



「アンタ、その目はやめなさい。いや、怖いから。マジで怖いから」

「と、とにかく・・・・・・お願い。私達も出来る限り協力するから」

「あとでクロノさん○していいなら」

「お願いだからそういう物騒な事言わないでー! あの、本当にお願いっ!!」











とにかく、その話をクロノに報告した上でヤスフミとリインの重大なお仕事の実行が決まった。

その時、クロノがやたらとヤスフミを怯えた目で見ていたけど、きっと気のせいだと思う。

うん、気のせいだよね。つや消しの瞳で『くけけけけけけけけっ!!』なんて笑ったのは、きっと気のせいだよ。





とにかく、そのためにヤスフミとリインがする事になったお仕事というのは・・・・・・これ。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第2話 『なぜっ!? 突然始まるドキドキスクールデイズッ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・はい、皆さんに転校生を紹介したいと思います」



朝のHRの時間、あたしのクラスである5年星組の先生がそう言ってある男の子を指し示す。

その子は栗色で黒の瞳で、ぶっちゃけあたしがよく知ってる子。えっとあの・・・・・・えぇっ!?



「・・・・・・どうも、転校生の蒼凪恭文です。どうぞよろしくお願いします」



制服姿のその子はそう言って、すっごく苦い顔でお辞儀・・・・・・って、えぇっ!?



「あむちゃん、あの子」

「え、なんでこの学校にっ!?」

「あたしがわかるわけないじゃんっ! でも、マジで同い年だったんだ」

「むむ、新キャラ急接近・・・・・・ですかぁ?」



スゥ、マジでそのフレーズ気に入った? 何回も言ってるし。



「それじゃあ日奈森さんの隣が空いてるから、君の席はそこね」

「はい」

「蒼凪君、君なんか暗いよ? どうしたのさ」



確かに暗い。私が知ってるあの子は、飄々としてるというか、空気がゆるいというか、単純っぽいというか。

とにかくそういうキャラなのに、今のあの子は違う。ものすごく暗い。この状況が辛いと言わんばかりに。



「いえ、気にしないでください。アレですよ、
転校という素晴らしいイベントのおかげでナーバスになってると思ってください」

「あぁ、なるほど。もしかして転校生によくありがちなアレ?
友達出来るかなーとか、いじめられないかなーとか」

「ソレです。あと、先生が変な人じゃないかなーとか? 僕の知ってる先生・・・・・・まぁ、お医者さんなんですけど。
無駄に抱きついたりしてくる人とか、ちゃんとしないと角を生やして異常に怖くなる人とかばかりですから」



そう言ってクラス担任の二階堂先生を見る。そして・・・・・・二人同時に笑い出した。



「まぁ、ないですよね。そんなの」

「ないない、さすがにそれは無いって。まぁ、角はちゃんとしてなかったら生やすかも知れないけどさ。
僕は無駄に抱きつく趣味はないし。それにさ、どうせ抱きつくなら子どもより恋人とかの方がいいもの」



先生っ! 一体なにこんなところでとんでもない発言してるのっ!?



「あ、僕もです。それで、どうせなら年上な方がいいですよね。
というか、年上で包容力があって優しい人って憧れません? もう癒し系全開な感じで」

「あぁ、憧れる憧れる。どうも僕が付き合う相手は気が強くて若干ズボラな人が多くて・・・・・・なに、そういうの分かる方?」

「周りの女性は大体そんな感じですし、年上女房やら持ってる人が居ますんで。
そこはもうよーく分かります。で、尻に敷かれてる人が多いから余計に」



そして、そのあたし達が理解出来ない会話を繰り広げた上で、二人は一瞬止まる。



「・・・・・・なんだろう、個人的な感情で言うと、君とは色んな意味で仲良くなれそうだよ」

「同じくです。二階堂先生、これからよろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしく」



そして二人は強く握手をして、そのまま笑い出す。

な、なんなのあれ。気が合ってるの? いや、それにしてはちょっとおかしい。



「みんな、聞いての通りだから、出来るだけ仲良くしてあげてね」



いや、なにをどうやってっ!? このクラスには当然のように年上なんて居ないんだけどっ!!



「よろしくお願いします」

『・・・・・・はーい』










そんな話をしながら、制服を着たあの子があたしの右隣の席に来る。そして座って・・・・・・お辞儀してくれた。





だからあたしもペコリとお辞儀。でも、これ・・・・・・どういう事? なんであの子がいきなりこの学校に。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトさん、なぎ君相当ですよね」

「そうだね、相当だと思うよ」



遠くの建物から、様子をこっそり伺う。そして、思う。ヤスフミ、今までに無いくらいにブルーだ。だって、昨日から纏う空気が重かったもの。

それもすっごく。たまにつや消しな目になって『クロノさん○して○す』って呟くから怖くもあった。



「まぁ、それも当然ですよね。今年で19歳なのに、今更小学生をやれ・・・・・・ですから。
私だって嫌ですよ、そんな江戸川コナンみたいな真似は」

「そうだよね。ただ、どうしても必要な事だから」





ヤスフミが掴んだ情報だと、たまごは子ども達が持っている事が多いらしい。大人はごく偶にとか。

まぁ、話通りなら私やなのはみたいな大人はたまごはもう消える・・・・・・というか、かえっちゃうし、当然か。

だから情報収集のため、あと事件が起きた時には早急に対処するために学校に潜入してもらった。



あと出来るならガーディアンの子達との距離を縮めて、それに協力という形で異変に対処できるようになるため。

それには多分これが一番いい。ヤスフミは体型と容姿からあの子達に同年代と思われてるみたいだから。

そこを利用しない手はない・・・・・・というのがクロノのアイディアではあったんだけど、さすがにこれはちょっとキツいかも。





「でも書類、よくすぐに用意出来たね」



なお、保護者は母さんの名前を使ってある。

身内だし、快く引き受けてくれたからまだしゅごキャラの事とかもなんとか。



「問題ありません。こういう事もあろうかと」

「・・・・・・あの、シャーリー。どうしてそんなに嬉しそうにしてるの? というか、何で泣くのかな」

「いえ。このセリフ、言ってみたかったんですー」



そ、そうなんだ。私にはよく分からないよ。



「とにかく準備だけはしてましたし。あと、ティアですね」

「そっちはあんまり心配してないかな。ティアはこういうの得意だと思うから」

「リインさんも大丈夫ですよね」

「うん、リインはいい子だもの。きっと自然に上手くやってくれてる」





リインは初等部の4年生の方に、ヤスフミの妹という形で転入させてる。あ、名前は『蒼凪リイン』になってるんだ。

・・・・・・なんだろう、ちょっとリインに先を越されたみたいで悔しい。実際リインもすごく嬉しそうだったし。

そして中等部の2年の方にはティア。こっちは普通にランスター性になってる。ティアの様子はここからだと見れないけど、問題ないと思う。



ティアは、実年齢に割合近いしね。海外育ちとか言えば、まだごまかしようはあるもの。

・・・・・・あ、ティアは予備戦力というかそんな感じで入ってもらった。一応潜入捜査の研修も兼ねる形で。

なお、ヤスフミがそれなら自分もせめて中等部へと言い出したけど、却下した。



そうなると今度はガーディアンの子達と接触し辛くなるので、我慢してもらった。





「中等部に上がるとガーディアン卒業しちゃうようですし、やっぱり小学生がいいんですよね。
同じ学部で同級生なら、自然と距離も近くなるでしょうし。・・・・・・でもフェイトさん」

「なにかな」

「私がなに言いたいか、分かってますよね?」



・・・・・・うん、分かってるよ。すごく。



「なぎ君へのフォロー、しっかりしないとだめですよ? なぎ君、体型の事言われるのすごく嫌なんですから。
まぁ、私からもやりますけど、それでもフェイトさんがフォローするのが一番でしょうから」

「そう・・・・・・だよね。これ、ある意味女装してって言うよりもずっとひどいもの」










でもどうしようかな。色々考えちゃうよ。うーん、フォローかぁ。偶数日にサービス・・・・・・あぁもう、これはだめ。

その・・・最近私エッチ過ぎるよ。いや、あの・・・・・・ヤスフミとそういう大人なコミュニケーションするのは嫌いじゃないんだけど、でもダメ。

だって、こう・・・・・・身体を使って言う事を聞かせてるみたいだもの。そういうの、ためらうよ。





もっと別なところで日常的に普通に出来るフォロー、なにがあるかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お昼休み、中等部で同級生に質問攻めに遭ってたティアナと何とか合流。二人でお昼にした。





色々不満はあるさ。あぁ、あるさ。でも、我慢しよう。恨み辛みの全部は、今度クロノさんに会った時にぶつけてやる。










「さて、ティアはどうですか?」

「ボチボチって感じです。・・・・・・で、アンタの首尾はどうなのよ」

「例のガーディアンのジョーカーとクイーンと同じクラスになれた。そいで、おかげ様で大人気だよ。
どこから来たのかとか、スポーツとか得意とか、すごい勢いで聞かれまくった」

「リインも同じくです。みんな、興味津々な目をしてました」

「あぁ、やっぱりどこも同じなんですね。私もそんな感じでした」



なお、質問責めなんて受けてたのはティアナだけじゃない。僕とリインもだ。あー、誰か殴りたい。

具体的に言うと今年で25でこんなアイディア出してくれたバカ提督を全力全壊で殴りたい。・・・・・・誤字じゃないよ?



