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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
インタールードデイズ03 『駆け抜けるライナー・タイム』



※前回のあらすじ


キャロ「えー、今回は出番が無いっぽいキャロ・ル・ルシエです」

ナオミ「同じく、ナオミでーす♪」

キャロ「まず、良太郎さんとスバルさんがデートに出かけました。というより・・・観光なのにデートになりました」

ナオミ「良太郎ちゃんにも春が到来なんですかね。とにかく、そんな感じで出かけた二人を、フェイトさんとエリオちゃん、ヴィヴィオちゃんにリュウタロスちゃんにキンタロスちゃんにギンガさん。そして・・・」

キャロ「とっても綺麗に女装したなぎさん・・・シオンさんが加わって、尾行することになったんです。名目としては、良太郎さんの運の悪さでトラブルが起きた時に備えて。でも・・・でも・・・」

ナオミ「うぅ、シオンちゃんすっごく可愛かったです。私、負けてるかも」

キャロ「なぎさんおかしいよっ! なんであんなに女の子っ!? 普通に女の子の格好してるだけならまだ笑えるのに、思いっきり演技してそれがレベル高いから感心するしか出来ないしっ!!」

ナオミ「とにかく、とにかく・・・今回はそのデートの続きからだよね」

キャロ「はい。・・・ナオミさん、コーヒー淹れてくれますか? 思いっきり苦い何にも入ってないの。私、それでも飲まないともう辛くて辛くて」

ナオミ「了解でーす♪」

デカ長「ナオミ君、私にも・・・チャーハン頼みます」

キャロ・ナオミ「「デカ長、いつからそこに居たんですかっ!?」」

デカ長「私はどこにでも居ますよ? えぇ、色んなところに・・・ね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



え、えっと・・・恋をしたい? それがスバルちゃんの・・・夢?





待って待ってっ! こ、このシチュエーションでなんでいきなりそんな話にっ!?





よ、よし。落ち着いて僕っ! ちゃんと聞かないと何も分からないからねっ!? お願いだから無駄にドキドキとかしないでー!!










「えっと、あの・・・それは」

「ダメ・・・ですか?」



だ、ダメとかじゃなくて・・・あれ、なんでこうなるんだろ。よし、落ち着いて僕。とにかく落ち着こう、僕。



「え、えっと・・・スバルちゃん」

「はい」

「それは・・・どうして?」

「恭文です」



スバルちゃんは、僕の質問に即答した。そして出てきた名前は・・・恭文君?

あの、もしかして恭文君のことを好き・・・とかかな。



「あ、別に恭文のことが好き・・・とかそういう話じゃないです」



僕の表情から何を考えているのか分かったのか、スバルちゃんが両手を前に持ってきて、振って否定する。

あ、そうなんだ。違うんだ。



「もちろん、好き・・・ではありますよ? でも、それはとっても大切な・・・大切な友達としてですから」

「・・・そうなんだ。あ、でもそれなら、どうしてそこで恭文君の名前が?」

「私と恭文って、会ってまだ半年とか経ってないんです。それで、恭文って初めて会った時からずっとフェイトさんのことが好きだーって言ってて」

「うん」



まぁ、8年・・・だよね。言っててもおかしくないか。



「そんな恭文見てて、一つ気づいたんです。・・・人を好きになるって、すごく素敵なことなんだって」



スバルちゃんが、頬を染めて、どこか・・・こう、憧れてるような感じで言葉を続ける。



「誰かを想うと、あんなに一途になれて、強くなれて、一生懸命頑張れて・・・。今までは本当に恋愛とかよくわかんなくて、さっぱりだったんですけど、なんだか・・・いいなぁって」



な、なるほど。じゃあ本当に夢というか憧れというか、そんな感じなんだね。



「はい。あ、でも・・・」

「でも?」

「これ、みんなには内緒でお願いします。その・・・恥ずかしいから」

「恥ずかしがること無いと思うけどな。素敵な夢だと思うし」





僕がそう言うと、スバルちゃんの笑顔が明るくなった。嬉しそうに笑って、それを僕に向けてくれる。

な、なんだか・・・ドキドキする。というか、やっぱり可愛い。でも、普通に彼氏とか恋愛出来そうなんだけどなぁ。話してて、僕から見ても好感が持てる子ではあるんだし。



すっごく元気で、明るくて、いつも周りの空気を変えて・・・それに、すごく芯が強い。なかなかこんないい子、居ないと思うよ。





「でも、内緒にしておくのは了解」

「・・・ありがとうございます」

「あと、スバルちゃんが勝手に話したのも・・・内緒にしておくね。・・・もうこういうのはダメだよ。僕も話さないから、スバルちゃんも話さない。いいね?」

「あはは・・・すみません」










とにかく、アイスを食べてから、また観光・・・というか、デート再開。





その、スバルちゃんと手を繋いで、一緒に歩く。・・・なんだろう、ちょっとだけ恥ずかしい。





でも・・・楽しい。




















『とある魔導師と機動六課の日常』×『仮面ライダー電王』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間


インタールードデイズ03 『駆け抜けるライナー・タイム』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チーン。










「・・・なぁ、亀」










ポクポクポクポクポクポクポクポク・・・・・・。










「色々・・・あったよな」










モモタンが涙ぐむ。私は、それにハンカチを差し出す。










「悪い、姉ちゃん。・・・でも、ホント色々あったよな」










隣でサリが木魚を叩く。『ポクポク・・・』という音がここ・・・六課食堂に響く。










「喧嘩したり、喧嘩したり・・・やっぱり喧嘩したりよ」










そのモモタンの横で、更にジークが涙ぐむ。なお、ちょっと我慢しているように見えるのは、気のせいじゃない。










「でもよ、なんでだろうな・・・! お前と喧嘩出来なくなると思うと・・・マジで、こう・・・涙出てくんだよっ!!」










モモタンが話しかける。・・・白い布を顔にかけて、食堂のど真ん中で横たわるウラタロスに向かって。





で、私とか他のメンバーもそれにのっかる。










「なんで・・・こんなことになったんだろうな」

「お供その2・・・よく働いてくれた。ゆっくり休んでくれ」

「ほんとだね、せめて・・・そうしてて欲しいね。あぁでも、私はもっと話をしたかったよ」

≪ボーイにもう一回取り憑いてもらって、ナンパとかしてるの見たかったな≫

≪後でフェイト執務官は大変だろうがな≫










なんて勝手な事を言いながら、全員涙目。なお、何人か呆れた視線を向けてくるのは気のせいだ。










「まぁ、アレだ。亀・・・安心しろ。ほら、お前の好きな亀ゼリーやるからよ」










モモタンがウラタロスの傍らに亀ゼリーを置く。・・・これ、どんな味なんだろうね。潮の味かな、やっぱり。





とにかく、私は例のアレを持って・・・鳴らす。










「良太郎のことは俺達に任せてくれ。亀・・・あばよ」










チーン。










「うんうん、おかげでゆっくり休め・・・るわけないからっ!!」

「あ、亀が起きた」










そう、ウラタロスは私達の勝手な話に我慢ならなかったのか、飛び起きた。顔にかけた白い布がその勢いで跳ね飛ばされて、宙を舞う。





いやぁ、よかったよかった。これで目を覚まさなかったらどうしようかと思ってたんだよ。










「ヒロリスさん、よくないですからっ! というか・・・ちょっとなにこれっ!? 一体なんの虐めかなっ!!
普通にこれはPTAの奥様方とかに怒られちゃうからっ! というか、先輩はともかくジークやヒロリスさんにサリエルさんまでっ!!」

「あはは・・・悪い悪い。ウラタロス、全然起きないからさ。俺らが相談の上で王道を行こうと言う話になって」





ほら、コントとかであるじゃない? お亡くなり・・・って感じでやってたら実は生きてたーって。もちろん、悪趣味かと思った。そこは本当に心の底から思った。



でもね・・・ずーっと揺らそうが叩こうが水かけようがなにしようがうなされ続けて目を覚まさないんだよ? さすがに手段選ぶ気持ちも無くなったって。で、この絶対怒られるであろう手法に着手したってわけ。

