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忠犬の帰還
危ないかな、いや、大丈夫だ、とそわそわしてたオレですが。無事に二年になりましたよー。ふぃー。まあ例え学年の最下位をウロウロしてようと、二年は二年です。
「さいってい」
なのになぜオレはいじけているのか。それは、クラス替えにあって。選択学科が違う、はるとよーくんとクラスが違うのはしょーがない。だがしかし
「ねえ、なんで?なぜにオレだけ一年の階なの」
そう、よーくんとはるはまた同じクラス。まあ電子科はクラス少ないしね。よかったねえ二人とも。オレもりょーと!という願いは当然却下された。しかもオレのクラスだけ階が離れてて、一年と一緒。はあ
「あー!たなっちの頭がまだ一年レベルってことじゃないのー」
うわっはっはと笑うよーくん。まーその通りだねー
「行くから拗ねんな」
りょーにやさしく言われても。はるにジュース奢ってもらっても
「ちょーさーみーしー」
机でフテ寝。ああオレ知らない奴ばっかだしー。去年白石が卒業間近に打ち上げた大いなる嫌がらせは、どこまで誰が知ってんのか分かんない。
だって皆オレにもなんも言ってこない。なんせりょーが怖すぎて、皆さん白石の二の舞にはならいと固く誓っているみたいだ。今年もまたロンリーかあ、と思い廊下を歩いていると。
「あつおさん!」
「え、あき?」
わーわー懐かしーなあー。そう、目の前の人物、瀬尾秋一こと、あきはオレと同中の後輩で。よーくん以外に唯一繋がってた奴なのである。
背もまた少し伸びてるし、黒髪短髪が似合う彫りの深い顔立ちはさらに大人になっていて。懐かしさに顔が綻ぶ。
「あつおさんしかオレの事あきって呼ばねーからめっちゃ懐いっす」
そう。しゅーいちくんだからね。
「あきー、南高くんなら連絡してよー」
そう言うと、あきは、あつおさん高校入って携帯変えたでしょ、オレ連絡しようとしたら繋がんないから悲しかったっす、としょんぼり言われた。ああ、ごめんよあき。オレ、新しいスタート切りたかったのよー。
「あつおさん一組すか?オレのクラス隣」
え、うそうそ、まじー?うはは、よかったーよかったよーこれで少しさみしーの減ったよー。
「あき最高。オレさ、よーくんとか離れちゃって、一人一年の階なのよー」
「オレ遊びに行く。あつおさん、新しいケー番教えて下さい」
ほいほいほいー。またまたあきにお任せする。あきは昔からオレなんかよりずっと大人で、しっかりしている。オレダメな先輩だー。これからもよろしくよー。
「よーくん!あきが居る。オレとクラス隣」
わざわざ上に行くのか面倒なので、コールコール。
「あら!しゅーいちかー!ふーん、へー、楽しくなりそーじゃんーよかったねえたなっち」
うん、よかったよーホントに。あきは、でっかい犬みたいな奴で。中学の頃からかわいがってた。不器用だけどやさしー奴。
オレの噂なんか、どーでもいーっすの一言で終わらせたなかなかの男である。
「あつおさん、どこ行くんすか」
かわいー後輩を、皆に紹介いたしましょー。あきはオレの言うことをよく聞くので、おいでおいでとすればすんなりついて来る。
「みなさん。つか、お二人さん。オレの自慢の後輩のあきですーかわいがってねーめちゃいい奴だから」
「へえ、よろしくーオレははるでいいよ」
はるはいつものやさしースマイル。あきもいい人オーラに気付いたのかぺこりと会釈した。
りょーは無言。あらら。りょーは人見知りだからなーと、りょーの名前を代わりに紹介しよーとすると、あきはぼそりと呟いた。
「瀬尾秋一です。秋一でいいっす。あきはあつおさんだけなんでやめて下さい」
「あきって、いやなのー?オレもやめよーかー?」
そう言うと、あきはふるふると首を振る。
「違う、あつおさんは呼んでいいってこと。あつおさんはあきって呼んで」
はいはい、りょーかい。
「っぷ、あっはは、相変わらずしゅーいちはたなっちになついてんなー!ああなんか中学に戻ったみたいだわー」
よーくんは爆笑しながらあきの肩をたたいてる。あきはよーくんにもなついているから、お久しぶりっすと挨拶している。
「あつおだけ、だって?」
さっきから一言も喋らなかったりょーが、あきを睨んでいる。えええ、ちょい待って、りょー、あきは敵ではありませんよー。
「あつおさん、誰すか」
あきは、オレの横に来てオレの袖を引っ張る。あああこれこれ!なっつかしー。あきの癖だ。これだからもーあきはかわいーんだよ。
「りょー、あきはオレのかわいー後輩なんだってー。かわいがってあげてよー。あき、森田凌介くんー」
「お前なに触ってんの」
ああっ、まただ。りょーは何故かあきが気に入らないらしい。なぜー。
「あつおさん、髪の毛伸びた。似合ってる」
チラッとりょーを見てからあきは、オレの髪の毛を触ってくる。
「んー、伸びたよねー」
ガッタン。りょーがゴミ箱を蹴飛ばした。
「てめえ今何した」
りょー、なぜキレている。
「先輩こそあつおさんの何すか」
あき、お前もかよー。
「っあー、オレ絶対こうなると思った!ああ楽しいわーたなっち争奪戦だね、おもしれー!はる、楽しくなるね!」
よーくんは目がキラキラ。ねえオレなにを争奪すんのよー。はるもなぜ笑うー。
「しゅーいちはたなっちのこと好きなのー?」
はるがニコニコ聞く。あきは間髪入れず、
「大好きっす」
と頷いている。ああもう忠犬だなーあきは。思わずよしよしとあきを撫でれば、あきは少しだけ笑う。うんうん、よしよし。
「埋めてえ」
りょー、なにが気に入らないのー。かわいー後輩をずっとイライラしながら見るりょー。オレちょっぴり悲しーぜー。
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