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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース06 『ギンガ・ナカジマとの場合 その6』



・・・そうして、コンサートの後片付けとかが全部終わって・・・なんとかスクールに戻った。





なお、マリエルさんも今日はここに泊まる事になった。まぁ、勝利の余韻に浸らせてくれるという話らしい。





で、この後の予定はと言うと・・・僕は海鳴に行く。そこでリインと合流。・・・そう、クリスマスはもう目の前。僕とリインは会わなきゃいけない人が居る。





色々、話しちゃおうかな。そうすれば、少しは色々吹っ切れるかも知れないし。





で、少しだけ自室で元の服に着替えてから、ボーっとしてた。










≪・・・マスター≫

「うん?」

≪あなた・・・前にギンガさんに言われましたよね。『同じ手で、私は守られたの』・・・と≫





あの時か。・・・うん、言われた。僕の手は確かに奪ったのかも知れない。それは忘れちゃいけないのかも知れない。でも・・・それだけじゃないって。

あの時、嬉しかったな。だから、数日経ったけど今でも克明に思い出せるもの。



あの時のギンガさんの顔。言葉の優しさ。それに・・・握ってくれた手の暖かさ。

右手を見る。・・・また、踏みつけ、壊した手を。でも、なんだろう・・・今までとは少し違う。重いし、キツいのもやっぱ変わらないし、これを忘れてどうこうなんて絶対嫌だけど・・・それで諦めるのも、やっぱり嫌だ。

変わって・・・来てるのかな、色々と。





≪で、ハッキリ言いますけど、あなた、それがキッカケでギンガさんに惹かれてるでしょ?≫





ベッドから転がり落ちる。それはもう思いっきり。



い、いきなりなに言い出すんだよこの馬鹿っ! 惹かれてるって・・・そんなわけないでしょうがっ!! 僕にはちゃんとフェイトが





≪なら、どうして家族でいいと思うようになってるんですか≫

「え?」

≪アナタ、今まではあんなに嫌がってたフェイトさんとの家族関係を受け入れ始めてるでしょ?≫





・・・・・・見抜かれてた?





≪当然です。どれだけアナタのパートナーやってると思ってるんですか≫

「・・・そうだね、24時間ほぼずっと一緒だしね」

≪そういうことです。で、どうなんですか?≫



多分、惹かれてる。アルトに言われて・・・あぁもう、思いっきり認識しちゃったじゃないのさ。

無意識にだけど、気づかないように気づかないようにってしてたのに・・・。だから、フェイトよりもギンガさんの事考えるようになって、それでさっきだって・・・アレですよ。



≪マスター≫

「なに?」

≪まぁ、フェイトさんに別に相手が出来たらまた揉めるんでしょうけど・・・惹かれてる相手が変わったって、きっとそれは罪じゃありませんよ≫



そういう、ものなのかな。でも、やっぱり不安だよ。フェイト、アレだよ? ワーキング・ホリック・レディですよ? あのままもしかしたら結婚とか恋愛とかしないのかも知れないのよ?

もしかしたら、昔の事や生まれの事でそう思うのかなって・・・ちょっと考えてさ。



≪なら、家族として力になればいいでしょ。そんな理由で追いかけても、フェイトさんに失礼ですよ。・・・最悪アナタが第二夫人とかで嫁にもらったっていいんですから≫

「まぁ、確かに・・・いやいやっ! あの、第二夫人って、それ違くないっ!?」

≪とにかく、アナタがギンガさんに惹かれてるのは事実ですよ。いつものアナタなら、とっくにギンガさん振り切ってますし。ここに一緒に行くのだって、話すかどうかも危うかったですよ。
一緒に旅行なんてしたら、フェイトさんに誤解されるのは明白だと言うのに≫





ま、まぁ・・・それはなぁ。だって、フェイトがこの事を知った時、妙に微笑ましい顔しててムカついたし。うん、デコピンしてやったからいいんだけど。



やっぱり・・・あれ・・・なのかな。どうしてか、あの言葉がずっと胸に響いて、それで・・・。





≪だから・・・知っていくところから始めてもいいんじゃないですか?≫

「え?」

≪今まで以上にギンガさんの事を知っていって、その上でまた考えればいいでしょ。このままギンガさんがいいか、それとも・・・やっぱりフェイトさんか。フェイトさんへの気持ちだって、完全に消えたわけじゃないんでしょうし≫



ギンガさんを・・・知っていって・・・か。

でも・・・あぁもう、やめだやめっ! こんな事考えてもどうにもならないよっ!!



「・・・アルト」

≪はい?≫

「みんなには、まだ内緒だからね?」



その、やっぱり色々と自分でも戸惑ってるし、こんがらがってるし。でも・・・ギンガさんが気になってるのはやっぱり事実で・・・。

もちろん、フェイトが嫌いになったとかじゃない。それは本当に本当。なので、ここは僕よりお姉さんな相棒の助言に従うことにした。だって・・・一人でこのままかかえててもロクな事にならなそうだし。



≪分かってますよ。黙っておきます。ただ・・・≫

「ただ?」

≪フェイトさんのことは、もし問題になるようであれば解決していきましょう。例え家族としての好きになっても、あなたにとってはやっぱり特別でしょうから≫



うん、大好きで、特別で・・・大事だよ。もしそうなっても、やっぱり初恋の人で、いっぱい喧嘩して・・・そうして繋がった相手なのは変わらなくて。



≪まぁ、私も力を貸します。だから・・・自分の気持ちに嘘をつかないでください≫

「ここでフェイトだけ見るのは・・・嘘になるかな」

≪なると思います≫



・・・言い切りますか。僕、結構戸惑ってるのに。こんなに思ってた気持ち・・・弱かったのかなって。



≪弱くはありませんよ。ただ・・・きっとあの時、それ以上の何かがギンガさんから伝わった。だから、気になってる。それだけの話だと思いますよ?≫

「そう・・・なのかな」

≪そうですよ。だから、もう一度言いますね。・・・今、ギンガさんを気にしている自分の気持ちに、蓋をしないでください。そんなの、あなたらしくありませんよ。
常に欲望に忠実なお子ちゃまなのが蒼凪恭文という主人公と認識されない男のいいところでしょうし≫

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、ちょっと長めに話をしようかっ!? 主に後半についてっ! 主人公として認識されてないってどういうことだよっ!!」









いや、色々とそんな感じしてるけどっ! でもでも・・・あぁ、ムカつくーーーーーーーーー!!




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース06 『ギンガ・ナカジマとの場合 その6』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・で、そこそこ怪我したけどなんとか超えたってわけか』

「・・・うん」



戻って来てから・・・父さんに生存報告。場所は自室。父さんの視線が心なしか痛い。

それはそうか。だって・・・頬とかにガーゼ貼ったりしてるんだから。



『ま、よかったじゃねぇか。とりあえずこれで押し倒しても死亡フラグにはならねぇしな』

「・・・また通信切るよ?」

『冗談だ、頼むからそんな怖い顔するなよ』



そう言って笑うのはやめて欲しい。なんというか、本当に反省してるのかどうか非常に怪しい。

・・・これで、終わったんだよね。コンサートは無事に済んで、それで・・・ようやく帰れる。あ、なぎ君はこのまま日本に向かって会わなきゃいけない人が居るって言ってたけど。



『なぁ、ギンガ』

「なに?」

『・・・俺の前では、遠慮するな』



それは、先ほどまでとは違う意味合いの言葉。何かを見抜いて、その上で・・・言葉をかけてくれてる。



『お前、なに押さえ込んでやがる。・・・なにかは知らねぇが、ここで全部吐き出しちまえ』



さっきとは違う、優しく、厳しさも秘めた言葉。それが、私の胸を貫く。そして、あふれ出す。抑えていた物が、ゆっくりと。



「・・・私ね」

『あぁ』

「なぎ君に・・・忘れろって言ったことがあるんだ。人を、殺した事」



覚えてても、いいことが無いと思った。なぎ君、そのために止まれなくて、局や私達のこと、信じてくれないって思ってた。



「だから、全部忘れて、下ろして欲しい。そうしよう、それが一番いい方法だからって、そう言ったの。それで、これからは局やみんなと一緒に重いもの背負っていこうって言ったの。
でもね、今日・・・分かった。それがどれだけなぎ君を苦しめていたか。私、魔法も無しで今日、人を傷つけたの」