なお、良太郎くんには内緒ということにしてある。バレたら絶対叱られるだろうから。





「だが、まさかこれで本当に起きるとは・・・ヒロリス殿、そしてそのお供その1、我が家臣のために知恵を貸してくださった事、感謝する」

「うん、それはいいよ。それはいいんだよ。でもよ・・・なんでヒロだけ名前呼びっ!? そして俺はヒロのお供じゃないからなっ!!」

「あぁ、問題ないよ。ほら、お供その1。ジークに失礼じゃないのさ、ちゃんと挨拶しな」

「てめぇも乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





どういうわけか、ジークの中では私とサリはこういう認識らしい。・・・間違ってはないよね。





「いや、それは分かりますけど・・・あぁもういいですよ。僕のためにしてくれたのはわかりましたから」

「まぁ・・・アレだ、亀。お前、亀ゼリー食え。な、そうすりゃ嫌な事忘れるからよ」



モモタロスがそう言いながら起き上がったウラタロスの肩に手を回し、亀ゼリーを差し出す。だけど、ウラタロスはそれを振り解いた。



「・・・アレ? もしかして皆なにか勘違いしてない? アレ・・・僕最初から分かってたから」

『・・・はぁ?』



えっと、あれかな? 日本語に翻訳すると・・・やっさんの女装を見抜いていたと。



「そうそう、僕は見抜いてましたよ? まさかこの僕が女の子と男の子の区別が付かないとかそんなわけが」

「お供その2、声が震えているぞ?」

「あと、鏡見ながらそう言うのはやめといた方がいいって。まるで自分に言い聞かせてるような感じがするから」

「震えてないからっ! ジークもサリエルさんも余計な事言わないっ!!」



いや、震えてるから。声だけじゃなくて指先とかさ。もっと言うと身体全体が震えてるよ。

あぁ、可哀想に。まだ現実を認められないんだね。でもね、アレは仕方ないの。アレは心の去勢手術だから。男としてのセンサーとかどうこうとかすっ飛ばすから。



「そんな強がんなよ。なぁ? お前もそういう時はあるってことでいいじゃねぇか」

「よくないからっ! お願いだから先輩と一緒にしないでもらえるかなっ!?」

「おい待て亀公。そりゃどういう意味だ?」

「先輩はバカだから気づかなかったかも知れないけど、一緒にされると困るってこと」



なお、私とサリはもう既に後退している。だって・・・ねぇ?



「なんだとてめぇっ! ついさっきまでウーウーうなされてたくせに、よくそんなこと言えるなっ!!」

「気のせいじゃないの? アレだよ、ちょっとお昼寝しただけで」

「気のせいなわけねぇだろうがっ! つーか、あんな『彼女が恭文で恭文が彼女で・・・あれ、僕釣られてる? そんなの嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』・・・なんて寝言呟きまくってたくせによっ!!
あーあー、情けねぇったらありゃあしねぇっ!!」

「・・・へぇ、先輩やる気?」

「あぁ、やる気だ」



そのまま睨み合う。



「まぁ、ちょうどいい機会ではあるよね。事件も解決したわけだし・・・決着、つける?」

「いいぜ、相手になってやらぁ」

「待て待て、お供その1とお供その2。昼餉の前だと言うのに、こんな醜い争いなど無粋なだ」



ジークがやれやれと言わんばかりに、二人の間に顔をはさんだ。



「「邪魔っ!!」」



でも、二人に弾き飛ばされた。・・・息合ってるよね、あの二人。見事なユニゾンだったし。



「な・・・なにをするかっ! 主に向かって無礼であるぞっ!?」

「うるせぇっ! この鳥野郎がっ!! あぁもうめんどくせぇっ! まとめてぶっ飛ばしてやるぜっ!!」

「へぇっ!? そりゃ面白いっ! 先輩のすっからかんな頭でやれるって言うなら・・・やってみなよっ!!」

「言われるまでもねぇっ! ・・・行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



そして、そのまま取っ組み合いが始まった。そのまま六課の食堂は鬼と亀のプロレスの特等席になった。



「うおりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

「はぁぁぁぁぁっ!!」



殴る、蹴る、掴む、投げる。まさしくテレビ通りの乱闘。それを見て・・・私は思った。



「楽しいねぇ・・・。生で見れるって楽しいよ」

「いや、それより止めなくていいのか? だって・・・物が」



あぁ、机とかテーブルとか吹き飛んでるね。あと・・・。



「これっ! お供その1とその2っ!! やめろっ! やめぬかっ!! 羽がっ! 私の美しい羽がもげるー!!」



ジークが間に挟まれて、右往左往して四方八方に白い羽が舞い散って・・・。あー、これやっぱり止めた方がいいのかな。



「そうしなかったら食堂崩壊するぞ?」

≪あの方達は力が強い分、無駄に被害が及びますからね≫

≪そう考えるとデンライナーって丈夫だよな。てかよ、姉御。止めなかったら今日のAランチのトンカツ定食、食べられなくなっちまうぞ?≫

「あ、それは困るね。んじゃ・・・」



私達は間に入ろうとした瞬間、風が吹いた。



「「やめなさいよこのバカっ!!」」



・・・それは一瞬だった。小さな女の子・・・ハナちゃんはモモタロスの懐に飛び込み、その右拳を腹に叩き込んだ。



「グハっ!!」



そして、もう一人。オレンジ色のツインテールの子・・・ティアナちゃんが、ウラタロスの頭に右足で回し蹴りをかました。



「あうっ!!」



そして、そのまま二人とも・・・倒れる。



「た、助かった・・・」



そして、間に挟まれもみくちゃにされたジークは、そのまま倒れた。どうやら、羽がもげたのは相当ダメージが大きいらしい。



「全く・・・このバカっ! どうすんのよこれっ!? アンタ達のせいで食堂めちゃくちゃじゃないのよっ!!」

「あぁもう、羽だらけだし机やイスもボロボロだし・・・。ヒロリスさん、サリエルさん」



ティアナちゃんの視線がこちらに向く。そして・・・それにより私とサリは固まる。だ、だって・・・ねぇ?

つや消しブルーのひぐらしアイズなんだもん。あはは・・・もしかして、止めなかったこと怒ってる?



「分かってくれてるみたいで嬉しいかな? かな?」

「ティアナちゃんっ! そのキャラは止めないっ!? 俺はめっちゃ怖いからさっ!!」

「私も同感っ! ・・・あぁ、悪かったからマジでその目はやめてー!!」





や、ヤバイ・・・! 今のティアナちゃんからはヤンデレな匂いしかしないよっ!! 絶対ヤバイよねっ!!



でも、それだけで止まらなかった。どうやら、私達がふざけた罪は相当に重たかったらしい。





「食堂、お昼までに元に戻して・・・くださいね?」










後ろからまた声。そちらを見ると・・・居た。魔王が。










「だから・・・私は魔王じゃないですよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いいえ、ぶっちぎりの魔王ですわ。魔王以外の何者でもありません」



・・・シオン、いきなりなに言い出すの?



「これは失礼しました。妙な電波を拾ってしまって」





とにかく、私はみんなと一緒に尾行を継続中。でも、楽しそう。

アレから二人は首都にあるミッドの歴史資料館に入った。良太郎さんは興味深そうにスバルの説明を聞きながら資料館を見て回っていた。

うーん、私も同じだったな。私の場合は地球の文化なんだけど、異文化に触れるって楽しいから。



そして、今は・・・近くの公園の芝生に二人で座って、お話。というより、近くのサンドイッチ屋さんでお昼を買ってお食事中。・・・あれ、これやっぱり観光じゃなくて普通にデート。





「フェイト嬢ちゃん、今更やで」

【そうだね、今更だよ。フェイトママ】

「でもでも、良太郎は楽しそうだから・・・いいんだよね」





ま、まぁ・・・そうなるのかな。良太郎さんが楽しめないのはやっぱりダメだと思うし。

ふと、ヤスフミとデートした時に言われた事を思い出した。・・・二人で楽しめないと意味が・・・無いか。

なら、きっと今は意味があるよね。観光にしても、デートにしても。スバルも良太郎さんも、すごく楽しそうだから。



でも、私はスバルとの付き合いもそろそろ1年になるけど、あんなに女の子しているスバルは見たことがない。いや、あるか。恭文と喧嘩したり話してる時は、割合あれに近いのかも。





「・・・あぁ、母さん。見ていますか? スバルは・・・スバルは大人に」



とりあえず、何かに話しかけているギンガは抑えつつ、私達は木の影に隠れて様子を伺う。

でも、楽しそうだな。



「あ、今度私が料理教えよう。こういう時にはやっぱり手作りのお弁当だと思うんだよね。それで・・・」



・・・ギンガ、止まらないね。そんなにスバルが男の子とデートしたり、それっぽい感じに見えるのが嬉しいのかな。



”嬉しいんじゃないの?”



