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challenge
チョウコウ

変わりたい、と思った。でもあの子みたいにはなりたくなかった。


東校舎二階の、社会科準備室の窓からは、テニス部がよく見える。


コートの周りにはレギュラー達を少しでも見ようと沢山の女の子達が集まっていて、応援に忙しい。


ここからでは、顔はよく見えないが、私は彼等の顔や、テニスをしている所を見たい訳ではないので、別に構わない。


私は最近、ここからレギュラー達を見学していた。


いや、正しく言えば…レギュラー達と、一緒にいる音無あかりを、見ていた。


お姫様と僻まれる通り、レギュラー達は皆一様に音無あかりをお姫様扱いしている。


音無あかりはレギュラー専属というだけあって、本当にレギュラーのマネージャーしかしていないらしい。


仕事が終わると、レギュラー達の試合を応援。
…あれでは女子生徒達に僻まれるのも仕様がなさそうだ。


音無あかりに、試合が終わった丸井ブン太や切原とかいう後輩が真っ先に駆け寄っていく。

その後を続くようにして、他のレギュラー達も音無のまわりに集まる。


レギュラー達に囲まれた音無あかりは、この前廊下でうずくまって泣いていたとは思えない程、幸福で、満たされた様子を見せる。


ここからではよく見えないけど、きっと笑っているのだろう。
幸せなのだろう。



…。



「…なに、それ」


私は無意識に呟いていた。


手に走った鈍い痛みに視線を落とすと、自分の爪で掌が傷つけられていた。


強く握りしめすぎたらしい。


開いた手から流れ落ちる赤い血をぼんやりと見つめながら、私は何かが私の中から這いずるように流れ出しているのを感じていた。



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