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ELSEWHERE
森田の夜
隣で眠るあつおを眺める。数時間前一緒に眠った。あつおは疲れていたのかよく眠っている、口を開けて。またヨダレ垂れてんぞ。
自分の部屋であつおが眠っているのを眺めるのが好きだ。
後ろからそっと抱え込んでみるが、動く気配もなく間抜けな顔で変な寝息をたてている。何だよその、ふいーふいーって。


バスケをしていただけあって、あつおの背中や腕には薄く筋肉がついている。
薄着になるとそれが分かって、その背中や腰を眺めていると、いつも思考が危ない方向に傾いていく。
いつもはからかって骨だとバカにしているが、本当はこの身体だって好きで堪らない。


うなじから肩を指でなぞって、背中から腰に舌を這わせたら、あつおはどんな反応をする?
キスしている時たまに見せる普段とは違うあの顔をもっと見たい。あの目を見たら、いつも頭がぐらりと揺れる。あの瞳を思い出すだけで軽く勃つ。


いつもは完全なるアホなのに、女が見たら確実にオチる様な顔でもっとしてと掠れた声で誘ってくる。
急に大人びた男になるあつおは、誘うように笑う姿も見つめてくる瞳も、何もかもが際どくて危うい。本人はそんなつもりはないのだろうけど。
その瞳に気を抜いたら全部持ってかれそうになる。その瞬間はいつもどうすればいいのか分からなくなる。それがまた堪らない。


男の部分が垣間見える瞳と掠れた声が好きで好きで、見る度に喉が鳴る。一人の時何回も思い出しては欲望を吐き出した。
もう完全に頭がイカれている。あつおのせいで、まるで中学生に逆戻りしたかのようだ。
健全っちゃ健全、盛ってるといえば盛ってるだけ。
あつおが寝たベッドで、あつおの瞳や身体、キスした時の感触を思い出す毎日にも慣れた。慣れてどうすんだって話だけど。


一年以上前、初めてあつおを想像して欲望を吐き出した。罪悪感よりも衝動が勝っていて、一度あつおを思い浮かべたらもう止まらなかった。
本当に好きで堪らない相手を頭の中で好き勝手に想像して、何回も心の中で好きだと告げた。
人生初の強烈な快感に、抜いた後も虚しくなんてらなかった。逆に初めて満足感と快感を知った。


そう、オレは虚しくなるどころか、世の中の男がセックスにはまる理由を漸く理解した。
一人でヌくのすらこんなに気持ち良いのだから、こりゃ金出してでもヤりたくなるよな、と高一にしてやっと納得した。


あつおを想像しただけで、自分でも引くくらい興奮した。一人でして息が上がるのなんて初めてで、この手があつおのだったならと考えただけでイッた。あまりの早さに早漏になったかと一人笑ってしまった。


一人でするのですらこんなにヤバいのに、セックスしたら一体どうなるのか。そう考えただけで堪らなくなった。
あつおが相手だと、キスするどころか抱き締めているだけで危ない。キスなんてしたら確実に勃つし、抱き締めている間、頭ん中は色々と危ない妄想だらけだ。あつおのせいで、今のオレは軽く変質者だ。


「あー、やべえ」


密着している身体のせいで、また思考が危ない方向へと流れていく。
セックスの最中に萎えていた、やる気のない自分が懐かしい。あれくらい冷静だったなら毎日もっと楽なはずだ。


あのバカ次男が前に言っていた事を思い出す。今は健康体だけど、昔のオレは本気で勃起不全気味だったのかもしれない。
中学生がセックスの途中で冷めて萎えるとか、気持ち良さを感じなくてイケないとか、今から思えば枯れていた気がする。


セックスがしたいという衝動もそんなになかったし、年相応の興味みたいなものも薄かった。他人に興味がなかったんだから仕方ないと自分では思っている。
ただ、男としてどうなんだっつう話だから、あつおにはそれなりに遊んできたと勝手に思われている今、わざわざ訂正するつもりはない。
まあ、セックスする日がきたらきっとその時バレるだろう。浮かれまくってあつお以上に挙動不審になりそうな自信がある。