そんな私の思考を読み取ったように念話が届く。これは・・・ヤスフミだ。



”ほら、お母さんも亡くなってるし、ギンガさんはスバルのお姉さんであると同時に、お母さん代わりだもの”



・・・失念してた。そっか、それが有ったんだ。それにギンガって見てるとスバルにすごく甘いから。



”それに、良太郎さんは少なくとも変な人や悪人ではないからさ。そういうのも拍車かけてるんじゃないかな”

”なるほど・・・”



やっぱり、色々心配しちゃうんだろうね。私もエリオとキャロにそういうのを置き換えたら、ちょっと今のギンガの気持ちが分かった。でも・・・うらやましい。

私も、デート・・・したいな。コミュニケーションと取るのと、審査をするのも含めて。今、私の隣で女の子になっている・・・男の子と。



”フェイト、どうかした?”

”あ、ううん。なんでもないよ”



とにかく、私達が様子を伺っていると・・・変化が起きた。二人のその後ろから・・・四人の男。



「ねね、かーのじょ。俺達と遊ばない?」



少し離れている様子の私達にまで聞こえる声で、男達がスバルと良太郎さんに絡んできた。



”あの、あれって・・・”

”性質の悪いナンパ・・・と言ったところかな”

”あの、つまりそれって・・・”

”もちろん、トラブル”



や、やっぱりこうなるのっ!? とにかく助けに・・・あぁ、ダメだっ! 私達が出たら尾行がばれちゃうっ!!



「・・・仕方ありませんね」

「シオン?」

「私が行きましょう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ダメです。私、この人とデート中ですから」

「いーじゃん。こんなさえない男なんてほっといてさ」



後ろから、僕が普段よく絡まれるタイプの男達が四人ほどやってきた。そして・・・スバルちゃんに絡んでくる。



「ねー、なんで逃げんの?」

「ただ、俺達と遊ぼうって言ってるだけじゃん」



そうして、そのまま男が手を伸ばす。それにスバルちゃんが後ろに下がって、回避する。



「あの、やめてください。この子嫌がってますから」

「嫌がってないって。アレだよアレ、ツンデレってやつ?」

「違いますっ! 私は本当に嫌なんですっ!! あと、ツンデレはもっと可愛いものですよっ!?」










・・・ティアナちゃんだ。間違いなくティアナちゃんのこと言ってるっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「誰がツンデレですかっ! お願いだからスバルやアイツの影響を受けないでっ!!」

「・・・ハナクソ女2号、お前いきなりどうした?」

「どうもしないわよっ! ほら、掃除続けてっ!! あっちにも羽あるじゃないのよっ!!」

「あぁ、はいはい・・・」

「ティアナちゃん、人使い・・・じゃなくて、イマジン使い荒いなぁ」

「な、なぜこの私まで・・・」

「あ、あの・・・なのはちゃん、そろそろ許してくれない?」

「いや、俺は一応止めようと」

「・・・何か疑問でも?」

「「「いいえっ! 疑問などございません冥王様っ!!」」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・なぁなぁ、俺達と一緒に遊ぼうぜ」



そう言って、男がいきなりスバルちゃんの胸に手を伸ばし・・・あ、手を撥ね退けられた。結構ビシって感じで。



「痛っ! てめぇ・・・なにしやがるっ!!」



そのまま残りの男三人がスバルちゃんに詰め寄ってきた。手を撥ね退けられた男もそこに加わる。だから僕は・・・その前に立ちはだかる。



「やめなよ。・・・この子は本当に嫌がってる。こんなことして、楽しいの?」

「良太郎さんっ!!」

「ほら、お前どけっ!! 邪魔してるとぶっ飛ばすぞっ!? あぁっ!!」

「どかないよ。・・・悪いけど、この子に手出しはさせない」




そのまま、男達がにじり寄ってくる。・・・どかない。絶対にどかない。



「良太郎さん、どいてくださいっ! こんな奴ら」

「ダメっ!!」



多分、スバルちゃんなら簡単に倒せる。イマジン相手だって出来るんだもの。多分、すっごく楽に。でも・・・だめ。



「スバルちゃんの力は・・・ただ誰かを倒したり、壊すために使うんじゃない」

「え?」

「消えかけている命を救うため。スバルちゃんの力と強さは、そのために使うんだから。・・・それ以外の事で、それもこんなくだらない喧嘩のために使っちゃ・・・ダメだよ」

「良太郎さん・・・」



本当に素敵な夢だと思った。きっと・・・それで戦ったりするの、辛いんじゃないかとも思った。

魔導師としての仕事どうこうは、僕はなんの力になれないかも知れない。でも・・・これくらいは、なんとかしないと。



「てめぇ、かっこつけてんじゃねぇよっ!!」



男の一人の拳が飛んできた。避け・・・られない。そう思った。

でも、その拳が止まった。というか・・・目の前にまた新しい人が。



「・・・無粋ですわね」



僕より身長の高い男の拳を、左手で受け止めているのは・・・女の子。緑色の腰まで伸びた髪が印象的な子。あと・・・声。



「無粋過ぎて視界に入れる事すら躊躇われますわ。いくらなんでもありえませんもの。それに・・・ご存知かしら」



柔らかくて、心に染み渡るような声。それがとても印象に残った。



「ナンパする際、もう他の殿方に釣られている女性に手を出すのは、男として重大なルール違反ですわよ? それだけではなく、よってたかって一人の女の子を・・・。あなた方、下種もいいとこですわね。あぁ、そうそうそこのあなた」



そう声をかけてきた。僕の方を見ずに、男の拳をしっかりと掴んだまま。拳は・・・微動だとしない。



「は、はい・・・」

「パーフェクトですわ」

「え?」

「その子の力は、こんな下種を潰すためにあるのではありません。あなたの言うように・・・消えかけている命を救うためにあるのですわ。その想いと願い、忘れないであげてくださいね」





え、あの・・・というか、あなた誰ですかっ!?





「通りすがりの美少女ですわ。・・・覚えておきなさい」

「「な、なんですかそれっ!?」」





僕とスバルちゃんの声がハモったのは気のせいじゃない。だって、いきなりその名乗りなんだもの。





「さて・・・あなた」





僕達の叫びなどものともせず、その女の子は更に言葉を続ける。





「ちょっと、くすぐったいですわよ」

「はぁ?」










瞬間、男の腹に右拳がめり込んだ。うん、めり込んだの。何かの漫画であるみたいに。





男の身体がくの字に曲がる。そして、そこを狙って・・・その女の子は右拳を引いて、掌底にした。それを男の顎に打ち込んだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・私とギンガとキンタロスさんは、影からその様子を見ていた。





そして・・・呆然としていた。だって、いきなり身長180はあろうという人が、顎を打ち抜かれて宙を舞ったんだもの。





そして、そのまま仰向けに地面に落下。酷く重低音な落下音が、辺りに響き、砂埃が舞う。










「・・・え、えっと」

「なぁ、フェイト嬢ちゃん。あれは・・・えぇんか?」

「も、もちろん・・・だめですよっ!!」










いくらなんでもあの状況であれは過剰攻撃もいい所だよっ! シオ・・・というか、ヤスフミなに考えてるのっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



全部一瞬だった。なにかが砕けるというか、つぶれるような音がして、口から赤い液体とそれに塗れた白いつぶてが何個か吐き出されて・・・そのまま、上空に吹き飛んだ。そして数瞬後、仰向けに地面に叩き付けられた。





場が静まり返る。いきなりと言えばいきなりな展開に、完全に場が静まり返る。男達も、僕もスバルちゃんも、仰向けのままピクピクと痙攣してるように見える男を見て、何も話せずにいた。





だけど・・・一人だけ違った。その子だけは、平然と言葉を続けた。










「・・・うん、身体の調子は大丈夫ですわね」





自分の右手を握って開いて握って開いて・・・を繰り返して、まるで調子を見ているようなそぶりを見せる。





「ふふふ・・・」





それから、その子が笑った。笑いを含んだ言葉を放ち続ける。





「よかったです、あなた方が下種な上に雑魚で。この程度なら、遠慮なく、そして心置きなく・・・」





僕は今後ろにいるから、顔はよく見えないけど、その声に僕は寒気が走った。



まるで・・・嘲るように、目の前の男達をバカにするように笑ったから。





「叩き潰せますわね」





そして、寒気が強くなる。身体が・・・気をしっかり持ってないと震えそうになる。スバルちゃんも同じくらしい。僕の腕を掴んで、くっついてきてる。

で、でも・・・それよりなにより気になった事がある。これだけは絶対に外せないという部分がある。



そう、それは・・・。





『くすぐったいってレベル超えてるっ!?』





男達と僕とスバルちゃんの口から出てきた言葉が同じだったのは、きっと許されると思う。だって、ありえないもの。普通にありえないもの。





「大丈夫ですわよ。サイヤ人からすれば十分くすぐったいのレベルです」

「んなわけあるかっ! 見ろよこれっ!! 明らかにしばらく再起不能じゃねっ!?」



そうして僕達はもう一度見る。崩れ落ちたまま、全く動かない男を。というか・・・顎が砕かれて・・・。

こ、これっていわゆる過剰防衛とかそういうのになるんじゃっ!?