自分の両手を見る。反射的にとは言え・・・人の手首を握りつぶした左手を。そして、今度は右手。こっちは、下手をすれば死なせるかも知れないような突きを打ち込んだ。また、左手を見る。同じように打ち込んだ拳を。

あの人、肋骨が折れて、折れた肋骨が肺に刺さって・・・一命は取り留めたそうだけど、下手をすれば殺してた。こんなこと、したくなかったのに。ずっと・・・したくないと思ってたのに。



「まだね、手に感触が残ってるの。骨を握りつぶして、打ち抜いた感触が、しっかりと。・・・私はなぎ君みたいに殺したわけじゃない。なぎ君ほど重い荷物じゃない。でも、その感触が、傷つけたという事実が・・・すごく重いの。
こんなの、忘れられない。ううん、忘れたくない。そんな選択を取って、そうして前と同じように笑うのなんて、無理だよ。そんなことしたら・・・おかしくなりそう」





本当に少しかも知れないけど、分かった。なぎ君があんなに頑なだった気持ち。私、ようやく理解した。なんであの時、なぎ君が私の手を振り払ったのか。



なぎ君もきっと、顔に出さないだけでこんな気持ち・・・ずっと抱いてたんだ。今だって、きっとそうだよ。





『・・・どっちの荷物が重いかどうかは俺には分からねぇ。だがな、お前は今までだって同じ事をしてたはずだ。ただ、魔法やら非殺傷設定っていうもんがあったから、自覚が無かっただけでな』

「うん、そうだね。・・・ダメだね、私。自分の力の怖さ、分かってるようで、きっと・・・分かってなかった」

『で、お前はどうするつもりだ』

「背負うよ」



・・・忘れられないなら、忘れたくないなら・・・背負うしかないんだ。あの子と同じように、私も。



「父さんに話して、少し吹っ切れたよ。背負って、それでこれからどうすればいいのか考える。私は知った。だったら、これからどうするのか・・・って」

『恭文と同じように・・・か?』

「うん」



結局、そうして進むしかないんだ。私の大好きなあの子のように。一歩ずつでも、前へ。

・・・なんだろう、その・・・なぎ君の顔が見たい。すぐに、会いたい。約束の時間までは、まだ少し早いけど・・・よし、行ってこよう。



「父さん、ごめん。私ちょっと出てくるから」

『押し倒しに行くのか?』

「そうだよ」



なんというか、いちいち否定するのもめんどくさかったから、そんな風に返した。そうすると、父さんが驚いたような顔になる。



『まぁ・・・あれだ、避妊はちゃんとしてもらえよ? お前らはまだ若いんだしよ。いや、初めて同士なら逆に無しってのも・・・それで孫が出来れば御の字で』

「一体なんの話っ!? というか、やっぱり否定しますっ! 私はただ話に行くだけで、押し倒したりしませんっ!!」










とにかく、通信を切って私は・・・部屋の外に出た。ゆっくりと廊下を歩く。ドキドキしながら、一歩ずつ、ゆっくりと。

お風呂は、こっちに戻って来てから入らせてもらった。傷に少し染みたけど、特に酷い部分はなかった。頬のガーゼも、大事を取ってるだけで特にダメってわけじゃないし・・・あと、確か今日って・・・あ、ちょっと危ないかも。

でも、一応持ち歩いている『明るい家族計画』もあるし、そうなっても問題は・・・って、私は本当になに考えてるのっ!? あの、あくまでもお話っ! お、お話するだけなんだからっ!!





・・・待って、もしもなぎ君がそんな感じだったら、私・・・あ、でもさすがに直後だし、そうはならないかな。

でも、その・・・せめて・・・せめて、気持ちを伝えるくらいのことは、してもいいよね。

そう考えると、心臓の鼓動が跳ね上がった。『告白』の二文字だけで、身体が熱くなって、呼吸が苦しくなる。自分の心臓の音が聴こえてくる。





今は・・・付き合うとか、恋人になるとか、そういうのじゃなくていい。ただ・・・ただ一つだけ欲しい。

私を女の子として見て欲しい。ただ、それだけ・・・欲しい。





そんなことを考えながら歩いていると、部屋の前まで来た。だから、私はノックする。コンコンと、震える左手で。

すると、中から『はい』という声がした。だから、そのまま私は入った。

ドアを開けると、目の前には一人の男の子。今日、また重いものを背負ったはずなのに、普段と変わらない様子を見せている・・・男の子。










「・・・来ちゃった」

「・・・うん」





私は、そのまま案内されて・・・ベッドの腰掛ける。い、いいの。その・・・これはいいの。



なぎ君も私の隣にちょこんと座る。・・・ちょっと離れてるから、距離を詰めた。





「・・・ギンガさん、くっついてる」

「くっつけてるから、いいの」





そのまま、少し沈黙。触れている腕の温もりで心が温かくなって・・・どきどきする。





「終わった・・・ね」

「一応ね。この後の処理とか捜査とか、まだ残ってるけど」

「あとは、エリスさん達に・・・だよね」

「うん。というか、僕はそういうの専門外だからなぁ」



なぎ君は捜査とかそういうのが実は苦手だったりする。なんというか、イライラするとか。目の前に相手が居て、それをぶっ飛ばせる状況の方が楽だし楽しい・・・あれ、なんかおかしいな、この思考。



「なぎ君は海鳴・・・だったよね」

「うん。・・・それで、年越しまで向こうに居ようと思う。ちょっと色々相談したいこととか出来たから」

「今回の事について?」

「そんなこと。あと・・・その、もしかしたらしばらくそういうの出来ないかも知れないから、今のうちに顔見せておこうかなと」



・・・え?



「えっと・・・まだ本決まりじゃないんだけど、六課が解散してからフェイトの補佐官・・・やってみようかなと。執務官補佐の仕事」



その言葉に、胸が締め付けられた。



「局員に、なるの?」

「ううん、嘱託扱いでだよ」



そして、心の中に暗くて・・・怖いものがあふれ出してくる。



「ならどう・・・して?」



やっぱり、ダメなのか。こんなに近くに居ても、私じゃ・・・ダメで、だからフェイトさんを追いかけるように補佐官になって・・・。



「・・・執務官の資格、取ってみようかなと」



え?



「ほら、前に話したじゃない。これだったらやってもいいかなーって」



そうして、思い出す。少し前・・・なぎ君とそんな話をしたことを。あの時、嬉しかったなぁ。少しでもうなづいてくれたのが。突破口が見つかった感じがして。



「局員になるのは、やっぱり今は出来ない。今回の事で思い知ったもの、僕の道理には合わないなって。僕の目指すところは、最強で最悪・・・だし」

「局の中に居たらそれは本当に出来ない・・・よね。うん、出来ない。多分局は、そういうのはいらないと思うから」

「でしょ? ただ・・・資格取るくらいは頑張ってもいいかなと」

「でも、すごく大変だよ?」



確かに、以前も言ったと思うけど色々形体やルールが変わって嘱託扱いでも取れるようにはなった。それでも、試験を受けることも大変だろうし、合格することだって大変。

それなら、一時的にでも候補生扱いにしてもらった方が・・・。



「無理だよ、僕・・・飛び出すもん。現に今だって飛び出してるし。それに・・・」

「それに?」

「あくまでもいちおうの目標・・・だしね。他にやりたいこと見つかるかも知れないから。でも、きっと方針は変わらない」



どこか、遠い・・・でも、前に見たような感じじゃない。ちゃんと今あるものを見ているような目で、なぎ君は言葉を続ける。



「手を伸ばして、理不尽な今を覆す。そうして、そのせいで踏みつけられて、泣いている誰かの未来を守る。世界とか、組織とか、そんなののためじゃなくて・・・自分のために。きっと、変わらない。
色々考えてさ、やっぱりこれなんだなって思った。僕は、やっぱりこれかなと」

