最終幕〜頑張れ狼〜
「ッハァ!…っハァ!」
叫び声だけを頼りに、城之内は走りました
焦る心に身体が付いていかず、足が縺れ、何度も何度も転んでしまいましたが、すぐに立ち上がり、ただ必死におばあさんの家を目指して走り続けました
もう足も腕も傷だらけです
血も出ています
それでも走り続けた結果、ようやく一軒の家を見つけました
「ハッ!ハァ!…こ、こか?待ってろ、瀬人!オレが絶対助けてやるからな!!」
息も絶え絶えになりながら、城之内は、そっと家の扉に近付いていきました
すると中から二人の声が聞こえてきました
「ぃ、嫌だ…!寄るな!」
「フフフ…逃げても無駄だぜ…。大人しく言う事を聞けぇ!」
「瀬ッ!!」
ドカンッと城之内は扉に体当たりをして中に転がり込みました
「往生際が悪いぞー!瀬人!負けたんだから罰ゲームを受けろよぉお!」
「戯けッ!!誰がそんな辱めを受けるものかーーーッ!」
「あ?」
そこには、ぎゃあぎゃあ喚きながら半泣きになってる奇怪な頭をしたおばあさんと、足に縄を結わえられながらも、それを踏み潰し、おばあさんよりも大きな声で喚き散らす赤ずきん瀬人の姿があったのです
「な、なんだこれ?」
「ぜぇッ!はぁ、やっと追い付いたッ!テメェ、この!オレ様の銃返しやがれ!!」
「はぁっ!もう!!城之内くんったら闇雲に走るんだから!追い掛けるの大変だったんだよ!?」
状況を理解出来ないでいる城之内の後から、城之内を追い掛けてきたバクラと遊戯がやってきました
「よぉ、ババァ、久しぶりだなァ?」
呆けてる城之内から銃を受け取ると、くるりとおばあさんに向き直り、にやりと口角を上げながら話し掛けました
「ゲッ!!!!!ば、バクラ!!??な、な、な!!??」
「バクラ?何故貴様がここに?」
「母さんに頼まれたんだよ、ババァが瀬人にまたくだらねぇことやらせるんじゃねぇかってよぉ」
おばあさんの言葉は無視して、瀬人の頭を撫でていました
その表情はそれまで見せた表情のどれよりも優しいものでした
「で?今回はどんな罰ゲームを押し付けられてんだァ?」
「め」
「め?」
「メイド服を着て奉仕しろと………ッ!!」
「テメェ…ババァ、母さんから散々叱られてるのにまだ懲りねぇのか!」
「可愛い可愛い孫との交流なんだからいいだろ!」
「じゃあ同じ可愛い孫なんだからオレにもなんか言ったらどうだ」
「お前は母さんに似て怖いから嫌だぜ!!!」
「どういう意味〜^^^^?」
「か、かかかかか母さん!!??」
「全く心配になって来てみれば…、相変わらずだね」
にこやかに言いながらも目が全く笑っていません
おばあさんはというとまるで肉食獣に出会った小動物のようにガタガタ震えてしまっています
「ぇー…と、話の腰を折って申し訳ねぇんだけど」
「「「「なんだ(なに)?」」」」
勝手に盛り上がられてしまい、置いてけぼり感満載の城之内が、そーっと手を上げて四人の中に割って入りました
「えと、色々聞きてぇ事はあるんだけど、バクラと瀬人って、ど、どんな関係…?」
「俺達は兄弟だが?」
「兄弟!!!!???」
「あ?言ってなかったっけ?オレはコイツの兄貴なんだよ、まぁ一緒には暮らしてねぇけどな」
「母さんが頼んだ人物とは貴様の事だったのかバクラ。礼を言わねばならんな」
「まぁ一応そうなんだけどな、でも礼言うんなら他に言う奴いるんじゃねぇの?」
「ん?」
「一心不乱に、傷だらけになってまでお前のこと助けだそうとした奴がそこに居んだろーが」
ほれ、とバクラが指差した先にはボロボロになりながら立ち尽くす城之内が居ました
「そうだったな、すまなかった」
「…あ、や、オレ、結局なんも役に立てなかった、し」
「何を言っている、助け出そうとしたのだろう、礼を言う」
にこり、と僅かに微笑んだ瀬人に、城之内の顔は完全に茹ってしまいました
「どうした、顔が真っ赤だぞ、熱でもでたのか?」
「ち、ちちちちげぇよ!はs、走ってきたから暑いんだよ!」
「ふぅん…?まぁいい、来い。手当てをしてやる」
「お、おう!!」
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「まぁ、あれだな、一歩前進ってやつ?」
「城之内くんはこれだから…」
「せぇえええとぉおおおお;;」
「るっせぇ、ババァ!!邪魔してんじゃねぇよ!」
「なぁなぁ、オレの好きな色聞く気ねぇ?」
腕に包帯を巻かれながら城之内が聞きました
「またそれか、何色が好きなんだ」
「オレは、あ、あ、青が好き!」
「そうか、奇遇だな、オレも青が好きだ」
「……あれ?お前森で赤が好きって…」
「肯定した覚えはないが」
「ええええええ!?、あ、じゃあ琥珀色は?好きか?嫌いか?」
「琥珀?好きでも嫌いでもない、言うならば普通だ」
「ふ、ふつう…」
青い瞳の赤ずきんと琥珀色の髪を持つ狼の物語はまだまだ始まる気配はないようです
先は長そうだ!
頑張れ、狼!
end
→「赤ずきん」終了!舞台裏もあるよ!
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