ELSEWHERE 狂犬思い悩む 「あーあ、ウザ森のせいでたなっちヘコミンだー。お前あつお病だから気持ちは分かるけどさあ」 よーくんの言葉にりょーがたじろぐ。ヘコミンとゆーか、少しさみしーのだよ。オレのすきな人達だから、出来れば仲良くしてほしーでしょ。 「森田、何だか強力なライバル登場だね。オレで良ければ話ぐらい聞くから」 はるは何故かお悩み相談室の勧誘をしている。りょーもしばしはるを見た後 「頼むわ」 え!なにー。 「りょー?なにか悩み事?オレもよければ聞くよー。つか、りょーが悩んでんの気付かなくてごめん、いつもオレばっか助けてもらってるから、オレも聞きますよー」 りょーの傍に行って様子を窺うと、りょーが頭をペシッとたたいてくる。 「アホ」 なんですか、りょーは反抗期かい? 「っもー!最高!たなっちがミラクルバカでよかったよーはる!オレ毎日学校楽しみんなってきたわ」 よーくん、学校が楽しみなのはオレ嬉しーよ。でもそんなミラクルとか言われると少し悲しーわ 「あつおさん、大丈夫?」 あきが横に来て心配そうにする。もーもーあき、君はなぜにそんな忠犬なの。オレ目一杯愛情注ぐからな。毎日散歩行こーなー! 「あきはホントかわいー奴だよーあんがとー」 「あつおさんの方が可愛いっす」 「ねえ、しゅーいち、お前何でここ来たの?ちょっと遠いじゃんここ」 よーくんが何故かニヤーっと笑いながら聞く。 「オレが行けるとこ、ほとんどなくて、三校から選ぶとなれば、あつおさん達が居る所に決まってんじゃないすか」 何を今更という顔で答えるあき。やあやあ、うれしーねー、先輩冥利につきるよー 「うわー、しゅーいちお前健気だねえ。オレどっちの味方すればいーんだろ。はるお前どっち?」 「え、どっちだろ。森田かなあ、でもしゅーいちも健気だよね。よーくん二人で話し合って決める?」 オッケーとよーくんははるに笑う。オレはどちらに加勢すればいーのだ。 チャイムが鳴って、入学早々あきをサボらせるのはよろしくないので戻らせる。あつおさんも、と粘られたが、オレ次の数学は元々出るつもりないのよー。ごめんよあき。一人でハウスに帰れるかい。 四人になったとこで質問を投げ掛けてみる。 「もしー?皆さんさっきからずっと話が見えないオレに説明プリーズ」 オレ二年になったのに、頭ん中は全然バージョンアップ出来てねーなー。先輩の威厳とか全くないよねーオレ。まあ今さらかー。 よーくんとはるは、笑いすぎて喉渇いたーって、自販機へ向かった。ウザ森説明よろしくー、とよーくんは手を振っている。 「あつお」 りょーがオレを呼ぶ。オレは横に腰掛けて、りょーを見る。どしたの?と問えば、りょーの目が少し揺らいだ。なに。そんなりょーの表情、初めてでオレは胸がざわつく。 「オレがどんだけ必死んなっても」 りょーがオレの肩にもたれてくる。いつものりょーの匂いに、苦しくなる。いつもと違う様子のりょーに、ハグして、大丈夫と言いたくなる。ふっと息を吐き、りょーが再び話しはじめる 「お前が選ぶ事だよな」 顔を少し歪めて言うりょーに、なにも言えない。なにを選ぶ?さっきの話?あきとりょーが仲良くなれねーってこと?なに?なんでりょーはそんな顔をすんの?なにも言えないオレを見て、苦笑いしてからりょーが続ける。 「ビビってる自分がうぜえし」 オレの前髪をさらっと流して眩しそうに目を細めるりょーは、口元を歪める。 「りょー、オレ、全然意味わかんねー。ごめんアホで。りょーがなに怖いのか分かんねーけど」 こんな弱気なりょーをオレは見たことがない。どうすれば、どうすれば、と気持ちばかり焦る。 「りょー、オレになんかしてほしーことある?」 焦って、焦って、結局りょー任せかよ。情けねーなーオレほんとに。りょーはじっとオレを見つめてなにか言おうとする。 「ウザ森慰めてもらったー?んで、たなっちは理解できたー?」 よーくん達の姿が見えるとりょーはすっと離れて、立ち上がると呟いた。 「それでも。絶対渡せねえし」 すっと振り返ったりょーはいつもの笑顔で、少しほっとした。 りょーの決意がなんなのかよく分かんねーけど、あんな顔するりょーは、あまり見たくない。オレまで、悲しくなる。 オレが選ぶこと。なにを?あきか、りょーかを選ぶ?つか、選ぶってなに。あきはかわいー後輩だ。りょーは、オレのちょー大切な友達だ。りょーはどーしてほしーんだよ? 少ない脳ミソを必死に働かせ唸っていると、りょーに頭をわしわしされた。 「アホは考えなくていい」 笑うりょーに少し抗議してみる。オレ今ちょー考えてたって!ひでーよ。りょーはいきなりオレのカフェオレを奪って飲む。ニヤリと笑う顔に苦しくなる。 んな顔されたら怒れねーから。かわいーってホント! [*前へ][次へ#] [戻る] |