「・・・そっか」

「あと、フェイトの所ならティアナも居るし、シャーリーも居るし、中々楽しめそうだしねー。鉄火場が多ければ、その分多く戦えるし」



やっぱり、戦うことは楽しいみたい。どこかワクワクした顔で話すなぎ君を見て、ちょっと苦笑い。

本当はこういうのは直して欲しい。直せるとも思う。でも・・・きっと無理なんだろう。



「まぁ、そういうのもあるし、勉強するなら実際の捜査活動やら事務やら出来るとこの方が絶対いいもの。で、実際にやってみて・・・局員でもいいかなとか思ったら、局員になってもいいだろうし。なにより、フェイトは執務官のお手本としてはバッチリだしね。・・・精神関係以外」

「え?」

「うちのバカ姉は、精神攻撃弱いもの。で、ティアナはそれよりマシだけど、挑発に乗りやすいとこがある。もう模擬戦でよーく分かったし」



・・・例のなぎ君が暴走しまくった模擬戦の話だと思い出す。

あれ、そう言えばヒロさん達が出向してきた理由を聞いた時に模擬戦がどうとかって。あ、あとフェイトさんもスカリエッティの精神攻撃に潰されかけて・・・。



「それが改善されるまではね、付いていられるなら付いておきたいなと。またJS事件の時みたいなのはゴメンだし」

「・・・そっか、やっぱりフェイトさんのこと好きなんだね」

「・・・当然でしょ。大事な友達で、仲間で・・・家族なんだから」



8年・・・か。私よりもずっと長い間なぎ君と繋がっていた。超えるのは簡単じゃないよね。



「ね、なぎ君」

「うん?」

「うちに、来ない?」



それでも、声はかける。だって・・・そうなったら、私なぎ君と離れることになる。

本局と地上、海と陸、その上出張も多い次元航行部隊所属。今まで以上に会えなくなって、でも、フェイトさんとはずっと一緒で・・・。



「局員としてじゃなくてもいい。もう、ちゃんと分かったから。でもね、勉強なら、うちでも出来るよ。捜査関係や事務処理はうちにも得意な人が沢山居るし、父さんだって力になってくれるし、それに・・・それに・・・」

「ギンガさん、あの・・・」

「・・・ごめん」



ダメだ、私・・・すごく無理な事言ってる。



「今言ったの、忘れてくれるかな」

「あ、うん・・・」



なぎ君はフェイトさんへの気持ちだけで動いてない。本当に資格を取るかどうかは別にして、一度ちゃんと勉強してみたくなって、それなら信頼も出来て、能力もあるフェイトさんの所がいいって考えた上で決めて・・・。

108部隊に居ても、きっとフェイトさんの所に居るより、得られるものは少ないと思うから。ここは、多分変わらない。



「まぁ、資格取れたら・・・お世話になってもいいけど」

「え?」

「前にそういう話をしたじゃん」

「・・・・・・そうだったね。うん、そうだった」



それだけで、嬉しかった。なぎ君、私と話した事、ちゃんと含めた上で色々考えてくれたんだと。先はどうなるかわからないけど、それだけで・・・嬉しい。

・・・・・・よし。



「ね、なぎ君」

「うん」

「補佐官の資格って、取るの・・・難しい?」

「・・・へ?」










・・・・・・なぎ君だけじゃない。私も・・・頑張ることにした。





私が居たいのは、やっぱり私より背の低い男の子の隣。私が欲しいのは、私よりずっと強い男の子との時間。





だから・・・なぎ君が執務官なら私は補佐官になれば、一緒に居られるし便利・・・な、なによその視線はっ! いいでしょ別にっ!? もう手段なんて選んでられないんだからっ!!





あとは、練習しよう。そして、聴かせよう。





私の想いを詰め込んだ・・・私だけの歌を。告白は、それからでも遅くない・・・はず。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・というわけで、お世話になりました」



翌日、なぎ君は朝一番でここを出ることになった。



「ううん、お世話になったのはこっちの方だよ。・・・本当に、ありがとう」

「いえいえ。・・・あの、エリスさん」

「あぁ、後の事は全て任せてくれ。警防も捜査協力してくれると言ってくれているしな。君の仕事は終わりだ」

「はい、お願いします」



そう言って、なぎ君がエリスさんに頭をペコリと下げる。私は・・・見送る側。行き先が少し違うから。



「あー、恭文君。海鳴行くんやったら、耕介君と愛ちゃん達によろしく言っといてな。また里帰りさせてもらうからーって」

「了解です。ゆうひさんが相変わらずバカだったと伝えておきます」

「そうそう、うちが変わらずバカやったと・・・誰がバカやねんっ!!」

≪JACK POT!!≫

「大当たりちゃうわボケっ! こてっちゃんもなんでノるんやっ!?」



な、なんというか・・・このやりとりは普通なのかな。今ひとつ分からないんだけど。



「んじゃ、ギンガさん。また・・・ミッドでね」

「・・・うん」

≪マリエルさん、ギンガさんのことお願いします≫

「了解。あ、二人も気をつけてね。またミッドで」

≪「はい」≫










そう言って・・・なぎ君は歩き出す。こちらに手を振りながら、ゆっくりと。





・・・行っちゃったな。










「フィアッセ、なんやギンガちゃんが寂しそうやで?」

「うーん、そういうのは私の役なのになぁ」

「か、からかわないでくださいっ!!」

「・・・しかし、彼にはまた助けられたな。今度フォローしないと」



エリスさんがそう言うと、フィアッセさんとゆうひさんが少しだけ真剣な表情で頷いた。・・・やっぱり、思うところはあるらしい。特に・・・フィアッセさんは。



「まぁ、そこはともかく・・・えっと、マリエルさんでしたよね」

「あ、はい」

「ギンガちゃん、予定通り2、3日お借りしますんで」

「それはかまいませんよ。でも・・・あぁ、ギンガもついにエンジンかかったかぁ。いや、私はうれしいよ」



・・・マリエルさん、お願いだからそう言いながら涙拭うのはやめてください。

あと、母さんのスクリーンショットを出して報告するのもやめ・・・ってっ! 父さんと全く同じじゃないですかソレっ!!



「ほな、フィアッセ」

「うん。・・・ギンガちゃん、私とゆうひも力を貸すから、頑張ってみようね。恭文くんにギンガちゃんの想い、ぶつけてみよう」

「・・・はいっ!!」

「なら、私は・・・ガードしよう。いや、それくらいしか出来ないんだが」

「うん、お願いね。エリス」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして・・・あっと言う間にクリスマス。12月の25日。いやぁ、早かった早かった。





なお、うちの家族との綿密なディスカッションとかそういうのはカットします。いや、思い出すと辛いの。だってさ、また『忘れていいのよ』みたいな話をしても辛いだけじゃないのさ。





でも・・・なんとか分かってもらえたけど。僕は忘れることも、下ろすことも絶対にしたくないって。










「・・・ホワイト・・・クリスマスですね」

「そうだね」



そう言って、空を見上げる。・・・ここは、海鳴の一角の高台。ゆっくりと雪が降って・・・とても綺麗。

雪は昨日の夜から降っていて、もうあっちこっち積もって景色は一面白。なんというか、とっても素敵。



「・・・恭文さん」

「なに?」



最近の事に関しての報告が終わって・・・二人でベンチに座ってボーっとしてた。そう、隣にはリイン。



「リイン、恭文さんの側に居ますから」

「え?」

「・・・いっぱい、いっぱい考えたです。それで、はやてちゃんと最近話してるです。六課が解散したら、恭文さんのところで暮らしていいかって」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい? いやいや、待って待って。なんでいきなりそんな話になるのさ。



「最近、離れ離れなこと、多かったですよね。JS事件の時なんて得・・・じゃなかった、特にそうです。リイン、本当はすぐにでも恭文さんの側に行きたかったです」



僕が行方くらませてた時の話か。確かに、完全無欠に離れ離れだったからなぁ。



「それに、今回の事です。・・・リイン、何の力にもなれませんでした。恭文さんのこと、大好きなのに、大切なのに、また重いものを背負ったのに、リインは側に居て、支えにもなれませんでした。だから・・・決めたです」

