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決意表明
とりとめもなく考えていると、リビングに繋がるサッシが開く。振り返ればよーくんがオレらを手招きしていた

よーくんに、あきがしょんぼりして帰ったことを伝えると

「しゅーいちは全然悪くねえのに!後で電話するわ」
むしろ感謝してんのに!と笑うよーくんは意外にすっきりさっぱりな顔をしていた。振り返って笑う姿もいつもと同じように見える

リビングに座り、よーくんの言葉を待つ。なにかしら結論が出たからすっきりしてんだよね?


「たなっち、いつもいつもアホなのに、オレのピンチは何故か冴えてんね」


第一声がそれですか。でも冴えてるってことは、なんにせよ役に立ったんだよね?それならよかったわ




「藤沢羊、はるがラブの模様です」


こーゆー時、なぜいつも宣言口調なの?立ち上がりオレらを見下ろすよーくんはかなり偉そうだ

とゆーことは。よーくんがはるを、ラブと。ラブとは愛してるだから、つまり

まじか!ちらりとりょーを見るが、驚くどころか面倒くさそーな顔をしているってことは、まじなのか。

女の子とセットなよーくんがチャラ男を卒業したと思ったら、男をすきになったと言う。しかも相手は

「はるを、すきなの?」


よーくんはいつの間にか復活したようで、いつも通りの自信あり気な顔で笑う


「そうみたいだわ!間違いねえな、こりゃ。つうか、他人に言われて気付くとかオレかなりダサくね?今までの経験は何だったんだっつー感じ。でもさ、男だよあいつ!んな事なるとは思わねえじゃん。男のオトし方とか分かんなくない?つうかオレ一体どうしたい訳よ?オレ、ホモなの?いや女も好きならバイか。ついに女以外に走ったのかよオレ。あっごめんねー、いきなりカミングアウトしちゃって!」


満面の笑みは、よーくんらしい。戸惑いとかきっとあるはずなのに、こーゆー時潔いっつーか、ぐだぐだうじうじな姿はあまり見せない。一人で噛み砕いて納得するタイプだからなー

しかも、ごめんとか全然思ってないよね?その清々しいお顔からして


「お前の性癖に興味はねえよ」

りょーが心底呆れたような声で呟くが、よーくんはなぜか上機嫌で笑うだけだ。なんで?

はるが自立するっつってんのに?よーくんはオレの問いをはっ、と笑い飛ばす


「あいつが自立してえならすりゃいいよ。それが嫌だと思ったり、傷付いてた理由が分かったら、オレの勝手なわがままだって納得したし。それに、オレも好きだって自覚したら今まで通りになんて出来ねえだろうしさ」


よーくんは恋愛においてもネチッこいのは嫌いだからある意味よーくんらしい反応である。たとえ思い悩むことがあっとしても、まあ確かにオレでも自分で考えるわなー



「どうすっかなこれから。オレ片想いとかのキャラじゃねえし!あいつの迷惑にならない程度にアピるしかねえか!まあオレ最高にカッコいいから、オレで無理ならどうしようもないでしょ!君達、オレ本気ではるオトしにいくから」


ははっと笑ったよーくんはとってもイケメンだ。なんだか急展開すぎて実感出来てねーけど、よーくんを見ているとまあいいのか、と納得する。オレが意見する問題ではねーよな


「だから、お前の性癖も恋愛にも興味はねえって。よって、んな宣誓もいらねえから」

りょーがうっぜえ、と言いながらよーくんを見る。りょーらしいわその反応。


「けど、まあすきにすればいいんじゃね」


小さく呟いたりょーの声に驚き、思わずまじまじとりょーを見てしまう

あー!やっぱやさしい。そーなんだよねりょーって。ああ、いい奴だよまじで。
りょーは興味なさそーな顔で、テーブルの上の雑誌をぱらぱらとめくって見ている。少しだるそうな仕草で髪を触るりょーは、オレらを見ない。


「ウザ森やっぱオレの事大好きじゃーん!知ってたけどー!サンキュサンキュ」

よーくん嬉しそーだな。がつがつりょーの肩をたたいてはうぜえ!と払い落とされている。

すきにすれば、か。どーでもいいって意味じゃねーんだよな、うん。そうだ、よーくんのしたいようにすればいーんだよ

そうだよ、よーくんのことだからオレらがとやかく言うことではない。変な応援みたいなこと言うのも嘘っぽいしなー


はるに話を聞いた限り、昔の事で男とかに拒否反応あるわけでもなさそうだし、恋愛に発展するかは二人の問題だ。よーくんの想いを否定する要素はなにもない
よーくんに近付き、ゆっくり頷いた


「思うようにやってみなさいな」


「何それ、親気取りかよ!でも分かってっからー。ありがとたなっち。じゃあはる呼ぶわ、あいつにはオレから連絡するまで待機って言ってるからさ」


電話ではると話すよーくんは、普通な口調とは裏腹に目が泳いでいて、なんか幼い。今までのよーくんの恋愛ってもっとなんか、カッコつけてなかった?てっきりそうなるのかと思っていたオレはちょっと驚く。


それに、電話で話す口調が今までと一緒なのが今までと違う。素だし、彼女と居た時の甘い雰囲気みたいな感じでもねーし。
ただ、すっげー笑顔。こんなやさしー顔してるよーくんなんて滅多に見れねーよ

「いいよ、怒ってなんかいねえから。早く来て」


電話を切ったよーくんは満足そーな顔で微笑む。


「今日嫌な感じの事言ってごめんねだって!」


ああ、だから怒ってないって言ってたのか。それって自立する発言のことかな


全員の望みが叶うわけないのは、オレでも分かる。よーくんは平坦な道を歩くわけじゃないのも分かる。はるにもしあわせになってほしい。無理矢理よーくんをすきになれとは全く思っていない。これは本心だ


でも、どうかよーくんの初めての真剣が、後悔では終わりませんように、と願ってしまいますよ。

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あきゅろす。
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