「シャーリーが質問への応対シート作ってくれなかったら、僕はキレて暴れてたさ」

「暴れるんじゃないわよ、このバカっ! そんな真似したら情報収集出来なくなるでしょっ!?」

「・・・・・・分かってる」



ただ、やっぱり色々辛いのよ。うん、色々とね。今なら分かる。

コナン君がどれだけ辛かったか、今なら僕にもしっかりと分かる。確かにこれは辛いし空しい。



「我慢なさい。私だって同じようなもんなんだから」

「同じじゃない。だって、ティアナは中学生じゃないのさ。僕・・・ティアナより年上なのに小学生だよ?
ティアナは小学生になれないかも知れないけど、僕は中学生になれないんだよ?」

「あぁ、そうだったわね。ごめん、確かにアンタの方が辛そうだわ」

「うん、辛い。・・・・・・で、そういうティアナはどうなのよ。ちゃんと中学生やれてる?」



三人で木陰に入って、フェイトがせめてもの応援というかそういうので作ってくれたサンドイッチをほうばる。

僕はハムサンド。ティアナはタマゴサンド。リインはポテトサラダのサンド。



「恭文さん、リインは心配してくれないですか?」

「リインはリアル年齢だから心配してない」

「うぅ、恭文さんがひどいですー。リインへの愛情が著しく欠けているですー。
リインの中の恭文さん分が不足するですー」



いや、なによ。その正体不明な養分は。



「リインは転校初日ですっごいモテモテだったですよっ!?」

「え、マジですかっ!?」

「マジですっ! でもでも、恭文さんの愛ゆえにリインはそれを泣く泣く全て断ったですっ!!
でもでもでもでも、そんな調子だと、リイン浮気しちゃうですー!!」

「気のせいだよ。ほら、僕の中にはリインへの愛情が沢山じゃないのさ」

「嘘です、愛情はともかく、今恭文さんが浮かべている笑顔が嘘です。目が少し死んでるですよ?」





とりあえず食べながらそんな話をしてるけど、気持ち的な要因で美味しさが半減してるのは気のせいじゃない。



モテモテだったリインはともかく、ティアナはなんか苦い顔してる。



なんだろう、なんかリインがいつも通りなのがちょっとムカつくのは。うん、八つ当たりだよね。分かってる。





「で、そこはともかく・・・・・・ティアナはどうだったの?」

「あぁ、良かった。私の事忘れてなかったのね。・・・・・・あのさ、私って仕事ばっかしてたわけじゃない?」

「まぁ、そうだよね。スバルと一緒に災害担当に入って、六課に入って、次はフェイトの執務官補佐やって」

「でさ、同年代の男の子とこう・・・・・・学校みたいな平和な場で学ぶのって、あんま無かったわけよ。
訓練校や魔法学校があったにはあったけど、私今よりも突っ張ってた感じだったし」



あぁ、前に話してたツン全開時期ですか。なるほど、そこが学校生活のコミュ構築に色々支障を出してたと。



「男連中も訓練に必死だったから、そこまでじゃなかった。でさ、今日半日過ごして思った」

「なにを?」

「アイツらウザッ!!」



・・・・・・僕は黙って、コップにお茶を入れてティアナに差し出した。

ティアナはそれを左手で受け取り一口で飲み干す。なお、冷茶です。



「なんで初対面で彼氏居るのかとか好きな子居るのかとか、可愛いねとか綺麗だねとかそんな事言われまくる必要があるのっ!?
おかげでクラスの女子がなんか白い目で私を見るしっ! あぁもう、ムカつくー!!」



コップを僕の方に差し出してきたので、僕はまた受け取って、お茶を入れる。



「男ってさ、どうしてあんなバカなのっ!? 私、アンタ以上のバカは居ないとか思ってたけど」

「ちょっと待てっ! それは一体全体どういう意味っ!?」

「言いたくもなるわよっ! 思春期の男ってアンタ以上にバカだし性質悪いし、なによりエロい視線ぶつけてくるのよっ!?
私がこの数時間の間にドンダケ胸やらお尻やら見られたと思ってんのっ!? あぁもう、気楽にこんな事引き受けるんじゃなかったっ!!」



そしてお茶を入れたコップをティアナに渡す。また一口でお茶を飲み干した。


「まぁ・・・・・・アレだよティアナ、そこは仕方ないんだよ。ティアナが入ったのが中2なクラスだから。
丁度男連中って14でしょ? あれだよ? 14歳の男だよ? 世界で1番頭の悪い生き物じゃないのさ」

「・・・・・・アンタ、凄い事言うわね」

「そりゃそうだよ。僕だってそうだし、作者だってなんか覚えあるらしいもの。
14歳ってのはね、みーんなそういう病気にかかってるの。かかっちゃうものなの」



悲しいかな、14歳って言うのはこう・・・・・・不思議な感じになってしまうものなのよ。



「そういうもんか。なら・・・・・・アンタ、悪いけど今日夜間訓練付き合って。
ちょっと暴れないと気が晴れないわ。そうしないと、あの連中撃ちたくなる」

「ティア、絶対初めて会った時からキャラ変わってるですよね」

「いいよ、僕も同じだから。・・・・・・徹底的に行こうか。
僕もセブンモード使うし、ティアナもセブンガンモード使おうよ」

「えぇ、いいわよ。もう徹底的にやっていくから」



そして、返ってきたコップにお茶を注ぐ。今度は僕が飲む。・・・・・・あぁ、気分が少し晴れた。



「で、アンタはリインさんとこれからどうするつもり?」



それから僕はまたお茶を注いで・・・・・・リインに渡す。

リインはそれを美味しそうに飲んでから、ティアナの言葉に答える。



「普通に小学生しつつ情報収集・・・・・・って、これはダメですね。
しゅごキャラは普通の子には見えないんですから。そうなると」

「ガーディアンと接触するしかないでしょ。もうちょっとしゅごキャラやらたまごの事聞かないと。
向こうにももう僕がこっちに来た情報は広まってるだろうし、ま、何とかやってくよ」

「私は・・・・・・あぁもう、マジでどうしようかな。初手を間違えたから、正直早速情報収集はやばい感じがするのよね。
女子に聞いたら無視されそうだし、男子に聞いたら女子にハブられそうだし。つーか、男連中と絡みたくないし」



うむぅ・・・・・・難しいなぁ。てーかフェイト、ティアナを中等部に入れたのは失敗じゃないよ? ほら、病人の巣窟だし。



「まー、アレだよ。早く帰れるようだったら夕飯の材料買っておいて? 僕とリインはちょっと頑張るから」

「了解。まぁ、気を付けなさいよ? この状況だとアンタやリインさんがこっちのキーマンではあるんだからさ」

「分かってるよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それでねそれでね、リインちゃんがもうクラスで大人気なのっ!!
仕草も外見も喋り方も可愛いから、クラスの男子が全員ファンになっちゃって大変っ!!」

「もう一人の子はややのクラスに来たんだ・・・。というか、あの子の妹だったんだね」

「うん、そうみたい。それで早速何人かアタックしてたんだけど」



・・・・・・早速って。大丈夫なの、下級生?



「リインちゃん・・・・・・『リインには大好きな人・・・・・・というか、将来を共にしていきたい人の元祖ヒロインなのです。
そういうのは相手が誰であろうと一切合財お断りなのです。ごめんなさいです』って一刀両断して、クラスの半数が全滅してた」

「ぜ、全滅って」

「ただ、それがクラスの女子的には好感だったらしくて、1発で仲良くなってたよ?」



・・・・・・相当溜まってたのかな。まぁ、確かにそういうのは女子的にちょっとムカってくるかも。



「あの子は、日奈森さんと藤咲さんのクラス・・・・・・だったよね」

「うん。あたし、すごくびっくりしたよ」



お昼に皆で集まって緊急会議。案件はもちろん、今日転校して来たあの子達の事。

でも・・・・・・なんのために? なんでわざわざこの時期に編入なんか。



「藤咲さん、どう思う?」

「どうして私?」

「君がこの中で一番彼と通じ合ってたからだよ。僕も正直かなり警戒してたのに、君は普通に話せてたもの」



そう言えば・・・・・・なんというか、波長が合う感じで話してたような。



「まぁ、来た理由は簡単だと思うわよ? ・・・・・・しゅごキャラやたまご関連の調査。
ほら、私達があれこれ教えたから、実際どうなのかを確かめに来たんじゃないかしら」



自分も中に入った上で、今よりも深く・・・・・・という事らしい。そのために学校に潜入してきたとか。



「調査って・・・・・・えー! やや達が教えてあげたのに、まだ調査するのっ!? しつこいー!!」

「普通ならそうだけど、彼言ってたじゃない。
嘘の報告書作るにしても、やらなきゃいけない事があるって。多分、それのためよ」

「あー、そういやそうだったな」



同い年なのに警備会社というか、そういうのに入っている子。その上かーなーり強い・・・・・・らしい。

あとは人と違う能力がある。蒼い光を使って光線撃ったり、宝石を刀に変えたり。



「なんつうか嘘っぽいんだけどよ。ただ、しゅごキャラとかよりはまだ真実味があるんだよな」

「それもそうだね。それにこの国って国家資格で忍者とかってあるくらいだし・・・・・・うん、不思議はないんじゃないかな」










そう言えばそうだった。でも、最近だと取ってる人なんてほとんど居ないらしくて、後継者不足が騒がれてるとか。





なんか大変だなぁ。なんにしても、まだまだ謎は多いよね。でも、どうなるんだろ。厄介な事にならなきゃいいんだけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで放課後。早速ガーディアンの溜まり場・・・・・・そういや、ロイヤルガーデンって大層な名前だったね。