「いや、でもそれだとはやてが」

「だから、お話してるです。・・・私は、祝福の風であると同時に、古き鉄・・・あなたの一部です。離れてても出来ることはあります。でも、出来ないこともあります。私は・・・それが出来ないのは、もう嫌なんです」



真っ直ぐに、僕を見て話すリインの言葉に、僕は何も返せなかった。だって、その・・・いきなり過ぎで、この場で返事出来る話じゃなかったから。



「だから、側に居ます。側に居て・・・側に居るからこそ出来ることを、恭文さんにしたいんです。ダメ・・・ですか?」

「いや、ダメとかダメじゃないとかじゃなくて・・・」

「考えるだけ、考えて欲しいです。返事は、すぐじゃなくていいですから」



・・・リインが、傍に居る・・・か。



「リイン」

「はいです」

「イエスとは約束出来ないよ? 僕も、先の事とか、そういうの・・・全然さっぱりだから」

「・・・約束、しなくていいです。考えてくれるだけで、私は嬉しいですから」



そう言って、リインは笑う。やさしく、僕を安心させるように。僕は・・・手袋を外して、そっと頭に手を伸ばして、なでる。

リインは目を閉じて、その感触に身を任せる。・・・ついつい、リインの髪の感触がやわらかくて、心地よくて・・・しばらく撫でてた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぎ君」



声がした。僕とリインがよく知る声。つい二人で顔を見合わせる。表情は当然驚き。そして、二人同時にそちらを見ると・・・居た。

紺色の長いコートを羽織った、藍色の髪の女性が。というか・・・ギンガさんっ!?



「ど、どうしてギンガ・・・ここに居るですかっ!?」

「そうだよっ! あの、えぇぇぇぇぇぇっ!?」

「あ、あの・・・なぎ君に用事があったんです。それで、八神部隊長にもしかしたらここかも知れないって教えてもらって、それで・・・」



・・・僕に? てか、あの狸は・・・いや、分かって当然なんだけどさ。



「あの、リイン曹長。・・・なぎ君と、二人っきりにしてもらっても・・・いいですか?」










やけに真剣にそう言ってきたギンガさんから何かを察したのか、リインはベンチから立ち上がって、そのまま歩き出した。





そして、そのままこの場を後にした。翠屋で待っているとだけ言って。





そうして、この場には・・・僕とギンガさんの二人っきり。ギンガさんは、僕の隣まで来て、ちょこんと座る。










「・・・あの、ごめんね。リイン曹長と二人で・・・大事な用事の途中に」

「ううん、もう終わってたから。あのさ、ギンガさん。・・・はやてから、どこまで聞いてる?」

「そんなに詳しくは。ただ、クリスマスには必ずここに来て・・・お話をしてるということだけ」



やっぱり見抜かれてたんだ。いや、さっきも言ったけど見抜かれて当然なんだけどさ。



「・・・ここね、リインのお姉さんが空に帰った場所なんだ」

「リイン曹長の・・・お姉さん?」

「うん。それでね・・・」





僕は、話した。死にかけた時、そのお姉さんに会ったかも知れないこと。そして、その時にスターライトとリインとのユニゾン能力をもらったこと。その代わりに・・・交わした約束のこと。

ギンガさんは、驚いた様子で・・・だけど、馬鹿にしたりなんて絶対にしないで、聞いてくれた。



それが、ちょっと嬉しかったりしたのは、気のせいじゃない。





「・・・その時にね、僕・・・お姉さんに即答で返したんだ。リインと出会って、そこから色んなことがあって、重い物も背負って・・・それでも、出会えた事は絶対に間違いじゃない。
僕は、そういうのも全部含めた上での幸せだと思える今をリインからもらったんだって・・・そう言い切ったの」

「そうなんだ。・・・ね、なぎ君。もしかして・・・だから、余計に忘れたくないの? 忘れたら、それが嘘になるから。忘れるという形でそれを否定したら、その言葉が嘘になるから」

「うん、そうだね。ここで・・・一年ぶりにお話してさ、そうなんだって改めて気づいた。僕、あの時の自分を嘘にしたくないんだ。・・・おかしいよね、もしかしたら本当に夢なのかも知れないのに」

「ううん、そんなことない。おかしくなんて・・・ないよ。きっと、本当にお姉さんに会えたんじゃないかな。私は、そう思った」



ギンガさんが、僕の顔をまっすぐに見て・・・そう言ってくれた。それが、すごく嬉しかった。



「・・・ありがと」

「ううん」

「・・・あ、ごめん。僕自分の話ばっかりだった。あの、それで僕に用事って・・・なに?」

「あ、あのね・・・。聴いてもらいたいと思って」





それだけ言うと、ギンガさんはゆっくりと立って・・・僕の前へと移動する。自分の身体の前で両腕を掴んで、胸の前へ持っていく。

その時に気づいた。ギンガさん・・・すごく、震えてる。呼吸も少し荒い。



それでもかまわず、ギンガさんは・・・震えた声で、言葉を僕にかける。





「あのね・・・。私の歌、聴かせるって、約束・・・したよね」

「あ、うん」

「今、ここで聴いて欲しいの。私、下手だけど、それでも・・・伝えなくちゃいけないから」





そして、一度深呼吸すると・・・始まった。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君の・・・声が好き」










・・・ゆっくりと、雪が降る中・・・ギンガさんが歌いだした。





というか、あの・・・これって・・・あ、そっか。










「この空の・・・下の誰よりも・・・この胸の中に、君が居る・・・」










そして、震えたような声が、少しずつ・・・力と、強さを表していく。それが僕の胸を貫く。










「優しく・・・優しく・・・この星の、誰よりも・・・」










僕とギンガさんしか居ない空間で、ギンガさんの歌声が・・・響いていく。










「君の・・・声が好き・・・君の・・・ことが好き・・・」










心の中に、暖かくて・・・嬉しくて、少し、苦しい物があふれ出して・・・。










「この星の・・・誰よりも・・・この星の・・・・・誰よりも・・・」










なんだろう、これ。





僕、なんで・・・こんなにどきどきして、嬉しい気持ちでいっぱいになってるんだろ。










「僕が送る・・・この歌は・・・まだ名もない・・・歌だけど・・・」










歌が、終わった。だけど、僕・・・何もしゃべれなかった。だって、胸の中がいっぱいで、苦しくて、だけど嬉しくて、どきどきして、それで・・・それで・・・。





涙が、溢れ出した。沢山・・・涙が、零れ落ちた。










「な・・・なぎ君っ!? あ、あの・・・どうしたのかなっ! 私、なにか・・・あの・・・!!」

「・・・ごめん、なんか・・・よくわかんないの。嬉しいんだけど、どきどきして、それで・・・あの・・・涙・・・止まんない・・・!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・落ち着いた?」

「・・・うん」



ギンガさんからハンカチを借りて、ようやく・・・涙が止まりかけた。でも、どきどきと嬉しさがまだ胸を支配してる。

ギンガさんの歌声・・・胸に、残ってる。



「あの・・・どう、かな」

「素敵・・・だった」



確かに、歌唱力という点ではゆうひさんやフィアッセさんには負けるかも知れない。でも、そういう話じゃない。

胸に、しっかりと届いた。歌声にあふれていたものが、僕の胸に、しっかりと届いた。



「なら・・・よかった。あの、それで・・・ね」

「うん・・・」

「・・・なぎ君、私」



ギンガさんが、僕をまっすぐに見る。両手をぎゅっと握りながら・・・あれ?

な、なんか・・・おかしいな。空から振るのが雪じゃなくて・・・あの、これ・・・雨っ!?



「ギンガさん、ごめんっ! 話は後っ!! と、とりあえず・・・雨降ってきたっ!!」

「あ、うんっ! というか、どうしよう・・・私、傘とか持ってきてないしっ!!」



なんて話している間にどんどん本降りに・・・! というか、むちゃくちゃ豪雨っ!?