「つーか、あんな人外レベルの『くすぐったい』を俺達一般ピーポーに持ってくるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「全く、器量の狭い下種どもですわね。そんなことをいちいち気にするなんて・・・」

『気にするに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



な、なんだろう。この子・・・誰かに似てるような。あれ? なんで僕、恭文君と初めて会った時のこと思い出してるんだろ。



「まぁ、そんなことはいいです。・・・あなた方、私がしばいた上で近くの局員に引き渡してあげますわ。
局員とその関係者に対する暴行未遂と痴漢未遂と彼女への婦女暴行未遂の現行犯としてね。おめでとう、これでリッパな犯罪者の仲間入りですわ」

「きょ、局員っ!? こいつら、時空管理局の関係者だったのかっ!!」

「そうですわよ。なお、局員への暴行罪は重罪ですから・・・しばらくは臭い飯を食っていただくことになりますわね」



そ、そんな話になるんだ。・・・あれ? どうしてスバルちゃんが局員って知ってるんだろ。



「あの、私が局員だってどうして・・・」

「実は私、フェイト執務官に以前お仕事でお世話になったことがありますの。その時に色々お聞きしまして」

「フェイトさんにっ!?」

「その話は後でさせていただきますわ。とにかく・・・下がっててください」





僕はスバルちゃんの手を引いて、言われた通りに後ろに下がる。なんというか・・・そうした方がいい感じがしたから。



そして、次の瞬間・・・あれ、この音楽聞き覚えが。





「・・・もう、私だけでいいと言いましたのに」





そうして、数人の男を連れ立ってその場に現れたのは・・・一人の女の子。ブラウンの髪をなびかせ、ヒップホップな音楽に乗せて踊る。



そして、そのまま・・・男達を指差す。





「お前達、KYだからぶっとばしていいよね?」

【答えは聞いてないよっ!!】





リュ、リュウタロスにヴィヴィオちゃんっ!? あの、どうしてこんなところにっ!!



というか、その格好・・・リュウタロスがヴィヴィオちゃんに憑依してるっ! どうしてそんな状況になってるのっ!?





【あ、その説明もあとでします。えっと・・・リュウタ、私のことは大丈夫だから、思いっきりやっちゃってっ!!】

「ねね、ヴィヴィオ。本当にいいの?」

【いいのっ! あの人達許せないものっ!! それに・・リュウタなら任せられるからっ!!】

「わかったっ! それじゃあ思いっきり・・・暴れちゃうよっ!!
あ、もちろんヴィヴィオにもあの悪い人達にも、あんまり怪我させないように・・・だよね」

【うんっ! シオンもそれでお願いねっ!! さっきみたいなのは、もうだめっ!!】



そのヴィヴィオちゃんの言葉に、シオンと呼ばれた女の子は肩をすくめて頷いた。もちろん、分かったという意味で。



「く、くそ・・・こうなったら」



そうして、男達が全員構えて・・・。



『自首しますっ!!』





全員構えて、そこから一気に土下座した。





『・・・え?』

「いや、あの、なんというか・・・すみませんでしたっ! まさか局員の方とは露知らず・・・」

「俺達、普段からああ言う事してるわけじゃないんですっ! ただ、その・・・ちょっとこう色々あったというかなんと言うか」

「てーか・・・間違いなく俺達勝てねぇし。あんな徹底的にやられたら、仕事が・・・」

「というか、さすがに子ども相手に暴力は・・・なぁ? そんな真似したら、マジで命が・・・!!」



まるで怯えたように急に態度を急変させて謝る男達。そして、その視線の先に顎を砕かれ未だに地面にひれ伏す仲間が居るのは、気のせいじゃない。



「ねね、ヴィヴィオ。自首って・・・・なに?」

【悪い事したの反省して、自分から捕まるの。そうすると、情状酌量って言って、罪が軽くなるかも知れないんだ】

「へぇ、よく知ってるね。ヴィヴィオ、物知り〜」

【えっとね、フェイトママが教えてくれたのー】



・・・そう言えば、フェイトさんって執務官っていう警察官と弁護士とか検事とかが合体したような仕事してるって言ってたよね。その関係なんだ。



「・・・残念ながら、私の辞書に自首などという言葉は存在しません。あなた方は全員、私の手によってぶっ飛ばされた上で捕まるんです」

『ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』



いやいやっ! そこはダメじゃないですかっ!? 自首しようって言ってるんですから、させてあげましょうよっ!!



「シオン、容赦ないね・・・」

【もしかして、恭文以上に鬼?】

「そんなことはございませんわ。・・・なにより、リュウタもヴィヴィオも一つ勘違いをしていますわ」



そう言って、女の子が右手の人差し指をピンと立てる。



「直接的な被害者は、私の後ろに居る二人です。・・・お二人が許すと言わない以上、自首して無罪放免など認められるはずがありません。少なくとも決定権は私達にはありませんもの」

【あ、そっか】

「ヴィヴィオ、そうなの?」

【うん。この場合、良太郎さんとスバルさんは被害者だもの。二人が絶対許さないって言ったら、そのまま捕まって裁判にかけられると思う】



そうして、初めて目の前の女の子がこちらを見る。青い瞳が、真っ直ぐに僕とスバルちゃんを見ていた。



「それで、どういたします? どちらにしても一度連行する必要はありますけど、あなた方の被害届けの有無で厳重なお説教か、留置して法の裁きを受けるかのどちらになるかが決まりますけど」



その言葉に、僕とスバルちゃんは顔を見合わせて・・・同時に頷いた。



「じゃあ、あの・・・被害届けはなし・・・で」

「僕もそれで。あの、ただし・・・条件が一つ」



僕は、もう一度男達を見る。それから・・・言葉を続ける。



「誰かに大切なものを奪われたり、傷つけられたりするのって、凄く悲しくて、辛いことなんだ。だから、もう絶対に今日みたいな事はしないこと。同じ事でもそうだし、別の事でも。
それだけ約束してくれるなら・・・僕も、それでいいから」










僕の言葉に、全員素直に頷いてくれた。そして、絶対にもうこんなことはしないと約束してくれた。それから・・・少しして全員近くの局員に連行されていった。でも、それで罪に問われるという形ではなく、厳重注意で済ませてくれるらしい。

この辺りは、近くに来ていたフェイトさんが頑張ってくれた。もちろん、僕との約束を守るというのを前提とした上でなのは、言うまでも無いと思う。

身元もしっかりと控えた上で、今後は行動に注意していくそうだから、大丈夫・・・とは言ってたけどね。





でも・・・どうしてシオンって子とリュウタロスにヴィヴィオちゃんがここに?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、僕達は近くのオープンテラスの喫茶店でお茶を飲みつつ、事情を聞く事になった。





まずは・・・自己紹介から始まった。










「それでは、改めまして。私、聖王教会でシスター兼教会騎士を勤めているシオン・ソノバラと申します」



・・・聖王教会? えっと、それって確か・・・さっきの歴史資料館であったよね。聖王っていう昔居た王様を信仰する宗教組織だって。

あと、教会騎士は・・・その組織に所属している魔導師の能力を持った人達の集団。



「正解です。もちろん、現行の教会騎士は別にそれで戦争をしようとかそういうことではありません。管理局と協力体制を結んで、有事の際にはその手助けをしていくのを目的としております」

【シオンは、その中でも腕利きの教会騎士なんです。さっきも見ただろうけど、すっごく強いの】



あぁ、アレね。でも、過剰防衛だってフェイトさんに怒られていたような。



「正義というのは、常に理解されないものなのです。なんというか・・・悲しいですわね」

「それも違いませんっ!?」

「・・・シオン、あれは過剰防衛だよ。シオンの実力なら、もうちょっと加減出来たよね?」

「いや、こう・・・ものの弾みで。そういうことって、よく有る事ではありませんか」



一体どんな弾みっ!? そしてそれはよく無い事と思うなっ!!