とにかく、そこにさっそく乗り込んだ。まぁ、挨拶って大事だから。なお、本日のお茶は日本茶。そしてお菓子は美味しいかりんとうです。










「というわけで、これからよろしくねー」

「よろしくですー」

「うん、よろしくー。・・・・・・ねぇ、アル」

≪だが断る≫

「だからなんでー!?」



とりあえず、また駄々っ子になった子は放置で。



「でも、いきなり転校してくるとは思わなかったよ。これも嘘の報告書作成のために必要なの?」

「うん、そんなとこ。あと・・・・・・たまご関連でトラブルが起きた時、一緒になにか出来たらと思って」

「そうなの?」



Kの言葉に僕とリインは頷く。まぁ、ここには理由がある。



「もうちょっとたまごやしゅごキャラの事、知っておきたいのよ。報告書作るにしても、これが面倒でさぁ」



・・・・・・という事にしておく。実際、報告書を作るのはめんどくさいのが事実だもん。



「向こうに『あそこは特に問題ないから追加調査の必要もないな』って思わせるようなものを作らなきゃいけないから」

「なるほど。そのためにも実際にガーディアンの活動を見て、どういう風にすればそうなるかを考えていこうと」

「クイーン正解。で、悪いんだけど僕とリインもガーディアンの活動手伝ったりしても・・・・・・いいかな?」



その言葉に全員顔を見合わせる。そして・・・・・・ゆっくりとKが口を開いた。



「まぁ、そういう事なら。本当は特別扱いするみたいでやらないようにはしてるんだけど」

≪キング、ガーディアンの存在自体が見ようによっては既に特別扱いじゃないですか。
なんですか、遅刻・早退し放題なのに先生とタメで話せるって≫

「あ、そうだ。僕もそこは聞いたよ? 普通の小学生はそんなのないし。
これが特別扱いじゃなかったらマルクス主義は既に死んでますよ。何を今更」

「そ、そこを言われると弱いなぁ。それじゃあ蒼凪君・・・・・・あ、二人居るんだね」

「あ、唯世さん。リインはリインで大丈夫ですよ?」



リインがにっこり笑顔で言うと、Kもそれに穏やかな笑みで返す。



「なら、蒼凪君とリインさんはそんな感じで。
生徒の皆に何か言われるようだったら・・・・・・そうだな」

「唯世、ガーディアン候補とかでいいんじゃないのか?
ちょうど新年度ももうすぐだし、そう言っとけば大丈夫だろ」

「あ、そうだね。それなら先生も大丈夫かも」

「ならよかった。二人ともありがとね」



うし、交渉成功。これでなんとかなるかな。・・・・・・ん、ガーディアン候補?



「ね、ガーディアン候補ってのが理由として成り立つの?」

「あぁ。新年度になったら俺が初等部を卒業するからな。ガーディアンの席、一つ空くんだよ」

「あー、思い出した。ガーディアンは初等部の生徒会だから、中等部とは別個の扱いなんだっけ」

「そうだな。・・・・・・いや、校舎はこの裏だから、今ひとつ卒業って感じがしないのがアレなんだけどよ」



通う建物でも、同じ敷地内だしなぁ。そりゃ当然か。



「あ、それと」

「なに?」

「あなたのパートナーもなんだけど・・・・・・私の事はなでしこでいいわよ? 私も名前で呼ぶし」

「そうだね、僕も名前でお願いしたいな」

「あ、俺も空海でいいぞ?」



ガーディアンのメンバーの顔を見る。見ると・・・・・・どうやら、みんな同じ感じらしい。



「というか、君ちょっとやや達に他人行儀ー! どうしてそうなっちゃうのかなっ!!
自分の事とか自分の考えてる事、分かんない様に分かんない様にしてるみたいでちょっと嫌だー!!」



・・・・・・うっさいわい。分かんないようにしなきゃいけないでしょ? 主に年齢とかさ。バレたら大問題だって。



≪ややさん、残念ながらこの人の考えてる事が分からないのは『分からないようにしている』からではなく『真面目に理解不能』だからです。
初手を見てもわかるでしょ? いきなり正体不明なものに斬りつけるような事を平気な顔でする人なんで≫

「何気に僕の人格否定するのはやめてもらえませんかねっ!? そしてみんなもそんな目で見るなっ!!
あと、その話はもうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! まじめに反省してるんだからっ!!」



あぁもうっ! なんでここに来ても僕はこの扱いっ!? おかしいでしょうがこれっ!!



≪当然でしょ、あなたヘタレなんですし≫

「ヘタレじゃないわボケっ!!」

「と、とにかく・・・・・・いちおう一時的にでも僕達は仲間にはなるわけだし」



K・・・・・・じゃなかった。唯世が僕とアルトの様子を見て、苦笑気味に間に入る。それで僕達は一旦矛を納める事にした。



「あと、僕は違うけど日奈森さんや藤咲さんはクラスメートだもの。
これから仲良くやっていくためにも、必要だと思うんだ。どうかな?」

「・・・・・・わかった。それならそうする事にする」





なんて言うかさ、嘘ついてる部分も有るから今ひとつ親しげにするのためらわれちゃって。



何より僕、今自分が小学生だって事実を認めたくない部分があるのよ。



下手に親しくなっちゃうと、それを認める感じがして・・・・・・どうも、こうさ。





「ふんっ! 貴様の力など借りなくても、僕達だけで十分だと言うのにっ!!」

「ダメだよキセキ、せっかく好意で言ってくれてるのに」



うーん、唯世のしゅごキャラにはなぜか嫌われてしまったなぁ。全然目を合わせてくれないし。



「・・・・・・恭文さん、もしかしてまた笑顔で殺気ぶつけたですか?」

「そんな事してないって。ただスティンガー使って威嚇射撃しただけで」

「それだけやれば充分じゃないですかっ! 一体なにやってるですかっ!?」



む、リインが不満そうだ。というか、ガーディアンメンバーが全員頷いてきたし。

なので、僕はしっかり反論して真実を伝える事にした。



「えー、だって僕を取っ捕まえて自供させるとか言い出すんだもん。仕方ないでしょ」

「あ、それもそうですね」

「リインちゃん、そこ納得しちゃうのっ!? ややさすがにビックリなんだけどっ!!」



まぁそこは無視しつつ・・・・・・あ、この日本茶美味しいや。このかりんとうもなかなか。



「いや、なんていうか・・・・・・君、もうすっかりなじんでるよね」

「美味しいものの前では誰だって幼児のように順応力が高くなるものなのよ。魔法少女」

「だからっ! あたしは魔法少女じゃないってばっ!!
もう名前知ってるんだから、名前で呼んでくれないかなっ!?」

「だが断る」

「なんでよっ!!」



そんなのは決まっている。もう当然としか言えない理由がある。



「この方が僕が楽しいから」

「楽しむなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! そしてそんな事を言い切らないでよっ!!」

≪あー、すみません。あなたといういいオモチャを見つけて喜んでるだけなんで。
ただ、からかって弄ってギャグ的に蹂躙したいだけなんです。えぇ、全く悪気も悪意もないんですよ≫

「それは悪気も悪意もありまくりだよねっ!? というか、日奈森さんは君のオモチャじゃないからっ!!」



あ、なるほど。つまり・・・・・・そういう事なのか。僕はかりんとうを食べながら納得した。



「この魔法少女をからかって遊ぶのは、ガーディアンみんなの楽しみなんだね。分かります」

「ま、そうとも言えなくないよな」

「あむちゃんをからかうの、面白いものね」

「空海もなでしこも同意しないでよっ! てゆうか君、もしかしなくてもすっごく性格悪いでしょっ!!」



失礼な、僕は性格が悪いんじゃない。全く、最近の子どもは失礼極まりないね。



「僕は性格が悪いんじゃなくて、ただ単にドSで容赦が全く無いだけだ。主人公キャラってみんなこうでしょ」

「同じ事だよっ! あと、そんな主人公キャラなんてごめんだからっ!!
こ、こいつは・・・・・・! なんてトンデモキャラしてんのよっ!!」

「失礼な、僕は世界のスタンダードよ? 世界は僕という存在を基準にしてるの」

「まだ言うかー!!」

「まぁまぁ。あむちゃんも落ち着いて。ほら、かりんとうよ? 今日のは特別美味しいんだから」



なでしこがそう言って息を切らしているジョーカーをなだめる。

で、僕はその様子をお茶を飲みながらのんびり眺める。



「それでそれで唯世さん」

「うん、なにかな」

「リインちょっと思ったですけど、生徒会であるガーディアンって、具体的にはいつも何してるですか?」



そのリインの言葉に唯世はニコリと笑顔で答えながら説明を始めた。

・・・・・・って、なにげに美少年だよね。アレは。



「えっと、日奈森さん以外のメンバー・・・・・・つまり僕達だね。×たまに対する対処以外は、普段は普通に生徒会の仕事をしてるよ。
生徒の皆にアンケートを取って、学校運営の上で出てきた問題を解決したり、運動会みたいなイベントの企画・運営をしたり、花壇の水やりとか掃除とか」