「とにかく、走ってどこかに雨宿りするよっ!!」










・・・ただ、この辺りは山沿いの道。雨宿り出来る所など・・・近くに無かった。





おかげで僕とギンガさんはびしょ濡れになっていく。もうこれはハラオウン家なり近くのコンビニなり行くまでにびっしょりかなと思っていたら・・・あった。雨宿り出来る所。





普通ならそこはスルーしていただろう。だけど、さっきの歌のせいで若干テンションがおかしくなっていた僕は・・・ためらい無くギンガさんをひっぱってそこに入った。・・・ご宿泊・ご休憩と書かれたそこに。

どうやら、本当に最近出来た所らしくて、内装はピカピカ。設備もバッチリ。開店サービスで料金まで安くなっていた。

当然お風呂もあるので、二人で交代で入って、バスローブなんて着て、もうご都合主義的に存在していた洗濯機で服を洗濯して、乾燥機にかけて・・・そこで気づいた。





僕達、なにか大きな間違いを犯しているんじゃないかと。










「・・・雨、止まないね」

「そ、そう・・・だね」



綺麗な内装、有線放送なんて聴けるベッド設備。証明の調整まで出来る。なお、回転ベッドはない。だって・・・法律で禁止されてるって言うし。あ、カラオケ設備とかもあるな。

や、やばい。ギンガさんが真っ赤になってる。というか・・・どうしよう。聞いたら傘とかも売ってないし、かと行って迎えに来てもらうわけにもいかないし・・・どうしよう、マジで。よし、ここはアレだ。



「僕、服乾くまで隣の部屋行ってるわ」

「え?」



二部屋ある。どういうわけか二部屋あった。なので、僕は立ち上がって・・・すると、ギンガさんに手を掴まれた。



「あ、あのね・・・。そんなに遠慮しなくていいよ? 私は大丈夫だから」

「・・・だったら、顔真っ赤にしないで欲しい」

「これは・・・あの、その・・・えっと・・・」



とにかく、離してくれない感じなので、ベッドに腰掛ける。やばい、あの・・・ドキドキしまくってる。



「そ、そうだ。なら、雨が止むまで・・・さっきの話の続き、聞いて、くれる?」

「・・・うん」



バスローブ姿のギンガさんを見る。なんというか・・・あの、無理。色々間違ってるから無理。



「あの・・・はくしゅっ!!」

「大丈夫?」

「あ、うん・・・。お風呂で暖まってきたんだけどなぁ・・・」



僕は、すぐにベッドを見る。・・・あ、タオルケットあった。

それを手に取って、ギンガさんにかける。



「・・・ありがと。なぎ君は大丈夫?」

「うん、僕は・・・は・・・は・・・はくしゅっ!!」



大丈夫じゃ・・・ない見たい。でも、タオルケット見る限りだと一枚しかなかった。うーん、部屋にあると思うから探すかな。

だけど、そんなとき・・・ギンガさんが背中にかかっているタオルケットを広げて、僕にかけてくれた。つまり・・・二人で一枚のタオルケットを共用している状態。



「あ、あの・・・」

「せっかく・・・だから。こうしてたい」

「・・・うん」



嫌じゃなかった。だから・・・そのまま、ギンガさんと腕をくっつけながら、一枚のタオルケットを背中からかける。というか・・・くるまれる?

ギンガさんの体温と、タオルケットのおかげでずいぶん暖かくなった。そして、ギンガさんが深呼吸を一回してから・・・話を、始めた。



「さっきの・・・歌ね、ゆうひさんから教えてもらったんだ」

「・・・やっぱりか」

「うん、やっぱり・・・えっ! なぎ君・・・あの、し、知ってたのっ!?」

「うん。・・・前にゆうひさんから教えてもらったんだ。あの、海鳴にゆうひさんが暮らしていたさざなみ寮って所があってね」



・・・別名『海鳴の魔窟』とも呼ばれているけど。どういうわけか、あの寮に住んでいる人達は特殊な病気のせいで超能力使える人とか、霊障と呼ばれる霊的なものが起こす現象を解決する退魔師な方・・・など、かなりマイノリティな方々ばかりが住む。

いや、僕も十分そのマイノリティだから、あんま言えないけどさ。



「そこの寮の管理人さん・・・槙原耕介さんって言うんだけど、その人がね、今の奥さんにプロポーズする時に・・・」



・・・あれ? え、えっと・・・あの・・・その・・・えっと・・・あれっ!?

と、とにかく話を・・・続けよう。



「その時、まださざなみ寮に住んでたゆうひさんが・・・後押しの意味も込めて、作ったんだって。これを覚えて、歌って・・・」



歌って・・・思いを・・・届けろって。歌は心。その人の想いが沢山詰まっていくものだから・・・きっと届くって。

そうだ、それで・・・鼻歌交じりでゆうひさんがこんな歌だーって教えてくれて・・・。



「・・・僕、その話聞いてて、実際にハミング程度に歌ってもらったこともあって・・・だから・・・嬉しかった」

「・・・うん」

「僕、嬉しかった。ギンガさんが・・・好きだって言ってくれて」



その時、気づいた。あんなに胸が震えた理由。あの歌には、詰まってたんだ。

ギンガさんの気持ち。ギンガさんの想いが。



「そう・・・だよ。私ね、なぎ君が・・・好き。でも、友達としてじゃない。男の子として、この世界の誰よりも、なによりも・・・大好き・・・なの」

「うん、ちゃんと伝わったよ。だって、僕・・・あの歌声思い出すだけで、泣きそうになるくらい嬉しくなるから」

「・・・よかった。本当に・・・よかった」



ギンガさんの瞳から涙がこぼれる。それを、僕は右手の親指でぬぐう。その時、頬に触れる。・・・熱い。



「・・・ギンガさん」

「うん」

「・・・ごめん」

「謝らないで・・・欲しいな」



それは、怒りや否定じゃない。むしろ優しさ。安心させようとしてくれている。



「迷惑・・・だったかな」

「ううん、それはない。さっきも言ったけど、すごく・・・嬉しい」

「なら、よかった」



でも、あの・・・返事しなくちゃ、いけないよね。ギンガさんは気持ちをぶつけてくれた。

僕は・・・あの・・・。



「その・・・あの、私の方こそ、ごめん」

「なんで謝るのさ」

「私が・・・わがまま言ったから。迷惑、沢山かけたから」



・・・迷惑、かけられたかな。覚え無いんだけど。



「私ね、この間の一件で・・・本当の意味で分かったの。なぎ君が、どうして昔の事、忘れたくないと思ったのか」

「そうなの?」

「うん。・・・私もね、傷つけたから。魔法無しで、人を。あの時の事、忘れて、何もなかったような顔なんて、出来ない」

「・・・そっか」



そのまま、頬を撫でる。どう言葉をかけていいのか・・・分からなくて。ギンガさんは、そのまま受け入れてくれた。



「ごめん、私・・・何も知らなかった。なのに、勝手な事ばかり言って、きっと傷つけてた。それだけじゃなくて、なぎ君の事振り回して、大好きなフェイトさんとの時間まで取り上げて」

「いーよ、そんなの。つか、ギンガさんのせいじゃないでしょうが」

「私の・・・せいだよ」

「ギンガさんのせいじゃない」



その・・・あれだよ。うん、僕が悪かった。いろんな意味で心配かけまくってたんだしさ。



「僕だってきっと、ギンガさんの気持ち傷つけてた」

「え?」

「フェイトの話をしたり・・・とかさ。さっき謝ったのも、それ」





ギンガさんの気持ち、考えて・・・みようとも、してなかったね。



フェイトにされてたこと、ギンガさんにも、してた。きっと、嫌な思い沢山させてた。きっと・・・傷つけてた。





「私は、大丈夫。・・・8年だもの。簡単には、見れないよね。あの、それでね・・・なぎ君」

「うん・・・」

「私・・・ね」



翡翠色の瞳が揺れる。そして、自分の頬に触れている僕の手を・・・左手で、優しくつかむ。



「何度も、考えたんだ。なぎ君の事、好きだって気づいて、ここに来るまで・・・告白するの、やめようかって、何度も。なぎ君はフェイトさんが好きで、私・・・きっとフェイトさんには勝てなくて。
なぎ君、優しいから沢山・・・沢山困らせちゃうんじゃないかって、何度も、考えたの。でも、抑えられなかった。私・・・なぎ君が欲しい。なぎ君との時間が・・・欲しいの。なぎ君のこと、諦めることなんて、出来ないんだ」



