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心身共に成長期
「もっとして」


催促すると、りょーが少し目を見開いて止まった。


「積極的」


嬉しそうな声で呟くと、りょーは笑いながらオレの唇を軽く噛んだ。
え、なに。驚いて見ると、りょーは笑いながら唇をゆっくりと舐めてきた。
息も心臓も、止まってる気がする。


反応出来ず固まると、りょーは満足そうに笑う。そしてそのままぐっと頭を引き寄せられ、りょーが舌を差し込んできた。


絡み付く舌の感触に、脳ミソが痺れていく。堪らなくなってきて、りょーの肩をきつく掴むと、りょーはふっ息を漏らして笑う。


「もっとする?」


囁く声はオレの返事を待っていて、薄く目を開けて見ると、穏やかに微笑んでいた。
なんだよー、りょーは余裕だ。オレは何回しても胸いっぱい感無量状態になるのに。


「してもいいなら、もっとしたい」


返事をしながら、りょーの首筋にかかる髪に指を滑らす。結構柔らかいなー。
りょーは黙ったまま目を細めると、またゆっくりと唇に触れてきた。
この瞬間は、何度経験しても馴れることはない。何回キスしても、息が止まって心臓が潰れそうになる。


「ん、りょー、来てよかったよ」


唇が離れた瞬間に言うと、りょーは短く返事をした。

「今は黙って」


そう言って、喋ろうとしたオレの舌を舐めあげる。
ああーもう、なにその優しい声は。
気持ち悪いと思っていたはずの舌の感触が、今は気持ちよくて頭がおかしくなりそうだ。りょーだからこんな嬉しいんだ、りょーだから気持ちいいと思える。
きつく掴まれた頭も心地よくて、そっとりょーの首を撫でて自分から舌を舐めてみる。


一瞬止まったりょーが、またゆっくりと舌を絡めてくる。まじで気持ちいい。
唇も、舌も、りょーの唇と舌が触れた所全部が気持ちいい。りょーとしてると思うだけでしあわせだ。
離れていった顔を見上げると、間近で困ったように微笑むりょーと目が合った。

「ちょっと待って、何か、今さらだけど、あれだな」

オレの肩にごちっと頭を預けて俯くりょーに問い掛ける。あれってなに?


「キスって、何か、すげえよな」


顔を上げたりょーが、困ったような顔で笑う。
あーっと、もうホント勘弁してくんないかな。そんなりょーの仕草や言葉に、どんだけどっぷりはまっていってるかご存知ですかね?

「足りないのに満たされる感じ」


満足そうな、物足りなさそうな、なんかよく分からない顔で微笑んでいる。
どういう意味?わからなくて首を捻ると笑われる。


「オレもよく分かんねえ。何か、いっぱいいっぱいになった」


戸惑ったような、ちょっとばつが悪そうな笑顔はいつもより幼く見えて、よく分からない気持ちが一瞬芽生えた。
こんな顔で笑うりょーは、皆知らないんだ。皆はきっと、こんなりょーを知らない。オレしか知らないことに、オレは喜んでる?


「お前、本当ぎこちない」

そうりょーが言って、それは嬉しそうな顔で笑ってらっしゃる。なんで嬉しそうなの?意地悪だなー。されるがままなのを卒業しようと頑張ってみても、結局されるがままになっている。

「ちょっと藤沢兄弟に頼んで、キスについての講義を受けてみるよ。昔話してた時にちゃんと聞いておけばよかったなー」


よーくんとけーくん、どちらに聞いても張り切って教えてくれること間違いなしだからね。


「だからダメだって」


嬉しそうに笑ったままのりょーが、優しくハグしてくる。なんでダメ?りょーのためなのにさー。


「なぜよ」


「嬉しいから」


意味が解らん。
オレのしょぼいキステクが嬉しいって、自分の方が上手いっていう優越感に浸れるから?


「なんか意地悪だねー」


「かもな」


笑顔のまま頷いてデコに唇をつけてくるりょーがあまりにも嬉しそうにしているから、なんかどうでもよくなってきた。


「いきなり来るとか、めちゃくちゃ嬉しかったし」


黙って微笑んでいたりょーが唐突にそう呟くと、抱き締めていた腕をゆるめて横を向いた。


やっぱりこーゆー時のりょーはオレを見ない。どこ見てんの?りょーはまたオレの肩に頭を乗せてオレの頭をわしわしする。顔は無表情っていうか、ちょっとだけムス顔。


「照れてる?かわいーね。いつも照れるのに言ってくれて、オレこそ嬉しいよ。ありがとう」


りょーはさらに照れたらしく、ふいっと顔を背け立ち上がると、背を向けたままタバコを吸いだした。
照れ屋だなー、ホント!
そっと背後から近付き、服を引っ張ってみる。りょーが驚いて振り向いた瞬間、持っていたタバコを奪い取る。


「な、に」


ビビった顔のりょーは貴重だ。返事をせずにりょーの頭を引き寄せ、少し強引だったけどそのままキスしてみる。りょーがかなり屈む格好になってしまったが、届かないもんは仕方ない。

「あつお、やっぱり身長サバ読んでんだろ」


「なんのことやらさっぱりだねー」


楽しそうに笑うりょーにハグされちょっと悔し涙が出そうになる。立ったままのキスは身長差がいたたまれない。


「自称170って、大きく出たな」


見下ろしてくるりょーはお見通しって感じで、頭ひとつ分以上下にあるオレの頭にアゴを乗せてくる。


「あ、りょー最近背伸びたんじゃね?そうだよ、りょーが伸びたら差は開くよねー」


身体検査の記録だけは、なにがなんでも秘密にしなければ。


「あー、確かに伸びてる気がする。この前教室の入り口で頭ぶつけたし」


言い逃れで適当に言ったのに、まさか、ホントに伸びてるの?あり得ん。ねえ、なんで勝手に一人だけ伸びてんの?


「オレに断りもなく、なんてことを!」


これ以上差が開いたら、オレまじでみっともないってー!勘弁してよー!


「オレは今もまだ伸びてるみたいだから、センセーも頑張って」


オレはってなに。頑張ってますよ言われなくても!なんて嫌味だ。


「あつお、もっかいして」

優しい声で催促されると、嫌だなんて言えない。ずるい男だよ。
ちょいと背伸びをしてりょーの首を引き寄せようとすると、また笑われる。


「センセー、屈んであげましょうか」


ちくしょー!なによそのニヤニヤ顔は!
もうしねーよ!悔しさのあまり俯いていると、りょーが笑いを含んだ声で呼び掛けてきた。


「田辺センセ」


はいはい!甘い声に思わず顔を上げてしまう。意外と間近にあったりょーの顔に驚くと、笑うりょーと目が合った。
りょーって目を伏せたらまじでセクシーボーイだ。その顔はいかんよ。キスされながらもじっと眺めてしまう。はあ、たまらん。


「今日、泊まれば」


離れたと思ったらいきなり背を向けボソッと呟いた。かわいーなーもう!


「泊まる泊まる!ねえ、映画借りに行かね?新しく出たの観たいんだよ」


「また訳分かんねえホラーだろ」


そう言いながら出掛ける用意をしてるんだから、りょーだってちょっと観たいんじゃんかー。


「流血殺人系とモンスター系どっちがよいかね?」


「法廷系か軍隊系?」


きみ、わざと聞き間違えてるフリしてるよね。オレの映画の趣味、そんな悪い?

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あきゅろす。
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