「あ、そこは普通に生徒会なんだね」

「そうだよ。×たま対処はかっこよく言っちゃうと、ガーディアンの裏の顔・・・・・・て感じかな?
普段のやや達は、基本的に地味なの。みんなが言うような派手なキャラじゃないんだ」



なるほどね。噂だけだと凄かったからなぁ。ファンクラブも複数あるって言うし。

でも、僕はちょっと思った。というか、疑問がよぎった。



「え、待って。この魔法少女以外はってどういう事?」

「あー、恭文。そろそろやめとけ。日奈森の奴がにらみ出してるし」

「大丈夫、僕はもっとキツイ視線・・・・・・つーか、殺気をぶつけてくる人を何人も知っているから。
よし、殺気をぶつけて黙らせよう。それで解決だ」

「そう言う問題じゃないだろっ!? しかもお前なんでちょっと楽しそうなんだよっ!!」

「空海、よく分かってるね。そう、人は争いあうだけでは何も解決出来ない。
だからこそ拳と拳とで『お話』する必要があるんだよ」



やっぱ、初手は反省だな。きっとコンフュ状態で僕はあの女の生霊が乗り移っていたんだ。いや、怖い怖い。



「僕のよく知ってる奴は『お話しよう』と言いながら速攻で攻撃行動に出ていたよ」

「いや、なんでいきなりそんな哲学的な話っ!? そして攻撃行動はお話じゃねぇだろっ!!
つーか、お前の周りは基本的にそんな奴ばかりなのかっ!!」

≪残念ながらそんな奴『ばかり』ではありませんがそんな奴は居ます。
私達はコードネーム『魔王』と呼んでいるんですが、まさしく魔王としか言いようのない行動の数々を≫

「マジかよっ!!」

≪マジです≫



そこはともかく僕の疑問ですよ。なぜ日奈森あむは仕事をしていないのかという事ですよ。



「なら・・・・・・もしかして、そういういじめ? うわ、最近の小学生は陰湿だなぁ。僕よりひどいんじゃないの、それ」

「いやいや、いじめじゃないからねっ!?
・・・・・・日奈森さんは×たま関連以外の仕事は免除になってるんだ」



なるほど、つまり僕の目に狂いはなかったんだね。



「やっぱりいじめですか?」

「リインさんもお願いだからそういう事言わないで欲しいなっ!!」

「でも、見ようによってはそうなるのかしら。あむちゃんは仕事をしたがってる。
だけど、私達は意図的にそれをさせないようにして、あむちゃんの心をじわじわと」

「藤咲さんっ!? なんでそこ乗っちゃうのかなっ!!」





なんだろう、やっぱりなでしことはどっか通じ合える感じがしてならない。



ただ・・・・・・なんか妙な違和感というかそういう感じもあるんだよね。うーん、なんでだろ。



とにかく、いじめでもないのに、なぜにこの魔法少女は仕事免除になってるの?





「・・・・・・えっと、日奈森さんがついているジョーカーって役職は一種の緊急処置なんだ」



なんでも本来ガーディアンの席は、空海のJとややのAとなでしこのQ、それに唯世のKの4つだけらしい。

でもキャラ持ちの子と言うのは本当に少なくて、場合によってはその4つだけのガーディアンの席が空く事もあるとか。



「・・・・・・だけど、今年は僕達と日奈森さんの五人になったから」

「だから唯世達は5つ目の席・・・・・・ジョーカーって役職を作った?」

「そうだよ。でも、運営自体は僕達四人だけでも先生方と協力し合ってなんとかなっちゃうんだ。
だから基本的に日奈森さんは自由行動。その分、×たま対処に力を入れてもらっているんだ」



そんな話を聞きながら、とりあえずお茶をすする。・・・・・・あ、ちょっと冷めてるな。

早いうちに飲み干しちゃおうっと。で、思った。つまりジョーカー・・・・・・日奈森あむは。



「魔法少女はガーディアンのニート代表なんだね」

『そうそう』



そして全員が固まった。あれ、どうしたんだろ。



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニートッ!?』

≪JACK POT!!≫



ピンポーンッ!!



「大当たりじゃないからっ! そして正解のBGMを流さないでっ!! あたしだってちゃんと仕事してるよっ!?」

「あぁ、ごめんごめん。さすがにこれは冗談だから」

「全然冗談に聞こえなかったんだけどっ!?」



とにかく、そういう事なら話は決まった。



「よし、決めた。お世話になる以上、多少なりとも僕達も生徒会としての仕事手伝うわ」

「ですね。リインも頑張るです」

≪私は集計など得意ですので、言っていただければいつでも協力しますよ≫



僕達は顔を見合わせて頷いた後で、みんなを見てそう宣言した。その言葉にみんな驚いた顔をする。



「いや、それはありがたいけど・・・・・・いいの?」

「いいの。僕もリインもアルトもニートみたいにはなりたくないし」



そう言って見る。特例だからってあんまり仕事をしていなかったと思われる女の子を。

きっとゆとり教育の弊害がここにあるんだろうなとか、ちょっと思ったりしつつ。



「だからニートじゃないってばっ!! ・・・・・・あぁ、でもよく考えたらそうなのかな。生徒会の仕事は基本ノータッチだったりするし。
お茶会だけ参加してあとはさようならって事も一回や二回じゃ・・・・・・あぁ、あたしはニートなんだ。ニートな魔法少」

「あぁ、あむちーが果てしなく落ち込んでるー!!」

「日奈森さんっ! しっかりしてっ!? あの、そんな事ないからっ! 日奈森さんすごく頑張ってくれてるからっ!!」

「そうだぞっ! それに最初に俺らがそれでオーケーって言ったんだから問題は・・・・・・あぁ、そんな暗い空気を出すなよっ!!」



暗いオーラを背負うジョーカーは放っておいて、僕はお茶をすすって、飲み干す。

あ、なでしこが横から急須でお茶を注いでくれた。



「ありがと」

「いいわよ、別に。でも・・・・・・ずいぶん意地が悪いのね。あむちゃん、落ち込んじゃったわよ?」

「若いうちは落ち込めばいいのよ。そういうのは全部大人になった時に酒の肴になるんだから」



まぁ、銀魂でそんな話があったんだけどさ。・・・・・・そう言えば、銀魂新刊出たっけ。よし、帰りに買いに行ってこようっと。



「あら、ずいぶん知った風に言うのね」

「知ってますよ。・・・・・・ここだけの話、周りの大人連中に酒盛りに付き合わされる事がよーくあってさ。お酒とかって平気なの」

「そうなの。でも、学校の中ではやめてもらうわよ? とりあえずお茶で我慢してください」

「はーい」



なんて話しているとお茶が注ぎ終わったので、僕はありがとうとお礼を言ってからそれをいただく。・・・うん、美味しい。



「・・・・・・あむちゃん、ヘコんでるね。もしかして結構気にしてたのかな」

「かも。というか、あむちゃん自体が弄られてるとこって結構レアかも」

「むむむ、新キャラすごいですぅ」



なんだか周りの信号機トリオが僕を感心しているとも呆れるとも言える表情で僕を見るけど、気にしてはいけない。



「ちょっと待ってっ! 信号機ってなにっ!?」

「なぜにおのれらも人の思考が読めるっ!?」

≪分かりやすいんでしょ≫



・・・・・・そうなの? 僕、ついさっき分かりにくいって言われたのに。どっちなんだろ。



「でもさ、信号機じゃないのさ。まず、赤と」

「ちょっと待ってっ! 私はピンクだからー!!」

「・・・・・・そうなのっ!?」

「そうだよっ! というか、黄色が無いよねっ!? ボクは青だしスゥは緑だしっ!!」



青の子は今ひとつ分かってないらしい。だからハイセンスな僕がしっかり教える事にする。



「あぁ、そこは大丈夫。スゥは綺麗な金髪・・・・・・黄色じゃないのさ。だから問題は無いんだよ」

「大有りだからっ! その適当な美的センスでボク達を表現しないでー!!」

「失礼な。僕はハイセンスってよく言われるのに。ただ、ハイセンス過ぎて誰にも理解されないけど」

「・・・・・・へぇ、キミってセンスあるんだ。ね、でもどうしてそれが理解されないの?」

「うんとね、どういうわけか理解されないの。例えば・・・・・・電王ってあるじゃない?」



僕の友達で、仲間で・・・・・・憧れのヒーロー。うん、今も変わらず大好きなんだ。



「あぁ、あるね。・・・・・・あ、あむちゃんのお母さんと妹がすごく好きでね。
ボク達もこっそり見てたの。というか、お母さんがすごくて。良太郎役の俳優さんの大ファンなの」

「あぁ、佐藤健さんは確かにすごいしね」



かっこいいし、動きの演技もすごいし、普通に僕もファンですよ。ROOKIESの映画見に行ったりしたし。

まぁ某豆芝には負けるけど。ある意味一番のファンになってるし。



「で、僕も好きなんだけど・・・・・・その中でクライマックスフォームって言うのがあって、僕はすごくかっこいいと思うんだ。
けど、なぜか周りの人間は『センス無っ!!』とか『ダサっ!!』とか言いまくるの」