目に涙があふれる。ギンガさんの声が、震える。あの歌を・・・最初に歌いだした時のように。

・・・言わなきゃ、いけない・・・よね。ちゃんと、伝えなくちゃ。



「あの・・・ね、ギンガさん」

「分かってる。・・・私だって、他の人に告白されて、その人に自分を見て欲しいとか言われたら、無理だって思う。そう返事する。なぎ君の事好きなのに余所見なんて、出来ない。でも・・・お願い。考えるだけでいい。
付き合うとか、恋人になるとか、そういうの・・・無くていい。だから・・・お願い。考えることだけ、して欲しいの。それが無理なら・・・想う権利だけ、私にくれないかな。私、このままなんて」

「ギンガさん、少し黙って」



語気を強めに放たれた僕の言葉に、ギンガさんが固まる。表情が悲しげに見えるけど、それにかまわず・・・僕は話を続ける。



「・・・僕、それじゃあ話出来ない。お願いだから、少しだけ僕の話・・・聞いて」

「う・・・ん・・・」

「好きだって言ってくれて、すごく・・・嬉しい」



それは事実。今だって、すごく胸が・・・震えてる。



「でも・・・あの・・・フェイトが・・・好き、なんだ」

「そう・・・だよね。あの、ごめん。この話は」

「最後まで聞いて。でも・・・おかしいんだ。僕、ギンガさんとの時間、考えてもいいかなって、思ってるの」



ギンガさんの表情が固まる。そして、今僕が言った事が信じられないと言わんばかりの顔になってる。



「ホント・・・に?」

「ホント・・・に。というより、あの・・・ね、ギンガさん、前に言ってくれたよね。『私は、同じ手で守られたの』・・・って」

「うん・・・」

「あの言葉、すごく嬉しかったんだ。それ以来・・・かな、僕、ギンガさんの事・・・気になり始めた」



あの時のぬくもりが、ギンガさんの言葉が、嬉しくて、なにか伝わるものがあって。だから、先のこと・・・もう少しだけ真剣に考え始めて。



「それだけじゃなくて、さっき・・・告白された時、すごく嬉しくて、どきどきして・・・。僕、あの・・・ギンガさんの事、女の子として見始めてる。だったら、考えてみてもいいかなって」

「そう・・・なんだ。私、あの時、嘘ついてたのに・・・ちゃんと、伝わったんだ」

「・・・嘘?」

「あ、なぎ君に対して・・・じゃないの。自分自身に対して。私ね、自分に嘘ついてたの。なぎ君をあんな風にしつこく108に誘ってたの・・・なぎ君の事が好きだったからなの。
ワガママで、勝手なんだけど、なぎ君に傍に居て欲しくて、そうしたら私のこと・・・見てくれるんじゃないかってずっとどこかで思ってて。それでね、あの・・・少しだけ、恥ずかしいんだけど・・・勇気出して、言うね」



ギンガさんが、僕の右手と左手を、自分の二つの手で取って・・・ギュっと握る。



「あの時、なぎ君にそう言った時、私思ってたの。なぎ君の手は、私にとって奪った手じゃない。なぎ君は、私にとって奪った人間じゃないって。なら、どういう手でどういう人間なのかって、考えた。それでね・・・答えが出た。
好きだって気づいた時に、答えが分かったの。なぎ君の手は・・・私を守ってくれて、今をくれた優しい、強い手。なぎ君は・・・私の、大好きで、大切な人・・・だって。だから、私に今をくれたなぎ君が不幸になるようなこと、絶対に嫌だったの」

「・・・その、嬉しいけど恥ずかしい」

「わ、私だって恥ずかしいよ。あの、えっと・・・ごめん。私なんか、全然うまくしゃべれてない」



それを言うなら・・・僕も・・・かな。なに言いたいのかさっぱりだよ。

と、とにかく・・・ケジメと言うか、そういうの・・・大事だよね。



「あのね、ギンガさん。・・・だから、その・・・さっきも言ったけど、僕ギンガさんとの時間、ちゃんと考えたい。僕、ギンガさんに惹かれてるみたい・・・だから」

「・・・うん」

「ただあの、フェイトへの気持ちもやっぱりあるみたいで」

「・・・・・・うん」

「ちゃんとした結論出すのむちゃくちゃ時間かかるかも知れないし、忘れるの無理かも知れないし、もしかしたら待たせるだけ待たせたあげくにノーって返事するかも・・・。ごめん、やっぱりこれじゃあダメ・・・だよね。あんまりに勝手過ぎだ」



ギンガさんが首を横に振る。そして、僕の手を握る力が強まる。



「あの、大丈夫だよ。・・・8年、だよね。8年・・・ずっと好きだった」

「うん、好き・・・だよ」

「・・・それだけじゃなくて、友達で、仲間で、家族で・・・。それなら、無理ないよ。だから大丈夫。あとね、忘れなくていいよ」



・・・え?



「フェイトさんへの気持ち、忘れたり、消す必要なんてない。それでも・・・私が、ギンガ・ナカジマが一番好きだって、言わせてみせるから。
フェイトさんには、二番目になってもらうだけ。だから、忘れなくて・・・いいよ。私、なぎ君のそういう一途な所も・・・好きだから」

「ギンガさん・・・」

「えっと、それじゃあ・・・一応ではあるけど、あの・・・OKってことで、いいかな」

「・・・うん」



言葉はすごく自然に、素直に出た。自分でもびっくりするくらいに。



「それで、あの・・・一応付き合うとか、そういう形に・・・」

「あ、あの・・・いいの?」

「友達じゃあ、ちょっと違うから。ただ、あの・・・さっきも言ったけどどうなるか分からないし、それで・・・あの・・・」

「あの、そこは大丈夫だからっ!! ・・・ちゃんと私のこと見てくれた上での答えなら、私・・・納得するよ。だから、大丈夫」



・・・手を、解く。それから・・・僕は自分の意思でギンガさんの手をギュッと握る。



「ちゃんと、見るよ。僕がそうしたいから。ギンガさんのこと、もっと・・・知りたい」

「・・・うん」





そのまま、ギンガさんが涙目で笑顔になって・・・あの、抱きついてきた。



その瞬間、僕は硬直する。





「あ、あの・・・ギンガさん?」

「ごめん、もう我慢出来ない。私、さっきからずっと・・・なぎ君にこうしたかったの」

「こ、こうしたかったって・・・あの」

「大丈夫・・・だよ。今日、安全な日だから」



いや、あの・・・そうじゃなくて。



「あの、私・・・大丈夫だから。確かに特殊な身体だけど、マリーさんから・・・男の人とそういうこと、ちゃんと出来るって太鼓判押されてるし、赤ちゃんだって・・・産めるよ?」

「な、なぜにいきなり赤ちゃんの話になるのさっ! お願いだから落ち着いてっ!? なんというか、いきなり過ぎないかなっ!!」



順序って大事よっ!? いや、ここは絶対だってっ!!



