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ダメ男返上!
なんだか皆和やかで、見ているだけで楽しくて酒が進む。ああ今日はオレ飲むぞー!


「ああうまい」


はるもぐいっとビールを飲み干しタバコを吸い込んでいる。あら、はるは完璧酔ってるなー、いつもより仕草が豪快だ。


「はーるー!酔ってんじゃーん!」


よーくんはまだまだ余裕みたいで、はるを見て笑っている。
よーくんの笑顔が、日に日に柔らかくなってく気がするんだよねー。こんな笑顔はるにしか見せないし。


「羊、タバコ切れたから一本ちょうだい」


「…今、何つった?」


よーくんがぐるりと首をまわしてはるを凝視する。
ようって呼んだよね?あらあらまあまあ!


「何?あー、もう一本飲もっかな。冷蔵庫開けるよ」

はるはふらりと立ち上がると、髪をわしわしとかきながら冷蔵庫に向かう。


「どーぞ」


よーくん、照れてる?まじで?よーくんが照れてる!前髪を弄りながら、わざとらしくタバコに火をつけているけど、動きがぎこちない。
うっわー、あんだけ付き合って別れてを繰り返してたくせにー!


「よーくんなに照れてんのー?名前呼ばれただけじゃーん!」


「別に照れてねーよ!」


「羊」


「ひつじじゃねーよボケ!ようだ、よ、う!お前次それ言ったら刺すぞ!なめた事言ってたらお前の変態行動全部暴露してやる!」


りょーも面白そうによーくんをからかっている。
ひつじ呼びはよーくんの地雷なんだよー、漢字だけ見たらかわいい名前だよね。

よーくんは嬉しさとか照れを隠すように、ちょっと不貞腐れながらずっと髪を弄っている。よーくんがこんなにかわいい姿を見せる日がくるなんて、だれが想像しただろうか!


ビールを手に戻ってきたはるは、ご機嫌な感じでテレビのチャンネルを変える。

「はる、何でいきなり名前呼んだんだよ」


すっと横に近付いてさりげなく聞いているつもりのよーくん。さりげなくないよ?明らかに気になりますって顔じゃん。


「え?嫌?キスする時とかよーくんて呼ぶの、何か他人行儀でおかしくてさ」


「はるって酔うとぶっちゃけるね、ビビるし」


よーくんは驚いた顔ではるを見上げる。はるはそんなよーくんを見てふっと笑っている。なになに、かっけーなー!甘いぜ。なんか照れるわー、こーゆーの。


「森田くんやー、ライターを貸してくれますか」


さっきからずっとりょーの背中に乗っかったり、もたれたり好き勝手しているのに、文句を言わずにじっとしてくれているりょーはホントに優しい。
りょーはライターの火をつけて、オレのくわえたタバコに近付けてくれる。


「ありがとう」


煙を吸い込み火をつける。酒がまわった頭はぼーっとしていて、なにもかもが楽しい。


「何笑ってんの」


りょーが、酔った?と笑いながらこちらを見る。軽く酔っぱらいなオレにその笑顔はクリーンヒット。にやけてしまって仕方ない。やべー、ヨダレ垂れそう。


「ういー、まだまだ飲みますよー!こんな男前が横に居たら酒も進むってものだよ!君かわいいね、オジサンお小遣いあげるから、ちょっと触ってもいいかな」

「何だそのキャラ!お前マジで酔ってんだろ、どこのセクハラオヤジだよ!」


珍しく声をあげて笑うりょーが振り返り、背中に乗っかったままのオレの頭をぐしゃぐしゃかき混ぜる。


満面の笑みはりょーをいつもより幼く見せる。
ああっストライク!今の笑顔に全財産あげますよ!


「まっじでかわいーねー、オジサンもう堪らんよー」

「オジサン、触ってもいいけど、オレ高えよ?」


冗談めかした顔でりょーが妖しく微笑んだ。
なにそれ、なーにーそーれー!かわいい、いや、カッコいい、つかやらしい!
酔ってる?素面?どちらにせよいいもん見れた!


「ストライク!まじストライク!今のはまじノックアウトされたよー、かなり貴重な姿だー!」


りょーのせいでオレの心臓まで酔っ払いだ。いつもより速い鼓動がきゅいきゅい音をたてている。


「オジサン限定」


あああ、そろそろ勘弁してください、そんなやらしい笑顔に免疫があまりないので、オジサンもう卒倒寸前です。


「お前ら何援助交際ゴッコしてんだよ、気持ち悪い!どう考えても役割逆だろーが!」


んー、まあこんなでかい女子高生はそうそう居ないよねー。


「たなっちに妹とか居たらすごい可愛かっただろうねー!」


はるがにんまりしながら言うと、なぜかすかさずよーくんがはるの頭を殴った。

「はあん?てめー、もし仮に居たらオレよりこんなバカの妹がいいっつーのかよ?聞き捨てならねーな」


もしものお話だよね、しかも別にすきとか言ってねーじゃんかー。


「そういう意味じゃないって!むしろ森田はタイプど真ん中じゃないの?」


はるがそう言って意味あり気な笑みでりょーを見る。オレの女バージョン。想像しただけでうんざりだ、こんなのがもう一人とか、世の中のためにならんよ。


「あー、無理。こいつ意外と逞しいし、見た目ほど軽薄じゃねえだろ。それがない女はただの軟弱なアホじゃねえか。そんな奴は要らねえよ」


「確かにたなっちってたまに男前だよね」


はるが頷きながらオレを見て笑っている。
ねえ、今りょーはすごいことを言ってくれた気がするんですが。


「坊や、オジサンがオジサンだからいいってことかね?」


「オッサンみたいな事したり、酔ってセクハラオヤジに豹変するお前が面白いって事。顔だけ似てても意味ねえだろ。つうか、坊やって何だよ!」


なにそれ、嬉しすぎて照れる。ちょっと感動だ。
ああ、頭もふらふらして気持ちいいなー。


「さっきからずっと重いよね、ごめんー」


オレが全面的に乗っかているからりょーは重いはず。そっと横にずれて謝る。


「重くねえよ」


そう言って微笑むりょーはいつも優しいから、自分がどうしたいかをあまり言わない。
今だってタバコ吸うの我慢してたみたいで、オレが横にずれたら、さりげなくタバコに火をつけた。そんなのちょっとどけろって言ってくれればいいのに。


タバコ吸いたかったのか、悪いことした。でも、そーゆーこと我慢しないでって言っても、きっと言わないんだろーな。ホント優しいから。
だから、オレが気付かないといけないんだよね。
りょーが我慢とかしないように、りょーがオレを優先するなら、オレもりょーを優先すればいいんだよ。
はるみたいに気遣い名人になれば、りょーは我慢しなくていいんだから。


「りょー、オレまじ頑張るわ。申し訳ない。だから好き勝手してね」


「話がさっぱり見えねえけど、頑張らなくていいし、今のままで十分好き勝手してる」


ほら、言うと思った。どんだけ優しいんだよー。
りょーの笑顔にまたにやけてしまうけれど、まじで頑張るから。りょーがワガママ言えるような男に成長するから。


「りょー、飲み比べしませんかー?オレまだまだイケるよー」


「あつおには負ける気しねえんだけど」


意地悪な顔で微笑む所も、ホントはすげー優しいって知ってるから、最近はかわいく見えるんだよねー。
キステクも向上しないといけないし、精神的にも成長しないといけない。まじでしょぼいなーオレって。
目指せダメ男卒業!だ。

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