「え?」

「あと、『俺の必殺技』とか『電車斬り』とかもダサいって言われるんだよね。
全く、世の中おかしいよ。すごくかっこいいのに。・・・・・・あ、大事な事だから二回言いました」



僕がそう言うと、なぜかミキは苦い表情をし出した。



「・・・・・・・・・・・・キミ、一回センスって言葉の意味を辞書で引いた方がいいと思うよ? アレはダサいよ。
ボクも見た事はあるけど、アレはダサいよ。・・・・・・あ、ボクも大事な事だから二回言ってみた」

≪「「なんでっ!? 凄くかっこいいのにっ!!」」≫

「三人揃って言い切ったっ! え、もしかしてキミ達本気でアレをかっこいいって思ってるのっ!?」



うーん、おかしいなぁ。時代がまだ僕達について来てないのかな。うーん、謎だ。



「あははは、どうしようかこれ。ねぇ、スゥ。・・・・・・スゥ?」

「はわわ、綺麗な金髪・・・・・・ありがとうですぅ〜」

「スゥ、なんでそんな感激顔してるのっ! え、もしかして言われてからずっと喜んでたっ!? 髪褒められたのそんなに嬉しいのかなっ!!」



僕がにっこり笑うと、スゥも微笑み返してくれた。あぁ・・・・・・なんだろう。

すっごく癒される。なんで僕こんなに気持ちがほわーとしてるんだろ。



「・・・・・・分かった、ここまで言われてなにもしないなんて耐えられないっ!!
あたしも×たまの事だけじゃなくて、生徒会の仕事もっと頑張るっ!!」



僕達がそんな他愛も無い話をしていると、いきなり暗い空気を吹き飛ばしつつそう言い切ったのは魔法少女。



「日奈森さん、いいの?」

「もちろんっ! ふふふ・・・・・・これでもうニートなんて呼ばせないんだからっ!!」



僕をそんな燃えた目で見ながらそんな事言わないで欲しい。まるで僕が悪いみたいじゃないのさ。



「ありがとう。じゃあ、早速だけどこのアンケートに明日までに目を通して、それで意見を聞かせて?」



そう言って、魔法少女の前に置かれたのは大量の書類の束。それを見て、ちょっと引いてる。



「・・・・・・え?」

「日奈森さん、これから一緒にもっともっと頑張ろうね」

「あ、あのえっと・・・・・・はい、頑張ります」



そして、早速その書類に目を通し出す。結構必死に。まぁ、今からやらないとまずいよね。だって、あれ相当量だし。

そして唯世が僕達にも笑いかけた。その瞬間、同じ量の書類が置かれた。だから僕とりインもすぐに目を通し始めた。



「・・・・・・もしかして唯世って、結構容赦ない?」

「あら、あむちゃんをニート呼ばわりしたあなたよりはあると思うわよ?」

「左様ですか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そっか、ガーディアンの子達と仲良くなれたんだね」

「なんとかね。しかし・・・・・・生徒会って大変なんだね」



花壇の花の管理から校内の清掃にあげく学校の制服に関してのアンケート取って、デザイン変更まで手がけるんだから。



「なら、あのすごく重たそうな書類は?」

「制服に関してのアンケートです。でもこれ、後でまた頑張らないと明日までに目を通せないですよ。うぅ、大変ですー」



夕方、家に帰り着いてみんなでご飯。それを食べながらフェイトとシャーリーに様子を報告。



「で、ティアはどう?」

「・・・・・・もう明日から登校拒否していいでしょうか」

「なんでいきなりそんな話にっ!? え、もしかして色々トラブルあったかなっ!!」

「かなり。なんて言うか、私はマジで頭痛いです」



ティアナは情報収集どうこうの前に、クラスでの立ち位置を何とかしないとまずいしね。

周りはエロい中2な方々ばかりだし。でも、なんというか・・・・・・ちかれた。



「ね、ヤスフミ」

「なに?」

「学校、好きになれそう?」



フェイトが心配そうに言ってきた。・・・五目炊き込みご飯をかきこんで、数回租借。

そうしてしっかり味わってから飲み込んで、その言葉に答えた。



「まぁ思ってたよりは悪くないかな。ガーディアンが頑張ってるせいか、学校自体の空気もいい感じだし」

「そっか。よかった」

「心配、かけてた?」

「うん、ちょっと心配だった」



僕、そうとう機嫌悪かったしね。いや、今でもなんだけど。



「あ、それだけじゃないの」

「え?」

「ヤスフミ、学校ずっと通ってないでしょ? だからどうなるかなって、心配だった」



そう言えば・・・・・・そうだな。学校ってつまんないから、ほとんど行ってなかったし。

友達も作りたいとか思わなかった。同年代の子の考える事って、興味なかったから。



「大丈夫だよ、仕事だもの。キチンとやる」

「それだけじゃなくて、友達作ったりもしてみていいんじゃないかな。
少しの間だけでも居るんだから、自分の居場所を作って」

「僕、決定的な嘘ついてるのに?」



僕がそう言うと、フェイトが黙った。そして、表情が申し訳なさそうな顔になる。



「・・・・・・ごめん。私、勝手だった。というか、保護者モードに入ってた」

「いいよ、別に。というか、僕もごめん」

「どうしてヤスフミが謝るの?」



・・・・・・必要だからに、決まってるじゃないのさ。



「心配かけたし、嫌な事も言った。だから謝るの。
まぁ、そういうのは本当の年齢明かしてから考える事にするよ」

「うん、そうだね」



それであそこに居られれば・・・・・・だけどね。



「でも、今ひとつ不明瞭なんですよね」

「ティア、何が?」

「ガーディアンの存在意義ですよ。×たまを放っておくとまずいのは分かりますよ?
でも、その子達がなんで素直にそれに従事してるのかが今ひとつ分からないんです」

≪あぁ、そういう意味ですか≫

「えぇ、そういう意味よ わざわざ本来無いはずの役職を作ったりしてまでだもの」



なるほど。主要目的というか、全員が一つにまとまっている意義というか理由が分からないと。



「なにかあるのかも知れないね。ガーディアンの子達が今みたいに一つにまとまっている要因が。
もちろん根がすごく優しい子達で、×キャラや×たまを見て放っておけないだけかも知れないけど」

「ただ、ガーディアン自体はあの子達が本当に子どもの頃から存在してたようですし」

「シャーリー、そうなの?」

「うん。・・・・・あ、なぎ君達が学校に行ってる間に私とフェイトさんでちょっと調べてたんだけどね。
何回かその四つの役職の子達も代替わりしてるみたいだしね」

「うーん、こう考えると謎が多いですね。ずーっとその頃から×たまや×キャラへの対処だけが目的ですか?
あー、でも生徒会でキャラ持ちの子を対象にしてるなら、慣例的にそうなってもおかしくはないですよね」





まぁ確かになぁ。たまごの存在を知ってたら、大抵は助けたいと思うだろうし。



とりあえず、かぼちゃの煮物をパクリと食べながら考える。



・・・・・・何代も前からか。うーん、聞くべきか聞かざるべきか、色々迷うなぁ。





≪あぁ、それとマスター。気づきました?≫

「うん、気づいた。だって、分かりやすかったもん」

「気づいた? いや、分かりやすかったって・・・・・・なにがよ」

「僕とリイン・・・・・・あと、初等部に居る間はティアナもだね。
ずっと誰かに尾けられてた。というか、見張られてた」



お味噌汁をすすってからそう言うと、全員が驚きの表情を浮かべた。



「尾けられてたって・・・・・・ヤスフミ、どういう事?」

「どういう事もなにも言った通りだよ。学校に居る間・・・・・・つまり、学校の中で誰かに動監視されてた。
それもピッタリとだよ。顔までは確かめられなかったけど、結構ねちっこい感じで」

「ちょっとちょっと、それどういう事よ? つーか、そういう事ならちゃんと教えなさいよ」

「僕も学校出るまではそうだって確証持てなかったんだよ。
転校生だし、ただ目立ってるだけなのかなーって」





ただ・・・・・・そうじゃなかった。学校をリインとティアナと三人で出てからはそういう気配というか、視線みたいな物がピタリと途絶えた。

つまり、学校の中に居る間には確かにそれは存在していたという事になる。

まぁ、実は今でも本当に尾けられていたのかどうかちょっと自信が無かったりする。



やっぱり転校生だから目立ってただけという可能性もあるから。





「でも、なぎ君の言うように本当にそういう事をされてたとして、何の目的で? 私達の事がバレてるとは思えないし」

「ううん、シャーリー。もしかしたらバレてるのかも知れないよ?」

「えぇっ!?」

「ただし、それは私達や局や魔法の事じゃない。・・・・・・ヤスフミとリインがたまごの事を知っている事。
ヤスフミがそれに対処出来るという事。そして、ガーディアンのみんなの裏の顔がだよ」