「そ、それは・・・あの、確かにそうかも・・・。あの、だったら・・・」

「うん?」

「このまま、雨が止むまで・・・ギュってしてて欲しい。それだけで、いい」

「・・・うん、そうする」










そのまま、僕はギンガさんを・・・ギュっと抱きしめた。ギンガさんの僕を抱きしめる力が、それに返すように強まる。





色々と不安な選択。どうなるかなんて、分からない。でも・・・今はこうしたい。ギンガさんの言葉に、想いに、胸が震えたのは事実で・・・それに、応えたいなと。





なお、翌日早朝まで雨は止む事なく、僕とギンガさんはここに缶詰。仕方が無いのでオールでカラオケなぞやりつつ時間を過ごし、翌日の朝帰りで互いの家族に相当絞られたりするのだけど・・・それは割愛します。だって、思い出したくないから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして、それから1月と少しという時間が流れました。年が明けて新暦の2月の中旬。六課解散まで、三ヶ月を切ってしまいました。





でも、年末は大変でした。恭文君とギンガが付き合うようになったという話・・・というか、朝帰りの話は私達のコミュニティを駆け抜け、みんなが衝撃を受けたのは、言うまでもないと思います。

ただ、本人達は審査中というか、お試し期間的な感じの清い交際らしいので、全員余計なちょっかいを出さず、暖かく見守ることが決定しました。特に・・・はやてちゃんは余計な口出しをしないようにと、口をすっぱくして注意してたりします。





そうそう、その間に何が起きたか・・・なんですけど、実は恭文君、やっぱり一度六課を辞める形にはなったんです。だけど、再び出向してもらうことになりました。

あ、誤解の無いように言っておきますけど、恭文君から言い出したりはしてません。そんな子じゃないですから。

これは・・・スバル達フォワード四人の要望。四人で色々考えて、話し合って、どうしても恭文君と一緒に六課を卒業したいと、はやてちゃんや私、フェイトちゃんに懇願してきたんです。





私達はまぁ・・・かまわなかったんですけど、問題は当の本人。知っての通り、恭文君は強情な子ですから。あと、こういうのが基本的に嫌いです。

なので・・・恭文君はこの話をされた当初、『自分の意思で飛び出したのに、そんな真似出来ない』と頑なに断ってました。私やフェイトちゃん達もそうだし、リンディさん達やスバル達がどうしてもと言っても、それでも変わらず。

ただ、結局は折れて1月の中旬から再び六課の一員になりました。そうとう苦い顔して頭抱えながら隊舎に来ましたけど・・・。この辺り、ギンガが相当がんばってくれたりしてます。





それで、フェイトちゃんとは・・・まぁ、姉弟な感じで楽しくやっています。まだ好きという気持ちは残ってるみたいですけど、それでも、家族としての時間を始めてきています。それを私達は、ギンガとの関係同様暖かく見守っています。

あぁ、それと・・・大変だったのが一つ。クロノ君とリンディさんとナカジマ三佐が一夫多妻制・・・あれは忘れよう。まじめに恭文君がキレてクロノ君と一騎打ちしたりして大変だったから。

それ関連で、恭文君とフェイトちゃん、少しだけ深い話をしたりもしたとか。フェイトちゃん・・・どこか嬉しそうに話してくれました。





あと・・・事件もありました。ミッドで起きた不可解な事件。その中で出会った時の電車のあの人達。





・・・うぅ、まさか実在してるなんて思わなかったよー! いや、嬉しかったんだけどっ!!

ただ、その中でギンガは記憶を奪われたりして、恭文君的には大変でした。もっと言うと、本編クロスでのフェイトちゃんの位置がギンガになって・・・あれ? なんで私はこんな説明セリフ喋ってるんだろ。でも・・・アレで色々気づいたらしいです。自分が、ギンガに惹かれてるのは確定だって。

実際、その後の神速関係の修行も二人で行ったりしてましたから。少しずつ・・・少しずつだけど、絆を深めてるようです。





そして、今日・・・二人はドイツのお兄ちゃんの所での修行を終えて、ミッドに帰ってきます。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・本局の転送ポートから、ミッドの中央本部へ移動。それからそこのロビーまで歩いて、外に出る。空に見えるのは・・・二つの月。いやぁ、帰ってきたねぇ。





なぜか隣のギンガさんの視線が微妙に痛いけど。










「・・・なぎ君、それは本気で言ってるのかな?」

「あぁ、はいはい。分かっています分かっています。僕が包帯だらけな格好だからですよね」





服が長袖だからあんま目立たないけど、あっちこっち包帯巻きまくってる。神速がコントロール出来るようになったのが嬉しくて、つい・・・恭也さんと派手に斬り合ってしまったおかげで、身体中傷だらけになってしまった。

いや、そんなに深い傷は無いよ? ちゃんと加減は互いにしてたんだし。



ただ、そのおかげでみんなの体感時間で1秒以上は持続して使用出来るようになった。まだまだ修練は必要だけど、これでも十分。





「うーん、私もフェイトさんの補佐官にしてもらおうかな」

「なんでっ!?」

「なぎ君がそうやって暴れるからだよっ! 私、一応ではあるけど・・・その、彼女としてすごく心配っ!!」



そ、それはその・・・えっと・・・。

僕は素直に謝った。ごめんなさいと、頭を下げて謝ることにした。それでギンガさんは、笑顔になってくれた。・・・ありがたいことです。



「でも、ドイツ・・・楽しかったね」

「ちょっとだけだけど、観光したしね。・・・てかさ、よく考えたらすごいよね」

「え?」



近くのバス停を目指して二人で両手いっぱいのお土産を持ちながら歩く。そうしながら、ギンガさんを見上げながら、話す。



「だって、ほんの3ヶ月足らずの間に、僕ギンガさんと3回も旅行してる。イギリスでしょ? 一応・・・海鳴、日本でしょ? それで、ドイツ」

「そう言えば・・・そうだね。あ、でもね・・・それで分かったんだ。なぎ君が旅をしてみたいって思う気持ち。知らないものや知らなかったこと、そこに住む人に触れていくのって、楽しいから」

「・・・そっか」



ほんの一ヶ月で・・・僕、ギンガさんの事を前よりも好きになってる。こうしてるのが、幸せで、嬉しくて・・・。

だけど、ちょこっとだけチクンと痛むものがあって、それも事実だったりして。僕、ダメだな。



「・・・あと、5年」

「え?」

「私となぎ君が初めて会ってから・・・あと5年で8年経つの」



一瞬、ギンガさんが何を言っているのか分からなかった。でも、次の言葉で分かった。



「でも、付き合うようになったのは本当に最近だから・・・やっぱり、8年かな。一応、それが目標。私が・・・なぎ君の一番になるまでの時間」

「ギンガさん・・・」

「8年あったら、きっと・・・私でもなぎ君の中のフェイトさんを抜けると思うんだ。ううん、抜きたい。だから・・・」



ギンガさんが僕を見る。少しだけ真剣な顔で。



「焦らなくていいよ。なぎ君、優しいから色々考えちゃうかも知れないけど・・・本当に少しずつでいいから。少しずつでも、なぎ君と一緒の時間を作っていければ、それでいいから」

「・・・なんで分かる?」

「分かるよ。その・・・一応でも、私はなぎ君の彼女なんだから」

「そっか」



空を再び見る。2月のミッドの風は少しだけ冷たいけど、その風がなんだか心地よかったりもする。

・・・そう言えば・・・今日って、バレンタインデーじゃ。



「ね、ギンガさん」

「なに?」

「せっかくだから・・・今日、デートしない? ほら、バレンタインデーだから、一日帰りが遅れたということにして・・・」



視線が厳しくなる。まぁ、ダメだよね。こういうのはズルもいいところだし。



「デートは・・・ダメだよ。みんなにバレるかも知れないから。でも、二人きりには・・・なりたいかな」

「・・・じゃあ、家・・・来る?」

「・・・うん、行く。それで、あの・・・ラブラブとか、したい」

「あ、うん。それじゃ・・・がんばる」










少しずつ・・・少しずつ、歩くよりも遅いスピードかも知れないけど、僕とギンガさんの時間は進んでいく。





これから、色んな事があると思う。でも・・・もしも、もしも・・・隣に居る女の子とずっと一緒に居られたら、いいなぁと・・・最近、よく思う。





だって、その・・・好きなのは、事実だから。










「それじゃあ、早く行こう。・・・恭文君」

「へ?」

「あ、あの・・・名前で、呼びたいなと思って。ずっと、ずっと考えてたの。『なぎ君』だと、苗字・・・でしょ? あの、ダメ・・・かな」

「ううん、あの、それでいいよ。・・・ギンガ」

「・・・うんっ!!」




















(ギンガルート・・・おしまい)




















あとがき



古鉄≪さて・・・なんとか完結したギンガさんルート、皆さん・・・いかがだったでしょうか。今回、まったく出番が無かった私、古き鉄・アルトアイゼンと≫

ギンガ「え、えっと・・・お話が終わったと言う事で、あとがき登場が許されたギンガ・ナカジマです」

恭文「かれこれ半年・・・いや、長かった。マジで長かった。そう思う蒼凪恭文です。えー、一応決着という感じではありますが、マジで・・・どうでした?」





(なお、エロ要素はなくしました。だって・・・ねぇ? いきなりそうなっても・・・ねぇ?)