「とにかく、あれは少しやり過ぎ。もうちょっと考えていかないとダメだよ」

「・・・もうしわけありません、フェイト」



な、なんだか話は纏まったようなので、僕も自己紹介・・・しようっと。



「・・・えっと、とにかく初めまして。野上良太郎です」

「スバル・ナカジマです。あの、それで・・・」



スバルちゃんの言葉を引き継ぐように、シオンさんが話を続ける。



「まず、私とヴィヴィオがここに居る理由ですが・・・実は、フェイトと高町一尉から、今日一日ヴィヴィオの遊び相手になってくれないか頼まれたんです」

「遊び相手?」



え、でも・・・。



「あと・・・今、ヴィヴィオの中に居るリュウタも同様ですわね。実は、リュウタのミッドの観光も兼ねております。あ、野上さんや他のイマジンの方々・・・引いては電王のことは詳しくお聞きしましたから、問題はありません。もちろん、他言するつもりもありませんわ」

「・・・リュウタロス、そうなの?」

「そうだよ。あのね、シオンはお休みをもらったから、フェイトお姉ちゃんに会いに来たんだって。そうしたら・・・」

【ちょうど、リュウタやモモタロス達と鉢合わせしちゃったんです。それで、ヴィヴィオやみんなが一緒に説明をして・・・】

「ちょこっと大変だったんだけどね。でも、なんとか分かってもらえたんだ」



パフェをおいしそうに食べながら、シオンさんとヴィヴィオちゃんがそう口にする。そして、アイスコーヒーを飲みつつフェイトさんが補足も加えてくれた。

そ、そうだったんだ・・・。あ、そう言えば確かに普通に食堂うろついてるしなぁ。もしかして、結構問題だったのかも。



「あの、でもどうしてフェイトさんに?」

「先ほども少しお話しましたが、私は以前少しだけフェイトとお仕事をご一緒したことがあるんです。その時に色々とお世話になったので」

「それで、こう・・・挨拶というか顔見せというか、そんな感じで?」

「そうなんです。野上さんはご存知ないと思いますが、フェイトは次元航行部隊の執務官という、各世界と飛び回るお仕事をなさっております。ミッド地上に常駐していらっしゃる今を逃すと、お会いできる機会は当分先になるかと思いましたので」



なるほど・・・。ん? ということはもしかして・・・僕達の所に居たのも。



【あはは・・・ヴィヴィオ達もリュウタの観光っていう目的があったから、なんかコースかぶっちゃってたみたい】

「それで、僕は今ヴィヴィオの身体借りてるでしょ? 疲れさせちゃいけないと思って、こっち来て、町をブラブラして、それであそこの公園でちょっとお休みしようとしたんだ。
そうしたら良太郎とスバルちゃんがさっきの人達に絡まれてて・・・」

「私が飛び出した・・・というわけです」

「・・・納得しました」



隣に居て、アイスティーを飲むスバルちゃんを見る。スバルちゃんも・・・同じくという感じらしい。



「あ、でもフェイトさんはどうしてここに? それも私服で」



そう、フェイトさんは私服でここに居た。黒い上着に白とピンクが混じったワンピースを見につけていて、陸士服・・・だっけ? 普段の制服とはまた違う印象。

ヴィヴィオちゃんやシオンさんがここに居る理由はわかったけど、フェイトさんが近くに居た理由が、今ひとつ不明だったりする。



「えっと、はやてから休みをもらったの。色々大変ではあったし、せっかく知人が尋ねてきてくれたんだから、一緒に遊んできなさい・・・って。それで、追いかけてきたんだ」

「なるほど・・・」

「そうしたらあれだもの。シオン、本当に暴れ過ぎ。また怒られちゃうよ?」

「まぁ・・・善処していきますわ」










・・・うーん、なんというか、シオンさんってフェイトさんには素直なんだね。いや、今までのほんの少しの会話を聞いた印象なんだけど。





でも、これだけ見るとさっきまでの印象とは全く違うし。あれは・・・怖かったなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・怖かったなぁ。私、ずっと心臓がドキドキしっぱなしだったよ。





現在、時刻は夕方。喫茶店から出てそのままスバルと良太郎さんと別れた私・・・フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、ようやく緊張感から開放されて、尾行を続けながらもヘタリこんでいます。










「・・・お疲れ様でした、フェイトさん」

「俺も遠目で見取ったけど・・・大変そうやったな」

「うん、大変でした。というか・・・ヤス・・・じゃなかった、シオンもヴィヴィオもリュウタロスさんも、どうして普通にアレで会話できるの?」



だって、あの話の大半嘘だったのに。私達、嘘つきまくりだったのに。もしも本当の事があるとすれば・・・私とシオン・・・に女装していたヤスフミが一緒に仕事をしていたという点だけ。



「・・・実を言うと、ずっと心の中で良太郎とスバルちゃんに謝ってたの」

【ヴィヴィオもだよ。うぅ、騙してごめんなさいーって】



そう言いつつも尾行してるんだけどね。いや、私も同じだからなんにも言えないんだけど。

でも、申し訳なさそうに言ってくれたリュウタロスさんとヴィヴィオに安心したり。うん、やっぱり・・・騙してるもんね。私達は二人を。よし、あとではやてには絶対お説教しよう。これはいくらなんでも無いもの。



「問題ありませんわ。女は嘘と言うヴェールを被って、美しくなるのですから」



その言葉に、全員がコケた。発言した人間は言うまでもない。本日、人の顎を砕いたあの子。



「お願いだからシオンは少しは反省してっ! そして罪悪感って大事だよっ!? あと、そんなヴェールを被っても美しくなんてなれないからっ!!」

「分かり合えないって、悲しいですわね」

「どうして今の会話からそういう発言がさも当然のように出てくるのか、私にちゃんと説明してくれるかな・・・!?」



そうして、私はシオンのほっぺをむにゅーっと引っ張る。痛そうな顔してるけど、気にしない。



「フェイトさん、落ち着いて落ち着いて・・・。ほら、良太郎さんとスバルを見失っちゃいますから」

「あ、うん」



あぁもう、本当にこの子は・・・。確かに場は丸く収まったけど、いきなりあんな一撃必殺をかますなんて思わなかったよ。私もギンガも、見てて顔青くしたんだから。



「ねね、フェイトお姉ちゃん、ギンガお姉ちゃん。良太郎達どこに向かってるの?」

「えっと・・・あ、この方向だとアレかも」



ギンガが思い出したように、端末を開いて空間モニターを出す。そこに出るのは・・・これ、アミューズメント施設?



「はい。それで・・・ほら、観覧車があるんですよ。有名な観光スポットの一つ」



そう言えば・・・シャーリーが前にそんな話をしてたような。

あぁ、そうだ。思い出した。エリオとキャロと行ってみたらどうだーって教えてくれたんだ。



「観覧車・・・。なるほど、観覧車に乗って」



私の両手からいつの間にか脱出したシオンが納得顔で話し出した。そして・・・。



「一番上に差し掛かったところで、夜景を見ながらキス・・・ですわね。最初は触れ合うだけの、見ているだけで微笑ましくなるような口付け。
だけど、二回目から啄ばむ様に・・・深く、強く唇を重ねていくんです。それから二人はまるで求め合うように」



瞬間、私のビンタが後頭部に向かって飛んだのは、気のせいじゃない。



「あなた、いきなりなにをしますのっ!?」

「それはこっちのセリフだよっ! ど、ど・・・どうしていきなりそんな話になるのっ!? おかしいよね、それっ!!」

「ですが、観覧車というのはデートの要ですわよ? 最低でも5分や10分以上は密室の中で二人っきり。それで景色は物が物だから当然いい。その上もうすぐ日は落ちて夜。ミッドの夜景の綺麗さは言わずもがな。これだけ条件が揃って燃え上がらない男女など居ませ」



そこまで行って、シオンが黙った。というか、固まった。



「・・・・・・フェイト、一緒に乗る?」

『はぁっ!?』

「いや、むしろ乗ろう。乗らないといけないって。乗るのが僕達のジャスティスでありフリーダムでありデスティニーでレジェンド」

「シオン落ち着いてっ! それなぎ君っ!! なぎ君に戻っちゃってるからねっ!?」

「なんでお前はそこでいきなり欲望むき出しにするんやっ! ちったぁ落ち着けっ!!」



ギンガとキンタロスさんのツッコミがどこか遠く聞こえる。だ、だって・・・その・・・そうすると、あの・・・えっと・・・だから・・・あの・・・。



「・・・フェイト嬢ちゃん、顔真っ赤やで?」

「ねね、ヴィヴィオ。観覧車って楽しそうだよね。というか・・・あ、僕乗ったことないかも」

【そう言えば・・・ヴィヴィオもだ。あー、乗ってみたいかもー】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ということで・・・スバルちゃんと観覧車に乗ることになった。あ、あれ・・・? なんか普通にデートなんじゃ。





とにかく、少しずつ・・・少しずつ浮上していく。もう日は僕達がここに来るまでに完全に落ちていて、外は真っ暗。




だから、夜景が見えてくると、二人でため息を同時に吐いた。だって・・・すごく綺麗だったから。










「ここ、結構有名なスポットなんです。ここからだと、ちょうどミッドの夜景が一望出来るからって」





なるほど・・・。なんとなく分かるよ。夜の闇の中にイルミネーションが煌いて・・・とっても綺麗。





「私、一度乗ってみたかったんですよー♪ あー、ほらほら、あそこ見てくださいっ!!」





・・・スバルちゃんの指差す方を見ていく。えっと、あれが中央本部で・・・あっちが首都で僕達が今日歩いたところかな。



あと、あっちが・・・港湾部の方で、六課のある方。





「そうです。まぁ、もうちょっと上がんないとよく見えないでしょうけど」

「そうだね。・・・でも、スバルちゃん」

「はい?」

「ごめんね、怖い思いとかさせちゃって」



僕がそう言うと、スバルちゃんが首を横に振る。僕が昼間の事を言ってたのがわかったらしい。



「良太郎さん、どうして謝るんですか? 良太郎さん、全然悪くないじゃないですか。・・・あ、もしかして自分の運が悪いのに巻き込んだーとか思ってますか?」

「実は、少し・・・」



そう言うと、真向かいに座っていたスバルちゃんがこっちに近づいてきて・・・痛っ!!