フェイトが真剣な顔でそう言った。そして、その言葉に全員が納得している。つまり、それ故に・・・・・・という事だね。

いや、もしかしたらガーディアンの皆も以前から監視というか尾けられていて、そこに僕が絡んだから僕も対象に入ったのかも。



「どっちにしても、数日は様子見ないとダメかも。さすがに今日一日だけの事じゃあ、何の判断も出来ないよ。ただ、もしこれが数日続くようなら」

≪ビンゴですね。一応サーチを働かせておきますか?≫

「そうだね、アルトアイゼンお願い。・・・・・・ヤスフミ、リイン、気をつけてね。
もしかしたらここって、私達の想像よりもずっと大きな事が起きてるのかも」

「うん、そうする」










さて、これはどういう事かね。まぁ、いいや。何かやってくるなら・・・・・・叩き潰すだけだ。





ちょうど僕のストレスもクライマックスだしさ。遠慮なくぶっ潰して憂さ晴らししてやる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして数日が経った。季節はもうすぐ3月に突入しようとしている。そして僕もずいぶん学生服に慣れ・・・・・・ないなぁ。

毎朝袖を通す度、授業を受ける度、夜に宿題を片す度、非常に落ち込む。

うぅ、おかげで偶数日にフェイトとコミュニケーションする気も起きなくて、添い寝止まりだし。





というかあの、どうしてもウェイクアップしないの。とにかく僕はまた学生服を身に纏う。

かばんに昨日頭を抱えながら終わらせた宿題を詰め込んで、忘れ物が無いかどうかをチェックする。

それから全員分の朝ごはんを作って食べて・・・・・・飛び出した。





やっぱり学校、嫌いかも。まぁ年齢的な要素もあるから・・・・・・あんま否定的も違うよなぁ。










「あ、ヤスフミ。ちょっと待って」



フェイトに呼び止められ、そのまま手招きされる。フェイト・・・・・・何故だか顔が赤い。僕はそのまま回れ右して、戻る。



「フェイト、どうしたの?」

「あ、うん。あの、一旦ドアの中に入って」

「え?」

「いいから」





僕はとりあえず、言われるままにドアの中に入る。というか、戻る。

すると、フェイトはドアをしっかりと閉じて、鍵までちゃんとかけた上で・・・・・・顔を近づけ、唇を重ねてきた。

時間にしてほんの数秒。そのまま、フェイトはゆっくりと唇を離した。



そしてそのまま僕の顔をまっすぐに見てくれる。





「・・・・・・フェイト?」

「あ、あのね。ヤスフミに負担かけてるし、なにかフォロー出来ないかなとあれこれ考えて」

「・・・・・・フォローのためにキスしたの?」

「違うよっ!! ・・・・・・おはようのキスと、おやすみのキスと、いってらっしゃいのキスと、いってきますのキス。
それにただいまのキスと、おかえりのキス・・・・・・これから、出来るなら毎日してみようかなって」

「いや、だから・・・・・・それだとフォローのために」



フェイトは首を必死に横に振る。どうやら、全く違うらしい。



「あれこれ考えてね、フォローとかそういうのじゃダメだって思ったんだ。今、ヤスフミは小学生をやってるでしょ?
でも変わらずに私の恋人だよって伝えるためにするの。私の気持ち、変わってないって伝えるためにしたいの」



それで少し慌てたというか、焦るように言葉を紡ぐスピードが早くなる。フェイト、かなり必死みたい。



「こう、元気注入というか、コミュニケーションというか・・・・・・とにかく私の気持ち、ヤスフミに伝えたいの。
ほんのちょっとのふれあいかも知れないけど、それでも伝えていきたいの」



フェイトはそうしなたら、不安げな表情を浮かべながら僕を見ている。



「あの・・・・・・私、本当にダメだね。もっともっと気持ちを伝える事くらいしか思いつかないの。
言葉じゃ上手く言えなくて、物じゃそれでやらせてるような感じに思えちゃって・・・・・・それで」

「ね、フェイト」

「なに・・・・・・かな」

「僕からも、キス・・・・・・していい? いってきますのキス」





フェイトはびっくりしたような顔をしてから、嬉しそうに頷いててくれた。

そのまま目を閉じたので、僕はフェイトの肩に手を添えて、少しだけ背伸びをする。

それからフェイトの唇に、自分の唇をそっと重ねた。



さっきと同じくらいの時間のキス。伝わる柔らかくて暖かい感触に、頭の芯がぼーっとなる。



それから名残惜しいけど唇を離して・・・・・・瞳を開けて、見つめ合う。



「出来るなら、毎日・・・・・・しようね。それで、制服着ててもその間は僕はいつも通りの僕だから」

「・・・・・・うん」

「あと・・・・・・あの、ですね、その・・・・・・今日、コミュニケーションしてもいい?」

「え? ・・・・・・あ、もしかして」

「うん。なんか・・・・・・元気になったみたい」



二人で顔を見合わせて真っ赤になる。だけど、胸の中のドキドキがなんだか嬉しくて・・・・・・ちょびっと恥ずかしくて。



「それじゃあ今日の夜だね。あの、その時になって無理っぽい感じだったら、私は大丈夫だから。気にしたりしないでね」

「うん。というかね、フェイト・・・・・・ありがと。すごく嬉しい。変な意味じゃなくて、元気いっぱい出てきた」

「ううん。あのね、そう言ってもらえて、私もなんだか嬉しいよ」



そのまま僕はドアを開く。ちょっと名残惜しいけど・・・・・・僕は手を振る。

表情は多分・・・・・・制服姿で居るようになって一番自然に出せた笑顔。



「行ってきます、フェイト」

「うん、行ってらっしゃい。ヤスフミ」










そのまま学校に向かって駆け出した。さっきまでフェイトと触れ合っていた自分の唇を右の指の先でなぞる。





感触と温もり・・・・・・まだ残ってる。なんだろ、さっきまでの憂鬱な気持ちが吹き飛んだ。





なんだか、頑張れそうな気がする。ううん、頑張ろうっと。フェイトから元気・・・・・・いっぱい貰ったんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして放課後。今日も今日とて一日が終わった。でもあんまりのんきに小学生をエンジョイする感じでもなくなってきた。

その原因は例の視線だよ。普通にそっちも継続中なのが、余計に嫌な予感を感じさせる。

そんな中僕と魔法少女は、なでしこから空海が所属するサッカー部がチーム内の練習試合をするから見に行こうと誘われた。





それで学校のグラウンドに来た。なんでも明日別の学校と練習試合が有って、そのスタメン選抜も兼ねているのだとか。





で、視線の事とは関係なく・・・・・・トラブルが起きた。というか、アレ・・・・・・なんて小林サッカー?










「キャラチェンジってやつをすると、ああいう事も出来るんだね」

「うん。ランは運動とかそういうのが得意なんだ」



そう言ったのは魔法少女のしゅごキャラのミキ。僕と同じ方向をただ真っ直ぐに見ている。



「というか、あむちゃんがそういうの出来るようになりたいと思った気持ちから生まれたしゅごキャラだから」

「なるほど、そのランの力を借りるとあぁなれるってわけだね。・・・・・・で、ミキ。アレ誰が止めるの?」

「・・・・・・さぁ」

「試合終了のホイッスルが鳴れば、大丈夫だと思いますよぉ」





僕が隣でぷかぷか浮かんでいるミキとスゥにそんな話をしているのには理由がある。

あの魔法少女、ランにキャラチェンジ・・・・・・しゅごキャラの力を借りた状態になって、サッカーの試合に乱入しやがった。

なお、自分からではない。試合を見てヒートアップしたランに半ば強制的に身体を乗っ取られて突入した。



いや、こちらに飛んできたボールを手でパスじゃなくてマジで蹴り返そうとしたあの魔法少女が悪いのは否めないけどさ。

そして、現在目の前で小林サッカーばりのスーパープレイの数々が繰り広げられている。

ボールが魔法少女にシュートされると、漫画のようにくの字に折れ曲がった状態でゴールへと向かう。



それをキーパーがキャッチしようとすると、煙が上がり炎の幻覚まで見える。





「・・・・・・ん? それじゃあミキやスゥは?」

「ボクは絵を上手くなりたいとか、センスがよくなりたいって思った気持ちから」

「スゥはあむちゃんのお菓子作りや料理・・・・・・そういう家事が得意になりたいと思った気持ちから生まれたんですぅ」

「なるほどね。あ、スゥってお菓子作りとか好きなんだ」

「はい♪」



あぁ、なんか可愛いなぁ。なーんでこんなに癒されるんだろー。



「僕も好きなんだよ。というか、料理とか得意なの」

「そうなんですかぁ」

「うん。友達の親御さんがやってる喫茶店のお手伝いをずっとしててね。その関係で色々教えてもらったんだ」



あははは、まさか『学校に行かないならここで社会勉強しなさい』って言われた9年後にコレとは。

こんな事になるとは思わなかったよ。人生って何が起こるかわからないなぁ。



「なら、今度一緒にお菓子作りしましょう。あ、スゥはこのままでもお菓子作れるから、大丈夫ですよ」

「・・・・・・だから、なんで考えてる事が分かるの?」

「分かりますよぉ? ・・・・・・恭文さんは、優しい人ですからぁ」



・・・・・・優しい人、ねぇ。そんな事ないと思うんだけど。



「そんな事ないよ? 僕は暴力的だし」

「あれはキセキさんが悪いからいいんですよぉ? というかその力で良い事してるんですよねぇ。例えば、悪い人達を止めたり」

「それは良い事じゃないよ。・・・・・・戦って、相手を傷つけて、踏みつけてるだけ。
うん、それだけだから。相手が悪党だろうが、そこだけは絶対変わらない」

「・・・・・・やっぱり、優しいんですねぇ」



今ひとつ会話になってないけど、この子にとってはそういうものらしい。

だってこっちが反論する気を無くなるような笑顔でそう言ってくるんだもの。



「まぁ、そこはともかく・・・・・・一緒にお菓子作るのはいいよ?
僕が教わった特製シュークリームをご馳走してあげようじゃないのさ」

「ありがとうですぅー」





で、そんな話をしている間にもそれに相手チーム側の空海がぶつかって、もう凄い事になる。

ボールを奪い合い、コートの中心周辺で激しい攻防を繰り広げている。それを見て思う。

小林サッカーとの比較動画作ったら、全く差異が無いんじゃなかろうかと。・・・・・・あ、魔法少女が同じチームの子にボール渡した。



なお、渡したのは普通に体操着の子。部のキャプテンである空海やレギュラーの子は、その上から青い袖なしの薄手の上着をつけている。





「あぁ・・・・・・すごいっ! さすがは各小学校のサッカー部を一人で潰した日奈森さんっ!!
うぅ、僕は感動だぁっ! 日奈森さーん、ファイトォォォォォォォォォォォッ!!」



