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こだわりの一品
「あつお、機嫌直せよ、な?」


りょーがオレの横にご機嫌伺いに来られた。つんと前髪を軽く引っ張りながら見てくるりょーはかわいい。機嫌は悪くないよ、ちょっと悲しかっただけだし。
でも、これから頑張るから覚悟しなよ。


「そのうち腰砕けにさせてみせますからね」


ちょっとよーくん意識な笑顔でりょーに宣戦布告してみる。いつのことになるやらって話だけど。


「イマイチよく分かんねえけど、楽しみにしてるわ」

楽しみ?まじ?オレ毎日徹夜で勉強すっかな!今度こっそりエロの先生、けーくんに教えていただこう。


「くっだらねー話だな。つーか、たなっちキス下手だね、たどたどしいのがモリーのツボなんだろうけどさー」


よーくん、わざわざ傷口に塩を塗らないで。オレってそんな下手?へこむ。


「よーくん、オレに足りないものはなに?」


「年上の女に色々教えて貰って、ついでに童貞も卒業してくればいいんじゃねーの」


よーくんは名案だろ?とニヤニヤしている。それって浮気じゃん。


「ふざけんな!オレがそれを許すと思ってんのか!童貞万歳だろ!へったくそなのがかわいいんだよ!」


森田さんあなた、よーくんより酷いです。童貞万歳?へったくそ?オレ、ちょっと人生見つめ直そっかな。

「お前のその変態思考が薄ら寒いわ!たなっちも落ちてんじゃねーよ!このキモ男はな、たなっちの童貞にヨダレ垂らして喜んでんだよ!」


え、なになに、ゆっくり喋って。童貞にヨダレ?


「たなっち、森田って何か危ないね」


はるが心配そうな顔をして見てくる。え、なにが危ないの?
りょーがはるに抗議しようとするのを手で制しつつ、よーくんが立ち上がった。

「お前ら、ドンキ行くぞ」

相変わらずマイペースっつーか、オレ様だ。
買い物あるんだよね、と楽しそうな顔で言うよーくんは、はるを引っ張り部屋を出て行く。
今日はりょーもバイトがないのでがっつり遊べるし、行ってみますかー。


「森田くん、行きますよ。あ、ヨダレ垂れたらちゃんと拭きなよ?」


「垂らすか!」


ぶちぶち文句を言いながらも、りょーは行く気らしくついて来てくれる。


皆で家を出ると、真夏日となった今日は昼下がりでもまだまだ暑い。さっきまでの冷たい風を恋しく思いながら道を歩く。


「よーくんなに買うの?」

前を歩くよーくんは、汗で襟足の毛が崩れる!と文句を言いながら振り返る。


「とりあえず枕!」


ニコリと笑うよーくんは、はるに軽く蹴りを入れる。

「いっ、よーくん何!」


はる、怒った方がよいよ?よーくんは最近ワガママ大王だ。彼女とはこんなんじゃなかったのになー。最近だだっ子が流行りなのか、好き放題しては、はるに苦笑いされている。


「お前の枕だろーが!」


前を歩くはるにジャンプして背中に飛び付くよーくんは、そりゃもう嬉しそう。

「え、まじ、で?」


ずるずるとよーくんを引きずりながら歩いていたはるが直立不動になる。


「お前何エロい想像してんだよ!リビングで寝る時枕ないと寝違えるって言うからだよ!うわ、はるの頭はエロばっかり!」


ぎゃははと笑うよーくんにはるが慌てて否定する。いつも泊まりに来てんじゃんか!と笑うよーくんに照れているはる。仲良いねー。しかし、枕がなぜエロになる?


「森田くん、枕はエロに結び付くのかい?」


「枕はいつ使うの」


隣を歩くりょーが意味ありげな笑顔で質問してくる。

「寝る時ですな」


「二人で寝たら、エロくならねえ?」


あー、耳打ちしてくる声がなんとも甘い。
はいはい仰る通りです!オレは間違いなく結び付く!にやけながら頷くと、りょーが笑う。


「へえ、そう」


なにに満足したのか知らんが、ご機嫌な様子にこっちまで楽しくなるよ。




混雑する店内に入り、早速よーくんご指名の枕を探しに行くことに。つか、はるのなんだよね?


「はるはどんなタイプがお好み?低反発系?」


はるは枕を触りながら、そうだねー、となんだかお悩み中。こだわりがあるの?

「これは匂いが変」


「は?はる何言ってんの」

「何だよ匂いって」


よーくんとりょーが時間差で突っ込む。オレは匂いフェチだからなんとなくわかるよー。


「あ、これにする。よーくんの香水後で貸してね」


枕選びに夢中なはるは、二人の突っ込みをスルーし、枕カバー探してくる!と爽やかに去って行った。
森田くん、口半開きになってまっせ!気持ちは分かるよ、はるって最近マイペースだしたまに変。


「あいつ、お前の香水枕に付けて寝る気かよ」


「はるのああいうマニアックな所良くね?地味にスケベだからねー!」


りょーが呆れながらよーくんを見るが、よーくんはうはー!と満面の笑み。
まあ、よーくんがいいなら問題なしだよね。


カバーを手に戻って来たはると一緒に、適当に見てまわる。


「オレパンツ見るよー」


これにするかな。うーん、でもこれもよい。よし、りょーに聞いてみようか。


「どっちがよいかね?」


「あー、どっちでも」


ええ、りょー見てないし!ひでーよー!


「何かパンツ一緒に選ぶってヤラシーじゃん」


横からよーくんが変な顔で笑ってくるが、なぜやらしいのだ。男同士だよ。


「はる、どっちがよい?」

「たなっちこれ似合う、こっちかな。パンツに似合うとかあれだけど」


サンクスはる、これにしよう。りょーはなぜか、隣の靴下のセットがホントに三足セットになってるか真剣に数えている。たまに不思議くんになるよねー。


カラフルパンツセットを手にレジに向かうと、いつの間にかりょーがついて来ていて、オレのカゴに奇妙な形の枕を突っ込んでくる。さっき一緒に気持ちよさそーって言ってたやつだ。しかしカゴには入らないよ、それ。


「なにしてんのー」


子供みたいなりょーに笑ってしまう。お母さんこれも買って!みたいなさ。かわいーなー!よしよし、オレが買ってあげよーか。
オレが枕を持とうとすると、りょーはカゴをオレから取りレジに並ぶ。


「え?なに?」


「家に置いとく」


枕?はい、了解いたしました。りょーも気に入ってたもんなー。


「あー、来た時使えば」


レジでお金を払いながらぼそっと呟く。うんうん、使わせていただきますよー。

「気に入ってたもんねー」

オレの返事に、はあ、と大きなため息をついたりょーは、カゴから取り出したパンツを投げつけてくる。


「なにすんのー!」


いきなり投げられたパンツをどうにか受け取り抗議する。このまま持ってたら万引きと思われんじゃんか。シール貼ってもらおっかなー、いや袋貰おう、とレジに向かうと、


「あいつらと一緒っつーことだよ!分かれよアホ!」

なぜかオレの背後で叫ぶりょーは、そのまますたすたと歩いて行く。
ふう、わけ分からん。りょーってたまに不思議な暴走するよね。困った人だ。


「りょー、どしたよ」


小走りでりょーに追いつくと、前に回り込む。りょーはなんかムス顔。なぜだ。

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あきゅろす。
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