第一、男となんて完璧に初めてだ。手馴れてる訳なんてないし、何が何でも突っ込みたい訳でもない。あつおが嫌ならする気はない。今まで通り、死ぬ気で我慢する。
というのは毎日言い聞かせている綺麗事で、本音は何が何でも触りたい。こんだけ好きなんだからヤりたくない訳ねえんだよ。ヤりたいに決まっている。
ただあつおの意思を無視して突っ込むつもりはない。あつおも男、プライドとか色々あると思う。だから無理強いはしたくない。


とにかく触りたいしあつおがイくのを見たい。自分の手と口でイカせて、出来る事なら、あつおに同じ事をして欲しい。
そしていつか、あつおが本当に納得してくれたら、そういうセックスもしたいと思う。


あつおが快感で顔を歪ませる姿が見たい。あの目でオレを見上げ、あの声でもっとしてとねだって欲しい。男の身体なんて触った事ねえのに、あつおには何の躊躇いもなく、何だって出来る自信がある。


起こさない様にそっと背中をなぞる。本当は今すぐこの服を脱がせて触りたい。あー、こうやって寝るの久しぶりだからか、堪んねえんだけど。
抱え込んだあつおのうなじにキスして、そっと身体を撫でていく。Tシャツの上から身体をなぞり、後ろからきつく抱き締める。
これだけで完璧勃ってるオレって何なんだよ。どんだけがっついてんだ。


そっと胸元に触れて、指を滑らせていく。少しだけだからという言い訳を心の中で繰り返しながら、服の上からゆっくりと上半身を撫でまわす。
あつおが起きないのをいい事に、後ろから身体を密着させ足を絡める。あつおの腰に自分のモノが当たっていると思うと、もうそれだけで危ない。


「…っ、あーこのままヌきてえ」


無意識に呟いた言葉に我ながら呆れる。最中にあつおが起きたらどうすんだよ。変態なんてもんじゃない、恥だ恥。アホかオレは。
腕を引こうとした時、あつおはくすぐったかったのか少し呻き身を捩らせた。


「……っ、ぅん」


鼻にかかった声にどくりと身体が疼いた。もう一度、触りたい。止まらない指と荒くなっていく呼吸。


「な、あ、このままじゃ寝れねえんだけど」


切羽詰まった自分の声に笑いそうになる。
触りたい、舐めたい、吸いたい、イカせたいしイキたい。オレが触ったら、あつおは勃つのだろうか。気持ちよくさせる事が出来るだろうか。
もしあつおが許してくれるのなら、これ以上ないってくらい大事に触るのに。


もう限界だ、ここで自分を止めないと本当にあつおを裏切る事になる。
そっと身体を離し、仰向けになって息を吐く。


「キッツい」


何でここまで我慢出来んのか、自分で自分に驚く。
死ぬほどヤりたくて堪んねえのに、これだけ爆睡してんだから少々の事ならバレる訳なんてないのに、あつおが悲しむかもしれないと思っただけで、欲望よりも強い力がオレを動かなくさせる。もう、指一本動かせない。


「お前すげえよ、本当」


寝てる時ですらオレをこんなに操る。ヤりたくて悶々としているのに、口が半開きの間抜けな寝顔を眺めているだけで楽しいし安心する。
あつおはヤりたくなったりしないのだろうか。自分の事変態だとか言ってるけどそんな素振りは見せないし、第一性欲とかあんのか?

「なあ、お前一人でしたりすんの」


返事がないのが分かっているから、普段聞けない際どい質問も投げ掛けられる。一人でするくらいなら、手伝ってやんのに。至れり尽くせりで、最高に気持ちよくさせるのに。
あー、やべえ、想像した。こいつの部屋に隠しカメラとか設置して……。


「犯罪じゃねえかよ、アホか」


自分で自分に引く。何考えんだよオレは。
でもまあ、あつおが一人でヌいてる姿を見られるのなら、全財産出してもいいけど。


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