・・・・・・なんだろ、あのメガネの子。デカイ旗持って応援し始めたし。



「・・・・・・というか、そんな真似してたんかい。どんだけパワフルなのさ」

「あぁ、違うわよ。あれはあむちゃんの外キャラから生まれた、根も葉もない噂だから」

「外キャラ?」

「あむちゃん、ガーディアンに入る前はクール&スパイシーって呼ばれるくらいにツーンとした女の子だったの。
そうよ。でも、本当のあむちゃんはあなたの見ての通り。笑ったり怒ったり、納得出来ない時は真剣な顔をしてそれに反論したり」



あ、なんか分かったかも。外キャラ・・・・・・つまり、外見の自分って事か。

で、あの子の場合それがそのクール&スパイシーと。



「クールでもスパイシーない、どこにでも居る普通の女の子だったの。
でもそんなキャラや噂が一人歩きしていて、本当の自分を出せなかったのよ」



まさかそんな感じだったとは、当然だけど知らなかった。

てゆうか、僕はアレがクール&スパイシーとはどうしても思えないんだけど。



「・・・・・・もしかして、ランやミキやスゥがあの子のところに生まれたのって」

「正解。自分の守護霊に祈ったんですって。外キャラが一人歩きしている自分を変えたい、変わりたいって。
ただ、普通はそれで3個もたまごが生まれたりはしないんだけどね。あの子がジョーカーなのは、そこが理由なの」

「なるほど。普通はありえない事が起きた子だから、ジョーカー・・・・・・切り札と」

「そういう事よ」



そしてその子は渡ったボールをそのまま保持しつつ・・・・・・シュート。だけど、キーパーにはじかれた。

ボールは空中高く飛び上がる。それを空海とR魔法少女が飛んで追いかける。



「それで、あなたはいつまでここに居るつもり? あ、別に不満とかじゃなくて、予定はどんな感じなのかなと」





なでしこが試合を見つつそう聞いて来た。そしてその間にも試合は白熱している。



R魔法少女が空海のジャンプに競り勝って・・・・・・え、そのまま空中で回転した。



そこから・・・・・・オーバーヘッドキックっ!? つーか、制服姿でスカート履いてるのにアレはないでしょっ!!





「うーん、結構長くなるかも」



そんな動揺はおくびにも出さずに、僕はなでしこの言葉に答える事にした。



「そうなの?」

「そうなの。・・・・・・どうやら、不穏な動きがあるらしいし」

「不穏?」



僕の言葉に、なでしこが表情を変える。・・・・・・まぁ、必要な事だし話はしておくか。



「転校してから僕とリイン・・・・・・あと、中等部にティアナ・ランスターってツンデレが居るんだけど」

「・・・・・・恭文君、女の子を指していきなりツンデレ呼ばわりってどうなのかしら」

「いやいや、あれは王道だよ? 希少価値でステータスなんだから。
本人は徹底的に否定してるけど、あれはガチだね。ガチツンデレだね」





でも、ツインテールやめたのは惜しいなぁ。ストレートロングも悪くはないけどさ。



やっぱりツンデレと言えばツインテールだし・・・・・・あれ? なぜか殺気がするなぁ。



おかしい、ティアナはシャーリーとリインと一緒にデバイスの整備のために本局に行ってるはずなのに。





「とにかく、そのツンデレの子は中等部の2年に居るわね。
こっちでも一応チェックは・・・・・・もしかして、その子もあなたの関係者?」

「うん、協力者その3って感じかな」

「という事は、1と2が居るの?」



僕はその言葉に頷く。まぁ、突然言うよりはいいでしょ。



「個人的に付き合いのある人達でね、ちょっと手伝ってもらってるんだ。また機会があったら紹介する」



そしてその人達・・・・・・フェイト達にも『秘密は守る』と約束してる事だけは念押しした。うん、大事だからね。



「それで、ここでいきなりそんな話をし出した原因はなに?」



試合は話してる間に更に進行。R魔法少女の放ったオーバーヘッドキックにより、ボールがゴールへ向かう。それをキーパーが両手でキャッチ。



「転校してからずっと、僕達誰かに見張られてる」

「見張られてるって・・・・・・どういう事?」

「分かんない」



その状態は変わらなかった。学校の中に居る間、誰かの視線というか気配を感じる。やっぱりねちっこい感じのするの。



「こういう言い方はしたくないけど・・・・・・あなたのお仕事関係という可能性は?
もしくは転校生だから目立ってしまって、そのせいとか」

「うん、僕も最初はそれを考えた。迷惑かけないつもりが、迷惑かけちゃったかなーってさ。でも、多分違う。
まず前者は無いのよ。それだったら学校の外で気配がするはずだもの。でも、その気配は学校の外では消える」



普通に学校の中でケンカ吹っかけてくるわけでもなく、ただ見張ってるだけなのよ? これはないって。



「その気配を感じるのは、今のところ学校に居る間だけ。そして外に出た途端にその気配が少なくなるの。
あと後者も多分無いね。感じる視線はそういうのとは違う。もっと陰湿で、こちらをあざけるような感じなんだ」

「・・・・・・そう。でも、確かにそれは妙ね。状況的にどっちもありえないわ。
仮に私だとしたら、学校の中でずっと見張ろうとは思わないわよ。それもわざわざ侵入して」

「でしょ? そこで・・・・・・後者はまぁ、何か出てきたら対処すればいいだけだから置いておく。
もしどちらでもないとした場合何が考えられるか。見張られつつ考えて、一つ仮説を立てた」



・・・・・・キーパーによってボールはキャッチされた。だけどそのまま激しく縦方向に回転をしている。



「見張っているのはあなた関係ではなく私達関係。もっと言うと、たまご関係。
もしかしたら私達も気づいていなかっただけで、あなたと同じように見張られている可能性がある」

「そうだよ。そこに最近僕が飛び込んだから、マークされている。
ね、なでしこ。こういう言い方は失礼だけど、たまご関係でそういう事されるような覚え・・・・・・無い?」

「・・・・・・一応、無くはないわ。でも、ごめんなさい。それは私の口からは話せないの」



そしてそのままボールはキーパーの手から離れて、ゴールへと突き刺さるように入った。



「なにか事情込み?」

「色々とね。やっぱり、私達はまだあなたを完全に信用し切れていない部分があるから」

「分かった。なら無理には聞かない」

「いいの?」



その瞬間試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。勝利は魔法少女が参加したチーム。

あのオーバーヘッドキックが決定打となった。



「いいよ、僕だってなでしこ達に全部の札は晒してないもの。
嘘ついてるって言われたら、その通りだって言うしかない部分もある」

「それで『教えろ』は、フェアじゃないという事かしら」

「そうだね。ま、敵だったら遠慮なくやらせてもらうけど」

「あら、また過激ね」

「当然でしょ。あいにく、僕はそんなに優しくないんだ。場合によっては、そうする」



言いながら不敵に笑いつつ、なでしこの顔を見る。そして・・・・・・二人同時に吹き出して笑う。



「あなた、そんなシリアスな顔は似合わなくてよ? いつもの調子の方が素敵に見えるわ」

「そう? 僕、結構シリアスなハードボイルドキャラなんだけどなぁ。うーん、なんでだろ。・・・・・・なでしこ」

「えぇ、辺里君達には伝えておくわ。いちおう気をつけるように・・・・・・という感じでいいかしら」

「その辺りの判断は任せる。自分達の札の内容を考えて、それに見合う感じですればいいと思うから」



なでしこがいつもの優しげな表情は変えずに僕の言葉に頷いてくれる。



「あと、あそこで息切らしながらうれしそうにしてる魔法少女には」

「まだ言わない方がいいわね。あむちゃん、多分挙動不審になっちゃうだろうから。もう分かりやすいくらいに」

「やっぱりそう思う?」

「かなりね」

「・・・・・・なら、僕がそれとなく付いておくよ」



あの子がジョーカーだって言うなら、ちょっと危ないかも知れないし。

もしマジでガーディアン狙いなら、そいつだって当然注目してるハズ。



「そうしてくれるとありがたいわ。・・・・・・というより、ありがと」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕と隣に居る魔法少女は今日は早めのお帰り。特にガーディアンのお仕事も無いので、試合が終わってからすぐに帰路についている。