デ、デコピンしてきた・・・。



「そんなことないです。良太郎さん、守ってくれたじゃないですか」

「そんなことないよ」



実際、シオンさんやフェイトさんが来てくれなかったら、多分・・・。



「守って、くれましたよ」



とても小さく呟いた声。でも、その言葉が僕にしっかりと届いた。耳にじゃない。僕の心に。

見ると・・・スバルちゃんが頬を染めて、とても嬉しそうな顔をしていた。



「私の夢を、力の意味を、守って・・・くれました。私、あの時本当に嬉しかった。あの時の良太郎さんの言葉が、すごく嬉しかったんです。だから、そんなこと・・・言わないでください」

「・・・スバルちゃん、あの・・・ありがと」

「はい。あの、良太郎さん」

「うん」

「私、あの・・・今日の事、きっと忘れません。だって、私は・・・初めてでしたし」





・・・・・・え?





「男の子と、こんな風にデートして、一日ずっと一緒に居たの・・・初めて、でしたから」

「そ、そう・・・なんだ。あの、僕で・・・よかった?」

「はい。今日一日、良太郎さんと一緒に居て、すごく楽しかったですから」

「そっか。なら・・・よかった」





あ、そうだ。僕も・・・言わないといけないよね。





「あの・・・ね、スバルちゃん。僕もだよ」

「あ、あの・・・つまりその・・・」

「僕も、今日一日スバルちゃんと一緒に居られて、すごく楽しかった。ありがと」

「・・・はいっ!!」










そう言って、またスバルちゃんが笑う。嬉しさと喜びを一杯に詰め込んだ笑顔を、僕に向けてくる。





それを見て、僕もなんだか嬉しく・・・あれ?





今、なんか・・・ゴトンってしたような。










「・・・あれ、観覧車・・・止まった?」

「ま、まさかそんな。この状況で?」



現在、僕達の乗っている観覧車はちょうど一番上。あぁ、夜景がすっごく綺麗に見える・・・って、そういうことじゃないからっ!!

あ、あの・・・もしかしてこの状況って・・・!!



「良太郎さん、私達もしかして・・・」

「閉じ込められちゃったっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・どうしよう。





あぁ、どうしようこれっ! というか、ありえないからっ!! て、て・・・転送魔法準備っ!!










「フェイト落ち着いてっ! あぁ、なぜこれっ!? どうしていきなりこれなのっ!!」



観覧車の中、私とシオン・・・あぁ、違う。あまりの事態にヤスフミに戻ってる。とにかく、二人はパニックの真っ最中だった。

なお、観覧車に便乗して様子を伺うのが決定して、私とヤスフミだけがここに居るのを了承して欲しい。



「とにかく、落ち着こうよ。というか・・・一端変装解くっ!!」



すると、ヤスフミの身体が光に包まれて・・・あ、本当に元に戻った。



「でも、その服は?」



ジーンズの上下に黒のインナー。いつもの私服・・・あれ、違う。若干だけど魔力反応が・・・。



「簡易型のバリアジャケットだよ、私服バージョンのね。・・・とにかく、今アナウンスでも流れたでしょ? 魔法使う必要ないよ。僕達もしっかり腰を落ち着ける。ただし・・・」

「・・・そうだね。もし続けてトラブルが起きて、乗客が危険に晒されるなら、私達が動いて助けないと」

「そういうこと、一応下に居るギンガさんにも連絡しとくね。まぁ、心配ないと思うけどさ」

「うん、お願い」



それで、なんとか心臓と心が落ち着きを取り戻す。うん、大丈夫だ私。その・・・ヤスフミと二人っきりになったから、あの、色々と・・・アレだっただけで。

あ、そうか。今私達・・・二人っきりなんだっ! だ、ダメっ!! お願いだから落ち着いてよ私の心っ! 一体どうしちゃったのっ!?



「・・・フェイト」

「な、なにかな」

「変な事、絶対しないから」



・・・え?



「あの、さっきの・・・あれは、その・・・アレなんだよ。こう、つい色々考えたというか、フェイトと仲良くなりたいというか・・・」



ヤスフミが顔を赤くして、私を真っ直ぐに見てそう言ってきた。さっきのあれって・・・アレだよね。その、観覧車がいいシチュエーションって話。



「でも、あの・・・フェイトが不安になるようなこと、絶対しないから。だから、そんなに怯えた声・・・出さないで欲しい」



・・・あ、私ダメだ。ヤスフミのこと・・・不安にさせてた。



「・・・あの、ごめん」

「ううん。僕も、悪かったんだし」

「ね、ヤスフミ」

「なに?」

「隣・・・行ってもいいかな?」



というか・・・行く。私はそのまま、ヤスフミの隣に座る。



「あ、あの・・・」

「あの・・・ね、ヤスフミ」

「うん」



その・・・いい機会だし、少し話しちゃおうかな。

やっぱり、あの・・・色々とあるから。



「別に・・・嫌とか、怖いとか、思ってないから」

「・・・ホントに?」

「うん。むしろ、その・・・やっぱり我慢とかさせちゃってるのかなと申し訳なく思ってる。あの、気持ち的なことだけじゃなくて・・・色々」



私がそう言うと、ヤスフミの顔が赤くなる。私の言いたい事が、分かったみたい。



「あの、大丈夫だから。ほんとに・・・大丈夫だから」



ヤスフミ、優しい。いつもそう言ってくれる。大丈夫だからって言って、受け入れてくれる。でも・・・なんだ。でも、考えちゃう。

私・・・どうすればいいんだろう。このまま審査続けて、答え・・・出せるのかな。出せるまでに、ヤスフミに一杯我慢させて・・・それでいいのかな。・・・うぅ、やっぱり私酷い女の子だ。気づいても、気づかなくても・・・ヤスフミに負担かけてる。



≪・・・だったら、付き合えばいいじゃないですか≫



突然届いた念話は・・・アルトアイゼン。でも、いきなり言ってきた事がおかしい。

だ、だって・・・付き合えばいいって、それはその・・・!!



≪というより、今の段階でマスターを独り占めしようとするのは、性質が悪いですよ≫



そう・・・かな。



≪そうです。告白してないとかならともかく、互いに想いは通じ合ってる。気持ちは理解しあって、これから一緒に進んでいこうとしている気概もある。なのに付き合わない。・・・少しダメだと思いますよ?
これでもしマスターが他の女の子に向いたりしたら、嫌・・・なんでしょ?≫



・・・うん、嫌だよ。なんでだろう。前はギンガやスバルやティアナと仲良くなるなら、いいことだって思ってた。でも・・・あの、好きって言ってもらえて、すごく嬉しくて、ヤスフミと一緒に変わっていって、強くなるって決めて・・・それからかな。

隣にヤスフミが居ないのが、嫌になった。一緒に居る時間が前よりももっと楽しくなって、幸せになって、もっと分かりあいたい、知っていきたいって思うようになって・・・それだけじゃなくて、私、他の女の子とヤスフミが仲良くなるの、応援出来なくなった。



≪でも、現状あなたとマスターは付き合っているわけでもなんでもない。まぁ、この人は・・・アナタが好きで、振り向いて、見てくれることが嬉しいから、よっぽどじゃない限りは言いませんよ。
でも、私は言います。その状況でこの人を今朝とかみたいに嫉妬して束縛するのは・・・明らかにアウトでしょ。この人は、あなたの所有物でもなんでもないんですから≫



そう・・・だよね。ヤスフミ、優しいから・・・私、つい甘えちゃいそうになる。ううん、甘えてる。私、本当ならもっと早く答えを出さなくちゃいけなかった。気づいてから一ヶ月もあって、それで考えてもだめで、だけど・・・惹かれる気持ちも確かにあって、だから断ることも出来なくて。

