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お願い
「さてさて、もっと近くにおいでなさいよ!語り合いましょう」


ベッドの上で向き合って座るのに、若干距離があるのはなぜですか。


「あー、ここでいい」


そんな遠いと寂しいじゃんか。なんでよ。仕方ないので、あぐらをかいているりょーの上によっこらせと座ってみる。
ほら、りょーが近い。今日のオレは冴えている。


「ずっとこれで話すつもりかよ」


そーですよ!頷いて笑いかけると、りょーはため息をつきながら笑う。あれ、呆れてますか?


「何話すの」


「まずはちゅーを」


目の前にある唇に吸い付いて、熱い舌の感触を確かめる。絡みつく舌がいつもより熱くて身体が震える。


「りょーの舌、熱いね」


唇を離して囁くと、りょーは顔をしかめ、なにも言わず唇を重ねてきた。
静かな部屋に響くキスの音に、頭がぐつぐつ煮えあがってくる。


「ねえ……気持ち、いい」

欲求のままりょーの首筋に唇を寄せてみる。いつもされるみたいに下から上に舐めてみると、りょーは息を詰め頭を掴んでくる。


「もう黙れ!何言ってんだよ、しかも何してんだ」


なにって、嫌だった?
顔を上げると、りょーはかなり困った顔をしていた。なになに?今日はその顔が流行りなの?


「Tシャツ脱いでみてよ」

ばさっとTシャツを捲り上げると、それは見事な腹筋が現れた。
あーまじセクシー!
りょーの上に座ったまま観察していると、捲っていた手を邪魔される。


「待て、無理、語り合いだろ?語り合い!」


「うん、でも待って、すごくね?この腹。見て、オレなんかまじ貧弱」


服を脱いで貧弱な身体を見せてみる。まあ、オレも腹筋は薄くついてるけど、とても敵いませんね!


「何脱いでんだよ、お前が貧弱なのは知ってるから服を着ろ!」


「もっかいちゅーしてみようか森田くん」


唇に触れながら抱き締めてみても、固まったままのりょーは動かない。仕方がないので、自分から密着してみる。キスを繰り返しながら見上げてみると、りょーはますます困り顔になる。

「なにかお困り?」


「お前にお困りだ」


りょーは弱ったという感じで笑いながら、そっと肩に触れてきた。素肌に感じる指の感触が少しくすぐったい。


「本当、頼むから服着て」

声はホントに困っているみたいで、なんだか申し訳なくなってくる。


「りょーが悲しいとオレも悲しいよ。よしよーし、いい子だね」


よしよし。抱き締めて背中を擦ってみる。なるべく優しく、やさしーく。


「っぶ、何か、アホらしくなってきた。お前、よしよしって何だよ!」


急に大笑いし始めたりょーが、オレを見てまた噴き出した。あ、かわいい。


「あー、もう何でもいい、好きにしろよ。あつおなら何されてもいいから」


りょーはいつもの余裕な笑顔でそう言うと、ただし、と付け加える。


「今日の事は忘れて」


「なぜに?」


好きにしていいと笑顔で言われたので、とりあえず首筋にキスしながら聞く。
そのまま鎖骨を舌でなぞると、りょーがひくりと動いた。もう一度ぺろりと舐めてみると、また微かに身動ぎする。こそばゆい?


「酔ってんの知ってて、止めろって言えないオレが悪いから」


なにやら難しい話だ。仰る通りの酔っ払いなのでさっぱり分からない。


「ねえ、首筋舐められたら気持ちよくね?オレはいつもぞくぞくする」


りょーがするみたいにゆっくり舐めあげると、オレの頭を撫でたままのりょーが小さく息を吐いた。


「こんな事、初めてされるん、だけど」


まじ?なんで?経験が乏しいオレと違って、りょーは経験豊富なのに?
耳たぶを軽く噛みながら「ホントに?」と聞くと、りょーはひくりと動いて、そりゃもう堪らなくセクシーな吐息を漏らしながら頷いた。あややや、今のもっかい!


「もっかい今の聞かせて、すげーやらしい」


いつもされるみたいに耳たぶを甘く噛みながら囁くと、りょーがまた小さく息を吐いた。


「今のって、何。他人に触られんの、嫌いだったんだよ」


途切れがちな声は少し掠れていて、聞いた瞬間背筋がぞくりとして、頭の中が変態一色になった。


「気持ちいい?」


そっとキスしながら聞いてみると、なんだかぼうっとしたりょーが頷いた。


「崖っぷち。もう片足落っこちてる」


はい?まーた意味のわからんことを。片足落ちてるってどこにだよ。
そっと頬に触れてきた手は熱くて、オレを見る目は優しくて、なんか、


「愛が溢れてる?」


りょーはオレの口を指で挟みうにうにすると、また無邪気に笑う。


「今頃気付くな、遅えよ」

愛が溢れている。愛。
りょーの愛が!愛?ラブ?もうなんだかじっとして居られなくて、りょーの膝の上から降りてゴロンゴロンとベッドを転がる。


「フォーリンラブ!ラブだよラブ!素晴らしいね」


あーあーあー!嬉しいやら幸せやらで、転がるのを止められない。これだから酔っ払いは困るんだよ。自分のことだけどー!


「何してんだよ」


ベッドで悶えるオレを見ながら、りょーが大笑いしている。顔がくしゃくしゃになっていて、なんとも愛らしい。


「それ、喜んでんの?」


りょーは笑いながら説明してと優しい声で言い、のたうちまわるオレの頬をそっと撫でてくる。
そうですよ、喜びと感激のあまりのことですよ!
寝転んだまま返事をすると、隣に座っていたりょーが頭を撫でてきた。静かに微笑みながら何回も撫でて、へらへらしながら見上げるオレをじっと見ている。


「なに?酔っ払いのオジサンはそんな見られたら照れますよ」


こんなカッコよい人に見つめられたら、顔中がたるんでてしまう。


「あつお」


名前を呼ぶ声に顔を上げると、りょーが目の前に寝転んできた。
しばらく黙ってオレを見つめてから、また優しく頭を撫でてきた。んー、気持ちいい。


「いつまでオレと居てくれる?」


優しい声に心臓がくすぐったくなる。いつまで?


「明日りょーがバイト行くまでは居る!その後も居ていいなら、一回着替えに帰ってまた来るよ」


そう答えると、りょーは曖昧に笑うだけでなにも言わない。あれ、意味が違いますか?


「ずっとって言って」


「それ家出じゃんかー!」

おかんは放置しそうだけど、と笑いながら言うと、りょーはまた曖昧な笑みを浮かべまたなにも言わない。

「お願い、言って」


「なーにー!今日のりょーはまじかわいいよ!お願いって、そんなかわいい顔で頼まれたらなんでも言いますとも!」


なにを言えばいい?と笑いかけると、りょーは首を横に振って「もういい」と微笑んだ。
なんですかそれは。今日のりょーはいつにも増して不思議くんだ。
そんなりょーも好きだなと見つめていたら、りょーは仰向けになり、天井を見つめたまま手を繋いできた。

「本当は酔ってない時に言って欲しいからもういい」

それだけ言うと、りょーは横目でオレを見てにこりと微笑んだ。
酔ってない時に?なんだそりゃ。意味解んないけど、りょーが喜んでくれるならなんだって言うよ?

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