でも・・・・・・さ、なんつうかアレだよね。もうすぐ夕方だし。なんだかんだで結構遅く残ってたんだなぁ。










「あー、でも楽しかったー! スポーツってあんま興味なかったんだけど、あれはあれでいいもんだよねー!!」

「あぁ、それは分かる。見ててすっごい楽しそうだったもの」

「えへへ・・・・・・まぁね。あ、そう言えば・・・えっと、恭文はさ」

「いきなり呼び捨てかい」



まぁいいけど。僕だって基本人は呼び捨てだし。もち、親しい人に限り。



「いつまで経ってもあたしの名前を呼ばないから、まずあたしから名前で呼ぶ事にしたの。で、等価交換ね」

「分かったよ、魔法少女」

「そうそう・・・・・・って、だからその呼び方はやめてよっ!!」



膨れた顔で怒り出す彼女を見て、なぜだろうと疑問が胸をよぎる。うーん、なんでだろう。



「この間試しに電話で『魔法少女』って呼んであげたら泣くほどに喜んでた輩が居たんだけど」

「え、マジ? その人何者よ」

「うーん、コードネーム『魔王』って言うの。で、僕は普段からそういう風に呼んでるんだけど」

「呼ぶんじゃないわよっ! てゆうか、それ普通にいじめよねっ!?」

「失礼な。本当に魔王にならないように、僕が普段から『そう言う行動を取ると魔王になるよ』って教えてあげてるだけだって」



胸を張ってそう言うと、何故かため息を吐かれた。・・・・・・失礼な。



「とにかく、恭文はスポーツってなにかしてないの?」

「うーん、スポーツというか、実戦剣術に格闘術をかなり。いや、必要に迫られてなんだけどさ」

「剣術・・・・・・あ、だからあの子も刀になるんだ」

「そうだよ。まぁ、武器ってだけじゃなくて、僕にとっては大事なパートナーでもあるけど」

「ふーん。でも、ちょっと意外」



・・・・・・なにがよ。てゆうか、僕にそんなに興味あるんかい。



「恭文って、警備組織というかそういうのでお仕事してるんでしょ? 普通、銃とか使うのかなって思ってたんだけど。
ほら、例えば今どきの刑事ドラマとかではそうだし」

「使う人は使うよ? ただ、僕の場合は刀やそれを扱う術が銃の代わりなの。
なにより僕、特殊能力持ちだしね。こっちの方がやりやすい」

「なるほどね、よく分かんないけど、そういうものなんだ。ね、実戦剣術ってなにやるの?」



やっぱこの子、興味あるのかな。結構深いとこ聞いてくるし。



「簡単に言えば、戦う相手を叩き潰すための技を鍛える・・・・・・かな。
剣道みたいに競技でルールがあるわけじゃないから、結構危ない訓練する事もある」

「例えば?」

「うーん、僕がやったのだと・・・銃器類を持った相手を殲滅とかかな。
夜中に武装一式持った上で街に繰り出して、暗闇の中で武装を使ってやり合うとか」

「それ、マジで危ないじゃんっ! え、実戦剣術ってそんな事しないとだめなのっ!?」



まぁ、僕の場合は周りでそういう事してる人が沢山居たからなぁ。そういうのが大きいのかも。



「まぁ、僕は戦う事以外は基本的にさっぱりだしね。運も悪くて妙な状況に放り込まれる事も多いから。
初めて会った時みたいな事も結構・・・・・・あれ、もしかして学習してないのかな」

「いや、そこで考え込まないでよ。結構困る。
・・・・・・でも、恭文の親ってなにしてるの? 子どもがそんな危ない事して」

「もう居ない」



つい、言葉を潰すくらいの勢いで言ってしまった。

その行動に内心頭を抱えつつ・・・・・・僕は話を続ける事にした。もう、なんにしても止められないし。



「だから、大丈夫なの。あと、僕の保護責任者やその家族も納得してくれてるし」





なお、比喩じゃない。本当に居なくなった。去年の11月かな。僕の実の親が二人とも事故で亡くなった。

それも全く別々の所で同時に。まぁ、全く気にしてないからお墓参り・・・・・・いや、お墓も無いらしい。

あの人達の互いの気になる相手やら、その親戚やらが残った遺産を搾り取るだけ搾り取ったらしい。



まぁ別にいいけど。僕は僕で楽しくやってるし。あの人達の顔どころか一緒に居た時の事、なーんにも思い出せないし。





「・・・・・・ごめん」

「ん?」

「あの、本当にごめん。あたし、ほんとに知らなくて・・・・・・あぁ、だめだ。
こんなの言い訳にならないよね。あの、マジでごめん」



僕はため息を一つ吐いて・・・・・・頭を下げてそう言ってきた女の子の頭に手をやる。

それでくしゃくしゃと軽めに撫でる。



「え、あの・・・・・・ちょっとっ!?」

「気にしてないから謝らないでよ。というか、僕は実の親とは仲悪かったから、問題ない」

「そうなの?」

「そうなの、だから何にも問題ない」

「・・・・・・それって、悲しくないかな」



手が止まる。そして、目の前の女の子が顔を上げる。すると・・・・・・悲しそうな顔をしていた。



「奇麗事かも知れないけど、それって・・・・・・悲しいよ。だって、血の繋がった家族なのに。
なにかあたしになんて全然分からない事情があるかも知れないけど、それでも」



それでも・・・・・・この子は、僕の目を本当に真っ直ぐに見る。



「そんな風にしか言えないなんて、きっとすごく悲しい事だよ」

「・・・・・・そうだね、きっと悲しい事だ」



僕は手を離し、また歩き出す。後ろからとたとたと足音がする。



「あの、ごめん。あたし、また偉そうな事言った」

「いいよ。・・・・・・あむの言う事、間違ってはないもの」





フェイトにも、言われた事があるっけ。一番最初の時にさ。

そんな風にしか言えないなんて、悲しい事だって。本当に・・・・・・泣きそうな顔で。

あの時はなんであんな顔してたか分からなかったんだよね。



でも、今なら分かる。きっと自分の事と重ねてたんだ。



ようやく静かな眠りについたあの人との事と、きっと重ねてたんだ。





「悪いのは・・・・・・僕だもの。あむ、僕の方こそごめん。妙な話しちゃってさ。もう大丈夫だから」

「あの、そんな事・・・・・・え?」



なぜか後ろの女の子が驚いた声を出した。



「どうしたの?」

「だ、だって今、あむって・・・・・・それも二回も」

「なに、魔法少女の方がよかった?」

「それは嫌だって言ってるよねっ!? ・・・・・・全く、仕方ないなぁ。
日奈森さんがよかったけど、そう呼びたいみたいだし、呼ばせてあげるよ」

「・・・・・・ありがと」



そのまま僕は振り返らずに歩を進める。少しだけ・・・・・・本当に少しだけ、心が軽い。



「お墓・・・・・・作ってあげようかな」

「え?」

「いやさ、実の親二人揃って、お墓が無いんだよ。どうしようかなとかちょっと考えてたんだ。
でも小さくてもお墓作って、供養くらいは・・・・・・してあげようかな」

「・・・・・・そうだね、そうしなよ。もしかしたら、それで仲直り・・・・・・出来るかも知れないじゃん」



死者と仲直りか。ぞっとしないなぁ。実際、そんなに好きでもないんだけど。



「・・・・・・あれ? それなら・・・・・・リインちゃんも?」

「あぁ、リインと僕って兄妹じゃないの。苗字が同じなのは、そういう風に情報操作したから」

「はぁっ!?」

「あの子、僕の友達の家の末っ子でね。ちょっと事情込みで、今はリインも承知した上で僕が預かってるんだ。
・・・・・・あ、これ内緒だよ? 学校とかにバレると色々うるさいから」

「あ、うん。分かった」



うーん、らしくないなぁ。でも・・・・・・必要なのかな、やっぱり。仮にも親なわけだしさ。



「ね」

「なに?」

「夕焼け・・・・・・綺麗だね」



あむの言葉に、僕は夕日の方を向く。・・・・・・ほんとだ、すごく綺麗。

ここは川原沿いだから、余計に綺麗に見える。



「そうだねー。・・・・・・うし、今日の夕飯はカレーにしよう」

「いや、なんでいきなりそんな話?」

「夕日の赤を見ていたら、なんか連想しちゃったの」



夕日の赤、カレーの色とはちょっと違うけど、それでも暖色系繋がりで連想した。



「それで大きめで柔らかいお肉がゴロゴロ。
お野菜もホクホクのゴロゴロな昔懐かしのお母さんのカレーだよ」

「あ、そのカレーいいなぁ。というか、なんか話を聞いてたらお腹が」

「食いしん坊」

「なっ! 失礼な事言うなー!!」










そんな話を二人でしながら、夕焼けに染まりつつある川原の土手の上を歩く。





・・・・・・帰ったら、フェイトと話さないとダメかな。その、この件で心配・・・・・・かけてるし。




















(第3話へ続く)






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あきゅろす。
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