こんなの、ダメなんだよね。私、このままじゃ変わっていけない。強くて、折れない刃になんて、絶対になれない。



≪なら、どうすればいいかは・・・分かりますよね≫



うん、分かるよ。もう私は自分の気持ちに気づいてる。なりかけでも・・・気持ちは、同じはずだから。

だから、その・・・私も一応ではあるかも知れないけど、答えを出す。というより、付き合う。



≪それで正解です。まぁ、ダメな時はダメなんですし、余り力まずにゆっくり行けばいいでしょ。あなたの今の気持ちを話した上で、しっかりと≫



うん、そうする。・・・あ、でもね。



≪まだなにかあるんですか≫



もう少しだけ・・・時間を置いて、落ち着いて考えてみる。私、どうにもはしゃいでいるというか、地に足が着いてない感じだから。

それも・・・ダメかな。



≪まぁ、束縛は程ほどにしておいてくださいよ? 現状、付き合っていないのだから、そういうので束縛出来ないというのは忘れないように≫



うん、そうする。それで、時間もかけない。多分、すぐ・・・答えが出ると思う。

あの、アルトアイゼン。



≪はい?≫



ありがと、おかげで・・・こんがらがってたの、纏まったよ。



≪それならば、よかったです≫





そうして、夜景を見る。そのまま・・・手を、繋ぐ。





「・・・フェイト?」

「あの、その・・・こうしてたい。ダメ、かな?」

「ダメ・・・じゃない。でも、怖くない?」

「怖くないよ。だから、繋いでて欲しい」

「・・・うん」





そのまま、しばらくの間無言で・・・手をずっと繋いでた。触れているのは一箇所で、だけど、それがすごく暖かくて、幸せで、心が満たされてる。

そして、私はまた・・・気づいた。あぁ、これなんだと。これが、好きな人と触れ合えて、幸せを感じるということなんだと。

一応でも、結論を出す・・・か。考えていこう。もうこれ以上私のわがままでヤスフミのこと、振り回せない。だから、もっと近くに居て、それで・・・その・・・



・・・あ、観覧車動き出した。特に何かあった様子も無いし・・・大丈夫だね。





「そうだね。・・・あのさ、フェイト」

「うん」

「わがまま・・・一つ言っていい?」



・・・うん、いいよ。言って欲しい。



「デート、したい」

「・・・そうだね、今度はその、本当に二人っきりでしようよ。それで、もっと・・・ヤスフミと仲良くなりたい」

「・・・うん」










観覧車・・・もっと止まっててよかったのに。





そうしたら、そうすれば・・・その間だけは、私とヤスフミだけの世界だったのにな。





ちょっとだけ、残念。










≪そういうことを思うのであれば、今すぐ押し倒せばいいじゃないですか≫










だ、だから・・・思考は読まないでー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そうして、良太郎さんとスバルのデートは無事に終わった。なお、二人がなんだか観覧車を降りたときに顔を真っ赤にしていたらしいけど・・・きっと、色々話したんだと思う。私は、そう思った。





そして、その後無事に六課隊舎に帰り着いて、私達の尾行も終了。ヤスフミもシオンの女装を解いて、元のヤスフミに戻った。





な、なんだけど・・・。










「・・・ヤスフミ、あの・・・大丈夫?」

「大丈夫じゃ・・・ない」



戻ってきて、医務室のベッドに入るなり・・・いきなり落ち込みだした。それはもうすごい勢いで。



「・・・なぁ、青坊主。マジでお前大丈夫か?」

「すみません、死にそうです。あぁもう、絶対に女装なんてするかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・どうやら、シスター・シオンを次に見るのは、本当に遠い先のことになりそうだなと、私・・・フェイト・T・ハラオウンは思った。





で、それとはまた関係なしで・・・思った。とにかく、頑張ろうと。ヤスフミは私のために沢山勇気を使って、自分の想いをぶつけてくれた。伝えてくれた。





だから・・・今度はきっと、私の番なんだ。私が、ぶつけて、伝える番なんだ。




















(インタールード04へ続く)




















おまけ:緊急頂上会議




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文さんともっと仲良しさんになりたい?」

「うん」



デートの尾行から戻ってきたフェイトさんが、リインに相談があると言うので、談話室でお話です。そして・・・そんな話になりました。



「でもでも、十分仲良しですよね」

「それよりも、もっと・・・なんだ。リインはヤスフミのこと、本当に理解してるし受け入れてもいるし・・・それに、好きだよね」

「はい♪」



リインは、恭文さんが大好きです。大事で、大切で・・・大好きです。だから・・・なわけですし。



「そう言えば、リイン・・・六課が解散したら、ヤスフミのところで暮らしたいって話してるんだよね」

「・・・はいです」



そういう話を、現在はやてちゃんやヴィータちゃん達と密かに進行中だったりします。事件も解決して、だいぶ落ち着いてきましたから。



「ね、それは・・・どうして?」

「・・・同じだからです」

「え?」



きっと、今のリインの気持ちは同じなんです。



「フェイトさんの騎士になって、フェイトさんの側に居て守りたいと思う恭文さんの気持ちと・・・同じだからです」

「リイン・・・」

「別に、JS事件だけの話じゃないんです。ここ2年の間に色々あって、恭文さんと距離が空いたりして、思ったんです。やっぱり、リインは恭文さんなんです」



私は、ただ・・・側に居られるだけでいい。恭文さんが誰を好きでもいい。ただ、同じ時間の中でずっと・・・ずっと一緒に、笑顔で居られれば、それだけでいい。本当に、それだけでいい。

だから・・・お願い。本当に、それだけでいいから、その願いを私に通させて。それだけで・・・いいから。



「・・・大変だ」

「そうですね、大変です。アギトちゃんのことがあっても、はやてちゃんもみんなも中々納得してくれなくて」

「ううん、そうじゃないよ」



え?



「・・・私が、リインに勝つの。リインよりもヤスフミの事好きになって、理解しあって・・・って考えたら、きっと大変だなと」

「フェイト、さん?」

「リイン、あの・・・ね。私、リインと同じように・・・ヤスフミの事が、好き・・・みたいなの」



少し顔を赤らめて、恥ずかしそうにフェイトさんが言います。その言葉に、私は・・・胸がチクンと痛みます。



「ホント・・・ですか?」

「うん。まだ、リインには負けるけど・・・弱くて、小さな気持ちかも知れないけど・・・私、男の子としてのヤスフミを好きになりかけてるの。だから・・・」



フェイトさんがそこで呼吸を整えます。それから、言葉を続けます。



「だから、もっと分かり合いたい。もっと・・・理解を深めて、ヤスフミのこと守れるくらいに強くなって・・・とにかくとにかく、私と居る事でヤスフミを不幸になんてしたくないの。繋がった事、後悔になんてしたくないの」

「・・・本当に、そう思ってるですか?」

「うん」



迷い無く言い切ったです・・・。まぁ、この調子なら・・・大丈夫ですよね。



「分かりましたです。力・・・貸します」

「リイン、ありがと」

「でも・・・」



・・・一応、確認です。こういうのは、大事ですから。



「リイン、遠慮しませんよ? リインだって、恭文さんのこと大好きですから、フェイトさんがボヤボヤしてたら、取っちゃいます」

「・・・それはまた大変だ。でも、そうならないように頑張る。もう、私は弟としては見れないから」










・・・結局、恭文さん関連で色々話していくことが決定しました。きっと、必要な事ですから、リインは問題ないです。それに、リインもはやてちゃん達の説得に関してあれこれ相談させてもらうことにしました。





でも・・・リイン、負けるかも知れないです。





だって、なんというか・・・あの時のフェイトさんには、勝てる感じしなかったですから。




















(本当に続く)



















『次回予告だよっ!!』





≪ほら・・・起きてくださいよ≫

「うーん・・・あと5分」

≪あなたは子どもですか≫



「・・・なにやってるんですか」

「え、焚き火」



「なんというか、お前マジ自由人だな」

「よく言われるー」





インタールード04 『ライド・オン・フューチャー』





「言っとくけど俺は・・・最初から最後までクライマックスだよっ!!」




















あとがき



古鉄≪さて・・・色々動き出した感じで終わった追加エピソード第3弾。みなさん・・・いかがだったでしょうか?
お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「・・・ねぇ、僕主人公なのに僕視点が一回も無いって問題じゃない? そう思った蒼凪恭文です」





(問題ないです)