古鉄≪しかし、IFルート、予想以上に大変でしたね。いや、ギンガさんの場合本編再構成なノリでがんばったのが原因ですけど≫

恭文「一応、元々のヒロイン候補だったしね。なお、本編の17話の段階まで、作者はギンガさんヒロインにするか、今のようなフェイトヒロインにするか、非常に迷っていました。えぇ、それはもう非常に」

ギンガ「そうなのっ!?」

恭文「そうなの。まぁ、今回がんばったのはそういう意味合いもあるのですよ」





(青い捜査官、なぜか顔を赤くする。というか、ちょっと嬉しそう)





ギンガ「な、なんだか嬉しいな。ほら、私ってテレビだと脇役だったじゃない? だから、こんな風にメインで扱ってもらえるのは、とっても嬉しい。それもヒロイン・・・だよ? リイン曹長やすずかさんや、なのはさんにスバルやティアも居るのに」

古鉄≪・・・ほら、せっかくだから本編でもヒロインにしてあげてくださいよ。いいじゃないですか、リインさんもいるんですし≫

恭文「よくないわっ! つーか、それはスクイズEDだからねっ!? そしてリインがいる事をいちいち引き合いに出すなー!!」

ギンガ「あ、あの・・・私は・・・嫌かな。やっぱり、なぎ君には私だけを見て欲しいし」





(青い古き鉄、その言葉に顔を赤くする。やっぱり今回のことで色々思う部分はあるらしい)





古鉄≪・・・さて、そんなギンガさんルートですが、実は・・・この続きを書く予定が一応あります≫

ギンガ「そ、そうなのっ!?」

古鉄≪えー、拍手で何回か言っておりますが、現在放送中の『仮面ライダーディケイド』とのクロスですね。本編は電王やらしゅごキャラやらやりますので、ぶっちゃけ時系列的にこれとは出来ません。そんな余裕が構築出来ません≫

恭文「なので、ギンガさんルートの事後の時間軸でディケイドのクロスやろうと。アフターの意味合いも含めて・・・だね」

ギンガ「え、えっと・・・つまり、もうちょっとなぎ君と恋人のお話が出来るかも知れないってこと?」

恭文「書く余裕があれば・・・だよね。現時点でも大風呂敷広げているのは間違いないから」

ギンガ「でも、もし出来るなら嬉しいな。というか、私がんばるよ。またなぎ君のこと『恭文君』って呼びたいから」





(本当に嬉しそうな笑顔と言葉に、青い古き鉄、まじめに顔を赤くする。やっぱり色々きついらしい)





古鉄≪とにかく、もし書くようであれば皆さん応援いただければと思います。それでは、ギンガさんルート、応援ありがとうございましたっ!!
今回のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「身体・・・すごく熱いです。蒼凪恭文と」

ギンガ「ディケイドクロスではがんばりたいと思いますっ! ギンガ・ナカジマでしたっ!!
あの、それでは・・・また本編でっ!!」










(三人で手をカメラに手を振る。その様子をカメラが映しつつフェードアウト。ただ、一番嬉しそうな顔をしているのは誰かは、言うまでも無いと思う。
本日のED:KOTOKO『Iinside of a wilderness』)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ギンガさんとの時間を選んで・・・少し経った。





平和な日々、大切な日常。だけど、それは・・・突然に、あまりに突然に・・・。





壊れた。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「妙な夢を見る?」

「ヴィヴィオ、それはなのはさんやフェイトさん達には・・・」

「うん・・・。なのはママやフェイトママには言ってないの。その、すごく怖い夢で・・・」

≪それで、マスターとギンガさんに相談に来たと≫

「で、どんな夢なの?」

「全部が・・・壊れる夢。ただね、すごく気になることがあるの。その中に・・・電王やゼロノスが出てて、恭文がディスクで見せてくれた仮面ライダー・・・だよね。その人達が戦ってるの」

「・・・はぁっ!?」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「恭文君・・・ここ、どこ? ミッドじゃあ・・・ないよね」

「東京・・・かな。一応地球には見えるけど。いや、建物にも見覚えが色々と」

≪・・・マスター、アレにも・・・すごく見覚えがあるんですけど≫

「あれ? ・・・つか、ワームっ!?」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「世界は俺が救ってやる。・・・多分」

「多分ってなにっ!?」

「ごちゃごちゃ言うな、青チビ」

「誰がミジンコだっ! こらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「や、恭文君抑えてっ! そこまでは誰も言ってないからっ!!」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・紅、渡さん?」

『そうだよ。・・・あぁ、君は僕や他の仲間のこと、よく知ってるんだよね』

「まぁ、一応は。そういうわけなんで・・・サインくださいっ! ファンなんですっ!!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

「だから、サインをくださいっ! ペンと紙はすぐに用意を・・・あれ、なんでみんなずっこけるの? いやだなぁ、僕が悪いことしたみたいだからやめてよ」

「・・・なぁ、おビビちゃん。こいつは・・・こういう奴なのか?」

「え、えっと・・・かなり」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「クウガの世界・・・か。でも・・・あれ、おかしいな」

≪あの人、私達が知ってるクウガじゃありませんよね≫

「というかというか、恭文、もしかしてあの黒髪の女の人と居るの・・・フェイトママじゃっ!!」

「なんだ、あの金髪はお前らの知り合いか?」

≪どうなってるんですか、これ。どうしてフェイトさんがここに?≫










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・つまり、僕やギンガ、ヴィヴィオだけじゃなくて、フェイトやなのは達まで異変に巻き込まれて・・・飛ばされてると」

≪その可能性は高いでしょうね。もちろん、顔や名前は同じで中身はまったくの別人という可能性もありますけど。現に、クウガに変身している人物も私達の知る『五代雄介』ではありません≫

「えっと・・・私は仮面ライダーは詳しくないんだけど、そうなの?」

≪そうなんですよ。ただ・・・これで分かりましたね。あのもやしのカードがこれから回る9つの世界に居る仮面ライダーのカードなら・・・≫

「恭文君の手元に現れたカードは、もしかして・・・」

「フェイトママやなのはママ達のカードっ!?」

「いや、シルエットでなんとなくそうかなーって分かるじゃないのさ。だって・・・髪型とか特徴的だよ? ほら、このツインテールなんてまさになのはだし、この帽子かぶったのは間違いなくはやてだし」

「恭文、それ言うと色々台無しだよ」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「だから・・・俺はグロンギじゃないって言ってるだろ?」

「うるさいっ! てゆうか、その子どもから離れろっ!! ほら僕っ! こっちに来るんだっ!!」

「はぁ?」

「いや、それの近くに居ると危な・・・え、なんで君はいきなり刀なんて持ち出すのかな。ほら、それは危ないから離し」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰が幼稚園に通っていても不思議なくらいに子ども体型じゃこのボケナスがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ぐはっ!!」

「・・・なぁ、アンタ。アイツはあれか? 身長に関する事は過大に受け取る癖でもあんのか」

「・・・・・・かなり」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・突然始まる旅。世界崩壊の危機。そしてそれに関する謎。



とにもかくにも・・・とりあえず、もやしが相棒なのには色々不満がある。





「だれがもやしだっ! お前、マジでこの俺をそんなあだ名で呼び続けるつもりかっ!?」

「大丈夫っ! ニコ動とかではもう定着してるからっ!!」

「ニコ動ってなんだよっ!!」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



古鉄≪・・・なんですか、この中途半端な偽予告≫

恭文「気にしないで。一応最後だから作って見たかったんだって」

ギンガ「恭文君恭文君恭文君恭文君恭文君・・・」

恭文「え、えっと・・・ギンガさん? なんで僕の名前をそんなに連呼する?」

古鉄≪クロスの時にその呼び方で通すつもりなんでしょ。ほら、あなたも練習してくださいよ。連呼してくださいよ≫

恭文「え、えっと・・・ギンガ」

ギンガ(なぜか倒れる)

恭文「ギ、ギンガさんっ!?」

古鉄≪・・・そこまで嬉しいんですか≫










(おしまい)






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