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暗闇で願うこと
あの日、あれからりょーはすぐに帰ったらしい。よーくんが帰る姿を見たと言っていた。オレは返事が出来なかった。頷くことすら出来ずに俯くオレに、よーくんは黙ってカフェオレを買ってくれた。


二人はオレを見てなにか言いたそうにしていたが、あまりにも茫然自失なオレを気遣ってくれたのかなにも言わなかった。
オレみたいな救いようのないバカと違って優しくて気が利く二人。そのまま一人で帰ったオレになにも詮索してこなかった。




あれから数日。学校でりょーとはあまり会わない。
四人一緒の時も視線が合わない。りょーは一人で居るかはるとよーくん逹だけと過ごすことが増えた。オレが加わるとさりげなく距離を置く。

表面上は普通だ。もとから無口なりょーが静かなのはいつものことだし、四人だとよーくんかオレがいつも喋っているから。


ただ、あれからオレはりょーに話し掛けることが出来なくなった。また嫌な思いをさせるのではいかと思うと言葉が出てこない。
オレと距離を置くりょーが話し掛けてくるはずもなくて、もう何日もまともに話していない。


放課後、りょーがバイトだからと先に帰って行った。ああ、また今日も目が合わなかった。


「たなっち、あいつとケンカでもした?」


よーくんはいつも的確。ある程度オレに考える時間を与えてくれる。黙って様子を見て、気付かないフリをして待ってくれる。
オレが穴に落ちて途方に暮れたり、もがき始めると助け舟を出してくれる。
はるはなにも言わず優しい顔でオレを見る。ホントにオレと違って気遣いの出来る人逹だ。


「ケンカはしてねーよ」


うん。ケンカじゃない。怒っているわけじゃないだろうし違うと思う。それよりも深い溝がある気がする。

よーくんはオレをじっと見つめたままなんにも言わない。ごめんよーくん、だって、オレもさー分かんねーのよ。

「なんでこーなっちゃったんだろーねー」


呟いた途端、我慢していた色んな想いが溢れてきて、オレを飲み込んでいく。


なんでだろう。りょーと出会って毎日楽しくて、傍に居るのが当たり前みたいになっていた。感謝の気持ちが足りなかったのかな。
りょーを好きになった。でも伝えなければ、変わらずりょーのそばに居れると思ってた。それでよかった。

あの日オレはなにを間違えた?何度も何度も考えたけれど分からない。ただオレが、見出すモノが違うと言った時のりょーの顔。悲しそうな、なにかを諦めるような、そんな笑顔。あの笑顔が頭から離れない。


そして、りょーは惨めだと言って自販機を殴った。無理なのにそれでも欲しいと言って去って行った。
理解したいのに、ちゃんと謝って前みたいに戻りたいのに。そのためなら、なんでもするのに。


ねえ、どーすればいいの。オレなんでもするから。どうすればまた、りょーはオレに笑ってくれる?またオレの近くに居てくれる?


「たなっち」


はるがオレの横に座って、肩をさすってくる。
なに?あ、泣いてたのか。いつから流れてたのかさっぱりな涙がぽつりと膝の上に落ちた。
ダメだダメだ、堪えろ。オレは泣いちゃいけない。
慌てて堪えた涙が、どうしても流れたいと瞼に訴えてくる。
泣いてもなにも解決しないんだから、我慢しろ。


「全部話してみな!」


黙っていたよーくんがオレの前にでんと座り、いつものオレのすきな顔で笑っている。よーくんがこうやって笑うと、いつもオレは話してしまう。昔から。


「見出だすモノが違うって言ったんだよ」


オレはあの日のことを話し始める。オレがりょーを好きだということも全部話した。もう今さら隠す必要もない。自棄になってんのかな。別にどーでもいいよ、もう。


りょーとこんなにすれ違ってしまった今、もう全てがどーでもよい。
りょーが居るのに居ない。一緒に居ても、心が遠い。りょーが分からない。
たまに目が合っても、オレなんかまるで存在していないみたいにそのまま流れていく視線。
その瞬間、オレはホントに消えてしまいたいと思う。

りょーがオレを見てくれない毎日なんて、ホント必要ない。明日もあさっても、どーでもいい。息すんのもだりーのに。あー、オレってダメだなー。


オレに笑ってくれるりょーが居ないと、オレはもう毎日を今までのように過ごせない。
オレにとってりょーはただの好きな人ではない。すごく尊敬してるし、だれよりも信頼できる。
森田凌介っていう人が、心底大切だ。


きちんと話せてるのか分からないけれど、口から勝手に溢れてくる言葉。


「オレ、もう無理。りょーがオレを要らないんなら、オレもオレなんて要らねーんだよ」


涙でぼやける視界はなにも見えない。別になにも見たくはないけれど。


りょーを好きになったから?りょーに触れたいと思ったから?なにをどこから間違えた?なんで分かんねーのオレ。

どーでもいいとか言いながら、毎日学校来てりょーの姿探して、会えばずっと目で追ってる。
今だって、涙を堪えながら必死に願ってる。
りょーがまたオレに笑いかけてくれますように。



黙って話を聞いていたよーくん。顔が険しい。


「ああっイラつく!何だこの二人は!超もどかしいんだけど!お前ら何でそんなややこしいんだよ!」


「たなっち森田を好きなんだ」

はるはよーくんをなだめながら、オレにやさしーく微笑む。そう、オレはりょーが好きなんですよ。
よーくんはため息をつきながら、オレを見て頷く。


「成る程ね。だからウザ森あんな風になってんのか」

あんだけ骨抜きだったもんなー、そりゃダメージでかいわ。と納得しているよーくん。

「ちょっと待って。りょーがおかしい理由分かんの?ねえ、なに?なんで!オレはどーすればいいの?」


藁にもすがる思いで訊いてもよーくんはただ笑うだけ

「たなっち、答えは自分で見つけな。でもたなっちだからなー!軽ーいヘルプだけしてやる。後はお前ら二人の問題」


そう言って笑うよーくんがゆっくりオレの頭を叩く。

「今日あいつのバイトが終わる頃家行きな。で、オレの言う通りにしろ、オッケイ?」

頷いて見つめる先には自信満々なよーくん。
りょー、しつこいオレはまだ諦められないよ。

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