恭文「問題あるわボケっ! どうしてこうなるのっ!? どう考えたっていろいろおかしいでしょうがっ!!」

古鉄≪仕方ないでしょ。シオンに変装してるのに普段のあなたのモノローグとかやったら、気持ち悪いだけなんですから≫

恭文「そ、それは・・・確かに」

古鉄≪その分、本編でのフェイトさんの行動の力を貯める感じで仕上げるわけです。いや、素晴らしいですね。もうすぐ色々花が咲きますよ?≫

恭文「それを言われたら・・・まぁ、うれしいかなぁ」





(青い古き鉄、マジで嬉しそうな顔をして笑う。・・・単純でよかった)





古鉄≪とにかく、デートと言う事でいい感じでトラブル続出ですよ。あと、観覧車が止まったのは・・・アレですよね、フェイトさんのためですよね≫

恭文「そうとしか思えないような作りだったよね。で、次回なんだけど・・・なに、あの中途半端に分かりにくい予告」

古鉄≪まぁ、そこは次回を見てのお楽しみ・・・です。さて、そんな次回とも関係があるかも知れないお待ちかねのコーナー行きたいと思いますっ!!≫

恭文「とまとの劇場版第2段っ! 『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間 Newタイム』の新要素紹介コーナーっ!!」





(どこからか鳴り響くファンファーレ。そして、青い古き鉄コンビ、なんだか楽しそう)





古鉄≪さて、ここでは今度の劇場版の新要素紹介を行いますっ! 第二回目は・・・この方々ですっ!!≫










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・んじゃ、次は俺の番かな。幸ちゃんばっかにいいカッコさせるわけにはいかないでしょ。





俺は左手を胸元に上げる。そこには・・・翠色の紐に、金と蒼の宝玉がぶら下がってる。





その宝玉が輝き始める。それだけじゃなくて、隣に咲耶も来る。そのまま俺は・・・命じる。ちょっと違うな。お願いする。





俺に、戦う力を貸して欲しいと。










「いくよ、ビルトっ! 咲耶っ!!」

「はいっ! ユニゾン・・・インっ!!」

≪Rising Form Set up≫










その瞬間、金色の光が俺達を包む。俺の中に咲耶が吸い込まれる。





両手と両足に黒色の昔の武将がつけていたような無地の小手。インナーは黒色。そして、パンツはロングで、色は茶。




インナーの上から赤を基調として金と黒のラインが入ったジャケット・・・いや、コートを羽織る。そう、この形態の俺のジャケットの基本色は赤と黒。そして、金のラインだ。





目の前に二振りの刀が現れる。柄尻に宝石が埋め込まれている。

片方にはアルトアイゼンより色合いの薄い蒼の宝玉。もう一方には金色の宝玉。

鞘に収められた形のそれらを両手で取って、腰に差す。




それから、最後の変化として髪と俺が結んでいるリボン、そして瞳の色が変わる。

髪は上からまるで川の流れかなにかのような感じで金に染まり、その過程で金色のリボンが咲耶がつけていたのと同じ空色に変わる。





瞳をゆっくりと開ける。その瞳は・・・ま、当然俺からは見えないけど、翡翠色の瞳になっている。





右手をゆっくりと顔の前にもって行き、そのまま横に振る。すると、金色の光が雷撃となり、はじけた。





その光が羽の形を取り、辺りに舞い散る。・・・これが俺と咲耶とビルトの戦闘形態。ライジングフォーム。俺達の・・・新しい古き鉄の、本当の姿っ!!










「てめぇぇぇぇっ! かっこつけてんじゃねぇぞっ!!」

「しゃあないじゃん、俺・・・かっこいいんだし」

「なに調子こいてんだてめぇっ!?」





・・・黒と緑のラインが入って、なんかどっかの虫っぽいイマシンが俺の方に来る。あれ・・・なに虫だっけ?




【なるほど、つまり・・・虫けらですわね】

≪恭太郎、サクっと片付けてください。虫けらなんですから≫

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!」





あぁもう、咲耶もビルトもマジで容赦ねぇし。まぁ、いいや。



・・・俺は腰からビルトを抜く。そして、左半身を前にして構え、突撃してきたイマジンを迎え撃つ。そのまま集中。刀身に魔力を纏わせる。



金色の光が、銀色の刃を染め上げる。これは当然・・・俺と咲耶の得意技、雷撃属性への魔力変換。

そして、打ち上げる。・・・じいちゃんが作り上げて、幾度と無く未来を変えてきた刃を。俺と咲耶の魔力を織り込んで、二人分の魔力を薄く、鋭く研ぎ、全てを斬り裂く雷撃の刃とする。

俺がじいちゃんから教わって、一番大好きな魔法。古き鉄である証みたいで、使っててワクワクする魔法。



目の前のイマジンが刃を打ち込んでくる。それを俺は・・・避けない。





【「雷輝・・・!」】





避ける必要なんざねぇさ。俺の剣術は・・・じいちゃんと同じだ。



どんな攻撃も、防御も、回避も、意味を成さない。そんな一撃を打ち込む事が基本。そして・・・!



俺達が斬ろうと思って、斬れないものなんざ、この世界のどこにもねぇんだよっ!!





【「双閃っ!!」】





生まれたのは二筋の縦からの斬撃。余りにも単純といえば単純な斬撃。だけど、雷光とも言える速度で打ち込まれたそれは、たやすくイマジンの身体を斬り裂き・・・爆散させた。





「・・・おいおい、いきなり力技でぶった斬るたぁ・・・遠慮がねぇな。もうちょい空気を読めよ」

「うるさいよ、おっさん。こっちは大事なじいちゃんを目の前でさらわれて・・・ムカついてんだ。つーか、悪党相手に空気なんざ読む義理立てねぇよ。んじゃ・・・」





俺はそのまま飛び出し・・・目の前の、牙王とか抜かす奴に、両手のビルトを打ち込むっ!!



だけど、そのまま両手の刃を受け止められる。そこから・・・つばぜり合い。





「じいちゃん取り戻す前に・・・てめぇをぶっつぶしてやるよっ!!」

「やってみろ、チビが」











ブチッ!!










「チビって言うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

【恭さま、落ち着いてくださいっ! どうしてそこでいつもいつも過剰反応するんですかっ!!】

≪・・・やはりそこは気にするんですね≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



古鉄≪はい、みなさんもうお分かりでしょうっ! 今回フェイトさんと並んでこの劇場版の主役であり、マスターの孫で前回紹介した幸太郎さんと同じ時間で生きている新しい古き鉄・蒼凪恭太郎ですっ!!≫

恭文「そして、そのパートナーデバイスである荒ぶる百舌・ビルトビルガーと、リインやアギトと同じユニゾンデバイスでこれまた恭太郎のパートナーである雷鳴の鉄姫・咲耶ですっ!!
まぁ、もう拍手では準レギュみたいな感じで出まくってるから、問題ないですよね」

古鉄≪さて、ごらん頂いて分かる通り、恭太郎と咲耶は雷を扱うキャラクターとしております。まぁ、この辺りは色々諸事情あるんですが・・・≫

恭文「原作だと雷扱うユニゾンデバイスって出てないんで、こういう形にしてみました。なお、細かいキャラクター性とか設定は・・・色々な形でお出し出来ればなと。さて、次回の紹介は・・・なにするの?」

古鉄≪えー、次は敵方ですね。今回の劇場版で登場する敵方でどのような人間が居るか・・・などを紹介していきたいと思います。というよりですね、味方内で出せる情報って、もうこれくらいしかないんですよ≫

恭文「いや、色々あるでしょ。アレとかソレとか」

古鉄≪そこは実際に執筆スタートして、書き出してから・・・ということで。そっちの方が面白いと思いますので≫

恭文「なるほど、それもそうか。・・・んじゃ、今日はここまで?」

古鉄≪はい。・・・えー、それでは本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でした。それでは・・・また次回にっ!!」










(二人、手を振りながら楽しそう。それを映しつつ、カメラ・フェードアウト。
本日のED:ウラタロス(遊佐浩二)『Climax Jump Rod Form』)



















恭太郎「いやー、ついに俺達の情報公開だよっ! 今まで色々辛かったー!!」

咲耶「でも、これ以上はあれこれ喋ってはダメですよ? 劇場公開まで秘密にしなければいけないことが沢山あるわけですし」

恭太郎「へいへーい、分かってるよ。まぁ、アレだよ咲耶」

咲耶「はい」

恭太郎「頑張ろうな、俺達のデビュー戦になるわけだし」

咲耶「もちろんですわ。・・・この雷鳴の鉄姫・咲耶。ビルトと共に、恭さまと共に・・・今を覆し、未来を望むべき形へ繋いでいきましょう」

恭太郎「うんっ!!」





(おしまい)






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あきゅろす。
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